説明

弾性編地

【課題】ドライタッチでありながら、軽量性と保湿性に優れる快適な弾性編地を提供する。
【解決手段】非弾性繊維の糸条と弾性繊維の糸条を用いてなるストレッチ性を有する弾性編地からなる布帛であって、非弾性繊維は、単繊維の断面形状が異型度2.5以上の三葉型であり、かつ総繊度が44dtex以下のポリアミド繊維であり、弾性編地は、保水率が35%以上で、厚み(mm)に対する目付け(g/m)の比が200(g/m/mm)以下で、かつ乾いた状態と濡れた状態での接触温冷感の差が0.55W/cm以下であることを特徴とする弾性編地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライタッチでありながら、軽量性および保湿性に優れる快適な弾性編地に関する。さらに詳しくは、インナーやスポーツ用素材として快適な弾性経編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性繊維、特にポリウレタン繊維と非弾性繊維を用いて作られた、ストレッチ性に優れる布帛は、衣料分野において、特にスポーツやインナーなどの体にフィットする様な衣料用途で使用されている。このような素材においては着用時の快適性を高めるために汗を素早く吸収し拡散するための工夫が様々な方法が提案されている。
【0003】
例えば、綿と弾性繊維を交編させて、吸湿性を高めた弾性編地、あるいはポリエステルの扁平断面糸と弾性繊維を交編させて、吸水速乾性を高めた弾性編地等が挙げられる。しかしながら、前者の綿を用いた弾性編地は、保水性に優れ、汗を吸収することができるが、生地の表面がべたつき、快適性を損なう等の問題がある。さらに、綿自体の糸強力が弱く、編成に耐えうる強力を付与するために、糸条をある程度太くする必要がある、そのため、どうしても生地が重くなるという問題もある。
【0004】
また、20%以上のポリエステルと高吸湿性を向上させた改質セルロースをブレンドした紡績糸を用い、水分率を7%以上に調整させた、蒸れ感の小さな吸水速乾性編織物が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、この方法で得られる吸水速乾性編織物は、吸湿性は有するものの、濡れた時の布帛表面のベタツキ感が依然大きいという問題がある。さらに、紡績糸の糸強力を維持するために、繊度をフィラメントに比べ太くせざるをえず、布帛にした時に重くなるという問題が解決できていない。
【特許文献1】特開2005−220448号公報
【0005】
また、ポリエステルの扁平断面糸を用いた弾性編地においては、少しの汗は吸収し拡散するものの、ポリエステル自体に保水性がないため、生地がパサつく。そのため、着用感が悪く、快適性の点で不十分である。
【0006】
これに対し、糸の断面形状をC型にし、親水化物で表面を親水化処理したポリエステル繊維を用いることにより、糸の長手方向に連続して凹状部分を形成させ、その凹状部分の毛細管現象を利用して、優れた保水性、吸水拡散性を発揮させる技術が検討されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、C型断面のポリエステル繊維は、丸断面のポリエステル繊維と比べ、保水性は若干向上するものの、ポリエステル繊維は公定水分率が低く、濡れた時の接触面積が大きくなる。そのため、乾湿での接触感の差が大きく、快適性の点で不十分である。
【特許文献2】特開2007−100280号公報
【0007】
また、糸の断面形状を杯型にしたポリエステル繊維を用いる技術も検討されている。しかしながら、この杯型断面を有するポリエステル繊維は、角度によって肌との接触面積が異なるため、場所によって接触面積が大きくなる。そのため、乾湿での接触感の差が大きく、快適性の点で不十分であり、品位の点でも問題がある。
【特許文献3】特開2007−280232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ドライタッチでありながら、軽量性と保湿性に優れる快適な弾性編地を提供することにある。さらに、インナーやスポーツ用素材として快適な弾性経編地も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決することができる本発明の弾性編地は、以下の構成からなる。
すなわち、第1の発明は、非弾性繊維の糸条と弾性繊維の糸条を用いてなるストレッチ性を有する弾性編地からなる布帛であって、非弾性繊維は、非弾性繊維は、単繊維の断面形状が異型度2.5以上の三葉型であり、かつ総繊度が44dtex以下のポリアミド繊維であり、弾性編地は、保水率が35%以上で、厚み(mm)に対する目付け(g/m)の比が200(g/m/mm)以下で、かつ乾いた状態と濡れた状態での接触温冷感の差が0.55W/cm以下であることを特徴とする弾性編地である。
【0010】
第2の発明は、前記のポリアミド繊維の単糸繊度が2dtex以下であることを特徴とする第1の発明に記載の弾性編地である。第3の発明は、前記のポリアミド繊維の相対粘度が3.0以上のナイロン6からなることを特徴とする第1または2の発明に記載の弾性編地である。
【0011】
