説明

弾性不織布及びこれを用いた繊維製品

【課題】優れた弾性、適度な伸長時強度、優れたアンチブロッキング性や優れた風合を有し、かつ比較的安価で繊維製品用途に好適な弾性不織布及びこれを用いた繊維製品を提供する。
【解決手段】エラストマー長繊維と非エラストマー繊維とを、エラストマー長繊維/非エラストマー繊維=50/50〜95/5の重量比で含有する不織布であって、不織布の50%伸長時の伸長回復率が70%以上、かつ重ね合わせた2枚の不織布を剥がす時の強度が不織布の50%伸長時強度以下である弾性不織布及びこれを用いた繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性不織布及びこれを用いた繊維製品に関する。更に詳しくは優れた弾性、適度な伸長時強度、優れたアンチブロッキング性、優れた風合を有し、かつ比較的安価で繊維製品としての用途に好適な弾性不織布及びこれを用いた繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、身体へのフィット性を向上させる目的で、弾性不織布が好んで用いられるようになってきた。中でも、弾性不織布の持つ適度なフィット感、弾性、伸縮性は、使い捨ておむつ、衣類、キャップ、包帯、テープ等に好適である。不織布にこの様な性能を持たせるために、熱可塑性エラストマーを原材料として用いるケースが多いが、大多数の熱可塑性エラストマーは、優れた弾性を有する反面、弾性が向上するに従い粘着性能も強くなるという性質を有する。従って、弾性能の高い熱可塑性エラストマーを用いた弾性不織布は、衣服との摩擦により毛羽立ち、ズレ、剥がれ等が起こるため、衣服の下で皮膚に貼りつけて使用する用途に向かなかったり、風合いが低下する恐れがあるという欠点を有している。
また、該弾性不織布を製造したり、保管したりする際、特に夏場の保管時に高温と積載荷重によって繊維間に膠着が発生しやすくなるため、ロール状に捲かれた弾性不織布の繰出し作業において、弾性不織布に過剰な張力が必要となり、弾性不織布が伸びきってしまったり、破断を引起すという問題が発生する。そのため、粘着性のない、すなわちアンチブロッキング性に優れた弾性不織布が望まれるようになっている。
【0003】
アンチブロッキング性を向上させるための手法として、熱可塑性エラストマーに粘着性の弱いポリオレフィンを樹脂混合した後、紡糸を実施し、弾性不織布を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法で得られた弾性不織布は、不織布表面にポリオレフィン成分が十分に存在していないので、十分なアンチブロッキング性が得られないうえ、弾性の劣るポリオレフィンを樹脂混合しており、著しく弾性を低下させてしまうために、前記用途を満足できる弾性を得ることができなかった。
【0004】
また、熱可塑性エラストマーを用いて得たエラストマー繊維とエラストマー性を有さない熱可塑性樹脂を用いて得た非エラストマー繊維とを混合した混繊不織布が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これは、単にこれらの繊維同士を混合するだけの発明であり、弾性とアンチブロッキング性という両性能に優れたものを得るという技術思想が欠落している。実際、この発明の具体的事例である実施例1及び実施例2を考慮しても、混繊比率がエラストマー繊維/非エラストマー繊維=30重量%/70重量%の混繊不織布では、非エラストマー繊維が多く、また混繊不織布に弾性を付与するような処理もされていないので、優れた弾性不織布を得る事はできない。
【特許文献1】特公平7−81230号公報
【特許文献2】特開2002−242069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、優れた弾性、適度な伸長時強度、優れたアンチブロッキング性や優れた風合を有し、かつ比較的安価で繊維製品用途に好適な弾性不織布及びこれを用いた繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、エラストマー長繊維と非エラストマー繊維とを、エラストマー長繊維/非エラストマー繊維=50/50〜95/5の重量比で含有する不織布であって、不織布の50%伸長時の伸長回復率が70%以上、かつ重ね合わせた2枚の不織布を剥がす時の強度が不織布の50%伸長時強度以下である弾性不織布及びこれを用いた繊維製品によって前記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
本発明は、以下によって構成される。
(1)エラストマー長繊維と非エラストマー繊維とを、エラストマー長繊維/非エラストマー繊維=50/50〜95/5の重量比で含有する不織布であって、不織布の50%伸長時の伸長回復率が70%以上、かつ重ね合わせた2枚の不織布を剥がす時の強度が不織布の50%伸長時強度以下であることを特徴とする弾性不織布。
(2)エラストマー長繊維がメルトブロー法によって製造された前記(1)項記載の弾性不織布。
(3)エラストマー長繊維がポリスチレンエラストマー樹脂及びポリオレフィンエラストマー樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる前記(1)項または(2)項記載の弾性不織布。
(4)非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)が1〜20μm、エラストマー長繊維の平均繊維径(Bd)が5〜40μmであり、かつAd≦Bdの関係にある前記(1)〜(3)項のいずれか1項記載の弾性不織布。
(5)前記(1)〜(4)項のいずれか1項記載の弾性不織布に、前記弾性不織布以外の不織布、フィルム、ウェブ、織物、編み物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層してなる積層弾性不織布。
(6)前記(1)〜(4)項のいずれか1項記載の弾性不織布または前記(5)項記載の積層弾性不織布を用いた繊維製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弾性不織布や積層弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を有し、特に適度なフィット感、弾性、伸縮性が求められる使い捨ておむつ、衣類、キャップ、包帯、テープを始め各種繊維製品に好適に使用可能である。また、エラストマー樹脂と非エラストマー樹脂の選択によって、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を有しながら、風合に優れ、更に燃焼時の有害ガス発生がなく、かつリサイクル可能な弾性不織布や積層弾性不織布を得ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の弾性不織布は、エラストマー長繊維と非エラストマー繊維とを、エラストマー長繊維/非エラストマー繊維=50/50〜95/5の重量比で含有する不織布であって、不織布の50%伸長時の伸長回復率が70%以上、かつ重ね合わせた2枚の不織布を剥がす時の強度が不織布の50%伸長時強度以下のものである。
【0010】
本発明を構成するエラストマー長繊維は、エラストマー樹脂を主成分とする樹脂組成物から得られる。主成分とは最も多い成分を言う。
エラストマー樹脂とは、常温(20〜30℃)では加硫ゴムと同様な弾性体の性質を持ち(分子中のソフトセグメントによる)、高温では通常の熱可塑性樹脂と同様に既存の繊維成形機をそのまま使って成形することができる(分子中のハードセグメントによる)高分子材料である。具体的には、該樹脂によって成形されたフィルムが常温(20〜30℃)において25%以上伸長可能で、25%伸長時の伸長回復率が85%以上である樹脂を意味する。
このようなエラストマー樹脂としては、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーを挙げることができる。中でも、成形性、耐薬品性、再生可能性、環境保全性(燃焼時の有害物質無)等の観点から、ポリスチレンエラストマーやポリオレフィンエラストマーが好ましい。
【0011】
前記ポリスチレンエラストマーは、芳香族ビニル化合物と、他のコモノマーとを共重合体させることによって得ることができる。他のコモノマーには、芳香族ビニル化合物と共重合が可能なモノマーを使用でき、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンや、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸とメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコールとからなるエステル化合物等を挙げることができる。
【0012】
中でも、前記ポリスチレンエラストマーとしては、主として芳香族ビニル化合物から構成される重合体ブロック(a)を少なくとも1個、主として共役ジエン化合物から構成される重合体ブロック(b)を少なくとも1個有し、かつ共役ジエン部分に由来する二重結合が水素により80%以上飽和されたスチレンブロック共重合体、または芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体が好ましい。尚、主としてとは、重合体ブロックを構成する化合物が、重合体ブロックの少なくとも50重量%を占めることを示す。
