説明

形状記憶合金ステープルを送出する装置

装置は、複数の関連付けられたステープルを受容するための複数のチャンバを備え、各ステープルは、ステープラ内に配置されている際にはのばされた構成をとり、ステープラから放出された際には縫合のために配備された構成をとることを可能にする形状記憶を有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2007年5月2日に出願されたオーストラリア国特許出願第2007902314号による優先権を主張し、その特許出願の全体を参照することにより本願明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般的に、固定用の方法及び装置に関し、特に、医療用途における縫合用(但しこれに限定されない)の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
医療用途において、糸による一連の縫い目の形態であり得る縫合を用いて、組織を接合することが知られている。この縫い目は、通常、外科医が縫い針を操作できるように、縫合部位にかなり自由に手が届くことを要する。手作業で縫い目を縫うことは、状況によっては、幾分困難であり得ると共に時間がかかる場合がある。それに代わる縫合の形態として、ステープルが用いられる。ステープルは、ステープラ装置のヘッドから送り出され、組織を通り、ステープラ装置のアンビルに当たって変形されることにより適切な位置に係止される。
【0004】
縫合の更に別の形態では、ステープルがステープラから出る際に、ステープルをループ状の構成に変形させる湾曲した整形部を有するステープラが用いられる。このようなステープラの短所は、整形部がステープラにかなり大きい径方向寸法を与えるので、ステープラの先端部を小径にすることが困難なことである。先端部の直径が大きいステープラでは、多くの血管手術(冠状動脈バイパス移植等)が実際上不可能になり得る。このようなステープラに伴う別の短所は、外科医が組織に針を通した後に固い結び目を作ることができる手による縫合と比べて、放出されたステープルは特にきついループの形状にならないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、代替的な固定用の方法及び装置、特に、医療用途における縫合用の方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、複数の関連付けられたステープルを受容するための複数のチャンバを備えた装置であって、各ステープルが、ステープラ内に配置されている際にはのばされた構成をとり、ステープラから放出された際には縫合のために配備された構成をとることを可能にする形状記憶を有して構成される装置が提供される。
【0007】
この形状記憶は、少なくとも部分的に熱によって活性化されることが好ましい。
【0008】
この装置は、チャンバに対して相対移動可能なスリーブであって、のばされた構成のステープルがチャンバ内で該スリーブによって捕捉される第1の位置とステープルが解放されて配備された構成をとる第2の位置との間を移動可能なスリーブを備えることが好ましい。
【0009】
このスリーブは、軸方向にスライドすることにより、及び/又は、チャンバに対して相対的に回転することにより、第1の位置と第2の位置との間を移動するよう構成されるのが好ましい。
【0010】
この装置は、医療用ステープラの形態であることが好ましい。
【0011】
この装置は、ステープルが配備されるまで、ステープラの一端部上に移植片を保持するためのキャップを備えることが好ましい。
【0012】
別の態様において、上述の装置を用いた固定方法が提供される。
【0013】
この方法は、のばされた構成のステープルを装置のチャンバ内に配置し、スリーブを、のばされた構成のステープルがチャンバ内で該スリーブによって捕捉される第1の位置とステープルが解放されて配備された構成をとる第2の位置との間で移動させることを含むのが好ましい。
【0014】
この方法では、移植片を取り付けるために、該移植片が、ステープルによって適切な位置に固定されるまでは、まず装置によって支持されるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】固定装置の断面図。
【図2A】装置の送出先端部の部分断面斜視図。
【図2B】部分的に放出されたステープルを示す送出先端部の部分断面斜視図。
【図2C】完全に放出されたステープルを示す送出先端部の部分断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明を説明するが、この例は本発明を限定するものではない。
【0017】
図1には、ステープラの形態の固定装置1が示されている。装置1は、駆動機構4に接続されたトリガ3を有するハンドピース2を有し、駆動機構4は、送出先端部6で終端する細長いスリーブ5内に配置された内部ステープルキャリアに接続されている。
