説明

張力測定方法及び張力測定装置

【課題】簡易な物理モデルを用いて帯状体の張力分布を高精度に求めることができる張力測定方法及び張力測定装置を提供する。
【解決手段】荷重が付加された帯状体1の幅方向に並ぶ複数の測定点30における変位特性を計測し、帯状体1について、測定点30に対応する節点41と該節点41に接合され該節点41に作用する張力を模擬した分布ばね43とを有する2次元の多質点系モデル40にモデル化し、多質点系モデルにおける固有値及び固有ベクトルを解析し、変位特性に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと固有値及び固有ベクトルとが夫々一致するような分布ばね43のばね定数を算出し、ばね定数から張力を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅板等の帯状体の張力状態を把握することのできる張力測定方法及び張力測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼板等の帯状体が通板される際には、走行経路上の前後に帯状体を支持するロールが配置される。ロールは、帯状体に張力を印加しながら長手方向に送り出すことで帯状体の通板が行われる。ところで、帯状体は、例えば、中伸び、片伸び、及び、耳波等の帯状体の幅方向に歪みを有する場合がある。このような歪みを有する帯状体は張力が印加されながら通板されるため、歪みが見かけ上平坦な形状となる場合がある。このように潜在化した帯状体の歪みを検出するものとして、帯状体の幅方向の歪みを張力分布として計測する方法が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、帯板を加振し、板幅方向の複数の測定位置における1次共振モードと2次共振モードとを計測し、予め区分しておいた張力分布パターンの何れかに分類し、その張力分布パターンに従って別途計測した総張力を板幅方向の各位置に割り振ることで張力分布を測定する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、帯状体の幅方向の振動モードを測定し、振動モード周波数と振動モードの正規化振幅値から張力分布を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−43051号公報
【特許文献2】特開平7−218358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1・2に開示された方法は、過去の張力測定データに基づいて、帯状体の張力を推定するものであり、実際の張力との誤差が生じ、張力分布の測定精度が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡易な物理モデルを用いて帯状体の張力分布を高精度に求めることができる張力測定方法及び張力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、荷重が付加された帯状体の幅方向に並ぶ複数の測定点における変位特性を測定する張力測定方法であって、前記帯状体について、前記測定点に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化工程と、前記変位特性に基づく前記測定点の変位量の分布と前記節点の変位量の分布とが一致するような前記ばねのばね定数を算出するばね定数算出工程と、前記ばね定数に基づいて張力を算出する張力算出工程とを有している。
【0009】
また、本発明は、荷重が付加された帯状体の幅方向に並ぶ複数の測定点における変位特性を測定する張力測定装置であって、前記帯状体について、前記測定点に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、前記変位特性に基づく前記測定点の変位量の分布と前記節点の変位量の分布とが一致するような前記ばねのばね定数を算出するばね定数算出手段と、前記ばね定数に基づいて張力を算出する張力算出手段とを有している。
【0010】
上記構成によれば、張力の変化が近似的に剛性の変化に置き換えられるとして、帯状体について、測定点に対応する節点とこの節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化している。そして、帯状体の変位の分布と多質点系モデルの節点の変位量とが一致するようなばねのばね定数から張力を算出している。
【0011】
これにより、帯状体の張力分布を、帯状体と物理的に近似する2次元の多質点系モデルによって算出することができる。この結果、幅方向に複雑な張力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて測定点に分布する張力の夫々について高精度に算出することができる。従って、各張力を足し合わせることで得られる総張力についても高精度に算出することができる。
【0012】
また、本発明は、荷重が付加された帯状体の幅方向に並ぶ複数の測定点における変位特性を計測する張力測定方法であって、前記帯状体について、前記測定点に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化工程と、前記多質点系モデルにおける固有値及び固有ベクトルを解析する固有値解析工程と、前記変位特性に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと固有値及び固有ベクトルとが夫々一致するような前記ばねのばね定数を算出するばね定数算出工程と、前記ばね定数に基づいて張力を算出する張力算出工程とを有している。
