説明

強化した難消化性デンプン含有量および抑制された血糖上昇応答を有するジャガイモ製品ならびにその方法

本願は、強化した難消化性デンプン(RS)含有量および低下した推定血糖上昇指数値を有する全組織ジャガイモ製品を含む組成物に関する。強化した難消化性デンプン(RS)含有量および血糖上昇指数値を有する全組織ジャガイモ製品を調製し、使用する方法もまた、開示される。本発明の一局面は、食品システム(スナック食品、押し出し成形されたフレンチフライ/ジャガイモ片、脱水マッシュポテト製品、ベーカリー製品など)において利用するための強化したRS含有量および抑制されたデンプン消化率を有する多機能性のジャガイモ顆粒成分の開発である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府支援の陳述)
本発明は、the United States Department of Agriculture, National Research Initiative Competitive Grants Programにより授与された助成金番号2003−01730の下の政府支援により行われた。政府は本発明に対して、一定の権利を有する。
【0002】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年10月2日に出願された米国仮特許出願第61/248,350号に対する優先権の利益を主張する。
【0003】
(開示の分野)
本発明は、強化した難消化性デンプン(resistant starch)(RS)および/または遅消化性デンプン(SDS)の含有量を有するジャガイモ製品を含む組成物、その使用法、およびその作製法に関する。
【背景技術】
【0004】
(開示の背景)
食品の血糖上昇応答(単にそれらの炭水化物含有量ではなく)と、肥満およびヒトの疾患(II型糖尿病、心疾患など)に関するリスクとの間の潜在的な関係を裏付ける科学的証拠が増大しつつある(非特許文献1;非特許文献2)。一般に、疫学研究からの知見は、血糖上昇の低い食餌は、肯定的な健康上の利益を提供し得、慢性疾患の発症のリスクを最小限にする助けとなり得るという概念を裏付ける(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5、非特許文献6;非特許文献7)。具体的商品および食品カテゴリーの両方が、高い食餌性血糖上昇応答に対する潜在的寄与因子として同定され、関連づけられてきた。
【0005】
ジャガイモ(これは、現代の西洋文明の食餌における主たる炭水化物源である)は、米国において1人あたり1年あたり118ポンドより多くのの消費量を示す(非特許文献8)。経済的見通しに拠れば、ジャガイモは、米国の農家に、1年間の現金収入でおよそ30億ドルを提供する一方で、全世界でのジャガイモ生産は、1年あたり29300万トンを示す(非特許文献9)。しかし、ジャガイモは、一般に、加熱もしくは調理に供された後に、それらの顕著なデンプン含有量に応じた(非特許文献10;非特許文献11)、比較的高い血糖上昇応答を示す(非特許文献10;非特許文献1;非特許文献2)。ジャガイモは、消費者に多様な栄養的利益を提供する(非特許文献12)が、それらは、それらの高い血糖上昇応答との関連に起因して、問題であると考えられている。
【0006】
血糖上昇応答が抑制されたジャガイモ製品が必要である。このような製品は、米国のジャガイモ栽培者および加工業者が、現在得難い市場領域へと拡大および多角化することを可能にする。市場に上がっている種々の種類のジャガイモ製品の中で、脱水顆粒もしくはフレークは、おそらく、栄養的におよび感覚刺激的に適切であるのみならず、長期の保存期間にわたってそれを保持したままである製品を作り出すための最も満足のいくビヒクルを示す(非特許文献13)。脱水マッシュポテト製品自体は、個々の家庭およびケータリング業者両方のためのジャガイモベースのコンビニエンス食品の重要な部分であり、食品成分として使用するための理想的かつ用途の広い製品形態をも示す。
【0007】
ジャガイモ産業は、血糖上昇応答が抑制されたジャガイモベースの製品を生産する能力を有して、食品成分および/または消費者向け最終製品の両方の観点からの、より健康的な食品に対する消費者の増大する要求に応答する、よりよい位置にいるであろう。この種の製品の多様化により、米国のジャガイモ加工業者が、国内市場および国際市場において競争に生き残ることを可能にする。
【0008】
ジャガイモがヒトの食餌において重要な炭水化物源であるので、強化したRS含有量および抑制された血糖上昇応答を有するジャガイモベースの製品を製造することに潜在的な利益がある。このようなアプローチは、ジャガイモに関連するものについて否定的な消費者の認識に反論する助けとなり得、消費者がジャガイモ製品により提供される多くの肯定的な栄養的利益(例えば、ビタミンC含有量、高品質のタンパク質など)を利用し続ける励みとなる。
【0009】
関連技術の前述の説明は、そこで記載される文書(係属中の米国特許出願が挙げられる)のうちのいずれかが、本開示の実施形態に対する先行技術であることの容認としてはいかようにも意図するものではない。さらに、上記記載される製品、方法、および/または装置と関連する任意の不利益についての本明細書中での記載は、上記開示される実施形態を限定することを意図しない。実際に、本開示の実施形態は、それらの記載される不利益をもつことのない、上記記載される製品、方法、および/または装置の特定の特徴を含み得る。
【0010】
本願は、本明細書全体を通じて示されるように、多くの異なる刊行物を参照する。これら異なる刊行物のリストは、以下の標題「参考文献」の節に見いだされ得る。これら刊行物の各々は、本明細書に参考として援用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Fernandes, G.,Velangi, A. and Wolever, T. 2005. Glycemic index of potatoes commonly consumed in North America. Journal of the American Dietetic Association, 105(4):557−562.
【非特許文献2】Tahvonen, R., Hietanen, R.M., Sihvonen, J. and Salminen, E. 2006. Influence of different processing methods on the glycemic index of potato (Nicola). Journal of Food Composition and Analysis, In Press.
【非特許文献3】Collier, G..R., Giudici, S. and Kalmusky, J. 1988. Low glycaemic index starchy foods improve glucose control and lower serum cholesterol in diabetic children. Diabetes, Nutrition and Metabolism, 1:11−19.
【非特許文献4】Jenkins, D.J, Wolever, T.M. and Buckley, G..1988. Low glycemic index starchy foods in the diabetic diet. Amercia Journal of Clinical Nutrition, 48:248−254.
【非特許文献5】Salmeron, J., Ascherio, A. and Rimm, E.B. 1997a. Dietary fiber, glycemic load, and risk of NIDDM in men. Diabetes Care, 20:545−50.
【非特許文献6】Salmeron, J., Manson, J.E., Stampfer, M.J., Colditz, G.A., Wing, A.L. and Willet, W.C. 1997b. Dietary fiber, glycemic load, and risk of non−insulin−dependent diabetes mellitus in women. The Journal of the American Medical Association, 277: 472−477.
【非特許文献7】Fung, T.T., Hu, F.B. and Pereira, M.A. 2002. Whole−grain intake and the risk of type 2 diabetes: a prospective study in men. America Journal of Clinical Nutrition, 76: 535−540.
【非特許文献8】USDA, 2008. Potatoes−Per Capita Availability: Economic Research Service. Retrieved 2010.
【非特許文献9】FAOSTAT. 1998. September (faostat.fao.org). Retrieved 2004−10−12.
【非特許文献10】Susan, M.K. and Englyst, H.N. 1993. The influence of food preparation methods on the in−vitro digestibility of starch in potatoes. Food Chemistry, 49:181−186.
【非特許文献11】Soh, N.L. and Brand−Miller, J. 1999. The glycemic index of potatoes: the effect of variety, cooking method and maturity. European Journal of Clinical Nutrition, 53:249−254.
【非特許文献12】Camire, M.E., Kubow, S. and Donnelly, D. 2009. Potatoes and human health. Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 49(10):823−840.
【非特許文献13】Hadziyev, D. and Steele, L. 1979. Dehydrated mashed potatoes−chemical and biochemical aspects. Advances in Food Research, 25:55−136.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(開示の要旨)
本発明の一局面は、食品システム(スナック食品、押し出し成形されたフレンチフライ/ジャガイモ片、脱水マッシュポテト製品、ベーカリー製品など)において利用するための強化したRS含有量および抑制されたデンプン消化率を有する多機能性のジャガイモ顆粒成分の開発である。本発明は、それによってジャガイモ製品が化学改変されて新規なジャガイモベースの食物製品/成分が得られる、記載の方法を提供する。上記記載される加工処理条件の下で、ジャガイモ材料は、食品用途にデンプンを改変するために承認された化学改変剤(置換剤および/または架橋剤)で処理される。
【0013】
本発明の一局面は、強化したRS含有量および抑制されたデンプン消化率を有する新規な改変製品を製造するために食品に承認された試薬を使用して、全組織ジャガイモ基質(whole−tissue potato substrate)(インタクトなジャガイモ細胞内の細胞壁構成成分および/またはデンプン)を(化学的に)改変することである。好ましくは、全組織ジャガイモ基質は、インタクトなジャガイモ細胞内の細胞壁構成成分および/またはデンプン内のデンプンの化学改変を通じて、強化した含有量のタイプ4難消化性デンプン(RS4)を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、反応は、イソプロパノールエタノール水性スラリー内の塩基性pH条件下で行われる。デンプンポリマーに組み込まれた化学置換基のパターンが原因で、ジャガイモ材料内の上記デンプンの一部(量は、使用される反応条件に従って変動する)は、デンプン分解酵素による完全消化に難消化性になる。従って、上記生成されたジャガイモ製品/成分は、難消化性デンプン(RS)(タイプ4)の供給源を示し、非反応コントロールと比較して、低下した酵素加水分解の程度(すなわち、低下した血糖上昇の属性)をも示す。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明のジャガイモ製品/成分は、市販のジャガイモ成分(例えば、顆粒、フレーク、フラワーなど)の既存の適用が挙げられるが、これらに限定されない食物製品における用途を有し、このような食物製品にRS含有量の強化および/または血糖上昇応答の抑制を与えるという追加の利点を有する。従って、これら新規のジャガイモ成分/製品の特有の属性(血糖上昇応答の抑制およびRS含有量の増加)はまた、上記ジャガイモ成分/製品を、新型の食物製品(糖尿病について意図されるか、または結腸の健康状態を高めるように処方されたものを含む)の処方を適切にする。さらに、上記新規なジャガイモ成分/製品を加工処理するために記載される方法はまた、伝統的なマッシュポテトおよびジャガイモのフレーク、フラワーおよび/または顆粒の加工処理の強化に有用であると判明し得る。いくつかの実施形態において、上記改変ジャガイモ成分/製品は、化学改変されたデンプン(例えば、低下したデンプン老化)のものに類似した利益を示す。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品を調製する方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記ジャガイモ製品のRS含有量を増大させる工程を包含する。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変して、その中の上記難消化性デンプン(RS)の強化を増大させるための方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変する工程を包含する。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、デンプン老化に対して改変されたジャガイモ製品の難消化性を増大させるための方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、デンプン老化に対して改変されたジャガイモ製品の難消化性を増大させる工程を包含する。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、全組織ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させるための方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させる工程を包含する。
【0020】
強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程、および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させる工程の手順によって製造されたジャガイモ成分を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記ジャガイモ基質は、脱水ジャガイモ基質である。いくつかの実施形態において、ジャガイモ基質は、フレーク、顆粒、もしくはフラワーである。いくつかの実施形態において、上記ジャガイモ基質は、皮をむいたジャガイモ、ジャガイモスライス、キューブ状ジャガイモ、ダイス状ジャガイモ、シュレッド状ジャガイモ、くし形切りにしたジャガイモ、またはスティック状ジャガイモの形態にある。
【0022】
上記エーテル化する工程の温度は、22℃〜70℃の間であり得る。例えば、上記エーテル化する工程の温度は、30℃〜55℃の間、40℃〜50℃の間、または45℃〜50℃の間であり得る。
【0023】
上記エステル化する工程の温度は、22℃〜70℃の間であり得る。例えば、上記エステル化する工程の温度は、30℃〜55℃の間、40℃〜50℃の間、もしくは45℃〜50℃の間であり得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記エーテル化する工程は、以下のうちの1つ以上から選択され得る:プロピレンオキシド、アクロレイン、エピクロロヒドリン、エピクロロヒドリンとプロピレンオキシド、エピクロロヒドリンと無水酢酸、およびエピクロロヒドリンと無水コハク酸、ならびにこれらの混合物およびこれらの組み合わせ。上記使用されるエーテル化剤の量は、ジャガイモ基質乾燥重量に基づいて、0.5%〜35%[w/w]の間である。
【0025】
上記エーテル化する工程は、酸性条件下または塩基性条件下で行われ得る。塩基性条件が好ましい。例えば、上記エーテル化する工程は、8〜14(例えば、10〜14の間)の間のpHで行われ得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記エステル化剤は、以下のうちの1つ以上から選択され得る:トリメタホスフェート(STMP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、オキシ塩化リン、およびエピクロロヒドリン。いくつかの実施形態において、上記エステル化剤は、以下のうちの1つ以上から選択され得る:無水酢酸、無水アジピン酸、無水アジピン酸と無水酢酸、酢酸ビニル、オルトリン酸一ナトリウム、1−オクテニル無水コハク酸、無水コハク酸、オキシ塩化リン、オキシ塩化リンと酢酸ビニル、オキシ塩化リンと無水酢酸、トリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、およびトリメタリン酸ナトリウム。上記使用されるエステル化剤の量は、ジャガイモ基質乾燥重量に基づいて、0.5%〜35%[w/w]の間である。
【0027】
上記エステル化する工程は、酸性条件下もしくは塩基性条件下で行われ得る。塩基性条件が好ましい。例えば、上記エステル化する工程は、8〜14の間(例えば、10〜14の間)のpHで行われ得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、本実施形態の方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤のアルコール水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、本実施形態の方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤のアルコール水溶液を、塩基性条件下で22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程を包含する。上記アルコールは、アルキルアルコールのうちの1種以上であり得る。上記アルキルアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記ジャガイモ基質は、30℃〜70℃の間の温度へと、イソプロパノール水溶液もしくはエタノール水溶液の存在下で、加熱される。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、RS含有量8%〜70%を有する全組織ジャガイモ製品を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、タイプ4難消化性デンプン(RS4)含有量8%〜70%を有する全組織ジャガイモ製品を含む組成物が提供される。上記ジャガイモ製品は、ジャガイモフレーク、ジャガイモ顆粒、またはジャガイモフラワーであり得る。上記ジャガイモ製品は、脱水されていてもよい。いくつかの実施形態において、上記ジャガイモ製品は、皮をむいたジャガイモ、ジャガイモスライス、キューブ状ジャガイモ、ダイス状ジャガイモ、シュレッド状ジャガイモ、くし形切りにしたジャガイモ、またはスティック状ジャガイモの形態にある。上記ジャガイモ製品は、RS含有量8%〜70%を有する医療用食品であるジャガイモ製品であり得る。上記ジャガイモ製品は、RS4含有量8%〜70%を有する医療用食品であるジャガイモ製品であり得る。いくつかの実施形態において、上記ジャガイモ製品の上記血糖上昇応答値は、70未満(例えば、40〜70の間(例えば、65未満、60未満、55未満、50未満、45未満))である。いくつかの実施形態において、上記医療用食品であるジャガイモ製品の上記血糖上昇応答値は、70未満(例えば、40〜70の間(例えば、65未満、60未満、55未満、50未満、45未満))である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、デンプン分子の構造およびデンプン顆粒構造物の模式図(出典Chaplin,2010)である。
【図2】図2は、ジャガイモ組織内の、(a)柔組織細胞内の非糊化(ungelatinized)デンプン顆粒、(b)加熱の間に膨潤および糊化を受けて、一時的な「膨潤圧」を取り囲む細胞壁に対して発揮することを示す。さらなる加熱により、デンプン顆粒は、(c)顆粒および分子の整然とした秩序の両方を失って、糊化したデンプン塊を形成し、これは、デンプン分解酵素によって容易に消化される(BeMiller and Huber,2008)。
【図3】図3は、インタクトなジャガイモ柔組織細胞からなる市販のジャガイモ顆粒の光学顕微鏡写真を示す。細胞壁構造物は、糊化したデンプン(すなわち、ヨウ素で染色された濃い領域)の塊を取り囲む。
【図4】図4は、CLSMによって検査する場合に、蛍光プローブ(DTAF)で誘導体化した後の市販のジャガイモ顆粒柔組織細胞の光学切片を示す。上記切片(これは、上記誘導体化した柔組織細胞の近似の(approximate)幾何的中心を示す)は、上記細胞内の糊化したデンプンの合理的に均質な反応パターンの証拠を提供する。
【図5】図5は、プロピレンオキシド添加レベルと反応温度との間の顕著な相互作用を,ジャガイモ顆粒のモル濃度置換(molar substitution)(MS)に関して示すプロットである。
【図6】図6は、プロピレンオキシド添加レベルと反応温度との間の相互作用の欠如を、ジャガイモ顆粒の難消化性デンプン(RS)レベルに関して示すプロットである。
【図7】図7は、全ての反応温度にわたるヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒についての、モル濃度置換(MS)と難消化性デンプン(RS)含有量との間の関係を示すプロット(r=0.93;n=16)である。
【図8】図8は、プロピレンオキシド添加レベルと反応温度との間の顕著な相互作用を、ジャガイモ顆粒のモル濃度置換(MS)に関して示すプロットである。
【図9】図9は、プロピレンオキシド添加レベルと反応温度との間の顕著な相互作用を、ジャガイモ顆粒の難消化性デンプン(RS)レベルに関して示すプロットである。
【図10】図10は、プロピレンオキシド添加レベルと反応温度との間の顕著な(しかし厳密ではない)相互作用を、ジャガイモ顆粒の難消化性デンプン(RS)レベルに関して示すプロットである。
【図11】図11は、市販の(非改変)ジャガイモ顆粒および化学改変されたジャガイモ顆粒の選択した組み合わせに対する酵素によるデンプン消化速度を、150分間の消化期間の過程にわたって加水分解された全デンプンのパーセンテージとして表した図である。改変ジャガイモ顆粒の反応のためのプロピレンオキシド添加レベル(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、0%、10%、および20%)およびSTMP添加レベル(デンプン乾燥重量に基づいて0%、1%、2%、および4%)は、それぞれ、PO−0、PO−1、およびPO−2、ならびにSTMP−0、STMP−1、STMP−2、およびSTMP−3として示される。
【図12】図12は、市販の(非改変)ジャガイモ顆粒の走査電子顕微鏡写真(倍率200×)を示す。
【図13】図13は、反応コントロールのジャガイモ顆粒(PO−0)の走査電子顕微鏡写真(倍率200×)を示す。
【図14】図14は、市販の改変ジャガイモ顆粒(PO−1)の走査電子顕微鏡写真(倍率200×)を示す。
【図15】図15は、市販の改変ジャガイモ顆粒(PO−2)の走査電子顕微鏡写真(倍率200×)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
好ましい実施形態の以下の記載において、本明細書の一部を構成し、本発明が実施され得る具体的実施形態の例示によって示される添付の図面に対して言及がなされる。他の実施形態が利用され得、本発明の範囲から逸脱することなく、構造的変更がなされ得ることが理解されるべきである。
【0032】
(血糖上昇応答の重要性)
食品は、それらの消費後の血中グルコースレベルを変化させる能力に従って、一般に分類され、この現象は、「血糖上昇応答」として定義される。定義によれば、血糖上昇応答は、食品を摂取することによって誘導される血中グルコース濃度の変化である(FAO/WHO,1998)。Ottoら(1973)は、第1に、種々の食品の異なる血糖上昇効果に注意喚起し、その一方、グルコース吸収のより遅い速度が、糖尿病および冠動脈性心疾患のリスクに関して肯定的な代謝的利益をもたらすという概念は、Burkitt and Trowell(1977)により起された。Jenkinsら(1985)は、I型糖尿病、および後に、異脂肪血症の食事管理のツールとして、上記血糖上昇応答を利用した。この概念は、耐糖能が損なわれた状況において炭水化物含有食品の多くの分類のためのツールとして広く受け入れられている(Jenkinsら,2002)。インスリン抵抗性を付随する中心性肥満および腹内脂肪量(intraabdominal fat mass)に関連した疾患のクラスタの観察は、食品の血糖上昇分類についての必要性をさらに定義した(Baleyら,1973;Landinら,1990;Vague and Raccah,1992;Gerald,2000)。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、冠動脈性心疾患、糖尿病および肥満のリスクを最小限にするための方法が提供され、上記方法は、それを必要とする被験体に本実施形態のジャガイモ製品を施す工程を包含する。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、被験体において体重減少を促進するための方法が提供され、上記方法は、それを必要とする被験体に本実施形態のジャガイモ製品を施す工程を包含する。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、被験体において食後の血中グルコースおよびインスリン応答を低下させるための方法が提供され、上記方法は、それを必要とする被験体に本実施形態のジャガイモ製品を施す工程を包含する。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、食事の間の満腹期間を増大させるための方法が提供され、上記方法は、それを必要とする被験体に本実施形態のジャガイモ製品を施す工程を包含する。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、被験体の結腸の健康状態を増大させるための方法が提供され、上記方法は、それを必要とする被験体に本実施形態のジャガイモ製品を施す工程を包含する。
【0038】
(血糖上昇応答に関連するデンプンの構造およびデンプンの化学)
デンプンは、食餌性炭水化物の主な形態のうちの1つであり、カロリー摂取および血糖上昇応答の両方に重要な寄与因子である。デンプン質の食品は、植物供給源(例えば、ジャガイモおよび穀物製品(例えば、パン、パスタ)に由来する。それにも関わらず、これらデンプンベースの製品の血糖上昇効果は、食品内のデンプンの物理的状態に大いに依存する。デンプンの構造およびデンプンの化学の簡潔な全体像は、デンプン利用性および消化性に影響を及ぼす因子の洞察を提供するために提供されている。
【0039】
その最も単純な形態において、デンプンは、もっぱらα−D−グルカンからなり、2つの主なポリマー(アミロースおよびアミロペクチン)から作られる。アミロースは、約99%のα−(1→4)および約1%のα−(1→6)グリコシド結合を含み、分子量が約10〜10の主に直鎖状の分子である(Bertoft,2000)。概して、アミロース分子は、約1000無水グルコースユニット(AGU)の重合度(DP)を有するが、DPは、植物供給源によって変動する。アミロペクチン(分子量約10〜10)は、アミロースの分子より遙かに大きな分子であり、約95%のα−(1→4)および約5%のα−(1→6)グリコシド結合を有する、より重度に分枝した分子である(Bertoft,2000)。上記アミロペクチンの鎖は、長さが約12〜120AGUの範囲であり(Rutenberg and Solarek,1984)、A鎖、B鎖、もしくはC鎖のいずれかとして分類され得る(図1A)。上記A鎖は、外側のもしくは末端の分枝物であり、これは、それ自体、他の分枝鎖をさらに生じない。対照的に、B鎖は、1つ以上の分枝鎖を生じる内部の鎖である一方で、C鎖は、上記アミロペクチン分子の唯一の還元末端(化合していないアノマー炭素)をもっている。アミロペクチン分子は、200万個より多くのグルコース残基を含み得、密集した分枝の分枝(branch−on−branch)構造を示し得る(Parker and Ring,2001)。
【0040】
植物において、デンプン分子は合成されて、半結晶集合体(顆粒といわれる)を形成し、これは、不溶性のかつ密に集まった様式で炭水化物を貯蔵する手段を提供する(Imbertyら,1991)。デンプン顆粒の大きさ(1〜100μm)および形状(球状、多角形、楕円形など)は、植物種間で、および同様に同じ種の栽培品種内でも変動する(Baghurstら,1996)。デンプン顆粒は、硬い殻と軟らかい殻とが交互になっている同心状の成長輪からなる。上記軟らかい殻の構造は、それらの不定形の性質に起因して正確に知られてはいないが、上記硬い殻は、交互になっている6nmの結晶(アミロペクチン分枝鎖の二重らせん構造を含む)および3nmの不定形(アミロペクチン分枝点領域を含む)反復構造物からなる(図1Bおよび図1D)。アミロペクチン分子は、デンプン顆粒の天然の結晶構造物に主に関与しており、顆粒内に放射状に配向し、それらの非還元末端は、上記顆粒の外側に向かって外部に面している(図1C)。顆粒の結晶性は、デンプン分解酵素へのデンプン鎖の接近を制限する。なぜなら、天然のデンプン顆粒は、非常にゆっくりと消化される(すなわち、加水分解される)からである。アミロース分子は、デンプン顆粒の不定形領域に集中していると考えられているが、それらの正確な顆粒の場所は、論争の的のままである。
【0041】
デンプン顆粒が、過剰な水の存在下で加熱処理に供される場合、それらは、糊化といわれるプロセスを受け(上記デンプンの供給源に依存して55〜130℃)、これは、顆粒状の結晶性および分子の整然とした秩序の喪失を伴い、同様に、上記顆粒構造物の破壊を伴う。糊化の過程を経ると、デンプン分子の間の分子間水素結合は破壊され、このことは、デンプンと水との間のより大きな相互作用を可能にする。この水の浸透は、上記顆粒構造物における不ぞろいを増大させ、天然結晶構造物の融解を促進する(Donald,2000)。冷却すると、ポリマー鎖の直鎖状部分が限定した様式で再び結合し始めて、三次元ゲル構造物を形成するにつれて、老化が始まる(Wu and Sarko,1978)。一旦糊化が始まったら、デンプン分子は、上記天然顆粒構造物の結晶性の性質によってはじめは制限されていた酵素的加水分解に対してより感受性になる。いくつかの制限された分子間再結合(すなわち、老化)が起こり得るが、デンプン分子は、天然顆粒本来の分子の整然とした秩序を再獲得しない(Donald,2000)。
【0042】
(難消化性デンプン(RS)/遅消化性デンプン(SDS))
用語「難消化性デンプン」は、インビトロでの徹底的なα−アミラーゼおよびプルラナーゼ処理による加水分解に抵抗性であった小さな画分のデンプンを記載する。しかし、インビボの観点から、難消化性デンプン(RS)は、小腸内に存在するヒト酵素による消化を免れ(Asp,2001)、結腸へと通過するので生理学的な利益をもたらすデンプン材料として科学的に定義される。これは、消化に対する抵抗性の具体的様式(表1)(Nugent,2005)に基づいて、4つの主なタイプ(RS1、RS2、RS3およびRS4)に分類され得る。
【0043】
表1.難消化性デンプン(RS)の主なタイプおよび特徴
【0044】
【表1】

