説明

弾性布帛

【課題】
薄く軽い布帛であっても快適な着用感、フィット感を提供することができる弾性布帛を得る。
【解決手段】
分子量が450以上1600以下であるポリオール、有機ジイソシアネート化合物、およびジアミン化合物から重合されたポリウレタンの弾性繊維を含有する弾性布帛であって、前記ポリオールは、分子量比が2.3以上、重量平均分子量/数平均分子量の比が1.8以上であることを特徴とする弾性布帛とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性布帛に関するものである。さらに詳しくは、ポリウレタン弾性繊維を含む従来の弾性布帛と比べ、薄くて軽い布帛であっても快適なフィット感を達成することを可能とする、ハイパワーポリウレタン弾性繊維を用いた弾性布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途、紙おむつや生理用ナプキンなどのサニタリー用途(衛材用途)、産業資材用途に幅広く使用されている。
【0003】
かかる弾性繊維の中でもポリウレタン弾性繊維は破断強伸度が高いこと、弾性回復力が高いこと、耐熱性に優れ、かつ適度な熱セット性を有することから、ナイロン糸やポリエステル糸のような合成繊維だけでなく、綿やウールといった天然繊維、半合成繊維等とも組み合わされ、最近ますます広範に使用されている。
【0004】
近年、衣服のソフトな風合い、運動する際に動きを阻害しない、より快適な着用感へのニーズ、共働きの家庭が増加したことに伴い、洗濯後の衣服が早く乾くこと等へのニーズが高まっており、衣服の薄地化、軽量化が消費者から求められている。ナイロンやポリエステルといったハードヤーンは既に極細繊維の開発、上市に至っている。ポリウレタンについても近年、広範に使用されている環境下、細繊度化の要望が強くなっている。
【0005】
一方で細繊度化してもその着用感を損なわないためには従来と同様の伸縮特性が求められるため、例えば繊度を1/2にしてもその応力、回復力は同等を維持しなければならない。すなわちポリウレタン弾性繊維では100から200%伸長といった実使用領域での単位繊度あたりの応力、回復力を高めたいわゆる「ハイパワー糸」が求められている。
【0006】
応力、回復力が高い弾性繊維としては、ショア硬度80から95°のポリウレタンを溶融紡糸および冷却の後に不可逆的に延伸し、その後直ちに少なくとも600m/分の速度で巻き取ることによって製造されたマルチフィラメント弾性糸が提案されている(特許文献1)。この技術では100%伸長時の応力が1.46から2.1cN/dtexと、従来のポリウレタン弾性糸の100%伸長時の応力が約0.05cN/dtexであるのと比較して、高い応力を達成することが出来る。しかしこの技術では破断伸度が145から160%と低いため、弾性布帛を形成する際の加工に耐えるのが困難であり、また、伸縮性衣料を形成しても十分に伸びず、却って着心地や着用感の悪いものに仕上がってしまう。
【0007】
また高強度ポリウレタン弾性繊維を得る手段として、両末端に水酸基を有するポリマージオールに過剰モル量の有機ジイソシアネート化合物を反応させてプレポリマーを合成し、ついでこのプレポリマーにジアミン化合物を反応させて得られるポリウレタンウレア重合体溶液を用いる紡糸において、この重合体溶液を90℃以上130℃以下の温度領域で紡糸するポリウレタンウレア弾性繊維の製造方法(特許文献2)や炭素数6以上20以下の炭化水素基を有する特定のアルキルスルホン酸塩や硫酸塩化合物を添加する方法が提案されている(特許文献3)。しかし、これらの文献では300%での弾性率や破断強度について言及しているのみであり、実際に弾性布帛を形成する際に伸長する100〜200%伸長時の応力、回復力を高めることの関しての示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−86683号公報
【特許文献2】特開平9−59821号公報
【特許文献3】特許第2968049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、薄く軽い布帛であっても快適な着用感、フィット感を提供することができる弾性布帛を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの手段を採用する。
(1) 分子量が450以上1600以下であるポリオール、有機ジイソシアネート化合物、およびジアミン化合物から重合されたポリウレタンの弾性繊維を含有する弾性布帛であって、前記ポリオールは、分子量比が2.3以上、重量平均分子量/数平均分子量の比が1.8以上であることを特徴とする弾性布帛。
(2) 前記ポリオールは、相対的に高分子量のポリオールと低分子量のポリオールとがブレンドされてなるものであることを特徴とする、前記(1)記載の弾性布帛。
(3) 前記ポリオールがポリエーテル系ポリオールであることを特徴とする、前記(1)または(2)記載の弾性布帛。
(4) 前記ポリオールと前記有機ジイソシアネート化合物の反応当量比(モル比)が2以下であることを特徴とする、前記(1)から(3)いずれかに記載の弾性布帛。
(5) 前記ポリウレタンがプレポリマー法により溶液重合されたものであることを特徴とする、前記(1)から(4)いずれかに記載の弾性布帛。
(6) 前記弾性繊維が前記ポリウレタンを含有する溶液を乾式紡糸法により紡糸して得られるものであることを特徴とする前記(1)から(5)いずれかに記載の弾性布帛。
(7) 前記ポリウレタンは、前記溶液において、前記ジアミン化合物に由来する末端基濃度がポリウレタンに対して5〜50meq/kgであることを特徴とする、前記(6)記載の弾性布帛。
(8) 前記ポリウレタンは、前記溶液において、重量平均分子量がスチレン換算で10万から18万であることを特徴とする、前記(6)または(7)記載の弾性布帛。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分子量が450以上1600以下のポリオール、有機ジイソシアネート化合物、およびジアミン化合物から重合されるポリウレタンの弾性繊維を含有する弾性布帛であって、該ポリオールの分子量比が2.3以上、重量平均分子量/数平均分子量の比が1.8以上であるので、ポリウレタンの弾性繊維特有の高い破断強伸度、弾性回復率を維持したまま弾性布帛にした際の実使用領域である100から200%伸長時の応力、回復力を高めることができる。そのため、弾性布帛として、従来に比べ薄く、軽い布帛であるにもかかわらず、優れた締め付け感、フィット感を提供でき、着用感に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
