説明

弾性変形可能で吸収性の医療用メッシュインプラント

【課題】変形、即ち延伸の後にその元の形状に回復するか、少なくともほぼその元の形状に回復する、弾性的で吸収性の医療用メッシュインプラントを提供する。
【解決手段】組織欠損の再建において使用するためのポリマーメッシュインプラント21であって、開口部23を含む第1のパターンに配置された第1の繊維のセット22を含み、各々の開口部又はそのサブセットは、メッシュインプラントが第1の方向に延伸されたときに弾性繊維24が伸長され、また第1のパターンに対する回復力を発揮するように、メッシュインプラントの第1の方向に配置された弾性繊維を含む、メッシュインプラントに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟組織欠損の医療再建において用いられる吸収性のポリマーメッシュインプラント、特に弾性変形可能で吸収性のポリマーメッシュに関し、より具体的には、その編みパターンが、弾性変形可能なメッシュインプラントが得られるように配置された弾性繊維を含む吸収性のポリマーメッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性のポリマーメッシュインプラントは知られている。本譲受人に譲渡された欧州特許第1674048号には、少なくとも2つの材料を含み、第2の材料が移植後、第1の材料よりも遅い時点で実質的に分解する、吸収性のポリマーメッシュインプラントが記載されている。このメッシュインプラントは、インプラントが完全に分解しその後吸収されるまで、徐々に低下する所定の弾性率を有するように適合されている。
【0003】
本譲受人に譲渡された欧州特許第2002800号にも、異なった分解時間を有する少なくとも2つの材料を含む吸収性のポリマーメッシュインプラントが記載されている。分解時間が短い第1の材料が、第1の編みパターンに配置された第1のポリマー繊維セットの形態を取っており、分解時間が長い第2の材料が、第2の編みパターンに配置された第2のポリマー繊維セットの形態を取っており、第1の編みパターンの繊維が、第2の編みパターンの開口部(apertures)を横断することによって第2の編みパターンの動きを固定している。第1のセットの繊維が分解すると、第2の編みパターンはより自由に動くことができ、それによりメッシュインプラントがより適応し易くなる。欧州特許第1674048号及び欧州特許第2002800号の明細書に従って製造されたメッシュは、本譲受人によって商標TIGR(登録商標)として発売されている。このメッシュはその初期の非分解状態においては非弾性という特徴を有しており、第1のセットのポリマー繊維が分解した半分解状態においては、非可逆的に変形可能である特徴を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に挙げた特許の明細書に従って製造されたメッシュ製品はそれらの意図された目的を非常によく満たすが、これらのメッシュの機械的特徴は、ある種の医療用途においては理想的ではない。特に、これらのメッシュは、真の弾性挙動を示さない。即ちこれらは可逆的に変形可能ではない。したがって、本発明の一般的な目的は、変形、即ち延伸の後にその元の形状に回復するか、少なくともほぼその元の形状に回復する、弾性的で吸収性の医療用メッシュインプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的は独立請求項による本発明によって達成される。好ましい実施形態は従属請求項において示される。
【0006】
本発明によれば、医療用メッシュインプラントは、第1の分解時間を有する第1の繊維のセットを含む。第1のセットの繊維は、特に面積単位あたり所定数の開口部(openings or apertures)を有する第1の編みパターンに配置されている。これらの開口部の全て、又は場合によりいくつかにおいては、弾性繊維は、メッシュ及びそれにより第1の編みパターンが第1の方向に延伸されると、弾性繊維が力(応力)を受け、それにより弾性繊維の伸長又は長さ方向の変形(歪み)を起こすように配置されている。メッシュインプラントの延伸が中断されてメッシュが解放され、自由に緩和されると、弾性繊維はその元の長さを回復する。それにより第1の編みパターンの形状が回復され、その結果、メッシュインプラント全体はその元の形状を回復する。
【0007】
