説明

張力付与装置、それを備える繊維機械及び張力付与部品

【課題】糸に対し張力を安定して付与でき、糸ブレ等を防止できる張力付与装置を提供する。
【解決手段】ディスクテンサは、第1ディスク71と、第2ディスク72と、ソレノイド及び押圧バネと、を備える。第2ディスク72は、糸20の走行経路を挟んで第1ディスク71と反対側に配置される。ソレノイド及び押圧バネは、第2ディスク72を第1ディスク71側に押圧できるように構成されている。第1ディスク71は、走行する糸20に接触可能な第1作用面41を備える。第1作用面41には、複数の第1線状突起47が形成されている。第2ディスク72は、走行する糸20に接触可能な第2作用面42を備える。第2作用面42には、複数の第2線状突起48が形成されている。第1線状突起47及び第2線状突起48は、それぞれ環状に形成され、中心を互いに一致させて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、走行する糸に所定の張力を付与するための張力付与装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダ等で給糸ボビンから解舒される糸を巻き取ってパッケージを形成する場合、糸には解舒テンションや巻取テンション等が生じる。これらのテンションに大きな変動が生じると、糸切れが発生することがあり、また、形成されるパッケージの品質低下の原因となることがある。そこで、自動ワインダでは前記解舒テンションの変化を抑制するために従来から張力付与装置(テンサ)が採用されており、その代表的なものとしてゲートテンサやディスクテンサが知られている。
【0003】
ゲートテンサは、固定テンション部材と可動テンション部材とを噛み合わせるように配置し、その間に糸をジグザグ状に通過させることで糸に張力を付与するものである。しかしながらゲートテンサは、テンション部材の一箇所に糸が常に接触する構成となっており、部品の摩耗が激しい。そのため、テンション部材の素材としてセラミック等の硬度が高いものを使用した構成のゲートテンサ等が提案されている。
【0004】
ディスクテンサは、2つのディスクの間に糸を通過させつつ、一方のディスクを相手側のディスクに対し押し付けることで糸に張力を付与するものである。この種のディスクテンサは、例えば特許文献1及び2に開示されている。
【0005】
特許文献1は、走行する糸を固定ディスクと作動ディスクで挟持して糸に一定の摩擦力を及ぼす構成のテンサを開示する。特許文献1において、固定ディスクはモータの回転軸に支持されており、回転可能である。一方、作動ディスクは固定ディスクと同一中心軸を有しており、支軸の回りに旋回可能なアームの先端に支持されている。アームにはスプリングが設けられており、これによりアームを付勢して作動ディスクを固定ディスクに圧接させる。
【特許文献1】実開平5−14602号公報
【0006】
特許文献2は、空圧式のディスクテンサを開示する。特許文献2のディスクテンサは、アンダディスクを空圧シリンダでテンションディスクに圧接し、これらのディスク間を走行する糸にテンションを付与するように構成されている。
【特許文献2】特開平11−268869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1及び2に開示されるディスクテンサは、走行する糸に摩擦力を付与する構成であるために、糸に付与する張力の大きさを調整することが難しかった。従って、例えば糸が給糸ボビンから解舒されるときの微小な糸の弛みを吸収することができず、巻取中に糸ブレ等が発生する原因となっていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、糸に対し張力を安定して付与でき、糸ブレ等を防止できる張力付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、糸を挟み込んで屈曲走行するようにした一対の張力付与部材を有し、各張力付与部材を糸との接触位置を変更するように積極移動させる張力付与装置が提供される。
【0011】
これにより、一対の張力付与部材の間で糸を屈曲させて挟み込み、これにより糸に張力を付与することができる。また、それぞれの張力付与部材が積極移動することで、汚れの蓄積や摩耗の進行を効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の第2の観点によれば、糸道を挟んで対向する平面に、凹凸部が形成された一対の張力付与部材を有し、この凹凸間で糸を蛇行搬送させ、糸に張力を加える張力付与装置が提供される。
【0013】
これにより、凹凸部が形成された一対の張力付与部材の間で糸をジグザグに蛇行させながら搬送させることで、糸に張力を安定して付与することができる。
【0014】
本発明の第3の観点によれば、走行する糸に摩擦力によって張力を付与する張力付与装置において以下の構成が提供される。即ち、この張力付与装置は、凹部及び凸部をそれぞれ同心円状に配置した張力付与部材を少なくとも一対備える。前記一対の張力付与部材は少なくとも一部の凹凸が嵌まり合う。
【0015】
これにより、一対の張力付与部材の凹部及び凸部によって糸を屈曲させて糸に張力を付与できるとともに、凹凸が嵌まり合う部分において糸を挟み込んで張力を付与することもできる。
【0016】
前記の張力付与装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記一対の張力付与部材は一方が張力を付与するために他方に付勢されている。前記一方はアルミニウムを主成分とする素材で構成されている。
【0017】
これにより、一方の張力付与部材の付勢により糸の張力変化に対する補償作用を実現できるので、安定した張力を糸に対して付与でき、糸ブレ等を防止できる。また、付勢力を、凹凸が嵌まり合う部分において糸を挟み込む力として利用することもできる。更に、張力付与部材の耐摩耗性を向上させるとともに、軽量化により円滑な移動を実現することができる。
【0018】
