説明

微生物の検出および定量

適切な染料を本発明において使用し、微生物汚染の存在を、これら染料を水溶液の形で表面上にスプレーすることによって指示する。また、該染料溶液を乾燥させ、それによって水溶液の乾燥残留物を生成させ得る。これらの染料は、環境の極性の変化に応答して色を変えるものと信じている。水は極性溶媒であり、殆どの細菌類は非極性物質から構成されるので、細菌類の存在は、環境の極性を変化させ、肉眼で見ることのできる変化を誘発させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、酵母、かびおよびウィルスのような微生物の検出のための方法および製品に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活においては、我々は微生物汚染表面に無意識に暴露されており、病気に至り得る。研究によれば、公衆電話、ドアハンドル、病院待合室および小児介護施設における玩具類、手を乾燥させる熱風ドライヤー、台所において使用するタオルおよびスポンジ類、日常の患者介護中の病院スタッフの手、並びに生肉と野菜類を混合する食物調理表面と刃物からの交差汚染のような特定の微生物汚染“ホットスポット”が証明されている。
米国各地における最近の細菌汚染発生は、それだけで、小児、年配者および他の発病者の死をもたらしている。また、食物の微生物汚染も世界中の大きな問題である。サルモネラ、大腸菌および他の食物媒介細菌は、毎年、無数の疾病の原因となっている。急性症状としては、嘔気、嘔吐、腹部けいれん、下痢、発熱および頭痛がある。慢性帰結は、急性症状の後に続発する。表面の交差汚染は、精肉、魚類および鷄肉からの野菜類のような非加熱食物への細菌移行の原因となり得るので、食物調理表面上で細菌の存在を容易に検出し得ることは、大きな利益を有するであろう。
同様に、食品加工業における有害な微生物レベルの検出も、家族および消費者全体の健康を維持するのに極めて重要である。食品加工業界においては、細菌モニタリングは、臨界的である。精肉包装からチーズ生産に至る事実上全ての食品の加工は、食品供給の安全性を確保するための微生物レベルのモニタリングを含む。
微生物汚染によって引起される大惨事は、食品産業のみに限らない。最近の10年間で、“超強力細菌”の劇的な上昇、その発生源が病院および医療コミュニティーに存在するという問題が見受けられている。抗生物質の過使用並びに病院清浄化の不適切は、メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(MRSA)およびクロストジウム ディフィシル(Clostridium difficile)並びにバンコマイシン耐性の腸球菌および他のグラム陰性桿菌を生じさせている(Dancer、2004年)。最近のBBC報告は、MRSAが推定5000人の生命を毎年奪っていることに言及している。該論文は、“清浄化が依然として大多数の患者の懸念ごとであり、MRSAは増発しつつある問題である”と引続き言明している。病院内の多くの患者が既に免疫低下性であり、従って、より大きな感染リスクにあることを考えると、病院環境内の極悪な細菌による脅威は、さらに一層の脅威となる。
病院清浄化および院内感染予防の問題に関する報告および研究は、数多く存在する。
【0003】
同様に、麦角のようなかび類は、ライ麦のようなある種の穀物類において増殖することが知られており、リセルグ酸に類似した毒性アルカロイド類の産生によって潜在的に危険であり得る。黒色アスペルギルスおよび他のかび類は、アレルギー反応の原因となり得、さらに、喘息のような呼吸器症状を悪化させ得る胞子を産生することが知られている。黒色アスペルギルスは、湿った壁上または家庭もしくは商業ビルディングにおける空調装置内で増殖し始める場合に、とりわけ問題であり得る。
カンジダ アルビカンスのようなある種の酵母類は、もう1つの厄介な群の微生物である。カンジダ アルビカンスは、乳幼児のおむつかぶれ、小児および免疫低下性成人の口腔カンジダ症、および腟酵母感染症に関連する。また、酵母類は、身体の咽頭(pharageal)領域並びに胃腸管に感染し得る。
現行の細菌検出方法は、備品表面をサンプリングすることを含む。食品加工環境においては、備品は精肉カット装置であり得、一方、レストランのような食物調理環境または家庭においては、表面は、テーブル、まな板、冷蔵庫内面または作業表面であり得る。その後、サンプルを1夜インキュベートして培養物を増殖させる。この1夜増殖培養物は、サンプルが寒天プレート上で適切な温度および湿度にて繁殖して、細菌が肉眼で見えるのに十分に大きいコロニーを形成するまで繁殖し増殖するようにし得る。所定時間インキュベートし、細菌コロニーを成長させた後、寒天プレートサンプルを手で検査し、コロニー形成単位(CFU)を熟練技術者によって評価する。この方法は、幾分費用高であり、実質的な時間差を含む;汚染製品が輸送され或いは人々が存在する微生物に暴露される可能性のある時間差。
有害微生物の迅速検出を可能にする方法および製品が求められているのは明白である。
【発明の開示】
【0004】
当業者が直面している上記の困難に応えて、本発明者等は、移動相と、微生物の存在において目視検出可能な変化を受ける微生物感受性着色剤を含む指示組成物を開発した。該組成物は、表面に適用して微生物の存在を明らかにし得る。上記移動相は、消毒剤であり得る。上記着色剤は、微生物の存在において肉眼で見える色変化を提供する。上記移動相は液体またはゲルであり得、上記着色剤は染料であり得る。ある実施態様においては、上記着色剤は、微生物濃度に比例した速度で変色する。他の実施態様においては、存在する微生物の量は、変化を受ける着色剤の量に比例する。
適切な染料の例としては、メロシアニン染料、4-[2-N-置換-1,4-ヒドロピリジン-4-イリジン)エチリデン]シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン、レッドピラゾロン染料、アゾメチン染料、インドアニリン染料、ジアザメロシアニン染料、ライハルト(Reichardt's)染料を例とするような両性イオン染料等、およびこれらの混合物がある。とりわけ適性を有するのは、両性イオンが染料色原体を含む連続π電子系内に含有されている両性イオン性の染料である。微生物指示薬用にとりわけ有用であると思われるさらなる群の染料は、メロシアニン染料類である。
また、上記染料は、溶媒系または水系溶液として表面に適用し、乾燥せしめて適用染料溶液の乾燥残留物を残存させ得る。乾燥残留物は、微生物との接触時に変色し、それによって、ティッシュペーパー箱のような包装材上、手袋のような医療用小回り品上、および材料を使用する前に上記染料と一緒に形成させ得、その後、微生物汚染を指示する他の表面上において使用し得る。驚くべきことに、本発明者等は、これらの染料を表面に適用し、乾燥させた場合、コーティーングを形成させるのに使用した溶媒およびヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンおよび界面活性剤のような双方の添加剤の使用がコーティーングの微生物検出能力に有意の影響を有することを見出した。
ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンは、これを紙タオルまたは同様な拭取り材上にコーティーングした後、着色剤の輝度を増強するのに有効であることが判明している。理論によって拘束することは望まないが、本発明者等は、染料の色合が、シクロデキストリン誘導体の添加により、染料の結晶化を抑制することによって改良されるものと信じている。他の化学剤を拭取り材に添加して、上記染料を干渉することが判明している漂白剤の存在による偽陽性読取りの防止を助長することも可能である。
微生物指示性着色剤を組入れた側方流動装置も本発明の教示内に属する。これらの装置は、検出領域と対照領域を有する膜を有し、検出領域は細菌の存在に応答して変色し、対照領域はアッセイが適切に機能していることを指標する元の染料色のままである。
また、本明細書においては、微生物感受性着色剤を含有する溶液を表面に適用し、微生物の存在を指示する目視検出可能な変化を観察することによる表面上の微生物の検出方法も説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、細菌および他の微生物の検出に関し、本明細書における用語“微生物”の使用は、細菌類、酵母およびかびのような真菌類、およびウィルス類を包含するものと理解すべきである。
何千もの種々の種類の細菌が存在する。ある種はほんの僅かしか異ならず、高熟練者がそれら細菌を同定する。また、増殖習性および外観において大きく異なり、全く容易に同定される群も存在する。微小な差異にもかかわらず、殆どの細菌は、図1に例示するような5種類の基本的な細胞形状に従い分類し得る。図1の左から右の方に、形状は、球状即ち球菌、棒状即ち桿菌、らせん状即ちらせん菌、コンマ状即ちビブリオ菌、および糸状体である。
細菌類の異なる形状以外に、細菌の細胞配列は、双球菌、連鎖球菌、およびブドウ球菌と変化する(図2の左から右)。例えば、ある種の球菌は、対で常に組んでいる(双球菌)。他の球菌は、連鎖で配列している(連鎖球菌)。さらに他の球菌は、束になっている(ブドウ球菌)。双球菌は、肺炎を起すことが既知である。連鎖球菌は、多くの場合、“連鎖球菌性咽頭炎”に関連する。ブドウ球菌は、“ブドウ球菌感染症”およびあるタイプの食中毒におけるその役割故に、多くの人々にとって馴染みのあるものある。
また、細菌は、サイズ的に幾分変化するが、細菌当り平均約1.016μm(1/25,000インチ)である。換言すれば、並べた25,000個の細菌は、ほんの2.54cm(1インチ)の長さを占めるのみであろう。16.39立方センチ(1立方インチ)は、9兆個の平均サイズ細菌(地球上の1人当り約3,000個の細菌)を保持するのに十分な大きさである。
【0006】
近代の分子生物学概念に基づく細菌分類の理論的根拠については多くの議論が存在しているけれども、研究中の微生物学者においては、分類の迅速な手段をグラム(Gram)反応(細菌を分類するための染色法)および形態学によっている。
グラム陽性菌は、アルコールまたはアセトンの存在下にクリスタルバイオレット染色を保持する。グラム陽性菌には、重要な属のアクチノミセス(Actinomyces)、バチルス(Bacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、セルロモナス(Cellulomonas)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウムk (Corynebacteriumk)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ミコバクテリウム(Mycobacterium)、ノカルジア(Nocardia)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)およびストレプトミセス(Streptomyces)がある。ある種のグラム陽性菌、とりわけ属コリネバクテリウム、ミコバクテリウムおよびノカルジアの菌類は、酸の存在下においても染料を保持する。これらは、抗酸菌として知られている。
グラム陰性菌は、アルコールまたはアセトンの存在下にクリスタルバイオレット染色を保持しない。グラム陰性菌には、重要な属のアセトバクター(Acetobacter)、アクロバクテリウム(Agrobacterium)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、ボルデテラ(Bordetella)、ブルセラ(Brucella)、カンピロバクター(Campylobacter)、カウロバクター(Caulobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、エシェリキア(Escherichia)、ヘリコバクテリウム(Helicobacterium)、レジオネラ(Legionella)、ネッセリア(Nesseria)、ニトロバクト(Nitrobact)、パスツレラ(Pasteurella)、シュードモナス(Pseudomonas)、リゾビウム(Rhizobium)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、チオバチルス(Thiobacilus)、ベイヨネラ(Veiellonealla)、ビブリオ(Vibrio)、キサントモナス(Xanthomonas)およびエルシニア(Yersinia)がある。
