微孔質多層膜及びその形成方法
【課題】共注型方法により作製した多層液体シートから多層多孔質膜を形成する方法及びこうして形成された膜を提供する。
【解決手段】仮支持体であっても膜に対する一体化支持体であってもよい支持体上に、複数のポリマー溶液を同時に共注型して多層液体シートを作製し、このシートを液体凝固浴に浸漬して層分離し、多孔質膜を形成することによる一体多層多孔質膜の製造した後、多孔質膜を洗浄して溶媒及びその他の可溶性物質を除去する。
【解決手段】仮支持体であっても膜に対する一体化支持体であってもよい支持体上に、複数のポリマー溶液を同時に共注型して多層液体シートを作製し、このシートを液体凝固浴に浸漬して層分離し、多孔質膜を形成することによる一体多層多孔質膜の製造した後、多孔質膜を洗浄して溶媒及びその他の可溶性物質を除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された層−層接合構造を有する多層多孔質膜の形成方法及びこうして形成された膜に関する。より具体的には、本発明は共注型方法により作製した多層液体シートから多層多孔質膜を形成する方法及びこうして形成された膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー微孔質膜はすでに製造されている。市販されている膜の多くは対称的である。対称性膜の場合膜全体の孔径分布はほぼ均一である。スキンレスの対称性微孔質膜の製造は、例えばポリフッ化ビニリデン(PDVF)膜については米国特許第4,203,848号明細書、ポリアミド膜については米国特許第4,340,479号明細書に記載されている。これらの製造方法は、a)特定の十分コントロールされたポリマー溶液調製物を調製するステップ、b)前記ポリマー溶液を薄膜の形態で仮支持体上に注型するステップ、c)生じたポリマー溶液のフィルムを非溶媒において凝固させるステップ、d)仮支持体を除去するステップ、及びe)微孔質膜を乾燥するステップからなると包括的に記載されている。
【0003】
製膜業者は、前記方法を用いて滅菌濾過に適した丈夫な膜を製造している。前記膜は主として単層対称性膜であるが、前記膜のために他の構造も研究され、使用されてきた。
【0004】
別の単層構造物は、膜の厚さ内の場所により膜の孔径が異なる非対称性膜である。最も一般的な非対称性膜は、孔径が1方の面から他方の面に向かって増加する勾配構造を有している。非対称性膜は、保持性が厚くて密な表面域、すなわちスキン層に集中しているので壊れやすい(米国特許第4,629,563号明細書参照)。しかしながら、濾過しようとする供給流を予備濾過し、膜の閉塞を減らすように作用する孔径の大きい表面と該供給流を接触させれば生産性は高くなることが判明している(米国特許第4,261,834号明細書参照)。更に、他にも非対称性スキンレス微孔質膜の製造も成功している。その1つの製品がマサチューセッツ州ベッドフォードに所在のMillipore Corporation製Express(商標)膜として販売されている。
【0005】
微孔質膜、特に非対称性膜の製造業者は、(膜の孔径に比して)大きい中空海綿構造を有する膜の特性はそのような中空構造を持たない膜と比べて劣ることを認識している。前記中空構造は時に「マクロ孔」と呼ばれているが、当業界では他の用語も使用されている。非常に高い保持効率を有する膜を求めている業者は前記中空構造を持たない膜を製造しようとしている。
【0006】
多分、単層構造の最も直接的な変更物は多層非結合ラミネートである。ラミネートは同一または異なる膜の層から製造され得るが、これには欠点がある。各層を別々の製造過程で作成しなければならず、よってコストがかかり、製造効率が低下する。厚さが例えば20ミクロン未満の非常に薄い膜は容易に変形し、しわが寄るので、製造し、取り扱うことが困難である。このため、薄層を有する最終製品の製造効率は悪くなる。非結合ラミネートは最終濾過デバイス(例えば、ひだフィルター)への製造中にばらばらになることがあり、そのために流れ及び濃度が非均一となる。
【0007】
多層微孔質膜構造物の形成するための他の方法も公知である。米国特許第5,228,994号明細書は、微孔質構造物を第2の微孔質層で被覆して2層の複合微孔質膜を形成する方法を記載している。この方法では、2つの膜を別々に作成するステップを必要とし、注型溶液が支持体の孔に浸入するのを防ぐために特定粘度を有するポリマー溶液しか使用し得ない。
【0008】
多層精密濾過膜を製造することも試みられてきた。米国特許第4,770,777号明細書は、a)第1膜層を注型するステップ、b)この第1膜に繊維状支持体を埋設するステップ、及びc)埋設した繊維状支持体の上部に第2膜層を注型して、膜/繊維/膜サンドイッチを形成するステップを含む方法を記載している。しかしながら、不織材料を使用しているために望ましくない欠陥及び欠点が生じる。米国特許第5,500,167号明細書は、裏つき微孔質濾過膜の製造方法を記載している。この方法は、多孔質不織支持体材料の第1面に第1注型溶液を適用して実質的に平滑な表面を有する第1注型溶液層を作製し、その後第1注型層から微孔質膜が完全に形成される前に前記の第1注型溶液層の実質的に平滑な表面上に第2注型溶液を適用して第2注型溶液層を作製し、支持体材料の第1面が第2ゾーンに突出することなく第1ゾーンと一体的となり、第1ゾーンが第2ゾーンの孔径よりも少なくとも約50%大きい孔径を有するように前記の第1及び第2注型溶液由来の第1及び第2ゾーンを有する連続微孔質膜を形成することを含む。この生成物も欠陥または欠点を生じる可能性がある不織支持体を必要としている。米国特許第5,620,790号明細書には、ポリマー材料製支持体上の第1層を基体に対して注入し、その後直前の層に濁りが生ずる前にポリマー材料溶液の1つ以上の層を前記第1層上に注入して製造した膜が記載されており、ポリマー材料溶液の直後の各層の粘度はその前の層の粘度と同じまたはそれ以下である。米国特許第5,620,790号明細書では、全体の透過率を低下させる傾向を有するかなり厚い膜を製造することにより処理量を改善している。
【0009】
しかしながら、上記した3層注型方法ではすべて多層膜を形成するためにそれぞれのコーティングステップ間にインターバル時間、すなわち硬化時間が不可欠である。その後の注型により膜の2つの層間の界面に密度の高い層が形成され得る。このためにこの方法は丈夫さの点で望ましくない。なぜならば、硬化時間中方法が変動すると非均一となる恐れがあるからである。米国特許第5,620,790号明細書は数秒〜2分の最短硬化時間が有利であると記載しているが、従来方法はコーティング適用間のインターバル時間を本質的にゼロまで短縮し得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,203,848号明細書
【特許文献2】米国特許第4,340,479号明細書
【特許文献3】米国特許第4,629,563号明細書
【特許文献4】米国特許第4,261,834号明細書
【特許文献5】米国特許第5,228,994号明細書
【特許文献6】米国特許第4,770,777号明細書
【特許文献7】米国特許第5,500,167号明細書
【特許文献8】米国特許第5,620,790号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明では、本発明者は驚くことに、コーティング適用間の時間が本質的にゼロでも層間の接合を非連続とすることなく膜構造が連続的に変化している膜が形成されることを知見した。
【0012】
更に、従来技術では、2つの層間に明瞭な境界線が見られた。この境界線を境にして孔径はより開放的構造からより緻密な構造へと劇的に変化する。また、密なスキン様構造の領域を示すこともあり得る。いずれの構造領域も透過性の低下及び望ましくない界面における粒子の迅速蓄積が生ずる恐れがあり、その結果フラックスは劇的に低下する。2つの隣接間の孔径をより微妙に変化させることは前記の影響を低減させ、膜の全体構造の保持挙動にとって有利であろう。
【0013】
援用により本明細書に含まれるとする本発明者の博士論文(「多成分ポリマー系における相分離による膜形成(Membrane Formation by Phase Separation in Multicomponent Polymer Systems)」),オランダ国Twente大学(1988年))の一部としての抄録で、各層の脱混合または相分離に対する第1ポリマー溶液層を覆う第2ポリマー溶液の影響が研究されていた。この研究の目的は、第1ポリマー溶液層を組成の異なる第2ポリマー溶液層で被覆し、次いで通常の浸漬方法により膜を形成することにより薄い密な(非孔質)分離層が形成されるかを定性的に調べることであった。ポリマー含量及び溶媒は、透析蒸発膜のような密な表面層膜が得られるように選択した。著者は、全膜構造を走査型電子顕微鏡写真で比較することにより単層膜及び2層膜の層分離モードを比較した。膜の特性は調べていなかった。顕微鏡写真から密な層の厚さをこの方法により変化させ得ることが推測された。
【0014】
本発明を完成する過程で、本発明者は、良好な特性を有する微孔質膜を製造するためには層間の界面領域の構造をコントロールすることが重要であることを知見した。初期研究から、密な領域が界面で形成されたなら膜の特性が損なわれることが分かった。特に、界面にはっきりと密な領域を有する膜の場合には膜透過性が低下し、濾過処理量が悪かった。従来技術から、全膜構造に関連させてこの領域を最適化することは想到されなかった。
【0015】
更に、本発明を完成する過程で、本発明者は、界面の構造と合わせて平均孔径の大きい層の構造により処理量がコントロールされることが知見された。従来技術は保持層、特に密な保持層を有する膜(逆浸透及び透析蒸発)の保持層の構造を最適化することに集中していたのに対して、本発明者はすべての層及び界面領域の保持特性をコントロールする問題を検討した。
