説明

微小孔性膜及びその製造及び使用

本発明はバッテリーセパレーターとして用いた時に高い透過性及び耐熱性だけでなく、優れた電気化学的安定性と、低い熱収縮を有する微小孔性膜に関する。この微小孔性膜は良好な機械的強度、電解溶液吸収、及び圧縮耐性性質を有する。本発明はそのような微小孔性膜を製造する方法、そのような微小孔性膜を含むバッテリーセパレーター、及びそのようなバッテリーセパレーターを用いたバッテリーにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリーセパレーターとして用いた時に、高い透過性及び耐熱性だけでなく、優れた電気化学的安定性と、低い熱収縮率を有する微小孔性膜に関する。この微小孔性膜は良好な機械的強度、電解溶液吸収、及び圧縮耐性性質を有する。本発明はそのような微小孔性膜を製造する方法、そのような微小孔性膜を含むバッテリーセパレーター、及びそのようなバッテリーセパレーターを用いたバッテリーにも関する。
【背景技術】
【0002】
微小孔性膜は一次バッテリー、並びにリチウムイオン二次バッテリー、リチウム−ポリマー二次バッテリー、ニッケル−水素二次バッテリー、ニッケル−カドミウム二次バッテリー、ニッケル−亜鉛二次バッテリー、銀−亜鉛二次バッテリー等の二次バッテリーのセパレーターとして有用である。微小孔性膜がバッテリーセパレーターとして、特にリチウムイオンバッテリーに用いられたときに、この膜の性能は、バッテリーの性質、生産性、及び安全性に有意に影響を与える。即ち、この微小孔性膜は、好適な透過性、機械的性質、熱安定性、寸法安定性、シャットダウン性質、メルトダウン性質を有していなければならない。そのようなバッテリーは、特にバッテリーが操作条件に曝されたときに、改善されたバッテリーの安全性を示すように、比較的低いシャットダウン温度と、比較的高いメルトダウン温度を有していなければならない。高いセパレーター透過性は、高いキャパシティーのバッテリーのためには好まれる。高い機械的強度を有するセパレーターは、改善されたバッテリアセンブリ及び製造のために好まれる。
【0003】
物質の組成、延伸条件、熱処理条件等の最適化がバッテリーセセパレーターとして用いられる微小孔性膜の性質を改善するために提案されてきた。例えば、JP6−240036Aは改良された細孔直径及びシェープ細孔直径分布を有する微小孔性膜を開示する。この膜は重量平均分子量が7×10以上の超高分子量ポリエチレンを容量で1%以上含むポリエチレンレジンから作られる。このポリエチレンレジンは10乃至300の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を有し、この微小孔性膜は35乃至90%の間隙率、0.05乃至2μmの平均透過細孔直径、0.2kg以上の破断強度(15mm幅)及び1.5以下の細孔直径分布(最大細孔直径/平均透過細孔直径)を有する。この微小孔性膜は前述のポリエチレンレジン及び膜形成溶媒の溶融混合物をダイを通じて押出し形成する工程、前述のポリエチレンレジンの結晶分散温度(Tcd)から溶融温度+10℃の温度まで冷却することにより、得られたゲル様シートを延伸する工程、このゲル様シートから膜形成溶媒を除去する工程、得られた膜を前述のポリエチレンの溶融温度−10℃以下の温度でエリア拡大して、1.5乃至3倍に再延伸する工程、及び前述のポリエチレン樹脂の結晶分散温度乃至融点の間の温度で、膜を硬化する工程により、製造される。
【0004】
WO1999/48959は局所的に透過性に偏りがない均一な細孔表面を有するだけでなく、好適な強度及び透過性を有する微小孔性ポリオレフィン膜を開示する。この膜は、例えば、50,000以上及び5,000,000未満のMw及び1以上30未満の分子量分布を有する高密度ポリエチレンのようなポリオレフィンレジンから製造される。このレジンは、20乃至100nmの平均マイクロ繊維サイズ及び40乃至400nmの平均繊維ディスタンスを有する。この微小孔性膜は、ダイを通じて、前述のポリオレフィンレジンと膜形成溶媒との溶融混合物を押出し成型する工程、得られたゲル様シートをポリオレフィンレジンの融点又はこの融点よりも高い又は低い温度で冷却して延伸する工程、このゲル様シートから膜形成溶媒を除去する工程、このポリオレフィンレジンの融点又はこの融点よりも高い又は低い温度でこのシートを1.1乃至5倍に再延伸する工程、及び前述のポリオレフィンレジンの結晶分散温度乃至融点の間の温度で熱硬化する工程により製造される。
【0005】
WO2000/20492は5x10以上のMwを有する微細なポリエチレンファイバーにより特長付けられる、改善された透過性の微小孔性ポリオレフィン膜を開示する。この組成物はポリエチレンを含む。この微小孔性ポリペプチドアルファオレフィン膜は0.05乃至5μmの平均細孔直径、縦横の切片において、膜表面に対して80乃至100°のアングルθにおけるラメラのパーセンテージが40%以上である。このポリエチレン組成物は重量により1乃至69%の、7x10以上のMwを有する超高分子量ポリエチレン、重量により1乃至98%の高密度ポリエチレン、及び1乃至30%の低密度ポリエチレンを含む。この微小孔性膜は前記ポリエチレン組成物及び膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイを通じて押出し成形し、冷却によりゲル状シートを延伸し、前述のポリエチレン又は組成物の結晶分散温度乃至融点+30℃の温度で熱硬化し、そして膜形成溶媒の除去により製造される。
【0006】
WO2002/072248は改善された透過性、粒子ブロック性質、及び強度を有する微小孔性膜を開示する。この膜は380,000未満のMwを有するポリエチレン樹脂を用いて製造される。この膜は50乃至95%の孔隙率及び0.01乃至1μmの平均細孔直径を有している。この微小孔性膜は微小孔性膜全体を通じてお互いに連結している0.2乃至1μmの平均直径を有するマイクロファイバーにより形成された3次元網目状骨格を有し、0.1μm以上及び3μm未満の平均直径を有する骨格により定義される間隙を有する。この微小孔性膜は前記ポリエチレンレジンと膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイを押出し成形し、得られたゲル状シートを冷却して膜形成溶媒を除去し、20乃至140℃の温度で2乃至4倍に延伸し、80℃乃至140°の温度で延伸した膜を熱硬化することにより得られる。
【0007】
WO2005/113657は好適なシャットダウン性質、メルトダウン性質、二次元安定性、及び高温耐性を有する微小孔性ポリオレフィン膜を開示する。この膜は(a)10,000以下の分子量、11乃至100のMw/Mn(Mnはこのポリエチレンレジンの数平均分子量である)、及び100,000乃至1,000,000の粘度平均分子量(Mv)を有する成分の容量により8乃至60%のポリエチレンレジンと、(b)ポリプロピレンとを含むポリオレフィン組成物を用いて製造する。この膜は20乃至95%の孔隙率及び100℃において10%以下の熱収縮率を有する。この微小孔性ポリオレフィン膜は前述のポリオレフィンと膜形成溶媒との溶融ブレンドをダイを通じて押出し成形し、冷却により得られたゲル状シートを延伸し、膜形成溶媒を除去し、及びこのシートをアニールして製造される。
【0008】
セパレーターの性質を考慮すると、透過性、機械的強度、二次元安定性、シャットダウン性質、及びメルトダウン性質だけでなく、電解溶液の吸収性のようなバッテリー生産性、及び電解溶液保持性質等の再利用性に関する性質が近年重要になっている。バッテリー製造に特に重要なのは、高い透過性及び熱耐性を維持しつつも、改善された電気化学的安定性及び低い熱収縮率を有するものである。特に、リチウムイオンバッテリーの電極はリチウムの侵入及び放出により膨張又は収縮され、バッテリー容量が高くなると膨張率も高くなる。セパレーターは電極が膨張したときに、圧縮されるので、セパレーターが圧縮されたときに電解溶液保持が出来る限り少ないことが好まれる。
【0009】
更に、改善された微小孔性膜はJP6−240036A、WO1999/48959、WO2000/20492、WO2002/0722548、及びWO2005/113657に記載されているけれども、さらなる改善、特に高い透過性及び熱耐性を維持しつつも、電気的安定性及び低い熱収縮を有する膜が必要とされている。したがって、高い透過性と熱耐性を維持しつつも、良好な機械的強度、圧縮耐性、及び電解溶液吸収を有し、改善された電気化学的安定性及び低い熱収縮率を有する微小孔性膜からバッテリーセパレーターを製造することが好ましい。
【発明の概要】
【0010】
本発明は良好な機械的強度、圧縮耐性、及び電解溶液吸収を有し、高い透過性及び熱耐性を維持しつつ、改善された電気化学的性質及び低い熱収縮を含む重要な性質のバランスを有する微小孔性膜の発見に関する。特に重要なことは、この膜がバッテリーセパレーターに用いられた時に、本発明の微小孔性膜は優れた熱収縮、メルトダウン温度、及び熱機械的性質、即ち、溶融状態での減少した最大収縮を示す。本発明の微小孔性膜は(1)ポリオレフィン組成物及び少なくとも1つの希釈剤又は溶媒、例えば、膜形成溶媒、を組合わせて混合物(例えば、ポリオレフィン溶液)を得る工程、このポリオレフィン組成物は(a)約40乃至約60%の1.0x10未満の重量平均分子量(Mw)、例えば、4.5x10乃至約6.5x10の範囲、100以下、例えば、1.5乃至10、又は約3乃至約5の範囲の分子量分布(MWD)、を有する第一ポリエチレンレジン、(b)約20乃至約40%の、0.8x10以上のMw、例えば、0.8x10乃至2x10の範囲、100以下、約1乃至約100、又は約1.5乃至10の範囲のMWD、及び80J/g以上の△Hm、を有する第一ポリプロピレンレジン、(c)約10乃至約30%の0.8x10未満、例えば、約4x10乃至約7x10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約100の範囲のMWD、及び80J/g以下の△Hmを有する第二ポリプロピレンレジン、及び(d)約0乃至約10%の、1.0x10以上、例えば、約1.1x10乃至5x10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約10、又は約4乃至約6の範囲のMWD、を有する第二ポリエチレンレジンを含む、(2)ポリオレフィン溶液をダイを通じて押出し成形をして、押出し成形物を製造する工程、(3)この押出し成形物を冷却して、冷却した押出し成形物を製造する工程、(4)少なくとも1つの方向に押出し成形して冷却した押出し成形物を延伸して、延伸シートを形成する工程、(5)この延伸したシートから希釈剤又は溶媒の少なくとも一部分を除去して膜を形成する工程、(6)任意で、この膜を少なくとも1方向に1.1乃至1.8倍延伸して延伸膜を形成する工程、及び(7)工程(5)又は(6)の膜生成物を熱硬化して最終的な微小孔性膜を形成する工程を含む。
【0011】