【0007】
細菌膜は、リポ糖類の脂質二分子層から一般になっている。グラム陰性菌とグラム陽性菌の細胞膜、即ち、細胞壁間には相違がある。グラム陰性菌の細胞壁は、明確な層(複数)を有する薄めの構造である。むしろ典型的な3層構造を有する組成物中の細胞質膜に近い外側層が存在する。
グラム陰性菌細胞壁の主要成分は、リポ多糖類である。さらに、リン脂質、タンパク質、リポタンパク質および少量のペプチドグルカンが存在する。リポ多糖類は、繰返し単位の多糖類成分が結合しているコア領域からなっている。殆どのグラム陰性菌の細胞壁成分は、グラム陰性感染の発熱作用に関連する内毒素活性に関連している。側鎖上には、これら生物体の菌体抗原特異性の主成分を担持している。種々の糖類の成分および配列の双方に関連するこれらの側鎖の化学組成は、菌体またはO抗原決定基の性質を決定し、これらの決定基は、多くのグラム陰性種を血清学的に分類するほどの重要な手段である。多くの場合、強力な血清学的交差反応を示す全く異なる種に属するある種の生物体についての理由が、一般に約30の繰返し単位を有するそれらのリポ多糖類側鎖の1部として化学的に同様な炭水化物成分を有することに基づいていることが証明されている。
グラム陽性菌は、その細胞壁構造の1部としてペプチドグリカン並びに多糖類および/またはテイコ酸を有することに特徴を有する。ムレインとも称するペプチドグリカンは、単鎖ペプチドによって架橋するグリカンストランドのヘテロポリマーである。
ムレインの主成分は、ベータ-1,4-結合性であるN-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸との交互残基の連鎖からなる。ムラミン酸は、細菌細胞壁に関連する独特な物質である。これらの連鎖は、L-およびD-アミノ酸の双方からなる短ペプチド鎖によって架橋する。グラム陰性菌においては、ペプチドグリカンは構造的に単純で殆どの属に亘って比較的均一であるけれども、グラム陽性菌においては、構造および組成において極めて大きな変化が存在する。一般に、ペプチドグリカンは、多層型である。また、ある種の群においては幾分小さい組成の変化が記録されている。即ち、ミコバクテリウムおよびノカルジアにおいては、ムラミン酸のN-アセチル成分は、酸化形のN-グリコリルにより置換されている。架橋性および幹ポリペプチド双方のアミノ酸組成は、種々の基によって広範に変化し得る。これらの差異は、これらの生物体の分類法の根拠をなしている。
【0008】
かびおよび酵母類は、真菌分野に属する生物体である。多くのかび類および真菌類は人類にとって有用であるけれども、幾つかは、病原性であり、中毒または死をもたらし得る有害なマイコトキシンを放出する。酵母類も感染症をもたらし得、最も広く確実に知られているのは酵母膣炎である。
接合菌類は、黒パンかびおよび植物および動物との共生関係を示す他のかび類を含む1群の真菌類である。これらのかび類は、融合し、強靱な“接合胞子”を形成し得る。子嚢菌類は、酵母類、饂飩粉病、黒パンかびおよび青緑色かび、並びにオランダニレ病、リンゴ黒星病および麦角のような疾病の原因となる幾つかの種を含む1群の真菌類である。これら真菌類の寿命サイクルは、有性および無性生殖を併せ持ち、その菌糸は、核および細胞質の通過を可能にする多孔質壁中に細分される。不完全菌類は、上述の群または担子菌類(殆どのキノコ類、多孔菌、およびホコリタケ菌を含む)には容易に当てはまらない雑多な真菌収集物を含むもう1つの群の真菌類である。これらの不完全菌類は、チーズまたはペニシリンを産生する種を含むが、水虫または白癬をもたらす1員のような病原性メンバーも含む。
【0009】
生物医学領域における染料の使用は、近年において、研究的興味および技術的重要性の点で著しい成長が見受けられる。染料は、例えば、分析生化学、医療診断の多くの領域において、さらには、疾病の治療および予防においてさえも使用されている。染料の色合は、分光検出における単純な有機反応(米国特許第5,036,000号)および体液分析物の測定(ヨーロッパ特許第0 250 700号)から腫瘍検出のための高画質映像技術(Motohashi, Med. Res. Rev., 11, 239, 1991)までのある種の用途および範囲においては不可欠である。また、染料は、疾病の治療において臨床的にも使用し得る(米国特許第5,468,469号)。光線力学療法(Sedlacek,"The change in research for the therapy of tumors", Chimia, 45, 52, 1991)は、皮膚、頭部、頚部、肺および食道の悪性腫瘍のようなある種の癌の治療に成功裏に使用されている。他の治療用途は、染料の抗ウィルスおよび殺菌特性に関連する。また、染料は、組織学、蛍光生体標識化および蛍光生体プローブの重要な領域における重要な薬剤である。関与する方法は、高度に複雑であり、染色、洗浄および交差染色を必要とする(Blum, Photodynamic action and disease caused by light" Reinhold, New York, 3, 1941)。
本発明者等は、微生物指示スプレーおよび微生物の迅速定量法を特定の着色剤を使用してなし得ることを見出した。この方法の潜在的用途としては、限定するものではないが、調理台、手、医療領域、浴室、ベッドレール、医療備品、手術用テーブル、道具類、台所、食物、食物調理表面、食品加工装置、ドアノブ、電話およびコンピュータキーボードのような固形表面上の微生物の検出がある。この着色染料コーティーング、スプレーまたは溶液は、有害なレベルの細菌および他の微生物に対して感受性であり、色変化が、表面の清浄化および/または脱汚染に有効であったかどうかを検証する目視指示手段として機能する。
指示技術における要件は、使用する染料がグラム陽性菌およびグラム陰性菌株の双方に対して感受性でなければならないので、かなり厳格である。染料は、微生物または微生物代謝物と迅速に相互作用しなければならない。最高の汎用性のためには、染料は、酵母およびかびのような他の微生物に対しても感受性でなければならない。
【0010】
先述したように、染料は、細胞および細菌双方の同定のための染色として、先般から使用されている。染色溶液は、細胞または細菌と反応し、或いは細胞または細菌に選択的に保持されて、細胞または細菌と背景または存在する他の成分間のコントラストを改善することによって同定を助長する(Johnson、1995年)。通常、染色は、表面に適用し、その後、過剰物を振盪または洗浄のいずれかによって除去して微生物の存在を強調しなければならない。本発明者等は、微生物への暴露時に或いは微生物との相互作用時に色変化する着色剤についての以前の報告を何ら見出せていない。
ソルバトクロミズム(solvatochromism)は、観察する色変化に寄与し得るが、本発明者等は、1つの特定の理論によって拘束ことを望まない。ソルバトクロミック染料は、溶媒極性および/または水素結合性向のような分子環境が変化したとき変色を被る。染料は、例えば、水のような極性環境においては青色であり得るが、脂質リッチ溶液のような非極性環境においては黄色または赤色であり得る。そのような“適切な染料”によって発生した色は、下記でさらに十分に説明するような染料の基底状態と励起状態間の分子極性差に依存している。ライハルト染料を、研究用のモデル染料として選択した。
【0011】
本発明者等は、ある種のソルバトクロミック染料がある種の細胞成分(細胞膜、細胞質等のような)と細胞外の極性間の極性の違いに応答することによって微生物を検出するのに有用であるかどうか不思議であった。本発明者等は、微生物を紙タオルのような基体上にコーティーングしたある種のこれら染料と接触させたとき、変色が実際に観察されることを見出した(変色があったばかりでなく、殆どの場合、染料は細菌との接触領域において脱色されていた)。本発明者等の驚きに対し、さらなる研究は、そのメカニズムがソルバトクロミズムに全く起因していない可能性があることを示唆していた。事実、本発明者等は、その驚きに対して、本発明者等が下記を見出したことをここで報告する:
i) 細菌または他の微生物によって脱色した染料の量は、染料に暴露させた微生物の濃度に相関しており、該方法が定性と対比して定量的であったことを示唆し得る;
ii) グラム陽性菌およびグラム陰性菌、酵母、およびかびを含む範囲の微生物を検出し得ていた;
iii) 試験した染料は、乾燥フィルムコーティーングとしてまたは細菌を含有する液体へ添加する溶液として、或いはスプレー式検出器系として使用し得ていた;
iv) 例えば、紙タオルまたはエナメル表面上での乾燥コーティーングとして使用したとき、そのような染料を適用する溶媒の特性が検出用染料の性能(脱色時間、脱色領域と非脱色領域間のコントラスト、および感度)に有意に影響していた;
v) 例えば、紙タオル上での乾燥コーティーングとして使用したとき、染料を含むコーティーングに含ませた添加剤も検出用染料の性能(脱色時間、脱色領域と非脱色領域間のコントラスト、および感度)に影響し得る。例えば、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンは、検出用染料の性能を増強する;
vi) これらの染料の脱色を誘発させた細菌は、強塩基を使用して無効にし得た。
【0012】
ソルバトクロミズムは観察した色変化に寄与し得ていたけれども、これらの観察も他のもっともらしいメカニズムと一致し得る。例えば、これらの観察は、あるタイプの酸-塩基相互作用、または細菌の存在により生じる染料の色変化に寄与し得るあるタイプのプロトン供与反応とも一致し得る。また、本発明者等は、レドックスタイプの反応が、ある種の染料をある範囲の微生物に暴露させたとき、上記知覚色変化に寄与している可能性があることも全く除外しない。また、他の要因も微生物の存在下のある種の染料によって観察された色変化に寄与し得る、例えば、細胞膜の1部と色変化をもたらすある種の染料との相互作用が存在し得る。さらにもう1つの可能性は、細菌細胞壁上の高度に組織化された酸成分が、ある種の指示薬染料をプロトン化して色の喪失をもたらし得る可能性を有することである。
本発明者等は、驚くべき且つまだ説明されていないような現象を見出し、この現象を使用して種々の微生物の検出および定量に有用な方法を開発した。
一般に、色変化の目視検出に関しては、“色”は、人の目の機構が視野内の対象物から反射したまたは発出された種々の波長の光の存在または不存在を検知するときに生じる1つのタイプの感覚である。目に入る光は、可視スペクトルの特定の領域に対して感受性である3つのタイプの網膜垂体細胞によるスペクトル分析を受ける。これらの細胞からの刺激は、引き続いて、網膜ニューロン、視神経ニューロンおよび視覚野により、色感覚を体験するように処理される。色に影響を与える幾つかのメカニズム(例えば、吸収、放出、蛍光、リン光、屈折、回折等)が存在するけれども、適切な焦点は、吸収性色に限定される。換言すれば、本発明は、その色によってある波長の光を吸収する染料に関する。
【0013】
人の目が機能する有様故に、認識された色は、通常、対象物に吸収される光の波長に関連する色の補完である。例えば、白色光内で見たときに赤色のように見える対象物は、実際には、490〜500 nm波長範囲の青味がかった光を選択的に吸収している。同様に、白色光内で黄色に見える対象物は、実際には、435〜480 nm範囲の青色光を吸収している。
分子による可視光の吸収は、分子内の電子遷移に関連し、励起状態の発生をもたらす。分子の基底状態と適切な励起状態間のエネルギー差は、下記のプランク(Planck)関係式に従って吸収された光の波長を決定する:
E = hν
(式中、E = エネルギー、h = プランク定数であり;νは、吸収された光の光子の周波数であり、波長λおよび光速度cに、ν = c/λによって関連する)。
状態のダイアグラムを使用して電子遷移を下記のように図式的に示し得る:

