説明

後精製のために安定化された組成物、およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製および製造するための方法

本発明は、ヒドロキノンモノメチルエーテルおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを含む、少なくとも1つのヒドロアルキル(メタ)アクリレートを有する、後精製のために安定化された組成物に関する。更に、本発明には、ヒドロアルキル(メタ)アクリレートを精製および製造するための方法が記載されている。本発明のもう1つの視点は、記載された方法によって得ることができる組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後精製のために安定化された組成物に関する。更に、本発明には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製および製造するための方法が記載されている。
【0002】
モノマー、例えばスチレンまたは(メタ)アクリレートは、貯蔵の際に望ましくない早期の重合を生じる傾向がある。従って、同じ傾向を阻止するために、前記モノマーに通常は重合抑制剤が添加される。(メタ)アクリレートを安定化するための1つの方法は、例えば欧州特許出願公開第0620206号明細書の対象である。この刊行物の記載によれば、殊に(メタ)アクリレートは、少なくとも1つのN−オキシル化合物、少なくとも1つのフェノール化合物および少なくとも1つのフェノチアジン化合物を含む重合抑制剤を混合することによって安定化されうる。
【0003】
先に示された重合傾向のために、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造の際に得られる反応混合物には、後精製のために重合抑制剤が添加され、その際、重合抑制剤は、製造中に添加されてもよい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製するための好ましい方法は、なかんずく欧州特許出願公開第1090904号明細書中に記載されている。それに応じて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む反応混合物は、特に効果的に、薄膜蒸発器と組み合わされる蒸留によって後精製されてよい。欧州特許出願公開第1090904号明細書中に示された方法は、高い収量で比較的純粋な生成物を生じる。しかし、この刊行物中に示された重合抑制剤が使用される場合には、不十分な安定化のために、しばしば望ましくないポリマー形成が起こり、このポリマー形成は、大量の重合抑制剤を使用した際に回避させることができる。しかし、この大量の重合抑制剤は、不経済であり、その際、生成後に得られる組成物の変色が起こりうる。即ち、例えば欧州特許出願公開第0620206号明細書中に記載された抑制剤組成物を使用する場合には、重合は確実に回避されうる。しかし、得られた組成物を貯蔵する場合には、生成物の望ましくない変色が起こり、この変色は、短時間後にさらなる後精製を必要とする。
【0004】
ところで、公知技術水準に鑑み、効率的な後精製後にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物が得られ、この場合この組成物は、明らかな変色を起こすことなしに、特に簡単に貯蔵することができる、少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを有する、後精製のために安定化された組成物を提供するという本発明の課題が課された。
【0005】
更に、本発明の課題は、簡単に確実に実施することができる、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造および後精製するための方法を提供することであった。この場合には、生成物が可能な限り高い収量で、かつ全体的に見て僅かなエネルギー消費下で得られることが望ましい。
【0006】
本発明のもう1つの課題は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを極めて選択的に得ることができる方法を提供することであった。更に、本方法は、できるだけ一定の製品品質を提供するはずである。
【0007】
更に、長い貯蔵後に本質的に変色を示さない、安定化されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物が提供されるはずである。
【0008】
前記の課題ならびに更に明示的には挙げられていないが、本明細書中の冒頭で論じられた関連事項から容易に導き出すことができるか又は推論することができる課題は、請求項1の特徴の全てを有する組成物により解決される。本発明による組成物の好ましい変法は、請求項1の従属請求項において保護される。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび安定化されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物を後精製または製造するための方法に関連して、請求項10、16および18は、本発明の基礎となる課題の解決を提供する。
【0009】
それに応じて、本発明の対象は、少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを有する、後精製のために安定化された組成物であり、この組成物は、当該組成物がヒドロキノンモノメチルエーテルおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを含むことによって特徴付けられる。
【0010】
それによって、予想することができない方法で、効率的な後精製後にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物が得られ、この場合この組成物は、明らかな変色を起こすことなしに、特に簡単に貯蔵することができる、少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを有する、後精製のために安定化された組成物を提供することに成功する。