タイプ1難消化性デンプン(RS1)は、加水分解酵素から物理的に接近不可能な形態にあるか、もしくは加水分解酵素から物理的に隠されていることに起因して、未消化のままであるデンプンを表す。例としては、部分的に製粉化された穀粒および種子、ならびに非常に濃密な(dense)加工処理されたデンプン質の食品が挙げられる。いくらかの穀粒もしくは種子は、デンプンを酵素消化から保護し続ける繊維性の殻に起因して、調理後もインタクトなままである(Englyst and Cummings,1987;Brownら,2001)。しかし、大部分のRS1含有食品は、生もしくは調理していない状態においてのみ難消化性のままである。なぜなら、調理は、加水分解酵素からデンプンを保護する物理的バリアの有効性を劇的に低下させ得るからである(Asp,1996)。
【0045】
難消化性デンプンのタイプ2は、天然のデンプン顆粒(非糊化デンプン)からなり、このデンプン顆粒は、酵素消化に抵抗性の半結晶構造を示す。高アミロースデンプンを除いて、大部分のRS2材料は、過剰な水中で加熱された(すなわち、糊化された)場合、それらの難消化性特徴の実質的に全てを失う(Englyst and Cummings,1987;Englyst and kingman,1990)。
【0046】
タイプ3難消化性デンプン(RS3)は、二重らせん構造物から構成される老化直鎖状デンプン画分(主に、アミロース)からなり、糊化したデンプン鎖を冷却し再結晶化することによって形成される(Englystら,1992;Haralampu,2000)。老化デンプンは、膵臓アミラーゼによる消化に対して非常に抵抗性であり、140〜160℃という高い温度までその難消化性を保持する(Haralampu,2000)。しかし、上記RS3の水保持能は、このタイプのRSに本質的な広範囲のデンプン−デンプン相互作用に起因して、相対的に低減され得る(Sajilataら,2006)。
【0047】
タイプ4難消化性デンプン(RS4)は、デンプン鎖上に嵩高い置換基を導入する化学改変を使用して、酵素加水分解に対する立体障害を増大させる。RS4は、一般に、加熱加工処理の後に消化に対するその抵抗性を保持し、使用される改変の具体的タイプに従い、食品適用のためのデンプン特性の強化をさらに与え得る(Brownら,2001;Sajilataら,2006;Xieら,2006)。
【0048】
関心のあるRS周辺の多くは、RSの潜在的な生理学的役割と関係がある。なぜなら、RSは、小腸での消化から逃れるので、RSは、結腸の細菌叢にとって、発酵可能な炭水化物源として働くからである。これら微生物は、発酵を介して炭水化物材料を代謝するので、上記結腸のpHは低く、短鎖脂肪酸(例えば、アセテート、プロピオネート、およびブチレート)が放出される。これらの二次的代謝産物のうち、RSからのブチレート収量は比較的高く、結腸の健康状態の促進に関係している(Van Munsterら,1994;Baghurstら,1996;Johnson and Gee,1996;Kendallら,2004)。発酵可能な基質の存在は、炎症性腸疾患を予防する助けとなり、上記結腸の粘膜細胞の代謝要求を維持する。Johnson and Gee(1996)は、ブチレートが、結腸の粘膜細胞の増殖/ターンオーバーを低下させ、腫瘍細胞の出現を抑制するのを補助し得ることを報告した。これら因子は、結腸がんのリスク低下に寄与すると考えられる。ラット給餌試験の結果は、RSが、肝臓SR−B1(スカベンジャーレセプタークラスB1)およびコレステロール7α−ヒドロキシラーゼmRNAのレベル増強に起因して、コレステロール低下機能を有することを示唆する(Hanら,2003)。難消化性デンプンはまた、前生物的機能を有し、胆石形成を低下させ、脂肪蓄積を阻害し、ミネラルの吸着を助ける(Sajilataら,2006;Sharmaら,2008)。
【0049】
デンプン材料の別の潜在的に有益なカテゴリーは、遅消化性デンプン(SDS)といわれ、これは、一般に、ヒト小腸を通過する間に、しかし抑制されたかもしくは減少した速度で、グルコースへと完全に分解されそして吸収される(Englystら,1992;Bryanら,1999)。RSとは対照的に、ゆっくりと消化されるデンプンは、血中グルコースレベルに直接寄与するが、消化に時間がかかり、小腸内で徐々に吸収されることに起因して、血中グルコースホメオスタシスに有利な影響を有する(Englystら,1992)。Zhang and Hamaker(2009)は、SDSが、アミロペクチンの微細構造物、特に、短いデンプン鎖 対 長いデンプン鎖の重量比によって影響を受け得ることを示した。彼らは、SDSが、老化の間に長い直線状の分枝鎖の中での結晶発生、もしくは分枝度が高い短鎖が勝ることのいずれかによって好都合であることをさらに示唆した(すなわち、分岐点の数が増大すると、消化が緩徐になる)。Zhang and Hamaker(2009)は、SDSの潜在的な利益を総説し,よりゆっくりとした血流へのグルコースの進入およびインスリン応答の抑制と関連づけた。具体的な、有利な代謝応答(これは、食後グルコースレベルも抑制、低血糖エピソードの低減(すなわち、高血糖状態に応じた過剰補償)、インスリン応答の改善、およびグリコシル化ヘモグロビン濃度の低下を含む)は、改善された満腹感および精神的パフォーマンスを提供すると考えられる。
【0050】
以前に記載されるように、顕著な量のRSおよびSDSを含む食品はまた、グルコース加水分解の速度/血糖上昇応答の制御のための取り込みを抑制する能力を有する。RSの代謝は、ほとんど直ぐに消化される普通に調理したデンプンと比較して、消費して5〜7時間後に起こる(Sajilataら,2006)。
【0051】
この現象は、食後の血糖症およびインスリン血症を低下させ、食事間の満腹感の期間を増大させる可能性を有する(Rabenら,1994;Readerら,1997)。従って、RSが結腸の健康状態に寄与する利益に加えて、同じアプローチがまた、デンプン含有食品の血糖上昇応答の抑制に有用であるようである。
【0052】
一般に、RSは、迅速に消化可能なデンプンの消化、および上記消化可能なデンプン残渣の定量を含む酵素的方法によって測定される。食品の任意のRS決定法の基本的工程は、熱安定性のα−アミラーゼもしくはパンクレアチン酵素を使用して、サンプルから全ての消化性デンプンを最初に除去しなければならない(Englystら,1992;McCleary and Rossiter,2004;Shinら,2004)。現在では、2つの一般的ストラテジーが、RSを決定するために提唱されている(Berry,1986;Englystら,1992)。Englystら(1992)のインビトロRS決定は、実際のヒトの生理学的条件(インビボ)に相関させているという利点を有し、従って、同じアッセイを介してRSおよびSDSの両方を決定できる。
【0053】
(全組織RS食品成分のためのビヒクルとしてのジャガイモ顆粒)
現在までのところ、実質的に全ての市販のRS製品は、RS/SDSデンプン材料を生成するためのビヒクルとして、わずかに(あるとしても)全体の食ストラテジー(whole food strategy)に対して強調され、単離されたデンプンを利用していた。脱水ジャガイモ製品(すなわち、ジャガイモ顆粒)は、食品成分としてのそれらの多用途性、優れた貯蔵安定性、コスト効率的な輸送性、および既存の市場内に商業上の拠点があることに起因して、ジャガイモ組織ベースのRS成分(すなわち、全組織アプローチ)の開発のための潜在的なビヒクルを表すようである。
【0054】
天然のジャガイモ組織は、一般に、2つの主要な領域から構成される:皮層および髄。上記皮層は、維管束の貯蔵柔組織細胞(vascular storage parenchyma cell)から作られ、上記細胞は、非常に多量のデンプン顆粒を収容する。上記髄組織(これは、塊茎の中心領域に位置する)はまた、柔組織細胞からなるが、わずかに低いデンプン密度を含む(Jadhav and Kadam,1998)。柔組織初代細胞壁構造物は、主にセルロース、ヘミセルロース(例えば、キシログルカン、ヘテロマンナン、ヘテロキシラン)、およびペクチン物質から構成される(Parkerら,2001)。ペクチン物質(これは、中層(細胞間隙)に位置する)は、細胞間接着において主要な役割を果たし、上記細胞壁の機械的強度に寄与する(Van Marleら,1997)。天然の組織内では、ジャガイモデンプン顆粒(非糊化状態)は、それらの天然の結晶性構造に起因して、ヒトの消化に対して極めて抵抗性である。
【0055】
ジャガイモ顆粒は、主に、即席のマッシュポテト製品(熱水の添加のみを必要とする)として開発されたが、それらは、パンおよびスナック食品における成分としても使用されている。それらは、加減プロセス(add−back process)を介して、脱水製品として商業的に製造される(Hadziyev and Steele,1979)。ジャガイモ顆粒の基本的製造工程は、以下を包含する:皮をむく工程、スライスする工程、予備調理(precooking)/ブランチング工程、調理する工程、マッシュする−混合する工程(再循環乾燥顆粒が約2の割合で)、コンディショニング工程、再混合する工程、乾燥させる工程、および冷却する工程(Hadzivev and Steele,1979)。Griffon(1969)、Willard(1966)、Shatila and Terrell(1976)およびOoraikul(1977,1978)によって報告されたさらなる加工処理技術としては、トンネル型煮沸器中での連続調理の使用、調理する工程およびマッシュする工程の同時の使用、ならびに予備調理工程および冷却工程を省略するための凍結融解プロセスの組み込みが挙げられる。
【0056】
加熱加工処理(すなわち、調理工程)に際して、組織構造および組成が変更される、ジャガイモの質感における顕著な変化が起こる。ペクチン物質は、他の細胞壁ポリマーと比較すると、加水分解され、可溶化され、この変化は、加熱した際のジャガイモの質感の軟化に寄与する(Van Marleら,1997)。剪断応力の存在下での予備調理工程は、ペクチン中層の加水分解および可溶化に起因して、上記組織を含む個々の柔組織細胞の分離を引き起こす(Hadziyev and Steele,1979)。同時に、柔組織細胞内のデンプン顆粒は、予備調理工程の間に膨潤し、糊化し、その後の蒸し煮工程は、デンプン結晶の融解に起因して、デンプン分子の整然とした秩序の喪失をもたらす(図2)。加熱の間のこのデンプンの熱転移は、低GIカテゴリーから高GIカテゴリーへとジャガイモを変換するのに十分である。なぜなら、糊化後のデンプンは、消化酵素によって容易に作用を及ぼされ得るからである(Englystら,1992;Susan and Englyst,1993)。デンプンのいくらかの老化がその後の冷却加工処理工程の間に起こり、この工程においてアミロース分子およびジャガイモ細胞内の直鎖部分が再結合することは正確なところである(Potter,1954;Harringtonら,1959)。しかし、老化のレベルは、高血糖上昇指数カテゴリーに入る調理したマッシュポテト製品の全体的な消化性を低下させるのに十分ではなく、そして/または十分に安定ではない。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、全組織ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させるための方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させ、それによって、上記ジャガイモ製品の上記血糖上昇応答値を低下させる工程を包含する。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、全組織ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させるための方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させる工程を包含する。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、全組織ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させるための方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させる工程を包含する。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明によって製造された全組織ジャガイモ製品の上記血糖上昇応答値は、少なくとも5ポイント(例えば、少なくとも5ポイント、少なくとも10ポイント、少なくとも15ポイント、少なくとも20ポイント、少なくとも25ポイント、少なくとも30ポイント、少なくとも6ポイント、少なくとも7ポイント、少なくとも8ポイント、少なくとも9ポイント、少なくとも12ポイント、少なくとも18ポイント、少なくとも22ポイント)だけ低下する。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明によって製造された全組織ジャガイモ製品の血糖上昇応答値は、70未満である。これは、69未満、68未満、67未満、66未満、65未満、64未満、63未満、62未満、61未満、60未満、59未満、58未満、57未満、56未満、55未満、54未満、53未満、52未満、51未満、50未満、もしくは45未満の血糖上昇応答値を含む。
【0062】
本発明によって製造された全組織ジャガイモ製品の血糖上昇応答値のいくらかは、40〜70の間(例えば、40〜70の間、40〜65の間、40〜60の間、40〜55の間、40〜50の間、40〜45の間、45〜70の間、45〜65の間、45〜60の間、45〜55の間、45〜50の間、50〜70の間、50〜65の間、50〜60の間、50〜55の間、55〜70の間、55〜65の間、55〜60の間、50〜64の間、50〜63の間、50〜62の間、50〜61の間、50〜59の間、50〜58の間、50〜57の間、50〜56の間、50〜54の間、52〜64の間、52〜63の間、52〜62の間、52〜61の間、52〜59の間、52〜58の間、52〜57の間、52〜56の間、52〜54の間、54〜64の間、54〜63の間、54〜62の間、54〜61の間、54〜59の間、54〜58の間、54〜57の間、54〜56の間、56〜64の間、56〜63の間、56〜62の間、56〜61の間、56〜59の間、および56〜58の間)である。
【0063】
(全組織ジャガイモ製品を調製する方法)
いくつかの実施形態によれば、強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品を調製する方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させ、それによって、上記ジャガイモ製品の上記RS含有量を増大させる工程を包含する。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品を調製する方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記ジャガイモ製品の上記RS含有量を増大させる工程を包含する。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品を調製する方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記ジャガイモ製品の上記RS含有量を増大させる工程を包含する。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変して、その中の強化した難消化性デンプン(RS)を増加させる方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させ、それによって、上記インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変する工程を包含する。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変して、その中の強化した難消化性デンプン(RS)を増加させる方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変する工程を包含する。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変して、その中の強化した難消化性デンプン(RS)を増加させる方法が提供され、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変する工程を包含する。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、デンプン老化に対して改変されたジャガイモ製品の難消化性を増大させる方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させ、それによって、上記デンプン老化に対して改変されたジャガイモ製品の難消化性を増大させる工程を包含する。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、デンプン老化に対して改変されたジャガイモ製品の難消化性を増大させる方法が提供され、上記方法は、全組織ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記デンプン老化に対して改変されたジャガイモ製品の難消化性を増大させる工程を包含する。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、デンプン老化に対して改変されたジャガイモ製品の難消化性を増大させる方法が提供され、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、上記デンプン老化に対して改変されたジャガイモ製品の難消化性を増大させる工程を包含する。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品が提供され、上記製品は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程の手順によって製造されるジャガイモ成分を含む。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品が提供され、上記製品は、全組織ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させる工程の手順によって製造されるジャガイモ成分を含む。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品が提供され、上記製品は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程および/または上記ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させる工程の手順によって製造されるジャガイモ成分を含む。
【0075】
本実施形態のジャガイモ製品は、5%〜70%の間のRS含有量を有し得る。これは、5%〜70%の間、10%〜70%の間、15%〜70%の間、20%〜70%の間、25%〜70%の間、30%〜70%の間、35%〜70%の間、40%〜70%の間、45%〜70%の間、50%〜70%の間、55%〜70%の間、60%〜70%の間、65%〜70%の間、5%〜60%の間、10%〜60%の間、15%〜60%の間、20%〜60%の間、25%〜60%の間、30%〜60%の間、35%〜60%の間、40%〜60%の間、45%〜60%の間、50%〜60%の間、55%〜60%の間、5%〜50%の間、10%〜50%の間、15%〜50%の間、20%〜50%の間、25%〜50%の間、30%〜50%の間、35%〜50%の間、40%〜50%の間、45%〜50%の間、5%〜40%の間、10%〜40%の間、15%〜40%の間、20%〜40%の間、25%〜40%の間、30%〜40%の間、35%〜40%の間、5%〜30%の間、10%〜30%の間、15%〜30%の間、20%〜30%の間、25%〜30%の間、5%〜20%の間、10%〜20%の間、および15%〜20%の間のRS含有量が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
(水溶液)
いくつかの実施形態において、上記エーテル化する工程および/またはエステル化する工程は、全組織ジャガイモ基質と、アルコール水溶液を接触させ、それによって、懸濁物もしくはスラリーを形成することによって行われる。上記エーテル化する工程および/またはエステル化する工程は、酸性条件、中性条件、もしくは塩基性条件下で、22℃〜70℃の間の温度で行われ得る。上記アルコールは、アルキルアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールが挙げられるが、これらに限定されない)のうちの1種以上であり得る。好ましくは、上記アルコールは、25%〜100%[v/v]の間(例えば、30%〜100%、40%〜100%、50%〜100%、60%〜100%、70%〜100%、80%〜100%、または90%〜100%の間)のレベルで存在する。
【0077】
(温度)
いくつかの実施形態において、上記エーテル化する工程および/またはエステル化する工程の温度は、22℃〜70℃の間である。これは、22℃、25℃、30℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、および55℃が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記エーテル化する工程および/またはエステル化する工程の温度は、22℃〜30℃の間、22℃〜35℃の間、22℃〜40℃の間、22℃〜45℃の間、22℃〜50℃の間、22℃〜55℃の間、22℃〜60℃の間、22℃〜65℃の間、22℃〜70℃の間、25℃〜30℃の間、25℃〜35℃の間、25℃〜40℃の間、25℃〜45℃の間、25℃〜50℃の間、25℃〜55℃の間、25℃〜60℃の間、25℃〜65℃の間、25℃〜70℃の間、30℃〜35℃の間、30℃〜40℃の間、30℃〜45℃の間、30℃〜50℃の間、30℃〜55℃の間、30℃〜60℃の間、30℃〜65℃の間、30℃〜70℃の間、35℃〜40℃の間、35℃〜45℃の間、35℃〜50℃の間、35℃〜55℃の間、35℃〜60℃の間、35℃〜65℃の間、35℃〜70℃の間、40℃〜45℃の間、40℃〜50℃の間、40℃〜55℃の間、40℃〜60℃の間、40℃〜65℃の間、40℃〜70℃の間、42℃〜45℃の間、42℃〜50℃の間、42℃〜55℃の間、42℃〜60℃の間、42℃〜65℃の間、42℃〜70℃の間、45℃〜50℃の間、45℃〜55℃の間、45℃〜60℃の間、45℃〜65℃の間、45℃〜70℃の間、50℃〜70℃の間、60℃〜70℃の間、50℃〜60℃の間、47℃〜50℃の間、47℃〜55℃の間、45℃〜52℃の間、47℃〜52℃の間、48℃〜52℃の間、もしくは48℃〜55℃の間である。
【0078】
(ジャガイモ基質)
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法のための出発材料は、全組織ジャガイモ基質である。全組織ジャガイモ基質材料は、上記ジャガイモの肉から製造される。いくつかの実施形態において、上記全組織基質材料は、天然ジャガイモに含まれる大部分の天然乾燥固体を含む。天然乾燥固体は、上記天然ジャガイモの脂質、タンパク質、炭水化物(例えば、デンプン、線維、および糖)、ならびに灰分を含む。いくつかの実施形態において、上記ジャガイモ基質は、天然ジャガイモの上記乾燥固体のうちの少なくとも20%(例えば、天然ジャガイモの上記乾燥固体のうちの少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも98%)を含むジャガイモ製品/成分である。全組織ジャガイモ基質は、単離されたデンプン製品とは異なる。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記全組織ジャガイモ基質は、本発明のジャガイモ製品/成分の開発の出発材料として使用するための、インタクトな柔組織細胞壁構造物を示す既存の市販のジャガイモ製品(例えば、ジャガイモ顆粒)を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記全組織ジャガイモ基質は、本発明のジャガイモ製品/成分の開発の出発材料として使用するためのジャガイモフレーク、ジャガイモ顆粒、もしくはジャガイモフラワーを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、上記全組織ジャガイモ基質は、脱水全組織ジャガイモ製品である。他の実施形態において、上記全組織ジャガイモ製品は、皮をむいたジャガイモ、ジャガイモスライス、キューブ状ジャガイモ、ダイス状ジャガイモ、シュレッド状ジャガイモ、くし形切りにしたジャガイモ、またはスティック状ジャガイモの形態にあり得、これらは、脱水されていてもよいし、そうでなくてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記ジャガイモ基質は、少なくとも20%のインタクトな柔組織細胞(例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも98%)を含むジャガイモ製品/成分である。
【0083】
(エーテル化剤)
上記エーテル化剤は、デンプンエーテルを生成し得ることが公知の任意の薬剤であり得る。いくつかの実施形態において、上記エーテル化剤は、プロピレンオキシド、アクロレイン、エピクロロヒドリン、エピクロロヒドリンとプロピレンオキシド、エピクロロヒドリンと無水酢酸、およびエピクロロヒドリンと無水コハク酸のうちの1つ以上(これら薬剤の全ての混合物および組み合わせを含む)である。
【0084】
使用されるエーテル化剤の量は、ジャガイモ基質乾燥重量に基づいて、0.5%〜35%[w/w]の間であり得る。使用されるエーテル化剤の量は、ジャガイモ基質乾燥重量に基づいて、0.5%〜35%[w/w]の間、0.5%〜30%[w/w]の間、0.5%〜28%[w/w]の間、0.5%〜25%[w/w]の間、0.5%〜22%[w/w]の間、0.5%〜20%[w/w]の間、0.5%〜18%[w/w]の間、0.5%〜15%[w/w]の間、0.5%〜12%[w/w]の間、0.5%〜10%[w/w]の間、0.5%〜8%[w/w]の間、0.5%〜6%[w/w]の間、0.5%〜4%[w/w]の間、1%〜35%[w/w]の間、1%〜30%[w/w]の間、1%〜28%[w/w]の間、1%〜25%[w/w]の間、1%〜22%[w/w]の間、1%〜20%[w/w]の間、1%〜18%[w/w]の間、1%〜15%[w/w]の間、1%〜12%[w/w]の間、1%〜10%[w/w]の間、1%〜8%[w/w]の間、1%〜6%[w/w]の間、1%〜4%[w/w]の間、2%〜35%[w/w]の間、2%〜30%[w/w]の間、2%〜28%[w/w]の間、2%〜25%[w/w]の間、2%〜22%[w/w]の間、2%〜20%[w/w]の間、2%〜18%[w/w]の間、2%〜15%[w/w]の間、2%〜12%[w/w]の間、2%〜10%[w/w]の間、2%〜8%[w/w]の間、2%〜6%[w/w]の間、2%〜4%[w/w]の間、4%〜35%[w/w]の間、4%〜30%[w/w]の間、4%〜28%[w/w]の間、4%〜25%[w/w]の間、4%〜22%[w/w]の間、4%〜20%[w/w]の間、4%〜18%[w/w]の間、4%〜15%[w/w]の間、4%〜12%[w/w]の間、4%〜10%[w/w]の間、4%〜8%[w/w]の間、4%〜6%[w/w]の間、8%〜35%[w/w]の間、8%〜30%[w/w]の間、8%〜28%[w/w]の間、8%〜25%[w/w]の間、8%〜22%[w/w]の間、8%〜20%[w/w]の間、8%〜18%[w/w]の間、8%〜15%[w/w]の間、8%〜12%[w/w]の間、8%〜10%[w/w]の間、10%〜35%[w/w]の間、10%〜30%[w/w]の間、10%〜28%[w/w]の間、10%〜25%[w/w]の間、10%〜22%[w/w]の間、10%〜20%[w/w]の間、10%〜18%[w/w]の間、10%〜15%[w/w]の間、10%〜12%[w/w]の間、12%〜35%[w/w]の間、12%〜30%[w/w]の間、12%〜28%[w/w]の間、12%〜25%[w/w]の間、12%〜22%[w/w]の間、12%〜20%[w/w]の間、12%〜18%[w/w]の間、12%〜15%[w/w]の間、15%〜35%[w/w]の間、15%〜30%[w/w]の間、15%〜28%[w/w]の間、15%〜25%[w/w]の間、15%〜22%[w/w]の間、15%〜20%[w/w]の間、15%〜18%[w/w]の間、20%〜35%[w/w]の間、20%〜30%[w/w]の間、20%〜28%[w/w]の間、20%〜25%[w/w]の間、20%〜22%[w/w]の間、22%〜35%[w/w]の間、22%〜30%[w/w]の間、22%〜28%[w/w]の間、22%〜25%[w/w]の間、25%〜35%[w/w]の間、もしくは30%〜35%[w/w]の間であり得る。
【0085】
上記エーテル化する工程は、酸性条件下、中性条件、もしくは塩基性条件下で、22℃〜70℃の間の温度で行われ得る。いくつかの実施形態において、塩基性条件下(例えば、pH8以上で(例えば、pH8〜14の間)で行われる。これは、pH8.5より高い、pH9より高い、pH9.5より高い、pH10より高い、pH10.5より高い、pH11より高い、pH11.5より高い、pH12より高い、pH12.5より高い、pH13.5より高い、もしくはpH13.5より高いpHを含む。いくつかの実施形態において、上記pHは、10〜14の間(例えば、11〜14の間、12〜14の間、13〜14の間)である。
【0086】
(エステル化剤)
上記エステル化剤は、デンプンエステルを生成し得ることが公知の任意の薬剤であり得る。いくつかの実施形態において、上記エステル化剤は、トリメタホスフェート(STMP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、オキシ塩化リン、およびエピクロロヒドリンのうちの1種以上(これら薬剤の全ての混合物および組み合わせを含む)である。いくつかの実施形態において、上記エステル化剤は、無水酢酸、無水アジピン酸、無水アジピン酸と無水酢酸、酢酸ビニル、オルトリン酸一ナトリウム、1−オクテニル無水コハク酸、無水コハク酸、オキシ塩化リン、オキシ塩化リンと酢酸ビニル、オキシ塩化リンと無水酢酸、トリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、およびトリメタリン酸ナトリウムのうちの1種以上(これら薬剤の全ての混合物および組み合わせを含む)である。
【0087】
使用されるエステル化剤の量は、ジャガイモ基質乾燥重量に基づいて、0.5%〜35%[w/w]の間であり得る。使用されるエステル化剤の量は、ジャガイモ基質乾燥重量に基づいて、0.5%〜35%[w/w]の間、0.5%〜30%[w/w]の間、0.5%〜28%[w/w]の間、0.5%〜25%[w/w]の間、0.5%〜22%[w/w]の間、0.5%〜20%[w/w]の間、0.5%〜18%[w/w]の間、0.5%〜15%[w/w]の間、0.5%〜12%[w/w]の間、0.5%〜10%[w/w]の間、0.5%〜8%[w/w]の間、0.5%〜6%[w/w]の間、0.5%〜4%[w/w]の間、1%〜35%[w/w]の間、1%〜30%[w/w]の間、1%〜28%[w/w]の間、1%〜25%[w/w]の間、1%〜22%[w/w]の間、1%〜20%[w/w]の間、1%〜18%[w/w]の間、1%〜15%[w/w]の間、1%〜12%[w/w]の間、1%〜10%[w/w]の間、1%〜8%[w/w]の間、1%〜6%[w/w]の間、1%〜4%[w/w]の間、2%〜35%[w/w]の間、2%〜30%[w/w]の間、2%〜28%[w/w]の間、2%〜25%[w/w]の間、2%〜22%[w/w]の間、2%〜20%[w/w]の間、2%〜18%[w/w]の間、2%〜15%[w/w]の間、2%〜12%[w/w]の間、2%〜10%[w/w]の間、2%〜8%[w/w]の間、2%〜6%[w/w]の間、2%〜4%[w/w]の間、4%〜35%[w/w]の間、4%〜30%[w/w]の間、4%〜28%[w/w]の間、4%〜25%[w/w]の間、4%〜22%[w/w]の間、4%〜20%[w/w]の間、4%〜18%[w/w]の間、4%〜15%[w/w]の間、4%〜12%[w/w]の間、4%〜10%[w/w]の間、4%〜8%[w/w]の間、4%〜6%[w/w]の間、8%〜35%[w/w]の間、8%〜30%[w/w]の間、8%〜28%[w/w]の間、8%〜25%[w/w]の間、8%〜22%[w/w]の間、8%〜20%[w/w]の間、8%〜18%[w/w]の間、8%〜15%[w/w]の間、8%〜12%[w/w]の間、8%〜10%[w/w]の間、10%〜35%[w/w]の間、10%〜30%[w/w]の間、10%〜28%[w/w]の間、10%〜25%[w/w]の間、10%〜22%[w/w]の間、10%〜20%[w/w]の間、10%〜18%[w/w]の間、10%〜15%[w/w]の間、10%〜12%[w/w]の間、12%〜35%[w/w]の間、12%〜30%[w/w]の間、12%〜28%[w/w]の間、12%〜25%[w/w]の間、12%〜22%[w/w]の間、12%〜20%[w/w]の間、12%〜18%[w/w]の間、12%〜15%[w/w]の間、15%〜35%[w/w]の間、15%〜30%[w/w]の間、15%〜28%[w/w]の間、15%〜25%[w/w]の間、15%〜22%[w/w]の間、15%〜20%[w/w]の間、15%〜18%[w/w]の間、20%〜35%[w/w]の間、20%〜30%[w/w]の間、20%〜28%[w/w]の間、20%〜25%[w/w]の間、20%〜22%[w/w]の間、22%〜35%[w/w]の間、22%〜30%[w/w]の間、22%〜28%[w/w]の間、22%〜25%[w/w]の間、25%〜35%[w/w]の間、もしくは30%〜35%[w/w]の間であり得る。
【0088】
上記エステル化する工程は、酸性条件、中性条件、もしくは塩基性条件下で、22℃〜70℃の間の温度で行われ得る。いくつかの実施形態において、塩基性条件下(例えば、8以上のpH(例えば、pH8〜14の間))で行われる。これは、pH8.5より高い、pH9より高い、pH9.5より高い、pH10より高い、pH10.5より高い、pH11より高い、pH11.5より高い、pH12より高い、pH12.5より高い、pH13.5より高い、もしくはpH13.5より高いpHを含む。いくつかの実施形態において、上記pHは、10〜14の間(例えば、11〜14の間、12〜14の間、13〜14の間)である。
【0089】
(定義)
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同じか等価の方法および材料は、本発明の実施もしくは試験において使用され得るが、適切な方法および材料が、以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの内容全体が参考として援用される。矛盾する場合は、本明細書(定義を含む)が優先する。さらに、上記材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図しない。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0090】
本明細書に記載される実施形態の理解を促進する目的で、好ましい実施形態が参照され、具体的な言葉が上記実施形態を記載するために使用される。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載する目的に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。本開示全体を通じて使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、この、その(the)」は、文脈が別のことを明らかに示さなければ、複数形の言及を含む。従って、例えば、「1つの組成物」への言及は、このような組成物の複数、ならびに単一の組成物を含み、「1つの治療剤」への言及は、1種以上の治療剤および/または薬剤ならびに当業者に公知のその等価物などへの言及である。
【0091】
本願全体を通じて、用語「約」は、ある値が、上記値を決定するために使用されているデバイスもしくは方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0092】
特許請求の範囲における用語「もしくは、または、あるいは(or)」の使用は、選択肢のみに言及すること、あるいは上記選択肢が相互に相容れないことが明らかに示されていなければ、「および/または、ならびに/または(and/or)」を意味するために使用されるが、上記開示は、唯一の選択肢ならびに「および/または」に言及する定義を裏付ける。
【0093】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、語句「含む、包含する(comprising)」(および含む、包含する(comprising)の任意の形態(例えば、「含む、包含する(comprise)」および「含む、包含する(comprises)」))、「有する(having)」(および有する(having)の任意の形態(例えば、「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む、包含する(including)」(および含む、包含する(including)の任意の形態(例えば、「含む、包含する(includes)」および「含む、包含する(include)」)または「含む、包含する(containing)」(および含む、包含する(containing)の任意の形態(例えば、「含む、包含する(contains)」および「含む、包含する(contain)」)が、包括的であるかもしくは開放型であり、追加の、記載されない要素もしくは方法の工程を排除しない。
【実施例】
【0094】
本発明の種々の実施形態の作業に実質的に影響を及ぼさない改変もまた、本明細書中に提供される発明の定義内で提供されることが理解される。よって、本開示される実施例は、本発明を例示するが、本発明を限定することは意図されない。本願発明は、詳細にかつその具体的実施形態を参照しながら記載されるものの、種々の変更および改変が、本願発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本願発明に対して行われ得ることは、当業者に明らかである。従って、例えば、当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書に記載される具体的物質および手順に対する多くの等価物を認識するか、もしくは上記等価物を確認し得る。このような等価物は、本発明の範囲内にあるとみなされ、以下の特許請求の範囲によって包含される。
【0095】
(実施例1)
実際に市販される食品グレードの試薬での改変を調査するために、4種のPO添加レベル(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、4.6%、9.1%、12.8%および18.3%[w/w])および2種の反応温度(22℃および48℃)からなる要因分析デザイン(factorial experimental design)を使用して、市販のジャガイモ顆粒を、プロピレンオキシド(PO)で置換した。モル濃度置換(MS)値は、PO添加レベルおよび反応温度の両方が増大するにつれて増大した。反応温度を増大させることによるPO MSレベルの強化は、考えられる要因(デンプンの膨潤の増大、ドナン電位の低下の可能性、および/または反応に利用可能な脱プロトン化したデンプンアルコキシドイオンのより大きな割合が挙げられる)の組み合わせに帰した。PO MSとRSレベルとの間の正の相関(r=0.93)は、デンプン分子の嵩高いヒドロキシプロピル基の組み込みが、酵素消化に対して立体障害を生じ、RS形成を効率的に促進することを示した。
【0096】
RSとは対照的に、遅消化性デンプン(SDS)のごく低いレベルが、ジャガイモ顆粒の化学改変で達成された。
【0097】
(実施例2)
第2の要因分析において、PO置換(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、0%、10%、および20%[w/w])、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、0%、1%、2%、および4%[w/w])での架橋、および反応温度(22℃、34℃および48℃)の組み合わせ効果を、誘導体化およびRS形成の程度に関して調査した。POおよびSTMPはともに、RS形成に顕著に寄与したが、2つの試薬の組み合わせ効果は、相乗的ではなく、単に相加的であった。二重改変ジャガイモ顆粒の推定血糖上昇指数(eGI)は、デンプン分解酵素によるデンプン加水分解の速度および程度の両方に影響を及ぼす誘導体化によって顕著に低下した(非改変顆粒についての116.4から、二重改変顆粒についての59.7〜65.9まで)。実際的な論点からは、許容し得る試薬添加レベルが高くなるほど、POが市販のジャガイモ顆粒内のRS含有量の強化および血糖上昇応答の低下に関してSTMPよりよい選択になる。
【0098】
走査電子顕微鏡法(SEM)によって調べた場合、改変ジャガイモ顆粒は、インタクトな柔組織細胞構造を保持したが、市販のジャガイモ顆粒と比較して、わずかに収縮した外見を示した。近似組成に関しては、改変ジャガイモ顆粒は、市販の(非改変)ジャガイモ顆粒と比べ、タンパク質および脂質の両方の含有量の低下(≧50% 低下)、ならびにわずかに増加した総炭水化物、デンプンおよび灰分の含有量を示した。ヒドロキシプロピル化により、市販のコントロール内のものと比較して、改変ジャガイモ顆粒内のデンプンの老化安定性が強化されることが観察された。従って、PO置換は、冷蔵したおよび/または冷凍した食品システムにおいて使用するためのジャガイモ顆粒の物理的特性を改善する能力を有する。
【0099】
まとめると、RS含有量を強化し、50%もの高さのRS含有量を達成する(すなわち、改善されたRS/血糖上昇特性を有するジャガイモ顆粒)、PO試薬およびSTMP試薬での化学改変を介して、市販のジャガイモ顆粒のeGIを低下させることは可能である。
【0100】
(材料および方法)
市販のジャガイモ顆粒およびデンプン源:Basic American Foods(Blackfoot,ID)によって提供された市販のジャガイモ顆粒は、全ての改変実験の1次基質であった。天然ジャガイモデンプンを、難消化性デンプンアッセイの参考材料として、AVEBE(Veendam,Netherlands)から得た。
【0101】
(5−(4,6−ジクロロトリアジニル)アミノフルオレセイン(DTAF)でのジャガイモ顆粒の誘導体化)
市販のジャガイモ顆粒を、「モデル」反応系内で蛍光プローブである5−(4,6−ジクロロトリアジニル)アミノフルオレセイン(DTAF,Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO)で化学改変して、ジャガイモ柔組織細胞内のデンプン分子が化学試薬と反応する能力を調査した。市販のジャガイモ顆粒(9.1g,乾燥ベース,db)を、125mL エルレンマイヤーフラスコの中に秤量し、続いて、過剰の脱イオン水(約70mL)を添加した。ジャガイモ顆粒を、周囲温度において攪拌し(30分)て、水和を促進させ、遠心分離(1500×g,20分)を介して、得られた上清を廃棄した後に、集めた。水和したジャガイモ顆粒を、125mL エルレンマイヤーフラスコに移し、続いて、トリエチルアミン(18.5mL)を添加した。別個のフラスコ中に、DTAF試薬(0.003g)を、遮光してクロロホルム(15.3mL)中に分散させて、上記蛍光プローブの光退色を防止した。両方の混合物を、30分間にわたって独立して攪拌し、その後、上記クロロホルム/DTAF溶液を、上記ジャガイモ顆粒/トリエチルアミン懸濁物を含むフラスコに移した。上記反応スラリーを、遮光して24時間にわたって周囲温度で攪拌した。反応後、ジャガイモ顆粒を、遠心分離(1500×g,20分)によってその上清を廃棄した後に回収し、次いで、3本の50mL ポリプロピレンスクリューキャップ遠心分離チューブ(各々、20mLの無水エタノールを含む)の中へ分けた。得られたチューブに、アルミニウムホイルで覆いをして(環境光への曝露を最小限にし)、2時間にわたってリストアクションシェイカー(Model 75,Burrell Corp.,Pittsburg,PA)に配置して、未反応試薬を除去した。上記シェイカーから外した後、チューブを遠心分離して(1500×g,20分)、その上清を廃棄し、その後、各チューブ内の回収したジャガイモ顆粒を、新しい無水エタノール(20mL)中に再懸濁した。この洗浄手順を、遠心分離後のエタノール洗浄媒質が無色になる(これは、未反応色素の除去を示す)まで、複数回反復した。改変ジャガイモ顆粒を、ブフナー漏斗上に集め、遮光して風乾させた。DTAF試薬を上記反応系に添加しなかったことを除いて、反応コントロールを、同じ様式で調製した。
【0102】
(プロピレンオキシドでの市販のジャガイモ顆粒の化学改変)
市販のジャガイモ顆粒を、4種の異なる試薬添加レベル(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、4.6%、9.1%、12.8%、および18.3%[w/w])においてプロピレンオキシドで、2種の異なる温度条件(22℃および48℃)下で改変して、RS形成に対する化学改変の効果を決定した。上記要素(4×2)分析の反応系パラメーターは、表2に提供される。
【0103】
表2.プロピレンオキシドでの市販のジャガイモ顆粒の置換についての反応系パラメーター
【0104】
【表2】

