説明

彫刻刀保管具

【解決手段】ケース本体11には彫刻刀のガードを着脱可能に保持することができる保持孔23を設けている。ガードをホルダの頭部から分離する際にホルダの頭部に対するガードの保持を解除してホルダの頭部から分離されたガードを保持孔23に保持することができるとともに、その保持孔23に保持されたガードをホルダの頭部に支持する際にホルダの頭部に対しガードを保持してそのガードを保持孔23から分離することができる。
【効果】彫刻刀の使用時には必要に応じてホルダの頭部から離脱させたガードをケース本体11の保持孔23に保持してガードの紛失を防止し、そのガードを保持孔23から離脱させるとともにホルダの頭部に取着することができるので、彫刻刀の使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダの刃体に被せるガード等のカバーを有する彫刻刀を保管するためのケース等の彫刻刀保管具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1では、ガードやキャップを有する複数の彫刻刀を保管するためのケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−29107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、使用時に必要に応じてホルダの頭部から離脱させたガードやキャップを適当な場所に保管するだけであるために紛失するおそれがある。
この発明は、ケース等の彫刻刀保管具において使用時に必要に応じてホルダの頭部から離脱させたガード等のカバーの紛失を防止して使い勝手を良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜8に示す第1実施形態、図9〜10に示す第2実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる彫刻刀保管具10は、ホルダ3の頭部4に刃体7を有してその刃体7に被せるカバー8を有する彫刻刀1を保管するための保管具本体11を備え、カバー8を着脱可能に保持することができる保持部23を有している。請求項1の発明では、彫刻刀1の使用時に必要に応じてホルダ3の頭部4から離脱させたカバー8を保管具10の保持部23に保持し得るので、カバー8の紛失を防止して使い勝手を良くすることができる。また、彫刻刀1の使用時に必要に応じてカバー8を保持部23から離脱させるとともにホルダ3の頭部4に取着し得るので、使い勝手を良くすることができる。
【0006】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記保持部は保持孔23であり、ホルダ3の頭部4に支持したカバー8はその保持孔23に挿入されてホルダ3の頭部4から分離された状態で保持され、その保持孔23に保持されたカバー8はホルダ3の頭部4に支持されてその保持孔23から分離される。請求項2の発明では、保管具10に保持部として保持孔23を設けるだけの簡単な構成により、カバー8を保持孔23に対し着脱させるとともにホルダ3の頭部4に対しても着脱させることができ、使い勝手を良くすることができる。
【0007】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記保持部23とカバー8とホルダ3の頭部4との間には、ホルダ3の頭部4に支持したカバー8をホルダ3の頭部4から分離する際にホルダ3の頭部4に対するカバー8の保持を解除してホルダ3の頭部4から分離されたカバー8を保持部23に保持することができるとともに、その保持部23に保持されたカバー8をホルダ3の頭部4に支持する際にホルダ3の頭部4に対しカバー8を保持してそのカバー8を保持部23から分離することができるように、相互着脱手段を設けている。請求項3の発明では、保持部23とカバー8とホルダ3の頭部4との間に設けた相互着脱手段により、カバー8を保持部23に対し着脱させるとともにホルダ3の頭部4に対しても着脱させることができ、使い勝手を良くすることができる。
【0008】
請求項2の発明を前提とする請求項4の発明において、前記ホルダ3はその頭部4から把持部5を経て尻部6にわたり長手方向Xへ延び、前記保持孔23は保管具本体11に保管された彫刻刀1,2におけるホルダ3の長手方向Xに沿う方向へ開放される挿脱口24を有し、カバー8はその保持孔23の挿脱口24に対しホルダ3の長手方向Xに沿って挿脱される。請求項4の発明では、保管具10に保管された彫刻刀1,2の配置との関係で保持孔23を配設したので、保持孔23を付加しても保管具10を小型化することができる。
