説明

弾性シール装置の組み立て方法及びこれに使用する組み立て用治具

【課題】作業者の熟練度に拘わらず、弾性シール装置を適正且つ容易に組み立てることができる方法を提供する。
【解決手段】シールフランジ6bにそのシール面6eに弾性的に押圧接触する内外周リップ部28,29を具備してなる弾性材製のシールリング23を装填した弾性シール装置を組み立てる方法において、シールフランジ6bに、シール面6eに面一状に連なる外周リップ部誘導面60aとその基端から漸次拡大する外周リップ部縮径変形作用面60bとを形成してなる円筒状の外周リップ部誘導治具60を取り付けた上、シールリング23を、これが外周リップ部縮径作用面60b内に位置する状態で、押し込み治具62によりシール面6eへと押し込むことにより、外周リップ部29を外周リップ部拡径変形作用面60bにより縮径変形させつつ外周リップ部誘導面60aからシール面6eへと誘導するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸体とこれに同心状に挿通させた筒状のシールフランジとの対向周面間に、環状の本体部と本体部から軸線方向に突出して当該対向周面に弾性的に押圧接触する筒状の内外周リップ部とを具備してなる弾性材製のシールリングを装填した弾性シール装置を組み立てる方法とこれに使用する組み立て用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシールリング装置として、特許文献1に開示する如く、多流路形ロータリジョイントにおける流路のシール手段として使用されるものが公知である。すなわち、特許文献1に開示される多流路形ロータリジョイントは、先端側のシールフランジ(以下「先端シールフランジ」という)と基端側のシールフランジ(以下「基端シールフランジ」という)とこれらの中間に配した複数のシールフランジ(以下「中間シールフランジ」という)とを軸線方向に積層連結してなる筒状のケース体と、両端部を先端シールフランジと基端シールフランジとに夫々軸受支持させることによりケース体に相対回転自在に連結された回転軸体と、各中間シールフランジ(先端シールフランジに隣接するものを除く)と回転軸体との間に形成された第1流路及び先端シールフランジと回転軸体との間に形成された第2流路とを具備してなるもので、第1流路のシール手段として各中間シールフランジと回転軸体との対向周面間にメカニカルシールを装填してなるメカニカルシール装置を採用し、第2流路のシール手段として先端シールフランジと回転軸体との間に弾性製シールリングを装填してなる弾性シール装置を採用している。かかる多流路形ロータリジョイントは、流路を流動する流体の性状や流動条件に応じて、流路のシール手段として、設置スペースが大きく且つ構造も複雑であるが高度のシール機能を発揮しうるメカニカルシール装置とシール機能はメカニカルシール装置に劣るがメカニカルシール装置に比して設置スペースが小さく且つ構造の簡単な弾性シール装置とを使い分けることにより、すべての流路をメカニカルシールでシールするようにした多流路形ロータリジョイント(例えば、特許文献2を参照)に比して多流路形ロータリジョイントの構造簡略化,小型化を図りつつ、性状や流動条件の異なる複数種の流体をCMP装置等における相対回転部材間で良好に流動させることができるように工夫されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−161954公報
【特許文献2】特開2002−005380公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、弾性シール装置は、特許文献1に開示される如く、回転軸体とこれに同心状に挿通させた筒状のシールフランジとの対向周面間に、環状の本体部と本体部から軸線方向に突出して当該対向周面に弾性的に押圧接触する筒状の内外周リップ部とを具備してなる弾性材製のシールリングを装填したものであるが、その組み立て方法は、シールフランジ内にその軸線方向にシールリングを移動させつつ挿入することにより、当該シールリングを、その外周リップ部がシールフランジの内周面に形成された環状のシール面に押圧接触する状態に、シールフランジに内嵌させるシールリング内嵌工程と、回転軸体にその軸線方向にシールリングを内嵌させたシールフランジを移動させつつ嵌挿することにより、当該シールリングを、その内周リップ部が回転軸体の外周面に押圧接触する状態に、回転軸体に外嵌させるシールリング外嵌工程とを具備するものである。
【0005】
ところで、弾性材製のシールリングは、先端シールフランジと回転軸体との対向周面間(前記シール面とこれに対向する回転軸体の外周面部分との間)に装填されていない形態(以下「自然形態」という)においては、それ自身の弾性と内外周リップ部間に装填された補強バネの弾性によって、内外周リップ部の先端部間隔は当該対向周面の径方向間隔より大きく拡がっている。
【0006】
したがって、シールリング内嵌工程にあっては、外周リップ部を自然形態から縮径変形させた形態に保持した状態でシールリング内に嵌挿させる必要があり、シールリング外嵌工程にあっては、内周リップ部を自然形態から拡径変形させた形態に保持した状態で回転軸体に嵌挿させる必要があるが、このように環状をなす外周リップ部又は内周リップ部を自然形態から縮径変形又は拡径変形させた状態に保持しつつシールリングのシールフランジへの装填作業又はシールフランジの回転軸体への装填作業を行うことは、作業者が未熟練者である場合には勿論、熟練者である場合にも極めて困難であり、弾性シール装置を適正に組み立てることは容易ではなかった。
【0007】
すなわち、シールリングのシールフランジへの装填作業は、外周リップ部をその外径がシールリング装填面である前記シール面の径より小さくなるように縮径変形させた状態に保持しつつ行う必要があるが、環状をなす外周リップ部をその全周に亘ってこのような縮径変形状態に保持することは極めて困難であり、当該装填作業時に外周リップ部の先端部の一部(環状をなす先端部における周方向の一部)が前記シール面の挿入側周縁部に干渉して、外周リップ部が適正に前記シール面に押圧接触する状態とならず、極端な場合には外周リップ部やその弾性力を補強する補強バネが変形,損傷する虞れがある。
【0008】
このような問題は、シールリングを保持させたシールフランジの回転軸体への装填作業においても、同様に生じる。すなわち、シールフランジの回転軸体への装填作業は、内周リップ部をその内径がシールリング装填面である回転軸体の外周面部分(前記シール面に対向する回転軸体の外周面部分)の外径より大きくなるように拡径変形させた状態に保持しつつ行う必要があるが、環状をなす内周リップ部をその全周に亘ってこのような拡径変形状態に保持することは極めて困難であり、当該装填作業時に内周リップ部の先端部の一部(環状をなす先端部における周方向の一部)が前記回転軸体の端部周縁部(シールリング挿入側の端部周縁部)に干渉して、内周リップ部が適正に回転軸体の外周面に押圧接触する状態とならず、極端な場合には内周リップ部やその弾性力を補強する補強バネが変形,損傷する虞れがある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、作業者の熟練度に拘わらず、弾性シール装置を適正且つ容易に組み立てることができる弾性シール装置の組み立て方法を提供すると共に、この方法を好適に実施することができる組み立て用治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、回転軸体とこれに同心状に挿通させた筒状のシールフランジとの対向周面間