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循環ガン細胞の迅速かつ効率的な単離のための方法および試薬
説明

循環ガン細胞の迅速かつ効率的な単離のための方法および試薬

【課題】生物学的試料から単離された腫瘍細胞または他の稀な細胞の分析および計数を容易にする試薬、方法および試験キット、ならびにこれらの方法および試験キットに使用される磁性粒子を提供する。
【解決手段】a)試験対象から得られた生物学的標本から細胞フラクションを免疫磁気的に調製すること、ここで標本はガン細胞を含有する可能性のある混合細胞集団を含み、かつ妨害性物質を多く含むものであり、ガン細胞が生物学的標本中に存在する場合に、細胞フラクションをガン細胞について豊富化させること。b)豊富化されたフラクションをガン細胞の存在について分析すること、ここで標本中のガン細胞の存在が試験対象中の初期段階のガンの存在を示すものであることを含む、試験対象における初期段階のガンを検査する方法及び循環新生物細胞が豊富化された末梢血のフラクション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍学および診断試験の分野に関する。本発明は、ガンのスクリーニング、段階の決定、化学療法に対する応答、ガンの再発等のモニタリングに有用である。より詳細には、本発明は、生物学的試料から単離された腫瘍細胞または他の稀な細胞の分析および計数を容易にする試薬、方法および試験キット、ならびにこれらの方法および試験キットに使用される磁性粒子を提供する。
【背景技術】
【0002】
米国において毎年約600000件のガンの症例が新たに診断されている。米国において5人に1人はガンまたはガン治療に関連した合併症で死亡している。この疾病の治療および診断の改善に相当な努力が継続して向けられている。
【0003】
大部分のガン患者はその初期の腫瘍によっては死亡しない。患者は、転移したガン、すなわち、元の細胞から分かれてしばしば離れた部位まで体内を移動する悪性細胞により確立された広い範囲にわたる複数の腫瘍コロニーに負けるのである。初期の腫瘍が十分に早期に検出されたならば、それらの多くは手術、放射線、または化学療法もしくはそれらの治療のいくつかの組み合わせにより除去されうる。不幸なことに、転移性コロニーは検出および除去がより困難であり、それらのすべてがうまく治療できるとは限らない。それゆえ、臨床的観点からすれば、転移は、ガンの自然な進行における決定的な出来事であると考えられる。そのうえ、転移能は悪性腫瘍をユニークに特徴づける特性である。
【0004】
ガンの転移は一連の複雑な出来事を含む。これらは、1)最初の位置から周囲組織への拡張;2)体腔および血管中への浸透;3)循環系による輸送により腫瘍細胞が離れた部位に放出されること;4)滞留部位における組織への再侵入;および5)腫瘍細胞の生存、血管形成および腫瘍増殖を促進するための新たな環境への適応である。
【0005】
ガンおよびガン転移の複雑さならびに長年にわたるガン患者の治療における欲求不満に基づいて、治療指針を立て、転移または再発に対するかかる治療の効果をモニターするための診断試験の開発のために多くの試みがなされてきた。おそらく、かかる試験は、ガンのスクリーニング、乳癌に関する乳房撮影または前立腺ガンに関する直腸触診のごとき比較的粗い試験の代替試験として用いることができた。その目的を達成するために、最近20年にわたり多くの試験が開発され、それらの利益が評価されてきた。最初の試みの1つは癌胎児性抗原(CEA)に関するイムノアッセイの定式化であった。この抗原は胎児細胞上に出現し、特定のガンにおける腫瘍細胞上に再出現する。CEAならびにPSA、CA15.3、CA125、PSMA、CA27.29のごとき他の多くの「腫瘍」抗原を試験することの有用性を評価するためにさらなる努力が行われてきた。通常にはかかる抗原の血中への出現は予想されず、検出された時には患者の生存の望みがほとんどないので、これらの努力はいくぶん実りのないものであることがわかった。しかしながら、最近2〜3年間において、1つの試験がガンの早期検出に有用であることがわかった。すなわち、前立腺ガンに関する前立腺特異的抗原(PSA)である。フォローアップ医学的試験および生検とともに用いた場合、PSA試験は、最も治療効果の高い早期において前立腺ガンの検出に顕著な役割を果たす。
【0006】
PSA試験の成功にもかかわらず、その試験は多くの問題点を残している。例えば、高レベルのPSAは常にガンと相関があるとは限らず、さらに、常にガンの転移能を示すものでもない。この理由の一部は、PSAが正常前立腺組織ならびに他の未知因子の1成分であるという事実である。そのうえ、前立腺ガン患者の大部分は生命を脅かさない局所的な疾患を持ち続けるということが明らかになりつつある。転移するであろうガンを有する患者と転移しないであろうガンを有する患者との間のよりよい一致を図る必要があるので、前立腺細胞が循環するかどうかを調べるための試行がなされている。高いPSAレベルおよび生検データに付け加えた場合、循環腫瘍細胞の存在は、いかに活発に患者を治療すべきかを示すものとなりうる。
【0007】
循環前立腺腫瘍の存在を調べるためのアプローチは、血中におけるPSAのメッセンジャーRNAの発現に関して試験することであった。これは、血液試料からすべてのmRNAを単離し、逆転写PCRを行うという手間のかかる手順により行われている。現在のところ、血中におけるかかる細胞の存在と、いずれの患者が活発な治療を要するのかを予想する能力との間には良好な相関関係はない(非特許文献1参照)。多くの状況下で行うことが不可能な場合、PCRを定量的に行うこと、すなわち、単位体積の生物学的試料あたりの腫瘍細胞数を決定することが困難であることは注目すべきことである。
【0008】
さらに、この方法を用いると擬陽性がしばしば観察される。試験試料のサイズによる、この方法の感度に対する有限かつ現実的な限界があるという欠点もある。典型的には、試験を妨害する赤血球から精製された10ないし10個の細胞について試験が行われる。これは、血液0.1mlあたり腫瘍細胞1個という実施下限に対応する。それゆえ、シグナルが検出されるには、血液1mlあたり約10個の腫瘍細胞が必要である。さらに考えてみると、腫瘍細胞はしばしば遺伝的に不安定である。したがって、遺伝学的転移および配列変化を有するガン細胞は、PCRプライマーと標的配列との間の精妙な配列相補性が失われる可能性があるので、PCRアッセイにおいて見逃されやすい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gomella LG. J of Urology. 158: 326-337 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
要約すれば、有用な診断試験には非常に高感度かつ信頼できる定量性が必要とされる。血液1ml中における1個の腫瘍細胞の存在が検出できる血液試験が開発できれば、それは平均して循環している全部で3000〜4000個の細胞に匹敵するであろう。動物において腫瘍を確立するための接種実験において、実際に、そのような数の細胞が腫瘍の確立を引き起こすことができる。さらに、3000〜4000個の循環細胞が腫瘍中の全細胞の0.01%である場合、全部で約4x10個の細胞が含まれるであろう。そのような数の細胞を含む腫瘍は、現在のいずれの方法によっても見ることができないであろう。それゆえ、腫瘍細胞がガンの初期段階において流出する場合、上記の感度を有する試験によりガンが検出されるであろう。腫瘍細胞が腫瘍サイズといくらか関連性をもって流出する場合、腫瘍負荷を評価するための定量的試験が有益であろう。従来は、非常に初期段階の循環腫瘍細胞の存在に関する情報がなかった。さらに、かかる細胞の存在およびかかる情報のポテンシャルに関する医学文献には非常に多くの疑義がある。一般的にいえば、初めのうちは、腫瘍は十分に限定されたものであり、それゆえ、初期段階の疾病における循環細胞が存在しても極めてわずかである。さらに、早期にガン細胞を検出できることが有用な情報を与えるかどうかについても疑義がある。
【0011】
上記のことより、二次腫瘍の確立の前に転移能を有する循環中の細胞を同定するための方法、特にガンの初期において同定する方法が渇望される。かかる試験が慣用的なイムノアッセイに優るものであるという利点を理解するために、高感度イムノアッセイは10−17モルという低い機能的感度の限界を有すると考える。1個の腫瘍細胞が1mlの血液から捕捉され、分析されうる場合、表面受容体の分子数は、細胞1個あたり100000個と考えられ、それは10−19モルである。細胞上の約300個の分子が検出できるので、かかるアッセイは10−22モルのオーダーの機能的感度を有し、非常に注目すべきことである。かかる稀な細胞の単離における感度レベルを達成するために、そして、それらの細胞の特徴を変化または妨害しないやり方でそれらの細胞を単離するためには、膨大な仕事が必要である。
【0012】
多くの研究室および臨床的方法は、稀な細胞を生物学的試料から単離するために生物学的に特異的なアフィニティー反応を用いている。通常には、かかる反応は診断試験、または広範な標的物質の分離、特に、細胞、蛋白、細菌、ウイルス、核酸配列等のごとき生体物質の分離に使用されている。
【0013】
標的物質と別の物質(標的物質が特異的に結合する)との間の複合体形成に基づいて、上記標的物質を分析または分離するために種々の方法が利用できる。未結合物質からの複合体の分離を、重力を用いて、例えば、標的物質とカップリングした微粒子またはビーズを静置することにより、あるいは別法として遠心分離することにより行うことができる。所望ならば、かかる粒子またはビーズに磁性を帯びさせて結合/分離工程を容易にしてもよい。磁性粒子は当該分野においてよく知られており、免疫および他の生物学的な特異的アフィニティー反応において使用されている。例えば、米国特許第4554088号およびImmunoassays for Clinical Chemistry, pp. 147-162, Hunter et al. eds., Churchill Livingston, Edinburgh (1983)参照。一般的には、磁力または重力による分離を容易にする材料をこの目的に使用できる。しかしながら、磁力による分離手段が選択されるべき手段であることが明らかとなっている。
【0014】
サイズに基づいて磁性粒子を分類でき、すなわち、大(1.5ないし約50ミクロン)、小(0.7ないし1.5ミクロン)、あるいはナノ粒子(nanoparticle)とも呼ばれるコロイド状(<200nm)に分類できる。フェロ流体(ferrofluid)またはフェロ流体様物質(ferrofluid-like materials)としても知られ、古典的なフェロ流体の特性の多くを有する後者を、本明細書において、コロイド状超常磁性粒子ということがある。
【0015】
上記タイプの小型磁性粒子は、生物学的に特異的なアフィニティー反応を用いる分析において非常に有用である。なぜなら、それらは二官能基ポリマー(例えば、蛋白)でうまく被覆され、非常に大きな表面積を有し、合理的な反応キネティクスを有するからである。0.7〜1.5ミクロンの範囲の磁性粒子が、例えば、米国特許第3970518、4018886、4230685、4267234、4452773、4554088および4659678号を含む特許文献に記載されている。これらの粒子の特定のものは、免疫学的反応用の有用な固体支持体であると開示されている。
【0016】
上記のような小型磁性粒子は、一般的には、2つの大きなカテゴリーに分類される。第1のカテゴリーは、永久に帯磁可能な粒子または強磁性体粒子を包含する。第2のカテゴリーは、磁場に置かれた場合にのみバルク(bulk)磁性挙動を示す粒子である。後者は磁気応答粒子と呼ばれる。磁気応答挙動を示す材料は超常磁性材料と呼ばれることがある。しかしながら、通常には強磁性体と考えられる材料、例えば、磁性を帯びた酸化鉄は、直径約30nmまたはそれ未満の結晶とした場合、超常磁性として特徴づけられる。対照的に、強磁性材料の比較的大きな結晶は、磁場に曝露した後、永久磁石の性質を保持し、強力な粒子間相互作用によりその後も凝集する傾向がある。
【0017】
上記の小型磁性粒子と同様に、大きな磁性粒子(>1.5ミクロンないし約50ミクロン)も超常磁性挙動を示す可能性がある。かかる材料の典型例はUgelstadによって米国特許第4654267号に記載されており、Dynal(Oslo, Norway)により製造されている。Ugelstadの方法は、膨潤性ポリマー粒子の合成を含み、磁性結晶が膨潤粒子に包埋される。分散した磁性結晶の存在下でポリマー粒子を合成することにより、同じサイズ範囲の他の材料を製造する。この方法は、ポリマーマトリックス中に磁性粒子をトラップし、かくして、磁性材料が選られる。いずれの場合にも、選られる粒子は超常磁性挙動を示し、磁場を除去すると容易に分散しうることにより明らかである。すでに言及し、後でさらに詳述する磁性コロイドまたはナノ粒子とは異なり、これらの材料ならびに小型磁性粒子は粒子1個あたりの磁性材料の質量が大きいので、簡単な研究室用磁石により容易に分離される。よって、200〜300ガウス/cmないし約1.5キロガウス/cm程度のゆるやかな勾配で分離が行われる。一方、コロイド状磁性粒子(約200nm未満)は、拡散エネルギー、粒子1個あたりの磁性材料の質量が小さいこと、およびStokes抗力により、実質的に急な磁力勾配を必要とする。
【0018】
Owenらに付与された米国特許第4795698号は、ポリマー存在下におけるFe2+/Fe3+塩からのマグネタイトの形成により製造されるポリマーで被覆された、コロイド状超常磁性粒子に関するものである。Moldayに付与された米国特許第4452773号には、Owenらの特許に記載されたものと特性が類似した材料が記載されており、その材料は、非常に高濃度のデキストランの存在下において、塩基を添加することによりFe2+/Fe3+からマグネタイトおよび他の酸化鉄を生成させることにより製造される。両方の方法により得られた粒子は数カ月程度の長い期間観察しても、水性懸濁液から沈降する傾向を示さなかった。そのようにして製造された材料はコロイドの特性を有し、細胞分離において非常に有用であることが証明された。Moldayの方法はMiltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, GermanyおよびTerry Thomas, Vancouver, Canadaにより商業化されている。
【0019】
超常磁性コロイド状粒子の別の製造方法が米国特許第5597531号に記載されている。Owenら、またはMoldayの特許に記載された粒子とは対照的に、後者のこれらの粒子は、25ないし120nmの範囲のほとんど結晶性のクラスターに分散されている、予め形成された超常磁性結晶上に二官能基ポリマーを直接被覆することにより製造される。得られた粒子(本明細書では直接被覆粒子という)は、MoldayまたはOwenらにより記載されたのと同じような正味のサイズのコロイド粒子よりも有意に大きな磁気モーメントを示す。
【0020】
流体媒体に磁場を適用して強磁性体を流体媒体から分離するという磁気による分離法は知られている。対照的に、比較的弱い磁気応答性に関連して、コロイド状の超常磁性粒子が懸濁状態を維持する傾向は、急勾配の磁気的分離(HGMS)法を用いてかかる粒子が懸濁されている流体媒体からそれらを分離することを必要とする。HGMS系において、磁場勾配、すなわち、空間的な導関数は、一定ポイントにおける磁場強度により及ぼされる影響よりも大きな影響を懸濁粒子の挙動に及ぼす。
【0021】
HGMS系は2つの大きなカテゴリーに分類される。かかる1のカテゴリーは、分離チャンバーまたは容器にもっぱら外付けされる磁気回路を用いる磁気的分離系を含む。かかる外部分離器の例はLibertiらに付与された米国特許第5186827号に記載されている。この特許に記載されたいくつかの具体例において、磁石の同種の極が磁場に対向して配置されるように非磁性容器の周囲付近に永久磁石を置くことにより、精妙な磁場勾配が形成されている。かかる系において得ることのできる試験媒体中の磁場勾配の強さは、磁石の強さおよび磁石間の距離により制限される。それゆえ、外部勾配系を用いて得ることのできる勾配には一定の限界がある。
【0022】
もう1つのタイプのHGMS分離器は、試験媒体中に配置された強磁性収集構造(ferromagnetic collection structure)を用いるものであり、該構造は、1)適用される磁場を強かするため、および2)試験媒体中に磁場勾配を生じさせるために配置される。1の知られたタイプの内部HGMS系において、微細スチールウールまたはガーゼが磁石に隣接して配置されたカラム中に充填される。適用される磁場はスチールワイヤー付近で集約され、その結果、懸濁磁性粒子がワイヤー表面に引き付けられ、これに付着する。かかるワイヤー上に形成された勾配はワイヤー直径に反比例するので、直径の増大に伴って磁気が到達しにくくなる。それゆえ、非常に急な勾配系を形成することができる。
【0023】
内部勾配系の欠点の1つは、スチールウール、ガーゼ材料、またはスチールマイクロビーズを使用すると、交差したワイヤー付近または交差したワイヤー間の格子中における毛細管現象により試験媒体の非磁性成分がトラップされうることである。かかる内部勾配カラムに対して種々の被覆法が適用されてきた(例えば、Miltenyiに付与された米国特許第5693539号およびKronickに付与された米国特許第4375407号)。しかしながら、かかる系の大きな表面積は吸着による回収率の問題をさらに生じさせる。それゆえ、特に、非常に低頻度で捕捉される物質の回収率が分離の目的である場合には、内部勾配系は望ましくない。さらにそのうえ、内部勾配系は自動化が困難であり、コストが高い。Owenら、およびMoldayにより記載された材料は両方ともかかる急勾配カラムの使用を必要とする。
【0024】
対照的に、細胞分離のために外部勾配を用いるHGMSアプローチは多くの利便性を提供する。まず、試験管、遠心管またはバキュテイナー(vacutainers)(採血に用いる)のごとき単純な研究室用容器を使用することができる。上記米国特許第5186827号の4極/6極デバイスあるいはLibertiらに付与された米国特許第5466574号に記載の対向双極配置の場合と同様に、外部勾配が分離細胞の単層を生じさせる種類のものである場合、細胞の洗浄またはその後の操作が容易になる。さらに、試験管または同様の容器からの細胞の回収が簡単で、効率のよいプロセスである。急な勾配のカラムからの回収と比較した場合、このことは特に当てはまる。また、かかる分離容器はもう1つの重要な特徴を提供し、その特徴とは試料体積を減少させうることである。例えば、特定のヒトの血液細胞サブセット(例えば、磁気的に標識されたCD34+細胞)を、粘度を低下させるためにバッファーで50%に希釈された10mlの血液試料から単離する場合、適当な4極磁気デバイスにおいて分離容器として15mlのコニカル試験管を使用することができる。15mlの溶液から始めて、最初の分離を行い、回収した細胞を3mlに再懸濁する。次いで、2回目の洗浄/分離を行い、単離細胞を最終体積200μlに再懸濁する。洗浄および/または分離、ついで、再懸濁して非結合細胞を除去した後、CD34+細胞を効率的に200μlの体積に再懸濁することができる。これらの分離器に対して最適化された直接被覆されたフェロ流体を用いて適当に処理された容器中で注意深く行う場合、細胞の回収は非常に効率的であり、抗原密度に依存して40〜90%の回収率である。かかる方法および試薬は、上記の種類のガン試験に必要な感度を達成するために必須である。
【0025】
磁気的分離を行うことができる効率、ならびに磁気標識された細胞の回収率および純度は多くの要因に依存するであろう。これらは、分離される細胞数、かかる細胞の受容体密度、細胞1個あたりの磁気負荷、磁性材料の非特異的結合(NSB)、使用する手法、容器の性質、容器表面の性質、媒体の粘度ならびに磁使用する気的分離デバイスのごとき事項を包含する。よくあることだが、系の非特異的結合のレベルが実質的に一定ならば、標的集団が減少するにつれて純度が低下する。例えば、NSBが0.8%である系が元の混合物中0.25%の集団を80%回収する場合、純度は25%であろう。しかしながら、最初の集団が0.01%(10個の共存細胞中、標的細胞1個)であり、NSBが0.001%である場合、純度は8%であろう。純度が高くなればなるほど、分析が容易かつ良好になる。それゆえ、意味のある稀な細胞の分析を行うためには極端に低い非特異的結合が必要となることは明らかである。
【0026】
標的細胞の集団が小さくなればなるほど、磁気的に標識し、回収することが困難になるという事実はあまり明らかでない。さらにそのうえ、標識および回収は、使用する磁性粒子の性質に著しく依存する。例えば、Dynalビーズのごとき大型の磁性粒子とともに細胞をインキュベーションする場合、ビーズが大きすぎて効果的に拡散が起こらないので、系の混合により生じる衝突により細胞を標識する。よって、非常に初期のガンの腫瘍細胞の場合のように、細胞が、血液1mlあたり1個またはそれ未満の頻度で集団中に存在する場合、標的細胞を標識する確率は、系に添加された磁性粒子数および混合時間の長さに関係するであろう。かなりの時間、細胞をかかる粒子と混合することは有害なので、できるかぎり粒子濃度を増加させることが必要である。しかしながら、分離の際に大量の磁性粒子と混合された稀な細胞に代えて、他の血液細胞と混合された稀な細胞を用いることがあるので、添加できる磁性粒子の量には限界がある。後者の条件は、目的細胞を計数し、あるいはそれらを試験する能力を著しく改善することはない。
【0027】
稀な出現頻度(血液1mlあたり1ないし50個)の細胞を単離するための大量の粒子の使用にはもう1つの欠点がある。大きな磁性粒子は非常に簡単な設計で、比較的低い磁場勾配の外部勾配の使用を可能にするという事実にもかかわらず、大きな粒子はカゴ様のクラスターを細胞周囲に形成する傾向があり、細胞を見たり分析したりすることを困難にする。それゆえ、分析前に磁性粒子を標的細胞から遊離させなくてはならず、粒子の遊離は他の問題を明らかに誘発する。
【0028】
上記のことに基づけば、特に、目的サブセットが集団全体のごく小さなフラクションを占める場合において、非常に磁性があり、非特異的結合をあまりしないコロイド状磁性粒子を用いる、外部磁場デバイスによる急な勾配での磁気的分離は、真核細胞の混合集団からの目的細胞のサブセットを分離するために選択される方法である。かかる材料は、その拡散する性質により、血中の腫瘍細胞のごとき稀な物質を容易に見出して磁気的に標識する。一般的には、かかる分離は、目的の特定細胞サブセットに対してユニークな細胞表面抗原の同定に依存し、腫瘍細胞の場合には、抗原は適当なモノクローナル抗原が抱合したフェロ流体を標的化できる腫瘍抗原であってもよい。別法として、血液試料を試験する場合には、通常には血中に見出されない上皮細胞のごときクラスの細胞上の決定因子は、適当な受容体を提供するものであってもよい。
【0029】
