往復動機関
【課題】力の伝達効率を高める往復動機関を提供する。
【解決手段】ピストン2とコンロッド3をピストンピン4で接続し、コンロッド3とクランク5をクランクピン6で接続してシリンダライナ8内でピストン2を往復動させる往復動機関であって、ピストン中心の動線Laが上死点のピストンピン位置PTDCを通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナ8の傾斜を設定する。
【解決手段】ピストン2とコンロッド3をピストンピン4で接続し、コンロッド3とクランク5をクランクピン6で接続してシリンダライナ8内でピストン2を往復動させる往復動機関であって、ピストン中心の動線Laが上死点のピストンピン位置PTDCを通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナ8の傾斜を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関やコンプレッサ等の往復動機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関やコンプレッサ等は、図11に示す如くシリンダブロック10に配置されるシリンダライナ1内でピストン2が往復動し得るように、ピストン2とコンロッド3をピストンピン4で接続し、コンロッド3とクランク5をクランクピン6で接続している。
【0003】
ここでシリンダ中心線は、クランク軸中心7とピストンピン4を結ぶ直線Lc上(クランクシャフト中心直上の線)に位置し、更にシリンダ中心線にはピストン中心の動線Laが合致している。
【0004】
又、近年、内燃機関において、クランク軸中心とピストンピンを結ぶ直線から、シリンダ中心線を反スラスト側に平行にオフセットさせることにより、スラスト側でピストンが受けるピストン側力(サイドフォース)を低減し、ピストンの摩耗を低減することが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−150969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内燃機関等の膨張行程でシリンダライナ1内の圧力を回転力へ変換する場合や、コンプレッサ等の圧縮行程で回転力を圧縮力へ変換する場合には、力の伝達効率を更に高めることが求められている。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、力の伝達効率を高める往復動機関を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の往復動機関は、ピストンとコンロッドをピストンピンで接続し、前記コンロッドとクランクをクランクピンで接続してシリンダライナ内でピストンを往復動させる往復動機関であって、ピストン中心の動線が上死点のピストンピン位置を通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナの傾斜を設定したものである。
【0009】
又、本発明において、上死点のピストンピン位置とクランク軸中心とを結ぶ直線に対して、ピストン中心の動線の傾きσは、
時計回りにクランクを回転させる場合、0<σ<σmax
反時計回りにクランクを回転させる場合、−σmax<σ<0
σmax:限界角度
で設定されることが好ましい。
【0010】
更に本発明において、ピストン中心の動線の傾きσにおける限界角度σmaxは
σmax=Asin((L−R)/(L+R))
L:ピストンピンとクランクピンを結ぶ距離
R:ストローク半径
で設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の往復動機関によれば、シリンダ中心線を反スラスト側に平行にオフセットすることなく、ピストン中心の動線が上死点のピストンピン位置を通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナの傾斜を設定するので、内燃機関等の膨張行程でシリンダ内の圧力を回転力へ変換する場合や、コンプレッサ等の圧縮行程で回転力を圧縮力へ変換する場合には、クランク及びコンロッドに伴う力の伝達効率を高めることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の往復動機関であって内燃機関の一例を示す概念図である。
【図2】往復動機関が内燃機関であってピストン中心の動線の傾きの限界角度を示す概念図である。
【図3】往復動機関が内燃機関であってピストンの位置の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図4】往復動機関が内燃機関であって遥動角の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図5】往復動機関が内燃機関であって回転効率の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図6】往復動機関が内燃機関であって一気筒のクランク回転力の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図7】往復動機関が内燃機関であって全ての気筒(四気筒)を合成したクランク回転力の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図8】往復動機関が内燃機関であってピストン中心の動線の傾きを変化させた場合の効率の変化を示すグラフである。