1つの態様において、本発明の微小孔性膜は、膜の容量に基づくパーセンテージにおいて、(a)約40乃至約60%の1.0x10未満の、例えば、4.5x10乃至約6.5x10の範囲の重量平均分子量(Mw)、100以下、例えば、1.5乃至10の範囲の分子量分布(MWD)、を有する第一ポリエチレン、(b)約20乃至約40%の、0.8x10以上、例えば、0.8x10乃至2x10の範囲のMw、100以下の、例えば、約1乃至約100の範囲のMWD、及び80J/g以上の△Hm、を有する第一ポリプロピレン、(c)約10乃至約30%の0.8x10未満、例えば、約4x10乃至約7x10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約100の範囲のMWD、及び80J/g以上の△Hmを有する第二ポリプロピレン、並びに(d)約0乃至約10%の、1.0x10以上、例えば、約1.1x10乃至5x10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約10の範囲のMWD、を有する第二ポリエチレンを含む。
【0012】
1つの態様において、この微小孔性膜はポリエチレンとポリプロピレンを含み、168℃以上のメルトダウン温度、10%以下の溶融状態での最大TD熱収縮率、及び80%以上のキャパシティー回復率を有する。この膜は膜表面の任意の2点間の最大高低差で表される、3x10nm以上の表面粗さを有している。1つの態様において、この微小孔性膜の表面粗さの上限値は3x10nmである。この範囲内の表面粗さにより、この微小孔性膜は、バッテリーセパレーターとして用いられた場合に、電解質溶液との接触面積が大きくなるので、好適な電解溶液吸収性質を有する。
【0013】
1つの態様において、この混合物の形成に用いられるレジンは、(a)約4.5x10乃至約6.5x10、例えば、約5x10乃至約6.5x10の範囲のMw及び約2乃至約10、約3乃至約5のMWDを有する第一ポリエチレンレジン、(b)0.8x10乃至約2x10、例えば、約0.9x10乃至約1.5x10のMw、約1乃至約100、例えば、約2乃至約6の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、約80乃至約120J/gの範囲の△Hmを有する第一ポリプロピレンレジン、(c)約4x10乃至約7x10、例えば、約5.7x10乃至約6.6x10のMw、約2乃至約100、例えば、約3乃至約15のMWD、及び80J/g以上、例えば、約80乃至120J/gの△Hmを有する第二ポリプロピレンレジン、並びに(d)任意で、1.1x10乃至約5x10、例えば、1.0x10乃至約3x10のMw、及び約2乃至約100、例えば、約4乃至約6の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを含む。この微小孔性膜は、その容量により、50%以下のポリプロピレン樹脂由来のポリプロピレン及び50%以上のポリエチレンレジン由来のポリエチレンを含むことが好ましい。
【0014】
前述の方法において、任意工程(6)の微小孔性膜の延伸工程は工程(4)で冷却された押出し成形物を延伸する工程の後に行われることから、「再延伸工程」と呼ばれる。
【0015】
更なる態様において、本発明は熱硬化工程(4i)を工程(4)及び(5)の間に含む微小孔性膜に関する。ここにおいて、延伸されたシートは延伸温度±5℃の温度で熱硬化され、熱ロール工程(4ii)が工程(4i)の後で工程(5)の前に行われる。ここにおいて、延伸されたシートはポリオレフィン組成物の結晶分散温度からポリオレフィン組成物の融点+10℃の範囲の温度で加熱されたローラーと接触する。工程(4ii)の後で工程(5)の前に行われる媒処理工程(4iii)では、延伸されたシートが加熱溶媒と接触する。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明は以下で説明する特定のポリオレフィンを含む微小孔性膜が相対的に低い熱収縮率及び好適な電気化学的安定性を有するという発見に基づくものである。
【0017】
本発明は、好適な機械的強度、圧縮耐性、及び電解溶液吸収を有し、高い透過性及び熱耐性を維持しつつ、優れた電気化学的安定性及び低い熱収縮を含む、重要ないくつかの性質を好適なバランスで有する微小孔性膜を製造する方法に関する。最初の工程で、特定のポリエチレンレジンと特定のポリプロピレンレジン、及び任意で他の特定のポリエチレンが、例えば、溶融ブレンドを用いて、組み合わされ、ポリオレフィン組成物を形成する。
[1] 溶融(ブレンド)の製造
(1)ポリオレフィン組成物
【0018】
1つの態様において、第一ポリオレフィン組成物は(a)約40乃至約60%(例えば、45乃至55%)の、10x10未満、例えば、約4.5x10乃至約6.5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約3乃至約5の範囲のMWDを有する第一ポリエチレンレジン、(b)約20乃至約40%(例えば、30乃至40%)の、0.8x10以上、例えば、0.8x10乃至約2x10の範囲のMw,100以下の、例えば、約2乃至約6の範囲のMWD、及び80J/g以上の△Hmを有する第一ポリプロピレンレジン、(c)約10乃至約30%(例えば、10乃至15%)の、0.8x10未満、例えば、約4x10乃至約7乃至10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約100の範囲のMWD、及び80J/g以上の△Hmを有する、第二ポリプロピレンレジン、並びに(d)約0乃至約10%の、1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至約5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約4乃至約6の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを含む。
(a)ポリエチレンレジン
(i)組成物
【0019】
1つの態様において、第一ポリエチレンレジンは1.0x10未満、例えば、約4.5x10乃至約6.5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約1.5乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWDを有する。本発明に用いる第一ポリエチレンレジンの非限定的な例としては、約5x10乃至約6x10のMw及び100以下、例えば、約2乃至約6、又は約3乃至約5のMWDを有するものである。第一ポリエチレンレジンはエチレンホモポリマー、又は少量、例えば、約5モル%の第三αオレフィンを含むような、エチレン/アルファオレフィンコポリマーでよい。この第三のαオレフィンは、エチレン以外のものであり、好ましくは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、又はスチレン又はこれらの組み合わせである。そのようなコポリマーは好ましくは一部位触媒を用いて製造される。
【0020】
1つの態様において、第二ポリエチレンレジン、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)レジンは任意でありの成分であり、1.0x10以上、例えば、約1.1x10乃至約5x10の範囲のMw及び100以下、例えば、約2乃至約10、例えば、約4乃至約6の範囲のMWDを有する。本発明に用いる第二ポリエチレンレジンの非限定的な例としては、約1.2x10乃至約3x10のMw及び約3乃至約6のMWDを有するものである。第二ポリエチレンレジンはエチレンホモポリマー又は少量、例えば、5モル%の第三αオレフィンを含むエチレン/αオレフィンコポリマーである。この第三のαオレフィンはエチレン以外のものであり、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、又はスチレン、あるいはこれらの組み合わせでよい。そのようなポリマーは一部位触媒を用いて製造されたものであることが好ましい。
(ii)ポリエチレンのMw及びMWDの決定
【0021】
MWDは数平均分子量(Mn)に対するMwの割合である。本発明の微小孔性膜の製造に用いるポリマーのMWDは例えば、多段階重合により、コントロールすることができる。このポリエチレン組成物のMWDはポリエチレン組成物の分子量と混合割合をコントロールすることにより制御することができる。
【0022】
ポリエチレンのMwとMnは示差屈折率検出器(DRI)を備えた、高温サイズ排除クロマトグラム又は「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ)を用いて決定する。3つのPLゲル混合Bカラム(ポリマーラボラトリーズより入手)を用いる。通常の流速は0.5cm/mlである、通常の注入容量は300mlである。輸送ライン、カラム、及びDRI検出器を145℃に維持したオーブン内に収納されている。測定は「Macromolecules、Vol.34、No.19、pp.6812−6820(2001)」に記載の手順で行った。
【0023】
用いたGPC溶媒は約100ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含むろ過されたアルドリッチ試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。SECに導入する前に、オンライン脱気装置を用いて、このTCBを脱気して用いた。ポリマー溶液をガラス容器内に乾燥ポリマーを入れ、前述のTCB溶媒の所定量を入れ、この混合物を撹拌しながら160℃で約2時間加熱して、調製した。UHMWPEの濃度は0.25乃至0.75mg/mlであった。GCPに注入する前に、SP260サンプルプレップステーション(ポリマーラボラトリーズより入手)の2μmのフィルターで、サンプル溶液をオフラインでろ過した。
【0024】
カラムセットの分離効率は、キャリブレーションカーブの作成に用いられる約580乃至約1,000,000のMpの範囲の17点のポリスチレン標準を用いて作成されたキャリブレーションカーブで較正した。このポリスチレン標準はポリマーラブラトリーズから入手した(Amherst、MA)。キャリブレーションカーブ(logMp対保持容量)を各PS標準のDRIシグナルにおけるピークでの保持容量を記録し、このデータセットに二次多項式を当てはめて作成した。サンプルを、ウェーブメトリクス社より入手したIGRO Proを用いて解析した。
(a)ポリプロピレンレジン
(i)組成物
【0025】
本発明に用いる第一ポリプロピレンレジンは0.8x10以上、例えば、約0.8x10乃至約2x10、例えば、約0.9x10乃至約1.5x10の範囲のMw、80J/g以上の融解熱(△Hm)、例えば、約80乃至約120J/g又は105以上125J/g以下の範囲の△Hm、及び100以下のMWD、例えば、約1乃至約100、例えば、約1.5乃至10、又は約2乃至6の範囲のMWDを有し、プロピレンホモポリマー又はプロピレンと他との、即ち、第四のオレフィンとのコポリマーでよいが、ホモポリマーが好ましい。コポリマーはランダム又はブロックコポリマーでよい。第四のオレフィンは、プロピレン以外のものであり、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、スチレン等、及びのブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンである。プロピレンコポリマーにおける第四のオレフィンのパーセンテージは好ましくは、熱耐性、圧縮耐性、熱収縮耐性等の微小孔性膜の性質を損なわない範囲であることが好ましく、約10モル%未満、例えば、約0乃至約10モル%未満が好ましい。
