説明

後処理装置

【課題】 複合機などの画像形成装置から例えばフェースダウンで出力される用紙を、フェースアップに反転して排出できると共に、安価でスペースを占有しない機構を有する後処理装置を提供する。
【解決手段】 後処理装置は回転自在の円筒体61と分岐ガイド62〜64を備え、それらは用紙を処理する処理部や排出トレイに用紙を搬送するために設けられている。用紙の反転機構は主に円筒体61と分岐ガイド63からなり、円筒体61を回転させて用紙Pの第1面を円筒体61の外周面と対向させて巻き付ける。その後、円筒体61を逆回転させると共に、分岐ガイド63をB1の配置にし、用紙を外周面から離間させて排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタなどの画像形成装置によって画像形成された用紙などのシート状印刷媒体の後処理を行う後処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置は単に印刷機能だけではなく、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の機能を併せ持つデジタル複合機(Multi Function Peripheral:MFP)と呼ばれる装置が広く用いられている。そしてMFPは現在もユーザーにおける利便性の向上を念頭において、様々な機能が付加され改良されつつある。その様な機能を発揮する手段として、単一用紙の表裏面に画像の印刷(画像形成)を連続して行うために、MFPの画像形成部に装備された用紙反転装置がある。
【0003】
特許文献1には、そのような用紙反転装置の一例が開示されている。特許文献1に記載の用紙反転装置は、基本的には用紙搬入路と、半径の大きい反転ローラおよび半径の小さい補助ローラからなるフィードローラ対と、用紙搬出路とで構成されている。フィードローラ対を構成する反転ローラと補助ローラは互いの部分を押圧し正逆両方向へ回転することができるように構成されている。また用紙搬入路は反転ローラと補助ローラ間に向かうように設けられ、両者の接触部近傍で終結している。用紙搬出路は、反転ローラの上記接触部とは異なる外周部にその入口が近接し、その外周の接線方向に延びるように配置されている。
【0004】
このように構成された用紙反転装置において、まず用紙搬入路をフィードローラ対方向に搬送されてきた用紙は、反転ローラと補助ローラ間に挟まれた後、一方向、すなわち搬送方向に回転中の反転ローラに巻き取られる。次に用紙の後端部が用紙搬出路の入口を望む位置まで来ると、反転ローラは逆回転する。それにより巻き付けられた用紙は今度は前記後端部を先端にして用紙搬出路へ送り出される。
【0005】
以上の動作から分かるように、搬入時の用紙の上向き面は搬出時には下向きとなって用紙の表裏が反転する。特許文献1に記載の用紙反転装置は、用紙を反転ローラに巻き付けてその表裏を反転させるという方法を取ることにより、用紙反転装置自体の占有スペースを削減しプリンタ装置を小型化することに寄与しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−11771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の用紙反転装置は、用紙の表裏面に印刷を連続して行うためのものであった。通常、MFPなど画像形成装置で画像形成した印刷済みの用紙は印刷面を下にして、すなわちフェースダウンの状態で排出される。しかしユーザーの目的、希望によっては印刷面を上向きして、すなわちフェースアップの状態にして排出したい場合が存在する。これは、画像形成装置本体に、あるいは印刷出力用紙に対するパンチング処理(穿孔処理)やステープルによって複数の用紙束を綴じるステープル処理などを施す後処理装置が画像形成装置に結合されている場合はその後処理装置に、特許文献1に記載の用紙反転装置を適用すれば一応実現が可能である。
【0008】
しかしながら、画像形成装置から画像形成されて出力された用紙に対する通常のフェースダウン出力に加え、例えば上記のような後処理装置にフェースアップ出力専用として、表裏反転装置を追加装備することはかなりのコスト上昇を伴うだけでなく、装置の占有スペースも増大するという課題が存在した。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであって、画像形成装置により画像形成などが行われた後画像形成装置から出力された用紙の表裏2面を反転させて出力することができると共に、安価で占有スペースをほとんど必要としない反転機構を備えた後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る後処理装置は、主軸に回転可能に支持され、一方の方向に回転して周面にシート状体を巻回する退避ドラム、第1の分岐ガイドおよび制御手段とを少なくとも備える。
【0011】
第1の分岐ガイドは、概ね三角形の底辺を前記ドラムに対向させると共に、当該底辺より前記退避ドラムの径方向に遠い位置を、前記主軸に平行な軸に回動自在にして、前記巻回方向上流側の先端部および前記巻回方向下流側の先端部が、前記退避ドラムの周面に接離可能に支持されている。そして前記両先端部が前記退避ドラムの周面から離れているときは、前記退避ドラムとの間にシート状体が通過できる程度の間隙を形成する。
【0012】
制御手段は、シート状体の表裏反転の指示を受けたとき、前記第1の分岐ガイドと前記退避ドラムとの間に前記間隙を形成し、前記退避ドラムを巻回方向に回転させ、シート状体を、前記間隙を通過させて前記退避ドラムに巻回する。そしてその後、前記第1の分岐ガイドの前記巻回方向下流側の先端部を前記退避ドラムの周面に接触させて、前記退避ドラムを反巻回方向に回転させて、前記シート状体を前記退避ドラムから引き離し、前記巻回時とは逆の面が表になるように排出する制御を行う。
【0013】
上記本発明に係る後処理装置の一形態では、さらにシート状体の処理部と、第2の分岐ガイドとを備える。
【0014】
第2の分岐ガイドは、概ね三角形の底辺を前記ドラムに対向させると共に、当該底辺より前記退避ドラムの径方向に遠い位置を、前記主軸に平行な軸に回動自在にして、前記巻回方向上流側の先端部が、前記退避ドラムの周面に接離可能に支持されている。そして前記先端部が前記退避ドラムの周面から離れているときは、前記退避ドラムとの間にシート状体が通過できる程度の間隙を形成する。
【0015】