に、環状の本体部と本体部から軸線方向に突出して当該対向周面に弾性的に押圧接触する筒状の内外周リップ部とを具備してなる弾性材製のシールリングを装填した弾性シール装置を組み立てる方法であって、シールフランジ内にその軸線方向にシールリングを移動させつつ挿入することにより、当該シールリングを、その外周リップ部がシールフランジの内周面に形成された環状のシール面に押圧接触する状態に、シールフランジに内嵌させるシールリング内嵌工程と、回転軸体にその軸線方向にシールリングを内嵌させたシールフランジを移動させつつ嵌挿することにより、当該シールリングを、その内周リップ部が回転軸体の外周面に押圧接触する状態に、回転軸体に外嵌させるシールリング外嵌工程とを具備する弾性シール装置の組み立て方法において、上記の目的を達成すべく、特に、シールリング内嵌工程においては、シールフランジに、内周面に前記シール面に面一状に連なる円柱状の外周リップ部誘導面とその基端から漸次拡大する外周リップ部縮径変形作用面とを形成してなる円筒状の外周リップ部誘導治具を取り付けて、シールリングを、これが外周リップ部縮径作用面内に位置する状態で、当該シールリングの本体部に衝合させた筒状又は棒状の押し込み治具により前記シール面へと押し込むことにより、外周リップ部を外周リップ部拡径変形作用面により縮径変形させつつ外周リップ部誘導面から前記シール面へと誘導し、しかる後、シールフランジから外周リップ部誘導治具を取り外すようにし、シールリング外嵌工程においては、回転軸体の先端に、これと同一外径をなす内周リップ部誘導部とその基端から漸次縮径する截頭円錐状又は円錐状の内周リップ部拡径変形作用部とを有する回転体形状の外周リップ部誘導治具を軸線が一致する同心状態で取り付け、シールフランジを、これに内嵌保持されたシールリングに内周リップ部拡径変形作用部を挿通させた状態で、軸線方向に移動させることにより、内周リップ部を内周リップ部拡径変形作用部により拡径変形させつつ内周リップ部誘導部から回転軸体の所定位置へと誘導し、しかる後、回転軸体から外周リップ部誘導治具を取り外すようにすることを提案するものである。
【0011】
かかる組み立て方法のシールリング外嵌工程においては、筒状の芯出し治具を、その先端側内周部に係合保持させた非圧縮性弾性材製の治具側Oリングを内周リップ部誘導治具に嵌合させると共に当該芯出し治具の基端側内周部に係合保持させた非圧縮性弾性材製の軸側Oリングを回転軸体に嵌合させた状態で、内周リップ部誘導治具の内周リップ部誘導部が回転軸体の先端に衝合する位置まで軸線方向に移動させた上、内周リップ部誘導治具を回転軸体に取り付け、しかる後、芯出し治具を内周リップ部誘導治具及び回転軸体から離脱させることにより、内周リップ部誘導治具を回転軸体に軸線が一致する状態で取り付けるようにすることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記の組み立て方法を好適に実施するための組み立て用治具である外周リップ部誘導治具、内周リップ部誘導治具及び芯出し治具を提案する。すなわち、外周リップ部誘導治具は、内周面に前記シール面と同一径の円柱状の外周リップ部誘導面とその基端から漸次拡大する外周リップ部縮径変形作用面とを形成してなる円筒状のもので、シールフランジに外周リップ部誘導面が前記シール面に面一状に連なる状態で取り付けうるように構成されている。また、内周リップ部誘導治具は、回転軸体の先端と同一外径をなす内周リップ部誘導部とその基端から漸次縮径する截頭円錐状又は円錐状の内周リップ部拡径変形作用部とを有し、回転軸体の先端にこれと軸線が一致する同心状態で取り付けうるように構成されている。さらに、芯出し治具は、先端側内周部に内周リップ部誘導治具に嵌合しうる非圧縮性弾性材製の治具側Oリングを係合保持すると共に基端側内周部に回転軸体に嵌合しうる非圧縮性弾性材製の軸側Oリングを係合保持させた筒状体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組み立て方法によれば、外周リップ部誘導治具及び内周リップ部誘導治具を使用することによって、シールリング内嵌工程及びシールリング外嵌工程を冒頭で述べたような問題を生じることなく行うことができ、作業者が熟練者である場合は勿論、未熟練者である場合にも、弾性シール装置を効率よく容易且つ適正に組み立てることができる。
【0014】
また、本発明の組み立て用治具によれば、本発明の組み立て方法におけるシールリング内嵌工程及びシールリング外嵌工程を効率よく容易且つ適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明に係る方法により組み立てられる弾性シール装置を組み込んだ多流路形ロータリジョイントの一例を示す縦断面正面図(断面は図4のI−I線に沿う)である。
【図2】図2は当該ロータリジョイントの縦断面図(断面は図4のII−II線に沿う)である。
【図3】図3は当該ロータリジョイントの縦断側面図(断面は図4のIII −III 線に沿う)である。
【図4】図4は当該ロータリジョイントの平面図である。
【図5】図5は図1の要部を拡大して示す詳細図である。
【図6】図6は当該ロータリジョイントにおける弾性シール装置のメンテナンス作業の準備工程を示す一部切欠の平面図である。
【図7】図7は同底面図である。
【図8】図8は図6のVIII−VIII線に沿う縦断面図である。
【図9】図9は図6のIX−IX線に沿う縦断面図である。
【図10】図10は当該メンテナンス作業において当該ロータリジョイントから弾性シール装置から取り外した状態を示す縦断面図(断面はX−X線に沿う)である。
【図11】図11は当該メンテナンス作業において弾性シール装置の回転軸体部分の補修工程を示す、図10に対応する縦断面図である。
【図12】図12は当該補修工程における図11と異なる状態を示す図11相当の縦断面図である。
【図13】図13は本発明に係る組み立て方法における第1シールリング内嵌工程の開始状態を示す、図2に対応する要部の縦断面図である。
【図14】図14は当該第1シールリング内嵌工程の作業手順を示す、図13の要部拡大図である。
【図15】図15は本発明に係る組み立て方法における第2シールリング内嵌工程を示す、図13相当の縦断面図である。
【図16】図16は当該第2シールリング内嵌工程の作業手順を示す、図15の要部拡大図である。
【図17】図17は本発明に係る組み立て方法におけるシールリング外嵌工程を示す、図11対応の一部切欠縦断面図である。
【図18】図18は当該シールリング外嵌工程の作業手順を示す、図17の要部拡大図である。
【図19】図19は当該シールリング外嵌工程における図17と異なる状態を示す、図17相当の縦断面図である。
【図20】図20は当該シールリング外嵌工程における図17〜図19と異なる状態を示す、図17相当の縦断面図である。
【図21】図21は当該シールリング外嵌工程における図17〜図20と異なる状態を示す、図17相当の縦断面図である。
【図22】図22は当該シールリング外嵌工程における図17〜図21と異なる状態を示す、図17相当の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る弾性シール装置の組み立て方法及びこれに使用する組み立て用治具の構成を図面に基づいて具体的に説明する。
【0017】
図1は本発明に係る方法により組み立てられる弾性シール装置を組み込んだ多流路形ロータリジョイントの一例を示す縦断面正面図(断面は図4のI−I線に沿う)であり、図2は当該ロータリジョイントの縦断面図(断面は図4のII−II線に沿う)であり、図3は当該ロータリジョイントの縦断側面図(断面は図4のIII −III 線に沿う)であり、図4は当該ロータリジョイントの平面図であり、図5は図1の要部を拡大して示す詳細図である。なお、以下の説明において上下とは図1〜図3における上下をいうものとする。