【0026】
本発明に用いる第二ポリプロピレンは、0.8x10未満、例えば、約4x10乃至約7x10、例えば、約5.7x10乃至約6.6x10の範囲のMw、80J/g以上、非限定的には約80乃至約120J/g、又は90以上105J/gの△Hm、及び100以下、例えば、約2乃至約20、例えば、約3乃至約15の範囲のMWDを有し、プロピレンホモポリマー又はプロピレンと他の、即ち、第四のαオレフィンとのコポリマーであるが、ホモポリマーが好ましい。コポリマーはランダム又はブロックコポリマーでよい。第四のオレフィンはプロピレン以外のものであり、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、スチレン等のαオレフィン及びブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンを含む。プロピレンコポリマー中の第五のオレフィンのパーゼンテージは熱耐性、圧縮耐性、熱収縮耐性等の微小孔性膜の性質を損なわない範囲であることが好ましく、10モル%未満、約0乃至約10モル%が好ましい。1つの態様において、第一ポリプロピレンの△Hmは第二ポリプロピレンの△Hmよりも高い。
【0027】
ポリオレフィン組成物中のポリプロピレンの量はポリオレフィン組成物の容量を100%とした場合に、50%以下である。ポリプロピレンが容量により50%を超えると、得られた微小孔性膜は相対的に強度が低く透過性が優れない。ポリプロピレンレジンのパーゼンテージは、ポリオレフィン組成物の容量により、例えば、約35%乃至約50%である。
【0028】
ポリプロピレンの△Hmは示差走査熱量計(DSC)により決定する。このDSCはTAインスツルメンツMDSC2920又はQ1000Tzero−DSCを用いて行い、一般的な解析ソフトウェアを用いてデータを解析する。通常、3乃至10mgのポリマーをアルミニウムパンの中に封入し、室温で装置の中にセットする。このサンプルを−130℃又は−70℃のいずれかの温度に冷却し、10℃/分の加熱速度で210℃まで加熱して、ガラス転移温度及び溶融性質を評価する。このサンプルを210℃で5分間維持し、熱ヒストリーを崩壊する。結晶化性質は10℃/分の冷却速度で溶融温度から室温付近の温度にサンプルを冷却して評価する。このサンプルを10分間低温に維持し、固形状態で完全に平衡化して、静的状態に到達させる。第二加熱データは、従って、制御された熱ヒストリー条件の下で結晶化されたサンプルの相挙動を提供する。吸熱溶解転移(第一及び第二融解)及び発熱結晶化転移を転移の開始及びピーク温度について解析する。曲線下の面積をJISK7122に記載の△Hmを決定するのに用いた。
【0029】
ポリプロピレンのMwとMWDをUS2008/0057389に記載の手順に従って測定した。該文献を参照により本明細書に援用する。
(2)他の成分
【0030】
前述の成分に加えて、ポリオレフィン溶液は(a)追加的なポリオレフィン及び/又は(b)約170℃以上の融点又はガラス転移温度(Tg)を有する熱耐性ポリマーレジンを微小孔性膜の性質を損なわない量で含んでいてもよい。そのような量は、ポリオレフィン組成物の容量に基づいて、10%以下である。
(a)追加的なポリオレフィン
【0031】
追加的なポリオレフィンは少なくとも1つの(a)ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、及び各成分が1x10乃至4x10のMwを有するエチレン/α−オレフィンコポリマー、並びに(b)1x10乃至1x10のMwを有するポリエチレンワックスでよい。ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、及びポリスプリットスチレンは、ホモポリマーに限らない、しかし、他のα−オレフィンを含むコポリマーでも良い。
(b)熱耐性レジン
【0032】
耐熱性レジンは例えば、(a)部分的に結晶化質である、約170℃以上の融点を有するアモルファスレジン、及び(b)約170℃以上のTgを有する完全なアモルファスレジン、及びこれらの混合物でよい。融点とTgはJISK7121の方法に従って、示差走査熱量計(DSC)を用いて決定する。耐熱性レジンの特定の例としては、ポリブチレンテレフタレート(融点:約160−230℃)、ポリエチレンテレフタレート(融点:約250乃至270℃)、等のポリエステル、フルオロレジン、ポリアミド(融点:215−265℃)、ポリアリーレンスルフィド、ポリイミド(Tg:280℃以上)、ポリアミドイミド(Tg:280℃)、ポリエーテルスルホン(Tg:223℃)、ポリエーテルエーテルケトン(融点:334℃)、ポリカーボネート(融点220乃至240℃)、セルロースアセテート(融点:220℃)、セルローストリアセテート(融点:330℃)、ポリスルホン(Tg:190℃9、ポリエーテルイミド(融点:216℃)、等を含む。
(c)含量
【0033】
追加的なポリオレフィン及び耐熱性レジンの総量は、ポリオレフィン溶液の容量を100%として、好ましくは20%以下、例えば、0乃至約20%である。
[2] 微小孔性膜の製造
【0034】
本発明は微小孔性膜の製造のための方法に関する。該方法は(1)特定のポリオレフィン(通常ポリオレフィンレジンの形態で)と少なくとも1つの希釈剤(例えば、溶媒)を組み合わせて混合物(例えば、ポリオレフィン溶液)を形成する工程、(2)押出し成形器からダイを通じてこの混合物を押出し成形する工程、(3)押出し成形物を冷却して、冷却された押出し成形物を形成する工程、(4)冷却された押出し成形物を延伸して延伸シートを形成する工程、(5)延伸したシートから少なくとも部分的に希釈剤を除去して、希釈剤を除去した膜を形成する工程、(6)任意で希釈剤を除去した膜を延伸して延伸膜を形成する工程、及び(7)工程(5)又は(6)で形成された膜を熱硬化して微小孔性膜を形成する工程を含む。必要であれば、熱硬化処理工程(4i)熱ロール処理工程(4ii)、及び/又は熱溶媒処理工程(4iii)も工程(4)及び(5)の間に行われる。熱硬化処理工程(5i)も工程(5)及び(6)の間に行うことができる。必要であれば、工程(6)の前で工程(5i)の後に、ion化放射による架橋工程(5ii)、並びに工程(7)の後に水和処理工程(7i)及び表面コーティング工程(7ii)を行っても良い。プロセス条件は、以下で説明するように、通常US2008/0057389に記載のものと同様である。
(1)ポリオレフィン溶液の調製
【0035】
1つの態様において、ポリオレフィンレジンを少なくとも1つの希釈剤(例えば、溶媒)と組み合わせてポリオレフィンと希釈剤の混合物(例えば、ポリオレフィン溶液)を調製する。代替的に、このポリオレフィンレジンは溶融ブレンド、乾燥混合等により組み合わせられてポリオレフィン組成物を形成する。ここにおいて、少なくとも1つの溶媒又は希釈剤と混合して混合物を調製する。この混合物は、必要であれば、抗酸化剤、微細なシリカ粉末(プレフォーミングマテリアル)等の各種添加剤を、本発明において意図される性質を阻害しない程度の量で添加してもよい。
【0036】
相対的に高い倍率で延伸することを可能にするために、希釈剤又は溶媒、例えば、膜形成溶媒は好ましくは、室温で液体であることが好ましい。この液体溶媒は、例えば、ノネン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン、液体パラフィン、前述の単価水素に匹敵する沸点を有するミネラルオイル蒸留物、希釈ナフタレン、ジオクチルナフタレン等の室温で液体のナフタレン等の脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素である。最も効果的に安定な溶媒含量を有する押出し成形物を得るために、液体パラフィン等の不揮発性溶媒を用いることが好ましい。1つの態様において、例えば、溶融ブレンド、の間にポリオレフィン組成物と混和するが室温では固形である、1つ以上の固形溶媒も液体溶媒に添加することができる。そのような固形溶媒は、好ましくは、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等である。他の態様において、固形溶媒は液体溶媒なしで用いることができる。しかしながら、固形溶媒のみを用いた場合、延伸が不十分になることがある。
【0037】
この液体溶媒の粘度は25℃での温度で測定した場合、好ましくは約30乃至約500cSt、より好ましくは約30乃至約200cStである。25℃における粘度が30cSt未満である場合、ポリオレフィン溶液は発泡し、ブレンドするのが困難になる。一方、粘度が500cSt以上になると、液体溶媒の除去が難しくなる。
【0038】
特に重要ではないが、ポリオレフィン溶液の均一な溶融ブレンドは2軸押出し形成機において行われ、高濃度のポリオレフィン溶液が調製される。この希釈剤又は溶媒、例えば、膜形成溶媒は溶融ブレンドの開始前に添加しても良いし、又はブレンドの間の中間地点で2軸押出し成形器に添加してもよいが、後者が好ましい。
【0039】
ポリオレフィン溶液の溶融ブレンドの温度は好ましくは、混合物の調製に用いられるポリエチレンレジンの最も低い融点を有するポリエチレンレジンの融点の範囲が好ましい。溶融ブレンド温度は、例えば、この範囲より10℃高い温度からTmの20℃高い温度の範囲で行うことができる。融点はJISK7121に従って、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。1つの態様において、溶融ブレンド温度は、とくにポリエチレンレジンが約130℃乃至約140℃の融点を有する場合、約140乃至約250℃、より好ましくは約170℃乃至240℃である。
【0040】
本発明において好適な膜構造を得るために、ポリオレフィン溶液中のポリオレフィン組成物の濃度は、ポリオレフィン溶液の容量により、好ましくは約15乃至50%、より好ましくは約20乃至約45%である。
【0041】
2軸押出し成形におけるスクリュー直径に対するスクリュー長さLのL/D比は、約20乃至約100の範囲、より好ましくは約35乃至約70の範囲である。L/Dが20未満である場合、溶融ブレンドが不十分になる。L/Dが100を超える場合、2軸押出し成形におけるポリオレフィン溶液の滞留時間が長くなりすぎる。この場合、この膜の分子量は過剰な剪断及び加熱の結果、好ましいものではなくなる。2軸押出し成形器のシリンダーは好ましくは約40乃至約100nmの内部直径を有する。
【0042】
前述の押出し成形器において、1つのスクリューの回転数Ns(rpm)の数に対する装填されたポリオレフィン溶液の量、Q(kg/h)のQ/N比は好ましくは約0.1乃至約0.55kg/h/rpmである。Q/Nが0.1kg/h/rppm未満である場合、ポリオレフィンは剪断によりダメージを受け、強度及びメルトダウン温度が減少する。Q/Nが0.55kg/h/rpm以上である場合、均一なブレンドを調製することができない。このスクリューの回転数、Nは好ましくは180rpm以上である。とくに重要ではないが、この回転数、Nの上限値は好ましくは約500rpmである。
