説明

弾性ポリウレタンバインダー及びプラスチック顆粒を含む改良された粘着性の層材料

本発明は、プラスチック顆粒を含む弾性層材料の製造に用いるポリウレタンバインダーであって、ポリウレタンバインダーが、超分岐ポリマーを含むことを特徴とするポリウレタンバインダー、及びかかるポリウレタンバインダーの製造方法に関する。更に本発明は、かかるポリウレタンバインダー及びプラスチック顆粒、更に適宜、他の助剤及び添加剤を混合し、そして混合物を硬化することにより得られる弾性層材料、かかる層材料の製造方法、及び本発明の層材料を、スポーツに適した表面、例えば遊技場、競技トラック及びスポーツホール、子供用遊技場、並びに歩行者用道路の床敷物として使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック顆粒を含む弾性層材料の製造に用いるポリウレタンバインダーであって、ポリウレタンバインダーが、超分岐ポリマーを含むことを特徴とするポリウレタンバインダー、及びかかるポリウレタンバインダーの製造方法に関する。更に本発明は、かかるポリウレタンバインダー及びプラスチック顆粒、更に適宜、他の助剤及び添加剤を混合し、そして混合物を硬化することにより得られる弾性層材料、かかる層材料の製造方法、及び本発明の層材料を、スポーツに適した表面、例えば遊技場、競技トラック及びスポーツホール、子供用遊技場、並びに歩行者用道路の床敷物として使用する方法に関する。
【0002】
本発明の他の実施形態は、特許請求の範囲、明細書及び実施例において見出される。本発明に関して上述した特徴、及び以下の後段階で説明されるであろう特徴は、勿論、各々の引用された組み合わせだけではなく、他の組み合わせにおいて、本発明の範囲を超えることなく使用され得る。
【背景技術】
【0003】
ゴム粒子又はプラスチック粒子を含み、適当なバインダーを使用する弾性層材料の製造方法は知られている。
【0004】
例えば、特許文献1は、スポーツに適した表面に用いる水透過性で、弾性の床敷物を記載しているものの、使用されるバインダーの化学成分に関して、更に説明されていない。特許文献2、及び特許文献3、更には特許文献4及び特許文献5は、弾性粒子を結合させる2成分のポリウレタンバインダーの使用法を記載している。特許文献6〜10は、例えば、かかる利用分野で用いられる水分硬化性の単一成分ポリウレタンバインダーを記載している。使用されるプラスチック粒子は、主としてコスト上の理由から、殆どの場合にゴム顆粒粒子を含む。
【0005】
かかる層材料の機械的強度は、殆どの場合、ポリウレタンバインダーとゴムの接着により得られる限界に制約され、且つこれは、単に低いだけである。結果として、例えば頻繁な使用又はスパイクシューズの使用によって引き起こされる厳しい応力に曝される複合材料の部分的な破壊又は早々の摩損となる可能性がある。
【0006】
ゴム顆粒粒子とバインダーとの間の接着を改良するために、特許文献11では、第1の運転において、ヒドロキシ基を含むポリエーテル、無機フィラー及び/又は顔料からなるペーストをゴム粒子に被覆し、その後、ポリイソシアネートバインダーと混合し、そして硬化することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE1534345
【特許文献2】DE1955267
【特許文献3】DE1720059
【特許文献4】DE2156225
【特許文献5】DE2215893
【特許文献6】DE2021682
【特許文献7】DE2228111
【特許文献8】DE2427897
【特許文献9】DE2447625
【特許文献10】DE2821001
【特許文献11】DE2455679
【発明の概要】
【0008】
かかる方法の課題は、運転者コストが増加する2段階法であり、そして破断点引張歪み及び引張強さを僅かに増大させるに過ぎないという点にある。
【0009】
従って、本発明の目的は、層材料の製造において加工処理する追加の工程を有さず、そして例えば引張強さの増大によって明らかとなる、バインダーとプラスチック顆粒の接着を改善することが可能である、プラスチック顆粒を含む弾性層材料の製造に用いるポリウレタンバインダーを提供することにあった。
【0010】
本発明の別の目的は、かかるバインダーの製造方法を提供することにあった。
【0011】
本発明の更に別の目的は、従来技術の層材料と比較して、長期の寿命及び高い耐力能力を有する弾性層材料を提供することにあった。
【0012】
本発明の目的は、プラスチック顆粒を含む弾性層材料の製造に用いるポリウレタンバインダーであって、ポリウレタンバインダーが、超分岐ポリマーを含むことを特徴とするポリウレタンバインダーによって達成される。本発明の目的は、本発明のポリウレタンバインダーをプラスチック顆粒と混合し、そして混合物を硬化することにより得られる弾性層材料により更に達成される。
【0013】
本発明の場合、プラスチックは、熱硬化性プラスチック、弾性プラスチック、及び熱可塑性プラスチックである。
【0014】
熱硬化性プラスチックは、例えば共有結合による不可逆性で且つ緻密な架橋を有するプラスチックである。熱硬化性プラスチックは、低温でエネルギー弾性であり、そして比較的高温の条件下であっても、熱硬化性プラスチックは、粘着流が不可能であり、むしろ、極めて制限された変形性にて弾性的に動く。任意の温度条件下で、剪断弾性率は102kp/cm2未満ではない。熱硬化性プラスチックの中で、とりわけ、工業的に重要な物質群は以下の通りである:ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及び不飽和のポリエステル樹脂。
【0015】
弾性プラスチックは、20℃で、ポリマーの長さの少なくとも1.5倍にて繰り返し伸長可能であり、そして伸長に必要とされる力が除去されると、ポリマーの当初のおおよその寸法を直ぐに回復するエラストマー性のポリマーである。
【0016】
熱可塑性プラスチックは、使用温度で硬質又は軟質であり、使用温度を超えて、流れ移行領域を有するポリマー材料である。熱可塑性プラスチックは、原則として、無定形の熱可塑性プラスチックの場合にガラス転移温度(Tg)を超え、又は(半)結晶性の熱可塑性プラスチックの場合に融点(Tm)を超えて流動性となる直鎖又は分岐のポリマーから構成される。
【0017】
使用されるプラスチック顆粒は、弾性プラスチックを含むのが望ましい。使用される弾性プラスチックは、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソブテン−イソプレンゴム(IIR)、EPDM及び天然ゴム(NR)からなり、単独で又は相互のブレンドの形態である加硫化ゴム混合物を含み、且つ粒子が、硫黄又は過酸化物を基礎とする加硫促進剤及び/又は架橋剤を用いて混合され、そして周知の粒子により加硫されるのが特に望ましい。この場合のEPDMは、その調製で、エテン及び比較的大きな割合のプロピレン、更には数%の、ジエン構造を有する第3のモノマーの三元重合を使用するゴムであり、且つゴムにおけるジエンモノマーにより、その後の硫黄−加硫化に必要される二重結合を提供する。主として使用されるジエンモノマーは、cis,cis−1,5−シクロオクタジエン(COD)、exo−ジシクロペンタジエン(DCP)、endo−ジシクロペンタジエン(EDCP)、及び1,4−ジヘキサジエン(HX)であり、そして多くの他の5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)である。使用されるエラストマーは、加硫化スチレン−ブタジエンゴムを含むか、又は例えばEPDMとのスチレン−ブタジエンゴムブレンドを含むか、又はEPDMを含むのが特に好ましい。
