説明

弱毒マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasmagallisepticum)株

本発明は、MGA_0621として特定されるタンパク質の発現の低減を示す弱毒マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)生菌を提供する。特定の実施形態では、この弱毒細菌は、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較して低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質の発現をさらに示しうる。弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌の使用を伴うワクチンおよびワクチン接種方法、ならびに弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌を作製する方法も提供する。有意に低減しているMGA_0621の発現を示すことがプロテオミクス分析によって示され、かつM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)感染に対するワクチンとして投与された場合に安全かつ有効であることがニワトリで示された、MGx+47と命名されているM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)の例示的な弱毒生菌株を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物学および免疫学の分野に関する。より詳細には、本発明は、細菌病原体に対する新規ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
マイコプラズマは、モリクテス網に属する小さな原核生物(0.2〜0.3μm)である。モリクテス網のメンバーは、細胞壁をもたず、小さなゲノムサイズを有する。モリクテスには、少なくとも100種のマイコプラズマが含まれる。マイコプラズマ諸種は、ヒトおよび非ヒト動物ならびに植物におけるいくつかの疾患の原因病原体である。M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)は、例えば、家禽におけるかなりの疾患状態の原因となっている。M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)は、ニワトリおよびシチメンチョウにおける急性呼吸疾患に関連しており、狩猟鳥における上気道疾患も引き起こしうる。加えて、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)は、北米のメキシコマシコにおける結膜炎の原因として認識されている。
【0003】
M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)感染によって引き起こされる疾患を予防および管理するための効果的な戦略は、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌の弱毒生菌株を用いたワクチン接種によるものである。弱毒生ワクチンの利点には、通常、その天然な形態にある感染病原体の重要な免疫原性決定基の全てを宿主の免疫系に提示すること、およびワクチン接種された宿主内におけるこの免疫剤の増殖能により、必要な免疫剤が比較的少量であることが含まれる。
【0004】
弱毒生ワクチン株は、毒性株を培地中で複数回連続継代することによってしばしば作り出される。M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)に対する弱毒生ワクチン株は連続継代によって得られているが、そのような株は通常、分子レベルでは十分に特徴付けられていない。連続継代によって作られた弱毒株は、その微生物を、より毒性が低いが、依然として複製が可能なものにする変異を蓄積していると考えられている。しかし、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株に関しては、弱毒化をもたらす変異の結果(例えば、弱毒株でその発現パターンが改変されているタンパク質のアイデンティティー)は、通常、未知である。
【0005】
したがって、プロテオミクスレベルで特徴付けられており、かつワクチン製剤中で安全かつ有効である新規な弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌の必要性が当技術分野に存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は部分的に、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)感染に対するワクチンとしてトリで使用される場合、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの発現の低減を示すM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌が安全性および有効性の両方を有するという驚くべき発見に基づいている。配列番号1のポリペプチドは「MGA_0621」とも呼ばれ、NCBI受託番号NP_852784を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)と比較して低減しているMGA_0621の発現を示す弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌を対象とする。特定の非限定、例示的実施形態では、本発明は、MGA_0621の発現の低減を示し、かつ野生型M.(M.gallisepticum)と比較して低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質の発現をさらに示す弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌株を提供する。本発明の特定の実施形態によれば、本発明の弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌は、前述のタンパク質のうち1つまたは複数の発現が低減しているものとしてプロテオミクス分析で特徴付けられる。本発明の例示的一実施形態によれば、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌株は、野生型のM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較して低減しているMGA_0621、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35の発現を示す株であり、この株は、2007年6月19日にアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)、私書箱1549、Manassas、VA20108に寄託され、受託番号PTA−8485が割り当てられている。この株は、本明細書で、代替的に「M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株MGx+47」または「MG−P48」とも呼ばれる。
【0008】
