説明

弾性体被覆ローラの製造方法

【課題】 弾性体被覆ローラの製造時に芯ローラとゴムチューブとの間に残る空気層の除去や歪み取りを容易に行なうことができる弾性体被覆ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】 弾性体被覆ローラの製造方法は、鉄芯11の外周面上にゴムチューブ12を装着する工程と、ゴムチューブ12の外表面に別のチューブ21を嵌める工程と、別のチューブ21をゴムチューブ12の一方端から他方端まで移動させることにより、鉄芯11とゴムチューブ12との間の空気を外部に追い出す工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は芯ローラの外周面に円筒弾性体を装着する、いわゆる嵌め込み式による、弾性体被覆ローラの製造方法に関し、特に、弾性体被覆ローラ製造時の脱気および歪み取りを容易に行なうことができる弾性体被覆ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性体被覆ローラの一例として、半導電性ロールの製造方法が、たとえば、特開平2−202430号公報(特許文献1)に開示されている。同公報によれば、金属製の軸体の外周に、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等の導電性弾性層を形成する。一方、過塩素酸塩と高分子化合物とからなる薄膜のチューブを形成し、このチューブを導電性弾性層の上に空気を送り込みながら被せて、薄膜状の半導電性高分子層が形成された半導電性ロールを製造している。
【0003】
また、弾性体被覆ローラの他の例として、導電性ゴムローラの製造方法が、特開平7−238923号公報(特許文献2)に開示されている。同公報によれば、シャフトと、このシャフトの外周に設けられた導電性のゴム層からなるゴムローラにおいて、ゴム層がチューブ状のものからなり、後でシャフトを挿入して導電性ゴムローラとする、導電性ゴムローラの製造方法を開示している。シャフトを挿入する際、シャフト挿入側と逆方向から圧力をかけた空気を送り込んで中空内を膨らませながら、シャフトが挿入される。
【特許文献1】特開平2−202430号公報(第3頁右上欄第17行〜右下欄第3行)
【特許文献2】特開平7−238923号公報(段落番号0007,0008,0016等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の弾性体被覆ローラは、上記のような方法で製造されていた。チューブ状のゴム層をシャフトに被せるときに、その間に、どうしても、空気の層が残ってしまう。この空気層を除去するために、従来は製造された弾性体被覆ローラを1〜2時間程度、160℃で加熱したり、手でしごいて空気層を除去していた。しかしながら、このような方法では、手間がかかるとともに、空気層が十分除去できないという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、弾性体被覆ローラの製造時に芯ローラと円筒弾性体との間に残る空気層の除去を容易に行なうことができる弾性体被覆ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
弾性体被覆ローラの製造方法は、芯ローラの外周面上に円筒弾性体を装着する工程と、円筒弾性体の外表面に円環状部材を嵌める工程と、円環状部材を円筒弾性体の一方端から他方端まで相対的に移動させることにより、芯ローラと円筒弾性体との間の空気を外部に追い出す工程とを備える。
【0007】
円環状部材を円筒弾性体の一方端から他方端まで相対的に移動させることで、円環状部材の締付け力によって、芯ローラと円筒弾性体との間の空気を外部に追い出し、除去できる。
【0008】
好ましくは、円筒弾性体の外径は円環状部材の内径より大きい。
【0009】
この発明の一つの実施の形態によれば、円環状部材はチューブである。この場合、チューブを円筒弾性体の一方端から他方端まで相対的に移動させるときは、円筒弾性体とチューブとの間に圧縮空気を吹き付けるのが好ましい。
【0010】
さらに好ましくは、芯ローラの外周面上に円筒弾性体を装着する工程と、円筒弾性体の外表面に円環状部材を嵌める工程との間に、円筒弾性体の外表面に潤滑性材料を塗布する工程を含む。
【0011】
この発明の他の実施の形態においては、円環状部材はリングである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は弾性体被覆ローラの一例としての、ゴム被覆ローラの製造方法を示す図である。ゴム被覆ローラは、直径が10〜30mm程度で、プリンタ等のOA機器における定着ローラや駆動ローラや紙送りローラに使用される。
【0013】
図1(A)〜(B)を参照して、まず、鉄芯(芯ローラ)11を準備し、その外周面上に鉄芯11の外径よりも小さい内径を有するゴムチューブ(円筒弾性体)12をその一方端部側から圧縮空気を吹きつけながら装着して、ゴム被覆ローラ13を製造する。このようにして製造されたゴム被覆ローラ13においては、ゴムチューブ12が装着された鉄芯11には、鉄芯11とゴムチューブ12との間に空気層が残っている。なお、ここでゴムチューブ12に使用されるゴムは加硫されたゴムである。
【0014】
次に、この発明における上記空気層の除去方法について説明する。図2(A)に示すように、ゴム被覆ローラ13の外表面の一方端に別のチューブ21を嵌め込み、それを他方端まで圧入することによって、鉄芯11とゴムチューブ12との間に残っている空気bを排除する。このとき、同時に、ゴムチューブ12の圧入時に生じた歪みaも取り除かれる。チューブ21は、ゴム被覆ローラ13に対して締付け力を作用させるために、ゴム等の弾性材料からなるのが好ましい。
【0015】
ここで、チューブ21の内径は、ゴム被覆ローラ13の外径よりも小さい。このチューブ21を一方端から他方端まで移動することによって、鉄芯11とゴムチューブ12の間に生じた空気層は、チューブ21の締付け力によって他方端まで押出されて排除される。その結果、鉄芯11とゴムチューブ12とが密着する。また、上記したように、この過程でゴムチューブ12内の歪みも取り除かれる。
【0016】