【図9】往復動機関がエアコンプレッサであってクランク角度と各力の関係を示すグラフである。
【図10】往復動機関がエアコンプレッサであってピストン中心の動線の傾きを変化させた場合の効率の変化を示すグラフである。
【図11】従来の往復動機関を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態例の一例を図1〜図8を参照して説明する。ここで実施例の形態の一例は、時計周りにクランクを回転させる往復動機関の場合を示している。
【0014】
実施の形態例の往復動機関の一例は内燃機関に用いるものであり、図1に示す如くシリンダブロック10に配置されるシリンダライナ8内でピストン2が往復動し得るように、ピストン2とコンロッド3をピストンピン4で接続し、コンロッド3とクランク5をクランクピン6で接続している。
【0015】
又、シリンダライナ8の構成は、シリンダ中心線がクランク軸中心7とピストンピン4を結ぶ直線Lc上(クランクシャフト中心直上の線)から反スラスト側に平行にオフセットすることなく、ピストン中心の動線Laが上死点のピストンピン位置PTDCを通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように設定されている。更に反時計回りにクランクを回転させる場合には、傾きを逆方向に設定し、ピストン中心の動線Laが上死点のピストンピン位置PTDCを通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くようにしている。
【0016】
又、ピストン中心の動線の傾きσは、上死点のピストンピン位置PTDCとクランク軸中心7とを結ぶ直線に対して、
実施の一例の如く時計回りにクランクを回転させる場合に、0<σ<σmax
σmax:限界角度
で設定されている。
【0017】
更に又、ピストン中心の動線の傾きσは、上死点のピストンピン位置PTDCとクランク軸中心7とを結ぶ直線に対して、
他例(図示せず)の如く反時計回りにクランクを回転させる場合に、−σmax<σ<0
σmax:限界角度
で設定されている。
【0018】
更にピストン中心の動線Laの傾きσにおける限界角度σmaxは、以下の式1を満たすように設定されている。式1は、
σmax=Asin((L−R)/(L+R))
であり、
L:ピストンピン4とクランクピン6を結ぶ距離(コンロッド長)
R:ストローク半径(クランク半径)
の条件になるように設定されている。
【0019】
ここで式1の理解を助けるために図2の構成を用いて更に説明する。式1は、シリンダライナ8の傾斜による構成上の幾何学的な限界を示すものであり、往復動機関はピストン摺動方向に下死点が存在しなければ、回転運動ができないことを基準に設定したものである。具体的に図2により限界角度σmaxを説明すると、限界角度σmaxは上死点のピストンピン位置PTDCからクランク軸中心7までを結ぶ直線距離A、下死点のピストンピン位置PBDCからクランク軸中心7までを結ぶ直線距離Bの条件で、sinσmax=B/Aで決定される。更に上死点のピストンピン位置PTDCからクランク軸中心7までを結ぶ直線距離Aは、コンロッド長Lとクランク半径Rとを加算したものになり、下死点のピストンピン位置PBDCからクランク軸中心7までを結ぶ直線距離Bは、コンロッド長Lからクランク半径Rを減算したものになる。このため、sinσmax=(L−R)/(L+R)からσmax=Asin((L−R)/(L+R))を導き出すことができる。なお式1で求められる限界角度σmaxはラジアン単位であり、[deg.]単位の角度にする場合には360/2πを積算するか、degrees関数等を用いれば[deg.]単位の角度を算出することが可能となる。
【0020】
続いて図1で示した往復動機関が高効率になるという点を図1の構成及び図11の従来の構成を用いて説明する。
【0021】
図11に示す如く従来の構成は、上死点のピストンピン位置PTDCとクランク軸中心7とを結ぶ直線L0上にピストン中心の動線Laを配置したものであり、ピストンピン4にかかる力Fcは、シリンダ内圧による力Fpに対してFc=Fp/cos(φ)で設定され、クランク回転力Ftは、Ft=Fp・sin(θ+φ)/cos(φ)で設定される。一方、図1に示す如く実施の形態例の構成は、上死点のピストンピン位置PTDCとクランク軸中心7とを結ぶ直線L0上に対してピストン中心の動線Laを下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾きσで傾けたものであり、ピストンピン4にかかる力Fc'は、シリンダ内圧による力Fpに対してFc'=Fp/cos(φ'+σ)で設定され、クランク回転力Ft'は、Ft'=Fp・sin(θ+φ')/cos(φ'+σ)で設定される。そして回転力の指標をsin(θ+φ')/cos(φ'+σ)として図11の従来構成と図1の形態例の構成とを比較すると、図1の形態例の構成は、後述の図5に示す如く回転効率の向上及び回転損失の低減の範囲で高効率に寄与するものとなる。更に具体的に、従来の構成のクランク回転力Ftと、実施の形態例の構成のクランク回転力Ft'との比をとって示すと、Ft'>0,Ft>0の時、Ft'/Ft>1となるところでは回転率の向上となり、Ft'<0,Ft<0の時、0<Ft'/Ft<1となるところでは回転損失の低減となり、どちらの範囲でも効率が向上するものとなる。
【0022】