【0011】
更に、本発明によるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを精製および製造するための方法は、簡単に確実に実施されることができ、この場合生成物は、高い収量で、かつ全体的に見て僅かなエネルギー消費下で得られる。
【0012】
本発明による方法を用いた場合には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、極めて選択的に得ることができる。更に、本方法は、極めて一定の製品品質を提供する。
【0013】
更に、本発明による方法により得られる、安定化されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物は、長い貯蔵後に本質的に変色を示さない。
【0014】
本発明によれば、少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを有する、後精製のために安定化された組成物が提供され、この場合「後精製のために安定化された組成物」の表現は、当該組成物が過度の重合を生じることなしに、後精製に掛けられうることを意味する。
【0015】
本発明の特殊な視点によれば、後精製のために安定化された組成物は、100℃で5時間の貯蔵後に最大30、特に有利に最大20の色価の変化を示す。色価は、殊にドイツ連邦共和国特許出願公開第10131479号明細書中に示された方法(白金コバルトスケールによる色の測定;APHAまたは混濁数とも呼称される)により、測定することができ、この場合には、DE 10131479.5の出願番号で2001年6月29日にドイツ特許庁に提出された、刊行物DE−A−10131479中に示された、白金コバルト色価を測定するための方法が開示目的のために本明細書中に取り込まれている。この方法は、DIN EN ISO 6271に準拠して開発された。
【0016】
本発明による組成物は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの表現は、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびこれらの混合物を含む。更に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、アルコール基が少なくとも1個のヒドロキシ基を有する、(メタ)アクリル酸の当業者に公知のエステルである。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートには、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、殊に2−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび3−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび/またはヒドロキシプロピルアクリレート、殊に2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび3−ヒドロキシプロピルアクリレートが属する。
【0017】
後精製のために安定化された、本発明による組成物中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合は、特に少なくとも75質量%、特に有利に少なくとも95質量%である。この割合は、殊にガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0018】
更に、本発明による組成物は、ヒドロキノンモノメチルエーテル(CAS−No.150−76−5)および4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(CAS−No.2226−96−2)を含む。
【0019】
ヒドロキノンモノメチルエーテルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルとの質量比は、それ自体重要ではない。驚異的な利点は、殊に、この質量比が40:1〜1:10の範囲内、特に20:1〜1:2の範囲内、殊に有利に10:1〜3:1の範囲内にあることによって達成されうる。
【0020】
安定化のためには、既に比較的微少量のヒドロキノンモノメチルエーテルで十分であり、この場合後精製のために安定化された組成物中のヒドロキノンモノメチルエーテルの割合は、特に25〜1000ppm、特に有利に35〜500ppmである。1つの特殊な視点によれば、殊に長時間に亘って貯蔵することができる、高度に安定化された組成物を得ることができる。この組成物は、特に25ppm〜1000ppm、殊に50〜500ppm、特に有利に100〜400ppm、殊に有利に150〜350ppmの範囲内のヒドロキノンモノメチルエーテルの割合を示す。更に、特に有利には、僅かに安定化された組成物を得ることができ、この組成物は、特に35ppm〜100ppm、特に有利に40〜80ppmの範囲内のヒドロキノンモノメチルエーテルの割合を有する。
【0021】
ヒドロキノンモノメチルエーテルと共に、前記組成物の安定化のために、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが使用される。本発明の特殊な変法によれば、後精製のために安定化された組成物中の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの割合は、20〜200ppm、特に有利に30〜100ppm、殊に有利に40〜60ppmである。
【0022】