かかる分離を行って適当な磁気負荷を達成するためにコロイド状磁性材料を用いることについては他の理由がある。適当な負荷があると、十分な力が細胞に作用して、中程度に希釈された全血のごとき粘性媒体においてさえも、単離を行うことができる。説明したように、約200ナノメーター未満のコロイド状磁性材料はブラウン運動を示し、ブラウン運動は稀な細胞と衝突して磁気的に標識する能力を著しく高める。このことは、米国特許第5541072号に示されており、平均直径100nmのコロイド状磁性粒子またはフェロ流体を用いた、非常に効果的な腫瘍細胞追放実験の結果が記載されている。重要なことに、このサイズ範囲またはそれ未満のサイズ範囲のコロイド状材料は、一般的には、細胞の試験を妨害する。そのようにして回収された細胞を、フローサイトメトリー、レーザースキャンニング顕微鏡、または可視もしくは蛍光法を用いる顕微鏡により試験することができる。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、ガンの検査・診断および治療に重要な臨床的成果をもたらすいくつかの重要な知見に基づく。これらは、1)臨床的に局在化した初期腫瘍を有すると考えられる患者の血中に腫瘍細胞が存在すること;2)循環系に存在する腫瘍細胞の数は、その初端から終末段階に至るまでのガンのすべての段階と相関関係があること;ならびに3)循環系に存在する腫瘍細胞の数の変化は疾病の進行を示すものであること、である。循環腫瘍細胞数の減少は、患者の状態に改善または治療効果を示すものであり、一方、その増加は疾病の悪化を示すものである。
【0031】
本発明は、生物学的試料由来の腫瘍細胞のみならず、稀な細胞、あるいは他の生体物質を特徴づけるための迅速かつ効果的なスクリーニング法を提供する。本発明方法は、目的物質の効果的な豊富化を可能にする非常に高感度の分析法を提供する。標的の生体物質の豊富化を確実にし、その一方で分析前に残渣および他の妨害性物質の大部分を除去する、この二段階法は、実施されそうにない試料サイズの試験を可能にする。本明細書記載の方法は、ユニークなやり方で、多パラメーターフローサイトメトリー的、顕微鏡的および免疫細胞化学的分析を用いる免疫磁気的豊富化の要素を総合したものである。密度勾配遠心分離またはパンニングまたは適当な標識による標的細胞密度の変化のごとき他の豊富化手段を用いてもよい。好ましい具体例によれば、本発明方法は、ガンの進行段階識別、モニタリングおよびスクリーニングのための全血アッセイを可能にする。アッセイの高感度である性質は残存疾病の検出を可能にし、かくして、ガンの再発のモニタリングを可能にする。
【0032】
本発明の1の具体例において、稀な目的細胞を含有している可能性のある混合細胞集団を含む生物学的標本を患者から得る。ついで、(i)稀な細胞の決定基あるいは血液細胞上に見出されるものとは異なるクラスの決定基と特異的に反応する生物学的に特異的なリガンドにカップリングされた磁性粒子、ならびに(ii)稀な細胞を標識する少なくとも1種の生物学的に特異的な試薬と生物学的標本とを混合することにより免疫磁性試料を調製し、試料中の他の成分を実質的に排除する。標本中に目的細胞が存在する場合には、未標識フラクションおよび標識された稀な目的細胞を含む磁性フラクションに試料を分離する磁場に、得られた免疫磁性試料を供する。そのようにして単離された細胞集団を分析して、稀な細胞の存在および数を決定する。好ましい具体例において、この方法に使用する粒子はコロイド状ナノ粒子である。
【0033】
本発明のもう1つの具体例において、生物学的標本を患者から得る。ついで、免疫磁性試料を調製し、稀な細胞の決定基あるいは血液細胞上に見出されるものとは異なるクラスの決定基と特異的に反応するモノクローナル抗体にカップリングされたコロイド状磁性粒子と生物学的標本とを混合する。モノクローナル抗体のかわりに、1本鎖抗体または抗体を人為的に加工したフラグメントを用いてもよい。調合物を磁場に入れて、標本中の稀な細胞生物を豊富化させる。リポーター分子で標識されたモノクローナル抗体の第2のセットを試料に添加し、細胞を再度磁気的に分離して未結合試薬を除去し、バックグラウンドを低下させる。細胞のごとき対象物を同定できる核酸染料(dye)または他のリポーター分子も、本明細書において細胞特異的染料と称され、それらは試料に添加されて、フローサイトメトリー、顕微鏡観察、または他の分析手段による分析の前に、残存する非有核細胞または試料中の他の成分の排除を可能にする。細胞特異的染料はDNA、RNA、蛋白、または脂質と反応可能であり、生じるシグナル量が細胞に典型的な量であり、あるいは生じるイメージが細胞の典型的特徴、例えば、細胞および核膜、およびミトコンドリアを示すものである。
【0034】
本発明のさらなる具体例において、単離された細胞を、フローサイトメトリーまたは他の分析手段による免疫細胞化学的分析に供する。かかる分析は検査・診断を容易にし、重要な情報を医師に提供する。
【0035】
ガンを根絶するための医学的、放射線的または外科的処置の後に、本発明方法を用いて循環系に滞留するガン細胞を評価してもよい。本発明方法を、数年にわたる期間中、定期的に行って、循環系における腫瘍細胞の存在および数を疾病の発症、再発および/または進行のインジケーターとして患者を評価してもよい。
【0036】
本発明のさらなる態様において、磁性材料のナノ粒子コアならびに磁性コアへの生体高分子の非特異的結合を妨害するに十分な量の磁性コア上のベース(base)被覆材料を含む被覆された磁性粒子を含む磁性粒子が提供される。これらの磁性粒子は、非常に稀な細胞を効率的に単離するのに必要な豊富化のレベルを達成するために必須とされる極端に低い非特異的結合ならびに非常に効率的な標的捕捉により特徴づけられる。別の具体例において、下記のものを含む被覆された磁性粒子が提供される:i.磁性材料のナノ粒子コア;ii.磁性粒子上の不連続な被覆を形成し、近接可能な場合に、生体高分子へのベース被覆粒子の非特異的結合に貢献する少なくとも1つの不連続領域を提供するベース被覆材料;およびiii.生体高分子による不連続領域への近接を妨害するさらなる被覆材料。すぐ上で説明した粒子の磁性コア材料は、少なくとも1種の遷移金属酸化物を含んでいてもよく、適当なベース被覆材料は蛋白を含む磁性粒子を被覆するのに適した蛋白は、ウシ血清アルブミンおよびカゼインを包含するが、これらに限らない。さらなる被覆材料は、元の被覆蛋白あるいは磁性コア上のベース材料にカップリングする特異的結合ペアーの1のメンバーであってもよい。典型的な特異的結合ペアーは、ビオチン−ストレプトアビジン、抗原−抗体、受容体−ホルモン、受容体−ロガンド、アゴニスト−アンタゴニスト、レクチン−糖類、プロテインA−抗体Fc、ならびにアビジン−ビオチンを包含する。1の具体例において、特異的結合ペアーのメンバーは、二官能基連結化合物を介してベース被覆材料にカップリングする。典型的な二官能基連結化合物は、サクシンイミジル−プロピオノ−ジチオピリジン(SPDP)、およびスルホサクシンイミジル−4−(マレイミドメチルシクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)を包含するが、ヘテロ官能基リンカー化合物のごとき他の種々のものもPierce, Rockford, Ill.から入手可能である。
好ましくは、本発明の被覆磁性粒子は70〜90%の磁石量を有する。好ましい具体例において、磁性粒子の主要部は90〜150nmの粒子サイズを有する。より単一分散(monodisperse)であるように、例えば、90〜120nmまたは120〜150nmの範囲であるように粒子を合成してもよい。典型的には、本発明の粒子は生物学的に適合しうる媒体中に懸濁される。
【0037】
本発明のさらなる態様において、循環している稀な細胞の存在に関して患者の試料をスクリーニングするための試験キットが提供される。該スクリーニングキットは:
i.稀な細胞上の第1の特徴決定基に対してアフィニティーを有する生物学的に特異的なリガンドに直接的または間接的ににカップリングした被覆磁性ナノ粒子;
ii.稀な細胞上に存在する第2の特徴決定基に対して結合特異性を有する少なくとも1種の生物学的に特異的な試薬;ならびに
iii.他の非標的物質または他の試料中の物質を分析から排除するための細胞特異的染料
を含む。
【0038】
特に好ましい具体例において、キットは、循環が細胞に関する生物学的試料のスクリーニングのために提供される。スクリーニングキットは:i.ガン細胞上の第1の特徴決定基に対するアフィニティーを有する生物学的に特異的なリガンドに直接的または間接的にカップリングした被覆磁性ナノ粒子;ii.ガン細胞上に存在する第2の特徴決定基に対して結合特異性を有する少なくとも1種の生物学的に特異的な試薬;ならびにiii.他の非標的物質を分析から排除するための細胞特異的染料を含む。本発明において提供されるキットは、稀でない細胞、または非腫瘍細胞に対してアフィニティーを有する抗体、生物学的バッファー、浸透バッファー、説明書、さらに所望ならば情報シートをさらに含んでいてもよい。好ましい具体例において、コロイド状磁性粒子は抗EpCAM(上皮細胞接着分子に対する結合特異性を有する抗体)と抱合され、生物学的に特異的な試薬は一群のモノクローナル抗体を含み、細胞特異的染料は核酸を染色する。
【0039】
本発明のキットは、循環系中の転移性ガン細胞のタイプならびにかかる細胞の転移能および攻撃性を診断するための試薬を含んでいてもよい。この具体例において、キットは、上記試薬のほかに、ガンの診断を容易にするためのさらなる抗体マーカーを含んでいてもよい。乳ガンを例として用いた場合、かかる抗体は抗MUC−1、抗エストロゲン受容体、抗プロゲステロン受容体、抗CA27.29、抗CA15.5、抗カテプシンD、抗p53、抗ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター、抗上皮成長因子、抗上皮成長因子受容体、抗BRCA1、抗BRCA2、抗前立腺特異的抗原、抗プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤および/または抗Her2−neu抗体を包含しうる。攻撃性および侵襲性のさらなるマーカーはルイスa(Lea)、シアリルルイスa(sLea)、インテグリン類(CD49b、CD49c、CD29)、ゼラチナーゼAおよびB(MMP−2、MMP−9)、組織コラゲナーゼ(MMP−1)、線維芽細胞活性化蛋白(FAP)、グアニジノベンゾアターゼ、CEA、S100ファミリー(S100A4、mtsl、18A2/mtsl、pEL−98、p9Ka、メタスタシン)、サイクリンAおよびE、p27、p53、血管内皮成長因子(VGEF)ならびにE−カドヘリンである。
【0040】
本発明のさらにもう1つの具体例において、ガンの再発、および/または治療への応答について患者をモニターするための試験キットが提供される。この特別なキットを用いて、血中における特定腫瘍の存在の危険性の高い患者を評価してもよい。患者のモニタリングに適したキットは、容器、抗EpCAMに抱合したコロイド状磁性粒子、特定のガン細胞(それについて患者をモニターする)に特異的な少なくとも1種ノモノクローナル抗体ならびに細胞のような対象を同定できる蛍光リポーター分子、例えば、核酸染料または膜染料を含むであろう。乳ガン患者のモニタリングに適したキットは、特定の乳ガンマーカー、例えば、Her−2−neuに対して結合アフィニティーを有する抗体を含む。上記キットは、乳ガンに関して患者をスクリーニング、診断およびモニタリングするのに適している。試験キット中に提供される抗体を変更することのみにより、多くの異なるガンをスクリーニング、診断およびモニターできることが、当業者により理解されるであろう。例えば、試験対象が前立腺ガンの存在に関して評価される場合、前立腺ガン特異的抗原に対して特異的な抗体を用いることができる。前立腺ガンの他のマーカーは、前立腺酸性ホスファターゼ、クレアチンキナーゼ、チモシンb−15、p53、HPC1ベーシック前立腺遺伝子、ならびに前立腺特異的膜抗原を包含する。
【0041】
ガン治療成功のカギは早期診断である。本明細書に示すデータに基づけば、本発明の血液試験を用いて、ガンの診断を受けていない患者の血液をスクリーニングし、他の方法を用いて検出できるよりも早期にガンを検出することができると思われる。かかる患者は、ある種のガンの病歴を有する家族、ガンに関連していることが知られているある種の突然変異を有する者等を包含する。
【0042】
ガン細胞は周囲組織に侵入し、組織バリアを破壊するので、腫瘍細胞は、固形腫瘍の発達の非常に初期の段階(すなわち、腫瘍が10〜10個の腫瘍細胞を含む時点)において組織空間および毛細血管に侵入し、結局は血流中に至るものと仮定される。図8参照。その時点において、腫瘍細胞アポトーシスにより細胞死するか、あるいは休眠状態となる。なぜなら、それらは異所性環境においてまだ生き残ることができず、あるいは成長できないからである。現在のところ、かかる小さな初期腫瘍を検出する方法はない。腫瘍が大きくなった場合に、特定タイプのガンに使用可能な高感度方法はある。例えば、乳房撮影は乳房中の2x10個の乳ガン細胞を検出することができる。腫瘍細胞が5x10ないし10個である場合には、さらに頻繁に乳房の腫瘍が検出される。この初期段階において、大部分の流出腫瘍細胞が死ぬと仮定される。しかしながら、腫瘍が10ないし108〜9個までに増殖する何世代かにわたり、遺伝学的に不安定な腫瘍細胞のクローンはさらに遺伝学的変化を遂げ、より迅速に増殖する攻撃的な変異細胞を生じる。これらの細胞が二次腫瘍を確立していく可能性は非常に高い。しかしながら、腫瘍の大部分において、診断は非常に後期において行われ、例えば、膵臓、胃、卵巣、腎臓、肺、結腸等は、通常には、1010〜1012個の腫瘍細胞が存在する場合に診断される。この時点までには、腫瘍はしばしば周囲組織に侵入し、そして/あるいは転移している。上記のことに鑑みると、二次腫瘍の確立前に循環性のガン細胞を効果的に検出する試験が、ガンの診断および治療において極めて有益であるということは明らかである。本明細書記載の血液試験はかかる検出を可能にするものである。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、ガンのスクリーニング、段階の決定、化学療法に対する応答、ガンの再発等のモニタリングに有用な方法・方法が提供される。より詳細には、本発明によれば、生物学的試料から単離された腫瘍細胞または他の稀な細胞の分析および計数を容易にする試薬、方法および試験キット、ならびにこれらの方法および試験キットに使用される磁性粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、既知数の腫瘍細胞を末梢血中に導入し、免疫磁気的選択後に回収し、顕微鏡(パネルA)またはフローサイトメトリー(パネルB)により分析するモデル実験の結果を示す。
【図2】図2は、乳ガンの離れた部位への転移を有する患者から、研究開始後48、175および300日目に得た血液10mlからの免疫磁気的細胞選択後に得られた細胞懸濁液のフローサイトメトリー分析を示す。免疫磁気的選択後、上皮細胞特異的フィコエリスリン(PE)抱合モノクローナル抗体、白血球特異的CD45 PerCP抱合モノクローナル抗体および核酸染料を用いて細胞を染色した。核酸染料についての閾値を超える物質をリストモード中に獲得し、試料の85%を分析した。腫瘍細胞に着目して黒色で示し、その数を右上に示す。残存白血球および残渣からなるバックグラウンド物質は灰色で示す。
【図3】図3は、急性乳ガンの8人の患者の異なる時点における10mlの血液中の上皮細胞数および疾病の臨床的活性を示す。表1に示すように、疾病の臨床的活性をカテゴリー1から4までに分類した。上部の棒は化学療法の期間の長さを示す。パネルA,それぞれアドリアマイシン(ADR)90および110mg/m。パネルB,ADR 30mg/m/週、ビノレルビン(Vin) 20mg/m/週、ADR 160mg/m/週、ADR 20mg/m/週。パネルC,ビンクリスチン(Vinc) 0.7mg/m/週、メトトレキセート(MTX) 30mg/m/週。パネルD,ビンブラスチン(Vinb) 7mg/m/週、ADR 20mg/m/週、Vinb 6mg/m/週、5−フルオロウラシル(5FU) 700mg/m/週。パネルE,Vin 20mg/m/週、5FU 800mg/m/週+ロイコボリン 50mg/m/週。パネルF,イフォスファミド(IF) 18mg/m/週、5FU 850mg/m/週+ロイコボリン 35mg/m/週、5FU 605mg/m/週、Vin 20mg/m/週+ロイコボリン30mg/m/週。パネルG,Vin 20mg/m/週。パネルH,Vin 20mg/m/週。
【図4】図4は、乳ガンの病歴のある患者の末梢血から免疫磁気的選択された細胞の分析後に得られた結果を示す一連の顕微鏡図である。パネルA,サイトケラチンに関して陽性染色である、外科手術から3年後の患者由来の細胞。パネルB,外科手術から8年後の完全に寛解した患者由来の細胞(T2N1M1)をWright Gimsa染色したもの。パネルCおよびD,外科手術から2年後の患者由来の細胞(T2N0M0)をWright Gimsa染色したもの。100倍の対物レンズを装備したPixeraデジタルカメラを用いて映像を得た。
【図5】図5は、3人の前立腺ガン患者の疾病の重さと循環上皮細胞数との相関関係を示す一連のグラフである。
【図6】図6は、腫瘍の外科的除去後、結腸ガン患者の循環上皮細胞数が有意に減少することを示すグラフである。
【図7】図7は、結腸の転移性疾病を有する患者の循環上皮細胞数が、転移性疾病の重さおよび範囲に伴って増加することを示すグラフである。
【図8】図8は、初期腫瘍から転移するまでに増殖するガンの進行を図式的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
好ましい具体例によれば、本発明は、生物学的試料からの稀な標的生体物質の迅速かつ効果的な単離を行うための組成物、方法およびキットに関する。血液試料中に存在する腫瘍細胞を単離し特徴づけるために記載された方法を効果的に用いることができ、同時に、非特異的結合細胞の選択を最小化することができる。
【0046】
多くの医師は、ガンは初期段階においては器官に限定された疾病であると考えている。本明細書に示したデータに基づけば、この考えは正しくない。実際、本明細書のデータは、現在使用できる方法を用いて最初に検出されて時までにガンがしばしば全身性の疾病となっていることを明らかにする。それゆえ、循環系中の腫瘍細胞の存在を用いて、乳房撮影またはPSA測定のごとき他の試験の代わりに、あるいは他の試験と併用してガンのスクリーニングを行うことができる。細胞上または細胞中の特異的マーカーに試行された適当なモノクローナル抗体を用いることにより、あるいは細胞の蛋白発現の関する他のアッセイを用いることにより、あるいは細胞mRNAの分析により、かかる細胞の起源器官、例えば、乳房、前立腺、結腸、肺、卵巣または他の非造血系を容易に決定することができる。かくして、腫瘍の徴候が本質的に存在しないが、ガン細胞を検出することができる場合に、ガン細胞の存在ならびに起源器官を同定することが可能となるであろう。本発明の非常に高感度で機能する比較的簡単な血液試験を用いてスクリーニングできるので、試験は「全血生検」と考えられる。さらにそのうえ、本明細書に示すデータに基づけば、ガンは、潜在的に非常に有害な転移性細胞の存在により特徴づけられる血液由来の疾病と考えるべきであり、それゆえ、適宜治療されるものである。例えば、外科手術後に、循環性腫瘍細胞の検出可能な証拠が絶対的にない場合、放射線照射または化学療法のごときフォローアップ治療が必要かどうかを、さらに臨床的研究を行うことにより決定してもよい。治療の必要がないとの決定は、かかる治療のコストを考慮すれば、意義のある有益な臨床的情報である。
【0047】
疾病の開始から末期段階に至るまで、循環系における腫瘍細胞数は疾病の進行段階と関連があることも、本発明のデータにより明らかである。
【0048】
本明細書の用語「標的生体物質」は、生物学的または医学的に興味が持たれる広範な物質をいう。例は、ホルモン、蛋白、ペプチド、レクチン、オリゴヌクレオチド、薬剤、化学物質、核酸分子(例えば、RNAおよび/またはDNA)ならびに細胞、ウイルス、細菌等のごとき生体粒子を包含する生物学的起源の粒子状分析物を包含する。本発明の好ましい具体例において、本発明の組成物、方法およびキットを用いて、母体循環系中の胎児細胞、または循環性ガン細胞のごとき稀な細胞を、非標的細胞および/または他の生体物質から効果的に単離することができる。用語「生物学的標本」は、細胞含有体液、末梢血、組織ホモジネート、乳首からの吸引物、およびヒト対象から得ることのできる稀な細胞の他のソースを包含するが、これらに限らない。典型的な組織ホモジネートは乳ガン患者の前哨節から得ることができる。用語「決定基」は、上記標的生体物質についていう場合には、生体特異的リガンドまたは生体特異的試薬により特異的に結合されうるものであり、特異的結合物質への選択的結合に関与し、あるいはその原因となる標的生体物質の一部分であって、その存在が選択的結合の生起に必要であるものをいう。基本的な言い方において、決定基は、生体物質上の分子接触領域であり、特異的結合ペアーの反応において受容体により認識される。本明細書の用語「特異的結合ペアー」は、抗原−抗体、受容体−ホルモン、受容体−リガンド、アゴニスト−アンタゴニスト、レクチン−糖類、核酸(RNAまたはDNA)ハイブリダイゼーション配列、Fc受容体またはマウスIgG−プロテインA、アビジン−ビオチン、ストレプトアビジン−ビオチンならびにウイルス−受容体相互作用を包含する。当業者に明らかな他の種々の決定基特異的結合物質の組み合わせが本発明方法の実施において使用されると考えられる。本明細書の用語「抗体」は、免疫グロブリン、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、免疫反応性免疫グロブリンフラグメント、ならびに1本鎖抗体を包含する。また、本発明において、従来法により得られた抗体と同様の特異性をもって決定基を特異的に認識するペプチド、オリゴヌクレオチドまたはそれらの組み合わせの使用も企図される。本明細書の用語「検出可能に標識」は、物理的または化学的手段による直接的または間接的な検出または測定が試験試料中の標的生体物質の存在を示すものである物質をいう。有用な検出可能な標識の典型例は下記のものを包含するが、これらに限らない:光の吸収、蛍光、屈折、光の散乱、リン光、またはルミネセンスの特性に基づいて直接的または間接的に検出できる分子またはイオン;放射活性により検出できる分子またはイオン;核磁気共鳴または常磁性により検出できる分子またはイオン。光の吸収または蛍光に基づいて間接的に検出可能な分子のグループには、例えば、適当な物質を光を吸収しないものから光を吸収するものへと、あるいは蛍光を発しないものから蛍光を発するものへと変換する種々の酵素が含まれる。「実質的に排除」なる語句は、生物学的に特異的なリガンドまたは生物学的に特異的な試薬とその対応標的決定基との間の結合反応の特異性をいう。生物学的に特異的なリガンドおよび試薬はそれらの標的決定基に対して特異的な結合活性を有するが、他の試料に対する低レベルの非特異的結合を示すこともある。本明細書の用語「初期段階のガン」は、器官限定的であると臨床的に決定されたガンをいう。乳ガン患者については乳房撮影、あるいは肺ガン患者についてはX線のごとき慣用的方法によっては小さすぎて検出できない腫瘍も包含される。乳房撮影は約2x10個の細胞を有する腫瘍を検出できるが、本発明方法は、大体このサイズまたはそれより小さい腫瘍に由来する受難性ガン細胞の検出を可能にするはずである。本明細書の用語「豊富化」は、生物学的試料からの単核細胞の豊富化をいう。末梢血を出発物質として使用する場合、豊富化の程度を評価する場合には赤血球を計数しない。本発明方法を用いて、循環性上皮細胞を白血球に対して少なくとも2500倍、より好ましくは5000倍、最も好ましくは10000倍に豊富化してもよい。本発明の実施において使用する好ましい磁性粒子は、コロイドとして挙動するものである。かかる粒子はミクロン以下の粒子サイズにより特徴づけられ、一般的には、約200ナノメーター(nm)(0.20ミクロン)未満であり、長時間にわたる重力による溶液からの分離に対して安定である。他の多くの利点に加えて、このサイズ範囲は必然的に、細胞分析に通常適用される分析方法において粒子を見えなくする。90〜150nmの範囲であり、70〜90%の磁石量を有する粒子は本発明における使用を企図される。適当な磁性粒子は、磁性コアに結合された分子、例えば、物理的に吸着または共有結合されていて、コロイド特性を安定化させる分子により取り囲まれた超常磁性材料の結晶性コアから構成されている。好ましくは、被覆材料は、試料中に見出される生物学的高分子と標的コアとの間の非特異的相互作用を防止するのに有効な量で適用される。かかる生物学的高分子は、非標的細胞表面上のシアル酸残基、レクチン、糖蛋白および他の膜成分を包含しうる。さらに、該材料は可能なかぎり多くの磁石量/ナノ粒子を含むべきである。コアを含む磁性結晶のサイズは十分に小さく、磁気ドメイン全体を含まない程度である。ナノ粒子のサイズは十分に小さく、それらのブラウン運動エネルギーがそれらの磁気モーメントを超えない程度である。結果として、N極、S極の配列ならびにその結果としてのこれらのコロイド磁性粒子の相互吸引/反発は、中程度の強さの磁場においてさえも生じないと思われる。結局、磁性粒子は磁気勾配の外部磁場による分離器において分離可能なはずである。そのような特性は試料の取り扱いを簡単にし、強磁性ビーズまたはスチールウールを充填した、より複雑な内部勾配カラムに優る経済的利点を提供する。米国特許第4795698号、第5597531号および第5698271号に記載されたベース材料を修飾することにより上記特性を有する磁性粒子を調製することができる。ベース材料からのそれらの調製を以下に説明する。