【0013】
本発明の弾性布帛は、ポリオール、ジイソシアネート化合物、およびジアミン化合物などからなるポリウレタンウレアの弾性繊維(以下ポリウレタン弾性繊維という)を含むものである。
【0014】
ポリウレタン弾性繊維はポリオール、ジイソシアネート化合物、ジアミン化合物などから重合されるが、本発明においてはポリオールの分子量が450以上1600以下であることが重要である。この分子量範囲のポリオールを用いることにより破断強伸度を維持したまま従来にはない回復力を達成することが可能となる。ポリオールの分子量は600以上1500以下であることがより好ましい。650以上1400以下であるとより好ましい。
【0015】
また、本発明で使用するポリオールは、分子量比が2.3以上であり、かつ、重量平均分子量/数平均分子量の比が1.8以上である。このようなポリオールを使用することにより伸度、応力特性に優れたポリウレタン弾性繊維を得ることが出来る。好ましくは、分子量比が2.3以上3以下、重量平均分子量/数平均分子量の比が1.8以上10以下である。
【0016】
尚ポリオールの分子量比は以下の式(1)によって求める。
【0017】
【数1】

【0018】
なお、平均分子量Aは、JIS K1557-1(2007)に定められた方法によって求める水酸基価Bにより、以下の式により算出する。
【0019】
【数2】

【0020】
また重量平均分子量、数平均分子量はGPCで測定してポリスチレンにより換算した結果を用いる。
【0021】
本発明で用いるポリオールは単一であってもよいし、分子量の異なる2種以上のポリオール(相対的に高分子量のポリオールと低分子量のポリオール)をブレンドすることにより上記の範囲の中の所望の分子量にしても良いが、分子量の異なる2種以上のポリオールをブレンドして所定の分子量にすることが好ましい。ブレンドすることにより伸度、応力特性に優れたポリウレタン弾性繊維を得やすくなる。混合するポリオールの分子量は特に規定されるものではなく、例えば分子量が450未満のポリオールと1600より高分子のポリオールを混合してもよいし、混合する別のポリオールよりも分子量が低いものの分子量が450以上であるポリオールと、混合する別のポリオールよりも分子量が高いものの分子量が1600以下であるポリオールとを混合してもよい。但し、ブレンドする複数種のポリオールの分子量が大きく解離しているとポリオールそれぞれの反応性が異なってしまうので、ブレンドする複数種のポリオールの分子量差は1000以内に留めておくことが好ましい。分子量差が600以内であるとより好ましい。
【0022】
ポリオールはポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系いずれであってもよい。これらは、2種以上混合して用いてもよいし、共重合して用いてもよいが、伸度、柔軟性を糸に付与する観点からポリエーテル系のポリオールを用いることが好ましい。
【0023】
ポリエーテル系ポリオールとして、例えばポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3−メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が挙げられる。これらを2種以上混合もしくは共重合して用いてもよいが、糸の強伸度と回復力の観点からPTMG、3M−PTMG、この2種をブレンドしたポリオールを用いることが好ましい。PTMG、3M−PTMG、もしくはこの2種をブレンドしたポリオールに対して特性を損なわない程度に他のポリオールを混合もしくは共重合しても何ら構わない。
【0024】
次に本発明に使用される有機ジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂環族、脂肪族ジイソシアネート化合物を用いることが出来る。芳香族ジイソシアネート化合物として、例えばジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環族、脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらの有機ジイソシアネート化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの有機ジイソシアネート化合物のうち、弾性繊維の強度や耐熱性に優れることから芳香族ジイソシアネート化合物を用いることが好ましく、MDIを用いることがさらに好ましい。MDIに対して他の1種または2種以上の芳香族ジイソシアネート化合物を混合して用いてもよい。
【0025】
ポリオールと有機ジイソシアネート化合物の反応当量比(モル比)は2以下であることが好ましい。この範囲であると強伸度および回復力に優れるだけでなく、加工性にも優れた弾性繊維を得ることが出来る。すなわち、2超であると重合時にゲルが生成するため紡糸性に問題が生じやすい。さらにはゲルの部分が弱糸になることがあり品質が安定しにくくなる。したがって、2以下であることが好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下が最も好ましい。一方、1.2未満であると耐熱性が悪くなりかつ破断強伸度も低くなり易くなるため品質に問題が生じ易い。したがって、下限としては、1.2以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましい。
【0026】
本発明のポリウレタン弾性繊維の鎖伸長剤はジアミン化合物である。ジアミン化合物を用いることにより、高い回復力を達成することが可能となる。
【0027】
ジアミン化合物として、低分子量ジアミン化合物、例えばヒドラジン、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルブタン、2,4−ジアミノ−1−メチルシクロヘキサン、1,3−ペンタンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキサイド、ヘキサメチレンジアミン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキサイドなどを挙げることができる。これらの中から1種もしくは2種以上を混合して使うことが可能である。また特性を損なわない程度にエチレングリコールなどの低分子量ジオール化合物を併用してもよい。
