説明

弾性繊維用処理剤およびその応用

【課題】 本発明の目的は、高級脂肪酸金属石鹸の分散安定性を良好にし、且つ経時変化を抑制することにより、長期にわたって安定な膠着防止性能を弾性繊維に与え、更には、捲き形状が良好な弾性繊維の捲糸体を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、シリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも一種のベース成分と、アミノ変性シリコーンと、有機多価カルボン酸類と、高級脂肪酸金属石鹸とを含有する弾性繊維用処理剤であって、ベース成分、アミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量および高級脂肪酸金属石鹸の含有率が、それぞれ、弾性繊維用処理剤全体の79.55〜99.97重量%、0.01〜0.45重量%および0.01〜20重量%の範囲にあり、数式(1)を満足するようにアミノ変性シリコーンおよび有機多価カルボン酸類が配合されている、弾性繊維用処理剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性繊維用処理剤およびその応用に関する。さらに詳しくは、本発明は弾性繊維用処理剤と、それが付着した弾性繊維と、その弾性繊維が捲き取られた捲糸体とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は紡糸工程において、処理剤を付与した後、チーズ形状に巻き取られ、捲糸体となる。弾性繊維は、粘弾性を有するために、膠着し易い繊維であり、特に捲糸体の内層部においては、巻き取り時にかかる圧力により、膠着が経時的に進行し、弾性繊維捲糸体を使用する際、解舒不良となり、糸切れを引き起こす。特許文献1には、膠着を防止する方法としてポリジメチルシロキサンまたは鉱物油に高級脂肪酸金属石鹸を分散した処理剤を用いる方法が提案されている。しかし、この方法において、高級脂肪酸金属石鹸が分散した処理剤では、高級脂肪酸金属石鹸が経時的に凝集し、分離沈降して不均一となる。このような不均一となった処理剤を弾性糸に付与した際、高級脂肪酸金属石鹸は不均一に弾性糸上に付着するため、均一な平滑性、膠着防止性が得られない。また、高級脂肪酸金属石鹸の凝集物が使用工程でスカムとなり、定期的な清掃が必要である。
【0003】
高級脂肪酸金属石鹸の凝集を防ぐために、アミノ変性シリコーンを処理剤として使用する方法(特許文献2および3参照)、カルボキシアミド変性シリコーンを処理剤として使用する方法(特許文献4参照)、アミノ変性シリコーンとカルボキシル変性シリコーンを処理剤として使用する方法(特許文献5参照)、アミノ変性シリコーンと有機カルボン酸を処理剤として使用する方法(特許文献6参照)等が提案されている。これらの方法は高級脂肪酸金属石鹸の凝集を防ぐには有効である。しかし、これらの方法では、高級脂肪酸金属石鹸の膠着防止性能が損なわれたり、スカムが発生したりする。さらに、これら特許文献のように、アミノ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルボキシアミド変性シリコーン、有機カルボン酸等のアミノ成分およびカルボン酸成分の添加量が多くなると、弾性繊維に吸着して弾性糸同士の摩擦を低下させ、捲糸体の形状を良好に維持することを困難とする欠点がある。
【特許文献1】特公昭37−4586号公報
【特許文献2】特開2000−144578号公報
【特許文献3】特開平10−259577号公報
【特許文献4】特開平11−12950号公報
【特許文献5】特開平11−12952号公報
【特許文献6】特開平11−12951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高級脂肪酸金属石鹸の分散安定性が良好で、安定な膠着防止性能を弾性繊維に与えることができる弾性繊維用処理剤と、この弾性繊維用処理剤が付着した弾性繊維と、その弾性繊維が捲き取られた捲き形状が良好な弾性繊維捲糸体とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の2つの実験確認から、本発明に到達した。
(1)従来の技術において、高級脂肪酸金属石鹸の膠着防止性能が損なわれたり、スカムが発生したりする理由は、遊離アミノ基や遊離カルボキシル基等の官能基を含有した成分を弾性繊維用処理剤として使用するので、本発明者らは高級脂肪酸金属石鹸との塩交換反応が平衡反応によって引き起こされるからであると考えた。そして、遊離アミノ基や遊離カルボキシル基等の官能基を含有した成分をほぼ酸塩基当量の範囲になるように配合することによって、膠着防止性能が良好で、分散安定性が良好でスカム発生が抑制されることを実験で確認した。
(2)また、遊離アミノ基や遊離カルボキシル基等の官能基を含有した成分が弾性繊維用処理剤にほとんど含まれない場合でも、配合されるアミノ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルボキシアミド変性シリコーン、有機カルボン酸等のアミノ成分およびカルボン酸成分の合計配合量がある一定量を超えると、平衡反応により高級脂肪酸金属石鹸との塩交換反応が引き起こされるために、高級脂肪酸金属石鹸の膠着防止性能の低下、スカムの発生が観察された。また、弾性糸同士の摩擦が低下し、捲糸体の形状の乱れが観察された。そこで、上記合計配合量を特定の範囲にしたところ、本発明者らは、膠着防止性能が良好で、分散安定性が高く、スカム発生が抑制され、捲糸体の形状が良好となることを実験で確認した。
