説明

弾球遊技機基盤用表面処理シート

【課題】釘打ちの際に白化やクラックが発生せず、打ち釘の保持力に優れ、NC切削加工の際にも剥がれや浮き等が起こらず、切削加工性が優れ、制電処理を施すことより静電気の発生が抑えられた弾球遊技機基盤用表面処理シートを提供する。
【解決手段】弾球遊技機基盤面に貼付する弾球遊技機基盤用シートであって、透明樹脂シートと、少なくとも当該透明樹脂シートの前記弾球遊技機基盤面と接する面側に形成された制電処理層とを具備し、前記透明樹脂シートは、硬質層、軟質層及び最外硬質層を具備するアクリル系ゴムからなる多層構造粒子を含有する透明メタクリル樹脂シートからなり、 前記制電処理層は、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフォンとポリスチレンスルホン酸との混合物よりなる層である弾球遊技機基盤用シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾球遊技機基盤用表面処理シートに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パチンコ台やスロットマシーン等の弾球遊技機の基盤(以下、「弾球遊技機基盤」という。単に「遊技盤」ということもある。)の素材はベニア合板が主流である。
しかし、ベニア合板は、板と板とを接着剤で貼り合わせる際に空洞ができることがあり、この空洞により、パチンコ釘を打ち込んだ後の釘の保持力が不均一で弱くなり、釘が緩むことがある。
また、ベニア合板は、主に輸入により供給されることから、供給国の自然災害、木材伐採等による環境破壊、及び輸入に伴う諸問題等により供給面に不安がある。
一方において、弾球遊技機をより面白くかつ魅力的なものにしたいというユーザーからの要求が高まっている。
【0003】
上述した材料としての特性や供給面の問題やユーザーからの要求に対応するべく、ベニア合板の代替材料として、透明樹脂シートを遊技盤材料として用いる試みがなされている。
透明樹脂シートとしては、例えばメタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などが使われている。
そして、近年においては、遊技盤に液晶表示装置やLED照明装置(発光ダイオード)等を組み込むことにより、より面白くかつ魅力的な弾球遊技機を製造することを可能としている。
【0004】
しかしながら、透明樹脂シートは、以下のような欠点を有している。
例えば、湿度が低い冬場においては、透明樹脂シートが静電気を帯び、帯電することが挙げられる。
具体的には、透明樹脂シートを遊技盤材料として使用してパチンコ玉を連続して打った場合、透明樹脂シート表面や、遊技釘とパチンコ玉との接触(摩擦)により摩擦帯電が発生し、遊技盤の裏面側に設けた画像表示装置(液晶表示画面)にノイズが発生したり、電気部品のLED照明の破損(球切れ)等の不具合が発生したりするという問題を有している。
このような問題の解決策として、遊技盤に植設される遊技釘の先端部分を電気的に絶縁処理する方法(例えば、特許文献1参照。)や、本体に帯電防止処置(アース等)を施す方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−165541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、遊技釘の各先端部分を絶縁処理する作業は非常に煩雑であるという問題がある。
また、透明樹脂シートの材料としてメタクリル系樹脂等を用いた場合、遊技盤にパチンコ釘を打ち込むと、釘打ちした周辺に白化やミクロクラックに伴う割れが発生する場合があるという問題がある。
さらに、遊技盤を加工する場合、NC加工機(多軸穴あけ機)により遊技盤に穴をあけたり、ルーター(トリミング)により切削加工したりする必要があるが、刃物による加工面にカケやバリが発生するという問題もある。
このような遊技盤表面の不具合を低減させることができれば、弾球遊技機の産業上に大きく貢献することが予想される。
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、切削加工したり、釘打ちしたりする際に、白化やクラックが発生せず、また、遊技中に遊技盤の静電気によるトラブル発生を防止することが可能な、弾球遊技機基盤用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、釘打ちされる透明樹脂シートの片面又は両面に、制電処理層を形成することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕
弾球遊技機基盤面に貼付する弾球遊技機基盤用シートであって、
透明樹脂シートと、少なくとも当該透明樹脂シートの前記弾球遊技機基盤面と接する面側に形成された制電処理層とを具備し、
前記透明樹脂シートは、硬質層、軟質層及び最外硬質層を具備するアクリル系ゴムからなる多層構造粒子を含有する透明メタクリル樹脂シートからなり、
前記制電処理層は、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフォンとポリスチレンスルホン酸との混合物よりなる層である弾球遊技機基盤用シート。
【0009】
〔2〕
前記透明樹脂シート中のアセトン不溶部の含有量が、15〜50質量%である前記〔1〕に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【0010】