本発明の第4の観点によれば、以下の構成の張力付与装置が提供される。即ち、この張力付与装置は、ディスク状の第1作用部材と、ディスク状の第2作用部材と、押圧部と、を備える。前記ディスク状の第2作用部材は、糸の走行経路を挟んで前記第1作用部材と反対側に配置される。前記押圧部は、前記第1作用部材及び第2作用部材のうち少なくとも何れか一方を他方に押圧することが可能である。前記第1作用部材は、走行する糸に接触可能な第1作用面を備える。前記第1作用面には、複数の第1線状突起が形成されている。前記第2作用部材は、走行する糸に接触可能な第2作用面を備える。前記第2作用面には、複数の第2線状突起が形成されている。前記第1線状突起及び前記第2線状突起はそれぞれ環状に形成され、中心を互いに一致させて配置されている。
【0019】
これにより、それぞれが環状の線状突起を有する2つの作用部材を備え、少なくとも一方を他方に押圧部で押圧する簡素な構成で、糸に張力を付与することができる。
【0020】
前記の張力付与装置においては、前記第1作用部材及び第2作用部材を回転させることが可能なことが好ましい。
【0021】
これにより、第1線状突起及び第2線状突起が糸に対して接触する部位を変更させながら、当該糸に張力を付与することができる。従って、汚れの蓄積や摩耗の進行を効果的に抑制することができる。
【0022】
前記の張力付与装置においては、前記第1作用部材及び第2作用部材を同期して回転させることが可能な駆動部を備えることが好ましい。
【0023】
これにより、第1作用面と第2作用面との位置関係を一定に保ちながら張力を付与することができるので、糸の張力を一層安定化することができる。
【0024】
前記の張力付与装置においては、前記押圧部はソレノイドであることが好ましい。
【0025】
これにより、糸に付与する張力の調整をより正確に行うことができる。
【0026】
本発明の第5の観点によれば、以下の構成の張力付与装置が提供される。即ち、この張力付与装置は、第1作用部材と、第2作用部材と、押圧部と、を備える。前記第2作用部材は、糸の走行経路を挟んで前記第1作用部材と反対側に配置される。前記押圧部は、前記第1作用部材及び第2作用部材のうち少なくとも何れか一方を他方に押圧することが可能である。前記第1作用部材は、走行する糸に接触可能な第1作用面を備える。糸の走行経路を含む平面で前記第1作用面を切断した輪郭は、前記第2作用部材に向かって突出する複数の第1凸部と、互いに隣り合う前記第1凸部の間で相対的に凹んでいる第1凹部と、を有する。前記第2作用部材は、走行する糸に接触可能な第2作用面を備える。糸の走行経路を含む平面で前記第2作用面を切断した輪郭は、前記第1作用部材に向かって突出する第2凸部と、前記第2凸部の周囲で相対的に凹んでいる第2凹部と、を有する。前記第1凸部と、前記第2凹部が対面するように配置される。前記第2凸部と、前記第1凹部が対面するように配置される。前記張力付与装置は、第1の張力付与形態と、第2の張力付与形態と、により糸に付与する張力を調整する。前記第1の張力付与形態では、前記凹部とそれに対面する前記凸部が少なくとも一部で前記糸を挟み込んだ状態で走行させる。前記第2の張力付与形態では、前記凹部とそれに対面する前記凸部が離間した状態で、前記糸を前記第1作用面と前記第2作用面の間で屈曲させながら走行させる。
【0027】
これにより、第1の張力付与形態では、糸を凹部と凸部との間で挟み込むことで糸に張力を付与することができる。また、第2の張力付与形態では、第1作用部材と第2作用部材との間で糸をジグザグに屈曲させ、これにより糸に張力を付与できるとともに、糸の張力変化に対する補償作用を実現することができる。
【0028】
本発明の第6の観点によれば、前記の張力付与装置を備える繊維機械が提供される。
【0029】
これにより、糸に安定した張力を付与することで製品の品質を向上でき、メンテナンス性に優れた繊維機械を提供することができる。
【0030】
本発明の第7の観点によれば、以下の構成の張力付与部品が提供される。即ち、この張力付与部品は、ディスク状の第1作用部材と、ディスク状の第2作用部材と、を備える。前記ディスク状の第2作用部材は、糸の走行経路を挟んで前記第1作用部材と反対側に配置される。前記第1作用部材は、走行する糸に接触可能な第1作用面を備える。前記第1作用面には、複数の第1線状突起が形成されている。前記第2作用部材は、走行する糸に接触可能な第2作用面を備える。前記第2作用面には、複数の第2線状突起が形成されている。前記第1線状突起及び前記第2線状突起はそれぞれ環状に形成されている。
【0031】
これにより、それぞれが環状の線状突起を有する2つの作用部材からなる簡素な構成で、糸に張力を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は自動ワインダが備える糸巻取ユニット10の構成を示す側面図である。図2は糸巻取ユニット10の概略的な構成を示す正面図及びブロック図である。
【0033】
図1及び図2に示す糸巻取ユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダ(繊維機械)は、並べて配置された複数の糸巻取ユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。
【0034】
それぞれの糸巻取ユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。ユニットフレーム11の内部には、糸巻取ユニット10の各部を制御するためのユニット制御部50が備えられる。
【0035】
前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を保持可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。図2に示すように、前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、糸20は前記綾振溝27によってトラバースされながら巻取ボビン22に巻き取られる。
【0036】