【0016】
米国特許第5,620,790号明細書は、逐次注型膜の場合下層の粘度を上層の粘度よりも高くしなければならないというように粘度を制限することを教示している。
【0017】
従って、マクロ孔のない一体型多層微孔質膜の形成方法を提供することが望ましい。更に、隣接層の接合で中間孔径の領域をコントロールして形成するべく層を同時に注型する単純な方法を提供することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の方法を実施する際に有用な装置の側面図である。
【図2】本発明の膜のフラックス対空気膜バブルポイントのグラフである。
【図3】従来技術の多層膜の顕微鏡写真である。
【図4】従来技術の非対称性微孔質膜の顕微鏡写真である。
【図5】本発明の非対称性膜の顕微鏡写真である。
【図6】図5の膜の下面の顕微鏡写真である。
【図7】図5の膜の上面の顕微鏡写真である。
【図8】本発明の膜の断面の顕微鏡写真である。
【図9】図8の膜の上面の顕微鏡写真である。
【図10】図8の膜の下面の顕微鏡写真である。
【図11】本発明の空気注型膜の上面の顕微鏡写真である。
【図12】本発明の空気注型膜の下面の顕微鏡写真である。
【図13】本発明の空気注型膜の上面の顕微鏡写真である。
【図14】本発明の空気注型膜の下面の顕微鏡写真である。
【図15】両層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真を示す。
【図16】1層(この場合、上層)は対称的であり、下層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真を示す。
【0019】
本発明によれば、a)複数のラッカーを調製するステップ、b)前記ラッカーを共注型して多層液体シートを作成するステップ及びc)共注型した多層液体シートを液体浴/凝固浴に浸漬して連続層順序で層分離するステップを含む多層微孔質構造物の製造方法が提供される。凝固後、微孔質構造物内のすべての残存溶媒を抽出するために任意の抽出ステップを設けてもよい。次いで、多孔質膜を拘束下で乾燥させる。
【0020】
本発明の多層微孔質膜には層間に緻密な界面層がない。更に、隣接層は相互に分離不能な一体型であり、マクロ孔を含まない。本発明の多層膜の各層は、濾液は通過可能であるが残渣を保持する点で保持層であり得る。
【0021】
本発明は、複数のポリマー溶液を支持体上に共注型して多層液体シートを作製し、このシートを液体共凝固浴に浸漬して層分離し、多孔質膜を形成することにより一体型多層多孔質膜を製造する方法を提供する。前記支持体は、膜形成後取り外す仮の支持体であり得る。或いは、支持体は所望により最終構造物に統合される。形成後、多孔質膜を洗浄して溶媒及び他の可溶性物質を除去する。次いで、更に抽出して、遊走性物質を低レベルに低下させ、その後乾燥させてもよい。
【0022】
本発明において、「共注型」は、一方の注型層と次の注型層の間にインターバル時間を実質的に設けることなく各層を相互に本質的に同時に注型することを意味する。共注型により層の接合部分に孔径がコントロールされた領域が形成されるので、共注型は本発明の重要な要件である。従来技術では、連続注型層の間に明瞭な境界線が形成されている。孔径をより開放的な構造からより緻密な構造に劇的に変化させると、望ましくない界面における粒子の急速蓄積及び/または境界点におけるスキン層の形成が生ずる恐れがあり、その結果フラックスが劇的に低下する。多分隣接する共注型ラッカーが部分的に混合したりまたは2つの隣接する共注型ラッカー間の界面での剪断力が高いために、2つの隣接層間の孔径が急激ではなくより微妙に変化する。前記界面ゾーンは膜の全構造物の保持挙動にとって有利である。同時に、構造物に識別可能な境界線のない微孔質構造物が形成され得る。
【0023】
用語「一体型」は、複数の、多くの場合異なるポリマー材料からなる層から形成されているが、相互に結合されており、よって1つの構造物として挙動し、通常の使用時に剥離したり分離することのない構造物を意味する。
【0024】
図1は、多層膜を注型するための多層作成装置10を図示している。図示しているように、前記装置は2層液体フィルムを作製するように設計されており、それぞれ注型しようとする各層のための溶液14,16を収容している2つのチャンバ50,60を有している。所望により、追加の共注型層を作製するために追加のチャンバを設けてもよい。前記装置は前面壁20及び背面壁40、これらの壁の間に分離壁30を含む。分離壁により2つのチャンバの容量が規定される。2つの側壁(図示せず)により装置が完成する。操作中、装置を一般的な膜注型機上に固定し、支持体ウェブ18を固定装置の下で移動させ、2つの溶液をギャップ、すなわち出口80,90から分配する。2つの層の厚さは可動ウエブと出口間の距離(間隙設定値80,90で示す)によりコントロールされる。最終の液体層厚さは間隙の距離、溶液粘度及びウェブ速度により異なる。前記装置の背面壁は通常、支持体にしわや擦傷が生ずるのを防ぐために支持体から若干浮かせて保持されている。実際、背面壁の間隙、支持体の速度及び溶液の粘度は溶液が背面壁の間隙を介して漏れるのを防止するように調節されている。溶液特性により必要ならば、または最終膜の特性を更にコントロールするために、前記装置は各チャンバに別々にまたは装置全体に対して加熱/冷却手段を取り付けてもよい。
【0025】
図示しているように、上記方法は重力押し流を利用している。しかしながら、所要によりチャンバを覆い、密封し、加圧流体、通常乾燥窒素やアルゴンのような不活性ガスの入口を設けてもよい。その後、チャンバを所要により溶液粘度及びプロセス要件により別々に加圧することができる。別の実施態様では、溶液を圧送する。
【0026】
次いで、共注型した多層液体シートを載せた仮支持体18(例えば、非孔質プラスチックまたは金属シート)を当業界で公知の凝固浴(図示せず)に浸漬させるが、この時間はポリマー溶液を連続的重層順序(continuously layered sequence)で層分離させ、一体型多層微孔質ポリマー膜を作製する時間である。作製後、膜を通常洗浄して注型溶液の残存する溶媒及び他の低分子量成分を除去し、コアに巻き付ける。仮支持体18は別の巻き上げドラム(図示せず)に巻き取る。
【0027】
支持体が仮ではなく、最終製品と一体化させる場合には、診断用ストリップに使用されているような非孔質フィルム、或いは多孔質不織布(例えば、TYVEK(登録商標)シート)、延伸多孔質PTFEシート(例えば、メリーランド州チモニウムに所在のW.L.Gore & Associatesから市販されているようなもの)、セルロース材料、プラスチックまたは当業界で前記種類の膜用支持体層として慣用されている他の材料からなる微孔質膜を使用し得る。
【0028】
凝固の連続的重層順序では、凝固は凝固浴と最初に接触する液体フィルム表面から、その後多層液体シートの後続の層を介して起こる。各層は、凝固剤が層を介して拡散するにつれて凝固剤を希釈し、変化させる。凝固剤の性質が変化すると各層及び最終多層膜の膜形成が影響を受ける。層厚さ、組成及び他の層に対する各層の位置により、膜の構造及び特性が変化する。これは、単層膜や単層を積層させて作製した膜とは明らかに異なる。
【0029】
本発明の方法は補助的膜形成ステップに適合し得る。例えば、本出願人の係属中の米国特許出願第60/206,622号明細書(2000年5月24日出願)には、半結晶性ポリマーを含有する膜形成溶液の単層液体フィルムを短時間加熱した後層分離する対称性及び/または非対称性膜の製造方法が開示されている。加熱により最終膜の孔径及び断面構造をコントロールしている。本発明の実施態様では、所望の孔径及び膜構造を得るための別の方法を提供すべく、係属出願の熱方法を利用して前記組成物から1つ以上の層を作製する。
【0030】
本発明の別の実施態様では、下限溶解温度(LCST)を示すポリマー溶液から膜を製造している米国特許第5,444,097号明細書の教示を使用する。溶液をLCST以上に加熱すると層分離が生ずる。生じた膜の構造を更に変化させ、コントロールするために、このステップを本発明の方法に多層液体フィルムを作製した後に加える。本発明の1つ以上の溶液はLCST溶液である。また、上限溶解温度(UCST)を有する溶液はUCST以下に冷却したときに層分離が生ずるが、この溶液は加熱状態で多層液体フィルムに作製され、冷却すると層分離が生ずる。LCST及びUCSTのいずれの実施態様でも、上記したように凝固剤に浸漬することにより更なる層分離が起こり得る。
【0031】
時に蒸気誘導層分離と称されることもある空気注型では層分離が蒸発ステップ中に生じるが、この空気注型を蒸発溶媒を含有する溶液及び余り蒸発しない非溶媒を含有する溶液から多層液体フィルムを作製し、その後この液体フィルムを、場合により水蒸気を含む蒸発環境(例えば、加熱した空気流)に曝すことにより本方法に適用し得る。
【0032】
本発明の方法により、それぞれが各溶液から作製される膜からなる膜の各領域及び場合により存在する界面領域を別個にコントロールし得、層の接合部分の領域の孔径をコントロールし得る。この方法により、各層に対して広範囲の粘度を使用でき、2つ以上の各層の厚さをうまくコントロールでき、2つ以上の層(通常、2〜4層)の界面に起こり得るスキニング影響または緻密な領域を解消できる。1つの実施態様では、非支持複合膜は孔径に応じて十分な機械的強度を有しているが、機械的安定性を向上させるために不織支持体を使用することができる。従って、この組合せにより、改良されたフラックスを有するうまくコントロールされ、高い一体性を有する多層微孔質膜を形成することができる。