〔3〕
表面電気抵抗値が、1×106Ω以下である前記〔1〕又は〔2〕に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【0011】
〔4〕
厚み10mmにおける全光線透過率がJIS K7105法にて85%以上である前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【0012】
〔5〕
厚みが5〜19mmである前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【0013】
〔6〕
プラスチック系フィルムにアクリル酸エステル共重合体を含有する粘着剤が塗布された表面保護フィルムを、さらに具備する前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、帯電防止性能に優れ、釘打ちする際における白化やクラックの発生を効果的に防止可能な弾球遊技機基盤用シートが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の弾球遊技機基盤用シートの概略側断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態と言う。)について、図面を参照して説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定するものではなく、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0017】
〔弾球遊技機基盤用シート(遊技盤用シート)〕
図1に、本実施形態の弾球遊技機基盤用シート(以下、単に「遊技盤用シート」という場合がある。)の一例の概略断面図である。
遊技盤用シート10は、透明樹脂シート12の主面に制電処理層が形成された構成を有している。
遊技盤用シート10は、図1中、矢印A側から、所定の遊技盤を構成する釘等の構成部品が打ち付けられるようになっており、この構成部品設置側とは反対側の面であって遊技盤本体との接触側、すなわち液晶表示やLED光源が設けられている場合には、この液晶表示画面やLED光源に接触する側の面に、制電処理層12aが設けられている。
本実施形態の遊技盤用シート10を遊技機(図示せず)に組み込んだ場合、遊技者は釘打ちされた側から遊技盤用シート10を視認する。すなわち、図1中、矢印Aの向きから遊技盤用シート10を視認する。遊技時において弾球は遊技盤用シート10の表面Fに接触する。
【0018】
(制電処理層)
本実施形態の遊技盤用シート10は、釘等の所定の構成部品を設ける構成部品設置面側にも制電処理層12bを設け、透明樹脂シート12の両主面に制電処理層12a、12bを設けた構成とすることが好ましい。
【0019】
制電処理層12a、12bを構成する材料としては、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフォンと、ポリスチレンスルホン酸との混合物を用いる。
制電処理層12aを設けることにより、遊技盤に設けられた液晶画面及びLED光源の不具合の低減させることができる。
また、透明樹脂シート12の両面に制電処理層12a、12bを設けた場合、雰囲気の埃、塵等の静電気による付着を防止することもできる。
【0020】
制電処理層12a、12bは、下記の方法により形成できる。
例えば、ポリ3,4エチレンジオキシチオフォンと、ポリスチレンスルホン酸とを、3:1〜1:3の比、好ましくは2.5:1〜1:2.5の比で混合して塗工液を調製し、ロールコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレー法、フローコート法、スクリーン印刷法等の所定の塗布方法により形成することができる。
塗膜は、塗工後の厚みが0.05μm〜5μmとなるようにすることが好ましい。
【0021】
上記制電処理層12a、12bを、ポリ3,4エチレンジオキシチオフォンとポリスチレンスルホン酸との混合物により形成した層とすると、公知の方法による透明樹脂シートへの帯電防止処理によって設けられる層とは異なり、後述するような軟質層を有する多層構造のアクリル系ゴム粒子を含有する透明樹脂シート12の表面であっても、実用上十分に高い鉛筆硬度が得られる観点から好ましい。
【0022】
(透明樹脂シート)
本実施形態の透明樹脂シート12は、アクリルゴム粒子を含有するメタクリル系樹脂シートであり、いわゆるメタクリル系樹脂耐衝撃シートである。
【0023】
メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルの単独重合体であってもよいし、他の重合体との共重合体であってもよい。
メタクリル系樹脂の共重合比率としては、メタクリル酸メチル70〜100質量%と、これと共重合する他の単量体0〜30質量%であることが、耐衝撃性及び耐熱性等の観点から好ましい。
【0024】
メタクリル系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、押出性、耐熱性及び加工性等の観点から、80,000〜220,000が好ましく、90,000〜200,000がより好ましい。