【0013】
また、本発明は、荷重が付加された帯状体の幅方向に並ぶ複数の測定点における変位特性を計測する張力測定装置であって、前記帯状体について、前記測定点に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、前記多質点系モデルにおける固有値及び固有ベクトルを解析する固有値解析手段と、前記変位特性に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと固有値及び固有ベクトルとが夫々一致するような前記ばねのばね定数を算出するばね定数算出手段と、前記ばね定数に基づいて張力を算出する張力算出手段とを有している。
【0014】
上記構成によれば、張力の変化が近似的に剛性の変化に置き換えられるとして、帯状体について、測定点に対応する節点とこの節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化している。そして、固有振動数及び振動モードベクトルの分布と固有値及び固有ベクトルとが一致するようなばねのばね定数から張力を算出している。
【0015】
これにより、帯状体の張力分布を、帯状体と物理的に近似する2次元の多質点系モデルを用いて算出することができる。この結果、幅方向に複雑な張力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて測定点に分布する張力の夫々について高精度に算出することができる。従って、各張力を足し合わせることで得られる総張力についても高精度に算出することができる。
【0016】
また、本発明の張力測定方法においては、前記ばね定数算出工程において、最小二乗法により前記ばねのばね定数を算出してよい。
【0017】
また、本発明の張力測定装置において、前記ばね定数算出手段は、最小二乗法により前記ばねのばね定数を算出してよい。
【0018】
上記構成によれば、最小二乗法を用いることで、繰り返し計算における収束性の問題や初期値による計算結果のばらつきを発生させることなく、ばねのばね定数を算出することができる。この結果、幅方向に複雑な張力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて測定点に分布する張力の夫々について高精度に算出することができる。
【発明の効果】
【0019】
帯状体に簡易な物理モデルを適用し、帯状体の張力分布を高精度に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の張力測定装置を示す概略図である。
【図2】多質点系モデルを示す概略図である。
【図3】第1実施形態の張力測定方法を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態の張力測定装置を示す概略図である。
【図5】第2実施形態の張力測定方法を示すフローチャートである。
【図6】多質点系モデルの変形例を示す概略図である。
【図7】第3実施形態の張力測定方法を示すフローチャートである。
【図8】張力分布同定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る張力測定方法を実現するための張力測定装置4を示す概略図である。本実施形態の張力測定装置4は、銅板、アルミ板、鋼板等の帯状体1の製造ラインに適用される。図1に示すように、帯状体1は、走行方向(長手方向)の前後(2点)の位置に配設された2つのロール2・3によって支持されている。この2つのロール2・3は、図示しない制御装置により回転速度が制御され、帯状体1に所定の張力を付与しながら、帯状体1を送り出すようになっている。以下、2つのロール2・3間に位置する部分を帯状体1として説明する。
【0023】
このような帯状体1を測定する張力測定装置4は、荷重付加装置8と、変位特性計測装置5と、演算装置7とを有している。
【0024】
(荷重付加装置8)
図1に示すように、荷重付加装置8は、帯状体1の上方に配設されている。荷重付加装置8は、帯状体1に対して面外方向への振動を付加する機能を有している。荷重付加装置8は、帯状体1に対して平行に移動可能にされている。これにより、適宜測定条件を変えることができ、例えば、帯状体1を所望の振動モードに励起することができる。本実施形態では、荷重付加装置8は、空気を帯状体1に噴射することで、帯状体1を加振させる加振装置であるが、これに限定されない。例えば、水及び油等の流体を帯状体1に噴射する加振装置や、磁力、静電力、電磁誘導による渦電流、及び、音波等によって帯状体1を加振する加振装置等であってもよい。また、荷重付加装置8は非接触式のものが好ましいが、これに限定されない。例えば、荷重付加装置8は、帯状体上の一点を打撃する装置や支持ロールを加振するような装置であってもよい。
【0025】
(変位特性計測装置5)
変位特性計測装置5は、上記のように荷重付加装置8によって面外方向に荷重が付加された帯状体1について、幅方向に並ぶ複数の測定点30における変位特性を測定する。変位特性計測装置5は、帯状体1の長手方向中央部の上面に対向するように配置されている。また、変位特性計測装置5は、帯状体1の幅方向に並んだ5つの非接触変位計5a・5b・5c・5d・5eを有している。非接触変位計5a〜5eは、対向する帯状体1について5つの測定点30(測定点30a・30b・30c・30d・30e)における振動の変位量を計測する。尚、非接触変位計5a〜5eとしては、光反射式のレーザ変位計や過電流式変位計等を挙げることができる。非接触変位計5a〜5eは、帯状体1の幅方向へ端から端まで等間隔で並んでいる。変位特性計測装置5は、演算装置7にデータ通信可能に接続されている。即ち、変位特性計測装置5は、帯状体1の幅方向に並ぶ複数の測定点30a〜30eにおいて、面外方向への振動がどの程度の変位を有しているかを計測する。尚、本実施形態では、5つの非接触変位計を配設した例を示しているが、非接触変位計は5つでなくても良い。