さらに、第3の発明は、弾性編地が、28ゲージ以上の経編地であることを特徴とする第1〜3の発明のいずれかに記載の弾性編地である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弾性編地は、非弾性繊維の糸条と弾性繊維の糸条を用いてなるストレッチ性を有する布帛からなり、非弾性糸として、単繊維の断面形状が異型度2.5以上の三葉型のポリアミド繊維を用いているため、単糸と単糸の間に空隙が多く、かつ肌と接触する際の接触面積も小さくなる。そのため、軽量性と保水性に優れ、生地が濡れた際にもベトツキが少なくなり、乾いた状態と濡れた状態での布帛の接触温冷感の差が小さくなる。また、ポリアミド繊維の総繊度を44dtex以下とすることで、単位厚みあたりの布帛の目付けも小さくなり、さらに軽量になる。その結果、ドライタッチでありながら、軽量性と保湿性に優れる快適な弾性編地を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の弾性編地からなる布帛の実施形態について説明する。
本発明の弾性編地は、非弾性繊維の糸条と弾性繊維の糸条を用いてなるストレッチ性を有する布帛からなる。
【0014】
(非弾性繊維)
非弾性繊維の糸条は、マルチフィラメント糸の単繊維の断面形状が、異型度2.5以上の三葉型のポリアミド繊維からなる。ここで、三葉型の断面とは、その断面が三つの葉部からなるものをいい、例えば、
1203395920781_0
に示すように、三つの葉部からなる単繊維1の断面形状をいう。また、異型度は、
1203395920781_1
に示すように、三つの葉部2の外接円3の直径と断面中心部の内接円4の直径との比をいい、外接円3の直径をG、内接円4の直径をNとすると、G/Nで表される。
【0015】
この単繊維の断面形状が、異型度2.5以上の三葉型であるポリアミド繊維を非弾性繊維の糸条として用いることにより、マルチフィラメントを構成する単糸と単糸の間に発現する空隙により保水性が向上する。また、単糸と単糸の間に空隙が効率的に付与できるため、布帛の厚みに対する目付けの比(軽量性の尺度)を低減することができ、軽量感が得られる。さらに、三葉断面による凹凸により、弾性編地を着用した際に、肌と接触する際の弾性編地の接触面積を小さくすることができるので、弾性編地が濡れてもベタツキ感を感じにくくなる。
【0016】
ポリアミド繊維の糸条の単繊維の断面の異型度は、糸切れなどの紡糸操業性と、断面の均一性の点から、上限を4.0とすることが好ましい。
【0017】
また、本発明において、非弾性繊維の糸条を構成する単繊維の断面形状は三葉型である。単繊維の断面形状が丸断面、三角断面、または扁平断面の場合は、着用時に肌との接触面積が大きくなるため、生地(弾性編地)が濡れた際にベタツキ感を感じやすくなり、快適性に劣る。また、単繊維の断面形状が2葉型の場合には、方向によって見え方が異なるため、生地にした際に品位に問題がある。また、単繊維の断面形状が4葉型の場合には、異型度を大きくすることが困難になる。そのため、単糸と単糸の間に十分な空隙を発現させることができず、保水性が低下する。
【0018】
本発明において、前記のポリアミド繊維の総繊度は、インナーやスポーツ素材として用いる際の布帛の軽量性の点から、44dtex以下であり、好ましくは35dtex以下である。前記のポリアミド繊維の総繊度の下限は、編成に支障をきたさない範囲であれば特に限定はないが、糸強力などの物性面から考えると15dtex以上であることが好ましい。
【0019】
前記のポリアミド繊維の単糸繊度は、生地を柔らかくし、衣料用素材として着用時の快適性の点から、2dtex以下であることが好ましい。単糸繊度が細ければ細いほど生地は柔らかくなるが、一方、ピリング性やスナッグ性が悪くなり、糸の強力も低下する。そのため、実用上は、単糸繊度の下限を0.5dtexとすることが好ましい。
【0020】
また、前記のポリアミド繊維は、相対粘度が3.0以上のナイロン6からなることが好ましい。ポリアミド繊維の相対粘度を3.0以上とすることにより、紡糸時に口金ノズルで単糸の断面形状を三葉型にし、かつ異型度を2.5以上に制御された糸条をより安定して得ることができる。
【0021】
(弾性繊維)
本発明の弾性編地からなる布帛を製編する際に、糸として、前記の非弾性繊維のほかに、弾性繊維を用いる。
【0022】
本発明の弾性編地を構成する弾性繊維の糸条としては、ポリウレタン繊維、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)繊維、あるいは架橋型ポリオレフィン系弾性繊維からなる弾性糸条が好適である。
【0023】
ポリウレタン繊維は、ポリウレタンを主体とする重合体組成物を紡糸して得られる弾性繊維である。ポリウレタンは、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系など、公知のポリウレタンを用いることができる。該ポリウレタンは、ポリイソシアネート、ポリマージオール、所望により低分子多官能活性水素化合物を反応させて得ることができる。
【0024】
ポリイソシアネートとしては、例えば4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シシクロヘキサンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの1種またはこれらの混合物を用いることができる。これらの中でも、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0025】