また、前記制御手段は、シート状体の表裏反転の指示を受けたとき、前記第1の分岐ガイドと前記退避ドラムとの間、および前記第2の分岐ガイドと前記退避ドラムとの間に前記間隙を形成し、前記退避ドラムを巻回方向に回転させ、シート状体を前記それぞれの間隙を通過させて前記退避ドラムに巻回する。その後、前記第1の分岐ガイドの前記巻回方向下流側の先端部を前記退避ドラムの周面に接触させて、前記退避ドラムを反巻回方向に回転させて、前記シート状体を前記退避ドラムから引き離し、前記巻回時とは逆の面が表になるようにシート状体を排出する制御を行う。
【0016】
後処理装置は一つの場合において、シート状体に画像を形成する画像形成装置と結合され、前記シート状体は前記画像形成装置から前記後処理装置に搬入される。この場合、後処理装置が備える前記処理部の望ましい機能の一つは、複数のシート状体からなる束をステープルで綴じる処理を行う機能である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明に係る後処理装置によれば、円筒体を巻回方向に回転させて用紙などシート状体の第1面を円筒体の外周面と対向させ、且つシート状体の先端部から後端部までを巻き付ける動作を行う。さらに第1の分岐ガイドの巻回方向下流側の先端部を退避ドラムの周面に接触させた後に、退避ドラムを反巻回方向に回転させて、シート状体を退避ドラムから引き離す。こうしてシート状体は排出される。このようにすると、例えば第1面を上向にして搬送されたシート状体を第1面とは反対側の第2面を上向きにして排出することが可能となる。
【0018】
そして後処理装置が本来シート状体を、ステープル処理等を行う処理部などに搬送するために退避ドラム、第1の分岐ガイドあるいは第2の分岐ガイドを備えている場合において、本発明によれば、シート状体の表裏反転は、それらを利用したものにできるので、新たな機構の追加をほとんど必要とせず、また占有スペースの増加もほとんどない。従って低コストでシート状体の表裏反転機構を後処理装置に装備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る後処理装置を備えた画像形成装置の内部全体構成例を示す概念図。
【図2】本発明の実施形態に係る後処理装置の内部構成例を示す概略図。
【図3】本発明の実施形態に係る後処理装置における用紙搬送分岐部の詳細構造図。
【図4】本発明の実施形態に係る後処理装置における機能ブロック構成の概略図。
【図5】用紙をトレイへ標準搬送する場合の用紙搬送分岐部の動作を説明する図。
【図6】用紙をトレイへ仕分け搬送する場合の用紙搬送分岐部の動作を説明する図。
【図7】用紙をステープルユニットへ搬送する場合の用紙搬送分岐部の動作を説明する図。
【図8】用紙をステープルユニットへ搬送する場合の用紙搬送分岐部の動作を説明する図。
【図9】用紙を表裏反転させて搬送・出力する場合の用紙搬送分岐部の動作を説明する図。
【図10】用紙を表裏反転させて搬送・出力する場合の用紙搬送分岐部の動作を説明する図。
【図11】用紙を表裏反転させて搬送・出力する場合の用紙搬送分岐部の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る画像形成後の後処理装置に関する実施形態について説明する。ここに説明する本実施形態は本発明を具体化した一例であって、これによって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る後処理装置を備えた画像形成装置の全体構成例を示し、特に画像形成装置の内部の構成を示す概念図である。図1においては本発明に直接には関係しない部位の詳細は省略している。画像形成装置には種々の機能を有するものがあるが、図1に示す装置として、プリンタ、複写、スキャナ、ファックス等の機能を備えたデジタル複合機10を想定する。
【0022】
図1のようなデジタル複合機は複写機として動作するので、文書、図形などが含まれる原稿画像の画像読み取り部を有している。まず、ユーザーが複合機10を利用して例えば原稿Pの複写印刷を行う場合、原稿Pを図1に示す光透過性の原稿台13、または載置台15に配置し、原稿台13近傍に設置された入力/表示部21からコピー条件を入力し、印刷を指示する操作を行う。入力/表示部21は、複合機10を操作するときユーザー側から見て原稿台13の手前に、例えば水平に設置されている。
【0023】
入力/表示部21は原稿Pに対する画像読取や画像形成、すなわち印刷についての設定条件、処理に関する指示等がユーザーによって入力され、また入力された設定条件や指示あるいはそれらに応答したメッセージなどを例えばタッチパネル上に表示する。
【0024】
前記入力/表示部21から複写印刷の指示があると、各部(機械的駆動部)が動作することで印刷が行われる。図1に示すように複合機10は、画像形成部本体11と、本体11の上方に取り付けられたプラテンカバー12を備える。本体11の上面には上記の原稿台13が設けられており、原稿台13は、プラテンカバー12によって開閉されるようになっている。プラテンカバー12には自動原稿給紙装置14と載置台15と排紙台16が設けられている。
【0025】
原稿の複写を行うために、原稿が原稿台13上ではなく載置台15に載置されたとき、自動原稿給紙装置14は、1枚ずつ原稿を搬送路内に引き出して原稿読取位置Xを通過させ、排紙台16に排紙する。読取位置Xを通過する時に原稿は、原稿台13の下方に設けられた画像読取部17にて読み取られる。
【0026】
画像読取部17は、原稿台13を下方から照射するいわゆる主走査方向に長尺の形状を有する光源18、原稿台13から入射する原稿画像に対応する光を導く各種ミラー19、各種ミラー19で導かれた光を受光した後に電気信号に変換し、必要に応じて画像処理などを行う画像データ生成部20で主に構成されている。
【0027】
複合機本体11の画像読取部17の下方には、画像データを印刷する画像形成部22を備えている。画像形成部22が印刷できる画像データは、上記のように画像データ生成部20にて生成されたものに限らない。最近の複合機10は、LAN等を通じてネットワーク構成されており、そのネットワークに含まれるパーソナルコンピューター(PC)等のユーザー端末装置から、複合機10が受信した画像データが通常含まれている。
【0028】
画像形成部22が行う印刷の方式には電子写真方式が用いられている。すなわち感光ドラム24を帯電器25で一様に帯電させ、その後レーザ23で感光ドラム24を照射して感光ドラム24に潜像を形成し、現像器(ロータリー現像器)26で潜像にトナーを付着させて可視像を形成し、転写ローラにて可視像を転写媒体に転写する方式である。
【0029】