【0026】
本実施形態では、変位特性とは、帯状体1の各測定点30における振動の変位量を示すがこれに限定されず、例えば、変位特性計測装置5によって計測される各測定点30における速度や加速度等であってもよい。また、帯状体1が荷重が付加されることにより静的な変位を有している場合は、変位特性とは、各測定点30における静的な変位を示すものであってもよい。
【0027】
また、変位特性計測装置5は、非接触変位計5a〜5eが計測した振動の変位特性に応じた信号を各測定点30a〜30eに対応付けて演算装置7へ出力するようになっている。尚、測定点は、計測する振動モードの次数以上について計測することが好ましい。例えば、1次〜4次までの振動モードを計測する場合は、測定点を4点以上配置することが好ましい。
【0028】
尚、本実施形態において、非接触変位計は、測定点と同じ数(5つ)を配設するものであるがこれに限定されない。例えば、固定された1つの固定非接触変位計と、帯状体の幅方向に移動可能な1つの移動非接触変位計とを有する構成であっても良い。これにより、2を超える測定点であっても、固定非接触変位計の変位量を基準として1つの測定点に固定し、他の測定点については移動非接触変位計を移動させて他の複数の測定点の変位量を測定し基準となる変位量に対する相対的な各測定点の変位量を計算することで振動モードを計測することができる。
【0029】
(演算装置7)
演算装置7は、振動特性算出部11と、モデル化部12と、固有値解析部13と、ばね定数算出部14と、張力算出部15と、一時記憶部16とを有している。演算装置7は、例えば、一般的なパーソナルコンピュータの様に、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶する記憶装置と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶する例えばRAM(Random Access Memory)のような一時記憶装置とを含んでいるものならば何でもよい。演算装置7が有する上記の各機能部11〜16は、これらハードウェアと記憶装置内のソフトウェアとが協働して構築されている。例えば、ソフトウェアには、測定した変位量から固有振動数及び振動モードベクトルを解析するようなプログラムが含まれる。尚、演算装置7は、単体で形成されるものに限定されず、上記の各機能部11〜16が有する機能が上述のハードウェア及び記憶装置内のソフトウェアを夫々有する複数の装置に分散されるものであってもよい。
【0030】
(一時記憶部16)
一時記憶部16は、上記の機能部11〜15が使用する一時的なデータを記憶する。例えば、一時記憶部16には、変位特性計測装置5から出力される変位特性を示す信号が、各測定点30a〜30eに対応付けて記憶される。また、一時記憶部16には、帯状体1のヤング率、帯状体1の断面二次モーメント、ロール2とロール3間との間の距離(以下、ロール間距離と称す)、隣り合う測定点30a〜30e間の長さ(以下、リンク長と称す)、帯状体1の密度、帯状体1の長手方向に直交する断面の断面積(以下、帯状体断面積と称す)等が予め記憶されている。
【0031】
(振動特性算出部11)
振動特性算出部11は、変位特性計測装置5からの変位特性に基づいて、固有振動数及び振動モードベクトルを解析する。ここで、固有振動数とは、各振動モードの振動数である。また、振動モードベクトルとは、各振動モードの形状を示すベクトル量である。振動特性算出部11は、一時記憶部16に記憶された変位特性に基づいて高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)等を行い、その結果をモード分離することで固有振動数(固有角振動数)、及び、振動モードベクトルを夫々算出する。
【0032】
(モデル化部12)
モデル化部12は、荷重付加装置8により振動が付加された状態の帯状体1について、測定点30に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化する。本実施形態では、モデル化部12は、図2に示すような多質点系モデル40にモデル化する。
【0033】
ここで、帯状体1をモデル化した多質点系モデル40の各構成について図2を参照して説明する。多質点系モデル40は、帯状体1の幅方向と、測定点30の振動方向との2次元のモデルに簡略化したものである。図2に示すように、多質点系モデル40は、節点41(節点41a・41b・41c・41d・41e)と、連結部材42と、分布ばね43(分布ばね43a・43b・43c・43d・43e)と、回転ばね44と、固定面45とを有している。
【0034】
固定面45は、延在する方向が、帯状体1の幅方向と一致するように配設されている。節点41は、測定点30に対応して分布されている。即ち、帯状体1の幅方向へ等間隔に分布する測定点30a〜30eと同様に、節点41が幅方向へ等間隔に分布されている。具体的に、節点41aが測定点30aに対応し、節点41bが測定点30bに対応し、節点41cが測定点30cに対応し、節点41dが測定点30dに対応し、節点41eが測定点30eに対応している。
【0035】
連結部材42は、このように分布する節点41の隣り合う同士を回転自在に接続している。各連結部材42の質量の合計は、帯状体1の質量に一致するものとする。