【0018】
まず、多流路形ロータリジョイントの構成について説明すると、このロータリジョイントは、図1に示す如く、回転機器の固定側部材(例えば、CMP装置本体)に取り付けられるケース体1と当該回転機器の回転側部材(例えば、CMP装置のトップリング又はターンテーブル)に取り付けられる回転軸体2とを具備し、両体1,2間にM本の第1流路3とN本の第2流路4とを形成したものであり、第1流路3の相対回転接続部分(後述する通路接続空間3a)をメカニカルシール装置5によりシールすると共に第2流路4の相対回転接続部分(後述する通路接続空間4a)を弾性シール装置6によりシールしたものである。なお、この例では、M=5,N=1としてある。
【0019】
ケース体1は、図1〜図3に示す如く、内周断面が円形をなす筒構造体であり、軸線方向(上下方向)において複数の筒状部分(シールフランジ)を積層連結したものである。すなわち、ケース体1は、その基端部を構成するシールフランジ(以下「基端シールフランジ」という)5aと、その上に積層された第1流路数に一致するM個の中間シールフランジ(以下「第1中間シールフランジ」という)5bと、ケース体1の先端部を構成するシールフランジ(以下「先端シールフランジ」という)6bと、最上位の第1中間シールフランジ5bと先端シールフランジ6bとを接続する中間シールフランジ(以下「第2中間シールフランジ」という)6aとからなる。各第1中間シールフランジ5bとこれに隣接する他の第1中間シールフランジ5b及び基端シールフランジ5aとは各々適当本数のボルト7で連結されている(図1,図2参照)。第2中間シールフランジ6aは適当本数のボルト8によりは最上位の第1中間シールフランジ5bに連結されている(図1参照)。先端シールフランジ6bは、第1及び第2中間シールフランジ5b,6aと共に、これらに挿通させた適当本数の長尺なボルト9を基端シールフランジ5aに螺着させることにより、基端シールフランジ5aに連結されている(図2参照)。なお、ケース体1の両端つまり基端シールフランジ5aの下端及び先端シールフランジ6bの上端には、夫々、図2又は図4に示す如く、適当本数のビス10によりベアリング押さえ兼用のカバー板5c,6cが取り付けられている。また、ケース体1は、図4に示す如く、前後面1a,1aを回転軸体2を中心とする同一径の円弧面とし且つ左右面1b,1bを平行平面とする外観形態をなすものである。
【0020】
回転軸体2は、図1〜3に示す如く、円柱状の軸本体11と、これに軸線方向(上下方向)に所定間隔を隔てて並列状に嵌合された端部スリーブ12及びM個の中間スリーブ13とで構成されており、上下ベアリング14a,14bにより先端ケース部分6及び基端ケース部分5の内周部に同心状をなして回転自在に支持されている。端部スリーブ12は、図1〜図4に示す如く、円筒状のシール部12aと円板状の取付部12bとを有する断面H字状の円筒構造体であり、シール部12aを回転軸体2の軸本体11の先端部分(上端部分)に嵌合させると共に取付部12bに挿通させた適当数のボルト15を軸本体11の先端面部(上端面部)に螺着させることにより、回転軸体2の先端部に嵌合固定されている。各中間スリーブ13は円筒体であり、軸本体11に嵌挿されている。上ベアリング14aは、端部スリーブ12と先端シールフランジ6bとの対向周面間に装填されており、下ベアリング14bは、軸本体11と基端シールフランジ5aとの対向周面間に装填されている。
【0021】
M本(この例では5本)の第1流路3は、第1中間シールフランジ5bと回転軸体2との間に2M個のメカニカルシール16を装填してなるメカニカルシール装置5によってシールされたものである。すなわち、各第1流路3は、図1に示す如く、第1中間シールフランジ5bと回転軸体2との対向周面間に形成された環状空間であって一対のメカニカルシール16,16によりシールされた通路接続空間3aと、回転軸体2の軸本体11及び各中間スリーブ13を貫通して通路接続空間3aに連通する軸側通路3bと、第1中間シールフランジ5bを貫通して通路接続空間3aに連通するケース側通路3cとからなる。各軸側通路3bは上記回転機器の回転側部材に形成された流路に接続され、各ケース側通路3cは上記回転機器の静止側部材に形成された流路に接続されている。各メカニカルシール16は、図1〜図3に示す如く、回転軸体2に固定された軸側密封環(回転密封環)16aと、第1中間シールフランジ5bに軸線方向に移動可能に内嵌保持されたケース側密封環(静止密封環)16bと、ケース側密封環16bを軸側密封環16aへと押圧附勢するスプリング16c(図2参照)とを具備して、両密封環16a,16bの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の内周側領域である通路接続空間3aとその外周側領域(後述する冷却液領域)とを遮蔽シールするように構成された端面接触形メカニカルシールである。メカニカルシール装置のうち、上下両端に位置するメカニカルシール16,16を除いて、各メカニカルシール16の軸側密封環16aとこれに隣接するメカニカルシール16の軸側密封環16aとは兼用されている。すなわち、2M個のメカニカルシール16においてはM+1個の軸側密封環16aが使用されており、これらの軸側密封環16aは、図1〜図3に示す如く、隣接する軸側密封環16a,16a間に中間スリーブ13を介在させた状態で端部スリーブ12のシール部12aと軸本体11の基端段部11aとの間に挟圧されることにより、軸本体11に挿通固定されている。隣接するメカニカルシール16,16のケース側密封環16b,16bは、図1〜図3に示す如く、第1中間シールフランジ5bの内周部に軸線方向移動可能に嵌合保持されている。各ケース側密封環16bは、図3に示す如く、その外周部に形成した凹部を第1中間シールフランジ5bに貫通保持された共通のドライブバー17に係合させることにより、軸線方向移動を許容しつつケース体1(基端ケース部分5)に対する相対回転を阻止されている。各第1中間シールフランジ5bに嵌合保持された2個のケース側密封環16b,16bは、図2に示す如く、当該第1中間シールフランジ5bに形成した貫通孔に挿通保持されて当該ケース側密封環16b,16b間に装填されたスプリング16cにより相互に離間する方向に附勢させることによって、相手密封環16a,16aへと押圧接触されている。
【0022】
このように、各第1流路3は軸側通路3bとケース側通路3cとを通路接続空間3aにより相対回転自在に連通接続してなるものであり、各通路接続空間3aが一対のメカニカルシール16,16でシールされていることから、M本の第1流路3bによれば、高度のシール性が要求されるM種の第1流体(例えば、CMP装置で使用される純水,薬液,研磨液,スラリ液等)18を、夫々、漏洩することなく良好に両体1,2間で独立して流動させることができる。
【0023】
なお、メカニカルシール16のシール部分(両密封環16a,16bの相対回転摺接部分)の外周側領域は、図2に示す如く、第1中間シールフランジ5bの貫通孔(スプリング16cを挿通保持させる貫通孔)で相互に連通されると共にシールフランジ5a,6aの内周部に嵌合固定されて最下位及び最上位の軸側密封環16a,16aの外周面に圧接された弾性材製の環状シール部材(例えばオイルシール)19a,19bによりシールされた冷却液領域とされていて、基端シールフランジ5a及び第2中間シールフランジ6aに形成した給排液路20,21により、冷却液(例えば、常温の清浄水,純水等)22を循環供給させるようになっている。この冷却液により各メカニカルシール16のシール部分を冷却して、当該シール部分の異常発熱,摩耗を可及的に防止するように工夫されている。