(2)押出し成形
【0043】
ポリオレフィン溶液の成分は、押出し成形器で溶融ブレンドされ、ダイを通じて押出し成形される。他の態様において、ポリオレフィン溶液の成分は押出し成形されて、ペレット化される。この態様において、このペレットは溶融ブレンドされ、第二押出し成形器において押出し成形され、ゲル様の成形物又はシートとなる。いずれかの態様において、このダイは長方形の開口部、2つの円筒形で空洞のダイ等を有する。このダイギャップは重要ではないが、シート形成ダイの場合、このダイギャップは好ましくは約0.1乃至約5mmである。押出し温度は好ましくは約140乃至約250℃であり、押出し速度は好ましくは約0.2乃至約15m/分である。
(3)冷却された押出し成形物の形成
【0044】
このダイからの押出し成形物は冷却され、冷却された押出し成形物を形成する。通常、ポリオレフィン含有量の高いゲル様成形物又はシートの形状である。冷却は好ましくは、少なくとも通常の温度から50℃/分以上の冷却速度で、少なくともゲル化温度において行われる。冷却は好ましくは25℃以下である。そのような冷却は膜形成溶媒により分離されたポリオレフィンのミクロ相を設ける。通常、緩やかな冷却速度はより大きなプセウドセル単位を有するゲル様シートを提供し、その結果ざらついた高次元構造となる。一方、より高い冷却速度は密度の高い細胞単位となる。50℃/分未満の冷却速度が高い結晶性を導き、好適な延伸性を有するゲル様シートを提供することが難しくなる。有用な冷却方法は押出し成形物を冷却用空気、冷却水等の冷却培地と接触させる工程、この押出し成形物を冷却ロールと接触させる工程、等を含む。
【0045】
高ポリオレフィン含有量とは、冷却押出し成形物が冷却された押出し成形物の容量に基づいて、ポリオレフィン組成物のレジン由来のポリオレフィン単位を少なくとも約15%、例えば、約15%乃至約50%含むことを意味する。冷却押出し成形物が約15%未満のポリオレフィン含量である場合、優れた性質のセットを有する本発明の微細孔性膜を形成することがより困難になるであろう。約50%より多いポリオレフィン含量は高粘度となり、所望の膜構造を形成することをより困難にする。この冷却された押出し成形物は好ましくは少なくともポリオレフィン溶液のものと同じくらいのポリオレフィン含量であることが好ましい。
【0046】
(4)冷却押出し成形物の遠心
冷却された押出し成形物は通常硬ポリオレフィン含量のゲル様成形シートの形態であり、その後少なくとも1方向に延伸される。理論又はモデルに拘束されることは意図しないけれども、このシートは希釈剤又は溶媒を含むので、このゲル様シートを均一に延伸することができる。このゲル様シートを、加熱後に、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組み合わせにより、予め決められた倍率に延伸することが好ましい。この延伸は、1軸延伸又は2軸延伸で行うことができるが、2軸延伸が好ましい。2軸延伸の場合、2軸同時延伸、連続延伸、又は多段階延伸(例えば、2軸同延伸と連続延伸)を用いることができるが、2軸同時延伸が好ましい。各方向への延伸の倍率は同じである必要はない。
【0047】
第一延伸工程の延伸倍率は、1軸延伸の場合、例えば、2倍以上、好ましくは3乃至30倍である。2軸延伸の場合、延伸倍率は、いずれかの方向に、例えば、3倍以上に延伸して、9倍以上、好ましくは16倍以上、より好ましくは25倍以上、例えば、49倍以上の面積延伸とする。この第一延伸工程の例は約9乃至約40倍の延伸を含む。追加的な延伸の例としては、約16倍乃至約49倍の延伸倍率を含む。いずれかの方向における延伸の量は同じである必要はない。9倍以上の延伸倍率により、この微細孔性膜のピン破裂強度が改善される。このエリア倍率が400倍以上の場合、延伸装置、延伸操作等のためにラージサイズの延伸装置が必要となり、製造が難しくなる。
【0048】
本発明の膜のための好適な微細孔構造を得るために、第一延伸工程の延伸温度は相対的に高く、好ましくは約冷却された押出し成形物に含まれているポリエチレン内容物の結晶分散温度(Tcd)乃至約Tcd+30℃であり、例えば、含まれているポリエチレン顔料のTcd乃至Tcd+25℃の範囲、より具体的にはTcd+10℃乃至Tcd+25℃、最も具体的にはTcd+15℃乃至Tcd+25℃の範囲である。延伸温度がTcdよりも低い場合、組み合わされたポリエチレン内容物が十分に柔軟にならないので、ゲル様シートが延伸により用意に壊れ、高倍率の延伸をすることができない。
【0049】
結晶分散温度をASTMD4065に記載の動的粘弾性の温度特徴付けの測定により決定した。本明細書の組み合わされたポリエチレン含量は約90乃至100℃の結晶分散温度を有することから、延伸温度は約90乃至125℃、好ましくは約100乃至125℃、より好ましくは105乃至125℃である。
【0050】
前述の延伸はポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ラメラ等の間の引き裂けを引き起こし、より細かいポリオレフィン相を形成し、多数の繊維を形成する。この繊維は3次元網目構造を形成する。この延伸は微細孔性膜の機会的延伸を改善すると信じられており、その細孔を拡大し、バッテリーセパレーターとして用いるのに好適な微細孔性膜を形成する。
【0051】
所望の性質に依存して、延伸は厚さ方向に温度を分散させて行われ、更なる改善された機械的強度を有する微細孔性膜を提供する。この方法の詳細は特許3347854に記載されている。
(5)溶媒又は希釈の除去
【0052】
1つの態様において、洗浄溶媒は希釈剤の少なくとも一部分を除去(洗浄、置き換え、又は溶解)するために用いられる。ポリオレフィン組成物相は希釈剤相から分離された相であるので、希釈剤の分離は微細孔性膜を提供することになる。希釈剤の除去は1つ以上の好適な洗浄溶媒、即ち、膜から液体希釈剤を置き換えることができるものを用いて行われる。洗浄溶媒の例としては、揮発性溶媒、例えば、ペンタン、ヘキセン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチル、四塩化炭素等の塩化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン、等のジエチルエーテル、メチルエチルケトン等のケトン、トリフルオロエタン、C14等の直鎖フルオロカーボン、C等の環状ヒドロフルオロカーボン、COCH、COC等のヒドロフルオロエーテル、CCOF、COC等のペルフルオロエーテル、及びこれらの混合物を含む。
【0053】
延伸された膜の洗浄は洗浄溶媒への含浸及び/又は洗浄溶媒でシャワーすることにより行われる。この用いられる洗浄溶媒は好ましくは延伸膜の容量を100容量部として、約300乃至30,000容量部である。洗浄温度は通常、約15℃乃至30℃、必要であては、加熱を洗浄の間に行ってもよい。この洗浄の間の加熱温度は80℃以下が好ましい。洗浄は好ましくは残りの液体希釈剤又は溶媒の量が、押出し成形明細書のポリオレフィン溶液中に存在している液体溶媒の量の1%未満になるまで行うことが好ましい。
【0054】
希釈剤又は溶媒を除去した微細孔性膜は加熱乾燥法、風乾法(例えば、動く空気中での空気乾燥)等で乾燥して、膜から残りの揮発性成分、例えば、洗浄溶媒を除去することができる。相当量の洗浄溶媒を除去することができる任意の乾燥法を用いることができる。好ましくは、実質的に全ての洗浄溶媒が乾燥工程の間に除去される。乾燥温度は好ましくはTcd以下であり、より好ましくはTcdよりも5℃以上低いことが好ましい。乾燥は微細孔性膜の(乾燥)容量を100%として、残りの洗浄溶媒が好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、になるまで行う。乾燥が不十分であると、後の加熱による膜の細孔形成が不十分となり、透過性が不十分となる。
(6)乾燥された膜の延伸
【0055】
乾燥された膜は第二延伸工程で、高い倍率で少なくとも1軸方向に任意で延伸される(再延伸)。この膜の再延伸は、第一延伸工程と同様に、例えば、加熱の間に、テンター法等により行うことができる。この再延伸は1軸又は2軸で行うことができる。2軸延伸の場合、同時2軸延伸又は連続延伸のいずれか1つを用いることができるが、同時に2軸に延伸することが好ましい。再延伸はゲル様シートを延伸して得られた長いシート状の膜において行われることから、再延伸において、MD及びTD(MDは「機械方向」を意味する、即ち、工程の間に機械が動く方向、TDは「横断方向」即ち、MDと膜方面の両方に垂直な方向)は冷却された押出し成形物の延伸におけるものと通常同じである。しかしながら、本発明において、再延伸は冷却された押出し成形物の延伸において用いられるものよりも幾分大きい。この工程での延伸倍率は少なくとも1つの方向において約1.1乃至約1.8、例えば、約1.2乃至約1.6倍である。各方向を同じ倍率で延伸する必要はない。本方法の(4)において延伸が約9乃至約400より低い範囲で行われたならば、本発明の方法の工程(6)における延伸は、約1.1乃至約1.8倍の範囲も高い倍率で行われる。同様に、本発明の方法の工程(4)での延伸が約9乃至約400の範囲より高い範囲で行われたならば、本発明の方法の工程(6)における延伸は約1.1乃至1.8よりも低い倍率で行われる。
【0056】
任意の第二延伸又は再延伸工程は、Tm以下、より好ましくは(ポリエチレンの)Tcd乃至Tmの範囲の温度で行われる。第二延伸温度はTmより高い場合、溶融粘度が好適な延伸を行うには低すぎてしまい、低い透過性となる。第二延伸温度がTcdよりも低い場合、ポリオレフィンの柔軟性が不十分となり、膜が延伸により破壊され、均一な延伸ができなくなる。1つの態様において、第二延伸温度は通常約90乃至約135℃、好ましくは約95乃至約130℃である。
【0057】
この工程における、膜の1軸延伸の倍率は好ましくは約1.1乃至約1.8倍である。1.1乃至1.8の倍率により、通常、大きな平均細孔サイズを有する構造を本発明の膜に提供することができる。1軸延伸の場合、この倍率は縦軸又は横軸方向に、1.1乃至1.8倍延伸される。2軸延伸の場合、1.1乃至1.8倍の範囲内である限り、膜は各遠心方向に同じ又は異なる倍率で延伸することできるが、同じ倍率であることが好ましい。
【0058】
この膜の第二延伸倍率が1.1未満である場合、本発明の膜構造は、透過性、電解溶液吸収性、及び圧縮耐性が劣る。第二延伸倍率が1.8倍以上になると、形成された繊維が、細かくなりすぎて、熱収縮耐性及び電解溶液吸収性が低くなる。この第二延伸倍率は1.2乃至1.6倍が好ましい。
【0059】
延伸速度は、延伸方向において3%/秒以上であることが好ましい。1軸延伸の場合、延伸速度は縦軸又は横軸方向のいずれかに3%/秒以上である。2軸延伸の場合、延伸速度は縦及び横方向の両方において3%/秒以上である。3%/秒未満の延伸速度は膜の透過性を減らし、縦軸に延伸したときに、横方向において、非常に不均一な性質(特に、空気透過性)の膜を提供する。この延伸速度は好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上である。とくに重要ではないが、延伸速度の上限値は、膜の破裂を避けるためには、50%/秒が好ましい。