【0006】
すなわち、本発明にかかる弾性繊維用処理剤は、シリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも一種のベース成分と、アミノ変性シリコーンと、有機多価カルボン酸類と、高級脂肪酸金属石鹸とを含有する弾性繊維用処理剤であって、
ベース成分、アミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量および高級脂肪酸金属石鹸の含有率が、それぞれ、弾性繊維用処理剤全体の79.55〜99.97重量%、0.01〜0.45重量%および0.01〜20重量%の範囲にあり、
下記数式(1)を満足するようにアミノ変性シリコーンおよび有機多価カルボン酸類が配合されている、弾性繊維用処理剤である。
0.9≦(A×X)/(B×Y)≦1.1 (1)
(但し、Aはアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量に占めるアミノ変性シリコーンの割合(重量%)、Bはアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量に占める有機多価カルボン酸類の割合(重量%)、Xはアミノ変性シリコーンのアミン価(KOHmg/g)、Yは有機多価カルボン酸類の酸価(KOHmg/g)である。)
【0007】
本発明の弾性繊維用処理剤は、前記アミノ変性シリコーンと前記有機多価カルボン酸類との混合物、前記ベース成分および前記高級脂肪酸金属石鹸を混合して得られるのが好ましい。また、前記有機多価カルボン酸類は、カルボキシル基とこれらの基を除く残基とから構成される2〜4価のカルボン酸類であり、前記残基が、炭素数0〜20の飽和脂肪族基、炭素数2〜20の不飽和脂肪族基および芳香族基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、前記ベース成分は、シリコーン油(I)と鉱物油および/またはエステル油(II)とからなり、シリコーン油(I)と鉱物油および/またはエステル油(II)との重量割合(I/II)が70/30〜95/5であることが好ましい。
また、本発明の弾性繊維用処理剤は、アルキル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、式:RSiO1/2(式中、R、R、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン樹脂、式:RSiO1/2(式中、R、R、Rは一価炭化水素基である。)示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、および式:RSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂から選ばれる少なくとも一種をさらに含有し、その含有率が弾性繊維用処理剤全体の0.01〜10重量%であることが好ましい。
また、本発明は、弾性繊維本体と、これに付着した弾性繊維用処理剤とから構成される弾性繊維であって、その付着割合が前記弾性繊維の0.1〜15重量%である弾性繊維に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弾性繊維用処理剤は、安定な膠着防止性能を弾性繊維に与えることができ、高級脂肪酸金属石鹸の分散安定性が良好な弾性繊維用処理剤である。
本発明の弾性繊維は、上記弾性繊維用処理剤が付着しているので、安定な膠着防止性能を有する。
本発明の捲糸体は、上記弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維が捲き取られているので、捲き形状が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔弾性繊維用処理剤〕
本発明の弾性繊維用処理剤は、シリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも一種のベース成分と、アミノ変性シリコーンと、有機多価カルボン酸類と、高級脂肪酸金属石鹸とを含有する。
シリコーン油としては特に限定はないが、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン(いずれのシリコーン油も30℃における粘度:2〜100mm/s、好ましくは5〜50mm/s、さらに好ましくは5〜20mm/s)等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。粘度が2mm/sよりも低いとシリコーン油が揮発する場合があり、100mm/sよりも高いと処理剤に配合される他成分の溶解性が悪くなることがある。
鉱物油としては特に限定はないが、たとえば、30℃における粘度が30〜150秒、好ましくは40〜100秒、さらに好ましくは50〜80秒のスピンドル油や流動パラフィン等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。鉱物油の粘度が30秒よりも低いと、得られる弾性繊維の品質が低下することがある。一方、鉱物油の粘度が100秒よりも高いと処理剤に配合される他成分の溶解性が悪くなることがある。
【0010】
