説明

後付部品の着脱構造

【課題】 不要な音の発生を抑制しつつ、後付部品を簡単に着脱することが可能となる後付部品の着脱構造を提供する。
【解決手段】 各譜面立てスタンド3は、それぞれ、電子楽器1の筐体に設けられた複数の通気口のうち、所定の2つの通気口に、2つの突起部31を挿入することで、電子楽器1に固定され、譜面立て2は、各譜面立てスタンド3にそれぞれ設けられた1つの穴に、2つの突起部21のそれぞれを挿入することで、譜面立てスタンド3上に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器本体に後付部品を着脱自在に取り付け可能な構造に関する。
【背景技術】
【0002】
楽器本体に後付部品を着脱自在に取り付け可能な構造として、たとえば、ネジ穴のあるステーを後付部品に設け、このネジ穴にネジを差し込んで、楽器の筐体にステーを螺着するようにしたものがある。
【0003】
また、楽器の筐体に溝を設け、この溝に、後付部品の一部をはめ込んで固定するようにしたものも知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−242868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の後付部品の着脱構造のうち、前者では、後付部品を着脱するときに、ネジを締めたり緩めたりしなければならないので、後付部品を簡単に着脱することができなかった。
【0005】
また、後者では、演奏者の演奏に起因する楽器本体の揺れや、楽音の発生に起因する楽器本体の振動が後付部品に作用することで、ビビリ音が発生することがあった。
【0006】
本発明は、この点に着目してなされたものであり、不要な音の発生を抑制しつつ、後付部品を簡単に着脱することが可能となる後付部品の着脱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の後付部品の着脱構造は、楽器本体に着脱自在に後付けする後付部品の着脱構造であって、前記楽器本体側に、第1の開口部を形成した表面部と、前記第1の開口部の内周縁近部に位置し、当該第1の開口部より小さい形状の第2の開口部を備えた、弾性体からなる保持部材と、前記第1および第2の開口部に続く第3の開口部を備えた支持部材とを有するとともに、前記後付部品側に、その断面が前記第1の開口部より小さく、前記第2の開口部と略同一あるいは微少に大きい形状の突起部と、該突起部の、前記第1〜第3の開口部を介した前記表面部、保持部材および支持部材への挿入状態を規制する規制部とを有し、前記突起部は、前記第1〜第3の開口部を通った上で、前記支持部材によって支持されることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記楽器本体には、所定の目的のために複数個の穴が設けられており、前記第1の開口部は、該複数個の穴のうちの一部を用いることを特徴とする。
【0009】
ここで、複数個の穴とは、たとえば、楽器の内部と外部とを相通する穴であり、楽器内部に配置された電装品が発生する熱を外部に逃がすものである。また、複数個の穴は、たとえば、連続して形成されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、後付部品側に設けられた突起部が、楽器本体側に設けられた第1〜第3の開口部を通った上で、楽器本体側に設けられた支持部材によって支持されるので、後付部品を簡単に着脱することが可能となる。さらに、第2の開口部を備えた保持部材は弾性体からなり、後付部品は楽器本体に、がたつくことなくしっかり保持されるので、不要な音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る後付部品の着脱構造を適用した電子楽器1を前方から見下ろしたときの外観を示す斜視図であり、図2は、図1の電子楽器1を後方から見上げたときの外観を示す斜視図である。
【0013】
図1および図2に示すように、譜面立て2が、後付部品として、2つの譜面立てスタンド3を介して電子楽器1に取り付けられるように構成されている。
【0014】
図3は、譜面立て2および譜面立てスタンド3を電子楽器1に対して着脱する様子を示す図である。
【0015】