驚異的な改善は、殊にN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−p−トリル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、ニグロシン塩基BAおよび/または1,4−ベンゾキノンのできるだけ僅かな割合を有する組成物によって達成されうる。それによって、意外なことに、貯蔵に帰因する、精製されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物の変色は、回避させることができる。特殊な改善は、殊に、最大で10ppm、特に有利に最大で1ppm、殊に有利に測定不可能な割合のN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−p−トリル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、ニグロシン塩基BAおよび/または1,4−ベンゾキノンを有する組成物を示す。
【0023】
後精製のために安定化された本発明による組成物は、他の重合抑制剤を含むことができる。このために適した重合抑制剤には、例えばトコフェロール、特にα−トコフェロール、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、アンモニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(クペロンCupferron)および/またはヒドロキノンが属する。特殊な改善は、殊に、10ppm〜80ppmの範囲内、特に有利に20ppm〜40ppmの範囲内の前記重合抑制剤の割合によって達成されうる。特に10:1〜1:10の範囲内、特に有利に2:1〜1:4の範囲内のトコフェロールと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルとの質量比を示す組成物は、殊に重要である。特に、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルとの質量比は、10:1〜1:10の範囲内、特に有利に2:1〜1:4の範囲内にある。本発明のもう1つの視点によれば、アンモニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(クペロンCupferron)と4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルとの質量比は、10:1〜1:10の範囲内、特に有利に2:1〜1:4の範囲内にあることができる。ヒドロキノンと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが特に10:1〜1:10の範囲内、特に有利に2:1〜1:4の範囲内にある好ましい組成物は、重要である。
【0024】
本発明による組成物は、殊に同様に本発明の対象である、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製するための方法に使用されることができる。
【0025】
前記組成物中に含有される重合抑制剤の抑制効果を改善するために、付加的に酸素が使用されてよい。この場合、この酸素は、例えば空気の形で使用されてよく、この場合この量は、好ましくは、反応混合物上のガス相中の含量が爆発限界を下廻ったままであるように計量供給される。この場合、好ましくは、空気量は、後精製のために安定化された組成物1kg当たり毎時標準状態で0.1〜10リットル、特に有利に標準状態で1〜5リットル、殊に有利に標準状態で2〜4リットルの範囲内である。同様に、不活性ガス−酸素混合物、例えば窒素−酸素混合物またはアルゴン−酸素混合物が使用されてよい。
【0026】
1つの特殊な実施態様によれば、後精製のために安定化された組成物は、例えば蒸留によって行なうことができる後精製の前に酸素で処理されてよい。このために、殊に空気は、後精製すべき組成物に導通することができる。この実施態様によって、ガス状または易揮発性の成分は、前記組成物から分離されることができ、その後に前記成分は、もう1つの後精製、特に蒸留に掛けられる。
【0027】
後精製のために、特に蒸留部を含む装置が使用される。この場合、驚異的な利点は、殊に僅かな分離性能を有する塔によって達成されうる。前記の実施態様によって、殊に前記装置の収量およびエネルギー効率を改善することができる。それに応じて、使用される塔は、最大4個、特に有利に最大3個の分離段を有する。1つの特殊な視点によれば、特に少なくとも2個の分離段を有する塔が使用される。
【0028】
本発明において、トレイ塔の場合のトレイの数または規則充填塔または不規則充填物を有する塔における理論的分離段の数は、分離段の数と呼称される。
【0029】
本発明の1つの特殊な実施態様によれば、例えば分離段に相当する、分離技術的に作用する取付け物を有する塔を使用することができる。
【0030】
本発明の後精製のために安定化された組成物は、前記の取付け物の上方または下方に供給することができ、この場合には、同じ取付け物の種類に応じて、本発明による組成物は、取付け物の範囲内に導入されてもよい。特殊な利点は、なかんずく本発明の組成物が取付け物の上方の塔中に供給されることによって達成されうる。「取付け物の上方」の概念は、導入された組成物の高沸点成分が取付け物に導通され、その後にこの高沸点成分が塔から取り出されることを意味する。それによって、殊に後精製された組成物の収量および純度に関連して利点を達成することができる。更に、本方法は、特に効率的に実施されることができる。
【0031】
本発明の塔は、塔の返送流を用いて、または塔の返送流なしに運転することができ、この場合特に高い純度は、意外なことに、塔の返送流なしの実施態様によって達成させることができる。この利点は、特に本発明の組成物が場合によっては存在する取付け物の上方で塔中に供給されることによって達成することができる。
【0032】
本発明の特殊な視点によれば、塔は、特に最大2Pa0.5のガス負荷ファクターの際に運転される。好ましくは、第2の蒸発器が運転されるガス負荷ファクターは、有利に0.8〜1.8Pa0.5の範囲内にある。ガス負荷ファクター(Fファクター)は、ガスを導出するための管の空の断面積に関連するガス速度にガス密度の平方根を掛けることから算出される。