【0013】
該スチレンブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン等が例示され、特にスチレンが好ましい。これらビニル芳香族化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。また、該スチレンブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が例示され、特にブタジエン及びイソプレンが好ましい。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。また、該スチレンブロック共重合体は、化合物の安定性、紡糸性等の点から共役ジエン部分に由来する二重結合の80%以上が水素添加されていることが好ましい。
このようなスチレンブロック共重合体として、具体的には、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)等のブロック共重合体が挙げられる。商品名の具体例として、KRATON G(商品名、クレイトンポリマージャパン(株)製)、SEPTON(商品名、クラレ(株)製)、タフテック(商品名、旭化成(株)製)、JSR DYNARON(商品名、JSR(株)製)等が挙げられる。
【0014】
前記ポリスチレンエラストマーのランダム共重合体は、該ランダム共重合体を構成する共役ジエン部分に由来する二重結合が水素により80%以上飽和された水添スチレン−ジエン共重合体であることが望ましい。
該水添スチレン−ジエン共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,2−ジメチルブタジエン、3−エチルブタジエンが挙げられる。好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンであり、更に好ましくは1,3−ブタジエンである。また、該水添スチレン−ジエン共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレンであり、更に好ましくはスチレンである。
該水添スチレン−ジエン共重合体は、少なくとも1種の共役ジエン化合物と3〜50重量%の芳香族ビニル化合物との共重合体であって、分子量分布(Mw/Mn=重量平均分子量/数平均分子量)が10以下であり、かつ該水添スチレン−ジエン共重合体を構成するジエン部分のビニル結合含有率が10〜90重量%である共重合体のオレフィン性不飽和結合の少なくとも80%が水素添加された共重合体が好ましい。
商品名の具体例としては、JSR DYNARON(商品名、JSR(株)製)等が挙げられる。
【0015】
前記ポリオレフィンエラストマーとしては、オレフィンモノマーから構成され、モノマーがランダムに配列したランダム共重合体や、ハードセグメントとソフトセグメントとからなるブロック共重合体が例示される。
【0016】
前記ポリオレフィンエラストマーのブロック共重合体としては、具体的には主に水添ジエン共重合体から構成されるものが挙げられる。水添ジエン共重合体としては、1,4−結合を多く含む共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(c)と、1,2−結合及び3,4−結合を多く含む共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(d)とからなり、ジエン共重合体中の共役ジエン部分に由来する二重結合が飽和された水添ジエン共重合体が好ましい。尚、ここでいう1,4−結合を多く含む共役ジエン化合物とは、1,2−結合含量と3,4−結合含量と比較して、1,4結合含量が最も多いことを示す。また、1,2−結合及び3,4−結合を多く含む共役ジエン化合物とは、1,4−結合含量と比較して、1,2−結合含量及び3,4−結合含量が最も多いことを示す。尚、共役ジエン化合物を主体とするとは、各重合体ブロック中で共役ジエン化合物の含量が最も多いことを示す。
【0017】
水添ジエン共重合体を構成する重合体ブロック(c)中の1,4−結合含量は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。また、水添ジエン共重合体を構成する重合体ブロック(c)の含量は、1〜99重量%が好ましく、5〜65重量%がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。また、水添ジエン共重合体を構成する重合体ブロック(d)中の1,2−結合含量及び3,4−結合含量は、25重量%を超えることが好ましく、30重量%以上がより好ましい。また、前記水添ジエン共重合体中の重合体ブロック(d)の含量は、99〜1重量%が好ましく、95〜35重量%がより好ましく、50〜95重量%が最も好ましい。
【0018】
水添ジエン共重合体の共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が例示されるが、工業的に利用でき、また物性の優れた水添ジエン共重合体を得るためには、共役ジエン化合物として、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンを用いることが好ましい。また、水添ジエン共重合体が、重合体ブロック(c)として、1,2−結合含量が25重量%以下であるポリブタジエンと、共役ジエン化合物を主体とする重合体であって、水添ジエン共重合体を構成する共役ジエン部分の1,2−結合含量及び3,4−結合含量が50重量%以上である重合体ブロック(d)とからなるブロック共重合体であり、例えば、(c)−(d)ブロック共重合体、(c)−(d)−(c)ブロック共重合体、または前記ブロック共重合体単位がカップリング剤残基を介して延長または分岐されたブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体に水素添加を行い、共役ジエン部分に由来する二重結合が70%以上飽和された、数平均分子量が40000〜700000である水添ジエン共重合体である。中でも、CEBCと呼ばれるオレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体を用いて製造した繊維は、弾性に優れるため特に好ましい。CEBCとしては、具体的には、JSR DYNARON(商品名、JSR(株)製)等が挙げられる。また、該CEBCはフェノキシイミン錯体触媒によって得られたものでも構わない。
【0019】
本発明では、水添ジエン共重合体の重合体ブロック(d)が、共役ジエン化合物を70重量%以上含有する芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体であって、共役ジエン化合物部分のビニル結合含量が25〜70重量%であり、ブロック構造が(c)−(d−c)n、または(c−d)m(ただし、nは1以上、mは2以上の整数である)で表される直鎖または分岐状のブロック共重合体である水添ジエン共重合体も好ましく利用できる。尚、前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられ、特に、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0020】
前記ポリオレフィンエラストマーのランダム共重合体とは、2重結合を持つ炭化水素で、CnH2n(nは2以上の整数)で示されるエチレン、プロピレン、ブテン等のモノマーと、これら以外の少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体であり、特にモノマーがランダムに配列したランダム共重合体である。
本発明においては、密度が0.850〜0.920g/cm3の範囲にあるランダム共重合体が好ましい。密度は、弾性に影響を及ぼし、密度が0.920g/cm3を大きく超えると、得られる不織布の弾性は極端に低下する傾向にある。
【0021】
該ランダム共重合体は、繊維加工した後の風合と弾性の点から、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体またはプロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。更に、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとからなる共重合体が好ましく、例えばプロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等との共重合体が挙げられる。前記α−オレフィンの中では、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独または2種以上を組合せて用いることができる。これらを組合わせたエチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。また本発明に用いられるエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体またはプロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、曳糸性の点から1.5〜4であることが好ましい。具体的には、エンゲージ(商品名、デュポンダウエラストマージャパン(株)製)、タフマー(商品名、三井化学(株)製)が例示される。また本発明で用いられるポリオレフィン共重合体はメタロセン触媒によって製造された共重合体であっても良い。尚、α−オレフィンに架橋用ジエンモノマーを加えた三元共重合体も含まれ、具体的には、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴムが例示される。