エステル油としては特に限定はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステルを挙げることができる。エステル油としては、たとえば、下記から選ばれる脂肪酸とアルコールとから製造されるエステルを例示できるが、下記脂肪酸やアルコールを原料としないエステルであってもよい。エステル油は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0011】
脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級脂肪酸であってもよく、環状の脂肪酸であってもよく、芳香族環を含有する脂肪酸であっても良い。前記脂肪酸としては、たとえば、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセレン酸、アジピン酸、セバチン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0012】
アルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、高級アルコールであっても、環状のアルコールであっても、芳香族環を含有するアルコールであっても良い。前記アルコールとしては、たとえば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ソルビトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0013】
弾性繊維用処理剤全体に占めるベース成分の含有率は、処理剤を使用する際の流動性を維持するという見地から、通常79.55〜99.97重量%、好ましくは85〜99.93重量%、さらに好ましくは90〜99.88重量%、特に好ましくは95〜99.83重量%である。
【0014】
ベース成分は、シリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれた少なくとも1種からなる成分であれば特に限定はないが、平滑性および膠着防止性を向上させる観点から、シリコーン油を必須に含有することが好ましい。シリコーン油のベース成分全体に占める含有率について、好ましくは70重量%以上であり、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。
また、弾性繊維と弾性繊維用処理剤の親和性が向上し、弾性繊維用処理剤の捲糸体からの滲み出しや工程における飛散が抑制されることから、ベース成分は、シリコーン油の平滑性能、膠着防止性能を損なわない範囲で、シリコーン油と鉱物油および/またはエステル油とを併用することが好ましく、シリコーン油と鉱物油とを併用することがさらに好ましい。この場合、ベース成分におけるシリコーン油(I)と鉱物油および/またはエステル油(II)の重量割合(I/II)は、70/30〜95/5が好ましく、80/20〜95/5がさらに好ましく、90/10〜95/5が特に好ましい。
【0015】
アミノ変性シリコーンは、分子中に少なくともアミノ基を1つ以上含むものであり、ポリオルガノシロキサン主鎖末端、ポリオルガノシロキサン側鎖有機基末端にアミノ基や、有機アミノ基を含有する変性シリコーンである。公知のアミノ変性シリコーンとしてアミノ変性シリコーン、アミノ−アルコキシ変性シリコーン、アミノ−ポリエーテル変性シリコーンなどを用いることができるが、アミノ変性シリコーンを用いる方法が本目的を達成するのに最も効果的である。
更に、アミノ変性シリコーンは、下記化学式(1)で表わされるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサンが好ましい。
(RSiO−[(RSiO]−[(R)SiO]−SiR(R(化学式(1))
(式中、RはHN(CH−、1価炭化水素基、アルコキシ基から選択される基、Rは1価炭化水素基又はアルコキシ基、Rは1価炭化水素基、HN(CH−、HN(CHNH(CH−から選択される基、RはHN(CH−、1価炭化水素基、アルコキシ基から選択される基、kは5〜10,000の正数、lは0もしくは0.1〜400の正数)
【0016】
上記化学式(1)中の−[(RSiO]−と−[(R)SiO]−とは両基の結合位置関係を示すものではなく、単に分子中の両基の平均付加モル数を示すものである。従って、両基はランダムに結合していてもよくまたブロック状に結合していてもよい。上記化学式(1)中、R、R、Rはそのうちの少なくとも一つ以上はHN(CH−及び/又はHN(CHNH(CH−である。RはHN(CH−、1価炭化水素基、アルコキシ基から選択される基を表し、好ましくはHN(CH−、メチル基、メトキシ基である。Rは1価炭化水素基又はアルコキシ基を表し、好ましくは、メチル基、メトキシ基である。Rは1価炭化水素基、HN(CH−、HN(CHNH(CH−から選択される基を表し、好ましくはメチル基、HN(CH−、HN(CHNH(CH−である。RはHN(CH−、1価炭化水素基、アルコキシ基から選択される基を表し、好ましくはHN(CH−、メチル基、メトキシ基である。kとlの総和が5未満では、揮発性が問題となることがあり、kが10,000を超え、且つlが400を超える場合は、処理剤の粘度が高くなり、平滑性に悪影響を及ぼす。
【0017】
