説明

徐溶化剤

【課題】 混和性、成形性、品質安定性、長期持続性、徐溶化速度の温度依存性等を有する徐溶化剤を提供する。
【解決手段】 式(1)で示される化合物(A)及び式(3)で示される化合物(B)を
含む徐溶化剤であって、(A)と(B)の合計が70重量%以上であり、重量比(A)/(B)が0.1〜0.5である徐溶化剤である。
Q[−(OA1)m−Z]n (1)
式中、Qは3〜6価の脂肪族多価アルコールの残基又は特定の4価の基;Zは水酸基、炭素数12〜22のアシルオキシ基又はアシルアミノ基であって、n個のZのうち少なくとも1個は水酸基;OA1は炭素数2〜4のオキシアルキレン基;mは0〜2の数、nは3〜6の整数であって、m×nは0〜6の数である。
2−(OA2)k−OH (3)
式中、R2は水素原子、炭素数1〜25のアルキル基又は炭素数2〜25のアルケニル基;OA2は炭素数2〜4のオキシアルキレン基;kは70〜700の数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は徐溶化剤に関する。さらに詳しくは、水洗トイレ用固形芳香洗浄剤、台所流し排水口ヌメリ防止剤等の徐溶性製剤に使用できる徐溶化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
徐溶化剤は、それ自体が水に徐々に溶解することにより、香料や着色剤や界面活性剤などの徐放されるべき薬剤を少しずつ水に溶解するように調整することができる薬剤である。
従来、徐溶化剤としては、オキシエチレン基含有芳香族化合物からなる、又はそれと水溶性脂肪族化合物との併用系(特許文献−1)、少なくとも一部は芳香族基を有するカルボン酸エステルと脂肪酸アルカノールアミド及び又は高分子量ポリオキシアルキレン化合物の併用系(特許文献−2)、ポリオキシアルキレングリコール及びこれと有機ポリイソシアネート化合物とのウレタン化合物(特許文献−3)、エンドキャップされたアルコキシレート型非イオン界面活性剤(特許文献−4)、特定のポリアルキレングリコールを少なくとも2単位以上含むポリエステルポリオール(特許文献−5)などが知られている。
徐溶化剤に求められる性能は、香料や着色剤などとの混和性、製剤成形時の成形性、製剤の長期保存時の品質安定性、徐溶性効果の長期持続性、使用水の温度による徐溶化速度の依存性が少ないこと、及び使用時の保形安定性などであり、従来の徐溶化剤は、これらの要求性能のうち、少なくとも1つが不十分であって、これらの性能を全てを満足する徐溶化剤は得られていない。例えば、特許文献−1及び特許文献−2のものは製剤成形時の成形性が不十分であり、特許文献−3のものは保形安定性が不十分である。
【特許文献−1】特開平8−319472号公報
【特許文献−2】特開2002−114965号公報
【特許文献−3】特開昭55−131098号公報
【特許文献−4】特開2003−292997号公報
【特許文献−5】特開2005−298830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、香料や着色剤などとの混和性、製剤成形時の成形性、製剤の長期保存時の品質安定性、徐溶性効果の長期持続性、使用水の温度による徐溶化速度の依存性が少ないこと、及び使用時の保形安定性を有する徐溶化剤、並びに該徐溶化剤と各種の添加剤を含有する徐溶性製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、一般式(1)で示される化合物(A)及び一般式(3)で示される3,000〜30,000の数平均分子量を有する化合物(B)を含有する徐溶化剤であって、徐溶化剤の重量に基づく(A)及び(B)の合計重量が70重量%以上であり、重量比(A)/(B)が0.1〜0.5であることを特徴とする徐溶化剤である。
【化4】

[式中、Qは3〜6価の脂肪族多価アルコールの残基又は一般式(2)で示される4価の基;Zは水酸基、炭素数12〜22のアシルオキシ基又は炭素数12〜22のアシルアミノ基であって、n個のZのうち少なくとも1個は水酸基;OA1は炭素数2〜4のオキシアルキレン基;mは0〜2の数、nは3〜6の整数であって、1分子当たりの(OA1)の平均モル数を表すm×nは0〜6の数である。]
【化5】

[式中、R1は炭素数2〜6のアルキレン基である。]
【化6】

[式中、R2は水素原子、炭素数1〜25のアルキル基又は炭素数2〜25のアルケニル基;OA2は炭素数2〜4のオキシアルキレン基;kは70〜700の数である。)
【発明の効果】
【0005】