【0033】
本発明の方法により、非常に薄い層を独立して注型することができる。層の厚さは注型デバイスの構造及び両ラッカーの流れ及び粘度に依存する。本発明の方法では、従来技術で見られる2層間の明瞭な境界線を有意に縮小また解消し得る。孔径をより開放的な構造からより緻密な構造へと劇的に変化させると、望ましくない界面での粒子の迅速な蓄積が生じ、その結果フラックスが劇的に低下する恐れがある。多分隣接する共注型ラッカーが部分的に混合するためまたは2つの隣接する共注型ラッカーの界面での剪断力が高いために、2つの隣接する層間で孔径が急激ではなくより微妙に変化し得る。前記した界面ゾーンは膜の全体構造の保持挙動のために有利である。同時に、構造中に識別可能な境界線を持たない微孔質構造物が形成され得る。加えて、共注型モードでは形成された膜の収縮を防ぐことができるが、単層フィルムではかなりの収縮が生ずる。これにより、膜構造物を使用することもでき、さもなければ特に非常に小さい孔径を有する膜の場合には特定ラッカーから作製することは困難であるかまたは不可能であり、単層フィルムのようにかなりの収縮が見られる。
【0034】
上記したように、本方法は微孔質膜を製造するための公知方法、例えば液体注型または空気注型と組合わせて使用され得る。更に、前記微孔質膜を製造するために使用されるポリマー及び溶媒/非溶媒をも使用することができる。
【0035】
好ましいポリマーにはPVDF、ナイロン(例えば、ナイロン66)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、PVC、PET、ポリカーボネート、セルロース、再生セルロース、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテートまたはセルロースナイトレート)、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、アクリルまたはメタクリレートのコポリマー、またはこれらのブレンド等が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明のポリマー溶液は通常少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの前記ポリマーに対する溶媒から構成される。前記溶液は、前記ポリマーに対する貧溶媒または非溶媒である成分を1つ以上含み得る。前記成分は業界では「孔形成剤(porogens)」と呼ばれている。前記溶液が均質であることが好ましい。前記溶液は場合により、当該ポリマーに対する非溶媒である成分を1つ以上含む。ポリマー溶液は経時的に安定(良好な溶媒品質)であるかまたは経時的に準安定である。この溶液は潜在的に下限溶解温度または上限溶解温度を有し得る。前記溶液の成分の例は当業界で公知であり、考えられるすべてのバリエーションを網羅する必要はない。使用される溶媒の例は、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア、アセトン、ジメチルスルホキシドである。多数の孔形成剤が当業界で使用されてきており、その例にはホルムアミド、各種アルコール及び多価アルコール、水、各種ポリエチレングリコール及び各種塩(例えば、塩化カルシウム及び塩化リチウム)が含まれる。
【0037】
同一ポリマー及び溶媒から粘度、添加剤及び(作製前、作製中または作製後の)処理を変更して複数の層を作製することができ、または層毎にポリマーを変更してもよい。異なるポリマーを使用する場合、相互に相容性のポリマーを選択しなければならない。更に、溶媒及び層分離材料は、他の層に悪影響を及ぼさないように可能ならば同一または少なくとも部分的に相容性でなければならない。
【0038】
本発明の微孔質構造物は約0.01〜約10ミクロン、好ましくは約0.01〜約2ミクロンの平均孔径を有し得る。
【0039】
上記したように、各種の調製及び加工ステップ、例えば米国特許出願第60/206,622号明細書(2000年5月24日出願)の熱補助形成方法を使用すると独自の多層生成物を製造することができる。すべての層が対称的または非対称的である;少なくとも1層が対称的で、他の層は非対称的である;少なくとも1層が非対称的で、他の層は対称的である;孔が構造物の断面の途中の孔径が最小である砂時計様構造物を形成するように両層が上下に非対称である多層生成物を形成することができる。対称性膜は、平均孔径が膜を通して実質的に同一という特徴の孔径分布を有する多孔質構造を有する。非対称性膜では、平均孔径は膜を通して変化しており、通常1方の面から他方の面に向かって増加している。他のタイプの非対称性も公知である。例えば、孔径が膜の厚さの途中の位置で最小となるようなものである。非対称性膜は、同一の定格孔径及び厚さを有する対称性膜に比して高いフラックスを有する傾向がある。本発明により、特定の適用及び要求を取り扱うように独自の構造を形成することができる。
【0040】
非対称性膜は、約2:1〜約1000:1、好ましくは約2:1〜約100:1の孔径勾配を有していてもよい。この非対称性は、層の1つの主表面の平均孔径を前記層の他の主表面の平均孔径と比較することにより調べられる。本発明では、各層が異なる、または所望により類似の非対称性を有する2つ以上の非対称性層を作製することができる。
【0041】
更に、上記したように、各層の厚さを広範囲で変更することができ、自立性一体型多層構造物を得ることができる。通常、良好な濾過特性及び自立性が得られるので膜構造物の厚さを50〜200ミクロンとすることが望ましい。本発明では、全体の厚さを同一とすることができるが、所望する独自の膜構造物を製造するために1つの層対他の層の相対厚さをコントロールすることもできる。通常、1つの層を10ミクロンほど薄くすることができ、残りの構造物が適当な厚さを有している限り一体型多層構造物が得られる。例えば、150ミクロンの厚さの膜では、第1層を約10〜約140ミクロンの厚さとし、他の層は相対的に約140〜約10ミクロンの厚さとすることができる。
【0042】
図15は、両方の層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真を示す。
【0043】
図16は、1層(この場合、上層)は対称的であり、下層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真を示す。
【実施例1】
【0044】
17〜24重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び83〜76重量%のN−メチルピロリドン(NMP)からなる溶液を調製した。各溶液を少量ずつ小分けし、それぞれに表1に示すように異なる熱処理を加えた。各熱処理はポリマー溶液を所定温度に加熱し、溶液をその温度で2時間保持することであった。温度は38〜50℃の範囲であった。処理中、溶液をロールミルを用いて軽く撹拌した。その後、溶液を室温まで冷却した。
【0045】
2つのポリマー溶液の多層を図1に示すような装置を用いて共注型した。ラッカーリザーバ50,60に2種のポリマー溶液を充填した。注型装置に対してベルトを移動させることにより、2つのラッカー間に硬化時間を設けることなく多層構造物を注型した。2つのポリマー溶液の流量及び各層の厚さは図1の間隙設定値80,90によりコントロールした。作製した多層をメタノール濃度が95%ぐらい高いメタノール浴に約2分間浸漬した。浴は室温に維持した。メタノール流を多層の導入方向に向流させることにより、NMPを多層膜からうまく抽出した。メタノール浴に約2分間浸漬後、多層膜を支持体ベルトから外し、水浴で約4分間抽出した。その後、多層膜をコアに取った。次いで、膜を水で更に抽出し、イソプロピルアルコール(IPA)に浸漬し、拘束下で風乾した。下表に、共注型の各種条件を要約する。
【0046】
こうして、同等の厚さを有する市販の対称性疎水性PVDF膜(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されているDurapore(登録商標))に比して高いフラックスを示す膜が得られた。図2には、本発明で製造した膜のフラックス改善を示すフラックス対バブルポイントのグラフを示している。図2に示すように、同等のバブルポイントで本発明の膜は高いフラックス性を有している。
【0047】
【表1】
【実施例2】
【0048】
作製し、洗浄した膜の乾燥に関する比較試験で、多層膜が単一ポリマー溶液から注型した対称性膜に比して収縮しにくいことが判明した。
【0049】
本実験では、PVDF溶液をNMP中16重量%のSolef 1015(ベルギー国のソルベー)及びNMP中Kynar 741(米国のElf Atochem)溶液から調製した。Solef溶液を単層として、Kynar溶液との共注型フィルムとして注型した。両フイルムを、注型速度(2分間浸漬)、凝固及びラッカーの温度(室温)に関して全く同一の条件でメタノール浴に浸漬した。浸漬後、膜を水に抽出し、減圧、乾燥時間及び温度を同一条件にして衝撃乾燥機を用いて乾燥した。この乾燥は膜に対して一方向張力に設定した同一ウェブ速度で実施した。複合膜は全く収縮しなかったが、Solef溶液から注型した単膜の幅は元の幅の65%に収縮した。膜収縮が抑制されると膜製造の収率が向上し、製造された膜はより効率的に加工される。
【実施例3】
【0050】
本実施例では、本発明により製造した膜と短い硬化時間で作製した膜を比較した。図4は、2つのポリマー溶液間の緻密な界面を示す。この膜は、PVDFラッカーの第1フィルム上に第2のポリマー溶液を逐次注型して作製した。ラッカーを同時に注型した実験ではいずれにおいても前記したような界面は観察されなかった。
【0051】
