説明

徐放性の液剤送達装置

薬物送達装置は、主としてエラストマー材料から形成される第1の部分と、膨張可能な薬物容器を完成させるために第1の部分の開口部と協働する閉鎖部分とを含む。閉鎖部分は開口部から内側に第1の部分に伸張して、第1の部分と閉鎖部分の間の重なりの少なくとも1つの領域を定義する。第1の部分と閉鎖部分は、薬物容器から薬物を放出するための出口流路を定義し、出口流路の少なくとも一部は、重なり領域中の第1の部分と閉鎖部分の間を通過する。重なり領域は、薬物容器内の圧力の影響を受けるように配置され、それによって、出口流路のフローインピーダンスを変えることで、少なくとも部分的に圧力補償された流量調節機構を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は徐放性の液剤送達装置に関する。
【0002】
装置は一定期間にわたって薬物をゆっくりと送達する埋め込み式の装置を提供することが知られている。この手法は、患者のコンプライアンスの問題を回避するとともに、特定の標的位置への薬物の送達によって全身送達に必要な全投与量よりも少ない量での使用を可能にし、望ましくない副作用を回避することができるという特別な利点を提供する。
【背景技術】
【0003】
埋め込み式の薬物送達装置のほとんどの場合、第1の外科手術は装置を埋め込むように要求され、次に、別の外科手術が装置を取り除くように要求される。液剤の送達のための埋め込み式の装置の例は、限定されないが、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、および、特許文献7を含んでいる。
【0004】
特に、特許文献5は、構成要素間の確実かつ漏れ防止の溶接継ぎ手を達成しようとする際に遭遇する特定の課題を浮き彫りにしている。
【0005】
第2の外科手術で装置を取り除く必要を回避するために、再吸収可能な装置が提案されてきた。そのような装置は、薬物が再吸収可能な材料のマトリックス中に分散し、マトリックスが体内で分解するにつれて徐々に放たれる構造に限定されるのが一般的である。この手法の例は、Sidmanに対する特許文献8と特許文献9で見られる。この手法は潜在的な長所を有するが、高度に均一な薬物放出速度を達成しておらず、液体の形状で送達されなければならない薬物、または、マトリックス材料にわたって分散率が高くなければならない薬物には適していない。
【0006】
したがって、使用後に装置を外科的に除去する必要がなく、比較的一定の割合で長期間にわたって液剤を送達する、埋め込み式の薬物送達装置が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許番号第5163920号
【特許文献2】米国特許番号第4428397号
【特許文献3】米国特許番号第4820273号
【特許文献4】米国特許番号第5061242号
【特許文献5】米国特許番号第5993414号
【特許文献6】米国特許番号第6183461号
【特許文献7】米国特許番号第5836935号
【特許文献8】米国特許第4,351,337号
【特許文献9】米国特許第4,450,150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、埋め込み式の使用または外用のための徐放性の薬物送達装置である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態の教示によると、少なくとも部分的に圧力補償された流量調節機構と一体化した薬物容器を提供する薬物送達装置が提供され、薬物送達装置は、(a)主としてエラストマー材料から形成される第1の部分であって、膨張可能な薬物容器を少なくとも部分的に定義するとともに開口部を有する第1の部分と、(b)膨張可能な薬物容器を完成させるために第1の部分の開口部と協働する閉鎖部分とを含み、閉鎖部分は、第1の部分と閉鎖部分の間の重なりの少なくとも1つの領域を定義するために、開口部から内側に第1の部分に伸張し、第1の部分と閉鎖部分は、薬物容器から薬物を放出するための出口流路を定義し、出口流路の少なくとも一部は、重なり領域中の第1の部分と閉鎖部分の間を通過し、重なり領域は、薬物容器内の圧力の影響を受けるように配置されることで、容器内の圧力が変わると出口流路のフローインピーダンスを変え、それによって、少なくとも部分的に圧力補償された流量調節機構を提供する。
【0010】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1の部分と閉鎖部分の1つには、重なり領域を通過する流路の少なくとも一部を定義するために展開される細長いチャネルが提供される。
【0011】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1の部分は、開口部から内側に伸張する可撓性を有するスリーブを含んでおり、閉鎖部分は、重なり領域を提供するように可撓性を有するスリーブの内部に挿入される挿入物として与えられる(implemented)。