【0022】
前記ポリオレフィンエラストマーとしては、この他に、エラストメリックポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体が好適に使用することができる。
エラストメリックポリプロピレンは、重合体鎖が結晶性のアイソタクチックポリプロピレンまたはシンジオタクチックポリプロピレンと、非晶性のアタクチックポリプロピレンとから構成されるステレオブロック構造をとり、アイソタクチックポリプロピレンまたはシンジオタクチックポリプロピレンをハードセグメントとし、アタクチックポリプロピレンをソフトセグメントとして共重合した構造物である。尚、本発明では、例えば米国特許第4335225号明細書、同第4522982号明細書、同第5188768号明細書に記載されているエラストメリックポリプロピレンが使用できる。これらは単独重合体及び共重合体の両方を意味する。共重合体はプロピレン単位に加えて、分子中にプロピレン単位以外の他のオレフィン単位、例えばエチレン、ブチレン、ペンテンまたはヘキセン単位を含有しても良い。これらは鎖構造中に実質的に立体規則性ブロック配列を有し、例えば、重合体鎖中に選択的に配列されたアイソタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレン序列のブロックよりなる。
【0023】
プロピレン−エチレンブロック共重合体とは、ポリプロピレンとポリ(エチレン−co−プロピレン)とがブレンドの状態で存在しているのではなく、国際公開第00/23489号パンフレットに示されるような、ポリプロピレンセグメントとポリ(エチレン−co−プロピレン)とが化学的に結合した真のブロック共重合体である。具体的には、チタン及びハロゲンまたはチタン、マグネシウム及びハロゲンからなる固体触媒成分とトリエチルアルミニウム等の有機金属化合物からなるオレフィン重合触媒の存在下に、必要に応じて電子供与性化合物を添加して、重合反応器、好ましくは特開平9−87343号公報に例示してあるような管型重合反応器を使用して、好ましくは液相法により短時間で重合領域(i)にて所定量のポリプロピレンセグメントを合成した後、直ちに、短時間で後流にある重合領域(ii)にて所定量のポリ(エチレン−co−プロピレン)セグメントを合成することにより、ポリプロピレンセグメントとポリ(エチレン−co−プロピレン)セグメントが化学的に結合(共有結合)したポリプロピレン−b−ポリ(エチレン−co−プロピレン)を含むプロピレン−エチレンブロック共重合体が製造できる。このようにして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)が10万以上であり、ポリ(エチレン−co−プロピレン)セグメント含有量が5〜100重量%未満であり、かつ全エチレン含有量が2〜95重量%である。
【0024】
前記ポリエステルエラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステルブロック共重合体が挙げられる。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸や、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸や、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体等から選ばれた少なくとも1種のジカルボン酸と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールや、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、及びこれらのエステル形成性誘導体等から選ばれた少なくとも1種のジオール成分、及び平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等から選ばれた少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)グリコールから構成される三元共重合体である。
【0025】
前記ポリアミドエラストマーとしては、ナイロンをハードセグメントとし、ポリエステルまたはポリオールをソフトセグメントとして共重合した構造物が挙げられる。具体的にはナイロン12−ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体が例示される。
【0026】
前記ポリウレタンエラストマーとしては、通常の溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)の存在または不存在下に、数平均分子量1000 〜6000 の末端に水酸基を有するポリエーテル及び/またはポリエステルと、有機ジイソシアネートを主成分とするポリイソシアネートとを反応させた両末端がイソシアネート基であるプレポリマーに、ジアミンを主成分とするポリアミンにより鎖延長したポリウレタンエラストマーが代表例として例示される。
【0027】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前述したエラストマー樹脂に対して、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、ゴム等の柔軟性付与剤、その他の各種改良剤等も必要に応じて配合しても良い。
【0028】
本発明を構成するエラストマー長繊維は、前述したエラストマー樹脂を主成分とする樹脂組成物を長繊維となるように紡糸したものであり、具体的には、繊維長300mmを超える繊維であることが望ましい。
【0029】
その様な長繊維を製造する方法としては、熱可塑性樹脂を高温高圧空気と共に噴射し開繊配列して不織布を製造する方法(例えばメルトブロー法)、熱可塑性樹脂を紡糸し、延伸、開繊、捕集及び絡合を行って不織布を形成する方法(例えばスパンボンド法)、熱可塑性樹脂の長繊維束を延伸し、捲縮付与後に開繊及び拡幅を行って不織布を製造する方法(例えばトウ開繊法)等を挙げることができる。
【0030】
中でも、生産性、製造コスト、生産の容易性、風合の点からメルトブロー法とスパンボンド法とが好ましい。メルトブロー法によって製造される不織布は、該不織布を構成する繊維の平均径が小さいため、良好な風合を有する。一方、スパンボンド法によって製造される不織布は、該不織布を構成する繊維が延伸された連続の長繊維であるため、不織布強力が強い。尚、これらによって得られる不織布には、必要に応じて界面活性剤等を用いて表面処理を施すことができる。
【0031】
本発明を構成する非エラストマー繊維とは、非エラストマー樹脂を主成分とする樹脂組成物から得られるものであり、得られる弾性不織布にアンチブロッキング性と優れた風合を付与できるものであれば特に限定されないが、該樹脂によって成形されたフィルムの25%伸長時の伸長回復率が85%未満、好ましくは80%未満であるものが好ましい。
【0032】
このような非エラストマー樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンを挙げることができる。中でも、ポリオレフィンは、得られる弾性不織布に、良好な風合と優れた滑り性を与えることができる上、コストと成形性の点から好ましい。ポリプロピレン及びポリエチレンが更に好ましい。
【0033】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、非エラストマー樹脂に対して、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、ゴム等の柔軟性付与剤、その他の各種改良剤等も必要に応じて配合しても良い。
【0034】
本発明を構成する非エラストマー繊維は、前述した非エラストマー樹脂を主成分とする樹脂組成物を繊維となるように紡糸したものである。
【0035】
その様な繊維を製造する方法としては、特に限定はなく、ステープルファイバーやチョップ等の短繊維を得る方法、並びにメルトブロー法、スパンボンド法及びトウ開繊法等の長繊維を得る方法を例示できるが、風合いの点からはメルトブロー法、強度の点からはスパンボンド法が望ましい。
【0036】
本発明の弾性不織布は、エラストマー長繊維と非エラストマー繊維とを、エラストマー長繊維/非エラストマー繊維=50/50〜95/5の重量比で含有する不織布である。該重量比は、50/50〜90/10が好ましく、60/40〜90/10が更に好ましい。エラストマー長繊維の重量比が上記範囲より少ないと、得られる不織布の弾性が不十分となり、上記範囲より多いと、得られる不織布のアンチブロッキング性が低下し粘着しやすくなる。