ポリマージオールは、両末端にヒドロキシル基を有し、かつ数平均分子量が600〜7000の実質的に線状の重合体を用いる。このようなポリマージオールとしては、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリペンタメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオールや、コポリ(テトラメチレン−ネオペンチレン)エーテルジオール、コポリ(テトラメチレン−2−メチルブチレン)エーテルジオール、コポリ(テトラメチレン−2,3−ジメチルブチレン)エーテルジオール、コポリ(テトラメチレン−2,2−ジメチルブチレン)エーテルジオールなどの2種以上の炭素数6以下のアルキレン基を含むコポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0026】
また、ポリマージオールとして、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、マゼライン酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸、β―メチルアジピン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの2塩基酸の1種または2種以上の混合物と、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサンなどのグリコールの1種あるいは2種以上の混合物から得られるポリエステルポリオール、あるいはポリエーテルエステルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどの任意のポリオールも用いることができる。
【0027】
また、架橋型ポリオレフィン系弾性繊維とは、実質的に線状であるオレフィンに架橋処理を施された、オレフィン系モノマーを重合させた繊維である。例えば、α−オレフィンを共重合させた低密度ポリエチレンや特表平8−509530号公報記載の弾性繊維がこれに該当する。また、架橋処理の方法としては、例えば、ラジカル開始剤やカップリング剤などを用いた化学架橋や、エネルギー線を照射することによって架橋させる方法等が挙げられる。また、製品となった後の安定性を考慮するとエネルギー線照射による架橋が好ましい。架橋型ポリオレフィン系弾性繊維は、通常の溶融紡糸方法でモノフィラメントまたはマルチフィラメントとして巻き取られ、架橋処理がなされて得られる。
【0028】
(弾性編地)
本発明の弾性編地は、非弾性繊維の糸条と弾性繊維の糸条を用いてなるストレッチ性を有する布帛からなる。このストレッチ性は、弾性繊維の種類と製編条件で制御することができ、着用時に快適なフィット性を得ることができる。伸長率としては、50%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、特に好ましくは100%以上である。また、使用時の着用性に優れ、見栄え(ワライ)などの問題が起こらないようにするためには、伸長回復率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0029】
布帛のストレッチ方向は、縦方向、横方向のいずれか一方でも良いが、2方向にすることで一層効果が明確になる。本発明では、前記の非弾性繊維と弾性繊維の糸条を用い、第1オサ(フロント)に前記の非弾性繊維からなる特定のポリアミド繊維の糸条を用い、第2オサ(バック)に弾性繊維の糸条を用いて、2ウェイ方式で製編することが好ましい。
【0030】
このような方法で製編された本発明の弾性編地は、保水率が35%以上で、厚み(mm)に対する目付け(g/m)の比が200(g/m/mm)以下で、かつ乾いた状態と濡れた状態での接触温冷感の差が0.55W/cm以下であるという特徴を有する。
【0031】
本発明の弾性編地は、単繊維間に水分を十分に吸収させ、肌離れ性を良好にする点から、保水率を35%以上にする。また、生地の乾燥性をある程度実用に近い範囲にする観点から、保水率の上限を85%とすることが好ましい。弾性編地の保水率を35%以上にするためには、前記で述べたように、非弾性糸のポリアミド繊維の断面形状を三葉型とし、かつ異型度を2.5以上とする。ポリアミド繊維の単糸の異型度を2.5以上とするためには、紡糸時の口金ノズルで設計するほかに、相対粘度が3.0以上のナイロン6を用いることが好ましい。
【0032】
本発明の弾性編地からなる布帛は、単位厚み(mm)に対する目付け(g/m)の比を、着用時の生地の軽量性の点から、200(g/m/mm)以下、好ましくは190(g/m/mm)以下とする。弾性編地の保水率を35%以上に維持した状態で、単位厚み(mm)に対する目付け(g/m)の比を200(g/m/mm)以下にまで軽量化するためには、非弾性糸であるポリアミド繊維の総繊度を44dtex以下にするとともに、三葉型の断面を有する単繊維の異型度を2.5以上にすることが有効である。なお、ポリアミド繊維の総繊度を44dtex以下で、単繊維の断面を中空にする場合や異型度が2.5未満の場合でも、前記の目付け/厚みの比を200(g/m/mm)以下にすることは可能であるが、この場合には、弾性編地の保水率を35%以上にすることが困難になる。
【0033】