【0018】
エラストマーは、本発明の場合、適宜、市販のフィラー、例えばカーボンブラック、シリカ、白亜、金属酸化物、可塑剤、酸化防止剤、オゾン保護剤、及び/又は熱可塑性ポリマー、例えば、スチレンを含む熱可塑性プラスチック、例えばポリスチレン又はポリスチレン−アクリロニトリル(SAN)、又はエチレン−酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、又はスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体若しくはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を基礎とする熱可塑性エラストマー、又は特定の熱可塑性プラスチック相互のブレンドを含む。
【0019】
本発明の方法で使用されるプラスチック顆粒は、所望の寸法及び形状であっても良い。しかしながら、ゴム廃棄物又はプラスチック廃棄物からなる弾性顆粒を使用するのが好ましく、且つその粒子の寸法は、0.5〜60mmであり、好ましくは1〜10mmである。例えば、かかる廃棄物は、タイヤの再処理中及びゴム又はプラスチックからなる工業製品の製造中に生じる。資金的な理由から、タイヤの再処理により得られる廃棄物を使用するのが好ましい。
【0020】
本発明の場合のポリウレタンバインダーは、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも80質量%、特に少なくとも95質量%の、イソシアネート基を有するプレポリマー(以下、イソシアネートプレポリマーと称する)と、超分岐ポリマーと、からなる混合物である。イソシアネートプレポリマー及び超分岐ポリマーは、この場合に、純粋な物理的混合物の形態で存在することが可能であり、或いは超分岐ポリマーは、共有結合を介してイソシアネートプレポリマーに結合することが可能である。この場合、超分岐ポリマーを、イソシアネートプレポリマーのポリマーマトリックスに対して共有結合させることが好ましい。
【0021】
本発明のポリウレタンバインダーの粘度は、この場合、ドイツ工業規格53018により25℃にて測定されて、500〜4000mPa・sの範囲であるのが好ましく、特に好ましくは1000〜3000mPa・sの範囲である。
【0022】
イソシアネート基を有するプレポリマーを、本発明の場合、ポリイソシアネート(a)を、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)、超分岐ポリマー(c)、更に適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)と反応させることにより調製することが可能であり、且つ過剰のポリイソシアネート(a)を使用する。
【0023】
本発明で使用され得るポリイソシアネート(a)は、従来技術により公知の脂肪族、脂環式及び芳香族の二官能性又は多官能性イソシアネート又はその所望の混合物である。例示は、ジフェニルメタン4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジイソシアネート、モノマーのジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、及び多くの環を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体の混合物(ポリマーMDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ナフタレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トルエン2,4,6−トリイソシアネート、及びトルエン2,4−及び2,6−ジイソシアネート(TDI)、又はこれらの混合物である。
【0024】
トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート及びジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、及び多くの環を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体(ポリマーMDI)、及びこれらのイソシアネートの混合物、ウレトイミン、特に、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネートとジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートからなる混合物をポリイソシアネート(a)として使用するのが好ましい。
【0025】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)として、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも2個の水素原子を有する任意の化合物を使用することが可能である。ポリエステロール、ポリエーテロール、又はポリエーテロールと、第3級アミン基を有するポリオールとの混合物を使用するのが好ましく、特にポリエーテロールを使用するのが好ましい。
【0026】
第3級アミノ基を有するポリオールは、例えば、第2級アミン、例えばエチレンジアミンを、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド又はプロピレンオキシドと反応させることにより得られる。
【0027】
好適なポリエーテロールは、例えば、触媒としてアルカリ金属の水酸化物又はアルカリ金属アルコレートを使用し、分子中に2〜5個、好ましくは2〜4個、特に好ましくは2〜3個、特に2個の反応性水素原子を含む少なくとも1種の開始剤分子を添加し、アルキレン基に2〜4個の炭素原子を有する1種以上のアルキレンオキシドからのアニオン重合を介して、或いはルイス酸、例えば五塩化アンチモン又は三フッ化ホウ素エーテレートを使用するカチオンの重合を介して、公知の方法によって調製される。使用され得る他の触媒は、DMC触媒として知られている多金属シアニド化合物である。アルキレンオキシドの適例は、テトラヒドロフラン、プロピレン1,3−オキシド、ブチレン1,2−オキシド、ブチレン2,3−オキシド、及び好ましくはエチレンオキシド及びプロピレン1,2−オキシドである。アルキレンオキシドは、個々に、連続して交互に、又は混合物の形態で使用され得る。プロピレン1,2−オキシド、エチレンオキシド、又はプロピレン1,2−オキシドとエチレンオキシドからなる混合物を使用するのが好ましい。
【0028】
使用され得る開始剤分子は、水又は2価及び3価のアルコールであるのが好ましく、例えばエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、及びトリメチロールプロパンである。
【0029】
好ましいポリエーテルポリオール、特に好ましくはポリオキシプロピレンポリオール又はポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールの官能価は、2〜5であり、特に好ましくは2〜3であり、そのモル質量は、400〜9000g/モルの範囲であり、好ましくは1000〜6000g/モルの範囲であり、特に好ましくは1500〜5000g/モルの範囲であり、特に2000〜4000g/モルの範囲である。使用されるポリエーテルポリオールは、その質量平均モル質量が1500〜2500g/モルの範囲であるポリプロピレングリコールを含むのが特に好ましい。