重量平均分子量の測定は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、クロマトグラムのピークの分子量を、移動相としてテトラヒドロフランを用い、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
【0025】
メタクリル酸メチルと共重合できる他の単量体としては、特に限定されるものではなく、公知の単量体を用いることができる。
例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸、スチレン、無水マレイン酸等が挙げられる。他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上で用いてもよい。
【0026】
前記アクリル系ゴム粒子は、硬質層、軟質層、及び最外硬質層を具備するアクリル系ゴムからなる多層構造粒子である。
アクリル系ゴム粒子は、中心から、中心硬質層、軟質層、最外硬質層の順で形成される3層構造を少なくとも有する粒子であると、透明樹脂シートと粒子の屈折率を同じにし、樹脂に柔軟性を付与する粒子を得やすい点で好ましい。
また、軟質層と最外硬質層との間に中間硬質層をさらに有する4層構造としてもよいし、5層以上の多層構造としてもよい。それらの中でも、耐衝撃性の観点から、3層構造が好ましい。
透明樹脂シート12が、上記構造のアクリル系ゴム粒子を含有するものであることにより、遊技盤用シート10が外力を受けた際にその衝撃を吸収することができる。
前記アクリル系ゴム粒子を構成する軟質層成分としては、ブチルアクリレートを主成分とする樹脂などが挙げられる。
また、硬質層としては、メタクリル系樹脂を主成分とする樹脂などが挙げられる。
【0027】
前記アクリル系ゴム粒子としては、公知のアクリル系ゴム粒子を用いることができる。
例えば、特公昭60−17406号公報、特開平8−245854公報、特公昭55−27576号公報、特公昭58−1694号公報、特公昭59−36645号公報、特公昭59−36646号公報、特公昭62−41241号公報、特開昭59−202213号公報、特開昭63−27516号公報、特開昭51−129449号公報、特開昭52−56150号公報等に記載のアクリル系ゴム粒子を用いることができる。
【0028】
前記アクリル系ゴム粒子としては、下記(ア)、(イ)、(ウ)のアクリル系ゴム粒子も使用できる。
(ア):下記(a)〜(c)の工程によって得られるアクリル系ゴム粒子。
(a)第一層形成工程:まず、メチルメタクリレート単独又はメチルメタクリレートとこれと共重合可能な単量体との混合物を乳化重合させて、25℃以上のガラス転移点をもつ、メチルメタクリレートを主体とした重合体の分散液を形成させる。
(b)第二層形成工程:単独で重合させたときにガラス転移点が25℃以下の共重合体を形成する、アルキルアクリレートを主体とし、さらにこれと共重合可能な単量体及び多官能性架橋剤の少なくとも一方と、混合物全重量に基づき0.1〜5質量%の多官能グラフト剤を含有する混合物を第一層形成工程で得られた分散液に加えて乳化重合させる。
(c)第三層形成工程:単独で重合させたときに25℃以上のガラス転移点をもつ重合体を形成するメチルメタクリレート又はこれを主体とする単量体混合物、および連鎖移動剤を第二層形成工程で得られた分散液に段階的に添加し、乳化重合させる。
ここで言う「主体」とは、各層を構成する樹脂の50質量%以上を含有することを言い、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上を含有する場合を言う。
【0029】
(イ):ポリマーの溶融開始温度が235℃以上であり、かつ、内層に単独で重合した場合にガラス転移温度Tgが25℃以下となるポリマーを含む少なくとも1層の軟質重合体層と、最外層に単独で重合した場合にTgが50℃以上となるポリマーを含む硬質重合体層とを有するアクリル系多層構造ポリマーの乳化ラテックスを凝固させて得られる凝固粉を含むアクリル系ゴム粒子であって、乾燥後の凝固粉の粒径212μm以下の微粉の割合が40質量%程度であり、かつ、乾燥後の凝固粉の水銀圧入法で測定した孔径5μm以下の空隙体積が単位面積当たり0.7cc以下であるアクリル系ゴム粒子。
【0030】
(ウ):下記(a)〜(g)の構成を有するアクリル系ゴム粒子。
(a)メチルメタクリレート90〜99質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜10質量%及び、これらと共重合可能なα,β−不飽和カルボン酸のアリル、メタリル、またはクロチルエステルから選ばれる少なくとも1種からなるグラフト結合性単量体0.01から0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られる最内硬質層重合体25〜45質量%、
(b)上記最内硬質層重合体存在下に、n−ブチルアクリレート70〜90質量%、スチレン10〜30質量%及びこれらと共重合可能なα,β−不飽和カルボン酸のアリル、メタリル、またはクロチルエステルから選ばれる少なくとも1種からなるグラフト結合性単量体1.5〜3.0質量%からなる単量体混合物を重合して得られる軟質層重合体35〜45質量%、
(c)上記最内硬質層および軟質層からなる重合体の存在下に、メチルメタクリレート90〜99質量%、アルキル基の炭素数が1〜8である単量体混合物を重合して得られる最外硬質層重合体20〜30質量%とからなり、
(d)軟質層重合体/(最内硬質層重合体+軟質層重合体)の質量比が0.45〜0.57であり、
