説明

微小流体輸送導管の中で両親媒性高分子物質と一緒に反応物を共輸送するための方法

実験プロトコルの反応物を含む液体のアリコートを、微小流体輸送マイクロ導管の中で輸送する方法。特色的な特徴は、両親媒性高分子物質と一緒に反応物を共輸送すること、および/もしくは当該マイクロ導管の内部表面がそのような高分子物質で被膜されることを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年1月17日に出願されたスウェーデン特許出願第05001318号および2005年1月20日に出願された米国特許出願第S.N.11/038,712号(出典明示によりその全体を本明細書の一部とする)からの優先権をクレームする。
【0002】
技術分野
本発明は、微小流体導管(=輸送マイクロ導管)の中で微量の液体アリコートの輸送に関し、該導管は、微小流体装置の一部であってもよく、また分配された液体アリコートを更に加工する微小装置に該アリコートを分配するのに使用される装置の一部であってもよい。輸送は、典型的に、アリコートを加工するための予め決められたプロトコルの一部である。プロトコルは、分取の、分析の、合成の、等であり得る。与えられるプロトコルでは、少なくとも一つのアリコートが、プロトコルで使用される反応物を含有する一方で、他のアリコートは、そのような反応物を欠如しており、例えば、単に洗浄液体および/もしくはコンディショニング液体ならびに/または反応物を含有するアリコートのための希釈液として機能する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
表面対容積の比率は、nl−およびpl−範囲内で小型化しているときに、劇的に増加する。かくして、μl−範囲以下の液体容積、例えばnl−およびpl−容積を取り扱うときには、より大きい容積を取り扱う場合と比較して、効果的な予防策で、望ましくない表面相互作用を妨害することが、より不可欠である。マイクロタイター・ウェルのような静的な系と比較して、典型的に、比較的長い(すなわち輸送される反応物が望ましくない相互作用を受けるさらなる可能性を提供し得る、追加の接触表面を提供する)輸送マイクロ導管が存在する微小流体系については、問題は遥かに大きい。
【0004】
微小流体装置のような、微小装置の中で、可溶性の反応物および機能化された表面/反応区域/反応ゾーンとの間の望ましくない相互作用との問題は、典型的に、より大きい系に対する方法と同様の方法でブロックされている。周知のブロッキング剤は、界面活性剤、不活性なタンパク質、例えば血清アルブミン、カゼイン、無脂肪の乾燥ミルク、ラクトアルブミン、ゼラチン等、および/もしくは低分子量化合物、例えばグリシンである。例えば、US 6,341,182および6,498,010(Fitzgerald等)、US6,613,581(Wada等)、US 20040115709(Morozov等)、US 2040115721(Mao等)、US 20040147045(Nelson等)、ならびに20040189311(Glezer等)を参照されたい。同様な理由のために、微小流体装置の輸送マイクロ導管は、生物学的に活性な分子の望ましくない吸着および変性の低減を示す被膜で修飾されている(抗汚損被膜/表面)。例えば、WO 0056810(Gyros AB)、WO 03086960(Gyros AB)、US 6,709,692(Genset)、US 6,236,083 (Caliper)、US 6,509,059(Caliper)、等を参照されたい。生物学的な成分を含有する液体試料では、反応物および他の成分が凝集するかもしくは望ましくない様式で別に相互作用する危険性がまたある。これらの後者の問題は、典型的に、洗剤ならびにテンシドおよび/もしくは界面活性を有する他の薬剤のような種々の薬剤を含むことにより抑制されている。
【0005】
本発明者等は、微小流体プロトコルで使用される多くのアナライトおよび他の反応物は、与えられたプロトコルが許容される検出限界、精度、回収率等に到達するためには、および/もしくは内部表面との望ましくない相互作用に因るアナライトの損失を避けるために、特別な予防策を必要とすることを見出した。これらの困難性の少なくとも一部を表面修飾方法および/もしくは密封マイクロチャネル構造を製造する材料の欠陥の観点から説明することは魅力的である。遭遇される問題は、典型的には、アナライトのタイプ、アナライトを含むマトリックス(血清、血漿、尿、培養の上澄み液等)、アッセイの種類、装置の内部表面を含んでいる装置の種類等に依存する。問題的な反応物、特にアナライトは、典型的には、生体有機分子である。今までに見出された最悪の場合では、それらは、タンパク質のもしくはポリペプチドの構造、核酸の構造のような生体高分子の構造を示し、ならびに/または例えば、使用されるpHにおいて正味の正のもしくは正味の負の電荷を示すことにより、正におよび/もしくは負に荷電した基を保持し、ならびに/または比較的に疎水性である。問題は、典型的には、生物学的な流体のように、無希釈の試料の中でアナライトの濃度が低ければ低いほど、更に厳しくそして克服するのが困難である。かくして、問題のあるアナライトは、典型的に、≦10−6モル/l、例えば≦10−9モル/lもしくは≦10−10モル/lもしくは≦10−11モル/lもしくは≦10−12モル/lもしくは≦10−13モル/lもしくは≦10−14モル/lの濃度で多い。
【0006】
本発明者等は、より大きいアリコートから少量のアリコートを微小流体装置の個別のマイクロチャネル構造に分配しているときに、アナライト試料が分配装置の輸送マイクロ導管の中で長く保持されるほど、喪失される反応物の量が増加する危険が顕著であることを見出した。これは特に、例えば、アナライトを含有するアリコートについての、分析プロトコルに適用される。
【発明の開示】
【0007】
本発明の簡単な要旨
本発明の実施態様は、検出限界および/もしくは精度および/もしくは回収率を改良するためにならびに/または上記の種類の微小流体のプロトコルにおけるアナライトの損失を防止するために一般的に使用され得る、改良された組成物、薬剤ならびに/または方法を含む。微小流体アッセイプロトコルのための検出限界の改良は、典型的には、天然由来の生物学的流体中、少なくとも≦10−6モル/lの、例えば≦10−9モル/l、もしくは≦10−12モル/l、もしくは≦10−15モル/lのアナライトの測定を含む。アナライトについて要求される検出限界は、原則として常に>10−25モル/lである。精度の改良は、典型的には、関係するアナライトのレベルが、±20%、例えば±15%もしくは±10%もしくは±5%の変動係数(CV)を有して得られることを意味する。回収率の改良は、典型的には、≧60%、例えば≧75%もしくは≧90%もしくは≧95%もしくは本質的におよそ100%の回収率値が達成されることを意味する。
【0008】
他の実施態様は、微小流体プロトコルで使用される液体の成分の間でのならびに/もしくは該成分と、使用される装置の内部表面の、特に輸送マイクロ導管の間での望ましくない相互作用を低減するために使用され得る、改良された組成物ならびに/または方法を含む。低減されるべき典型的な相互作用は、付着、例えば、望ましくない吸着および内部表面との接触により引き起こされる変性を含む。
【0009】
なおさらに、他の実施態様は、本発明の内容で記載された実験プロトコルにおいてマトリックスの作用を最少にすることができる組成物および方法を含む。さらに特に、本発明は、微小流体アッセイプロトコルで予め作成された標準曲線および標準値、例えば、a)異なるアナライト試料について異なる日におよび/またはb)例えば、血清、血漿、尿、涙流体、精液、吐瀉液、リンパ液、脳脊髄液、異なる由来の細胞もしくは組織のホモジネート、細胞培養液上清等から選択される、二つもしくはそれ以上の異なるアナライト試料マトリックスについて、得られる測定値に適用可能である標準曲線/値の使用を可能にすることができる。
【0010】
本発明者等は、もしも典型的に水の中でミセルを形成することができる外因性の両親媒性高分子物質が、微小流体装置の中で対象のプロトコルを実施しているときに、輸送される一つもしくはそれ以上の液体と一緒に共輸送されるならば、即ち、物質が液体と一緒に中に存在するならば、問題のある微小流体プロトコルについて、許容される結果が得やすくなることを見出した。この種類の物質の典型的な例は、ミルクタンパク質、例えばβ−カゼインおよび他のカゼインである。微小流体装置内で輸送が起こるとき、または液体を微小流体装置へ分配するために使用される別の装置の輸送マイクロ導管の中で輸送が起こるときの両方で、有益な作用が得られた。関係する液体は、典型的には、アナライトのような反応物を含有するか、またはプライミングの、洗浄のもしくはコンディショニングの液体(WC−液体)である。アナライトおよび試薬のような反応物については、これは、高分子物質との共輸送を意味する。用語“外因性の”とは、行われるべきプロトコルで使用される、生物学的に誘導される試料の中に物質が天然には存在しないことを意味する。
【0011】
もしも使用される輸送マイクロ導管の内部表面が、好ましくはポリペプチド構造を示している両親媒性高分子物質で、前もって被膜されるならば、正の作用の一部は達成される可能性があることが、想定され得る。
【0012】
本発明の実施態様は、マイクロ導管(輸送マイクロ導管)の上流末端内でアリコートを提供し、そしてアリコートをマイクロ導管を通して輸送するための駆動力を適用する工程を含む、液体のアリコート(アリコート/液体)を輸送する方法を含む。アリコートは、アリコート/液体に溶解されそして実施される実験プロトコルに必要である反応物を、含有してもしなくてもよい。
【0013】
特色的な特徴は、液体/アリコートが、液体/アリコートおよびその中に存在する全ての反応物と一緒に、このようにして共輸送される下記の一つもしくはそれ以上の或る特定のプロトコルエンハンサーを含有することである。高分子のエンハンサーについては、輸送マイクロ導管の内部表面が、液体アリコート(下記のタイプのプロトコルエンハンサーを含有してもしなくてもよい)の輸送の前に、エンハンサーで被膜され得る。
【0014】
液体輸送に用いられる駆動力は、輸送マイクロ導管が存在する装置に依存する。適切な力は、例えば、マイクロ導管の上に圧力差を掛けることにより能動的に生じさせても、または受動的な手段により生じさせてもよい。輸送力は、動電子的に、例えば電気浸透、もしくは非動電子的に、例えば毛管力、遠心力のような慣性力、静水圧、異なる種類のポンプにより生じる力等により生じ得る。分配装置および微小流体装置に関する議論を参照されたい。
【0015】
液体は、例えば、水を主要液体成分(>50%(v/v)のように>30%)として、場合により一つもしくはそれ以上の水に混和性の有機液体成分と混合して、典型的に水性である。
【0016】
第一の副態様では、特色的な特徴は、プロトコルエンハンサーが、典型的には、或る特定の濃度以上に存在すれば水の中でそれ自身でミセルを形成することができる(ミセル形成性)、両親媒性高分子物質であること、および/もしくはマイクロ導管の内部表面がそのような高分子物質で被膜されていることである。輸送されるべき液体アリコートの中に、アナライトもしくは試薬のような反応物と一緒に物質の存在は、二つの要素が共輸送されることを意味する。
【0017】
第二の副態様では、特色的な特徴は、液体が免疫グロブリン調製物(Ig)を含有することおよび/もしくはマイクロ導管の内部表面がそのような調製物で被膜されていることである。この副態様は、典型的に、抗体試薬の使用により生物学的試料の中のアナライトをアッセイすることを含む分析プロトコルで使用される。アナライトもしくは試薬のような反応物を含有する液体アリコートについては、この副態様は、反応物と一緒にIgを共輸送することを意味する。
