説明

強化構造ガイドベーンシステムおよびファン出口ケース

【課題】ノイズを最小化させながら、エンジンの通常の負荷条件や突発的な負荷条件に耐えることができる構造ガイドベーンを達成するストラットロッドを提供する。
【解決手段】ファン出口ケースが、構造ガイドベーン28およびストラットロッド30を備える。ベーン28は、内周側端部36において中央ボディ34に接続され、外周側端部38において外周側ケース32に接続される。また、ロッド30は、内周側端部40において中央ボディ34に接続され、外周側端部42において外周側ケース32に接続される。ベーン28は、内周側端部36における中央ボディ34へのベーン28の接続が、外周側端部38における外周側ケース32へのベーン28の接続よりもファン12に近い位置で行われるように後退している。ロッド30は、2つのロッド30の外周側端部42が互いに接近した箇所において外周側ケース32に接続されるようにA型フレーム構成で接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化構造ガイドベーンシステムのストラットロッド(strut rod)に関し、特に、ノイズを最小化させながら、エンジンの通常の負荷条件や突発的な負荷条件に耐えることができる構造ガイドベーンを提供することが可能なストラットロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジン(または燃焼機関)が、中央ボディの周囲に形成されており、上流側の入口から下流側の排出口へと流れが連続するように配置された圧縮機、燃焼器およびタービンからなる動力のコア(power core)を保持している。圧縮機は、入口からの空気を加圧し、この空気は、燃焼器において燃料と混合され、そして、点火され、これにより、高温燃焼ガスが生成される。タービンは、膨張する燃焼ガスからエネルギを引き出し、共通のシャフトによって圧縮機を駆動する。エネルギは、シャフトの回転エネルギ、排気から生じる反作用的な推力、またはこれらの双方の形態で伝達される。
【0003】
ファンセクションが、エンジンへと空気を引き込み、また、空気流路を画定する外周側ファンケースによって取り囲まれている。外周側ファンケースは、中央ボディに構造的に接続される必要がある。この接続は、ベーンが外周側ファンケースと中央ボディとの間の構造的な接続を提供するので構造ガイドベーンと呼ばれている空気力学的なベーンを用いてなされる。この構造ガイドベーンは、旋回する空気がファンロータを通過した後に、回転し、この旋回する空気を直線的に通流させることができる。
【0004】
ターボファンエンジンは、一般に、高バイパス構成と低バイパス構成とに分けられる。高バイパスターボファンは、主にエンジンコアの周囲にあるバイパスダクトを通して空気流を通流させるファンから推力を発生する。この設計は、ノイズおよび燃料効率が主な問題である商業用の航空機および軍事用の輸送機関に共通のものである。また、低バイパスターボファンは、排気流からより高い推力を比例的に発生させ、超音速戦闘機および他の高性能航空機で用いられるのに特定のより高い推力を提供する。様々な逆回転設計および後方取付設計があるので、ダクト無し(開ロータ)のターボファン構成およびダクト付きターボプロップ構成も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターボファンエンジンの性能は、作動流体流の正確な制御に左右される。エンジンのノイズが1つの要因であるが、特に、航空機の用途においては、ファンおよび圧縮機の双方の設計について競合する工学の課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
強化構造ガイドベーンシステムは、外周側ケースと、該外周側ケース内に配置された中央ボディと、中央ボディと外周側ケースとの間に延びるとともに、中央ボディおよび外周側ケースに接続された複数の構造ガイドベーンと、外周側ケースと中央ボディとの間に延びるとともに、外周側ケースおよび中央ボディに接続された複数のストラットロッドと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のストラットロッドを有したガスタービンエンジンの断面図である。
【図2A】構造ガイドベーンおよびストラットロッドを有したファン出口ケースの構造部材の前方側から見た斜視図である。
【図2B】構造ガイドベーンを取り外した図2Aの図である。
【図3】構造ガイドベーンおよびストラットロッドを有したファン出口ケースの第2の実施例の後方側から見た斜視図である。
