説明

引戸門扉

【課題】 台車付きの引戸門扉の開閉を安定した姿勢でなし得るようにするとともに車椅子利用者も開閉をなし得るようにする。
【解決手段】 引戸門扉Aの台車2を引戸門扉Aの幅より短尺化して引戸門扉Aの戸先部分に台車2及び控柱45の存在しない部分的開放スペース5を形成し,該部分的開放スペース5を人のステップイン,車椅子乗り入れのスペースとすることによって,引戸門扉Aの戸先側縦枠42に設置した引き手43の開閉操作をその直近でなし得るようにする。引戸門扉Aの先端部分は片持ち突出状に浮かし支持されるが引戸門扉Aは重量が嵩む幅広のものであるから,引戸門扉Aの自立性や開閉安定性が損われることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,公共施設や工場等の出入口に設置して横引き開閉するように使用する引戸門扉に関する。
【背景技術】
【0002】
この種引戸門扉は,前後一対のレール上を走行する台車と,該台車上長尺の前方仕切体と,上記台車及び前方仕切体間所定間隔複数の控柱とを備えるとともに上記台車と前方仕切体とは幅方向に同長とされ,また控柱は,前方仕切体幅方向両端及び中間の縦枠位置で台車間に傾斜配置したものとされ,例えば6m幅或いはそれ以上の幅広の開口部に設置して,開口部端部の塀やフェンスの背面スペースを戸袋として該戸袋側に向けて横引き開閉するように設置使用する片引き又は両引きのものとされる。
【0003】
【特許文献1】実開平6−40275公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合,台車と仕切体は幅方向に同長とされるから,台車が引戸門扉の全幅を載置するように支持することによって引戸門扉はその自立性と開閉の安定性を確保したものとなし得るが,閉成した引戸門扉をその背面側において開成するには,仕切体の背面側から戸先部分の台車を避けて傾斜配置した控柱に手を掛けて,前屈みの不安定な状態で引戸門扉を戸袋側に向けて押す必要があり,また開成した引戸門扉を閉成するためには,足が台車に当らないよう台車を避けて,同様に前屈みの状態で控柱を戸先側に向けて引寄せる必要があり,その開閉操作が不安定にして煩雑になり易い。引戸門扉は一般に重量物として形成されるので,開閉に力を入れなければならないことも多く,また閉鎖時には引戸門扉に慣性が働くことによって開閉に際して台車に足を取られたりする危険性も残されている。また人の助力なく車椅子利用者が車椅子に座った状態で傾斜配置の控柱に手を掛けてこれを押したり引いたりして引戸門扉を開閉することは事実上不可能に近い。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,常に安全且つ容易に開閉でき,また車椅子利用者も単独で開閉して戸先側での出入ができるようにした引戸門扉を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に添って本発明は,引戸門扉が重量物として形成された幅広のものであることによって,例えば引戸門扉幅の数分の1以下程度の幅を戸先側に向けて片持ち状に突出するように該戸先側の台車及び控柱を非設置としても,なお幅広とされる残余の幅部分に台車及び控柱を設置すれば,引戸門扉の自立性や開閉の安定性が損われる可能性がない事実に着目し,引戸門扉の戸先側背面に台車及び控柱を非設置とすることによって該引戸門扉の背面に接近し得るステップイン乃至車椅子乗り入れ用の部分的な開放スペースを配置することによって,引戸門扉の開閉に際して垂直な引戸門扉を無理な姿勢を採ることなく開閉し得るようにしたものであって,これを,前後一対のレール上を走行する台車と,該台車上長尺の前方仕切体と,上記台車及び前方仕切体間所定間隔複数の控柱とを備えた引戸門扉であって,上記台車及び控柱を戸先部分を除く戸先側寄りの幅方向中間位置から戸袋側に向けて配置して上記前方仕切体の戸先部分を片持ち突出状に浮かし支持することによって該前方仕切体戸先部分の背面にステップイン乃至車椅子乗り入れ用の部分的開放スペースを形成してなることを特徴とする引戸門扉としたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,人の歩行乃至車椅子の走行が可能な80〜90cm程度乃至引戸門扉の自立性や開閉の安定性を損う可能性のない1m程度以下の幅を確保することによって好ましい部分的開放スペースを形成し得るように,これを,上記部分的開放スペースを,戸先側縦枠から90±10cmの幅としてなることを特徴とする請求項1に記載の引戸門扉としたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,部分的開放スペースにおける引戸門扉の開閉を更に容易になし得るものとするように,これを,上記前方仕切体の戸先側縦枠に,開閉用の引き手を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の引戸門扉としたものである。
【0009】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,戸先側背面に接近し得るステップイン乃至車椅子乗り入れ用の部分的な開放スペースを配置することによって,引戸門扉の開閉に際して垂直な引戸門扉を無理な姿勢を採ることなく開閉し得るようにして常に安全且つ容易に開閉でき,また車椅子利用者も単独で開閉して戸先側での出入ができるようにした引戸門扉を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,部分的開放スペースを,人の歩行乃至車椅子の走行が可能にして引戸門扉の自立性や開閉の安定性を損なう可能性のない好ましい幅のものとすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,部分的開放スペースにおける引戸門扉の開閉を更に容易になし得るものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,Aは引戸門扉であり,該引戸門扉Aは,前後一対のレール1上を走行する台車2と,該台車2上長尺の前方仕切体4と,上記台車2及び前方仕切体4間所定間隔複数の控柱45とを備えたものとしてあり,このとき台車2を鋼製,前方仕切体4及び控柱45をそれぞれアルミ製として,例えば公共施設や工場等における幅広の出入口に設置使用するものとしてある。