本発明の実施形態においては、メッシュは第1の方向及び第2の方向を有することが想定される。(織った又は編んだメッシュ製品においては、第1及び第2のメッシュ方向は場合によりそれぞれ縦糸方向及び横糸方向に一致してもよく、又は他の「自然の(natural)」方向に一致してもよい。)第1の実施形態においては、弾性繊維はメッシュの1方向のみに配置され、別の実施形態においては、弾性繊維はメッシュの2つの、好ましくは直角をなす方向に配置される。弾性繊維の他の方向での配置も、本発明の範囲内である。
【0008】
本発明の実施形態においては、弾性繊維は、好ましくは、第1の繊維セットの分解時間よりも長くても、短くても、又はこれと同程度でもよい分解時間を有する生分解性且つ吸収性のポリマーから作られる。
【0009】
本発明によるメッシュインプラントのさらなる実施形態においては、メッシュインプラントは、上述の実施形態と同様に、第1の繊維セットの第1の編みパターンに形成された開口部に配置される、弾性繊維を含む。しかし、これらのさらなる実施形態においては、第1のセットの繊維は、その分解時間が弾性繊維の分解時間よりも短い第2の繊維のセットで補足される。第2のセットの繊維は、第2の編みパターンが第1の編みパターンの開口部を横断することによって第1の編みパターンの動きを固定するように、第2の編みパターンに配置することができる。第2のセットの繊維は、メッシュが初期には非弾性的と特徴付けられるほどの高い弾性率を有することができる。したがって、一旦第2のセットの繊維が分解すれば、これらの実施形態によるメッシュインプラントの弾性挙動が作用し始めることになる。
【0010】
第1のセットの繊維及び/又は第2のセットの繊維及び/又は弾性繊維は、上述の欧州特許に記載された1つ又は複数の材料及び/又は他の適当な材料から作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1a】先行技術の医療用メッシュインプラントの挙動を模式的に示す図であり、これは本発明の一部ではない。
【図1b】先行技術の医療用メッシュインプラントの挙動を模式的に示す図であり、これは本発明の一部ではない。
【図2a】本発明による医療用メッシュインプラントの第1の実施形態を模式的に示す図であり、弾性繊維が一方向に横断する開口部を有する編みパターンを有している。
【図2b】本発明による医療用メッシュインプラントの第1の実施形態を模式的に示す図であり、弾性繊維が一方向に横断する開口部を有する編みパターンを有している。
【図3】本発明による医療用メッシュインプラントの第2の実施形態を模式的に示す図であり、弾性繊維が二方向のいずれかで横断する開口部を有する編みパターンを有している。
【図4】本発明による医療用メッシュインプラントの第3の実施形態を模式的に示す図であり、弾性繊維が二方向で横断する開口部を有する編みパターンを有している。
【図5】本発明による医療用メッシュインプラントの第4の実施形態を模式的に示す図であり、第1の編みパターンに配置された第1の繊維のセット、及び第2の編みパターンに配置された第2の繊維のセット、並びに弾性繊維を含み、第2のセットの繊維並びに弾性繊維の両方が同じ方向で第1の編みパターンの開口部を横断している。
【図6】本発明による医療用メッシュインプラントの第5の実施形態を模式的に示す図であり、第1の編みパターンに配置された第1の繊維のセット、及び第2の編みパターンに配置された第2の繊維のセット、並びに弾性繊維を含み、弾性繊維が第1の方向で第1の編みパターンの開口部を横断し、第2のセットの繊維が第2の方向で第1の編みパターンの開口部を横断している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明をより良く理解するため、本発明の一部ではないが、まず従来の医療用メッシュインプラント1の機械的挙動の概略を図1a及び図1bに関連して説明する。メッシュ1はいくつかの個別の繊維2を含んでおり、この繊維は特定の編みパターンに従って編みあわされてメッシュ1を形成し、このメッシュは特に所定数の開口部3を含んでいる。
【0013】