以下、往復運動機関を内燃機関にして実施の形態例と従来の例と比較して結果を示す。ここで実施の形態例はピストン中心の動線Laの傾きσを10[deg.]にし、従来例はピストン中心の動線Laの傾きσを0[deg.]にした。又、コンロッド長を181.5[mm]、ストローク半径59[mm]で設定し、内燃機関の駆動条件を2000[rpm]にした。
【0023】
[比較例1]
クランク5の回転に伴ってピストン2の位置の変化を従来のものと比較した。その結果、図3に示す如く実施の形態例のストロークは、従来のものに比べてクランク角度0〜200[deg.]程度の間でストロークが増加し、最大ストロークで3.66[mm]増加した。
【0024】
[比較例2]
クランク5の回転に伴って遥動角の変化を従来のものと比較した。ここで遥動角は、ピストン中心の動線Laと、クランク5(ピストンピン4とクランクピン6を結ぶ直線)とからなる角度であり、その結果を図4に示す。実施の形態例の遥動角は、設定段階で従来のものに比べて10[deg.]傾いていることから、クランク角度が変化する場合であっても従来のものに比べて10〜20[deg.]の差を有して変化した。
【0025】
[比較例3]
クランク5の回転に伴って回転効率の変化を従来のものと比較した。その結果、図5に示す如く実施の形態例の回転効率は、従来のものに比べてクランク角度0〜130[deg.]の間で回転効率が上昇し、クランク角度−120〜0[deg.](240〜360[deg.])の間で回転損失が低減した。ここでクランク角度130〜240[deg.]の間の下死点付近では、回転効率が低減したが、力を受ける上死点に比べて回転効率への影響が少ない。
【0026】
[比較例4]
クランク5の回転に伴って一気筒のクランク回転力の変化を従来のものと比較した。その結果、図6に示す如く実施の形態例の一気筒のクランク回転力は、従来のものに比べてクランク角度90[deg.]近辺で回転力が上昇し、又、従来のものに比べてクランク角度−90[deg.]近辺で回転力損失が低減した。
【0027】
[比較例5]
クランク5の回転に伴って全ての気筒(四気筒)の合成したクランク回転力の変化を従来のものと比較した。その結果、図7に示す如く実施の形態例の全ての気筒(四気筒)を合成したクランク回転力は、従来のものに比べてクランク角度−90[deg.]近辺、90[deg.]近辺、270[deg.]近辺、450[deg.]近辺で回転力が上昇し、行程中央で高効率となった。
【0028】
[比較例6]
続いてピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σを10[deg.]に限定せず、複数の角度に変えて回転効率及び燃費向上率を求めた。又、この場合、又、コンロッド長を181.5[mm]、ストローク半径59[mm]で設定し、内燃機関の駆動条件を2000[rpm]にした。その結果、図8に示す如くピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σが0[deg.]から12.5[deg.]まで回転効率及び燃費向上率が上昇した。又、ピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σが12.5[deg.]から20[deg.]までの範囲で回転効率及び燃費向上率が低下した。ここで回転効率及び燃費向上率の上昇は、ピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σにより高効率となると想定され、回転効率及び燃費向上率の低下は、ピストン側力(サイドフォース)の増加により摩擦力が大きくなったことに基づくと想定される。このことからピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σは0[deg.]から25[deg.]近辺まで回転効率及び燃費向上率の向上を図ることが明らかであり、更に5[deg.]から18[deg.]までは回転効率の向上が3%以上になることが明らかであり、特に12.5[deg.]では回転効率及び燃費向上率の向上が最大になることが明らかである。又、この場合のピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σにおける限界角度σmaxは、式1の構造上の幾何学的な制限から30.6[deg.]となる。
【0029】
而して、このように実施の形態例の往復動機関の一例によれば、シリンダ中心線を反スラスト側に平行にオフセットすることなく、ピストン中心の動線Laを下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾けるようにシリンダライナ8の傾斜を設定するので、内燃機関等の膨張行程でシリンダライナ8内の圧力を回転力へ変換する場合には、クランク5及びコンロッド3による力の伝達効率を高めることができる。又、図5に示す如くピストン中心の動線Laを傾けることにより回転効率の向上、回転損失の低減を図り、よって燃費の向上を図ることができる。
【0030】
又、実施の形態例の往復動機関の一例において、式1の如くピストン中心の動線Laの傾きσを設定すると、内燃機関等の膨張行程でシリンダライナ8内の圧力を回転力へ変換する場合に、クランク5及びコンロッド3に伴う力の伝達効率を適切に高めることができる。更に式2の如くピストン中心の動線Laの限界角度σmaxを設定すると、クランク5及びコンロッド3に伴う力の伝達効率を一層適切に高めることができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態例の二例を図9、図10を参照して説明する。