【0036】
分布ばね43は、固定面45と垂直に配設される。分布ばね43a〜43eは、一端が節点41a〜41eの夫々に接合され、他端が固定面45に固定されている。分布ばね43a〜43eは、節点41a〜41eの夫々に作用する張力を模擬している。
【0037】
回転ばね44は、隣り合う連結部材42同士を接続している。即ち、回転ばね44のばね定数は、帯状体1の各節点41における曲げ剛性を示している。
【0038】
このように、多質点系モデル40は、荷重付加装置8により加振された帯状体1の各測定点30における変位量と、分布ばね43の各節点41における変位量とが等しいものとしてモデル化されたものである。即ち、多質点系モデル40は、帯状体1の張力の高低と帯状体1の固有振動数の高低との間に相関があることに着目し、帯状体1の質量と剛性、張力で定まる固有振動数の変化が、帯状体1の物性である質量及び剛性が不変であることから、張力の変化に相当する仮想的な分布ばね43のばね定数の変化に近似できると考えてモデル化されたものである。
【0039】
(固有値解析部13)
固有値解析部13は、多質点系モデル40における固有値及び固有ベクトルを解析する。具体的に、固有値解析部13は、多質点系モデル40の運動方程式を算出する。また、固有値解析部13は、この運動方程式から得られる質量マトリクスと、剛性マトリクスとを用いて固有値解析を行い、節点41の固有値及び固有ベクトルを算出する。ここで、剛性マトリクスは、未知数である分布ばね43のばね定数と既知である曲げ剛性を示す回転ばね44のばね定数とで表わされる。
【0040】
(ばね定数算出部14)
ばね定数算出部14は、測定点30の変位特性に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと多質点系モデル40の固有値及び固有ベクトルとが一致するような分布ばね43のばね定数を算出する。ここで、「一致する」とは、完全に一致することに限定されない。本実施形態では、測定により得られた測定点30の固有振動数及び振動モードベクトルと、節点41の固有値及び固有ベクトルとを比較し、その差が最小となるような分布ばね43のばね定数を夫々算出するようになっている。
【0041】
このように、本実施形態では、測定した変位量から得られる固有振動数及び振動モードベクトルと多質点系モデル40から得られる固有値及び固有ベクトルとを比較することにより、両者が一致するような分布ばね43のばね定数を算出している。尚、このような算出態様に限定されず、例えば、測定点30における変位量と多質点系モデル40における節点41の変位量とを比較して分布ばね43のばね定数を算出するものであってもよい。
【0042】
(張力算出部15)
張力算出部15は、算出された分布ばね43のばね定数に基づく固有振動数から張力を算出する。具体的に、帯状体1は、長手方向の両端がロール2、3でそれぞれ支持されている。従って、帯状体1は、ロール2、3間に振動の腹を有して自由振動する。この場合、帯状体1の張力は、ロール間距離、固有振動数、帯状体1の質量によって示される。張力算出部15は、この固有振動数が、ばね定数算出部14が算出した分布ばね43のばね定数で求められる固有振動数と一致するものとして、帯状体1の各測定点30における張力を算出する。また、張力算出部15は、各測定点30の張力を合計して、帯状体1の総張力を算出する。
【0043】
このように構成される張力測定装置4が実行する張力測定方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
(荷重付加工程)
先ず、帯状体1は、面外方向へ加振される(S10)。具体的に、帯状体1は、荷重付加装置8から圧縮空気が噴射されることにより加振される。尚、荷重付加装置8は、演算装置7によって駆動が制御されるものであってもよい。
【0045】
(変位特性測定工程)
次に、帯状体1の幅方向に並ぶ複数の測定点30における面外方向の変位特性が測定される(S20)。具体的に、加振される帯状体1の測定点30a〜30eの変位量が、変位特性計測装置5の非接触変位計5a〜5eによって測定される。測定された変位量は演算装置7へ出力され、測定点30a〜30eごとに対応付けられて一時記憶部16に記憶される。
【0046】
(振動特性算出工程)
次に、一時記憶部16に記憶された複数の測定点30における変位量に基づいて、固有振動数ω及び振動モードベクトルνが算出される(S30)。具体的に、i次の振動モードベクトルνは、下記の式(1)のようなベクトル量で示される。尚、固有振動数及び振動モードベクトルを算出する方法として、MDOF(Multiple Degrees Of Freedom method)法やERA(Eigensystem Realization Algorithm)法がある。
【0047】
ν={νi,1, νi,2, ・・・, νi,n・・・・(1)
ここで、nは、測定点30を示し、1〜5の順で、測定点30a〜30eを示す。即ち、νは、測定点30及びモード次数で示される各要素からなる。尚、本実施形態では、測定点30の数と一致する振動モードを測定する。このように算出された固有振動数及び振動モードベクトルは、一時記憶部16に記憶される。
【0048】
(モデル化工程)
次に、帯状体1について、図2に示すような多質点系モデル40にモデル化される(S40)。具体的に、帯状体1は、一時記憶部16に記憶される帯状体1のヤング率、帯状体1の断面二次モーメント、リンク長(連結部材42の長さ)、帯状体1の密度、帯状体断面積等が用いられ多質点系モデル40にモデル化される。
【0049】
(固有値解析工程)
