説明

弾性表面波一方向性変換器と電子装置

【課題】位相器をもつ構造の一方向性弾性表面波変換器に関するものであり、すだれ状電極の周期を変化させることにより、広帯域、シャープカットオフ、フラットな特性のフィルターを得る。
【解決手段】位相器をもつ構造の一方向弾性表面波変換器を周期を変化させた傾斜型すだれ状電極及び分散型すだれ状電極に適用する構造とした構成からなる一方向弾性表面波変換器,及び、位相器の位相を変化させる事により、可変周波数フィルタ、可変帯域フィルタを実現する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
本発明は周期の異なる一方向性すだれ状電極弾性表面波変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置に関する。
【従来技術】
従来のすだれ状電極弾性表面波変換器は、両方向性のため、低損失の弾性表面波変換器は得られなかった。また、この難点を解決する方法として、一方向性弾性表面波変換器が種々提案されている。本発明の類似の構造として、C.S.Hartmannらが、IEEE Trans.Sonics and Ultrasonics,SU−19,pp.378−381(1972)に於いて、3位相型一方向性すだれ状変換器を発表している。
また、K.Yamanaouchiらが、Proc.IEEE Ultrasonics Symposium、pp.317−321,(1975)において、グループ型の一方向性すだれ状変換器を発表している。
しかし、これらの研究は、全てすだれ状電極の周期が、同一の電極でり、広帯域特性は得られない。本発明はそれらの欠点を取り除いた構造である。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
同一周期のすだれ状電極を用いたのでは広帯域特性は得られない。本発明はそれらの欠点を取り除いた構造に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上述したごとき従来の欠陥を除去すべくなされたものであって、本方法は、弾性表面波の伝搬方向に直角に周期の異なる傾斜型すだれ状電極を用いた一方向性弾性表面波変換器、弾性表面波の伝搬方向に平行に周期の異なる分散型すだれ状電極を用いた一方向性弾性表面波変換器とすることにより、広帯域特性、通過帯域がフラットでシャープなカットオフ特性をもつフィルタ、及び共振器に関するものでる。
【実施例1】
【0005】
実施例の1は、図.1、図.2、図.3のように、圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、電気的な位相の遅れ、或いは位相の進みをもつ位相器を用いた一方向性すだれ状電極において、位相器の構造として、4位相以上の位相器を用いた一方向性弾性表面波変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置が、実施例の1である。
【実施例2】
実施例の2は、圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、図.4のような、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いは図.5のようなグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた弾性表面波変換器において、これらのすだれ状電極が、図.6のような傾斜型すだれ状電極、或いは、図.7のような分散型すだれ状電極の構造からなる一方向性弾性表面波変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置が、実施例の2である。
【実施例3】
実施例の3は、圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた弾性表面波変換器を用いた構造であり、かつすだれ状電極の構造が周期が一定の構造、或いは変化する構造であり、かつこれらのすだれ状電極が幅方向重み付けされた構造、軸方向重み付けされた構造、容量重み付けされた構造、電極指容量重み付けされた構造のいずれかを用いたすだれ状電極一方向性変換器、また重み付けとして、SinX/Xなどの関数を用いた構造からなる一方向性弾性表面波変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置が、実施例の3である。
【実施例4】
実施例の4は、圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた弾性表面波変換器を用いた構造であり、かつすだれ状電極の構造が周期が一定の構造、或いは変化する構造であり、かつこれらのすだれ状電極が幅方向重み付けされた構造、軸方向重み付けされた構造、容量重み付けされた構造、電極指容量重み付けされた構造のいずれかを用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いは重み付けとして、SinX/Xなどの関数を用いた構造からなる一方向性弾性表面波変換器において、上記のすだれ状一方向性変換器を伝搬方向、或いは伝搬方向に垂直な方向に、周波数特性をOFC(Orthogonal Frequency Coding)に配置した構造のフィルタ及びこれらの変換器を用いた電子装置が実施例の4である。
【実施例5】
実施例の5は、圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた一方向性弾性表面波変換器を用いた構造であり、かつすだれ状電極の構造が周期が一定の構造、或いは変化する構造であり、かつこれらのすだれ状電極が幅方向重み付けされた構造、或いは軸方向重み付けされた構造、容量重み付けされた構造、電極指容量重み付けされた構造のいずれかを用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いは重み付けとして、SinX/Xなどの関数を用いた構造からなる一方向性弾性表面波変換器、及び上記のすだれ状一方向性変換器を伝搬方向、或いは伝搬方向に垂直な方向に、周波数特性をOF(Orthogonal Frequency)に配置した構造のフィルタに於いて、上記の一方向性変換器の位相器の位相を変化させることにより、中心周波数を変化させた可変型フィルタ、及び可変周波数型共振器、及び帯域幅を変化させた弾性表面波変換器、及びこれらの変換器を用いた電子装置が、実施例の5である。