【0024】
N本(この例では1本)の第2流路4は、先端シールフランジ6bと回転軸体2との間に弾性材製の第1及び第2シールリングを装填してなる弾性シール装置6によってシールされたものである。すなわち、第2流路4は、図1に示す如く、各回転軸体2と先端シールフランジ6bとの対向周面間に形成された環状空間であって同一形状の第1及び第2シールリング23,24によりシールされた通路接続空間4aと、回転軸体2に形成されて通路接続空間4aに連通する軸側通路4bと、先端シールフランジ6bに形成されて通路接続空間4aに連通するケース側通路4cとからなり、さほど高度のシール性が要求されない第2流体(例えば、CMP装置で使用されるウエハ加圧用空気やエアーブロ−用空気等)25を両体1,2間で流動させるものである。軸側通路4bは、図1に示す如く、軸本体11及び端部スリーブ12のシール部12を貫通して通路接続空間4aに開口されており、ケース側通路4cは、図5に示す如く、先端シールフランジ6bを径方向に貫通して通路接続空間4aに開口されている。なお、先端シールフランジ6bの内周面には、図5に示す如く、ベアリング14aを内嵌保持するベアリング保持面6dと、その下位に位置してベアリング保持面6dより小径の上下一対のシールリング装填面であるシール面6e,6fと、両シール面6e,6fの間から内方に突出する環状の仕切部6gとが形成されており、ケース側通路4cは仕切部6gを貫通して通路接続空間4aに開口されている。また、ベアリング保持面6dと上側のシール面6eとの境界には段部が形成されるが、この段部には上ベアリング14aの下面部を受け止める環状のベアリング受け26が衝合係止されている。
【0025】
各シールリング23,24は、図5に示す如く、環状の本体部27と、本体部27から軸線方向に突出する筒状の内外周リップ部28,29と、内外周リップ部28,29間に形成される環状溝30に装填された補強バネ(断面略コ状の環状形態をなす板バネ)31とからなる断面略コ字状の環状体をなすものであり、回転軸体1と先端ケース部分6との対向周面間つまり端部スリーブ12のシール部12aと先端シールフランジ6bの内周部であるシール面6e,6fとの間に装填されている。本体部27の径方向の厚みは、図5に示す如く、回転軸体1と先端ケース部分6との対向周面部間(端部スリーブ12のシール部12aと先端シールフランジ6bのシール面6e,6fとの間)の径方向間隔に略一致されていて、当該対向周面部間に容易に挿脱できる。一方、内外周リップ部28,29は、それ自身の弾性及び補強バネ31の弾性によって、当該対向周面部間に装填されていない状態(自然状態)では先端方向に当該対向周面部間の間隔よりハの字状に拡がっている。すなわち、自然状態では、図5に鎖線図示する如く、内周リップ部28は本体部27よりその内周方向に突出しており、外周リップ部29は本体部27よりその外周方向に突出している。すなわち、両シールリング23,24は、図5に示す如く、環状溝30,30の開口部を上下に対向させた対称形態で配置されており、上側の第1シールリング23は、上側のシール面6eとこれから内方に突出する前記仕切部6g及びベアリング受け26の内周部分とで囲繞形成される環状凹部に、内外周リップ部28,29が端部スリーブ12のシール部12a及びシール面6eに弾性的に圧接する状態で、嵌合保持されている。また、下側の第2シールリング24は、図5に示す如く、下側のシール面6fとこれから内方に突出する前記仕切部6g及び第2シールフランジ26の内周部分とで囲繞形成される環状凹部に、内外周リップ部28,29が端部スリーブ12のシール部12a及びシール面6fに弾性的に圧接する状態で、嵌合保持されている。
【0026】
而して、通路接続空間4aに第2流体25が供給されると、第2流体25がシールリング23,24の環状溝30,30に流入して、流体25の圧力により、軸線方向においては、両シールリング23,24が相互に離間する方向に押圧されて本体部27,27がベアリング受け26及び第2中間シールフランジ6aに押し付けられ、径方向においては、各シールリング23,24の内外周リップ部28,29がその径方向間隔が広がる方向に押圧変形される。すなわち、環状溝30に流入した第2流体25の圧力により、リップ部28,29のシール面6e,6d,12aへの接触面圧が上昇して、シールリング23,24によるシール機能が十分に発揮される。かかる接触面圧の上昇程度は、通路接空間4aに供給される第2流体25の圧力に比例する。したがって、上記接触面圧つまりシール力が第2流体25の圧力に応じて比例的に変化することになり、第2流体25が高圧である場合や圧力変動した場合にも、シールリング23,24によるシール機能が適正且つ良好に発揮されることになり、第2流路4における第2流体25の流動が漏れを生じることなく良好に行われる。
【0027】
ところで、このような多流路形ロータリジョイントにあって、メカニカルシール16はセラミックス,カーボン,超硬合金等の硬質材で構成された2つの密封環16a,16bによりシール機能を発揮させるものであり、長期に亘ってメンテナンスを必要としないものであるが、弾性材製のシールリング23,24は、その材質,機能上、短期間の使用において摩耗,損傷し易く、交換する必要が生じる。したがって、上記のように流路3,4のシール手段としてメカニカルシール装置5と弾性シール装置6とを併用する多流路形ロータリジョイントにあっては、メカニカルシール装置5をメンテナンスする必要がないときにも弾性シール装置6はこれをメンテナンス(シールリング23,24を新たなものに交換し、必要に応じて当該シールリング23,24の周辺部材(例えば、端部スリーブ12)の交換,補修を行う等)する必要があるが、この実施の形態は、かかる弾性シール装置6のメンテナンス作業において、分解された弾性シール装置6を組み立てる場合(弾性シール装置6の再組立)に本発明の方法を適用した例に係る。
【0028】
而して、以上のように構成された多流路形ロータリジョイントにおいて、弾性シール装置6のメンテナンス(シールリング23,24の交換及び弾性シール装置6の再組立等)は、次のような準備工程、分解工程(本発明の方法によるシールリング内嵌工程及びシールリング外嵌工程を含む)、再組立工程及び最終工程により行われる。
【0029】
(準備工程)
メカニカルシール16は両密封環16a,16bの対向端面たる密封端面が平行且つ同心状態で相対回転することにより高度のシール機能を発揮するように構成されたものであり、かかる密封端面の平行性,同心性が損なわれるとシール機能が低下若しくは喪失することになる。しかし、弾性シール装置6のメンテナンスを行うに当たって先端シールフランジ6aを取り外すと、これとの間に装填されたベアリング14aによる回転軸体2の上端部(先端部)の軸受支持が解除されることから、回転軸体2は下端部(基端部)のみが基端シールフランジ5aにベアリング14bで連結された片持ち状態となる上、ケース体1に対して相対回転自在な状態にあることから、弾性シール装置6の再組立作業を行う際に、分解されないケース体1の基端側部分(基端シールフランジ5a、全第1中間シールフランジ5b及びカバー板5cで構成される部分であって、以下「非分解ケース体部分」という)と回転軸体2との同心状態が維持されず、つまり弾性シール装置6を取り外す(分解する)前の状態を維持することが困難であり、その結果、上記した密封端面の平行性,同心性が損なわれる虞れがある。このような虞れは、軸線方向に並列配置されるメカニカルシール16の数が多くなるに従い顕著に生じる。また、非分解ケース体部分5a,5b,5cと回転軸体2とが相対回転自在な状態にあることから、つまり回転軸体2がその基端部のみをベアリング14bで支持された不安定な片持ち状態となっていることから、弾性シール装置6の再組立作業が極めて困難であり、作業者が未熟練者である場合は勿論、熟練の作業者であっても、メカニカルシール装置5をメンテナンス前の適正な形態に保持したままで弾性シール装置6のメンテナンス作業ないし再組立作業を行うことは容易ではない。