(e)平均粒子径が0.2〜0.3μmである、多層構造アクリル系重合体であって、さらに、当該多層構造アクリル系重合体をアセトンにより分別した場合に、
(f)グラフト率が20〜40質量%であり、
(g)当該アセトン不溶部の引っ張り弾性率が1000〜4000kg/cm2、である
アクリル系ゴム粒子。
【0031】
また、市販されているアクリル系ゴム粒子としては、例えば、三菱レイヨン(株)製「ゴムIR377(商品名)」、「ゴムIR441(商品名)」等が挙げられる。
【0032】
透明樹脂シート12中のアクリル系ゴム粒子の含有量は、透明樹脂シート中のアセトン不溶部の含有量によって測定することができる。
アセトン不溶部は15〜50質量%であることが好ましく、20〜45質量%であることがより好ましい。
上記アセトン不溶部の含有量を15質量%以上とすることにより、本実施形態の遊技盤用シート10の透明性、鉛筆硬度、切削加工性(バリやカケ等の発生の防止)、釘打ちによる白化やクラック等の抑制効果等をより優れたものにできる。
アセトン不溶部の含有量を50質量%以下とすることにより、本実施形態の遊技盤用シート10にキズが付着することを防止でき、かつ優れた弾性率とすることができる。
ここで、アセトン不溶部の含有量は、以下のようにして測定することができる。
透明樹脂シート12の一部を試験片として精秤し、質量を測定する(W1)。続いて、試験片を遠沈管に入れた後、アセトンを加えて溶解し、アセトン可溶部を除去する。
真空乾燥機にて溶媒を飛ばし、冷却した後、秤量した残留物をアセトン不溶部とする(W2)。
ゴム配合量とアセトン不溶部とは一致せず、同一サイズでもゴム粒子構造(最外硬質層:アセトンに溶解)が異なると、得られる物性も異なるため、耐衝撃性に寄与するゴム分をアセトン不溶部として定義する。
下記式により、アセトン不溶部(質量%)を算出する(X)。
アセトン不溶部(X)=(W2/W1)×100
【0033】
透明樹脂シート12は、公知の重合方法により製造でき、何ら限定されるものではない。また、透明樹脂シートは、2層以上からなる複数層の樹脂シートであってもよい。
【0034】
本実施形態の弾球遊技機基盤用シート10の厚さは、5〜19mmの範囲であることが好ましい。
5mm以上とすることで、シート表面に釘打ち時の保持力が向上し、シート厚が19mm以下とすることで、パチンコ盤面として全光線透過率を維持でき、液晶表示が明るく見え、演出効果が向上する。
19mmまでパチンコ釘を安定して打ち込み可能であるが、より安定して打ち込むことができる点で、遊技盤用シートの厚さは5〜15mmであることが好ましく、8〜12mmがより好ましい。
【0035】
〔遊技盤用シートの製造方法〕
また、本実施形態の遊技盤用シートは、公知の方法で製造できる。
先ず、透明樹脂シート12を作製し、続いて、制電処理層12a(及び12b)を塗布形成する。
例えば、押出シート法、キャストシート法、及び金型を使用し金型の中に樹脂を注入し、固化、冷却させて透明樹脂シートを得、制電処理層形成用の塗工液を、所定の塗布工程により塗布、乾燥する。
透明樹脂シート12の形成方法としては、透明樹脂シート12中におけるアクリル系ゴム粒子の均一分散等を図る上で、押出シート法が好ましい。
【0036】
〔表面保護フィルムを設けた構成〕
本実施形態の遊技盤用シート10においては、上述した透明樹脂シート12に、制電処理層12a、12bを設けた後に、プラスチック系フィルムからなる表面保護フィルムを、さらに設けた構成とすることが好ましい。
これにより、制電処理層が傷ついたり、剥離したりする等の不都合を効果的に防止できる。
また、表面保護フィルムは、遊技盤用樹脂シート10への制電処理前にも設けておき、制電処理の際に剥離してから処理を行うようにすることにより、表面荒れや汚れの付着を防止することができる。なお、制電処理前において設ける場合、後述する実施例においては、単に保護用フィルムと称する。
【0037】
表面保護フィルムの材質は、透明なフィルムであればよく、種類は限定されない。
例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリアミド樹脂等を使用できる。
表面保護フィルムの厚さは、30〜200μmが好ましく、より好ましくは40〜120μmである。
切削加工性や穴あけ加工性及びフィルム剥離等の観点から、ポリエチレン系樹脂や及びポリプロピレン系樹脂の材質のフィルムが好ましい。
また、表面保護フィルムの表面に塗布される接着剤は、アクリル酸エステル系重合体を含有する粘着剤、EVA系重合体を含有する粘着剤が挙げられるが、切削加工や釘穴を設けたりする工程後であっても密着性が確保でき、輸送、流通時にもフィルム捲くれの問題が発生しない点で、アクリル酸エステル系重合体を含有する粘着剤が好ましい。
【0038】
〔遊技盤用シートの物性〕
(表面電気抵抗値)
本実施形態の遊技盤用シートは、表面電気抵抗値が、1×106Ω以下であることが好ましい。表面電気抵抗値は、後述する実施例に示す方法により測定できる。
表面電気抵抗値がこの範囲以下であると、遊技盤とパチンコ玉との接触による摩擦帯電をより好ましい状態で防止することができる。表面電気抵抗値は、例えば、制電処理層の厚みや、塗工液の希釈率を変えることにより調整することができる。
(全光線透過率)
本実施形態の遊技盤用シートは、厚み10mmにおける全光線透過率がJIS K7105法にて85%以上であることが好ましい。全光線透過率は、後述する実施例に示す方法により測定できる。全光線透過率がこの範囲であると、盤の裏側に設けた画像表示などがより鮮明に見えるようになり、盤としての高級感が生まれる。