また、本発明の弾性編地からなる布帛は、乾いた状態と濡れた状態での着用時の肌との接触感の差を小さくし、着用時の快適性を保つために、乾いた状態と濡れた状態での接触温冷感の差を0.55W/cm以下、好ましくは0.50W/cm以下となるように設計する。
【0034】
接触温冷感とは、生地を触った時の肌との接触面における触感を示し、数値が小さい程、暖かく感じ、数値が大きいと冷たく感じる。接触温冷感qmaxが0.05を越えると、着用時に瞬間的にヒヤッとするため、不快感が生じる。この接触温冷感という物性は、特殊パラメーターではなく、当該技術分野では、当業者が慣用している物性である。乾いた状態と濡れた状態での接触温冷感qmaxの差を小さくするためには、例えば、布帛と肌とが接する接触面、すなわち布帛の外面側に凹凸を付け、接触面積を小さくして肌離れ性を良くすることが好ましい。具体的には、非弾性繊維であるポリアミド繊維の単糸の断面形状を三葉型にすることが有効である。
【0035】
すなわち、本発明の非弾性繊維の糸条と弾性繊維の糸条を用いてなるストレッチ性を有する弾性編地からなる布帛において、保水率が35%以上で、厚み(mm)に対する目付け(g/m)の比が200(g/m/mm)以下で、かつ乾いた状態と濡れた状態での接触温冷感の差が0.55W/cm以下であるという物性をすべて満足させて、ドライタッチでありながら、軽量性と保湿性に優れる快適な弾性編地を得るためには、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が異型度2.5以上の三葉型であり、かつ総繊度が44dtex以下のポリアミド繊維を用いることが重要である。
【0036】
また、本発明の弾性編地からなる布帛は、ピリング性やスナッグ特性に悪影響を及ぼさないように、28ゲージ以上の編ゲージを有する経編地とすることが好ましい。編ゲージが28ゲージ未満の場合、布帛を構成する編密度が粗くなり過ぎ、ピリングやスナッグ特性に悪影響を及ぼす。編ゲージは、生産性の点から、40ゲージ以下であることが好ましい。
【0037】
本発明の弾性編地からなる布帛を、特にインナー用素材として使用する場合には、着用感や外衣からインナーのラインを見えにくくするために、布帛の厚みを0.85mm以下にまで薄くすることが好ましい。そのためには、布帛を構成する第1オサのポリアミド繊維のループ長を、0.3cm/1ループ以下とすることが好ましい。また、編組織としては、ハーフトリコット組織あるいはデンビートリコット組織が好ましい。このハーフトリコットとは、第1オサ(フロント)が2針振りで、第2オサが1針振りであることを意味する。また、デンビー組織とは、第1オサが1針振りで、第2オサも1針振りの編組織であり、第1オサと第2オサが異方向編み又は同方向編みでもよく、それぞれのオサの編み目は開き目、とじ目であっても問題はない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を代表例として本発明を説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。また、本発明の布帛の評価は、以下の方法で測定したものである。
【0039】
(1)単繊維の断面の異型度
単繊維の断面の異型度は、単繊維の断面に対する外接円の直径を、単繊維の断面に対する内接円の直径で除することにより算出する。
【0040】
(2)保水率
まず、試料20cm×20cmの質量を測定(W)する。次いで、試料を水に30分間浸漬後、マングル絞り機で脱水を1回し、すぐに標準状態(20℃、65%RH)の部屋で質量(Wx)を測定し、次式により計算する。
保水率(%)=(Wx−W)/W×100
【0041】
(3)接触温冷感の差
下記の評価条件にて、試料が湿った状態(試料の質量に対し、100%の湿潤状態)と乾いた状態において、接触温冷感qmax(W/cm)を測定し、それらの差を算出する。
(評価条件)
室温20℃、相対湿度65%RHの環境に調整した室内に、試料と装置(KES−F7、サーモラボII、カトーテック社製)を24時間調湿する。次いで、生地試料に接触させて熱の移動量を測定するBT−BOXを、室温より20℃高くする。このために、蓄熱するBT板(熱板)を40℃に設定する。また、このBT板を暖めるために、BT板の周囲をガードしている熱板(G−BT)を20℃に設定し安定させる。最後に、生地シンカーループ面を上に向けた試料を置き、BT−BOXの上にのせて、接触温冷感qmaxを測定する。
【0042】
(4)厚みに対する目付けの比
下記の式を用いて、編地の目付け(g/m)を厚み(mm)で除して、算出する。
編地の厚みに対する目付けの比(g/m/mm)
=目付け(g/m)/厚み(mm)
【0043】
(5)ポリアミドの相対粘度
96.3±0.1質量%の濃硫酸(試薬特級)中に、ポリアミドの濃度が10mg/mlになるように試料を溶解させ、試料溶液を調整する。次いで、20℃±0.05℃の温度で、水落下時の秒数が6〜7秒となるオストワルド粘度計を用い、溶液相対粘度を測定する。測定に際し、同一の粘度計を用い、試料溶液を調整したときと同じ硫酸を用い、硫酸20mlの落下時間T0(秒)と、試料溶液20mlの落下時間T1(秒)の比より、相対粘度RVを下記の式を用いて算出する。
RV=T1/T0
【0044】