前記巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、解舒補助装置12と、ディスクテンサ(張力付与装置)13と、スプライサ装置(糸継部)14と、クリアラ(糸品質測定器)15と、を配置した構成となっている。なお、以後の説明において、糸の走行方向の上流側及び下流側を単に「上流側」及び「下流側」と称する場合がある。
【0037】
前記糸巻取ユニット10の下部にはボビンセット部(給糸部)18が構成されている。このボビンセット部18には、トレー56に装着した状態の給糸ボビン21が図略の給糸ボビン供給装置によって供給される。ボビンセット部18にセットされた給糸ボビン21は、糸20を下流側へ供給する。
【0038】
解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さることが可能な規制部材40と、規制部材40を上下動させることが可能な図略のアクチュエータと、を備えている。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸20の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンを適切な大きさに制御することによって糸20の解舒を補助する。解舒補助装置12は、給糸ボビン21からの糸20の解舒と連動して前記アクチュエータを駆動し、前記規制部材40を下降させるように構成されている。具体的には、前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが前記規制部材40の近傍に備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると前記アクチュエータを駆動して前記規制部材40を下降させる制御が行われる。
【0039】
ディスクテンサ13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものであり、糸20を挟んで対向するように対で配置されるディスク(張力付与部品としてのディスク対73)を備えた構成となっている。このディスクテンサ13はディスクを糸20に押し付けるためのソレノイド及びバネを備えており、これによって、巻き取られる糸20に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を向上させることができる。また、前記ディスク対73は低速で回転するように構成されており、常にディスクの新鮮な面が糸20に対面するようにしながら糸20にテンションを付与するように構成されている。これによりディスク対73の摩耗及び汚れの蓄積を抑制できるので、パッケージ30の品質低下を防止できるとともに、必要なメンテナンス頻度を減らすことができる。なお、ディスクテンサ13の詳細な構成は後述する。
【0040】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、圧縮空気等の流体を用いるもの又は機械式のもの等を使用することができる。
【0041】
クリアラ15は、糸20の太さを適宜のセンサで検出することで欠陥を検出するように構成されており、このクリアラ15のセンサからの信号をアナライザ52(図2)で処理することで、スラブ等の糸欠点を検出可能に構成されている。なお、前記クリアラ15は、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。前記クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0042】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する第1中継パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する第2中継パイプ26と、が設けられている。第1中継パイプ25の先端には吸引口32が形成され、第2中継パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。2つの中継パイプ25,26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0043】
この構成で、糸切れ時又は糸切断時においては、第1中継パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することでスプライサ装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、第2中継パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆転されるパッケージ30表面上に存在する上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、第2中継パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、スプライサ装置14に上糸を案内するようになっている。
【0044】
給糸ボビン21から解舒された糸は、スプライサ装置14の上方(下流側)に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。図2に示すように、この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の動作はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0045】
以上の構成で、給糸ボビン21が糸巻取ユニット10の下部(ボビンセット部18)に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から糸20を解舒して前記巻取ボビン22に巻き取ることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0046】
次に、ディスクテンサ13について図3を参照して詳細に説明する。図3はディスクテンサ13を正面側から見た斜視図である。
【0047】