(7)熱処理
【0060】
工程(5)又は(6)の膜生成物は熱処理されて、膜中に安定した結晶及び均一なラメラを形成する。この熱硬化は好ましくはテンター法又はロール法で行われる。この熱硬化温度Tcd乃至Tmの範囲内であることが好ましい。低すぎる熱硬化温度は膜のピン破強度、延伸破裂強度、延伸破裂延伸率、及び熱収縮耐性を弱める。一方高すぎる熱硬化温度は巻く透過性を低める。
【0061】
アニーリング処理は熱硬化工程の後に行われる。このアニーリングは微細孔性膜に負荷をかけずに行う熱処理であり、例えば、ベルトコンベア、又はエアフローイングタイプの熱チャンバーを用いて行われる。このアニーリングはテンター法で幅だしながら熱硬化をした後に連続的に行ってもよい。アニーリング温度は好ましくはTm以下、より好ましくは約60℃乃至約Tm−5℃の範囲である。アニーリングは高い透過性及び強度を提供すると信じられている。任意で、膜を熱硬化せずにアニーリングしてもよい。1つの態様において、この工程(7)の熱硬化は任意工程である。
(8)延伸されたシートの熱硬化処理
【0062】
工程(4)及び(5)の間で延伸されたシートは熱硬化される、このシートの熱硬化は微細孔性膜の性質を阻害することはない。この熱硬化方法は前述の工程(7)と同じ方法で行うことができる。
【0063】
(9)熱ロール処理
工程(4)で延伸されたシートの表面の少なくとも1面を1つ以上の別個のロールに接触させて、工程(4)乃至(7)の任意の工程を行う。こローラー温度は好ましくはTcd+10℃乃至Tmの範囲であることが好ましい。延伸されたシートに熱ロールが接触している時間は、約0.5秒乃至約1分が好ましい。この熱ロールはフラット又はラフな表面を有している。この熱ロースは溶媒を除去するための吸引機能を有している。とくに重要ではないが、ローラー加熱システムの1つの例としては、ローラー表面に接触しているホールディング加熱オイルを含む。
(10)熱溶媒処理
【0064】
延伸されたシートは工程(4)及び(5)の間に熱溶媒に接触させてもよい。熱溶媒処理は延伸により形成された繊維を相対的に厚い繊維トランクを有する葉脈形状のものに成形し、大きな細孔サイズ及び好適な延伸及び浸透性を有する微細孔性膜を提供する。「葉脈形状」の語は厚い繊維トランクを有する繊維を意味し、このトランクから細い繊維が伸びていてを複雑な網状構造を形成する。熱溶媒処理の詳細はWO2002/20493に記載されている。
(11)洗浄溶媒を含む膜の熱硬化
【0065】
工程(5)及び(6)の間の洗浄溶媒を含む微細孔性膜は微細孔性膜の性質を阻害しない程度に熱硬化される。この熱硬化方法は前述の工程(7)におけるものと同様である。
(12)架橋
【0066】
熱硬化微細孔性膜はα線、β線、γ線等の電子構成のイオン化照射線により架橋される。電子光線の照射において、電子光線の量は、約0.1乃至約100Mardが好ましく、加速電圧は約100乃至約300kVtであることが好ましい。この架橋処理は簿のメルトダウン温度を高める。
(13)親水化処理
【0067】
熱硬化した微細孔性膜は親水化処理(膜をより親水性にする処理)される。この親水化処理はモノマーグラフト処理、表面処理、コロナ放電処理等でよい。モノマーグラフト処理は好ましくは架橋工程の後に行われる。
【0068】
熱硬化微細孔性の膜表面親水化処理の場合、任意の非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤を用いることができるが、非イオン界面活性剤が好ましい。この微細孔性膜は水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール中に界面活性剤を溶解した溶液に浸漬するか、又はドクターブレード法により溶液を用いてコーティングすることができる。
(14)表面コート処理
【0069】
必須ではないが、工程(7)で得られた熱硬化微細孔性膜をポリビニリデンフルオライド、及びポリテトラフルオロエチレン、細孔性ポリイミド、細孔性ポリフェニレンスルフィド等の細孔性ポリプロピレン、細孔性フルオロレジンでコートして、膜がバッテリーセパレーターとして用いられた時のメルトダウンを改善することができる。コーティングに用いるポリプロピレンは好ましくは約5,000乃至約500,000のMwを有し、及び25℃のトルエン100グラムに約0.5グラム以上溶解することが好ましい。そのようなポリプロピレンは、より好ましくは約0.12乃至約0.88のラセミダイアドを有することが好ましくい。このラセミダイアドは隣接する2つのモノマー単位がお互いに鏡像アイソーマーである構造単位である。表面コート層は、例えば、好適な溶媒中の前述のコーティングレジンの溶液を微細孔性膜に塗布し、溶媒を除去してレジンの濃度を高め、それゆえ、レジン層及び溶媒層が分離している構造形成し、残りの溶媒を除去して、形成される。本発明に用いる好適な溶媒の例としては、トルエン又はキシレン等の芳香族化合物を含む。
[3] 微細孔性膜の構造、性質、及び組成
【0070】
最終的な膜の厚さは通常3μm乃至200μmの範囲である。例えば、この膜は約5μm乃至約50μm、例えば、約15μm乃至約30μmの範囲の厚みを有する。この微細孔性膜の厚さは、縦に1cm間隔で幅10cmのコンタクトシックネスメーターにより測定することができ、膜の厚みはその後平均化される。ミツトヨ社のLitematicのようなシックネスメーターが好ましい。非接触式の厚み測定方法の好適である。例えば、光学厚み測定方法がある。
(1) 構造
【0071】
本発明の微細孔性膜はポリエチレンレジン由来の構造を有する。本明細書で用いる「細孔サイズ」とは、およそ円筒状である細孔の細孔直径と類似している。第一及び任意で第二ポリエチレンの膜中のパーセンテージは膜中のポリオレフィンの総容量に基づいて、約70%以上である場合、又は膜中の第一及び第二ポリプロピレンのパーゼンテージは膜中のポリオレフィンの総容量に基づいて、約50%より大きい場合、好ましい膜構造は形成がより困難であり、バッテリーセパレーターとして用いるために重要な性質が劣る結果となることが多い。
【0072】
本発明の微細孔性膜は相対的に大きな内部空間及び粗いドメインによる開口部を有しているので、好適な透過性及び電解溶液吸収性を有しており、圧縮したときにわずかな空気透過変化しか起こさない。この微細孔性膜は、バッテリーセパレーターとして用いたときに、シャットダウン温度やシャットダウン速度等の膜の安全性に影響を与える、相対的に小さな内部スペース及び開口部を有している。即ち、そのような微細孔性膜により形成されているセパレーターを含むリチウムイオン二次バッテリーのようなリチウムイオンは高い安全性を有しつつ、好適な生産性及びサイクル性を有する。
(2)性質
【0073】
本発明の微細孔性膜は相対的に高いメルトダウン温度、相対的に高い熱安定性(例えば、溶融状態において低い収縮性)、及び相対的に高い電気化学的安定性を有し、優れたバッテリーセパレーター、特に、例えば、リチウムイオンバッテリーに好適である。
【0074】
特定の市販のバッテリーセパレーターは148℃のメルトダウン温度を有している。本発明の微細孔性膜は好ましくは148℃以上のメルトダウン温度を有している。特定の市販のバッテリーセパレーターは、熱機械解析で、約140℃での溶融状態において、30%の最大熱収縮を示すが、30%以下の、より低いパーゼンテージが好ましい。
【0075】
好適な態様において、本発明の微細孔性膜は以下の性質の少なくとも1つを有する。
(a)700秒/100cm3以下の空気透過性(20μmの厚みに転換した値)
【0076】
この膜の空気透過性はJISP8117で測定することができる。1つの態様において、この膜の空気透過性は20乃至400秒/100cm3の範囲である。好ましくは、空気透過性、Pは、JISP8117に従って、厚みTの微細孔性膜で測定して、式P=(P1X20)/Tにより、20μmの厚みの空気透過性、Pへと変換することができる。この態様において、この膜の空気透過性は200秒/100cm乃至600秒/100cm、又は270秒/100cm乃至420秒/100cmである。
(b)約25乃至約80%の細孔性
【0077】
膜の細孔性は100%ポリエチレンの非細孔性膜に等しい重量(同じ長さ、幅、及び厚みの)と膜の実際の重量を比較して、簡易的に測定することができる。細孔性はその後、以下の式を用いて決定される。細孔性(%)=100x(w2−w1)/w2、式中、「w1」は微細孔性膜の実際の温度、「w2」は、同じサイズ及び厚みの100%ポリエチレンの非細孔性膜の重量である。
(c)1500nM以上(20μmの厚みを有する膜に等しい値に制御された)のピン破裂強度
【0078】
(20μmの厚みを有する膜に等しい値に制御された)この膜のピン破裂強度はこの膜を、丸い先端表面を有する(半径Rのカーブ:0.5mm)1mm直径の針を、2mm/秒で刺したときに測定される最大負荷により表される。1つの態様において、この膜のピン破裂強度(20μmに転換される)は1,850mN乃至5,000mNの範囲である。
【0079】
最大負荷は、Tの厚みを有する各微細孔性膜を丸い先端表面を有する(半径Rのカーブ:0.5mm)1mm直径の針を、2mm/秒で刺したときに測定される。この測定された最大負荷Lは、L(Lx20)/Tの式により、20μmの厚みにおける最大付加に転換することができ、ピン破裂強度と定義される。
(d)40,000kPa以上のMD及びTD引っ張り強度
【0080】
縦方向と横方向の両方において40,000kPa以上の引っ張り強度(ASTMD−882の10mm幅の試験片を用いて測定)が特にバッテリーセパレーターとして用いたときに、好適な耐久性のある微細孔性膜の特徴である。MD引っ張り強度は、例えば、80,000乃至150,000kPa、及びTD引っ張り強度は、例えば、90,000乃至150,000kPaの範囲である。
(e)100%以上の引っ張り伸び
【0081】
縦方向及び横方向の両方において、100以上の引っ張り伸び(ASTM D−882で測定される)をバッテリーセパレーターとして用いたときに特に好適な耐久性を有する微細孔性膜特徴である。他の態様において、この膜のMD引っ張り伸びは14%以上であり、例えば、140%乃至180%である。
(f)12%以下の105℃におけるTD熱収縮及び12%以下の105℃におけるMD熱収縮
【0082】
150℃における垂直平面方向の膜の収縮比は以下のように測定される。(i)機械方向及び横断方向の両方において室温で微細孔性膜の試験片をサイズを測定する(ii)いかなる付加もかけずに、105℃で8時間、微細孔性膜の試験片を平衡化する、及び(iii)機械及び横断方向の両方において膜のサイズを測定する。機械方向又は横断方向のいずれかの加熱(又は「熱」)収縮比は(i)の測定の結果を(ii)の測定の結果で割って、得られた商をパーセンテージであらわす。
【0083】
1つの態様において、この微細孔性膜は105℃において6%以下、例えば、2,5%乃至5.6%の範囲のTD熱収縮率、105℃において3%以下、例えば、1.5%乃至2.9%の範囲のMD熱収縮を有する。