【0009】
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明において、保管具本体11に複数の彫刻刀1,2が保管され、その各彫刻刀1,2はホルダ3の長手方向Xに対し直交する方向Yに沿って並べられ、前記保持孔23は互いに隣接する両彫刻刀1,2のホルダ3の尻部6間に位置し、その保持孔23の挿脱口24はそのホルダ3の尻部6に対する外側へホルダ3の長手方向Xに沿って開放されている。請求項5の発明では、保管具10に保管された彫刻刀1,2の配置との関係で保持孔23を配設したので、保持孔23を付加しても保管具10を小型化することができる。
【0010】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第6の発明において、保持部23は保管具本体11に設けられている。第6の発明では、保持部23を保管具10に設け易い。
【0011】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第6の発明を前提とする第7の発明において、前記保持部23は前記カバー8が分離された分離状態L23と保持された保持状態M23とを取り、保持部23がカバー8に対し分離状態L23と保持状態M23とを取る際に互いに係脱される係合部29,50cを設けている。第7の発明では、保持部23及びカバー8に設けた係合部29,50cにより、カバー8を保持部23に対し保持することができる。
【0012】
第6の発明または第7の発明を前提とする第8の発明において、前記保持部23によるカバー8の保持状態M23で保持部23に対するカバー8の位置を一定にするように規制部27,48を設けている。第8の発明では、規制部27,48により、保持部23がカバー8に対し分離状態L23と保持状態M23とを取る際に係合部29,50cを互いに係脱させ易くすることができる。
【0013】
請求項5の発明を前提とする第9の発明において、前記保持孔23の挿脱口24における内周縁で囲まれた内側領域T24は、彫刻刀保管具10に保管された彫刻刀1,2における尻部6の外周縁で囲まれた内側領域T6が彫刻刀1,2におけるホルダ3の長手方向Xへ延びる想定領域に対し、各彫刻刀1,2を並べた並設方向Yとその長手方向Xとに対し直交する方向Zで交差している。第9の発明では、保管具10に保管された彫刻刀1,2の配置との関係で保持孔23を配設したので、保持孔23を付加しても保管具10を小型化することができる。
【0014】
請求項4または請求項5の発明、または第9の発明を前提とする第10の発明において、前記保持孔23の内周面で囲まれた収容室26内にその保持孔23の挿脱口24よりも内側で前記カバー8が収容される。第10の発明では、カバー8が保持孔23の挿脱口24の外側へ突出しないので、カバー8を保持孔23に収容しても、使用時にホルダ3や手指等がカバー8に対し不用意に触れず、使い勝手を良くすることができる。
【0015】
請求項2または請求項4または請求項5の発明、または第9の発明または第10の発明を前提とする第11の発明において、前記各彫刻刀は刃体7に被せるカバー8を有する複数の彫刻刀1とそのカバー8を有しない彫刻刀2とからなり、前記保持孔23の数はカバー8を有しない彫刻刀2の数を彫刻刀1,2の総数から引いたものである。第11の発明では、カバー8を有する複数の彫刻刀1の数に合わせて必要最小限数の保持孔23を保管具10に設けるので、保持孔23を付加しても保管具10を小型化することができる。
【0016】
請求項2または請求項4または請求項5の発明、または第9〜11の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第12の発明において、前記保管具本体は、彫刻刀1,2を収容するケース本体11であって、保管された彫刻刀1,2を載置する底壁12と、保管された彫刻刀1,2におけるホルダ3の長手方向Xの両側とその長手方向Xに対し直交する方向Yの両側とでそれぞれ底壁12の周囲を囲う側壁13,14,15,16とを有し、前記保持孔23はこの側壁14に形成されている。第12の発明では、ケース本体11の側壁14に保持孔23を配設したので、保持孔23を付加してもケース本体11を小型化することができる。
【0017】