次に、上述したような多質点系モデル40について、固有値が解析されて、固有値及び固有ベクトルが算出される(S50)。具体的に、先ず、連結部材42を接続する回転ばね44のばね定数τは、下記の式(2)のように算出される。回転ばね44のばね定数τは、測定点30における曲げ剛性を示す。
【0050】
τ=EI/l・・・・(2)
ここで、E:帯状体1のヤング率、I:帯状体1の断面二次モーメント、l:リンク長である。
【0051】
そして、多質点系モデル40に基づく式(3)のような運動方程式から質量マトリクス及び剛性マトリクスが算出される。尚、剛性マトリクスは、未知数である分布ばね43のばね定数と、回転ばね44のばね定数τとで表わされる。
【0052】
Ma+Kx=0・・・・(3)
ここで、M:質量マトリクス、K:剛性マトリクス、a:各節点41における加速度ベクトル、x:各節点41における変位ベクトルである。変位ベクトルxは、下記の式(4)のような各節点41における変位量を成分とするベクトルで示される。
【0053】
x={x, x, ・・・, x・・・・(4)
【0054】
そして、式(3)の運動方程式から得られた質量マトリクス及び剛性マトリクスに基づいて固有値及び固有ベクトルが算出される。具体的に、下記の式(5)を満たすような固有値Λ及び固有ベクトルΦが算出される。
【0055】
−1K=ΦΛΦ・・・・(5)
即ち、M−1Kφ=λφとなる固有値λ及び固有ベクトルφが算出されるように固有値解析が行われる。このように算出された固有値Λ及び固有ベクトルΦは、一時記憶部16に記憶される。尚、算出された固有値Λ及び固有ベクトルΦは、下記の式(6)及び(7)のような行列で表わされる。即ち、i次の固有ベクトルφは、下記の式(8)のようなベクトル量で示される。
【0056】
【数1】

【0057】
Φ=[φ, φ, ・・・, φ]・・・・(7)
φ={φi,1, φi,2, ・・・, φi,n}・・・・(8)
ここで、λ:振動モードごとの固有値、φ:振動モードごとの固有ベクトルである。
【0058】
このように、固有値Λ及び固有ベクトルΦが算出される。尚、分布ばね43のばね定数が未知数であるため、固有値Λ及び固有ベクトルΦは、分布ばね43のばね定数に初期値を設定して計算され、繰り返し計算により誤差が最小となるような分布ばね43のばね定数が算出される。
【0059】
(ばね定数算出工程)
次に、ばね定数が算出される(S60)。即ち、測定により得られた変位特性に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと、多質点系モデル40から得られた固有値及び固有ベクトルとが夫々一致するような分布ばね43のばね定数が繰り返し計算により算出される。
【0060】
具体的に、固有ベクトルν及び振動モードベクトルφとの各成分の差と、固有振動数ωの二乗及び固有値λの差を固有振動数ωの二乗で除算した値とを計算し、これらを二乗和する下記の式(9)で示す関数を評価関数Jとする。
【0061】
【数2】

【0062】
この評価関数Jは、振動モードベクトルφと固有値λとが分布ばね定数kから計算されることから、パラメータとして、分布ばね43のばね定数kを有している。このばね定数kは、多質点系モデル40に示すように、物理的には常に正の値をとる。従って、k>0であることを拘束条件として、評価関数Jが最小となるように最適化問題を解く。尚、jは、各節点41を順に示す。最適化の方法には、例えば、最急降下法及び準ニュートン法等が用いられる。これにより、分布ばね43ごとのばね定数kが算出される。
【0063】
このように、本実施形態では、分布ばね43ごとのばね定数を算出するために、測定で得られた変位量に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと、多質点系モデル40における固有値及び固有ベクトルとを比較することで、測定で得られた変位量と節点41の変位量とを比較している。尚、評価関数の比較態様はこれに限定されず、例えば、測定で得られた変位量と節点41の変位量とを比較するものであってもよい。
【0064】
(張力算出工程)
次に、分布ばね43ごとのばね定数から張力が算出される(S70)。具体的に、帯状体1に付与される張力Tと固有振動数fとは、(10)式の関係を有している。
=4LρA ・・・・(10)
ここで、T:測定点30における張力値、L:ロール間距離、f:固有振動数、ρ:帯状体1の密度、A:帯状体断面積である。
【0065】
この固有振動数fが、分布ばね43のばね定数kで表わされる固有振動数と一致するものとして、帯状体1の各測定点30における張力が算出される。即ち、固有振動数fはばね定数kによって下記の式(11)で示される。
=(√(k/meq))/2π・・・・(11)
ここで、meq:モード次数iでの各節点41における帯状体1の等価質量である。この等価質量meqは、下記の式(12)で示される。
【0066】
eq=mmodal/νi,n・・・・(12)
ここで、mmodalは、板のモード質量であり、[Φ][M][Φ]から算出される。即ち、νi,nは、測定から得られたi次の振動モードベクトルの成分である。
【0067】
また、板の質量mは、下記の式(13)で示される。
m=ρAL・・・・(13)
【0068】
これらにより、張力値は下記の式(14)で与えられ、これを用いて測定点30ごと張力値が算出される。
=(k×L×m)/(π×meq,j)・・・・(14)
【0069】
また、帯状体1の幅方向における総張力Ttotalは、下記の式(15)のように、各測定点30における張力値の合計で与えられる。
total=ΣT・・・・(15)
【0070】