本発明の徐溶化剤は、香料や着色剤などとの混和性に優れ、製剤成形時の成形性に優れ、製剤の長期保存時の品質安定性、徐溶性効果の長期持続性、使用水の温度による徐溶化速度の依存性が少ないこと、及び使用時の保形安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
化合物(A)を表す一般式(1)におけるQは、3〜6価の脂肪族多価アルコールの残基、又は一般式(2)で表される基であり、混和性の観点から好ましくは3〜6価の脂肪族多価アルコールの残基である。
【0007】
3〜6価の脂肪族多価アルコールとしては以下のものが挙げられる。3価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。4価アルコールとしては、フィシトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン及びソルビタンなどが挙げられる。5価アルコールとしては、キシリット、トリグリセリンなどが挙げられる。6価アルコールとしては、ソルビトール、マンニット、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0008】
一般式(2)で示される4価の基におけるR1は炭素数2〜6のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。水の温度依存性の観点より好ましくはエチレン基又はプロピル基、更に好ましくはエチレン基である。
【0009】
一般式(1)におけるZのうち、炭素数12〜22のアシルオキシ基(RCOO−)としては、例えば、飽和脂肪族モノカルボン酸に由来する、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基及びステアロイルオキシ基など、並びに、脂肪族不飽和モノカルボン酸に由来するラウロレイルオキシ基、ミリストレイルオキシ基、パルミトレイルオキシ基、オレイルオキシ基、リノールレイルオキシ基、リノレイルオキシ基、リノレニルオキシ基、及びバクセニルオキシ基などが挙げられる。
【0010】
アシルオキシ基のうち好ましいのは、保形性、徐溶化速度の安定性及び保存時の品質安定性の観点から飽和脂肪族モノカルボン酸に由来する、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基及びこれらの併用である。
【0011】
一般式(1)におけるZのうち、炭素数12〜22のアシルアミノ基(RCONH−)としては、例えば、飽和脂肪族モノカルボン酸に由来する、ラウロイルアミノ基、ミリストイルアミノ基、パルミトイルアミノ基及びステアロイルアミノ基など、並びに、脂肪族不飽和モノカルボン酸に由来するラウロレイルアミノ基、ミリストレイルアモノ基、パルミトレイルアミノ基、オレイルアミノ基、リノールレイルアミノ基、リノレイルアミノ基、リノレニルアミノ基、及びバクセニルアミノ基などが挙げられる。
【0012】
アシルオキシ基及びアシルアミノ基のうち好ましいのは混和性の観点からアシルオキシ基である。
【0013】
化合物(A)は、3〜6価の脂肪族多価アルコールの残基又は一般式(2)で示される4価の基のうちの一部がエステル化もしくはアミド化され、残りが水酸基である化合物である。多価アルコールの3〜6個の水酸基又は4価の基のうち、平均で少なくとも1個はエステル化及びアミド化されない基があり、すなわちn個のZのうち平均で少なくとも1個は水酸基である。
【0014】
一般式(1)におけるOA1は炭素数2〜4のアルキレン基であって、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基及びブチレン基などが挙げられる。保形性の観点から好ましいのはエチレン基及び1,2−プロピレン基であり、更に好ましくはエチレン基である。
【0015】
一般式(1)におけるmは0〜2の数、nは3〜6の整数であって、1分子当たりの(OA1)の平均モル数を表すm×nは0〜6である。また、化合物(A)は、m×nが0ではない場合には、通常はアルキレンオキサイドを付加する工程を経て製造されるため、異なる付加モル数の混合物であり、m×nは平均の付加モル数を表す。mは好ましくは保形性の観点から0〜1、さらに好ましくは0である。また、m×nは、好ましくは保存安定性の観点から0〜4、さらに好ましくは0〜3、特に0である。
【0016】
(A)の水酸基価(JIS K0070−1992)は、徐溶性効果の持続性の観点から90〜400mgKOH/gであることが好ましい。さらに好ましくは100〜300mgKOH/gである。
【0017】
(A)は、好ましくは50〜80℃の融点を有する。50℃以上であれば夏場の常温倉庫等での長期保存性に優れ、80℃以下であれば製造時の成形性に優れる。