反応を24時間進め、2種の異なる温度条件(22℃および48℃)について別個に行った。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2、PO−3、PO−4)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、4.6%、9.1%、12.8%および18.3%(w/w)のプロピレンオキシドに置き換えた。
【0105】
各反応について、ジャガイモ顆粒(4.5g,db)を、100mL 丸底フラスコに移し、一定して機械的に攪拌しながらイソプロパノール(11mL)中に懸濁した。その後、3.5mLのNaOH(5.0M)を、滴下様式で上記フラスコに徐々に添加した。
【0106】
その懸濁物を、攪拌して(2分)、その反応スラリー内に一様にジャガイモ顆粒を分散させた。改変のために、上記反応フラスコを、環境インキュベーターシェイカー(environmental incubator shaker)(Model G24,New Brunswick Scientific Co.,Edison,NJ)に移して、上記ジャガイモ顆粒スラリーを所望の反応温度(22℃および48℃)へと平衡状態にした。全ての反応物について一定の条件を維持するために、攪拌を、上記インキュベーター内に取り付けた、7/8”×3/16”の攪拌子(Part No. 58947−106,VWR International,West Chester,PA)を利用したVariomag(Model Poly 15,Daytona Beach,FL)大容量マグネチックスターラーを使用して、390rpmにおいて標準化した。プロピレンオキシド試薬の適切な量を、上記意図された改変レベル(表1)に従って上記反応フラスコに添加し、ガラス栓を上記反応フラスコに配置して、誘導体化の間に反応系成分が蒸発するのを防止した。試薬を添加しなかったことを除いて、反応コントロールを、同一の反応条件に供した。
【0107】
全ての反応を24時間進めた。反応後、上記ジャガイモ顆粒スラリーを、無水エタノール中のHCl溶液(3.0M)で中和した。改変ジャガイモ顆粒を、ブフナー漏斗上に回収し、45%(v/v) エタノール水溶液(150mL)でそのフィルタを洗浄して、塩および使った試薬を除去した。無水エタノールでの最終洗浄を上記フィルタ上で行い、その後、改変ジャガイモ顆粒を集め、一晩風乾した。
【0108】
(プロピレンオキシドおよびトリメタリン酸ナトリウム(STMP)での市販のジャガイモ顆粒の二重化学改変)
ジャガイモ顆粒を、プロピレンオキシドおよびトリメタリン酸ナトリウム(STMP)の両方で改変して、RS形成に対する二重化学改変の効果を調査した。3種のプロピレンオキシド添加レベル(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、0%、10%、および20%[w/w])、4種のレベルのSTMP添加(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、0%、1.0%、2.0%、および4.0%[w/w])、および3種の反応温度条件(22℃、34℃、および48℃)を利用する要因デザイン(3×4×3)を、ジャガイモ顆粒の改変のために使用した。
【0109】
ヒドロキシプロピル化を、先に記載した条件下で、しかし先の段落において特定した試薬添加レベルおよび反応温度に従って行った。24時間のヒドロキシプロピル化反応期間の完了のときに、各反応フラスコのガラス栓を外し、適切な量のSTMP試薬(意図された改変レベルに基づいて)を上記反応系に添加した。上記反応フラスコに再度上記記ガラス栓をし、STMPとの反応を、さらに3時間進めた。上記反応期間の完了のときに、改変ジャガイモ顆粒製品を洗浄し、ヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒について先に記載されるように回収した。プロピレンオキシド試薬もSTMP試薬も添加しなかったことを除いて、反応コントロールを同一反応条件に供した。
【0110】
(ヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒についてのモル濃度置換(MS)決定)
改変ジャガイモ顆粒のモル濃度置換(MS)値を、Johnsonの分光光度法(1969)によって決定した改変ジャガイモ顆粒材料(100mg,db)を、100mL メスフラスコに秤量し、その後、1.0N 硫酸(25mL)を上記フラスコに添加した。反応コントロールサンプルを、参照と同様な様式で調製した。両方のフラスコを、沸騰水浴中に入れ、3時間にわたって加熱した。フラスコ内容物を、周囲温度へと冷却し、脱イオン水で体積100mLへと希釈した。各フラスコ(改変サンプルおよび参照サンプル)の1mLのアリコートを、2本の別個の25mL 目盛り付き試験管に移した。また、標準水溶液(1mLあたり10、20、30、40もしくは50jigのプロピレングリコールを含む)のアリコート(1mL)を、ジャガイモ顆粒MSレベルの定量化を補助するための標準曲線を作る目的で、同様に処理した。冷水中にチューブを浸漬して、濃硫酸(8mL)を、滴下様式で各チューブに添加した。チューブにキャップをし、ボルテックスし(5秒)、沸騰水浴に入れ(3分)、その後、それらを、氷冷バス中で急冷した(30分)。ニンヒドリン溶液(0.6mL,5%[w/v] 亜硫酸水素ナトリウム水溶液中の1,2,3−トリケトヒドリンデン結晶の3%[w/v]溶液)を、試験管内壁をつたわせて各チューブに注意深く添加した。手動で穏やかに振盪させた後(約4秒)、チューブを、25℃の水浴に入れ(100分)、その後、各チューブの体積を、濃硫酸で25mLに調節し、続いて、上記チューブを混合した(上記チューブを複数回反転させた)。上記改変ジャガイモ顆粒材料および参照ジャガイモ顆粒材料の両方を代表する溶液を、別個の10mmキュベットに直ぐに移した。キュベットを静置(5分)した後、サンプルを、上記参照として調製した反応コントロールサンプルを使用して、分光光度計(UV160U,Shimadzu,Kyoto,Japan)において590nmで分析した。標準曲線を、1mLあたり10、20、30、40もしくは50jigのプロピレングリコールを含む標準水溶液の分析に基づいて調製した。ジャガイモ顆粒サンプルの単位重量あたりのヒドロキシプロピル基の重量パーセント比(%)を、以下の式(1)に従って計算した:
(1) ヒドロキシプロピル基含有量(CO%)=(C×0.7763×10)/W
ここでCは、上記分析されるサンプル溶液に存在するプロピレングリコール等価基(propylene glycol equivalent group)の濃度(g/mL,標準曲線から得られる)に等しい。係数0.7763を、プロピレングリコール分子の重量をヒドロキシプロピル基(HPG)の重量に変換するために使用した一方で、Wは、分析される上記ジャガイモ顆粒サンプル(mg)のデンプン部分の重量を表す。正味係数(net factor)10を、単位変換[μgからmgへ]、希釈係数、および%比計算をまとめて説明するために含めた。簡単化のために(および上記デンプン画分内のMSレベルを計算する保守的アプローチとして)、この計算は、全ての試薬グループが上記デンプン画分内に位置することを前提とする。式(1)から得られる値を使用して、デンプンMS値(1無水グルコースユニット[AGU]あたりのヒドロキシプロピル基平均数)を、式(2)を使用して得、
(2)MS=(CO%×162)/((100−CO%)×59.08)
ここで数値162および59.08は、それぞれ、AGUおよびヒドロキシプロピル基の分子量を表す(Lawalら,2008)。この分析スキームにおいて、デンプン、細胞壁ポリサッカリド、もしくは他の潜在的に反応性の構成成分に結合したプロピレンオキシド基を区別することは可能ではなかった。従って、本明細書中で報告されたMS値は、全てのプロピレンオキシド基が上記デンプン画分内で反応したことを前提とする(すなわち、MS値は、デンプンベースで示される)。さらに、この分析は、架橋する置換基が、ヒドロキシプロピル基のMS決定を妨害したという事実に起因して、架橋を受けなかったヒドロキシプロピル化顆粒についてのMS値を決定するために利用できたに過ぎなかった。
【0111】
(架橋されたジャガイモ顆粒の置換度(DS)の程度の決定)
組み込まれたリンを、上記反応コントロールの固有のリン含有量(0.0032g/g ジャガイモ顆粒)を、上記改変ジャガイモ顆粒の総リン含有量から差し引くことによって計算した。改変ジャガイモ顆粒におけるリン(P)値を、Andersonの方法(1996)に従って、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP−AES)によって決定した。ヒドロキシプロピル化についてのMS計算と同様に、DS値を、組み込まれたリンが、ジャガイモ顆粒のデンプン画分内にのみ位置するという推定の下で計算した。STMPで誘導体化したジャガイモデンプンの置換度(degree of substitution)(DS)を計算するための式は、式(3)に概説される:
(3)DS=P×162/31
この式において、162は、デンプンAGUの分子量を表し、31は、リンの分子量を表し、Pは、改変ジャガイモ顆粒内に組み込まれたリン(g/g デンプン)の等価重量(weight equivalent)を表す。
【0112】
(デンプン消化性のインビトロでの決定)
改変ジャガイモ顆粒およびコントロールジャガイモ顆粒のインビトロ加水分解を、Englystらにより記載される方法(1992)に従ってわずかな改変を加えて、分析した。
【0113】
簡潔には、種々のデンプン画分(総デンプン[TS];迅速消化性デンプン(rapidly digestible starch)[RDS];遅消化性デンプン[SDS];難消化性デンプン[RS])を、インベルターゼ、パンクレアチンおよびアミログルコシダーゼとのインキュベーションの間にジャガイモ顆粒もしくはデンプンサンプルから放出されるグルコース(迅速に利用可能なグルコース[RAG]もしくは緩慢に利用可能なグルコース[SAG])の量に基づいて計算した。一般に、デンプン含有材料のインキュベーションを、振盪水浴内に浸漬したキャップ付きチューブ中、37℃で行った。上記種々のデンプン画分の決定が、単一のサンプルに基づいて以下に記載されるが、実際には、最大7本のサンプルチューブ(反応コントロールおよびサンプルブランクを含む)を一度に同時に分析することが可能であった。
【0114】
(酵素溶液および試薬調製)
上記種々の分析のための酵素溶液を、以下のように調製した。アミログルコシダーゼ溶液を、0.24mLの酵素(300ユニット/mL,カタログ番号A7095,Sigma−Aldrich Corp.)を、5mL ガラスビーカーに移すことによって調製し、これを、脱イオン水で0.5mLに希釈し、140ユニット/mLの最終酵素濃度を得た。パンクレアチン酵素溶液を、50mL ポリプロピレン遠心分離チューブ内にパンクレアチン(1.0g,カタログ番号7545,Sigma−Aldrich Corp.)を脱イオン水(6.7 mL)中に希釈することによって調製した。上記溶液を攪拌し(5分)、遠心分離し(1500×g,10分)、その後、その上清を保持した。上記得られたパンクレアチン溶液上清の一部(4.5mL)を、調製したアミログルコシダーゼ溶液(0.5mL)および0.5mgのインベルターゼ(300ユニット/mg,カタログ番号Ι4504,Sigma−Aldrich Corp.)と混合して、全ての分析のために使用される最終酵素溶液を生成した。全ての酵素溶液を、使用直前に新たに調製した。
【0115】
緩衝液を調製するために、13.6gの酢酸ナトリウム三水和物を、飽和安息香酸溶液(250mL)中に溶解し、脱イオン水で1.0Lへと希釈した。酢酸(0.1M)を使用して、上記緩衝溶液をpH5.2へと調節し、その後、1.0M CaCl溶液(4mL)を添加して、上記酵素を安定化および活性化した。
【0116】
(迅速に利用可能なグルコース(RAG)および緩慢に利用可能なグルコース(SAG)のインビトロでの測定)
改変ジャガイモ顆粒材料もしくはデンプン(600mg db)を、50mL ポリプロピレン遠心分離スクリューキャップチューブの中に秤量し、続いて、0.1M 酢酸ナトリウム緩衝溶液(20mL)を添加した。酢酸緩衝液のみを含む(ジャガイモ顆粒もデンプン材料もない)サンプルブランクを、上記アミログルコシダーゼ溶液中に存在する任意のグルコースを較正するために調製した。ジャガイモ顆粒もしくはデンプン材料を含む上記チューブにキャップをし、激しくボルテックスした(1分)。
【0117】
「摂取されたとして」(調理工程後に)分析されるべきジャガイモ顆粒もしくはデンプンサンプルのために、上記チューブを沸騰水浴中に30分間にわたって入れ、その後、それを周囲温度へと冷却した。「現状のままで」のベースで分析されるジャガイモ顆粒もしくはデンプンサンプルについては、この加熱工程を省略した。
【0118】
ジャガイモ顆粒もしくはデンプン材料を含む上記チューブを、振盪水浴(Model 406015,American Optical,Buffalo,NY)中、37℃へと平衡化した。上記目的温度に達した後、5mLの最終酵素溶液を、上記ジャガイモ顆粒もしくはデンプン懸濁物に添加した。次いで、上記チューブにキャップをしっかりと閉め、水平様式で(十分に浸漬して)、上記水浴の振盪機構にしっかりと固定し、上記水浴を160ストローク/分に調節した。さらに、66%(v/v) エタノール水溶液(20mL)を含む2本のさらなるチューブを調製し、それぞれ、20分後および120分後に酵素消化に供したジャガイモ顆粒サンプルもしくはデンプンサンプルに由来するグルコースの抽出のためにとっておいた。
【0119】
20分のインキュベーション後、0.5mLの得られた加水分解物を、元の25mL 懸濁物(式(4)において、希釈係数[D]=50)から取り出し、66% エタノール水溶液(20mL;式(4)において試験体積[Vt]=20.5)を含む先に調製したチューブに移した。これは、消化の20分後にサンプルから放出されるグルコース(RAG;チューブをG20と称した)の量を表す。サンプリング後、ジャガイモ顆粒もしくはデンプン材料を含む元のチューブを、さらなるインキュベーションのために上記振盪水浴に直ぐに戻した。さらに100分(合計120分)インキュベーションした後、第2の0.5mLサンプルを再び取り出し、66% エタノール水溶液を含む第2のチューブに移した(120分の消化後にサンプルから放出されるグルコース[SAG]の量を表す;チューブを、G120と称した)。上記G20チューブおよびG120チューブをともに遠心分離して(1500×g,5分)、透明な(グルコースを含む)上清を得、後の段落に記載されるようにさらなるグルコース分析を行った。
【0120】
改変ジャガイモ顆粒を表す生成された上清(G20、G120)に関しては、各上清のうちの0.1mLを、別個のキュベットにピペットで移した。グルコース含有量を、グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ酵素反応を介する市販のキット(Glucose Assay Kit[K−GLUC],Megazyme International Ireland Ltd.,Wicklow,Ireland)を使用して測定した。グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ試薬(GOPOD)および酢酸緩衝液ブランクを、キット製造業者によって指示されるように調製した。GOPOD試薬(3.0mL)を、各キュベット(0.1mLのG20溶液もしくはG120溶液を含む)に添加し、その後、キュベットを、続いて45℃で(20分)インキュベートした。0.1mLのグルコース標準溶液(1.0mg/mL;式(4)においてAD−グルコース標準と称される)を含むチューブを、同じ様式で処理した。インキュベーション後、キュベットを、酢酸緩衝液ブランクに対して510nmにおいて分光光度計で分析した。上記実験サンプルの吸光度(Aサンプル)および既知のグルコース標準(AD−グルコース標準)の吸光度を測定した。グルコース含有量(%)を、以下の式(4)に従って計算した:
(4)グルコース=100×[1.0(mg/mL)×Aサンプル/AD−グルコース標準]×Vt×D/Wt
G20上清において検出されるグルコースをG’20と称し、G120サンプルにおいて検出されるグルコースをG’120と称した。Wtは、ジャガイモ顆粒もしくはデンプンの総重量(mg)を表す。この節において先に示されるように、Vtは、試験溶液の総体積(20.5mL)を表し、Dは、希釈係数(50)を表す。係数100は、グルコースのユニット比(mg/mg ジャガイモ顆粒)を上記ジャガイモ顆粒重量の%比(%)への変換をもたらすために含めた。
【0121】
(総グルコース(TG)含有量(非改変反応コントロールジャガイモ顆粒)の測定)
反応コントロールジャガイモ顆粒サンプル内の総消化性グルコース(TG)含有量の決定のために(および改変ジャガイモ顆粒内のこの値を概算するために)、反応コントロールジャガイモ顆粒材料を調製/加熱し、上記のプロトコルに類似の酵素消化に供した。しかし、上記ジャガイモ顆粒反応コントロール材料を含むチューブを、120分にわたって消化のみ行った(すなわち、20分のインキュベーション期間を含めなかった)。120分のインキュベーション後、元の25mL 消化体積を含むチューブを、沸騰水浴中に入れ(30分)、ボルテックスし(10秒)、氷冷水浴中で冷却した(20分)。冷却後、7.0M KOH(10mL)を、混合しながら上記チューブに移し、上記チューブを氷冷水浴中、120ストローク/分で振盪した(30分)。得られた加水分解物(1mL)を、0.5M 酢酸(10mL)を含む50mL 遠心分離チューブに移した(式(4)において希釈係数[D]=35)。調製したアミログルコシダーゼ溶液(0.2mL)を、上記チューブに添加し、次いで、これを70℃において水浴中でインキュベートした(30分)。インキュベーション後、上記チューブを沸騰水浴に移し(10分)、室温へ冷却し、脱イオン水(50mL;式(4)において試験容積[Vt]=50)で50mLに希釈した。次いで、上記チューブを遠心分離して(1500×g,5分)、任意の残りの不溶性物質を除去した。上清(0.1mL)を、GOPOD試薬(3mL)とともにキュベットへピペットで移し、総グルコース含有量を、上記のように決定して、上記ジャガイモ顆粒反応コントロール材料中に存在する総グルコース(すなわち、デンプン)の尺度を提供した。グルコース含有量(TG)を、値Vt(50)およびD(35)を使用して式(4)で計算した。
【0122】
(難消化性デンプン、遅消化性デンプン、迅速消化性デンプン、および総デンプンの決定)
RDS(迅速消化性デンプン)、SDS(遅消化性デンプン)、RS(難消化性デンプン)、およびTS(総デンプン)を、以下の式5〜8を使用して、G’20値、G’120値、およびTG値から決定した。これら式中の係数0.9は、グルコース値をデンプン含有量に変換するために使用した。
【0123】
(5)RDS=G’20×0.9.
(6)SDS=(G’120−G’20)×0.9.
(7)TS=TG×0.9.
(8)RS=TS−(RDS+SDS)。
【0124】
(インビトロデンプン消化性指数および概算血糖上昇指数決定)
非改変もしくは改変ジャガイモ顆粒の消化性指数を、RAGおよびSAGの測定のために記載される方法と同様に決定した。この決定のために、ジャガイモ顆粒加水分解物を調製し、先に概説されるようにインキュベートしたが、150分の総分析期間にわたって30分間隔でサンプリングし、G30、G60、G90、G120、G150の加水分解物溶液(各それぞれの消化時間に関して集められた加水分解物に対応する)を得た。各消化時間については、加水分解物を遠心分離して(1500×g,5分)、透明な上清(グルコースを含む)を得、これを、本明細書で記載されるグルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ手順を介して、グルコース含有量についてアッセイした。種々の消化期間の間に放出されたグルコース(G’30、G’60、G’90、G’120、およびG’150と称される)を、式(4)を使用して計算した。Goniらの手順(1997)を使用して、デンプン消化性指数を測定した。これは、式(9)に従って、90分のインキュベーション後に消化されたデンプン量(HI90)を上記反応コントロールの総デンプン含有量で除算することによって計算される。その概算血糖上昇指数(eGI)を、式(10)に従って計算した(Goni.ら,1997)。
【0125】
(9)HI90=((G’90×0.9)/TS)×100
(10)eGI=39.21+0.803×(HI90)
(改変ジャガイモ顆粒の近似組成)
近似組成を、改変ジャガイモ顆粒製品および市販のジャガイモ顆粒製品の両方について決定して、多量養素含有量に対する改変の効果を評価した。水分含有量を、真空オーブン法(Method 934.01;AOAC,2000)を使用して測定した。灰分含有量を、マッフル炉を使用して評価し(Method 923.03;AOAC,2000)、その一方、脂質含有量を、石油エーテルでのソックスレー抽出によって測定した(Method 920.39B;AOAC,2000)。タンパク質含有量を、LECO Combustion Analyzer CNS−2000(LECO Corporation,St.Joseph,MI)(Method 46−30,N x 6.25;AACC,2000)を使用して決定した。タンパク質、炭水化物、脂質、および灰分の含有量を、乾燥重量ベースで全て計算した。総炭水化物含有量は、差(総炭水化物%=100%−[%灰分+%脂肪+%タンパク質])によって計算した。
【0126】
(示差走査熱量測定(DSC))
選択されたコントロールおよび改変ジャガイモ顆粒の熱特性を、示差走査熱量計(DSC,TA 2920,TA Instruments,Newcastle,DE)を使用して分析した。ジャガイモ顆粒(10mg,db)を、ステンレス鋼のパンに秤量し、20μLの脱イオン水を、マイクロシリンジを使用して添加した。サンプルパンをハーメチックシールし、室温で一晩平衡化させ、10℃/分の速度で30℃から180℃へと加熱した;シールした空のパンを、参照として使用した。転移開始温度(T)、ピーク温度(T)、および終結温度(T)、ならびに転移エンタルピー(ΔR)を、TA Universal Analysis Software(version 3.6)を使用して記録した。最初の加熱後に、サンプルパンを、4℃での種々の長さの冷蔵貯蔵(0日、7日、14日もしくは21日)に供し、これを再加熱して、ジャガイモ顆粒サンプル内のデンプン老化のレベルを追跡した。
【0127】
(顕微鏡画像化)
市販のジャガイモ顆粒を、柔組織細胞の構造および形状に関して光学顕微鏡法を介して視覚的に調べた一方で、柔組織細胞内のデンプン位置を、ヨウ素染色の補助によって確認した(I/KI溶液=0.05%/0.5%,w/v)。全てのサンプルを、デジタルカメラ(Q Imaging Micropublisher 3.3,Burnaby,BC,Canada)を備えたNikon Eclipse E600顕微鏡(Nikon Instruments Inc.,Melville,NY)を使用して視覚化した。
【0128】
DTAF(蛍光プローブ)で誘導体化したジャガイモ顆粒の光学切片を、BioRad MRC 1024共晶点レーザー走査顕微鏡(CLSM)システム(Carl Zeiss Microimaging,Thornwood,NY)を使用して検鏡して、その試薬が柔組織細胞内のデンプン分子に到達できた程度をプローブした。サンプル標本を、微量のDTAF誘導体化ジャガイモ顆粒を、予め軽くワックスで被覆しておいた顕微鏡スライド上に振りかける(dusting)ことによって調製した。次いで、上記スライドを、炎の上を素早く通過させて、上記ワックスの融解/硬化を介して顆粒を上記ガラスに固定した(Huber and BeMiller,2000)。固定した顆粒を、浸漬油およびガラスカバースリップで覆い、CLSMで検査した。励起を、青色光(488nm)照射を使用して、クリプトン/アルゴンレーザー(10%出力)で達成した。
【0129】
改変ジャガイモ顆粒および非改変の市販のジャガイモ顆粒の電子顕微鏡写真を、走査電子顕微鏡法(SEM,Supra 35VP,LEO−32,Carl Zeiss Microimaging)を介して得た。標本を、両面カーボンテープを使用して、アルミニウムスタブに載せ、60/40比のAu/Pdで被覆し、1.0kVの加速電圧で視覚化した。
【0130】
(実験デザインおよび統計分析)
この研究内で利用した要因デザインは、全ての実験の完全な反復を含んだ。各反復データ点を、個々の実験ユニットをとみなした。
【0131】
各実験ユニットに関しては、MS、デンプン消化性(RDS、SDS、RS、およびTSの決定)、近似組成(水分、脂質、タンパク質、炭水化物、および灰分の含有量)および熱特性(T、T、T、およびΔR)を、二連で分析した。データを、分散分析(ANOVA)による統計的有意性について分析した(<0.05)一方で、処理平均値間の差を、最小有意差(LSD)検定(least significant difference test)を使用して同定した。ピアソンの相関分析を行って、RS含有量とMS値との間の関係を評価した。全ての統計計算は、SASソフトウェア(version 9.2,SAS Institute Inc.,Cary,NC)を使用して行った。
【0132】
(結果および考察)
(市販のジャガイモ顆粒内のデンプン画分の反応性)
ジャガイモ顆粒を、脱水形態の即席マッシュポテト製品を製造するためのマッシュ加工処理および乾燥加工処理に供した予め調理したジャガイモから商業的に調製した。表3は、この研究のための出発材料として使用した市販のジャガイモ顆粒の化学組成を提供する。市販のジャガイモ顆粒は、かなりの量の炭水化物(85.3%)(主に、デンプンの形態にある(78.5%))を含んだが、測定可能な量の他の成分(タンパク質、脂質、灰分)もまた有した。上記炭水化物含有量とデンプン含有量との間の差(6.8%)は、植物細胞壁ポリサッカリド(セルロース、ヘミセルロース、ペクチンなど)に帰する可能性が最も高い。光学顕微鏡下では、市販のジャガイモ顆粒は、個々の柔組織細胞(各々は、糊化したデンプンの塊(ヨウ素溶液染色によって染色された濃い領域)を含む合理的にインタクトな一次細胞壁を示す)から主になった(図3)。光学顕微鏡での観察に基づくと、細胞内の糊化したデンプンは、平面偏光の下では、いかなる本来の顆粒構造物も、複屈折も保持しないようであり(データは示さず)、従って、化学薬剤による改変に容易に利用可能であると認められた。
【0133】
表3.市販のジャガイモ顆粒の平均1,2化学組成
【0134】
【表3】