請求項2または請求項4または請求項5の発明、または第9〜12の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第13の発明において、前記保持孔23は前記カバー8が分離された分離状態L23と保持された保持状態M23とを取り、前記ホルダ3は前記カバー8に対し分離された離脱状態P8と支持された取着状態R8とを取り、取着状態R8のホルダ3を分離状態L23の保持孔23に挿入した後にホルダ3を離脱状態P8にして保持孔23を保持状態M23にするとともに、離脱状態P8のホルダ3を保持状態M23の保持孔23に挿入した後にホルダ3を取着状態R8にして保持孔23を分離状態L23にするように、ホルダ3は保持孔23に対しカバー着脱軌跡を取り得る。第13の発明では、カバー8の有無を使い分けることができるとともに、ホルダ3により保持部23に対しカバー8を着脱することができ、使い勝手を良くすることができる。
【0018】
第13の発明を前提とする第14の発明において、前記保持孔23に対する前記ホルダ3のカバー着脱軌跡は、ホルダ3を保持孔23に対し挿脱させる挿脱方向Xと、この挿脱方向Xに対し交差してホルダ3をカバー8に対し係脱させる係脱方向Sとを有している。第14の発明では、挿脱方向Xと係脱方向Sとを互いに交差させているため、カバー8に対し挿脱方向Xの力が加わっても、ホルダ3に対するカバー8の係止が解除されにくくなり、安全性が高くなって使い勝手が良くなる。また、挿脱方向Xと係脱方向Sとを組み合わせた操作だけでホルダ3をカバー8に対し係脱させることができるので、ホルダ3及びカバー8を見なくても手の感触だけで係脱して操作することができる。
【0019】
第14の発明を前提とする第15の発明において、前記カバー着脱軌跡おいて係脱方向は挿脱方向Xの周りの周方向Sである。第15の発明では、カバー8に対するホルダ3の着脱を容易に行うことができる。
【0020】
第15の発明を前提とする第16の発明において、前記ホルダ3の頭部4にストッパ42を設けるとともに、前記保持孔23にストッパ28を設け、前記係脱方向Sのガード着脱軌跡で、これらのストッパ42,28が互いに当接して、保持孔23に対するホルダ4の頭部5の移動範囲を規制する。第16の発明では、ホルダ3のカバー着脱軌跡で、保持孔23に対しホルダ4の頭部5をカバー8とともに円滑に移動させることができる。
【0021】
請求項3の発明を前提とする第17の発明において、前記保持部23は前記カバー8が分離された分離状態L23と保持された保持状態M23とを取り、前記ホルダ3は前記カバー8に対し分離された離脱状態P8と支持された取着状態R8とを取り、前記保持部23とカバー8との間の相互着脱手段は、保持部23がカバー8に対し分離状態L23と保持状態M23とを取る際に互いに係脱される係合部29,50cを有し、前記ホルダ3の頭部4とカバー8との間の相互着脱手段は、取着状態P8でホルダ3の頭部4に対するカバー8の離脱を阻止する係止部37,51,50a,50bを有している。第17の発明では、これらの相互着脱手段により、カバー8を保持部23に対し着脱させるとともにホルダ3の頭部4に対しても着脱させることができ、使い勝手を良くすることができる。
【0022】
第17の発明を前提とする第18の発明において、前記係止部は複数組設けられ、ホルダ3の頭部4に設けた各係止部37のうち特定の一つの係止部37と、カバー8に設けた各係止部51,50a,50bのうち特定の一つの係止部51,50a,50bとのみが一組の係止部として互いに係止される。第18の発明では、ホルダ3の頭部4に対しカバー8を常に一定の取着状態R8にすることができる。
【0023】
第17の発明または第18の発明を前提とする第19の発明において、前記係止部は、ホルダ3の頭部4の外周に形成した係止凸部37と、カバー8の内周に形成した係止凸部51と、これらの係止凸部37,51を互いに係止させる取着状態R8と互いに係止解除させる離脱状態P8との間でこれらの係止凸部37,51をホルダ3の頭部4の外周及びカバー8の内周に沿って案内する案内部50a,50bとを有している。第19の発明では、ホルダ3の頭部4に対するカバー8の着脱を円滑に行うことができる。
【0024】
第19の発明を前提とする第20の発明において、前記案内部は、ホルダ3の頭部4をカバー8に挿脱させるように挿脱方向Xへ延びる案内路50aと、ホルダ3の頭部4の係止凸部37に対しカバー8の係止凸部51を係脱させるように周方向Sへ延びる案内路50bとを互いに連続させたものである。第20の発明では、ホルダ3の頭部4に対するカバー8の着脱を容易に行うことができる。