本発明は、本発明の弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌を含むワクチン組成物と、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)感染に対して動物にワクチン接種する方法とを提供する。
【0009】
加えて、本発明は、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)クローンを作製および/または同定する方法を提供する。本発明のこの態様によれば、この方法は、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌の初期集団を弱毒化条件に供するステップと、MGA_0621の発現の野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)と比較した低減について個々のクローンをアッセイするステップと、病原性についてこのクローンを試験するステップとを含む。本発明のこの態様の方法によって産生されたM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)クローンは、MGA_0621の発現の低減を示し、かつ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35からなる群から選択される1つまたは複数の追加タンパク質の発現の低減を示していてもよい。前述のタンパク質のうち少なくとも1つの、発現の低減を示す株は、野生型のM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較して低減している病原性も示すことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株MGx+47のタンパク質スポットを示す二次元(2−D)ポリアクリルアミドゲルの写真である。19、49、74、108、114、127、147、166、175および225と付番された丸で囲まれているスポットは、野生型株R−980と比較してMGx+47で上方制御されているタンパク質に相当する。40、68、98、99、130、136および217と付番された丸で囲まれているスポットは、野生型株R−980と比較してMGx+47で下方制御されているタンパク質に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ワクチン製剤中で使用するのに適した弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌を対象とする。本発明のM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌は、MGA_0621と呼ばれるタンパク質の発現の低減を示す。特定の実施形態では、本発明のM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌は、同種の野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌におけるそれらのタンパク質の発現と比較して低減している、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35からなる群から選択される1つまたは複数の追加タンパク質の発現をさらに示す。
【0012】
MGA_0621は、NCBI受託番号NP_852784下で特定され、以下の162アミノ酸配列、すなわち、
MTRTMKNKKAKKKERRFTDLSADLDEEVEKIDPEYEDFKEIKIEKNKDNQVIDKNDPFFYSESFEEARIQLIKDKKVEVKKEEEKVQETTVKNKISEAKKEEAKDVYIDSSLEIASQEPLTKGMHFYTNSRIIRKVRECAKNKGLSISRLITMILDKSIKEE(配列番号1)
を有する。
【0013】
マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)タンパク質の発現の低減
当業者ならば、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌が、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌細胞で通常発現されている1つまたは複数のタンパク質の発現の低減を示すかどうかについて、通常の分子生物学的技法を用いて決定できるであろう。弱毒細菌が、野生型細菌と比較して低減している特定のタンパク質(例えば、MGA_0621、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ、リボソームタンパク質L35など)の発現を示すかどうかの決定は、当技術分野で知られているいくつかの方法によって実現できる。例示的な方法には、例えば、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの抗体ベースの定量的方法が含まれ、これらでは、対象とするタンパク質を検出し、かつそれに結合する抗体が使用される。加えて、メッセンジャーRNA(mRNA)レベルは概ね、それにコードされているタンパク質の量を反映しているので、核酸ベースの定量的方法も、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌が、1つまたは複数のタンパク質の発現の低減を示すかどうか決定するのに使用できる。例えば、定量的な逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)方法を用いて、対象とする特定のタンパク質に対応するmRNAの量を測定することができる。多数の核酸ベースの定量的方法が当技術分野でよく知られている。
【0014】
以下は、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌が、タンパク質、例えば、MGA_0621の発現の低減を示すかどうか決定するのに使用できる限定的でない例示的方法である。
【0015】
最初に、実質的に同じ培養培地中で、実質的に同じ条件下で、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細胞の集団および野生型のM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細胞の集団を培養する。次に、これら2つの集団の細胞を細胞破壊条件に供する。破壊された細胞(またはそのタンパク質含有画分)を、平行して、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけ、次に、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)MGA_0621タンパク質に結合する抗体(そのような抗体は当技術分野でよく知られている標準法を用いて取得できる)を使用するウエスタンブロッティングにかける。その後、それらの細胞に由来するタンパク質の量に比例する測定可能シグナルをもたらすために、標識された二次抗体を添加する。弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株が示すシグナルの量が、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株が示すシグナルの量より少ない場合、この弱毒株は、野生型株と比較して低減しているMGA_0621の発現を示していると結論できる。この例示的方法に関する変形、ならびにその代替法は、当業者には直ちに明らかであろう。