【0018】
第三の副態様では、特色的な特徴は、液体が増加された濃度の塩(イオン強度)および/もしくは第一の副態様の高分子物質と異なる界面活性剤を有することである。この副態様は、典型的に、液体のpHにおいて荷電される、一つもしくはそれ以上の基および/または一つもしくはそれ以上の疎水性の基を保持するアナライトをアッセイすることを含む分析プロトコルで使用される。アナライトもしくは試薬のような反応物を含有する液体アリコートについては、この副態様は、反応物と一緒に塩および/もしくはこの種類の界面活性剤を共輸送することを意味する。
【0019】
第一〜第三の副態様について上で与えられたエンハンサーのそれぞれは、一つもしくはそれ以上の他のプロトコルエンハンサーと組合わされ得る。第一の副態様のプロトコルエンハンサーは、本発明で最高の重要性を有するが、必須ではない。
【0020】
発明的概念を利用する加工プロトコルは、典型的には、同一の輸送マイクロ導管を通してまたはいずれかが微小流体装置のマイクロチャネル構造の中にもしくは微小装置へ液体を分配するための装置の中に存在する異なる輸送マイクロ導管を通して、一つもしくはそれ以上の液体アリコートを加工することを含む。少なくとも一つのこれらのアリコートは、輸送されるべき液体アリコートについて本明細書で概略される一つもしくはそれ以上の特色的な特徴を有する、例えば、意図されるプロトコルの反応物および/もしくは両親媒性高分子物質のような、例えば、一つもしくはそれ以上の第一〜第三の副態様にしたがう、プロトコルエンハンサーを含有する。もしプロトコルが分析的(例えばアッセイ)であるならば、一つもしくはそれ以上のアリコートの中の反応物は、アナライトであっても試薬であってもよい。もしも液体のアリコートが反応物を含有するならば、この反応物は、典型的に、他のアリコート反応物と異なっている。一つもしくはそれ以上の輸送されるアリコートは、マイクロチャネル構造内で産生されてもよいが、一つもしくはそれ以上の初期の工程で構造へ分配された、一つ、二つもしくはそれ以上のアリコートから誘導されてもよく、例えば、初期に導入されたアリコートに関して、反応、分離、吸着、脱着、混合、希釈等を実施することにより産生されてもよい。このことは、反応物を含有しているアリコートならびに反応物を含有していないアリコートに適用される。
【0021】
前述の事項は、後に続く本発明の詳細な説明が更に良く理解され得るために、本発明の特徴および技術的利点をかなり幅広く概述している。本発明の請求項の主題を形成する本発明の更に別の特徴および利点が、以下に記述されるであろう。開示される概念および特異的な実施態様は、本発明の同一の目的を行うために他の構造を修飾するかもしくはデザインするための基盤として容易に利用され得ることは、当業者により認識されねばならない。そのような同等の構成が添付される請求項に示されるように本発明の精神および範囲から逸脱しないことは、当業者により認識されねばならない。さらなる目的および利点と一緒に、作業のその組織および方法の両方について、本発明に特徴的であると信じられる新規な特徴は、添付の図面に関連して考慮するときに、以下の説明により、更に良く理解されるであろう。しかしながら、図面のそれぞれは、例示および説明のみの目的で提供されそして本発明の制限の定義として意図されないことは、明確に理解されるべきである。
【0022】
図面の簡単な説明
本発明の更に完全な理解のために、添付の図面に関連して、以下の説明が参照される:
図1は、hIL−8アッセイについての本発明の効果を説明している。
図2は、従来の希釈剤および本発明にしたがう希釈剤の間での比較を説明している。
図3は、異なるアナライト(mTNFα、mIL−6、hTNFα、hIL−8、hMCP−1、hIFNγ)を含有する五つの試料を希釈するためのプロトコルエンハンサーの希釈剤の異なる組合せを持つスクリーニング実験の結果である。
【0023】
本発明の詳細な説明
I.定義
他に定義されない限り、本明細書中で使用される技術的なおよび科学的な用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して理解されるのと同一の意味を有する。本発明の目的のために、以下の用語が下で定義されている。
【0024】
本明細書中で使用される際には、請求項および/もしくは明細書の中で用語“comprising(含んでいる)”と連携して使用されるときには、語句“a”もしくは“an”の使用は、“one(一つの)”を意味し得るが、それはまた、“one or more (一つもしくはそれ以上の)”、“at least one (少なくとも一つの)”および“one or more than one (一つもしくは二つ以上の)”の意味と一致している。なおさらに、用語“having(有している)”、“including(含んでいる)”、“containing(含有している)”および“comprising(含んでいる)”は、交換可能でありそして当業者は、これらの語句が中途変更可能な用語であることを認識している。
【0025】
本明細書中で使用される際には、用語“微小流体装置”とは、一つもしくは複数のマイクロチャネル構造を有する装置を指して、マイクロチャネル構造のそれぞれは、微小流体装置の中で行われるべき対象の微小流体プロトコルのそれらの部分を行うために必要である全ての機能性を含有する。微小流体プロトコルおよび微小流体装置は、とりわけ、Gyros AB/Amersham Pharmacia Biotech ABにより記述されている。US 6,322,682、US 6,632,656、US 6717136、US 6717136、US 6728644、US 20040120856、US 20040096867、US 20030054563、US 20030094502、US 20030129360、US 20030213551、US 20030044322、US 20030053934、WO 99058245、WO 00025921、WO 00040750、WO 00056808、WO 00062042、WO 010002737、WO 01030995、WO 01047637、WO 01054810、WO 01047638、WO 01046465、WO 01085602、WO 02041997、WO 02041998、WO 02075775;WO 0275776、WO 03093802、WO 04050247、WO 04067444、WO 04083109、WO 04083108、WO 04103890、WO 04103891(US SN 10/849,321)、WO 04106926、WO 05032999(US SN 10/957,852)、WO 2005094976、PCT/SE2005/001153(US SN 60/588,712)、WO 2005072872、PCT/SE2005/001887(および相当する通常の米国出願)等[それぞれは全体的な出典明示により本明細書の一部とする]を参照されたい。
【0026】
本明細書中で使用される際には、用語“分配装置”とは、アリコートをさらに加工する微小装置への液体アリコートの分配に使用される装置を指す。この文脈において微小装置は、微小流体装置ならびにその中で液体の輸送が起らない装置、例えば、プレートの中に並べられたウェル、を含んでいる。典型的な分配装置としては、滴下分配器およびシリンジ分配器が含まれ、そして、とりわけ、Gyros AB/Amersham Pharmacia Biotech ABにより記述されている。US 6,192,768、WO 01030500、US 20030094502、WO 02075776、WO 02075312、WO 03093802、WO 04083109、WO 04106296、WO 20050033714、PCT/SE2005/001887(および相当する通常の米国出願)[それぞれは出典明示によりその全体を本明細書の一部とする]を参照されたい。他の分配装置では、出口マイクロ導管(輸送マイクロ導管)の出口は、微小流体装置の入口ポートにしっかりと結合され得る。他の種類の分配器は、ピンおよび針(例えば開口管)の形態で輸送マイクロ導管を利用して、その中で/上で液体を、微小装置の上の標的区域への輸送の間に毛管現象により保持することができる(US 5,957,167および6,116,297(Pharmacopeia)およびWO 0119518(Aclara))[それぞれは出典明示によりその全体を本明細書の一部とする]。
【0027】
本明細書中で使用される際には、用語“液体アリコート”とは、対象のプロトコルで加工される液体の量を指し、同一および/もしくは異なる容積を有し、典型的にμl−範囲(例えば、≦1,000μl、例えば≦100μlもしくは≦10μlの範囲の容積。これらに限定されない)にある、ナノリットル(nl)もしくはピコリットル(pl)の容積、即ち、≦5,000nl、例えば、≦1,000nlもしくは≦500nlまたは≦5,000plを含んでいる。
【0028】
本明細書中で使用される際には、用語“プロトコル”もしくは“加工プロトコル”とは、加工の説明でありそして実験のような、加工の種々の工程の順序、種類等を指し得る。プロトコルは、温度、個別の工程で使用される液体(複数を含む)等、例えば試薬、プロトコルエンハンサー等、の含量を含み得る。プロトコルは、分析、分取、合成等の加工を記述し得る。分析的加工は、しばしばアッセイプロトコルと呼ばれて、次いでアッセイを記述する。
【0029】
本明細書中で使用される際には、用語“プロトコルエンハンサー”とは、非反応物であるが、微小流体プロトコルを改善するかもしくはプロトコルの結果を向上させることができる、外因性物質を指す。このことは、プロトコルエンハンサーは、意図される加工の生成物に至る一連の反応における反応物ではないことを意味する。かくして、アナライト試料の中の攪乱汚染物の沈殿のために使用される物質/化合物は、それが沈殿反応で反応物であるとしても、プロトコルエンハンサーである。本発明の輸送実施態様の第三の副態様にしたがうIg調製物は、アナライトを含有する試料の中でヘテロフィル抗体(heterophilic antibody)を中和することに使用されることと比較されたい。プロトコルエンハンサーは、それがプロトコルの反応物(例えばアナライト)を含有する液体に別々に加えられるという意味で、外因性である。言い換えれば、反応物(例えばアナライト)とプロトコルエンハンサーは、元来、同一の液体/試料の中に一緒に存在していない。
【0030】
本明細書中で使用される際には、用語“溶解される”は、溶解される要素が溶質であること、および/または液体の中に懸濁されることを意図する。
【0031】
II.プロトコルエンハンサー
有用な両親媒性高分子物質は、典型的に、室温(25℃)で水中で生来ミセル形成性である。これは、適当な物質が、分子の別々の部分および/もしくは末端に親水性のならびに疎水性の領域を含むことにより顕著な界面活性を有するにちがいないことを反映する。ミセル形成性の性質は、それ自体では本発明のためには重要でなく、単に本発明の目的を達成するために重要である基本構造的な特徴を反映していると信じられている。物質の中で別個の親水性領域および疎水性の領域の存在ならびに高分子の特徴(=中程度の〜高分子量)は、荷電していてもしていなくてもよい、非濡れ可能性のならびに濡れ可能性の表面を含んでいるさまざまな種類の表面への総体的に良好な付着のための基本的な基準である。
【0032】
外因性の親媒性高分子物質は、典型的に、アッセイ反応、即ち、測定される生成物の形成に至る反応、に関して非反応物である。
【0033】