図3に示すように、ディスクテンサ13は、2つのディスク対73を支持するハウジング70を備えている。それぞれのディスク対73は、互いに対向して且つ軸線を一致させて配置される第1ディスク(第1作用部材、張力付与部材)71と第2ディスク(第2作用部材、張力付与部材)72とにより構成されている。なお、第1ディスク71及び第2ディスク72の詳細な構成は後述する。
【0048】
ハウジング70には上下方向に細長い凹部74が形成されており、この凹部74の内部において、前記ディスク対73は上下に並べて2つ設けられている。それぞれのディスク対73は、前記凹部74の内部を走行する糸20を第1ディスク71及び第2ディスク72で挟むことができるように配置されている。
【0049】
下側(上流側)のディスク対73を上下に挟むようにして、糸20を案内するための2つの糸ガイド91,92が前記ハウジング70に固定されている。また、糸20が前記凹部74を抜ける箇所において糸ガイド93がハウジング70に固定されており、上側(下流側)のディスク対73を抜けた糸20を当該糸ガイド93により案内できるように構成されている。
【0050】
前記ハウジング70の内部には開閉アーム76が支持されている。この開閉アーム76は上下に細長い形状に構成され、その上端部と下端部に支軸77がそれぞれ取り付けられている。2本の支軸77,77は互いに平行に配置され、ハウジング70に回転可能に支持されている。また、それぞれの支軸77は、その軸方向に移動可能とされている。
【0051】
支軸77のそれぞれは前記凹部74の内部(ハウジング70の外部)へ突出し、その先端に前記第1ディスク71が取り付けられている。また、ハウジング70の内部において、2本の支軸77にはそれぞれ回転ギア78が固定されている。2つの回転ギア78,78は何れも、ハウジング70の内部に回転可能に支持されたカウンタギア79と噛み合っている。
【0052】
前記開閉アーム76は適宜の連結機構を介して開閉アクチュエータ(図2の符号89)に連結されている。この開閉アクチュエータ89を駆動することにより開閉アーム76を動かし、上下2つの第1ディスク71を同時に、第2ディスク72から離れる方向及び第2ディスク72に近づく方向に移動させることができる。この構成により、2つのディスク対73を、閉鎖状態と開放状態との間で切り替えることができる。
【0053】
凹部74を挟んで前記開閉アーム76と反対側の位置には、バネ支持板80及びソレノイド(押圧部、押圧アクチュエータ)81が配置されている。また、ハウジング70の内部には、2本の支軸82,82が回転可能かつ軸方向移動可能に配置されている。2本の支軸82,82は互いに平行となるように上下に並べて配置され、それぞれの軸線が反対側の前記支軸77,77と一致するように配置されている。
【0054】
支軸82のそれぞれは前記凹部74の内部(ハウジング70の外側)へ突出し、その先端に前記第2ディスク72が取り付けられている。また、ハウジング70の内部において、2本の支軸82にはそれぞれ回転ギア83が固定されている。2つの回転ギア83,83は何れも、ハウジング70の内部に回転可能に支持されたカウンタギア84と噛み合っている。
【0055】
前記ソレノイド81はロータリソレノイドとして構成されており、その出力軸に押圧アーム85が固定されている。この押圧アーム85の先端部は、下側(上流側)の支軸82に取り付けられた回転ギア83のボス部に対面している。
【0056】
以上の構成で、前記ソレノイド81に電流を印加すると、回転する押圧アーム85が回転ギア83を介して支軸82を押し、これによって第2ディスク72が第1ディスク71側へ押し付けられる。この結果、下側のディスク対73の間を走行する糸20に張力を付与することができる。なお、第2ディスク72が第1ディスク71側へ押し付けられる力は、ソレノイド81へ印加する電流の大きさを変更することで調整することができる。
【0057】
前記バネ支持板80には、弾性体としての押圧バネ(押圧部)86の一端が固定されている。押圧バネ86の他端には円板状の伝達部材87が固定され、この伝達部材87は、上側(下流側)の支軸82に取り付けられた回転ギア83のボス部に対面している。
【0058】
この構成で、前記押圧バネ86は伝達部材87及び回転ギア83を介して前記支軸82を所定の力で押し、これによって第2ディスク72が第1ディスク71側へ押し付けられる。この結果、上側のディスク対73の間を走行する糸20に張力を付与することができる。
【0059】
前記ハウジング70の内部には、一対の駆動伝達ギア75,75が配置されている。2つの駆動伝達ギア75,75は図略の中心軸を介して相互に連結されており、両者が一体的に回転するように構成されている。ハウジング70の内部には図略の駆動ギアが配置されており、この駆動ギアは一側の駆動伝達ギア75に噛み合っている。前記駆動ギアは、駆動部としてのモータ(図2の符号88)の出力軸に固定されており、このモータ88を駆動することによって、両側の駆動伝達ギア75,75を回転させることができる。
【0060】
一側の駆動伝達ギア75は、下側(上流側)の支軸77に固定された回転ギア78に噛み合い、他側の駆動伝達ギア75は、下側(上流側)の支軸82に固定された回転ギア83に噛み合っている。従って、前記モータ88を駆動することにより4本の支軸77,82を一斉に回転させ、この結果、上下のディスク対73において、第1ディスク71及び第2ディスク72を同一の方向に等しい速度で回転させることができる。
【0061】
次に、第1ディスク71及び第2ディスク72の構成について、図4から図7を参照して詳細に説明する。図4は、第1ディスク71及び第2ディスク72の断面斜視図である。図5は、第1ディスク71及び第2ディスク72の作用面の様子を詳細に示す外観斜視図である。図6及び図7は、第1ディスク71と第2ディスク72の間で糸20に張力が付与される2つの形態を示す断面拡大図である。
【0062】
第1ディスク71は、糸20に張力付与を行うための第1作用面41を備える。また、第2ディスク72も同様に、糸20に張力付与を行うための第2作用面42を備える。第1作用面41及び第2作用面42は、糸20の走行経路を挟んで互いに向き合うように配置されている。第1ディスク71及び第2ディスク72は何れも金属を材料としているが、特に第2ディスク72は軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金により構成されている。