【0033】
特に、蒸留は、40〜130℃の範囲内、特に有利に60〜110℃の範囲内、殊に有利に80〜95℃の範囲内の温度で実施され、この場合この記載は、塔底温度に関連するものである。蒸留を行なう圧力は、特に0.1〜20ミリバール(絶対圧)の範囲内、特に有利に0.5〜10ミリバール(絶対圧)の範囲内、殊に有利に1〜5ミリバール(絶対圧)の範囲内にあることができ、この場合この記載は、塔頂圧力に関連するものである。
【0034】
収量を上昇させるために、蒸留部の塔底から取得される組成物の一部分は、少なくとも1つの蒸発器、例えば薄膜蒸発器または循環蒸発器で気相に変換され、および蒸留部に供給されることができる。それに応じて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製するための方法を実施する、好ましい装置は、薄膜蒸発器および/または循環蒸発器を有する。
【0035】
後精製するための特に好ましい装置は、殊に00121755.3の出願番号で2000年10月05日に欧州特許庁に提出された、刊行物EP−A−1090904中に記載されており、この場合には、この刊行物には、開示目的に関して指摘されており、その中で開示された、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製するための装置は、本明細書中に取り込まれている。
【0036】
更に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製するための特に好ましい装置は、図1につき詳説される。
【0037】
図1は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの後精製に適した装置の略図であり、それによって限定されることはない。図1に図示された装置には、供給管1を介してヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む組成物が供給されうる。本発明の実施態様において、供給管1は、後精製すべき組成物が酸素で処理される容器2に案内される。このために、供給管3を介して空気は、容器2中に導入されることができ、この空気は、導出管4を介して容器2から導出される。酸素で処理された組成物は、容器2から導管5を介して、特に分離技術的に例えば分離段に相当する、本発明により取付け物を備えている蒸留塔6中に移行される。前記組成物は、特に取付け物の上方で供給され、例えばこれは、図に略示されている。
【0038】
塔頂生成物は、蒸留塔6の導管7を介して装置から取り出され、この導管には、冷却器8が設けられている。
【0039】
収量を上昇させるために、蒸留塔6の塔底物は、導管9を介して薄膜蒸発器10中に導入され、この場合薄膜蒸発器10中で得られたガス状生成物は、導管11を介して蒸留塔6に供給される。供給された組成物の薄膜蒸発器10中で蒸発されなかった含量は、導管12を介して、特に分離技術的に例えば分離段に相当する、本発明により同様に取付け物を備えている第2の蒸留塔13に供給される。前記組成物は、特に取付け物の上方で供給され、例えばこれは、図に略示されている。
【0040】
第2の蒸留部13から取得される塔頂生成物は、冷却器15が設けられている導管14を介して薄膜蒸発器10中に導入される。第2の蒸留部13の塔底物は、導管16を介して第2の薄膜蒸発器17に供給される。得られたガス状生成物は、導管18を介して第2の蒸留塔13中に導入される。得られた副生成物は、導管19を介して装置から取り出される。
【0041】
後精製のために安定化された組成物は、特にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造に使用される反応によって得ることができる。本発明による後精製を含むこの種の方法は、同様に本発明の対象である。好ましくは、前記の組成物は、(メタ)アクリル酸を少なくとも1つのエポキシドと触媒の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0042】
(メタ)アクリル酸の概念は、本発明の範囲内で殊にメタクリル酸、アクリル酸ならびにこれらの混合物を含む。(メタ)アクリル酸と共に、エポキシドは、第2の反応体として使用される。殊に、酸化エチレンおよび酸化プロピレンは、好ましいエポキシドに属する。
【0043】
(メタ)アクリル酸とエポキシドとのモル比は、例えば2:1〜1:2の範囲内、特に有利に0.9:1〜1:1.1の範囲内にあることができる。
【0044】
反応のために、特に触媒が使用される。好ましい触媒は、殊にEP02002363.6の出願番号で2002年1月31日に欧州特許庁に提出された、刊行物EP−A−1231204中に記載されており、この場合この刊行物の開示、殊にその中に記載された触媒およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造法は、開示目的のために本明細書中に取り込まれている。
【0045】
(メタ)アクリル酸に対する変換率は、特に少なくとも95モル%、特に有利に少なくとも99モル%、殊に有利に少なくとも99.5モル%である。変換率は、殊に反応時間および反応温度により調節することができる。
【0046】
反応は、特に50〜100℃の範囲内、特に有利に60〜80℃の範囲内の温度で行なわれる。この場合、製造は、連続的または回分的に行なうことができる。非連続的方法の反応時間は、特に2〜10時間、特に有利に4〜8時間の範囲内にある。連続的方法の場合の滞留時間は、有利に1分間ないし60分間の範囲内、特に有利に2分間ないし30分間の範囲内あることができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造に使用される圧力は、特に0.5〜25バールの範囲内、特に有利に1〜3バールの範囲内にある。
【0047】