【0018】
(A)のうち、Qが脂肪族多価アルコールの残基であり、Zの一部がアシルオキシ基である化合物は、脂肪族多価アルコールとRCOOHで示される脂肪酸もしくはそのハロゲン化物とのエステル化反応によって得られる。RCOOHで示される脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸、並びに、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸が挙げられる。
【0019】
エステル化反応におけるモル比は脂肪族多価アルコール1モルに対して脂肪酸がxモルである。エステル化反応の触媒は酸触媒及び塩基触媒のいずれも使用できる。酸触媒としては、ハロゲン化水素(塩化水素等)、カルボン酸(酢酸、シュウ酸等)、燐酸、スルホン酸(メタンスルホン酸等)が挙げられる。塩基触媒としては、水酸化アルカリ金属塩(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、トリエチルアミン、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどが挙げられる。着色防止の観点から水酸化アルカリ金属塩が好ましい。温度は150〜250℃、時間は2〜20時間が好ましい。
【0020】
(A)のうち、Qが脂肪族多価アルコールの残基であり、Zの一部がアシルオキシ基である化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
(A1):ソルビトールの1,2−プロピレンオキサイド2.5モル付加物のラウリン酸
エステル[6個のZのうちの平均1.8個がラウロイルオキシ基で平均4.2個が水酸基、水酸基価=358mgKOH/g]
(A2):ソルビタンのエチレンオキサイド2.5モル付加物のミリスチン酸エステル[
4個のZのうちの平均2.6個がミリストイルオキシ基で平均1.4個が水酸基、水酸基価=95mgKOH/g]
(A3):フィシトールのエチレンオキサイド0.5モル付加物のパルミチン酸エステル[4個のZのうちの平均2.0個がパルミトイルオキシ基で平均2.0個が水酸基、水酸基価=179mgKOH/g]
(A4):グリセリンのステアリン酸エステル[3個のZのうちの平均1.3個がステアロイルオキシ基で平均1.7個が水酸基、水酸基価=216mgKOH/g]
【0021】
(A)のうち、Qが一般式(2)で示される4価の基である化合物は、一般式(4)で示されるアミノ化合物と脂肪酸もしくはそのハロゲン化物とのアミド化反応によって一般式(5)で示されるアミド化物を製造し、さらに該アミド化物の2分子を尿素で縮合して一般式(6)で示される縮合物として得られる。
【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
式(4)〜(6)中、R3は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、例えば前記のアルキレン基が挙げられる。R4は炭素数12〜22の脂肪酸の残基を示し、脂肪酸としては例えば前記のRCOOHで表される脂肪酸が挙げられる。
【0026】
一般式(4)で示されるアミノ化合物としては、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及び3−(3−アミノプロピルアミノ)プロパノールなどが挙げられる。
【0027】
アミド化反応における仕込みモル比は、一般式(4)で示されるアミノ化合物1モルに対して、脂肪酸もしくはそのハロゲン化物が0.95〜1.05モルであることが好ましい。温度は160〜200℃、時間は1〜10時間が好ましい。尿素による縮合反応における仕込みモル比は、一般式(5)で示されるアミド化物1モルに対して尿素が0.5〜0.8モルであることが好ましい。温度は160〜200℃、時間は1〜10時間が好ましい。
【0028】
(A)のうち、Qが一般式(2)で示される4価の基である化合物の具体例としては、
(A5):2−アミノエチル−2−アミノエタノールのステアリン酸アミドを尿素で2分子縮合して得られた化合物[Qが一般式(2)で示される基であり、4個のZのうちの平均2.0個がステアロイルアミノ基で平均2.0個が水酸基、水酸基価=292mgKOH/g]などが挙げられる。
【0029】
本発明における化合物(B)は一般式(3)で表される。一般式(3)におけるR2は水素原子又は炭素数1〜25のアルキル基もしくは炭素数2〜25のアルケニル基であり、徐溶性効果の持続性の観点から好ましくは水素原子である。OA2は炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、成形性の観点より好ましくはオキシエチレン基が90重量%以上の場合が好ましく、更に好ましくは全てがオキシエチレン基である。