明らかに、吸収された光子のエネルギーは、光子の波長に反比例している。即ち、青色光(435〜480 nm)の光子は、黄色光(580〜595 nm)よりも高いエネルギーを有する。従って、溶液中または白色光下に見たときの対象物上の染料の色は、染料分子の基底状態と最初に可能であった励起状態間の遷移エネルギーによって決定される。
【0014】
染料の光吸収部分は、通常、染料の色原体として知られている。色原体は、接合系に結合している発色団を含む。発色団は、主として染料の色を生じさせる基、例えば、アゾ染料の場合におけるようなアゾ基、カロテンの場合におけるようなポリエン基、アントラキノンおよびメロシアニン染料におけるようなカルボニル基である。多くの他の発色団が存在する。助色団は、接合色原体上で作用することによって染料の色合および強度に影響を与える。助色団は、色原体に接合させてもさせなくてもよい。例えば、アゾ基(発色団)に、例えば、ベンゼン環により接合させたアミノ基は、アミノアゾ色原体を形成するであろう。接合アミノ助色団は、アゾ基の吸収バンドをより長い波長にシフトさせ、吸収バンドの強度を増大させる。しかしながら、アミノアゾ色原体へのスルホン酸基の賢明な置換は接合しないが、電子求引効果により、吸収のより長い波長へのシフトが生じる。
励起状態よりも極性である基底状態を有する染料の例は、下記に示すようなメロシアニン染料1である。電荷分離左側カノニカル1は、基底状態への主要誘因であり、一方、右側のカノニカル1’は、最初の励起状態への主要誘因である。
【化1】

インジゴ2は、下記に示すように、励起状態よりも有意に低い極性である基底状態を有する染料の例である。左側のカノニカル形2は、染料の基底状態への主要誘因であり、一方、右側のカノニカル2’は、励起状態への主要誘因である。
【化2】

【0015】
本発明の実施において適する染料は、上述した染料類、並びにライハルト染料、メロシアニン染料、形式正および負電荷が連続π電子系内に含有されている両性イオン染料、4-[2-N-置換-1,4-ヒドロピリジン-4-イリジン)エチリデン]シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン、レッドピラゾロン染料、アゾメチン染料、インドアニリン染料、ジアザメロシアニン染料、およびこれらの混合物がある。メロシアニン染料は、"Colour and Constitution of Organic Molecules" Academic Press (London) 1976に説明されているようなGriffithsの供与体-単純受容体色原体分類に属し、カルボニル基が電子受容体成分として作用する。電子受容体は、電子供与基、例えば、電子を供与し得るヒドロキシルまたはアミノ基に接合する。メロシアニン染料は、下記の構造3を含む比較的広い群の染料であり、複素環系に含有されている窒素原子が供与体として機能する。nは、0を含む任意の整数値をとり得る。メロシアニン染料は、電荷分離(両性イオン性)共鳴形を有する。
【化3】

ビニルアロガース(vinylalogous)アミドのような非環式メロシアニン染料も知られている。
【0016】
メロシアニン染料は、ハロゲン化銀を写真フィルムにおいて使用するある波長の光に対して増感させる能力について研究されている。多くのメロシアニン染料の構造が知られている。以下の構造4〜14は、メロシアニン染料の幾つかの非限定的な例を示す。これらの染料の各々において、電荷分離共鳴構造が示され得ることに留意されたい。文献は、電荷分離(両性イオン性)形が染料の基底状態に有意に寄与することを示唆している。
【化4】



【0017】
【化5】

(式中、Rは、メチル、アルキル、アリール、フェニルであり得る)。
【0018】
両性イオン色原体
両性イオン形を永久的に有するある種の染料を調製し得る。即ち、これらの染料は、π電子系と関連した永久電荷を有し、該色原体の中性共鳴構造は示し得ない。そのような染料としては、下記の一般構造16に従う下記のライハルト染料15がある。
【化6】

さらなる非限定的な構造17〜25としては、下記の一般構造に従う下記のものがあり得る:
【化7】

(式中、Xは、酸素、炭素、窒素、イオウであり得る)


