【0016】
本発明は、タンパク質(例えば、MGA_0621、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ、リボソームタンパク質L35など)の発現において、野生型株で観察される、そのタンパク質の発現と比較して、任意の度合いの低減を示す弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌を含む。特定の実施形態では、弱毒細菌は、野生型細菌と比較して少なくとも約5%少ないタンパク質の発現を示す。一例として、所与の量の野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株が特定のタンパク質100単位の発現を示し、同じ量の候補弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株がこのタンパク質95単位の発現を示す場合、この弱毒株は野生型細菌と比較して5%少ないこのタンパク質の発現を示すと結論される(「パーセント少ない発現」の計算についての追加例は本明細書中の他の箇所で詳述されている)。特定の他の実施形態では、弱毒細菌は、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較して少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%少ないこのタンパク質の発現を示す。さらに他の実施形態では、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株は、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較して、このタンパク質の発現を全く示さない(すなわち、100%少ない発現)。
【0017】
本発明の特定の例示的実施形態では、弱毒細菌は、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較して、少なくとも5%少ないMGA_0621の発現を示し、少なくとも5%少ないピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質の発現を示してもよい。
【0018】
本明細書で使用される場合、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株が示す、特定のタンパク質の、野生型株と比較して「パーセント少ない発現」は、以下の式、すなわち、(A−B)/A×100によって計算され、式中、A=野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株におけるそのタンパク質の相対発現レベルであり、B=弱毒株におけるそのタンパク質の相対発現レベルである。例示を唯一の目的として、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株が0.2500単位のタンパク質「Y」の発現を示し、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)の弱毒株が0.1850単位のタンパク質「Y」の発現を示した場合、その弱毒株は、野生型株と比較して、[(0.2500−0.1850)/0.2500×100]=26%低減しているタンパク質「Y」の発現を示すと言われる。本明細書における実施例3の表5は、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)の例示的弱毒株について計算された、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株と比較してパーセント少ない発現をさらに例示する例を提供する。
【0019】
ワクチン組成物
本発明は、本発明の弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌と、薬学的に許容できる担体とを含むワクチン組成物も含む。本明細書で使用される場合、「本発明の弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌」という表現は、本明細書中の他の箇所で記載および/または特許請求されているいかなる弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌も包含する。薬学的に許容できる担体は、例えば、水、安定化剤、保存剤、培養培地または緩衝剤でありうる。本発明の弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌を含むワクチン製剤は、懸濁液の形態もしくは凍結乾燥された形態、または代替として凍結された形態で調製できる。凍結される場合、凍結された際の安定性を増強させるために、グリセロールまたは他の同様な薬剤を添加することができる。
【0020】
動物にワクチン接種する方法
本発明は、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)感染に対して動物にワクチン接種する方法も含む。本発明のこの態様による方法は、本発明の弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌を含む免疫学的に有効な量のワクチン組成物を動物に投与するステップを含む。本明細書で使用される場合、「本発明の弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌」という表現は、本明細書中の他の箇所で記載および/または特許請求されているいかなる弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌も包含する。「免疫学的に有効な量」という表現は、ワクチン接種の際に、動物体内で、保護的なレベルの抗体の産生を引き起こすのに必要なワクチン組成物の量を意味する。ワクチン組成物は、経口、鼻腔内、粘膜、局所的、経皮および非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下または筋肉内)経路を含めた、当技術分野で知られている任意な方法で動物に投与できる。投与は、無針送達装置を用いても実現できる。投与は、複数の経路を併用して、例えば、最初の投与は全身経路を用い、それに続く投与は、粘膜経路を用いるなどして実現できる。
【0021】
弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株が投与される動物は、トリ、例えば、ニワトリまたはシチメンチョウであることが好ましい。この動物がトリである場合、製剤が直ちにまたは最終的にトリの呼吸器粘膜と接触するに至るように、本発明のワクチン製剤を投与できる。したがって、このワクチン製剤をトリに、例えば、鼻腔内、経口および/または眼内投与できる。トリ投与用のワクチン組成物は、上述の通り、かつ/またはエアロゾル(鼻腔内投与用)もしくは飲水中(経口投与用)を含めたスプレーによる投与に適した形態で処方できる。
【0022】