【0030】
本発明の場合、超分岐ポリマー(c)は、質量平均モル質量が500g/モルを超え、その主鎖が分岐し、そして0.05以上の分岐度(DB)を有する任意のポリマーである。超分岐ポリマーとしては、800g/モルを超える質量平均モル質量を有するのが好ましく、更に好ましくは1000g/モルを超え、特に1500g/モルを超え、そして0.1以上の分岐度を有する超分岐ポリマー(c)であるのが好ましい。本発明の超分岐ポリマー(c)の分岐度は、0.2〜0.99の範囲であるのが好ましく、特に0.3〜0.95であり、特に好ましくは0.35〜0.75である。“分岐度”の定義に関して、H. Frey等著., Acta Polym. 1997, 48, 30-35頁を参照されたい。
【0031】
好ましい超分岐ポリマー(c)としては、エーテル、アミン、エステル、カーボネート、アミド、ウレタン及び尿素、更にはこれらの混合形態、例えばエステル−アミド、アミド−アミン、エステル−カーボネート、尿素−ウレタンを基礎とする超分岐ポリマーである。特に使用され得る超分岐ポリエーテル(c)は、超分岐ポリマー、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートである。かかるポリマー又はその調製方法は、EP1141083、DE10211664、WO00/56802、WO03/062306、WO96/19537、WO03/54204、WO03/93343、WO05/037893、WO04/020503、DE102004026904、WO99/16810、WO05/026234、及びDE102005009166に記載されている。
【0032】
一の実施形態において、本発明の超分岐ポリマー(c)は、種々の官能基を有する。かかる官能基は、イソシアネート及び/又はプラスチック顆粒の反応性基、例えばゴム顆粒の反応性基と反応可能であるか、或いはポリマー、例えばゴムと相互作用可能であるのが好ましい。
【0033】
イソシアネートに対して反応性である官能基の例示は、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシ基、又は無水物基であり、好ましくはヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、又は無水物基である。
【0034】
ポリマー、例えばゴムの反応性基と反応可能である官能基の例示は、フリーラジカル重合可能な基であり、例えばオレフィン性二重結合、三重結合、又は活性化二重結合、例えばビニル基、(メタ)アクリレート基、マレイン酸基又はフマル酸基、或いはこれらの誘導体を含む基である。
【0035】
ポリマー、例えばゴムと相互作用可能な官能基は、固体と共有結合により反応しないものの、プラスに又はマイナスに荷電された基、電子供与体若しくは受容体の結合、配位相互作用、水素結合、ファンデルワールス結合、又は疎水性相互作用による相互作用を有する単位である。
【0036】
水素結合又は供与体若しくは受容体結合を生成する単位は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシ基、又は無水物基、カルボニル基、エーテル基、オレフィン性二重結合、共役二重結合、三重結合、活性化二重結合、例えば(メタ)アクリレート基、又はマレイン酸若しくはフマル酸を含む基又はこれらの誘導体を含む基であっても良い。
【0037】
ファンデルワールス結合又は疎水性相互作用を生成する分子領域は、例えば、鎖長がC1〜C120である直鎖又は分岐のアルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり、或いはヘテロ原子、例えば窒素、リン、酸素、又は硫黄により置換されていても良い1〜10個の環系を有する芳香族系であっても良い。また、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、又はこれらの混合物を基礎とする直鎖又は分岐のポリエーテル分子領域、或いはその他に、テトラヒドロフラン又はブタンジオールを基礎とするポリエーテルを使用することも可能である。
【0038】
一の好ましい実施形態において、超分岐ポリマー(c)は、イソシアネートに対して反応性である基、並びに固体と反応するか、又は固体と相互作用する基を有し、例えば、モノマーの結合によって得られる以下の構造を有する:すなわち、エステル構造、エーテル構造、アミド構造、及び/又はカーボネート構造、更にはヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、無水物基、ビニル基、(メタ)アクリル系二重結合、マレイン酸系二重結合、及び/又は長鎖の直鎖又は分岐アルキル基。
【0039】
本発明の超分岐ポリマー(c)は、ドイツ工業規格53240の第2部により、0〜50mg KOH/g、好ましくは1〜35mg KOH/g、特に好ましくは2〜20mg KOH/g、特に2〜10mgKOH/gの酸価を有するのが一般的である。
【0040】
更に、超分岐ポリマー(c)は、ドイツ工業規格53240の第2部により、0〜500mgKOH/g、好ましくは10〜500mgKOH/g、特に好ましくは10〜400mgKOH/gのヒドロキシ価を有するのが一般的である。
【0041】
更に、本発明の超分岐ポリマー(c)は、−60〜100℃、好ましくは−40〜80℃のガラス転移温度(DSCを用いるASTM法D3418−03によって測定)を有するのが一般的である。
【0042】
本発明の高官能性の超分岐ポリマー(c)は、両親媒性ポリマーであるのが好ましい。両親媒性は、疎水性基を親水性の超分岐ポリマー、例えばポリエステルを基礎とする超分岐ポリマーに導入することによって得られるのが好ましい。かかる疎水性基は、6個を超える炭素原子を有するのが好ましく、特に好ましくは8個を超え、そして100個未満の炭素原子を有し、特に10個を超え、そして50個未満の炭素原子を有する。
【0043】
疎水化は、例えば、ジカルボン酸及び/又はポリカルボン酸又はジオール及び/又はポリオールを、適当な疎水性基を含むモノカルボン酸、ジカルボン酸及び/又はポリカルボン酸或いは適当な疎水性基を含むモノオール、ジオール及び/又はポリオールで完全に又は部分的に置換することによるエステル化中に達成され得る。疎水性基を含む上記のモノカルボン酸、ジカルボン酸又はポリカルボン酸の例示は、脂肪族カルボン酸、例えばオクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラドデカン酸、脂肪酸、例えばステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、芳香族カルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、脂環式カルボン酸、例えばシクロヘキサンジカルボン酸、ジカルボン酸、例えばオクタン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸及びダイマーの脂肪酸である。疎水性基を含むモノオール、ジオール又はポリオールの例示は、脂肪族アルコール、例えばオクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノールの異性体、脂肪アルコール、例えばステアリルアルコール、オレイルアルコール、不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、クロチルアルコール、芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール、脂環式アルコール、例えばシクロヘキサノール及び更には脂肪酸のモノグリセリド、例えばグリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノパルミテートである。