この透過率は、例えば、シートに含まれるアクリル系ゴム粒子や各種添加剤の量を変えることにより調整できる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例と比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0040】
各実施例及び各比較例において、遊技盤用シートを作製し、性能評価を行った。
具体的には、アセトン不溶部の含有量、光学特性(全光線透過率)、帯防性能を示す表面抵抗値、表面の塗膜(貼り合せ)の密着度合いを評価する密着性(残存数)、表面硬さ(鉛筆硬度)、環境試験(冷熱サイクル)における光学特性(全光線透過率)及び表面抵抗値、NC切削における切削加工性及びフィルムの捲れ、釘打ち後の白化の有無及びクラック発生の有無、パチンコ台に遊技盤用シートを組み込んだ実装試験の各項目について評価した。
【0041】
〔(1)アセトン不溶部の含有量〕
保護用フィルムを剥がした透明樹脂シートを一昼夜(約80℃、約12時間以上)乾燥後、透明樹脂シートの一部を切出してサンプルとし、約1.0gを精秤した(W1)。
その後、遠沈管(金属製チューブ)にサンプルを入れた後に、アセトン20mLを加え室温で約1日静置後、振とう機にて2時間振とうした。
次に、日立工機(株)製、真空式高速冷却遠心機(機種「CR26H」)を使用し、5℃、24000rpmに条件設定し、1時間遠心分離した。
振とう後、上澄み液をデカンテーションして除いた後、新たにアセトン20mLを加え室温で1時間振とうした。
振とう後、5℃、24000rpmの条件にて1時間遠心分離した。
再度、同一方法及び条件で繰り返し合計3回行った。上澄み液をデカンテーションして除き、一晩風乾させた。
真空乾燥機を100℃に設定し、一昼夜(約12時間以上)真空乾燥後に取出し、デシ
ケーター内で室温まで冷却後、残留物の質量を秤量した(W2)。
次式により、アセトン不溶部の含有量(質量%)を算出した(X)。
アセトン不溶部(X)=(W2/W1)×100
【0042】
〔(2)全光線透過率〕
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」の規定方法に準じ、後述する実施例及び比較例において作製した遊技盤用シートを、50×50×10(板厚)mmのサンプルサイズに切り出した後、日本電色工業(株)製の濁度計型式「1001DP」を使用して測定した。
全光線透過率は、85%以上であれば、実用上良好であると判断した。
【0043】
〔(3)表面抵抗値(帯電防止性能)〕
JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」の規定方法に準拠し、後述する実施例及び比較例において作製した遊技盤用シートを、100×100mmのサンプルサイズに切り出した後、三菱化学(株)の抵抗値計 型式「ロレスターGP MCP−T600」を使用し、印加電圧:10V チャージ(充電):60秒 放電:15秒とし、試験サンプルは、予め23℃×50%RHの恒温恒湿にて48時間以上、状態調整を行った後に測定した。
上記測定装置は、表面抵抗値が1×106Ω以上の範囲が装置上の特性により測定不可のため、東亜ディーケイーケー(株)〔現在、日置電機(株)〕製の超絶縁計 型式「SM−8220」を使用し、同一サンプルサイズ及び同一測定条件に測定を行った。
表面抵抗値は、1×106Ω以下であれば、実用上良好であると判断した。
【0044】
〔(4)密着性(残存数)〕
JIS K 5400「塗料一般試験法」の規定方法に準じ、後述する実施例及び比較例において作製した遊技盤用シートを、100mm×100mmのサイズに切り出し評価用サンプルとした。
カッターガイド(隙間間隔:1mm)を用い、フェザー安全剃刀(株)製の片刃のカミソリ(品番:FAS−10)を使用し、10本線を引き、刃を前後入替え更に、10本線を引き、1mm間隔の100升を作製した。カミソリ刃は20本線を引いた後は使い捨て、常に新しい刃を使用した。
次に、100升を作製した遊技盤用シート表面に、ニチバン(株)製のセロテープ(登録商標)(幅:18mm)を使用し、強く貼付し、一気にテープを剥ぎ取り、剥がれた制電処理層を数えた。同一方法にて5回繰り返し残存数を求めた。残存数が100であれば実用上良好であると判断した。
【0045】
〔(5)鉛筆硬度〕
JIS K 5400「塗料一般試験法」の規定方法に準じ、後述する実施例及び比較例において作製した遊技盤用シートを、100mm×150mmのサイズに切り出し評価用サンプルとした。
続いて、約80℃の乾燥機の中に12時間以上放置した後、デシケーター中にて自然冷却させた。
(株)東洋精機製作所製の鉛筆引掻き硬さ試験機を使用し、引掻き角度:45度、荷重(重り):1kgの条件下にて測定した。
制電処理層を形成した面が片方(面)の場合は、両面を測定し、制電処理層による硬さを評価した。
鉛筆硬度については、硬度の高い方から、9H・・・、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、・・・6Bの基準により示した。
表面が硬い方がキズは付き難く、軟らかいと容易にキズが付き易い。そのため、「3B」以上が好ましく、「2B」以上がより好ましいものとした。