【0028】
ジアミン化合物において好ましいのは炭素数が2から5のジアミン化合物であり、伸度および弾性回復性等に優れた弾性繊維を製造するという観点からすると、エチレンジアミンを用いることが特に好ましい。これらの鎖伸長剤の他に、架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物(例えばジエチレントリアミン等)を、本発明の効果を失わない程度であれば併用してもよい。
【0029】
得られるポリウレタンの分子量を制御するために、鎖伸長反応時に鎖末端停止剤を併用することが好ましい。紡糸後の糸特性が安定することから鎖停止剤に対する鎖伸長剤のモル比は10〜20の間であることが好ましい。より好ましくは14〜18の間である。
【0030】
かかる鎖末端停止剤としては、n−ブタノールのようなモノアルコール化合物や、ジメチルアミン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘキシルアミンのようなモノアミン化合物を用いることができる。好ましくはモノアミン化合物であり、更に好ましくはジエチルアミンである。鎖末端停止剤は、通常、鎖伸長剤と混合して使用される。
【0031】
以上のようなポリオールと有機ジイソシアネート化合物とジアミン化合物などから重合されるポリウレタンの重合方法は特に限定されるものではなく、溶融重合法、溶液重合法のいずれでもよく、他の方法でもよいが、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタン中にゲルなどの異物の発生が少ない利点がある。
【0032】
溶液重合法の場合、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、ポリオールと有機ジイソシアネート化合物、およびジアミン化合物等の原料を用い重合を行なうことによりポリウレタン溶液を得ることができる。その反応方法についても特に限定されるものではなく、例えば溶剤中に各原料を投入して溶解させ、適度な温度に加熱し反応させるワンショット法、ポリオールと有機ジイソシアネート化合物とをまず無溶媒下で反応させてプレポリマーとし、しかる後に、該プレポリマーを溶剤に溶解、ジアミン化合物で鎖伸長反応させ、ポリウレタンを合成するプレポリマー法などが挙げられるが、好ましくはプレポリマー法である。
【0033】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0034】
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0035】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0036】
得られたポリウレタン溶液中のポリウレタンの濃度は、特に限定されるものではないが、ポリウレタンの分子量および溶液粘度、得られる弾性繊維の伸縮特性から、20〜60重量%の間であることが好ましい。より好ましくは30〜50重量%の間であり、更に好ましくは35〜45重量%の間である。
【0037】
得られたポリウレタン溶液中、ポリウレタンのジアミン化合物に由来する末端基濃度は、ポリウレタンに対して5〜50meq/kgであることが好ましい。より好ましくは10〜45meq/kgの間である。末端基濃度が50meq/kgよりも高くなるとポリマの分子量が短く、応力、回復力が却って低くなり易い。また、5meq/kg未満であると分子量が高くなるため、一部がゲル化してしまい伸度、強度の低い部分が生じてしまい、品質が安定しない、溶液粘度の観点から濃度を高くすることが困難となり生産性が低下してしまうといった問題が生じやすい。
【0038】
なお、ポリウレタンのジアミン化合物に由来する末端基濃度を測定するには次のように行う。ポリウレタン溶液にDMAcを加え、ポリウレタン濃度が1.77重量%の溶液とする。そして、三菱化学(株)製自動滴定装置GT−100を用いて、p−トルエンスルホン酸(0.01N)で電位差滴定して、第1級アミンと2級アミンとの含量合計(A)を求める。次いで、同様に調製したポリウレタン溶液にサリチルアルデヒド(20%イソプロピルアルコール溶液)を添加して、第1級アミンと反応させた後、第2級アミンをp−トルエンスルホン酸(0.01N)で電位差滴定し、第2級アミン含量(B)を求める。次式によりジアミン化合物に由来する末端基濃度を算出する。
【0039】
【数3】

【0040】
本発明に用いられるポリウレタンの分子量は、回復力や強度の高い繊維を得る観点から、重量平均分子量として10万以上18万以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0041】
また、本発明において、ポリウレタン弾性繊維には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐ガス安定剤などとして、いわゆるBHTや住友化学(株)製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などをはじめとするヒンダードフェノール系薬剤、各種の“チヌビン”(登録商標)をはじめとするベンゾトリアゾール系薬剤、住友化学(株)製の”スミライザー”P−16をはじめとするリン系薬剤、各種の“チヌビン”をはじめとするヒンダードアミン系薬剤、さらに酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラックをはじめとする無機顔料、ステアリン酸マグネシウムをはじめとする金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などをはじめとする各種の帯電防止剤などを含有させてもよい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるためには、酸化窒素補足剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN−150、熱酸化安定剤、例えば住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80、光安定剤、例えば住友化学工業(株)製の“スミソーブ”(登録商標)300#622などを使用することが好ましい。