平均値±標準偏差を二連の測定値から決定した
g/100g ジャガイモ顆粒(乾燥重量ベースで)
差異(ジャガイモ顆粒乾燥重量からタンパク質、脂質、および灰分を差し引く)によって決定。
【0135】
アルカリ性(トリエチルアミン)モデル系内のDTAF(蛍光プローブ)での市販のジャガイモ顆粒の誘導体化を行って、柔組織細胞内のデンプン分子の反応への利用性を測定した。改変および反応していない色素の除去後に、誘導体化したジャガイモ顆粒の光学切片(それらの近似の幾何的中心において)を、CLSMによって視覚化した。柔組織細胞光学切片は、均一なパターンの蛍光を示した(図4)。このことは、試薬による柔組織の一次細胞壁の浸透の成功およびその細胞内のデンプンの均質な反応を意味する。DTAF試薬の添加なしで同じ反応条件に供したコントロール(非改変)ジャガイモ顆粒は、いかなる眼に見える蛍光も示さなかった(データは示さず)。色素の均質なパターンは、柔組織細胞内のデンプンが均質に反応性であることを示唆し、あるとしてもほとんど天然デンプン顆粒構造物が市販のジャガイモ顆粒中に保持されないという事実を裏付けた。さらに、蛍光色素の均一な分布は、類似の反応パターンを、伝統的なデンプン改変試薬で達成できたという説得力のある証拠を提供した。均質なデンプン反応パターンが所望された。なぜなら、それは、デンプンポリマー上にかさ高い化学基を均一に導入して、酵素作用に立体障害を付与することによって、デンプン分解酵素によるデンプンの(グルコースへの)加水分解に最も効率的な妨害物を提供すると仮定されたからであった。
【0136】
(難消化性/遅消化性デンプン決定法の検証)
上記種々のインビトロRS決定法のうち、上記AOAC食物線維決定(Method 985.29;AOAC,1997)および上記Englystら(1992)の手順は、それらの良好な再現性および信頼性から、広く認められてきた。上記Englystら(1992)のインビトロ方法もまた、酵素の組み合わせ(インベルターゼ、膵臓アミラーゼおよびアミログルコシダーゼ)を使用してヒトの消化プロセスを模倣するためにデザインされ確認されてきた。この研究において、市販のジャガイモ顆粒(「現状のままで」おとび水和/加熱した)およびジャガイモデンプン(天然/生のおよび水和した/加熱した)を、Englystら(1992)の方法に従って評価して、難消化性デンプン(RS)、遅消化性デンプン(SDS)、および迅速消化性デンプン(RDS)の値の適切な決定を実証した(表4)。全ての評価したサンプルのうち、天然/生のジャガイモデンプンは、最高のRSの割合(78.1g/100g 乾燥成分もしくは78.1%)を有した。これは、Gormley and Walshe(1999)によって報告された他のインビトロ誘導値(74.4%)、Champら(1999)によって報告された他のインビトロ誘導値(77.7%)、およびMcCleary and Monaghan(2002)によって報告された他のインビトロ誘導値(77.0%)と良好に一致した。本発明者らの値をまた、Champら(2003)によって生のジャガイモデンプンについて決定された上記インビボRS値(78.8%)に都合よく匹敵した。対照的に、水和/加熱した(糊化)ジャガイモデンプンは、加熱の際の上記天然デンプン顆粒構造物の喪失に起因して、ごく低いレベルのRS(1.8%)を示した。市販のジャガイモ顆粒(「現状のままで」)については、低レベルのRSが認められた(5.7%)が、これらの初期の値は、単なる加熱によって無視できるレベルへと低下した(水和/加熱した,0.3%)。全体的に、これら結果は、インビトロ方法に基づいて、市販の即席のジャガイモ顆粒(「現状のままで」)について1%というRS値を報告したSusan and Englyst(1993)によって刊行されたものと合理的に一致した。報告の間のわずかな分散は、異なる実験条件に由来する可能性があるだけでなく、ジャガイモ細胞内の異なる程度のデンプン老化を誘導し得るジャガイモ顆粒製造業者によって使用される加工処理条件の変動からも由来する可能性がある。SDSに関しては、天然/生のジャガイモデンプンは、16.6%という値を示し、この値は、本発明者らの研究において適用された同じ方法を使用するEnglystら(1992)によって得られた値(16.0%)に非常に近似していた。対照的に、加熱後、水和/加熱したジャガイモデンプンについての上記SDS値が、顕著に低下した(16.6%から1.0%へ)一方で、「現状のままで」のジャガイモ顆粒および水和/加熱した即席のジャガイモ顆粒の両方は、非常に類似したが、しかし比較的低いSDSレベルを含んだ(それぞれ、2.3%および2.5%)。しかしそのうちの両方とも、加熱/沸騰によって影響を受けてはいないようだった。
【0137】
表4.市販のジャガイモ顆粒およびジャガイモデンプンの総デンプン(TS)、迅速消化性デンプン(RDS)、遅消化性デンプン(SDS)、および難消化性デンプン(RS)の平均値1,2
【0138】
【表4】