また、(B)は、通常、水酸基へのアルキレンオキサイドの付加反応工程を含む製造方法で製造されるため、これらの付加生成物における付加モル数は分布を有している。従って、一般式(3)におけるkは平均値で表され、70〜700の数であり、徐溶性効果の持続性の観点より好ましくは200〜500である。
【0030】
(B)の数平均分子量は3,000〜30,000であり、好ましくは10,000〜20,000である。3,000未満では長期持続性が不足し、30,000を超えると保形安定性が低下する。(B)の数平均分子量(以下,Mnと略記)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によってポリエチレングリコールを標準物質として測定されるものである。
(B)の融点は、好ましくは35〜80℃である。融点がこの範囲であると、成形性の効果がさらに発揮しやすくなる。
【0031】
(B)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(B1):ポリエチレングリコール (Mn10,000)
(B2):ポリプロピレングリコール(Mn3,000)のエチレンオキサイドのブロック付加物 (Mn25,000)
(B3):ヘキシルアルコールのエチレンオキサイド付加物 (Mn6,000)
(B4):オレイルアルコールのエチレンオキサイド付加物 (Mn20,000)、
などが挙げられる。
【0032】
(B)は通常のアルキレンオキサイドの付加反応で製造できる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用する場合はブロック付加(チップ型、バランス型、活性セカンダリー型など)でもランダム付加でも両者の混合系でもよい。
【0033】
徐溶化剤中の(A)及び(B)の含有量は、徐溶化剤の重量に基づいて、(A)及び(B)の合計重量が、通常70重量%以上(70〜100重量%)、保形性及び徐溶性効果の持続性の観点から、好ましくは75〜100%である。また、(A)と(B)の重量比(A)/(B)は、通常0.1〜0.5であって、成形性及び保形性の観点より0.2〜0.4が好ましい。
【0034】
本発明の徐溶化剤は、さらに、必要により徐溶化剤の重量に基づいて30%以下、好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下の界面活性剤(C)を含有してもよい。界面活性剤(C)を含有することによって混和性及び成形性という効果がさらに発揮し易くなる。
【0035】
界面活性剤(C)としては、非イオン界面活性剤〔但し、(A)及び(B)は除く〕、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
非イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルフェノール、高級脂肪酸又は高級アルキルアミン等のアルキレンオキシド付加物;3価以上の多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタンなどの3価〜7価またはそれ以上の多価アルコール)のアルキレンオキシド付加物;多価(2価〜8価またはそれ以上)アルコールアルキルエーテルのアルキレンオキシド付加物及び、これらの化合物やポリアルキレングリコールと有機ポリイソシアネートを反応して得られる末端にイソシアネート基を有しないウレタン化合物(変性ポリエーテル)が挙げられる。
【0037】
アニオン界面活性剤としては、例えば、カルボン酸(炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸)塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルカノールアミンなどの塩)、炭素数8〜16の脂肪族アルコール又はそのエチレンオキサイド付加物のカルボキシメチル化物の塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル型、α−オレフィン(炭素数12〜18)スルホン酸塩、イゲポンT型および高級アルコールもしくはアルキルフェノールエチレンオキサイド付加物リン酸エステル塩が挙げられる。
【0038】