【0037】
本発明の弾性不織布においては、非エラストマー繊維は、弾性不織布にアンチブロッキング性と優れた風合を付与するためにエラストマー繊維に混合される。エラストマー長繊維に非エラストマー繊維を混合させる方法には特に限定はなく、従来公知公用の方法を使用することができる。例えばエラストマー長繊維をメルトブロー法で製造する工程で、捕集コンベアーネット上にエラストマー長繊維を吹き付ける時に非エラストマーの短繊維,長繊維,分割繊維等を供給し混合する方法が例示される。また、短繊維や長繊維のウェブを形成する際に、メルトブロー法で製造されたエラストマー長繊維を吹き付けてもよい。
【0038】
本発明の弾性不織布を構成する非エラストマー繊維がメルトブロー法による長繊維の場合は、例えば米国特許第3981650号明細書に記載された1つの紡糸口金に異種の樹脂が流れ出す紡糸孔が交互に一列で並んだ構造の紡糸口金を使用することができる。得られるウェブではエラストマー長繊維と非エラストマー長繊維がより均一に混合される。また、エラストマー樹脂用の紡糸口金と非エラストマー樹脂用の紡糸口金を併用し、それぞれの紡糸口金で得られるエラストマー長繊維ウェブと非エラストマー長繊維ウェブとを積層してもよい。更に、この積層物にニードルパンチ等の処理をして、繊維の混合状態を改良することもできる。より均一な混合状態のウエブを得るには、米国特許第3981650号明細書に記載された紡糸口金を用いる方法が好ましい。
エラストマー樹脂と非エラストマー樹脂とに割り当てられる紡糸孔の数を変更したり、各樹脂の押し出し量を変更することにより、弾性不織布中の各繊維の含有量を変更することができる。また、それぞれの樹脂の紡糸孔当たり異なる押出量で紡糸したり孔径の異なる口金を用いて紡糸する事により、繊度の異なる混合物が得られる。
【0039】
本発明の弾性不織布を構成する非エラストマー繊維がスパンボンド法による長繊維の場合は、例えば図1に記載された1つの紡糸口金に異種の樹脂が流れ出す紡糸孔が千鳥配列に並んだ構造の紡糸口金を使用することができる。得られるウェブではエラストマー長繊維と非エラストマー長繊維がより均一に混合される。また、エラストマー樹脂用の紡糸口金と非エラストマー樹脂用の紡糸口金を併用し、それぞれの紡糸口金で得られるエラストマー長繊維ウェブと非エラストマー長繊維ウェブとを積層してもよい。更に、この積層物にニードルパンチ等の処理をして、繊維の混合状態を改良することもできる。
エラストマー樹脂と非エラストマー樹脂とに割り当てられる紡糸孔の数を変更したり、各樹脂の押し出し量を変更することにより、弾性不織布中の各繊維の含有量を変更することができる。また、それぞれの樹脂の紡糸孔当たり異なる押出量で紡糸したり孔径の異なる口金を用いて紡糸する事により、繊度の異なる混合物が得られる。
【0040】
本発明の弾性不織布を構成する繊維の成分は、少なくともエラストマー樹脂と非エラストマー樹脂の2成分以上であれば良く、種類の異なるエラストマー樹脂からなる長繊維及び/または種類の異なる非エラストマー繊維からなる繊維を加えた3成分、4成分、またはそれ以上でも構わないが製造コストまた生産性の点から2成分が有利である。
【0041】
本発明の弾性不織布を構成する長繊維または短繊維の断面形状は、丸断面または紡糸性を損なわない範囲で異型断面または中空断面であっても良い。長繊維または短繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、エラストマー長繊維の平均繊維経(Bd)が小さいと風合は良好となるが、満足する弾性と強度が得られにくい。一方エラストマー長繊維の平均繊維径(Bd)が大きいと満足する弾性と強度は得られるが風合が悪くなるため、エラストマー長繊維の平均繊維径(Bd)は5〜40μmが好ましい範囲である。更に風合の面から好ましくは、5〜30μmである。
本発明での非エラストマー繊維の主な役割は、アンチブロッキング性の向上である。非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)が小さいほど不織布中での非エラストマー繊維表面積率が多くなりエラストマー長繊維への被覆効果が増しアンチブロッキング性に効率良く働く。非エラストマー繊維の不織布全体に対する重量比が小さいほど通常はアンチブロッキング性は悪くなるが、非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)を小さくする事で重量比が少ないにも係わらず満足するアンチブロッキング性が可能となる。従って、非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)は生産性も考慮すると1〜20μmが好ましい範囲である。更に風合の面から好ましくは1〜10μmである。かつ両繊維の関係は、Ad≦Bdであることが好ましい。更にAdとBdの関係は、Bd/Ad≧2が好ましく、最も好ましくはBd/Ad≧5である。
【0042】
AdとBdがAd≦Bdの関係にあると、不織布の弾性、不織布強度及びアンチブロッキング性が共に満足される。特に夏場等の高温多湿時には、エラストマー長繊維はブロッキングしやすいが、Ad≦Bdの関係にあると、弾性不織布内に存在するエラストマー長繊維の接触がより点接触に近くなるためブロッキングが抑制される。また、ブロッキングを抑制するため、弾性不織布の少なくとも片面に本来の弾性機能を阻害することのない範囲で、非エラストマー繊維の細繊度薄層ウェッブを積層しても良い。
【0043】
本発明の弾性不織布は、50%伸長時の伸長回復率が70%以上である。より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。50%伸長時の伸長回復率が70%を大きく下回ると、得られる製品に対して十分な弾性能を付与させることができない。例えば、使い捨てパンツタイプオムツのウエスト部分に使用した場合、オムツをはかせる時に弾性不織布を使用したウエスト部分を伸長させなければならないが、その時点で伸長回復率が低い為にウエスト部分の回復が少なくなり、良好な締め付けができなくなりオムツのずれの原因となる。
【0044】
本発明は、弾性は良好であるが粘着性の強いエラストマー長繊維と、粘着性の弱い非エラストマー繊維を混合する事に特徴がある。従って、エラストマー長繊維の重量比(エラストマー長繊維/非エラストマー繊維)が増大する(非エラストマー繊維の重量比が減少する)と弾性(50%伸長時の伸長回復率)が増大し、非エラストマー繊維の重量比が増大する(エラストマー長繊維の重量比が減少する)とアンチブロッキング性が良好となる。
アンチブロッキング性は、重ね合わせた2枚の弾性不織布を剥がす時の強度(以下、剥離強度という)が小さい程優れる。通常、弾性不織布はロールに捲かれた状態で保管されており、必要時に該弾性不織布を該ロールから繰出して、製品へと加工されるが、その際、該弾性不織布の有する剥離強度が小さいと、該弾性不織布が塑性変形を起こすことのない範囲の張力で該弾性不織布を繰出すことができるため、操作性や得られる製品の品質を良好に保つことができる。
逆に剥離強度が大きいと、該弾性不織布を該ロールから繰出す際に、接触している該弾性不織布同士を引き離すのに強い力が必要となり、弾性不織布に破断が生じる。たとえ破断しなかったとしても、弾性不織布は伸長してしまいその後の加工ができなくなる。
【0045】
本発明の弾性不織布は、重ね合わせた2枚の不織布を剥がす時の強度が不織布の50%伸長時強度以下であり、その範囲のものを用いることにより、操作性や得られる製品の品質を良好に保つことができる。特に、夏場に保管された弾性不織布ロールは、高温と積載荷重によって繊維間に膠着が発生しやすくなり、ロールから弾性不織布を繰出す際の操作性が極端に悪くなるが、2枚の弾性不織布を剥がす時の強度が弾性不織布の50%伸長時強度以下のものを用いることにより、前記問題を発生させることなく、良質な製品を得ることができる。
【0046】
本発明の弾性不織布の目付は、特に限定されないが、5〜300g/m2、好ましくは10〜200g/m2、更に好ましくは20〜150g/m2である。また目的に応じて熱処理加工しても構わない。一般に、熱処理は使用されるエラストマー樹脂の軟化点と非エラストマー樹脂の軟化点の間の温度で行われる。熱処理の方法としては、加熱エンボスロールによる熱圧着法、加熱空気によるエアスルー法、赤外線ランプによる方法等の公知の方法が使用できる。また、ソニックボンド加工、ウォータージェット加工、ニードルパンチ加工、レジンボンド加工のいずれか一つ以上の加工を行っても構わない。
【0047】
本発明の弾性不織布は、不織布とした後に、不織布自体を延伸する処理を行うことも出来る。延伸処理を行った弾性不織布は、非エラストマー繊維は延伸により伸長するが、エラストマー長繊維は弾性により元の状態に復元できるため、非エラストマー繊維が弾性を阻害することなく、かつ嵩高で更に風合の優れた弾性不織布が得られ、特に好ましい態様である。
【0048】
具体的には、得られた弾性不織布に、20〜30℃で機械方向(MD)及び/または交差機械方向(CD)に1.2倍から破断しない程度の延伸、好ましくは1.5〜3.5倍の延伸、より好ましくは2.0〜3.2倍の延伸を施し緩和させた後、巻取機によって巻き取ることによって特に延伸処理を施した方向に弾性が優れた弾性不織布を得ることができる。