図1aにおいて、メッシュ1は初期の又は緩和された状態にある。即ちメッシュ1にはいかなる外力も受けていない。小さな又は少なくとも適度な大きさの力(図1bにおいてFで示してある)のみをメッシュ1に加えると、メッシュ1の変形が導入される。より具体的には、図1aと図1bを比較すると分かるように、メッシュ1の開口部3の各々は、おおよそ正方形の形状から伸長された菱形の形状に形状変化を受ける。ここで、力Fが小さい場合には、このメッシュの変形は基本的にはメッシュの構造それ自体に起因すべきもので、即ち個々の繊維2は実質的に伸長していないということを認識されたい。したがってこの後者の記述は、力Fが除去された際に、メッシュ1をその元の形状に戻すような有意な力は存在しないことを暗示している。さらに、繊維2の伸長はないので、繊維2が弾性材料と非弾性材料のいずれから作られているかということは本質的に重要でない。換言すれば、メッシュ1のような従来のメッシュインプラントは、メッシュ構造の変形を起こすのみの力が加えられた場合には、弾性的挙動を示さず、そのようなメッシュインプラントは、この力が除去された時にその元の形状に回復しない。単に状況を完結させるため、大きな力Fでメッシュ1をさらに変形すると、個々の繊維2も最終的には延伸されることになるだろう。そのような大きな力が除去されると、メッシュ1は、もし繊維2が弾性材料から作られている場合には、図1bに示す変形した形状に戻ることになる。しかしメッシュは図1aに示すその元の形状には回復しない。
【0014】
図2a及び図2bは、本発明によるメッシュインプラント11の第1の実施形態を示す。メッシュ11は第1の繊維のセット12を含み、この繊維のセットはいくつかの開口部13がメッシュ11の中に形成されるように第1の編みパターンで配置されている。繊維12は好ましくは吸収性ポリマーから作られている。開口部13の内部で、繊維14は、繊維14が隙間13を横断し、開口部13の外周上の2つの点で連結するように配置されている。この実施形態においては、個々の各繊維14は、繊維14の全てがメッシュインプラント11の同じ方向に伸展するように開口部13の外周上の対応する点で結合しており、その方向はメッシュインプラント11の第1の方向と表示できる。繊維14は弾性で好ましくは吸収性のポリマーから作られている。図2aにおいて、メッシュ11は初期の又は緩和された状態で示されている。即ちメッシュ11にはいかなる外力も受けていない。上記の従来のメッシュ1と関連付けたものと同じ理由付けにより、ここで小さな又は適度な大きさの力(図2bにおいてFで示してある)がメッシュ11の第1の方向に加えられると、メッシュ11の変形が導入される。図1a及び図1bに示した従来のメッシュ1の変形とは対照的に、本発明のメッシュ11の変形は、メッシュ構造の歪みのみならず弾性繊維14の伸長も伴う。したがって、力Fが除去されると、伸長された弾性繊維14はフックの法則に従ってその元の長さに回復しようとする。弾性繊維14がその元の長さを回復すると、図2aに示すように、メッシュ11全体が、その元の形状を回復する。換言すれば、メッシュ11が第1の編みパターンに従って連結された第1の繊維のセット12によって形成された開口部13に適切な方法で配置された弾性繊維14を含む場合には、メッシュ11は弾性的挙動を示し、弾性変形可能なメッシュインプラント11が製造される。
【0015】
図2a及び2bに示した実施形態においては、メッシュ11の開口部13の各々には個別の弾性繊維14が配設されている。代替の配置(図示していない)においては、メッシュインプラントの開口部のサブセット(例えば二分の一又は四分の一)のみに弾性繊維を配設してもよい。
【0016】
上述のように、メッシュ11は弾性繊維14を含み、この弾性繊維はメッシュ11の1つの方向のみに配置されている。他の配置も可能であり、図3は本発明によるメッシュインプラント21の第2の実施形態を示す。メッシュ21は第1の繊維のセット22を含み、この繊維のセットはいくつかの開口部23がメッシュ21の中に形成されるように第1の編みパターンで配置されている。繊維22は、好ましくは吸収性ポリマーから作られている。開口部23の第1のサブセット内に、弾性繊維24が、繊維24が開口部23を第1の方向に横断し、開口部23の外周上の2つの点で連結するように配置されており、開口部23の第2のサブセット内に、弾性繊維24’が、繊維24’が開口部23を第2の方向に横断し、開口部23の外周上の2つの点で連結するように配置されている。
【0017】
図3に示す実施形態においては、(図示するように)第1の方向はメッシュの垂直方向に一致し、(図示するように)第2の方向はメッシュの水平方向に一致している。他の方向の配置も可能である。例えば、メッシュインプラントの開口部の第3のサブセットに、第1の方向及び第2の方向の両方と異なる第3の方向で開口部を横断する弾性繊維を配設してもよい。メッシュインプラントの弾性繊維の任意の他の方向の配置も本発明の範囲内であり、更にいくつかの開口部が弾性繊維を欠くことも可能である。特に、弾性繊維の方向(単数又は複数)を、メッシュインプラントが受けるように設計されている負荷の予測される方向(単数又は複数)と一致させることが好ましいであろう。更に、弾性繊維を織りメッシュの縦糸方向若しくは横糸方向又は縦編みメッシュの対応する方向等の、メッシュ構造の他の「所与の」方向に整列させることも好ましいであろう。或いは弾性繊維をメッシュ構造のそのような所与の方向におよそ垂直に配置することもできる。