【0042】
これら薬剤は、紡糸するまでにポリウレタン溶液に添加していればよく、その添加・混合方法としては任意の方法を採用することができる。その代表的な方法として、紡糸溶液に添加しスタティックミキサーで混合する方法や攪拌する方法などを採用することが好ましい。ここで、添加剤は溶液にして添加することが好ましい。溶液であるとポリウレタン溶液への均一な添加が可能となる。
【0043】
溶液重合法により得られたポリウレタンを紡糸してポリウレタン弾性繊維を形成する際の紡糸法についても特に規定されるものではなく、公知の方法、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸を適用することが可能であるが、生産性の観点、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から乾式紡糸が好ましい。
【0044】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。たとえば、ポリウレタン弾性繊維の残留歪みや初期応力は、ゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので糸の使用目的に応じて決めればよいが、一般的には、ゴデローラーに対する巻取機の速度比を1.1〜1.8の範囲とすることが好ましい。また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性繊維の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
【0045】
そして、本発明においてポリウレタン弾性繊維の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0046】
本発明においては、以上のようなポリウレタン弾性繊維を用いて布帛を構成する。かかる布帛は、上記ポリウレタン弾性繊維のみから構成されてもよいが、たとえばポリエステル糸やナイロン糸等を混用した混用弾性布帛においても本発明の効果を発現することができる。弾性布帛は編物でも織物でもよく、編物であれば経編、緯編、丸編いずれでもよく、織物であれば平織、斜文織などいずれの織組織であってもよい。布帛化する際に従来であれば、例えば44dtexの糸でなければ達成出来なかった着圧を、本発明によれば繊度が33dtexもしくは22dtexの弾性繊維で達成することが出来る。したがって、より薄く、より軽い布帛で快適な着圧、フィット感を達成することが可能となり、布帛の薄地、軽量化が可能となることにより、衣服の着用感も改善することが可能となる。
【0047】
混用弾性布帛におけるポリウレタン弾性繊維の混率は、相手糸や編組織、織組織によるが、一般的に約2%から40%の範囲である。かかる混率であれば、締め付け感、フィット感に優れ、かつ、従来に比べて薄く、軽い布帛とすることが可能である。
【実施例】
【0048】
以下実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明がこれら実施例により限定されるものではない。
【0049】
[ポリウレタン弾性繊維の応力、回復力、破断強伸度の測定]
ポリウレタン弾性繊維の応力、回復力はポリウレタン弾性繊維をインストロン5500型引張試験機を用いる事により測定した。詳しくは、試長5cm(L1)の試料を、50cm/分の引張速度で200%伸長することを5回繰り返した。このとき、1回目の100%伸長時応力および200%伸長時応力、ならびに5回目の100%伸長時応力および200%伸長時応力を測定した。また、5回繰り返した後には、試料の長さを200%伸長のまま30秒間保持し、30秒間保持後の応力(すなわち回復力)を測定した。このようにして、5回の200%伸張、保持及び回復の操作を繰り返した後、6回目の伸長において試料が破断するまで伸長して、その破断時の応力(破断強度)および破断時の試料長さ(L2)を測定し、破断伸度を下記式により算出した。測定はそれぞれの水準で5回実施して、その平均値をとった。
【0050】
【数4】

【0051】
[弾性布帛の作成および評価]
ポリウレタン弾性繊維を3倍に延伸し、これに鞘糸としてポリアミド加工糸(“キュープ”、東レ(株)製、33DTEX,26フィラメント)を撚り数800T/mでカバーリングして、S撚りとZ撚りのシングルカバリング糸(SCY)を作製した。さらに、パンスト編機(ロナティ社製、針数400本)の給糸口1,3口に上記S撚りSCYを、2,4口に上記Z撚りSCYを、編み込み張力1.0gで給糸し、編地を編成した。
【0052】
次いで、編地の染色加工を以下の通り実施し、タイツ編地を得た。
(1) プレセット:真空乾燥機使用、90℃×10分
(2) 染色: チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の染料“Lanaset”(登録商標) Black Bを2.0owf%使用して90℃で60分間処理し黒色に染めた。染色時のpH調整は酢酸と硫安で実施した。
(3) 最後に柔軟処理を行い、セット工程(パンストセット機使用、セット:115℃×10秒、乾燥:120℃×30秒) を通して仕上げた。
得られたタイツを10名の方に着用していただき、編地のストレッチ性(足の縦方向の伸び)、サポート力(足の周方向の締め付け感)を以下の基準で採点してもらいその平均点をとった。なお、ストレッチ性はタイツを着用する際の伸長の度合いの官能評価であり、十分に伸長しない編地であると着用しようとする際に編地の突っ張りを感じる等、着用しにくい感じとなる。一方、サポート力は着用後の足周方向の締め付け感の官能評価であり、回復力の低い編地であると、着用時のフィット感に乏しいため履き心地の悪いものとなる。
【0053】
<ストレッチ性評価点>
3:ストレッチ性が優れている。
【0054】
2:ストレッチ性がやや欠ける。
【0055】
1:ストレッチ性が欠ける。
【0056】
<サポート力評価点>
3:サポート力が優れている。
【0057】
2:サポート力がやや欠ける。
【0058】
1:サポート力に欠ける。
【0059】
<総合評価>
ストレッチ性の結果とサポート力の結果の和を総合評価として示した。
【0060】
[実施例1]