【0063】
第1作用面41には、図4及び図5に示すように、複数の第1線状突起47が形成されている。それぞれの第1線状突起47は環状(無端状)に形成されており、第1ディスク71の回転軸と中心を一致させて同心円状に配置されている。第2作用面42にも同様に、複数の第2線状突起48が形成されている。それぞれの第2線状突起48は環状(無端状)に形成されており、第2ディスク72の回転軸と中心を一致させて同心円状に配置されている。第1線状突起47と第2線状突起48は互いに平行となるように構成されている。
【0064】
以上のように線状突起が配置されていることにより、図5に示すように、第1ディスク71及び第2ディスク72の作用面には波紋状の凹凸が形成されている。そして、第1ディスク71と第2ディスク72を近接させたときは、図4に示すように第1線状突起47と第2線状突起48が交互に配置され、波紋状の凹凸が互いに噛み合うような形となる。
【0065】
この状態で糸20は第1作用面41と第2作用面42の間を走行するが、このときの経路は図4に示すように、第1ディスク71及び第2ディスク72の回転中心(環状の第1線状突起47及び第2線状突起48の中心)から若干外れた位置となるように、前記糸ガイド91〜93によって案内される。
【0066】
このときの糸の走行経路を含む仮想平面で第1ディスク71及び第2ディスク72を切断した断面の様子が図6及び図7に示されている。図6に示すように、前記第1作用面41を前記仮想平面で切断した輪郭は、第2ディスク72に向かって突出する複数の第1凸部43を有している。また、隣り合う第1凸部43と第1凸部43の間には、相対的に凹んだ形状の第2凹部46が配置されている。同様に、第2作用面42を前記仮想平面で切断した輪郭は、第1ディスク71に向かって突出する複数の第2凸部44を備えている。また、隣り合う第2凸部44と第2凸部44の間(第2凸部44の周囲)には、相対的に凹んだ形状の第1凹部45が配置されている。なお、前記第1線状突起47を切断した断面輪郭が第1凸部43に相当し、前記第2線状突起48の断面輪郭が第2凸部44に相当する。
【0067】
第1凸部43の先端は第2凹部46に挿入される(嵌まる)。この第1凸部43の先端は、当該第2凹部46の底部に接触することも、底部に対し適宜の隙間をあけて対面することもできるようになっている。同様に、第2凸部44の先端は第1凹部45に挿入される(嵌まる)。この第2凸部44の先端は、当該第1凹部45の底部に対し適宜の隙間をあけて対面するように配置される。
【0068】
この構成で、糸20は、2つの形態によって張力を付与される。第1の張力付与形態(図6)では、第1凸部43の先端と第2凹部46の底部との間で糸20が挟まれ、当該ニップ部の摩擦力によって糸20に張力が付与される。第2の張力付与形態(図7)では、第1の張力付与形態よりも第1ディスク71と第2ディスク72が互いに離間した状態となっている。この第2の張力付与形態では、糸20は第1凹部45の底部からも第2凹部46の底部からも離間した状態で、第1凸部43及び第2凸部44の部分で交互に屈曲されながら第1ディスク71及び第2ディスク72の間を走行し、これにより張力が付与される。
【0069】
このように構成した本実施形態のディスクテンサ13では、第2の張力付与形態(図7)において、あたかもゲートテンサが行うような糸の屈曲による張力付与が行われる。また、このディスクテンサ13では、図7の状態では、走行する糸20の張力(給糸ボビン21からの解舒張力)が高くなると第2ディスク72が第1ディスク71から離れる向きに移動し、凹凸の噛合せの程度が小さくなって、ディスク対73による付与張力が小さくなる。一方、糸20の張力が低くなると第2ディスク72が第1ディスク71へ近づく向きに移動し、凹凸の噛合せの程度が大きくなって、ディスク対73による付与張力が大きくなる。このように、本実施形態のディスクテンサ13では糸張力の補償効果を発揮させることができるので、摩擦によって糸に張力を付与するタイプのディスクテンサと比較して、安定した張力を糸に付与することができる。また、本実施形態では押圧側の第2ディスク72が軽量のアルミニウムで構成されているので、糸20の張力変動に良好に追従しながら張力付与作用を行うことができる。
【0070】
更に、本実施形態のディスクテンサ13においては、前述のように第1ディスク71と第2ディスク72には前記モータ88の駆動力が伝達され、同期して回転する(言い換えれば、円形の前記第1線状突起47及び第2線状突起48の長手方向に沿う向き(周方向)に、第1ディスク71及び第2ディスク72が積極的に移動する)。従って、第1作用面41及び第2作用面42は糸20に対する接触箇所を次々に変化させながら張力を付与することになるので、油、風綿等の汚れの蓄積や摩耗の進行等を抑制でき、耐久性に優れたディスクテンサ13を提供することができる。
【0071】
次に、本願発明者が行った張力測定実験について、図8及び図9のグラフを参照して説明する。図8(b)は、本実施形態のディスクテンサ13に糸20を実際に通過させたときの張力の変化を測定したものである。この実験は、糸20として英式綿番手の30番手(中番手)の綿の糸を用い、糸20の走行速度は1200m/分とする条件で行った。また、押圧バネ86及びソレノイド81は、糸20に22cNの大きさの張力を付加するようにそれぞれ設定した。なお、図8(a)には、従来の構成(即ち、第1作用面41及び第2作用面42に凹凸を設けない構成)において、同一の条件で糸の張力を測定した結果を比較のために示した。
【0072】
図8の2つのグラフは、糸走行中の張力の変化を10秒程度にわたって示したものである。図8(a)のグラフに示すように、従来のディスクテンサでは糸張力の上下振幅が全体的に大きく、張力が瞬間的に低下する箇所(テンション抜け)も観察される。一方、本実施形態の構成では図8(b)に示すように、糸張力が極端に低下する現象は発生せず、上下振幅の小さい安定した張力を糸20に付与できていることが判る。本願発明者の計算によれば、本実施形態のディスクテンサ13を使用した場合、本実験では従来の構成と比較して張力の変動範囲を約35%狭めることができた。