【図4】構造ガイドベーンおよびストラットロッドを有したファン出口ケースの第3の実施例の後方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1には、ガスタービンエンジン10の断面図が示されており、該ガスタービンエンジン10は、ターボファン12、圧縮機セクション14、燃焼器セクション16およびタービンセクション18を備えている。圧縮機セクション14は、低圧圧縮機20および高圧圧縮機22を備えている。また、ガスタービンエンジン10は、バイパスセクション26を有しており、バイパスセクション26は、外周側ケース32と中央ボディ34との間に延びる構造ガイドベーン28およびストラットロッド30を備えている。中央ボディ34は、圧縮機セクション14、燃焼器セクション16およびタービンセクション18を収容している。
【0009】
ターボファン12が回転するときには、空気がターボファン12を通して取り入れられる。入口空気の一部は、圧縮機セクション14へと案内され、圧縮機セクション14において、この入口空気の一部は、一連の回転ブレードおよび静止ベーンによって加圧される。加圧された空気は、燃料と混合され、そして、燃焼器セクション16において点火される。この燃焼排気は、タービンセクション18へと案内される。タービンセクション18内のブレードおよびベーンは、上記排気から運動エネルギを引き出し、この運動エネルギにより、内側(低スプール)シャフト24Aを回転させて低圧圧縮機20およびターボファン12を駆動するとともに、外側シャフト24Bを回転させて高圧圧縮機22を駆動する。
【0010】
ターボファン12を通して取り入れられるが圧縮機セクション14を通して案内されない入口空気の部分は、バイパス空気である。ターボファン12が回転するときに、ターボファン12は圧力を生じさせ、バイパス空気に旋回(swirl)を与える。ガイドベーン28は、バイパス空気を減速させるとともに直線的に通流させるように作用し、これにより、静圧が増加し、推力が高くなる。
【0011】
図2Aは、構造ガイドベーン28およびストラットロッド30を有したファン出口ケースCの構造部材の前方側から見た斜視図である。図2Bは、図2Aと同様の図であるが、構造ガイドベーン28を取り外して示されている。図2Aおよび図2Bには、外周側ケース32、(内周側端部36および外周側端部38を有した)構造ガイドベーン28、(内周側端部40および外周側端部42を有した)ストラットロッド30および中央ボディ34の部分が示されている。ベーン28を、高強度材料、例えば、(アルミニウム合金を含む)アルミニウム、カーボンファイバとエポキシとの複合材料、またはシステムの要求に基づいた異なる材料によって形成することができる。また、ロッド30を、高強度かつ低重量の材料、例えば、(合金を含む)チタンやアルミニウムによって形成することができる。
【0012】
構造ガイドベーン28は、内周側端部36において中央ボディ34に接続されるとともに、外周側端部38において外周側ケース32に接続されている。これらの接続は、ボルトによって、または内周側端部36および外周側端部38で構造ガイドベーン28を固定するための任意の他の接続手段によってなされ得る。構造ガイドベーン28は、内周側端部36における中央ボディ34への構造ガイドベーン28の接続が、外周側端部38における外周側ケース32への構造ガイドベーン28の接続よりもファン12に近い位置で行われるように後退している。ストラットロッド30は、内周側端部40において中央ボディ34に接続されるとともに、外周側端部42において外周側ケース32に接続されている。これらの接続は、ボルトによって、または本技術分野で周知の他の方法によってなされ得る。
【0013】
図2Aおよび図2Bにおいては、ロッド30は、2つのロッド30の外周側端部42が互いに接近した箇所において外周側ケース32に接続されるようにA型フレーム構成で接続されている。また、この箇所は、構造ガイドベーン28が外周側端部38において外周側ケース32に接続される場所の上または付近にある。本実施例は、ストラットロッド30の3つのA型フレーム構成を含むが、異なるシステムが、システムの要求に基づいてより多くのまたはより少ないA型フレームを備えることができる。ストラットロッド30を空気力学的に形状づけることができ、例えば、涙(teardrop)型の断面となるように形状づけることができる。
【0014】
構造ガイドベーン28は、非常に薄く、軽量であるが、旋回するファン空気から生じる捻りによる曲げおよび捻り応力を受けやすい。さらに、構造ガイドベーン28は、エンジンの他の突発的な負荷条件、例えば、ファンブレードが無いことにより、構造ガイドベーン28に直接に衝撃を与え得ることや、エンジン内に苛酷な振動を生じさせ得ることを受けやすい。ガイドベーン28の外周側端部38に近い位置でストラットロッド30の外周側端部42を接続することにより、ストラットロッド30は、構造ガイドベーン28を強化し、構造ガイドベーン28に捻りに対する安定性および捻り剛性を付加する。ストラットロッド30の挿入、配置および角度は、構造ガイドベーン28が通常の負荷条件や多くの突発的な負荷条件に耐えることを許容する。
