説明

張力付与装置

【課題】摩耗したガイド部を素早く交換できるとともに、予備ガイド部のストックが低減できる張力付与装置を提供する。
【解決手段】張力付与部31を備えた張力付与装置3であって、前記張力付与部31は、糸Yと接触することによって該糸Yに張力を付与するガイド部G1・G2と、前記ガイド部G1・G2と交換できる予備ガイド部と、を備える、とした。具体的には、前記張力付与部は、糸道を挟むように配置される一対の略円筒部材を具備し、前記ガイド部及び予備ガイド部は、向かい合う前記略円筒部材のそれぞれの端部に仮想線を中心として環状に複数形成される、とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力付与装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、糸に張力を付与する張力付与装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。張力付与装置は、糸を屈曲させることによって摩擦力を調節し、該糸に適宜に張力を付与するように構成されている。
【0003】
しかし、張力付与装置は、糸と接触しているガイド部に摩耗が生じ、糸走行及び糸品質に影響を与える場合があった。具体的に説明すると、糸と接触しているガイド部に摩耗が生じると、摩耗による段差で糸をしごくこととなり、所望のテンション付与ができなくなり、糸走行及び糸品質に影響を与える場合があったのである。
【0004】
一方、摩耗したディスクを素早く交換可能とするために、永久磁石を用いて当該ディスクを取り付けるとしたスプライサが提案されている(例えば特許文献2参照)。このため、張力付与装置においても永久磁石を用いてガイド部を取り付け、交換可能とすることもできる。但し、このような構造を採用した場合であっても、予備のガイド部のストックが不可欠であるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−116259号公報
【特許文献2】特表2009−513462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、摩耗したガイド部を素早く交換できるとともに、予備のガイド部のストックが低減できる張力付与装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、張力付与部を備えた張力付与装置であって、
前記張力付与部は、糸と接触することによって該糸に張力を付与するガイド部と、
前記ガイド部と交換できる予備ガイド部と、を備える、としたものである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る張力付与装置において、
前記ガイド部と前記予備ガイド部は、単一の部材に形成される、としたものである。
【0010】
第3の発明は、第2の発明に係る張力付与装置において、
前記張力付与部は、糸道を挟むように配置される一対の略円筒部材を具備し、
前記ガイド部及び予備ガイド部は、向かい合う前記略円筒部材のそれぞれの端部に仮想線を中心として環状に複数形成される、としたものである。
【0011】
第4の発明は、第3の発明に係る張力付与装置において、
一対の前記略円筒部材は、前記端部において前記仮想線を中心に糸道に沿って対向する二箇所のガイド部で糸に張力を付与し、予備ガイド部によって糸に張力を付与する際には前記略円筒部材を回転させて前記予備ガイド部を糸道に沿って配置する、としたものである。
【0012】
第5の発明は、第3又は第4の発明に係る張力付与装置において、
一対の前記略円筒部材は、一方の前記略円筒部材のガイド部が形成された端部を他方の前記略円筒部材のガイド部が形成された端部の内方に挿入することにより、糸を屈曲させて該糸に張力を付与する、としたものである。
【0013】
第6の発明は、第5の発明に係る張力付与装置において、
一対の前記略円筒部材は、一方の前記略円筒部材のガイド部が形成された端部を他方の前記略円筒部材のガイド部が形成された端部の内方に挿入する量を変更することにより、糸の屈曲量を変化させて該糸に付与する張力を調整する、としたものである。
【0014】
第7の発明は、第3から第6のいずれかの発明に係る張力付与装置において、
前記略円筒部材は、前記仮想線を中心として段階的に回転させて取り付けることのできる脱着部を有する、としたものである。
【0015】
第8の発明は、第7の発明に係る張力付与装置において、
前記脱着部は、前記ガイド部と同数の角部を有する多角形凸部と多角形凹部で構成された嵌合構造である、としたものである。
【0016】
第9の発明は、第3から第8のいずれかの発明に係る張力付与装置において、
前記予備ガイド部は、前記略円筒部材のもう一方の端部にも形成され、