【0049】
悪性腫瘍はその隣接組織に侵入する能力により特徴づけられる。一般的には、直径1mmの腫瘍が血管に分布し、動物試験によれば、腫瘍中に存在する細胞の4%までが24時間のうちに循環系に流出し得ることが示されている(Butler, TP & Gullino PM, 1975 Cancer Research 35: 512-516)。腫瘍の流出能は腫瘍の攻撃性に依存している可能性が最も高い。腫瘍細胞が連続的に循環系に流出しても、ごく小さいフラクションが離れた部位に転移するか、あるいは転移しないと考えられる(上記Butler & Gullino)。以下の仮定を用いて、次のように循環系における腫瘍細胞の出現頻度を概算することができる:1.直径1mmの腫瘍は10個の細胞を含み、4%または4x10個の細胞が24時間のうちに循環系に流出する;腫瘍細胞は1回の循環サイクルにおいてのみ生存する;3.血液体積は約5リットルである;4.拍出量は5000ml/分である。このような場合、直径1mmの腫瘍を有する患者の末梢血中の腫瘍細胞の出現頻度は約6個/血液100mlである。腫瘍質量の増加は循環腫瘍細胞の出現頻度の増加と比例していると考えられる。このことが見出される場合、このレベルの感度を用いる方法は、患者において遠くに転移した腫瘍負荷の評価ならびに局所的な疾病を有する患者における腫瘍負荷の評価の両方を容易にするであろう。局所的な疾病を有する患者の末梢血中の腫瘍細胞の検出は、初期段階で腫瘍を検出することのみならず、腫瘍の潜在的な侵襲性に関するインジケーターを提供することにおいて潜在能力を有する。
【0050】
いくつかの研究は、自己由来の末梢血幹細胞移植のために乳ガン患者から得たロイコフェレシス(leucopheresis)産物中のガン細胞の存在を報告している(Brugger W, et al. (1994) Blood 83: 636-640; Brockstein BE, et al. (1996) J of Hematotherapy 5: 617; Ross AA, et al. (1993) Blood 82: 2605; Ross AA. (1998) J of Hematotherapy 7: 9-18; Moss TJ, et al. (1994) J. Hematotherapy 3: 193-163)。これらの知見は、自己由来の移植のためのこの方法の使用に対する批判を増大させた。なぜなら、移植産物中の腫瘍細胞は転移を確立する潜在能力を有するからである(Racila E, et al. (1998)PNAS USA. 95: 4589-4594)。さらに、ロイコフェレシス産物は、散在性の疾病を有する個体から得た場合、腫瘍細胞を含む可能性がさらに高いことがわかった(上記のBrugger et al., 1994)。しかしながら、これらの研究は定量的データを報告しておらず、さらに、局所的な疾病を有する患者の末梢血中に腫瘍細胞が見出されることも報告していない。これらの観察結果から、末梢血中の腫瘍細胞を計数する非常に高感度かつ定量的な試験を用いて実際の腫瘍負荷を決定することができると仮定できる。かかる試験の実行可能性を評価するために、試験される血液の体積によってのみ制限される、循環ガン細胞の正確な計数を可能にする高感度の細胞アッセイが開発された。
【0051】
多くの異なる細胞分析形式を用いて豊富化された試料を同定し計数することができる。かかる分析形式の例は、ImmuniconのCellSpotterシステム、手動で細胞を観察するための磁気的細胞固定化手段、ならびに米国特許出願08/931067号および08/867009号にそれぞれ記載された自動光学的スキャンニング磁気的細胞固定化手段であるCellTracksシステムである。参照により上記米国特許出願の両方を、手動または自動の定性的および定量的細胞分析のための個々の装置および方法を開示するものとして本明細書に取り入れる。
【0052】
他の分析形式は、レーザースキャンニングサイトメトリー(コンピュサイト(compucyte))、明視野ベースイメージ分析(クロマビジョン(Chriomavision))、および毛細管体積測定(バイオメトリックイメージング(Biometric imaging))を包含する。
【0053】
本発明の好ましい具体例の方法および組成物を用いる血中の循環上皮細胞の計数は、血液からの上皮細胞の免疫磁気的選択(豊富化)、ついで、多パラメーターフローサイトメトリーによる試料の分析により行われる。免疫磁気的な試料の調製は試料体積の減少および標的(上皮)細胞の10倍の豊富化にとり重要である。多パラメーターフローサイトメトリー分析に使用する試薬は、2つの光スキャッター(lightscatter)および3つの蛍光パラメーターのリストモード(listmode)獲得により創製される多次元空間中のユニークな位置に上皮細胞が存在するように最適化される。これらは、1)白血球(非腫瘍細胞)を同定するための汎白血球抗原CD45に対する抗体;2)残存赤血球、血小板および他の非有核細胞の排除を可能にする、細胞タイプ特異的または核酸染料;ならびに3)サイトケラチンまたはEpCAMエピトープに対して特異性を有する抗体に対して指向された生物学的に特異的な試薬であって、細胞の免疫磁気的選択に使用されるものとは異なる試薬。
【0054】
豊富化された腫瘍細胞集団の分析方法は本発明の意図された用途に依存することが、当業者により認識されよう。例えば、後で説明するようなガンのスクリーニングまたは疾病の再発のモニタリングにおいては循環上皮細胞数は非常に少ない可能性がある。一定の「正常」レベルの上皮細胞が存在するので(静脈穿刺の間に導入される可能性が非常に高い)、上皮細胞を正常なものまたは腫瘍細胞として同定する分析方法は望ましい。そのような場合、顕微鏡による分析が最も正確であることがわかる。かかる試験は、形態の試験、既知腫瘍マーカーおよび/または腫瘍遺伝子の同定を含むものであってもよい。別法として、循環上皮細胞数が正常集団において観察される数をはるかに上回る疾病状況においては、かかる細胞を計数する分析方法が十分なはずである。本明細書記載の方法による患者の状態の決定は、正常集団中に存在する稀な循環細胞数の統計学的平均に基づく。初期段階のガンの患者および攻撃的な転移性のガンの患者の循環上皮細胞のレベルもまた、本明細書において説明するように統計学的に決定されうる。
【0055】
下記方法は本発明の実施を容易にするために提供される。
【0056】
患者. インフォームドコンセントを行って、対照患者ならびに乳ガン患者、前立腺ガン患者および結腸ガン患者から8〜20mlの血液試料を得た。1年間に数回、これらの患者の幾人かから採血した。血液試料を、抗凝血剤としてEDTAを入れたVacutainerチューブ(Becton-Dickinson)中に吸引した。試料を室温に保ち、採血後24時間以内に処理を行った。乳ガン患者、前立腺ガン患者および結腸ガン患者ならびに悪性疾病の証拠がない正常対照からの末梢血中の循環上皮細胞を計数した。診断、治療的介入および臨床的状態のデータを患者のチャートから回収した。共同研究を行っている団体の検閲部門は当該プロトコールを是認した。
【0057】
試料の調製. 上皮細胞接着分子(EpCAM)に対して特異的なモノクローナル抗体は上皮細胞起源の組織と広範に反応する(Stahel RA, et al. Int HJ Cancer Suppl. 8: 6-26 (1994); Momburg F, et al. Cancer reasearch. 47: 2883-2891 (1987); Gaffey MJ, et al. Am J Surg Path. 16: 593-599 (1992))。EpCAM上の2種の異なるエピトープを認識するGA73.3またはMJ37 EpCAM抗体(親切にも、Wistar Institute, Philadelphia, PAのD Herlyn(Herlyn D, et al. J Immunol Methods. 73: 157-167)およびCenter for Molecular Medicine and Immunology, NJのMJ Mattes(De Leij L, et al. Int J Cancer Suppl. 8: 60-63 (1993))により提供された)を、磁性ナノ粒子(フェロ流体)(Liberti PA & Piccoli SP, 米国特許第5512332号(1996年), Imunicon, Huntingdon Valley, PA)とカップリングさせた。内径13mmの使い捨て試験管中で抗EpCAM抱合フェロ流体とともに血液を15分インキュベーションした。4個の向かい合った磁石から構成される分離器(QMS13, Immunicon, Huntingdon Valley, PA)中に試験管を10分間置いた。分離後、血液を吸引し、捨てた。磁気分離器から試験管を取り出し、収集したフラクションを容器壁を伝わらせて2mlのFACS透過溶液(BDIS, San Jose, CA)中に再懸濁し、磁気分離器中に5分間置いた。溶液を吸引し、捨て、細胞を150μlの細胞バッファー(PBS,1% BSA,50mM EDTA,0.1%アジ化ナトリウム)に再懸濁し、これにフィコエリスリン(PE)抱合抗サイトケラチン(CAM5.2モノクローナル抗体)およびPeridinin Chlorophyll Protein(PerCP)−標識CD45を飽和条件において添加した。15分インキュベーション後、2mlの細胞バッファーを添加し、細胞懸濁液を5分間磁気的に分離した。分離されない懸濁液を捨てた後、集めた細胞を0.5mlのバッファーに再懸濁し、BDIS, San Jose, CAから販売されているProcount systemで使用する核酸染料を製造者の説明書に従って添加した。EpCAM抗体MJ37をフェロ流体上に使用するいくつかの場合において、GA73.3 PEを用いて選択上皮細胞を同定した。これらの場合において、細胞の透過処理は必要ない。フローサイトメトリー用試薬は、親切にも、BDIS, San Jose, CAから提供された。
【0058】
循環上皮細胞の組織ソースを決定するための典型的方法は、細胞化学および免疫学的同定法を用いる。5% BSAで30分間非特異的結合部位をブロックした後、以下のものを認識する一次モノクローナル抗体(かっこ内はモノクローナル抗体):サイトケラチン5、6、8、18(CK、5D3、LP34、Novocastra)、MUC−1糖蛋白(MUC−1、Ma695 Novocastra)または前立腺特異的抗原(PSMA)、およびNeil Bander博士(University of Texas Medical Center, Dallas, Texas)から得たクローンJ591を、スライドグラスに乗せた。試料を室温で20分インキュベーションし、PBSで5分間洗浄し、ついで、二次ウサギ抗マウスIg(Z0259, Dako Corp., Carpentria, CA)にさらに20分間曝露した。さらに2回洗浄した後、試料をアルカリ性ホスファターゼ−抗アルカリ性ホスファターゼ(APAAP)ウサギIg複合体とともに15分インキュベーションした。最後に、酵素基質(New Fuchsin, Dako Corp. CA)を添加し、赤色沈殿を生成させた。核をヘマトキシリンで対比染色した。光学顕微鏡に装備したKodakデジタルカメラを用いてデータを記録した。後で参照するために、データをCDに記録することができた。
【0059】
試料の分析. 試料の85%をFACSCaliburフローサイトメーター(BDIS, San Jose, CA)で分析した。核酸染料の蛍光上の閾値を用いてリストモードにおいてデータを得た。Paint-A-GatePro(BDIS, San Jose, CA)を用いて多パラメーターのデータ分析を行った。分析の判断基準は、前方光スキャッターにより明確にされるサイズ、直交光スキャッターにより明確にされる粒度、PE標識サイトケラチンモノクローナル抗体での陽性の染色ならびにPerCP標識CD45モノクローナル抗体で染色されないことを包含していた。各試料につき、上皮細胞に典型的な領域に存在する物質数を10mlの血液に対して正規化した。
【0060】
以下の実施例は本発明の実施を容易にするために提供される。これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0061】
全血から稀な細胞を効率的に単離するための改良磁性ナノ粒子の処方
稀な細胞(例えば、上皮由来の腫瘍の患者における腫瘍細胞、母親の血液中の胎児細胞等)は血液1mlあたり1個未満の頻度で存在しうる。かかる細胞の検出に必要な血液スメア数は極めて大きい。10mlの血液中に10個の稀な細胞があると仮定すると、5〜10x10個の白血球につき10個の腫瘍細胞があることになり、細胞遠心分離または沈降により細胞を顕微鏡スライドグラスに乗せ、目的とする稀な細胞に特異的な抗体で染色し、手動または自動で読み取ることができる。1枚のスライドグラスに乗せることのできる細胞の最大数は約500000個であり、そのことは、10mlの血液を処理するには100〜200枚のスライドグラスが必要であることを意味する。この方法による分析に必要な時間は、この方法を実用的でないものとし、経済的に実行不可能なものとする。結果的に、試料体積減少ならびに密度勾配分離または赤血球溶解による赤血球および血小板の除去のごとき豊富化法を稀な細胞の単離に使用して、分析すべきスライドグラスに乗せる細胞数を有意に減少させることとなる。
【0062】
上記のように、磁気による豊富化は細胞分離にとり好ましい方法であり、理想的には、この目的に使用されるナノ粒子は分析前に除去される必要はない。したがって、ナノ粒子は、分析の測定値に影響しないほど十分に小さいもの、すなわち、約250nm未満でなくてはならない。最も好ましくは、ナノ粒子は、フィルター滅菌できるように220nm未満である。さらにそのうえ、ナノ粒子は、単純な研究室用チューブ、すなわち、外部勾配時期分離器において試験管、遠心管、バキュテナー(vacutainers)等からの細胞の分離を可能にするように十分に大きく、十分に磁気に応答するものでなくてはならない。さらに、すでに説明したように、内部勾配デバイスは煩わしく、費用がかかり、稀な細胞の回収が不十分である。また、ナノ粒子および磁気デバイスは回収率が高く、再現性があり、非特異的結合が少ないはずである。米国特許第5597531号には、これらの特性の多くを有する、直接被覆(DC)粒子と呼ばれる非常に磁性を帯びた粒子が記載されている。これらのナノ粒子は結晶マグネタイトまたは他の磁性酸化物の半球状の塊から構成されていて、ポリマーまたは蛋白で被覆されている(ベース被覆磁性粒子)。それらの構造(磁性コアおよびポリマーコート、コア直径はコートの厚さよりも大きい)のために、それらは約80〜85%の磁石量である。これらのナノ粒子の非特異的結合は5〜8%の範囲であり、それゆえ、それらは稀な細胞の分離にとり非常に実用的というわけではない。よって、1mlあたり1個の細胞を豊富化する場合、約80%の捕捉効率であり、10mlの全血を用いて期待される最良の結果(白血球のみと考えて)は400万個につき8個、すなわち、16〜17倍の豊富化となる。しかしながら、米国特許第5597531号に記載された磁性粒子は、オープンフィールド分離器での分離および単純な研究室用チューブからの分離を行うための適当な磁気特性を有する。さらに、それらの平均サイズは上で示唆した限界値よりも十分に小さく、それゆえ、それらは種々の分析手順を妨害しない。それらの粒子を用いたさらなる研究によれば、細胞に対する非特異的結合に貢献する主要因子は、不完全な被覆によるナノ粒子上の裸の結晶酸化鉄の存在であることが見出された。かかる不完全に被覆された結晶は、それらが細胞表面上の負に帯電したシアル酸のごとき生物学的高分子に強く結合する可能性が非常に高い生理学的pHにおいて十分に強い正電荷を有する。粒子製造のための改良法は米国特許第54698271号に記載されている。該方法は被覆レベルを著しく高める高温被覆工程を含むという点で、これらの材料は’531号特許に開示された材料を改良したものである。この方法を用いて製造されるウシ血清アルブミン(BSA)被覆を有するナノ粒子は、例えば、米国特許第5579531号のDC−BSA材料と比較した場合、細胞に特徴的な非特異的結合が3〜5倍低下している。この非特異的結合の低下は、BSA被覆材料のレベル増加が直接的原因であることが示された。かかるナノ粒子を処理してBSA被覆を除去する場合、非特異的結合は高レベルに戻る。よって、酸化鉄結晶上に被覆されるBSA量と細胞の非特異的結合との間に直接的関係が存在することがわかった。典型的には、全血由来の細胞とこれらの粒子との非特異的結合は0.3%であり、米国特許第5579531号により製造される粒子よりも有意に良好である。よって、10mlの全血から、約200000個の非標的細胞が、豊富化の標的とされた細胞とともに単離されるであろう。
【0063】
非特異的結合の問題に加えて、言及すべき問題を以下に示す。米国特許第5579531号および第5698271号に記載されたようにして製造された異なるロットの磁性粒子を稀な細胞の枯渇または豊富化に使用する場合、回収率が一定でない。時々、回収率は85〜95%であるが、同じモデル系を用いた別の場合には40〜45%となることがある。これらの粒子の製造方法がかなりの範囲のサイズのばらつき(30nmから220nmまで)を生じるので、サイズのばらつきおよび詳細には小さいナノ粒子の存在は標的の回収率に影響することが疑われ、それが確認された。小さいナノ粒子(30ないし70nm)は容易に拡散するので、大きいナノ粒子と比較して、それらは優先的に細胞を標識するであろう。内部勾配カラムのように、非常に急な勾配を用いる場合には、サイズにかかわらず、これらの材料の品質はほとんど差異を生じさせない。他方、外部勾配、またはマイクロビーズまたはスチールウールカラム上に生じうる磁力よりも弱い磁力を用いる場合には、細胞上の小さいナノ粒子の占領は有意な影響を有する。このことは、DCナノ粒子の分画および回収率に対する影響の研究による場合にあてはまることが結論的に示された。これらの研究および他の最適化実験によれば、磁力あるいはカラムによりナノ粒子を分画するための手段が確立され、極度に小さいまたは大きい粒子のないベース被覆磁性粒子が製造可能であった。例えば、最良には、80nm未満または130nmを超える材料が痕跡量である、平均直径100nmのベース被覆粒子を製造することができる。同様に、検知可能な90〜95nm未満の材料および160nmを超える材料を含まない、約120nmの材料を製造することができる。かかる材料は回収率が最適であり、60〜70nmのナノ粒子を含むことにより最適以下となりうる。本発明の実施に使用する好ましい粒子サイズ範囲は、ベース被覆粒子、例えば、BSA被覆マグネタイトについては90〜150nmである。Liberti et al. Fine Particles and Technology, 777-790(E. Pelizzetti編)(1996年)により記載された方法を用いてこの好ましい範囲に属する粒子を得てもよい。
【0064】
非特異的結合の問題にさらに言及するために、抗体が直接抱合したナノ粒子を製造するためのいくつかの経路を試みた。稀な細胞に特異的なモノクローナル抗体を、例えば、標準的なヘテロ二官能基の化学試薬を用いて、DC磁性粒子上のBSAベース被覆に直接カップリングさせた(本明細書では直接カップリング法という)。これらの目的に使用するヘテロ二官能基リンカーは、スルホ−MCCCおよびスルホサクシンイミジル−4−[マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレートを包含する。もう1つのアプローチにおいて、ビオチン化モノクローナル抗体を、ベース被覆粒子にカップリングしたストレプトアビジンにカップリングさせることができる。この抱合方法を、本明細書においてピギーバック(piggyback)法という。この方法において、直接カップリング法と同じ化学試薬により、ストレプトアビジンをベース被覆磁性粒子にカップリングさせる。1のピギーバックカップリング法において、モノビオチン化抗体をストレプトアビジン磁性粒子と1時間反応させ、ついで、残りのストレプトアビジン結合部位を遊離ニオチンで不活性化させる。抗体カップリング後に残りのストレプトアビジン部位を不活性化させて、稀な細胞の単離または細胞分析工程の間におけるビオチン化抗体の磁性粒子への結合を防止することが重要である。さらにそのうえ、ストレプトアビジンを不活性化させるこの手段は非特異的結合を阻止するものとして有効であることがわかった。種々の条件下でのかかる材料とビオチン化蛍光高分子とのインキュベーションは、結合蛍光物質を生じさせない。比較のために、両方の方法により、抗EpCAM抗体(GA73.3、Wistar Institute, Philadelphia, PAから得た)を磁性粒子にカップリングさせた。ついで、全血中に添加された結腸腫瘍細胞系(Colo−205)由来の細胞の選択ならびに白血球の非特異的結合(NSB)または持ち越し(carry-over)に関して両方の磁性粒子を比較した。最終試料中に存在する白血球は、磁性粒子に非特異的に結合した白血球および洗浄工程からの細胞の持ち越しの混合物であった。磁力による分離後に、分離開始時にチューブに付着した細胞または分離プロセスの間に磁力によらずに運ばれた細胞を洗い去ることが必要であることに注意。下表は当該2種の磁性粒子の比較を示す。
【表1】