【0073】
また、本願発明者は、糸20としてポリエステルと綿の混紡糸を用い、その太さは英式綿番手の50番手(細番手)とし、糸の走行速度を1150m/分とする条件についても同様の実験を行った。この実験においては、押圧バネ86及びソレノイド81は、糸20に8cNの大きさの張力を付加するようにそれぞれ設定した。図9(b)は本実施形態のディスクテンサの結果、図9(a)は従来のディスクテンサの結果をそれぞれ示す。このグラフに示すように、細番手の糸においても本実施形態のディスクテンサ13を用いることで、張力の上下振幅が小さくなっており、張力の安定化を実現できていることが判る。本願発明者の計算によれば、本実施形態のディスクテンサ13を使用した場合、本実験では従来と比較して張力の変動範囲を約32%狭めることができた。
【0074】
次に、本願発明者が行った糸ブレ測定実験について、図10のグラフを参照して説明する。この実験は、凸部の数を種々異ならせた複数種類の第1ディスク71及び第2ディスク72を用意し、それぞれを図1の構成の糸巻取ユニット10に設置して、実際に糸20を巻き取ることで行った。ただし実験では、図1のように2組のディスク対73を備える構成とは異なり、ディスクテンサ13においてディスク対73は1つのみ設置した。糸巻取ユニット10に設置されるクリアラ15は糸20に含まれる異物を検出する機能を有しているが、糸20の走行経路にブレが生じてクリアラ15の検知領域から外れた場合、それを異物とみなして検知することもできる。本実験では、このようなクリアラの機能を使って糸ブレの頻度を計測した。
【0075】
この実験で使用するディスク対73においては、糸20の走行経路が2回、4回、又は6回屈曲するように、第1ディスク71及び第2ディスク72に環状突起(線状突起)を形成した。即ち、第1ディスク71及び第2ディスク72のそれぞれにおいて、糸20の走行経路を含む平面で作用面を切断した輪郭に、凸部が1つずつ、2つずつ、又は3つずつ形成されるようにした。更に、凸部(線状突起)を形成しない従来のディスクを用いた場合、櫛歯状のゲートテンサを用いた場合についても実験を行った。何れの場合でも、糸はポリエステルと綿の混紡糸を用い、その太さは英式綿番手の50番手(細番手)とした。実験において糸の巻取速度は1150m/分、巻取張力は8cNとし、第1ディスク71及び第2ディスク72は、1.25rpmの速度で同期回転させた。
【0076】
それぞれの場合の実験結果を図10に示す。糸の走行経路が4回及び6回屈曲するように構成されたディスクテンサは、作用面が平面に形成されている従来のディスクテンサに比べて糸ブレを半分以下に抑制でき、糸ブレの頻度をゲートテンサとほぼ同等のレベルまで抑制できている。
【0077】
なお、糸の走行経路が2回屈曲するように構成されたディスクテンサは、糸の張力を安定して維持できなかったので、図10のグラフには実験結果を示していない。この2回屈曲の構成については、ディスクの同期回転速度を60rpmに増大させて再度実験を試みたが、やはり張力が安定せず、データを得ることができなかった。
【0078】
以上の実験結果から、糸20をディスク対73の間で少なくとも4回屈曲させることで(言い換えれば、前記第1作用面41及び第2作用面42に環状の線状突起をそれぞれ複数設けることで)、糸ブレをゲートテンサのレベルにまで良好に低減できるという知見が得られた。
【0079】
以上に示すように、本実施形態のディスクテンサ13は、糸20を挟み込んで屈曲走行するようにした第1ディスク71及び第2ディスク72を有する。このディスクテンサ13は、第1ディスク71及び第2ディスク72のそれぞれを、糸20との接触位置を変更するようにモータ88により積極的に回転させるように構成されている。
【0080】
これにより、一対の張力付与部材の間で糸20を屈曲させて挟み込み、これにより糸20に張力を付与することができる。また、第1ディスク71及び第2ディスク72のそれぞれが回転することで、汚れの蓄積や摩耗の進行を効果的に抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態のディスクテンサ13は、糸道を挟んで対向する平面に、凹凸部が形成された第1ディスク71及び第2ディスク72を有する。ディスクテンサ13は、この凹凸間で糸20を蛇行搬送させ、糸20に張力を加えるように構成されている。
【0082】
これにより、凹凸部が形成された第1ディスク71及び第2ディスク72の間で糸20をジグザグに蛇行させながら搬送させることで、糸20に張力を安定して付与することができる。
【0083】
また、本実施形態のディスクテンサ13は、走行する糸20に摩擦力によって張力を付与するように構成されている。このディスクテンサ13は、凹部及び凸部をそれぞれ同心円状に配置した第1ディスク71及び第2ディスク72を2対備えている。また、第1ディスク71及び第2ディスク72のそれぞれは、少なくとも一部の凹凸が嵌まり合うように構成されている。
【0084】
これにより、第1ディスク71及び第2ディスク72の凹部及び凸部によって糸20を屈曲させて糸20に張力を付与できるとともに、図6に示すように、凹凸が嵌まり合う部分において糸20を挟み込んで張力を付与することもできる。
【0085】
また、本実施形態のディスクテンサ13において、上側のディスク対73における第2ディスク72は、糸20に張力を付与するために第1ディスク71側に付勢されている。また、第2ディスク72はアルミニウム(又はアルミニウム合金)で構成されている。
【0086】
これにより、図7の状態において、第2ディスク72の付勢により糸20の張力変化に対する補償作用を実現できるので、安定した張力を糸20に対して付与でき、糸ブレ等を防止できる。また、図6の状態においては付勢力を凹凸が嵌まり合う部分において糸20を挟み込む力として利用することもできる。更に、第2ディスク72がアルミニウムを主成分とする素材で構成されているので、耐摩耗性を向上させることができる。また、第2ディスク72の軽量化により円滑な移動を実現することができ、これによって、第1の張力付与状態と第2の張力付与状態との切換えも迅速かつ滑らかに行うことができる。