分子量650のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と分子量1800のPTMGを4:5の重量比でブレンドした分子量1000、分子量比2.6、分子量分布(分子量分布=重量平均分子量/数平均分子量)6.95のPTMG390gと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)151.12gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、3時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比(モル比)は1.55、反応後の残存イソシアネート基は3.33重量%であった。
【0061】
得られたプレポリマー540gを1166gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液132.48gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液9.76gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は24meq/kgであった。
【0062】
このポリウレタン重合体溶液にt−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体とを2対1重量比で混合しDMAcを添加して30重量%の添加剤溶液を調製した。ポリウレタン重合体溶液96重量部と添加剤溶液4重量部を混合し、紡糸原液とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比を1.25として650m/分のスピードで乾式紡糸することにより44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0063】
得られた糸の特性を表1に、得られた編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0064】
[実施例2]
実施例1と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0065】
得られた糸の特性を表1に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0066】
[実施例3]
分子量450のPTMGと分子量850のPTMGを1:1の重量比でブレンドした分子量650、分子量比2.4、分子量分布7.66のPTMG 390gとMDI 210gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、3時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.40、反応後の残存イソシアネート基は3.36重量%であった。
【0067】
得られたプレポリマー600gを1294.78gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液149.04gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液8.78gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は19.5meq/kgであった。
【0068】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0069】
得られた糸の特性を表1に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0070】
[実施例4]
分子量1000のPTMGと分子量1800のPTMGを1:1の重量比でブレンドした分子量1400、分子量比2.6、分子量分布2.95のPTMG 400gとMDI 121.42gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、4時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.62、反応後の残存イソシアネート基は3.22重量%であった。
【0071】
得られたプレポリマー520gを1122.66gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液123.86gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液12.16gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は31meq/kgであった。
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0072】
得られた糸の特性を表1に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0073】
[実施例5]
実施例4と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0074】
得られた糸の特性を表1に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0075】
[実施例6]
分子量850のPTMGと分子量1300のPTMGを1:5の重量比でブレンドした分子量1200、分子量比2.5、分子量分布3.06のPTMG 400gとMDI 137.50gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、3時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.65、反応後の残存イソシアネート基は3.38重量%であった。
【0076】
得られたプレポリマー535gを1152.04gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液133.92gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液10.52gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は26meq/kgであった。