前記略円筒部材は、前後反転させた状態で取り付けて使用することができる、としたものである。
【0017】
第10の発明は、第1の発明に係る張力付与装置において、
前記予備ガイド部を保持できるホルダーを備える、としたものである。
【0018】
第11の発明は、第1から第10のいずれかの発明に係る張力付与装置を備える糸巻取機、としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
第1の発明によれば、張力付与部が予備ガイド部を備える。このため、ガイド部が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。
【0021】
第2の発明によれば、ガイド部と予備ガイド部が単一の部材に形成される。このため、別途に予備ガイド部を確保しておく必要性が低くなるため、予備ガイド部のストックを低減できる。
【0022】
第3の発明によれば、ガイド部及び予備ガイド部が向かい合う略円筒部材のそれぞれの端部に複数形成される。このため、ガイド部が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。また、別途に予備ガイド部を確保しておく必要性が低くなるため、予備ガイド部のストックを低減できる。
【0023】
第4の発明によれば、糸と接触する二箇所をガイド部とし、その他の箇所を予備ガイド部とする。そして、予備ガイド部によって糸に張力を付与する際には略円筒部材を回転させて予備ガイド部を糸道に沿って配置する。このため、ガイド部が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。また、別途に予備ガイド部を確保しておく必要性が低くなるため、予備ガイド部のストックを低減できる。更に、一の略円筒部材において、二箇所のガイド部が糸と接触することとなるため、摩擦力の調節がし易くなって糸に適宜に張力を付与することが可能となる。
【0024】
第5の発明によれば、一方の略円筒部材のガイド部が形成された端部を他方の略円筒部材のガイド部が形成された端部の内方に挿入する。このため、互いの略円筒部材の間にある糸を確実に屈曲させることができる。更に、一対の略円筒部材において、四箇所のガイド部が糸を屈曲させることとなるため、摩擦力の調節がし易くなって糸に適宜に張力を付与することが可能となる。
【0025】
第6の発明によれば、一方の略円筒部材のガイド部が形成された端部を他方の略円筒部材のガイド部が形成された端部の内方に挿入する量を変更する。このため、互いの略円筒部材の間にある糸の屈曲量を変化させることができ、糸に適宜に張力を付与することが可能となる。
【0026】
第7の発明によれば、略円筒部材を段階的に回転させて取り付けることができる。このため、ガイド部が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。
【0027】
第8の発明によれば、脱着部が多角形凸部と多角形凹部で構成された嵌合構造である。このため、略円筒部材の取り付け角度を確実に変更できる。また、意図せずに取り付け角度が変更されることを防止できる。
【0028】
第9の発明によれば、予備ガイド部が略円筒部材の両端部に形成される。そして、略円筒部材を前後反転させた状態で取り付けて使用することができる。このため、別途に予備ガイド部を確保しておく必要性が更に低くなり、予備ガイド部のストックを低減できる。
【0029】
第10の発明によれば、予備ガイド部を保持できるホルダーを備える。このため、ガイド部が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。また、予備ガイド部の有無を視認できる。
【0030】
第11の発明によれば、ガイド部が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。このため、糸巻取機の稼動効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】巻取ユニット100の全体構成を示す図。
【図2】張力付与装置3の構成を示す図。
【図3】張力付与装置3を構成する張力付与部31を示す図。
【図4】略円筒部材31aを回転させて取り付け角度を変更する状態を示す図。
【図5】張力付与部31が糸Yに張力を付与している状態を示す図。
【図6】張力付与部31が糸Yに張力を付与している状態を示す図。
【図7】略円筒部材31a・31bの両端部にガイド部G1・G2を形成した構成を示す図。
【図8】張力付与装置13・23を構成する張力付与部131・231を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず、巻取ユニット100について説明する。
【0033】