20%のPVDF及び80%のNMPを用いて2つのポリマー溶液を調製した。ガラスプレート上にPVDFの第1層を注型することにより多層膜を作製した。第1層を周囲雰囲気に曝した後第2層を前記第1層上に注型した。連続注型ステップの間約2cmの僅かな隙間を設けることにより周囲雰囲気に曝した。膜が完全に形成されるまで作製した多層をメタノールに浸漬した後、水において抽出した。膜を拘束下で風乾した。
【0052】
膜を窒素中で破断し、その断面を走査型電子顕微鏡写真に写した。この写真を図4に示す。隣接する層の界面にはっきりと緻密な領域があることが明白である。
【0053】
図5は、両層の孔径が完全に異なる本発明の膜の典型的な断面を示す。この膜は、同一組成(20重量%のKynar 741)及び類似の粘度を有する2つの溶液を同時に共注型して作製したが、熱履歴は変えた。2つの領域が認められ得るが、緻密な界面は存在していない。
【実施例4】
【0054】
本実施例では、低粘度溶液上に上層用の高粘度溶液を注型することにより共注型多層膜を作製する。上層溶液用に24重量%のPVDFのポリマー濃度、下層溶液用に20重量%のPVDFのポリマー濃度を用い、上部の孔径は非常に小さく、他の面の孔径は大きく、膜の中に孔径が段階的に変化するゾーンがある構造物が形成された(図6参照)。界面は識別できない。
【0055】
24重量%及び20重量%のPVDF溶液をNMP中で調製した。24重量%及び20重量%のPVDF溶液の粘度はそれぞれ12,000cP及び3,500cPであった。多層を実施例1に記載したように、24重量%溶液はメタノール浴に面し、20重量%溶液は支持体ベルトに面するように注型した。実施例3に示したように多層のSEM写真を撮影した。驚くことに、2つの層間に界面は観察されなかった。図6は膜の断面図である。図7は浴側の膜の表面の写真であり、スキンレンの緻密な多孔質構造であることを示している。図8は、ベルト側の膜の表面の写真であり、スキンレンの開放多孔質構造であることを示している。
【実施例5】
【0056】
本実施例では、ポリマーの種類及び濃度は同一であるが、粘度及び温度処理の異なる2つの溶液を注型した。上層溶液の粘度はポリマー溶液中に5%塩化リチウムを用いて上昇させた。更に、高粘度溶液は47.5℃に加熱し、この温度で維持したのに対して、下層溶液の温度は44℃とした。処理温度を高くするとこの種のポリマー溶液の場合膜の孔径が大きくなることは公知である。
【0057】
以下の組成を有する溶液を調製した。
【0058】
【表2】
【0059】
高粘度溶液(PS1)を低粘度溶液(PS2)の層の上に使用すると、図9〜11に示す構造物が得られた。ここで、上層(浴側)(図9参照)の層が下層(ベルト側)(図10参照)に比してより開放的であることが認められ得る。下層ラッカー(PS2)及び該ラッカーより大きな孔径を与える溶液を生ずる高温に処理した上層ラッカー(PS1)という2つの異なるラッカーから膜を作製したので、孔径の差は驚くことではない。上層溶液の粘度を5% LiClを添加することにより変化させた。両溶液とも20重量%のPVDFを含有していた。しかしながら、これらの膜はいずれも2つの層間に識別可能な界面を有していなかった(図11)。このことは、上記したように膜性能にとって有利であり得る。
【実施例6】
【0060】
本明細書に記載されている方法を用いると、硬化時間が従来技術のように必要でなく、この方法は拡散誘導層分離の正確な方法に殆ど依存しないことを実証するために、2つの膜をZeman,Journal of Membrane Science,Vol.84,p.93−106(1993)に記載されている空気注型方法を用いて注型した。アセトン及びメチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)の混合物中に分子量の異なる2種の酢酸セルロースを溶解することにより比較的に低粘度の2つのポリマー溶液を調製した。2種のセルロースジアセテートポリマーは、Eastman Chemical Products製の平均Mwが約240kDaのCA−398−60及び平均Mwが約174kDaのCA−398−30であった。第1ポリマー溶液(PS3)の組成は9% CA−398−30、40% MPD及び51% アセトンであった。第2ポリマー溶液(PS4)の組成は9% CA−398−60、40% MPD及び51% アセトンであった。
【0061】
空気注型中の表面形態に対する分子量の影響を示すために類似溶液をZemanらにより使用した。上記した共注型方法を用いて多層膜を作製した。共注型を使用したので、2つの層を適用する間に硬化時間は設けなかった。膜を約30ミル及び16ミルの間隙設定値で注型した。前記膜を25℃で±55% RHの湿潤空気に30分間曝した。その後、膜を水で一晩洗浄して残存するMPDを除去し、最後に膜を風乾した。
【0062】
溶液PS4の上に溶液PS3を適用することにより第1の膜を作製した。第2の実験では、溶液PS3の上に溶液PS4を適用した。図12及び13は第1の膜の2つの表面を示し、図14及び15は第2の膜の2つの表面を示す。いずれにせよ、空気に触れた膜の表面に孤立した孔が観察される。共注型により、中間「硬化」ステップなしに低粘度材料の2つの層を堆積できることが明らかである。これは、提案された方法は硬化ステップの間コントロールする必要がなく、方法コントロールにとって非常に有利であることを明白に示している。
【0063】
本発明者は、2つの溶液を共注型することにより2つの表面の表面孔径及び孔形態をコントロールできることを知見した。例えば、図12及び13に示す膜は、上面のために使用した溶液のみから注型した膜の空気側表面に相当する上面及び下層を形成するために使用されるポリマー溶液のみから注型した膜の下面に相当する支持体に形成された下面を有する。更に、実施例は、2つの溶液の組成特性(例えば、本実施例では、ポリマーの分子量)を選択することにより多層膜の表面特性が設計され得ることを立証している。
【実施例7】
【0064】
下記実施例7及び8は、共注型方法を用いて異なる構造物を製造し得ること及びこの方法は他のポリマーでも使用し得ることを立証する。
【0065】
15重量%のポリエーテルスルホン、29.7重量%のN−メチルピロリドン及び55.3重量%のトリエチレングリコールからなるポリマー溶液、11重量%のポリエーテルスルホン、32.0重量%のN−メチルピロリドン及び57.0重量%のトリエチレングリコールからなるポリマー溶液の2つのポリマー溶液を調製した。これらの溶液を本発明に従って共注型した。第1溶液を下層溶液として使用し、第2溶液を上層溶液として使用した。共注型したフィルムを69°Fの温度及び20°Fの露点で空気に3.5秒曝し、その後61℃の水浴に約75秒間浸漬した。
【0066】
膜は、27psiのピークIPAバブルポイント及び2200lmh/psiの水浸透率を示した。図15は、両層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真である。
【実施例8】
【0067】
15重量%のポリエーテルスルホン、29.7重量%のN−メチルピロリドン及び55.3重量%のトリエチレングリコールからなるポリマー溶液、13重量%のポリエーテルスルホン、14.4重量%のN−メチルピロリドン及び72.6重量%のトリエチレングリコールからなるポリマー溶液の2つのポリマー溶液を調製した。これらの溶液を本発明に従って共注型した。第1溶液を下部溶液として使用し、第2溶液を上部溶液として使用した。共注型したフィルムを68°Fの温度及び20°Fの露点で空気に3.5秒曝し、その後55℃の水浴に約75秒間浸漬した。
【0068】
膜は、29psiのピークIPAバブルポイント及び1700lmh/psiの水浸透率を示した。
【0069】
図16は、片方の層(この場合には上層)は対称的であり、下層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真である。
【0070】
多孔質膜の開発、製造業界の当業者は本発明の作用効果を認識できるであろう。本明細書の記載は当業者のために本発明の代表的な方法を提示しているが、可能なすべての組合せ、置換または修飾を網羅的に示していない。代表的な例は、実施方法を立証するために提示したのであって、本発明の範囲を限定するものと解釈されない。本発明者は、本出願当時公知の包括的な方法で本発明を包括的に包含するものと考えている。
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された層−層接合構造を有する多層多孔質膜の形成方法及びこうして形成された膜に関する。より具体的には、本発明は共注型方法により作製した多層液体シートから多層多孔質膜を形成する方法及びこうして形成された膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー微孔質膜はすでに製造されている。市販されている膜の多くは対称的である。対称性膜の場合膜全体の孔径分布はほぼ均一である。スキンレスの対称性微孔質膜の製造は、例えばポリフッ化ビニリデン(PDVF)膜については米国特許第4,203,848号明細書、ポリアミド膜については米国特許第4,340,479号明細書に記載されている。これらの製造方法は、a)特定の十分コントロールされたポリマー溶液調製物を調製するステップ、b)前記ポリマー溶液を薄膜の形態で仮支持体上に注型するステップ、c)生じたポリマー溶液のフィルムを非溶媒において凝固させるステップ、d)仮支持体を除去するステップ、及びe)微孔質膜を乾燥するステップからなると包括的に記載されている。
【0003】
製膜業者は、前記方法を用いて滅菌濾過に適した丈夫な膜を製造している。前記膜は主として単層対称性膜であるが、前記膜のために他の構造も研究され、使用されてきた。