スプレーまたはエアロゾルによって投与される本発明のワクチン組成物は、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌を小さな液体粒子中に組み込むことによって処方できる。これらの粒子は、約10μm〜約100μmの初期液滴サイズを有しうる。そのような粒子は、例えば、ナップザックスプレー、孵化場スプレー(hatchery spray)、霧吹きスプレー(atomist spray)用の市販のスプレー発生器を含めた従来のスプレー装置およびエアロゾル発生器によって生成できる。
【0023】
弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)クローンを作製する方法
本発明の別の態様では、本発明は、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)クローンを同定および/または作製する方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌の初期集団を弱毒化条件に供し、それによって、推定弱毒細菌集団を産生するステップを含む。次に、MGA_0621の発現の野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較した低減について、推定弱毒細菌集団の個々のクローンをアッセイする。MGA_0621の発現が低減しているものとして同定されたクローンは、その後、病原性について試験される。野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較して、MGA_0621の発現の低減、および病原性の低減の両方を示すクローンが、弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)クローンとして同定される。
【0024】
本発明のこの態様によれば、「M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌の初期集団」は、任意な量のM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌でありうる。この細菌は、特定の実施形態では、野生型細菌である。代替として、この細菌は、1つまたは複数の変異を含有しうる。しかし、この初期集団内の細菌は、クローン的に同じであるか、または実質的にクローン的に同じであることが好ましい。すなわち、この細菌は全て、単一の親M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌細胞に由来し、かつ/または同じか、もしくは実質的に同じ遺伝子型および/または表現型特性を有することが好ましい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「弱毒化条件」という用語は、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌のゲノムに、1つまたは複数の遺伝的変化(例えば、ヌクレオチド変異)を導入する可能性を有する任意の条件または複数の条件の組合せを意味する。例示的な非限定的弱毒化条件には、例えば、培養中で細菌を継代すること、トランスポゾンなどのゲノム挿入可能な遺伝エレメント(例えばM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)ゲノムにランダムに挿入するトランスポゾン)で細菌を形質転換すること、細菌を1つまたは複数の変異原(例えば、化学変異原または紫外線)に供することなどが含まれる。in vitroで継代することによって細菌細胞が弱毒化される場合、この細胞は任意な回数、例えば、in vitroで1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40回、またはそれを超える回数継代しうる。
【0026】
M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細胞の初期集団は、弱毒化条件に供された後、本明細書では、推定弱毒細菌集団と呼ばれる。推定弱毒細菌集団の個々のクローンは、例えば、細胞を連続希釈し、個々の細胞を適切な培地上にプレーティングすることを含めた標準的な微生物学技法によって取得できる。ひとたび得られれば、MGA_0621および/または1つもしくは複数の追加の特定タンパク質の発現の低減について、推定弱毒細菌集団の個々のクローンをアッセイする。弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌が、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌細胞で通常発現されている1つまたは複数のタンパク質の発現の低減を示すかどうかを決定する方法は、本明細書の他の箇所で記載されている。例示的方法には、例えば、RT−PCRベースの方法およびウエスタンブロットなどが含まれる。
【0027】
MGA_0621の発現が低減しているものとして同定された個々のクローンは、その細菌の野生型(非弱毒)バージョンによる感染に感受性である動物にこのクローンを投与することによって病原性について試験できる。本明細書で使用される場合、「野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌による感染に感受性である動物」は、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌に曝露した後に、少なくとも1つの臨床症状を示す動物である。そのような症状は、当業者に知られている。例えば、例えばMGA_0621の発現の低減を示す推定弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株の場合、この株を、例えば、シチメンチョウまたはニワトリ(これらは通常、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)による感染に感受性である)に投与できる。家禽動物のM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)感染の臨床症状には、例えば、急性呼吸症状、心膜炎、肝周囲炎、気嚢炎、気管肥厚、体重増加の低減、繊毛消失、異常杯細胞、毛細血管膨満、リンパ球、形質細胞および/または偽好酸球の数の増加、ならびに一部の場合、卵産生の低減が含まれる。したがって、推定弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株が、ニワトリまたはシチメンチョウに投与された場合に、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株に感染しているシチメンチョウまたはニワトリと比較してより少ないかつ/またはより軽度な症状をもたらすならば、推定弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株は「低減している病原性」を有すると考えられる。症状の任意の程度の低減から、病原性が低減しているものとして推定弱毒株が同定される。特定の実施形態では、推定弱毒株は無毒となる。
【0028】