【0030】
したがって、弾性シール装置6のメンテナンスを行うに際しては、準備工程として、図6〜図9に示す如く、非分解ケース体部分5a,5b,5cと回転軸体2とを連結固定治具40を使用して相対回転不能に連結しておくのである。
【0031】
連結固定治具40は、図6〜図9に示す如く、円板状の軸固定部41とその周縁部に立設された円筒状のケース嵌合部42とを有する金属製の有底筒状体であり、その直径線上の部分には、当該部分の一端部43を残して両部41,42を2分割する切欠溝44が形成されている。ケース嵌合部42は、ケース体1の基端部つまり基端シールフランジ5a(カバー板5c)を嵌合させうるに必要且つ十分な内径(ケース体1の前後面1a,1aと略同一)を有するもので、切欠溝44を挟んで対向する分割端同士を連結する複数の連結ボルト45を締付けることにより、縮径できるようになっている。軸固定部41には複数の円弧状長孔41aが形成されており、各円弧状長孔41aには軸本体11の下端面部に形成したネジ孔11b(図2,図10を参照)に螺着しうる固定ボルト46が挿通されている。
【0032】
而して、準備工程にあっては、まず、基端シールフランジ5aをケース嵌合部42に嵌合させた上、連結ボルト45を締付けてケース嵌合部42を縮径させることにより、非分解ケース体部分5a,5b,5cの下端部をケース嵌合部42に相対回転不能に嵌合固定する。次に、各固定ボルト46を軸本体11のネジ孔11bに螺着して、回転軸体2を軸固定部41に相対回転不能に固定する。このようにすることによって、非分解ケース体部分5a,5b,5cと回転軸体2とは、連結固定治具40を介して相対回転不能に一体化連結されることになる。
【0033】
(分解工程)
次に、分解工程を行い、弾性シール装置6の分解等を行うが、この分解工程にあっては、まず、連結固定治具40を所定の作業面(作業台の上面等)に載置して、多流路形ロータリジョイントを立直状態に保持させておく。このようにしておくことにより、当該分解工程及び爾後の再組立工程を容易に行うことができる。
【0034】
分解工程にあっては、まず、図10に示す如く、ケース体1の先端側部分6a,6b,6cを非分解ケース体部分5a,5b,5cから取り外す。すなわち、カバー板6c及び長尺ボルト9を外した上、先端シールフランジ6bを第2中間シールフランジ6aから外すと共に、ベアリング14a、ベアリング受け26及びシールリング23,24を回転軸体2の端部スリーブ12から抜き取る。さらに、ボルト8を外し、第2中間シールフランジ6a及び環状シール部材19aを取り外す。
【0035】
ところで、分解工程においては、ケース体1から上ベアリング14aが除去されることから、回転軸体2が下ベアリング14bのみで非分解ケース体部分5a,5b,5cに支持されるにすぎないが、準備工程において、回転軸体2が連結固定治具40により非分解ケース体部分5a,5b,5cと一体化されていることから、つまり回転軸体2は準備工程前の状態に保持されていることから、先端シールフランジ6b等の取り外し作業によって回転軸体2と非分解ケース体部分5a,5b,5cとの位置関係は変化することがない。したがって、分解工程の作業中に、回転軸体2と第1中間シールフランジ5bとの間に組み込まれた各メカニカルシール16が、その機能を低下させるような形態(例えば、回転軸体2がぐらついて密封環16a,16bの平行度や同心度が不適正になる形態)に変動することがなく、メンテナンス前の形態にそのまま維持される。また、回転軸体2と非分解ケース体部分5a,5b,5cとの相対回転が連結固定治具40により阻止されているから、作業中に回転軸体2が回転するようなことがなく、分解工程を容易に行うことができる。なお、ケース体1の先端側部分6a,6b,6c及びこれと回転軸体2との間に装填されていた部材(ベアリング14a等)が除去されることにより最上位のメカニカルシール16等が非分解ケース体部分5a,5b,5cから露出するが、分解工程においては、これらの露出部分(例えば、環状シール部材19aが圧接する最上位の軸側密封環16aの外周面)を清掃することが好ましい。
【0036】
(再組立工程)
分解工程が終了すると、再組立工程を開始して、図11〜図22に示す如く、弾性シール装置6のメンテナンス,再組立を含むロータリジョイントの再組立作業を行う。
【0037】
まず、端部スリーブ12を交換する。すなわち、端部スリーブ12の外周面つまりシールリング23,24が接触するシール部12aの外周面は損傷し易く、これを放置しておくと、シールリング23,24を新たなものに交換しても、当該シールリング23,24によるシール機能が良好に発揮されないことから、再組立工程にあっては、シールリング23,24の交換に先立って、端部スリーブ12を新たなものに交換する。なお、端部スリーブ12の交換は必要に応じて行われるものであり、損傷等の問題がない場合には端部スリーブ12の交換は行われないこともある。
【0038】
ところで、軸側密封環群(M+1個の軸側密封環16a)は、隣接する軸側密封環16a,16a間に中間スリーブ13を介在させた状態で端部スリーブ12のシール部12aと軸本体11の基端段部11aとの間に挟圧されることにより、軸本体11に挿通固定されたものであり、スプリング16cによりケース側密封環16aにより軸線方向に附勢されたものである。したがって、端部スリーブ12の交換時において軸側密封環16aの位置が変動することになり、その結果、新たな端部スリーブ12を軸本体11に取り付けた場合に密封環16a,16bの相対位置が元の適正位置に復帰されない虞れがある。
【0039】
しかし、次のような密封環係止治具50を使用することにより、このような問題を生じることなく端部スリーブ12の交換を容易に行うことができる。
【0040】
すなわち、端部スリーブ12を交換するに当たっては、予め、図11に示す如く、端部スリーブ12を軸線方向に挿脱自在に囲繞する密封環係止治具50を最上位の第1中間シールフランジ5bに取り付けて、この密封環係止治具50により、端部スリーブ12により係止されている軸側密封環(最先端側(最上位)の軸側密封環)16aを当該端部スリーブ12による係止位置と同一位置に係止させておく。
【0041】
密封環係止治具50は、図11に示す如く、最上位の第1中間シールフランジ5bの上端部に取り付けられる有底筒状の治具本体51と、この治具本体51の周壁51a内に軸線方向(上下方向)に移動可能に嵌挿されたリング状の係止体52と、治具本体51の端壁51bに貫通状に螺合された調整ボルト53とからなる。周壁51aには、基端ケース部分5に形成された長尺ボルト9用挿通孔に一致する貫通孔51cが形成されており、この貫通孔51aに挿通させた取付ボルト54を長尺ボルト9(図2参照)と同様に基端シールフランジ5aに螺着することにより、治具本体51は非分解ケース体部分5a,5b,5cの上端部に取り付けられている。このように、密封環係止治具50つまり治具本体51は、ケース体1の先端側部分6a,6bと基端側部分5a,5bとを連結する長尺ボルト9の挿通孔及びネジ孔を利用して、長尺ボルト9と同一の取付ボルト54により非分解ケース体部分5a,5b,5cに取り付けられる。また、端壁51bの中心部及び係止体52には、端部スリーブ12の外径(シール部12aの外径)より大きな貫通孔が形成されており、密封環係止治具50を非分解ケース体部分5a,5b,5cに取り付けた状態において端部スリーブ12を軸本体11の上端部に挿脱できるようになっている。また、調整ボルト53は係止体52の上端部に当接しうる位置に配置されていて、これを締付けることにより、係止体52を最上位の軸側密封環16aの上端面に当接させうるようになっている。