【0018】
上の記述より、本発明によるメッシュインプラントの2つ以上の方向に配置された弾性繊維により、メッシュは2つ以上の方向に弾性挙動を示すことになること、即ち伸縮力の成分が充分に多くの弾性繊維の方向に沿って指向している限り、メッシュインプラントはその元の形状を回復しようとするだろうことは明らかである。
【0019】
図2a−b及び図3に関連してそれぞれ上に述べた実施形態においては、開口部はせいぜい1つの弾性繊維を含む。しかしメッシュ中の個々の開口部が2つ以上の弾性繊維、例えば2つの異なった方向に配置された2つの繊維を含むことは可能である。図4は、本発明によるメッシュインプラント31の第3の実施形態を示す。メッシュ31は第1の繊維のセット32を含み、この繊維のセットはいくつかの開口部33がメッシュ31の中に形成されるように第1の編みパターンに配置されている。繊維32は、好ましくは吸収性ポリマーから作られている。開口部33内に、第1の弾性繊維34は、繊維34が開口部33を第1の方向に横断し、開口部33の外周上の2つの点で連結するように配置されている。同じ開口部33内で、第2の弾性繊維34’は、繊維34’が開口部33を第2の方向に横断し、開口部33の外周上の2つの点で連結するように配置されている。この実施形態においては第1の方向と第2の方向は互いに垂直であるが、他の方向の配置も本発明の範囲内である。例えば、開口部内で、第3の弾性繊維が第1の方向及び第2の方向の両方と異なる第3の方向に開口部を横断するように第3の弾性繊維を配設することができる。
【0020】
1つの開口部に配置された弾性繊維と別の開口部に配置された弾性繊維とは2つの異なった弾性繊維であるように述べてきたが、これら2つの弾性繊維は事実上同じ物質の繊維であってもよいこと、即ち2つの実質的に異なった繊維を作り出すのはメッシュ形成手法(例えば編み又は織り)であることを認識されたい。このことは、1つの開口部内に2つ以上の弾性繊維が配置された場合にも適用される。さらに、本明細書において「連結した」という用語は、弾性繊維が開口部を横断して伸展し、開口部の外周上の2つの点で連結していることを述べるために使用される。メッシュにおいて、開口部並びに繊維の配置は、特定の編みパターンによって作り出され、本発明によるメッシュを製造するために用い得る数多くの編みパターンがある。したがって、「〜に連結した」という用語は、「〜と接触している」から「〜に付着している」又は「〜に編みつけられている」までの範囲に亘る任意の意味を有し得る。
【0021】
図5は、本発明によるメッシュインプラント41の第4の実施形態を示す。メッシュ41は、第1の繊維のセット42を含み、この繊維のセットはいくつかの開口部43がメッシュ41に形成されるように第1の編みパターンで配置されている。繊維42は好ましくは吸収性ポリマーから作られている。開口部43内で、繊維44は、繊維44が開口部43を横断し、開口部43の外周上の2つの点で連結するように配置されている。繊維44は弾性ポリマーから作られ、即ち低い弾性率を有しており、当該ポリマーは好ましくは吸収性である。上述の実施形態とは対照的に、メッシュインプラント41は、さらに第2の繊維のセット45を含み、この繊維のセットは第2の編みパターンで配置されている。第2の編みパターンは、第2のセットの繊維45が第1の編みパターンで作成された開口部43を横断するように設計することができる。繊維45は好ましくは吸収性ポリマーから作られており、好ましくは高い弾性率(即ち、繊維44よりも高い弾性率)を有している。第1及び第2の編みパターンの適切な選択によって、第2の編みパターンの繊維45は、それによりメッシュインプラント41の第1の方向における第1の編みパターンの動きを固定する。図5に示した実施形態においては、繊維45は弾性繊維44に沿って配置されている。第1の繊維42が最長の分解時間を有し、高弾性率の繊維45が最短の分解時間を有し、弾性繊維44が高弾性率の繊維45の分解時間と第1の繊維42の分解時間との中間の分解時間を有するように繊維42、44及び45を選択することによって、初期には非弾性の特徴を有し、第2の繊維のセット45が分解した際には弾性変形可能な特徴を有するメッシュインプラント41が達成される。高弾性率の繊維45を弾性繊維44に沿って設ける代わりに、効果的な2つの異なった繊維だけ、即ち遅く吸収される繊維42と、繊維44と繊維45とからなる複合繊維とを有するメッシュインプラント41が製造(例えば織り又は編み)されるように、繊維44及び繊維45を互いに織り合わせるか共紡糸してもよい。