フルカラー画像に対応した複合機では、現像器26が回転し、対応する色のトナーが格納された現像ユニットが感光ドラム24の対向位置に配置される。この状態で感光ドラム24上の潜像が、現像器26が格納するトナーにより現像され、中間転写ベルト27上に転写される。この画像形成装置では、現像器26はイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各トナーをそれぞれ格納する4つの現像ユニット(Y)、(C)、(M)、(K)を有している。中間転写ベルト27への転写を各色毎に繰り返すことにより、中間転写ベルト27上にフルカラー画像が形成される。
【0030】
以上のようにして形成されるフルカラー画像が印刷されるシート状転写媒体、例えば印刷用の用紙は、給紙カセット29a、29b、29cに載置されている。画像形成部22が印刷を行う際には、何れか1つの給紙カセットから転写媒体1枚をピックアップローラ30を用いて引き出し、搬送ローラ31等で中間転写ベルト27へ送る。画像形成部22は、転写媒体に中間転写ベルト27上の可視像を転写すると、可視像を定着させるために搬送ベルトで定着部28(定着装置)に転写媒体を送る。そして定着部28が転写媒体に加熱と加圧を施すことにより、可視像が転写媒体に定着する。
【0031】
このようにして可視像の転写・定着が終了し、画像が表面に印刷された転写媒体が画像形成装置から排出されることになる。転写媒体はシート状(シート状体)であるが、通常紙を使用するので、本実施形態における説明では、以後単に用紙と呼ぶことにする。
【0032】
画像形成装置の本体11および給紙カセット29a、29b、29cからなる給紙カセット部の左側には、後処理装置33が特に画像形成装置本体11と結合されて設置されている。画像形成部22より排出された印刷済みの用紙は後処理装置33の内部に搬送される。図1に示す本実施形態に係る後処理装置33は、画像形成装置から内部に搬送された用紙をファイルに綴じるために用紙に複数の穿孔を形成したり(パンチング)、また複数枚から構成される1組の用紙束を綴じるためにステープルを施したりする機能を備えたものである。
【0033】
後処理装置33は1つのメイントレイ35、および複数(図1では5個)のマルチジョブトレイ36を有し、これらは後処理装置33の本体に取り付けられた支持柱34によって支持されている。メイントレイ35は特に排出先を指定しない場合の排出用紙を受けるために用いられる標準トレイである。一方マルチジョブトレイ36は、画像形成装置で印刷された用紙を例えば所定の規則に従って仕分けし、各トレイに分配排出するときに用いられるものである。従ってこの後処理装置33は用紙の仕分け搬送機能も備えている。
【0034】
なお、画像形成装置の本体11には制御回路部32が含まれている。制御回路部32は、CPU(中央演算装置)、各種の記憶装置、本画像形成装置とネットワークで接続されたパーソナルコンピュータ(PC)等のようなユーザー端末装置との間の通信を行うためのインターフェース等からなる。制御回路部32は、画像形成装置を動作させるための各種制御プログラム、情報、データを記憶し、また入力/表示部21、画像読取部17、画像形成部22を駆動制御する。制御回路部32はそれだけでなく、後処理装置33を駆動制御し、後処理装置33における複数の用紙搬送モードを制御する制御手段を含む。制御回路部32の後処理装置33を駆動制御する手段は、本実施形態の場合、後処理装置33自身に属しているものとする。あるいはまた後処理装置33の駆動制御手段は制御回路部32から分離された回路を構成し、後処理装置33に備えていてもよい。
【0035】
図2は、本発明の実施形態に係る後処理装置の内部概略構成を示す図である。図2ではマルチジョブトレイ36の一部を省略している。本実施形態による後処理装置33は、大きく分けて画像形成装置から搬送された印刷済みの用紙に穿孔を形成するパンチングユニット42、複数の用紙で構成される用紙束を綴じるために用紙束にステープルを施すステープルユニット45、および搬送中の用紙の一時退避および用紙搬送経路の切り替えを行う用紙分岐搬送部60からなる。
【0036】
パンチングユニット42は穿孔部43と穿孔屑貯蔵部44から構成される。パンチングを要する場合、搬送中の用紙は穿孔部43と穿孔屑貯蔵部44との間の所定の位置で一旦停止する。そして穿孔部43はその詳細を図示していないが、例えば穿孔用の円形刃を複数個有し、それらを用紙面に垂直に往復運動させると共に穿孔屑貯蔵部44側で用紙を支持することでパンチングを行う。そしてパンチングによって生じた用紙の穿孔屑は穿孔屑貯蔵部44中に蓄えられる。
【0037】
次にステープルユニット45は、ステープル処理部46とそれに対向して配置されたカバー部47を有し、全体として傾斜するように配置されている。ステープル処理部46の上面は実質的に平面であり、ステープル処理されるために上方から下降してきた用紙を受ける中間トレイ48として働く。ステープル処理部46にはステープラーが複数個所に設けられ、例えば中間トレイ48上に載置された用紙のコーナー部1箇所、または用紙の一辺に平行に2箇所など目的に応じたステープルによる綴じ処理を可能としている。
【0038】
ステープル処理部46は傾斜した中間トレイ48面上に突出した用紙支持体49を有する。用紙支持体49は無端ベルト50に固定され、無端ベルト50に付随する複数のプーリの回転によって中間トレイ48の面に沿って自由に上下運動することができる。そのため中間トレイ48には用紙支持体49の移動経路に沿う細長い開口が形成されている。用紙支持体49とその運動により、中間トレイ48の傾斜面に置かれた用紙は、その下端部が支持されて、ステープル処理のための位置決めや、ステープル処理後のメイントレイ35などへの搬送などがなされる。
【0039】
用紙分岐搬送部60は、後に詳細に説明するが主として退避ドラム61と、退避ドラム61の近傍に設けられた3つの分岐ガイド62、63、64から構成される。退避ドラム61の主要な機能は、後処理装置33内での用紙搬送において、ステープルユニット45でステープル処理するために複合機10の画像形成部22から搬送されてくる用紙をその周囲に巻き付け、一時的に保持することである。退避ドラム61はその周辺に接する複数のローラと共に回転することによって用紙を巻き付ける。分岐ガイド62、63、64は小角度の範囲内でのみ回動可能であり、この回動によりそれぞれ退避ドラム61に相対的な所定の配置を取ることによって用紙の搬送方向を切り替え、複数種類の用紙搬送路を形成することができる。
【0040】