制電処理層を形成していない透明樹脂シートの鉛筆硬度は「2B」であるので、それ以上に硬くなっていれば、表面処理を施したことより耐擦傷性が向上していると判断した。
【0046】
〔(6)環境試験(冷熱サイクル試験)〕
後述する実施例及び比較例において作製した遊技盤用シートを約100mm×100mm角に切り出し後、エスペック株式会社製の低温恒温恒湿試験機機種「PL−4KP」を使用して、温湿度を付加した冷熱サイクル試験を実施した。
サンプル取り付け方法は、サンプルとしたシートに負荷がかからないように垂直に立て掛け、専用治具を作製し試験を実施した。
試験条件は、−20℃〜65℃、90%RHの20サイクルを実施した。各温度では、5時間保持させ、それぞれ1時間をかけて昇温と降温を繰り返し行い、1サイクルを12時間とした。
試験後のサンプルを取り出し後、恒温恒湿室(23℃×50%RH)に専用治具に立て掛け約24時間放置後に全光線透過率及び表面抵抗値を測定した。
環境試験前後において、全光線透過率、表面抵抗値ともに数値の差が無い場合に、実用上良好であるものと判断した。
【0047】
〔(7)切削加工性(カケ、バリ等/フィルム捲れ)〕
NC加工機の一般的な木工用(ベニア合板)の切削加工条件に設定した後、遊技盤用シート表面に、表面保護フィルムを付けた状態で、毎葉にて、直径が60mmの円形状(「○」形状)、一辺が60mmの正三角形状(「△」形状)、及び一辺が60mmの正方形状(「□」形状)を各々3個ずつ、遊技盤用シートの中央部にNC切削加工を行った。
問題が無くほぼ良好に加工ができた場合を「○」とし、カケ(バリ)やフィルムの剥がれが認められる場合を「△」とし、明らかにカケ(バリ)やフィルムが剥がれた場合を「×」とする相対比較評価を行った。
【0048】
〔(8)釘打ち後の白化発生の有無およびクラック発生の有無〕
後述する実施例及び比較例において作製した遊技盤用シート(サイズ50mm×150mm)を準備し、ストレートシャンクドリルφ1.73mmを用いて、ボール盤で10箇以上の穴を貫通させた。
そして、真鍮製釘φ1.83mm全長33.3mm、頭部分引いた長さ31.2mm、テーパー部分3mm、φ1.83mmの真鍮製パチンコ釘(捻子無し)を、穴の中央に釘をセットした。
続いて、インストロンジャパン社製、型式5582(床置きモデル)の試験機を用い、毎分50mmの速度で釘を打ち、シートの厚みに対して釘の平行部分が貫通した遊技盤用シート厚み10mmの場合は13mm)後の、打った釘周辺の白化発生とクラック発生の有無を目視にて評価した。
その結果、白化が発生しなかった場合を「○」、僅かに白化が認められた場合を「△」、白化が多数生じた場合を「×」とした。
クラックについても同様に、クラックが発生しなかった場合を「○」、僅かに白化が認められた場合を「△」、白化が多数生じた場合を「×」とした。
【0049】
〔(9)実装試験〕
後述する実施例及び比較例において作製した遊技盤用シートに、NC切削加工を用いてパチンコ盤面形状に加工後、更に釘穴及び役物用の穴切削加工を施しパチンコ基盤を作製後、釘打ちにてパチンコ釘を打つパチンコ基盤を作製した。
パチンコ基盤に、LED及び液晶画面等を取付けた後、実装試験用のパチンコ台を作製した。
パチンコ台に対し、パチンコ玉を1分間に100発、1日約8時間打ち続けて、約4週間テストを実施した。
その間に、パチンコ台部品、装置等に不具合を発生した場合を「×」、何も不具合を生じなかった場合は「○」とし、液晶画面にノイズが入ったり、LEDに誤作動が生じたりした場合を「△」とした。
表面抵抗値の帯防性能が異なる数種類の遊技盤用シートを用い、相対比較を実施した。
【0050】
次に、遊技盤用シートの製造例を示す。
先ず、透明樹脂シートに含有させるアクリル系ゴム粒子の製造例を示す。
(アクリル系ゴム粒子)
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水6860mL、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム13.7gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。
メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略す。)907g、n−ブチルアクリレート(以下、「BA」と略す。)33g、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(以下、「HMBT」と略す。)0.28g、及びアリルメタクリレート(以下、「ALMA」と略す。)0.93gを混合して混合物(I−1)とした。
混合物(I−1)222gを、上記還流冷却器付反応器に一括添加し、添加5分後に過硫酸アンモニウム0.22gを添加した。
その40分後から、混合物(I−1)の残りの719gを20分間かけて連続的に添加し、添加終了後60分間保持した。
続いて、過硫酸アンモニウム1.01gを添加した後、BA1067g、スチレン(以下、「St」と略す。)219g、HMBT0.39g、ALMA27.3gからなる混合物(I−2)を140分間かけて連続的に添加し、添加終了後、さらに180分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム0.30gを添加した後、MMA730g、BA26.5g、HMBT0.22g、n−オクチルメルカプタン(以下、「n−OM」と略す。)0.