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型、アミン塩型などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤などの他に、特公昭57−39678号公報に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0039】
本発明の徐溶化剤は、加熱できる混合槽中で(A)、(B)および必要により(C)などの任意成分を加えて、加熱して溶融・混合後、取り出して、室温で静置して固化させ、必要により適当な大きさ(塊状または粉状)に粉砕することにより製造することができる。
加熱温度は通常70〜100℃である。本発明の徐溶化剤は、通常は35℃以下で固状であり、またその融点は、通常40℃以上、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは50〜80℃である。
【0040】
本発明の徐溶性製剤は、上記の徐溶化剤並びに香料及び/又は着色剤(D)を含有し、成形されてなる徐溶性製剤である。
【0041】
着色剤としては、例えばメチレンブルー、シアニンブルー、青色1号、青色2号およびこれらのアルミレーキ品、赤色1号、赤色2号等が挙げられる。着色剤の使用量は、徐溶
性製剤の重量に基づいて好ましくは15%以下(徐溶性製剤100重量部のうちの15重量部以下)、さらに好ましくは10%以下である。香料としては、例えばラベンダー、レモン油、ローズ油、グリーン油などの植物精油;ムスク、シベット等の動物性香料;アルデヒド類、エステル類、ケトン類などの合成香料及びこれらの調合香料等が挙げられる。香料の使用量は、徐溶性製剤の重量に基づいて好ましくは15%以下(徐溶性製剤100重量部のうちの15重量部以下)、さらに好ましくは10%以下である。
【0042】
徐溶性製剤は、必要により、消臭剤、漂白剤、増量剤、ビルダー、除菌剤、殺菌剤、殺虫剤、化学農薬、化学肥料および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤(E)を含有してもよい。消臭剤としては、例えばグリオキザールなどのアルデヒド化合物;硫酸亜鉛、乳酸亜鉛などの金属化合物;植物抽出油などの公知の消臭剤が挙げられる。消臭剤の使用量は徐溶性製剤の重量に基づいて好ましくは25%以下、さらに好ましくは15%以下である。漂白剤としては、例えば過硼酸ソーダ、過硫酸ソーダなどの酸素系漂白剤;塩素化イソシアヌル酸などの塩素系漂白剤が挙げられる。漂白剤の使用量は徐溶性製剤の重量に基づいて好ましくは25%以下、さらに好ましくは15%以下である。増量剤としては、例えば芒硝、無水芒硝、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ほう酸、タルク、コロイダルシリカなどの無機塩;尿素などの有機化合物が挙げられる。増量剤の使用量は徐溶性製剤の重量に基づいて好ましくは65%以下、さらに好ましくは50%以下である。その他、ビルダー(トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなど)、除菌剤(キトサン、ヒノキチオール、茶カテキンなど)、殺菌剤(塩素系、ヨウ素系、第四級アンモニウム塩系、イミダゾール系、グアニジン系など)、殺虫剤(ピペトリン、アルドリンなど)、化学農薬(3−アリロキシ−1,2−ベンゾイソチアゾールなど)、化学肥料(リン酸カルシウム、尿素など)、紫外線吸収剤(サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系)等が挙げられ、これら添加剤のそれぞれの使用量は徐溶性製剤の重量に基づいて好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下である。
【0043】
上記の添加剤(E)の合計の添加量は、 徐溶性製剤の重量に基づいて好ましくは65%以下、さらに好ましくは50%以下である。
【0044】
本発明の徐溶性製剤は、前記徐溶化剤を、その融点以上の温度、例えば70〜100℃に温調し、次に、(D)及び(E)の中から選んだ必要成分を加えてさらに混合した後、液体注型法、押出成型法、圧縮成型法または打錠成型法などで目的の形状に成形して製造することができる。また、前記徐溶化剤の成分である(A)、(B)及び(C)、並びに必要により(D)及び/又は(E)を一括して溶融して混合した後、成型する方法でも本発明の徐溶性製剤を製造することができる。
【0045】