【0044】
超分岐ポリマー(c)は、1〜20、好ましくは3〜20、特に好ましくは4〜20のHLB値を有するのが一般的である。アルコキシル化アルコールが、本発明の高官能性で、分岐度の高い超分岐ポリマー(c)の構造に使用される場合、HLB値は5〜8であるのが好ましい。
【0045】
HLB値は、化合物における親水性含有量と脂肪親和性含有量の基準である。HLB値の測定は、例えば、W. C. Griffin, Journal of the Society of Cosmetic Chemists, 1949, 1, 311及びW. C. Griffin, Journal of the Society of Cosmetic Chemists, 1954, 5, 249に記載されている。
【0046】
ポリエステル及び疎水化ポリエステルの場合、HLB値は、分子の脂肪親和性部分における炭素原子の数に対して、100倍されたエチレンオキシド基の数の割合を表し、そして以下の通り:
HLB=(エチレンオキシド基の数)×100/(分子の脂肪親和性部分における炭素原子の数)
C. D. Moore, M. Bell, SPC Soap, Perfum. Cosmet. 1956, 29, 893の方法によって計算される。
【0047】
一の特に好ましい実施形態において、使用される超分岐ポリマー(c)は、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を多官能性アルコールでエステル化して、ポリエステルを形成することによって得られる超分岐ポリエステルd1)を含む。使用されるα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の例示は、ジカルボン酸又はその誘導体であるのが好ましく、そして一の特に好ましい実施形態において、二重結合が、2個のカルボキシル基のそれぞれに対して隣接している。このような特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体は、例えば、無水マレイン酸、マレイルジクロリド、フマリルジクロリド、フマル酸、イタコン酸、イタコニルジクロリド及び/又はマレイン酸、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸又はマレイルジクロリド、特に好ましくは無水マレイン酸である。α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体は、単独で、或いは相互の混合物又は他のカルボン酸、好ましくはジカルボン酸又はポリカルボン酸又はこれらの誘導体、特に好ましくはジカルボン酸又はその誘導体、例えばアジピン酸との混合物の形態で使用され得る。以下において、“α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体”なる用語は、2種以上のα,β−不飽和カルボン酸を含む混合物及び1種以上のα,β−不飽和カルボン酸と他のカルボン酸との混合物を包含する。
【0048】
無水マレイン酸を基礎とするポリエステル(c1)は、例えば、DE102004026904、WO2005037893に記載されている。多官能性アルコールとして、例えば(b)に記載されるようなポリエーテロール又はポリエステロール、或いは種々のポリオールの混合物を使用するのが好ましい。使用されるアルコールの全混合物における平均官能価は、2.1〜10の範囲、好ましくは2.2〜8の範囲、特に好ましくは2.2〜4の範囲である。
【0049】
α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの反応において、反応における反応対象の割合は、酸基又はその誘導体を有する分子に対する、酸基又はその誘導体に対して反応性である基を有する分子のモル比が2:1〜1:2の範囲、特に好ましくは1.5:1〜1:2の範囲、極めて好ましくは0.9:1〜1:1.5の範囲、特に1:1を満たすように選択されるのが好ましい。この場合の反応は、酸基又はその誘導体と酸基又はその誘導体に対して反応性の基が相互に反応する反応条件下で行われる。
【0050】
特に好ましい超分岐ポリエステルは、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を多官能性アルコールと、好ましくは80〜200℃、特に好ましくは100〜180℃の温度条件下で反応させることによって調製される。特に好ましい超分岐ポリエステルの調製は、この場合、バルク又は溶液において行われ得る。好適な溶剤は、例えば、炭化水素、例えばパラフィン又は芳香族化合物である。特に好適なパラフィンは、n−ヘプタン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンである。特に好適な芳香族化合物は、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、異性体混合物の形態のキシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン並びにo−及びm−ジクロロベンゼンである。ジオキサン又はテトラヒドロフラン等のエーテル及びメチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトンについても他の溶剤として適当である。
【0051】
α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を多官能性アルコールと反応させることによる特に好ましいポリエステル(c1)の調製中の圧力条件は、それ自体重大ではない。十分な減圧下、例えば1〜500ミリバールの条件下で稼働させることが可能である。その製造方法は、500ミリバールを超える圧力条件下でも行われ得る。大気圧条件下での反応でも可能であり、僅かに超大気圧、例えば1200ミリバール以下での反応も同様に可能である。また、反応は、著しく超大気圧、例えば10バール以下の圧力条件下でも行われ得る。簡単にするため、反応は、大気圧条件下で行われるのが好ましい。減圧条件下での反応についても同様に好ましい。反応時間は、通常、10分〜48時間であり、好ましくは30分〜24時間であり、特に好ましくは1〜12時間である。
【0052】
これにより得られる特に好ましい超分岐ポリエステル(c1)は、PMMA−較正GPCによって測定される、1000〜500000g/モル、好ましくは2000〜200000g/モル、特に好ましくは3000〜120000g/モルの質量平均モル質量を有する。
【0053】