【0004】
別の単層構造物は、膜の厚さ内の場所により膜の孔径が異なる非対称性膜である。最も一般的な非対称性膜は、孔径が1方の面から他方の面に向かって増加する勾配構造を有している。非対称性膜は、保持性が厚くて密な表面域、すなわちスキン層に集中しているので壊れやすい(米国特許第4,629,563号明細書参照)。しかしながら、濾過しようとする供給流を予備濾過し、膜の閉塞を減らすように作用する孔径の大きい表面と該供給流を接触させれば生産性は高くなることが判明している(米国特許第4,261,834号明細書参照)。更に、他にも非対称性スキンレス微孔質膜の製造も成功している。その1つの製品がマサチューセッツ州ベッドフォードに所在のMillipore Corporation製Express(商標)膜として販売されている。
【0005】
微孔質膜、特に非対称性膜の製造業者は、(膜の孔径に比して)大きい中空海綿構造を有する膜の特性はそのような中空構造を持たない膜と比べて劣ることを認識している。前記中空構造は時に「マクロ孔」と呼ばれているが、当業界では他の用語も使用されている。非常に高い保持効率を有する膜を求めている業者は前記中空構造を持たない膜を製造しようとしている。
【0006】
多分、単層構造の最も直接的な変更物は多層非結合ラミネートである。ラミネートは同一または異なる膜の層から製造され得るが、これには欠点がある。各層を別々の製造過程で作成しなければならず、よってコストがかかり、製造効率が低下する。厚さが例えば20ミクロン未満の非常に薄い膜は容易に変形し、しわが寄るので、製造し、取り扱うことが困難である。このため、薄層を有する最終製品の製造効率は悪くなる。非結合ラミネートは最終濾過デバイス(例えば、ひだフィルター)への製造中にばらばらになることがあり、そのために流れ及び濃度が非均一となる。
【0007】
多層微孔質膜構造物の形成するための他の方法も公知である。米国特許第5,228,994号明細書は、微孔質構造物を第2の微孔質層で被覆して2層の複合微孔質膜を形成する方法を記載している。この方法では、2つの膜を別々に作成するステップを必要とし、注型溶液が支持体の孔に浸入するのを防ぐために特定粘度を有するポリマー溶液しか使用し得ない。
【0008】
多層精密濾過膜を製造することも試みられてきた。米国特許第4,770,777号明細書は、a)第1膜層を注型するステップ、b)この第1膜に繊維状支持体を埋設するステップ、及びc)埋設した繊維状支持体の上部に第2膜層を注型して、膜/繊維/膜サンドイッチを形成するステップを含む方法を記載している。しかしながら、不織材料を使用しているために望ましくない欠陥及び欠点が生じる。米国特許第5,500,167号明細書は、裏つき微孔質濾過膜の製造方法を記載している。この方法は、多孔質不織支持体材料の第1面に第1注型溶液を適用して実質的に平滑な表面を有する第1注型溶液層を作製し、その後第1注型層から微孔質膜が完全に形成される前に前記の第1注型溶液層の実質的に平滑な表面上に第2注型溶液を適用して第2注型溶液層を作製し、支持体材料の第1面が第2ゾーンに突出することなく第1ゾーンと一体的となり、第1ゾーンが第2ゾーンの孔径よりも少なくとも約50%大きい孔径を有するように前記の第1及び第2注型溶液由来の第1及び第2ゾーンを有する連続微孔質膜を形成することを含む。この生成物も欠陥または欠点を生じる可能性がある不織支持体を必要としている。米国特許第5,620,790号明細書には、ポリマー材料製支持体上の第1層を基体に対して注入し、その後直前の層に濁りが生ずる前にポリマー材料溶液の1つ以上の層を前記第1層上に注入して製造した膜が記載されており、ポリマー材料溶液の直後の各層の粘度はその前の層の粘度と同じまたはそれ以下である。米国特許第5,620,790号明細書では、全体の透過率を低下させる傾向を有するかなり厚い膜を製造することにより処理量を改善している。
【0009】
しかしながら、上記した3層注型方法ではすべて多層膜を形成するためにそれぞれのコーティングステップ間にインターバル時間、すなわち硬化時間が不可欠である。その後の注型により膜の2つの層間の界面に密度の高い層が形成され得る。このためにこの方法は丈夫さの点で望ましくない。なぜならば、硬化時間中方法が変動すると非均一となる恐れがあるからである。米国特許第5,620,790号明細書は数秒〜2分の最短硬化時間が有利であると記載しているが、従来方法はコーティング適用間のインターバル時間を本質的にゼロまで短縮し得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,203,848号明細書
【特許文献2】米国特許第4,340,479号明細書
【特許文献3】米国特許第4,629,563号明細書
【特許文献4】米国特許第4,261,834号明細書
【特許文献5】米国特許第5,228,994号明細書
【特許文献6】米国特許第4,770,777号明細書
【特許文献7】米国特許第5,500,167号明細書
【特許文献8】米国特許第5,620,790号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明では、本発明者は驚くことに、コーティング適用間の時間が本質的にゼロでも層間の接合を非連続とすることなく膜構造が連続的に変化している膜が形成されることを知見した。
【0012】
更に、従来技術では、2つの層間に明瞭な境界線が見られた。この境界線を境にして孔径はより開放的構造からより緻密な構造へと劇的に変化する。また、密なスキン様構造の領域を示すこともあり得る。いずれの構造領域も透過性の低下及び望ましくない界面における粒子の迅速蓄積が生ずる恐れがあり、その結果フラックスは劇的に低下する。2つの隣接間の孔径をより微妙に変化させることは前記の影響を低減させ、膜の全体構造の保持挙動にとって有利であろう。
【0013】
援用により本明細書に含まれるとする本発明者の博士論文(「多成分ポリマー系における相分離による膜形成(Membrane Formation by Phase Separation in Multicomponent Polymer Systems)」),オランダ国Twente大学(1988年))の一部としての抄録で、各層の脱混合または相分離に対する第1ポリマー溶液層を覆う第2ポリマー溶液の影響が研究されていた。この研究の目的は、第1ポリマー溶液層を組成の異なる第2ポリマー溶液層で被覆し、次いで通常の浸漬方法により膜を形成することにより薄い密な(非孔質)分離層が形成されるかを定性的に調べることであった。ポリマー含量及び溶媒は、透析蒸発膜のような密な表面層膜が得られるように選択した。著者は、全膜構造を走査型電子顕微鏡写真で比較することにより単層膜及び2層膜の層分離モードを比較した。膜の特性は調べていなかった。顕微鏡写真から密な層の厚さをこの方法により変化させ得ることが推測された。
【0014】
本発明を完成する過程で、本発明者は、良好な特性を有する微孔質膜を製造するためには層間の界面領域の構造をコントロールすることが重要であることを知見した。初期研究から、密な領域が界面で形成されたなら膜の特性が損なわれることが分かった。特に、界面にはっきりと密な領域を有する膜の場合には膜透過性が低下し、濾過処理量が悪かった。従来技術から、全膜構造に関連させてこの領域を最適化することは想到されなかった。
【0015】
更に、本発明を完成する過程で、本発明者は、界面の構造と合わせて平均孔径の大きい層の構造により処理量がコントロールされることが知見された。従来技術は保持層、特に密な保持層を有する膜(逆浸透及び透析蒸発)の保持層の構造を最適化することに集中していたのに対して、本発明者はすべての層及び界面領域の保持特性をコントロールする問題を検討した。
【0016】
米国特許第5,620,790号明細書は、逐次注型膜の場合下層の粘度を上層の粘度よりも高くしなければならないというように粘度を制限することを教示している。
【0017】
従って、マクロ孔のない一体型多層微孔質膜の形成方法を提供することが望ましい。更に、隣接層の接合で中間孔径の領域をコントロールして形成するべく層を同時に注型する単純な方法を提供することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の方法を実施する際に有用な装置の側面図である。
【図2】本発明の膜のフラックス対空気膜バブルポイントのグラフである。
【図3】従来技術の多層膜の顕微鏡写真である。
【図4】従来技術の非対称性微孔質膜の顕微鏡写真である。
【図5】本発明の非対称性膜の顕微鏡写真である。
【図6】図5の膜の下面の顕微鏡写真である。
【図7】図5の膜の上面の顕微鏡写真である。
【図8】本発明の膜の断面の顕微鏡写真である。
【図9】図8の膜の上面の顕微鏡写真である。
【図10】図8の膜の下面の顕微鏡写真である。
【図11】本発明の空気注型膜の上面の顕微鏡写真である。
【図12】本発明の空気注型膜の下面の顕微鏡写真である。
【図13】本発明の空気注型膜の上面の顕微鏡写真である。
【図14】本発明の空気注型膜の下面の顕微鏡写真である。
【図15】両層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真を示す。
【図16】1層(この場合、上層)は対称的であり、下層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真を示す。
【0019】
本発明によれば、a)複数のラッカーを調製するステップ、b)前記ラッカーを共注型して多層液体シートを作成するステップ及びc)共注型した多層液体シートを液体浴/凝固浴に浸漬して連続層順序で層分離するステップを含む多層微孔質構造物の製造方法が提供される。凝固後、微孔質構造物内のすべての残存溶媒を抽出するために任意の抽出ステップを設けてもよい。次いで、多孔質膜を拘束下で乾燥させる。