【0019】
【化8】
















【0020】
【化9】

【0021】
染料の量は、微生物との接触時に色の変化を可能にしこの変化を肉眼で検出し得るに十分でなければならず、従って、染料の感度に依存する。十分であることが判明している量は、乾燥基準で、一般に0.01〜10質量%、より望ましくは0.05〜5質量%、さらにより望ましくは0.1〜3質量%である。色変化は、微生物の濃度およびタイプに依存する形で全く急速に生じる。
前記組成物は、上述したような微生物感受性着色剤と移動相を含む。用語“移動相”は、着色剤の担体として使用し得る液体および気体類を含む。アセトニトリル、イソプロパノール、およびキシレン類の混合物が適切な担体であることは判明しているが、任意の有効な担体を使用し得る。また、移動相は、さらに、消毒剤または殺菌剤であり得る。
着色剤染料は、表面上にスプレーするかまたは表面上で拭き取って微生物の存在を指示し得る液体の形であり得る。染料を含有する液体を表面に適用し、適用した液体を乾燥せしめて、後の時点で微生物による汚染に暴露させ得る染料の乾燥残留物を形成させることもできる。微生物への暴露時に、乾燥残留物は、変色して、微生物の存在を指示し得る。溶液適用染料の乾燥残留物を使用するそのような指示方法は、例えば、ティッシュペーパー箱のような包装材、ステッカー、紙、ティッシュ、手術用手袋のような医療用小回り品、手術用着衣およびドレープ、顔マスク、ブッファン帽のようなヘッドカバー、手術帽および頭巾、検査および手術用手袋、靴被覆材のような履物、ブーツカバーおよびスリッパ類、創傷包帯、包帯、滅菌ラップ類、ワイパー類、実験用白衣のような衣料品、カバーオール類、エプロンおよびジャケット類、患者寝具類、ストレッチャーおよび新生児用ベッドシーツ、食物調理ラップ、食器用スポンジ、布巾、ドアハンドル、電話、コンピュータキーボード、コンピュータマウス、ペン類、鉛筆類、メモ用紙、トイレットハンドル、創傷包帯、包帯、および玩具類(例えば、病院待合室、デイケア施設内の)のような固形表面上で使用するのに有用であり得る。
【0022】
従って、ソルバトクロミック染料をコーティーングし得る基体としては、拭取り材、並びに上述したような細菌に暴露し得る他の物品があり得る。また、ソルバトクロミック染料も使用するローション類またはクリームに含ませて手を微生物汚染についてチェックし得る。該染料をスポンジまたは食器タオルに含ませて汚染について注意を促し得る。
着色剤をコーティーングする拭取り材として使用するのに適する基体としては、フィルム類、織布または不織布、ティッシュ類のようなセルロース質基体、紙タオルおよび同時形成材料、エアレイド(airlaid)材料、梳毛つなぎウェブ(bonded-carded web)類等のような、拭取り材類において伝統的に使用される任意の基体がある。基体の包括的な例は、いずれもKimberly-Clark Corporation社に譲渡されている米国特許第4,775,582号、第4,853,281号、第4,833,003号および第4,511,488号において見出し得る。
不織布は、スパンボンディング、メルトブローイング、エアレイイング、結合法および梳毛法等のような方法により製造し得る。不織布は、限定するものではないが、ポリエステル、ナイロンおよびポリオレフィン類のような熱可塑性樹脂から製造し得る。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等、およびこれらの混合物がある。
【0023】
“スパンボンド繊維”は、溶融熱可塑性材料を、スピナレットの複数の微細な、通常は円形毛管を通してフィラメントとして押出し、その後、押出したフィラメントの直径を、例えば、Appel等に付与された米国特許第4,340,563号、Dorschner等に付与された米国特許第3,692,618号、Matsuki等に付与された米国特許第3,802,817号、Kinneyに付与された米国特許第3,338,992号および米国特許第3,341,394号、Hartmanに付与された米国特許第3,502,763号およびDobo等に付与された米国特許第3,542,615号によるようにして、急速に低下させることによって形成された小直径繊維である。スパンボンド繊維は、収集表面に付着させたときに一般に粘着性ではない。スパンボンド繊維は、一般に連続性であり、7ミクロンよりも大きい、より望ましくは、約10〜20ミクロンの平均直径(少なくとも10本のサンプルからの)を有する。
“メルトブローン繊維”は、溶融熱可塑性材料を、複数の微細な、通常は円形のダイ毛管を通して、収束用の高速の通常は高温ガス(例えば、空気)流中に溶融スレッドまたはフィラメントとして押出し、このガス流が溶融熱可塑性材料のフィラメントを減衰させてその直径を低下させる(マイクロファイバー直径までであり得る)ことによって形成された繊維を意味する。その後、メルトブローン繊維は、上記高速ガス流に担持させて収集表面上に付着させ、ランダムに分配されたメルトブローン繊維のウェブを形成させる。そのような方法は、例えば、Butin等に付与された米国特許第3,849,241号に開示されている。メルトブローン繊維は、連続または不連続であり得、一般に平均直径で10ミクロンより小さく、収集表面に付着させたときに一般に粘着性であるマイクロファイバーである。
【0024】
本明細書において使用するとき、用語“同時形成(coform)”とは、少なくとも1個のメルトブローンダイヘッドを、他の材料を形成中のウェブに加えるシュート近くに配置させている方法を意味する。そのような他の材料は、例えば、パルプ、超吸収性粒子、天然ポリマー類(例えば、レーヨンもしくは綿繊維、または他のセルロース材料)および/または合成ポリマー類(例えば、ポリプロピレンまたはポリエステル)の繊維であり得、繊維はステープル長であり得る。同時形成法は、一般譲渡されたLauに付与された米国特許第4,818,464号およびAnderson等に付与された米国特許第4,100,324号に開示されている。同時形成法によって製造したウェブ類は、一般に、同時形成材料と称する。
梳毛つなぎウェブはステープル繊維から製造し、ステープル繊維を梳毛(combing)または梳綿(carding)装置に送り、この装置により、ステープル繊維をバラバラにして機械方向に整列させて一般に機械方向に配向した繊維不織布ウェブを形成させる。一旦ウェブが形成されると、その後、ウェブを、粉末接合法、パターン接合法、通気接合法および超音波接合法のような1以上の幾つかの方法によって接合させる。
エアレイイング(airlaying)法においては、約3〜約52ミリメートル(mm)範囲の典型的な長さを有する小繊維のバンドルを分離し、空気供給物中に取込ませ、その後、形成用スクリーン上に、通常は真空供給の助けにより付着させる。その後、ランダムに付着した繊維を互いに接合させる。エアレイドを教示する例はとしては、Laursen等に付与されScan Web of North America社に譲渡された米国特許第4,640,810号に記載されているようなDanWeb法、Kroyer等に付与された米国特許第4,494,278号およびSoerensenに付与されNiro Separation a/s社に譲渡された米国特許第5,527,171号に記載されているようなKroyer法、Appel等に付与されKimberly-Clark Corporation社に譲渡された米国特許第4,375,448号の方法、または同様な方法がある。
【0025】
本発明者等は、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液、塩素および重硫酸ナトリウムのような表面を清浄化するのに使用する漂白剤がソルバトクロミック染料に場合によっては負の影響を与え、細菌が存在しない場合でさえも色変化を生じ得ることを見出した。従って、本発明のもう1つの局面は、拭取り材中に漂白剤検出着色剤をソルバトクロミック染料と一緒に含む。指示薬は、例えば、2,2',5,5'-テトラメチルベンジジンであり得、該化合物は、通常無色であり、塩素または次亜塩素酸ナトリウムに暴露させたときに赤色に変る。また、指示薬は、塩素または次亜塩素酸塩の存在下において黒色に変る澱粉とヨウ素の混合物であり得る。さらにもう1つの指示薬のフクシンは、メタ重亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸塩の検出において有用であり得る。フクシンは、ピンク色であり、亜硫酸塩に暴露させたとき無色に変化する。この方法において、拭取り材のある領域を細菌に対して感受性として、他の領域を漂白剤および防腐剤に対して感受性として選定し、活性漂白剤を含有する表面が、使用者が細菌汚染を漂白剤と識別するのを可能にする色変化の組合せを示すようにし得る。漂白剤指示薬は、拭取り材上では隠蔽された単語“BLEACH”を綴るようなパターンでプリンティングして、拭取り材を漂白剤に通した場合に、単語“BLEACH”が、漂白剤がソルバトクロミック染料に対して起し得る任意の他の色変化と一緒に見ることができるようにし得る。漂白剤指示薬の量は、肉眼で検出し得る色変化を生じるに十分な量のみを必要とし、ソルバトクロミック染料と同じ範囲内である。
また、本発明者等は、例えば、a) 細菌を検出するソルバトクロミック染料、b) テトラメチルベンジジンのような塩素/次亜塩素酸塩検出材物質、c) 澱粉とヨウ化カリウムとの混合物のような酸化剤検出剤、d) フクシンのような重硫酸塩指示薬、e) ニトリル検出試薬の小寄集めを指示用ストリップ上に含ませることも可能であると信じている。この方法において、種々の性質の指示薬が、例えば、食品の状態または品質を示し得る。
【0026】
本発明のもう1つの局面においては、基体上のコーティーングを使用して、検出用染料(1種以上)の結晶化を抑制し、それによって微生物に対するより高い感度を有するコーティーングを得ることができる。理想的には、表面上で単一の染料分子を含むコーティーングが微生物に対するより高い感度を有するであろう。各染料分子は、微生物膜と自由に相互作用するであろう。対照的に、染料の小結晶は、先ず溶解し、次いで膜に浸透しなければならない。理論によって拘束することは望まないが、本発明者等は、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-ベータ-シクロデキストリン、ガンマ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-ガンマ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-ガンマ-シクロデキストリン(以下、集合的に“シクロデキストリン”) (いずれも、Cerestar International of Hammond, IN, USA社から入手し得る)は、染料の結晶化を阻止して、より鮮明な染料色が基体上で生じるのを可能にするものと信じている。有効であることが判明しているシクロデキストリンの量は、0.001〜2質量%、望ましくは0.01〜1質量%、さらにより望ましくは0.025〜0.5質量%である。
また、ある種の界面活性剤も微生物の検出において染料を助けることを見出している。界面活性剤としては、ペンシルベニア州アレンタウンのAir Products and Chemicals社から入手し得るSURFYNOLR範囲の界面活性剤、およびペンシルベニア州ピッツバーグのFischer Scientific社から入手し得るTWEENR 80、即ち、ポリオキシエチレンがある。
【0027】
検出用染料を使用して細菌を検出するもう1つの方法は、側方流動検出装置の形である。そのような装置2は、図1に示すように、付着パッド、膜、および吸上げ(wicking)パッドを有するが(別々に見ることはできない)、ある実施態様においては、付着パッドは任意構成成分である。装置2は、検出領域4および対照領域6を有する。使用においては、液体サンプルを装置2上にサンプル領域8において付着させ、装置2を通して吸上げパッド10に向けて流動させ、検出領域4に通す。ソルバトクロミック染料を、他の形状も使用し得るこの場合は直列の検出領域4中に、さらにこれも直列の対照領域6中に付着させる。サンプルが検出領域4を移動するとき、微生物が存在する場合、検出領域4内の染料は、変色する。対照領域6内の染料は、細菌が検出領域内で捕捉されるので、変色しない。対照領域6は、アッセイが適切に操行していることを指示するために使用する。検出領域4の色を対照領域6の色と比較して、存在する微生物の相対的度合を指示し得る。2種以上のソルバトクロミック染料系も、種々の微生物に対して染料の感度が異なるので使用し得る。例えば、ある染料はグラム陽性菌の方に対して感受性であり、ある染料はグラム陰性菌の方に対して感受性である。この方法において、2種以上のタイプの細菌または他の微生物を検出し得る。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明の各種実施態様を例示する助けである。
材料の例
試薬および溶媒類は、特に断らない限り、全てAldrich Chemical Company社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手し、さらに精製することなく使用した。試験において使用した微生物は、下記のとおりであった:
1.グラム陰性菌(生存菌)
‐大腸菌 (ATCC #8739)
‐緑膿菌 (ATCC #9027)
‐豚コレラ菌
‐ガルドネレラ バギナリス (Gardnerella vaginalis)
2.グラム陽性菌(生存菌)
‐黄色ブドウ球菌 (ATCC #6538)
‐S. キシロシス (S. Xylosis;乳房炎起因菌)
‐アシドフィルス菌
3.グラム陽性菌(死菌)
‐黄色ブドウ球菌 (ATCC #6538)
‐S. キシロシス
4.酵母(生存菌)
‐カンジダ アルビカンス
5.かび(生存菌)
‐黒色アスペルギルス
ライハルト染料の(2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニルピリジニオ)-フェノレート)および1-ドコシル-4-(4-ヒドロキシスチリル)-ピリジニウムブロマイドは、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich Chemical Company社から購入した。本試験において使用した他のメロシアニン類は、自家合成した。以下に詳述する。
【0029】
メロシアニン染料類の合成
1-ドコシル-4-(4-ヒドロキシスチリル)-ピリジニウムブロマイドは、Aldrich Chemical 社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から商業的に入手可能であり、直接使用した。
メロシアニン染料類のさらなる例は、2工程反応において実験室で合成した。
上記合成方法を使用して合成的に調製した染料は、図3に示している。
ヨウ化メチルを、図4に示すようにして、氷浴中の50mlのイソプロパノール中のδ-ピコリンの撹拌溶液中にゆっくり添加した。添加を終えた後、反応を加熱して還流させ、還流を2時間続行した。その後、溶液を氷浴中で冷却し、沈降物を濾過し、ブフナー漏斗上で冷却アルコールにより洗浄した。その後、粉末をドラフト内で2時間乾燥させた。粗生成物の収量は、18.6グラムであった。粗生成物は、さらに精製することなく、次に工程において直接使用した。
N-メチル-δ-ピコリン(9.4g、0.04モル)とバニリン(6.1g、0.04モル)を、図5に示すようにして、50mlのエタノール中に撹拌しながら全て溶解させた。この溶液にピペリジン(3.4g、0.04モル)を添加し、混合物を16時間還流させた。次に、反応混合物を氷浴中で冷却し、生成物をブフナー漏斗を使用して濾別し、冷却エタノールで洗浄した。
その後、R = メチルである前述の構造13の粗染料を250mlの0.2モル水酸化カリウム溶液中で60分間撹拌して両性イオンを生成させ、次いで、ブフナー漏斗を使用して濾別した。その後、染料を最小量の1:1水/メタノール混合物から結晶化させた。収量は、9.4g (98%)であった。
他の染料を、それぞれのヨウ化アルキルから出発して同様な方法で合成した。下記の表1は、3つの異なるR基の染料構造において得られた化合物および収率を示す。