他の特に好ましい実施形態において、超分岐ポリマーとして、疎水化超分岐ポリエステル(c2)を使用する。本発明の場合、疎水化超分岐ポリエステル(c2)の調製手順は、超分岐ポリエステル(c1)の調製に類似するものの、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の全て又は一部を疎水化する。この場合、α,β−不飽和カルボン酸として、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸を使用するのが好ましく、特に好ましくは無水マレイン酸を使用する。かかる疎水化は、ポリエステルを形成するためのアルコールとの反応後又は好ましくは反応前に行われ得る。使用され得る疎水化剤は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む疎水性化合物、例えば直鎖又は分岐のポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン及び不飽和脂肪酸又はその誘導体を含むのが好ましい。疎水化剤との反応は、当業者に公知の方法によって行われ、且つ、ドイツ国の公開公報DE19519042及びDE4319671に記載されるように、カルボキシル基近傍の二重結合に疎水化剤を付加反応させる。この種の特に好ましい疎水化超分岐ポリエステル(c2)及びその調製方法は、例えば、先願の特許出願のDE102005060783.7に記載されている。100〜10000g/モル、特に好ましくは500〜5000g/モル、特に550〜2000g/モルのモル質量を有するポリイソブチレンから開始するのが好ましい。特に好ましい疎水化超分岐ポリエステル(c2)は、反応性ポリイソブチレンと無水マレイン酸からなる付加体を含む超分岐ポリエステル(c2)であり、用語としてポリイソブチレンコハク酸(PIBSA)、すなわちアルキレンコハク酸を使用する。
【0054】
他の特に好ましい実施形態において、超分岐ポリエステル(c1)と疎水化超分岐ポリエステル(c2)を含む混合物を超分岐ポリマー(c)として使用する。
【0055】
本発明のイソシアネートプレポリマーの調製に使用される成分(b)が成分(b)の合計質量に対して、50質量%を超えるポリエステロールを含む場合、超分岐ポリエステル(c1)の含有量は、超分岐ポリマー(c)の合計質量に対して、5質量%を超えるのが好ましく、特に好ましくは20質量%を超え、極めて好ましくは50質量%を超え、特に100質量%である。
【0056】
本発明のイソシアネートプレポリマーの調製に使用される成分(b)が成分(b)の合計質量に対して、50質量%を超えるポリエーテロールを含む場合、超分岐ポリエステル(c2)の含有量は、超分岐ポリマー(c)の合計質量に対して、10質量%を超えるのが好ましく、特に好ましくは30質量%を超え、極めて好ましくは60質量%を超え、特に100質量%である。
【0057】
本発明の超分岐ポリマー(c)のイソシアネートに存在する量は、ポリイソシアネート(a)、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)、超分岐ポリマー(c)、適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)の合計質量に対して、0.001〜50質量%であるのが好ましく、特に好ましくは0.01〜30質量%であり、特に0.1〜10質量%である。
【0058】
適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)を使用することも可能である。連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)を、ポリオールの添加前、ポリオールの添加と共に、又はポリオールの添加後に添加することが可能である。使用され得る連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)は、そのモル質量が400g/モル未満、特に好ましくは60〜350g/モルの範囲である物質であり、且つこの場合の連鎖延長剤は、イソシアネートに対して反応性の2個の水素原子を有し、そして架橋剤は、イソシアネートに対して反応性の3個の水素原子を有する。これらを、個々に、又は混合物の形態で使用することが可能である。連鎖延長剤を使用する場合、1,3−及び1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及び1,3−ブタンジオールが特に好ましい。
【0059】
連鎖延長剤、架橋剤、又はこれらの混合物を使用する場合、これらの有利に使用される量は、ポリイソシアネート(a)、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)、超分岐ポリマー(c)、及び連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)の質量に対して、1〜60質量%であり、好ましくは1.5〜50質量%であり、特に2〜40質量%である。
【0060】
イソシアネートプレポリマーは、上述したポリイソシアネート(a)を、例えば30〜100℃、好ましくは約80℃の温度条件下、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)及び超分岐ポリマー(c)、更に適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)と反応させて、プレポリマーを形成することによって得られる。この場合、ポリイソシアネート(a)、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)、超分岐ポリマー(c)、適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)を、イソシアネートに対して反応性の基に対するイソシアネート基の割合を1.5:1〜15:1の範囲、好ましくは1.8:1〜8:1の範囲にて相互に混合するのが好ましい。プレポリマーを調製する場合、ポリイソシアネート及びイソシアネートに対して反応性の基を有する化合物、並びに連鎖延長剤及び/又は架橋剤を、これにより調製されるプレポリマーにおけるNCO含有量が、これにより調製されるイソシアネートプレポリマーの合計質量に対して、1.0〜20質量%の範囲、特に2〜15質量%の範囲となるように相互に混合するのが特に好ましい。その後、揮発性イソシアネートを、好ましくは薄膜蒸留によって除去可能であるのが好ましい。この場合のイソシアネートプレポリマーの粘度は、25℃にて1000〜3000mPa・sであるのが好ましい。トルエンジイソシアネートを基礎とする本発明のイソシアネートプレポリマーの粘度は、25℃にて1000〜1500mPa・sであるのが一般的であり、一方、ジフェニルメタンジイソシアネートを基礎とする本発明のイソシアネートプレポリマーの粘度は、25℃にて2000〜3000mPa・sであるのが一般的である。
【0061】