【0042】
而して、密封環係止治具50の治具本体51を取付ボルト54により非分解ケース体部分5a,5b,5cに取り付けた上、調整ボルト53を締付けて係止体52を最上位の軸側密封環16aに当接させることにより、図11に示す如く、当該軸側密封環16aを端部スリーブ12による係止位置と同一位置に係止保持させることができる。
【0043】
この状態において、図12に示す如く、ボルト15を外して端部スリーブ12を軸本体11から抜き出し、新たな端部スリーブ12を軸本体11に取り付ける。このような端部スリーブ12の交換作業(端部スリーブ12の軸本体11への挿脱作業)においては、密封環係止治具50により最上位の軸側密封環16aが端部スリーブ12による係止位置と同一位置に係止保持されるから、端部スリーブ12の交換時に密封環16a,16bの相対位置が変化する等の問題は全く生じない。
【0044】
そして、端部スリーブ12の交換が終了すると、つまり新たな端部スリーブ12の軸本体11への取り付けが終了すると、密封環係止治具50を基端ケース部分5から取り外した上、環状シール部材19aを交換すると共に新たな環状シール部材19aを装填した第2中間シールフランジ6aをボルト8(図1参照)により非分解ケース体部分5a,5b,5cに取り付ける。なお、環状シール部材19aの交換は必要に応じて行われるものであり、損傷,劣化が認められない場合には環状シール部材19aの交換を行わないこともある。
【0045】
このようにして端部スリーブ12及び環状シール部材19aの交換が終了すると、引き続き、弾性シール装置6の再組立を行うが、この再組立は本発明の方法に従って次のように行われる。
【0046】
すなわち、本発明に従って、先端シールフランジ6b内にその軸線方向にシールリング23,24を移動させつつ挿入することにより、当該シールリング23,24を、その外周リップ部29,29が先端シールフランジ6bの内周面に形成された環状のシール面6e,6fに押圧接触する状態に、先端シールフランジ6bに内嵌させるシールリング内嵌工程を、本発明に係る外周リップ部誘導治具60,61及び押し込み治具62を使用して次のように行う。
【0047】
まず、第1シールリング23を先端シールフランジ6bに装填させるが、この装填に当たっては、図13に示す如く、先端シールフランジ6bのベアリング保持面6dに第1外周リップ部誘導治具60を嵌合固定する。第1外周リップ部誘導治具60は、内周面にシール面6eに面一状に連なる円柱面である外周リップ部誘導面60aとその基端から漸次拡大する截頭円錐面である外周リップ部縮径変形作用面60bとを形成してなる筒状のものである。
【0048】
そして、第1シールリング23を、図13に示す如く、外周リップ部縮径変形作用面60b内に挿入した上、本体部27に衝合させた押し込み治具62により外周リップ部誘導面60aへと押し込む。押し込み治具62は、シール面6e,6fと略同一の外径を有する筒状又は棒状(図示の例では筒状)のもので、シール面6e,6fに挿脱自在なものである。
【0049】
第1シールリング23を押し込み治具62により押し込んでいくと、まず、外周リップ部29が外周リップ部縮径変形作用面60bに当接し(図14(A))、この外周リップ部縮径変形作用面60b上をスライドしつつ縮径されていく。すなわち、外周リップ部29は外周リップ部縮径変形作用面60bにより漸次内径方向へと弾性変形(縮径変形)されていく。そして、押し込み治具62による押し込みが進行すると、外周リップ部29は外周リップ部縮径変形作用面60bから外周リップ部誘導面60aへとスライドして、シール面6eに装填可能な形態に弾性変形(縮径変形)される(図14(B))。そして、外周リップ部29がこの形態を維持しつつ外周リップ部誘導面60aからシール面6eへと移動され(図14(C))、外周リップ部29が仕切部6gに当接した時点で押し込み治具62によるシールリング23の押し込みを終了する(同図(D))。このように、第1外周リップ部誘導治具60により外周リップ部29を漸次縮径変形させつつ、シールリング23をシール面6eへと押し込むことによって、当該シールリング23を先端シールフランジ6bに適正な形態で装填させることができる。外周リップ部誘導面60aがシール面6eに面一状に連なっていることから、外周リップ部29の先端部が外周リップ部誘導面60aからシール面6eへと円滑に誘導されてシール面6eの周縁部6hに干渉することはない。
【0050】
次いで、第1外周リップ部誘導治具60を取り外して先端シールフランジ6bを上下反転させた上、図15に示す如く、先端シールフランジ6bの上端部に形成された第2中間シールフランジ6aへの係合突起6jに第2外周リップ部誘導治具61を嵌合固定する。第2外周リップ部誘導治具61は、図15に示す如く、第1外周リップ部誘導治具60と同様に、内周面に先端シールフランジ6bのシール面6fに面一状に連なる円柱状の外周リップ部誘導面61aとその基端から漸次拡大する截頭円錐状の外周リップ部縮径変形作用面61bとを形成した円筒状のものである。
【0051】
そして、第2シールリング24を、図15に示す如く、外周リップ部縮径変形作用面61b内に挿入した上、本体部27に衝合させた押し込み治具62により外周リップ部誘導面61aへと押し込む。第2シールリング24を押し込み治具62により押し込んでいくと、上記した第1シールリング23を装填する場合と同様に、外周リップ部29が外周リップ部縮径変形作用面61bに当接し(図16(A))、爾後、外周リップ部縮径変形作用面61b上をスライドしつつ縮径されていき、外周リップ部誘導面60aへとスライドすることにより、シール面6eに装填可能な形態に弾性変形(縮径変形)され(同図(B))、その形態を維持したまま外周リップ部誘導面60aからシール面6eへと移動され(同図(C))、外周リップ部29が仕切部6gに当接した時点で押し込み治具62によるシールリング23の押し込みを終了する(同図(D))。
【0052】
以上のように、第1及び第2外周リップ部誘導治具60,61並びに押し込み治具62を使用することにより、シールリング内嵌工程を容易且つ適正に行うことができる。すなわち、新たなシールリング23,24を先端シールフランジ6bの所定位置(シール面6e,6f)に適正な形態で装填させることができ、その装填時において、外周リップ部29の先端部が外周リップ部誘導面60a,61aからシール面6e,6fへと円滑に誘導されてシール面6e,6fの周縁部6h,6iに干渉することもない。
【0053】
次に、本発明に従って、回転軸体2にその軸線方向にシールリング23,24を内嵌させた先端シールフランジ6bを移動させつつ嵌挿することにより、当該シールリング23,24を、その内周リップ部28,28が回転軸体2の外周面に押圧接触する状態に、回転軸体2に外嵌させるシールリング外嵌工程を、本発明に係る内周リップ部誘導治具70を使用して次のように行う。
【0054】