【0049】
また、前記不織布延伸工程における延伸方向は、機械方向,機械垂直方向,斜め方向等方向は特に限定はされないが、延伸方向の選択によって弾性優勢方向を決めることができる。
【0050】
本発明においては、得られた弾性不織布に、前記弾性不織布以外の不織布、フィルム、ウェブ、織物、編み物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層して積層弾性不織布として用いることができる。積層に使用される材料は、弾性不織布の伸長を阻害しないように得られた複合化弾性不織布が20%以上伸長可能となる物が好ましい。例えば、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマー樹脂を用いて、メルトブロー法により不織布化、ネット化、フィルム化したもの等が挙げられる。また、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマー樹脂を用い繊維化した後に編み物及び織物としたものも挙げられる。また、エラストマー素材ではなく捲縮等により構造的弾性をもたせたウェブ、不織布,織物,編み物も挙げられる。更に、カ−ド法またはエアーレイド法によって得られたウェブをウォータージェット法、ポイントボンド法、スルーエアー法で積層させたものも挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0051】
本発明の弾性不織布または積層弾性不織布を用いた繊維製品としては、例えば使い捨てオムツ用伸縮性部材、オムツ用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、オムツカバー用伸縮性部材等の衛生材料の伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣服用伸縮性部材等の他に、衣料用芯地、衣料用絶縁材や保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布材の基布、プラスター材の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、血液フィルター、油水分離フィルター等の各種フィルター、エレクトレット加工をほどこしたエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、基材、クッション材、スピーカー防塵材、エア・クリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材・裏材、農業捲布、木材ドレーン材、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、カバン用部材、工業用シール材、ワイピング材、シーツ等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例における測定結果は下記の方法に従った。
【0053】
(i)50%伸長時の伸長回復率
幅25mm長さ200mmの不織布試験片を、機械方向を長さ方向にして作成する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で50%まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で50%まで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は下記式に従って求めた。
50%伸長時の伸長回復率(%)={(100※1−L)/100※1}×100
※1:試験片の最初の長さ(mm)
【0054】
(ii)50%伸長時強度
幅25mm長さ200mmの不織布試験片を、機械方向を長さ方向にして作成する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で50%伸長まで伸長させた時の強度(N/25mm)を50%伸長時強度とした。
【0055】
(iii)風合
縦100mm横100mmの不織布を用意する。10人のパネラーに不織布を触ってもらい風合を判断する。10人のパネラーが10段階評価を行い、全員の合計点数で評価した。従って総合点数は、最低0点から最高100点となり、60点以上を風合良好と判断した。また、好ましくは総合点数70点以上である。
【0056】
(iv)剥離強度
縦100mm横100mmの不織布試験片を2枚用意する。前記試験片を重ね合わせた上に縦100mm横100mmのアルミ板を載せ、更にその上に重りを載せ合計5kgとなる様に重りを調整し、50℃のオーブン中に24時間放置する。放置後25℃/RH65%の室内にて取り出した試験片を幅25mmに切り、長尺方向の一端から50mmの長さ迄不織布同士を手で剥がす。オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、剥がした不織布の端をチャック間50mmに設定した上下のチャックにそれぞれ固定した。引張速度100mm/分で不織布同士が完全に剥がれてしまうまで引張り、強度の平均値を剥離強度(N/25mm)の数値とした(N=5)。剥離強度が小さいほどアンチブロッキング性が良好である。
【0057】
(v)平均繊維径
弾性不織布の任意5ヶ所から縦10mm横10mmの不織布片(合計5枚)を切り取り、走査型電子顕微鏡(日本電子工業(株)製)にて表面を観察した。1枚の不織布片から20本の繊維径を測定しこれを5枚の不織布片にて測定し、合計100本の繊維径の平均値を算出し平均繊維径(D)とした。その後エラストマー繊維だけが溶出する下記溶媒の何れかを用い、ソックスレー抽出装置によってエラストマー成分のみを除いた後の不織布を上記同様の方法で非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)を測定した。
予め、エラストマー長繊維/非エラストマー繊維の重量比を求め、その後、構成する樹脂の密度をJIS L 1015(密度勾配管法)にて求めた。これらからエラストマー長繊維/非エラストマー繊維の重量比を体積率へと変換する。その後、下記式に従ってエラストマー長繊維の平均繊維径(Bd)を算出した。エラストマー長繊維密度:Bρ
非エラストマー繊維密度:Aρ
エラストマー繊維/非エラストマー長繊維の重量比:Bw/Aw
エラストマー長繊維体積率Bv:
Bv=(Bw/Bρ)/((Bw/Bρ)+(Aw/Aρ))
非エラストマー繊維体積率Av:
Av=(Aw/Aρ)/((Bw/Bρ)+(Aw/Aρ))
エラストマー長繊維の繊維径Bd:
Bd=(D−Ad×Av)/Bv
(抽出溶媒)
ポリウレタンエラストマー:濃塩酸
ポリスチレンエラストマー:トルエン
ポリオレフィンエラストマー:トルエン
ポリアミドエラストマー:アニリン
ポリエステルエラストマー:濃硫酸
【0058】
本発明において使用した材料の略号と内容は以下の通りである。
エラストマー樹脂
B−1:スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、KRATON G 1657((商品名)、クレイトンポリマージャパン(株)製)。
B−2:スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、DYNARON 8600P((商品名)、JSR(株)製)。
B−3:オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体、DYNARON 6200P((商品名)、JSR(株)製)。
B−4:水添スチレンジエン共重合体、DYNARON 2324P((商品名)、JSR(株)製)。
B−5:エチレン−オクテン共重合体、エンゲージ8401((商品名)、デュポンダウエラストマージャパン(株)製)。
B−6:B−1=50重量%とB−5=50重量%の樹脂混合品。
B−7:熱可塑性ポリウレタンポリマー、パンデックスT−1180((商品名)、DIC−Bayer(株)製)。
B−8:ポリエステルエラストマー、グリラックスE−200LV((商品名)、大日本インキ化学工業(株)製)。
B−9:ポリアミドエラストマー、ペバックス2533((商品名)、アトフィナ・ジャパン(株)製)。
B−10:B−2=95重量%とB−5=5重量%の樹脂混合品。
【0059】
非エラストマー樹脂
A−1:ポリプロピレン、チッソポリプロCS3300((商品名)、チッソ(株)製)。
A−2:プロピレン−エチレン−ブテン共重合体(エチレン=4重量%、ブテン=2.65重量%)、チッソポリプロCS3650((商品名)、チッソ(株)製)。
A−3:ポリエチレン、チッソポリエチS6900((商品名)、チッソ(株)製)。
A−4:ポリエチレンテレフタレート、K101((商品名)、カネボウ(株)製)。
【0060】
