説明

微生物の安定化試薬及びその利用

【課題】
非常に簡単な組成で微生物の保存安定化ができ、且つ室温でも保存安定効果を発揮する微生物の安定化試薬、及び該試薬を用いた微生物の安定化方法を提供する。また、微生物を安定な状態で、簡便且つ迅速に試料を前処理し得る試料の前処理液、該前処理液を用いた試料の前処理方法、及び前処理用キットを提供する。さらに、微生物を安定な状態で、簡便且つ迅速に微生物を検出することができる微生物の検出方法を提供する。
【解決手段】
トリスと塩化ナトリウムとを含有する緩衝液であって、塩化ナトリウム濃度が0.6%を超え1.2%未満、トリス濃度が10mM以上50mM未満、pHが7.0以上8.0未満であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を安定した状態で保存することができる微生物の安定化試薬、微生物の安定化方法、試料の前処理液、試料の前処理方法、試料の前処理用キット、及び微生物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物の保存方法としては、凍結乾燥保存や、滅菌蒸留水又は糖液等に懸濁して5℃以下の低温条件下で保存する方法が知られている。例えば、特許文献1は増殖培養した菌体を蒸留水又は保存安定剤を溶解した溶液中に懸濁し、該懸濁液を低温で保存する方法を提案している。
また、特許文献2は、糖、糖アルコール、リン酸塩、マグネシウム塩、塩化ナトリウム、アンモニウム塩、アミノ酸及びポリエチレングルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の物質を溶解させた溶液中に微生物を懸濁し、該懸濁液を低温で保存する方法を提案している。
【0003】
しかしながら、いずれも微生物を低温で保存する必要があり、10℃を超える温度では微生物の保存安定化効果が低下する(例えば、特許文献1の段落0016等参照。)。したがって、これらの保存液を、微生物を含む検体を酵素等で処理する際の溶液として使用した場合、低温では酵素活性が著しく低下するため、処理に時間を要し、また酵素活性を保つ為に室温〜37℃程度に保つと微生物に影響が生じるといった問題があった。
【特許文献1】特開2002−95464号公報
【特許文献2】特開平5−292943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、非常に簡単な組成で微生物の保存安定化ができ、且つ室温でも保存安定効果を発揮する微生物の安定化試薬、及び該試薬を用いた微生物の安定化方法を提供することを目的とする。また、本発明は、微生物を安定な状態で、簡便且つ迅速に試料を前処理し得る試料の前処理液、該前処理液を用いた試料の前処理方法、及び前処理用キットを提供する。さらに、本発明は、微生物を安定な状態で、簡便且つ迅速に微生物を検出することができる微生物の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の微生物の安定化試薬は、トリスと塩化ナトリウムとを含有する緩衝液であって、塩化ナトリウム濃度が0.6%を超え1.2%未満、トリス濃度が10mM以上50mM未満、pHが7.0以上8.0未満であることを特徴とする。なお、本発明において記載する濃度%とは、特記しない限り質量/質量%である。また、本発明において、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンをトリスと称する。
【0006】
前記トリス濃度が15mM以上30mM以下であることが好ましい。
また、前記塩化ナトリウム濃度が、0.8%以上1.1%以下であることが好適である。
前記微生物が、ウイルス、リケッチャ、細菌又は真菌であることが好適である。
【0007】
本発明の微生物の安定化方法は、微生物を、前記本発明の安定化試薬に懸濁することを特徴とする。
【0008】
本発明の試料の前処理液は、試料中に存在する微生物を検出する際の試料の前処理液であって、該前処理液が、蛋白質分解酵素を有効成分として含有する、前記本発明の安定化試薬からなることを特徴とする。
【0009】
前記蛋白質分解酵素が、セミアルカリプロテアーゼ及びシステインプロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記システインプロテアーゼが、ブロメライン、パパイン、キモパパイン及びフィシンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
前記試料が全血、血漿、血清、尿、髄液、精液、唾液、母乳、汗、粘液、体液、糞便、病変部組織及びその抽出液、膿、喀痰、鼻汁、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、又は微生物培養系試料であることが好適である。
【0010】
本発明の試料の前処理方法は、前記本発明の前処理液を用いることを特徴とする。
【0011】
本発明の微生物の検出方法の第1の態様は、前記本発明の安定化試薬を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明の微生物の検出方法の第2の態様は、試料を前記本発明の安定化試薬に懸濁し、微生物を検出することを特徴とする。
【0013】
本発明の微生物の検出方法の第3の態様は、試料を前記本発明の前処理液で前処理した後、微生物を検出することを特徴とする。
【0014】
本発明の微生物の検出方法において、前記試料が、全血、血漿、血清、尿、髄液、精液、唾液、母乳、汗、粘液、体液、糞便、病変部組織及びその抽出液、膿、喀痰、鼻汁、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、又は微生物培養系試料であることが好ましい。
【0015】