後処理装置33内には分岐ガイド62〜64の配置切り換えなどにより用紙を搬送するための複数の搬送路が用意されており、図2にそれらを矢印付太点線で示す。搬送路U1は用紙の搬入用搬送路であり、図2において後処理装置33の搬入口から退避ドラム61の右下分岐ガイド62の手前付近に至る。搬送路U1においては画像形成装置(不図示)から排出された印刷済みの用紙は、図2の右側から後処理装置33内部に入り、搬送ガイド38に沿って進行し、上下一対の搬送ローラ40aおよび40b間に引き込まれる。搬送ローラ40a、40bより押し出された用紙は搬送ガイド39に沿って進行し、パンチングユニット42の穿孔部43と穿孔屑貯蔵部44の間を通過できるようになっている。搬送路U1途中には板状の搬送ガイド38、39なども設けられ、用紙搬送路を確保している。
【0041】
搬送路U2は用紙の搬出用搬送路であり、用紙が図2における退避ドラム61の左下の分岐ガイド63近傍から搬送ローラ41を介してメイントレイ35に向けて搬送される。搬送路U2の中間にも搬送ローラ41などが設けられメイントレイ35方向への搬送を確実にしている。搬送路U3は、図2における退避ドラム61の左下分岐ガイド63近傍から退避ドラム61の外周の一部を通りマルチジョブトレイ36へ用紙を搬送する搬送路である。マルチジョブトレイ36は複数設けられているが、それぞれは支持柱34内のレール37に沿ってメイントレイ35と共に一体となって昇降可能に形成されている。これにより複数のうち指定のマルチジョブトレイ36で、搬送路U3を搬送された用紙を受けることが可能となっている。
【0042】
搬送路U4は退避ドラム61の外周面をほぼ一周するように設けられ、用紙は退避ドラム61に巻き取られるとき、この搬送路を通る。搬送路U5は図2における退避ドラム61の右下分岐ガイド62に沿う部分からステープルユニット45の中間トレイ48上に至る搬送路である。搬送路U6は中間トレイ48の面に平行方向の搬送路であり、中間トレイ48上での用紙移動およびメイントレイ35方向への用紙排出時に用いられる。上述した用紙搬送路の一部は上記3つの分岐ガイド62、63および64の切り換え動作により決定される。
【0043】
次に用紙分岐搬送部60の詳細な構造を説明する。図3は用紙分岐搬送部60の詳細構造を示す図である。まず、紙面垂直方向に周面が延びる円筒状の(円筒体)退避ドラム61が、図示しないモータにより主軸65を中心として、図3の矢印で示すような互いに逆向きの2方向に回転できるように配設されている。従ってこの場合、紙面に平行な方向が図2に示す搬送路(特に搬送路U1〜U5)となる。
【0044】
また退避ドラム61の上記周面の幅、すなわち用紙の搬送方向に垂直な幅はこの後処理装置33が取り扱える用紙の最大幅より若干大きく設定されており、搬送可能な全ての種類の用紙を周面に巻き取ることができる。
【0045】
退避ドラム61から見た搬送路U1の、用紙搬送の上流側に、搬送路U1を挟んで下側に板状の下側搬送ガイド73が、また上側に板状の上側搬送ガイド74が設けられ、パンチングユニット42(図2参照)から送り出された用紙を規制して、上下方向に設けられた一対の搬送ローラ70a、70bの間にその用紙を挟み込むように導く。そして搬送ローラ70a、70bの間から押し出された用紙は、上下方向に設けられた一対の別の搬送ローラ71a、71bの間に挟まれ、退避ドラム61直下の分岐ガイド62がある部分よりも搬送路U1の上流側(図3における退避ドラム61の右下部)に設けられた板状の搬送ガイド75の水平部分上に送り出される。このように搬送ガイド73、74、搬送ガイド75の水平部分、搬送ローラ70a、70bおよび搬送ローラ71a、71bは搬送路U1の一部を形成を形成するようになっている。
【0046】
退避ドラム61は、上記のように搬送路U1を搬送されてくる用紙を、その搬送方向と同方向、すなわち図3上では右回りに回転することにより用紙を自身の周面に巻回するようになっており、用紙を巻き取る回転方向を以後巻回方向といい、逆方向を反巻回方向という。
【0047】
分岐ガイド62の、退避ドラム61の巻回方向の下流側にはサブフィードローラ67が設けられ、用紙はサブフィードローラ67と退避ドラム61の周面間に挟み送り出される。さらにサブフィードローラ67の、退避ドラム61の巻回方向の下流側には、用紙の搬送を搬送路U2方向、または搬送路U3やU4が設定された方向へ切り換える分岐ガイド63が設けられている。
【0048】
分岐ガイド63の、退避ドラム61の巻回方向の下流側(図3において退避ドラム61の左上部)には、用紙の搬送方向を搬送路U3または搬送路U4に切り換える分岐ガイド64が設けられ、また分岐ガイド63と分岐ガイド64間には、分岐ガイド64との間で搬送路U3の一部を構成する板状の搬送ガイド79が配設されている。
【0049】
分岐ガイド64の、退避ドラム61の巻回方向のさらに下流側(図3において退避ドラム61の上方から右側にかけての部分)には、弧状の搬送ガイド78および77が、退避ドラム61の周面との間に、用紙が通過できる程度の狭い間隙を形成するように配置されている。また搬送ガイド78および77の巻回方向始端位置近傍には、退避ドラム61との間で用紙を挟みこんで搬送する退避コロ68および66が設けられ、これらにより用紙は退避ドラム61に確実に捕捉、圧着され、安定して巻回される。
【0050】
搬送ガイド75は上に述べた水平部分を搬送経路U1下流側で直角に折り曲げ、さらに搬送経路U5に沿って湾曲し、用紙を一対の搬送ローラ76aおよび76bへ案内できるようになっている。搬送ローラ76a、76bは分岐ガイド62の下方に設置され、用紙をステープルユニット45へ導く。一方、搬送ガイド78は、退避コロ68が設けられた部分から、搬送路U3における用紙搬送方向(図3における退避ドラム61から左上方向)へ延在する部分を有する。この部分は、搬送ガイド79の用紙搬送終端部に隣接し、さらに搬送路U3における用紙搬送方向へ延びる搬送ガイド81とで、用紙を搬送ローラ80aおよび80bに導き、このようにして搬送路U3の一部を形成する。
【0051】
また、退避ドラム61から見て用紙を搬出するための搬送路U2上の下流側であり、且つ中間トレイ48上の搬送路U6の用紙搬送方向側に隣接して板状の搬送ガイド82が設けられており、用紙を排出方向へ導く。
【0052】
分岐ガイド62は図3の側面視において概ね三角形であり、その一辺(図において曲線的凸部を備えた辺:以下底辺という)が退避ドラム61と対向して配置され、当該底辺より、退避ドラム61の周面からその径方向に遠い位置において、主軸65に平行な軸62aに回動自在に支持されている。分岐ガイド62はその回動によって、2種類の配置A1(図3の符号62(A1):実線)、A2(図3の符号62(A2):点線)を取る。
【0053】
退避ドラム61の周面と分岐ガイド62との間に間隙を保った状態(配置A1)で搬送路U2〜U4が形成される。また分岐ガイド62の、搬送路U1側の先端が退避ドラム61の周面に接する状態で(配置A2)、分岐ガイド62の斜辺に沿った搬送路U5が形成される。