【0077】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0078】
得られた糸の特性を表1に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0079】
[実施例7]
分子量2000のTHFと3MeTHFを共重合したポリオール(3MePTMG)と分子量1000の3MePTMGを1:3の重量比でブレンドした分子量1200、分子量比2.3、分子量分布5.31のポリオール400gとMDI 135gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、4時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.62、反応後の残存イソシアネート基は3.25重量%であった。
【0080】
得られたプレポリマー530gを1148gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液123.05gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液9.98gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は25meq/kgであった。
【0081】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0082】
得られた糸の特性を表2に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0083】
[実施例8]
実施例7と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0084】
得られた糸の特性を表2に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0085】
[実施例9]
分子量2000の3MePTMGと分子量1000の3MePTMGを1:1の重量比でブレンドした分子量1500、分子量比2.4、分子量分布5.85のポリオール 400gとMDI 114gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、4時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.71、反応後の残存イソシアネート基は3.10重量%であった。
【0086】
得られたプレポリマー510gを1108gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液112.90gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液9.16gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は24meq/kgであった。
【0087】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0088】
得られた糸の特性を表2に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0089】
[実施例10]
実施例9と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0090】
得られた糸の特性を表2に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0091】
[実施例11]
分子量2000の3MePTMGと分子量1000のPTMGを1:3の重量比でブレンドした分子量1250、分子量比2.5、分子量分布6.40のポリオール 400gとMDI 130gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、4時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.63、反応後の残存イソシアネート基は3.17重量%であった。
【0092】
得られたプレポリマー525gを1139gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液119.07gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液9.66gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は25meq/kgであった。
【0093】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0094】
得られた糸の特性を表2に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0095】
[実施例12]
実施例11と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0096】
得られた糸の特性を表2に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0097】
[実施例13]
分子量2000のPTMGと分子量1000の3MePTMGを1:3の重量比でブレンドした分子量1250、分子量比2.6、分子量分布6.95のポリオール 400gとMDI 130gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、4時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.63、反応後の残存イソシアネート基は3.17重量%であった。
【0098】
得られたプレポリマー525gを1140gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液119.07gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液9.66gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は24meq/kgであった。
【0099】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0100】
得られた糸の特性を表3に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0101】
[実施例14]
実施例13と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0102】
得られた糸の特性を表3に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0103】
[実施例15]
分子量1000の3MePTMGと分子量650のPTMGを1:1の重量比でブレンドした分子量825、分子量比2.7、分子量分布7.49のポリオール 400gとMDI 175gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、4時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.44、反応後の残存イソシアネート基は3.14重量%であった。
【0104】
得られたプレポリマー570gを1238gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液128.18gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液10.40gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は24meq/kgであった。
【0105】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0106】
得られた糸の特性を表3に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0107】
[実施例16]
実施例15と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0108】
得られた糸の特性を表3に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0109】
[実施例17]
ネオペンチルグリコールと1,4−ブタンジオールを共重合した分子量1800のポリオールと分子量1000のPTMGを1:1の重量比でブレンドした分子量1400、分子量比2.4、分子量分布5.85のポリオール 400gとMDI 120gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、4時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.68、反応後の残存イソシアネート基は3.14重量%であった。
【0110】
得られたプレポリマー515gを1118gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液115.64gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液9.38gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は24meq/kgであった。
【0111】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0112】
得られた糸の特性を表3に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0113】
[実施例18]
実施例17と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0114】
得られた糸の特性を表3に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0115】
[比較例1]
分子量1800、分子量比2.0、分子量分布1.77のPTMG 400gとMDI 87.78gを窒素気流下、無溶媒の条件で90℃、2時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.58、反応後の残存イソシアネート基は2.22重量%であった。
【0116】
得られたプレポリマー485gを1071.67gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液79.58gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液10.41gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は28meq/kgであった。
【0117】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0118】
得られた糸の特性を表4に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0119】
[比較例2]
比較例1と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0120】
得られた糸の特性を表4に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0121】
[比較例3]
分子量1800、分子量比2.0、分子量分布1.77のPTMG 400gとMDI 97.22gを窒素気流下、無溶媒の条件で90℃、2時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.75、反応後の残存イソシアネート基は2.80重量%であった。
【0122】
得られたプレポリマー505gを1084.80gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液124.06gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液16.24gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は40meq/kgであった。