本発明によれば、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)細菌と比較して、MGA_0621(および/または1つまたは複数の追加の特定タンパク質)の発現の低減を示し、かつ低減している病原性を示すM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)クローンは弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)クローンである。(低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35の発現と共に)低減しているMGA_0621の発現を示す、本発明の例示的弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌クローンは、MGx+47と命名された株である。MGx+47は、2007年6月19日にアメリカ培養細胞系統保存機関、私書箱1549、Manassas,VA 20108に寄託され、受託番号PTA−8485が割り当てられた。
【0029】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の例示であり、限定ではない。通常、分子生物学および化学で見出される、本開示に鑑みて当業者には明らかである、様々な条件およびパラメーターの他の適した改変および適応も本発明の趣旨および範囲に包含される。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生菌株の産出
野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株R980をin vitroで複数回継代することによって、新規弱毒マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)生菌株を産出した。詳細には、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株R−980の種材料0.1mLを、20mLの改変フレイ(Frey)培地(Freyら、Am.J.Vet.Res.29、2163〜2171頁(1968))(本明細書では「MG培養培地」とも呼ばれる)に接種した。これらの野生型細胞を、培地の色が明黄色に変化するまで培養した。続いて、これらの明黄色の培養物を用いて、上述の通りに新たなMG培養培地に再接種した。このようにして、培養物を合計47回継代した。この結果得られた株を、トリの群にワクチン接種し、続いて野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)に曝露することによって、弱毒化について試験した。曝露の2週間後にこのトリ全てを剖検し、マイコプラズマ関連の病態を観察した。高継代数の株(x+47)は、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)感染に関連する臨床症状に対する防御をもたらした。MGx+47と命名されたこの弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株は、2007年6月19日にアメリカ培養細胞系統保存機関、私書箱1549、Manassas,VA 20108に寄託され、受託番号PTA−8485が割り当てられた。
【0031】
(実施例2)
ニワトリにおける弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生ワクチンの安全性および有効性の評価
この実施例では、実施例1で得られた新規なM.ガリセプティクム(M.gallisepticum)ワクチン株MGx+47の安全性および有効性をニワトリで評価した。
【0032】
71羽のSPF白色レグホンニワトリを下記の7つの群に分けた。
【0033】
【表1】

【0034】
群2、3、4a、4bおよび4cのニワトリに、4週齢で粗いスプレーによって投与された、トリ1羽あたり3.62×10CCU/mLの弱毒株MGx+47でワクチン接種した。7週齢で、群1および3のニワトリに、7.74×10CCU/mLのマイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)株R 0.5mLで気管内(IT)曝露した。群1、2、3および5のニワトリの剖検を9週齢で行い、群4a、4bおよび4cのニワトリの剖検を、それぞれワクチン接種の7、14および21日後(DPV)に行った。平均体重増加、心膜炎、肝周囲炎、気嚢炎および気管炎について、ニワトリを評価した。結果の概要を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
安全性表および有効性表の符号(表3および4):
・「ワクチン接種有り」のトリは全て、粗いスプレーによって、1羽あたり3.62×10CCU/mLのワクチン株MGx+47でワクチン接種された。
・「曝露有り」のトリは全て、7.74×10CCU/mLのマイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)株R0.5mLで気管内(IT)曝露された。
・検査日(表3:安全性表中)=ワクチン接種の#日後(DPV)で表された、ニワトリが検査されたときにおける、ワクチン接種後の日数
・繊毛:「N」=正常繊毛;「−」=繊毛消失
・杯細胞/M(「−」=正常な杯細胞;「+」=気管表面に粘液がある)
・毛細血管膨満(「−」=膨満も炎症もない;「+」=中等度の毛細血管膨満または炎症;「++」=重度の毛細血管膨満または炎症)
・LC/PC=リンパ球および形質細胞(「−」=無し;「+」=少数;「++++」=多数)
・PMN=偽好酸球(「−」=無し;「+」=少数;「++++」=多数)
【0039】
群2のニワトリ(ワクチン接種有り、曝露無し)の組織学的分析は、群5のニワトリ(ワクチン接種無し、曝露無し)のものと実質的に同様であった(例えば、上記表2を参照)。これは、新たに産出されたMGx+47ワクチン株の安全性を実証している。
【0040】
有効性に関しては、群3のニワトリ(ワクチン接種有り、曝露有り)は、群1のニワトリ(ワクチン接種無し、曝露有り)と比較して、有意に低減している気嚢炎を示した(例えば、表2および4を参照)。加えて、表4に例示されるように、群3のニワトリは、繊毛、杯細胞、毛細血管膨満、リンパ球および形質細胞(LC/PC)、偽好酸球(PMN)および気管の厚さに関して、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)感染の、より少ない組織学的徴候を示した(表4参照)。
【0041】
したがって、この実施例は、MGx+47が安全かつ有効な弱毒M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)生ワクチン株であることを実証する。
【0042】
(実施例3)
MGx+47ワクチン株のプロテオミクス特性分析
MGx+47ワクチン株(実施例1および2を参照)を分子レベルで、より正確に特定する目的で、この株のプロテオミクス分析に着手した。
【0043】
この実施例では、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)株R−980および新規に同定されたワクチン株MGx+47から、総タンパク質を単離した。各株からのタンパク質を二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、それに続いて、ゲル画像のコンピューター分析を行った(図1参照)。ワクチン株で示差的に発現されたタンパク質のスポットを同定した。野生型株と比較して、ワクチン株で無くなっているか、または有意に低減しているレベルで発現されているタンパク質のスポットをゲルから切り出した。