【0012】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、挿入物は、挿入物のまわりの膨張可能な薬物容器のプリテンション処理(pre−tensioning)を提供するような大きさである。
【0013】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、挿入物は主として多孔性材料から形成される。本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、挿入物と可撓性を有するスリーブは、可撓性を有するスリーブと挿入物との間の接触の程度が膨張可能な薬物容器内の圧力に応じて変わるように、形成される。
【0014】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、挿入物は、細長い周辺チャネルで構成される。
【0015】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、挿入物は、主として生体再吸収可能(bioresorbable)材料から形成される。
【0016】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、少なくとも第1の部分はシリコンから形成される。
【0017】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1の部分と閉鎖部分の少なくとも1つは、生体再吸収可能な材料から形成される。
【0018】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1の部分と閉鎖部分は、2つの別個の構成要素として形成される。
【0019】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1の部分と閉鎖部分は一体的に形成され、薬物送達装置は、重なり領域を生じさせるように少なくとも1つのスリーブ状の部分を逆にすることによって組み立てられる。
【0020】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、重なり領域は膨張可能な薬物容器の外壁の一部を形成する。
【0021】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、膨張可能な薬物容器内に展開される中心コアも提供され、該中心コアは、中心コアのまわりの膨張可能な薬物容器のプリテンション処理を提供するような大きさである。
【0022】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、中心コアは、第1の部分と閉鎖部分の少なくとも1つと一体的に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、ほんの一例として、添付の図面を参照して記載される。
【図1A】本発明の実施形態によると、埋め込み式の薬物送達装置からの空気袋型(bladder−type)の容器を通して得られた概略的な断面図である。
【図1B】本発明の実施形態によると、図1Aの空気袋型の容器と、本発明の実施形態による埋め込み式の薬物送達装置で使用するための挿入物とを通して得られた概略的な断面図である。
【図1C】組み立て後の図1Bの空気袋型の容器および挿入物を通して得られた概略的な断面図であり、本発明の実施形態による埋め込み式の薬物送達装置の一部として使用するための出口散布器(output diffuser)を示している。
【図1D】液剤で満たされた後の図1Cの構成要素から組み立てられた埋め込み式の薬物送達装置を示す。
【図2】本発明の実施形態による流量調節/補償機構を例証する図1Dの拡大した領域である。
【図3】患者の皮膚下で横にした状態のままで、容器の経皮的な再充填を可能にする図1Dの実施の変更形態を示す。
【図4】容器が離れた中隔(septum)で終わる充填チューブと一体的に形成される図1の実施のさらなる変更形態を例証しており、患者の体内の近づきにくい位置で展開した薬物送達装置の容器の経皮的な再充填を可能にする。
【図5】流量補償機構の一部として多孔性の挿入物を使用する、本発明の代替的な実施形態による埋め込み式の薬物送達装置を例証する。
【図6】図5に似ているが、多孔性の挿入物の異なる形態を使用している実施形態を例証する。
【図7】外部の薬物送達装置として使用するための本発明の修正された実施形態を例証する。
【図8A】本発明の実施形態による薬物送達装置を形成するための組み立ての準備ができている2つの構成要素を通して得られた概略的な断面図である。
【図8B】図8Aの線X−Xに沿って得られた断面図である。