表1:合成したアルキル誘導体および得られた収率

【0030】
実施例1
以前に汚染された表面に適用したアセトニトリル溶媒中のライハルト染料
これらの染料のスプレーとしての使用を試験するため、ライハルト染料溶液(10mLのアセトニトリル中160mg)を調製した。エアゾール推進剤を含むスプレーボトルを使用してスプレー装置を作成した。
生のチキンモモ肉を室温で数日間エージングさせて高細菌レベルを確保した。図6に示すように、上記チキンモモ肉をセラミックプレートの表面上に数秒間置き(6A)、次いで取り除き、その後、表面を拭いて残存し得る痕跡量のチキン汁を除去した(6B)。次に、ライハルト染料溶液を、上記スプレーボトルを使用して表面上にスプレーした(6C)。試験をさらなるチキン片により繰返しては再現性を確保し、同様な結果を得た。
指示薬染料溶液を表面上にスプレーした後、チキンを含ませた領域全体が脱色されており(即ち、指示薬スプレーカラーは、青色から極めて淡色かまたは無色に変化しており)、チキンの輪郭を形成していた(6D)。染料は、チキンを表面上に置いたところに相応する正確なスポットにおいて急速に脱色した。
【0031】
実施例2
汚染表面に適用したイソプロパノール中のライハルト染料
イソプロパノールを、その消毒能力に基づくさらなる利益を有し得る担体として試験した。ライハルト染料をイソプロパノール中に溶解させた(10mLのイソプロパノール中へ160mgの染料)。プラスチックドアノブを“実社会”表面として使用し、その上で、細菌汚染を試験した。エージングチキンからの汁を使用して1つのノブの表面をマークした。他のドアノブは、汚染させないで参照として残した。両方のノブを拭取って痕跡量の汚染を除去した。染料のイソプロパノール溶液を両表面上にスプレーした。ドアノブの汚染領域は、ライハルト染料の青色から無色へのその脱色により容易に観察された。
【0032】
実施例3
汚染表面上の偽陽性についてのイソプロパノール中ライハルト染料指示薬スプレー試験
ライハルト染料指示薬は、チキン由来の微生物に対して高感度を有することを証明する。該指示薬を偽陽性について試験するために、脂質およびタンパク質のようなチキン液の他の成分を使用した。チキンブロスを、その非細菌性および潜在的干渉物を含有する高可能性について使用した。
新しく開けた缶詰からのSwansonR Chicken Broth (ニュージャージー州のCampbell Soup社、小売食品ストアから商業的に入手可能)をセラミック表面上にピペット滴下し、SCOTTR紙タオルで拭取り乾燥させ得る。エージングチキンからの汁も、既知の陽性対照として、上記セラミック表面上に異なる位置でピペット滴下し、拭取り乾燥させた。ライハルト染料指示薬(10mlのイソプロパノール中160mg)をセラミック表面上にスプレーしたところ、エージングチキン汁(即ち、細菌)を含有する面のみが脱色されているのが明らかであった。この試験から、チキンの場合、脱色応答を誘発させているのは、実際に細菌であり、チキン脂肪またはタンパク質のようなある種の二次成分ではないと結論付けし得る。
【0033】
実施例4
汚染表面上での清浄化助剤としてのライハルト染料指示薬スプレー
また、イソプロパノール中ライハルト染料スプレーの清浄化助剤としての使用も試験した。図7に示すように、エージングチキン汁を矩形セラミック表面の両半分に縱方向に塗布した(7A)。片側半分のA面上では、SCOTTR紙タオルによる表面の激しい拭取り以外の清浄化は、実施しなかった。他の半分のB面上では、Kimberly-Clark Professional Moisturizing Instant Hand Antiseptic (60%エタノール溶液、Roswell GA)を上記タオルに適用し、表面をクリーニングするのに使用した(7B)。その後、ライハルト染料スプレーを適用し、クリーニングが違いを有するかどうかを判定した(7C)。上記クリーナーは有効ではあったものの、幾つかの領域は“失敗”していたことが明らかであった(7D)。次に、両縞模様領域の下部半分を上記K-C Professional Antisepticで再度激しくクリーニングし、この時点をクリーニングが最も必要であるところに導くスプレーのきっかけとする(7E)。領域を再度スプレーしたとき(7F)、脱色は生じず、表面の清浄度を実証していた(7G)。
【0034】
実施例5
ライハルト染料コーティーング紙材料の脱色
本実験は、ライハルト染料の表面コーティーングが細菌汚染に応答する能力を試験した。図8に示すように、紙シートにライハルト染料溶液(80mg/10mLアセトニトリル)をブラシコーティーングした(8A)。この紙に、100μl小分け量の107、106、105および104 CFU/mLの大腸菌または黄色ブドウ球菌溶液を添加した(8B)。水を陰性対照として使用した。染料色は、両タイプの細菌によって汚染させたとき、急速に退色したが(8C)、黄色ブドウ球菌における方が速かった(8D)。後で、両細菌溶液は実際に107 CFU/mL濃度であったものの、黄色ブドウ球菌溶液の実際の濃度は、大腸菌溶液における1×107 CFU/mLと比較して、7×107 CFU/mLであったことを測定した。水は、各細菌溶液において観察された急速脱色(<1分)とは対照的に、数分後に染料の僅かな脱色を生じさせていた。
また、紙自己接着性ステッカーシート(Avery-Dennison社)に、2通りの異なる濃度のライハルト染料溶液(160mg/10mLアセトニトリル、80mg/10mLアセトニトリル)をブラシコーティーングした。各ステッカーを、フタおよび掛け金機構のHuggiesR Wet Wipesボックスに貼り付けた。手袋を着用した手により、107 CFU/mLの黄色ブドウ球菌を各ステッカー表面に移した。両濃度は急速に脱色されていたものの、退色は、低濃度の染料を含む表面の方でより容易に観察し得、検出および強い可視コントラストを与える最適のコーティーング濃度が存在し得ることを示唆していた。ステッカーは、種々の用途における細菌汚染の容易で且つ迅速な検出手段を提供し得ていた。
【0035】
実施例6
ライハルト染料を使用しての細菌濃度の定量
ライハルト染料系細菌指示薬の新たな潜在能力を、液体細菌と接触させる基体結合染料(実施例5)よりはむしろ基体上の細菌による液体染料を試験することによって具現化した。この試験は、染料溶液が表面上に存在する既知濃度の細菌に応答するかどうかを判定することに絞った。100μlの108 CFU/mlのグラム陽性菌をSCOTTRタオル上に置いた(図9A)。このスポットにアセトニトリル中に溶解させたライハルト染料(10mlのアセトニトリル中160mg)の液滴を添加した(9B)。
比較として、染料のスポットを上記タオル上で乾燥させ、同じ量の細菌を添加した。細菌スポットへの添加時点で、ライハルト染料は直ちに脱色した。染料含有セルロース質タオル上に置いた細菌の反応は、対照的に、脱色するのに数分を要する。さらなる染料液滴を細菌スポットに添加したところ(9C)、脱色は4回目の液滴まで続き、この時点で、紫色は持続していた(9D)。ピペットを使用してアセトニトリルを添加することによる染料コーティーングSCOTTRタオル上の染料色を再生させる試みは、不成功であった(9E)。
【0036】
実施例7
ライハルト染料を使用しての細菌指示薬滴定試験
基体結合細菌による染料溶液の急速脱色の発見並びに反応が終点に達するという事実は、細菌CFU/mlについての定量的情報を提供する染料の能力を探索することを促した。本試験の目的は、種々の濃度の基体結合細菌を染料で滴定し、色を安定化させるのに必要な染料の量が細菌CFU/mlによってそもそも変化するかどうかを判定することである。
SCOTTR紙タオル上に、各々100μlの連続希釈黄色ブドウ球菌懸濁液を置いた。その後、アセトニトリル溶液中のライハルト染料(40mg/10ml)の液滴(10μl)を、細菌を置いた各スポット上にピペットで滴下した。染料溶液は最初着色していたが、ほぼ瞬間(<1秒)に脱色し、追加の液滴を、同じスポットに、染料がもはや脱色せず紫/青色が褪せなくなるまで添加した。これを、種々の濃度の細菌を置いた場所に相応する各スポット上で繰返した。
結果は、表面または基体上の細菌汚染レベルと良好な相関を示していた。
【0037】
実施例8
エージング女性尿中での細菌滴定
この新たな方法の実用的使用を例証するために、エージングしプールした女性尿のサンプル(100μl)をセルロース質タオル上に置き、各100μl容量の尿を有する数個のスポットを得た。2通りの染料溶液を滴定試験において使用した;40mg染料/10mlアセトニトリルおよび160mg染料/10mlアセトニトリル。その後、染料溶液を10μlの小分け量で各尿スポット上に置き、青/紫染料色が残存するまで続けた(即ち、染料を、色が持続するまで尿に添加した)。下記の表2は、染料色が定常なままである(即ち、もはや脱色しない)のに要する各染料溶液の容量を示している。エージング女性尿は高細菌汚染を有することが知られており、この予備的試験は、この特定のサンプルにおける高レベルの汚染を示している。