また、アミノ変性シリコーンの粘度(25℃)については、重量変化が少ないという不揮発性と平滑性とのバランスの見地からは、好ましくは2〜30000mm/s、さらに好ましくは2〜20000mm/sである。
本発明に用いられるアミノ変性シリコーンのアミン価については、特に限定はないが、本発明で得られる効果の大きさとベース成分への溶解性とのバランスの見地からは、好ましくは0.1〜200(KOHmg/g)、さらに好ましくは0.5〜150(KOHmg/g)、特に好ましくは1.0〜100(KOHmg/g)、最も好ましくは1〜50(KOHmg/g)である。これらのアミノ変性シリコーンは、1種または2種以上を併用してもよい。
【0018】
有機多価カルボン酸類は、カルボキシル基と、これらの基を除く残基とから構成される2〜4価のカルボン酸類である。残基としては、炭素数0〜20の飽和脂肪族基、炭素数2〜20の不飽和脂肪族基および芳香族基から選ばれる少なくとも一種である。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸等のカルボキシル基と残基としての炭素数0〜20の飽和脂肪族基とから構成される2価のカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基と残基としての炭素数2〜20の不飽和脂肪族基とから構成される2価のカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、ピロメリト酸、ナフタレンジカルボン酸、等のカルボキシル基と残基としての芳香族基とから構成される2〜4価のカルボン酸類等が挙げられる。これらの有機多価カルボン酸類は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記残基の炭素数については特に限定はないが、ベース成分に対する相溶性の確保と
という見地から、好ましくは2〜14、さらに好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜6である。
本発明に用いられる有機多価カルボン酸類の酸価については、特に限定はないが、本発明で得られる効果の大きさとベース成分への溶解性とのバランスの見地からは、好ましくは100〜1000(KOHmg/g)、さらに好ましくは200〜1000(KOHmg/g)である。
【0020】
本発明の弾性繊維用処理剤において、アミノ変性シリコーンおよび有機多価カルボン酸類は、下記数式(1)を満足するように配合されている。
0.9≦(A×X)/(B×Y)≦1.1 (1)
(但し、Aはアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量に占めるアミノ変性シリコーンの割合(重量%)、Bはアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量に占める有機多価カルボン酸類の割合(重量%)、Xはアミノ変性シリコーンのアミン価(KOHmg/g)、Yは有機多価カルボン酸類の酸価(KOHmg/g)である。)
ここで、T=(A×X)/(B×Y)とすると、Tはアミノ変性シリコーン中の全アミノ基量に対する有機多価カルボン酸類中の全カルボキシル基量の割合を意味し、Tの下限値が0.9で、上限値が1.1であるから、ほぼ酸塩基当量の範囲になるように、アミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類とが配合されることが規定されている。このように配合することによって、中和反応が生起し、弾性繊維用処理剤中に存在する遊離アミノ基または遊離カルボキシル基がほぼ最小限になり、高級脂肪酸金属石鹸とアミノ変性シリコーンや有機多価カルボン酸類とが、塩交換反応を行うことを最小限に抑制できる。したがって、本発明の弾性繊維用処理剤は、高級脂肪酸金属石鹸の分散安定性が良好で、安定な膠着防止性能を弾性繊維に与えることができる。
Tは、1に近いほど酸塩基当量値になり、好ましくは0.95≦T≦1.05、さらに好ましくはT=1を満足する。
【0021】
弾性繊維用処理剤全体に占めるアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量の含有率は、この合計量の含有率が高い場合は平衡反応により高級脂肪酸金属石鹸との塩交換反応が引き起こされる可能性があることと、この合計量の含有率が低い場合は本発明の効果が十分に得られないこととのバランスをとるために、通常0.01〜0.45重量%、好ましくは0.05〜0.40重量%、さらに好ましくは0.1〜0.35重量%、特に好ましくは0.15〜0.30重量%である。アミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量の含有率が上記範囲内にあると、高級脂肪酸金属石鹸とアミノ変性シリコーンや有機多価カルボン酸類とが、平衡反応により塩交換反応を行うことを最小限に抑制できる。したがって、本発明の弾性繊維用処理剤は、高級脂肪酸金属石鹸の分散安定性が良好で、安定な膠着防止性能を弾性繊維に与えることができる。
【0022】
本発明の弾性繊維用処理剤を構成する高級脂肪酸金属石鹸は、弾性繊維本体に付着することによって、得られる弾性繊維に解舒性および平滑性を付与する成分である。