平均値±標準偏差を二連の測定値から決定した。共通の文字を共有する列内の値は、有意差がない(p<0.05)。
g/100g 乾燥成分(Englystら 1992);RS=TS−(RDS+SDS)。
【0139】
RSおよびSDSの両方における最高の低下は、生のデンプンの初期の加熱/糊化で起こった。これは、上記天然デンプン顆粒構造物の破壊と同時に起こる(RS2)。市販のジャガイモ顆粒(「現状のままで」)(これは、工業的加工処理の間に既に調理/加熱(上記デンプン糊化温度を上回る)済み)は、沸点温度で加熱した際に無視できる程度の値にまで容易に低下した低RSレベルを有した。従って、市販のジャガイモ顆粒(「現状のままで」)中に存在する低レベルのRSは、おそらく、工業的加工処理の間に来たしたアミロペクチン老化の結果であった。その構造物は、沸騰により破壊されることが公知である。市販のジャガイモ顆粒(「現状のままで」および水和/加熱した)内のSDSレベルは、比較的わずかであり、沸点温度で加熱することによってそれほど影響を受けず、低下もしなかった。この研究において発生した実験的RS/SDS値は、文献中で報告された値に関連しており、その値に関連して妥当であるようである。
【0140】
(デンプンのMS、RS、およびSDSレベルに対するジャガイモ顆粒の置換の効果)
予備実験に基づいて、アルコール水溶液反応媒体が、市販のジャガイモ顆粒の化学改変(すなわち、置換)に適した条件を提供することが確立された。アルコールの含有がない場合、上記反応スラリーを、柔組織細胞内のデンプンが、工業的加工処理の間に既に糊化されてしまっているという事実に起因して、過剰な膨潤および水取り込みを被りやすかった(特に、上記反応を触媒するために必要とされるアルカリレベルにおいて)。上記反応媒体の過剰な粘性は、その取り扱いおよび攪拌を極めて困難にし、水での過剰な希釈を必要とし、このことは、反応効率に障害を生じさせた(試薬はまた、水のヒドロキシル基に反応性である)。イソプロパノールを上記反応媒体に組み込むことによって、上記糊化したデンプンの膨潤が最小限になり、上記ジャガイモ顆粒スラリーは、反応の過程にわたって攪拌可能なままであった。
【0141】
(デンプンモル濃度置換(MS)レベルに対する反応条件の効果)
デンプンの効率的な反応を促進するために必要とされる条件を調査するために、要因分析デザインを使用して、改変ジャガイモ顆粒のモル濃度置換(MS)およびRS値の両方に対する試薬(プロピレンオキシド)レベルおよび反応温度の効果を調査した。2種の反応温度(22℃および48℃)および4種のプロピレンオキシド添加レベル(表2)を、上記デザインに組み込んだところ、これらは、MSレベルとRSレベルとの間の関係についての調査を容易にした。
【0142】
表5は、ジャガイモ顆粒MSレベルに関して、上記要因分析のANOVA結果を示す。プロピレンオキシドレベルおよび反応温度両方の主な効果は、ジャガイモ顆粒MSレベルに有意に影響を与えた(p<0.05)。しかし、上記2つの主な効果の間には有意な2元相互作用(two−way interaction)があった。この相互作用を、データ解釈を補助するためにプロットした(図5)。全体的に、MS値は、評価した両方の反応温度条件について試薬添加レベルが増大するにつれて、ほぼ線形様式で増大した。本明細書で観察されるプロピレン添加レベルと反応MSとの間の線形の関係は、糊化デンプン反応および顆粒状デンプン反応の両方に関する以前の報告とよく一致している(Kishidaら,2001;Shao,2001;Han and BeMiller,2005)。試薬(すなわち、蛍光プローブ)が、柔組織細胞壁を容易に浸透しそして上記細胞内のデンプンとむしろ均質に反応することができるということが実証されたので、デンプンMSレベルが添加されたプロピレンオキシド試薬の量に比例する(等温性反応条件を想定する)ことは有意義である。しかし、上記MSの比は、試薬レベルに応じて増大し、それは反応温度によって異なり(48℃>22℃)、MSにおける最大規模の差は、最高レベルの試薬添加において認められた。示された相互作用に基づいて、実験データを、反応温度によって統計的に再分析した(ANOVA)(表6)。各温度条件内で、個々のプロピレンオキシド添加レベルは、反応MSレベルによって明らかに異なった。試薬添加の類似のレベルに対して上記2種の反応温度のMSレベルを比較することにおいて、反応温度48℃は、一般に、22℃で達成されるものより1.5〜2.4倍高いMSレベルを生じた。所定の反応温度条件内のMSレベルは、添加されたプロピレンオキシドの量に比例しているようであったが、反応温度自体は、改変ジャガイモ顆粒内のMSレベルを強化する重要な手段を示した。以前の調査から、糊化したデンプン基質および顆粒状デンプン基質の両方に対する置換反応を強化するための温度が観察されてきた(Shao,2001;Han and BeMiller,2005)。MSレベルに対する温度の認められた効果は、いくつかの異なるシナリオによって説明され得る(その各々は、以下で議論される)。
【0143】
表5.改変ジャガイモ顆粒のモル濃度置換(MS)レベルに対するプロピレンオキシド添加レベルおよび反応温度の影響に関する二元配置分散分析(ANOVA)および有意レベル
【0144】
【表5】

ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2、PO−3、PO−4)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、4.6%、9.1%、12.8%、および18.3%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
反応温度を、22℃および48℃で評価した。
【0145】
表6.試薬添加レベルおよび反応温度に従ってヒドロキシプロピル化したジャガイモ顆粒についての平均モル濃度置換(MS)値
【0146】
【表6】

平均値±標準偏差を二つの反復実験から決定した。共通の文字を共有する列内の値は、有意差がない(p<0.05)。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2、PO−3、PO−4)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、4.6%、9.1%、12.8%、および18.3%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
反応コントロールサンプルのMS値は、検出不能であった。
【0147】
第1に、高い反応温度は、より高い程度のデンプン膨潤を誘導し得る。このことは、上記糊化したデンプン塊内のデンプン分子を試薬により接近しやすくする。同様の仮説が、顆粒状デンプンについて示唆された(Donovan,1979;Gray and BeMiller,2005)。本発明者らの反応系において、ジャガイモ柔組織細胞内のデンプンは、既に工業的加工処理の間に糊化しており、室温ですら、水に過剰に膨潤しやすかった。イソプロパノールを、上記反応系に組み込んで、デンプン膨潤を最小にし、上記反応媒体の粘度を制御した。高温の反応条件(すなわち、48℃)は、おそらく、わずかであるが、有意な様式で、デンプン膨潤を拡張した一方で、上記イソプロパノールは、上記反応スラリーを攪拌可能に維持した。膨潤以上に、高い反応温度は、市販のジャガイモ顆粒内のデンプン老化と関連した結晶を不安定化する(融解する)のに十分であった可能性がある。ある程度の結晶構造物が、工業的加工処理の間に利用される加熱−冷却サイクルに起因して、市販のジャガイモ顆粒中に存在することが理解される。この仮説は、DSC分析によって裏付けられ、上記分析から、市販のジャガイモ顆粒において53℃〜71℃の融解範囲を有する小さなデンプン老化ピーク(ΔH=0.6J/g)が検出された(表22)。上記デンプン老化ピークの融解範囲は、上記研究の最高の反応温度(48℃)を上回って起こったが、上記反応系のアルカリ条件およびプロピレンオキシドでの進行性の置換が、不安定化効果を与え、それによりジャガイモ顆粒内の老化デンプンの破壊を、比較的低い温度で生じさせた可能性は高い。高pH条件(静電反発)および置換反応(Gray and BeMiller,2005)から、デンプン構造物に対して不安定化効果を示すことが示された。この仮説を裏付けて、改変後のジャガイモ顆粒は、デンプン老化を示す認識できるピークをもはや示さなかった(表22)。従って、高い方の反応温度(48℃)によって誘導されるデンプン膨潤および/老化デンプンの融解は、反応へのデンプンの接近性を増大させることによって、比較的より高いデンプンMSレベルを生じたと考えられる。
【0148】
表22.デンプン老化の相対的な程度を示す、長期間の4℃での貯蔵後の水和した市販の(非改変)ジャガイモ顆粒およびヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒内の吸熱転移
【0149】
【表22】

、TおよびTは、それぞれ、開始、ピークおよび終結転移温度を示す。
ΔH=転移エンタルピー。
改変ジャガイモ顆粒サンプルに対する試薬添加レベル(PO−1)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、10.0%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
【0150】
第2に、上記温度効果は、ドナン電位現象に関連づけられ得た。Oosten(1982)は、デンプン顆粒の中へヒドロキシドアニオンが入ると、ドナン効果が低下することを示唆した。ドナン電位の発生の基礎は、柔組織細胞の内部pH環境と外部pH環境とを異ならせる、考えられる存在と関係がある。細胞内の水は、デンプンヒドロキシル基と平衡状態にある(pK=12.5)一方で、上記細胞外の水相(自由水)は、標準的なpK14を示す。この正味の効果は、柔組織細胞内部の環境とその取り囲む細胞外環境との間のpH差であり、比較的低いpH(より高い水素イオン濃度)が、柔組織細胞内に存在する。平衡に達する(細胞内環境と細胞外環境との間で)ために、細胞内から上記外部環境への水素イオンの流れ(および同時に、細胞内へNaカチオンが流れてデンプン塩を形成する)が必要である。このことは、上記外部環境と比較して、細胞内領域と関連した比較的大きな負電荷を生じる(細胞内の塩形態は、細胞外のH形態より比較的容易に解離される)。ドナン電位(柔組織細胞と関連したより大きな負電荷)の存在は、ヒドロキシドアニオンが柔組織細胞に入り、デンプン反応を触媒する潜在的な電荷バリアを作り出す。しかし、増大した温度は、上記ドナン電位効果を減少させ、柔組織細胞内の潜在的な反発電荷を克服して、より多くのヒドロキシドイオンの内部アクセスを可能にし、デンプン反応を触媒することが予測される。この現象はまた、上記研究の2種の反応温度について観察された識別される反応度(differential reactivity)を一部説明し得る。
【0151】
最後に、Lammersら(1993)は、水酸化ナトリウムによって触媒されるデンプンのヒドロキシプロピル化の動態を調査し、デンプンヒドロキシ基のpKに対する温度の効果を説明する以下の式を提唱した:pK=2174(1/T)+6.06(程度KにおけるT)。この式に基づいて、高温は、デンプンヒドロキシル基のpKを減少させ、プロピレンオキシド試薬との反応のためのより大きな割合の脱プロトン化したデンプンアルコキシドイオンを生成する傾向がある。この理論は、上記観察された反応温度効果を裏付ける。
【0152】
まとめると、増加した温度および増加した試薬添加レベルはともに、ジャガイモ顆粒MS値を実質的に増大させたが、上記2つの効果は、独立して作用することを示さなかった。増加した反応温度は、より高い速度および反応の程度をもたらした一方で、増大した試薬添加レベルは、所定の反応温度条件に関してデンプンMS値の線形的な増大をもたらした。上記温度効果は、現象の組み合わせ(老化デンプンのデンプン膨潤/融解の増大、ドナン効果の減少、デンプンヒドロキシル基の解離強化など)により潜在的に説明された。しかし、反応温度のさらなる増加(48℃を上回る)は、デンプンMSレベルにおけるさらなる増大へと必ずしも変換されなかったことに注意することは重要である。反応温度70℃は、デンプンMS値に対して有害な影響を実際に示し、他の品質の特性(製品の色が挙げられる)に対して不利な影響を有するようであった。この現象に寄与する潜在的な因子としては、より高い反応温度における過剰なデンプン膨潤に起因した、プロピレンオキシドの増大した揮発性および/または反応媒体の劇的に増大した粘度が挙げられ得る。顆粒状デンプン反応についての44℃および54℃という反応温度とは対照的に、Han and BeMiller(2005)は、この具体的な温度範囲を上回るデンプンMSレベルに対する温度のいかなる有益な効果も観察しなかった。従って、反応温度の増加を介してジャガイモ顆粒反応性を強化するには、物理化学的制限および実務上の制限の両方がある。
【0153】
(難消化性デンプンレベルおよび遅消化性デンプンレベルに対する反応条件の効果)
先の節に記載された同じ改変ジャガイモ顆粒材料を、ANOVAによる分析にさらに供して、RSレベルおよびSDSレベルに対する反応条件の効果を調査した。表7は、RS値に対する温度および試薬添加レベルの重要性に関するそのANOVA結果を示す。先の節におけるMS結果について観察されたものと同様に、反応温度および試薬レベルの主要な効果はともに、RS値に有意に影響を及ぼした。しかし、上記2つの主要な効果の間に何ら有意な相互作用は示されなかった(表7および図6)。この結果は、MS値に関連する上記主要な効果について示されたものとは異なっていた。相互作用の欠如は、MS決定(MS determination)と比較して、RS決定と関連したより高い程度の実験誤差があったという事実に一部起因し得た。有意な相互作用が欠如しているにも拘わらず、RS値に対する試薬添加レベルの効果は、各反応温度(表8)に対して分析され、MSレベルに対して先に示されたデータと一致した(表6)。各反応温度に関して、一般に、試薬添加のレベルが増大するにつれて、RS値が段階的に増大したが、RS値における統計的差異は、全ての試薬添加レベルに関して常には区別可能という訳ではなかった。MSレベルについての観察と同様に、反応温度は、ジャガイモ顆粒RSレベルに対して劇的な影響を有し、48℃で反応した上記材料は、同様の試薬添加レベルに対して22℃で反応させたものより少なくとも2倍高いRS含有量を示した。上記実験における最高のRS値(40.1%)は、ジャガイモ顆粒と最高のレベルの試薬(ジャガイモ顆粒重量に基づいて18.3%)を、最高の温度(48℃)で反応させることによって達成された。ジャガイモ顆粒のMSレベルとRSレベルとの間の関係は、次の節により詳細に調査される。
【0154】
表7.改変ジャガイモ顆粒の難消化性デンプン(RS)レベルに対するプロピレンオキシド添加レベルおよび反応温度の効果に関する2元配置分散分析(ANOVA)および有意レベル
【0155】
【表7】

ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2、PO−3、PO−4)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、4.6%、9.1%、12.8%、および18.3%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
評価した反応温度:22℃および48℃。
【0156】
表8.試薬添加レベルおよび反応温度に従う、ヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒の平均難消化性デンプン(RS)値
【0157】
【表8】

平均値±標準偏差を二つの反復実験から決定した。共通の文字を共有する列内の値は、有意差がない(p<0.05)。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2、PO−3、PO−4)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、4.6%、9.1%、12.8%、および18.3%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
RSは、反応コントロールサンプルにおいて検出されなかった。
【0158】
対照的には、有意な反応温度もしくは試薬レベルの主な効果は、ジャガイモ顆粒SDSレベルについて観察されなかった(表9)。ごく低レベルのSDS(<8.3%)が、上記使用される反応条件にも関わらず、検出され(表10)、試薬添加レベル(具体的反応温度条件に対する)の中で、SDSレベルにおける論理的傾向は観察されなかった。改変ジャガイモ顆粒内のSDS決定と関連した高い程度のバリエーションが存在した。比較すると、化学改変後の顆粒状デンプンに関して観察されたSDSレベルから、Han and BeMiller(2007)の報告(ジャガイモおよびトウモロコシのデンプンについては、それぞれ、21%〜35%)(ここでSDSは、Englystら(1999)によって記載されるように、試験食品から放出されるグルコースの測定によって検出された)を除いて、大部分の研究において9.0%を超えることは示されなかった(Wolfら,1999;Woo and Seib,2002)。
【0159】
表9.改変ジャガイモ顆粒の遅消化性デンプン(SDS)レベルに対するプロピレンオキシド添加レベルおよび反応温度の効果に関する2元配置分散分析(ANOVA)および有意レベル
【0160】
【表9】

ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2、PO−3、PO−4)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、4.6%、9.1%、12.8%、および18.3%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
評価した反応温度:22℃および48℃。
【0161】
表10.試薬添加レベルおよび反応温度に従う、ヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒についての平均遅消化性デンプン(SDS)値
【0162】
【表10】

平均値±標準偏差を二つの反復実験から決定した。共通の文字を共有する列内の値は、有意差がない(p<0.05)。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2、PO−3、PO−4)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、4.6%、9.1%、12.8%、および18.3%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
【0163】
まとめると、上記RSの形成は、デンプン鎖上の化学置換基の導入によって成功裏に達成された一方で、化学改変は、消化の速度に対してほとんど影響を有さないようであった(低SDSレベル)。観察された上記低レベルのSDSおよびSDS決定の信頼性の欠如に基づくと、これら実験におけるSDSレベルをさらに考察しても、それはあるとしても、わずかな付加的値にすぎない。残りの考察は、RS効果に対して厳密に焦点が当てられる。
【0164】
(モル濃度置換レベルと難消化性デンプンレベルとの間の関係)
相関分析を使用して、ジャガイモ顆粒デンプンのMS値とRS値との間の関係をさらに調査した。MSレベルとRSレベルとの間の強い正の相関(r=0.93)を認めた。全体的に、この知見は、ヒドロキシプロピル化されたデンプンのインビボでの消化性に基づいて、Leegwater and Lutin(1971)の結論、およびラット食餌における二重改変(ヒドロキシプロピル化/架橋された)タピオカデンプンの消化性を調査して類似の知見を報告したKishida(2001)の結論に一致する。
【0165】
RSとMSとの間の高い相関は、上記デンプン無水グルコースユニット(AGU)のO−2、O−3もしくはO−6の位置においてデンプン分子にかさ高いヒドロキシプロピル基を導入することによって説明され得る。ヒドロキシプロピル化が、立体障害を増大させるということに疑いはないが、上記デンプンAGU上の置換の具体的位置は、議論の対象のままである(Richardsonら,2000)。大部分の研究から、上記ヒドロキシプロピル置換基が、上記デンプンAGUのO−2位置において導入される可能性が最も高いことが示唆された(Xu and Seib,1996;Merkusら,1977;Richardsonら,2000)。デンプン鎖に沿って置換基が存在することは、立体障害を増大させ、酵素的加水分解に対するデンプンの感受性を低下させる。
【0166】
パンクレアチンでの消化に基づいて、Leegwater(1972)は統計モデルを提供し、MSのレベル増大につれてのヒドロキシプロピルデンプンについての還元力(reducing power)の指数関数的な減少を定義した。デンプン分子のヒドロキシプロピル基のランダム分布について、還元力は、デンプンMSに正比例したことが説明された。この研究内で低レベルのMSに関するMS値とRS値との間のほぼ線形的な関係は、デンプン鎖上の置換基のランダムな分布を意味する(図7)。しかし、最高のMS/RSレベルでの線形性のわずかな喪失があらわれた(図6)。この観察は、おそらく、より高い置換レベルにおいてデンプン鎖上の置換基のより少ないランダム分布によって説明される。上記ヒドロキシプロピル基自体は、プロピレンオキシドとさらに反応して、置換基のオリゴマー鎖および/またはポリマー鎖を形成することができるヒドロキシル基を有する。同じデンプンAGUの複数の位置でのポリ置換が起こる可能性があった(特に、高い試薬添加レベルにおいて)。これは、RSレベルへの最小限のさらなる寄与を提供しつつ、より高いデンプンMSレベルに寄与する(単一の部位での複数の改変は、デンプン加水分解にさらなる抵抗性を付与しないようである)。別の考えられる説明は、この研究におけるジャガイモ顆粒MSレベルが、デンプンの置換と細胞壁ポリサッカリドの置換を区別しなかったことであり得る。(デンプンとは対照的に)細胞壁ポリサッカリド分子のより高い割合が、高いMSレベルにおいて置換されたことが考えられる。この反応シフトはRSレベルに寄与するとは予測されない。この後者の可能性は、上記研究の試薬添加の最高のレベルにおいて、MSレベルとRSレベルとの間に相関がないことの仮説の説明を提供する一方で、これがまさにその場合であるという直接の証拠は、本明細書では提供されない。
【0167】
ヒドロキシプロピル化した小麦デンプン(MS 0.04)に関しては、Leegwater and Luten(1971)は、本発明者らの研究における類似のMSレベル(0.042,表6)について観察されたもの(14.6%,表8)と比較して、わずかにより高いRS含有量(20%)を報告した。しかし、本発明者らの研究において報告されるRS含有量(MS約0.049,表6;RS約18.7%,表8)、およびKishida(2001)のもの(糊化したヒドロキシプロピル化されたタピオカデンプン)にほとんど差はなく、これらはともに、約20%のRSと、約0.05のMSレベルを得た。本発明者らの知見と他の研究の知見との間のわずかな変化は、基質の違い(小麦デンプンおよびトウモロコシデンプンと比較して、ジャガイモ顆粒)およびデンプン消化性を決定するための様々な方法の使用におそらく起因する。しかし、まとめると、これらの結果は、プロピレンオキシドでのデンプンの化学改変は、デンプン消化性を低下させ、有意なレベルのRSを生じさせることを示す。本発明者らの研究における40.1%(表8)という最高のRSレベルは、ジャガイモ顆粒に関してデンプンMS0.17(表6)(6.04% ヒドロキシプロピル基含有量,w/w)で達成された。これは、WHO(1972)によって定義されたヒドロキシプロピル化製品の最大許容量(デンプンにおいて7%未満のヒドロキシプロピル基含有量,w/w)より低い。
【0168】
(デンプンMSレベルおよびRSレベルに対する二重改変の効果)
先の節において、反応温度およびプロピレンオキシド添加レベルはともに、ジャガイモ顆粒RS値に有意な影響を有することが実証されたが、これらは、SDS値を促進することにおいてほとんど影響がなかった。他の報告において、架橋試薬であるトリメタリン酸ナトリウム(STMP)は、顆粒状デンプンとの反応においてRS/SDSを生成するために使用されてきた(Woo and Seib,1997;Haynesら,2000)。第2の要因分析を行って、ジャガイモ顆粒RS含有量に対するヒドロキシプロピル化および架橋反応の組み合わせ効果を調査した。3種のレベルの反応温度(22℃、34℃および48℃)、3種のプロピレンオキシド添加レベル(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、0%、10%および20%[w/w])、および4種のSTMP添加レベル(ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、0%、1%、2%および4%[w/w])を、この調査に含めた。二重改変ジャガイモ顆粒誘導体の調製のために、プロピレンオキシドでの置換を、常に最初に行い、続いて、架橋を行った(これは、工業的状況における場合である)。
【0169】
(デンプンモル濃度置換(MS)レベルに対する反応条件の効果)
表11は、上記研究の全ての試薬組み合わせおよび反応温度に関するMS(ヒドロキシプロピル化)値およびDS(架橋)値のまとめを提供する。架橋が、ヒドロキシプロピル化MS値の決定を混乱させたという事実に起因して、架橋試薬を受けないジャガイモ顆粒誘導体に関するヒドロキシプロピル化MS値のみを測定し得た。従って、表11において、二重改変ジャガイモ顆粒のヒドロキシプロピル化MS値は、「測定されない」(ND)として示される。しかし、二重改変ジャガイモ顆粒のヒドロキシプロピル化MS値が、プロピレンオキシド反応の実証された反復性に基づいて、それらそれぞれの架橋されていないジャガイモ顆粒誘導体について決定されたものとは実質的に同一でないが、非常に類似していた(しかし直接決定されなかった)ことが理解される。この制限が原因で、包括的な統計分析を行って、ジャガイモ顆粒のMS値およびDS値に関して全ての主要な効果およびそれらの相互作用を同時に評価することは可能ではなかった。従って、制限された統計分析を、最初にこの実験の架橋されていないヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒に対して第1に行って、上記最初のヒドロキシプロピル化実験において得られたデータ(表5および表6)との比較を容易にした。表12は、ヒドロキシプロピル化MSレベルに関連して、2種のプロピレンオキシド添加レベル(PO試薬を受けなかったコントロールを除く)および3種の反応温度に対するANOVA結果を示す。先の実験において見いだされたもの(表5)と類似して、POレベルおよび温度の主要な効果の両方、ならびにそれらの相互作用は、ジャガイモ顆粒MS値に有意に影響を及ぼした(p<0.05)(表12)。上記初期のおよび現在の実験に関するMS値(それぞれ、表6および13)は匹敵し、試薬添加レベルおよび反応温度の類似の組み合わせと一致する(22℃および48℃の反応温度に関して、表6中のPO−2添加レベルは、表13中のPO−1添加レベルに匹敵する一方で、表6中のPO−4添加レベルは、表13中のPO−2レベルに匹敵する)。この観察は、ジャガイモ顆粒の改変についての上記PO反応の反復性のさらなる証拠を提供した。POレベルと温度との間の示される相互作用(図8)は、初期の実験について既に詳細に議論されてきており、ここではさらに対処しない。
【0170】
表11.プロピレンオキシド/トリメタリン酸ナトリウムの添加レベルおよび反応温度に関する二重改変ジャガイモ顆粒のヒドロキシプロピルモル濃度置換(MS)および架橋の置換度(DS)レベルのまとめ
【0171】
【表11】

ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−0、PO−1、PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、10.0%、および20.0%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(STMP−0、STMP−1、STMP−2、STMP−3)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、1.0%、2.0%および4.0%(w/w)のトリメタリン酸ナトリウムであった。
評価した反応温度:22℃、34℃および48℃。
モル濃度置換(MS)値は、ヒドロキシプロピル化のレベルを示す。
置換度(DS)の値は、STMP架橋のレベルを示す。
架橋がヒドロキシプロピル化MS値の決定を混乱させたという事実に起因して、架橋試薬を受けなかったジャガイモ顆粒誘導体のヒドロキシプロピル化MS値のみを測定することができた。二重改変ジャガイモ顆粒のMS値は、「決定されない」(ND)として示される。
【0172】
表12.改変ジャガイモ顆粒のモル濃度置換(MS)レベルに対するプロピレンオキシド添加レベルおよび反応温度の効果に関する二元配置分散分析(ANOVA)および有意レベル
【0173】
【表12】

評価される反応温度:22℃、34℃および48℃。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、10%、および20%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
【0174】
表13.試薬添加レベルおよび反応温度に従う、ヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒の平均モル濃度置換(MS)値
【0175】
【表13】

平均値±標準偏差を二つの反復実験から決定した。共通の文字を共有する列内の値は、有意差がない(p<0.05)。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−1、PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、10.0%、および20.0%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
【0176】
(架橋DSレベルに対する反応条件の効果)
架橋反応に関しては、さらなるANOVA分析を行って、架橋DSレベルに対するSTMP試薬添加レベル、反応温度、およびPO添加レベルの効果を調査した(なぜならPO置換は、常に架橋の前に行ったからである)(表14)。主要な効果のなかでの全ての2元および3元の相互作用もまた、考慮した。PO反応とは明確に対照的に、架橋DS値は、STMP試薬添加レベルに依存するのみであり(p 0.030)、反応温度にもPO添加レベルにも影響を受けなかった。平均架橋DS値(反応温度に従いPO添加レベルにわたってプールした)を表15に示す。架橋反応において温度効果が同様にないことが、他者によって観察されてきた。トウモロコシデンプンのSTMP改変を調査するにおいて、Yangら(2007)は、温度が架橋反応における要因であるとは観察しなかったが、試薬添加レベルおよびpHはともに、反応レベルに有意に影響を与えた。上記反応を駆動するために十分なレベルのアルカリ性の存在下で、STMP反応における架橋DSレベルは、本質的に、試薬添加レベルの関数である。
【0177】
表14.改変ジャガイモ顆粒の置換度(DS)のレベルに対する、トリメタリン酸ナトリウム添加レベル、プロピレンオキシド添加レベル、および反応温度の効果に関する三元配置分散分析(ANOVA)および有意レベル
【0178】
【表14】

ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(STMP−0、STMP−1、STMP−2、STMP−3)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、1.0%、2.0%、および4.0%(w/w)のトリメタリン酸ナトリウムであった。
評価される反応温度:22℃、34℃および48℃。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−0、PO−1、PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、10.0%、および20.0%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
【0179】
表15.トリメタリン酸ナトリウム添加レベルおよび反応温度に従う、二重改変ジャガイモ顆粒に関する置換度(DS)の平均
【0180】
【表15】

PO添加レベルにわたってプールした、平均値±標準偏差。共通の文字を共有する列内の値は、有意差がない(p<0.05)。
ジャガイモ顆粒の反応のための架橋試薬添加レベル(STMP−0、STMP−1、STMP−2、STMP−3)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、1.0%、2.0%、および4.0%(w/w)のトリメタリン酸ナトリウムであった。
評価される反応温度:22℃、34℃および48℃。
DS値を、反応コントロールサンプル中の天然のリン含有量を除いて、架橋反応に起因して組み込まれるリン含有量をアッセイすることによって決定した。
【0181】
(難消化性デンプン(RS)レベルに対する反応条件の効果)
先の節において考察された二重改変ジャガイモ顆粒をさらに分析して、難消化性デンプン(RS)レベルを評価した。表16は、ヒドロキシプロピル化(0%、10%および20%のPOレベル)、架橋(0%、1%、2%および4%のSTMPレベル)および反応温度(22℃、34℃および48℃)の全ての組み合わせを表す、改変ジャガイモ顆粒に関して得られたRS値のまとめを提供する。理解されるように、RSレベルは、一般に、ヒドロキシプロピル化、架橋、および反応温度のレベルが増大するにつれて増大した。データを三元配置ANOVA分析に供して、ヒドロキシプロピル化、架橋、および反応温度の主要な効果、ならびにジャガイモ顆粒RS値に対する上記主要な効果の間の潜在的な相互作用を調査した(表17)。反応温度、STMP添加レベルおよびプロピレンオキシド添加レベルの主要な効果は、示された有意な2元の相互作用(POレベル×反応温度;STMPレベル×反応温度)を含め、ジャガイモ顆粒RS値に全て有意に影響を及ぼした(p<0.001)。全ての主要な効果の中の有意な3元の相互作用もまた、観察された。対照的に、PO試薬添加レベルとSTMP試薬添加レベルとの間に有意な相互作用のないことは、ヒドロキシプロピル化の初期の程度は、ジャガイモ顆粒RS値に関して、その後の架橋の効果に影響を及ぼさないことを示した。従って、PO試薬およびSTMP試薬は、相乗的ではなく、相加的な、ジャガイモ顆粒RS含有量に対する効果を示した。
【0182】
表16.プロピレンオキシド/トリメタリン酸ナトリウムの添加レベルおよび反応温度に基づく、二重改変ジャガイモ顆粒の難消化性デンプン(RS)レベルのまとめ
【0183】
【表16】

ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−0、PO−1、PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、10.0%、および20.0%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(STMP−0、STMP−1、STMP−2、STMP−3)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、1.0%、2.0%、および4.0%(w/w)のトリメタリン酸ナトリウムであった。
評価される反応温度:22℃、34℃および48℃。
【0184】
表17.改変ジャガイモ顆粒の難消化性デンプン(RS)レベルに対するプロピレンオキシド添加レベル、トリメタリン酸ナトリウム添加レベル、および反応温度の効果に関する、三元配置分散分析(ANOVA)および有意レベル
【0185】
【表17】

ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(PO−0、PO−1、PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、10.0%、および20.0%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(STMP−0、STMP−1、STMP−2、STMP−3)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、1.0%、2.0%、および4.0%(w/w)のトリメタリン酸ナトリウムであった。
評価される反応温度:22℃、34℃および48℃。
【0186】
PO添加レベルと反応温度との間の有意な相互作用は、そのデータの解釈を補助するためにプロットした(図9)。全体的に、RS値は、反応温度の各レベル内でPO添加のレベルが増大するにつれて、増大する傾向があった。しかし、PO試薬添加レベルに応じてのRSにおける増加の速度は、反応温度が増大するにつれて増大した。従って、最高のRSレベルは、最高のPO添加レベルを用いて最高の反応温度(48℃)で反応させた場合に達成された。PO添加レベルおよび反応温度に応じたRSにおける傾向は、PO MS値に関して先に観察されたものに近似する(図5および8)。このことは、反応温度が高くなると、ジャガイモ顆粒内でより大きな程度のヒドロキシプロピル化を誘導し、これは続いて、より高いRS値をもたらしたことを示す。この現象は、上記初期の実験におけるMS値とRS値との間で観察された強い正の相関(r=0.933)と一致する(図7)が、上記初期の実験において、PO試薬添加レベルと反応温度との間に有意な相互作用は検出されなかった。顆粒状デンプン(この研究において使用される糊化したデンプンとは対照的に)との反応に基づいて、Kishidaら(2001)は、PO添加レベルが改変デンプン製品内でRS値を有意に強化することを同様に観察した。
【0187】
RS値に対するPO試薬添加レベルの効果を、各反応温度に関して決定して(表18)、上記初期の実験において得られたデータ(表8)との比較を容易にした。表18に示されるRS値は、匹敵する反応温度およびPOレベルに関して表8に示されるものに類似である(22℃および48℃の反応温度に対して、表8中のPO−2添加レベルは、表18中のPO−1添加レベルに匹敵する一方で、表8中のPO−4添加レベルは、表18中のPO−2レベルに匹敵する)。平均して(表18中の平均値)、48℃の反応温度は、22℃において達成されたRS値(11.6)より2.5倍高いRS値(29.3)を生じた。このことは、その反応温度自体が、上記改変ジャガイモ顆粒のRS含有量を強化するために重要であるという事実を強固にしている。
【0188】
STMP添加レベルと反応温度との間の有意な相互作用が、RS値に関して観察されたが(表17)、上記相互作用は、厳密ではなく、実際的に有意ではないことが示された(図10)。先に示されるように、同様に、ジャガイモ顆粒のDSレベルに関して、STMP添加レベルと反応温度との間で意味のある相互作用は観察されなかった;従って、RS値に関して、実際の相互作用が示されなかったということは驚くべきことではない。表19は、反応温度に従って、各STMP試薬添加レベルについてのRS値を示す。RS含有量に対する架橋の全体的な影響を、各試薬添加レベルに関して統計的に区別した(平均値を、PO添加レベルにわたってプールした)。なぜなら、RS値は、STMP添加レベルにおける各増大とともに段階様式での増大を示したからである。PO反応とは対照的に、反応温度は、STMP架橋反応において生成されるRSレベルに対して実際の影響を有さなかった(表19)。PO添加レベルと、STMP添加レベル、および反応温度の主要な効果との間の3元の相互作用(表17)は、PO添加レベルと反応温度との間の2元の相互作用の結果であった。
【0189】
表18.プロピレンオキシド試薬添加レベルおよび反応温度に従う、二重改変ジャガイモ顆粒に関する平均難消化性デンプン(RS)値
【0190】
【表18】

平均値±標準偏差を二つの反復実験から決定した。共通の文字を共有する列内の値は、有意差がない(p<0.0001)。
ジャガイモ顆粒反応物に対する試薬添加レベル(PO−0、PO−1、PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、10.0%、および20.0%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
評価される反応温度:22℃、34℃および48℃。
g/100g 乾燥デンプン含有量(Englystら,1992);RS=TS−(RDS+SDS)。
【0191】
PO試薬とSTMP試薬の寄与をRSの生成に対して直接対比させるために、それぞれ、類似のMSレベルおよびDSレベルを示す改変ジャガイモ顆粒は、RS含有量に関して比較した。架橋を有さないヒドロキシプロピル化MSレベル0.047(PO−1/22℃反応;表11)は、RS値7.8を生じた(表16)。比較すると、ヒドロキシプロピル化の非存在下でのSTMP架橋(DS値0.048;STMP−3/34℃反応;表(11))は、RS値5.5を示した(表16)。従って、低い改変レベルにおいて、ヒドロキシプロピル化は、STMPでの架橋よりも、改変ジャガイモ顆粒において少なくとも匹敵する(もしくはわずかにより高い)量のRSを生じるが、この観察がより高い改変レベルへと外挿され得るか否かは未知である。
【0192】
表19.トリメタリン酸ナトリウム試薬添加レベルおよび反応温度に従う、二重改変ジャガイモ顆粒に関する平均難消化性デンプン(RS)値
【0193】
【表19】

平均値±標準偏差を、他の変数に対して二連の実験から決定した。共通の文字を共有する列内の値は、有意差がない(p<0.05)。
ジャガイモ顆粒の反応のための試薬添加レベル(STMP−0、STMP−1、STMP−2、STMP−3)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、1.0%、2.0%、および4.0%(w/w)のトリメタリン酸ナトリウムであった。
評価される反応温度:22℃、34℃および48℃。
g/100g 乾燥デンプン成分含有量(Englystら,1992);RS=TS−(RDS+SDS)。
【0194】
(インビトロでの概算血糖上昇指数(eGI)決定)
先の節において、ヒドロキシプロピル化および架橋がともに、RSレベルを効率的に強化することを実証した。多くの研究から、RSの存在が、上記デンプン消化速度を抑制することによって血糖上昇指数(GI)値を低下させることが示された(Rabenら,1994;Readerら,1997;Goniら,1996;Sajilataら,2006)。従って、上記概算血糖上昇指数(eGI)(これは、その実際のGIのインビトロでの概算を表す)を、Goniら(1997)によって確立された手順および経験式に基づいて、この研究の選択された二重改変ジャガイモ顆粒材料について確立した。この手順において、90分間で加水分解された総デンプンのパーセンテージ(HI90)を、HI90とインビボでの血糖上昇指数決定との間の確立された相関(r=0.952,p<0.05)に基づいて、測定および外挿して、eGI値を得た。
【0195】
表20は、上記研究の選択された改変ジャガイモ顆粒製品の消化されたデンプン含有量に対する処理および消化時間両方の効果を調査するために使用された上記2元配置ANOVA分析のまとめを提供する。処理および消化時間の主要効果はともに、消化されたデンプン含有量値に独立して影響を及ぼした。なぜなら、有意な相互作用は、上記2つの主要効果の間で観察されなかったからである(表20)。表21は、全て評価された改変ジャガイモ顆粒製品に関して、上記消化されたデンプン含有量(HI90)およびeGI値についての対応する平均値、ならびに上記示されたGIカテゴリーを示す。上記市販のジャガイモ顆粒製品(これは、化学改変処理を受けなかった(コントロール、処理5))は、評価された全てのジャガイモ顆粒製品のうちの最高のHI90値(71.6)およびインビトロeGI値(116.4)を有した。このことから、それは、高GI製品として分類されるようになる。対照的に、最低のHI90値(25.0〜27.4)およびインビトロeGI値(59.7〜65.9)を、PO添加のうちの最高レベル(PO−2)を受けた改変ジャガイモ顆粒製品(処理1、処理2、および処理3)について得た;これら顆粒製品は、中間血糖上昇カテゴリー内に入った。処理1、処理2、および処理3(これは、それらのSTMP添加レベル(それぞれ、STMP−3、STMP−2、およびSTMP−0)においてのみ異なった)を、それらのHI90値もしくはeGI値によって統計的に区別しなかった。従って、この研究において調査したレベルにおけるSTMP架橋は、改変ジャガイモ顆粒のHI90値もしくはeGI値に影響を与えもせず、改善もしないようであった。低レベルのPO添加を示す上記ジャガイモ顆粒製品(PO−1,処理4)を、HI90値もしくはeGI値に基づいて上記非改変の市販のコントロール(処理5)とは統計的に区別した一方で、これは、高血糖上昇製品となおみなされた。まとめると、比較的高いPOレベルは、ジャガイモ顆粒製品の血糖上昇応答特徴に影響を与えるために必要とされると思われる。
【0196】
表20.改変ジャガイモ顆粒のデンプン消化の程度に対する改変タイプ/レベル(処理)およびデンプン消化時間の効果に関する2元配置分散分析(ANOVA)および有意レベル
【0197】
【表20】

処理を、プロピレンオキシドおよびSTMP試薬添加レベル(ジャガイモ顆粒乾燥重量のパーセンテージとして定義される)の組み合わせによって定義する:
処理1− PO 20.0%、STMP 4.0%
処理2− PO 20.0%、STMP 2.0%
処理3− PO 20.0%、STMP 0.0%
処理4− PO 10.0%、STMP 2.0%
処理5− PO 0%、STMP 0%
加水分解の程度を、デンプン消化の過程にわたって種々の時点(30分、60分、90分、120分、150分)で決定した。
【0198】
同じデータのグラフ表記したものを図11に提供する。全てのサンプルに関して、デンプン消化の最高の速度および割合は、上記消化期間の最初の30分以内で起こり、その期間を超えると、さらなるデンプンの消化はほとんどなかった。化学改変を介した低血糖上昇製品を生成する能力は、デンプン加水分解の初期段階において起こる迅速な消化の速度および程度を制限するための化学処理を必要とする。
【0199】
表21.改変ジャガイモ顆粒に関する消化性指数およびインビトロでの概算血糖上昇指数(eGI)値
【0200】
【表21】