このように、張力の変化が近似的に剛性の変化に置き換えられるとして、帯状体1について、測定点30(測定点30a〜30e)に対応する節点41(節点41a〜41e)とこの節点41に接合され該節点41に作用する張力を模擬した分布ばね43(分布ばね43a〜43e)とを有する2次元の多質点系モデル40にモデル化している。そして、測定点30の固有振動数及び振動モードベクトルの分布と節点41の固有値及び固有ベクトルとが一致するような分布ばね43のばね定数から張力を算出している。
【0071】
これにより、帯状体1の張力分布を、帯状体1と物理的に近似する2次元の多質点系モデル40を用いて算出することができる。この結果、幅方向に複雑な張力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて測定点30に分布する張力の夫々について高精度に算出することができる。従って、各張力を足し合わせることで得られる総張力についても高精度に算出することができる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の張力測定装置について説明する。但し、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0073】
本実施形態の張力測定装置204は、荷重付加装置208と、変位特性計測装置5と、演算装置207とを有している。
【0074】
(荷重付加装置208)
図4に示すように、荷重付加装置208は、帯状体1の下方に配設されている。荷重付加装置208は、測定点30a〜30eが分布する幅方向に延在している。荷重付加装置208は、帯状体1に対して面外方向への静的な荷重を付加する機能を有している。荷重付加装置208は、帯状体1に対して平行に移動可能にされている。これにより、適宜測定条件を変えることができる。本実施形態では、荷重付加装置208は、帯状体1に対向して幅方向に複数の孔を有している。荷重付加装置208は、該複数の孔から流体を帯状体1に継続して噴射することにより、帯状体1が噴射箇所において静的なたわみを有した状態にされる。
【0075】
(演算装置207)
演算装置207は、振動特性算出部11と、モデル化部12と、ばね定数算出部214と、張力算出部15と、一時記憶部16とを有している。
【0076】
(ばね定数算出部214)
ばね定数算出部214は、測定点30a〜30eの変位量の分布と節点41a〜41eの変位量の分布とが一致するような分布ばね43のばね定数を算出する。
【0077】
このように構成される張力測定装置204が実行する本実施形態の張力測定方法について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0078】
(荷重付加工程)
先ず、帯状体1へ静的な荷重が付加される(S210)。本実施形態では、第1実施形態と異なり、荷重付加装置208により帯状体1は静的にたわんだ状態になる。
【0079】
(変位特性測定工程)
次に、帯状体1の幅方向に並ぶ複数の測定点30における面外方向の変位特性が測定される(S220)。本実施形態では、帯状体1が、第1実施形態と異なり、静的に荷重が付加されている。従って、帯状体1の測定点30における静的な変位量を示す変位ベクトルxexpが、変位特性として演算装置207へ出力される。
【0080】
(モデル化工程)
次に、帯状体1について、図2に示すような多質点系モデル40にモデル化される(S240)。具体的に、帯状体1は、一時記憶部16に記憶される帯状体1のヤング率、帯状体1の断面二次モーメント、リンク長、帯状体1の密度、帯状体断面積等が用いられ多質点系モデル40にモデル化される。
【0081】
(ばね定数算出工程)
次に、ばね定数が算出される(S260)。本実施形態では、変位特性に基づく測定点30の変位量の分布と節点41の変位量の分布とが一致するような分布ばね43のばね定数が算出される。
【0082】
具体的に、モデル化された多質点系モデル40について、静加重Fを外力とする運動方程式が、下記の式(16)のように与えられる。
Kxana=F・・・・(16)
ここで、xana:各節点41の変位を示す変位ベクトルである。
【0083】
そして、変位ベクトルxanaが、式(16)の両辺にKの逆行列を乗じることで算出される。尚、変位ベクトルxanaは、各成分に分布ばね43のばね定数をパラメータとして有している。
【0084】
そして、各測定点30及び各節点41ごとに、多質点系モデル40から得られた変位ベクトルxana、及び、測定により得られた変位ベクトルxexpの各成分の差を二乗する下記の式(17)で示す関数を評価関数Jとする。
【0085】
【数3】

【0086】
この評価関数Jは、パラメータとして、分布ばね43のばね定数kを有している。このばね定数kは、多質点系モデル40に示すように、物理的には常に正の値をとる。従って、k>0であることを拘束条件として、評価関数Jが最小となるように分布ばね43ごとに最適化がなされる。尚、jは、1、2、・・・、nであり、各節点41を順に示す。最適化の方法には、例えば、最急降下法及び準ニュートン法等が用いられる。これにより、分布ばね43ごとのばね定数kが算出される。
【0087】
(張力算出工程)
次に、第1実施形態の張力算出工程と同様に、ばね定数算出工程により算出された分布ばね43のばね定数に基づいて各測定点30における張力値、及び、総張力値が算出される。
【0088】
このように、張力の変化が近似的に剛性の変化に置き換えられるとして、帯状体1について、測定点30(測定点30a〜30e)に対応する節点41(節点41a〜41e)とこの節点41に接合され該節点41に作用する張力を模擬した分布ばね43(分布ばね43a〜43e)とを有する2次元の多質点系モデル40にモデル化している。そして、帯状体1の変位の分布と多質点系モデルの節点41の変位量とが一致するような分布ばね43のばね定数から張力を算出している。