液体注型法の型枠としてはプラスチックカップなどが挙げられ、押出成型法の場合は、押出成型機で20〜60℃で成型して棒状の製剤を得てから、カッターで所定の大きさに切断して所望の固形製剤を得ることができる。また、圧縮成型法や打錠成型法の場合は、ロータリー式打錠成型機を用いて、混合粉体を常温で圧縮成型(圧力:0.1〜1トン/cm2)後、脱型して円盤状の固形製剤を得ることができる。
【0046】
上記のようにして得られる徐溶性製剤は、通常、35℃以下で固状であり、またその融点は、通常40℃以上、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜80℃である。
【0047】
上記のように、本発明においては、液体注型法、押出成型法、圧縮成型法(打錠成型法)など公知の多彩な成型方法が適用できるので、水洗トイレ用固形芳香洗浄剤、台所流し排水口のヌメリ防止剤、プール用徐放性殺菌剤、徐放性農薬および徐放性肥料などの徐放性製剤(固形)を容易に製造することができる。
【0048】
<実施例>
以下の実施例により本発明を更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。部および%は特記しない限り重量部および重量%を意味する。はじめに、実施例で使用した原材料について組成を次に示す。
(A1):ソルビトールの1,2−プロピレンオキサイド2.5モル付加物のラウリン酸
エステル[6個のZのうちの平均1.8個がラウロイルオキシ基で平均4.2個が水素原子、水酸基価=358mgKOH/g]
(A2):ソルビタンのエチレンオキサイド2.5モル付加物のミリスチン酸エステル[
4個のZのうちの平均2.6個がミリストイルオキシ基で平均1.4個が水素原子、水酸基価=95mgKOH/g]
(A3):フィシトールのエチレンオキサイド0.5モル付加物のパルミチン酸エステル[4個のZのうちの平均2.0個がパルミトイルオキシ基で平均2.0個が水素原子、水酸基価=179mgKOH/g]
(A4):グリセリンのステアリン酸エステル[3個のZのうちの平均1.3個がステアロイルオキシ基で平均1.7個が水素原子、水酸基価=216mgKOH/g]
(A5):2−アミノエチル−2−アミノエタノールのステアリン酸アミドを尿素で2分子縮合して得られた化合物[Qが一般式(2)で示される基であり、4個のZのうちの平均2.0個がステアロイルアミノ基で平均2.0個が水素原子、水酸基価=292mgKOH/g]
【0049】
B1:ポリエチレングリコール(Mn10,000、融点62℃)
B2:ポリプロピレングリコール(Mn3,000)のエチレンオキサイドのブロック付加物 (Mn25,000、融点57℃)
B3:ヘキシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(Mn6,000、融点64℃)
B4:オレイルアルコールのエチレンオキサイド付加物(Mn20,000、融点59℃)
B5:ポリエチレングリコール(Mn2,500、融点51℃)
【0050】
C1:ポリアルキレングリコールと有機ポリイソシアネートの反応から得られた変性ポリエーテル化合物(三洋化成株式会社製「ニューポールT−240U」)
D1:青色1号アルミレーキ(着色剤)
D2:ローズ油(香料)
【0051】
実施例1〜12及び比較例1〜6
表1及び表2に記載の配合成分のうち、(A)、(B)及び(C)を120℃に加熱して均一に溶融後、冷却して約80℃に温調し、更に(D)を加えて攪拌混合後、混合スラリーを30mlのポリプロピレン製カップの中に20g注ぎ、室温で24時間放置して冷却後、脱型して円柱形の徐溶性製剤(直径35mm、高さ20mm)を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
徐溶性製剤の混和性、成形性、保存安定性、持続性、温度依存性及び保形性の性能評価結果を表3及び表4に示す。なお、試験方法は以下の通りである。
【0055】
(1)混和性:香料や着色剤との混和性
(A)と(B)、並びに必要により(C)及び/又は(D)を80℃にて攪拌混合した時の混和性について目視にて評価し、次の基準で判定した。ただし、実施例11は(C)及び(D)のいずれも添加していないので混和性は評価しなかった。
◎:相溶性良好で、容易に均一に混和する
○:相溶性良好で、均一に混和する
△:混和しづらい
×:相溶性が悪く、混和が困難
【0056】
(2)成形性:徐溶性製剤成形時の成形性
30mlのポリプロリレン製カップ3個に、80℃に温調した配合液20.0gづつを秤量し、24時間放置して室温まで冷却した、冷却後、成形容器を逆さにして5cmの高さから垂直に数十回程度自由落下を繰り返して型から外して脱型した。脱型して得られた製剤の重量を秤量した。成形性は脱型時の振動等で欠ける量が少ないほど良好と言えるので、以下の基準で評価した。