【0020】
本発明の多層微孔質膜には層間に緻密な界面層がない。更に、隣接層は相互に分離不能な一体型であり、マクロ孔を含まない。本発明の多層膜の各層は、濾液は通過可能であるが残渣を保持する点で保持層であり得る。
【0021】
本発明は、複数のポリマー溶液を支持体上に共注型して多層液体シートを作製し、このシートを液体共凝固浴に浸漬して層分離し、多孔質膜を形成することにより一体型多層多孔質膜を製造する方法を提供する。前記支持体は、膜形成後取り外す仮の支持体であり得る。或いは、支持体は所望により最終構造物に統合される。形成後、多孔質膜を洗浄して溶媒及び他の可溶性物質を除去する。次いで、更に抽出して、遊走性物質を低レベルに低下させ、その後乾燥させてもよい。
【0022】
本発明において、「共注型」は、一方の注型層と次の注型層の間にインターバル時間を実質的に設けることなく各層を相互に本質的に同時に注型することを意味する。共注型により層の接合部分に孔径がコントロールされた領域が形成されるので、共注型は本発明の重要な要件である。従来技術では、連続注型層の間に明瞭な境界線が形成されている。孔径をより開放的な構造からより緻密な構造に劇的に変化させると、望ましくない界面における粒子の急速蓄積及び/または境界点におけるスキン層の形成が生ずる恐れがあり、その結果フラックスが劇的に低下する。多分隣接する共注型ラッカーが部分的に混合したりまたは2つの隣接する共注型ラッカー間の界面での剪断力が高いために、2つの隣接層間の孔径が急激ではなくより微妙に変化する。前記界面ゾーンは膜の全構造物の保持挙動にとって有利である。同時に、構造物に識別可能な境界線のない微孔質構造物が形成され得る。
【0023】
用語「一体型」は、複数の、多くの場合異なるポリマー材料からなる層から形成されているが、相互に結合されており、よって1つの構造物として挙動し、通常の使用時に剥離したり分離することのない構造物を意味する。
【0024】
図1は、多層膜を注型するための多層作成装置10を図示している。図示しているように、前記装置は2層液体フィルムを作製するように設計されており、それぞれ注型しようとする各層のための溶液14,16を収容している2つのチャンバ50,60を有している。所望により、追加の共注型層を作製するために追加のチャンバを設けてもよい。前記装置は前面壁20及び背面壁40、これらの壁の間に分離壁30を含む。分離壁により2つのチャンバの容量が規定される。2つの側壁(図示せず)により装置が完成する。操作中、装置を一般的な膜注型機上に固定し、支持体ウェブ18を固定装置の下で移動させ、2つの溶液をギャップ、すなわち出口80,90から分配する。2つの層の厚さは可動ウエブと出口間の距離(間隙設定値80,90で示す)によりコントロールされる。最終の液体層厚さは間隙の距離、溶液粘度及びウェブ速度により異なる。前記装置の背面壁は通常、支持体にしわや擦傷が生ずるのを防ぐために支持体から若干浮かせて保持されている。実際、背面壁の間隙、支持体の速度及び溶液の粘度は溶液が背面壁の間隙を介して漏れるのを防止するように調節されている。溶液特性により必要ならば、または最終膜の特性を更にコントロールするために、前記装置は各チャンバに別々にまたは装置全体に対して加熱/冷却手段を取り付けてもよい。
【0025】
図示しているように、上記方法は重力押し流を利用している。しかしながら、所要によりチャンバを覆い、密封し、加圧流体、通常乾燥窒素やアルゴンのような不活性ガスの入口を設けてもよい。その後、チャンバを所要により溶液粘度及びプロセス要件により別々に加圧することができる。別の実施態様では、溶液を圧送する。
【0026】
次いで、共注型した多層液体シートを載せた仮支持体18(例えば、非孔質プラスチックまたは金属シート)を当業界で公知の凝固浴(図示せず)に浸漬させるが、この時間はポリマー溶液を連続的重層順序(continuously layered sequence)で層分離させ、一体型多層微孔質ポリマー膜を作製する時間である。作製後、膜を通常洗浄して注型溶液の残存する溶媒及び他の低分子量成分を除去し、コアに巻き付ける。仮支持体18は別の巻き上げドラム(図示せず)に巻き取る。
【0027】
支持体が仮ではなく、最終製品と一体化させる場合には、診断用ストリップに使用されているような非孔質フィルム、或いは多孔質不織布(例えば、TYVEK(登録商標)シート)、延伸多孔質PTFEシート(例えば、メリーランド州チモニウムに所在のW.L.Gore & Associatesから市販されているようなもの)、セルロース材料、プラスチックまたは当業界で前記種類の膜用支持体層として慣用されている他の材料からなる微孔質膜を使用し得る。
【0028】
凝固の連続的重層順序では、凝固は凝固浴と最初に接触する液体フィルム表面から、その後多層液体シートの後続の層を介して起こる。各層は、凝固剤が層を介して拡散するにつれて凝固剤を希釈し、変化させる。凝固剤の性質が変化すると各層及び最終多層膜の膜形成が影響を受ける。層厚さ、組成及び他の層に対する各層の位置により、膜の構造及び特性が変化する。これは、単層膜や単層を積層させて作製した膜とは明らかに異なる。
【0029】
本発明の方法は補助的膜形成ステップに適合し得る。例えば、本出願人の係属中の米国特許出願第60/206,622号明細書(2000年5月24日出願)には、半結晶性ポリマーを含有する膜形成溶液の単層液体フィルムを短時間加熱した後層分離する対称性及び/または非対称性膜の製造方法が開示されている。加熱により最終膜の孔径及び断面構造をコントロールしている。本発明の実施態様では、所望の孔径及び膜構造を得るための別の方法を提供すべく、係属出願の熱方法を利用して前記組成物から1つ以上の層を作製する。
【0030】
本発明の別の実施態様では、下限溶解温度(LCST)を示すポリマー溶液から膜を製造している米国特許第5,444,097号明細書の教示を使用する。溶液をLCST以上に加熱すると層分離が生ずる。生じた膜の構造を更に変化させ、コントロールするために、このステップを本発明の方法に多層液体フィルムを作製した後に加える。本発明の1つ以上の溶液はLCST溶液である。また、上限溶解温度(UCST)を有する溶液はUCST以下に冷却したときに層分離が生ずるが、この溶液は加熱状態で多層液体フィルムに作製され、冷却すると層分離が生ずる。LCST及びUCSTのいずれの実施態様でも、上記したように凝固剤に浸漬することにより更なる層分離が起こり得る。
【0031】
時に蒸気誘導層分離と称されることもある空気注型では層分離が蒸発ステップ中に生じるが、この空気注型を蒸発溶媒を含有する溶液及び余り蒸発しない非溶媒を含有する溶液から多層液体フィルムを作製し、その後この液体フィルムを、場合により水蒸気を含む蒸発環境(例えば、加熱した空気流)に曝すことにより本方法に適用し得る。
【0032】
本発明の方法により、それぞれが各溶液から作製される膜からなる膜の各領域及び場合により存在する界面領域を別個にコントロールし得、層の接合部分の領域の孔径をコントロールし得る。この方法により、各層に対して広範囲の粘度を使用でき、2つ以上の各層の厚さをうまくコントロールでき、2つ以上の層(通常、2〜4層)の界面に起こり得るスキニング影響または緻密な領域を解消できる。1つの実施態様では、非支持複合膜は孔径に応じて十分な機械的強度を有しているが、機械的安定性を向上させるために不織支持体を使用することができる。従って、この組合せにより、改良されたフラックスを有するうまくコントロールされ、高い一体性を有する多層微孔質膜を形成することができる。
【0033】
本発明の方法により、非常に薄い層を独立して注型することができる。層の厚さは注型デバイスの構造及び両ラッカーの流れ及び粘度に依存する。本発明の方法では、従来技術で見られる2層間の明瞭な境界線を有意に縮小また解消し得る。孔径をより開放的な構造からより緻密な構造へと劇的に変化させると、望ましくない界面での粒子の迅速な蓄積が生じ、その結果フラックスが劇的に低下する恐れがある。多分隣接する共注型ラッカーが部分的に混合するためまたは2つの隣接する共注型ラッカーの界面での剪断力が高いために、2つの隣接する層間で孔径が急激ではなくより微妙に変化し得る。前記した界面ゾーンは膜の全体構造の保持挙動のために有利である。同時に、構造中に識別可能な境界線を持たない微孔質構造物が形成され得る。加えて、共注型モードでは形成された膜の収縮を防ぐことができるが、単層フィルムではかなりの収縮が生ずる。これにより、膜構造物を使用することもでき、さもなければ特に非常に小さい孔径を有する膜の場合には特定ラッカーから作製することは困難であるかまたは不可能であり、単層フィルムのようにかなりの収縮が見られる。
【0034】
上記したように、本方法は微孔質膜を製造するための公知方法、例えば液体注型または空気注型と組合わせて使用され得る。更に、前記微孔質膜を製造するために使用されるポリマー及び溶媒/非溶媒をも使用することができる。
【0035】