【0018】
駆動機構4はハンドピース2のバレル7内に収容されており、シャトルピース8を有する。シャトルピース8はトリガ3に接続されており、トリガ3の位置に応答してバレル7の長さ方向に移動する。シャトルピース8は回転部材9に接続されており、回転部材9はバレル7の外に延出する側方レバー10を有する。まずトリガ3が握り締められた後、レバー10が例えば手によって作動されると、回転部材9及びそれによって駆動機構4全体が回転し、キャリアが送出先端部6のスリーブに対して相対的に回転する。従って、トリガ3が作動されると、駆動機構4は図面上の右側に移動し、次に、レバー10を用いて回転させられる。
【0019】
次に図2を参照し、装置1の送出先端部6をより詳細に説明する。先端部6はスリーブ5、ステープルキャリア20及び中心ロッド21と同軸に構成されており、これらは全てハンドピース2に接続されている。
【0020】
スリーブは、キャリア20に充填されるステープルの入口となる軸方向に延びる複数の細長い開口部22を有する。複数の細長い出口溝23が、スリーブ5の開口端24と連通している。溝23の位置は、開口部22から径方向にオフセットされている。
【0021】
キャリア20は複数のチャンバ25を有する。チャンバ25は、初期状態ではステープルをキャリアに充填するために開口部22と位置決めされ、次に、スリーブがキャリア20に対して相対的に回転されると、ステープルを放出するために溝23と位置決めされるよう構成されている。各チャンバ25は小さい戻り止め27を有し、ステープルの早すぎる放出を制限する手段として、関連付けられたステープルが自由状態で変形して戻り止め27に入り込むようになっている。
【0022】
ロッド21は、スリーブ6を通る軸方向の相対移動が制限されるよう構成されている。ロッド21にはキャップ30が嵌められており、キャップ30は、初期状態で必要に応じてステープルを変形させ、ステープルが配備される際にはステープルが曲がった構成をとることを促すために、外側に張り出したネック31を有する。
【0023】
装置1が使用される際には、まず、キャリア20にステープルが挿入され、各チャンバ25にステープルが充填される。次に、ステント等の移植片40が、キャップ30に支持されるようにして先端部6に嵌められる。次に、トリガ3が作動され、キャリア20が僅かに前方に移動して、ステープル50の先端42がスリーブ5の下から突出し、後方に曲がり始める。同時に、ステープルが移植片40を突き通すことにより、移植片40を先端部6に係止する。
【0024】
次に、移植片40を適切な縫合部位に配置するよう装置が操作され、その時、トリガ3が更に押されると、溝23がチャンバ25と位置決めされ、ステープルが先端部6から放出される。その後、装置は除去される。
【0025】
ステープルは、例えばニチノールや他の任意の形状記憶材料等の適切な形状記憶材料で形成されるのが好ましく、また、ステープルが体温まで温められると更に収縮して堅い縫合を達成するために、少なくとも部分的に熱活性を有するのが好ましい。ステープルが円形を構成するよう、形状記憶材料は、接合される組織の厚さに応じて異なる直径を有するリング状に予備加工される(トレーニングされる)べきである。
【0026】
ステープルの長さは、ステープルによって構成されるリングの直径との関係において、異なっていてよく、よりしっかりと接続するために少なくとも25%重ならせる。ステープルワイヤ(ニチノールワイヤ等)の直径は、接続される組織の厚さ及び密度との関係において、異なる直径であってよく、それぞれ異なる貫通力が必要となる。
【0027】
上述の送出機構は、スリーブに対して相対移動するキャリアを参照して説明したが、その代わりに、ステープラは、のばされた構成でチャンバ内に配置されたステープルを前進させてステープラから押し出し、ステープルに配備された(ループ状の)構成をとらせるための押圧ロッドを有してもよい。
【0028】
或いは、ハンドピースは、手の力を加えることで外部のスリーブに沿った引張り力又は回転力を生じる一種のレバーやピストン、又は両者の組み合わせであってもよい。更に、先端部及びハンドピースは、動脈又は他の身体領域に送出器を挿入可能にする剛性又は可撓性のシャフトによって接合されてもよい。
【0029】
本実施形態との関係において、送出動作は、必ずしも上述の2段階工程で行われなくてもよい。その代わりに、送出は、外部スリーブ5及びキャリア20を互いの長さ方向に移動させる1段階、又は、外部スリーブ5をキャリア20の周囲で相対的に回転させてチャンバ25を溝23と位置決めしてステープルを放出させる1段階で行われてもよい。
【0030】
別の実施形態(図示せず)では、ステープラ先端部(送出器)を周囲の身体組織に向かってより良好に適合させるために送出先端部1の直径を大きくするよう、ロッド21を用いてキャップ30をキャリア20内に引き込むことができる。キャップ30に、縫合が必要な管状の組織(血管)に穴を開ける(パンチする)カッターを設けることもできる。
【0031】
送出先端部6の構成及びチャンバ25の位置は、縫合を要する管状体に先端部6をに挿入可能にし、複数の接合用ステープルで管状体の「端部と端部」又は「端部と側部」を接合可能にするために、必要に応じて変更できる。この場合には、全てのステープルを同時に形成可能である。
【0032】
外科手術用途以外では、本発明の装置は、例えば、玩具、服飾及びあらゆる種類のパイピングに関連する医療用途以外の布、皮革、厚紙、紙、プラスチック等の任意のタイプの柔軟な材料を接合するために用いることができる。
【0033】
本願明細書でなされた、事前刊行物(又はそこから得られる情報)や公知事項に対する参照は、その事前刊行物(又はそこから得られる情報)や公知事項が、本願明細書が関する分野における通常の一般的知識の一部を構成するものであるとの認識でも、自認でも、いかなる形態の示唆でもなく、そのようなものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0034】
1 固定装置
2 ハンドピース
3 トリガ
4 駆動機構
5 スリーブ
6 送出先端部
7 バレル
8 シャトルピース
9 回転部材
10 側方レバー
20 ステープルキャリア
21 中心ロッド
22 開口部
25 チャンバ
30 キャップ
40 移植片
50 ステープル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関連付けられたステープルを受容するための複数のチャンバを備えた装置であって、各前記ステープルが、ステープラ内に配置されている際にはのばされた構成をとり、ステープラから放出された際には縫合のために配備された構成をとることを可能にする形状記憶を有して構成されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記形状記憶が、少なくとも部分的に熱によって活性化されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記チャンバに対して相対移動可能なスリーブであって、前記のばされた構成の前記ステープルが前記チャンバ内で該スリーブによって捕捉される第1の位置と前記ステープルが解放されて前記配備された構成をとる第2の位置との間を移動可能な該スリーブを備えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記スリーブが、軸方向にスライドすることにより、及び/又は、前記チャンバに対して相対的に回転することにより、前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動するよう構成されることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
医療用ステープラの形態であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記ステープルが配備されるまで、前記ステープラの一端部上に移植片を保持するためのキャップを備えることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の装置を用いることを特徴とする固定方法。
【請求項8】
のばされた構成のステープルを前記装置の前記チャンバ内に配置し、
スリーブを、前記のばされた構成の前記ステープルが前記チャンバ内で該スリーブによって捕捉される第1の位置と前記ステープルが解放されて前記配備された構成をとる第2の位置との間で移動させる
ことを特徴とする請求項5の装置を用いた固定方法。
【請求項9】
移植片を取り付けるために、該移植片が、前記ステープルによって適切な位置に固定されるまでは、まず前記装置によって支持される
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
本願の図面及び/又は例を参照して本願明細書に実質的に記載された装置。
【請求項11】
本願の図面及び/又は例を参照して本願明細書に実質的に記載された固定方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2010−524597(P2010−524597A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504388(P2010−504388)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000623
【国際公開番号】WO2008/134812
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509303718)エンドジーン プロプライエタリ リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Endogene Pty Ltd
【Fターム(参考)】