表2:女性プール尿の細菌定量

より濃厚な(4倍高い)染料溶液よりも4倍も希薄な(4倍希釈)染料溶液を採用したことに注目するのは、興味あることである。このことは、異なる産業(医療と対比した食品等)において見られる多様なCFUレベルに対して指示薬系を、最高の染料濃度を使用して飽和に必要とする量を最低限にすることによって調整することを可能にし得る。例えば、チキン部分肉は、時間および保存条件にもよるが、どこであっても102〜109の細菌レベルを発生させ得る。しかしながら、食物調理者および取扱者は、疾病の懸念からは、107以上の細菌レベルについて心配するだけでよい。これに対し、病院は、疾患、疾病または手術のいずれかの理由により、何らかの形で既に免疫低下している可能性のある患者を典型的に治療している。従って、病院スタッフは、殆どの他の産業よりもはるかに低い細菌レベルを懸念し得、その特定の要求に調整した指示薬染料濃度からの利益を潜在的に享有して感受性患者の感染リスクを低減させ得る。
【0038】
実施例9
細菌、かびおよび酵母のような各種微生物による細菌指示薬試験
上述したのと同じ方法において、セルロース質タオルを、細菌および他の微生物をピペット滴下する基体として使用した。107 CFU/mlの黄色ブドウ球菌、カンジダ アルビカンス(酵母)、ガルドネレラ バギナリス、大腸菌、緑膿菌およびアシドフィルス菌を上記タオル静にピペット滴下した(100μl)。105の黒色アスペルギルス(一般的なかび)も上記タオル上にピペット滴下した。その後、ライハルト染料溶液(10mlのアセトニトリル中160mg)を10μlの小分け量で各スポットに添加し、持続色を確立するのに必要な液滴数を計数した。
各微生物において持続紫色を維持するのに必要な染料の量を下記の表3に示す。最強の反応は、アシドフィルス菌において、続いて、黄色ブドウ球菌、ガルドネレラ バギナリス、大腸菌、緑膿菌、カンジダ アルビカンス、最後に黒色アスペルギルスの順で観察された。但し、グラム陽性黄色ブドウ球菌とグラム陰性ガルドネレラ バギナリスにおける反応は、同程度の強さであるとみなした。