【図8C】図8Aの構成要素から組み立てられた本発明の実施形態による薬物送達装置を通して得られた概略的な断面図であり、それぞれ空の状態と充填された状態の装置を示している。
【図8D】図8Aの構成要素から組み立てられた本発明の実施形態による薬物送達装置を通して得られた概略的な断面図であり、それぞれ空の状態と充填された状態の装置を示している。
【図8E】Yで示された図8Dの領域の拡大図である。
【図9A】組み立て前に本発明の実施形態による一体成形の薬物送達装置によって得られた概略的な断面図である。
【図9B】組み立て後の図9Aの薬物送達装置を通して得られた概略的な断面図であり、空の状態と充填された状態での装置を示している。
【図9C】組み立て後の図9Aの薬物送達装置を通して得られた概略的な断面図であり、空の状態と充填された状態での装置を示している。
【図9D】Vで示された図9Bの領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態は、合計で3つのみの、または、場合によっては2つの構成要素から一般的に形成されるとりわけ単純な構造を備えた薬物送達装置である。特定の場合には、装置は、単一の構成要素からでさえ組み立てられてもよい。
【0025】
多くの特定の非限定的な実施例について述べる前に、一般論として、本発明の実施形態は、特に単純かつ小型の構造において少なくとも部分的に圧力補償された流量調節機構に薬物容器を一体化させる薬物送達装置を提供する。該装置は、主としてエラストマー材料から形成される、膨張可能な薬物容器を少なくとも部分的に定義する第1の部分と、膨張可能な薬物容器を完成させるように第1の部分の開口部と協働する閉鎖部分とを含む。閉鎖部分は、開口部から内側に第1の部分へと伸張し、第1の部分と閉鎖部分の間の少なくとも1つの重なり領域を定義する。
【0026】
第1の部分と閉鎖部分は、薬物容器から薬物を放出するための出口流路を定義し、出口流路の少なくとも一部は重なり領域内の第1の部分と閉鎖部分との間を通過する。重なり領域は、薬物容器内の圧力の影響を受けるように配されることで、容器内の圧力が変化すると出口流路のフローインピーダンスを変え、それによって、少なくとも部分的に圧力補償された流量調節機構を提供する。
【0027】
図1A乃至2で示される装置の実施形態は、エラストマー構成要素(10)として与えられる、第1の部分から形成され、該部分は、膨張可能な空気袋型の容器(12)と調節スリーブ(regulator sleeve)(14)で作られる。ここで示される好ましい場合では、エラストマー構成要素(10)は、容器(12)の開口部と、装置を充填または再充填するために貫通可能な中隔(18)を定義する厚みのある部分を定義する一体型の固定ビーズ(retainer bead)(16)も有する。
【0028】
第2の構成要素である閉鎖部分は、圧力補償された流量制限を定義するために、調節スリーブ(14)と協働するように構成される挿入物(20)として本明細書で与えられ、それによって、装置からの薬物放出速度を比較的一定の速度まで調節する。ここに示される例において、挿入物(20)は、図2に関連して以下により詳細に記載される可変の螺旋形状の流路(23)で形成された調節部分(22)と、流路出口を定義する出口部分(24)とを有する。周囲の溝(26)は固定ビーズ(16)を収容するために提供される。
【0029】
本明細書に記載の装置の第3の構成要素は、出口部分(24)に付けるように構成された、球体として示される多孔質体の形状の出口散布器(28)である。
【0030】
固定ビーズ(16)が図1Cで示される構造を作り出すために溝(26)と係合するまで、薬物送達装置は、容器(12)の内部に調節スリーブ(14)を内側へ向けて折り重ねて、挿入物(20)を導入することによって、組み立てられる。出口散布器(28)は装置を完成させるために取り付けられる。その後、装置は、容器(12)を膨張させるために中隔(18)を通って挿入された(図1Dでシリンジ(130)として概略的に示される)針によって、送達される液体(132)で充填(その後、再充填)されることができる。容器の弾性は、含まれる液体に圧力をかけるためにバルーンのように作用し、それによって、流量調節機構を通って液体を放出させる。
【0031】
1つの非限定的な実施形態によれば、膨張可能な容器(12)は、当技術中で知られているように、その設計体積の大部分にわたって比較的一定の圧力を維持するように構成されてもよい。しかしながら、本明細書に記載の自己補償型(self−compensating)の流量調節は、この特徴を重要性の低いものにする。
【0032】
最も好ましくは、容器(12)の弛緩状態は、スリーブ(14)と調節部分(22)の間の重なり領域によって形成された調節機構に対して緊密に接しており、それによって、容器がほぼ空になるまで、薬物を送達するための駆動圧力を確保する。