【0065】
注目すべき第1のことは、抗体またはストレプトアビジンをBSAベース粒子にカップリングさせるだけで非特異的結合を有意に減少させるということである(データ示さず)。このことは、「裸の」結晶表面が細胞に結合するために細胞に近接する可能性が減少したためと考えられる。上表は、添加した細胞の回収率は両方のタイプの磁性粒子に関して同等であることを示す。しかしながら、白血球の非特異的結合は、直接抗体カップリングによる磁性粒子を用いた場合には3倍多かった。この相違は比較的小さいが、大量の血液を処理し分析する場合には有意なものとなる。2つのタイプの磁性粒子間の相違を支持する多くの観察結果に基づく合理的な説明は、ピッグバックカップリング法を用いて合成された磁性粒子上には、より多くの蛋白層が存在するというものである。かくして、磁性結晶表面はより多くの蛋白層で被覆され、立体的に「保護」されると思われる。このことは、非標的細胞の磁性粒子への結合を防止する。
【0066】
ピッグバックカップリング法において、磁性粒子上の制限された数のストレプトアビジン結合部位がビオチン−抗体とカップリングされ、残りの結合部位は上記不活性化プロセスにより遊離ビオチンで占領される。さらにもう1つのカップリング法において、遊離ビオチンのかわりにモノビオチン−BSAを用いて過剰のストレプトアビジン結合部位が不活性化され飽和される。このアプローチの原理は、モノビオチンBSAを用いる不活性化は、さらに細胞が未被覆領域と接触することを立体的に阻害する、すなわち、ナノ粒子をより良く被覆するということである。このプロセスが粒子にカップリングする蛋白量を増加させるということが、炭素の分析により示された。添加されたColo 205の全血からの回収率ならびに白血球の非特異的結合を評価する実験において、2種の磁性粒子調合物を比較した。結果を下表に示す。
【表2】