処理を、プロピレンオキシド試薬添加レベル(POレベル)およびトリメタリン酸ナトリウム試薬添加レベル(STMPレベル)の組み合わせによって定義する。
プロピレンオキシド(PO)試薬添加レベル(PO−0、PO−1、PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、10.0%、および20.0%(w/w)のプロピレンオキシドに対応する。
トリメタリン酸ナトリウム(STMP)試薬添加レベル(STMP−0、STMP−1、STMP−2およびSTMP−3)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、それぞれ、0.0%、1.0%、2.0%、および4.0%(w/w)のSTMPに対応する。
消化性指数(HI90)を、90分の消化後の総デンプン含有量のうちのパーセンテージ(%)として表される消化されたデンプン(すなわち、グルコース)の量によって決定した。
インビトロのeGIを、Goniら(1997)によって提唱されるように、式GI=39.21+0.803(H90)によって概算した。
GIカテゴリーを、以下のように定義する:低GI=55未満;中GI=55〜69;高GI=69より高い。
【0201】
(改変ジャガイモ顆粒およびコントロールジャガイモ顆粒の走査電子顕微鏡画像化)
改変ジャガイモ顆粒および市販の(非改変)ジャガイモ顆粒をともに、走査電子顕微鏡法(SEM)によって視覚化して、それらの物理的特徴を良好に視覚化し比較した。図12および図13は、それぞれ、非改変の市販のジャガイモ顆粒および反応コントロールジャガイモ顆粒の画像を表す一方で、図14および図15は、改変ジャガイモ顆粒の画像を示す。顕微鏡写真から、市販の顆粒および改変顆粒の両方が別個の柔組織細胞構造物からなることが明らかになった;従って、細胞は、上記誘導体化手順によって破壊されてしまったようには見えなかった。インタクトな細胞(これは、マッシュポテトの質感および品質の重要な決定因子とみなされる)は、市販の製品についての重要な特徴である。上記反応コントロール(非改変)ジャガイモ顆粒の柔組織細胞(図13)は、非処理の市販のジャガイモ顆粒のものと比較してわずかにしわが寄っているかもしくは収縮した外見を示した(図12)。上記反応コントロールジャガイモ顆粒表面の収縮した外見は、上記反応系(アルカリ性アルコール水溶液反応媒体)および/またはその後の、反応条件への曝露後の顆粒の溶媒乾燥に起因するようであった。上記改変(ヒドロキシプロピル化)顆粒(図14および図15)は、わずかにしわが寄った外見(上記反応コントロール顆粒に類似)を示したのみならず、わずかにより粗い外表面をも示した。表面の外見における示された差異以上に、上記改変顆粒は、サイズおよび形態に関して、市販の非改変のジャガイモ顆粒とは劇的に異ならないようであった。
【0202】
(改変ジャガイモ顆粒の老化安定性)
この研究におけるジャガイモ顆粒のRS含有量を強化するアプローチは、先に示されるようにeGI値を低下させるのみならず、ジャガイモ顆粒の物理的特性の改善にも寄与する。ヒドロキシプロピル化はしばしば、ポリマー鎖に沿って置換基を導入して、過剰な鎖間会合(interchain association)を低下させる(別の方法で、シネレシスをもたらす)ことによって、老化に対してデンプンを安定化するために商業的に使用されている。従って、置換デンプンペーストは、一般に、老化に抵抗し、また、保水能力を失うことなく凍結融解プロセスに耐え得る(Whistler and BeMiller,1997)。この研究において、市販の(非改変)ジャガイモ顆粒を、冷蔵温度(4℃)での21日間の貯蔵過程にわたって、老化に耐えるそれらの能力について、示差走査熱量測定(DSC)を介してヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒に対比させた。非改変のジャガイモ顆粒に関して、老化デンプンの転移温度は、上記21日の実験過程にわたって評価した全てのサンプルについて53.4℃〜77.9℃の範囲内に入った(表22)。この温度範囲は、再結晶化したアミロペクチンの融解と一致し(Sievert and Pomeranz,1989)、これは、天然デンプンの糊化の温度より低い温度で起こる(Pravisaniら,1985;Toshiko,2000;Karlsson and Eliasson,2003)。0日間の冷蔵貯蔵で市販のジャガイモ顆粒について観察された相転移は、老化デンプン鎖の融解に帰するようである。このことは、それらの本来の製造の間に使用される加工処理(加熱/冷却)条件の結果である。その転移開始温度は、21日間の冷蔵貯蔵期間にわたって有意に変化しなかった一方で、その転移のピーク温度および転移の終結温度(peak and completion transition temperature)は、7日間の冷蔵貯蔵後にわずかに増大した。理解されるように、融解エンタルピーは、冷蔵貯蔵の期間が増加するにつれて増大した(0.6J/gから2.7J/g)。上記冷蔵貯蔵過程にわたるエンタルピーの増大は、老化の増大したレベル(分子の整然とした秩序)を表す一方で、微細な増大した転移のピーク/終結温度は、増大したクリスタリットの完成(perfection)を示した(Tester and Morrison,1990)。この観察された吸熱パターンは、低温条件に供した糊化した天然のデンプンに代表的である。全体的に、低温貯蔵は、核形成、結晶成長、およびクリスタリットの完成を増大させることによってデンプン老化を強化した(Tester and Morrison,1990;Toshiko,2000;Karlsson and Eliasson,2003)。
【0203】
しかし、ヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒(PO−1レベル)に関して、デンプン老化を示す転移吸熱(transition endotherm)は、上記21日間の実験過程にわたって観察されなかった(表22)。なぜなら上記改変デンプン鎖に結合したヒドロキシプロピル置換基は、アミロペクチン再結晶化を効率的に障害したからである。従って、ヒドロキシプロピル化は、ジャガイモ顆粒内のデンプン老化を効率的に障害し、それにより、冷蔵/冷凍した食品システムにおいて使用するためにそれらの物理的特性を改善する。
【0204】
(改変ジャガイモ顆粒の近似組成)
市販の(非改変)ジャガイモ顆粒およびヒドロキシプロピル化(PO−2)ジャガイモ顆粒を、近似組成(タンパク質、炭水化物、脂質、および灰分)、ならびに硫黄レベルおよびリンレベルについて評価して、化学改変が、多量素組成に対して任意の変化を生じたかどうかを評価した(表23)。近似分析から、上記市販の(コントロール)ジャガイモ顆粒と比較して、上記改変されたもののタンパク質、脂質、硫黄、およびリンの含有量においてわずかな低下が明らかになった。上記タンパク質含有量の約半分が、上記改変プロセスの間に失われた。上記高いアルカリ性条件により、反応が、上記タンパク質の一部を、短いペプチドもしくはアミノ酸に加水分解することのために必要とされたようであり、上記短いペプチドもしくはアミノ酸は可溶化し、上記反応媒体の除去とともに失われた。硫黄の同時の減少は、ペプチドもしくはアミノ酸を含む、硫黄の喪失に起因しているようであった。脂質エステル、ならびに天然デンプンモノホスフェートエステルもまた、上記反応媒体の強アルカリ性条件によって加水分解され、失われたようであった。このことは、改変ジャガイモ顆粒内の脂質含有量およびリン含有量において観察された低下の原因となる(Chen and Jane,1994;Sangら,2010;Tester and Karkals,2005)。対照的に、炭水化物、デンプンおよび灰分の含有量は、タンパク質および脂質の有意な喪失に起因して、改変ジャガイモ顆粒内でわずかに増大した(すなわち、濃縮された)。さらなる調査から、反応前にジャガイモ顆粒からタンパク質を除去および回収して、改変ジャガイモ顆粒に対する反応後添加を促進することが考慮されるべきである。
【0205】
表23.市販の(非改変)ジャガイモ顆粒および改変(ヒドロキシプロピル化)ジャガイモ顆粒の近似組成、リン、硫黄、およびデンプン含有量の平均値1,2
【0206】
【表23】

平均値±標準偏差を二連の測定値から決定した。
g/100g ジャガイモ顆粒(乾燥重量ベースで)。
差異によって決定した(ジャガイモ顆粒乾燥重量からタンパク質、脂質および灰分を差し引く)。
改変ジャガイモ顆粒サンプルに対する試薬添加レベル(PO−2)は、ジャガイモ顆粒乾燥重量に基づいて、20.0%(w/w)のプロピレンオキシドであった。
【0207】
(まとめ)
ヒドロキシプロピル化および架橋(STMP)の反応は、市販のジャガイモ顆粒の上記RS含有量を強化する有効な手段であり、上記概算血糖上昇指数を抑制する手段でもあることが判明した。化学反応は、デンプン分子のみに限定されないようであった(細胞壁ポリサッカリド、タンパク質はまた、同じ反応において改変され得た)が、デンプン分子が、上記改変プロセスにおいて主に誘導体化されたという良好な証拠がある。第1に、モデル反応系(ここでジャガイモ顆粒を、水性状態における蛍光プローブで改変した)から、試薬が上記柔組織細胞壁に浸透し、上記細胞内の上記デンプン画分と反応する可能性が明らかになった。第2に、改変ジャガイモ顆粒内のデンプンは、インビトロでの酵素消化系を介した加水分解に対して増大した抵抗性を示し、また、老化に対して安定性が強化したことが実証された。これらのことはともに、デンプン鎖の成功裏の誘導体化についての間接的証拠を提供する。第3に、試薬添加の類似のレベルに関して、改変ジャガイモ顆粒レベル内のヒドロキシプロピル化MSレベルは、純粋なデンプンに関する文献中で報告された反応とほぼ同一のRSレベルを生じた。これらの観察、ならびにデンプンが上記柔組織細胞乾燥成分含有量のうちの約85%を表すという事実は、ジャガイモ顆粒柔組織細胞内の上記デンプンの大部分が上記改変プロセスにおいて効率的に誘導体化されたという強力な証拠を提供する。
【0208】
ジャガイモ顆粒を改変するための反応条件に関して、イソプロパノールは、試薬および塩基に加えて、上記反応系に重要な成分であった。なぜなら、イソプロパノールは、ジャガイモ顆粒の過剰な膨潤を防止して、濃縮されそして攪拌可能なスラリーを維持したからである。PO試薬レベルの増大(ジャガイモ顆粒重量に基づいて4.6〜20%)および反応温度(22〜48℃)の両方が、ジャガイモ顆粒MS値に対して肯定的な影響を示した。反応温度48℃は、PO置換効率を増強したが、試験した温度が高くなるほど(>50℃)、上記反応系媒体の過剰な膨潤/粘度がもたらされ、全体的な反応性が妨げられた。温度(22〜48℃)に起因して増強された反応が、現象の組み合わせ(デンプン鎖の膨潤の増大、ドナン電位効果の減少、およびデンプンヒドロキシル基の解離の増大を含む)によって引き起こされたようであった。架橋反応に関しては、STMP試薬レベルを増大させると(ジャガイモ顆粒重量に基づいて、1〜4%)、DSレベルの増大がもたらされたが、STMP反応効率は、反応温度もしくはPOレベルによって影響を及ぼされなかった(PO反応は、STMP架橋の前に常に行った)。このことは、DS値が、主に、試薬添加レベルの関数であることを示す。
【0209】
改変ジャガイモ顆粒(全ての反応温度(22〜48℃)にわたってプールした)についてのPO MS値とRS値との間の正の相関(r=0.933)は、RSレベルが、主に、PO MSレベルの関数であることを示唆した。従って、PO MSレベルを増大させると(0.31〜0.174)、一般に、より大きなジャガイモ顆粒RS含有量(6.0〜40.1%)が生じた。デンプン分子へのヒドロキシプロピル基の組み込みは、酵素消化に対する上記立体障害を効率的に増大させた。上記最高のRSレベルが、最高のPO添加レベル(ジャガイモ顆粒重量に基づいて、18.3%[w/w])および最高の反応温度(48℃)を使用して達成されたので、上記2つの主要効果は、MS値を単に増大させることによって上記改変ジャガイモ顆粒のRS含有量を強化した。RS含有量とは対照的に、PO試薬によって改変ジャガイモ顆粒は、ごく非常に低いレベルのSDS(1.2〜8.3%)を有し、これらは、微々たるものであるとみなされた。PO誘導体化に類似して、STMP DSレベルはまた、RS値との正の関係を示した。PO試薬およびSTMP試薬の両方で二重改変したジャガイモ顆粒において、上記2種の試薬は、主に、ジャガイモ顆粒RS含有量に対して、相乗効果よりむしろ相加効果を示した。PO試薬とSTMP試薬との両方は、RS生成に対する類似の寄与を示したが、POの許容可能な誘導体化レベルは、STMPのものより遙かに高く、このことは、POを、ジャガイモ顆粒におけるRS生成のためのより実際的な試薬にしている。
【0210】
改変ジャガイモ顆粒の上記インビトロでのデンプン加水分解速度およびeGIは、上記PO/STMP置換レベルによって有意に影響を受けた。最低のGI(59.7)は、最高のPO添加レベルで反応した改変ジャガイモ顆粒によって生成された(これら実験において使用されるSTMPレベルは、低下した加水分解速度にほとんど寄与しないようであった)。RS4の存在は、デンプン消化の速度および程度の両方を抑制することによって、上記ジャガイモ顆粒のeGIを低下させた。
【0211】
微細構造の観点から、上記改変ジャガイモ顆粒の柔組織細胞のサイズおよび形状は、SEMを介して観察されたように、市販の顆粒のものに匹敵した。改変顆粒内の細胞壁構造は、インタクトなままであるようであったが、改変細胞は、市販の(非改変)ジャガイモ顆粒のものと比較してわずかに収縮した外見および粗くなった表面構造を示した。ヒドロキシプロピル化ジャガイモ顆粒は、21日間の冷蔵貯蔵にわたってデンプン老化に対する完全な安定性を示した一方で、市販の(非改変)ジャガイモ顆粒内のデンプン老化レベルは、同じ貯蔵条件下でだんだんに増大した。従って、改変ジャガイモ顆粒は、物理的特性が強化されており、このことは、それらを冷蔵凍結食品システムにおける使用に理想的なものにする。他の改変剤を、他の機能性を有するRSジャガイモ顆粒製品を作り出すために使用する可能性がある。
【0212】
組成上では、市販のジャガイモ顆粒内のタンパク質のうちの約50%は上記改変プロセスの間に失われたが、それは、改変のために使用される強アルカリ性条件下での加水分解に起因している可能性が最も高かった。さらなる研究努力が、顕著な正味のタンパク質喪失を回避するために、改変前タンパク質除去および改変後タンパク質加減の可能性を調査し得た。さらに、より集中した栄養分析は、伝統的な微量栄養素(例えば、ビタミンC)レベルに対する改変の影響を理解するために行われるべきである。改変は、上記RS含有量を効率的に強化し、上記ジャガイモ顆粒の概算血糖上昇指数を低下させた一方で、インビボでの実験は、動物および/またはヒトにおけるこれら効果を確証するために行われるべきである。最後に、種々の食品システム内で改変ジャガイモ顆粒の物理的特性および感覚的特性を特徴付けて、製品機能性へのそれらの寄与をより理解することは重要である。
(参考文献)
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以下の参考文献は、本明細書に参考として援用される。
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【0221】
【数8】

【0222】
【数9】

【0223】
【数10】

【0224】
【数11】

【0225】
【数12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品を調製する方法であって、該方法は、
全組織ジャガイモ基質と、エーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃との間の温度で接触させる工程;および/または
該ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって該ジャガイモ製品の該RS含有量を増大させる工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
インタクトなジャガイモ細胞内のジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変して、その中の強化した難消化性デンプン(RS)を増加させる方法であって、該方法は、
全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または
該ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、インタクトなジャガイモ細胞内の該ジャガイモ細胞壁構成成分および/またはデンプンを改変する工程、
を包含する、方法。
【請求項3】
デンプン老化に対して改変ジャガイモ製品の難消化性を増大させる方法であって、該方法は、
全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程:および/または
該ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、デンプン老化に対して改変ジャガイモ製品の該難消化性を増大させる工程、
を包含する、方法。
【請求項4】
いくつかの実施形態において、全組織ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させるための方法であって、
全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程;および/または
該ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させ、それによって、該ジャガイモ製品の血糖上昇応答値を低下させる工程、
を包含する方法が提供される。
【請求項5】
強化した難消化性デンプン(RS)含有量を有するジャガイモ製品であって、該製品は、全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤の水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程および該ジャガイモ基質とエステル化剤を接触させる工程を包含するプロセスによって作製されたジャガイモ成分を含む、ジャガイモ製品。
【請求項6】
前記ジャガイモ基質は、脱水ジャガイモ基質である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ジャガイモ基質は、フレーク、顆粒もしくはフラワーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ジャガイモ基質は、皮をむいたジャガイモ、ジャガイモスライス、キューブ状ジャガイモ、ダイス状ジャガイモ、シュレッド状ジャガイモ、くし形切りにしたジャガイモ、またはスティック状ジャガイモの形態にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記温度は、22℃〜59℃の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記温度は、30℃〜55℃の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記温度は、40℃〜50℃の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記温度は、45℃〜50℃の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記エーテル化剤は、プロピレンオキシド、アクロレイン、エピクロロヒドリン、エピクロロヒドリンとプロピレンオキシド、エピクロロヒドリンと無水酢酸、およびエピクロロヒドリンと無水コハク酸、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記エーテル化する工程は、塩基性条件下で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記エーテル化する工程は、pH10〜14の間で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記エステル化する工程は、塩基性条件下で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記エステル化する工程は、pH10〜14の間で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記エステル化剤は、トリメタホスフェート(STMP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、オキシ塩化リン、およびエピクロロヒドリン、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記エステル化剤は、無水酢酸、無水アジピン酸、無水アジピン酸と無水酢酸、酢酸ビニル、オルトリン酸一ナトリウム、1−オクテニル無水コハク酸、無水コハク酸、オキシ塩化リン、オキシ塩化リンと酢酸ビニル、オキシ塩化リンと無水酢酸、トリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、およびトリメタリン酸ナトリウム、ならびにこれらの組み合わせおよび混合物からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記使用されるエーテル化剤の量は、ジャガイモ基質乾燥重量に基づいて、0.5%〜35%[w/w]の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記使用されるエステル化剤の量は、ジャガイモ基質乾燥重量に基づいて、0.5%〜35%[w/w]の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ジャガイモ製品の前記RS含有量は、8%〜70%へと増加させられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤のアルコール水溶液を、22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程を包含する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
全組織ジャガイモ基質とエーテル化剤のアルコール水溶液を、塩基性条件下で22℃〜70℃の間の温度で接触させる工程を包含する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ジャガイモ基質は、イソプロパノール水溶液もしくはエタノール水溶液の存在下で30℃〜70℃の間の温度で加熱される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
8%〜70%のRS含有量を有する全組織ジャガイモ製品を含む、組成物。
【請求項27】
前記ジャガイモ製品は、ジャガイモフレーク、ジャガイモ顆粒、もしくはジャガイモフラワーである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ジャガイモ製品は脱水されている、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記ジャガイモ製品は、皮をむいたジャガイモ、ジャガイモスライス、キューブ状ジャガイモ、ダイス状ジャガイモ、シュレッド状ジャガイモ、くし形切りにしたジャガイモ、またはスティック状ジャガイモの形態にある、請求項26に記載の組成物。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−506427(P2013−506427A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532363(P2012−532363)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/051164
【国際公開番号】WO2011/041702
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512026569)ユニバーシティ オブ アイダホ (2)
【Fターム(参考)】