【0033】
この実施形態の流量調節機構の操作は、図2を参照して最もよく理解される。スリーブ(14)の内側に面した面とともに、螺旋形状の流路(23)は、細長い螺旋状のチャネルを定義する。(エラストマーの外壁によってもたらされる弾力性の収縮力に起因する)容器内の圧力は、調節スリーブ(14)に影響を与え、エラストマースリーブを流路(23)に押し入れようとする。調節機構を通る流路の開始部分の近くの流路(23)の領域では、流路と容器の圧力の間の圧力差は小さく、調節スリーブ(14)のわずかな変形が生じただけである。液体が長い螺旋状の経路に沿って流れ続けるにつれ、圧力は次第に低下して、スリーブにわたってより大きな圧力差をもたらし、スリーブをチャネル形状にぴったりと合わせる傾向にある。容器内の圧力が容器に押しつけられるなどして増加すると、スリーブ(14)は流路(23)へとぴったり押しつけられるようになり、それによって、流路を収縮し、増加した容器の圧力を補償することで、比較的一定の出口流量を維持することに注目する。逆に、容器圧力が高所での周囲圧力の低下などから下がると、スリーブ(14)は、流路(23)にそれほど押しつけられず、その代りに、弛緩した円筒状の状態に弾性的に戻り、それによって、流路の収縮を減らす。このようにして、流量は補償され、容器圧力を変化させる条件下で比較的一定のままである。
【0034】
螺旋形状の流路(23)は、均一な断面のチャネルとして本明細書に示されている。しかしながら、流路(23)は、流量補償の均一性を修正および改善するように、その長さに沿って可変の深さおよび/または形状で随意に作られてもよいことに注目する。例えば、場合によっては、入口端部に近い領域(図2に示されるような右側)が、より深く、および/または、より狭く、流路(23)は出口に向かって次第に浅くおよび/または広くなることが望ましいこともある。
【0035】
随意に、流路(23)は、たとえばチャネルに対して鋭角の谷底部(root)を用いることによって流路が完全に密閉されないことを保証するのに役立つ形状であってもよい。しかしながら、この特徴は必要不可欠ではないことに注意する。既に説明されたように、調節は、容器と流路の間の圧力差の結果として達成される。流路が一瞬で塞がれるような任意の状況では、閉塞物までの流路に沿った静圧はすぐに等しくなり、それによって、閉塞点に直接、容器内の圧力をかけることで、閉塞物を取り除く。結果として、調節機構の自己閉塞は一般的にすべての場合で回避される。
【0036】
装置が薬物送達機能の完了時に外科的に摘出される必要がないことが、本発明の特定の実施の特に好ましい特徴である。この目的を達成するために、装置の一部またはすべては、時間とともに分解して体組織に吸収されるか、または、さもなければ、自然な生体プロセスによって処分される、生体再吸収可能な材料から作られてもよい。とりわけ、特定の好ましい実施は、生体再吸収可能な材料から形成される挿入物(20)および/または出口散布器(28)を有する。適切な生体再吸収可能な材料の例は、限定されないが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、および、ポリ酸無水物などの生分解性ポリマーや、これらの材料のコポリマーを含む。明らかに、分解の速度は、装置の計画された機能的な寿命に対して遅くなるように選択されなければならない。任意の所定の実施に適した対応する分解速度を有する適切な組成物の選択は、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0037】
生分解性材料と他のポリマー材料から多孔性のポリマー材料を生産することに関して、様々な生産技術および対応する生産物は市販で入手可能である。そのような材料のための商用源の例は、限定されないが、Porex Technologies Inc.(アメリカジョージア州)、および、MicroPore Plastics Inc.(アメリカジョージア州)を含んでいる。
【0038】
挿入物(20)と出口散布器(28)が生分解性材料から形成される場合、エラストマー構成要素(10)は、シリコンゴムのような不活性の非生分解性材料から形成されてもよい。他の部品の完全な分解の後に残る崩壊性の容器の空の押しつぶすことができる構造は、無期限に皮下に残される際に生理学的に許容可能であると考えられる。
【0039】
あるいは、エラストマー構成要素(10)は、完全に生分解性の生成物を提供するために、生分解性エラストマーから形成されてもよい。適切な生体再吸収可能なエラストマーの非限定的な例は、ポリ(グリセロール−セバシン酸)(「PGS」)、ポリカプロラクトン(PCL)、および/または、ポリラクチド(PLA)ベースのエラストマーである。
【0040】