【0015】
さらに、ストラットロッド30を用いることによって、空気を効率的かつ直線的に通流させるために、ファンに接近させて構造ガイドベーン28を配置することができる。ファンブレードが構造ガイドベーン28と向き合うときには、上流側のファンブレードの回転により生じる圧力の脈動がノイズを発生させる。ファンブレードと構造ガイドベーン28との間の距離が短いほど、大きなノイズが発生する。このノイズは、最小に維持されなければならないものであり、構造ガイドベーン28を傾斜させることによって、ファンに接近させた配置を許容しながらも減少するものである。構造ガイドベーン28の傾斜角をストラットロッド30の配置および角度と組み合わせることにより、広い基部が形成され、この基部は、中央ボディ34の前方に向かう配置を許容しつつ、垂直方向の荷重を分散し、構造ガイドベーン28の曲げによる荷重を防止する。
【0016】
図3は、ファン出口ケースC’の第2の実施例の後方側から見た斜視図である。図4は、ファン出口ケースC’’の第3の実施例の後方側から見た斜視図である。図3および図4には、外周側ケース32、(内周側端部36および外周側端部38を有した)ガイドベーン28、(内周側端部40および外周側端部42を有した)ストラットロッド30および中央ボディ34が示されている。構造ガイドベーン28は、中央ボディ34および外周側ケース32に接続されており、また、後退している。また、ストラットロッド30は、中央ボディ34および外周側ケース32に接続されている。
【0017】
これらの実施例においては、ロッド30は、中央ボディ34の周囲に一種の「H」を形成するH型フレーム構成で接続されている。図3においては、ロッド30は、中央ボディ34の側部から外周側ケース32へと(半径方向ではなく)概ね垂直方向に接続されている。図4においては、ロッド30は、中央ボディ34へと接線方向に接続されている。これらの構成の各々において、構造ガイドベーン28の外周側端部38の接続部に近い位置でストラットロッド30の外周側端部42が接続される。これにより、ストラットロッド30は、構造ガイドベーン28に安定性および捻り強さを付加することができる。また、これにより、構造ガイドベーン28が後退することができ、また、ノイズを最小化させながら、依然としてエンジンの負荷に耐えることができる。
【0018】
要約すると、構造ガイドベーン28を強化し、ベーン28に捻りに対する付加的な安定性および付加的な捻り剛性を与えるために、ストラットロッド30がファン出口ケースC,C’またはC’’に付加される。ストラットロッド30は、外周側端部38における外周側ケース32への構造ガイドベーン28の接続部に近い位置で、外周側端部42において外周側ケース32に接続される。これにより、ファンからの空気流により生じる通常の負荷や、例えば、ファンブレードが無いときのような突発的な出来事により生じる負荷を含むエンジンの負荷に耐えるほど構造ガイドベーン28が強いものであることを確実にしつつ、構造ガイドベーン28を薄く、かつ軽量のものとすることができる。ストラットロッド30は、特定の位置において中央ボディ34および外周側ケース32に接続されており、これにより、接近した接続により発生するノイズを最小化しながら、構造ガイドベーン28を強化し、構造ガイドベーン28を後退させ、そして、ファンの付近での中央ボディ34の接続を維持する。
【0019】
3つの実施例(A型フレームおよび2種類のH型フレーム)を用いて構造ガイドベーンおよびストラットロッドの配置を示したが、構造ガイドベーンを強化し、構造ガイドベーンに捻りに対する安定性および捻り剛性を付加するために、異なる位置および角度でストラットロッドを配置することができる。唯一要求されることは、ストラットロッドが捻りによる荷重をとることを確実にするために、ストラットロッドが半径方向に延びていないことである。個々の構造ガイドベーンを用いて本発明を示したが、互いに一体化された2つ以上のベーンを用いてマルチパック(multipack)式に構造ガイドベーンを配置することができる。
【0020】
本発明は、例示的なものであり、限定的なものではない。本発明の例示的な実施例について説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側ケースと、
前記外周側ケース内に配置された中央ボディと、