【0032】
実施の形態例の往復動機関の二例は、コンプレッサのうちエアコンプレッサに用いるものであり、一例と同様にシリンダライナ8内でピストン2が往復動し得るように、ピストン2とコンロッド3をピストンピン4で接続し、コンロッド3とクランク5をクランクピン6で接続している。なおコンプレッサは、エアコンプレッサに限定されるものでなく、他の種類のコンプレッサでも良い。
【0033】
ここでコンプレッサは、内燃機関の場合と同様に、ピストン中心の動線Laを下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾けるようにシリンダライナ8の傾斜を設定し、力の作用方向が内燃機関の場合と逆になる点を除いて同じような構成を備えている。又、ピストン中心の動線Laの傾きσは内燃機関と同様に設定され、更にピストン中心の動線Laの限界角度σmaxは内燃機関と同様に先の式1に基づいて設定される。
【0034】
以下、往復運動機関をコンプレッサにして実施の形態例と従来の例と比較した。ここで実施の形態例はピストン中心の動線Laの傾きσを10[deg.]にし、従来例はピストン中心の動線Laの傾きσを0[deg.]にした。又、コンロッド長を120[mm]、ストローク半径30[mm]で設定し、コンプレッサの駆動条件を500[rpm]、ロード状態8[kgf/cm2]にした。
【0035】
[比較例7]
クランク5の回転に伴ってクランク角度と各力(ピストン側力、ピストンピンにかかる力、クランク回転力)の関係を求めた。その結果、図9に示す如くピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σが0[deg.]から90[deg.]まで駆動トルク低減率(回転軸にかかる力)が向上し、−90[deg.]から0[deg.]まで駆動トルク低減率の損失が低減した。
【0036】
[比較例8]
以下、ピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σを10[deg.]に限定せず、複数の角度に変えて駆動トルク低減率を求めると共に、式1により限界角度σmaxを求めた。又、この場合、コンロッド長を120[mm]、ストローク半径30[mm]で設定し、エアコンプレッサの駆動条件を同様に500[rpm]、ロード状態8[kgf/cm2]にした。その結果、図10に示す如くピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σが0[deg.]からσmaxまで駆動トルク低減率が上昇した。ここで駆動トルク低減率が低下しない理由としては、エアコンプレッサは、内燃機関に比べてクランク半径がコンロッド長に対して小さいため、遥動角及びピストン側力が小さく、よってピストン側力の増加による摩擦損失が小さく、駆動トルク低減率が低下しないためと想定される。このことからピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σは0[deg.]から限界角度σmax36.3[deg.]まで駆動トルク低減率が上昇した。
【0037】
而して、このように実施の形態例の二例によれば、シリンダ中心線を反スラスト側に平行にオフセットすることなく、ピストン中心の動線Laが上死点のピストンピン位置PTDCを通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナ8の傾斜を設定するので、コンプレッサ等の圧縮行程で回転力を圧縮力へ変換する場合には、クランク5及びコンロッド3による力の伝達効率を高めることができる。又、図9に示す如くピストン中心の動線Laを傾けることにより駆動トルク低減率の向上を図ることができる。
【0038】
実施の形態例において、式1の如くピストン中心の動線Laの傾きの限界角度σmaxを設定すると、クランク5及びコンロッド3に伴う力の伝達効率を一層適切に高めることができる。又、ピストン中心の動線Laの傾きを設定すると、コンプレッサ等の圧縮行程で回転力を圧縮力へ変換する場合には、クランク5及びコンロッド3による力の伝達効率を適切に高めることができる。
【0039】
尚、本発明の往復動機関は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
2 ピストン
3 コンロッド
4 ピストンピン
5 クランク
6 クランクピン
7 クランク軸中心
8 シリンダライナ
L ピストンピンとクランクピンを結ぶ距離(コンロッド長)
R クランク半径
PTDC 上死点のピストンピン位置
PBDC 下死点のピストンピン位置
σ ピストン中心の動線の傾き
σmax 限界角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関やコンプレッサ等の往復動機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関やコンプレッサ等は、図11に示す如くシリンダブロック10に配置されるシリンダライナ1内でピストン2が往復動し得るように、ピストン2とコンロッド3をピストンピン4で接続し、コンロッド3とクランク5をクランクピン6で接続している。
【0003】
ここでシリンダ中心線は、クランク軸中心7とピストンピン4を結ぶ直線Lc上(クランクシャフト中心直上の線)に位置し、更にシリンダ中心線にはピストン中心の動線Laが合致している。
【0004】