同図に示すように、各譜面立てスタンド3は、それぞれ、電子楽器1の筐体に設けられた複数の通気口のうち、所定の2つの通気口に、2つの突起部31を挿入することで、電子楽器1に固定され、譜面立て2は、各譜面立てスタンド3にそれぞれ設けられた1つの穴32(図7参照)に、2つの突起部21のそれぞれを挿入することで、譜面立てスタンド3上に固定される。
【0016】
このようにして、譜面立てスタンド3を介して、電子楽器1に取り付けられた譜面立て2を、電子楽器1から取り外すときには、まず、譜面立て2の突起部21を譜面立てスタンド3から抜いて、譜面立て2を譜面立てスタンド3から取り外し、次に、2つの譜面立てスタンド3のうちの一方の2つの突起部31を電子楽器1から抜いて、その譜面立てスタンド3を電子楽器1から取り外し、最後に、同様にして、もう一方の譜面立てスタンド3を電子楽器1から取り外す。
【0017】
図4は、1つの譜面立てスタンド3を固定するための電子楽器1側の構造を拡大して透視した拡大透視図である。
【0018】
同図に示すように、1つの譜面立てスタンド3を固定するための電子楽器1側の構造は、電子楽器1の筐体に設けられた、所定の2つの穴11と、譜面立てスタンド3の前記突起部を挿入して支持する支持部材4と、電子楽器1の筐体と支持部材4との間に配置され、譜面立てスタンド3の突起部が支持部材4によって支持されているときに、電子楽器1上に発生した振動などで譜面立てスタンド3がぐらつかないように保持する保持部材5とからなる。
【0019】
図5は、支持部材4の斜視図である。
【0020】
支持部材4は、たとえば樹脂成型によって形成され、同図に示すように、支持部材4には、前記各突起部31がそれぞれ挿入されるボス部41aおよび41bと、電子楽器1の上側の筐体に支持部材4を螺着させるための4つのネジ穴42aと、電子楽器1の下側の筐体に支持部材4を螺着させるための1つのネジ穴43aとが設けられている。
【0021】
支持部材4は、複数の壁面を連続させた壁面構造をなし、ボス部41aおよび41bは、壁面をボス状に形成したものである。そして、ボス部41aおよび41bの周囲には、補強用のリブが壁面により形成されている。また、ネジ穴42aは、壁面42上に形成され、ネジ穴43aは、壁面43上に形成されている。
【0022】
ボス部41aおよび41bのそれぞれの開口部41a1および41b1は、それぞれ、略楕円形状となっている。これに対して、開口部41a1および41b1に挿入される突起部31は、図7に示すように、円筒形状となっており、開口部41a1および41b1の短径が突起部31の半径と略同一となっている。したがって、開口部41a1および41b1に突起部31が挿入された場合、突起部31は、開口部41a1および41b1の長径方向に余裕がある。ただし、ボス部41bの長径方向の両側には、突起部31が長径方向にぐらつかないように規制する凸部41b2が設けられている。このように、開口部41a1および41b1のうちの一方にのみ、突起部31が挿入されたときに余裕が生じるようにしたのは、譜面立てスタンド3を電子楽器1に取り付ける際や、譜面立てスタンド3を電子楽器1から取り外す際に、譜面立てスタンド3を左右に動かしながら差し込んだり、引き抜いたりすることができるようにするためである。なお、本実施の形態では、凸部41b2をボス部41b側に設けるようにしたが、これに代えて、ボス部41a側にのみ設けてもよい。つまり、凸部を設ける開口部は、ボス部41aまたは41bのいずれか一方であればよい。
【0023】
図6は、保持部材5の斜視図であり、(a)は、突起部31を挿入する側から見た図であり、(b)は、(a)と反対側から見た図である。
【0024】
保持部材5は、ゴム等の弾性部材からなり、同図(a)に示すように、保持部材5には、各突起部31が挿入される穴5aおよび5bが形成され、各穴5aおよび5bには、各突起部31を挿入し易いように、テーパー加工が施されている。各穴5aおよび5bは、それぞれ略円形状をなし、その各半径は、各突起部31をがたつくことなくしっかり保持するために、突起部31の半径よりやや短く採られている。保持部材5の、突起部31が挿入される側には、保持部材5の肉厚を薄くするための溝5cが形成されている。保持部材5は、この溝5cによって折り曲げ易くなっており、保持部材5を支持部材4に取り付ける場合、まず、一方の穴5a(または5b)が形成された部位を支持部材4の対応する位置に取り付け、その後、他方の穴5b(または5a)が形成された部位を支持部材4の対応する位置に取り付けることができ、これにより、保持部材5の支持部材4への取り付けが容易になる。