[実施例1]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。スクリュー(30mm径)、加熱体、及びギアポンプを有する2機の押出機、混繊用紡糸口金(孔径0.3mm、異成分繊維が交互に一列に並んだ、孔数501ホール、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置及び空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、及び巻取機からなる装置を用いてメルトブロー不織布の製造を行った。それぞれの押出機にエラストマー樹脂と非エラストマー樹脂をそれぞれ投入し、加熱体によりエラストマー樹脂を230℃、非エラストマー樹脂を270℃で加熱溶融させ、ギアポンプを、エラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が95/5となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.242g/分、A−1を0.013g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲ−ジ圧)の圧縮空気によって、走行速度2m/分で走行しているポリエステル製ネットの捕集コンベアー上に吹き付けた。捕集コンベアーは、紡糸口金から25cmの距離に設置した。吹き付けた空気は捕集コンベアーの裏側に設けた吸引装置で除去した。捕集コンベアーにて搬送された不織布を巻取機にてロール状に巻取り、目付60g/m2の弾性不織布を得た。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0061】
[実施例2]
実施例1と同様の原料樹脂を用い、ギアポンプを、エラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が90/10となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.230g/分、A−1を0.026g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0062】
[実施例3]
実施例1と同様の原料樹脂を用い、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が80/20となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりA−1を0.051g/分、B−1を0.204g/分、A−1を0.051g/分の紡糸速度で溶融原料樹脂を吐出させた以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性メルトブロー不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0063】
実施例3で得られた弾性不織布の両面に樹脂A−1、繊維径2μm、目付2g/m2からなるメルトブロー不織布をそれぞれ積層し、加熱エンボスロールにて接着させた積層弾性不織布を作製した。巻長2000mにてロール巻き状態で、夏場の倉庫を想定した温度50℃、湿度80%の室内に7日間放置した。その後剥離強度を測定したが、剥離強度は0.5N/25mmで、良好なアンチブロッキング性は良好であった。
【0064】
実施例3で得られた弾性不織布をパンツ型使い捨ておむつのプロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク社製PAMPERSすくすくパンツLサイズのウエスト部分両脇にあるネット状弾性素材を剥ぎ取り、得られた弾性不織布を貼り付けたパンツ型使い捨てオムツを5枚用意し、5人の幼児に使用したが全員が過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残らなかった。また、締め付け不足による使い捨てオムツのズレや脱げも起こらず、排泄物の漏れも無かった。
【0065】
立体捲縮ポリオレフィンステープルファイバーからなる目付100g/m2の伸縮性不織布を、実施例3の弾性不織布と積層してウォータージェットを用いて交絡させ、積層化不織布を作成した。得られた積層化不織布からサポーターを5枚作成し、5人のモニターの膝に24時間巻いていたが、全員過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残らなかった。また締め付け不足によるサポーターのズレや脱げも無かった。
【0066】
実施例3で得られた弾性不織布の片面に粘着材を塗布し、止血剤を塗布した布(絆創膏用)を貼り付けた絆創膏を10枚用意し、10人のモニターの人差し指に24時間巻いていたが全員過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残らなかった。また締め付け不足による絆創膏のズレや剥げも無かった。
【0067】
実施例3で得られた弾性不織布の片面に粘着材を塗布したテープを用意した。傷に当てるサージカルテープとして10枚用意し、10人のモニターの肘に24時間巻いていたが全員過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残らなかった。また締め付け不足によるテープのズレや剥げも無かった。
【0068】
実施例3で得られた弾性不織布に鎮痛剤を塗布したパップ材を10枚用意し、10人のモニターの膝に24時間貼っていたが全員過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残らなかった。また締め付け不足によるパップ材のズレや剥げも無かった。
【0069】
[実施例4]
実施例3で得られた弾性不織布に機械方向に2.2倍の延伸を23℃にて施し、緩和させ巻取機にて巻き取った。得られた弾性不織布(延伸後)の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、特に風合に優れていた。
【0070】
実施例4で得られた弾性不織布をパンツ型使い捨ておむつのプロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク社製PAMPERSすくすくパンツLサイズのウエスト部分両脇にあるネット状弾性素材を剥ぎ取り、得られた弾性不織布を貼り付けたパンツ型使い捨てオムツを5枚用意し、5人の幼児に使用したが全員が過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残らなかった。また、締め付け不足による使い捨てオムツのズレや脱げも起こらず、排泄物の漏れも無かった。
【0071】
実施例4で得られた弾性不織布の片面に粘着材を塗布し、止血剤を塗布した布(絆創膏用)を貼り付けた絆創膏を10枚用意し、10人のモニターの人差し指に24時間巻いていたが全員過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残らなかった。また締め付け不足による絆創膏のズレや剥げも無かった。
【0072】
実施例4で得られた弾性不織布の片面に粘着材を塗布したテープを用意した。傷に当てるサージカルテープとして10枚用意し、10人のモニターの肘に24時間巻いていたが全員過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残らなかった。また締め付け不足によるテープのズレや剥げも無かった。
【0073】
[実施例5]
実施例1と同様の原料樹脂を用い、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が70/30となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.179g/分、A−1を0.077g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0074】
[実施例6]
実施例1と同様の原料樹脂を用い、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が60/40となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.153g/分、A−1を0.102g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0075】
[実施例7]
実施例1と同様の原料樹脂を用い、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が50/50となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.128g/分、A−1を0.128g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0076】
[実施例8]
実施例1と同様の原料樹脂を用い、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が85/15となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.217g/分、A−1を0.038g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた事以外は実施例1に準拠した加工条件及び製造装置により弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0077】
[実施例9]