まず、端部スリーブ12の先端部(上端部)に、図17に示す如く、内周リップ部誘導治具70を取り付ける。内周リップ部誘導治具70は、図17に示す如く、端部スリーブ12の外径(シール部12aの外径)と同一外径をなす円柱状の内周リップ部誘導部71とその基端から漸次縮径する截頭円錐状(又は円錐状)の内周リップ部拡径変形作用部72とその基端から同心状に突出する円柱状の芯出し部73とを有する回転体形状をなすものであり、中心貫通孔74に挿通させた取付ボルト75を端部スリーブ12の取付部12bの中心に形成したネジ孔12cに螺着することにより、端部スリーブ12の上端部にこれと軸線を一致させた状態(内周リップ部誘導部71の外周面71aが端部スリーブ12の外周面つまりシール部12aの外周面に面一状に連なる同心状態)に取り付けられる。なお、芯出し部73の外径及び内周リップ部拡径変形作用部72の基端部(上端部)の外径(内周リップ部拡径変形作用部72の最小径)は、自然状態にある弾性材シールリング23,24の内周リップ部28,28の内径より小さく設定されている。また、芯出し部73の外径は当該内周リップ部拡径変形作用部72の最小径と同一又はこれより小さく設定されている。
【0055】
次に、先端シールフランジ6bを、その内周部に保持させた弾性材シールリング23,24が内周リップ部誘導治具70の上端部に嵌挿される状態に位置させた上、下降させていく(図17)。
【0056】
先端シールフランジ6bを下降させていくと、まず、下側の第2シールリング24の内周リップ部28が内周リップ部拡径変形作用部72の外周面(以下「内周リップ部拡径変形作用面」という)72aに当接し(図18(A))、内周リップ部拡径変形作用面72a上をスライドしつつ拡径されていく。すなわち、内周リップ部28は内周リップ部拡径変形作用面72aにより漸次外径方向へと弾性変形(拡径変形)されていく。
【0057】
先端シールフランジ6bの下降が進行していくに従って、第2シールリング24の内周リップ部28の内周リップ部拡径変形作用面72aによる弾性変形が更に大きくなり、その弾性変形は当該内周リップ部28が内周リップ部拡径変形作用面72aの下端部に達した時点で最大となり、爾後、その変形形態を維持しつつ内周リップ部誘導部71の外周面(以下「内周リップ部誘導面」という)71aへと移行されることになる(図18(B))。
【0058】
第2シールリング24の内周リップ部28が内周リップ部誘導面71a上を進行すると、これに伴って、上側の第1シールリング23の内周リップ部28も内周リップ部拡径変形作用面72aにより漸次拡径変形されていき、内周リップ部拡径変形作用面72aの下端部から最大縮径形態を維持しつつ内周リップ部誘導面71aへと移行する(図18(A)〜(C)参照)。
【0059】
さらに先端シールフランジ6bの下降に伴って、両シールリング23,24の内周リップ部28,29は、内周リップ部誘導面71aからこれに面一状に連なるシール部12aの外周面へと順次移行されていく(図18(D))。したがって、両シールリング23,24は、その内周リップ部28が回転軸体2の端部周縁部に干渉することなく、円滑且つ良好に端部スリーブ12へと誘導されることになる。
【0060】
そして、先端シールフランジ6bを第2中間シールフランジ6aに衝合する位置まで下降させると、図19に示す如く、両シールリング23,24が端部スリーブ12の所定位置に嵌挿され、各シールリング23,24が通路接続空間4aを適正にシールしうる状態に装填される。
【0061】
このようにしてシールリング外嵌工程が終了すると、図20に示す如く、長尺ボルト9により先端シールフランジ6b及びシールフランジ6aを基端ケース部分5に連結すると共に両フランジ6a,6b間をボルト8(図1参照)により連結し、更に、先端シールフランジ6bと端部スリーブ12との対向周面間にベアリング受け26及びベアリング14aを装填する。しかる後、ビス10bによりカバー板6cを先端シールフランジ6bに取付けて(図20鎖線図示参照)、弾性シール装置6の再組立作業を完了する。
【0062】
ところで、シールリング23,24の内周リップ部28,28を内周リップ部誘導治具70により端部スリーブ12へと円滑且つ適正に嵌挿させるためには、内周リップ部誘導治具70を端部スリーブ12にこれと軸線を一致させた状態(内周リップ部誘導面71aが端部スリーブ12の外周面に面一上に連なる同心状態)に取付けておくことが必要であり、両者12,70を端部同士を正確に同心状態に衝合させた状態で取付ボルト75を締付けることが必要であるが、かかる作業は、未熟練者にとっては勿論、相当以上の熟練者であっても極めて困難である。
【0063】
しかし、このような作業は、図21及び図22に示す如く、本発明に係る芯出し治具80を使用することにより、容易に行うことができる。
【0064】
すなわち、芯出し治具80は、図21に示す如く、第1円筒部81とその基端部(下端部)に連なる第2円筒部82とその基端部(下端部)に連なる第3円筒部83とからなる円筒体であり、先端側内周部つまり第1及び第2円筒部81,82の内周部には内周リップ部誘導治具70の外周面に嵌合する第1及び第2治具側Oリング84,85が係合保持されており、基端側内周部つまり第3円筒部83の内周部には回転軸体2の外周面に嵌合する軸側Oリング86が係合保持されている。第1円筒部81は、その内周環状溝に係合保持させた第1治具側Oリング84が内周リップ部誘導治具70の芯出し部73の外周面に弾性的に圧接する状態で、芯出し部73に嵌挿保持させうるものである。第2円筒部82は、その内周環状溝に係合保持させた第2治具側Oリング85が内周リップ部誘導治具70の内周リップ部誘導部71の外周面71aに弾性的に圧接する状態で、内周リップ部誘導治具70の内周リップ部拡径変形作用部72及び内周リップ部誘導部71に嵌挿保持させうるものである。第3円筒部83は、第2円筒部81と同一内外径をなすもので、その内周環状溝に係合保持させた軸側Oリング86が端部スリーブ12の外周面(シール部12aの外周面)に弾性的に圧接する状態で、端部スリーブ12に嵌挿させうるものである。なお、各Oリング84,85,86はゴム等の非圧縮性弾性材からなるものである。
【0065】
而して、内周リップ部誘導治具72の端部スリーブ12への取り付けは、次のように行う。すなわち、まず、図21に示す如く、内周リップ部誘導治具72に、その芯出し部73及び内周リップ部誘導部71に夫々第1及び第2治具側Oリング84,85が嵌合する状態(第1及び第2治具側Oリング84,85が夫々芯出し部73及び内周リップ部誘導部71の外周面に弾性的に圧接する状態)となるように、芯出し治具80を嵌挿させた上、内周リップ部誘導部71から突出する第3円筒部83を、軸側Oリング86が端部スリーブ12に嵌合する状態(軸側Oリング86がシール部12aの外周面に弾性的に圧接する状態)となるように、端部スリーブ12に嵌挿させる。そして、この状態のまま、芯出し治具80を、これに保持された内周リップ部誘導部71が端部スリーブ12に衝合する位置まで、端部スリーブ12の下端方向へと押し込む。この状態では、芯出し治具80の内周部に保持された非圧縮性弾性材製の治具側Oリング84,85と軸側Oリング86とが内周リップ部誘導治具70の外周面と端部スリーブ12の外周面とに弾性的に圧接されていることから、両者12,70は芯出し治具80を介して同心状態に保持されることになる。
【0066】
したがって、この状態において、図22に示す如く、端部スリーブ12のネジ孔12cに螺着させた取付ボルト75を締付けることにより、内周リップ部誘導治具72を端部スリーブ12に同心状態で取付けることができ、内周リップ部誘導治具72の端部スリーブ12への取り付けを適正且つ容易に行うことができる。なお、内周リップ部誘導治具72が端部スリーブ12に取り付けられた後においては、芯出し治具80を端部スリーブ12及び内周リップ部誘導治具70から上方に抜き出す。