(g)熱圧縮後の20%以下の厚み変動比(絶対値で表現される)
【0084】
5分の間、2.2MPaの圧力下で90℃において熱圧縮させた後の厚み変動比は圧縮前の厚みを100%として、通常20%以下である。厚み変動比が20%以下である微細孔性膜セパレーターを含むバッテリーは好適な大きなキャパシティー及び好適なサイクル性を有する。1つの態様において、膜の厚み変動比は10%乃至20%の範囲である。
【0085】
熱圧縮の後厚み変動比を測定するためには、微細孔性膜を一組の高度に水平な板の間に置き、5分間、90℃で2.2MPa(22kgf/cm)の圧力下で圧縮機械により熱圧縮して、平均の厚みを決定する。厚み変動比は、(圧縮後の平均厚さ−圧縮前の平均厚さ)/(圧縮前の平均厚さ)x100の式により計算する。
【0086】
1つの態様において、熱圧縮後の厚み変化は5乃至17%の範囲である。
(h)1000秒/100cm以下の熱圧縮後の空気透過性
【0087】
前述の条件の下で熱圧縮したときの微細孔ポリオレフィン膜は1000秒/100cm以下の空気透過性(ガーリー値)を有する。そのような膜を用いるバッテリーは好適な大きなキャパシティー及びサイクル性を有している。この空気透過性は好ましくは970秒/100cm以下、例えば、970秒/100cm乃至500秒/100cmの範囲である。
【0088】
熱圧縮後の空気透過性はJISP8117に従って測定することができる。
(i)3x10nm以上の表面粗さ
【0089】
この微細孔性膜の表面粗さは動力モードの原子間力電子顕微鏡(AMF)により測定され、通常3x10nm以上(膜全体の平均最大高低差)である。この膜の表面粗さは好ましくは3.2x10nm以上、例えば、320nm乃至700nmである。
(i)1.5以上の電解液吸収速度
【0090】
動的表面引っ張り測定装置(Eko Instruments Co.,Ltd.より入手可能な高性能電子天秤を備えたDCAT21)を用いて、微細孔性膜のサンプルを600秒間電解液に浸し、(電解質:1mol/LのLiPF、溶媒:エチレンカルボネート/ジメチルカルボネートを3/7の容量比)を18℃で維持し、式[含浸後の微細孔性膜の重量(グラム)/含浸前の微細孔性膜の重量(グラム)]により電解溶液吸収性を決定する。この電解液吸収スピードは相対的な量により表され、比較例6の微細孔性膜における電解溶液吸収性は1である。他の態様において、膜の電解溶液吸収速度は1.5乃至4の範囲の間である。
(k)140℃以下のシャットダウン温度
【0091】
膜のシャットダウン温度は140℃以下、例えば、130℃乃至139℃である。この微細孔性膜のシャットダウンは以下のように熱機械解析(セイコーインスツルメンツにより入手可能なTMA/SS600)により測定される。3nmx50nmの長方形のサンプルをサンプルの長軸が横断方向になり、短軸が機械方向に沿うように微細孔性膜から切り出す。このサンプルを10nmのチャンク距離で、即ち、上方のチャンクと下方のチャンクの距離が10nmになるように、熱機械解析内にセットする。下方のチャンクは固定されており、上方のチャンクにおいてサンプルに19.6mNの負荷をかける。このチャンク及びサンプルを加熱可能なチューブの中に封入する。30℃でスタートし、チューブの内部温度を5℃/分で上げていき、19.6mNの負荷の下でサンプルの長さの変化を0.5秒の間隔で測定し、温度を高くする毎に記録をしていく。この温度は200℃まで上げられる。「シャットダウン温度」はこの膜を製造するのに用いたポリオレフィンの中で最も低い融点を有するポリマーの融点付近で観察される変曲点の温度である。
(l)168℃以上のメルトダウン温度
【0092】
メルトダウン温度は以下の手順で測定される。3nmx50nmの長方形のサンプルをサンプルの長軸が横断方向になり、短軸が機械方向に沿うように微細孔性膜から切り出す。このサンプルを10nmのチャンク距離で、即ち、上方のチャンクと下方のチャンクの距離が10nmになるように、熱機械解析内にセットする。下方のチャンクは固定されており、上方のチャンクにおいてサンプルに19.6mNの負荷をかける。このチャンク及びサンプルを加熱可能なチューブの中に封入する。30℃でスタートし、チューブの内部温度を5℃/分で上げていき、19.6mNの負荷の下でサンプルの長さの変化を0.5秒の間隔で測定し、温度を高くする毎に記録をしていく。この温度は200℃まで上げられる。このサンプルのメルトダウン温度はサンプルが壊れる、通常約145℃乃至約200℃の範囲の温度である。
【0093】
1つの態様において、このメルトダウン温度は168℃乃至175℃の範囲である。
(m)10%未満の溶融状態における最大TD収縮
【0094】
溶融状態における最大収縮は以下の手順で測定する。メルトダウン温度の測定で説明したTMA法を用いて、135℃乃至145℃の範囲の温度において測定されたサンプル長さを記録した。この膜収縮、及びチャンクの間の距離の減少が膜収縮である。溶融状態の最大膜収縮は、23℃で測定されたチャンクの間のサンプル長さ(L1は10nm)から約135℃乃至145℃の範囲で通常測定された最小の長さを引いた値をL1で割ったと定義される、即ち、[L1−L2]/L1*100%である。用いた3nmx50nmの長方形サンプルはサンプルの長軸が微細孔性膜の横断方向に沿うように、及び短軸が機械方向に沿うように切り出される。
【0095】
1つの態様において、溶融状態における膜の最大TD収縮は約140℃で生じたことが確認される(前述のASTM方法)。1つの態様において、この溶融状態における最大TD収縮は2%乃至10%の範囲である。
(n)80%以上のキャパシティー回復比
【0096】
キャパシティー回復比はリチウムイオンバッテリーにおいてバッテリー分離として膜を用いた場合の膜の電気化学的安定性に関する膜の性質である。キャパシティー回復比はパーセントとして表され、高い温度で30日間バッテリーを貯蔵した後に失われたバッテリー貯蔵のキャパシティーの量に関する。電気自動車又はハイブリッド電気自動車の移動のための開始又は動力用いる自動車バッテリー及びパワーツールバッテリー及び相対的に高いパワー、高いキャパシティー製品については、特に、バッテリーの電気チャージの貯蔵能力の損失に敏感であることから、80%以上のバッテリー回復比が好ましい。「高いキャパシティー」バッテリーは通常1アンペア(1Ah)以上、例えば、2.0Ah乃至3.6Ahを補うバッテリーの能力を意味する。
【0097】
膜のキャパシティー回復比を測定するために、70mmの長さ、及び60mmの幅を有する膜を膜と同じ平面寸法を有する負極と正極の間に置く。負極は天然グラファイトであり、正極はLiCoOでできている。電解液はエチレンカルボネート(EC)とメチルエチルカルボネート(EMC)(4/6、V/V)の混合物内にLiPF6を溶解することにより1M溶液として調製される。この電解液に負極及び正極の間の領域の膜を浸して、バッテリーとする。
【0098】
チャージキャパシティー回復率はバッテリーを23℃の温度で、チャージし及びその後にディスチャージし、バッテリーにより供給されたチャージの量をディスチャージの間に記録することにより測定される(「初期チャージキャパシティー」)。このバッテリーをその後80℃の温度に30日間曝して、その後23℃に冷却する。冷却の後、このチャージキャパシティーは再測定される(最終チャージキャパシティー)。このシャパシティー回復率は最終チャージシャパシティーを初期チャージシャパシティーで割って、100%掛けて%で、決定する。
【0099】
1つの態様において、膜のキャパシティー回復率は80%以上、例えば、80%乃至100%、又は80乃至85%の範囲である。
(3)微細孔性膜組成物
(1)ポオレフィン
【0100】
本発明の微細孔性膜の態様は(a)1.0x10、例えば、4.5x10乃至約6.5x10、例えば、約5x10乃至約6x10の範囲のMw及び100以下、約1.5乃至約10、例えば、約3乃至5のMWD範囲を有する第一ポリエチレンを約40乃至約60%、(b)0.8x10以上、例えば、0.8x10乃至約2x10の、例えば、約0.9乃至10乃至約1.5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約1.5乃至約10、例えば、約2乃至6の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、80乃至約120J/gの△Hmを有する第一ポリプロピレンを約20乃至約40%、(c)0.8x10未満、例えば、4x10乃至約7x10、例えば、約5.7x10乃至約6.0x10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約10、例えば、約3乃至約15の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、80乃至約120J/gの△Hmを有する第二ポリプロピレンを約10乃至約30%、並びに(d)1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至約5x10、例えば、1.2x10乃至約3x10の範囲のMw、及び100以下のMWD、例えば、約2乃至約10の範囲の、例えば、4乃至6の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンを約0乃至約10%含む。パーセンテージは膜の容量に基づいている。
【0101】
微細孔性膜は、通常、ポリマー組成物を製造するために用いたのと同じポリマーを、通常は同じ量で含む。洗浄溶媒及び/又は処理溶媒も含まれていてもよいが、通常、微小孔性膜の重量に基づいて、1重量%未満の量である。僅かな量のポリマー分子量分解がプロセスの間に起こるかもしれないが、許容できる。1つの態様において、ポリマーがポリオレフィンで、膜が湿式工程で製造される場合、このプロセスの間の分子量分解は、あったとしても、この膜のポリオレフィンのMWDの値は、ポリオレフィン組成物を製造するのに用いたポリマーのMWDと、約5%、又は約1%、又は約0.1%の違いでしかない。
[4] バッテリーセパレーター
【0102】
1つの態様において、本発明の微小孔性膜から形成されたバッテリーセパレーターは約3乃至約200μm、又は約5乃至約50μm、又は約7乃至約35μmの厚みを有するが、最も好ましい厚みは製造されるバッテリーのタイプに依存して適宜選択される。
[5] バッテリー
【0103】
特に重要ではないが、本発明の微小孔性膜は一次及び二次バッテリー、特にリチウムイオン二次バッテリー、リチウム−ポリマー二次バッテリー、ニッケル−水素二次ナッテリー、ニッケルカドミウム二次バッテリー、ニッケル−亜鉛二次バッテリー、銀−亜鉛二次バッテリー、特にリチウムイオン二次バッテリーのセパレーターとして用いられる。
【0104】
このリチウムイオン二次バッテリーはセパレーターを介して積層された陽極及び陰極を含み、セパレーターは、通常電解溶液(電解液)の形で電解液を含む。電極の構造は重要ではない。従来の構造が好適である。電極の構造は例えば、陽極と陰極が正反対に設置されているディスク形状のコインタイプのもの、陽極と陰極が平面状に積層されている積層タイプのもの、リボン形状の陽極と陰極がドーナツ状に巻きつけられているものである。