図1は、巻取ユニット100の全体構成を示している。なお、図中の黒矢印は、糸Yの送り方向を示している。
【0034】
巻取ユニット100は、糸Yを巻き取ることによってパッケージPを作成する。巻取ユニット100には、給糸ボビン1から解舒された糸Yの送り方向に沿って、解舒補助装置2と、張力付与装置3と、糸継装置4と、欠点検出装置5と、綾振装置6と、が備えられている。
【0035】
解舒補助装置2は、給糸ボビン1に巻かれた糸Yの解舒を補助する。解舒補助装置2は、給糸ボビン1から解舒された糸Yが遠心力によって広がることを制限し、該糸Yに掛かる張力を調節することによって解舒を補助する。解舒補助装置2は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、該制御装置からの制御信号に基づいて可動する。
【0036】
張力付与装置3は、給糸ボビン1から解舒されて上方へ送られる糸Yに所定の張力を付与する。張力付与装置3は、糸Yを屈曲させることによって摩擦力を付与し、屈曲量を変更することによって摩擦力を調節して該糸Yに適宜に張力を付与するように構成されている。張力付与装置3は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、該制御装置からの制御信号に基づいて可動する。なお、張力付与装置3の具体的な構成については後述する。
【0037】
糸継装置4は、切断された糸Yの糸端どうしを継ぎ合わせる。糸継装置4は、空気の旋回気流を利用して糸端どうしを継ぎ合わせるエアスプライサ装置である。糸継装置4は、例えば糸Yを切断して欠点部を除去した場合などに糸端どうしを継ぎ合わせる。糸継装置4は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、該制御装置からの制御信号に基づいて可動する。
【0038】
欠点検出装置5は、糸Yの欠点部を検出する。欠点検出装置5は、発光ダイオードを光源として糸Yを照射し、反射光量の変動から欠点部を検出する。欠点検出装置5は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、該制御装置が検出信号に基づいて欠点部の有無を判断する。
【0039】
綾振装置6は、綾振ドラム61を回転させて巻取管Bならびに該巻取管B上に作成されたパッケージPを従動回転させる。また、綾振装置6は、綾振ドラム61に設けられた案内溝によってパッケージPに導かれる糸Yを綾振する。こうして、綾振装置6が糸Yを綾振することによってパッケージPの偏りを防いでいる。綾振装置6は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、該制御装置からの制御信号に基づいて可動する。
【0040】
以上が巻取ユニット100の全体構成であるが、本発明の実施形態に係る張力付与装置3を備えていれば詳細な構成については問わない。つまり、本発明の実施形態に係る張力付与装置3を備えていれば解舒補助装置2や糸継装置4、欠点検出装置5、綾振装置6、その他の構成について限定するものではない。
【0041】
次に、張力付与装置3について詳細に説明する。
【0042】
図2は、張力付与装置3の構成を示している。図3は、張力付与装置3を構成する張力付与部31を示している。なお、図中の黒矢印は、糸Yの送り方向を示している。
【0043】
上述したように、張力付与装置3は、糸Yを屈曲させることによって摩擦力を付与し、屈曲量を変更することによって摩擦力を調節して該糸Yに適宜に張力を付与する。本実施形態に係る張力付与装置3は、主に糸Yを屈曲させる二つの張力付与部31・32で構成される。なお、張力付与部31と張力付与部32は、同一の構成であることから、以下では張力付与部31についてのみを説明する。
【0044】
張力付与部31は、糸道を挟むように配置された一対の略円筒部材31a・31bで構成される。詳細に説明すると、張力付与部31は、糸道に対して直交する仮想線Rの軸上に糸道を挟むように配置された一対の略円筒部材31a・31bで構成される。
【0045】
略円筒部材31aは、略円筒部材31bと向かい合う端部に複数のガイド部G1が形成されている。ガイド部G1は、糸Yと接触することによって該糸Yの挙動を安定させるとともに、接触抵抗を与える案内溝である。ガイド部G1は、仮想線Rを中心として環状に形成されており、いずれのガイド部G1も同一の形状となっている。なお、本実施形態における略円筒部材31aは、等間隔に6つのガイド部G1を有している(即ち、ガイド部G1は、60度ごとに形成されている)。
【0046】