高級脂肪酸金属石鹸としては、たとえば、ジラウリン酸カルシウム、ジミリスチン酸バリウム、ジパルミチン酸マグネシウム、ジステアリン酸マグネシウム、ジベヘニン酸亜鉛、トリベヘニン酸アルミニウム、ジステアリン酸カルシウム、トリステアリン酸アルミニウム等の、炭素数12〜22の脂肪酸の2価または3価の金属塩を挙げることができる。高級脂肪酸金属石鹸は、1種または2種以上を併用してもよい。
高級脂肪酸金属石鹸の平均粒子径については、特に限定はないが、0.1〜1μmが好ましく、0.1〜0.8μmがさらに好まし、0.1〜0.6μmが特に好ましい。高級脂肪酸金属石鹸の平均粒子径が0.1μm未満になると、細かくなりすぎて、解舒成分としての効果が低下する場合があり、また、1μm超では、分散安定性が良くない場合がある。
【0023】
弾性繊維用処理剤全体に占める高級脂肪酸金属石鹸の含有率は、高級脂肪酸金属塩の含有率が高い場合は処理剤の流動性が失われ、処理剤を均一に付着させることが困難であることと、含有率が低い場合は、高級脂肪酸金属塩による膠着防止効果が弱くなるということとのバランスをとるために、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.2〜5重量%、最も好ましくは0.3〜4重量%である。
【0024】
本発明の弾性繊維用処理剤は、上記で説明した各成分以外に、従来の弾性繊維用処理剤に配合されている公知の成分を含有していてもよい。このような成分としては、たとえば、アルキル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、式:RSiO1/2(式中、R、R、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン樹脂、式:RSiO1/2(式中、R、R、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位、式:SiO4/2で示されるシロキサン単位および式:RSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、式:RSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、4級アンモニウム変性シリコーン、リン酸エステル塩および4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、本発明の弾性繊維用処理剤は、つなぎ剤、制電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の弾性繊維の処理剤として通常用いられる成分を含有していてもよい。さらに、本発明の弾性繊維用処理剤は、平滑性、解舒性、制電性の効果を高めるために、アミノ変性シリコーンの有機リン酸エステル中和物、N,N’−置換脂肪酸ビスアミド、N,N’−置換脂肪酸ジアミド、N−置換脂肪酸アミドが配合されていても良い。これらの上記で説明したベース成分、アミノ変性シリコーン、有機多価カルボン酸類および高級脂肪酸金属石鹸以外の成分(以下、その他成分ということがある。)は、1種または2種以上を併用してもよい。
弾性繊維用処理剤全体に占めるその他成分の含有率は、処理剤を使用する際の流動性を維持するという見地から、通常0.01〜10重量%が好ましい。
【0025】
本発明の弾性繊維用処理剤の粘度は、30℃において好ましくは5〜50mm/s、さらに好ましくは5〜20mm/sに調整することが好ましい。粘度が低すぎると、紡糸および後加工工程で弾性繊維を走行させる際に処理剤が霧状に飛散し、周辺を汚したり、作業者が吸入したりする場合がある。また、粘度が高すぎると、紡糸および後加工工程で弾性繊維を走行させる際、粘着性によって走行ローラーに糸が巻き付き、糸切れを生じる場合がある。
【0026】
〔弾性繊維用処理剤の製造方法〕
本発明の弾性繊維用処理剤の製造方法については、特に限定はなく、ベース成分、アミノ変性シリコーン、有機多価カルボン酸類および高級脂肪酸金属石鹸を、必要に応じてその他成分とともに、混合する方法を挙げることができる。混合は、(A)いくつかの成分を予め配合しておいて、それ以外の成分と混合する方法でもよく、(B)各成分を任意の順番で混合する方法でもよく、(C)全成分を一挙に混合する方法でもよい。遊離のアミノ変性シリコーンや遊離の有機多価カルボン酸類と高級脂肪酸金属石鹸との塩交換反応を最小限に抑制するためには、アミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類を予め混合反応したものを、ベース成分、高級脂肪酸金属石鹸、必要に応じてその他成分とともに混合する方法が好ましい。
平均粒子径が0.1〜1μmである高級脂肪酸金属石鹸を含む弾性繊維用処理剤を製造する場合は、既に平均粒子径0.1〜1μmに粉砕された高級脂肪酸金属石鹸をベース成分に混合して製造してもよく、また、ベース成分等に高級脂肪酸金属石鹸を混合し、縦型ビーズミル、横型ビーズミル、コロイドミル、ダイノーミル、サンドグラインダー等の従来公知の湿式粉砕機を用いて、平均粒子径が0.1〜1μmになるように粉砕して、製造してもよい。
【0027】
〔弾性繊維および捲糸体〕
本発明の弾性繊維は、弾性繊維本体と、これに付着した上述の弾性繊維用処理剤とから構成される弾性繊維である。本発明の弾性繊維は、上述の弾性繊維用処理剤が付着しているので安定な膠着防止性能を有する。
【0028】