又、近年、内燃機関において、クランク軸中心とピストンピンを結ぶ直線から、シリンダ中心線を反スラスト側に平行にオフセットさせることにより、スラスト側でピストンが受けるピストン側力(サイドフォース)を低減し、ピストンの摩耗を低減することが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−150969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内燃機関等の膨張行程でシリンダライナ1内の圧力を回転力へ変換する場合や、コンプレッサ等の圧縮行程で回転力を圧縮力へ変換する場合には、力の伝達効率を更に高めることが求められている。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、力の伝達効率を高める往復動機関を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の往復動機関は、ピストンとコンロッドをピストンピンで接続し、前記コンロッドとクランクをクランクピンで接続してシリンダライナ内でピストンを往復動させる往復動機関であって、ピストン中心の動線が上死点のピストンピン位置を通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナの傾斜を設定したものである。
【0009】
又、本発明において、上死点のピストンピン位置とクランク軸中心とを結ぶ直線に対して、ピストン中心の動線の傾きσは、
時計回りにクランクを回転させる場合、0<σ<σmax
反時計回りにクランクを回転させる場合、−σmax<σ<0
σmax:限界角度
で設定されることが好ましい。
【0010】
更に本発明において、ピストン中心の動線の傾きσにおける限界角度σmaxは
σmax=Asin((L−R)/(L+R))
L:ピストンピンとクランクピンを結ぶ距離
R:ストローク半径
で設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の往復動機関によれば、シリンダ中心線を反スラスト側に平行にオフセットすることなく、ピストン中心の動線が上死点のピストンピン位置を通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナの傾斜を設定するので、内燃機関等の膨張行程でシリンダ内の圧力を回転力へ変換する場合や、コンプレッサ等の圧縮行程で回転力を圧縮力へ変換する場合には、クランク及びコンロッドに伴う力の伝達効率を高めることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の往復動機関であって内燃機関の一例を示す概念図である。
【図2】往復動機関が内燃機関であってピストン中心の動線の傾きの限界角度を示す概念図である。
【図3】往復動機関が内燃機関であってピストンの位置の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図4】往復動機関が内燃機関であって遥動角の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図5】往復動機関が内燃機関であって回転効率の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図6】往復動機関が内燃機関であって一気筒のクランク回転力の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図7】往復動機関が内燃機関であって全ての気筒(四気筒)を合成したクランク回転力の変化を従来のものと比較したグラフである。
【図8】往復動機関が内燃機関であってピストン中心の動線の傾きを変化させた場合の効率の変化を示すグラフである。
【図9】往復動機関がエアコンプレッサであってクランク角度と各力の関係を示すグラフである。
【図10】往復動機関がエアコンプレッサであってピストン中心の動線の傾きを変化させた場合の効率の変化を示すグラフである。
【図11】従来の往復動機関を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態例の一例を図1〜図8を参照して説明する。ここで実施例の形態の一例は、時計周りにクランクを回転させる往復動機関の場合を示している。
【0014】
実施の形態例の往復動機関の一例は内燃機関に用いるものであり、図1に示す如くシリンダブロック10に配置されるシリンダライナ8内でピストン2が往復動し得るように、ピストン2とコンロッド3をピストンピン4で接続し、コンロッド3とクランク5をクランクピン6で接続している。
【0015】
又、シリンダライナ8の構成は、シリンダ中心線がクランク軸中心7とピストンピン4を結ぶ直線Lc上(クランクシャフト中心直上の線)から反スラスト側に平行にオフセットすることなく、ピストン中心の動線Laが上死点のピストンピン位置PTDCを通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように設定されている。更に反時計回りにクランクを回転させる場合には、傾きを逆方向に設定し、ピストン中心の動線Laが上死点のピストンピン位置PTDCを通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くようにしている。
【0016】
又、ピストン中心の動線の傾きσは、上死点のピストンピン位置PTDCとクランク軸中心7とを結ぶ直線に対して、
実施の一例の如く時計回りにクランクを回転させる場合に、0<σ<σmax
σmax:限界角度
で設定されている。
【0017】