本発明のプロトコルエンハンサーが反応物と一緒に液体の中に存在する場合には、それは好ましくは、反応物と混和された後、微小流体装置のような微小装置へ分配される。これは特にアナライトに適用される。
【0034】
反応物と一緒に液体の中にもしくは上記のタイプの或る他の液体の中に存在するときには、両親媒性の物質の濃度は、臨界ミセル濃度(使用温度で)(cmc)以下でもしくは以上であり得る。かくして、物質のミセルは、存在してもしなくてもよい。ミセルの存在は、特にもしもミセルがアナライトのような反応物と一緒に存在するならば、得られる結果の信頼性を落とすだろう。プレコーティングおよびコンディショニングに使用される溶液では、高分子物質のミセルが、例えば、cmc以上である両親媒性高分子物質の濃度で持って、含まれることが有益であり得る。両親媒性の物質の適切な濃度は、典型的に、≦5%の、例えば≦2%もしくは≦1%もしくは≦0.5%の、および/または、≧0.001%の、例えば0.005%もしくは≧0.01%(w/v%)の範囲に見出される。最適の範囲は、反応物の種類、例えば、アナライトもしくはアナライトに反応性の反応物(例えば、アナライトに対する親和性カウンターパート(=anti-An))の種類、両親媒性の物質の種類、アナライトのおよび/もしくは他の反応物の濃度、液体の他の成分、装置の内部表面の上に露出される物質、例えば、非イオン性の親水性高分子、血漿で処理した表面、等のようなプラスティック、ガラス、被膜の種類を含んでいるプラスティック、のような種々の要素に依存する。実験的試験が必要である。
【0035】
かくして、両親媒性高分子物質は、それが存在する液体に可溶性であり、そして、典型的には、≧3,000ダルトンの、例えば≧5,000ダルトンもしくは≧10,000ダルトンの分子量を有する。天然に存在する両親媒性高分子物質の分子量は、しばしば≦150,000ダルトンであり、例えば≦100,000ダルトンもしくは≦50,000ダルトンのようにである。合成の態様については、分子量の上限は相当に高くて、例えば10ダルトンもしくは5×10ダルトンもしくは10ダルトンであり得る。これらの範囲は、物質の非断片的な形態に適用される。高分子物質は、典型的には、合成の、半合成のもしくは天然高分子(=生体高分子)のような高分子でありそして複数の同一のおよび/もしくは異なる単量体単位を含んでいる。
【0036】
高分子物質の親水性領域には、典型的には、荷電のおよび/もしくは非荷電のヘテロ原子含有基(ここで、該ヘテロ原子は、典型的には、酸素および/もしくは窒素である)の中で選択される一つまたは複数の基がある。かくして、第四級の、第三級の、第二級のおよび第一級のアンモニウム基、ベンジジウム基、ホスフェート基もしくはホスホネート基、スルフェート基もしくはスルホネート基、カルボキシ基等のような、一つまたは複数の正にまたは負に荷電した基があり得る。これらの基の幾らかは、典型的に意図されるpH範囲(2〜11のように、pH1〜12)においてpH依存性の電荷を有する。典型的な無荷電の親水性基は、アルコール性ヒドロキシ(第一級の、第二級のもしくは第三級の)、アミド基、エステル基、反復性低級アルキレンオキシド基(例えば反復性エチレンオキシド基)等である。この文脈において、低級アルキレンは主として、C2〜4基を意味し、そして用語“反復性”は、異なるアルキレンオキシド基が関与し得ることを含んでいる。
【0037】
高分子物質の疎水性領域には、典型的に、一つまたは複数のアルキル基および/もしくはアリール基がある。相当する二価および多価の基/構造がまた存在し得る。疎水性のアルキル基は好ましくは、水素および炭素のみ、および場合によりフルオロおよび/もしくはクロロのような他のハロゲンも結合している、一つ、二つ、三つ、四つもしくはそれ以上のsp−混成の炭素を含有する。存在し得る更に特異的な基は、メチル、エチル、プロパ−1−イル、プロパ−2−イル、2−メチル−プロパ−1−イル、ブタ−2−イル、フェニル、ベンジル、CH−S−CH−、HSCH−、1−メチル−プロパ−1−イル等の中で選択されて、それらの多くは、典型的にペプチド構造を示す生体高分子に共通であるかもしくは誘導体化されて、それらの基を示す。高分子鎖は枝分かれであっても直鎖であってもよい。鎖は、典型的には、架橋していない。もし架橋しているならば、そのことにより、高分子それ自体が、水および/もしくは他の液体中で不溶性となることがほとんどない。
【0038】
本発明の或る特定の態様では、有益な両親媒性高分子物質は、ポリペプチド構造を有して、好ましいものは、両親媒性のミルクタンパク質の中に、例えばカゼインの中に見出され、β−カゼインが他のものより更に好ましい。両親媒性高分子のミルクタンパク質は、場合により乾燥形態における、脱脂ミルク調製物の中にあるような、他のミルクタンパク質と一緒に使用され得る。この文脈において、典型的にミセル形成性の性質を有する両親媒性高分子物質のフラグメント、凝集体および誘導体は、もしも文脈からそうでないことが明らかでなければ、元の形態が記載されるときに、含まれる。また、他のポリペプチドもしくはタンパク質および合成高分子のようなミルクタンパク質以外のミセル形成性高分子物質は、本発明で使用されるべき候補者である。そのような候補者は、もしそれらがポリペプチド構造を有するならば、アミノ酸残基のような疎水性および親水性の単量体単位のスペーシングに関してβ−カゼインと高い相同性を有し得る。潜在的に有用な合成高分子の例は、疎水性の領域、例えば、一つの疎水性のおよび一つの親水性の末端領域、親水性の末端領域により挟まれる中心の疎水性の領域、を持つ疎水性の領域を含んでいるブロック共重合体である。これは、典型的にそれぞれの末端でポリエチレンオキシド領域により挟まれた中心のポリプロピレンオキシド領域を有する Pluronicsのような、線状のブロック共重合体で例示され得る。原則的に、有用な両親媒性高分子のプロトコルエンハンサーは、非イオン性もしくはイオン性である。イオン性の態様は、陰イオン性、陽イオン性、もしくは双性イオン性である。
【0039】
抗体試薬を利用する分析プロトコルのためには、免疫グロブリン調製物(Ig、免疫グロブリン)がプロトコルエンハンサーとして含まれ得る。免疫グロブリンは高分子種であるので、あるいは、Ig調製物により、輸送マイクロ導管の内部表面上および/もしくはマイクロチャネル構造全体の他の何れかを被膜され得る。Ig調製物は、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMのような或る特定のクラス、もしくはサブクラスであり得る。Ig調製物は、試料の中でアナライトと一緒に存在し得る、ヘテロフィル抗体を中和するために含まれる。Kricka L., Clin. Chem. 45 (1999) 942-956を比較されたい。かくして、Ig調製物は、プロトコルで使用される抗体試薬が由来する種と同一の種からの免疫グロブリン上にも存在する抗原エピトープを含有するべきである。種の間での交差反応性に因り、正確な種のマッチングは要求されない。もしもプロトコルエンハンサーとして使用されるならば、Ig調製物は、液体試料の中に存在するヘテロフィル抗体の量と比較して、過剰量で存在するべきである。プロトコルで輸送されるべき液体アリコートについては、これは、Ig調製物の濃度が、典型的には、好ましくは、アナライトも含有しているアリコートの中で、0.001〜5%の、例えば0.01〜2%もしくは0.01〜1%(w/w%)の範囲内にあることを意味する。Ig調製物はまた、アナライトもしくは或る他の使用される反応物に対して親和性を有する反応物(anti-An)と一緒に本発明にしたがって輸送されるべき液体アリコートの中に存在してもよい。もしもアリコート/液体が被膜溶液であるならば、示された濃度範囲がまた適用される。
【0040】
上で記載された用語“免疫グロブリン”、“Ig”および“Ig調製物”は、これらが、プロトコルを行うのに適切である抗体/ハプテンの特異性を有する抗体調製物を指していないので、時々“冷たい”免疫グロブリンと名付けられる。これは、本発明の文脈において、Ig調製物の実質的に全ての抗体が、別に文脈により示唆されない限り、無関係であることを意味する。
【0041】
アナライトのような反応物を含有している液体アリコートの中で十分に高い塩濃度/イオン強度を確保することにより、輸送マイクロ導管の内部表面への反応物の望ましくない吸着および/もしくは反応物の、他の望ましくない相互作用を、反応物の種類に依存して防止することができる。これは特に、反応物が電荷を示す場合、および/もしくは輸送マイクロ導管の内部表面層が、特に反応物の上の荷電と反対の種類の、荷電を含有する場合に適用される。含まれるべき適切な塩を、輸送される液体のpHにおいて非緩衝性であり得る可溶性の無機のもしくは有機の塩から選択することができる。好ましい塩は、典型的に強酸から誘導される陰イオン、即ち、SO2−、ハロゲン化物イオン、F、Cl等と、グループIの金属(K、Na等)の可溶性塩の中に見出され得る。典型的には、上で定義した塩の総濃度は、例えば、アナライトのような反応物を含有している液体アリコートの中で、>0.10Mであって、好ましくは、0.15〜3Mの、例えば0.15〜2Mもしくは0.25〜1Mの範囲内であるべきである。適切な塩は、使用される種々の反応物に対して不活性であるべきであり、そして攪乱沈殿物を生じるべきではない。この段落で記載された塩は、過剰量の塩が加えられる場合を含み、もしあれば、関係しているプロトコルの反応物を含有している元の液体試料から誘導される塩を含んでいる。
【0042】
界面活性剤は、一つもしくはそれ以上の第一〜第三の副態様にしたがうエンハンサーと組み合わせて使用され得る、さらに別のプロトコルエンハンサーの例である。適当な界面活性剤は、典型的には洗剤であり、そして≦50,000ダルトン、例えば≦20,000ダルトンもしくは≦10,000ダルトンもしくは≦5,000ダルトンもしくは≦3,000ダルトンもしくは≦2,000ダルトンのような、中程度〜低い分子量を有する。それらは、非イオン性およびイオン性界面活性剤の中から選択され、イオン性のものは陰イオン性、陽イオン性、もしくは双性イオン性である。それらは、合成物(テンシド)であっても天然物であってもよい。それらは、典型的に、高分子物質と同様にミセル形成性である。それらは、両親媒性高分子物質の中にもしくはこの明細書中で述べられる種々の種類の反応物の中に存在し得るものと同一の親水性のおよび疎水性の基の中から選択される疎水性の基および親水性の基を示す。輸送されるべきアリコートの中で一つもしくはそれ以上の本発明の第一〜第三の副態様と組み合わせて使用されるべき界面活性剤の適切な濃度は、典型的に、0.001〜5%内で、例えば0.01〜3%もしくは0.05〜2%(w/v)もしくは0.01〜1%(w/v)内で選択される。これらの濃度範囲は、例えば、洗剤およびテンシドに、ならびに、例えば、本発明で使用されるべき液体アリコートを得るために使用される生物学的流体の中の、アナライトのような反応物と一緒に元来存在する、他のさらに別のプロトコルエンハンサーに適用される。
【0043】
上述のプロトコルエンハンサーは、上記の望ましくない相互作用を低減すると知られている、なお他の物質と組み合わせられ得る。これらの他の物質/エンハンサーは、第一〜第三の副態様のエンハンサーを含有するものと同一の液体アリコートの中に存在し得る。これに代えて、それらは、第一〜第三の副態様のエンハンサーを含有しているアリコートと引き続いて混合されてもされなくてもよい、一つもしくはそれ以上の別々のアリコートの中に導入され得る。本発明にしたがって輸送されるべき液体アリコートの中のこの種類の他の物質/エンハンサーの濃度は、典型的に0.001〜5%の、例えば0.01〜3%(w/v)の範囲の中にある。典型的なそのような他の物質/エンハンサーは、別々に加えられた血清アルブミンである。