弾性繊維本体および弾性繊維は、いずれも、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタンウレアエラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエチレンエラストマー等から構成される繊維であり、その伸度は通常300%以上である。
【0029】
本発明の弾性繊維における弾性繊維用処理剤の付着割合は、付着させることによって得られる効果と経済性とのバランスから、0.1〜15重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。
【0030】
本発明で用いる弾性繊維本体は、たとえば、分子量1000〜3000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを用意し、PTMG/MDI=1/2〜1/1.5(モル比)でジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させ、エチレンジアミン、プロパンジアミン等のジアミンで鎖延長して得られるポリウレタンウレアポリマーの20〜40%溶液を乾式紡糸で、紡糸速度400〜1000m/minで紡糸することにより製造できる。弾性繊維本体の適応繊度は特に制限はない。
【0031】
本発明の弾性繊維の用途として、CSY、シングルカバリング、PLY、エアーカバリング等のカバリング糸等の加工糸や、丸編み、トリコット等により、布帛として使用することができる。また、これらの加工糸、布帛を使用してストッキング、靴下、下着、水着等の伸縮性が必要とされる製品や、ジーンズ、スーツなどのアウターウェア等に快適性のために伸縮性を付与させる目的でも使用される。さらに最近では、紙おむつにも適用される。
本発明の捲糸体は、ボビン等に上述の弾性繊維が捲き取られてなり、捲き形状が良好で、膠着防止性が安定して維持されている。捲き形状が良好な捲糸体とは、捲糸体に巻き取られた弾性繊維の綾の乱れが無く、捲糸体の表面及び側面に凹凸が無く、捲糸体の幅、厚みが均一に巻き取られているものをいう。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)および部は、特に限定しない限り、「重量%」および「重量部」を示す。実施例における、各特性の評価は次の方法に従って行った。以下実施例により本発明を具体的に説明する。なお具体例における、各特性の評価は次の方法に従って行った。
【0033】
〔特性評価法〕
粘度:
キャノンフェンスケ粘度計を用い、一定温度(例えば、25℃、30℃)における試料液の動粘度を測定した。
【0034】
アミン価:
イソプロピルアルコール等の溶剤に溶解させた試料を、0.1N塩酸エチレングリコールイソプロピルアルコール溶液で滴定し、中和終点の滴定量(ml)を測定し、下記計算式よりアミン価を算出した。滴定には自動電位差滴定装置(平沼社製COM−900)を使用した。
アミン価(KOHmg/g)=滴定量(ml)×(0.1N塩酸エチレングリコールイソプロピルアルコール溶液の力価×5.61/試料重量(g)
【0035】
酸価:
イソプロピルアルコール等の溶剤に溶解させた試料を、0.1N水酸化カリウムエチレングリコールイソプロピルアルコール溶液で滴定し、中和終点の滴定量(ml)を測定し、下記計算式より酸価を算出した。滴定には自動電位差滴定装置(平沼社製COM−900)を使用した。
酸価(KOHmg/g)=滴定量(ml)×(0.1N水酸化カリウムエチレングリコールイソプロピルアルコール溶液の力価×5.61/試料重量(g)
【0036】
高級脂肪酸金属石鹸の沈降度:
図1に示すように、処理剤100mlを100mlメスシリンダー(1)に入れ、40℃で1週間静置した後の分離度合いを高級脂肪酸金属石鹸の沈降度として、下記計算式により求めた。
高級脂肪酸金属石鹸の沈降度=(処理剤の高さ(2)−処理剤の濁層の高さ(3))×100/処理剤の高さ(2)
高級脂肪酸金属石鹸の平均粒子径:
粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−910)で、バッチセルを使用して屈折率を1.02に設定して、体積基準の平均粒子径を測定した。
【0037】
高級脂肪酸金属石鹸の凝集度:
図1に示すように、処理剤100mlを100mlメスシリンダー(1)に入れ、40℃で1週間静置した後の高級脂肪酸金属石鹸の平均粒子径を測定し、凝集度合いを下記計算式により求めた。
高級脂肪酸金属石鹸の凝集度=静置前の高級脂肪酸金属石鹸の平均粒子径×100/静置後の高級脂肪酸金属石鹸の平均粒子径
【0038】
繊維間摩擦係数(F/FμS):
図2において、処理剤が付与された弾性繊維のモノフィラメントを50〜60cm程取り、一方の端に荷重T1(4)を吊り、ローラー(5)を介して、Uゲージ(6)にもう一方の端を掛けて定速(例えば、3cm/分)で引っ張り、そのときの2次張力T2をUゲージ(6)で測定し、下記計算式により、繊維間摩擦係数を求めた。
摩擦係数(F/FμS)=1/θ・ln(T2/T1)
(但し、θ=2π、ln=自然対数、T1は22dtex当り1g)
【0039】
捲糸体表面捲き崩れ度:
図3において、捲糸体(7)の巻き取り幅を、捲糸体外層部(9)と内層部(10)において測定し、下記計算式によりその差を求めた。
捲糸体表面捲き崩れ度=捲糸体内層部巻き取り幅−捲糸体外層部巻き取り幅
【0040】
捲糸体端面捲き崩れ度:
図3において、巻き取り幅中心部の捲糸体直径(11)、巻き取り幅端部の捲糸体直径(12)を測定し、下記計算式によりその差を求めた。