更に又、ピストン中心の動線の傾きσは、上死点のピストンピン位置PTDCとクランク軸中心7とを結ぶ直線に対して、
他例(図示せず)の如く反時計回りにクランクを回転させる場合に、−σmax<σ<0
σmax:限界角度
で設定されている。
【0018】
更にピストン中心の動線Laの傾きσにおける限界角度σmaxは、以下の式1を満たすように設定されている。式1は、
σmax=Asin((L−R)/(L+R))
であり、
L:ピストンピン4とクランクピン6を結ぶ距離(コンロッド長)
R:ストローク半径(クランク半径)
の条件になるように設定されている。
【0019】
ここで式1の理解を助けるために図2の構成を用いて更に説明する。式1は、シリンダライナ8の傾斜による構成上の幾何学的な限界を示すものであり、往復動機関はピストン摺動方向に下死点が存在しなければ、回転運動ができないことを基準に設定したものである。具体的に図2により限界角度σmaxを説明すると、限界角度σmaxは上死点のピストンピン位置PTDCからクランク軸中心7までを結ぶ直線距離A、下死点のピストンピン位置PBDCからクランク軸中心7までを結ぶ直線距離Bの条件で、sinσmax=B/Aで決定される。更に上死点のピストンピン位置PTDCからクランク軸中心7までを結ぶ直線距離Aは、コンロッド長Lとクランク半径Rとを加算したものになり、下死点のピストンピン位置PBDCからクランク軸中心7までを結ぶ直線距離Bは、コンロッド長Lからクランク半径Rを減算したものになる。このため、sinσmax=(L−R)/(L+R)からσmax=Asin((L−R)/(L+R))を導き出すことができる。なお式1で求められる限界角度σmaxはラジアン単位であり、[deg.]単位の角度にする場合には360/2πを積算するか、degrees関数等を用いれば[deg.]単位の角度を算出することが可能となる。
【0020】
続いて図1で示した往復動機関が高効率になるという点を図1の構成及び図11の従来の構成を用いて説明する。
【0021】
図11に示す如く従来の構成は、上死点のピストンピン位置PTDCとクランク軸中心7とを結ぶ直線L0上にピストン中心の動線Laを配置したものであり、ピストンピン4にかかる力Fcは、シリンダ内圧による力Fpに対してFc=Fp/cos(φ)で設定され、クランク回転力Ftは、Ft=Fp・sin(θ+φ)/cos(φ)で設定される。一方、図1に示す如く実施の形態例の構成は、上死点のピストンピン位置PTDCとクランク軸中心7とを結ぶ直線L0上に対してピストン中心の動線Laを下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾きσで傾けたものであり、ピストンピン4にかかる力Fc'は、シリンダ内圧による力Fpに対してFc'=Fp/cos(φ'+σ)で設定され、クランク回転力Ft'は、Ft'=Fp・sin(θ+φ')/cos(φ'+σ)で設定される。そして回転力の指標をsin(θ+φ')/cos(φ'+σ)として図11の従来構成と図1の形態例の構成とを比較すると、図1の形態例の構成は、後述の図5に示す如く回転効率の向上及び回転損失の低減の範囲で高効率に寄与するものとなる。更に具体的に、従来の構成のクランク回転力Ftと、実施の形態例の構成のクランク回転力Ft'との比をとって示すと、Ft'>0,Ft>0の時、Ft'/Ft>1となるところでは回転率の向上となり、Ft'<0,Ft<0の時、0<Ft'/Ft<1となるところでは回転損失の低減となり、どちらの範囲でも効率が向上するものとなる。
【0022】
以下、往復運動機関を内燃機関にして実施の形態例と従来の例と比較して結果を示す。ここで実施の形態例はピストン中心の動線Laの傾きσを10[deg.]にし、従来例はピストン中心の動線Laの傾きσを0[deg.]にした。又、コンロッド長を181.5[mm]、ストローク半径59[mm]で設定し、内燃機関の駆動条件を2000[rpm]にした。
【0023】
[比較例1]
クランク5の回転に伴ってピストン2の位置の変化を従来のものと比較した。その結果、図3に示す如く実施の形態例のストロークは、従来のものに比べてクランク角度0〜200[deg.]程度の間でストロークが増加し、最大ストロークで3.66[mm]増加した。
【0024】
[比較例2]
クランク5の回転に伴って遥動角の変化を従来のものと比較した。ここで遥動角は、ピストン中心の動線Laと、クランク5(ピストンピン4とクランクピン6を結ぶ直線)とからなる角度であり、その結果を図4に示す。実施の形態例の遥動角は、設定段階で従来のものに比べて10[deg.]傾いていることから、クランク角度が変化する場合であっても従来のものに比べて10〜20[deg.]の差を有して変化した。
【0025】
[比較例3]
クランク5の回転に伴って回転効率の変化を従来のものと比較した。その結果、図5に示す如く実施の形態例の回転効率は、従来のものに比べてクランク角度0〜130[deg.]の間で回転効率が上昇し、クランク角度−120〜0[deg.](240〜360[deg.])の間で回転損失が低減した。ここでクランク角度130〜240[deg.]の間の下死点付近では、回転効率が低減したが、力を受ける上死点に比べて回転効率への影響が少ない。
【0026】
[比較例4]
クランク5の回転に伴って一気筒のクランク回転力の変化を従来のものと比較した。その結果、図6に示す如く実施の形態例の一気筒のクランク回転力は、従来のものに比べてクランク角度90[deg.]近辺で回転力が上昇し、又、従来のものに比べてクランク角度−90[deg.]近辺で回転力損失が低減した。