【0044】
III.反応物
本発明の最も顕著な利点は、反応物および輸送マイクロ導管の内部表面の間で望ましくない相互作用に対する危険性が高いときに起ると信じられている。我々の実験はこれまで、この種類の相互作用の危険性は、反応物が疎水性の基および荷電された基の中で選択される一つのもしくは複数の基を示す場合に、最も高いことを示唆している。疎水性の基は、典型的には、芳香族基および/または環状の、枝分かれのもしくは直鎖のアルキル基またはアルキレン基を示す。芳香族基は、置換型もしくは未置換型の、フェニル基およびベンジル基で例示され得る。アルキル基またはアルキレン基は、例えばメチル、エチル、プロパ−1−イル、プロパ−2−イル、2−メチル−プロパ−1−イル、ブタ−2−イル、フェニル、ベンジル、CH−S−CH−、HSCH−、1−メチル−プロパ−1−イル等の中における、一つ、二つ、三つもしくはそれ以上のsp−混成の炭素原子を含有している炭化水素鎖を含み得る。原則として、生体有機分子の炭素鎖は30個未満の炭素原子を有する。荷電基は、正におよび/もしくは負に荷電していて、反応物が両方の種類の基および正味の正電荷、正味の負電荷もしくは正味のゼロ電荷を有することを含んでいる。反応物のもしくは基の正味の電荷はpH依存性であってもよく、例えば、反応物は、等電点(pI)を持つ両性電解質のように、双性イオン性であってもよい。これらの種類の基/反応物は、疎水性の基もしくは反応物の上の荷電基に比較して反対の電荷を有する基を露出する、内部表面と相互作用する可能性がある。相互作用は、もしも内部表面の荷電基が内部表面の下の層内に、例えば、所謂ピンホールの中のような欠損被膜層内に、もしくはマイクロチャネル構造が作られる材料の表面層内に存在する場合にも起こり得る。
【0045】
関係している反応物は、アナライト、検出可能な基を示している試薬/反応物、固定化基もしくはタッグを示している試薬/反応物、等で例示され得てそして典型的に生体有機化合物である。生体有機化合物であって、疎水基を示す反応物は、タンパク質およびポリペプチド、糖脂質およびリポタンパク質、多くのステロイドのような脂質、脂肪酸およびグリセリドを含んでいるエステルのような脂肪酸誘導体、ならびに高級生体アルコール(五つもしくはそれ以上の炭素原子を持つ)およびそれらの誘導体の中に見出され得る。生体有機化合物であっておよび/もしくは荷電基を示す反応物は、ペプチド構造を示す他の物質を含んでいるタンパク質、およびヌクレオチド構造を示す他の物質を含んでいる核酸の中で主として見出される。
【0046】
ポリペプチド構造を含有する生体有機反応物は、典型的にはまた、a)一つまたはそれ以上の正に荷電したもしくは荷電可能な基、b)一つまたはそれ以上の負に荷電したもしくは荷電可能な基、および/またはc)一つもしくはそれ以上の疎水性の基を含有する。これらの種類の基は、以下のアミノ酸残基の存在により表わされる:
(a) N−末端アミノ酸および/もしくはリシン等のような、塩基性アミノ酸残基、
(b) C−末端アミノ酸および/もしくはアスパラギン酸、グルタミン酸等のような、酸性アミノ酸残基、ならびに
(c) ゼロより更に大きい疎水性親水性指標(hydropathy index)を有しているアミノ酸(Kyte et al., J. Mol. Biol. 157 (1982) 105-132)。
【0047】
疎水性のアミノ酸(括弧の中に疎水性親水性指標)は:アラニン(1.8)、システイン(1.5)、ロイシン(3.8)、イソロイシン(4.5)、メチオニン(1.9)、フェニルアラニン(2.8)およびバリン(4.2)である。
【0048】
内部表面との望ましくない相互作用の危険性および大きさは多数回で、反応物が輸送されるおよび/もしくはインキュベートされる液体により提供される条件、例えば、pHならびに/またはイオン強度(塩濃度)および/もしくは界面活性剤の存在、に依存するであろう。生体有機反応が行われるおよび/もしくは生体有機反応物が輸送される液体について通常意図されるpH(pH=7.4±0.5)に関係して、危険性は、反応物の実際の電荷に関して変わり得る。本発明者たちは、例えば、反応物が輸送されるアリコートのpH値より大きいpIを有する両性電解質の反応物は、そのpIがこのpHより低い両性電解質の反応物よりも多くの利点を得るという一般的な傾向があるに違いないことを認識している。この傾向はまた、もしも両性電解質の反応物が、pHマイナス1よりも大きいpI(ここで、pHが液体アリコートのpH値である)を有するならば、少なくとも部分的に利用可能である。この傾向は、静電相互作用により非イオン性親水性高分子で被膜された可塑性のO−プラズマで親水性化された表面のように、負に荷電した基を露出している表面の挙動に基づいている。かくして、pH依存性の反応物の正に荷電したもしくはより酸性化された形態は、より酸性化されていない形態より更に多くの利点を受け得る、例えば、塩基性のポリペプチドアナライトは酸性のポリペプチドアナライトより多くの利点を受け得る。特にもしも正に荷電した基を含んでいる内部表面を有するマイクロ導管が使用されるならば、負に荷電した反応物、例えば、それを輸送するアリコートの、pI<pH+1、例えば<pHを有する両性電解質の反応物のような双性イオン性反応物について、利点がまた達成され得ることは、おそらく、さらなる検討により示されるであろう。
【0049】
ポリペプチド構造を示している反応物については、プロトコルの貧弱な性能の危険性は多数回でまた、ポリペプチド構造の中の疎水性のアミノ酸のタイプ、数および位置に依存するであろう。かくして、反応物のポリペプチド構造の全てのアミノ酸残基についての平均の疎水性親水性指標は、典型的には、反応物それ自体が一つ、二つ、三つ、四つ、五つもしくはそれ以上の疎水性のアミノ酸残基を示すという条件で、これらの危険性の尺度と考えられ得る(“平均疎水性親水性指標”=GRAVY値 (Kyte et al., J. Mol. Biol. 157 (1982) 105-132))。かくして、≧−0.5の、例えば≧−0.1もしくは≧0もしくは≧0.1もしくは≧0.2もしくは≧0.3もしくは≧0.4の平均疎水性親水性指標を有する反応物の輸送のために本発明の概念を含むことは有益であり得る。ポリペプチド/タンパク質構造の複雑性に因り、これらの平均の疎水性親水性指標の範囲を反応物のポリペプチド構造の配列の一つもしくはそれ以上の部分に適用して、本発明から利益を受け得る反応物を見出すことは、多数回で更に良好であり得る。この文脈では、部分配列は、2、3、4、5、6およびそれ以上の連続的なアミノ酸残基、および/または配列全長におけるアミノ酸残基総数の1〜99%の、例えば2〜99%もしくは4〜50%もしくは4〜25%もしくは4〜10%もしくは1〜6%の間を含む。1、2、3、4、5、6、7もしくはそれ以上の連続的な疎水性のアミノ酸残基を含んでいる反応物は、典型的には、本発明の一つもしくはそれ以上の副態様から利益を受け得る反応物を代表する。
【0050】
“種々の型の反応物”の見出しの下で上で言われたものは、アナライトである反応物に特に関する。
【0051】
IV.輸送マイクロ導管
この明細書のいずれかで既に記載されたように、輸送マイクロ導管は、主として、a)分配装置、およびb)微小流体装置のマイクロチャネル構造の中に存在する。
【0052】
分配装置では、輸送マイクロ導管は、典型的には、分配オリフィスを含んで、かくして分配装置の液体輸送系の出口部分、即ち、液体が微小装置の標的区域へと装置を去る部分を主として含む。分配装置は、滴下分配器、プランジ駆動分配器(例えばシリンジ)であってもよく、また当分野で周知のように他のポンプ機構に基づいていてもよい。他の種類の分配器は、液体アリコートが輸送の間に、表面力(例えば毛管力)により保持されるピンもしくは針の形態で輸送マイクロ導管を使用する。言い換えると、分配の内容では用語“輸送マイクロ導管”は一般的であって、マイクロ導管を通じる輸送よりむしろ微小装置への輸送を指す。微小装置は、数多くのウェルを含んでいるプレート(マイクロタイタープレート)、一つもしくはそれ以上のマイクロチャネル構造を含んでいる微小流体装置等であり得る。微小装置に移される液体は、ウェル、マイクロチャネル構造等の中でさらに加工される。
【0053】
最大の利点は、大量の液体アリコートが先ず輸送マイクロ導管の中に収集されて、次いで、一つもしくはそれ以上の微小装置の異なる標的区域へ連続して少量のアリコートを分配する分配器で得られる。
【0054】
分配装置の輸送マイクロ導管は、ガラス、金属、プラスチック、セラミック等で製造され得る。内部表面は、液体輸送系について当分野で周知であるように前処理され得る、即ち、濡れ可能性/親水性にするおよび/もしくは汚損活性を低減した表面を備え得る。
【0055】
最も一般的な意味(意味1)では、微小流体装置/マイクロチャネル構造の中で用語“輸送マイクロ導管”は、それを通って液体が通過すべきであるマイクロチャネル構造の全ての部分から、プロトコルの不均一反応が起こる、それらのキャビティ/マイクロ導管を除く部分を意図する。用語はまた廃棄チャンバー/リザーバー(もし存在すれば)を含む。不均一反応は、溶解された反応物および固相に結合した反応物との間の反応である。本発明の内容において、用語“輸送マイクロ導管”は、もしも文脈からそうでないことが明瞭でなければ、意味1を指すものとする。
【0056】
より限定的な意味(意味2)では、他の種類の反応(非不均一反応)が起こる反応マイクロキャビティ/マイクロ導管は、輸送マイクロ導管であることから除外される。典型的なそのような反応は、プロトコルの均一反応、即ち、溶解された形態の反応物の間の反応である。
【0057】
なおさらにより限定的な意味(意味3)では、輸送マイクロ導管は、液体アリコート(反応物を含有してもしなくてもよい)の輸送のためにのみ使用される、マイクロ導管である。換言すれば、第三の意味における“輸送マイクロ導管”は、入口開口部、容積規定のユニット、バルブ、孔、混合ユニット、液体を経路制御するユニット、液体から粒子を分離するためのユニット、汚染物質および攪乱物質の除去のためのユニット、反応ユニット、検出ユニット等のような、機能性の間に液体を輸送する機能のみを有する。
【0058】
V.微小流体装置
微小流体装置は、そのそれぞれが一つもしくはそれ以上の液体のアリコートを輸送することおよび加工することにより望ましいプロトコルを行うために意図される、一つ、二つもしくはそれ以上のマイクロチャネル構造を含む。マイクロチャネル構造/装置の数は、典型的に≧10、例えば、≧25もしくは≧90もしくは≧180もしくは≧270もしくは≧360である。
【0059】
マイクロチャネル構造のそれぞれは、≦10μm、好ましくは、≦5×10μm、例えば≦10μm(深さおよび/もしくは幅)である断面積を有する、一つもしくはそれ以上のキャビティならびに/または導管を含む。nlの範囲は、5,000nlの上限を有する。大抵の場合には、それは、≦1000nl、例えば≦500nlもしくは≦100nlの容積に関する。
【0060】