【0054】
分岐ガイド63も図3の側面視において概ね三角形であり、その一辺(図において曲線的凹部を備えた辺:以下底辺という)が退避ドラム61と対向して配置され、当該底辺より、退避ドラム61の周面から径方向に遠い位置において、主軸65に平行な軸63aに回動自在に支持されている。分岐ガイド63はその回動によって、3種類の配置B1(図3の符号63(B1):実線)、B2(図3の符号63(B2):点線)、B3(図3の符号63(B3):一点鎖線)をとる。
【0055】
退避ドラム61の、巻回方向下流側の先端が退避ドラム61の周面と接する状態(配置B1)で、後に説明する表裏反転搬送を行うことができる。分岐ガイド63の底辺と退避ドラム61の周面との間に間隙を保った状態(配置B2)で搬送路U3、U4が形成される。さらに分岐ガイド63の、退避ドラム61の巻回方向上流側の先端が退避ドラム61の周面に接する状態(配置B3)で搬送路U2が形成される。
【0056】
分岐ガイド64は図3の側面視において三角形であり、その一辺が退避ドラム61と対向して配置され(当該一辺を以下底辺という)、当該底辺より、退避ドラム61の周面から径方向に遠い位置で主軸65に平行な軸64aに回動自在に支持されている。分岐ガイド64はその回動によって、2種類の配置C1(図3の符号64(C1):実線)、C2(図3の符号64(C2):点線)を取る。
【0057】
分岐ガイド64の底辺と退避ドラム61の周面との間に間隙を保った状態(配置C1)で搬送路U4が形成される。また分岐ガイド64の、退避ドラム61の巻回方向上流側の先端が退避ドラム61の周面に接する状態(配置C2)で、搬送ガイド79との間で搬送路U3が形成される。
【0058】
なお、各分岐ガイドは、退避ドラム61の主軸65に対して直角方向のガイド板を、主軸65方向に複数枚配列し、それらガイド板を前記回動軸(62a、63a、または64a)に連結した構成となっている。一方退避ドラム61の周面には、上記ガイド板に対応して周方向に溝(0.5mm〜1mm程度)が設けられており、用紙搬送路形成のため必要に応じて、前記の溝に分岐ガイドの巻回方向上流側の先端あるいは下流側の先端部が嵌まり込む(上記説明における「退避ドラム61の周面に接する」)ことによって、用紙が退避ドラム61の周面に沿って進行しないようになっている。
【0059】
また分岐ガイド62、63、64の回動は図示しないが、電磁石を用いるソレノイドアクチュエータで行われる。
【0060】
退避ドラム61の周面近傍には、用紙の端部を検出する3個の用紙検出センサ83a、83b、83cが取り付けられている。これらのセンサは例えば発光素子および受光素子からなる反射型のセンサである。まず、センサ83aは、搬送ガイド75の水平部分のステープルユニット45(図2参照)側に設けられている。センサ83aは搬送路U1を搬送されて来た用紙の先端を検出すると共に、用紙を搬送路U5へ搬送する前の用紙一時停止位置を規定する。センサ83bは搬送ガイド77の、退避ドラム61の巻回方向下流側終端部に設けられ、用紙が退避ドラム61に巻きとられた時の用紙端部位置且つ用紙端部の巻回搬送停止位置を規定する。センサ83cは搬送ガイド79の、退避ドラム61の巻回方向上流側終端部に設けられ、用紙が退避ドラム61に巻きとられた時の用紙後端部位置を検出する。
【0061】
なお、センサ83cは用紙の先端部がセンサ83bの位置にあるときにその終端部を検出するので、その位置は用紙サイズに依存する。本実施形態では、1種類の用紙サイズのみを巻回し、その終端部を検出するものとする。複数の用紙サイズ(本実施形態より小サイズの用紙)を検出したいときは、例えばセンサ83bの退避ドラム61巻回方向下流側であり、且つ退避ドラム61の周面に近接した位置に、対応するサイズ用紙の終端部検出用センサを設けることにより、検出可能となる。
【0062】
図4は、本発明の実施形態に係る後処理装置33(図1)における、用紙搬送制御機能から見た概略ブロック図である。後処理装置33は、搬送制御部(搬送制御手段)52を中心として、退避ドラム61、上記の分岐ガイド、62、63、64、センサ83a、83b、83c、および少なくとも、搬送ローラ対(70a、70b)、(71a、71b)、(76a、76b)を含む搬送ローラ部53から構成される。
【0063】
画像形成装置10(図1)にはその内部での用紙搬送を制御する搬送制御部51が設けられ、搬送制御部52から後処理装置33内での用紙搬送情報を取得し、その用紙搬送状態とタイミングを整合させて後処理装置33に用紙を搬送する。また搬送制御部51は搬送制御部52に、後に述べるような複数の搬送モードを行うように指令を送信する。
【0064】
搬送制御部52は自身の内部に前記複数の搬送モードを実行するためのプログラムを有しており、搬送制御部51からの指示に基づき、実行すべきプログラムを選択し、そのプログラムとセンサ83a〜cなどの情報とにより退避ドラム61、分岐ガイド62〜64、および搬送ローラ部53を駆動制御し、用紙に対して所定の搬送をする。
【0065】
本実施形態に係る後処理装置33は、図3のように構成された用紙分岐搬送部60および図4の搬送制御部52を有することによって、用紙の表裏反転搬送を含む種々の用紙搬送モードを実現する。以下用紙分岐搬送部60が行う種々の用紙搬送動作を図4〜図11を参照して説明する。
【0066】
図5は、用紙分岐搬送部60が用紙を搬送経路U1から搬送経路U2を経由して例えばメイントレイ35へ搬送する(図2参照)第1の搬送モードで駆動する場合の、用紙分岐搬送部60の動作を説明する図である。この場合用紙の搬送経路は、図4の矢印付きの太線で示すように直線状であり、複合機10の画像形成部22(図1参照)で印刷された用紙の搬送形態として最も標準的なものである。
【0067】
後処理装置33の搬送制御部52が搬送制御部51から、第1の搬送モード実行の指令を受けると、当該制御部52は用紙分岐搬送部60の制御を開始し、用紙分岐搬送部60は次のように動作する。まず搬送制御部52はソレノイドアクチュエータを作動させ、分岐ガイド62は配置A1、分岐ガイド63は配置B3となる。一方、分岐ガイド64は搬送に寄与しないのでC1、C2いずれの配置になっていてもよく、図4ではC2配置とされる。分岐ガイド62が配置A1となることにより、退避ドラム61の周面と分岐ガイド62を構成する三角形状の底辺との間に用紙が通過できる狭い間隙が形成される。
【0068】
分岐ガイド63が配置B3となることにより、分岐ガイド63を構成する三角形状の、退避ドラム61の巻回方向の(用紙の搬送方向)上流側先端部63bが退避ドラム61の周面に接することによって、分岐ガイド63下部の辺に沿うと共に用紙をメイントレイ35方向へ導く用紙搬送路を形成する。