【0025】
保持部材5は、支持部材4のボス部41aおよび41bを覆うようにして取り付ける。したがって、保持部材5には、ボス部41aおよび41bをそれぞれ覆う被覆部5dおよび5eが設けられている。そして、前述したように、ボス部41aおよび41bの周囲には、それぞれリブが形成されているので、被覆部5dおよび5eには、そのリブが嵌合する溝5d1および5e1が形成されている。
【0026】
このように構成された支持部材4および保持部材5を電子楽器1の本体に取り付ける場合、まず、保持部材5の被覆部5dまたは5eのいずれか一方、たとえば被覆部5dを、被覆部5dに形成された溝5d1を利用して位置決めしながら、支持部材4のボス部41aに嵌め込み、次に、同様にして、被覆部5eをボス部41bに嵌めこむ。そして、保持部材5の嵌め込まれた支持部材4の前記4つのネジ穴42aのうち、所定の2つのネジ穴にネジ(図示せず)を通して、電子楽器1の上側筐体の内側に設けられたボス部12に螺着させ、さらに、前記ネジ穴43aにネジ(図示せず)を通して、電子楽器1の下側筐体の内側に設けられたボス部13に螺着させる。これにより、電子楽器1の筐体上の2つの通気口11のそれぞれと、保持部材5の2つの穴5aおよび5bのそれぞれと、支持部材4の2つの開口部41a1および41b1のそれぞれとが一直線上につながるので、その一直線上につながった2つの穴に、譜面立てスタンド3の2つの突起部31のそれぞれを挿入できるようになる。
【0027】
同様にして、もう1つの譜面立てスタンド3を取り付ける、電子楽器1の本体側の位置に、もう1組の支持部材4および保持部材5を取り付ける。
【0028】
譜面立てスタンド3の2つの突起部31は、たとえば金属によって構成され、前記図7に示すように、その先端は、挿入し易いように、テーパー形状となっている。この2つの突起部31を、電子楽器1側の2つの通気口11に挿入する際には、保持部材5の穴5aおよび5bの形状が突起部31の形状よりやや小さいので、突起部31は、なかなか奥に入っていかない。このため、譜面立てスタンド3を左右に動かしながら、突起部31を挿入して行き、譜面立てスタンド3の、突起部31が突出している面33が、電子楽器1の筐体と当接した時点で、譜面立てスタンド3の電子楽器1の筐体への取り付けは完了する。
【0029】
同様にして、もう1つの譜面立てスタンド3を電子楽器1の筐体に取り付ける。
【0030】
このようにして、2つの譜面立てスタンド3が電子楽器1の筐体に取り付けられると、各譜面立てスタンド3の各穴32に、譜面立て2の各突起部21を嵌め込んで、譜面立て2の電子楽器1への取り付けは完了する。
【0031】
電子楽器1に取り付けられた譜面立て2の取り外しは、上記取り付けと逆に行えばよいので、その説明は省略する。
【0032】
なお、本実施の形態では、後付部品として、譜面立て2(および譜面立てスタンド3)を例に挙げて説明したが、これは説明の都合上に過ぎず、たとえば、図8に示すスピーカスタンド6を譜面立てスタンド3の代わりに電子楽器1の筐体に取り付け、スピーカスタンド6上にスピーカ(図示せず)を取り付けることにより、スピーカを後付けするようにしてもよい。この場合、スピーカスタンド6を取り付けるための電子楽器1側の構造は、譜面立てスタンド3を取り付けるための電子楽器1側の構造と同様である。
【0033】
このように、本実施の形態では、後付部品側に設けられた突起部が、電子楽器1の筐体上に設けられた通気口11、保持部材5の穴5a,5bおよび支持部材4のボス部41a,41bを通った上で、楽器本体側に設けられた支持部材によって支持されるので、後付部品を簡単に着脱することが可能となる。さらに、保持部材5は弾性体からなり、後付部品は楽器本体に、がたつくことなくしっかり保持されるので、不要な音の発生を抑制することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、後付部品の突起部が挿入される、電子楽器の筐体上の穴として、通気口の一部を用いたが、これは、後付部品を取り外したときに、後付部品用の穴が他の穴と同化して、後付部品用の穴であることが一見しただけでは分からないようにするためである。