マイクロチャネル構造のそれぞれは、典型的には、(a)例えば、場合により容積計量ユニット(加工されるべき液体容積の計量/規定)と一緒に入口孔/入口開口部、を含んでいる入口装備(inlet arrangement)、b)液体輸送のためのマイクロ導管(上の意味3)、c)反応マイクロキャビティ;d)混合マイクロキャビティ;e)液体から異物を分離するためのユニット(入口装備の中に存在し得る)、f)例えば、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィー等により、試料の中でお互いから溶解されたかもしくは懸濁された成分を分離するためのユニット;g)検出マイクロキャビティ;h)廃棄導管/マイクロキャビティ;i)バルブ;j)環境外気への孔等の中で選択される、一つ、二つ、三つもしくはそれ以上の機能性部分を含む。機能性部分は、一つもしくはそれ以上の機能性を含んでいてもよく、例えば、反応マイクロキャビティおよび検出マイクロキャビティは一致していてもよい。微小流体装置の中の種々の種類の機能性ユニットは、Gyros AB/Amersham Pharmacia Biotech AB:WO 9955827、WO 9958245、WO 02074438、WO 0275312、WO 03018198、WO 03024598、WO 04050247により、および Tecan/Gamera Biosciences:WO 0187487、WO 0187486、WO 0079285、WO 0078455、WO 0069560、WO 9807019、WO 9853311(それぞれは出典明示によりその全体を本明細書の一部とする)により記述されている。
【0061】
上で記述された機能性部分の二つもしくはそれ以上の間に微小流体装置/マイクロチャネル構造内で液体を輸送するために、異なる原理を利用し得る。例えば、次の段落で記載した通りにディスクを回転することにより、慣性力を使用し得る。他の有用な力は、毛管力、静水圧等のような毛管力、動電子力、非動電子力である。
【0062】
微小流体装置は、典型的にはディスクの形態である。好ましいフォーマットは、ディスク平面に垂直である、対称軸(C)[そこでは、nは≧2、3、4もしくは5の整数、好ましくは∞(C)である]を有する。換言すれば、ディスクは、正方形の形態のような方形であり得るか、もしくは他の多角形の形態を有し得る。それは円形(C)でまたあり得る。適切なディスクフォーマットが選択されたならば、例えば、典型的にはディスク平面に垂直もしくは平行である回転軸の周りに装置を回転することにより、液流を駆動させるために遠心力を使用し得る。優先日での最も明白な態様では、回転軸は上述の対称軸と合致する。Gyros ABおよびGamera Biosciences/Tecanの名前で上記の特許文献を参照されたい。
【0063】
好ましい遠心力をベースとした態様については、それぞれのマイクロチャネル構造は、回転軸に比べて下流区分より短いラジアル距離にある上流区分を含む。
【0064】
好ましい装置は、従来のCDフォーマットと同様なサイズおよび形、例えば、従来のCD−半径の10%〜300%の範囲であるCD−半径に相当するサイズで、典型的にディスク形である。
【0065】
微小流体装置のマイクロチャネル/マイクロキャビティは、次の工程でもう一つの本質的に平面な基板(蓋)によりカバーされる、カバーされていない形態でチャネル/キャビティを示す、本質的に平面な基板の表面から製造され得る。WO 9116966(Pharmacia Biotech AB)、WO 0154810(Gyros AB)、およびWO 03055790(Gyros AB)を参照されたい。基板の材料は、種々の種類の無機のおよび有機の材料、例えば、プラスチックのような高分子材料の中で選択され得る。
【0066】
水性液体については、マイクロチャネル構造の内部表面の本質的部分は、使用温度または25℃で、≦90°の、例えば≦60°もしくは≦40°もしくは≦30°もしくは≦20°の水接触角を有するべきである。チャネルを密封している内部壁の少なくとも二つもしくは三つは、この範囲に適合するべきである。受動性バルブ、抗−吸上げ手段等の中の表面は、これらの一般的規則から除外される。プラスチックで作られる表面は、典型的には、親水性化される必要がある。有用な親水性化のプロトコルは、例えば、WO 9529203(Pharmacia Biotech AB)、WO 9800709(Pharmacia Biotech AB)、WO 0146637(Gyros AB)、WO 0056808(Gyros AB)およびWO 03086960(Gyros AB)等において示されている。
【0067】
液体輸送に使用される、もしくは別の方法で水性液体と接触するよう意図されている、マイクロチャネル構造の部分は、好ましくは、親水性である。これは、そのような部分の内部表面の濡れ可能性は、液体の前面が部分の入口を通過したならば、例えば、入口でバルブ機能を通過したならば、毛管現象(自己吸引)により該部分を液で満たすことを助けることを意味する。
【0068】
非濡れ可能性の表面継ぎ目(水接触角≧90°)は、カバーされていないマイクロチャネル構造をカバーする前にマイクロチャネル構造の内部壁の中の予め決められた位置において導入され得る(WO 9958245、Amersham Pharmacia Biotech AB)およびWO 0185602、Amic AB & Gyros AB(それぞれは、出典明示により本明細書の一部とする))。水性液体については、これは疎水性の表面継ぎ目を意味する。表面継ぎ目は、構造内に、例えば、抗−吸上げ、受動性バルブ、液体を指向すること等で、液流を制御するために使用され得る。
【0069】
毛管バルブ、抗−吸上げ手段、液体を指向すること等の中のように表面張力に基づく少なくとも一つの流体機能を含んでいるマイクロチャネル構造は、高分子のプロトコルエンハンサーが溶解された形態で存在する場合、予め被膜された形態、例えば両親媒性高分子物質および/もしくはIg調製物よりも、扱い易いことが想定され得る。この関心は特に、これらの機能性が別に親水性のマイクロ導管の中で疎水性の/非濡れ可能性の表面継ぎ目に基づく構造に適用される。
【0070】
反応マイクロキャビティは、プロトコルの最終生成物の形成に至る工程で使用される反応物のような、固相に結合した反応物を典型的に露出している固相を含み得る。これに代えて、固相は、固相/反応マイクロキャビティを通過している液体アリコートの中に存在する汚染物および/もしくは攪乱物質を除去するための反応物を露出し得る。
【0071】
固相は、反応マイクロキャビティの内部壁もしくは反応マイクロキャビティの中に保持される多孔性の床であり得る。多孔性の床は、典型的にa)多孔性のモノリス、またはb)多孔性の床に充填される、多孔性のもしくは非多孔性の粒子の集団である。
【0072】
多孔性の床、例えば粒子、における材料は、典型的に、高分子、例えば合成高分子もしくは生体高分子、である。粒子および固相の他の形態は、液流が水性である場合には、典型的に親水性である。この文脈では、親水性は、多孔性の固相、例えば充填ビーズが自己吸引により水が浸透するであろうことを包含する。この用語はまた、粒子の表面が、酸素、硫黄、および窒素の中で選択されるヘテロ原子がある複数の極性の官能基を露出するべきであることを示している。疎水性の粒子もしくは多孔性のモノリスは、例えば親水性の基を導入することにより、親水性化され得る。被膜のおよび親水性化の技術は、WO 9529203(Pharmacia Biotech AB)、WO 9800709(Pharmacia Biotech AB, Arvidsson & Ekstroem)、WO 0146637(Gyros AB)、WO 0056808(Gyros AB)およびWO 03086960(Gyros AB)(それぞれは、出典明示により本明細書の一部とする)の中に提示される技術と同様であり得る。
【0073】
反応物の固相への固定化の技術は、当分野で普通に知られているものの中で選択され得る。かくして、固定化は、共有結合、親和性結合、物理的吸着(主として疎水性の相互作用)等を介して行い得る。使用され得る生体特異的親和性結合の例は、a)ストレプトアビジンおよびビオチン化親和性反応物の間の、b)親和性が高い抗体およびハプテン化親和性反応物等の間の結合であり、またこれらは逆であってもよい。
【0074】
VI.プロトコル
上で指示されたように、液体輸送は、典型的に、一つもしくはそれ以上の液体のアリコートが微小流体装置のような微小装置内で加工されるプロトコルの一部である。少なくとも一つのアリコートは、プロトコルの反応物を含有する。プロトコルは、分析的、分取的、合成的等であり得る。原則としては、微小装置の中で行われる任意の種類の合成的なもしくは分取的なプロトコルは、結果を分析して、行われる実際の反応について、関与される反応物について、何かを見出すことを意味する、換言すれば、大抵の分取的なおよび合成的なプロトコルは分析プロトコルの一部である。
【0075】
分析プロトコル(アッセイ)について、一般的なゴールは、典型的には、プロトコルの中で行われる一つもしくはそれ以上の反応の或る特定の態様を特性決定することである。この特性決定は、反応物(=アナライト)の一つもしくはそれ以上の分子特徴について学習することに関係し得る。かくして、一つのゴールは、アナライトの量/濃度/活性を見出すことであり得る。もう一つのゴールは、反応物(=アナライト)の反応性、同一性、構造および他の特徴について学習することであり得る。その最も広い意味では、分析プロトコルはまた、反応物の濃度、pH、イオン強度、界面活性剤の存在、塩のタイプ、温度、種々の成分の存在等のような、種々の反応条件/変数がいかに反応プロトコルの結果と相互作用するかを研究することを含む。この後者の種類の分析プロトコルは、典型的には、一つもしくはそれ以上の反応条件が変更される、比較研究を含む。これらのプロトコルについては、用語“アナライト”は、比較実験の間で変化させる変数(複数を含む)を意味する。
【0076】
典型的なプロトコルは、医学、生化学、分子生物学、環境科学、診断学、無機化学、有機化学および/もしくは分析化学等を含んでいる生物学な科学ならびに/または化学に適用可能である。典型的なプロトコルは、生体有機反応物、例えばアナライト、を利用するが、一方では一つもしくはそれ以上の他の反応物は、金属イオンもしくは無機陰イオンのように、無機であり得る。本発明の内容では、生体有機の化合物/反応物を模倣する合成有機化合物はまた生体有機である。
【0077】
アナライトの例示的例は、a)ペプチドホルモンおよびステロイドホルモンのような、ホルモン、b)ホルモン受容体、c)成長因子、d)酵素、酵素の基質、補因子、補酵素、補基質等のような、酵素系の成分、e)サイトカイン、インターフェロンを含んでいるケモカインおよびインターロイキンのような免疫モジュレーター、f)ECP、MPO等のような、炎症性メディエーター、g)抗原およびハプテン、h)薬物、i)免疫グロブリンそれ自体およびそのサブクラスのような免疫グロブリン、j)血液凝固因子、k)補体因子、l)組織、m)細菌、カビ、菌類、ウイルス、プリオン、等の微生物、n)職業性健康の分子インジケーター、o)毒素、p)核酸およびヌクレオチド構造を示している他の化合物、等である。
【0078】
典型的なプロトコル(アッセイ)は、リガンド−受容体アッセイ、触媒アッセイ、細胞をベースとしたアッセイ等である。また、例えば、MS(US 6,812457およびUS 6,812,456(Gyros AB))による微小装置の外での分析用の試料調製が含まれる。
【0079】
A.受容体−リガンドアッセイ
この種類のプロトコルは、アナライトおよびアナライトに対する親和性カウンターパート(anti−An)を含んでいる親和性複合体が形成される工程を含む。反応条件の適切な選択により、(a)形成された複合体、および/もしくは(b)複合体形成していないアナライト、ならびに/または(c)複合体形成していないanti−Anの量を、アナライトの出発量、例えば、それからアナライトが由来する流体、例えば生物学的流体、の中のアナライトの濃度/量/活性、と相関する。(a)、(b)もしくは(c)の測定は、しばしば、親和性反応物、例えばanti−Anもしくはアナライト類似体(An類似体)の使用により容易になり、それは、ラベルのような検出可能な基(検出可能な反応物)を含みそして要素(a)〜(c)の適切なものを含有する親和性複合体を形成する能力がある。受容体−リガンドアッセイの内容では、用語“抗体”は、未反応の天然の抗体ならびに抗原に結合しているフラグメントおよびそれらの誘導体、例えばFab、F(ab)、単鎖の抗体、キメラ抗体、一つもしくはそれ以上の抗体部分を含有しているコンジュゲート、抗体の抗原特異性を模倣しようと試みている合成形を含む。抗体は化学的におよび/もしくは組換え的に製造され得る。