【0067】
制限された量のビオチンをBSAに抱合させて、得られる生成物の30〜40%が結合ビオチンを持たないようにすることによりモノビオチン−BSAを調製してもよい。
【0068】
要約すると、均一なサイズ分布およびビオチン−BSAにより不活性化されたストレプトアビジン結合部位を有する磁性粒子は、本発明のアッセイ方法において非常にうまく作動した。ビオチンによりブロックされたナノ粒子と比較すると、添加上皮腫瘍細胞の良好な回収率ならびに非特異的結合のほぼ1オーダーの減少はこれらの粒子を用いて達成された。よって、これらの材料およびそれらを用いて得られた結果は、さらに最適化されうる非常に有用な製品を明確化する。改良されたフェロ流体製品を可能なかぎり磁性を帯びさせて製造し、磁性コアと細胞を含有する血液中の物質との可能な相互作用をすべて排除するように被覆し(おそらく、無孔性単層で被覆)、サイズ範囲および分布を十分に明確化する。好ましい状況において、生物学的材料と相互作用しない被覆材料を使用する。かかる相互作用が不可避である場合、それらをブロックする手段が必要である。可能なかぎり磁性を帯びた材料については、米国特許第5579531号および第5698271号に記載されたようにして製造されたものが好ましい出発材料である。それらはベース被覆材料の明らかではあるが完全ではない単層を有する大きな磁性コアから構成されているので好ましい。BSAで被覆された100nmのナノ粒子に関しては、コアは約90nmの適当な磁性酸化物、例えばマグネタイトであろう。かかる磁性粒子は、コアおよび被覆材料の相対的サイズにより、明らかに可能なかぎり磁性を帯びている。被覆の機能が、ナノ粒子に巨視的な凝集を引き起こす望ましくない相互作用をさせないことであると考えると、このことは明らかである。また被覆は、溶媒分子との十分な相互作用を促進して、コロイドの挙動を維持させ、カップリングのための便利な化学的手段を提供する。米国特許第5579531号および第5698271号のナノ粒子もまた、それらが十分な単層被覆を有していて、単層中の「孔」をいくつかの方法で、すなわち、立体的および物理的に充填できるので出発材料として好ましい。明らかに、他のいずれかの系において、磁性コアの有効かつ完全な被覆を促進して、コア材料と血液成分との相互作用または他の非特異的効果を阻害する被覆は適当なものであろう。質量が小さいほど、被覆は良好にナノ粒子に付加することができ、その結果、ナノ粒子質量に対する磁石の質量の割合が最大となる。
【実施例2】
【0069】
転移性乳ガンを治療した患者中の循環上皮細胞の計数
図1は、本発明のアッセイ方法を用いて、全血中に添加された腫瘍細胞を単離する場合に結果を示す。パネルAは顕微鏡による分析を示し、パネルBはフローサイトメトリーを用いて得られた分析結果を示す。図2は、1人の転移性乳ガン患者から3つの時点において得た10mlの血液試料のフローサイトメトリー分析の3つの例を示し、フローサイトメトリーによる抗上皮細胞抗体に対する抗白血球抗体の相関を示す。図2中、パネルAは、上皮細胞に典型的な位置において検出され、存在する細胞を示す。パネルBには、108個の上皮細胞が検出されており、パネルCには、1036個の上皮細胞が検出されている。
【0070】
10mlの血液試料の分析において核酸染料上の閾値セットを越える物質数は5000ないし50000個の間を変動した。これらの物質は、細胞残渣および白血球からなっている。32人の対照の血液の分析において、上皮細胞に典型的な領域に存在する物質は0〜4個/血液10mlの範囲であった(平均値=1.0、標準偏差=1.2)。
【0071】
研究期間中8人の乳ガン患者は活性のある転移性疾病有していた。これらの患者において、10mlの血液中の上皮細胞数は0ないし1036の間を変動した。主観的判断基準、すなわち、骨の痛み、呼吸困難等ならびに客観的判断基準、X線、骨スキャン、CTスキャン、MRIおよびリンパ節サイズにより疾病の活性を評価した。表Iに示すように、患者をカテゴリー0から4までに分類した。
【表3】