【0014】
前後一対のレール1は,例えば逆L字状鋼製にして上面のレール面を地表と略面一な水平面とするように地表に埋込設置し,台車2は前後フレーム21,23と交差クレーム24によって枠組みしてあり,該台車2の前後フレーム21,23各長手方向複数箇所にそれぞれ下向きに設置したローラー3を前後一対のレール1における各レール面に載置し,該ローラー3をカバーするように前後に対面するように設置したL字状のガイド板31を各レール,特にそのレール面の下面に引掛係合して,該前後のガイド板31が前後一対のレール1を外側から抱持するようにすることによって該レール1上を台車2のローラー3が脱輪することなく安定して走行し得るようにしてある。
【0015】
前方仕切体4は,該台車2の前方フレーム21上に,これを下枠とするように垂直仕切面をなすように起立固定してあり,例えば長尺の上枠41と,幅方向両端及び中間の複数の縦枠42と,上枠41及び前方フレーム21に上下端を固定して縦枠42間に配置した多数の縦小桟44とを備えた格子仕切体をなすものとしてあり,本例にあって該前方仕切体4は,その戸先側縦枠42,特にその前後面中間に位置に引き手43を備えたものとしてある。
【0016】
控柱45は,例えば倒へ字状に,台車2の後方フレーム23から前方仕切体4における中間の縦枠42に対して,台車2から上向きに急傾斜し上端を緩傾斜するように固定してあり,例えば台車2からの傾斜角度を70〜80度程度としてある。
【0017】
このとき上記台車2及び控柱45は,これを引戸門扉Aの戸先部分を除く戸先側寄りの幅方向中間位置から戸袋側に向けて配置して上記前方仕切体4の戸先部分を片持ち突出状に浮かし支持することによって該前方仕切体4戸先部分の背面にステップイン乃至車椅子乗り入れ用の部分的開放スペース5を形成してあり,このとき該部分的開放スペース5は,これを,戸先側縦枠42から90±10cmの幅としてある。
【0018】
即ち本例の部分的開放スペース5は,その好ましい最小の幅寸法をなすように,例えば80cm程度としてあり,このため台車2を前方仕切体4の戸先側縦枠42位置から80cm幅方向に向けて戸袋側に寄せた戸先側寄りの幅方向中間位置から前方仕切体4の残余の幅と同幅とするように戸袋側に向けて配置してあり,このとき該台車2はその前方フレーム21を前方仕切体4載置用に前方仕切体と同長としたフレーム延長部22を備えるとともに後方フレーム23をこれより短尺化して該後方フレーム23先端には最も戸先側の交差フレーム24を前方フレーム21との間に架設するように配置して台車2の端部を閉塞してあり,また最も戸先側の控柱43は,これを該台車2の交差フレーム24上に位置するように該台車2と前方仕切体4の戸先側縦枠42間に設置してある。
【0019】
またこのとき本例の上記前後一対のレール1は,引戸門扉Aを閉鎖したときに台車2に設置したローラー3の位置から戸袋側に向けて設置してあり,これによって部分的開放スペース5の下位には該レール1が存在しないようにして該部分の床面が前後に連続して平坦な面をなすようにしてある。
【0020】
以上のように形成した引戸門扉Aは,その戸先部分の先端背面に台車2及び控柱45非設置の部分的開放スペース5が形成されているから,片引きのもので戸先側に花壇や生垣,塀,フェンス等が設置されているときも,該部分的開放スペース5に人が入り込み,また車椅子を乗り入れて,上記戸先側縦枠42の引き手43に近寄って安定した姿勢で安全且つ容易に引戸門扉Aの開閉操作を行なうことができ,両引きの場合には引戸門扉A間に2倍の幅の部分的開放スペース5が形成されるから,更に容易に開閉操作をすることができる。また引戸門扉Aの戸先側には上記幅の部分的開放スペース5幅分の片持ち突出状の浮かし支持部分が形成されるが,引戸門扉Aがそれ自体重量物として幅広のものとされるから該浮かし支持部分によって引戸門扉Aの自立性や開閉の安定性が損われることもない。更に本例にあっては上記のように部分的開放スペース5部分にはレール1が存在しないことによって引戸門扉Aをその戸先で開けて出入するときに人がレール1に躓く可能性や,レール1が車椅子の通行障害となる可能性を解消することができる。
【0021】
図示した例は以上のとおりとしたが,前後一対のレール,引戸門扉,その台車,前方仕切体,控柱,部分的開放スペースの各具体的形状,構造,材質,幅寸法,これらの関係,これらに対する付加等は上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】引戸門扉の正面図である。
【図2】引戸門扉の縦断面図である。
【図3】引戸門扉の平面図である。
【図4】引戸門扉の台車部分の底面図である。
【符号の説明】
【0023】
A 引戸門扉
1 レール
2 台車
3 ローラー
4 前方仕切体
5 部分的開放スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一対のレール上を走行する台車と,該台車上長尺の前方仕切体と,上記台車及び前方仕切体間所定間隔複数の控柱とを備えた引戸門扉であって,上記台車及び控柱を戸先部分を除く戸先側寄りの幅方向中間位置から戸袋側に向けて配置して上記前方仕切体の戸先部分を片持ち突出状に浮かし支持することによって該前方仕切体戸先部分の背面にステップイン乃至車椅子乗り入れ用の部分的開放スペースを形成してなることを特徴とする引戸門扉。
【請求項2】
上記部分的開放スペースを,戸先側縦枠から90±10cmの幅としてなることを特徴とする請求項1に記載の引戸門扉。
【請求項3】
上記前方仕切体の戸先側縦枠に,開閉用の引き手を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の引戸門扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−112178(P2006−112178A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302797(P2004−302797)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000222130)東洋エクステリア株式会社 (102)
【Fターム(参考)】