76gからなる混合物(I−3)を40分間かけて連続的に添加し、添加終了後95℃に昇温し、30分間保持して、ラテックスを得た。得られたラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩拆・凝固させた。次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、多層構造アクリル系重合体(I)を得た。
得られた多層構造アクリル系重合体(I)の一部を抜き取り、メタクリル系樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「デルパウダ:70Hビーズ」)を混練して、サンプルとした。
得られたサンプルの一部を切出し、RuO4(ルテニウム酸)染色超薄切片法にて、染色されたゴム粒子断面の電子顕微鏡を用いて写真撮影した。撮影された約20個のゴム粒子の直径をスケールにて求め、その平均を平均粒子径とした。最終的に得られたゴム粒子の平均粒子径は、0.23μmであった。
なお、化合物の略号について、下記に示す。
MMA;メチルメタクリレート
BA;n−ブチルアクリレート
St;スチレン
MA;メチルアクリレート
ALMA;アリルメタクリレート
PEGDA;ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200又は600)
n−OM;n−オクチルメルカプタン
HMBT;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
【0051】
〔実施例1〕
MMA(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「デルパウダ:70Hビーズ」)75質量%、上述した(アクリル系ゴム粒子)の項目により製造したアクリル系ゴム粒子25質量%、となるように質量調整を行った後、ホッパーに投入し、均一分散となるように混合して樹脂混合物を得た。
得られた樹脂混合物を、150φ、L/D=34のシート押出機に供給し、厚み10mm、幅1000mmのシートに押出して、押出シートを得た。
押出機の温度は約280℃、ダイの温度は約260℃、ポリッシングロール温度は約80℃であった。
得られた押出シートの両面に、保護用フィルム(大王加工紙工業株式会社製、商品名「FMマスキング」、厚み:89μm、基材層:高密度ポリエチレン、接着剤層:EVA系(エチレン−酢酸ビニル共重合体))を、インライン工程内で貼り付けた(貼付時の圧力:2kg/cm2、テンション:約6kg)。
その後、工程内にて透明樹脂シートを一定寸法に切断した。
得られた透明樹脂シートに保護用フィルムを両面に貼付けたものを、400mm×500mmに切り出し、表面処理用原板とした。
【0052】
次に、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の水溶液(商標名:バイトロンP、バイエル株式会社製)を、ロータリーエバポレーターを用いて20%まで濃縮し、イソプロパノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルとの混合溶剤にて24倍に希釈した。
得られた溶液を紫外線硬化ハードコート剤(商標名:ビームセット700、荒川化学株式会社製)と98:2の比率で均一に混合し、制電処理液(ポリ3,4エチレンジオキシチオフォン/ポリスチレンスルホン酸の混合物)を作製し、巾80mm、長さ500mm、高さ800mmの槽に入れた。
上述のようにして作製した、上記表面処理用原板の保護フィルムを剥がした後、この槽に10秒間浸漬し、10m/分の速度で引き上げ、透明樹脂シートの両面に塗工した。
引き続き、22℃で5分間放置した後、60℃の循環式乾燥機内で10分間加熱した。
さらに、塗工した両面に、高圧水銀灯を用いて積算光量が500mj/cm2となるように紫外線照射をし、遊技盤用シートを得、評価用サンプルとし各評価項目について評価した。
【0053】
〔実施例2〕
上記〔実施例1〕で作製した制電処理液を、バーコーターにて透明樹脂シートの片面に塗工した。
その他の条件は実施例1と同様の方法により遊技盤用シートを得、評価用サンプルとし、各評価項目について評価した。
なお、表面抵抗値、及び鉛筆硬度については、両面を測定し、制電処理を行った面と、未処理面との測定値を比較した。
【0054】
〔実施例3〕
メタクリル樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「デルパウダ:70Hビーズ」)50質量%、上述した(アクリル系ゴム粒子)の項目により製造したアクリル系ゴム粒子50質量%となるように配合し、樹脂混合物を得、その他の条件は、実施例1と同様として透明樹脂シート、遊技盤用シートを作製し、各評価項目について評価した。
【0055】
〔実施例4〕
アクリル系ゴム粒子として、フレーク状アクリルゴムの多層構造粒子(三菱レイヨン株式会社製、商品名「IR441」)を用いた。
その他の条件は、〔実施例1〕と同様にして透明樹脂シート、遊技盤用シートを作製し、各評価項目について評価した。
【0056】
〔実施例5〕
上述した(アクリル系ゴム粒子)の項目により製造したアクリル系ゴム粒子70質量%を配合し、その他の条件は〔実施例1〕と同様にして透明樹脂シート、遊技盤用シートを作製し、各評価項目について評価した。