前記中央ボディと前記外周側ケースとの間に延びるとともに、前記中央ボディおよび前記外周側ケースに接続された複数の構造ガイドベーンと、
前記外周側ケースと前記中央ボディとの間に延びるとともに、前記外周側ケースおよび前記中央ボディに接続された複数のストラットロッドと、
を備えた強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項2】
前記複数の構造ガイドベーンの外周側端部は、前記複数のストラットロッドの外周側端部が前記外周側ケースに接続される箇所に近い位置で、前記外周側ケースに接続されることを特徴とする請求項1に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項3】
前記複数の構造ガイドベーンが傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項4】
前記複数の構造ガイドベーンは、前記中央ボディから前記外周側ケースへと後退していることを特徴とする請求項3に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項5】
前記複数の構造ガイドベーンは、前記外周側ケースにおいて前記複数のストラットロッドに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項6】
前記強化構造ガイドベーンシステムは、4つのストラットロッドを備えることを特徴とする請求項1に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項7】
前記複数のストラットロッドは、H型フレームを形成するように前記中央ボディに接続されることを特徴とする請求項1に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項8】
前記複数のストラットロッドは、前記中央ボディへと接線方向に接続されることを特徴とする請求項7に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項9】
前記複数のストラットロッドは、複数のA型フレームを形成することを特徴とする請求項1に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項10】
前記複数のストラットロッドは、2つまたは3つのA型フレームを形成することを特徴とする請求項9に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項11】
前記外周側ケースはファンケースであることを特徴とする請求項1に記載の強化構造ガイドベーンシステム。
【請求項12】
外周側ケースと、
中央ボディと、
前記外周側ケースと前記中央ボディとの間に延びるとともに、前記外周側ケースおよび前記中央ボディに接続される複数の構造ガイドベーンと、
前記外周側ケースと前記中央ボディとの間に延びるとともに、前記外周側ケースおよび前記中央ボディに接続される複数のストラットロッドと、
を備え、
前記複数のストラットロッドの接続と前記複数の構造ガイドベーンの接続とが、前記中央ボディよりも前記外周側ケースにおいて互いに近いことを特徴とするファン出口ケース。
【請求項13】
前記複数のストラットロッドは、複数のA型フレーム構造体を形成するように各位置において前記外周側ケースおよび前記中央ボディに接続されることを特徴とする請求項11に記載のファン出口ケース。
【請求項14】
前記複数のストラットロッドは、H型フレーム構造体を形成するように各位置において前記外周側ケースおよび前記中央ボディに接続されることを特徴とする請求項11に記載のファン出口ケース。
【請求項15】
前記複数のストラットロッドは、前記中央ボディへと接線方向に接続されることを特徴とする請求項13に記載のファン出口ケース。
【請求項16】
前記複数のストラットロッドは、ボルトによって前記外周側ケースおよび前記中央ボディに接続されることを特徴とする請求項11に記載のファン出口ケース。
【請求項17】
前記複数の構造ガイドベーンは傾斜していることを特徴とする請求項11に記載のファン出口ケース。
【請求項18】
前記複数の構造ガイドベーンは、前記中央ボディから前記外周側ケースへと後退していることを特徴とする請求項17に記載のファン出口ケース。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79645(P2013−79645A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211687(P2012−211687)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION