説明

弾性波発生方法及び装置

【課題】構造が簡単で小型な弾性波発生装置を構成し得る、弾性波の発生方法及びその装置を提供する。
【解決手段】検査対象物10に対向して磁石20を配置するとともに磁石20と検査対象物10との間に磁性体回転円盤31を配置する。そして、磁性体回転円盤31を回転させ、その回転軸を中心とする同心円上に設けた複数の穴を、磁石20に対向する位置に周期的に位置させる。これにより、検査対象物10と磁石20との間を周期的に遮断・開放し、検査対象物10に変動磁場を印加して磁歪効果により検査対象物10内に弾性波を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波発生方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象物の内部を非破壊的に検査する場合や、検査対象物の厚みの計測を行う場合、検査対象物内部に弾性波(超音波)を発生させ、その波の伝播を計測する超音波検査法が用いられている。
【0003】
検査対象物内部に弾性波を発生させる方法として、従来、磁性体である検査対象物の表面に蛇行コイルを設けるとともに、この蛇行コイルに磁場を印加するためのバイアス磁場用電磁石を設け、バイアス磁場内に位置する蛇行コイルに電流を流すことで、検査対象物内に磁歪効果による伸縮を周期的に生じさせ、弾性波を発生するようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−329868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、検査対象物に直接的に磁場を印加する蛇行コイルの他に、バイアス磁場用電磁石が必要であり、また、バイアス磁場用電磁石に電流を供給するアンプが必要となるなど、構造の複雑化や大型化を招くという問題があった。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、構造が簡単で小型な弾性波発生装置を構成し得る、弾性波発生方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波発生方法は、検査対象物に対向して磁石を配置し、磁石と検査対象物との間を、磁性体部材により遮断・開放する動作を周期的に繰り返し行って検査対象物に変動磁場を印加し、磁歪効果により検査対象物内に弾性波を発生させるものである。
【0007】
また、本発明に係る弾性波発生方法は、回転軸を中心とする同心円上に複数の穴が形成された磁性体部材としての磁性体回転円盤を回転させ、穴を磁石に対向する位置に周期的に位置させることで、検査対象物に変動磁場を印加するものである。
【0008】
また、本発明に係る弾性波発生方法は、磁性体部材としての磁性体シャッタにより、磁石と検査対象物との間を遮断・開放するようにしたものである。
【0009】
また、本発明に係る弾性波発生方法は、磁石に永久磁石を用いるものである。
【0010】
本発明に係る弾性波発生装置は、検査対象物に対向して配置される磁石と、磁石と検査対象物との間に配置される磁性体部材を備え、磁性体部材により磁石と検査対象物との間を遮断・開放する動作を周期的に繰り返し行い、検査対象物に変動磁場を印加する周期的磁力印加手段とを備えたものである。
【0011】
また、本発明に係る弾性波発生装置は、周期的磁力印加手段が、磁性体部材としての磁性体回転円盤と、磁性体回転円盤を回転駆動する駆動手段とを備え、磁性体回転円盤は、磁性体回転円盤の回転軸を中心とする同心円上に、磁石の磁力が検査対象物に向けて通過できるようにするための複数の穴を有し、また、磁石は、同心円に対向して配置されており、磁性体回転円盤を回転させ、穴を磁石に対向する位置に周期的に位置させることで、検査対象物に変動磁場を印加するものである。
【0012】
また、本発明に係る弾性波発生装置は、周期的磁力印加手段が、磁性体部材としての磁性体シャッタと、磁石と対向する位置に配置され、磁性体により開閉される開口部と、磁性体シャッタを駆動する駆動手段とを備え、磁性体シャッタにより開口部を開閉することにより、検査対象物に変動磁場を印加するものである。
【0013】
また、本発明に係る弾性波発生装置は、磁石に永久磁石を用いるものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、磁石と検査対象物との間を磁性体部材により周期的に遮断・開放し、検査対象物に印加する磁力を周期的に増減させて検査対象物に変動磁場を印加し、磁歪効果により検査対象物内に弾性波を発生させるようにしたので、従来のようなバイアス用の電磁石を用いる方法に比べ、構造が簡単で小型な弾性波発生装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の弾性波発生方法を適用した弾性波発生装置の構成を示す概略模式図で、図1(a)は、弾性波発生装置の平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。
弾性波発生装置1は、磁性体である検査対象物10の表面に磁界を印加する磁石20と、磁石20と検査対象物10との間を磁性体部材31により遮断・開放する動作を周期的に繰り返し行い、検査対象物10に印加する磁力を周期的に増減させる周期的磁力印加手段30とを備えている。なお、磁石20には、例えば、ネオジウム磁石などの強力な永久磁石を用いることが望ましい。
【0016】
周期的磁力印加手段30は、磁性体部材31としての磁性体回転円盤31を有し、磁性体回転円盤31は、図示しないモータ等の駆動手段によって図中矢印a方向に回転駆動される。また、磁性体回転円盤31には、磁性体回転円盤31の回転軸を中心とする同心円上に、磁石20の磁力が検査対象物10に向けて通過できるようにするための複数の穴(図1の例では4個)32が等ピッチで形成されている。
【0017】
このように構成された弾性波発生装置1において、磁石20は、磁性体回転円盤31の前記同心円の上方に設けられており、磁性体回転円盤31が回転すると、磁石20の直下に穴32が周期的に位置し、磁石20と検査対象物10との間が周期的に遮断・開放されるようになっている。
【0018】
図2及び図3は、周期的磁力印加手段による磁力作用状態の説明図であり、図2は、磁性体回転円盤の穴が磁石の直下にある状態を示す図、図3は、磁性体回転円盤の穴が磁石の直下にない状態を示す図である。なお、図2及び図3において、(a)は、弾性波発生装置の平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。
図2に示すように、磁性体回転円盤31の穴32が磁石20の直下に位置する場合、磁石20の磁力は、検査対象物10の表面に直接作用する。すなわち、検査対象物10の表面において、穴32に対向する部分に局所的に強い磁力41が作用し、その磁力41による磁歪効果で検査対象物10が歪む。そして、磁性体回転円盤31が図2の位置から回転し、図3に示すように穴32の位置が磁石20の直下から外れると、磁石20と検査対象物10との間が磁性体回転円盤31によって遮断される。これにより、磁石20の磁力が磁性体回転円盤31によって遮られ、検査対象物10に作用する磁力42が弱まり、磁歪効果による検査対象物10の歪みが図2の場合に比べて小さくなる。
【0019】
従って、磁性体回転円盤31を回転させることにより、検査対象物10に対して強い磁力41と弱い磁力42とが周期的に作用し、この変動磁場による磁歪効果によって検査対象物10内に弾性波が発生する。具体的には、図1(b)に示すように、検査対象物10の厚み方向に伝播する弾性波51と、検査対象物10の表面方向に伝播する弾性波52とが発生する。
【0020】
このように本実施の形態1によれば、磁石20と検査対象物10との間を磁性体回転円盤31により周期的に遮断・開放し、検査対象物10に印加する磁力を周期的に増減させて磁歪効果により検査対象物10内に弾性波を発生させるようにしたので、従来のようなバイアス用の電磁石を用いる方法に比べ、構造が簡単で小型な弾性波発生装置を構成することができる。
【0021】
実施の形態2.
実施の形態2の弾性波発生装置は、図1に示した実施の形態1の周期的磁力印加手段30を、磁性体回転円盤31による回転機構に代えて、シャッター機構としたものである。
【0022】
図4及び図5は、実施の形態2の弾性波発生装置の周期的磁力印加手段による磁力作用状態の説明図で、図4はシャッタが開いた状態を示す図、図5はシャッタが閉じた状態を示す図である。なお、図4及び図5において、(a)は、弾性波発生装置の平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。また、図4及び図5において図1と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
シャッター機構は、磁石20と対向するように配置された開口部70と、開口部70を開閉する磁性体シャッタ71と、磁性体シャッタ71を駆動する駆動手段(図示せず)とを備えている。
【0023】
このように構成された弾性波発生装置100では、駆動手段により磁性体シャッタ71を図4矢印b方向に駆動して開口部70を開閉する。これにより、上記実施の形態1と同様に検査対象物10に対して強い磁力41を弱い磁力42とを周期的に作用させることができる。その結果、変動磁場による磁歪効果により検査対象物10内に実施の形態1と同様の弾性波を発生させることができる。
【0024】
なお、磁性体シャッタ71は、図4及び図5に示した形状に限られず、カメラの絞りのような機構(絞り羽根)としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の弾性波発生方法を適用した弾性波発生装置の構成を示す概略模式図である。
【図2】図1の周期的磁力印加手段による磁力作用状態の説明図で、磁性体回転円盤の穴が磁石の直下にある状態を示す図である。
【図3】図1の周期的磁力印加手段による磁力作用状態の説明図で、磁性体回転円盤の穴が磁石の直下にない状態を示す図である。
【図4】実施の形態2の弾性波発生装置の周期的磁力印加手段による磁力作用状態の説明図で、シャッタが開いた状態を示す図である。
【図5】実施の形態2の弾性波発生装置の周期的磁力印加手段による磁力作用状態の説明図で、シャッタが閉じた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1,100 弾性波発生装置
10 検査対象物
20 磁石
30 周期的磁力印加手段
31 磁性体回転円盤
32 穴
41 強い磁力
42 弱い磁力
51,52 弾性波
70 開口部
71 磁性体シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に対向して磁石を配置し、該磁石と前記検査対象物との間を、磁性体部材により遮断・開放する動作を周期的に繰り返し行って前記検査対象物に変動磁場を印加し、磁歪効果により前記検査対象物内に弾性波を発生させることを特徴とする弾性波発生方法。
【請求項2】
回転軸を中心とする同心円上に複数の穴が形成された前記磁性体部材としての磁性体回転円盤を回転させ、前記穴を前記磁石に対向する位置に周期的に位置させることで、前記検査対象物に変動磁場を印加することを特徴とする請求項1記載の弾性波発生方法。
【請求項3】
前記磁性体部材としての磁性体シャッタにより、前記磁石と前記検査対象物との間を遮断・開放するようにしたことを特徴とする請求項1記載の弾性波発生方法。
【請求項4】
前記磁石は永久磁石であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の弾性波発生方法。
【請求項5】
検査対象物に対向して配置される磁石と、
該磁石と前記検査対象物との間に配置される磁性体部材を備え、該磁性体部材により前記磁石と前記検査対象物との間を遮断・開放する動作を周期的に繰り返し行い、前記検査対象物に変動磁場を印加する周期的磁力印加手段と
を備えたことを特徴とする弾性波発生装置。
【請求項6】
前記周期的磁力印加手段は、前記磁性体部材としての磁性体回転円盤と、該磁性体回転円盤を回転駆動する駆動手段とを備え、前記磁性体回転円盤は、該磁性体回転円盤の回転軸を中心とする同心円上に複数の穴を有し、また、前記磁石は、前記同心円に対向して配置されており、前記磁性体回転円盤を回転させ、前記穴を前記磁石に対向する位置に周期的に位置させることで、前記検査対象物に変動磁場を印加することを特徴とする請求項5記載の弾性波発生装置。
【請求項7】
前記周期的磁力印加手段は、前記磁性体部材としての磁性体シャッタと、前記磁石と対向する位置に配置され、前記磁性体により開閉される開口部と、前記磁性体シャッタを駆動する駆動手段とを備え、前記磁性体シャッタにより前記開口部を開閉することにより、前記検査対象物に変動磁場を印加することを特徴とする請求項5記載の弾性波発生装置。
【請求項8】
前記磁石は永久磁石であることを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れかに記載の弾性波発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−309496(P2008−309496A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154697(P2007−154697)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】