【0080】
受容体−リガンドアッセイは、二つの主なグループ1)不均一なアッセイおよび2)均一なアッセイに分割され得る。不均一なアッセイは、測定が起る前に分離工程を含む、即ち、親和性複合体は、複合体の中に組み込まれていないアナライトおよび/もしくはanti−Anから分離されるか、または検出可能な反応物を含有している親和性複合体が、この複合体の中に組み込まれていない検出可能な反応物の部分から分離される。
【0081】
分離は、anti−Anもしくはアナライトに対する類似体(An−類似体)の固定化されたまたは固定化可能な形態の使用により容易となる。均一なアッセイでは、この種類の分離工程は含まれていない。代わりに、測定されるべき特徴が親和性複合体形成の結果、変化する、検出可能な基を示す親和性反応物を使用する。該発明的概念を、不均一なおよび均一な受容体−リガンドアッセイの両方に適用することができる。
【0082】
受容体−リガンドアッセイはまた、1)競合的なアッセイおよび2)非競合的なアッセイに分割され得る。
【0083】
競合的なアッセイでは、アナライトの類似体(An−類似体)がアナライトのanti−Anへの結合と競合するかもしくはそれを阻害する。anti−Anは、典型的に、限定している量で存在する。競合的なアッセイはまた、a)限定している量のanti−AnをAn−類似体で飽和してその後でアナライトを複合体に結合したAn−類似体と置換させる、第一工程を典型的に含む、所謂置換アッセイ、およびb)過剰のanti−AnをAnと反応させてその後で残存するAn結合部位をAn−類似体と反応させる逆滴定法、を含んでいる。競合的なアッセイは、均一であっても不均一であってもよい。競合的なアッセイで使用される典型的なアナライトは、ハプテンもしくは抗原である。アナライトは、典型的には、比較的小さく、例えば、<10,000ダルトン、例えば<5,000ダルトンもしくは<2,000ダルトンである。典型的なanti−Anは、抗原に特異的な抗体である。典型的なアナライトは、ハプテンもしくは抗原である。
【0084】
数種類の非競合的なアッセイがある。サンドイッチアッセイは、最も一般的な一つである。
【0085】
サンドイッチアッセイでは、アナライトは、それぞれがアナライトに対して親和性カウンターパート(anti−An)である、二つの反応物の間に繋ぎ留められる。典型的なアナライトは比較的大きく、>2,000ダルトンの、例えば>5,000ダルトンもしくは>10,000ダルトンの分子量を有して、そして免疫グロブリンおよび抗原特異的な抗体をも含んでいる抗原である。典型的なanti−Anは、anti−An抗体および対象のアナライトに対して親和性カウンターパートである他の親和性反応物である。もしも、例えば、アナライトが抗原特異的な抗体であるならば、anti−Anの一つもしくは両方が、抗原類似体であってもよく、一方では残存するanti−Anは、もしあるならば、アナライトのFc部分に向かって指向されるanti−An抗体であるか、または抗体の非抗原結合に親和性を有する或る他の親和性反応物である。不均一なアッセイでは、これは、一つのanti−Anが固定化されたもしくは固定化可能な形態である一方で、他のものは検出可能な基を示すことを意味する。
【0086】
他の種類の非競合的なアッセイは、測定されるべき特徴が、反応物がアナライトと一緒に親和性複合体の中に組み入れられたときに、変化する検出可能な基を示す唯一つのanti−Anを利用する。周知の例は、シンチレーション近接アッセイ(SPA)である。
【0087】
B.触媒アッセイ
触媒アッセイでは、アナライト(An)は、触媒系の成分である。用語“触媒系”(CS)は、主として、生体触媒系、例えば、酵素的に活性なタンパク質もしくはそれらの合成変異体に基づく酵素系を意図する。用語“触媒系”はまた、一つの触媒系が他の触媒系および/もしくは抗原−抗体反応系のような他の反応系と組み合わされた、所謂カップリング触媒系を包含する。触媒系の成分(=反応物)は、触媒、基質、補基質、補因子、補触媒、阻害剤、促進剤、活性化剤等で例示され得る。酵素系については、これは酵素、基質、補基質、補酵素、補因子等に相当する。
【0088】
この種類のアッセイのためには、研究されるべき触媒系用の基質ではないプロトコルエンハンサーを選択することが重要である。カゼインおよびポリペプチド構造を有している他のエンハンサーは、もしも対象の触媒系がタンパク質分解の活性を有するならば、避けるべきである。次いで、プロトコルエンハンサーとして合成両親媒性高分子物質もしくは不活性化タンパク質基質は、更に適切な選択であり得る。
【0089】
酵素系は、1)酸化還元酵素(脱水素酵素、酸化酵素等)、2)転移酵素、3)加水分解酵素(エステラーゼ、炭化水素分解酵素、プロテアーゼ等)、4)脱離酵素、5)異性化酵素、および6)リガーゼの中で選択され得る。
【0090】
触媒系の成分は、天然由来であってもよく、また合成的にもしくは組換え的に生産されてもよい。成分は、アミノ酸構造、オリゴもしくはポリペプチド構造のようなペプチド構造、オリゴもしくはポリヌクレオチド構造のようなヌクレオチド構造、オリゴもしくはポリペプチド構造のような炭水化物構造、脂質構造、ステロイド構造、ホルモン構造等、即ち、本発明が適用可能である他のプロトコルの反応物の中に存在し得る構造、を示してもよい。例えば、触媒系の成分の天然変異体を潜在的に模倣している、コンビナトリアルライブラリーに由来している、合成化合物が含まれる。
【0091】
本発明が適用される触媒アッセイは均一であっても不均一であってもよい。均一な触媒アッセイは、溶解されたまたは不溶のもしくは固定化された形態のいずれであってもよい生成物を除いて、使用される系の全ての成分が溶解された形態であることを意図する。したがって、不均一な触媒アッセイは、形成される生成物以外の一つもしくはそれ以上の成分が不溶のもしくは固定化された形態であることを意図する。
【0092】
触媒アッセイは、典型的には、基質のおよび/もしくは生成物の上の検出可能な基を利用する。検出可能な基は、典型的に、受容体−リガンドアッセイについてと同一の選択肢の中で選択され得る。
【0093】
C.細胞をベースとしたアッセイ
細胞をベースとしたアッセイは、輸送マイクロ導管内で輸送される一つの反応物が細胞の懸濁液であることを意味する。細胞は、典型的には、生存していて、そして、一つもしくはそれ以上の薬剤を作用させて、その結果、場合により受容体−リガンドプロトコル、もしくは当分野で周知のタイプの、例えば上記の触媒プロトコルを利用することにより、または触媒形態学、運動性、増殖等を研究することにより、薬剤の細胞に対する作用を研究する。またUS 6,632,656(出典明示によりその全体を本明細書の一部とする)を参照されたい。関係する薬剤は、何れの種類であってもよく、またファージ、ウイルス等、温度、時間、湿度、COおよび/もしくはO圧のようなガス圧、栄養剤、毒素、ビタミン、ホルモン等を含んでいる。細胞は、作用が研究される前に、関係する薬剤(複数を含む)の存在下もしくは不在下に装置の外部でまたは内部で増殖され得る。細胞を薬剤(複数を含む)に供した後で、細胞は、微小装置の内部で、例えば溶菌されてもしくは固定化され、殺されてもよいが、この時、種々の放出されたもしくは結合された細胞成分は、次に、調べられる微小装置の中に保持されている。
【0094】
典型的な細胞は、核化されていても核化されていなくてもよく、足場依存性であっても非足場依存性であってもよく、第一次であっても第二次であってもよく、細菌性であっても非細菌性であってもよく、植物細胞であっても動物細胞等であってもよい。多数の細胞株および培養物が使用に入手可能であって、それらは、生存する培養物および遺伝子材料のためのアーカイブとして供される機関である、the American Type Culture Collection (ATCC)を通して取得され得る。
【0095】
本発明にしたがう細胞をベースとしたアッセイはまた、微小装置内で生きている組織を研究することを含み得る。組織は細胞を含んでもよい。組織は、生物の一部であってもそれから分離されていてもよい。細胞もしくは組織は、少なくとも一つの生物の中に含まれ得る。或る特定の実施態様では、生物は、真正細菌、古細菌、真核生物もしくはウイルスであってもよいが、それらに限定されない。かくして、以下は、本発明の方法および組成を用いて研究され得る細胞の例である。
【0096】
或る特定の実施態様では、生物は真正細菌である。特別な実施態様では、真正細菌はアキフェックス目;テルモトガ目;テルモデスルフォバクテリウム目;テルムスデイノコックス群の一員;クロロフレクスス目;シアノバクテリア;ファーミキューテス門;レプトスピリリウム群の一員;シネジステス属;クロロビウムフラボバクテリア群の一員;ヴェルコミクロビウムおよびクラミジアを限定されることなく含んでいるクラミジア、ヴェルコミクロビウム群の一員;プランクトミセス目;フレキシスチペス属;フィブロバクター群の一員;スピロヘータ;アルファプロテオバクテリア、ベータプロテオバクテリア、デルタおよびイプシロンプロテオバクテリアもしくはガンマプロテオバクテリアを限定されることなく含んでいる、プロテオバクテリアであり得るが、これらに限定されない。或る特定の態様では、ミトコンドリアおよび葉緑素を含んでいる、真正細菌に由来する器官が意図される。
【0097】
さらなる実施態様では、生物は古細菌(archaea)(別名古細菌(archaebacteria);例えば、メタン生成菌、好塩菌、スルフォロブス目)である。特別な実施態様では、古細菌は、コルアーキオータ門;テルモフィルム、ピロバクルム、テルモプロテウス、スフォロブス、メタロスフェラ、アシディアヌス、テルモディスクス、イグネオコックス、テルモスフェラ、デスルフロコックス、スタフィロテルムス、ピロロブス、ハイパーテルムスもしくはピロヂクチウムを限定されることなく含んでいる、クレンアーキオータ門;またはハロバクテリウム目、メタノミクロビウム目、メタノバクテリウム目、メタノコックス目、メタノピルス目、アーケオグロブス目、テルモプラズマ目、もしくはテルモコックス目を限定されることなく含んでいる、ユリアーキオータ門であり得るが、これらに限定されない。
【0098】
なおさらに、生物は真核生物(例えば、原生生物、植物、菌類、動物)である。特別な実施態様では、真核生物は微胞子虫類、ディプロモナス、オキシモナス、レトルタモナス、パラバサリド、ペロビオント、エントアメーバもしくは有ミトコンドリア真核生物(例えば、動物、植物、菌類、ストラメノパイル)であり得るが、これらに限定されない。
【0099】
さらなる実施態様では、有ミトコンドリア真核生物は後生動物(例えば、動物)、ミクソゾア門、襟鞭毛虫、菌類(例えば、キノコ、糸状菌、酵母、ツボカビ)、緑色植物(例えば、緑藻類、陸生植物)、クリプトモナス、アンシロモナス、プラスモディフォリド、紅藻類、太陽虫、シアノフォリド、アルベオラータ(例えば、渦鞭毛藻類、胞子虫、繊毛虫)、ストラメノパイル(例えば、褐藻、珪藻類、卵菌類、黄金色植物)、棘針綱、ヴァンピレリド、タウマトモナス、テロネマ、スチコロンケ目、スポンゴモナス、ラミスリスタータ、シュードスポラ、シュードデンドロモナス、ファランステリウム、放散虫類、パラミクサ、ルフィスフェラ、ロイコディクチオン、カタブレファリド、ヒスチオナ、ハプト藻、エブリア目、ニホンヒラムシ、サンカヨウ、イースモトラシド、クリオテコモナ、コプロミキサ、クロララクニオン、セルコモナス、セシテルス、アプソモナス、タイヨウチュウもしくはアカントアメーバであり得るが、これらに限定されない。