略円筒部材31bは、略円筒部材31aと向かい合う端部に複数のガイド部G2が形成されている。ガイド部G2は、糸Yと接触することによって該糸Yの挙動を安定させるとともに、接触抵抗を与える案内溝である。ガイド部G2は、仮想線Rを中心として環状に形成されており、いずれのガイド部G2も同一の形状を有している。なお、本実施形態における略円筒部材31bは、等間隔に6つのガイド部G2を有している(即ち、ガイド部G2は、60度ごとに形成されている)。また、略円筒部材31aの円周方向外径は、略円筒部材31bの円周方向外径よりも小さいため、略円筒部材31aのガイド部G1が形成された端部が略円筒部材31bのガイド部G2が形成された端部の内方に挿入可能となっている。
【0047】
なお、本張力付与装置3において、略円筒部材31aは、脱着部35を介して揺動アーム33に取り付けられている。また、略円筒部材31bは、脱着部36を介して固定壁34に取り付けられている。このため、略円筒部材31aは、略円筒部材31bに対して近接又は離間することを可能としている(図3中白矢印参照)。但し、略円筒部材31bを略円筒部材31aに対して近接又は離間するように構成しても良く、両方の略円筒部材31a・31bを互いに近接又は離間するとしても良い。
【0048】
更に、略円筒部材31aは、6つのガイド部G1のうち、対角線上にある二箇所のガイド部G1が糸道に沿うように取り付けられている。また、略円筒部材31bは、6つのガイド部G2のうち、対角線上にある二箇所のガイド部G2が糸道に沿うように取り付けられている。このため、略円筒部材31aと略円筒部材31bが近接している状態では、各ガイド部G1・G2のうちの四箇所で糸Yを案内できる。
【0049】
このような構成により、本張力付与装置3は、糸Yの挙動を安定させ、かつ、接触抵抗を与えることを可能としている。
【0050】
なお、略円筒部材31aに形成された6つのガイド部G1のうち、糸Yと接触しない四箇所は、予備ガイド部と定義される。また、略円筒部材31bに形成された6つのガイド部G2のうち、糸Yと接触しない四箇所も、予備ガイド部と定義される。そして、略円筒部材31aと略円筒部材31bは、仮想線Rを中心として取り付け角度を変更することで、糸Yを案内するガイド部G1・G2を交換することができる。
【0051】
このような構成により、本張力付与装置3は、ガイド部G1・G2が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。また、別途に予備ガイド部を確保しておく必要性が低くなるため、予備ガイド部のストックを低減できる。
【0052】
ここで、略円筒部材31aと略円筒部材31bが仮想線Rを中心として取り付け角度を変更できる構造について説明する。
【0053】
図4は、略円筒部材31aを回転させて取り付け角度を変更する状態を示している。なお、図中の黒矢印は、略円筒部材31aの回転方向を示している。
【0054】
上述したように、略円筒部材31aは、脱着部35を介して揺動アーム33に取り付けられている。脱着部35は、ガイド部G1と同数の角部を有する多角形凸部35aと多角形凹部35bで構成された嵌合構造となっている。つまり、本実施形態における脱着部35は、六角形の凸部35aと六角形の凹部35bで構成された嵌合構造となっている。このため、脱着部35は、略円筒部材31aを回転させて取り付けることを可能としている。即ち、脱着部35は、仮想線Rを中心として段階的に取り付け角度を変更することができるのである。
【0055】
このような構成により、本張力付与装置3は、ガイド部G1が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。更に、略円筒部材31aの取り付け角度を確実に変更できる。また、意図せずに取り付け角度が変更されることを防止できる。
【0056】
なお、このような略円筒部材31aの取り付け構造は、略円筒部材31bの取り付け構造としても用いられている。このため、本実施形態における脱着部36は、六角形の凸部36aと六角形の凹部36bで構成された嵌合構造となっている(図5A、図5B、図6A、図6B参照)。
【0057】
このような構成により、本張力付与装置3は、ガイド部G2が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。更に、略円筒部材31bの取り付け角度を確実に変更できる。また、意図せずに取り付け角度が変更されることを防止できる。
【0058】
次に、張力付与装置3が糸Yに張力を付与する際の動作態様について説明する。
【0059】
図5及び図6は、張力付与部31が糸Yに張力を付与している状態を示している。図5Aは、張力付与部31が糸Yに張力を付与している際の上面図であり、図5Bは、張力付与部31が糸Yに張力を付与している際の正面図である。また、図6Aは、張力付与部31が糸Yに小さな張力を付与している際の断面図であり、図6Bは、張力付与部31が糸Yに大きな張力を付与している際の断面図である。なお、図中の黒矢印は、糸Yの送り方向を示している。