【実施例6】
実施例の6は、請求項5において、位相器として、電圧の変化でインダクタンス、容量、MEMS構造のL,C,トランス値が変化する素子を用いた一方向性すだれ状変換器、或いは電圧の変化で伝送線路の伝搬速度が変化する伝送線路位相器を用いた一方向性すだれ状変換器、或いは上記のL、C、MEMS構造L,C素子、伝送線路を組み合わせた位相可変素子からなるすだれ状電極一方向性変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置が、実施例の6である。
【実施例7】
実施例の7は、圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた弾性表面波変換器において、これらのすだれ状電極が傾斜型すだれ状電極、或いは分散型すだれ状電極の構造からなる一方向性弾性表面波変換器において、傾斜型すだれ状電極或いは分散型すだれ状電極の中心周波数が、f−n,…f−2,f−1,f,f−1,f−2,…f−nとした場合において、位相器として、fで、最適の位相となるような値、例えば90°或いはその値の±20%などとした場合において、f−n,…f−2,f−1,f−1,f−2,…f−nの変換器の位相が最適な値から異なることになのを各周波数における位相器間の距離を最適の位相となるように、変化させた構造の一方向性弾性表面波変換器びこれらの変換器を用いた電子装置が、実施例の7である。
【実施例8】
実施例の8は、L,C,R、トランス、L.C,のMEMS素子、弾性表面波素子、伝送線路構造のT型回路或いはπ型回路を用いたフィルタにおいて、L,C,が電圧で変化する構造、或いは伝送線路の伝搬速度が電圧で変化する構造の可変周波数、及び可変帯域幅のフィルタ及びこれらの素子を用いた電子装置が、実施例の8である。
【実施例9】
実施例の9は、請求項1、2、3、4、5、6,7,8の構造の一方向性変化器において、すだれ状電極が、電極の内部反射を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグレーティング構造の薄膜を用いた内部反射型一方向性すだれ状電極からなる構造の位相器型一方向性すだれ状変換器、及びこれらの変換器を用いた電子装置が実施例の9である。
【実施例10】
実施例の10は、請求項1、2、3、4、5、6、7,8,9の構造の一方向性変換器において、上記の電極を圧電基板に埋め込んだ構造、或いは圧電薄膜に埋め込んだ構造からなる一方向性すだれ状変換器、及びこれらの変換器を用いた電子装置が、実施例の10である。
【発明の効果】
【0007】
図.1の構造の4位相一方向性変換器の周波数特性を図.8に示す。図から良好な周波数特性と一方向特性が得られている。図.9に傾斜型グループ型位相器構造のフィルターの計算結果を示す。低挿入損失と急峻な特性が得られている。図.10に分散型グループ位相器構造のフィルターの計算結果を示す。低挿入損失と急峻な特性が得られている。
図.11に90°位相器を用いた場合の位相の変化に対する中心周波数の変化を示す。図から±50°で約2%の変化が得られている。一方、4位相器の場合は、 図.12のように、−120°〜−60°の範囲で±9%の中心周波数の変化が得られている。実施例の7において、位相合わせののため、電極14の幅、或いは電極15の幅、或いはこの幅を励振すだれ状電極の幅をfの周波数で位相が90°或いは±60°などの値とすることにより、目的とする周波数特性が得られる。
以上のように、本発明の方法を用いることにより、良好な一方向性弾性面波変換器及び可変フィルタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の4位相器型一方向性すだれ状電極の構造を示す図である。
【図2】本発明の4位相器型一方向性すだれ状電極の構造を示す図である。
【図3】本発明の4位相器型一方向性すだれ状電極の構造を示す図である。
【図4】本発明の基本である3位相型すだれ状電極の構造を示す図である。
【図5】本発明の基本であるグループ型すだれ状電極の構造を示す図である。
【図6】本発明の基本である傾斜型すだれ状電極の構造を示す平面図である。
【図7】本発明の基本である分散型すだれ状電極の構造を示す平面図である。
【図8】4位相器型一方向性すだれ状電極の周波数特性の計算結果である。
【図9】傾斜型グループ型位相器構造一方向性フィルターの計算結果を示す図である。
【図10】分散型相器構造一方向性フィルターの計算結果を示す図である。
【図11】90°位相器の位相の変化に対する中心周波数の変化を示す図である。
【図12】4位相器の位相の変化に対する中心周波数の変化を示す図である。
【符号の説明】
1…基板、2…取り出し電極、3…傾斜型すだれ状電極、4…分散型電極、5…誘電体薄膜、6…60°位相器、7…マッチング回路、8…3位相型電極、9…弾性表面波の伝搬方向、10…グループ型電極、11…前進方向の特性、12…後退方向の特性、13…アース電極、14…λ/2幅の電極、15…λ幅の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、電気的な位相の遅れ、或いは位相の進みをもつ位相器を用いた一方向性すだれ状電極において、位相器の構造として、4位相器、及び4位相以上の位相器を用いた一方向性弾性表面波変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置。
【請求項2】
圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた弾性表面波変換器において、これらのすだれ状電極が傾斜型すだれ状電極、或いは分散型すだれ状電極の構造からなる一方向性弾性表面波変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置。
【請求項3】
圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた弾性表面波変換器を用いた構造であり、かつすだれ状電極の構造が周期が一定の構造、或いは変化する構造であり、かつこれらのすだれ状電極が幅方向重み付けされた構造、軸方向重み付けされた構造、容量重み付けされた構造、電極指容量重み付けされた構造のいずれかを用いたすだれ状電極一方向性変換器、また重み付けとして、SinX/Xなどの関数を用いた構造からなる一方向性弾性表面波変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置。
【請求項4】
圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた弾性表面波変換器を用いた構造であり、かつすだれ状電極の構造が周期が一定の構造、或いは変化する構造であり、かつこれらのすだれ状電極が幅方向重み付けされた構造、軸方向重み付けされた構造、容量重み付けされた構造、電極指容量重み付けされた構造のいずれかを用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いは重み付けとして、SinX/Xなどの関数を用いた構造からなる一方向性弾性表面波変換器において、上記のすだれ状一方向性変換器を伝搬方向、或いは伝搬方向に垂直な方向に、周波数特性をOF(Orthogonal Frequencyに配置した構造のフィルタ及びこれらの変換器を用いた電子装置。
【請求項5】
圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた一方向性弾性表面波変換器を用いた構造であり、かつすだれ状電極の構造が周期が一定の構造、或いは変化する構造であり、かつこれらのすだれ状電極が幅方向重み付けされた構造、或いは軸方向重み付けされた構造、容量重み付けされた構造、電極指容量重み付けされた構造のいずれかを用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いは重み付けとして、SinX/Xなどの関数を用いた構造からなる一方向性弾性表面波変換器、及び上記のすだれ状一方向性変換器を伝搬方向、或いは伝搬方向に垂直な方向に、周波数特性をOF(Orthogonal Frequency)に配置した構造のフィルタに於いて、上記の一方向性変換器の位相器の位相を変化させることにより、中心周波数を変化させた可変型フィルタ、及び可変周波数型共振器、及び帯域幅を変化させた弾性表面波変換器、及びこれらの変換器を用いた電子装置。
【請求項6】
請求項5において、位相器として電圧の変化でインダクタンス(L),容量(C)、MEMS素子のL,Cが変化する素子を用いた一方向性すだれ状変換器、或いは電圧の変化で伝送線路の伝搬速度が変化する伝送線路位相器を用いた一方向性すだれ状変換器、或いは上記のL,C,MEMS素子、伝送線路を組み合わせた位相可変素子からなるすだれ状電極一方向性変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置。
【請求項7】
圧電性基板或いは圧電性薄膜をもつ基板上に、3位相型位相器を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグループ型一方向性すだれ状電極、或いは4位相以上の位相器を用いた弾性表面波変換器において、これらのすだれ状電極が傾斜型すだれ状電極、或いは分散型すだれ状電極の構造からなる一方向性弾性表面波変換器において、傾斜型すだれ状電極或いは分散型すだれ状電極の中心周波数が、f−n,…f−2,f−1,f,f−1,f−2,…f−nとした場合において、位相器として、fで、最適の位相となるような値、例えば90°或いはその値の±20%などとした場合において、f−n,…f−2,f−1,f−1,f−2,…f−nの変換器の位相が最適な値から異なることになるのを各周波数における位相器間の距離を最適の位相となるように、変化させた構造の一方向性弾性表面波変換器及びこれらの変換器を用いた電子装置。
【請求項8】
L,C,R、トランス、L,C,RのMEMS素子、弾性表面波素子、伝送線路構造のT型回路或いはπ型回路を用いたフィルタにおいて、L,C,が電圧で変化する構造、或いは伝送線路の伝搬速度が電圧で変化する構造の可変周波数、及び可変帯域幅のフィルタ及びこれらの素子を用いた電子装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6,7,8の構造の一方向性変換器において、すだれ状電極が、電極の内部反射を用いたすだれ状電極一方向性変換器、或いはグレーティング構造の薄膜を用いた内部反射型一方向性すだれ状電極からなる構造の位相器型一方向性すだれ状変換器、及びこれらの変換器を用いた電子装置。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7,8,9の構造の一方向性変換器において、上記の電極を圧電基板に埋め込んだ構造、或いは圧電薄膜に埋め込んだ構造からなる一方向性すだれ状変換器、及びこれらの変換器を用いた電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−170040(P2012−170040A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48279(P2011−48279)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年12月6日 超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム論文委員会発行の「超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム論文集, 第31巻」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年1月31日 圧電材料・デバイスシンポジウム運営委員会発行の「圧電材料・デバイスシンポジウム2011講演論文集」に発表
【出願人】(000179454)
【Fターム(参考)】