【0105】
陽極は通常電流コレクタを含み、電流コレクタ上に形成されたリチウムイオンを吸収及びディスチャージすることができる正極活性物質層を含む。正極活性物質は遷移金属酸化物、リチウム及び遷移金属の複合酸化物(リチウム複合酸化物)、遷移金属硫化物等の無機物質である。この遷移金属はV、Mn、Fe、Co、Ni等である。リチウム複合酸化物の好適な例としては、リチウムニッケレート、リチウムコバルトエート、リチウムマグネート、α−NaFeOに基づく、薄層上のリチウム三価複合物を含む。陰極は電流コレクタ及びこの電流コレクタの上に形成された負の電極活性物質層を含む。この負の電極活性物質層は、天然グラファイト、人口グラファイト、コーク、カーボンブラック等の炭素系物質である。
【0106】
この電解溶液は無機溶媒にリチウム塩を溶解することにより得られる溶液である。このリチウム塩はLiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LICFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、LiN(CSO、LiPF(CF、LiPF(C、リチウムの低級脂肪族カルボン酸塩、LiAlCl等である。これらのリチウム塩は単独又は組合わせて用いることができる。有機溶媒は、エチレンカルボネート、プロピレンカルボネート、エチルメチルカルボネート、γ−ブチルカルボネート等の高い沸点及び高い誘電率を有する有機溶媒;及び/又はテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキソラン、ジメチルカルボネート、ジメチルカルボネート等の低い沸点及び低い粘度を有する有機溶媒でよい。これらの有機溶媒は単独又は組み合わせて用いることができる。高い誘電率を有する有機溶媒は高い粘度を有し、低い粘度を有するものは、通常低い誘電率を有することから、これらの混合物を用いることが好ましい。
【0107】
バッテリーを組み立てるときには、セパレーターを電解液に浸して、イオン透過性を引き起こさせる。この含浸処理は通常室温で電解質溶液中に微小孔性膜を浸すことにより行われる。円筒形のバッテリーを組み立てる場合、例えば、電極シート、微小孔性膜セパレーター、及び負極シートを順番に積層し、得られた積層体をドーナツ型の電極集合体に巻きつける。得られた電極集合体をバッテリー管に詰め込み/成形して、前述の電解溶液に浸して、正極の末端に安全バルブを取り付けて蓋をしたバッテリーをガスケットによりバッテリー缶に詰めて、バッテリーにする。
【実施例】
【0108】
本発明は以下の実施例を参照することにより、より広く一般化することができる。これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
【0109】
(a)5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンを50%、(b)1.1x10のMw、114J/gの△Hm、及び5のMWDを有する第一ポリプロピレンを37.5%、(c)6.6x105のMw、103.3J/gの△Hm、及び11.4のMWDを有する第二ポリプロピレンを12.5%含み、及び(d)第二ポリエチレンは無添加の、ポリオレフィン組成物を乾燥ブレンドにより調製した。パーセンテージはポリオレフィン組成物の容量に基づく。この組成物中のポリエチレンレジンは135℃の融点、100℃の結晶分散温度を有する。
【0110】
得られたポリオレフィン組成物の容量に基づき25部を内部直径が58mmで、L/D比が42のストロングブレンド二軸押出し成形器に装填し、容量に基づき75部の液体パラフィン(40℃で50cst)をサイドフィーダーを通じて、この2軸押出し成形器に供給した。溶融ブレンドは210℃で200rpmで行って、ポリエチレン溶液を得た。このポリエチレン溶液を押出し成形器に設置されているTダイから押出し成形した。この押出し成形物を40℃に調整された冷却ロールに通して冷却し、冷却された押出し成形物、即ち、ゲル様シートを製造した。
【0111】
テンター延伸器を用いて、ゲル様シートを115℃で縦軸及び横軸のそれぞれに、同時2軸延伸で、5倍に延伸した。この延伸されたゲル様シートを20cmx20cmのアルミニウムフレームに固定して、25℃に調整された塩化メチレンの浴槽に浸し、100rpm、3分間振動させながら液体パラフィンを除去して、その後室温での空気流れにより乾燥させた。乾燥した膜を129℃で横断方向にバッチ延伸マシンで1.4倍に再延伸した。バッチ延伸マシンに固定されたままの得られた再延伸膜を125℃、10分で熱硬化し、微小孔性膜を形成した。
実施例2
【0112】
ポリオレフィン組成物中に容量に基づき25%第一及び第二ポリプロピレンレジンが存在する以外は実施例1と同様に製造を行った。
実施例3
【0113】
5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンを50%含み、1.1x10のMw及び5のMWDを有する第一ポリプロピレンを容量に基づき25%、及び6.6x10のMw及び11.4のMWDを有する第二ポリプロピレンを容量に基づき25%含むポリオレフィン組成物を用いて、実施例2を繰り返した。この実施例において、熱硬化の前の再延伸工程は行っていない。
実施例4
【0114】
5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンを容量に基づき60%、1.1x10のMw及び5のMWDを有する第一ポリプロピレンレジンを容量に基づき25%、及び6.6x10のMw及び11.4のMWDを有する第二ポリプロピレンを容量により15%含むポリオレフィン組成物を用いて実施例1を繰り返した。
実施例5
【0115】
5.7x105のMw及び5.9のMWD、及び94.6J/gの△Hmを有する第二ポリプロピレンを容量に基づき12.5%含む組成物を用いた以外は実施例1と同様に微小孔性膜を製造した。
実施例6
【0116】
0.9x10のMw、4.5のMWD、及び94.6J/gの△Hmを有する第一ポリプロピレンを容量に基づき37.5%を含むポリオレフィン組成物を用いた以外は、同様に実施例1を繰り返した。
実施例7
【0117】
容量に基づき45%の第一ポリエチレンレジン及び容量に基づき5%の1.9x10及び5.09のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを含むポリオレフィン組成物を用いた以外は、実施例1と同様に製造を行った。
実施例8
【0118】
容量に基づき50%の6x10のMw及び11.9のMWDを有する第一ポリエチレンレジンを用いた以外は実施例1と同様に試験を行った。
比較例1
【0119】
容量に基づき50%の、5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンレジン、及び容量により50%の1.1x10のMw及び5のMWDを有する第一ポリエチレンレジンを含むポリオレフィン組成物を用いた以外は実施例1を同様に繰り返した。このポリオレフィン組成物は第二ポリプロピレンレジン及び第二ポリエチレンレジンを含まない。
比較例2
【0120】
熱硬化の前に再延伸を行わなかった以外は比較例1と同様に試験を行った。
比較例3
【0121】
容量に基づき50%の5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンレジンと容量に基づき50%の、3x10のMw、8.6のMWD、及び103.3J/gの△Hmを有する第二ポリプロピレンを含むポリオレフィン組成物を用いた以外は実施例1と同様に膜を製造した。このポリオレフィン組成物は第一ポリプロピレン及び第二ポリエチレンレジンを含んでいない。
比較例4
【0122】
容量に基づき50%の5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンと容量に基づき12.5%の、1.1x10のMw及び5のMWDを有する第一ポリプロピレンと、容量に基づき37.5%の3x10のMw、8.6のMWD、103.3J/gのMWDを有する第二ポリプロピレンを含むポリオレフィン組成物を用いた以外は、実施例1を再び繰り返した。
比較例5
【0123】
30%の、5.6x10のMwと4.05のMWDを有する第一ポリエチレンレジン、容量に基づき37.5%の1.1x10のMw、5のMWD、及び114J/gの△Hmを有する第一ポリエチレンレジン、容量に基づき12.5%の6.6x10のMw、11.4のMWD、及び103.3J/gの△Hmを有する第二ポリプロピレン、容量に基づき20%の1.9x10のMw及び5.06のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを含むポリオレフィン組成物を用いた以外は実施例7と同様に膜を製造した。
比較例6
【0124】
容量に基づき80%の5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンレジン、容量に基づき20%の1.9x10のMw、5.06のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを含むポリオレフィン組成物を用いた以外は実施例1と同様に膜を製造した。このポリオレフィン組成物は第一及び第二ポリプロピレンレジンを含まない。
【0125】
実施例及び比較例で得られた微小孔性膜の性質を以下で説明する。得られた結果は表1にまとめた。

【0126】
表1から、本発明の微小孔性膜は熱圧縮の後の厚みの変化及び空気透過性がわずかであり、優れた電解溶液吸収性及びキャパシティー回復率のほかにも、低い熱収縮、高いメルトダウン温度、及び溶融状態における低い収縮率を示した。最大高低差である表面粗さは3x10nm以上であった。本発明の微小孔性膜は熱圧縮の後の厚みの変化及び空気透過性がわずかであり、優れた電解溶液吸収性のほかにも、好適な空気透過性、ピン破裂強度、引張破裂強度、引張破裂伸び、及び熱収縮耐性を有する。一方、比較例の微小孔性膜は、性質の貧しいバランスのほかに、通常の高い熱収縮率、低いメルトダウン温度、及び溶融状態における高い熱収縮を示した。
【0127】
本発明の微小孔性ポリオレフィン膜により形成されたバッテリーセパレーターは好適な安全性、熱耐性、貯蔵性質、及び生産性を提供する。
【0128】
優先権の基礎となる出願を含む、全ての試験、試験手順、及び他の引用文献は、それらの開示が本発明と矛盾せず、参照による援用が法律において認められている全ての法域において、参照により本明細書に援用する。
【0129】
例示的な形態で説明をしてきたが、特に本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、他の変更を当業者が容易に行えることができることは理解されるであろう。即ち、添付の特許請求の範囲は本明細書の実施例及び各種説明に限定されるべきではなく、本発明の属する分野の当業者により均等であるとされている全ての技術的特長を含む、本明細書における特許性のある全ての技術的特長から構成されている。
【0130】