【0060】
張力付与装置3は、糸Yに張力を付与する場合、略円筒部材31aを略円筒部材31bに近接する方向へ可動する。すると、略円筒部材31aは、略円筒部材31bよりも外径が小さいために該略円筒部材31bの内方に挿入されることとなる(図5A、図5B、図6A、図6B参照)。
【0061】
このとき、略円筒部材31aと略円筒部材31bに挟み込まれた糸Yは、互いのガイド部G1・G2によって押されるため、糸道が屈曲することとなる(図6A、図6B中C部参照)。そして、糸道が屈曲した糸Yには、屈曲量に応じて摩擦力が作用するため、糸Yが引張られることによって、該糸Yに張力が付与されるのである。即ち、図6Aに示すように、糸Yの屈曲量が小さい場合では、糸Yに小さな張力が付与される。一方、図6Bに示すように、糸Yの屈曲量が大きい場合では、糸Yに大きな張力が付与される。
【0062】
このような構成により、略円筒部材31a・31bに挟み込まれた糸Yの屈曲量を変化させることができ、該糸Yに付与する張力を調整することが可能となる。
【0063】
なお、上述したように、略円筒部材31aは、6つのガイド部G1のうち、対角線上にある二箇所のガイド部G1によって糸Yを案内する。更に、略円筒部材31bも、6つのガイド部G2のうち、対角線上にある二箇所のガイド部G2によって糸Yを案内する。
【0064】
このような構成により、一対の略円筒部材31a(31b)において、二箇所のガイド部G1(G2)が糸Yと接触することとなるため、摩擦力の調節がし易くなって糸Yに適宜に張力を付与することが可能となる。
【0065】
換言すると、一対の略円筒部材31a・31bにおいて、四箇所のガイド部G1・G2が糸Yを屈曲させることとなるため、摩擦力の調節がし易くなって糸Yに適宜に張力を付与することが可能となる。
【0066】
以上が本発明の実施形態に係る張力付与装置3の説明である。本張力付与装置3では、向かい合う略円筒部材31a・31bの端部にガイド部G1・G2を形成した構成であるが、略円筒部材31a・31bの両端部にガイド部G1・G2を形成した構成であっても良い。
【0067】
図7は、略円筒部材31a・31bの両端部にガイド部G1・G2を形成した構成を示している。なお、図中の黒矢印は、略円筒部材31a・31bの前後の反転を示している。
【0068】
このように、略円筒部材31a・31bの両端部にガイド部G1・G2を形成することによって、予備ガイド部の数を飛躍的に増加できる。即ち、略円筒部材31a・31bの一端部に形成されたガイド部G1・G2を全て使用した場合であっても、略円筒部材31a・31bをそれぞれ前後に反転させることによって、再び糸Yに張力を付与できる。
【0069】
このような構成により、別途に予備ガイド部を確保しておく必要性が更に低くなるため、予備ガイド部のストックを低減できる。
【0070】
次に、本発明の別実施形態に係る張力付与装置13・23(図示せず)について説明する。
【0071】
図8は、張力付与装置13・23を構成する張力付与部131・231を示している。図8Aは、ガイド部G1・G2を板状部材131a・131bに設けた構成を示し、図8Bは、ガイド部G1・G2を円筒部材231a・231bの外周に設けた構成を示している。なお、図中の黒矢印は、板状部材131a・131bの摺動方向又は円筒部材231a・231bの回転方向を示している。
【0072】
図8Aに示すように、板状部材131a・131bには、該板状部材131a・131bの端部に棒状のガイド基部133a・133bが設けられている。そして、ガイド基部133a・133bの向かい合う端部には、複数のガイド部G1・G2が形成されている。そして、板状部材131a・131bは、糸道に対して垂直方向に摺動可能に構成されている。このため、ガイド部G1・G2が摩耗した場合は、板状部材131a・131bを摺動させることによって、隣接する予備ガイド部で糸Yを案内できる。なお、板状部材131a・131bの支持部132a・132bに対してガイド基部133a・133bをスライドさせるように構成しても良い。
【0073】
このような構成により、本張力付与装置13は、ガイド部G1・G2が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。また、別途に予備ガイド部を確保しておく必要性が低くなるため、予備ガイド部のストックを低減できる。
【0074】
また、図8Bに示すように、円筒部材231a・231bには、該円筒部材231a・231bの外周に複数のガイド部G1・G2が形成されている。そして、円筒部材231a・231bは、糸道に対して平行な回転軸を中心として回転可能に構成されている。このため、ガイド部G1・G2が摩耗した場合は、円筒部材231a・231bを回転させることによって、隣接する予備ガイド部で糸Yを案内できる。