本発明の試料の前処理用キットは、前記本発明の安定化試薬、及び試料の前処理剤を含むことを特徴とする。前記前処理剤が、蛋白質分解酵素であることが好ましい。
前記蛋白質分解酵素が、セミアルカリプロテアーゼ及びシステインプロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
前記システインプロテアーゼが、ブロメライン、パパイン、キモパパイン及びフィシンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の微生物の安定化試薬及び安定化方法によれば、非常に簡単な組成で微生物の安定化ができ、微生物を増殖させることなく、一定の菌数に抑えることができ、更に室温でも保存安定化効果を発揮するため、酵素反応への影響が極めて少なく、微生物の検出、特に微生物を検出するための試料の前処理に極めて有効である。また、本発明の微生物の安定化試薬は、複数の一般細菌における共通の安定化試薬として使用することができる。さらに、本発明の微生物の安定化試薬は、喀痰等の試料を輸送、検査等の目的で一時的な保管に有効である。
【0017】
本発明の試料の前処理液、前処理方法及び前処理用キットによれば、酵素活性を保ちつつ、微生物に影響を与えずに安定な状態で、簡便且つ迅速に試料を前処理することができる。本発明の微生物の検出方法によれば、微生物への影響が極めて少なく、微生物を安定な状態で、簡便且つ迅速に微生物を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0019】
本発明の微生物の安定化試薬は、トリスと塩化ナトリウムとを含有する緩衝液である。
安定化試薬中の塩化ナトリウムの濃度は、0.6%を超え1.2%未満であり、0.8%以上1.1%以下が好ましく、より好ましくは9%付近である。
安定化試薬中のトリス濃度は、10mM以上50mM未満であり、15mM以上30mM以下が好ましい。緩衝液のpHは7.0以上8.0未満である。pHを滴定するための酸は特に限定されないが、塩酸が好ましい。
【0020】
本発明の安定化試薬は、公知の微生物の保存安定化剤、例えば、グルコース、トレファロース、スクロース等の糖を含んでいても良い。
【0021】
微生物を本発明の安定化試薬に懸濁することにより微生物を安定化させることがでる。試料を前記安定化試薬に懸濁した後、微生物を検出することにより、試料中に存在する微生物を安定な状態で検出することができる。微生物の検出方法は特に限定されず、公知の方法を広く使用することができる。微生物の検出においては、微生物を直接検出してもよく、生体関連物質を検出することにより微生物を検出してもよい。
【0022】
本発明において、微生物としては、特に限定されないが、例えば、ヘルペスウイルス(HSV、CMV、ZVZ、EBV、HHVなど)、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト成人T細胞白血病ウイルス(HTLV)、肝炎ウイルス(HBV、HCV、HDV、HGV)、その他カゼ症候群、消化器疾患、中枢神経系疾患、呼吸器系疾患、出血熱等の様々な疾患の病因ウイルス等のウイルス、リケッチャ、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌群、緑膿菌、レジオネラ属、モラクセラ属、インフルエンザ細菌、クレブシエラ属、クラミジア、マイコプラズマ等の細菌、真菌等が挙げられる。
【0023】
本発明において、生体関連物質とは、核酸(DNA、RNA)、タンパク質、ペプチド等が挙げられる。生細胞からのDNA又はRNAの調製は、公知の方法、例えばDNAの抽出については、Blinらの方法(Blin et al., Nucleic Acids Res. 3: 2303 (1976))等により、また、RNAの抽出については、Favaloroらの方法(Favaloro et al.,Methods Enzymol.65: 718 (1980))等により行うことができる。また、rRNAにおいては、水酸化ナトリウム水溶液などで細胞を溶解した後、塩酸などで中和すればよい。また、それらの検出方法としては、PCR(Polymerase chain reaction)、ハイブリダイゼーション、PALSAR反応(例えば、特許第3267576号等参照。)、DNAチップ、プロテインチップ、抗原抗体反応等を用いて行うことができる。
【0024】
本発明において、試料とは特に限定されないが、生体試料または生体由来試料が好適であり、具体的には、全血、血漿、血清、尿、髄液、精液、唾液、母乳、汗、粘液等の体液や糞便、病変部組織及びその抽出液、膿、喀痰、鼻汁、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液及びウイルスをはじめとする微生物培養系試料等が挙げられる。
【0025】
本発明の安定化試薬は、試料中に存在する微生物の検出方法において、試料を処理する際の溶解液としても好適に用いられる。特に、試料を蛋白質分解酵素で前処理する際の溶解液として非常に有効である。
本発明の試料の前処理液は、試料中に存在する微生物を検出する際の試料の前処理液であり、前記安定化試薬に蛋白質分解酵素を有効成分として含有せしめたものである。前記蛋白質分解酵素としては特に限定されず、試料及び処理方法に応じて適宜選択すればよい。これら蛋白質分解酵素は1種、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
例えば、喀痰を試料として用いた均質化処理の場合、セミアルカリプロテアーゼ(例えば、スプタザイム(極東製薬工業(株)製)等)及びシステインプロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記システインプロテアーゼとしては、特に限定されないが植物由来のシステインプロテアーゼが好ましく、ブロメライン、パパイン、キモパパイン及びフィシンからなる群から選択される1種又は2種以上がより好ましく、ブロメラインが特に好ましい。これらシステインプロテアーゼは市販のものでもよく、公知の方法で得たものを用いてもよい。