容器(12)とスリーブ(14)が単一のエラストマー構成要素の一部として一体化された好ましい実施において本明細書では示されているが、容器(12)とスリーブ(14)が別々の要素であり、その後使用中に一緒に固定されるか、または、一緒にクランプされる代替的な実施形態も本発明の範囲内にある。
【0041】
さらに、流量調節が挿入物(20)に対するスリーブ(14)の変形によって行なわれる好ましい実施において本明細書で示されているが、内蔵型流量調節装置(図示せず)がスリーブ(14)内部に挿入され、かつ、スリーブ(14)自体が流量調節で積極的な役割を行なわない代替的な実施形態も本発明の範囲内にある。
【0042】
ここで、図3に目を向けると、これは図1A乃至−2の装置に類似しているが、皮膚下で横になって移植するのに適した細長い形状で形成された装置を示している。装置の経皮的な再充填を促進するために、装置は、容器のまわりのベルトとして、厚くなった環状の中隔で作られ、それによって、中隔を触知して位置付けること(tactile location)、および、容器への直接的な側方注入を可能にする。他のすべての点で、図3の装置は、図1A乃至2の装置と構造的および機能的に類似している。
【0043】
ここで図4に目を向けると、これは図1A乃至2の装置に類似しているが、膨張可能な空気袋型容器が、中隔(52)を含む再充填口で終わる充填チューブ(50)と一体的に形成される装置を示している。壁の厚さとチューブの直径を適切に選択することによって、薬物を含む容器を膨張させるために使用される圧力下で容器が拡張しないことを保証する一方で、容器に使用されるのと同じエラストマー材料から再充填チューブを形成することが可能である。その結果、再充填した中隔を介して注入された薬物のほとんどすべては、直接容器に移される。この構造のおかげで、再充填のために経皮によるアクセスを維持しながら、深部の身体標的部位の近くに薬物送達装置を展開することが可能となる。装置の部品は、当該技術において周知のように、隣接する組織を適切に縫うことによってインサイツで固定されるのが一般的である。他のすべての点で、図4の装置は、図1A乃至2の装置と構造的および機能的に類似している。
【0044】
ここで図5および6に目を向けると、本発明の態様に応じて薬物送達装置の追加の実施形態が示されている。これらの装置は、上に記載された装置に概念的かつ構造上似ているが、流量調節機構の少なくとも一部を定義するために多孔性の挿入物を使用する。具体的には、図5をまず参照すると、第1の部分が上に記載されたものとほぼ同じ(膨張可能な空気袋型の容器(12)、調節スリーブ(14)、一体型の固定ビーズ(16)、および、貫通可能な(pierceabie)中隔(18)を含む)エラストマー構成要素(10)として与えられた装置が示されている。この場合、上に記載された挿入物(20)は、一般的に円錐状の調節部分(32)、出口部分(34)、および、周囲の溝(36)を有する多孔性の挿入物(30)として与えられた閉鎖部分と置き換えられる。挿入物(20)の多孔性材料は、容器(12)の液状内容物の放出の制限速度を定義する流動制限を与える。流量調節は、円錐状の調節部分の表面に対する調節スリーブ(14)の圧力応答性の閉鎖または開口によって達成され、それによって、流路に沿った容器および液体の間の圧力差に応じて、多孔性の材料を介したより長い流路またはより短い経路を、液体に通り抜けさせる。
【0045】
図6は、多孔性の挿入物(30)の調節部分(38)が一般的に砂時計形状を有しており、多孔性材料を介した流路の開始部分の近傍で初期圧力が著しく低下することを保証する同様の装置を示している。ここで、同様に、流量調節/補償は、挿入物の狭い方の部分に対する調節スリーブの様々な程度の閉鎖を引き起こす圧力差によって達成され、それによって、流れが多孔性材料を迂回して低フローインピーダンス経路を見つけることができる際の流路の比較的長いまたは短い長さを定義する。
【0046】
他のすべての点で、図5および6の実施形態は先に記載された実施形態に類似しており、図1乃至4に関して上に記載された様々な特徴のいずれかおよびすべてで実施されることに注目する。同様に、これらの実施形態は、部分的にまたは完全に再吸収可能な構造として与えられてもよい。典型的には、多孔性の挿入物(30)の固有の拡散保出特性によって、追加の出口散布器はまったく必要とされない。
【0047】
ここで、図8A乃至8Eに目を向けると、これらは、薬物送達装置の様々な態様を例証しており、一般的には(60)で示され、構築され、本発明のさらなる実施形態に応じて操作可能である。装置(60)は、上に記載された図1A乃至2の装置に概念的かつ機能的に類似しているが、その中心よりもむしろ膨張可能な容器の周囲に位置づけられた、圧力補償される流路を使用する。
【0048】