【0025】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第6〜20の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第21の発明において、前記カバー8は刃体7の先端側に設けた刃先部7aを挟むようにその刃先部7aの両側に壁部45を配置したガード8であって、この両壁部45間を結ぶ方向Yとこの刃体7の延設方向Xとに対し直交する方向Zの両側のうち少なくとも一方の側で刃先部7aが露出する開放部46をこのガード8に設けている。第21の発明では、ガード8を保持部23に対し着脱可能に保持することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、彫刻刀保管具10において使用時に必要に応じてホルダ3の頭部4から離脱させたカバー8の紛失を防止して使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)(b)(c)(d)(e)はそれぞれ第1実施形態において複数種類の彫刻刀をケースから取り出した状態を示す平面図である。
【図2】第1実施形態において複数種類の彫刻刀をケースに収容した状態を示す一部切欠き平面図である。
【図3】(a)は第1実施形態において複数種類の彫刻刀をケースに収容した状態を示す斜視図であり、(b)は(a)に示す保持孔の部分拡大斜視図であり、(c)は(a)に示す保持孔を平面側から見た部分拡大断面図であり、(d)は(a)に示す保持孔を側面側から見た部分拡大断面図である。
【図4】(a)は図1(a)に示すガード付き彫刻刀においてホルダのみを示す部分平面図であり、(b)は同じく部分正面図であり、(c)は同じく側面図であり、(d)は図1(e)に示すガードなし彫刻刀においてホルダのみを示す部分平面図であり、(e)は同じく部分正面図であり、(f)は同じく側面図である。
【図5】(a)は図1(a)(b)(c)(d)に示すガード付き彫刻刀においてガードのみを示す斜視図であり、(b)は同じく正面図であり、(c)は同じく平面図であり、(d)は同じく底面図であり、(e)は同じく側面図であり、(f)は(b)のA1−A1線部分断面図であり、(g)は(b)のA2−A2線部分断面図である。
【図6】(a)は図1(a)に示すガード付き彫刻刀においてホルダからガードを分離した状態を示す部分平面図であり、(b)は同じくホルダに対しガードを着脱する途中状態を示す部分平面図であり、(c)は(b)を平面側から見た部分断面図であり、(d)は同じくホルダに対しガードを取着した状態を示す部分平面図であり、(e)は(d)を平面側から見た部分断面図であり、(f)は同じくホルダに対しガードを取着した状態を示す部分正面図である。
【図7】(a)は図1(a)に示すガード付き彫刻刀においてガードを取着したホルダをケースの保持孔に挿入する前の状態を平面側から見た作用説明図であり、(b)は同じくガードを取着したホルダをケースの保持孔に挿入した後の状態を平面側から見た作用説明図であり、(c)は同じくガードを取着したホルダをケースの保持孔に挿入した後の状態を正面側から見た作用説明図であり、(d)は(c)における保持孔の挿脱口を示す部分側面図である。
【図8】(a)は図1(a)に示すガード付き彫刻刀においてホルダのみをケースの保持孔から分離する途中状態を平面側から見た作用説明図であり、(b)は(a)における保持孔の挿脱口を示す部分側面図であり、(c)は同じくガードをケースの保持孔に保持したままケースの保持孔から分離した状態を平面側から見た作用説明図であり、(d)は同じく正面側から見た作用説明図である。
【図9】(a)は第2実施形態において複数種類の彫刻刀を収容したケース本体を蓋の上に載せた状態を示す斜視図であり、(b)は同じく側面図である。
【図10】(a)は第2実施形態において複数種類の彫刻刀を収容したケース本体に蓋を被せたケースを示す斜視図であり、(b)は同じく側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本発明の第1実施形態にかかる彫刻刀保管具について図1〜8を参照して説明する。
図1(a)(b)(c)(d)に示す4本の彫刻刀1と図1(e)に示す1本の彫刻刀2において、ホルダ3はその頭部4から把持部5を経て尻部6にわたり長手方向Xへ延びている。彫刻刀1においては、正面側から見て棒状のホルダ3が屈曲して形成され、そのホルダ3の頭部4の端部に刃体7(大丸刃、小丸刃、三角刃、平刃)が取着されてその頭部4の端部から刃体7が前方へ延設されているとともに、その頭部4の端部にカバーとしてのガード8を備えている。この棒状ホルダ3は平面側及び底面側から見て直線状に形成されている。彫刻刀2においては、棒状のホルダ3が平面側及び底面側ばかりでなく正面側から見ても直線状に形成され、そのホルダ3の頭部4の端部に刃体9(切出し刃)が取着されてその頭部4の端部から刃体9が前方へ延設されているが、上記ガード8を備えていない。なお、刃体9(切出し刃)についてはその使用時の把持状態からして直線状のホルダ3に取着することが好ましい。