また、イソシアネート基を有するプレポリマーを、段階的に調製することも可能である。この場合、第1の工程では、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)及び超分岐ポリマー(c)、更に適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)をトルエン2,4−ジイソシアネート及び/又はトルエン2,6−ジイソシアネートと、NCO含有量が、これにより得られるプレポリマーに対して2〜5質量%となるまで反応させる。第2の工程では、これにより得られるプレポリマーを使用し、これを、ジフェニルメタンジイソシアネート系のイソシアネート又はその誘導体、例えばジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート及びジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、及び多数の環を有するジフェニルメタンジイソシアネートの同族体(ポリマーMDI)及び/又は室温液体の変性ジフェニルメタンジイソシアネート、特に、カルボジイミド基、ウレタン基、アロファネート基、イソシアネート基、尿素基、及び/又はビウレット基を介して変性されるジフェニルメタンジイソシアネートと、これにより調製されるプレポリマーのNCO含有量の値が上記の値に相当するまで混合する。この方法によって、モル質量が249g/モル未満であるモノマーのイソシアネートの含有量を低く維持することが可能である。これにより調製されるポリイソシアネートプレポリマーの粘度は、25℃にて2000〜3000mPa・sの範囲であるのが一般的である。
【0062】
バインダーに対する超分岐ポリマー(c)の添加の時点を所望のようにすることが可能である。例えば、超分岐ポリマー(c)を、イソシアネートプレポリマーの調製中にポリイソシアネート(a)と直接的に反応及び/又は混合することが可能であり、或いはその添加を、ポリイソシアネート(a)と、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)及び適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)と、の反応後まで遅らせることが可能である。
【0063】
超分岐ポリマーを含むイソシアネートプレポリマーと一緒にバインダーに添加され得る他の添加剤は、以下の添加剤、例えば界面活性剤、可塑剤、無機フィラー、例えば砂、カオリン、白亜、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、酸化安定剤、染料、及び顔料、安定剤、例えば加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤、無機及び/又は有機フィラー、乳化剤、難燃剤、酸化防止剤、接着促進剤、並びに強化剤である。
【0064】
モル質量が249g/モル未満である遊離の、モノマーのイソシアネートの含有量は、ポリウレタンバインダーの合計質量に対して、1質量%未満であるのが好ましく、特に好ましくは0.5質量%未満であり、特に0.1質量%未満である。
【0065】
層材料を製造する場合、1質量部のポリウレタンバインダーに対して、1〜20質量部、好ましくは3〜10質量部の量のプラスチック顆粒を、それ自体公知の方法で、適宜、以下に記載の助剤及び添加剤を添加し、例えばポジティブ混合器において混合する。
【0066】
混合物は、イソシアネートに対して反応性である他の化合物(b)及び連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)、更には超分岐ポリマー(c)を、2成分法として知られている方法において添加することにより硬化され得る。或いは、硬化は、単一成分法として知られている方法において、水に対して曝すことによってのみ行われ得る。硬化は、水に対して曝すことによってのみ行われるのが好ましく、大気水分により行われるのが特に好ましい。水を噴霧するか、或いは水蒸気処理によって、促進された硬化を達成することが可能である。本発明の層材料を単一成分法によって製造する場合、イソシアネート基を有するプレポリマーの調製に対して、連鎖延長剤又は架橋剤(d)を使用しないのが望ましい。
【0067】
バインダーを形成するための硬化法は、ポリウレタン化学で周知の触媒、例えば第3級アミンと有機金属化合物との混合物によって促進され得る。使用される触媒の例示は、アミジン、例えば2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、第3級アミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アザビシクロ[3.3.0]オクタン、好ましくは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアルカノールアミン化合物、例えばトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン及びジメチルエタノールアミンである。使用され得る他の触媒は、有機金属化合物、好ましくは有機スズ化合物、例えば有機カルボン酸の第一スズ塩、例えば第一スズアセテート、第一スズオクタノエート、第一スズエチルヘキサノエート及び第一スズラウレート、そして有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート及びジオクチルスズジアセテート、そして更にビスマスカルボキシレート、例えばビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス2−エチルヘキサノエート及びビスマスオクタノエート、又はこれらの混合物である。有機金属化合物は、単独で、又は塩基性アミンとの組み合わせで使用され得る。触媒として、ジモルフィノジメチルエーテルを単独で、又は混合物にて使用するのが好ましい。
【0068】
本発明の場合、触媒の開始時は、いかなる限定を受けない。例えば、バインダーは、この段階で、触媒を含んでいても良く、或いは触媒は、プラスチック顆粒との混合中に添加されても良い。触媒がジモルフィノジメチルエーテルである場合、バインダーは、触媒をこの段階で含むのが好ましい。
【0069】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)及び超分岐ポリマー(c)、適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)の質量に対して、0.001〜5質量%、特に0.05〜2質量%の触媒又は触媒の組み合わせを添加するのが望ましい。
【0070】
他の、好ましい実施形態において、本発明の層材料を製造する場合、プラスチック顆粒を、第1の工程において、使用されるべき少なくとも一部の超分岐ポリマー(c)、適宜、イソシアネートに対して反応性の少なくとも一部の化合物(b)、及び/又は連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)、更に適宜、他の添加剤と、公知の方法で、好ましくは機械的な混合器中において混合する。第1の工程において、超分岐ポリマー(c)及び適宜、他の添加剤だけをプラスチック顆粒と混合することが好ましい。
【0071】
その後、第2の工程において、かかる混合物に対して、成分(a)及び残量の、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)、超分岐ポリマー(c)、及び連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)を、好ましくはイソシアネートプレポリマーの形態で添加し、そして同様に混合する。
【0072】
本発明により製造される弾性のシート様構造物における物理特性、例えば弾性、硬度、密度、及び水透過性は、プラスチック顆粒の寸法、形状、及び性質、バインダー含有量、バインダーにおける平均NCO官能価、バインダーにおけるイソシアネート基の含有量、圧縮度合い、並びに硬化条件の変更によって広範囲内にて変更され得る。
【0073】