捲糸体端面捲き崩れ度=巻き取り幅中心部の捲糸体直径幅−巻き取り幅端部の捲糸体直径
【0041】
解舒速度比:
図4において、送り出し側に処理剤を付与した弾性繊維の捲糸体(13)をセットし、巻き取り側に紙管(14)をセットする。巻き取りローラー速度を一定速度にセットした後、送り出しローラー(15)および巻き取りローラー(16)を同時に起動させる。この状態では糸(17)に張力はほとんどかからないため、糸は捲糸体上で膠着して離れないので、解舒点(18)は図4に示す状態にある。解舒速度を変えることによって、捲糸体からの糸(17)の解舒点(18)が変わるので、この点が捲糸体と送り出しローラーとの接点(19)と一致するように解舒速度を設定する。解舒速度比は下記計算式によって求める。この値が小さいほど、解舒性が良いことを示す。
解舒速度比(%)=(巻取速度−解舒速度)×100/解舒速度
【0042】
編成張力:
図5において、捲糸体(20)から縦取りした弾性繊維(21)をコンペンセーター(22)を経てローラー(23)、編み針(24)を介して、Uゲージ(25)に付したローラー(26)を経て速度計(27)、巻き取りローラー(28)に連結する。速度計(27)での走行速度が定速(10m/分、100m/分)になるように巻き取りローラーの回転速度を調整して、巻き取りローラーに巻き取り、そのときの編成張力をUゲージ(25)で測定し、繊維/編み針間の摩擦(g)を計測する。
【0043】
スカム:
図4において、送り出し側に処理剤を付与した弾性繊維の捲糸体(13)をセットし、巻き取り側に紙管(14)をセットする。送り出しローラー(15)の速度を100m/min、巻き取りローラー(16)の速度を200m/minにセットした後、送り出しローラー(15)および巻き取りローラー(16)を同時に起動させる。1時間走行させた後に、送り出しローラー(15)上のスカム蓄積の有無を下記の基準に従い目視で判定する。
○:スカム無し、△:スカム付着が少量認められる、×:スカム付着が認められる
【0044】
処理剤滲出:
処理剤を付与した弾性繊維の捲糸体をコピー用紙上に置き、1週間静置した後に、コピー用紙に捲糸体より滲み出した処理剤の跡の有無を下記の基準に従い目視で判定する。
○:滲出無し、×:滲出が認められる
【0045】
ポリウレタン紡糸原液およびアミノ変性シリコーンと前記有機多価カルボン酸類との混合物を下記のようにして予め調製した。
〔ポリウレタン紡糸原液の調製〕
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをモル比率1:2で反応させ、次いで1,2−ジアミノプロパンのジメチルホルムアミド溶液を用いて鎖延長し、ポリマー濃度27%のジメチルホルムアミド溶液を得た。30℃での濃度は1500mPa・Sであった。
〔アミノ変性シリコーンと前記有機多価カルボン酸類との混合物の調製〕
表1に記載のアミノ変性シリコーン(A−1〜A−4)と表2に記載の有機多価カルボン酸類(B−1〜B−5。但し、B−5は1価カルボン酸)を表3に記載の比率で混合し、50℃で加熱して、混合物(C−1〜C−8)を調製した。
【0046】
【表1】

【0047】
なお、表1の各記号は、前述の化学式(1)で示されるアミノ変性シリコーンのR、R、R、R、kおよびlを示す。また、PrA基はHN(CH−基を、PrAEA基はHN(CHNH(CH−基を示す。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
なお、表3のTは、下記数式(2)で示されるものをいう。
T=(A×X)/(B×Y) (2)
(但し、Aはアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量に占めるアミノ変性シリコーンの割合(重量%)、Bはアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量に占める有機多価カルボン酸類の割合(重量%)、Xはアミノ変性シリコーンのアミン価(KOHmg/g)、Yは有機多価カルボン酸類の酸価(KOHmg/g)である。)
【0051】
(実施例1〜4および比較例1〜4)
表4に記載の弾性繊維用処理剤(実施例1〜4、比較例1〜4)は、それぞれ、ベース成分a、C成分(C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−6、C−7またはC−8)を混合した後、高級脂肪酸金属石鹸(e、fまたはg)を加え、その混合液をビーズミルで1時間循環して高級脂肪酸金属石鹸を破砕した後、この混合液に、ベース成分b、ベース成分cまたはベース成分dを加え、調製した。(表中の配合量は弾性繊維用処理剤全体に対する重量%で表示)
表4に記載の弾性繊維用処理剤中の高級脂肪酸金属石鹸の物性を表5に示す。
ポリウレタン紡糸原液を240℃の窒素気流中に吐出し、乾式紡糸した。紡糸中の走行糸(弾性繊維本体)に、表4に記載の弾性繊維用処理剤を、それぞれ弾性繊維本体に対して6重量%付着させた後、毎分500mの速度でボビンに巻き取り140dtexモノフィラメント捲糸体(巻き量500g)を得た。得られた捲糸体を35℃、50%RHの雰囲気中に48時間放置し、次いで、20℃、45%RHの雰囲気中に48時間放置して、前述の評価方法により評価した。これらの結果を表6に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