前記ブロメラインとしては、Bromeliaceaeに属する植物由来のシステインプロテアーゼが用いられるが、パイナップル(Ananas comosus M.)由来のものがより好ましい。
【0027】
本発明において、被検試料を前記前処理液により前処理した後、微生物を培養し又は培養せずに、被検試料中に存在する微生物を検出することができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0029】
(実験例1)
0.9%(150mM)塩化ナトリウムを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0、7.5又は8.0)を調製し、懸濁液とした。この懸濁液にヘモフィラス・インフルエンザ細菌(Haemophilus influenzae)を103CFU/mLとなるように加え、室温(26℃)において0時間と二時間で該細菌懸濁液中の生菌数を測定した。尚、生菌数の測定方法は、前記細菌懸濁液を、チョコレート寒天培地EX(日水製薬(株)製)各プレートに100μLずつ3枚播き、37℃で18時間培養した後、プレート3枚についてコロニー数を測定し、3枚の平均値を生菌数とした。
また、対照として、0.9%塩化ナトリウム水溶液を懸濁液として用いて同様に生菌数を測定した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示した如く、塩化ナトリウムを含有するトリス緩衝液のpHを7.0以上8.0未満にすることで、生菌数の減少が抑えられることが明らかとなった。
【0032】
(実験例2)
0.9%塩化ナトリウムを含む、表2に示す各濃度のトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を調製し、懸濁液とした。この懸濁液にヘモフィラス・インフルエンザ細菌(Haemophilus influenzae)を103CFU/mLとなるように加え、室温(26℃)において0時間と二時間で生菌数を比較した。生菌数の測定方法は実験例1と同様である。また、対照として、0.9%塩化ナトリウム水溶液を懸濁液として用いて同様に生菌数を測定した。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2に示した如く、塩化ナトリウムを含有するトリス緩衝液のトリス濃度を10mM以上50mM未満にすることにより、生菌数の減少が抑えられ、特に15〜25mM付近にすることにより、大幅に生菌数の減少が抑えられることが明らかとなった。
【0035】
(実験例3)
表3に示す各濃度の塩化ナトリウム溶液を含む、25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を調製し、懸濁液とした。この懸濁液にヘモフィラス・インフルエンザ細菌(Haemophilus influenzae)を103CFU/mLとなるように加え、室温(26℃)において0時間と二時間で生菌数を比較した。生菌数の測定方法は実験例1と同様である。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
表3に示した如く、0.6%を超え1.2未満の塩化ナトリウムを含む、トリス緩衝液を用いることにより生菌数の減少が抑えられ、特に塩化ナトリウム濃度を0.9%付近にすることにより、大幅に生菌数の減少が抑えられることが明らかとなった。
【0038】
(実施例1及び比較例1)
0.9%塩化ナトリウム及び0.1mM EDTAを含む25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を調製し、懸濁液とした。この懸濁液にヘモフィラス・インフルエンザ (Haemophilus influenzae)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)を103CFU/mLとなるように加え、室温(26℃)において0時間と二時間で生菌数を比較した。生菌数の測定方法は実験例1と同様である。
また、対照(比較例1)として、0.9%塩化ナトリウム水溶液を懸濁液として用いて同様に生菌数を測定した。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
表4に示した如く、本発明によれば、種々の細菌に対して、従来の生理食塩水に比べ、大幅に生菌数の減少が抑えられることが明らかとなった。
【0041】
(実施例2)
0.25%(2000U/mL)ブロメラインF(Bromelain F,天野エンザイム社製)を、溶解液[25mMトリス緩衝液(pH7.0)、0.9%塩化ナトリウム、0.1mM エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)]に溶解し前処理液とした。この前処理液を、膿性痰(P2及びP3、Miller & Jonesの分類)に対して20倍量加えて、室温(26℃)で反応させた。その際、10分おきにボルテックスで懸濁し、溶解時間を測定した。尚、喀痰の溶解時間は、喀痰がほぼ完全に溶液化の状態になるまでに要した反応時間とした。その結果を表5に示す。
【0042】
【表5】

【0043】
(実施例3)
実施例2と同様に調製した前処理液にヘモフィラス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、又はクレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)を103CFU/mLとなるように加え、室温(26℃)において0時間と二時間で生菌数を比較した。生菌数の測定方法は実験例1と同様である。結果を表6に示す。