(実施例1)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が三葉型で、かつ異型度が3.0であり、相対粘度が3.5のナイロン6からなるマルチフィラメント(33dtex/24フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0045】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、32ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリアミド繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:100℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0046】
得られた布帛は、性量が120コース/インチ、65ウエール/インチ、厚みが0.75mm、目付けが140g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が186.7g/m/mm、保水性が52.6%、接触温冷感の差が0.47W/cmであった。
【0047】
(実施例2)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が三葉型で、かつ異型度が3.0であり、相対粘度が3.5のナイロン6からなるマルチフィラメント(33dtex/12フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0048】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、24ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリアミド繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:100℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0049】
得られた布帛は、性量が130コース/インチ、64ウエール/インチ、厚みが0.80mm、目付けが147g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が183.8g/m/mm、保水性が47.0%、接触温冷感の差が0.50W/cmであった。
【0050】
(実施例3)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が三葉型で、かつ異型度が3.0であり、相対粘度が3.5のナイロン6からなるマルチフィラメント(22dtex/12フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0051】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、28ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリアミド繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:100℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0052】
得られた布帛は、性量が140コース/インチ、64ウエール/インチ、厚みが0.76mm、目付けが107g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が140.8g/m/mm、保水性が40.5%、接触温冷感の差が0.47W/cmであった。
【0053】
(実施例4)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が三葉型で、かつ異型度が2.5であり、相対粘度が3.5のナイロン6からなるマルチフィラメント(33dtex/24フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0054】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、28ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリアミド繊維)が10/34、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、サテン組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:100℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0055】
得られた布帛は、性量が120コース/インチ、65ウエール/インチ、厚みが0.90mm、目付けが169g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が187.8g/m/mm、保水性が60.0%、接触温冷感の差が0.50W/cmであった。
【0056】