【0089】
これにより、帯状体1の張力分布を、帯状体1と物理的に近似する2次元の多質点系モデル40によって算出することができる。この結果、幅方向に複雑な張力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて測定点30に分布する張力の夫々について高精度に算出することができる。従って、各張力を足し合わせることで得られる総張力についても高精度に算出することができる。
【0090】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の張力測定装置について説明する。但し、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0091】
本実施形態の張力測定装置は、第1実施形態の張力測定装置4(図1参照)と同じ構成である。本実施形態の張力測定装置が実行する張力測定方法について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0092】
図7のフローチャートにおいて、荷重付加工程(S10)、変位特性測定工程(S20)、振動特性算出工程(S30)、モデル化工程(S40)、および、張力算出工程(S70)は、第1実施形態と同じであるのでその説明を省略する。
【0093】
(ばね定数算出工程)
第1実施形態と同様のモデル化工程(S40)の後に、ばね定数が算出される(S360)。即ち、測定により得られた変位特性に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと、多質点系モデル40から得られた固有値及び固有ベクトルとが夫々一致するような分布ばね43のばね定数が最小二乗法により算出される。
【0094】
具体的には、図2の多質点系モデル40の運動方程式が式(3)で表されるとすると、剛性マトリクスKは、式(18)に示すように、板の曲げ剛性を表す回転ばね成分Kと、張力を模擬した分布ばね成分Kとに分けられる。回転ばね成分Kは板の物性と寸法から求まる既知の行列で、分布ばね成分Kは求めたい未知パラメータの行列である。
【0095】
K=K+K・・・・(18)
【0096】
そして、変位特性測定工程(S20)で得られた変位特性の実験値に基づいて、振動特性算出工程(S30)で固有振動数Λと振動モードΦとが計算される。式(3)の運動方程式から得られた質量マトリクス及び剛性マトリクスと実験により得られた固有振動数及び振動モードとは下記の式(19)の関係がある。
【0097】
(ΦMΦ)−1Φ(K+K)Φ=Λ・・・・(19)
ここで、ΛとΦは実験値、MとKは計算により求まる既知パラメータである。張力分布を表すばね分布の剛性行列Kを未知パラメータとし、各行列の成分に着目して、式(19)を整理する。計算上、ΛとΦの固有振動数と振動モードベクトルの数はいくつでも良いが、ここでは1次〜4次まで使用した場合について説明する。即ち、固有ベクトルΦは以下のようになる。
Φ=[φ, φ, φ, φ]・・・・(20)
【0098】
式(19)を各成分について展開すると次式が得られる。
【0099】
【数4】

【0100】
式(21)の両辺は対称行列であるから、次式に示す10個の独立した等式が得られ、未知数Kについて整理すると、以下のようになる。
【0101】
【数5】

【0102】
また、剛性行列Kは対角行列であるから、下記の式(23)で示される。ここで、式(23)のkTnは図2中の各分布ばねのばね定数に対応している。
【0103】
【数6】

【0104】
式(22)の左辺を展開して未知数Kについてまとめると、下記の式(24)で示される。
【0105】
【数7】

【0106】
式(24)を未知ベクトルk={kT1,kT2,・・・,kTnについて最小二乗法で解けば、ばね分布が求まる。
【0107】
ここで、式(24)について、モードの数をmとして一般化した場合の式を以下に示す。次式を利用することで、実験によって得られたモードの数に合わせた最小二乗法を適用することができる。
【0108】
【数8】

【0109】
最小二乗法は、式(24)におけるkの係数行列をVとし、右辺のベクトルをkとして、次式のように解く。
【0110】
Vk=k・・・・(26)
=V・・・・(27)
ただし、
=(VV)−1・・・・(28)
【0111】
ここで、行列Vのランクが列数より少ない場合、式(27)の解が発散する。そこで、式(29)に示す特異値分解を利用して最小二乗法を解く。ただし、P、QはVの特異ベクトルを列ベクトルとする直交行列、DはVの特異値を対角成分に持つ対角行列、QはQの共役転置行列である。
V=PDQ・・・・(29)
【0112】
同定精度を改善するために、行列Dで絶対値の大きい特異値のみを採用し、絶対値の小さい特異値を「0」に置き換えた行列をD’とする。また、D’の「0」でない特異値の逆数を対角成分とする行列の転置行列をD’として、次式に示すようにVの擬似逆行列を求める。
=QD’・・・・(30)
【0113】
以上により、最小二乗法が解かれ、ばね分布が求まる。
【0114】
(張力算出工程)
次に、第1実施形態と同様の張力算出工程(S70)により、ばね分布の値を張力に換算することで、張力分布と総張力とが算出される(S70)。
【0115】