【0087】
また、本実施形態のディスクテンサ13は、第1ディスク71と、第2ディスク72と、ソレノイド81及び押圧バネ86と、を備える。第2ディスク72は、糸20の走行経路を挟んで第1ディスク71と反対側に配置される。ソレノイド81及び押圧バネ86は、第2ディスク72を第1ディスク71側に押圧することが可能である。第1ディスク71は、走行する糸20に接触可能な第1作用面41を備える。第1作用面41には、複数の第1線状突起47が形成されている。第2ディスク72は、走行する糸20に接触可能な第2作用面42を備える。第2作用面42には、複数の第2線状突起48が形成されている。第1線状突起47及び第2線状突起48は、それぞれ環状に形成され、中心を互いに一致させて配置されている。
【0088】
これにより、それぞれが環状の線状突起を有する第1ディスク71及び第2ディスク72を備え、第2ディスク72を第1ディスク71側に押圧する簡素な構成で、糸20に張力を付与することができる。
【0089】
また、本実施形態のディスクテンサ13は、第1ディスク71及び第2ディスク72を回転させることが可能に構成されている。
【0090】
これにより、第1ディスク71及び第2ディスク72が1回転するごとに、第1線状突起47及び第2線状突起48が糸20に接触する部位が1周して元に戻ることになる。従って、簡素な構成で、汚れの蓄積や摩耗の進行を継続的に抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態のディスクテンサ13は、第1ディスク71及び第2ディスク72を同期して回転させることが可能なモータ88を備えている。
【0092】
これにより、第1作用面41と第2作用面42との位置関係を一定に保ちながら張力を付与することができるので、糸20の張力を一層安定化することができる。
【0093】
また、本実施形態のディスクテンサ13は、下側のディスク対73の第2ディスク72を押圧するソレノイド81を備えている。
【0094】
これにより、下側のディスク対73において、糸20に付与する張力の調整をより正確に行うことができる。
【0095】
また、本実施形態のディスクテンサ13において、第2ディスク72はアルミニウム(又はアルミニウム合金)で構成されている。
【0096】
これにより、第2ディスク72の耐摩耗性を向上させるとともに、軽量化により円滑な回転を実現することができる。
【0097】
また、本実施形態のディスクテンサ13は、第1ディスク71と、第2ディスク72と、押圧バネ86及びソレノイド81と、を備える。第2ディスク72は、糸20の走行経路を挟んで第1ディスク71と反対側に配置される。押圧バネ86及びソレノイド81は、第2ディスク72を第1ディスク71側に押圧することが可能に構成されている。第1ディスク71は、走行する糸20に接触可能な第1作用面41を備える。糸20の走行経路を含む平面で第1作用面41を切断した輪郭は、第2ディスク72に向かって突出する複数の第1凸部43と、互いに隣り合う第1凸部43の間で相対的に凹んでいる第1凹部45と、を有する。第2ディスク72は、走行する糸20に接触可能な第2作用面42を備える。糸20の走行経路を含む平面で第2作用面42を切断した輪郭は、第1ディスク71に向かって突出する第2凸部44と、第2凸部44の周囲で相対的に凹んでいる第2凹部46と、を有する。第1凸部43と第2凹部46が対面するように配置される。第2凸部44と第1凹部45が対面するように配置される。ディスクテンサ13は、図6の形態と、図7の形態と、により糸20に付与する張力を調整する。図6の形態では、第2凹部46とそれに対面する第1凸部43が糸20を挟み込んだ状態で糸20を走行させる。図7の形態では、第2凹部46と第1凸部43とが離間し、第1凹部45と第2凸部44が離間した状態で、糸20を第1作用面41及び第2作用面42の間で屈曲させながら走行させる。
【0098】
これにより、第1ディスク71と第2ディスク72との間での糸20の挟み込み又は屈曲により、糸に張力を付与することができる。また、図7の形態(屈曲により張力を付与する状態)では糸20の張力変化に対する補償作用を実現できるので、安定した張力を糸20に対して付与でき、糸ブレ等を防止できる。
【0099】
また、本実施形態の自動ワインダは、前記ディスクテンサ13を備えて構成されている。
【0100】
これにより、糸20に安定した張力を付与することでパッケージ30の品質を向上でき、メンテナンス性に優れた自動ワインダを提供することができる。
【0101】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0102】
前記実施形態のディスクテンサ13は2つのディスク対73,73を備える構成であるが、1つ又は3つ以上のディスク対を備える構成に変更することができる。
【0103】
第2ディスク72を押圧する構成は、押圧バネ86及びソレノイド81に代えて、例えば空気圧シリンダによって押圧する構成に変更することができる。また、第2ディスク72が固定側、第1ディスク71が可動側(押圧側)となるように変更することもできる。更に、ディスク対の双方のディスクを相手側へ押圧する構成に変更することもできる。
【0104】
第1ディスク71及び第2ディスク72のようなディスク状の部材に代えて、例えば四角形状の部材によって糸に張力を付与するように変更することができる。
【0105】
前記実施形態のディスクテンサ13は、自動ワインダに限らず、例えば合糸機等の他の繊維機械に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備える糸巻取ユニットの側面図。
【図2】糸巻取ユニットの正面図及びブロック図。
【図3】ディスクテンサを正面側から見た斜視図。
【図4】ディスクテンサのディスクの断面斜視図。