◎:脱型した製剤の重量が19.9g以上
○:脱型した製剤の重量が19.8g以上19.9g未満
△:脱型した製剤の重量が19.6g以上19.8g未満
×:脱型した製剤の重量が19.6g未満
【0057】
(3)保存安定性:徐溶性製剤の経時保存安定性
徐溶性製剤を45℃にて3ヶ月保管後の外観を目視にて評価し、次の基準で判定した。
◎:型に変化なし
○:型に変化ないが、軟化傾向にある
△:若干の型崩れ
×:溶解
【0058】
(4)持続性、温度依存性:徐溶性製剤の効果持続性及び使用水の温度依存性
徐溶性製剤を1Lのポリ容器(直径100mm)に入れ、ここに30℃及び15℃に温調した水(100ml)を投入し、製剤を水中に全浸漬させ、温調室中で静置した。毎日水を取り換え、取り換える際に製剤の重量を測定し、評価前に比べて50%重量部となる日数を求めた。数値が長いほど効果の持続性に優れることを意味し、また30℃及び15℃の数値の差が少ないほど、温度依存性が少なく、優れていることを意味する。
【0059】
(5)保形性:徐溶性製剤の膨潤に対する保形性
徐溶性製剤を1Lのポリ容器(直径100mm)に入れ、ここに25℃に温調した水(50ml)を投入し、製剤を水中に高さ約6mmまで半浸漬させ、25℃の温調室中で静置した。24時間後の膨潤性について、{(製剤上部の直径)/(成形後の製剤の直径)}×100より、膨潤率(%)を求めた。数値が小さいほど保形性に優れることを意味する。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
表3から明らかなように、本発明の徐溶化剤、並びに該徐溶化剤と各種の添加剤を含有する徐溶性製剤(実施例1〜12)は、香料や着色剤などとの混和性、製剤成形時の成形性、製剤の長期保存時の品質安定性、使用水の温度による徐溶化速度の依存性が少ないこと、使用時の保形安定性、徐溶化速度の安定性、及び徐溶性効果の長期持続性を有し、これらの性能を全て満足する。これに対し表4から明らかのように、比較例1〜6の中には性能項目を全て満たすものはない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の徐溶化剤、並びに該徐溶化剤と各種の添加剤を含有する徐溶性製剤は、香料や着色剤などとの混和性、製剤成形時の成形性、製剤の長期保存時の品質安定性、使用水の温度による徐溶化速度の依存性が少ないこと、使用時の保形安定性、徐溶化速度の安定性、及び徐溶性効果の長期持続性を有する。従って、水洗トイレ用固形芳香洗浄剤、台所流し排水口ヌメリ防止剤等の徐溶性製剤に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される化合物(A)及び一般式(3)で示される3,000〜30,000の数平均分子量を有する化合物(B)を含有する徐溶化剤であって、徐溶化剤の重量に基づく(A)及び(B)の合計重量が70重量%以上であり、重量比(A)/(B)が0.1〜0.5であることを特徴とする徐溶化剤。
【化1】

[式中、Qは3〜6価の脂肪族多価アルコールの残基又は一般式(2)で示される4価の基;Zは水酸基、炭素数12〜22のアシルオキシ基又は炭素数12〜22のアシルアミノ基であって、n個のZのうち少なくとも1個は水酸基;OA1は炭素数2〜4のオキシアルキレン基;mは0〜2の数、nは3〜6の整数であって、1分子当たりの(OA1)の平均モル数を表すm×nは0〜6の数である。]
【化2】

[式中、R1は炭素数2〜6のアルキレン基である。]
【化3】

[式中、R2は水素原子、炭素数1〜25のアルキル基又は炭素数2〜25のアルケニル基;OA2は炭素数2〜4のオキシアルキレン基;kは70〜700の数である。]
【請求項2】
前記化合物(A)の水酸基価が90〜400mgKOH/gであり、一般式(3)における(OA2)kのうちの90重量%以上が(CH2CH2O)の単位からなることを特徴とする請求項1記載の徐溶化剤。
【請求項3】
さらに、徐溶化剤の重量に基づいて30重量%以下の界面活性剤(C)を含有する請求項1又は2記載の徐溶化剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の徐溶化剤並びに香料及び/又は着色剤を含有し、成形されてなる徐溶性製剤。

【公開番号】特開2009−29973(P2009−29973A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196896(P2007−196896)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】