【0069】
分岐ガイド62、および63を以上の状態にした後、搬送制御部52は退避ドラム61および搬送ローラ70a、70bおよび71a、71bを回転させる。これにより用紙は、搬送ガイド73、74、75に導かれ、また搬送路U1の下流方向(図5の右から左方向)へ引き込まれ、用紙の先端が分岐ガイド62に達する。用紙はさらに退避ドラム61と分岐ガイド62間の搬送路を通過し、退避ドラム61の巻回方向への回転に伴って退避ドラム61とサブフィードローラ67の間から分岐ガイド63の先端に至ることになる。ここで当該分岐ガイド63の先端は、退避ドラム61の周面に接しているので、用紙は分岐ガイド63の下の辺に沿ってメイントレイ35の方向へ進行することになる。
【0070】
図6は、用紙分岐搬送部60が用紙を搬送経路U1から搬送経路U3を経て例えばマルチジョブトレイ36へ搬送する(図2参照)第2の搬送モードで駆動する場合の、用紙分岐搬送部60の動作を示す図である。用紙の搬送経路を図5に矢印付き太線で示す。搬送制御部52が搬送制御部51から第2の搬送モード実行の指令を受けると、当該制御部52は用紙分岐搬送部60の制御を開始し、用紙分岐搬送部60は次のように動作する。まず、搬送制御部52は用紙搬送の前にソレノイドアクチュエータを作動させ、分岐ガイド62を配置A1、分岐ガイド63を配置B2、分岐ガイド64を配置C2とする。
【0071】
分岐ガイド62は配置A1となることにより、第1の搬送モード(図4)と同様の状態で、分岐ガイド62と退避ドラム61の周面間に用紙が通過する用紙搬送路を形成する。分岐ガイド63はB2配置を取ることにより、退避ドラム61の周面と分岐ガイド63を構成する三角形状の底辺との間に間隙を保った状態となり、分岐ガイド63と退避ドラム61の周面間に用紙が通過する狭い間隙からなる用紙搬送路を形成する。
【0072】
一方、分岐ガイド64がC2配置となることにより、分岐ガイド64を構成する三角形の、退避ドラム61の巻回方向上流側先端部64bが退避ドラム61の周面に接することによって、搬送ガイド79との間で搬送路U3が形成される。こうして分岐ガイド64は、図6に示すように退避ドラム61周面と搬送ガイド79との間、および分岐ガイド64と搬送ガイド79との間の狭い間隙からなると共に、用紙をマルチジョブトレイ36方向へ導く搬送路U3の一部を形成する。
【0073】
分岐ガイド62、63、64が上記配置になった後、搬送制御部52は、退避ドラム61、搬送ローラ70a、70bおよび71a、71bを回転させる。これにより用紙は、搬送ガイド73、74、75に沿って搬送路U1の下流方向(図6の右から左方向)へ引き込まれ、用紙の先端が分岐ガイド62に達する。用紙はさらに退避ドラム61と分岐ガイド62間の搬送路を通過し、退避ドラム61の巻回方向回転とサブフィードローラ67により退避ドラム61の周面と分岐ガイド63間へ送り出される。続いて用紙は分岐ガイド64の先端に至ることになるが、分岐ガイド64の先端は退避ドラム61の先端に接しているので、分岐ガイド64の背面と搬送ガイド79の間、および搬送ガイド78の、退避コロ68位置から搬送路U3の下流方向(図6における左方向)へ延長された部分と搬送ガイド81間、搬送ローラ80aと80b間を含む搬送路U3に沿ってマルチジョブトレイ36方向へ搬送される。
【0074】
図7および図8は用紙分岐搬送部60が、ステープル処理されるためにステープルユニット45(図2参照)へ複数の用紙を搬送する第3の搬送モードで駆動する場合の、用紙分岐搬送部60の動作を示す図である。この搬送モードにおいては用紙は、搬送路U1およびU5だけではなく、退避ドラム61の外周面に用紙が巻き付け搬送される搬送路U4も経由してステープルユニット45へ送られる。
【0075】
複数枚からなる用紙束を綴じるための針(ステープル)をその用紙束に打ち込む処理を行うに要する時間は、一般に複合機10の画像形成部22が印刷を行い、後処理装置33へ順次用紙を供給する時の供給間隔より長いため、ステープル処理が用紙の供給に対応できない。退避ドラム61は本来、この課題を解決するために設けられているものであり、画像形成部22から供給されて来た、次にステープル処理すべき用紙を直前のステープル処理が完了するまで一時的に退避させる。
【0076】
以下、この第3の搬送モードに関する用紙分岐搬送部60の動作を説明する。搬送制御部52が搬送制御部51から、第3の搬送モード実行の指令を受けると、当該制御部52は用紙分岐搬送部60の制御を開始し、用紙分岐搬送部60は次のように動作する。まず図7(a)に示すように、搬送制御部52は、分岐ガイド62を配置A1、分岐ガイド63を配置B2となるように制御する。分岐ガイド62は配置A1配置を取ることにより、第2の搬送モード(図6)と同様、分岐ガイド62と退避ドラム61の周面間に用紙が通過する用紙搬送路を形成する。また分岐ガイド63は配置B2を取ることにより分岐ガイド63と退避ドラム61の周面間に用紙が通過する用紙搬送路を形成する。
【0077】
一方分岐ガイド64が配置C1配置を取ると、退避ドラム61の周面と分岐ガイド64を構成する三角形の底辺との間に間隙を保った状態となり、搬送路U4が形成される。なお、この時分岐ガイド64の先端部64bが図7(a)に示すように搬送ガイド79に接していることが望ましい。
【0078】
図7(a)に示すようにこの後、搬送制御部52は退避ドラム61、搬送ローラ70a、70bおよび71a、71bを回転させる。画像形成部22から供給された第1枚目の用紙P1(太実線)が搬送ガイド73、74、75などに導かれて搬送路U1の下流側へ搬送され、退避ドラム61の巻回方向回転とサブフィードローラ67により、用紙P1の先端が退避ドラム61の周面に補足され、退避ドラム61による巻き付けが開始され、搬送路U4に入る。
【0079】
次に図7(b)に示すように、用紙P1は搬送路U4をさらに前進し、退避ドラム61の巻回方向回転により全体が巻き取られる。そして用紙P1の先端がセンサ83bの位置に達すると、センサ83bが用紙P1の先端を検出し、検出信号を搬送制御部52に送信する。この検出信号に基づき、搬送制御部52は退避ドラム61の回転を停止させる。用紙P1の巻き取り後、図7(b)には示さないが第2枚目の用紙P2(図8(a)、(b)に示す)が同様に搬送路U1を経て搬送路U4を搬送され、その先端がセンサ83bに達すると上と同様にセンサ83bが用紙P2の先端を検知し、この検知信号により搬送制御部52が退避ドラム61の回転を停止させる。
【0080】