【0067】
(最終工程)
最後に、連結固定治具40を基端ケース部分5及び軸本体11から取り外して、メンテナンス作業を完了する。
【0068】
なお、本発明に係る弾性シール装置の組み立て方法は、上記した実施の形態に限定されるものでなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に変更,改良することができる。例えば、本発明の方法は、メカニカルシール装置5と弾性シール装置6とを併用した多流路形ロータリジョイントに限らず、流路のシール手段として弾性シール装置6のみを使用する多流路形ロータリジョイント又は単一流路形ロータリジョイントにも好適に適用することができる。この場合、流路のシール手段として弾性シール装置6のみを使用する多流路形ロータリジョイントにあっては、シールフランジ6aと回転軸体2との間に一対のシールリング23,24を装填してなる前記弾性シール装置6がN個(第2流路4の数に一致する数)設けられることになるが、本発明の方法は、各弾性シール装置6の組立又は再組立に適用される。また、本発明の方法は、上記したロータリジョイントにおける弾性シール装置6の組立又は再組立に適用される他、回転機器のハウジングから突出する回転軸体と当該ハウジングに取り付けられるシールフランジとの対向周面間に弾性材製のシールリングを装填してなる、軸封装置として使用される弾性シール装置を組立又は再組立する場合にも好適に適用することができる。たるである場合において、これを組み立てるときにも、好適に適用することができる。また、本発明に係る組み立て用治具(外周リップ部誘導治具60,61、内周リップ部誘導治具70又は芯出し治具80)も、上記した実施の形態に限定されず、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に変更,改良することができる。
【符号の説明】
【0069】
2 回転軸体
4 第2流路
4a 通路接続空間
4b 軸側通路
4c ケース側通路
6 弾性シール装置
6b シールフランジ(先端シールフランジ)
6e シール面
6f シール面
11 軸本体
12 端部スリーブ
12a シール部
23 第1シールリング
24 第2シールリング
25 第2流体
27 シールリングの本体部
28 シールリングの内周リップ部
29 シールリングの外周リップ部
30 環状溝
31 補強バネ
60 第1外周リップ部誘導治具
60a 外周リップ部誘導面
60b 外周リップ部縮径変形作用面
61 第2外周リップ部誘導治具
61a 外周リップ部誘導面
61b 外周リップ部縮径変形作用面
62 押し込み治具
70 内周リップ部誘導治具
71 内周リップ部誘導部
71a 内周リップ部誘導面
72 内周リップ部拡径変形作用部
72a 内周リップ部拡径変形作用面
80 芯出し治具
84 第1治具側Oリング
85 第2治具側Oリング
86 軸側Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸体とこれに同心状に挿通させた筒状のシールフランジとの対向周面間に、環状の本体部と本体部から軸線方向に突出して当該対向周面に弾性的に押圧接触する筒状の内外周リップ部とを具備してなる弾性材製のシールリングを装填した弾性シール装置を組み立てる方法であって、シールフランジ内にその軸線方向にシールリングを移動させつつ挿入することにより、当該シールリングを、その外周リップ部がシールフランジの内周面に形成された環状のシール面に押圧接触する状態に、シールフランジに内嵌させるシールリング内嵌工程と、回転軸体にその軸線方向にシールリングを内嵌させたシールフランジを移動させつつ嵌挿することにより、当該シールリングを、その内周リップ部が回転軸体の外周面に押圧接触する状態に、回転軸体に外嵌させるシールリング外嵌工程とを具備する弾性シール装置の組み立て方法において、
シールリング内嵌工程においては、シールフランジに、内周面に前記シール面に面一状に連なる円柱状の外周リップ部誘導面とその基端から漸次拡大する外周リップ部縮径変形作用面とを形成してなる円筒状の外周リップ部誘導治具を取り付けて、シールリングを、これが外周リップ部縮径作用面内に位置する状態で、当該シールリングの本体部に衝合させた筒状又は棒状の押し込み治具により前記シール面へと押し込むことにより、外周リップ部を外周リップ部拡径変形作用面により縮径変形させつつ外周リップ部誘導面から前記シール面へと誘導し、しかる後、シールフランジから外周リップ部誘導治具を取り外すようにし、
シールリング外嵌工程においては、回転軸体の先端に、これと同一外径をなす内周リップ部誘導部とその基端から漸次縮径する截頭円錐状又は円錐状の内周リップ部拡径変形作用部とを有する回転体形状の外周リップ部誘導治具を軸線が一致する同心状態で取り付け、シールフランジを、これに内嵌保持されたシールリングに内周リップ部拡径変形作用部を挿通させた状態で、軸線方向に移動させることにより、内周リップ部を内周リップ部拡径変形作用部により拡径変形させつつ内周リップ部誘導部から回転軸体の所定位置へと誘導し、しかる後、回転軸体から外周リップ部誘導治具を取り外すようにすることを特徴とする弾性シール装置の組み立て方法。
【請求項2】
シールリング外嵌工程においては、筒状の芯出し治具を、その先端側内周部に係合保持させた非圧縮性弾性材製の治具側Oリングを内周リップ部誘導治具に嵌合させると共に当該芯出し治具の基端側内周部に係合保持させた非圧縮性弾性材製の軸側Oリングを回転軸体に嵌合させた状態で、内周リップ部誘導治具の内周リップ部誘導部が回転軸体の先端に衝合する位置まで軸線方向に移動させた上、内周リップ部誘導治具を回転軸体に取り付け、しかる後、芯出し治具を内周リップ部誘導治具及び回転軸体から離脱させることにより、内周リップ部誘導治具を回転軸体に軸線が一致する状態で取り付けるようにすることを特徴とする、請求項2に記載する弾性シール装置の組み立て方法。
【請求項3】
請求項1に記載する外周リップ部誘導治具であって、内周面に前記シール面と同一径の円柱状の外周リップ部誘導面とその基端から漸次拡大する外周リップ部縮径変形作用面とを形成してなる円筒状のもので、シールフランジに外周リップ部誘導面が前記シール面に面一状に連なる状態で取り付けうるように構成されていることを特徴とする組み立て用治具。
【請求項4】
請求項1に記載する内周リップ部誘導治具であって、回転軸体の先端と同一外径をなす内周リップ部誘導部とその基端から漸次縮径する截頭円錐状又は円錐状の内周リップ部拡径変形作用部とを有し、回転軸体の先端にこれと軸線が一致する同心状態で取り付けうるように構成されていることを特徴とする組み立て用治具。
【請求項5】
請求項2に記載する芯出し治具であって、先端側内周部に内周リップ部誘導治具に嵌合しうる非圧縮性弾性材製の治具側Oリングを係合保持すると共に基端側内周部に回転軸体に嵌合しうる非圧縮性弾性材製の軸側Oリングを係合保持させた筒状体であることを特徴とする組み立て用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−202695(P2011−202695A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68341(P2010−68341)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】