【0029】
図2及び図3に示すように、保管具としてのケース10において、プラスチックにより成形されたケース本体11は、保管された彫刻刀1,2を載置する底壁12と、保管された彫刻刀1,2におけるホルダ3の長手方向Xの前後両側とその長手方向Xに対し直交する幅方向Yの左右両側とでそれぞれ底壁12の周囲を囲う前後両側壁13,14と左右両側壁15,16とを有している。この各側壁13,14,15,16間で底壁12上に保管室17が設けられている。この保管室17において、前側壁13には左右両側壁15,16間で複数の前仕切り18が左右方向Yへ並設され、後側壁14には左右両側壁15,16間で複数の後仕切り19が左右方向Yへ並設され、この前仕切り18と後仕切り19との間には複数の中間仕切り20が左右方向Yへ並設されている。このケース本体11内の保管室17には前記各彫刻刀1,2が各仕切り18,19,20間に収容されて左右方向Yへ並べられている。各後仕切り19間には底壁12の上方で台壁21が形成されている。この台壁21には保管された彫刻刀1,2の尻部6が載置される。なお、このケース本体11の右側壁16にはプラスチックにより成形された蓋22が回動可能に支持されてケース本体11を開閉し得る。
【0030】
このケース本体11の後側壁14には前記各後仕切り19の下方で保持部としての保持孔23が形成されて互いに隣接する両ホルダ3の尻部6間に位置している。この保持孔23の数は、彫刻刀1,2の総数(刃体7に被せるガード8を有する4本の彫刻刀1とそのガード8を有しない1本の彫刻刀2との和)から、ガード8を有しない1本の彫刻刀2の数を引いたものである。
【0031】
前記各保持孔23においては、保管された彫刻刀1,2のホルダ3の尻部6の付近で挿脱口24がホルダ3の長手方向Xに沿って後側壁14の外側へ開放され、その挿脱口24に対し前後方向Xで対向する開口25が各後仕切り19及び各台壁21の下方で保管室17へ開放され、その挿脱口24と開口25との間の内周面で囲まれた収容室26が形成されている。この保持孔23の挿脱口24における内周縁で囲まれた内側領域T24は、保管された彫刻刀1,2のホルダ3の尻部6の外周縁で囲まれた内側領域T6がホルダ3の長手方向Xへ延びる想定領域に対し、各彫刻刀1,2を並べた並設方向Yとその長手方向Xとに対し直交する上下方向Zで交差している。この各保持孔23の内周面には挿脱口24の内周縁からホルダ3の長手方向Xへ延びる二個の溝27(規制部)が周方向へ180度間隔で形成されている。この挿脱口24の内周縁の上側には係止凹部28(ストッパ)が形成されている。この各保持孔23の内周面には上下方向Zの両側のうち下側のみに片持ち梁状の係止舌片部29(係合部)が上下方向Zの弾性を有するようにスリット30により形成され、この係止舌片部29の内側には係止突起29a(弾性係合凸部)が形成されている。なお、この各保持孔23の内周面で上下方向Zの両側または周方向複数個所に片持ち梁状の係止舌片部29を形成したり、片持ち梁状の係止舌片部29に代えて両持ち梁状の係止舌片部29を形成してもよい。
【0032】
図4(a)(b)(c)に示すように、前記彫刻刀1において、ホルダ3の頭部4の端部にはキャップ支持部31とガード支持部32とが前後方向Xへ並設され、このガード支持部32がこのキャップ支持部31の前側で段差部33を介して形成されている。このキャップ支持部31において外周面34の上側には、周方向Sへ延びる目印凹部35が段差部33に開放されるように形成されている。また、このガード支持部32において、外周面36には上下方向Zの両側で係止凸部37が周方向Sへ180度間隔で形成されている。図4(d)(e)(f)に示すように、前記彫刻刀2において、ホルダ3の頭部4の端部にはキャップ支持部38のみが形成されている。このキャップ支持部38において、外周面39の左右方向Yの両側には前後方向Xへ延びる小突条40が周方向Sへ180度間隔で形成されている。このキャップ支持部31及びキャップ支持部38において外周面34,39には、周方向Sの全体に係止溝41が形成されているとともに、この係止溝41の上側で係止突部42(ストッパ)が形成されている。
【0033】