【0022】
図5に関連して述べた実施形態においては、弾性繊維44及び高弾性率の若しくは非弾性の繊維45は、メッシュインプラント41の一方向のみに伸展している。しかし、弾性繊維及び非弾性繊維が互いに平行して、第1の編みパターンに設けられた開口部を2つ以上の方向に横断するメッシュインプラントを提供することは可能である。その場合、そのようなメッシュは、メッシュインプラントの2つ以上の方向においてではあるが、メッシュインプラント41と同じ時間依存性機械的挙動を有することになる。
【0023】
本発明によるメッシュインプラントの、おそらくより想像的な実施形態を図6に示す。ここでは、第5の実施形態によるメッシュインプラント51は、第1の繊維のセット52を含み、この繊維のセットはいくつかの開口部53がメッシュ51に形成されるように第1の編みパターンで配置されている。繊維52は、好ましくは吸収性ポリマーから作られている。開口部53内で、繊維54は、繊維54が開口部53を第1の方向に横断し、開口部53の外周上の2つの点で連結するように配置されている。繊維54は弾性で好ましくは吸収性のポリマーから作られている。メッシュインプラント51は、さらに第2の繊維のセット55を含み、この繊維のセットは第2の編みパターンで配置されている。第2の編みパターンは、第2のセットの繊維55がメッシュインプラント51の第2の方向に開口部53を横断するように設計されている。繊維55は、好ましくは吸収性ポリマーから作られており、好ましくは高い弾性率を有している。第1及び第2の編みパターンの適切な選択によって、第2の編みパターンの繊維55は、それによりメッシュインプラント51の第2の方向における第1の編みパターンの動きを固定する。しかし、ここで、第1及び第2の方向は互いに異なっていることに注意されたい。第1の繊維52が最長の分解時間を有し、高弾性率繊維55が最短の分解時間を有し、弾性繊維54が高弾性率繊維55の分解時間と第1の繊維52の分解時間との中間の分解時間を有するように繊維52、54及び55を選択することによって、初期にはメッシュインプラント51の第1の方向には弾性で、第2の方向には非弾性の特徴を有し、第2の繊維のセット55が分解し、その一方で弾性繊維54及び第1の繊維のセット52が分解していない後期の時点では、第1の方向には弾性変形可能で、第2の方向には非弾性変形可能な特徴を有するメッシュインプラント51が達成される。
【0024】
本発明によるメッシュにおいて用いられる弾性繊維は、好ましくは合成脂肪族ポリエステル、カーボネート、又はそれらの混合物から作られる。そのような材料の非制限的な例としては、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、1,5−ジオキサン−2−オン(パラ−ジオキサノン)、又は1,5−ジオキセパン−2−オン等のモノマーの開環重合によって作られるものがある。そのような材料においてある種の弾性的特性を得るための前提条件は、繊維紡糸プロセスを促進するために前記材料中にある量の結晶相が存在することである。好ましくは弾性繊維は柔軟なコア、即ちガラス転移温度(Tg)が30℃未満のコアと、繊維紡糸プロセスを促進するためにある量の結晶相を有するアームとを含むブロックコポリマーから作られている。アーム材料の典型的な例としては、70モル%を超えるL,L−又はD,D−ラクチド、グリコリド、1,5−ジオキサン−2−オン及びε−カプロラクトンからなるものがあり、一方柔軟なコアのための材料の典型的な例は、30℃以下のTgを有する柔軟なコアを得るために、上記のモノマーの任意のものから作ることができる。
【0025】
弾性繊維を作成するブロックコポリマーは、2つのアームを有する線状ブロックコポリマー又は3つ以上のアームを有するいわゆるスターポリマーを含んでよい。後者のコポリマーは対称的又は非対称的開始剤から開始することができる。弾性繊維を形成するために部分的又は全体的に用いることができる合成吸収性ポリマーのさらに他の例としては、ポリウレアウレタン、ポリエステルウレタン及びポリカーボネートウレタン等の種々の脂肪族ポリウレタン、及びまたポリホスファゼン、ポリオルソエステル、又はβ−ブチロラクトンの種々のコポリマー等の材料がある。