【0027】
[比較例5]
クランク5の回転に伴って全ての気筒(四気筒)の合成したクランク回転力の変化を従来のものと比較した。その結果、図7に示す如く実施の形態例の全ての気筒(四気筒)を合成したクランク回転力は、従来のものに比べてクランク角度−90[deg.]近辺、90[deg.]近辺、270[deg.]近辺、450[deg.]近辺で回転力が上昇し、行程中央で高効率となった。
【0028】
[比較例6]
続いてピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σを10[deg.]に限定せず、複数の角度に変えて回転効率及び燃費向上率を求めた。又、この場合、又、コンロッド長を181.5[mm]、ストローク半径59[mm]で設定し、内燃機関の駆動条件を2000[rpm]にした。その結果、図8に示す如くピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σが0[deg.]から12.5[deg.]まで回転効率及び燃費向上率が上昇した。又、ピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σが12.5[deg.]から20[deg.]までの範囲で回転効率及び燃費向上率が低下した。ここで回転効率及び燃費向上率の上昇は、ピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σにより高効率となると想定され、回転効率及び燃費向上率の低下は、ピストン側力(サイドフォース)の増加により摩擦力が大きくなったことに基づくと想定される。このことからピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σは0[deg.]から25[deg.]近辺まで回転効率及び燃費向上率の向上を図ることが明らかであり、更に5[deg.]から18[deg.]までは回転効率の向上が3%以上になることが明らかであり、特に12.5[deg.]では回転効率及び燃費向上率の向上が最大になることが明らかである。又、この場合のピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σにおける限界角度σmaxは、式1の構造上の幾何学的な制限から30.6[deg.]となる。
【0029】
而して、このように実施の形態例の往復動機関の一例によれば、シリンダ中心線を反スラスト側に平行にオフセットすることなく、ピストン中心の動線Laを下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾けるようにシリンダライナ8の傾斜を設定するので、内燃機関等の膨張行程でシリンダライナ8内の圧力を回転力へ変換する場合には、クランク5及びコンロッド3による力の伝達効率を高めることができる。又、図5に示す如くピストン中心の動線Laを傾けることにより回転効率の向上、回転損失の低減を図り、よって燃費の向上を図ることができる。
【0030】
又、実施の形態例の往復動機関の一例において、式1の如くピストン中心の動線Laの傾きσを設定すると、内燃機関等の膨張行程でシリンダライナ8内の圧力を回転力へ変換する場合に、クランク5及びコンロッド3に伴う力の伝達効率を適切に高めることができる。更に式2の如くピストン中心の動線Laの限界角度σmaxを設定すると、クランク5及びコンロッド3に伴う力の伝達効率を一層適切に高めることができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態例の二例を図9、図10を参照して説明する。
【0032】
実施の形態例の往復動機関の二例は、コンプレッサのうちエアコンプレッサに用いるものであり、一例と同様にシリンダライナ8内でピストン2が往復動し得るように、ピストン2とコンロッド3をピストンピン4で接続し、コンロッド3とクランク5をクランクピン6で接続している。なおコンプレッサは、エアコンプレッサに限定されるものでなく、他の種類のコンプレッサでも良い。
【0033】
ここでコンプレッサは、内燃機関の場合と同様に、ピストン中心の動線Laを下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾けるようにシリンダライナ8の傾斜を設定し、力の作用方向が内燃機関の場合と逆になる点を除いて同じような構成を備えている。又、ピストン中心の動線Laの傾きσは内燃機関と同様に設定され、更にピストン中心の動線Laの限界角度σmaxは内燃機関と同様に先の式1に基づいて設定される。
【0034】
以下、往復運動機関をコンプレッサにして実施の形態例と従来の例と比較した。ここで実施の形態例はピストン中心の動線Laの傾きσを10[deg.]にし、従来例はピストン中心の動線Laの傾きσを0[deg.]にした。又、コンロッド長を120[mm]、ストローク半径30[mm]で設定し、コンプレッサの駆動条件を500[rpm]、ロード状態8[kgf/cm2]にした。
【0035】
[比較例7]
クランク5の回転に伴ってクランク角度と各力(ピストン側力、ピストンピンにかかる力、クランク回転力)の関係を求めた。その結果、図9に示す如くピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σが0[deg.]から90[deg.]まで駆動トルク低減率(回転軸にかかる力)が向上し、−90[deg.]から0[deg.]まで駆動トルク低減率の損失が低減した。