実施例1と同様の原料樹脂を用い、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が25/75となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりA−1を0.064g/分、B−1を0.191g/分の紡糸速度で溶融原料樹脂を吐出させた事以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0078】
[実施例10]
エラストマー樹脂としてB−2、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。加熱体によりエラストマー樹脂を270℃、非エラストマー樹脂を200℃で加熱溶融させ、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が80/20となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−2を0.204g/分、A−1を0.051g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲ−ジ圧)の圧縮空気によって、走行速度2m/分で走行しているポリエステル製ネットの捕集コンベアー上に吹き付けた。捕集コンベアーは紡糸口金から25cmの距離に設置し、弾性不織布を得た。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0079】
[実施例11]
実施例10で得られた弾性不織布に機械方向に2.2倍の延伸を23℃にて施し、緩和させ巻取機にて巻き取った。得られた弾性不織布(延伸後)の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、特に風合に優れていた。
【0080】
[実施例12]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−2を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0081】
[実施例13]
実施例12で得られた弾性不織布に機械方向に2.2倍の延伸を23℃にて施し、緩和させ巻取機にて巻き取った。得られた弾性不織布(延伸後)の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、特に風合に優れていた。
【0082】
[実施例14]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−3を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0083】
[実施例15]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−4を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0084】
[実施例16]
エラストマー樹脂としてB−3、非エラストマー樹脂としてA−1、を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表2に示す。良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れた弾性不織布であった。
【0085】
[実施例17]
エラストマー樹脂としてB−4、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0086】
[実施例18]
エラストマー樹脂としてB−5、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0087】
[実施例19]
エラストマー樹脂としてB−6、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0088】
[実施例20]
エラストマー樹脂としてB−7、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0089】
[実施例21]
エラストマー樹脂としてB−8、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0090】
[実施例22]
エラストマー樹脂としてB−9、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0091】
[実施例23]
非エラストマー樹脂としてA−1を原料樹脂として用い、スクリュー(30mm径)、加熱体、及びギアポンプを有する1機の押出機、紡糸口金(孔径0.6mm、孔数500ホール)、ゴデーロール及び巻取機からなる紡糸装置、更に熱ロール延伸装置により2dtex、5mm長の短繊維を用意した。
エラストマー樹脂としてB−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。スクリュー(30mm径)、加熱体、及びギアポンプを有する1機の押出機、紡糸口金(孔径0.3mm、孔数501ホール、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置及び空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、及び巻取機からなる装置を用いてメルトブロー不織布の製造を行った。押出機にエラストマー樹脂を投入し、加熱体によりを230℃で原料樹脂を加熱溶融させ、紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲ−ジ圧)の圧縮空気によって、走行速度2m/分で走行しているポリエステル製ネットの捕集コンベアー上に吹き付けた。捕集コンベアーは紡糸口金から25cmの距離に設置した。吹き付けた空気は捕集コンベアーの裏側に設けた吸引装置で除去した。
この時、用意した上記非エラストマー短繊維をメルトブロー機の吹き付け空気にのるように供給し、エラストマー長繊維/非エラストマー短繊維=80/20の重量比となるよう均一に混合した。捕集コンベアーにて捕集搬送された不織布を圧着面積率24%エンボスロールを用い120℃の温度にてポイントボンド加工を施し、巻取機にてロール状に巻取り、目付60g/m2の弾性不織布を得た。
得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0092】
[実施例24]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。加熱体により非エラストマー樹脂を240℃で加熱溶融した以外は実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0093】
[実施例25]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。加熱体によりエラストマー樹脂を210℃で、非エラストマー樹脂を240℃で加熱溶融した以外は実施例3と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0094】
[実施例26]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性長繊維不織布の原料樹脂として用いた。スクリュー(40mm径)、加熱体、及びギアポンプを有する2機の押出機、図1の紡糸孔配列を持つ混繊用の紡糸口金(孔径0.4mm、120孔)、エアーサッカー、帯電法開繊機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、ポイントボンド加工機及び巻取機からなる装置を用いてスパンボンド不織布の製造を行った。それぞれの押出機にエラストマー樹脂と非エラストマー樹脂をそれぞれ投入し、加熱体によりエラストマー樹脂を230℃で、非エラストマー樹脂を270℃で加熱溶融させ、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が80/20となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.46g/分、A−1を0.11g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維をエアーサッカーに導入し直後に帯電法開繊機によって開繊させ捕集コンベアー上に捕集した。エアーサッカーの空気圧は、196kPaとした。捕集コンベアー上のウェブを上下ロール温度90℃に加熱したポイントボンド加工機(圧着面積率15%)に投入し、加工後の不織布を巻取機にてロール状に巻取り、目付60g/m2の弾性不織布を得た。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示した。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0095】
[実施例27]
エラストマー樹脂としてB−5、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性長繊維不織布の原料樹脂として用いた。加熱体により非エラストマー樹脂を240℃で加熱溶融した以外は実施例26と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、風合に優れていた。