図8に全特異値を使用した式(28)と、小さい特異値を除去した式(30)とによる張力分布の計算結果を示す。全特異値を使用するよりも、小さい特異値を除去した方が、良好な結果が得られることが分かる。なお、式(30)において採用する絶対値の大きい特異値の数は任意であるが、例えば実験により得られたモードの数と一致させると比較的良好な結果が得られる。
【0116】
このように、最小二乗法を用いることで、繰り返し計算における収束性の問題や初期値による計算結果のばらつきを発生させることなく、分布ばね43のばね定数を算出することができる。この結果、幅方向に複雑な張力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて測定点30に分布する張力の夫々について高精度に算出することができる。
【0117】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0118】
例えば、本実施形態において、帯状体1を図2に示す多質点系モデル40のような2次元モデルにモデル化したが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示すような、多質点系モデル340であってもよい。
【0119】
具体的に、多質点系モデル340は、節点341と、分布ばね43(分布ばね43a・43b・43c・43d・43e)と、せん断ばね344と、固定面45とを有している。図6に示すように、節点341は、帯状体1の質量を有している。また、せん断ばね344は、隣り合う節点341同士を接続し、接続する節点341間の相対変位に比例した復元力が作用するようになっている。
【符号の説明】
【0120】
1 帯状体
2・3 ロール
4 張力測定装置
5 変位特性計測装置
5a・5b・5c・5d・5e 非接触変位計
7 演算装置
8 荷重付加装置
11 振動特性算出部
12 モデル化部
13 固有値解析部
14 ばね定数算出部
15 張力算出部
16 一時記憶部
30(30a・30b・30c・30d・30e) 測定点
40 多質点系モデル
41(41a・41b・41c・41d・41e) 節点
42 連結部材
43(43a・43b・43c・43d・43e) 分布ばね
44 回転ばね
45 固定面
204 張力測定装置
207 演算装置
208 荷重付加装置
214 ばね定数算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重が付加された帯状体の幅方向に並ぶ複数の測定点における変位特性を測定する張力測定方法であって、
前記帯状体について、前記測定点に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化工程と、
前記変位特性に基づく前記測定点の変位量の分布と前記節点の変位量の分布とが一致するような前記ばねのばね定数を算出するばね定数算出工程と、
前記ばね定数に基づいて張力を算出する張力算出工程と
を有することを特徴とする張力測定方法。
【請求項2】
荷重が付加された帯状体の幅方向に並ぶ複数の測定点における変位特性を計測する張力測定方法であって、
前記帯状体について、前記測定点に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化工程と、
前記多質点系モデルにおける固有値及び固有ベクトルを解析する固有値解析工程と、
前記変位特性に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと固有値及び固有ベクトルとが夫々一致するような前記ばねのばね定数を算出するばね定数算出工程と、
前記ばね定数に基づいて張力を算出する張力算出工程と
を有することを特徴とする張力測定方法。
【請求項3】
前記ばね定数算出工程において、最小二乗法により前記ばねのばね定数を算出することを特徴とする請求項2に記載の張力測定方法。
【請求項4】
荷重が付加された帯状体の幅方向に並ぶ複数の測定点における変位特性を測定する張力測定装置であって、
前記帯状体について、前記測定点に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、
前記変位特性に基づく前記測定点の変位量の分布と前記節点の変位量の分布とが一致するような前記ばねのばね定数を算出するばね定数算出手段と、
前記ばね定数に基づいて張力を算出する張力算出手段と
を有することを特徴とする張力測定装置。
【請求項5】
荷重が付加された帯状体の幅方向に並ぶ複数の測定点における変位特性を計測する張力測定装置であって、
前記帯状体について、前記測定点に対応する節点と該節点に接合され該節点に作用する張力を模擬したばねとを有する2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、
前記多質点系モデルにおける固有値及び固有ベクトルを解析する固有値解析手段と、
前記変位特性に基づく固有振動数及び振動モードベクトルと固有値及び固有ベクトルとが夫々一致するような前記ばねのばね定数を算出するばね定数算出手段と、
前記ばね定数に基づいて張力を算出する張力算出手段と
を有することを特徴とする張力測定装置。
【請求項6】
前記ばね定数算出手段は、最小二乗法により前記ばねのばね定数を算出することを特徴とする請求項5に記載の張力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−257378(P2011−257378A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274345(P2010−274345)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】