【0044】
MGx+47ワクチン株において、野生型M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)と比較して有意に低レベルで発現されている5つのスポットを同定した。これらのタンパク質スポットをそれぞれゲルから切り出して、酵素的に消化し、それに続いて、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間質量分析(MALDI−TOF MS)を用いたペプチド質量フィンガープリンティングを行った。各タンパク質スポットについて同定された質量分析スペクトルをペプチド質量データベースと比較して、上記タンパク質と、それらをコードする対応遺伝子とを同定した。この分析の結果の概要を以下の表に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
これらの遺伝子産物の発現の低減は、「発現低減の倍率」で表すこともできる。例えば、表5では、株MGx+47は、野生型MGと比較して、それぞれ2.2、3.9、1.7、4.5および5.4倍低減しているacoA、eno、deoC、rpmlおよびMGA_0621の発現を示していると言うことができる。
【0047】
表5に示したように、弱毒MGx+47ワクチン生菌株で、野生型R−980株と比較して発現が有意に低減している5つの遺伝子産物、すなわち、AcoA、Eno、DeoC、RmplおよびMGA_0621(NCBI受託番号NP_852784として特定される仮想タンパク質)を同定した。発現の、最も大きな低減は、MGA_0621で観察された。したがって、MGA_0621発現の低減を引き起こす変異または増殖条件の結果として、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)の弱毒化が起きている可能性が高い。したがって、MGA_0621の下方制御が、M.ガリセプティクム(M.gallisepticum)の弱毒化株を産生するための効果的な戦略であるように考えられる。
【0048】
明快な理解を目的として、図示および例示を用いて上記の発明を一部詳細に説明したが、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されず、添付されている特許請求の範囲によって定義されている本発明の趣旨および範囲に包含されるあらゆる変更および修正も包含するものとする。
【0049】
本明細書で言及した全ての出版物および特許は、本発明が属する当業者の技術レベルを示すものである。全ての出版物および特許を、個々の出版物または特許出願を具体的かつ個別的に参照により組み込むと示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込む。
【受託番号】
【0050】
ATCC PTA−8485

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減している、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質の発現を示す弱毒マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)生菌。
【請求項2】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも25%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも50%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項2に記載の細菌。
【請求項4】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも75%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項3に記載の細菌。
【請求項5】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼの発現をさらに示す、請求項1に記載の細菌。
【請求項6】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているホスホピルビン酸ヒドラターゼの発現をさらに示す、請求項1に記載の細菌。
【請求項7】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減している2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼの発現をさらに示す、請求項1に記載の細菌。
【請求項8】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているリボソームタンパク質L35の発現をさらに示す、請求項1に記載の細菌。
【請求項9】
野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35の発現をさらに示す、請求項1に記載の細菌。
【請求項10】
(a)野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減している、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質の発現を示す弱毒マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)生菌と、
(b)薬学的に許容できる担体と
を含むワクチン組成物。
【請求項11】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも25%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも50%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項11に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも75%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼの発現をさらに示す、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているホスホピルビン酸ヒドラターゼの発現をさらに示す、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減している2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼの発現をさらに示す、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているリボソームタンパク質L35の発現をさらに示す、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35の発現をさらに示す、請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)感染に対して動物にワクチン接種する方法であって、免疫学的に有効な量のワクチン組成物を動物に投与するステップを含み、前記ワクチン組成物が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減している、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質の発現を有する弱毒マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)生菌を含む方法。