(メタ)アクリル酸とエポキシドとの反応は、連続的ならびに回分的に行なうことができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するための方法は、物質中で、即ち他の溶剤の使用なしに実施されてよい。望ましい場合には、不活性溶剤が使用されてもよい。
【0048】
前記の量および質量比の重合抑制剤、殊にヒドロキノンモノメチルエーテルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルとは、既に(メタ)アクリル酸とエポキシドとの反応前または反応中に添加されてよい。しかし、反応中の重合抑制剤の分解のために、むしろ高い量が添加されてよく、この場合(メタ)アクリル酸とエポキシドとの反応のために反応混合物に添加されるヒドロキノンモノメチルエーテルの割合は、特に25〜1000ppmの範囲内、特に有利に100〜500ppmの範囲内にある。相応して、この反応の場合には、僅かに多い量の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが添加されてもよく、この場合(メタ)アクリル酸およびエポキシドからなるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するための反応混合物に添加される4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの割合は、有利に20〜200ppmの範囲内、特に有利に30〜80ppmの範囲内にあることができる。
【0049】
好ましくは、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−p−トリル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、ニグロシン塩基 BAおよび/または1,4−ベンゾキノンを最大10ppm、特に有利に最大5ppm、殊に有利に最大1ppm有する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するための反応混合物を含む。それによって、意外なことに、貯蔵に帰因する、精製されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物の変色は、回避させることができる。
【0050】
本発明のもう1つの変法によれば、後精製のために安定化された組成物中に含有された重合抑制剤は、反応後にではあるが、後精製前に添加されることができる。
【0051】
本方法により得られるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物は、これまでに公知ではなかった性質を示し、したがって、この組成物は、同様に本発明の対象である。
【0052】
この性質には、殊に物質特性の変化なしに達成することができる、長い貯蔵能が属する。例えば、前記組成物の色価は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10131479号明細書中に示された方法により測定した、30℃で少なくとも180日の貯蔵後に最大20、特に有利に最大10である。
【0053】
前記方法により得られる、本発明による組成物中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合は、特に少なくとも97質量%、特に有利に少なくとも98質量%である。この割合は、殊にガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0054】
特に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物は、前記の後精製後にヒドロキノンモノメチルエーテル20〜80ppm、特に有利に30〜50ppmおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.1〜2ppm、特に有利に1〜2ppmを含む。
【0055】
本発明により得られるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物中のヒドロキノンモノメチルエーテルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルとの質量比は、特に100:1〜10:1の範囲内、特に有利に40:1〜20:1の範囲内にある。
【0056】
1つの特殊な実施態様によれば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物は、前記の後精製後にトコフェロール、特にα−トコフェロール1〜50ppm、特に有利に5〜25ppmを含むことができる。
【0057】
本発明の範囲内で使用可能なトコフェロール化合物は、2位で4,8,12−トリメチルトリデシル基で置換されたクロマン−6−オール(3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−6−オール)である。本発明により特に使用可能なトコフェロールには、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ζ−トコフェロールおよびη−トコフェロール、それぞれ(2R、4’R、8’R)の形の前記化合物の全て、ならびに(all−rac)の形のα−トコフェロールが属する。好ましいのは、(2R、4’R、8’R)の形のα−トコフェロール(通称:RRR−α−トコフェロール)ならびに合成ラセミ形のα−トコフェロール(all−rac−α−トコフェロール)である。他方、この中で最後に挙げた合成ラセミ形のα−トコフェロール(all−rac−α−トコフェロール)は、比較的低価格のために特に重要である。
【0058】
本発明による後精製によって得られるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物は、好ましくはN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−p−トリル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、ニグロシン塩基BAおよび/または1,4−ベンゾキノンを全く含まない。