本発明の層材料は、通常、被覆されるべき各々の支持体、例えばコンクリート、スクリード、又はアスファルトに対して、特定の利用分野において2〜30mmの範囲であるのが一般的である所望の層厚にて、ポリウレタンバインダー及びプラスチック顆粒からなる混合物を散布、分配及び圧縮する場合に床敷物及び路面の表面材の製造で知られている工具及び機械類を使用することによって付形される。しかしながら、付形は、適宜、加熱された金型又はプレスにおいて行うことが可能であり、そこで、シート様構造物を、シートの形で硬化した後に得て、その後、これを、特定のカバーの製造の場合にそれ自体公知の方法に置く。硬化を促進させるために、水を、特に好ましくは水蒸気の形で、加熱された金型又はプレスでの付形及び硬化中に添加するのが好ましい。
【0074】
本発明の層材料は、未発泡であるのが好ましく、その密度は、0.2〜2.0g/cm3である。更に本発明の層材料は、高められた耐久性及び耐久能力を有し、且つこれは、特に、増大された引張強さで認められる。従って、本発明の層材料は、特に、遊技場、競技トラック、スポーツ表面、スポーツホールのカバーとして適当である。
【実施例】
【0075】
以下に、本発明を比較実施例によって説明する。
【0076】
本願実施例1〜3、比較例1及び2
層材料を、表1に従って製造した。これは、第1の工程において、ポリプロピレン容器中で、ゴム粒子を室温条件下にVollrath撹拌器(撹拌器の直径;8.5cm、撹拌器の速度:1分間当たり750回転(750rpm)、撹拌時間:2分)を使用して、存在する場合には超分岐ポリオールと、ゴム粒子が均一に湿潤されるまで混合することによって行われた。次に、第2の工程において、イソシアネートプレポリマーを添加し、ゴム粒子がバインダーで均一に覆われるまで更に混合した。その後、混合物を、20×20×1.5cmの寸法を有する木枠に充填し、約1.5cmの厚さに圧縮した。これにより得られた層材料を、室温及び50%の相対湿度の条件下で7日間に亘って硬化し、そしてドイツ工業規格53504により引張強さ及び破断点伸びを測定した。
【0077】
【表1】

【0078】
使用された開始材料は、以下の通りであった:
バインダー:イソシアネートプレポリマーは、36質量部の、Elastgran社製のLupranat(登録商標)MI、すなわち33.2%のNCO含有量のジフェニルメタンジイソシアネート、2質量部の、Elastgran社製のLupranat(登録商標)MM103、すなわち29.5質量%のNCO含有量の変性ジフェニルメタンジイソシアネート、及び62質量部のLupranol(登録商標)1000、すなわち56mgKOH/gのOH価を有するプロピレンオキシドを基礎とするポリエーテロールから構成されていた。イソシアネートプレポリマーにおけるNCO含有量は、10%であった。
【0079】
ゴム1:Krause社(ドルトムント)製のゴム顆粒、SBR/EPDMを基礎とする技術的リサイクル等級ゴム(technical recycling-grade rubber)。
【0080】
ゴム2:RTW社(Bindlach)製のゴム顆粒、廃棄タイヤから得られた顆粒(15%の自動車用タイヤ、85%のトラック用タイヤ)。
【0081】
HP1:ヒドロキシ基、カルボキシ基、ポリエーテル基、及び分岐アルキル基を官能要素として含み、以下の規定により調製された超分岐ポリエステル:すなわち、
モル質量が約550g/モルであるポリイソブチレンと無水マレイン酸からなる250gの付加体(PIBSA550)、12個のエチレンオキシド単位でランダムにグラフトされた、トリメチロールプロパンを基礎とする304gのポリエーテロール、及び0.02gのジブチルスズジラウレートを、撹拌器、内部温度計、及び真空接続の傾斜凝縮器(inclined condenser)を具備した2Lのガラスフラスコに秤量し、そして4ミルバールの圧力条件下で、撹拌しながら160℃に加熱した。約1時間内にて、温度を180℃までゆっくり上昇させた。反応中に生成された水を蒸留によって除去し、そして気泡の生成に起因して、実験用混合物において一部の発泡が生じた。酸価の低減を、これにより達成される値が10mgKOH/g未満となるまで定期的にモニターした。その後、生成物を冷却し、そして分析した。
【0082】
分析:
酸価: 6mgKOH/g
OH価: 87mgKOH/g
GPC: Mn=990g/モル、Mw=8900g/モル(溶出液:THF)。
【0083】
HP2:ヒドロキシ基、カルボキシ基、ポリエーテル基、及び分岐アルキル基を官能要素として含み、以下の規定により調製された超分岐ポリエステル:すなわち、
593.3gのアルケニルコハク酸(Pentasize 8)、3個のエチレンオキシド単位でランダムにグラフトされたトリメチロールプロパンを基礎とする459gのポリエーテロール、及び0.06gのジブチルスズジラウレートを、撹拌器、内部温度計、及び真空接続の傾斜凝縮器を具備した4Lのガラスフラスコに秤量し、そして撹拌しながら180℃にゆっくり加熱した。この場合に40ミリバールの真空をゆっくり施し、その後、これにより生成した気泡により、混合物の一部の発泡が生じた。反応混合物を180℃で0.5時間撹拌し、そして反応で生成された水を蒸留によって除去した。
【0084】
酸価の低減を、これにより到達する値が約75.1mgKOH/gとなるまで定期的に確認した。その後、生成物を冷却し、そして分析した。
【0085】
分析:
酸価: 75.1mgKOH/g
OH価: 80.8mgKOH/g
GPC: Mn=1700g/モル、Mw=4700g/モル(溶出液:DMAC)。
【0086】
超分岐ポリマーの分析
ポリマーは、検出器としての屈折計を使用するゲル透過クロマトグラフィによって分析された。テトラヒドロフラン(THF)又はジメチルアセトアミド(DMAC)を移動相として使用し、そしてポリメチルメタクリレート(PMMA)を分子量測定の標準として使用した。
【0087】
ガラス転移温度Tgは、第2の加熱曲線を評価する示差走査熱量測定(DSC)によって測定された。
【0088】
酸価の測定及びOH価の測定は、ドイツ工業規格53240の第2部に従った。
【0089】
表2は、これにより得られる層材料の機械的特性を示している。
【0090】
【表2】

【0091】
表2により、引張強さ及び伸びは、超分岐ポリマーの添加により増大されることを示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック顆粒を含む弾性層材料の製造に用いるポリウレタンバインダーであって、
ポリイソシアネート(a)を、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)、超分岐ポリマー(c)、更に適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)と反応させるか又は混合することにより得られ、イソシアネート基を有するプレポリマーを含み、且つ過剰のポリイソシアネート(a)を使用し、25℃でのバインダーの粘度が500〜4000mPa・sであることを特徴とするポリウレタンバインダー。
【請求項2】
超分岐ポリマー(c)及びイソシアネート基を有するプレポリマーが物理的混合物の形態で存在するか、或いは超分岐ポリマー(c)が、イソシアネート基を有するプレポリマーのポリマーマトリックスに対して共有結合を介して結合する請求項1に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項3】
イソシアネートプレポリマーにおけるNCO含有量が、イソシアネートプレポリマーの合計質量に対して、1.0〜20質量%の範囲である請求項1又は2に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項4】