【請求項20】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも25%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも50%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して少なくとも75%少ない前記タンパク質の発現を示す、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼの発現をさらに示す、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているホスホピルビン酸ヒドラターゼの発現をさらに示す、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減している2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼの発現をさらに示す、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているリボソームタンパク質L35の発現をさらに示す、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記細菌が、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して低減しているピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよびリボソームタンパク質L35の発現をさらに示す、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
弱毒マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)クローンを同定する方法であって、
(a)マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)細菌の初期集団を弱毒化条件に供し、それによって、推定弱毒細菌集団を産生するステップと、
(b)野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較した、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質の発現の低減について、前記推定弱毒細菌集団の個々のクローンをアッセイするステップと、
(c)前記タンパク質の発現が低減しているものとして(b)で同定されたクローンを、病原性について試験するステップと
を含み、野生型マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)と比較して、前記タンパク質の発現の低減、および病原性の低減を示すマイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)クローンが、弱毒マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)クローンである方法。
【請求項29】
(a)の前記弱毒化条件が、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)細菌の前記初期集団を少なくとも2回in vitroで継代することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a)の前記弱毒化条件が、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)細菌の前記初期集団を少なくとも5回in vitroで継代することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(a)の前記弱毒化条件が、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)細菌の前記初期集団を少なくとも10回in vitroで継代することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(a)の前記弱毒化条件が、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)ゲノムにランダムに挿入するトランスポゾンで、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)の前記初期集団を形質転換することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
(a)の前記弱毒化条件が、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)の前記初期集団を化学変異原または紫外線に供することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記推定弱毒細菌集団の前記個々のクローンを、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって、前記タンパク質の発現の低減について(b)でアッセイする、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記推定弱毒細菌集団の前記個々のクローンを、ウエスタンブロットによって、前記タンパク質の発現の低減について(b)でアッセイする、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)感染に感受性である動物に前記クローンのうち1つまたは複数を投与し、前記1つまたは複数のクローンが投与された後に前記動物で観察された臨床症状を、前記クローンが投与されていない対照動物の臨床症状と比較することによって、(b)で同定された前記クローンを病原性について(c)で試験する、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
受託番号PTA−8485の下でATCCに寄託されている弱毒化マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)生菌。
【請求項38】
直接注射、スプレー投与または飲水投与によって前記ワクチン組成物を前記動物に投与する、請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−538646(P2010−538646A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524865(P2010−524865)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/010630
【国際公開番号】WO2009/035644
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】