したがって、装置(60)は、主としてエラストマー材料から形成されるとともに開口部(66)を有している第1の部分(62)と、膨張可能な薬物容器を完成させるように第1の部分(62)の開口部(66)と協働する閉鎖部分(64)を有する。図8Cおよび8Dで示されるように、組み立てられる際、閉鎖部分(64)は、開口部(66)から内側に第1の部分(62)に伸張することで、第1の部分(62)と閉鎖部分(64)の間の重なりの少なくとも1つの領域を定義する。
【0049】
閉鎖部分(64)の外側に面した面は、おおよそ螺旋形の経路を伴う周囲のチャネル(68)で作られると本明細書では示されているため、第1の部分(62)の内部に面する面との重なり関係を持つようになると、それらは、薬物容器から薬物を放出するために重なり領域を横断する出口流路をともに定義する。当然のことながら、とりわけ図8Eに関連して、容器内の液体と流路内の液体との間の圧力差が流路(68)の断面を修正するように作用し、それによって、容器内の圧力が変わると出口流路のフローインピーダンスを変え、その結果として、少なくとも部分的に圧力補償された流量調節機構を提供する。この機構は、図2に関連してより詳細に先に記載されたのとほぼ同じである。流路(68)は、開口部(66)を介して調節された薬物の流れを放出する比較的大きな出口チャネル(70)(図8B)で終わるのが好ましい。代替的な実施では、流路(68)は第1の部分(62)の内部に面した面上で形成されてもよい。
【0050】
ここでも、第1の部分(62)と閉鎖部分(64)の1つまたは両方は、上に言及されたもののような生体再吸収可能な材料を用いて有利に与えられてもよい。
【0051】
薬物送達工程の最後に死腔消耗(dead−space wastage)を最小限にするために、装置(60)は、膨張可能な薬物容器内に展開される中心コア(72)を好ましくは含み、中心コア(72)は、中心コア(72)のまわりの膨張可能な薬物容器のプリテンション処理を提供するような大きさをしている。本明細書で例証された好ましい例において、中心コアは第1の部分(62)と一体的に形成される。代替的な実施において、中心コアは、さらに、または、あるいは、閉鎖部分(64)と組み合わされてもよい。
【0052】
第1の部分(62)と閉鎖部分(64)は、重なっている表面間の初期接触圧力を生じさせるために、事前に形成されるのが好ましい。本明細書で例証された例において、閉鎖部分(64)は、最初に外側に膨らむ形状で作られるが、第1の部分(62)は当初およそ円筒形状の外壁で形成される。組み立て中に、閉鎖部分(64)は圧力下で挿入されるが、第1の部分(62)は開いたまま一時的に伸張する。放出される際、第1の部分(62)は閉鎖部分(62)を内側へ押しやり、出口流路を定義するために十分な初期接触圧力を確保するとともに、中心コア(72)に対して閉鎖部分(62)を閉ざす。当初付勢された形状の形態は明らかに変えられてもよい。
【0053】
ここで図9A乃至9Dに目を向けると、これらはさらに、一般に(80)で示され、構築され、本発明の実施形態に応じて操作可能な変形薬物送達装置を例証している。装置(80)は、装置(70)と構造的かつ機能的に類似しているが、単一の一体的に形成された構成要素を用いて与えられる。
【0054】
したがって、この場合、閉鎖部分(64)は、円筒形のカップ状の第1の部分(62)によって同心円状に囲まれた、固体の中心コア(72)のくぼんだ円筒状の伸長部として与えられる。当然のことながら、図9Aの単位構造は、適切な成形技術などの標準エラストマー生産技術によって、容易に形成されてもよい。
【0055】
装置(80)は、閉鎖部分(64)のスリーブを逆にすることによって、および、その一方で、第1の部分(62)がその後、図9Bで見られるように流路(68)を有する閉鎖部分(64)の逆さまにした表面に接するように第1の部分を開いて一時的に伸張させることによって、装置の「アセンブリ」とも呼ばれる使用のために準備される。装置(80)はその後、充填針(130)(図9Dを参照)を用いる注入によって液体(132)で充填されることで、図9Cの充填状態を達成する。
【0056】
最後に、図7に簡潔に目を向けると、本明細書に記載の発明の様々な実施形態は埋め込み式の薬物送達装置に限定されず、外部の薬物送達装置で役立つように与えられてもよいことに注意する。1つの非限定的な例として、図7は、外部で皮膚に取り付けられる薬物注入装置として使用するために、針アダプタ(needle adapter)(40)と粘着パッド(42)を備えた、図5の装置に類似した装置を例証している。当然のことながら、この選択肢には、本明細書に記載された実施形態のいずれかおよびすべて、または、それらの組み合わせが与えられてもよい。
【0057】
当然のことながら、上記の記載は単に例として役立つように意図されたものにすぎず、他の多くの実施形態が添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲内で可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に圧力補償された流量調節機構と一体化した薬物容器を提供する薬物送達装置であって、