この圧入時には、チューブ21の先端部には、エアガン22により圧縮空気を吹きつけながら行なう。図2(B)に示すように、チューブ21をゴム被覆ローラ13の他方端まで移動すれば、脱気および歪み取りは完了する。その後、チューブ21を引き抜く(図2(C))。このときも、エアガン22により圧縮空気を吹き付けながら行なうのが好ましい。ここでは、チューブ21を上方端側に引き抜いているが、これは、下方端側に引き抜いてもよい。
【0017】
なお、この作業は、人手で行ってもよいし、機械で自動的に行わせてもよい。
【0018】
その後、図3(A)に示すように、カッタ14により、ゴムチューブ12の両端部の耳部12aを切断し、ゴム被覆ローラ13のゴムチューブ12を適切な寸法とする。ついで、図3(B)に示すように、ゴムチューブ12の外周部を回転砥石15で研磨して、図4に示す、仕上げられたゴムチューブ表面12bを有するゴム被覆ローラ10を製造する。
【0019】
また、ゴム被覆ローラの脱気を行なう前に、ゴム被覆ローラの表面に潤滑性材料を塗布してもよい。このようにすれば、より効率的に作業が可能になる。
【0020】
この発明においては、上記のように、ゴムチューブ12の歪みによる厚みのばらつきが小さくなり、鉄芯11にゴムチューブ12を均一に被覆できるため、図3(B)に示した研磨工程などの後加工工程における削り代を小さくできる。具体的には、従来の削り代は0.25mm程度であったが、これを0.13mmまで減らすことができた。
【0021】
また、研磨工程やその後の工程での歪み戻りがないため、ゴム被覆ローラの外径精度が上がり、不良品の発生率を低減させることができる。
【0022】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。上記実施の形態においては、チューブを用いて脱気を行なったが、この実施の形態においては、チューブの代わりに、Oリングを使用する。図5は、この実施の形態における脱気方法を示す図である。
【0023】
図5を参照して、図2と同様に、Oリング25をゴム被覆ローラ13の一方端から嵌め込む(図5(A))。このとき、図5(A)に示すように、嵌め込む側の端面には、Oリング25の挿入を容易にするために、三角錘治具26をセットするのが好ましい。その後、順にOリング25を他方端へ移動し、順に歪みとりと脱気を行なう(図5(B))。このとき、Oリング25を捲り回転させながら上端から下端まで移動させるのが好ましい。なお、ここで捲り回転というのは、Oリング25の外周が内周に入り込みながらゴム被覆ローラ13の表面を転がるように回転させることをいう。この作業は、人手で行なってもよいし、機械に行わせてもよい。図5(C)に示すように下端までOリング25を通せば、歪み取りおよび脱気が完了する。その後の処理は、先の実施の形態と同じである。
【0024】
この処理によっても、先の実施の形態と同じ効果が得られる。Oリング25は、ゴム被覆ローラ13に対して締付け力を作用させるために、ゴム等の弾性材料からなるのが好ましい。
【0025】
なお、上記実施の形態においては、チューブまたはOリングを用いて脱気等を行なう例について説明したが、これに限らず、スプリングで構成されたリングを用いてもよい。
【0026】
また、上記実施の形態においては、弾性体被覆ローラとして、ゴム被覆ローラを例にあげたが、これに限らず、軟質樹脂被覆ローラや、スポンジローラに適用してもよい。
【0027】
また、上記実施の形態においては、ゴム被覆ローラを固定して、チューブまたはリングを一方端から他方端へ移動させる例について説明したが、これに限らず、チューブまたはリングを固定して、ゴム被覆ローラを移動させるようにしてもよい。
【0028】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明に係る弾性体被覆ローラの製造方法は、鉄芯とゴムチューブとの間の脱気および歪み取りを容易に行えるため、弾性体被覆ローラの製造方法として有利に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明にかかるゴム被覆ローラの製造工程を示す図である。
【図2】ゴム被覆ローラにおいて、鉄芯とゴムチューブとの間の空気層を除去する手順を示す図である。
【図3】脱気後の後加工工程を示す図である。
【図4】完成したゴム被覆ローラを示す図である。
【図5】ゴム被覆ローラにおいて、鉄芯とゴムチューブとの間の空気層を除去する他の方法を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10,13 ゴム被覆ローラ、11 鉄芯、12 ゴムチューブ、14 カッタ、15 回転砥石、21 チューブ、25 Oリング、26 三角錘治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯ローラの外周面上に円筒弾性体を装着する工程と、
前記円筒弾性体の外表面に円環状部材を嵌める工程と、
前記円環状部材を前記円筒弾性体の一方端から他方端まで相対的に移動させることにより、前記芯ローラと前記円筒弾性体との間の空気を外部に追い出す工程とを備える、弾性体被覆ローラの製造方法。
【請求項2】
前記円筒弾性体の外径は前記円環状部材の内径より大きい、請求項1に記載の弾性体被覆ローラの製造方法。
【請求項3】
前記円環状部材はチューブである、請求項1または2に記載の弾性体被覆ローラの製造方法。
【請求項4】
前記チューブを前記円筒弾性体の一方端から他方端まで相対的に移動させるときは、前記円筒弾性体と前記チューブとの間に圧縮空気を吹き付ける、請求項3に記載の弾性体被覆ローラの製造方法。
【請求項5】
前記芯ローラの外周面上に円筒弾性体を装着する工程と、前記円筒弾性体の外表面に円環状部材を嵌める工程との間に、前記円筒弾性体の外表面に潤滑性材料を塗布する工程を含む、請求項3または4に記載の弾性体被覆ローラの製造方法。
【請求項6】
前記円環状部材はリングである、請求項1または2に記載の弾性体被覆ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−342929(P2006−342929A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170984(P2005−170984)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】