【0100】
特定の態様では、真核生物は後生動物(例えば、動物)である。或る特定の態様では、後生動物は海綿動物(例えば、海綿)、刺胞動物(例えば、クラゲ、イソギンチャク、サンゴ)、有櫛動物(例えば、クシクラゲ)、節足動物(例えば、昆虫、クモ、カニ)、環形動物(例えば、条虫類)、有鬚類、ハオリムシ、ヰムシ類、軟体動物(例えば、カタツムリ、ハマグリ、ヤリイカ)、星口動物、紐形動物(例えば、ヒモ虫)、扁形動物(例えば、ウズムシ)、脊索動物(例えば、脊椎動物)、半索動物、触手冠動物、毛顎動物、棘皮動物(例えば、ヒトデ、ウニ、ナマコ)、偽体腔動物、板形動物、一肺葉動物、菱形動物、直泳動物であり得るが、これらに限定されない。特別な局面では、脊椎動物は、陸生脊椎動物(例えば、カエル、サンショウウオ、ハダカヘビ、爬虫類、哺乳類、鳥類)もしくは非陸生脊椎動物(例えば、サメ、エイ、ノコギリザメ、ギンザメ、条鰭類、総鰭類)であり得る。さらに別な局面では、哺乳動物は単孔類(例えば、カモノハシ、ハリモグラ)、多丘歯類、有袋類(例えば、フクロネズミ、カンガルー)、パレオリクテス科、もしくは真獣類(例えば、有胎盤哺乳類)であり得る。
【0101】
特別な局面では、真獣類は貧歯類(例えば、アリクイ、ナマケモノ、アルマジロ)、有鱗類(例えば、センザンコウ)、ウサギ目(例えば、家兎)、そ形類、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、リス、ジリス、ヤマアラシ、ビーバー)、ハネジネズミ目(例えば、ハネジネズミ)、霊長類(例えば、サル、キツネザル、ゴリラ、チンパンジー、ヒト)、ツパイ目(例えば、ツパイ)、翼手類(例えば、コウモリ)、皮翼類(例えば、ヒヨケザル、日よけサル)、食虫類(例えば、トガリネズミ、モグラ、ハリネズミ)、肉歯類、食肉類(例えば、イヌ、ネコ、クマ、ラクーン、イタチ、マングース、ハイエナ)、か節類、偶蹄類(例えば、ブタ、シカ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、カバ、ラクダ)、鯨目(例えば、クジラ、イルカ、ネズミイルカ)、管歯類(例えば、ツチブタ)、奇蹄類(例えば、ウマ、バク、サイ)、イワダヌキ目(例えば、ハイラックス、ダッシー(dassy))、海牛類(例えば、マナティー、ジュゴン、海牛)、束柱類、重脚類、もしくは長鼻類(例えば、ゾウ)であり得るが、これらに限定されない。
【0102】
特別な実施態様では、真核生物は菌類である。菌類は、ツボカビ門(例えば、ミズカビ、カワリミズカビ)、接合菌門(例えば、パンカビ、クモノスカビ、ケカビ)、担子菌門(例えば、キノコ、サビ菌、黒穂病)もしくは子嚢菌門(例えば、子嚢菌、酵母、アオカビ)であり得るが、これらに限定されない。
【0103】
或る特定の実施態様では、真核生物は緑色植物である。緑色植物は、プラシノ藻類、緑藻類、トレボウクシア藻類、アオサ藻類、クロロキブス目、クレブソルミジウム目、ホシミドロ目、ストレプト植物門、シャジクモ目、コレオカエテ目もしくは有胚植物(例えば、陸生植物)であり得るが、これらに限定されない。特別な局面では、有胚植物はゼニゴケ目類(例えば、ゼニゴケ)、ツノゴケ類(マツモ)、蘚類(例えば、コケ)、小葉植物類(例えば、ヒカゲノカズラ)、トクサ類(例えば、トクサ、有節植物)、シダ類(例えば、シダ)、スペルマト植物類(例えば、種子植物、顕花植物、針葉樹)であり得るが、これらに限定されない。特別な態様では、スペルマト植物類は被子植物であり得るが、これに限定されない。被子植物は、マツモ科、スイレン目、コショウ目、ウマノスズクサ目、単子葉類、真正双子葉類、クスノキ目、センリョウ科、シキミモドキ目もしくはモクレン目を含み得るが、これらに限定されない。
【0104】
或る特定の態様では、生物はウイルスであり得る。特別な態様では、ウイルスは、DNAウイルス(ssDNAウイルスもしくはdsDNAウイルスを含み、これらに限定されない);DNA RNA逆転写ウイルス;RNAウイルス(dsRNAウイルス(マイナス鎖ssRNAもしくはプラス鎖ssRNAを含み、これらに限定されない)を含み、これらに限定されない);または未分類のウイルスであり得るが、これらに限定されない。
【0105】
VII.検出可能な基
検出可能な基は、検出可能な反応物の中に天然で存在するかもしくは反応物上に人によりラベルとして導入されている。前者の場合には、検出可能な基は、タンパク質、多糖、核酸等のような反応物の天然の構造の一部である。典型的な例は、免疫グロブリン/抗体の中のクラス、サブクラスおよび種特異的(IgFc)決定因子である。もしもラベルが人により導入されるならば、最終反応物は、“コンジュゲート”と呼ばれる。コンジュゲートは、組換え技術によりおよび/もしくは有機合成のカップリング化学を用いることにより合成的に得られる。
【0106】
検出可能な基のもう一つの分類は、親和性検出可能な基およびシグナル発生基である。親和性検出可能な基は、検出可能な基に対する親和性カウンターパートおよび第二の検出可能な基を含む余分の反応物を必要とする。この余分の反応物は、典型的に、人がデザインしたコンジュゲートの形態である。典型的な親和性検出可能な基は、ビオチンおよびビオチン結合化合物、例えば抗−ビオチン抗体、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン等、相補的核酸、ハプテンおよび抗−ハプテン抗体、レクチンおよび炭水化物、IgFc決定因子およびIgFc結合ポリペプチド等のような親和性ペアの一員である。典型的なシグナル発生基は、粒子、金属、発色団、フルオロフォア(蛍光原を含む)、放射性基、発光団(化学のおよび生物の発光団を含んでいる)、触媒、基質、補基質、補触媒等のような触媒的に活性な基である。最も一般的な触媒的に活性な基は、酵素、補酵素、補因子、基質、補基質等のような酵素的に活性な基である。
【0107】
VIII.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を実証するために含まれている。以下にある実施例で開示される技術は、本発明の実施で良く機能するように本発明者により見出された技術を提示し、そしてかくして、その実施のための好ましいモードを構成すると考え得ることが、当業者により認識されねばならない。しかしながら、本開示に鑑みて、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱すること無しに、開示される特異的実施態様の中で多くの変更を行い、なお類似のもしくは同様の結果を得ることができることを、認識しなければならない。
【実施例】
【0108】
実施例1
hIL−8アッセイに対する効果
本発明者等は、WO 04083108およびWO 04083109(Gyros AB)で記載されたサンドイッチアッセイの性能は、ヒトインターロイキン8(hIL−8)のような或る特定の血清分析のためには検出限界、応答レベル等に関して低いことを見出した。β−カゼイン、ウシ血清アルブミンおよびNaClを含有している緩衝液の中に試料を予め希釈することにより改良が得られた。
【0109】
反復実験の間で低い応答レベル、低い濃度、および高いCVを示した五つの試料を、0.5%β−カゼイン、0.5%ウシ血清アルブミンおよび0.5M NaClを含有している緩衝液(pH約7.4)の中に希釈した。希釈(試料/緩衝液)は、1/15;1/7;1/3;1/1および無希釈であった。応答レベルは、無希釈の試料に比較して、30〜100倍に劇的に増加した。試料についてのグラフ(2〜6)は、標準についてのグラフ(1)と平行であった。それぞれの試料について最高の濃度は無希釈の試料を表す、図1を参照されたい。
【0110】
実施例2
ヒトインスリンアッセイに対する効果
材料および方法
希釈剤および他の液体:
●PBS−Tween:15μl Tween 20 10%+14.985ml PBS(1×)。捕捉抗体用の希釈剤および微小流体装置(CD)の中でカラム洗浄用の液体。
●PBS−BSA:1ml BSA 10%+9ml PBS(1×)。検出Ab用の希釈剤。
●発明の希釈剤原液:1%BSA、0.2%β−カゼイン(SIGMA C-6905-1G、ミルク、最低90%純度)、PBS中の1M NaCl
●試料および標準用の発明の希釈剤:0.5%BSA、0.1%β−カゼイン、PBS中の0.5M NaCl、希釈剤原液5ml+5ml MQ水。
●標準用の別の希釈剤:健康な断食している人からの血清試料。健康な断食している人は、生来インスリン2〜25μU/mlを有し、9μU/mlの平均値を有する(Mercodia Insulin ELISA, Uppsala, Sweden)。
【0111】
抗体およびアナライト
●B−1125捕捉Ab:抗ヒトインスリンMAb(ラットIgG1;Research Diagnostic)。原液濃度1.64mg/ml。アッセイ濃度0.1mg/ml
●F−1203検出Ab:抗ヒトインスリンMAb(ラットIgG1;Research Diagnostic)。原液濃度1000nM。アッセイ濃度25nM
●ヘテロフィル(heterophils) Ab用のアッセイでのB−1108捕捉Ab:抗mIFNγMAb(ラットIgG1)。原液濃度0.5mg/ml。アッセイ濃度0.1mg/ml
●R−1614組換えヒトインスリン(Fitzgerald)。原液濃度14.5μU/ml。標準曲線1〜1000μU/ml。Mw=5808g/モル、pI=5.2。高疎水性。1μU/ml=6.95pM=40.3pg/ml
試料:RIAにしたがって9〜209μU/mlからのインスリンレベルを有する13個のヒト血清試料。
機器:Gyrolab Workstation LIF (Gyros AB, Uppsala, Sweden)。
【0112】
アッセイプロトコルおよび微小流体装置
インスリンサンドイッチアッセイおよびヘテロフィル抗体サンドイッチアッセイは、WO 04083108およびWO 04083109(Gyros AB)の中でサンドイッチについて記載された通りである。希釈された試料および標準が、微小流体装置に分配された。
【0113】
A.インスリンアッセイ:PBS−BSAおよび革新的希釈剤のための標準曲線の比較の結果
図2を参照されたい。革新的希釈剤は、PBS−BSA希釈剤より遥かに低い検出限界(それぞれ、0.9μU/mlおよび26μU/ml)を与えた。動的な範囲がまた改良される。
【0114】
B.ヘテロフィル抗体(heterophils antibody)の中和
全ての人のおよそ30〜40%はヘテロフィル抗体を有する。これらの抗体は、アナライトと一緒に存在するときに、免疫アッセイと相互作用して、アナライトの偽りの濃度を与え得る。アッセイでは、インスリンアッセイの捕捉抗体(抗ヒトインスリンMAb)を、抗mIFNγのラットMAb(IgG1)と置き換えた。ヘテロフィル抗体を中和するために、IgGを洗浄工程を通してかもしくは試料にのいずれかで加えた。この実験では、IgGを捕捉抗体洗浄工程2で加えた。通常では、PBS−Tweenが洗浄溶液として使用され、そしてアッセイでは、ラットIgGに結合している全てのヘテロフィル抗体が測定されるであろう。ウシIgG(1.0mg/ml)およびマウスIgG(0.2mg/ml)の混合液を加えているときには、ヘテロフィル抗体は低いレベルまで低減されるであろう。二回分析された試料は、洗浄溶液としてPBS−Tweenで一回およびIgG混合液で一回。