【0123】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、44DTEX,4フィラメントの糸を得た。
【0124】
得られた糸の特性を表4に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0125】
[比較例4]
比較例3と同じ条件でポリウレタン重合体溶液を重合、添加剤溶液を添加して紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0126】
得られた糸の特性を表4に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
[比較例5]
分子量1000、分子量比2.1、分子量分布4.66のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)390gと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)151.12gを窒素気流下、無溶媒の条件で80℃、3時間反応させプレポリマーを得た。PTMGとMDIの反応当量比は1.55、反応後の残存イソシアネート基は3.33重量%であった。
【0127】
得られたプレポリマー540gを1166gのDMAcに溶解し、10重量%のエチレンジアミン/DMAc溶液132.48gと10重量%のジエチルアミン/DMAc溶液9.76gを混合した鎖伸長剤溶液を40℃で激しく攪拌しながら添加することにより、濃度30重量%の粘調な重合体溶液を得た。この重合体溶液のジアミン化合物に由来する末端基濃度は24meq/kgであった。
【0128】
このポリウレタン重合体溶液に実施例1と同様に添加剤溶液を混合し、紡糸原液を調製、紡糸を行い、22DTEX,3フィラメントの糸を得た。
【0129】
得られた糸の特性を表4に、編地のストレッチ性、サポート力についての官能評価の結果を表5に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
【表4】

【0134】
【表5】

【0135】
以上の実施例と比較例において、同じ繊度同士、例えば44dtexである太繊度の実施例1,4,7,9,11,13,15,17と比較例1,3とで加工時の延伸、実際の製品での繰り返し着用を考慮して5サイクルにおける200%伸長時の応力、回復力を比較すると、ポリオールの組成に関わらず応力、回復力とも実施例におけるポリウレタン弾性糸が比較例におけるポリウレタン弾性糸の約1.5倍から2倍程度高いことがわかる。
【0136】

また、実施例2,3,5,6,8,10,12,14,16,18のポリウレタン弾性糸は、22dtexという細繊度であるにも関わらず、5サイクルにおける200%伸長時の応力、回復力が、44dtexの太さで紡糸した比較例1,3のポリウレタン弾性糸の0.75倍から0.9倍程度を維持している。さらに、該実施例2,3,5,6,8,10,12,14,16,18の細繊度のポリウレタン弾性糸は、同じ細繊度の比較例2,4におけるポリウレタン弾性糸の約1.4倍から2倍の応力、回復力を有している。これは表5に示されるサポート力において、22dtexで紡糸した実施例の結果は2から2.6であり、44dtexで紡糸した比較例の結果に比べても遜色のないサポート力を被験者が体感している事にも合致しており、細い糸で適度なストレッチ性とサポート力を両立出来ることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明による弾性布帛は、実使用領域である100〜200%伸長時の単位繊度あたりでの応力、回復力が大きく、かつ、破断伸度も大きなハイパワーポリウレタン弾性繊維を用いることにより、薄く軽い布帛であっても快適な着用感、フィット感を有する弾性布帛を提供することができる。そのため、このような弾性布帛を使用して製造された衣服などは、従来と比較して薄地、軽量化が可能となり、かつ、脱着性、フィット性、着用感に優れたものとなる。
【0138】
この弾性布帛の使用可能な具体的用途としては、例えばソックス、ストッキング、丸編、トリコット、水着、スキーズボン、作業服、煙火服、ゴルフズボン、ウエットスーツ、ブラジャー、ガードル、手袋等の各種繊維製品、締め付け材料が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が450以上1600以下であるポリオール、有機ジイソシアネート化合物、およびジアミン化合物から重合されたポリウレタンの弾性繊維を含有する弾性布帛であって、前記ポリオールは、分子量比が2.3以上、重量平均分子量/数平均分子量の比が1.8以上であることを特徴とする弾性布帛。
【請求項2】
前記ポリオールは、相対的に高分子量のポリオールと低分子量のポリオールとがブレンドされてなるものであることを特徴とする請求項1記載の弾性布帛。
【請求項3】
前記ポリオールがポリエーテル系ポリオールであることを特徴とする請求項1または2記載の弾性布帛。
【請求項4】
前記ポリオールと前記有機ジイソシアネート化合物の反応当量比(モル比)が2以下であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の弾性布帛。
【請求項5】
前記ポリウレタンがプレポリマー法により溶液重合されたものであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の弾性布帛。
【請求項6】
前記弾性繊維が前記ポリウレタンを含有する溶液を乾式紡糸法により紡糸して得られるものであることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の弾性布帛。
【請求項7】
前記ポリウレタンは、前記溶液において、前記ジアミン化合物に由来する末端基濃度がポリウレタンに対して5〜50meq/kgであることを特徴とする請求項6記載の弾性布帛。
【請求項8】
前記ポリウレタンは、前記溶液において、重量平均分子量がスチレン換算で10万から18万であることを特徴とする請求項6または7記載の弾性布帛。

【公開番号】特開2013−11048(P2013−11048A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114192(P2012−114192)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】