【0072】
転移性疾病を有する8人の患者の血中の上皮細胞カウントの変動を図3に示す。プロット中の影を付けた部分は、陽性物質が対照において検出された範囲を示す。プロットは、化学治療剤を投与した場合も示す。図3のパネルAは、生命を脅かす疾病を有し、研究開始時に10mlの血液中に200個の上皮細胞を有していた患者を示す。高用量のアドリアマイシンは数値を正常範囲に低下させたが、アドリアマイシン中断後、数値が再び上昇した。アドリアマイシンの第2のコースを行った後、上皮細胞数は有意に減少したが、やはり正常範囲を超えていた。図3のパネルBは、43週間にわたる1人の患者の経過を示す。患者は研究開始時には無徴候であったが、過去において骨の転移性疾病を有していたことがわかった。正常レベル以上の上皮細胞が検出され、研究期間中着実に増加した。高用量のアドリアマイシンのコース後、短期間の上皮細胞数減少が見られた。この患者における疾病の活性はこの期間中に明らかに上昇した。図3のパネルCおよびDにおいて、あまり高くない疾病活性を有する2人の患者を示す。これらの患者において、研究機関中の上皮細胞数の変化は疾病の活性の変化も反映していた。パネルEおよびFに示す患者において、末梢血上皮細胞数は、研究の最終時点で増加したが、患者は依然として無徴候であった。
【0073】
パネルGに示す場合において、乳ガンの手術から3年後である研究の最初の時点では上皮細胞は検出されなかった(T2N1M0)。4週間後、フローサイトメトリーにより10mlの血液中に50個の上皮細胞が検出された。この時点で患者は疾病再発の臨床的徴候は有していなかった。フローサイトメトリーにより検出される細胞が悪性細胞の特徴と矛盾しない特徴を有するという形態学的確認を得るために、さらに血液試料を分析した。
【0074】
図4Aは、細胞質に対する核の割合が大きく、サイトケラチン染色陽性である2個の細胞を示すが、両方の特徴は上皮細胞起源の腫瘍細胞と矛盾しない。この知見から4週間後、患者は腋窩リンパ節の生検を受けた。生検で得た細胞は悪性起源であることが証明された。この時点のX線は肺への転移を示さなかったが、2週間後に行ったCTスキャンは肺への転移を示した。患者は肺への転移については無徴候であった。腋窩リンパ節の不都合の消失により測定されるように、患者はビノレルビンによく応答した。末梢血上皮細胞数は正常範囲のすぐ上のレベルにまで低下した。治療開始から28週間後に、末梢血上皮細胞数が増加し、医師の検診まで、腋窩節のサイズが増大した。転移性乳ガンを有するこれら8人の患者の末梢血上皮細胞数は、明らかに疾病の活性を反映し、研究期間中の治療および治療欠如に応答した。
【0075】
コロイド状磁性ナノ粒子を用いて上記実験を行った。上記のようにナノメーターサイズの磁性粒子がこの適用法に好ましいのであるが、この実験において、血中に低頻度で存在する腫瘍細胞の選択に関する大きなサイズの磁性ビーズの有効性も評価して、ミクロンサイズのビーズを用いて腫瘍細胞を選択できるかどうかも調べた。
【0076】
すでに述べたように、大きなサイズのビーズの使用に伴う欠点がある。これらは:(i)ビーズが大きすぎて拡散できず、かくして、ビーズと低頻度で存在する標的細胞との衝突には混合が必要であること、(ii)ビーズが非常に速く沈降し、連続撹拌がさらに必要であること、ならびに(iii)大きなサイズのビーズが細胞周囲に凝集し、分析を妨害することである。したがって、大きなサイズのビーズは、可視化または分析の前に、細胞表面から除去する必要がある。本発明によれば、ビーズ濃度を増加させ、連続混合を行うインキュベーション時間を延長して稀な細胞への結合を容易化することにより、大きなビーズを用いる細胞選択の効率を改善できることがわかった。この実験において、2.8μmのDynal抗上皮細胞ビーズ(Dynal, NY)を用いて、大きなビーズに関する最適条件下でのモデル研究における血液からの腫瘍細胞の選択の効率を試験した。これらのビーズは上皮腫瘍細胞に特異的なモノクローナル抗体と抱合される。既知数の腫瘍細胞(ガン細胞系)を正常血液中に添加して、ビーズでの選択後の回収率を調べた。腫瘍細胞は蛍光色素にて予め標識され、検出中に血液細胞と分別するようにした。プロトコールは製造者の推奨するものに従った。
【0077】
全血(5ml)を15mlのポリスチレン遠心管に入れ、ついで、20±3個の蛍光標識SKBR−3(乳ガン細胞系)細胞を添加した。SKBR−3細胞を予め核酸染色染料(Hoechst)にて染色して、ビーズによる選択後の検出を可能にした。5mM EDTA含む5mlのDulbeccoのPBSで血液を希釈し、希釈血液をロッカー(rocker)上4℃で15分混合した。50x10個のビーズを含む100μlのDynal抗上皮細胞ビーズを血液試料に添加し、ロッカー(rocker)上4℃で30分インキュベーションした。使用ビーズ数は全白血球数と同様、すなわち、白血球1個につきビーズ1個であったことに注意。磁力により標識した細胞を、試料チューブをDynal MPC磁力分離器中に6分間置くことにより分離した。上清を吸引後、集めた細胞を、0.1% BSAを含む3mlのDulbeccoのPBS中に再懸濁した。試料チューブをDynalのMPC中に戻して6分間置いて、持ち越し血液細胞を除去した。上清を吸引後、磁力により結合した細胞を、0.1% BSAを含む200μlのDulbeccoのPBS中に再懸濁した。
【0078】
選択した腫瘍細胞、非特異的結合血液細胞および過剰の遊離磁性ビーズを含む最終試料を免疫蛍光スライドグラス上にスポットし、腫瘍細胞を検出した。200μlの試料を10個の異なるウェル中にスポットし、遊離磁性ビーズを分散させた。各ウェルに存在する蛍光染色された腫瘍細胞を、蛍光顕微鏡を用いてカウントした。結果を表IIに示す。
【表4】