バインダーの合計質量に対して、0.001〜50質量%の超分岐ポリマー(c)がポリウレタンバインダーに存在する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項5】
超分岐ポリマー(c)の質量平均モル質量が500g/モルを超え、その分岐度が0.05以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項6】
超分岐ポリマー(c)が、エーテル、アミン、エステル、カーボネート、アミド、ウレタン又は尿素或いはこれらの混合形態、例えばエスエル−アミド、アミド−アミン、エステル−カーボネート及び尿素−ウレタンを基礎とする超分岐ポリマーである請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項7】
超分岐ポリマー(c)が、疎水性相互作用を生じさせる分子領域を含み、及び/又はフリーラジカル重合に対して反応性の基を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項8】
超分岐ポリマーが、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体と多官能性アルコールとのエステル化によって得られる超分岐ポリエステルd1)である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項9】
超分岐ポリマー(c)が、6個を超える炭素原子を有する疎水性単位を含む超分岐ポリマーである請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項10】
脂肪酸基又は脂肪アルコール基を疎水性単位として含む請求項9に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項11】
超分岐ポリマー(c)が、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体と多官能性アルコールとのエステル化によって得られる超分岐ポリエステル(c2)であり、且つα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が、エステル化前又はエステル化後に、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む疎水化剤によって疎水化される請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項12】
疎水化剤が、直鎖又は分岐のポリイソブチレンである請求項11に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項13】
少なくとも2個の反応性水素原子を有する化合物(b)が、成分(b)の合計質量に対して、少なくとも50質量%のポリエステロールを含み、超分岐ポリマー(c)が、成分(c)の合計質量に対して、少なくとも5質量%の超分岐ポリエステル(c1)を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項14】
少なくとも2個の反応性水素原子を有する少なくとも1種の化合物(b)が、成分(b)の合計質量に対して、少なくとも50質量%のポリエーテロールを含み、超分岐ポリマー(c)が、成分(c)の合計質量に対して、少なくとも10質量%の超分岐ポリエステル(c2)を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項15】
モル質量がバインダーにおいて249g/モル未満であるイソシアネートの含有量が、ポリウレタンバインダーの合計質量に対して、1質量%未満である請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項16】
イソシアネートプレポリマーにおけるNCO含有量が、イソシアネート基を含むプレポリマーの質量に対して、2〜18質量%である請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリウレタンバインダー。
【請求項17】
弾性層材料の製造方法であって、
請求項1〜16のいずれか1項に記載のバインダーを、プラスチック顆粒及び適宜、触媒及び他の添加剤と混合し、そして硬化させて、層材料を形成することを特徴とする弾性層材料の製造方法。
【請求項18】
プラスチック顆粒を、ポリイソシアネート(a)、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)、超分岐ポリマー(c)、適宜、連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)、更に適宜、他の添加剤と混合することにより弾性層材料を製造する方法であって、
第1の工程において、プラスチック顆粒を、少なくとも一部の超分岐ポリマー(c)と混合し、第2の工程において、かかる混合物にイソシアネートプレポリマー(a)を添加し、そして混合することを特徴とする弾性層材料の製造方法。
【請求項19】
第1の工程において、超分岐ポリマー(c)に加えて、イソシアネートに対して反応性の少なくとも一部の化合物(b)、及び/又は連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)、更に適宜、他の添加剤をプラスチック顆粒と混合する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2の工程において、イソシアネートプレポリマー(a)、イソシアネートに対して反応性の少なくとも一部の化合物(b)、及び/又は連鎖延長剤及び/又は架橋剤(d)を、イソシアネートプレポリマーの形態で添加する請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
硬化が、水に曝しつつ行われる請求項17〜20のいずれか1項に記載の弾性層材料の製造方法。
【請求項22】
使用されるプラスチック顆粒が、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソブテン−イソプレンゴム(IIR)、EPDM及び天然ゴム(NR)、又はこれらの混合物を基礎とするゴム顆粒を含み、且つゴム顆粒が、硫黄又は過酸化物を基礎とする加硫促進剤及び/又は架橋剤を用いて加硫される請求項17〜21のいずれか1項に記載の弾性層材料の製造方法。
【請求項23】
請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法により得られる弾性層材料。
【請求項24】
請求項23に記載の弾性層材料を、遊技場、競技トラック及びスポーツホールのスポーツ用表面カバー、子供用遊技場、並びに歩行者用道路の床敷物として使用する方法。

【公表番号】特表2010−509480(P2010−509480A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536711(P2009−536711)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062187
【国際公開番号】WO2008/058919
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】