好ましいポリマーにはPVDF、ナイロン(例えば、ナイロン66)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、PVC、PET、ポリカーボネート、セルロース、再生セルロース、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテートまたはセルロースナイトレート)、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、アクリルまたはメタクリレートのコポリマー、またはこれらのブレンド等が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明のポリマー溶液は通常少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの前記ポリマーに対する溶媒から構成される。前記溶液は、前記ポリマーに対する貧溶媒または非溶媒である成分を1つ以上含み得る。前記成分は業界では「孔形成剤(porogens)」と呼ばれている。前記溶液が均質であることが好ましい。前記溶液は場合により、当該ポリマーに対する非溶媒である成分を1つ以上含む。ポリマー溶液は経時的に安定(良好な溶媒品質)であるかまたは経時的に準安定である。この溶液は潜在的に下限溶解温度または上限溶解温度を有し得る。前記溶液の成分の例は当業界で公知であり、考えられるすべてのバリエーションを網羅する必要はない。使用される溶媒の例は、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア、アセトン、ジメチルスルホキシドである。多数の孔形成剤が当業界で使用されてきており、その例にはホルムアミド、各種アルコール及び多価アルコール、水、各種ポリエチレングリコール及び各種塩(例えば、塩化カルシウム及び塩化リチウム)が含まれる。
【0037】
同一ポリマー及び溶媒から粘度、添加剤及び(作製前、作製中または作製後の)処理を変更して複数の層を作製することができ、または層毎にポリマーを変更してもよい。異なるポリマーを使用する場合、相互に相容性のポリマーを選択しなければならない。更に、溶媒及び層分離材料は、他の層に悪影響を及ぼさないように可能ならば同一または少なくとも部分的に相容性でなければならない。
【0038】
本発明の微孔質構造物は約0.01〜約10ミクロン、好ましくは約0.01〜約2ミクロンの平均孔径を有し得る。
【0039】
上記したように、各種の調製及び加工ステップ、例えば米国特許出願第60/206,622号明細書(2000年5月24日出願)の熱補助形成方法を使用すると独自の多層生成物を製造することができる。すべての層が対称的または非対称的である;少なくとも1層が対称的で、他の層は非対称的である;少なくとも1層が非対称的で、他の層は対称的である;孔が構造物の断面の途中の孔径が最小である砂時計様構造物を形成するように両層が上下に非対称である多層生成物を形成することができる。対称性膜は、平均孔径が膜を通して実質的に同一という特徴の孔径分布を有する多孔質構造を有する。非対称性膜では、平均孔径は膜を通して変化しており、通常1方の面から他方の面に向かって増加している。他のタイプの非対称性も公知である。例えば、孔径が膜の厚さの途中の位置で最小となるようなものである。非対称性膜は、同一の定格孔径及び厚さを有する対称性膜に比して高いフラックスを有する傾向がある。本発明により、特定の適用及び要求を取り扱うように独自の構造を形成することができる。
【0040】
非対称性膜は、約2:1〜約1000:1、好ましくは約2:1〜約100:1の孔径勾配を有していてもよい。この非対称性は、層の1つの主表面の平均孔径を前記層の他の主表面の平均孔径と比較することにより調べられる。本発明では、各層が異なる、または所望により類似の非対称性を有する2つ以上の非対称性層を作製することができる。
【0041】
更に、上記したように、各層の厚さを広範囲で変更することができ、自立性一体型多層構造物を得ることができる。通常、良好な濾過特性及び自立性が得られるので膜構造物の厚さを50〜200ミクロンとすることが望ましい。本発明では、全体の厚さを同一とすることができるが、所望する独自の膜構造物を製造するために1つの層対他の層の相対厚さをコントロールすることもできる。通常、1つの層を10ミクロンほど薄くすることができ、残りの構造物が適当な厚さを有している限り一体型多層構造物が得られる。例えば、150ミクロンの厚さの膜では、第1層を約10〜約140ミクロンの厚さとし、他の層は相対的に約140〜約10ミクロンの厚さとすることができる。
【0042】
図15は、両方の層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真を示す。
【0043】
図16は、1層(この場合、上層)は対称的であり、下層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真を示す。
【実施例1】
【0044】
17〜24重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び83〜76重量%のN−メチルピロリドン(NMP)からなる溶液を調製した。各溶液を少量ずつ小分けし、それぞれに表1に示すように異なる熱処理を加えた。各熱処理はポリマー溶液を所定温度に加熱し、溶液をその温度で2時間保持することであった。温度は38〜50℃の範囲であった。処理中、溶液をロールミルを用いて軽く撹拌した。その後、溶液を室温まで冷却した。
【0045】
2つのポリマー溶液の多層を図1に示すような装置を用いて共注型した。ラッカーリザーバ50,60に2種のポリマー溶液を充填した。注型装置に対してベルトを移動させることにより、2つのラッカー間に硬化時間を設けることなく多層構造物を注型した。2つのポリマー溶液の流量及び各層の厚さは図1の間隙設定値80,90によりコントロールした。作製した多層をメタノール濃度が95%ぐらい高いメタノール浴に約2分間浸漬した。浴は室温に維持した。メタノール流を多層の導入方向に向流させることにより、NMPを多層膜からうまく抽出した。メタノール浴に約2分間浸漬後、多層膜を支持体ベルトから外し、水浴で約4分間抽出した。その後、多層膜をコアに取った。次いで、膜を水で更に抽出し、イソプロピルアルコール(IPA)に浸漬し、拘束下で風乾した。下表に、共注型の各種条件を要約する。
【0046】
こうして、同等の厚さを有する市販の対称性疎水性PVDF膜(マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporationから市販されているDurapore(登録商標))に比して高いフラックスを示す膜が得られた。図2には、本発明で製造した膜のフラックス改善を示すフラックス対バブルポイントのグラフを示している。図2に示すように、同等のバブルポイントで本発明の膜は高いフラックス性を有している。
【0047】
【表1】
【実施例2】
【0048】
作製し、洗浄した膜の乾燥に関する比較試験で、多層膜が単一ポリマー溶液から注型した対称性膜に比して収縮しにくいことが判明した。
【0049】
本実験では、PVDF溶液をNMP中16重量%のSolef 1015(ベルギー国のソルベー)及びNMP中Kynar 741(米国のElf Atochem)溶液から調製した。Solef溶液を単層として、Kynar溶液との共注型フィルムとして注型した。両フイルムを、注型速度(2分間浸漬)、凝固及びラッカーの温度(室温)に関して全く同一の条件でメタノール浴に浸漬した。浸漬後、膜を水に抽出し、減圧、乾燥時間及び温度を同一条件にして衝撃乾燥機を用いて乾燥した。この乾燥は膜に対して一方向張力に設定した同一ウェブ速度で実施した。複合膜は全く収縮しなかったが、Solef溶液から注型した単膜の幅は元の幅の65%に収縮した。膜収縮が抑制されると膜製造の収率が向上し、製造された膜はより効率的に加工される。
【実施例3】
【0050】
本実施例では、本発明により製造した膜と短い硬化時間で作製した膜を比較した。図4は、2つのポリマー溶液間の緻密な界面を示す。この膜は、PVDFラッカーの第1フィルム上に第2のポリマー溶液を逐次注型して作製した。ラッカーを同時に注型した実験ではいずれにおいても前記したような界面は観察されなかった。
【0051】
20%のPVDF及び80%のNMPを用いて2つのポリマー溶液を調製した。ガラスプレート上にPVDFの第1層を注型することにより多層膜を作製した。第1層を周囲雰囲気に曝した後第2層を前記第1層上に注型した。連続注型ステップの間約2cmの僅かな隙間を設けることにより周囲雰囲気に曝した。膜が完全に形成されるまで作製した多層をメタノールに浸漬した後、水において抽出した。膜を拘束下で風乾した。
【0052】
膜を窒素中で破断し、その断面を走査型電子顕微鏡写真に写した。この写真を図4に示す。隣接する層の界面にはっきりと緻密な領域があることが明白である。
【0053】
図5は、両層の孔径が完全に異なる本発明の膜の典型的な断面を示す。この膜は、同一組成(20重量%のKynar 741)及び類似の粘度を有する2つの溶液を同時に共注型して作製したが、熱履歴は変えた。2つの領域が認められ得るが、緻密な界面は存在していない。
【実施例4】
【0054】
本実施例では、低粘度溶液上に上層用の高粘度溶液を注型することにより共注型多層膜を作製する。上層溶液用に24重量%のPVDFのポリマー濃度、下層溶液用に20重量%のPVDFのポリマー濃度を用い、上部の孔径は非常に小さく、他の面の孔径は大きく、膜の中に孔径が段階的に変化するゾーンがある構造物が形成された(図6参照)。界面は識別できない。
【0055】
24重量%及び20重量%のPVDF溶液をNMP中で調製した。24重量%及び20重量%のPVDF溶液の粘度はそれぞれ12,000cP及び3,500cPであった。多層を実施例1に記載したように、24重量%溶液はメタノール浴に面し、20重量%溶液は支持体ベルトに面するように注型した。実施例3に示したように多層のSEM写真を撮影した。驚くことに、2つの層間に界面は観察されなかった。図6は膜の断面図である。図7は浴側の膜の表面の写真であり、スキンレンの緻密な多孔質構造であることを示している。図8は、ベルト側の膜の表面の写真であり、スキンレンの開放多孔質構造であることを示している。
【実施例5】
【0056】