【0026】
ポリ−γ−ブチロラクトン、及び種々の細菌内で産生され、自然に発生し、又は操作によるようなその種々の形態は、弾性繊維として又は上記の材料のいずれかと組み合わせて、本発明において用い得る弾性繊維に容易に変換されて、意図する目的を満たす弾性繊維を形成する。本発明による第1の繊維のセットは、好ましくは合成脂肪族ポリエステル、カーボネート、又はそれらの混合物から作られる。そのような材料の非制限的な例としては、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、又は1,5−ジオキサン−2−オン(パラ−ジオキサノン)等のモノマーの開環重合によって作られるものがある。材料中の結晶相の量を制御するため、ある量のトリメチレンカーボネート又は1,5−ジオキセパン−2−オンを上記の任意のモノマーと共重合して、第1の繊維のセットにおいて用いられる材料を得ることができる。第1の繊維のセットを形成するために部分的又は全体的に用いることができる合成吸収性ポリマーのさらに他の例としては、ポリウレアウレタン、ポリエステルウレタン及びポリカーボネートウレタン等の種々の脂肪族ポリウレタン、並びにポリホスファゼン、ポリオルソエステル、又はβ−ブチロラクトンの種々のコポリマー等の材料がある。
【0027】
したがって、本発明において用いられる弾性繊維は、メッシュの意図する機械的特性及び分解特性を達成するために、多数の種々の材料又はブレンド等のそれらの組み合わせから作ることができる。繊維それ自体は均一な材料であってもよく、side-by-side構造、sheath-and-core構造、island-in-the sea構造、又はセグメント構造等の種々の断面を有する2つ又は3つの異なった材料から作られた2成分又は3成分繊維であってもよい。
【0028】
添付の図面にも示した、特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、明細書に記載し、以下の特許請求の範囲を参照して定義される本発明の範囲内において、多くの変形及び改変が可能であることは当業者には明白であろう。特に「弾性変形可能な」等の用語はあまりに文字通りに解釈すべきではなく、本発明によって提供されるメッシュインプラントは、ある程度のヒステリシスを示し得ることも、即ちメッシュは外部延伸力を加えられた後で必ずしも正確にその元の形状を回復しないことも意味することに注意すべきである。本発明の最も重要な特徴は、メッシュに弾性繊維を組み込むことによって、延伸力を加えた後でメッシュインプラントがその元の形状に戻そうとする回復力が導入されるということである。例えば本発明によれば、メッシュ材料(10cm×10cm)をASTM D3787による標準試験方法に記載されたようにボールバースト固定具に固定し、16N/cmに相当する力で15秒以下の時間で変形させた場合に、メッシュは、メッシュが変形する前の元の位置にあるボールから、負荷が除去されてから1分後のメッシュ表面までの深さとして測定される残存変形が25%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満である形状に戻る。ボールの元の位置は、0.1Nの前負荷がかけられたメッシュの表面にボールが接触している位置として定義される。また、上述の繊維の種々のパターンは編み又は織りによって形成してもよいが、パターンを形成するために他の手法を用いてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(13;23;33;43;53)を含む第1のパターンで配置された第1の繊維のセット(12;22;32;42;52)を含む、組織欠損の再建で使用するためのポリマーメッシュインプラント(11;21;31;41;51)であって、
該メッシュインプラント(11;21;31;41;51)の第1の方向に配置された弾性繊維(14;24;34;44;54)が、該メッシュインプラント(11;21;31;41;51)がこの第1の方向に延伸されたときに該弾性繊維(14;24;34;44;54)が伸長され、該第1のパターンに対する回復力を発揮するように、各々の開口部(13;23;33;43;53)又はそのサブセットを横断していることを特徴とする、ポリマーメッシュインプラント。
【請求項2】