【0059】
本発明により得られたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物は、好ましくはポリマーの製造のために使用されてよい。この場合、この組成物は、同じ安定化の際、殊に同じ割合のヒドロキノンモノメチルエーテルの際に、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10131479号明細書中に示された方法によって測定することができる色価の改善を、特に180℃以下、有利に160℃以下、殊に有利に140℃以下の温度で行なうことができる通常の重合後に示す。公知技術水準の組成物を用いても達成される色価の誤差を許容することができる場合には、本発明により得られる組成物は、このために、よりいっそう僅かな安定化、殊によりいっそう僅かな割合のヒドロキノンモノメチルエーテルを必要とする。よりいっそう僅かな安定化によって、さらなる利点を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの後精製に適した装置を示す略図。
【0061】
次に、本発明は、実施例および比較例につき詳説されるが、これによって限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
実施例1
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含む組成物を、本発明により製造し、この場合製造および後精製のために、ヒドロキノンモノメチルエーテル20ppmおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル50ppmを含む安定剤混合物を使用した。後精製は、2個の蒸留塔および2個の薄膜蒸発器を含む、図1中に詳説された装置中で行なった。
【0063】
後精製後、ヒドロキノンモノメチルエーテル約50ppmおよびヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル約1ppmを含有する組成物を得た。得られた組成物の色価は、5未満であった。
【0064】
この組成物の貯蔵能を色価の測定により測定し、この場合には、異なる試験が実施された。色価をドイツ連邦共和国特許出願公開第10131479号明細書中に示された方法によって測定した。即ち、貯蔵能を30℃で6ヶ月に亘って測定した。このために、組成物25gを30mlの瓶中に充填した(褐色、広口)。貯蔵は、空気循環乾燥キャビネット中で30℃で行なった。6ヶ月後、色価を測定した。
【0065】
更に、短時間に試験において、色価を100℃で5時間に亘る貯蔵後に測定した。
【0066】
使用試験として、標準クリヤラッカー(溶剤をベースとする)の色価を測定した。この標準クリヤラッカーを、モノマー混合物を重合することによって4〜6時間で140℃を上廻る温度で窒素雰囲気下で製造した。この配合物の固体含量は、約62%であり、コポリマー中のHEMAの含量は、約30%であった。
【0067】
得られたデータは第1表に示されている。
【0068】
実施例2
実施例1を実際に繰り返したが、しかし、この場合には、後精製後に得られた組成物中のヒドロキノンモノメチルエーテルの割合を50ppmから200ppmへ上昇させた。得られた組成物の色価は、5未満であった。
【0069】
前記の試験を実施し、この場合得られたデータは、第1表に示されている。
【0070】
実施例3
実施例1を実際に繰り返したが、しかし、この場合には、後精製後に得られた組成物に付加的にトコフェロール20ppmを添加した。得られた組成物の色価は、5未満であった。
【0071】
前記の試験の一部分を実施し、この場合得られたデータは、第1表に示されている。
【0072】
【表1】

【符号の説明】
【0073】
1、3 供給管、 2 容器、 4 導出管、 5、7、9、11、12、14、16、18、19 導管、 6 蒸留塔、 8、15 冷却器、 10 薄膜蒸発器、 13 第2の蒸留塔、 17 第2の薄膜蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを有する、後精製のために安定化された組成物において、この組成物がヒドロキノンモノメチルエーテルおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを含むことを特徴とする、少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを有する、後精製のために安定化された組成物。
【請求項2】
前記組成物が2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび/またはヒドロキシプロピルアクリレートを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ヒドロキノンモノメチルエーテルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルとの質量比が20:1〜1:1の範囲内、特に10:1〜3:1の範囲内にある、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中のヒドロキノンモノメチルエーテルの割合が25〜1000ppmである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの割合が20〜200ppmである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物がN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−p−トリル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