【0044】
【表6】

【0045】
表5及び6に示した如く、本発明の前処理液を用いることで、ブロメラインFの喀痰溶解における活性を損なうことなく、かつ、種々の細菌に対して、大幅に生菌数の減少が抑えられることが明らかとなった。
【0046】
(実施例4)
スプタザイム(極東製薬工業(株)製、セミアルカリプロテアーゼ)を、溶解液[25mMトリス緩衝液(pH7.0)、0.9%塩化ナトリウム、0.1mM エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)]に溶解し前処理液とした。この前処理液を、膿性痰(P3、Miller & Jonesの分類)に対して20倍量加えて、室温(26℃)で反応させた。その際、10分おきにボルテックスで懸濁し、溶解時間を測定した。尚、喀痰の溶解時間は、喀痰がほぼ完全に溶液化の状態になるまでに要した反応時間とした。その結果を表7に示す。
【0047】
(比較例2)
スプタザイム(極東製薬工業(株)製、セミアルカリプロテアーゼ)をキットの溶解試薬であるリン酸バッファーに溶解し、前処理液とした。この前処理液を用いた以外は、実施例4と同様に実験を行った。結果を表7に示す。
【0048】
【表7】

【0049】
表7に示した如く、セミアルカリプロテアーゼに本発明の安定化試薬を用いても、喀痰に対する溶解効果は、同等以上であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリスと塩化ナトリウムとを含有する緩衝液であって、塩化ナトリウム濃度が0.6%を超え1.2%未満、トリス濃度が10mM以上50mM未満、pHが7.0以上8.0未満であることを特徴とする微生物の安定化試薬。
【請求項2】
前記トリス濃度が15mM以上30mM以下であることを特徴とする請求項1記載の微生物の安定化試薬。
【請求項3】
前記塩化ナトリウム濃度が、0.8%以上1.1%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の微生物の安定化試薬。
【請求項4】
前記微生物が、ウイルス、リケッチャ、細菌又は真菌であることを特徴とする1〜3のいずれか1項記載の微生物の安定化試薬。
【請求項5】
微生物を、請求項1〜4のいずれか1項記載の安定化試薬に懸濁することを特徴とする微生物の安定化方法。
【請求項6】
試料中に存在する微生物を検出する際の試料の前処理液であって、該前処理液が、蛋白質分解酵素を有効成分として含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の安定化試薬からなることを特徴とする試料の前処理液。
【請求項7】
前記蛋白質分解酵素が、セミアルカリプロテアーゼ及びシステインプロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載の試料の前処理液。
【請求項8】
前記システインプロテアーゼが、ブロメライン、パパイン、キモパパイン及びフィシンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の試料の前処理液。
【請求項9】
前記試料が全血、血漿、血清、尿、髄液、精液、唾液、母乳、汗、粘液、体液、糞便、病変部組織及びその抽出液、膿、喀痰、鼻汁、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、又は微生物培養系試料であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の試料の前処理液。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項記載の前処理液を用いることを特徴とする試料の前処理方法。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項記載の安定化試薬を用いることを特徴とする微生物の検出方法。
【請求項12】
試料を請求項1〜4のいずれか1項記載の安定化試薬に懸濁し、微生物を検出することを特徴とする微生物の検出方法。
【請求項13】
試料を請求項6〜9のいずれか1項記載の前処理液で前処理した後、微生物を検出することを特徴とする微生物の検出方法。
【請求項14】
前記試料が、全血、血漿、血清、尿、髄液、精液、唾液、母乳、汗、粘液、体液、糞便、病変部組織及びその抽出液、膿、喀痰、鼻汁、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、又は微生物培養系試料であることを特徴とする請求項12又は13記載の微生物の検出方法。
【請求項15】
請求項1〜4のいずれか1項記載の安定化試薬、及び試料の前処理剤を含むことを特徴とする試料の前処理用キット。
【請求項16】
前記前処理剤が、蛋白質分解酵素であることを特徴とする請求項15記載の前処理用キット。
【請求項17】
前記蛋白質分解酵素が、セミアルカリプロテアーゼ及びシステインプロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項16記載の試料の前処理用キット。
【請求項18】
前記システインプロテアーゼが、ブロメライン、パパイン、キモパパイン及びフィシンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項17記載の試料の前処理用キット。

【公開番号】特開2006−288257(P2006−288257A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112299(P2005−112299)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】