【0036】
[比較例8]
以下、ピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σを10[deg.]に限定せず、複数の角度に変えて駆動トルク低減率を求めると共に、式1により限界角度σmaxを求めた。又、この場合、コンロッド長を120[mm]、ストローク半径30[mm]で設定し、エアコンプレッサの駆動条件を同様に500[rpm]、ロード状態8[kgf/cm2]にした。その結果、図10に示す如くピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σが0[deg.]からσmaxまで駆動トルク低減率が上昇した。ここで駆動トルク低減率が低下しない理由としては、エアコンプレッサは、内燃機関に比べてクランク半径がコンロッド長に対して小さいため、遥動角及びピストン側力が小さく、よってピストン側力の増加による摩擦損失が小さく、駆動トルク低減率が低下しないためと想定される。このことからピストン中心の動線Laの傾き(シリンダ角度)σは0[deg.]から限界角度σmax36.3[deg.]まで駆動トルク低減率が上昇した。
【0037】
而して、このように実施の形態例の二例によれば、シリンダ中心線を反スラスト側に平行にオフセットすることなく、ピストン中心の動線Laが上死点のピストンピン位置PTDCを通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナ8の傾斜を設定するので、コンプレッサ等の圧縮行程で回転力を圧縮力へ変換する場合には、クランク5及びコンロッド3による力の伝達効率を高めることができる。又、図9に示す如くピストン中心の動線Laを傾けることにより駆動トルク低減率の向上を図ることができる。
【0038】
実施の形態例において、式1の如くピストン中心の動線Laの傾きの限界角度σmaxを設定すると、クランク5及びコンロッド3に伴う力の伝達効率を一層適切に高めることができる。又、ピストン中心の動線Laの傾きを設定すると、コンプレッサ等の圧縮行程で回転力を圧縮力へ変換する場合には、クランク5及びコンロッド3による力の伝達効率を適切に高めることができる。
【0039】
尚、本発明の往復動機関は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
2 ピストン
3 コンロッド
4 ピストンピン
5 クランク
6 クランクピン
7 クランク軸中心
8 シリンダライナ
L ピストンピンとクランクピンを結ぶ距離(コンロッド長)
R クランク半径
PTDC 上死点のピストンピン位置
PBDC 下死点のピストンピン位置
σ ピストン中心の動線の傾き
σmax 限界角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンとコンロッドをピストンピンで接続し、前記コンロッドとクランクをクランクピンで接続してシリンダライナ内でピストンを往復動させる往復動機関であって、ピストン中心の動線が上死点のピストンピン位置を通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナの傾斜を設定したことを特徴とする往復動機関。
【請求項2】
上死点のピストンピン位置とクランク軸中心とを結ぶ直線に対して、ピストン中心の動線の傾きσは、
時計回りにクランクを回転させる場合、0<σ<σmax
反時計回りにクランクを回転させる場合、−σmax<σ<0
σmax:限界角度
で設定されることを特徴とする請求項1に記載の往復動機関。
【請求項3】
ピストン中心の動線の傾きσにおける限界角度σmaxは
σmax=Asin((L−R)/(L+R))
L:ピストンピンとクランクピンを結ぶ距離
R:ストローク半径
で設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の往復動機関。
【請求項1】
ピストンとコンロッドをピストンピンで接続し、前記コンロッドとクランクをクランクピンで接続してシリンダライナ内でピストンを往復動させる往復動機関であって、ピストン中心の動線が上死点のピストンピン位置を通り且つ下死点から上死点へ向かって反スラスト側に傾くように、シリンダライナの傾斜を設定したことを特徴とする往復動機関。
【請求項2】
上死点のピストンピン位置とクランク軸中心とを結ぶ直線に対して、ピストン中心の動線の傾きσは、
時計回りにクランクを回転させる場合、0<σ<σmax
反時計回りにクランクを回転させる場合、−σmax<σ<0
σmax:限界角度
で設定されることを特徴とする請求項1に記載の往復動機関。
【請求項3】
ピストン中心の動線の傾きσにおける限界角度σmaxは
σmax=Asin((L−R)/(L+R))
L:ピストンピンとクランクピンを結ぶ距離
R:ストローク半径
で設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の往復動機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−127560(P2011−127560A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288759(P2009−288759)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
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