(比較例1)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が44dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が三葉型で、かつ異型度が2.0であり、固有粘度(IVp)が0.63dl/gのポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント(56dtex/24フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0057】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、32ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリエステル繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:130℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0058】
得られた布帛は、性量が103コース/インチ、64ウエール/インチ、厚みが0.69mm、目付けが200g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が289.9g/m/mm、保水性が38.6%、接触温冷感の差が0.48W/cmであった。そのため、得られた布帛は、軽量性と保水性に劣っていた。
【0059】
(比較例2)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維が丸断面で、かつ異型度が1.0であり、相対粘度が3.5のナイロン6からなるマルチフィラメント(33dtex/24フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0060】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、28ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリアミド繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:100℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0061】
得られた布帛は、性量が130コース/インチ、64ウエール/インチ、厚みが0.73mm、目付けが149g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が204.1g/m/mm、保水性が30.2%、接触温冷感の差が0.60W/cmであった。そのため、得られた布帛は、軽量性と保水性に劣っていただけでなく、乾いた状態と濡れた状態での着用時の肌との接触感の差が大きく、着用時の快適性にも劣っていた。
【0062】
(比較例3)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が扁平で、かつ異型度が3.0であり、相対粘度が3.5のナイロン6からなるマルチフィラメント(33dtex/17フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0063】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、28ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリアミド繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:100℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0064】
得られた布帛は、性量が130コース/インチ、64ウエール/インチ、厚みが0.74mm、目付けが149g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が201.4g/m/mm、保水性が30.7%、接触温冷感の差が0.68W/cmであった。そのため、得られた布帛は、軽量性と保水性に劣っていただけでなく、乾いた状態と濡れた状態での着用時の肌との接触感の差が大きく、着用時の快適性にも劣っていた。
【0065】
(比較例4)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面が中空で、相対粘度が3.5のナイロン6からなるマルチフィラメント(33dtex/24フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0066】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、28ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリアミド繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:100℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0067】
得られた布帛は、性量が130コース/インチ、64ウエール/インチ、厚みが0.86mm、目付けが149g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が173.3g/m/mm、保水性が25.5%、接触温冷感の差が0.64W/cmであった。そのため、得られた布帛は、軽量性には優れていたものの、保水性が大きく劣り、乾いた状態と濡れた状態での着用時の肌との接触感の差が大きく、着用時の快適性にも劣っていた。