図5に示すように、前記ガード8においては、基端筒部43から前方へ環状部44が延設されている。この環状部44においては、左右方向Yの両側で壁部としての一対の腕部45が延設され、上下方向Zの両側で開放部46が形成されている。この基端筒部43において、外周面47には左右方向Yの両側で前後方向Xへ延びる突条48(規制部)が周方向Sへ180度間隔で形成されている。この基端筒部43において、内周面49には上下方向Zの両側で口端縁43aから前後方向Xへ延びる案内路としての案内口部50aが形成されているとともに、その案内口部50aから周方向Sへ延びる案内路50bが形成され、この案内路50bと口端縁43aとの間で係止凸部としての係止壁部51が周方向Sへ180度間隔で形成されている。この基端筒部43には透孔50c(係合部または係合凹部)が外周面47と内周面49の案内路50bとの間で貫設されている。この基端筒部43の口端縁43aの上側には目印突起52が形成されている。このガード8はプラスチック等により透明または半透明に成形されている。なお、前記環状部44で両腕部45の先端部は互いに分離されていてもよい。
【0034】
図6(a)に示す前記彫刻刀1においては、ホルダ3は図5に示すガード8が図4に示すホルダ3の頭部4から分離された離脱状態P8にある。図6(b)に示すように、ガード8の基端筒部43内にその口端縁43aからホルダ3のガード支持部32を挿入して基端筒部43の内周面49にガード支持部32の外周面36を挿嵌するとともに、ガード8の目印突起52を目印凹部35に対し挿脱方向Xへ挿入してこの基端筒部43の口端縁43aを段差部33に当接させると、図6(c)に示すようにガード支持部32の係止部としての係止凸部37が基端筒部43の案内部としての案内口部50aに係入され、ホルダ3はガード8がホルダ3に対し挿嵌される途中状態Q8となる。次に、図6(d)に示すように、ガード8をガード支持部32に対し挿脱方向Xの周りの周方向S(挿脱方向Xに対し交差する係脱方向)へ回動させると、ガード8の目印突起52が目印凹部35で移動しながら、図6(e)に示すようにガード支持部32の係止凸部37が基端筒部43の案内部としての案内路50bに係入されて基端筒部43の係止部としての係止壁部51に対し係止され、図6(d)(f)に示すようにガード8がホルダ3の頭部4に取着された取着状態R8となって前後方向Xへのガード8の移動が規制される。その場合、この係止凸部37を透孔50cから視認することができる。前記ホルダ3の途中状態Q8で、上下両係止凸部37のうち上側の係止凸部37が上下両案内口部50aのうち上側の案内口部50aに係入されるとともに、上下両係止凸部37のうち下側の係止凸部37が上下両案内口部50aのうち下側の案内口部50aに係入され、上側の係止凸部37が下側の案内口部50aに係入されたり下側の係止凸部37が上側の案内口部50aに係入されたりすることはなくなり、ホルダ3の頭部4に対しガード8を常に一定の取着状態R8にすることができる。この取着状態R8では、刃体7の先端側に設けられた刃先部7aをガード8の左右両腕部45が挟むように配置され、この刃先部7aが上下両開放部46に露出するとともに下側開放部46から前方へ若干突出している。逆に、この取着状態R8からガード8をガード支持部32に対し周方向Sへ回動させた後に前後方向Xへ抜くと、ホルダ3は前記途中状態Q8を経て離脱状態P8となる。このようにしてホルダ3はガード8に対し離脱状態P8と取着状態R8との間で途中状態Q8を経てガード着脱軌跡を取る。
【0035】
図7(a)に示す前記彫刻刀1においては、ガード8がホルダ3の頭部4に取着された取着状態R8で図3に示す保持孔23からガード8及びホルダ3の頭部4が分離された分離状態L23ある。図7(b)(c)(d)に示すように、保持孔23内にその挿脱口24からガード8の環状部44をホルダ3の頭部4とともに挿入して保持孔23の内周面にガード8の基端筒部43の外周面47を挿嵌し、保持孔23の両溝27から基端筒部43の両突条48を係入してガード8を保持孔23に対しホルダ3の頭部4とともに前後方向Xへ移動させると、ホルダ3の係止突部42が保持孔23の係止凹部28に係入されるとともに、保持孔23の係止舌片部29の係止突起29aがガード8の下側の透孔50cに係入された保持状態M23となる。この保持状態M23では、ガード8の環状部44が保持孔23の開口25からケース本体11の保管室17へ突出するとともに、保持孔23にガード8及びホルダ3の頭部4が支持され、保持孔23の両溝27に基端筒部43の両突条48が係入されているために、保持孔23に対するガード8の周方向Sへの回動を阻止することができる。なお、ガード8の環状部44は上下方向Zの厚みが先端ほど小さくなっているとともに左右方向Yの幅が先端側で小さくなっているため、ガード8を保持孔23に挿入し易い。
【0036】