したがって、大きさが同じ程度の複数の穴が、通気口以外に、電子楽器の筐体上に開いていた場合には、それを用いるようにすればよい。また、複数の穴のそれぞれの大きさは、同じ程度が好ましいものの、多少大きさが異なってもよいし、後付部品用の穴であることが分かるようなマーク(たとえば、“△”)をその穴の近傍に付けるようにしてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、2つの突起部31を設けた譜面立てスタンド3を2つ電子楽器1の筐体に取り付け、この2つの譜面立てスタンド3上に、譜面立て2を設置するようにしたが、突起部31の個数も、譜面立てスタンド3の個数も、2つに限られる訳ではない。さらに、本実施の形態では、2つの突起部31を横に並べて、電子楽器1の筐体に挿入するようにしたが、縦に並べてもよいし、角度を付けて配置するようにしてもよい。
【0036】
また、本実施の形態では、譜面立てスタンド3を電子楽器の筐体に挿入する場合、譜面立てスタンド3の、突起部31が突出している面33が、電子楽器1の筐体と当接することで、譜面立てスタンド3の挿入状態を規制するようにしているが、これに限らず、たとえば、ボス部41aおよび41bの底を閉口にし、底に突起部31が当接することで、譜面立てスタンド3の挿入状態を規制するようにしてもよい。
【0037】
なお、本実施の形態では、後付部品を着脱自在に取り付ける対象として、電子(鍵盤)楽器を例に挙げて説明したが、これは説明の都合上に過ぎず、他の種類の電子楽器に対しても、また、電子楽器でないアコースティック楽器に対しても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係る後付部品の着脱構造を適用した電子楽器を前方から見下ろしたときの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の電子楽器を後方から見上げたときの外観を示す斜視図である。
【図3】譜面立ておよび譜面立てスタンドを電子楽器に対して着脱する様子を示す図である。
【図4】1つの譜面立てスタンドを固定するための電子楽器側の構造を拡大して透視した拡大透視図である。
【図5】図4中の支持部材の斜視図である。
【図6】図4中の保持部材の斜視図である。
【図7】図1中の譜面立てスタンドの斜視図である。
【図8】スピーカスタンドの斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…電子楽器,2…譜面立て,3…譜面立てスタンド,31…突起部,4…支持部材,41a,41b…ボス部,5…保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器本体に着脱自在に後付けする後付部品の着脱構造であって、
前記楽器本体側に、
第1の開口部を形成した表面部と、
前記第1の開口部の内周縁近部に位置し、当該第1の開口部より小さい形状の第2の開口部を備えた、弾性体からなる保持部材と、
前記第1および第2の開口部に続く第3の開口部を備えた支持部材と
を有するとともに、
前記後付部品側に、
その断面が前記第1の開口部より小さく、前記第2の開口部と略同一あるいは微少に大きい形状の突起部と、
該突起部の、前記第1〜第3の開口部を介した前記表面部、保持部材および支持部材への挿入状態を規制する規制部と
を有し、
前記突起部は、前記第1〜第3の開口部を通った上で、前記支持部材によって支持されることを特徴とする後付部品の着脱構造。
【請求項2】
前記楽器本体には、所定の目的のために複数個の穴が設けられており、前記第1の開口部は、該複数個の穴のうちの一部を用いることを特徴とする請求項1に記載の後付部品の着脱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−308609(P2006−308609A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108617(P2005−108617)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】