数値限定の下限値及び上限値が列挙されているが、任意の下限値と上限値を組み合わせた範囲も意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
168℃以上のメルトダウン温度、10%以下の溶融状態における最大TD熱収縮率、及び80%以上のキャパシティー回復率を有し、ポリエチレンとポリプロピレンを含む微小孔性膜。
【請求項2】
前記微小孔性膜が膜の任意の2点間の最大高低差として測定される表面粗さが3x10nm以上である、請求項1の微小孔性膜。
【請求項3】
前記膜がその容量に基づいて、(a)40乃至60%の1.0x106未満のMwを有する第一ポリエチレン、(b)20乃至40%の0.8x106以上のMw、80J/g以上の△Hmを有する第一ポリプロピレン、及び(c)0.8x106未満のMw、80J/g以上の△Hmを有する第二ポリプロピレンを含む、請求項1又は2の微小孔性膜。
【請求項4】
前記微小孔性膜が、膜の容量に基づいて、(a)40乃至60%の、4.5x10乃至6.5x10の範囲のMw及び3乃至5のMWDを有する第一ポリエチレン、(b)20乃至40%の、0.9x10乃至1.5x10の重量平均分子量、2乃至6のMWD、及び105J/g以上125J/g以下の△Hmを有する、第一ポリプロピレン、(c)10乃至30%の、4x10乃至7x10のMw、2乃至20のMWD、及び90J/g以上105J/g未満の範囲の△Hmを有する、第二ポリプロピレン、並びに(d)0乃至10%の、1.1x10乃至5x10のMw、及び4乃至6のMWDを有する第二ポリエチレを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微小孔性膜。
【請求項5】
(a)第一ポリエチレンが1つ以上のエチレンホモポリマー又はエチレン/αオレフィンコポリマーであり、
(b)第一ポリプロピレンが1つ以上のプロピレンホモポリマー又はプロピレン/αオレフィンコポリマーであり、
(c)第二ポリプロピレンが1つ以上のプロピレンホモポリマー又はプロピレン/αオレフィンコポリマーであり、及び
(d)第二ポリエチレンが1つ以上のエチレンホモポリマー又はエチレン/αオレフィンコポリマーである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微小孔性膜。
【請求項6】
前記膜が168℃以上のメルトダウン温度、10%以下の溶融状態における最大TD熱収縮率、80%以上のキャパシティー回復率を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の微小孔性膜。
【請求項7】
前記膜が、168℃以上のメルトダウン温度、10%以下の溶融状態における最大TD熱収縮、及び(1)700秒/cm以下の空気透過性、(2)25乃至80%の孔隙率、(3)1,500mN以上の、膜厚20μmにおけるピン破裂強度、(4)40,000kPa以上の引張強度、(5)140%以上のMD引っ張り伸び、(6)21%以下の熱収縮比、(7)熱圧縮後の20%以下の厚み変化率、(8)1000秒/100cm3以下の熱圧縮後の空気透過性、及び(9)3.2x10nm以上の表面粗さの1つ以上を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載の微小孔性膜。
【請求項8】
(1)ポリオレフィン組成物と少なくとも1つの希釈剤を組み合わせてポリオレフィンと希釈剤との混合物を形成する工程であって、前記ポリオレフィン組成物が(a)40乃至60%の1.0x10未満のMw及び100以下のMWDを有する第一ポリエチレンレジン、(b)0.8x10以上のMw、100以下のMWD、及び80J/g以下の△Hmを有する20乃至40%の第一ポリプロピレンレジン、及び(c)10乃至30%の、0.8x10未満、100以下のMWD、及び80J/g以下の△Hmを有する第二ポリプロピレンレジンを含む、工程
(2)前記混合物をダイを通じて押出し成形して、押出し成形物を形成する工程、
(3)前記押出し成形物を冷却して、冷却された押出し成形物を形成する工程、
(4)冷却された押出し成形物を少なくとも1方向に延伸して延伸シートを形成する工程、
(5)希釈剤の少なくとも一部分を延伸したシートから除去して膜を形成する工程、
(6)任意で、この膜を少なくとも1方向に延伸して再延伸膜を形成する工程、
及び
(7)工程(5)、又は任意工程(6)の膜生成物を熱硬化して微小孔性膜を形成する工程、を含む、微小孔性膜を製造する方法。
【請求項9】
更に、工程(4)及び(5)の間に、延伸されたシートを延伸温度±5℃で熱硬化する、熱硬化処理工程(4i)を含み、(4i)の後且つ工程(5)の前に、延伸されたシートをポリオレフィン組成物の結晶分散温度からポリオレフィン組成物の融点よりも10℃高い温度で加熱したローラーと接触させる、熱ロール処理(4ii)を含み、及び工程(4ii)の後で工程(5)の前に、延伸されたシートを熱溶媒に接触させる、熱溶媒処理工程(4iii)を含む、請求項8の方法。
【請求項10】
更に、工程(5)の後に、延伸温度の±5℃の温度で熱硬化させる、熱硬化処理工程(5i)及び工程(5i)の後に、熱硬化させた膜をα線、β線、γ線、及び電子ビームの1つ以上から選択されるイオン化光線照射により架橋する、架橋工程(5ii)を含む、請求項8又は9の方法。
【請求項11】
更に、工程(7)の後に、熱硬化させた微小孔性膜をモノマーグラフト処理、硫化処理、及びコロナディスチャージ処理の1つ以上により、親水性を付与する、親水化処理工程(7i)を更に含む、請求項8乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程(7)の後に、熱硬化した微小孔性膜を細孔性ポリプロピレン、細孔性フルオレレジン、細孔性ポリイミド、及び細孔性ポリフェニレンスルフィドの1つ以上でコーティングする、表面コーティング処理工程(8)を更に含む請求項8乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ポリオレフィン組成物が(a)4.5x10乃至6.5x10のMw及び3乃至5のMWDを有する第一ポリエチレンレジンを40乃至60%、0.8x10乃至2x10のMw、2乃至6のMWD、105J/g以上125J/g以下の△Hmを有する第一ポリプロピレンレジンを20乃至40%、(c)4x10乃至7x10の範囲のMw、2乃至20の範囲のMWD、及び90J/g以上105J/g未満の△Hmを有する第二ポリプロピレンレジンを10乃至30%、及び(d)1.1x10乃至5x10のMw、及び4乃至6のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを0乃至10%含む、前記8乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
希釈剤が室温で液体であり、250℃で30乃至500cStの範囲の粘度を有する、請求項8乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
工程(1)の温度がポリオレフィン組成物の融点+10℃からポリオレフィン組成物の融点+120℃である、請求項8乃至13のいずれかの方法。
【請求項16】
前記混合物中のポリオレフィン組成物の濃度がポリオレフィン溶液の容量に基づいて15乃至50%である、請求項8乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
工程(2)の押出し成形が140乃至250℃の範囲の押出し成形温度で行われ、工程(3)の冷却が50℃/分以上の冷却速度で押出し成形物のゲル化温度以上で行われる、請求項8乃至16のいずれかの方法。
【請求項18】
希釈剤除去工程(5)が飽和炭化水素、塩化炭化水素、エーテル、ケトン、直鎖フルオロカーボン、環状ヒドロフルオロカーボン、及びペルフルオロカーボンの1つ以上を含む洗浄溶媒を用いて行われる、請求項8乃至17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
延伸工程(6)が1.2乃至1.6倍の延伸倍率で行われる、請求項8乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの陰極、少なくとも1つの陽極、電解液、及び陰極と陽極の間に位置する少なくとも1つのセパレーターからなり、このセパレーターはポリエチレン及びポリプロピレンを含み、168℃以上のメルトダウン温度、10%以下の溶融状態における最大TD熱収縮、及び80%以上のキャパシティー回復率を有する、バッテリー。
【請求項21】
前記セパレーターが168℃以上の温度、10%以下の溶融状態における最大TD収縮、及び(1)700秒/cm以下の空気透過性、(2)25乃至80%の孔隙率、(3)1,500mN以上の、膜厚20μmにおけるピン破裂強度、(4)40,000kPa以上の引張強度、(5)140%以上のMD引っ張り伸び、(6)21%以下の熱収縮比、(7)熱圧縮後の20%以下の厚み変化率、(8)1000秒/100cm3以下の熱圧縮後の空気透過性、及び(9)3.2x10nm以上の表面粗さの1つ以上を有する、バッテリー。
【請求項22】
前記セパレーターが(a)1.0x10のMw及び100以下のMWDを有する第一ポリエチレンを前記セパレーターの重量により40乃至60%、(b)0.8x10以上のMw、100以下のMWD、及び80J/g以上の△Hmを有する第一ポリプロピレンレジンを前記セパレーターの重量により20乃至40%、(c)0.8x10未満のMw、100以下のMWD、及び80J/g以上の△Hmを有する第二ポリプロピレンレジンを前記セパレーターの重量により10乃至30%含む、請求項20又は21に記載のバッテリー。
【請求項23】
(a)第一ポリエチレンが4.5x10乃至6.5x10のMw及び3乃至5のMWDを有する、1つ以上のエチレンホモポリマー又はエチレン/αオレフィンコポリマーであり、
(b)第一ポリプロピレンが0.8x10乃至2x10のMwと2乃至6のMWDを有する、1つ以上のプロピレンホモポリマー又はピ/αオレフィンコポリマーであり、
(c)第二ポリプロピレンが4x10乃至7x10のMw、3乃至15のMWDを有する、1つ以上のプロピレンホモポリマー又はプロピレン/αオレフィンコポリマーであり、
(d)第二ポリエチレンが1.1x10乃至5x10のMw及び4乃至6の範囲nMWDを有する、1つ以上のエチレンホモポリマー又はエチレン/αオレフィンコポリマーである、請求項22のバッテリー。

【公表番号】特表2011−500881(P2011−500881A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528583(P2010−528583)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/JP2008/068912
【国際公開番号】WO2009/048173
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000221627)東燃化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】