前記薬物送達装置は、
(a)主としてエラストマー材料から形成される第1の部分であって、膨張可能な薬物容器を少なくとも部分的に定義するとともに開口部を有する第1の部分と、
(b)前記膨張可能な薬物容器を完成させるために前記第1の部分の開口部と協働する閉鎖部分とを含み、
前記閉鎖部分は、前記第1の部分と前記閉鎖部分の間の重なりの少なくとも1つの領域を定義するために、前記開口部から内側に第1の部分に伸張し、
前記第1の部分と前記閉鎖部分は、前記薬物容器から薬物を放出するための出口流路を定義し、前記出口流路の少なくとも一部は、前記重なり領域中の前記第1の部分と前記閉鎖部分の間を通過し、前記重なり領域は、前記薬物容器内の圧力の影響を受けるように配置されることで、容器内の圧力が変わると前記出口流路のフローインピーダンスを変え、それによって、少なくとも部分的に圧力補償された流量調節機構を提供することを特徴とする薬物送達装置。
【請求項2】
前記第1の部分と前記閉鎖部分の1つには、前記重なり領域を通過する前記流路の少なくとも一部を定義するために展開された細長いチャネルが提供されることを特徴とする請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項3】
前記第1の部分は、前記開口部から内側に伸張する可撓性を有するスリーブを含んでおり、
前記閉鎖部分は、前記重なり領域を提供するように前記可撓性を有するスリーブの内部に挿入される挿入物として与えられることを特徴とする請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項4】
前記挿入物は、前記挿入物のまわりの前記膨張可能な薬物容器のプリテンション処理を提供するような大きさであることを特徴とする請求項3に記載の薬物送達装置。
【請求項5】
前記挿入物は主として多孔性材料から形成されることを特徴とする請求項3に記載の薬物送達装置。
【請求項6】
前記挿入物と前記可撓性を有するスリーブは、前記可撓性を有するスリーブと前記挿入物との間の接触の程度が前記膨張可能な薬物容器内の圧力に応じて変わるように、構成されることを特徴とする請求項5に記載の薬物送達装置。
【請求項7】
前記挿入物は、細長い周辺チャネルで形成されることを特徴とする請求項3に記載の薬物送達装置。
【請求項8】
前記挿入物は、主として生体再吸収可能な材料から形成されることを特徴とする請求項3に記載の薬物送達装置。
【請求項9】
少なくとも前記第1の部分はシリコンから形成されることを特徴とする請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項10】
前記第1の部分と前記閉鎖部分の少なくとも1つは、生体再吸収可能な材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項11】
前記第1の部分と前記閉鎖部分は、2つの別個の構成要素として形成されることを特徴とする請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項12】
前記第1の部分と前記閉鎖部分は一体的に形成され、
薬物送達装置は、前記重なり領域を生じさせるように少なくとも1つのスリーブ状の部分を逆にすることによって組み立てられることを特徴とする請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項13】
前記重なり領域は前記膨張可能な薬物容器の外壁の一部を形成することを特徴とする請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項14】
前記膨張可能な薬物容器内に展開される中心コアをさらに含み、前記中心コアは、前記中心コアのまわりの前記膨張可能な薬物容器の事前の引っ張りを提供するような大きさであることを特徴とする請求項13に記載の薬物送達装置。
【請求項15】
前記中心コアは、前記第1の部分と前記閉鎖部分の少なくとも1つと一体的に形成されることを特徴とする請求項14に記載の薬物送達装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【公表番号】特表2013−520220(P2013−520220A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553439(P2012−553439)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050729
【国際公開番号】WO2011/101833
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512217651)マイクロサート エルティーディー. (1)
【Fターム(参考)】