、ニグロシン塩基BAおよび/または1,4−ベンゾキノンを最大10ppm含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物がトコフェロール、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、アンモニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(クペロンCupferron)および/またはヒドロキノンを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中のトコフェロール、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、アンモニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(クペロンCupferron)および/またはヒドロキノンの割合が10〜80ppmの範囲内にある、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
トコフェロール、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、アンモニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(クペロンCupferron)および/またはヒドロキノンと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルとの質量比が10:1〜1:10の範囲内、特に2:1〜1:4の範囲内にある、請求項7または8記載の組成物。
【請求項10】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製するための方法において、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物を後精製することを特徴とする、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを後精製するための方法。
【請求項11】
前記組成物を、蒸留部を含む装置中で後精製する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
蒸留部の塔が最大4個の分離段を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
後精製のために、蒸留を60〜110℃の範囲内の温度で実施する、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
蒸留部の塔が取付け物を有し、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物が取付け物の上方で蒸留部の塔中に供給される、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物を、薄膜蒸発器および/または循環蒸発器を含む装置中で後精製する、請求項10から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
(メタ)アクリル酸を少なくとも1つのエポキシドと触媒の存在下で反応させることによってヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するための方法において、得られた反応混合物の後精製のために、請求項10から15までのいずれか1項に記載の方法を実施することを特徴とする、(メタ)アクリル酸を少なくとも1つのエポキシドと触媒の存在下で反応させることによってヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するための方法。
【請求項17】
反応混合物は、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−p−トリル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、ニグロシン塩基BAおよび/または1,4−ベンゾキノン最大で10ppmを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
安定化されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物において、前記組成物が請求項10から15までのいずれか1項に記載の方法によって得ることができることを特徴とする、安定化されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート組成物。
【請求項19】
前記組成物がヒドロキノンモノメチルエーテル30〜50ppmおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.1〜2ppmを含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物の色価が30℃で少なくとも180日の貯蔵後に最大20である、請求項18または19記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物がトコフェロールを含む、請求項17から20までのいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−520337(P2012−520337A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500171(P2012−500171)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052362
【国際公開番号】WO2010/105894
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】