次に図8(a)に示すように、用紙P1、P2が退避ドラム61に巻き取られた後、搬送制御部52は搬送ローラ70a、70bおよび搬送ローラ71a、71bを回転させて第3番目の用紙P3(太実線)を搬送路U1に搬送し、その先端がセンサ83aにより検知される。この検知信号を受けて搬送制御部52は搬送ローラ70a、70bおよび搬送ローラ71a、71bの回転を停止させ、用紙P3の搬送を停止させる。用紙P3はセンサ83aの位置を先端にして一時停止する。
【0081】
次に図8(b)に示すように、搬送制御部52は、分岐ガイド63および64をそれぞれに位置B2、配置C1を維持させ、分岐ガイド62を配置A1から配置A2に切り換える。このとき、分岐ガイド62を構成する三角形状の、退避ドラム61の巻回方向上流側先端部62bが退避ドラム61の周面に接することによって、退避ドラム61の下方に搬送路U5が形成される。
【0082】
この後、搬送制御部52は退避ドラム61に巻回方向回転を開始させ、一時的に退避していた用紙P1、P2を退避ドラム61から、また同時に搬送ローラ70a、70bおよび71a、71b、さらに搬送ローラ76a、76bも回転開始させ、用紙P3をセンサ83a位置からステープルユニット45へ向けて同時に搬送路U5を搬送させる。このとき用紙P1〜P3は、分岐ガイド62の配置切り換え動作により分岐ガイド62の下側に、当該分岐ガイド62に沿って形成された搬送路を通り、搬送ローラ76a、76b間に支持されると共にそれらローラの回転により下方へ送られる。
【0083】
ここで用紙P1およびP2が図7(b)から図8(a)に示すステップにかけて退避ドラム61に退避していた間、すなわち用紙P1の巻き取り直前から用紙P1〜P3の搬送路U5への搬送開始直前までの間に、先行する用紙束のステープル処理は終了し、中間トレイ48上の搬送路U6を通じて例えばメイントレイ35へ排出される(図7(b)、太実線矢印参照)。このため、用紙P1〜P3を先行用紙束が存在しない中間トレイ48上へ搬送することができる。
【0084】
図9、図10および図11は、本実施形態に係る後処理装置の用紙分岐搬送部60が、画像形成部22から搬送された用紙を、その表裏を反転させてトレイなどへ排出する第4の搬送モードで駆動する場合の、用紙分岐搬送部60の動作を示す図である。この搬送モードでは用紙分岐搬送部60は、退避ドラム61の巻回方向回転による用紙巻き取り動作、反巻回方向回転動作と、分岐ガイド62、63および64の用紙搬送路切り換え動作を利用する。
【0085】
搬送制御部52が搬送制御部51から、第4の搬送モード実行の指令を受けると、当該制御部52は用紙分岐搬送部60の制御を開始し、用紙分岐搬送部60は次のように動作する。まず図9(a)に示すように、搬送制御部52は、分岐ガイド62を配置A1、分岐ガイド63を配置B2、分岐ガイド64を配置C1となるように駆動する。これら配置は第3の搬送モードにおける初期状態(図7(a)参照)と同様である。従って分岐ガイド62はそれ自身と退避ドラム61の周面間に、分岐ガイド63はそれ自身と退避ドラム61の周面間に、分岐ガイド64はそれ自身と退避ドラム61の周面間にそれぞれ用紙が通過できる間隙を形成する。これにより、搬送路U4が準備される。
【0086】
この状態にした後、搬送制御部52は退避ドラム61、搬送ローラ70a、70bおよび71a、71bを回転させ、これにより画像形成部22から用紙P(太実線)が搬送ガイド73、74、75に導かれて搬送路U1の下流方向(図9(a)の右側から左方向)へ搬送される。用紙Pは通常、印刷面を下にして(フェースダウン)画像形成部22から搬送されるので、図9(a)では用紙Pが有する上下2面のうち上面が裏(非印刷面)、下面(印刷面)が表になっているとする。用紙Pの先端部がセンサ83aの位置に達したとき、センサ81aは用紙Pの先端を検知し、その検知信号に基づいて搬送制御部52は退避ドラム61に、用紙Pを搬送路U4へ搬送するための巻回方向回転を開始させる。
【0087】
続いて図9(b)に示すように、用紙Pは退避ドラム61とサブフィードローラ67間に引き込まれ、サブフィードローラ67から退避ドラム61の周面への押圧作用により、退避ドラム61の外周面に補足、圧着される。この状態で用紙Pは図10(a)に示すように退避ドラム61の周面に巻き取られながら、配置B2の分岐ガイド63、配置C1の分岐ガイド64、搬送ガイド78、77等によって形成された搬送路U4に沿って搬送される。
【0088】
そして用紙Pの先端部がセンサ83b位置に達したとき、センサ83bは用紙の先端を検知し、その検知信号に基づいて搬送制御部52は退避ドラム61の回転を停止させる。用紙Pの先端部がセンサ83bの位置にあるとき、用紙Pの後端部がセンサ83cの位置となるようにセンサ83cが設置されているので、センサ83cは図10(a)に示す状態にあるとき、用紙Pの後端部を検知しており、その検知信号は搬送制御部52に送信されている。この時、用紙Pの裏面が退避ドラム61の周面との接触面(下面)となり、表面が周面から外向きとなっている。
【0089】
退避ドラム61の回転停止後、図10(b)に示すように搬送制御部52は分岐ガイド62に任意の配置(図では配置A1)、分岐ガイド64に配置C1を維持させるが、分岐ガイド63に配置B1を取らせ、用紙Pの搬送路を切り換える。このとき、分岐ガイド63を構成する三角形状の、退避ドラム61の巻回方向下流側先端部63cが退避ドラム61の周面に接する。これにより退避ドラム61の周面上からそれを離れ分岐ガイド63の上方を通って搬送ガイド82方向への用紙搬送路が形成される。
【0090】
次に図11に示すように、搬送制御部52は、退避ドラム61に逆回転、すなわち反巻回方向回転を開始させる。それに伴い、用紙Pの後端部が先端部となり、分岐ガイド63の、巻回方向下流側の先端部63cに位置に至ることになるが、先端部63cが退避ドラム61に接しているので、用紙Pの裏面は退避ドラム61の周面から順次離間されることになる。そして用紙Pは搬送路U2を経てメイントレイ35方向へと搬送される。このとき図10から明らかなように用紙の上面が表(印刷面)に入れ替わっており、フェースダウンで後処理装置33に搬入された用紙Pはフェースアップでメイントレイ35などに出力される結果となる。
【0091】
第4の搬送モードについて説明したように、本実施形態に係る後処理装置33に備えられた用紙分岐搬送部60は、画像形成部22で印刷され印刷面(表面)を下方に向けて、すなわちフェースダウンで後処理装置33に搬送された用紙の表裏を反転させる動作を行い、印刷面を上方に向けて、すなわちフェースアップで排出することができる。そして退避ドラム61や分岐ガイド62〜64は本来用紙に対して上述の第1〜第3の搬送モードを実施するために後処理装置33に備えられたものである。