次に、図8(a)(b)に示すように、保持孔23及びガード8に対しホルダ3の頭部4を周方向S(図7(d)の左回転向き)へ回動させると、ガード8の目印突起52がホルダ3の目印凹部35に対し移動するとともにホルダ3の係止突部42が保持孔23の係止凹部28に対して移動しながら、ホルダ3の係止凸部37がガード8の案内路50bから案内口部50aに移動し、ホルダ3は途中状態Q8となる。その後、ホルダ3を保持孔23及びガード8に対し前後方向Xへ移動させると、図8(c)(d)に示すように、ホルダ3の係止凸部37がガード8の案内口部50aから抜けるとともに、保持孔23の係止舌片部29の係止突起29aがガード8の下側の透孔50cに係入されたまま、ガード8が保持孔23内で係止されて収容されている保持状態M23となる。
【0037】
逆に、図8(c)(d)に示す保持状態M23からホルダ3を保持孔23及びガード8に対し前後方向Xへ挿入すると、ホルダ3がガード8に対し挿入されて図8(a)(b)に示す途中状態Q8となる。その後、保持孔23及びガード8に対しホルダ3を周方向S(図8(b)の右回転向き)へ回動させると、図7(b)(c)(d)に示すようにホルダ3が取着状態R8となる。その取着状態R8では、ホルダ3に対する前後方向Xへのガード8の移動が規制されるため、保持状態M23にある保持孔23からホルダ3をガード8とともに抜くことができ、保持孔23の係止舌片部29の係止突起29aがガード8の下側の透孔50cから離脱された分離状態L23にすることができる。このようにして保持孔23は分離状態L23と保持状態M23とを取り、ホルダ3は保持孔23に対しガード着脱軌跡(カバー着脱軌跡)を取る。
【0038】
次に、図9〜10に示す第2実施形態を第1実施形態との相違点を中心に説明する。
ケース10は、ケース本体11と、そのケース本体11に対し分離されて開閉可能な蓋22とからなる。ケース本体11の後側壁14には第1実施形態と同様に複数の保持孔23が形成されているが、その後側壁14の外側には互いに並ぶ各保持孔23の上方で左右方向へ延びるリブ53が形成されている。また、ケース本体11の各前仕切り18にはガード8の上方を囲う屋根部18aが形成されている。蓋22の後側壁22aの下側には切欠き54が形成されている。図9に示すようにケース本体11を蓋22の上に載置することができ、その状態ではケース本体11のリブ53と蓋22の切欠き54との間で各保持孔23が囲まれて開放される。図10に示すように蓋22をケース本体11に対し閉じてそれらを止め部55によりロックすると、切欠き54の下端縁がリブ53に沿って重なり、その状態でも各保持孔23が開放される。
【0039】
なお、第1実施形態及び第2実施形態において、ケース本体11に蓋22を被せたケース10における前後方向Xの寸法は約190mmに、同じく左右方向Yの寸法は約110mmに設定されている。
【0040】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 彫刻刀1の使用時には、必要に応じて、ホルダ3の頭部4から離脱させたガード8をケース本体11の保持孔23に保持してガード8の紛失を防止し、そのガード8を保持孔23から離脱させるとともにホルダ3の頭部4に取着することができるので、彫刻刀1の使い勝手を良くすることができる。
【0041】
* ケース本体11に保持孔23を設けるだけの簡単な構成により、ガード8を保持孔23に保持することができる。
* 保持孔23とガード8との間に設けた相互着脱手段(保持部23がカバー8に対し分離状態L23と保持状態M23とを取る際に互いに係脱される係合部29,50c)や、ガード8とホルダ3の頭部4との間に設けた相互着脱手段(取着状態P8でホルダ3の頭部4に対するカバー8の離脱を阻止する係止部を37,51,50a,50b)により、ガード8を保持孔23に対し着脱させるとともにホルダ3の頭部4に対しても着脱させることができ、使い勝手を良くすることができる。
【0042】
* 保持孔23を互いに隣接する両ホルダ3の尻部6間で形成するとともに、ホルダ3が屈曲した彫刻刀1をケース本体11に収容した状態でそのホルダ3の尻部6と底壁12との間に生じるスペースを有効利用して保持孔23を形成し、その保持孔23の挿脱口24をその尻部6に対する外側へホルダ3の長手方向Xに沿って開放し、ガード8をその挿脱口24に対しホルダ3の長手方向Xに沿って挿脱するようにして、ケース本体11に保管された彫刻刀1,2の配置との関係で保持孔23を配設したので、保持孔23を付加してもケース本体11を小型化することができる。
【0043】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ カバーとしては、ガード8以外に、刃体7またはガード8の一部若しくは全部を覆って隠すキャップであってもよい。
【0044】
・ 各彫刻刀1,2におけるホルダ3の頭部4には刃体7,9やガード8を覆って隠すキャップを被せることができる。