【0079】
結果は、平均して添加腫瘍細胞の67%がDynal磁性ビーズにより血液から回収されたことを示す。このことは、最適条件下において大きなサイズの磁性ビーズを用いて血中に存在する腫瘍細胞を効率的に選択できることを示唆するものである。しかしながら、この実施例において、血液からの腫瘍細胞の選択のみを評価し、分析を行わなかった。さらに、回収効率を決定することができた。なぜなら、細胞は強力な蛍光染料で前以て標識されていたからである。最終試料(200μl)は選択された腫瘍細胞(10〜17個)および非特異的結合白血球のほかに50x10個のビーズを含んでいた。ビーズのサイズ(2.8μm)はある種の血液細胞と同様であり、スライドグラス上の表面積の大部分を占める。それゆえ、回収率のデータを得るには、試料を数個のウェル上にスポットして遊離磁性ビーズを十分に分散させ、回収された腫瘍細胞の検出を可能にしなければならなかった。
【0080】
さらなる分析のための観察および染色を実行不能にする、細胞表面上のビーズが多数存在していた。この実施例において、腫瘍細胞を蛍光核酸染料にて前以て染色しておいたので、検出のためにさらに染色することは不要であった。しかしながら、磁性粒子に結合した細胞の起源組織を同定することが、しばしば好ましい。標識抗体を用いて臨床試料中に存在する腫瘍細胞を検出し特徴づけて、かかる同定を行う。したがって、標的細胞選択後、すなわち、分析前に、ビーズを細胞表面から除去し、試料から分離しなくてはならない。このことは、ナノサイズの磁性粒子にはあてはまらない。なぜなら、それらのサイズは細胞の分析を妨害しないからである。
【0081】
まとめると、この実施例は、大きな磁性ビーズを本明細書開示の方法に用いて循環腫瘍細胞を効率的に単離することができることを示す。
【0082】
ビーズを細胞表面から取るために用いる方法であって、単離細胞に有意なダメージを与えない方法がいくつかある。1の方法は、必要とされる抗原または抗体に対してより高いアフィニティーを有する過剰の特異的競合試薬を添加することにより細胞表面から抗体を駆逐することである。このタイプの機構を用い、ペプチド(Baxter Isolex 300)を用いて、臨床的適用例においてCD34により選択された細胞からビーズを取る。そのペプチドは、ビーズ上の抗体への結合に関してCD34抗原と競合し、細胞から抗体−ビーズ複合体を駆逐する。もう1つの方法はビーズと抗体との間の可逆的化学的リンカーを用いるものである。
【0083】
磁性ビーズへの抗体の抱合を行っている間に化学リンカーを挿入することができる。化学的連結は適当な条件下で開裂されて抗体からビーズ遊離させるものであってもよい。現在使用される1の方法は、磁性ビーズに抗体を連結するための核酸リンカーを用いる。核酸リンカーはポリヌクレオチドであり、DNAase酵素を用いて特異的に加水分解されうる。核酸リンカー中に存在するヌクレオチド結合の加水分解後、ビーズは抗体から遊離され、抗体は細胞に結合したままである。遊離されたビーズを磁気的分離により細胞懸濁物から除去することができる。ビーズから遊離された細胞を、顕微鏡またはフローサイトメトリーによるさらなる分析に使用することができる。
【0084】
この実施例は、大きなサイズの磁性ビーズを用いて血液から腫瘍細胞を単離することもできるが、細胞を標識するに十分な高濃度のビーズを使用し、ついで、分析前にビーズを細胞から遊離させることが条件である。
【実施例3】
【0085】
治療を意図して乳ガンを手術した後、疾病の証拠がない患者における循環上皮細胞の計数
手術後1〜20年たった37人の患者の末梢血を、上皮細胞の存在に関して、フローサイトメトリーにより試験した。1年間に7個までの末梢血試料をこれらの患者から取った。表IIIにおいて、各患者をリストし、手術時ないし手術後年月がたってからのTNM(腫瘍、節、および転移)段階により分類してある。また表IIIは、研究期間中に患者が治療(化学療法またはホルモン療法のいずれか)を受けたかどうかを示す。過去において離れた部位への転移の証拠を有していたが研究の時点で完全に寛解している6人の患者のうち3人において、上皮細胞が血中において対照群よりも高い頻度で存在することがわかった。また、離れた部位への転移の証拠のない31人の患者のうち9人において循環上皮細胞が見出された。
【0086】
これら9人の患者におけるサイトフローメトリーによる上皮細胞についての典型的な領域に存在する物質数は少なく、これらの物質を腫瘍細胞であると同定することを保証するものではない。スライドグラス上に免疫磁気的に選択された細胞を乗せることにより得られた細胞学的知見は、図4に示すようなそれらの細胞のアイデンティティの評価において多いに役立つ。図4のパネルAは、サイトケラチン染色陽性で、採血時に転移性疾病の証拠が無かった患者から得た2個の細胞を示す。パネルBは、過去において転移性疾病を有していたが、完全に寛解している患者から得た細胞を示す。パネルCおよびDにおいて、時点6において患者25の血液から単離された2個の細胞を示す。パネルCに示す細胞は悪性と矛盾しない特徴を有するが、パネルDの細胞は正常偏平上皮細胞の外観を呈している。
【表5】


TNM = 腫瘍, 節, 転移
Ys = 最初の手術からの年数
Tx = 治療, CT = 化学療法, H = ホルモン療法, - = 治療せず
1,2,3,4,5,6,7 = 上皮細胞数を調べた時点の番号
【実施例4】
【0087】
手術前に乳ガンと診断された患者における循環上皮細胞の計数
表IVは、本発明のアッセイを用いて13人の対照および30人の乳ガン患者を評価する、同様の臨床試験を行って得られた結果をまとめたものである。対照個体において、20mlの血液中の上皮細胞数は0〜5個の範囲であった(平均値1.5±1.8)。対照的に、器官限定的乳ガンを有する14人の患者(TXNOMOに分類される患者)の20mlの血液試料中には平均15.9±17.4個の上皮細胞が存在し、リンパ節の障害を有する患者においては47.4±52.3個存在し、また、離れた部位への転移を有する患者においては122±140個存在していた。対照群と乳ガン患者(転移ありまたはなし)との間の相違は非常に有意であった[多パラメーター分析(Kruskal-Wallis)によればP,0.001]。器官限定群と離れた部位への転移を有する群との間の相違は0.009(t試験)であった。器官限定的乳ガンを有する患者における上皮細胞数は、14の症例のうち12の症例においてカットオフ点(対照群における平均値プラス3標準偏差=6.9)より大であった。そのうえ、上皮細胞として分類される5個より多い物質を有する個体は対照群には存在せず、器官限定的乳ガンを有する14人の患者のうちわずか2人が7個未満の物質を有していた。
【表6】

【0088】
フローサイトメトリーを用いて、対照個体および乳ガン女性からの20mlの血液から得た陽性物質を分析した。対照血液中の上皮細胞数は、t試験(P≦0.01)およびKruskall-Wallis非パラメーター分析(P<0.001)によれば、乳ガン患者の3つの群のそれぞれとは統計学的に異なっていた。この表中のデータを用いて陽性試料について予備的なカットオフ値を確立した。正常対照(n=13)中の循環上皮細胞数の平均値を求め、ついで、標準偏差の3倍の値を加算することによりこの値を決定した。平均値は1.5であり、標準偏差は1.8である。カットオフ:1.5+5.4=6.9。男女対照間の統計学的差異はない。
【実施例5】
【0089】
前立腺ガン患者において疾病の活性は循環上皮細胞数と相関関係がありうる
前立腺の転移性疾病を有する3人の患者を、化学療法を行った後の血中循環上皮細胞の存在に関して評価した。結果を図5に示す。データは、血中循環上皮細胞の増加が疾病の活性と相関関係があることを明らかにしている。また、ガンの拡張を検知できない3人の患者において、上皮細胞が20mlの末梢血中に見出された(16個±4個)。表Vに示すように、前立腺ガン患者の血中上皮細胞数は正常対照とは統計学的に異なっていた(Pは0.001未満)。
【0090】
【表7】

正常個体、良性腫瘍を有することが知られている個体ならびに炎症性疾病を有する患者から対照血液試料を得た。統計学的データに基づけば、結果は、20mlの血液中約6.8個のカットオフ点が前立腺ガンの診断マーカーとして有用であったことが明らかとなる。
【実施例6】
【0091】
結腸ガン患者において、疾病の活性は循環上皮細胞数と相関関係がありうる
本発明のアッセイ方法を用いて種々の異なるタイプのガンを有する患者の評価を有利に行うことができる。説明すると、当業者方法は、結腸ガンを有する患者における循環上皮細胞レベルを評価するためにも用いられる。転移の証拠のない結腸ガン患者を、術前、術後において、循環上皮細胞の存在に関して評価した。結果を図6に示し、表VIにまとめる。データは、結腸ガン患者中の循環上皮細胞数は手術前において多いことを明らかにする。
【表8】

【0092】
表VIIおよび図7は、転移の証拠を有する結腸ガン患者を循環上皮細胞の存在および数に関して評価して得たデータを示す。結果は、末梢血中の上皮細胞数は、手術後において、局所的な疾病と比較すると、転移性疾病の患者において多いことを明らかにする。結果はさらに、転移性疾病の程度が循環上皮細胞数と相関関係がある可能性を示す。
【表9】

【0093】
上記実施例は、健康個体と乳ガン、前立腺ガンおよび結腸ガンの患者との間の循環上皮細胞数の有意な相違を示す。さらに、検出不可能な拡張性のガン、局所的なリンパ節に拡張するガン、および離れた部位に転移するガンを有する患者の間にも循環上皮細胞数の有意な相違が見られた(上記Racila et al., (1998))。さらに、初期の乳ガンを手術により除去した後の患者の血中上皮細胞数を1年間にわたりモニターした。これらの患者の幾人かにおいて、残存疾病が検出された。図7参照。転移性疾病を有する患者において、末梢血腫瘍細胞カウントの変化は腫瘍負荷と相関関係があり、治療に応答するものであった。これらの研究の結果は、悪性疾病の存在を検出し、疾病の活性を測定するための客観的な非侵襲的ツールとしての、本発明の細胞に基づくアッセイの潜在能力を明らかにするものである。細胞の形態および免疫表現型は単離細胞の悪性の性質を明らかにする。
【実施例7】
【0094】
単離上皮細胞の組織ソースの同定
患者における上記のすべての研究は、良性腫瘍を包含するガン性疾病のない正常個体または患者と比較すると、ガンを有する患者において過剰な上皮細胞が存在することを明らかにする。しかしながら、これらの過剰な上皮細胞が実際にガン細胞であることを証明することが必須である。ガンを有するまたは有しない患者から免疫磁気的に精製された上皮細胞をスライドグラス上にサイトスパン(cytospun)し、抗ムチンで処理する実験を行うことによって、これを証明する。さらに、正常個体の包皮および血液から得た正常上皮細胞をいずれも対照として使用してサイトスパンした。スライドグラスにコード番号を付け、「盲検」を試験し、観察者が病気を熟知し、正常上皮細胞を試験に含めることが重要である。図4からわかるように、ガン細胞と正常上皮細胞との間に著しい相違がある。正常上皮細胞は、細胞質に対する核の割合が低く、すなわち、豊富な細胞質および比較的小さい核がある。核はクロマチンの平滑な分布を示す。細胞は抗ムチンでは染色されない。対照的に、乳ガンを有する2人の患者からの細胞は非常に大きな核およびその周囲の小さい細胞質を有する。さらに、核における暗色パッチにより示されるようにクロマチンは組織化されておらず、細胞は抗ムチンで強く染色される。前立腺ガンの2人の患者からの細胞においても、同じ結果が得られた。病気を熟知した医師は、ガンまたはガンでない患者からコード番号を付したスライドグラスを示された(合計21枚)。病気を熟知した医師は、すべての対照から血液を正しく同定してガン細胞を有しないものとし、スライドを2回示された場合、イントラ観察エラー(intraobserved error)を示さない。前立腺ガンを有する2人の患者の場合、研究において腫瘍細胞は見られなかった。1のスライドを再検査したところ、腫瘍細胞が観察された。この食い違いの原因は、細胞スネアのスキャンに要した時間であると思われる。要するに、細胞の形態および免疫表現型は、ガン患者の血中に存在する過剰の上皮細胞が実際にガン細胞であることを示す。
【0095】
上記の実施例は、本明細書開示の方法が初期腫瘍を有する患者の血中ガン細胞の検出を可能にすることを示す。実際、器官に限定された疾病(初期段階のガン)を有すると臨床的に決定された27人の患者のうち25人において、我々は、血中におけるガン細胞の存在を検出した。このことは、当該アッセイが、通常には遅くに検出(腫瘍細胞10〜1010個)される固体腫瘍においてずっと早くガン細胞を検出するものであることを意味する。前立腺に関する血中腫瘍細胞の器官起源を、抗前立腺特異的膜抗原(PMSA)、抗PSA(前立腺特異的抗原)、または男性対照の前立腺に特異的な他の抗体での染色によって確認することができる。女性対照の乳ガンに関しては、抗マモグロビン、抗プロゲステロン受容体、抗エストロゲン受容体ならびに抗乳脂肪グロブリン抗原IおよびIIでの染色は、腫瘍が胸部由来であることを示すであろう。
【0096】
我々の試験は、他の器官、例えば、膵臓、食道、結腸、胃、肺、卵巣、腎臓等に由来するガン細胞を検出するものである。下表は、乳ガンおよび前立腺ガン以外のガンを有する幾人かの患者において過剰の上皮細胞が観察された例を示す。
【表10】