【0092】
本発明に係る実施形態ではこのような退避ドラム61に、第1〜第3の搬送モードに対するものとは逆の、すなわち反巻回方向回転機能を与え、また分岐ガイド63にB1配置を取る機能を新たに加えることによって、用紙分岐搬送部60が用紙の表裏反転排出を行うことを可能としている。従って本実施形態によれば、用紙表裏反転搬送のために新たな機構をほとんど必要とせず、また後処理装置33内の占有スペースの増加もほとんどないので、低コストの用紙表裏反転機構を有する後処理装置が実現できる。
【0093】
上に述べた実施形態では第4の搬送モードにおいて、用紙を1枚ずつ搬送する場合を示した。しかしこれに限らず複数枚(例えば3枚)をまとめて表裏反転搬送することもできる。その場合、第1枚目の用紙に対して図8(a)、(b)、図9(a)、(b)の処理を行い、センサ83aが用紙先端部を検知した時点で退避ドラム61の回転を停止させる。次に2枚目、3枚目・・・の用紙に対しても同一の処理を行い退避ドラム61に所定の複数枚の用紙を巻き付け一時的に保持する。次に図10に示すように退避ドラム61を反巻回方向に回転させて複数の用紙を同時に排出する。
【0094】
また、画像形成部22から後処理装置33に供給される用紙を表裏反転無しにメイントレイ35などに排出する搬送方法として、特に図示しないが第1の搬送モードに代えて以下のような搬送モードが可能である。すなわち、図7(a)、(b)、および図8(a)のように退避ドラム61を巻回方向回転させ、用紙を一旦退避ドラム61に巻き付ける。その後、図5に示すものと同様に分岐ガイド63をB3配置とし、退避ドラム61をさらに巻回方向回転させて用紙を排出する。
【0095】
この搬送モードでは用紙を一度退避ドラム61に巻き付け、一回転させて排出するので、後処理装置33への用紙搬入から排出まで、第1の搬送モードより搬送時間を要する。しかし本実施形態に係る第4の搬送モードと比較すれば同程度の搬送時間を要するので両搬送モードの用紙搬送タイミングの整合性は良好である。従って両搬送モードを組み合わせて用紙の連続搬送処理を行う搬送モードを形成することができる。この搬送モードには、一つの用紙搬送作業の中で一部の用紙を表裏反転搬送にし、他の用紙を表裏反転のない標準搬送として、フェースアップ状態およびフェースダウン状態を混合した連続排出が可能となるという利点が存在する。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、画像形成装置に関係しなくとも、一般に用紙のようなシート状物体に対し表裏反転して搬送することが要求される装置に適用して有用である。
【符号の説明】
【0097】
10 複合機
33 後処理装置
34 支持柱
35 メイントレイ
36 マルチジョブトレイ
37 レール
38、39、73、74、75、77、78、79、81、82 搬送ガイド
40a、40b、41、70a、70b、71a、71b、76a、76b、80a、80b 搬送ローラ
42 パンチングユニット
43 穿孔部
44 穿孔屑貯蔵部
45 ステープルユニット
46 ステープル処理部
47 カバー部
48 中間トレイ
49 用紙支持体
50 無端ベルト
51、52 搬送制御部
53 搬送ローラ部
60 用紙分岐搬送部
61 退避ドラム
62、63、64 分岐ガイド
62a、63a、64a 回動の軸
62b、63b、63c、64b 分岐ガイドの先端部
65 主軸
66、68 退避コロ
67 サブフィードローラ
83a、83b、83c 用紙検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に回転可能に支持され、一方の方向に回転して周面にシート状体を巻回する退避ドラムと、
概ね三角形の底辺を前記ドラムに対向させると共に、当該底辺より前記退避ドラムの径方向に遠い位置を、前記主軸に平行な軸に回動自在にして、前記巻回方向上流側の先端部および前記巻回方向下流側の先端部が、前記退避ドラムの周面に接離可能に支持され、前記両先端部が前記退避ドラムの周面から離れているときは、前記退避ドラムとの間にシート状体が通過できる程度の間隙を形成する構成とした第1の分岐ガイドと、
シート状体の表裏反転の指示を受けたとき、前記第1の分岐ガイドと前記退避ドラムとの間に前記間隙を形成し、前記退避ドラムを巻回方向に回転させ、シート状体を、前記間隙を通過させて前記退避ドラムに巻回し、その後、前記第1の分岐ガイドの前記巻回方向下流側の先端部を前記退避ドラムの周面に接触させて、前記退避ドラムを反巻回方向に回転させて、前記シート状体を前記退避ドラムから引き離し、前記巻回時とは逆の面が表になるように排出する制御手段と
を備えたことを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
さらに
シート状体の処理部と、
概ね三角形の底辺を前記ドラムに対向させると共に、当該底辺より前記退避ドラムの径方向に遠い位置を、前記主軸に平行な軸に回動自在にして、前記巻回方向上流側の先端部が、前記退避ドラムの周面に接離可能に支持され、前記先端部が前記退避ドラムの周面から離れているときは、前記退避ドラムとの間にシート状体が通過できる程度の間隙を形成する構成とした第2の分岐ガイドとを備え、
前記制御手段が、シート状体の表裏反転の指示を受けたとき、前記第1の分岐ガイドと前記退避ドラムとの間、および前記第2の分岐ガイドと前記退避ドラムとの間に前記間隙を形成し、前記退避ドラムを巻回方向に回転させ、シート状体を前記それぞれの間隙を通過させて前記退避ドラムに巻回し、その後、前記第1の分岐ガイドの前記巻回方向下流側の先端部を前記退避ドラムの周面に接触させて、前記退避ドラムを反巻回方向に回転させて、前記シート状体を前記退避ドラムから引き離し、前記巻回時とは逆の面が表になるようにシート状体を排出する
請求項1に記載の後処理装置。
【請求項3】
前記後処理装置は、シート状体に画像を形成する画像形成装置と結合され、前記シート状体は前記画像形成装置から前記後処理装置に搬入されるように構成されている請求項1または2に記載の後処理装置。
【請求項4】
前記シート状体の処理部は、複数のシート状体からなる束をステープルで綴じる処理を行う機能を有する請求項2に記載の後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−75745(P2013−75745A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216691(P2011−216691)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】