【図5】ディスクの作用面の様子を詳細に示す外観斜視図。
【図6】ディスク間で糸を挟み込むことにより張力が付与される様子(第1の張力付与形態)を示す断面拡大図。
【図7】ディスク間で糸を屈曲させることにより張力が付与される様子(第2の張力付与形態)を示す断面拡大図。
【図8】中番手の糸を使用した場合における、本実施形態のディスクテンサを通過する糸の張力の変化を従来技術と比較して示すグラフ。
【図9】細番手の糸を使用した場合における、本実施形態のディスクテンサを通過する糸の張力の変化を従来技術と比較して示すグラフ。
【図10】糸ブレ測定実験の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0107】
10 自動ワインダ(繊維機械)の糸巻取ユニット
13 ディスクテンサ
20 糸
71 第1ディスク(第1作用部材、張力付与部材)
72 第2ディスク(第2作用部材、張力付与部材)
73 ディスク対(張力付与部品)
41 第1作用面
42 第2作用面
43 第1凸部
44 第2凸部
45 第1凹部
46 第2凹部
47 第1線状突起
48 第2線状突起
81 ソレノイド(押圧部)
86 押圧バネ(押圧部)
88 モータ(駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を挟み込んで屈曲走行するようにした一対の張力付与部材を有し、
各張力付与部材を糸との接触位置を変更するように積極移動させることを特徴とする張力付与装置。
【請求項2】
糸道を挟んで対向する平面に、凹凸部が形成された一対の張力付与部材を有し、
この凹凸間で糸を蛇行搬送させ、糸に張力を加えることを特徴とする張力付与装置。
【請求項3】
走行する糸に摩擦力によって張力を付与する張力付与装置であって、
凹部及び凸部をそれぞれ同心円状に配置した張力付与部材を少なくとも一対備え、
前記一対の張力付与部材は少なくとも一部の凹凸が嵌まり合うことを特徴とする張力付与装置。
【請求項4】
請求項3に記載の張力付与装置であって、
前記一対の張力付与部材は一方が張力を付与するために他方に付勢されており、
前記一方はアルミニウムを主成分とする素材で構成されていることを特徴とする張力付与装置。
【請求項5】
ディスク状の第1作用部材と、
糸の走行経路を挟んで前記第1作用部材と反対側に配置されるディスク状の第2作用部材と、
前記第1作用部材及び第2作用部材のうち少なくとも何れか一方を他方に押圧することが可能な押圧部と、
を備え、
前記第1作用部材は、走行する糸に接触可能な第1作用面を備え、
前記第1作用面には、複数の第1線状突起が形成されており、
前記第2作用部材は、走行する糸に接触可能な第2作用面を備え、
前記第2作用面には、複数の第2線状突起が形成されており、
前記第1線状突起及び前記第2線状突起はそれぞれ環状に形成され、中心を互いに一致させて配置されていることを特徴とする張力付与装置。
【請求項6】
請求項5に記載の張力付与装置であって、
前記第1作用部材及び第2作用部材を回転させることが可能なことを特徴とする張力付与装置。
【請求項7】
請求項6に記載の張力付与装置であって、
前記第1作用部材及び第2作用部材を同期して回転させることが可能な駆動部を備えることを特徴とする張力付与装置。
【請求項8】
請求項5から7までの何れか一項に記載の張力付与装置であって、
前記押圧部はソレノイドであることを特徴とする張力付与装置。
【請求項9】
請求項5から8までの何れか一項に記載の張力付与装置であって、
前記第1作用部材及び第2作用部材のうち少なくとも何れか一方は、アルミニウムを主成分とする素材で構成されていることを特徴とする張力付与装置。
【請求項10】
第1作用部材と、
糸の走行経路を挟んで前記第1作用部材と反対側に配置される第2作用部材と、
前記第1作用部材及び第2作用部材のうち少なくとも何れか一方を他方に押圧することが可能な押圧部と、
を備え、
前記第1作用部材は、走行する糸に接触可能な第1作用面を備え、
糸の走行経路を含む平面で前記第1作用面を切断した輪郭は、前記第2作用部材に向かって突出する複数の第1凸部と、互いに隣り合う前記第1凸部の間で相対的に凹んでいる第1凹部と、を有し、
前記第2作用部材は、走行する糸に接触可能な第2作用面を備え、
糸の走行経路を含む平面で前記第2作用面を切断した輪郭は、前記第1作用部材に向かって突出する第2凸部と、前記第2凸部の周囲で相対的に凹んでいる第2凹部と、を有し、
前記第1凸部と、前記第2凹部が対面するように配置され、
前記第2凸部と、前記第1凹部が対面するように配置され、
前記凹部とそれに対面する前記凸部が少なくとも一部で前記糸を挟み込んだ状態で走行させる第1の張力付与形態と、
前記凹部とそれに対面する前記凸部が離間した状態で、前記糸を前記第1作用面と前記第2作用面の間で屈曲させながら走行させる第2の張力付与形態と、
により糸に付与する張力を調整することを特徴とする張力付与装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の張力付与装置を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項12】
ディスク状の第1作用部材と、
糸の走行経路を挟んで前記第1作用部材と反対側に配置されるディスク状の第2作用部材と、
を備え、
前記第1作用部材は、走行する糸に接触可能な第1作用面を備え、
前記第1作用面には、複数の第1線状突起が形成されており、
前記第2作用部材は、走行する糸に接触可能な第2作用面を備え、
前記第2作用面には、複数の第2線状突起が形成されており、
前記第1線状突起及び前記第2線状突起はそれぞれ環状に形成されていることを特徴とする張力付与部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−47391(P2010−47391A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215103(P2008−215103)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】