【0068】
(比較例5)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が三葉型で、かつ異型度が1.5であり、相対粘度が2.1のナイロン6からなるマルチフィラメント(33dtex/24フィラメント)で構成されたポリアミド繊維の糸条を製造した。
【0069】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、28ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリアミド繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:100℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0070】
得られた布帛は、性量が130コース/インチ、64ウエール/インチ、厚みが0.76mm、目付けが149g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が196.1g/m/mm、保水性が34.0%、接触温冷感の差が0.57W/cmであった。そのため、得られた布帛は、軽量性は優れていたものの、保水性にやや劣り、乾いた状態と濡れた状態での着用時の肌との接触感の差がやや大きく、着用時の快適性が不十分であった。
【0071】
(比較例6)
弾性繊維として、常法にしたがって、繊度が22dtexのポリエーテル系ポリウレタンからなる糸条を製造した。次いで、非弾性繊維として、単繊維の断面形状が三葉型で、かつ異型度が3.0であり、固有粘度が0.61dl/gのポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント(33dtex/24フィラメント)で構成されたポリエステル繊維の糸条を製造した。
【0072】
これらの弾性繊維の糸条と非弾性繊維の糸条を用いて、28ゲージのトリコット編み機を使用し、フロントオサ(ポリエステル繊維)が10/23、バックオサ(ポリウレタン糸)が12/10である、ハーフ組織の2ウェイトリコットを作成した。次いで、プリウェッター/プリセット(190℃×40秒)/染色(液流染色:130℃×30分)/仕上げセット(170℃×40分)の条件で、加工を仕上げた。
【0073】
得られた布帛は、性量が130コース/インチ、64ウエール/インチ、厚みが0.74mm、目付けが149g/mであった。また、単位厚みあたりの生地の目付けの比が201.4g/m/mm、保水性が33.4%、接触温冷感の差が0.44W/cmであった。そのため、得られた布帛は、乾いた状態と濡れた状態での着用時の肌との接触感の差が小さく、着用時の快適性に優れていたものの、軽量性と保水性が不十分であった。
【0074】
上記の実施例および比較例で得られた布帛の評価結果を表1、2に示す。
【表1】

【0075】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の弾性編地は、非弾性繊維の糸条と弾性繊維の糸条を用いてなるストレッチ性を有する布帛からなり、非弾性繊維が単繊維の断面形状が三葉型で、かつ異型度が高く、マルチフィラメントの総繊度が細いポリアミド繊維を用いているため、ドライタッチでありながら、軽量性と保湿性に優れ、快適性に優れている。そのため、インナーやスポーツ用素材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】単繊維の断面形状を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0078】
1:単繊維
2:葉部
3:外接円
4:内接円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非弾性繊維の糸条と弾性繊維の糸条を用いてなるストレッチ性を有する弾性編地からなる布帛であって、非弾性繊維は、単繊維の断面形状が異型度2.5以上の三葉型であり、かつ総繊度が44dtex以下のポリアミド繊維であり、弾性編地は、保水率が35%以上で、厚み(mm)に対する目付け(g/m)の比が200(g/m/mm)以下で、かつ乾いた状態と濡れた状態での接触温冷感の差が0.55W/cm以下であることを特徴とする弾性編地。
【請求項2】
前記のポリアミド繊維は、単糸繊度が2dtex以下であることを特徴とする請求項1に記載の弾性編地。
【請求項3】
前記のポリアミド繊維は、相対粘度が3.0以上のナイロン6からなることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性編地。
【請求項4】
弾性編地が、28ゲージ以上の経編地であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の弾性編地。

【図1】
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【公開番号】特開2009−197341(P2009−197341A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37052(P2008−37052)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】