表3:ライハルト染料による各種微生物の滴定

【0039】
実施例10
細菌細胞壁成分によるライハルト染料指示薬の試験
本指示薬技術業績が細菌細胞壁中で一般的に見出される分子を使用することによって得られるかどうかについての洞察。グラム陽性菌およびグラム陰性菌表面を構成する化合物においては幾分かの共通性が存在するものの、その配列および化学組成は、互いに異なっている。グラム陰性菌は、リポ多糖類(LPS)で覆われた外膜を有する。LPSは、正味負電荷をグラム陰性菌表面に与え、その病因に寄与する。グラム陽性菌は、厚いペプチドグリカン即ちムレインのシート状層で覆われている。これらのシートは、交互のN-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸分子から形成されている。また、テイコ酸もグラム陽性菌において見出されており、N-アセチルムラミン酸に結合し得る。グラム陰性菌もペプチドグリカンを有するが、グラム陽性菌上の層の方がはるかに濃厚である。さらにまた、グラム陰性菌のペプチドグリカン層は、LPS層の下部に位置し、ペプチドグリカン層を表面からあまり近づき易くないよいにしている。
SCOTTR紙タオル上に、大腸菌由来の脱毒素リポ多糖類(除去したリピッドA成分)、糞便連鎖球菌由来のリポテイコ酸、大腸菌由来のリポ多糖類およびムラミン酸の各溶液を置いた。純粋LPS以外は、全ての溶液を5%(質量/質量)、1%(質量/質量)および0.2%(質量/質量)の濃度で調製した。純粋LPSは、安全性を理由として、0.1%(質量/質量)、0.02%(質量/質量)および0.004%(質量/質量)で調製した。ライハルト染料(10mlのアセトニトリル中160mg)を10μlの小分け量で各スポット上に添加し、持続色を発生させるのに要した染料の量を記録した。細胞壁化合物を紙タオル上の染料スポット上に置く逆の試験も実施した。
ムラミン酸は、最強の反応を発生させ、両試験設定において染料の瞬間に近い脱色をもたらした。他の化合物は、最終的には染料の脱色を生じたが、ムラミン酸程には強く反応してないようであった。ムラミン酸はグラム陽性菌において高い濃度で見出されるので、これらの結果は、CFU/mlデータのみならずグラム陽性菌とグラム陰性菌を反応の強度および速度に基づき識別する潜在能力も提供するこの染料の潜在能力を実証している。
【0040】
実施例11
チキン関連成分の試験
ライハルト染料指示薬が室温で保存した生鷄肉上で増殖する微生物に対して高感度を有することは証明した。しかしながら、偽陽性についての可能性を考慮すると、脂質およびタンパク質のようなチキン液の他の成分に対する上記指示薬の応答性を試験することが必要となった。缶詰チキンブロスを、脂質、タンパク質等のようなチキン由来生成物を含有する対照として使用し、これら天然産生物質からの潜在的干渉性についてチェックした。
新しく開いたSwansonR Chicken Brothをホットプレート表面上にピペット滴下し、SCOTTRタオルで拭取り乾燥させた。また、室温で数日間保存した生鷄肉からの汁も、陽性対照として、ホットプレート上にピペット滴下し、拭取り乾燥させた。ライハルト染料指示薬(10mlのイソプロパノール中160mg)を上記表面上にスプレーしたところ、エージングチキン汁(即ち、細菌)を含有する面のみが脱色されているのが明らかであった。この試験から、チキンの場合、脱色応答を誘発させているのは、実際に細菌の存在であり、チキン脂肪またはタンパク質のようなある種の他の成分ではないと結論付けし得る。
【0041】
実施例12
ライハルト染料脱色に対する強塩基の作用
ライハルト染料とムラミン酸のような細胞壁成分との相互作用に関する予備的結果、並びに潜在的偽陽性を同定することに関する研究は、酸による反応がライハルト染料の脱色に対して寄与し得ることを示唆していた。このことは、酸-塩基反応が観察される色変化に役割を果たし得るという推論をもたらす。脱色ライハルト染料に対する強塩基の作用を試験する実験を計画した。
ライハルト染料(10mlのアセトニトリル中160mg)の数滴をSCOTTRタオル上にピペット滴下し、乾燥させた。色変化を生じさせることが分かっている2つの成分(酢酸およびAldrich緩衝液 pH 2.0)を、それぞれ、2つのスポット上に滴下したところ、染料の急速脱色をもたらした。その後、1 N NaOHの1滴をスポット各々の1つ上にピペット滴下し、急速再着色を生じさせた。ライハルト染料の青/紫色は、1 N NaOHを添加した後に戻った。
これらの結果を確証するために、指示薬スプレーを使用して第2の試験を実施した。エージング生チキン汁を、ホットプレート表面上に、容易に認識し得る模様でピペット滴下した。表面を拭取り乾燥させ、ライハルト染料指示薬スプレー(10mlのアセトニトリル中160mg)をスプレーし、チキン汁の正確な模様形で染料の脱色を生じさせた。その後、1 N NaOHの1滴を前以って脱色させた領域上に置いて、その小スポットの再着色をもたらした。これをもう1つの領域において繰返した。
1 N NaOHが、染料に対してではなく、細菌に対して単純に作用する可能性を試験するために、エージングチキン汁と1モルのNaOHを、等割合で混合し、30秒間放置した。その後、この混合物を使用して、もう1つの同一(小さめではあるが)の模様を形成させた。この溶液もライハルト染料の急速脱色を生じさせたが、色は、1 N NaOHの添加時に戻った。
【0042】
実施例13
正常および細菌性膣炎(BV)感染腟液によるライハルト染料コーティーングステッカーの試験
細菌起源の腟感染の高発生率を考慮して、健常(低pH、細菌感染無し)、pH陽性/BV陰性(細菌感染はないが正常よりも高いpH)、およびpH陽性/BV陽性(正常よりも高いpHおよび既知の細菌感染)腟液サンプルに対するライハルト染料コーティーングステッカーの応答性を判定する試験を実施した。ステッカーシートに、2つの異なる濃度のライハルト染料溶液(160mg/10mLアセトニトリル、80mg/10mLアセトニトリル、40mg/10mLアセトニトリル、20mg/10mLアセトニトリル)をブラシコーティーングした。各濃度のステッカーを、正常、BV陽性/pH陽性およびBV陰性/pH陽性腟液サンプルによって試験した。
正常腟液は、おそらくは乳酸菌と低pHの組合せに基づく、染料の最も鋭敏な脱色を示した。BV陽性/pH陽性サンプルは、おそらくは多数のBV細菌の存在に基づく、次に最も鋭敏な脱色を示した。BV陰性/pH陽性サンプルは、おそらくは正常サンプルにおけるよりも少ない量の乳酸菌に基づき、染料を僅かに脱色させただけであった。脱色の上記3つの状態は、容易に識別可能であり、腟の保健分野におけるこの技術の診断可能性が存在することを示唆していた。
【0043】
実施例14
ライハルト染料指示薬スプレーによる一般的表面の試験
細菌が、日中でない場合、乾燥表面で何時間も生存し得ることは周知である。細菌および他の微生物を一般表面上で同定し且つ消費者または作業者に汚染を警告し得ることは、クリーニングおよび消毒を促進し、感染の拡大を最低限にする助けとなるであろう。
図10に示すように、古いコンピュータキーボードをモデル“実社会”表面として使用して微生物指示薬スプレーを試験した(10A)。ライハルト染料をイソプロパノールに溶解し(10mLのイソプロパノール中160mg)、エアゾール系スプレー装置と連結した。その後、キーボードに上記指示薬溶液をスプレーした(10B)。
ライハルト染料指示薬溶液によるキーボードのスプレー処理は、ある領域において染料の急速脱色を生じさせていた。ある種のキーまたは領域のみが汚染を示し、テンキーのような高度に汚れるキーの選択的同定を可能にしたことに興味を有する。キーボードは全く頻繁に使用されるが稀にしかクリーニングしないので、この表面は、実社会表面上での微生物レベルの一瞥を実際に提供している。
【0044】
実施例15
細菌指示薬の感度を増強するための界面活性剤の使用
ライハルト染料(80mg/10mLアセトニトリル)とTweenR 80 (200μL;ポリオキシエチレン界面活性剤(ペンシルベニア州ピッツバーグのFisher Scientific社より))の溶液を調製した。その後、この溶液を使用してセラミック表面をコーティーングし(図11)、風乾させた。界面活性剤を含まない第2のライハルト染料溶液(80mg/10mLアセトニトリル)を上記表面上に置き、同様に風乾させた(11A)。乾燥後、高細菌数を有することが分っているエージングチキン汁の1滴を各コーティーング領域上に置いた(11B)。TweenR界面活性剤を含有する領域(11C)は、TweenR界面活性剤を含有しない領域(11D)と比較したとき、はるかに速い速度(>20〜30秒)で脱色した。さらにまた、TweenR 80界面活性剤の添加は、表面からの染料の容易な除去を可能にした。少量の水の添加は表面からの完全除去を可能にしたが、界面活性剤を含まないスポットへの水の添加は、表面からの除去の容易性を改善しなかった。
【0045】
実施例16
溶媒選定の重要性
種々の異なる溶媒を使用して形成させたライハルト染料コーティーングの挙動を評価した。
アセトニトリル、イソプロパノールおよびキシレン中の各ライハルト染料溶液を調製し、各溶液を使用してSCOTTRキッチンロールタオルをコーティーングし、風乾させた(図12Aおよび12D)。各処理タオルは、その上に置いた100μl小分け量の黄色ブドウ球菌を含んでおり(12B、E)、コーティーングを色変化について観察した。アセトニトリル溶液系コーティーングのみが、細菌懸濁液を置いたところで急速脱色を有していた(12C)。ライハルト染料は、アセトニトリル中に溶解させたとき、一様な色を呈していることが観察された。明らかな色変化は、他の2つの溶媒コーティーングによっては観察されなかった(12F)。
本発明者等は、ライハルト染料の濃度を調節して、イソプロパノールを染料用の溶媒として使用し得るようにすることができることを見出した。染料の色はアセトニトリルにおいて見られる強度よりも低い強度であるが、微生物汚染に応答しての脱色は、敏速且つ容易に観察される。
【0046】
実施例17
綿織布上にコーティーングしたN-ドコシル-メロシアニン染料
ポリスチレントレー上の新鮮チキン(スーパーマーケットから)の透明フィルム被覆半分を室温で3週間保存した。ポリスチレントレー内に集まった淡黄色汁を、ピペットを使用して採集し試験において使用した。
47mgの1-ドコシル-4-(4-ヒドロキシスチリル)-ピリジニウムブロマイド(Aldrich Chemical社から)を10gのジメチルフォルムアミドと混合した。少量の固形分が、振盪し沈降させた後に残存した。オレンジ色上清液を基本質量(29.2cm×20.3cm=6.888g)の綿織布上に滴下して、オレンジ-黄色着色円を形成させた。1滴の1N 水酸化ナトリウム溶液を綿織布上の1つのオレンジ-黄色スポット上に添加し、色をオレンジ-黄色からピンク気味のオレンジに変化させた。
エージングチキン汁を綿織布上の上記オレンジ-黄色スポット上に垂らして、極めて薄い黄色への色変化を生じさせた。色変化は、綿上で急速であった。同様に、エージングチキン汁を綿上の上記ピンク気味のオレンジ色領域(染料+NaOH溶液)上に滴下し、ピンク気味のオレンジから極めて薄い黄色への同様な色変化を生じさせた。
【0047】
実施例18
キッチン紙タオル上へコーティーングしたN-メチルメロシアニンとエージング尿
女性ヒト尿を集め、ガラス瓶内で、室温で8日間保存した。下記の構造を有するN-メチルメロシアニン染料を、前述したようにして合成した。0.5gを20mlの脱イオン水に溶解し、SCOTTRキッチンロール紙タオル上に、タオルを溶液中に浸漬し、過剰分を垂れ流しせしめ、次いでコーティーングタオルを周囲条件下に乾燥させることによってコーティーングした。紙タオルは、該染料によって深オレンジ色に染色されていた。
【化10】

エージング尿を上記オレンジ色着色タオル上に滴下して、深オレンジ色から淡黄色への瞬時の色変化を生じさせた。対照として、エージング尿を0.2ミクロンフィルターにより濾過して細菌および他の微生物を除去した。濾過後、エージング尿は、上記タオル上に滴下させたとき色変化を生じさせず、微生物がエージング尿中の他の成分と対比して色変化の発生に寄与していることを示唆していた。
【0048】
実施例19
キッチンタオル上へコーティーングしたN-メチルメロシアニンとエージング尿
女性ヒト尿を集め、37℃で24時間保存した。プールした女性尿は、これらの条件下での保存後、およそ1×105 CFU/mlの細菌負荷量を有するものと予期し得る。下記の構造26を有するN-メチルメロシアニン染料を、前述したようにして合成した。0.5gを20mlの脱イオン水に溶解し、SCOTTRキッチンロール紙タオル上に、タオルを溶液中に浸漬し、過剰分を垂れ流しせしめ、次いでコーティーングタオルを周囲条件下に乾燥させることによってコーティーングした。紙タオルは、該染料によって深オレンジ色に染色されていた。
【化11】