なお、表4における成分a〜gは以下のとおりである。
a:ジメチルシリコーン(15mm/s)、b:流動パラフィン60秒、c:流動パラフィン80秒、d:イソオクチルラウレート、e:ジステアリン酸マグネシウム、f:ジステアリン酸亜鉛、g:ジラウリン酸カルシウム
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】高級脂肪酸金属石鹸の沈降度および凝集度の測定方法を説明する模式図。
【図2】繊維間摩擦係数の測定方法を説明する模式図。
【図3】捲糸体の捲き崩れ度の測定方法を説明する模式図。
【図4】解舒速度比、及びスカムの測定方法を説明する模式図。
【図5】編成張力の測定方法を説明する模式図。
【符号の説明】
【0057】
1 メスシリンダー
2 処理剤の高さ
3 処理剤の濁層の高さ
4 荷重
5 ローラー
6 Uゲージ
7 弾性繊維捲糸体を巻き取り方向から見た模式図
8 紙巻
9 捲糸体外層部の巻き取り幅
10 捲糸体内層部の巻き取り幅
11 捲糸体巻き取り幅中心部の直径
12 捲糸体巻き取り幅端部の直径
13 弾性繊維捲糸体
14 巻き取り用紙管
15 送り出しローラー
16 巻き取りローラー
17 走行糸条
18 解舒点
19 捲糸体とローラーの接点
20 弾性繊維捲糸体
21 弾性繊維
22 コンペンセーター
23 ローラー
24 編み針
25 Uゲージ
26 ローラー
27 速度計
28 巻き取りローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン油、鉱物油およびエステル油から選ばれる少なくとも一種のベース成分と、アミノ変性シリコーンと、有機多価カルボン酸類と、高級脂肪酸金属石鹸とを含有する弾性繊維用処理剤であって、
ベース成分、アミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量および高級脂肪酸金属石鹸の含有率が、それぞれ、弾性繊維用処理剤全体の79.55〜99.97重量%、0.01〜0.45重量%および0.01〜20重量%の範囲にあり、
下記数式(1)を満足するようにアミノ変性シリコーンおよび有機多価カルボン酸類が配合されている、弾性繊維用処理剤。
0.9≦(A×X)/(B×Y)≦1.1 (1)
(但し、Aはアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量に占めるアミノ変性シリコーンの割合(重量%)、Bはアミノ変性シリコーンと有機多価カルボン酸類との合計量に占める有機多価カルボン酸類の割合(重量%)、Xはアミノ変性シリコーンのアミン価(KOHmg/g)、Yは有機多価カルボン酸類の酸価(KOHmg/g)である。)
【請求項2】
前記アミノ変性シリコーンと前記有機多価カルボン酸類との混合物、前記ベース成分および前記高級脂肪酸金属石鹸を混合して得られる、請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項3】
前記有機多価カルボン酸類が、カルボキシル基とこれらの基を除く残基とから構成される2〜4価のカルボン酸類であり、前記残基が、炭素数0〜20の飽和脂肪族基、炭素数2〜20の不飽和脂肪族基および芳香族基から選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ベース成分がシリコーン油(I)と鉱物油および/またはエステル油(II)とからなり、シリコーン油(I)と鉱物油および/またはエステル油(II)との重量割合(I/II)が70/30〜95/5である、請求項1〜3のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項5】
アルキル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、式:RSiO1/2(式中、R、R、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン樹脂、式:RSiO1/2(式中、R、R、Rは一価炭化水素基である。)示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、および式:RSiO3/2(式中、Rは一価炭化水素基である。)で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂から選ばれる少なくとも一種をさらに含有し、その含有率が弾性繊維用処理剤全体の0.01〜10重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項6】
弾性繊維本体と、これに付着した弾性繊維用処理剤とから構成される弾性繊維であって、
前記弾性繊維用処理剤が、請求項1〜5のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤であり、その付着割合が前記弾性繊維の0.1〜15重量%である、弾性繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−179889(P2009−179889A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17634(P2008−17634)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】