【0096】
[実施例28]
実施例26で得られた弾性不織布に機械方向に2.2倍の延伸を23℃にて施し、緩和させ巻取機にて巻き取った。得られた弾性不織布(延伸後)の試験結果を表1に示した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、特に風合に優れていた。
【0097】
[実施例29]
実施例27で得られた弾性不織布に機械方向に2.2倍の延伸を23℃にて施し、緩和させ巻取機にて巻き取った。得られた弾性不織布(延伸後)の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を示し、特に風合に優れていた。
【0098】
[比較例1]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が99/1となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.252g/分、A−1を0.003g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、コンベアー速度を2m/分とした事以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、剥離強度が50%伸長時強度より高くなり、満足できる性能を示さなかった。
【0099】
[比較例2]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。押出機投入前にB−1/A−1=90/10(重量比)となるようにB−1とA−1とを予め混合(ブレンド)し、単孔当り0.26g/分の紡糸速度で溶融原料樹脂を吐出させた事以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、剥離強度が50%伸長時強度より高くなり、満足できる性能を示さなかった。
【0100】
[比較例3]
原料樹脂にエラストマー樹脂B−1のみを用い、比較例2に準拠した加工条件及び製造装置により弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表3に示す。得られた弾性不織布は、剥離強度が50%伸長時強度より高くなり、満足できる性能を示さなかった。
【0101】
[比較例4]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が40/60となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.102g/分、A−1を0.153g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた事以外は、比較例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、50%伸長回復率が低く満足できる性能を示さなかった。
【0102】
[比較例5]
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。押出機投入前にB−1/A−1=50/50(重量比)となるようにB−1とA−1とを予め混合(ブレンド)し、単孔当り0.26g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させたこと以外は、実施例1と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、エラストマー樹脂と非エラストマー樹脂が同重量混合しており、50%伸長回復率が低く満足できる性能を示さなかった。
【0103】
[比較例6]
エラストマー樹脂としてB−10、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性長繊維不織布の原料樹脂として用いた。ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が30/70となるように設定し、紡糸口金から単孔当たりB−1を0.17g/分、A−1を0.40g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させた事以外は、実施例26と同様の方法で弾性不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、50%伸長回復率が低く満足できる性能を示さなかった。
【0104】
[比較例7]
エラストマー樹脂としてB−10、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性長繊維不織布の原料樹脂として用いた。スクリュー(30mm径)、加熱体、及びギアポンプを有する2機の押出機、サイドバイサイド形状複合繊維用の紡糸口金(孔径0.3mm、孔数501ホール、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置及び空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、及び巻取機からなる装置を用いてメルトブロー不織布の製造を行った。それぞれの押出機にエラストマー樹脂と非エラストマー樹脂をそれぞれ投入し、加熱体によりエラストマー樹脂を230℃で、非エラストマー樹脂を270℃で加熱溶融させ、ギアポンプをエラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が80/20となるように設定し、紡糸口金から単孔当たり0.12g/分の紡糸速度で溶融原樹脂を吐出させ、吐出した繊維に98kPa(ゲ−ジ圧)の圧縮空気を400℃に加熱した気流の空気でポリエステル製ネットの速度が1.5m/分で走行している捕集コンベアー上に吹き付けた。捕集コンベアーとしては、紡糸口金から25cmの距離に設置した。吹き付けた空気は捕集コンベアーの裏側に設けた吸引装置で除去した。捕集コンベアーにて搬送された不織布を巻取機にてロール状に巻取り、目付61g/m2の弾性長繊維不織布を得た。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、複合繊維で構成されており、剥離強度が50%伸長時強度より高くなり、満足できる性能を示さなかった。実際に製品ロールを繰出してみたが、ロール繰出し時に弾性不織布が伸びてしまい使用できなかった。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の混合長繊維不織布をスパンボンド法にて製造する場合の紡糸口金の紡糸孔配列の一例を示す。○はエラストマー樹脂の紡糸孔、●は非エラストマー樹脂の紡糸孔を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー長繊維と非エラストマー繊維とを、エラストマー長繊維/非エラストマー繊維=50/50〜95/5の重量比で含有する不織布であって、不織布の50%伸長時の伸長回復率が70%以上、かつ重ね合わせた2枚の不織布を剥がす時の強度が不織布の50%伸長時強度以下であることを特徴とする弾性不織布。
【請求項2】
エラストマー長繊維がメルトブロー法によって製造されたことを特徴とする請求項1に記載の弾性不織布。
【請求項3】
エラストマー長繊維がポリスチレンエラストマー樹脂及びポリオレフィンエラストマー樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弾性不織布。
【請求項4】
非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)が1〜20μm、エラストマー長繊維の平均繊維径(Bd)が5〜40μmであり、かつAd≦Bdの関係にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の弾性不織布。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の弾性不織布に、前記弾性不織布以外の不織布、フィルム、ウェブ、織物、編み物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層してなる積層弾性不織布。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の弾性不織布または請求項5記載の積層弾性不織布を用いた繊維製品。



【図1】
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【公開番号】特開2008−291418(P2008−291418A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165177(P2008−165177)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【分割の表示】特願2003−206475(P2003−206475)の分割
【原出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(399120660)チッソポリプロ繊維株式会社 (41)
【Fターム(参考)】