【0057】
〔比較例1〕
上述した〔実施例1〕と同様にして透明樹脂シートを作製し、制電処理層を形成せず、各評価項目について評価した。
【0058】
〔比較例2〕
アクリル系ゴム粒子が配合されていないメタクリル樹脂シート〔旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「デラグラス」、A999(透明)、板厚10mm〕を透明樹脂シートとし、その後、実施例1と同様に塗工処理をして制電処理層を形成して評価用サンプルを得、各評価項目について評価した。
【0059】
〔比較例3〕
上述した〔実施例1〕で得られた透明樹脂シートを使用し、両面の保護用フィルムを剥がした後、コルコート株式会社製 コルコートNR−121X−9を入れた巾80mm、長さ500mm、高さ800mmの槽に10秒間浸漬し、10m/分の速度で引き上げ、両面に塗工した。
引き続き、60℃の循環式乾燥機内で10分間加熱乾燥し、制電処理層を形成し、各評価項目について評価した。
【0060】
〔比較例4〕
上述した〔実施例1〕で得られた透明樹脂シートを使用し、両面の保護用フィルムを剥がした後、日本合成化学株式会社製帯電防止塗料UVAS−103を入れた巾80mm、長さ500mm、高さ800mmの槽に10秒間浸漬し、10m/分の速度で引き上げ、両面に塗工した。
引き続き、22℃で5分間放置した後、60℃の循環式乾燥機内で10分間加熱した。
次に、塗工した両面に高圧水銀灯を用いて積算光量が500mj/cm2となるように紫外線照射をし、制電処理層を形成し、各評価項目について評価した。
【0061】
【表1】

【0062】
なお、上記表1中、実施例2の表面抵抗値については、両面(制電処理層形成面/未形成面)を測定した結果を記載した。
また、表1中、例えば「1E+5」と標記している場合、「1×105」を意味するものとし、その他の標記も同様に解釈する。
【0063】
表1に示すように、実施例1〜6の遊技盤用シートは、釘打ちする際に白化やクラックが発生せず打ち釘の保持力が優れ、遊技盤を機械切削加工する際にフィルムの剥がれや浮き等が起こらず切削加工性に優れており、制電処理層を設け表面電気抵抗値を1×106Ω以下としたことにより、パチンコ台の遊技中に液晶画面のノイズ、LEDの球切れ等の不具合の発生を効果的に防止でき、遊技盤としての性能効果が優れることが確認された。さらに、制電処理層を設けたことにより、鉛筆硬度の向上効果も得られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の弾球遊技機基盤用シートは、パチンコ台をはじめとする弾球遊技機の基盤用シートとして用いることができ、真鍮製釘を打つパチンコ遊技機を含む弾性遊技機分野一般に、産業上の利用可能性がある。
特に、遊技機基盤面を部分液晶化、又は全面液晶化した弾球遊技機に好適に利用できる。
また、電飾された弾球遊技機等にも好適に利用できる。
さらには、クリーンルームの仕切板や、建材用途にも、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0065】
10 弾球遊技機基盤用シート(遊技盤用シート)
12 透明樹脂シート
12a 制電処理層(片面処理時の構成:液晶画面側のみ処理)
12b 制電処理層(両面処理時の構成)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾球遊技機基盤面に貼付する弾球遊技機基盤用シートであって、
透明樹脂シートと、少なくとも当該透明樹脂シートの前記弾球遊技機基盤面と接する面側に形成された制電処理層とを具備し、
前記透明樹脂シートは、硬質層、軟質層及び最外硬質層を具備するアクリル系ゴムからなる多層構造粒子を含有する透明メタクリル樹脂シートからなり、
前記制電処理層は、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフォンとポリスチレンスルホン酸との混合物よりなる層である弾球遊技機基盤用シート。
【請求項2】
前記透明樹脂シート中のアセトン不溶部の含有量が、15〜50質量%である請求項1に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【請求項3】
表面電気抵抗値が、1×106Ω以下である請求項1又は2に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【請求項4】
厚み10mmにおける全光線透過率がJIS K7105法にて85%以上である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【請求項5】
厚みが5〜19mmである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の弾球遊技機基盤用シート。
【請求項6】
プラスチック系フィルムにアクリル酸エステル共重合体を含有する粘着剤が塗布された表面保護フィルムを、さらに具備する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の弾球遊技機基盤用シート。

【図1】
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