本実施例では、ポリマーの種類及び濃度は同一であるが、粘度及び温度処理の異なる2つの溶液を注型した。上層溶液の粘度はポリマー溶液中に5%塩化リチウムを用いて上昇させた。更に、高粘度溶液は47.5℃に加熱し、この温度で維持したのに対して、下層溶液の温度は44℃とした。処理温度を高くするとこの種のポリマー溶液の場合膜の孔径が大きくなることは公知である。
【0057】
以下の組成を有する溶液を調製した。
【0058】
【表2】
【0059】
高粘度溶液(PS1)を低粘度溶液(PS2)の層の上に使用すると、図9〜11に示す構造物が得られた。ここで、上層(浴側)(図9参照)の層が下層(ベルト側)(図10参照)に比してより開放的であることが認められ得る。下層ラッカー(PS2)及び該ラッカーより大きな孔径を与える溶液を生ずる高温に処理した上層ラッカー(PS1)という2つの異なるラッカーから膜を作製したので、孔径の差は驚くことではない。上層溶液の粘度を5% LiClを添加することにより変化させた。両溶液とも20重量%のPVDFを含有していた。しかしながら、これらの膜はいずれも2つの層間に識別可能な界面を有していなかった(図11)。このことは、上記したように膜性能にとって有利であり得る。
【実施例6】
【0060】
本明細書に記載されている方法を用いると、硬化時間が従来技術のように必要でなく、この方法は拡散誘導層分離の正確な方法に殆ど依存しないことを実証するために、2つの膜をZeman,Journal of Membrane Science,Vol.84,p.93−106(1993)に記載されている空気注型方法を用いて注型した。アセトン及びメチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)の混合物中に分子量の異なる2種の酢酸セルロースを溶解することにより比較的に低粘度の2つのポリマー溶液を調製した。2種のセルロースジアセテートポリマーは、Eastman Chemical Products製の平均Mwが約240kDaのCA−398−60及び平均Mwが約174kDaのCA−398−30であった。第1ポリマー溶液(PS3)の組成は9% CA−398−30、40% MPD及び51% アセトンであった。第2ポリマー溶液(PS4)の組成は9% CA−398−60、40% MPD及び51% アセトンであった。
【0061】
空気注型中の表面形態に対する分子量の影響を示すために類似溶液をZemanらにより使用した。上記した共注型方法を用いて多層膜を作製した。共注型を使用したので、2つの層を適用する間に硬化時間は設けなかった。膜を約30ミル及び16ミルの間隙設定値で注型した。前記膜を25℃で±55% RHの湿潤空気に30分間曝した。その後、膜を水で一晩洗浄して残存するMPDを除去し、最後に膜を風乾した。
【0062】
溶液PS4の上に溶液PS3を適用することにより第1の膜を作製した。第2の実験では、溶液PS3の上に溶液PS4を適用した。図12及び13は第1の膜の2つの表面を示し、図14及び15は第2の膜の2つの表面を示す。いずれにせよ、空気に触れた膜の表面に孤立した孔が観察される。共注型により、中間「硬化」ステップなしに低粘度材料の2つの層を堆積できることが明らかである。これは、提案された方法は硬化ステップの間コントロールする必要がなく、方法コントロールにとって非常に有利であることを明白に示している。
【0063】
本発明者は、2つの溶液を共注型することにより2つの表面の表面孔径及び孔形態をコントロールできることを知見した。例えば、図12及び13に示す膜は、上面のために使用した溶液のみから注型した膜の空気側表面に相当する上面及び下層を形成するために使用されるポリマー溶液のみから注型した膜の下面に相当する支持体に形成された下面を有する。更に、実施例は、2つの溶液の組成特性(例えば、本実施例では、ポリマーの分子量)を選択することにより多層膜の表面特性が設計され得ることを立証している。
【実施例7】
【0064】
下記実施例7及び8は、共注型方法を用いて異なる構造物を製造し得ること及びこの方法は他のポリマーでも使用し得ることを立証する。
【0065】
15重量%のポリエーテルスルホン、29.7重量%のN−メチルピロリドン及び55.3重量%のトリエチレングリコールからなるポリマー溶液、11重量%のポリエーテルスルホン、32.0重量%のN−メチルピロリドン及び57.0重量%のトリエチレングリコールからなるポリマー溶液の2つのポリマー溶液を調製した。これらの溶液を本発明に従って共注型した。第1溶液を下層溶液として使用し、第2溶液を上層溶液として使用した。共注型したフィルムを69°Fの温度及び20°Fの露点で空気に3.5秒曝し、その後61℃の水浴に約75秒間浸漬した。
【0066】
膜は、27psiのピークIPAバブルポイント及び2200lmh/psiの水浸透率を示した。図15は、両層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真である。
【実施例8】
【0067】
15重量%のポリエーテルスルホン、29.7重量%のN−メチルピロリドン及び55.3重量%のトリエチレングリコールからなるポリマー溶液、13重量%のポリエーテルスルホン、14.4重量%のN−メチルピロリドン及び72.6重量%のトリエチレングリコールからなるポリマー溶液の2つのポリマー溶液を調製した。これらの溶液を本発明に従って共注型した。第1溶液を下部溶液として使用し、第2溶液を上部溶液として使用した。共注型したフィルムを68°Fの温度及び20°Fの露点で空気に3.5秒曝し、その後55℃の水浴に約75秒間浸漬した。
【0068】
膜は、29psiのピークIPAバブルポイント及び1700lmh/psiの水浸透率を示した。
【0069】
図16は、片方の層(この場合には上層)は対称的であり、下層が非対称的である本発明の多層構造物の断面顕微鏡写真である。
【0070】
多孔質膜の開発、製造業界の当業者は本発明の作用効果を認識できるであろう。本明細書の記載は当業者のために本発明の代表的な方法を提示しているが、可能なすべての組合せ、置換または修飾を網羅的に示していない。代表的な例は、実施方法を立証するために提示したのであって、本発明の範囲を限定するものと解釈されない。本発明者は、本出願当時公知の包括的な方法で本発明を包括的に包含するものと考えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の層からなる微孔質多層膜であって、(a)一体型であり、全層が非対称性であること、または(b)隣接する層間に孔径が急激ではなくより微妙に変化する界面ゾーンを有することを特徴とする前記多層膜。
【請求項2】
一体型であり且つ全層が非対称性である請求項1に記載の多層膜。
【請求項3】
隣接する層間に孔径が急激ではなくより微妙に変化する界面ゾーンを有する請求項1に記載の多層膜。
【請求項4】
第1および第2層を有し、第1層が10ミクロン(μm)から140ミクロン(μm)の間の厚さを有する請求項1に記載の多層膜。
【請求項5】
層の一方の主表面から他方の主表面に至る孔径勾配(孔径の非対称性)が2:1〜1000:1である請求項1に記載の多層膜。
【請求項6】
平均孔径が0.01〜10ミクロン(μm)の範囲にある請求項1に記載の多層膜。
【請求項7】
平均孔径が0.01〜2ミクロン(μm)の範囲にある請求項1に記載の多層膜。
【請求項8】
層間に緻密な界面領域を有しない請求項1に記載の多層膜。
【請求項9】
隣接する層が相互に不可分で一体的であり、中空構造(マクロ孔)を有しない請求項8に記載の多層膜。
【請求項1】
2以上の層からなる微孔質多層膜であって、(a)一体型であり、全層が非対称性であること、または(b)隣接する層間に孔径が急激ではなくより微妙に変化する界面ゾーンを有することを特徴とする前記多層膜。
【請求項2】
一体型であり且つ全層が非対称性である請求項1に記載の多層膜。
【請求項3】
隣接する層間に孔径が急激ではなくより微妙に変化する界面ゾーンを有する請求項1に記載の多層膜。
【請求項4】
第1および第2層を有し、第1層が10ミクロン(μm)から140ミクロン(μm)の間の厚さを有する請求項1に記載の多層膜。
【請求項5】
層の一方の主表面から他方の主表面に至る孔径勾配(孔径の非対称性)が2:1〜1000:1である請求項1に記載の多層膜。
【請求項6】
平均孔径が0.01〜10ミクロン(μm)の範囲にある請求項1に記載の多層膜。
【請求項7】
平均孔径が0.01〜2ミクロン(μm)の範囲にある請求項1に記載の多層膜。
【請求項8】
層間に緻密な界面領域を有しない請求項1に記載の多層膜。
【請求項9】
隣接する層が相互に不可分で一体的であり、中空構造(マクロ孔)を有しない請求項8に記載の多層膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−88143(P2011−88143A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243817(P2010−243817)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【分割の表示】特願2007−160972(P2007−160972)の分割
【原出願日】平成13年5月22日(2001.5.22)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【分割の表示】特願2007−160972(P2007−160972)の分割
【原出願日】平成13年5月22日(2001.5.22)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】
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