・ 保持孔23については、収容室26の内周面全体を環状に形成する構成以外に、挿脱口24と開口25との間で収容室26が上方へ開放された溝状(例えば、断面半円状や断面U字状や断面コ字状)に形成してもよい。
【0045】
・ 保持孔23とガード8との間の相互着脱手段としては、弾性的に互いに係脱される係止舌片部29(凸部)及び透孔50c(凹部)以外に、その凸部をガード8に設けるとともにその凹部を保持孔23に設けたり、そのほかの凹凸部による係脱や、面ファスナーや磁石や摩擦圧接による着脱等を採用してもよい。
【0046】
・ 彫刻刀保管具としては、彫刻刀を収容するケース以外に、上向きの保持孔を有する保管具本体に彫刻刀を立てて保管してホルダをその保持孔から突出させたり、横向きの保持孔を有する保管具本体に彫刻刀を横にして保管してホルダをその保持孔から突出させたりするものであってもよい。
【0047】
・ ケース10のケース本体11以外に、ケース10の蓋22に保持孔23を形成してもよい。
・ ガード8の環状部44が保持孔23の開口25からケース本体11の保管室17へ突出することなく、ガード8の全体が保持孔23の収容室26内に収容されるようにしてもよい。また、保持孔23に対するガード8の収容時にガード8の一部を保持孔23の挿脱口24から突出させてもよい。
【0048】
・ ケース本体11や蓋22は、プラスチック以外の材質で成形してもよい。
・ 使用時に載置されるケース本体11の底面や蓋22の表面にゴム等の滑止めや吸盤を設ければ、ケース本体11や蓋22が保持されて不用意に移動しないので、ケース本体11や蓋22を手で支えることなく、片手だけで保持孔23にガード8を挿脱させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1,2…彫刻刀、3…ホルダ、4…ホルダの頭部、5…ホルダの把持部、6…ホルダの尻部、7…刃体、8…カバーとしてのガード、10…彫刻刀保管具としてのケース、11…保管具本体としてのケース本体、23…保持部としての保持孔、24…保持孔の挿脱口、X…ホルダの長手方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダの頭部に刃体を有してその刃体に被せるカバーを有する彫刻刀を保管するための保管具本体を備えた彫刻刀保管具において、カバーを着脱可能に保持することができる保持部を設けたことを特徴とする彫刻刀保管具。
【請求項2】
前記保持部は保持孔であり、ホルダの頭部に支持したカバーはその保持孔に挿入されてホルダの頭部から分離された状態で保持され、その保持孔に保持されたカバーはホルダの頭部に支持されてその保持孔から分離されることを特徴とする請求項1に記載の彫刻刀保管具。
【請求項3】
前記保持部とカバーとホルダの頭部との間には、ホルダの頭部に支持したカバーをホルダの頭部から分離する際にホルダの頭部に対するカバーの保持を解除してホルダの頭部から分離されたカバーを保持部に保持することができるとともに、その保持部に保持されたカバーをホルダの頭部に支持する際にホルダの頭部に対しカバーを保持してそのカバーを保持部から分離することができるように、相互着脱手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の彫刻刀保管具。
【請求項4】
前記ホルダはその頭部から把持部を経て尻部にわたり長手方向へ延び、前記保持孔は保管具本体に保管された彫刻刀におけるホルダの長手方向に沿う方向へ開放される挿脱口を有し、カバーはその保持孔の挿脱口に対しホルダの長手方向に沿って挿脱されることを特徴とする請求項2に記載の彫刻刀保管具。
【請求項5】
保管具本体に複数の彫刻刀が保管され、その各彫刻刀はホルダの長手方向に対し直交する方向に沿って並べられ、前記保持孔は互いに隣接する両彫刻刀のホルダの尻部間に位置し、その保持孔の挿脱口はそのホルダの尻部に対する外側へホルダの長手方向に沿って開放されていることを特徴とする請求項4に記載の彫刻刀保管具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−51049(P2011−51049A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200834(P2009−200834)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000154613)株式会社文溪堂 (12)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】