【0075】
このような構成により、本張力付与装置23は、ガイド部G1・G2が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。また、別途に予備ガイド部を確保しておく必要性が低くなるため、予備ガイド部のストックを低減できる。
【0076】
このような張力付与装置3・13・23を備えた巻取ユニット100などの糸巻取機では、ガイド部G1・G2が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できるため、稼動効率を向上させることができる。
【0077】
更に、予備ガイド部を保持できるホルダー7(図1参照)を備えることによって、ガイド部G1・G2が摩耗した場合に、予備ガイド部に素早く交換できる。また、予備ガイド部の有無を視認できるという利点を有する。
【符号の説明】
【0078】
1 給糸ボビン
2 解舒補助装置
3 張力付与装置
31 張力付与部
31a 略円筒部材
31b 略円筒部材
32 張力付与部
33 揺動アーム
34 固定壁
35 脱着部
35a 多角形凸部
35b 多角形凹部
36 脱着部
36a 多角形凸部
36b 多角形凹部
4 糸継装置
5 欠点検出装置
6 綾振装置
100 巻取ユニット
B 巻取管
G1 ガイド部
G2 ガイド部
P パッケージ
R 仮想線
Y 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
張力付与部を備えた張力付与装置であって、
前記張力付与部は、糸と接触することによって該糸に張力を付与するガイド部と、
前記ガイド部と交換できる予備ガイド部と、を備える、ことを特徴とする張力付与装置。
【請求項2】
前記ガイド部と前記予備ガイド部は、単一の部材に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の張力付与装置。
【請求項3】
前記張力付与部は、糸道を挟むように配置される一対の略円筒部材を具備し、
前記ガイド部及び予備ガイド部は、向かい合う前記略円筒部材のそれぞれの端部に仮想線を中心として環状に複数形成される、ことを特徴とする請求項2に記載の張力付与装置。
【請求項4】
一対の前記略円筒部材は、前記端部において前記仮想線の軸を中心に糸道に沿って対向する二箇所のガイド部で糸に張力を付与し、予備ガイド部によって糸に張力を付与する際には前記略円筒部材を回転させて前記予備ガイド部を糸道に沿って配置する、ことを特徴とする請求項3に記載の張力付与装置。
【請求項5】
一対の前記略円筒部材は、一方の前記略円筒部材のガイド部が形成された端部を他方の前記略円筒部材のガイド部が形成された端部の内方に挿入することにより、糸を屈曲させて該糸に張力を付与する、ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の張力付与装置。
【請求項6】
一対の前記略円筒部材は、一方の前記略円筒部材のガイド部が形成された端部を他方の前記略円筒部材のガイド部が形成された端部の内方に挿入する量を変更することにより、糸の屈曲量を変化させて該糸に付与する張力を調整する、ことを特徴とする請求項5に記載の張力付与装置。
【請求項7】
前記略円筒部材は、前記仮想線を中心として段階的に回転させて取り付けることのできる脱着部を有する、ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の張力付与装置。
【請求項8】
前記脱着部は、前記ガイド部と同数の角部を有する多角形凸部と多角形凹部で構成された嵌合構造である、ことを特徴とする請求項7に記載の張力付与装置。
【請求項9】
前記予備ガイド部は、前記略円筒部材のもう一方の端部にも形成され、
前記略円筒部材は、前後反転させた状態で取り付けて使用することができる、ことを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか一項に記載の張力付与装置。
【請求項10】
前記予備ガイド部を保持できるホルダーを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の張力付与装置。
【請求項11】
第1から第10のいずれかの発明に係る張力付与装置を備える糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10613(P2013−10613A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144792(P2011−144792)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】