【0115】
ヘテロフィル抗体のレベルは、1〜4μU/mlであり、即ち、健康な人に対する平均値以下であった。ヘテロフィル抗体の測定可能な中和は、一つの試料の中で起こった。
【0116】
C.異なる試料の希釈
異なる試料の希釈が標準曲線と平行であったか、即ち、我々は希釈係数が低いときに、マトリックスの問題を有するかどうかを検討するために実験を実施した。高濃度、中程度の濃度および低濃度のインスリンを含む試料を、本発明にしたがう希釈剤(0.5%BSA、0.1%β−カゼインおよび0.5M NaCl)で1:2、1:4、1:8および1:16に希釈した:
【表1】

【0117】
1:2〜1:16の希釈からのグラフは、全ての試料に対して、標準曲線と平行であった、即ち少なくとも1:2に希釈しているときには、マトリックスには何の影響もなかった。
【0118】
実施例3
分析プロトコル用のエンハンサープロトコルの最適な組合せのためのスクリーニング
アッセイプロトコル:
WO 04083108およびWO 04083109(Gyros AB)で記載されたサンドイッチアッセイ。希釈された試料および標準は、微小流体装置に分配された。
【0119】
アナライト(pI):
hIFNγ(9.64)、hMCP−1(9.39)、hIL−4(9.26)、hIL−8(9.02)、hTNFβ(8.94)、mIFNγ(8.8)、mIL−4(8.3)、mIL−10(8.2)、hIL−2(7.05)、hIL−5(7.05)、hTNFα(7.0)、mIL−6(6.5)、hIL−6(6.25)、hIL−1β(5.95)、hインスリン(5.2)、rインスリン、hMMP−2(5.02)、mTNFα(5.0)、mIL−2(4.9)、mMIP−1β(4.77)(h=ヒト、m=マウスおよびr=ラット)。濃度:100pMに対して。
【0120】
試料:アナライト中で100pM。血清環境
プロトコルエンハンサー:
1.両親媒性高分子物質:β−カゼイン、Pluronic F127およびF68 (BASF)(三ブロック共重合体(EO)(PO)(EO)(式中、EOはエチレンオキシドであって、POはプロピレンオキシドである))。
2.塩:NaCl
3.洗剤:非イオン性:Tween20および80(Merck)、Triton X100 (Sigma)、Pluronic F127およびF68 (BASF)、Glucopone (Fluka)、Brij 35 (Aldrich);b) 双性イオン性:CHAPS (Sigma)、Zittergent (Calbiochem)、DPC(ドデシルホスホコリン);c)陽イオン性:CTAB (Sigma)。
評価基準:CVおよび検出レベル。
【0121】
結果:
代表的な結果が、図3に示されており、ここで、0は推薦されないこと、+は許容されること、および++は非常に許容されることを意味する。ネガティブな効果についての危険性は、希釈剤3および4(それぞれ、“Tween”および“Pluronic”)について最小であり、おそらく希釈剤4の方が幾らか望ましいように見える。洗剤についての結果は、非イオン性洗剤が最も全般的な応用性を有することを示した。
【0122】
本発明の或る特定の革新的態様は、添付の請求項に更に詳しく定義されている。本発明およびその利点は、詳細に記述されているけれども、添付の請求項により定義した本発明の精神および範囲から逸脱すること無しに、種々の変更、置き換えおよび改変をその中で行うことができることを理解されるべきである。さらに、本明細書の範囲は、明細書に記述される加工、機械、製造、問題の組成物、手段、方法もしくは工程の特別な実施態様に限定する意図はない。当業者が本発明の開示から容易に認識するように、現在存在しているかまたは本明細書中で記述される相当する実施態様と実質的に同一の機能を実施するかもしくは同一の結果を実質的に達成する、後に開発された加工、機械、製造、問題の組成物、手段、方法もしくは工程を、本発明にしたがって利用し得る。したがって、添付の請求項は、そのような加工、機械、製造、問題の組成物、手段、方法もしくは工程をそれらの範囲内に含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】hIL−8アッセイについての本発明の効果を説明している。
【図2】従来の希釈剤および本発明にしたがう希釈剤の間での比較を説明している。
【図3】異なるアナライト(mTNFα、mIL−6、hTNFα、hIL−8、hMCP−1、hIFNγ)を含有する五つの試料を希釈するためのプロトコルエンハンサーの希釈剤の異なる組合せを持つスクリーニング実験の結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性高分子物質と一緒に反応物を共輸送することを特徴とする、実験プロトコルの反応物を含む液体のアリコートを微小流体輸送導管の中で輸送する方法。
【請求項2】
当該物質が≧2,000ダルトンの分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該物質がミルクタンパク質もしくはミルクタンパク質の誘導体(フラグメントおよび凝集体を含んでいる)であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
当該物質がカゼイン、好ましくはβ−カゼインであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
当該物質が水の中でミセルを生来形成することが可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
0.001〜5%の範囲内にある血清アルブミンの濃度において血清アルブミンと一緒に反応物を共輸送することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
0.01〜3M内にある塩の濃度の塩と一緒に反応物を共輸送することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
非緩衝性の無機塩、例えばグループIの金属と強酸の塩(例えば塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム)と一緒に反応物を共輸送することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
典型的に0.001〜5%の範囲内の濃度において、テンシド(Tenside)および天然由来の界面活性剤の中で選択される≦50,000ダルトンの分子量の洗剤と一緒に反応物を共輸送することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
免疫グロブリンと一緒に反応物を共輸送することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
当該マイクロ導管が、典型的に、無機材料(例えば金属、ガラス等)から作られる、分配毛管の一部であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
当該マイクロ導管が、典型的に複数の当該マイクロチャネル構造を含有している微小流体装置のマイクロチャネル構造の一部であり、当該マイクロチャネル構造が、好ましくはプラスチックで作られていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
当該マイクロ導管が、マイクロチャネル構造の入口区分および/もしくは内部区分の一部であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12〜13のいずれか1項に記載の方法であって、当該マイクロ導管がマイクロチャネル構造の内部区分の一部であること、および当該アリコートが内部区分の上流の区分の中の二つもしくはそれ以上の異なる液体アリコートを内部で加工することにより得られたことを特徴とする、方法。
【請求項15】
当該アリコートの一つが反応物を含有して一つもしくはそれ以上の残存するアリコートが一つもしくはそれ以上の高分子物質、当該塩、当該洗剤、当該免疫グロブリンおよび当該血清アルブミンを含有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
実験プロトコルが分析の、分取のもしくは合成のプロトコルの中で選択されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
当該反応物がアナライト、分析的に検出可能な反応物、および固定化可能な反応物の中で選択されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
当該プロトコルが、a)受容体−リガンドアッセイ、b)触媒アッセイ、もしくはc)細胞をベースとしたアッセイ、であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
当該反応物が生物学的流体の中で≦10−6モル/lの、例えば≦10−8モル/lの濃度で存在するアナライトであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
当該反応物がペプチド構造、核酸構造、炭化水素構造および脂質構造から選択される構造を示すことを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
反応物が一つもしくはそれ以上の荷電された基および/もしくは一つもしくはそれ以上の疎水性の基を示すことを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
当該反応物が、それを輸送する液体のpHよりも大きいかもしくはそれに等しいpIを持つ両性電解質であることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
当該反応物が、それを輸送する液体のpHよりも小さいかもしくはそれに等しいpIを持つ両性電解質であることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
当該マイクロ導管の内部表面が、特に請求項2〜5にしたがう、両親媒性高分子物質で被膜されていることを特徴とする、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
実験プロトコルの反応物を含む液体のアリコートを、微小流体輸送導管の中で輸送する方法であって、当該マイクロ導管の内部表面が、特に請求項2〜5にしたがう、両親媒性高分子物質で被膜されていることを特徴とする、方法。
【請求項26】
請求項1〜10に記載のプロトコルエンハンサーと一緒に反応物を共輸送すること、および/もしくは該方法を請求項16〜24のいずれか1項に記載された通りに行うことを特徴とする、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−527371(P2008−527371A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551224(P2007−551224)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000070
【国際公開番号】WO2006/075964
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(505358004)ユィロス・パテント・アクチボラグ (22)
【氏名又は名称原語表記】Gyros Patent AB
【Fターム(参考)】