【0097】
上表に記載の各ガンは組織特異的抗原を発現し、その対応抗体を用いて循環腫瘍細胞の器官起源を決定することができる。
【0098】
ずでにガン治療が成功し、現在長期のわたり完全に寛解している患者におけるガン細胞の検出に本発明の血液試験を用いることができる。実際に、5年またはそれ以前に治療され、臨床的に腫瘍を有していないと思われる患者において循環上皮細胞、すなわち、休眠腫瘍細胞が検出された。このことは、なぜ見かけ上治療が成功してから多くの年月がたってから、10年たってからでさえも患者における再発がおこりうるのかということの説明になる。実際に、蓄積されつつある証拠は、乳ガン患者の再発速度はゆっくりとして着実であり、乳房切除から10〜12年後に再発することを示唆する。
【実施例8】
【0099】
高PSAレベルを有し、生検で陰性である患者の血中腫瘍細胞の検出
上記実施例により示されたように、本発明を用いて、現在無徴候の患者におけるガンの検査診断を有利に行うことができる。この点につき説明するために、2年間にわたり高PSAレベル(>12μg/ml)を有する患者に、下記の分析を行う2週間前に前立腺の穿刺生検を行った。生検によっては悪性の存在は明らかにならなかった。18カ月前に行った以前の生検も陰性であったことも重要である。
【0100】
20mlの血液試料を得る前に、患者の直腸を触診し、血中に腫瘍細胞を存在させるために肥大した前立腺をおだやかにマッサージした。本発明方法を用いて血液試料を豊富化させた。Wrights-Giemsa染色を用いて顕微鏡により豊富化フラクションを調べた。単離細胞の形態学的試験により悪性の特徴が明らかとなった。明らかに、この患者はガンを有していた高いPSAレベルが観察された場合には、前立腺ガンと診断できる可能性がある。本明細書に記載したような適当な試薬を用いて細胞の起源を調べてもよい。この実施例で示された結果は、本発明方法を用いて、検出されなかったかもしれないガンを検出することができる。
【0101】
血液試験の感度を上昇させる手段として局所的なマッサージを用いて血中に腫瘍細胞を流出させるという考えは、かなり長所のある考えである。このアプローチにより循環系に放出され、単離された細胞を、種々の異なる目的に使用することができる。フェロ流体を用いて単離された細胞の場合、単離細胞を容易に培養および/またはクローン化することができる。得られた細胞系を用いて、化学治療剤感受性および成長因子依存性のごとき種々の悪性細胞の特徴を評価することができる。
【実施例9】
【0102】
種々の態様のガンを診断するための試験キット
本発明のアッセイを行うために使用される試薬を含む試験キットも、本発明における使用が企図される。かかるキットは個々の用途のために設計される。循環している稀な細胞(腫瘍細胞を包含するが、これに限らない)に関して患者を容易にスクリーニングできるように試薬をアッセンブルすることができる。この具体例において、キットは、磁性コア材料を含むコロイド状磁性粒子、蛋白ベース被覆材料、ならびに単離すべきガン細胞上に存在する特徴敵な決定基に特異的に結合する生物学的に特異的なリガンドを含む。またキットは、単離すべきガン細胞上の第2の特徴決定基(該生物学に特異的なリガンドにより認識される決定基とは異なる)に対してアフィニティーを有する少なくとも1種の生物学的に特異的な試薬を含む。キットは、非有核細胞および他の非標的試料成分を分析から排除するための細胞特異的染料も含む。
【0103】
本発明による典型的なキットは、磁性ナノ粒子に直接または間接的にカップリングされた抗EpCAM、ならびに一対のモノクローナル抗体(第1の抗体はガン特異的決定基を認識するものであり、第2の抗体は非腫瘍細胞決定基、例えば、汎白血球抗原に対してアフィニティーを有する)を含んでいてもよい。またキットは、非有核細胞を分析から排除するための核酸染料を含む。所望により、本発明のキットは生物学的バッファー、透過バッファー、プロトコール、分離容器、分析チャンバー、陽性細胞または適当なビーズおよび情報シートを含んでいてもよい。
【0104】
循環系中において検出される特定のガン細胞の診断および特徴づけを容易ならしめるように上記キットを製造してもよい。この具体例において、キットは上記のすべての品目を含むが、好ましくは、一群のガン特異的モノクローナル抗体も含む。乳ガンを例として用いると、診断キットは、抗MUC−1、抗エストロゲン、抗プロゲステロン受容体抗体、抗CA27.29、抗CA15.3、抗カテプシンD、抗p53、抗ウロキナーゼタイププラスミノーゲンアクチベーター、抗上皮成長因子、抗上皮成長因子受容体、抗BRCA1、抗BRCA2、抗前立腺特異的抗原、抗プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤、抗Her2−neu抗体または上記のもののサブセットを含んでいてもよい。
【0105】
ガン撲滅後の再発しつつある疾病および/または残存細胞に関して患者をモニターするためのキットも提供される。この具体例において、ガンのタイプはすでに診断されているものであろう。したがって、キットは、ガンについて生物学的試料をスクリーニングするために用いられるすべての試薬を含むほか、患者においてすでに診断されているガンのタイプに特異的なさらなる抗体も含むであろう。さらに乳癌を例に用いると、かかるキットは抗MUC−1を含む。あるいはまた、キットは抗Her2−neuを含む。
【0106】
本発明のキットは種々の異なるガンのタイプをスクリーニング、診断またはモニターするためにカスタマイズしてもよい。例えば、キットを用いて前立腺ガンを検出する場合、キットに含まれる抗体は前立腺組織に特異的なものであろう。この目的に適した抗体またはマーカーは、抗前立腺特異的抗原、遊離PSA、前立腺酸性ホスファターゼ、クレアチンキナーゼ、チモシンb−15、p53、HPC1ベーシック前立腺遺伝子ならびに前立腺特異的膜抗体を包含する。結腸ガンの存在につき患者をスクリーニングする場合、ガン胎児性抗原(CEA)をキットに含ませてもよい。膀胱ガン患者のスクリーニングに用いるキットは、核マトリックス蛋白(NMP22)、Bard膀胱腫瘍抗原(BTA)またはフィブリン分解産物(FDP)に対する抗体を含んでいてもよい。多くの異なるガンタイプに関するマーカーが知られている。
【0107】
本発明のキットを用いて単離された細胞を、形態、起源器官に関連したRNA、表面および細胞内蛋白、特に悪性に関連した蛋白に関してさらに研究してもよい。循環細胞の分析を行うことにより、かかる分子に関して存在する情報に基づいて、単離細胞上の分子の発現から腫瘍の転移能を決定することができるはずである。
【0108】
特異的マーカーが知られているガンに関するキットを提供することが、本発明の目的である。現時点で知られているマーカーならびに有用性/徴候をまとめた表を以下に示す。
【表11】

【0109】
下表は、本発明方法を用いて単離された細胞の組織起源を調べるために使用できる異なるサイトケラチンマーカーを示す。
【表12】

【表13】

【0110】
循環乳ガン細胞の検出に使用するキットを用いることにより、いかにして本発明方法の実施を容易にするかを以下に示す。
【0111】
上記のように、キットは、全血から腫瘍細胞を豊富化するための試薬、デバイスおよび方法論から始まる。キットは血液試料中の乳ガン細胞を試験する試薬を含み、それらは6種の因子またはインジケーターを評価するものであろう。受容体分子DAPI、CY2、CY3、CY3.5、およびCY5.5が適当な励起およびエミッションフィルターにより識別されるように分析形式を設定する。この実施例における分析形式は、水銀アークランプを装備した蛍光顕微鏡、および使用検出標識の波長を調べるための適当なフィルターのセットを使用する。この方法ではすべてのマーカーは一度に導入される。UV光で励起され、核酸を染色するDAPIは細胞の核の形態を調べるために使用されるであろう。CY2で標識されたCAM5.2は対照細胞を染色するために使用されるであろう。CY3で標識されたC11はサイトケラチン7、8、18および19を標識するために使用されるであろう。CY3.5と抱合された抗体はHER−2/neuを標識するために使用されるであろう。CY5と抱合された抗体はMuc−1を標識するために使用されるであろう。CY5.5と抱合された抗体はエストロゲン受容体を標識するために使用されるであろう。適当な励起およびエミッションフィルターを用いることにより、ガン細胞が同定されるであろう。
【0112】
本発明の組成物、方法およびキットを用いて検出されうる異なるタイプのガンの例は、アプドーマ(apudoma)、分離腫、鰓腫、悪性カルシノイド症候群、カルシノイド心疾患、癌腫、例えば、ウォーカー、基底細胞、基底有きょく細胞、ブラウン−ピアース、腺管、エーリヒ腫瘍、インシトゥ、クレブス2、メルケル細胞、粘液性、非小細胞肺、えん麦細胞、乳頭、硬性、細気管支、気管支原性、偏平上皮細胞および移行性細胞のもの、細網組織症、黒色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫、線維腫、線維肉腫、巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、エウィング肉腫、滑膜腫、腺線維腫、腺リンパ腫、癌肉腫、脊索腫、間葉腫、中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント質腫、葉牙腫、奇形腫、トロホブラスト腫(throphoblastic tumor)、腺癌、腺腫、胆管腫、コレステリン腫、円柱腫、のう胞腺癌、のう胞腺腫、顆粒状細胞腫、男性胚細胞腫、肝癌、汗腺腫、膵島細胞腫、ライディヒ細胞腫、乳頭腫、セルトリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、上衣細胞腫、神経節細胞腫、グリオーム、髄芽細胞腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、パラガングリオーマ、非クロム親和性パラガングリオーマ、角化血管腫、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管外皮細胞腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫、松果体腫、癌肉腫、軟骨肉腫、葉状のう肉腫、線維肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、白血肉、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉腫、粘液肉腫、卵巣癌腫、横紋筋肉腫、肉腫(カポジ肉腫および肥満細胞肉腫)、新生物(例えば、骨、消化系、結腸直腸、肝臓、膵臓、脳下垂体、精巣、眼窩、頭部および頸部、中枢神経系、聴覚系、骨盤、呼吸管、ならびに尿性器のもの)、神経線維腫症、ならびに子宮頸部形成異常を包含する。
【0113】
本発明は循環上皮細胞の検出だけには限定されない。心筋梗塞の患者の血中に内皮細胞が検出されている。内皮細胞、心筋細胞、および上皮細胞のごときウイルス感染細胞は、利用可能なモノクローナル抗体により認識される細胞タイプ特異的決定基を有する。したがって、本発明の方法およびキットをかかる循環細胞の検出に応用してもよい。さらに、本発明は、感染症患者の末梢血中の細菌細胞負荷の検出を可能にし、それらの患者を本発明の組成物、方法およびキットを用いて評価してもよい。
【0114】
雑誌、米国特許および米国特許出願に対するいくつかの引用が上記においてなされている。上記引用の各主題を、参照により、完全に本明細書に取り入れる。
【0115】
上で、本発明の特定の好ましい具体例を記載し、詳細に例示説明したが、本発明をかかる具体例に限定するものではない。本発明の精神から逸脱せずに種々の修飾を本発明について行うことができ、本発明の全範囲は下記の特許請求の範囲に記載されている。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、腫瘍学および診断試験の分野等において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程:
a)試験対象から得られた生物学的標本から細胞フラクションを免疫磁気的に調製すること、ここで標本はガン細胞を含有する可能性のある混合細胞集団を含み、かつ妨害性物質を多く含むものであり、ガン細胞が生物学的標本中に存在する場合に、細胞フラクションをガン細胞について豊富化させること;ついで
b)豊富化されたフラクションをガン細胞の存在について分析すること、ここで標本中のガン細胞の存在が試験対象中の初期段階のガンの存在を示すものである
を含み、
免疫磁気的細胞フラクションの調製が、ガン細胞に特異的に結合する生物学的に特異的なリガンドにカップリングされた被覆磁性ナノ粒子と生物学的標本とを混合して、生物学的標本中の他の成分を実質的に排除し、標本−被覆磁性ナノ粒子混合物を磁場に供して、被覆磁性ナノ粒子に結合したガン細胞が豊富化された細胞懸濁物を免疫磁気的試料として得ることを含むものであり、前記被覆磁性ナノ粒子は、ナノ磁性コア材料、蛋白ベース被覆材料および二官能基連結化合物を介してベース被覆材料にカップリングされたさらなる被覆材料を含み、さらなる被覆材料が、ビオチン−ストレプトアビジン、抗原−抗体、受容体−ホルモン、受容体−リガンド、アゴニスト−アンタゴニスト、レクチン−糖類、プロテインA−抗体Fc、およびアビジン−ビオチンからなる群より選択される特異的結合ペアーの1のメンバーである、試験対象における初期段階のガンを検査する方法を用いて循環新生物細胞が豊富化された末梢血のフラクションであって、
豊富化が、該フラクションを得た末梢血の試料に対して少なくとも2500倍であるフラクション。
【請求項2】
該豊富化が、該フラクションを得た末梢血の試料に対して少なくとも5000倍である請求項1記載のフラクション。
【請求項3】
該豊富化が、該フラクションを得た末梢血の試料に対して少なくとも10000倍である請求項1記載のフラクション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−47688(P2013−47688A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−229134(P2012−229134)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2006−112446(P2006−112446)の分割
【原出願日】平成11年2月12日(1999.2.12)
【出願人】(309021320)ベリデックス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (7)
【氏名又は名称原語表記】Veridex,LLC
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】