前記メッシュインプラント(21)の前記第1の方向で配置された弾性繊維(24)が、前記第1のパターンにおける前記開口部(23)の第1のサブセットを横断し、
該第1のパターンにおける該開口部(23)の第2のサブセットが、該メッシュインプラント(21)の第2の方向に配置された弾性繊維(24’)を含み、
該第2の方向が該第1の方向とは異なることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーメッシュインプラント(21)。
【請求項3】
前記メッシュインプラント(31)の前記第1の方向に配置された弾性繊維(34)、並びに該メッシュインプラントの第2の方向に配置された弾性繊維(34’)が、前記第1のパターンにおける前記開口部(33)の少なくともいくつかを横断し、
該第2の方向が該第1の方向とは異なることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーメッシュインプラント(31)。
【請求項4】
前記第1のセットの繊維(12;22;32;42;52)が第1の分解時間を有し、前記弾性繊維(14;24;34;44;54)が第2の分解時間を有し、該第2の分解時間が該第1の分解時間とは異なることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーメッシュインプラント(11;21;31;41;51)。
【請求項5】
前記第1のセットの繊維(12;22;32;42;52)が第1の分解時間を有し、前記弾性繊維(14;24;34;44;54)が第2の分解時間を有し、該第2の分解時間が該第1の分解時間よりも短いことを特徴とする、請求項1に記載のポリマーメッシュインプラント(11;21;31;41;51)。
【請求項6】
前記メッシュインプラント(41)が、高い弾性率を有し且つ前記第1のパターンにおける開口部(43)を横断するように第2のパターンで配置された、第2の繊維のセット(45)をさらに含み、該第2のパターンが、該第2のセットの繊維(45)が該メッシュインプラント(41)の前記第1の方向における該第1のパターンの動きを固定するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーメッシュインプラント(41)。
【請求項7】
前記第1のセットの繊維(42)が第1の分解時間を有し、前記弾性繊維(44)が第2の分解時間を有し、前記高弾性率の繊維(45)が第3の分解時間を有し、該第1の分解時間が最長の時間であり、該第3の分解時間が最短であり、該第2の分解時間がそれらの中間であることを特徴とする、請求項6に記載のポリマーメッシュインプラント(41)。
【請求項8】
前記メッシュインプラント(51)が、高い弾性率を有し且つ前記第1のパターンにおける開口部を横断するように第2のパターンに配置された、第2の繊維のセット(55)をさらに含み、該第2のパターンが、該第2のセットの繊維(55)が該メッシュインプラントの第2の方向における該第1のパターンの動きを固定するように配置され、該第2の方向が前記第1の方向と異なることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーメッシュインプラント(51)。
【請求項9】
前記第1のセットの繊維(52)が第1の分解時間を有し、前記弾性繊維(54)が第2の分解時間を有し、前記高弾性率の繊維(55)が第3の分解時間を有し、該第1の分解時間が最長の時間であり、該第3の分解時間が最短であり、該第2の分解時間がそれらの中間であることを特徴とする、請求項8に記載のポリマーメッシュインプラント(51)。
【請求項10】
前記第1及び第2のパターンが編みパターン又は織りパターンであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマーメッシュインプラント(11;21;31;41;51)。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96031(P2012−96031A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−235572(P2011−235572)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(511260643)ノーバス サイエンティフィック ピーティーイー.リミテッド (1)
【Fターム(参考)】