エージング尿を上記オレンジ色着色タオル上に滴下して、深オレンジ色から淡黄色への瞬時の色変化を生じさせた。対照として、エージング尿を0.2ミクロンフィルターにより濾過して細菌および他の微生物を除去した。濾過後、エージング尿は、上記タオル上に滴下させたとき色変化を生じさせず、微生物がエージング尿中の他の成分と対比して色変化の発生に寄与していることを示唆していた。
【0049】
実施例20
キッチン紙タオル上へコーティーングしたN-メチルメロシアニン染料と愛玩鳥の腸移動物
セキセイインコ糞をケ−ジ飼セキセイインコから集め、約10mlのアトランタシティー家庭用水道水中で振盪させた。上記構造26を有するN-メチルメロシアニン染料を、前述したようにして合成した。0.5gを20mlの脱イオン水に溶解し、SCOTTRキッチンロール紙タオル上に、タオルを溶液中に浸漬し、過剰分を垂れ流しせしめ、次いでコーティーングタオルを周囲条件下に乾燥させることによってコーティーングした。紙タオルは、該染料によって深オレンジ色に染色されていた(図13A)。
水道水中のセキセイインコ糞懸濁液の液滴を上記コーティーングタオル上に垂らし(13B)、懸濁液を添加したところに深オレンジ色から淡黄色への瞬時の色変化を生じさせた(13C)。対照として、アトランタシティー家庭用水道水をタオルの異なる領域上に滴下させたところ、色は水道水によって幾分薄まったが、該領域はオレンジ色のままであった。
【0050】
実施例21(机上実施例)
コーティーング中で使用する指示薬染料
1グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.5グラムの構造26のN-メチルメロシアニンを、10グラムの水と10グラムのイソプロピルアルコールの混合物中に良好な撹拌により溶解し得る。この溶液をポリエステルフィルム上にコーティーングし、室温で乾燥させて、微生物の存在を検出し得るコーティーング可撓性フィルムを製造し得る。
実施例22(机上実施例)
コーティーング中の指示薬染料
1gのエチルセルロース、0.25gの構造26のN-メチルメロシアニンを20グラムのテトラヒドロフラン中に溶解し得る。この溶液をポリエステルフィルム上にコーティーングし、室温で乾燥させて、微生物の存在を検出し得るコーティーング可撓性フィルムを製造し得る。
【0051】
実施例23
側方流動装置
MilliporeニトロセルロースHF75膜(米国マサチューセッツ州ビルリカのMillipore Corporation社から)を、約30センチメートルの長さを有するプラスチック支持カード(Millipore Corporation社から)上にラミネートさせた。検出領域と対照領域の双方上に、イソプロパノール中の5質量%ライハルト染料溶液を手でストリッピングさせた。膜を実験室オーブン内で37.5℃の温度にて1時間乾燥させた。膜カードをオーブンから取出した後、セルロース質吸上げパッド(Millipore Corporation社からのCat# CFSP203000)を、対照領域に近い膜の一端に結合させた。サンプルパッドに結合させるのに使用するカードの他端は、切り離した。その後、カードを4mmストリップにスライスして半スティックを作成した。
半スティックを作成した時点で、細菌溶液を検出膜の末端に塗布した。毛管作用によって、溶液および細菌が検出領域に引出され、色変化が検出領域内で認められた。対照ライの色は、試験全体に亘って同じままであった。
【0052】
実施例24
シクロデキストリン増強
SCOTTR紙タオルを、先ず、水中溶液(20ml中1グラム)中のヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(米国インディアナ州ハモンドのCerestar International社から)でディッピングし周囲温度で風乾させることによってコーティーングした。乾燥させたとき、上記コーティーング紙タオルをイソプロパノール中のライハルト染料溶液(1質量%)で処理して風乾させた。乾燥タオルは、紫/青色であった。ここで、上記シクロデキストリンは、染料の結晶化を阻止して、染料のより鮮明な色を紙タオル上に発生させ得る。このコーティーングタオルをグラム陰性菌(大腸菌)による試験において使用し、10,000 CFU/mlを含有する培地の100マイクロリットルのアリコートをタオルに適用したとき、5秒未満内で無色に変るのを見出した。この脱色は、500 CFU/mlの細菌濃度に対しては、15秒ほどの長さではあるが、遅れて発生したのを見出した。即ち、染料の結晶化を阻止することにより、染料は、基体上で単一分子として存在するものと信じられ、従って、細菌レベルに対する染料の感度は増大する。本発明者等は、タオル上のコーティーング(例えば、シクロデキストリン)を注意深く使用することにより、染料の単分子コーティーングが基体表面上に生じ、最高の感度が発生するものと信じている。
【0053】
実施例25
乾燥サンプル試験
溶液中ではない“乾燥”細菌サンプルによるライハルト染料コーティーング紙タオルを使用しての試験を実施した。1連の増殖培養物を含有する寒天ペトリ皿から取出した大腸菌コロニーの乾燥サンプルを使用した。その後、この乾燥サンプルを、前以って湿らせた染料コーティーングSCOTTR紙タオルにこすり付けた。コロニーを置きこすり付けた領域は、1〜5秒以内で無色に変った。これは、湿った拭取り材タオルを如何にして使用し、そのタオルが良好に機能したかと同様である。
実施例26
漂白剤指示薬試験
ライハルト染料と3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)の混合物をSCOTTR紙タオル上にコーティーングし、風乾させた。希薄漂白剤溶液を紙タオルに適用したところ、ライハルト染料の脱色およびTMBのオレンジ/黄色への変化を生じた。このことは、漂白剤指示薬を細菌指示用ワイパー中に組込み得ることを示している。
最後の試験においては、ライハルト染料とTMB化学剤のコーティーングを有するSCOTTR紙タオルを大腸菌懸濁液液滴に暴露させた。細菌と接触したタオル領域は、10秒未満内で白色スポットに脱色していた。オレンジ/黄色の発生は、観察されなかった。
【0054】
実施例27
メロシアニンおよび両性イオン染料のUV可視吸収スペクトル
ライハルト染料をさらに精製することなく使用した。N-n-ヘキシルおよびN-n-ドデシルメロシアニン染料を説明したようにして合成した。使用する溶媒は、Aldrich Chemical社から入手し、HPLC級であった。Shimadzu UV-1601 UV- Visible Spectrophotometer (Shimadzu Corporation社)を使用して、石英キュベット中に含ませた3種の異なる溶媒中に溶解させた染料の400〜800 nm範囲の最長波長ピーク吸収を測定した。下記の表は、左側欄の各溶媒および最上行の染料による試験結果を含む。



各メロシアニン染料は、長波長吸収以外に、400 nm近くでの吸収も示しており、これは、知覚色を変えていた。
明らかに、分光測定に基づけば、これらの染料は、異なる溶媒中に溶解させたときのこれら微生物検出染料間で最長波長ピーク吸収における大きなシフト(>10 nm)を示している。
【0055】
実施例28
ウィルス類による指示薬試験
ウィルス試験を、本発明者等の1人の指示および管理下に、Gibraltar Laboratories社(ニュージャージー州フェアフィールド)において実施した。ポリオウィルスタイプ1およびライノウィルスを準備し、ウシ胎仔血清を5%濃度に添加したダルベッコ(Dulbecco's)変性イーグル(Eagle's)培地(DMEM)により増殖させて供給されたMA-104胚サル腎臓細胞中に接種し、5% CO2の存在下に30℃±1℃で6日間インキュベートした。ウィルス増殖は、感染細胞シートの、少なくとも50%の細胞シート内で観察されるときの丸型化、円鋸歯状化、溶解、核濃縮等のような細胞崩壊(細胞変性作用、CPE)についての顕微鏡観察により検出した。細胞毒性は、ウィルスを含まない薬剤単独により生じたときの細胞崩壊の度合として測定した。ウィルスを、DMEM中での10倍連続希釈、希釈当り4複製MA 104培養物、0.1mLのウィルス希釈物を接種した各複製を使用して滴定した。ウィルス複製の度合は、ReedおよびMuenchの方法で測定したときの組織培養感染投与量-50% (TCID 50)として算出した。
ライハルト染料コーティーングステッカー(160mg/10mLアセトニトリル、80mg/10mLアセトニトリル、40mg/10mLアセトニトリル、および20mg/10mLアセトニトリル)を、試験表面として使用した。培地中の50μlの未希釈ウィルス(ポリオウィルスにおいて10-10/50μl、ライノウィルスにおいて10-9/50μl)を各ステッカー上に滴下し、液滴を綿棒で除去する前に、5分間放置した。培地単独、ウィルスを含まない細胞培養培地およびウィルスを含まない細胞培養塩水の各アリコートを対照サンプルとして使用し、これらも、拭取る前に5分間放置せしめた。ポリオウィルスにおいては、塩水対照は方法を干渉しているようであったが、培地は脱色を生じさせていなかった。従って、培地中のポリオウィルス希釈物を、残りの試験において使用した。ウィルスを10倍増分で培地中連続希釈し、50μlアリコートを各ステッカーに適用した。5分間放置せしめた後、液滴をステッカーから綿棒で拭取った。ライノウィルスにおいては、培地対照は干渉することが判明したが、塩水対照は染料の脱色をもたらさなかった。従って、塩水中に希釈したウィルスの10倍連続希釈物を50μlアリコートで各ステッカーに適用し、5分後、綿棒で拭取った。ポリオウィルスおよびライノウィルスの双方において、ステッカーは、脱色されて10-6に低下しており(即ち、連続10倍希釈の6回目)、染料コーティーングステッカーがこれらウィルスの検出に対して感度を有することを示唆していた。
ライハルト染料の2種類の溶液(400μlのTWEEN 80界面活性剤を含むまたは含まない80mg/10mLアセトニトリル)を調製した。ポリオウィルスまたはライノウィルス(双方とも培地中未希釈)いずれかの100μl液滴を折ったSCOTTタオル上にピペット滴下し、ライハルト染料の液滴をウィルス含有スポットの各々に添加した。色は、界面活性剤含有および界面活性剤無含有溶液の双方において急速に退色した。染料は、結局、色が持続するまで添加した(約9滴)。また、上述したのと同じ培地および同じ塩水対照も試験した。培地は染料を脱色させる幾分かの能力を示したが、塩水は、水において前記で観察したのと同じ滴定挙動を示した。
【0056】
比較例(本発明の実施例ではない)
エージングチキンを比較例における細菌源として使用した。ポリスチレントレー上の新鮮チキン(スーパーマーケットから)の透明フィルム被覆半分を室温で3週間保存した。ポリスチレントレー内に集まった淡黄色汁を、ピペットを使用して採集し試験において使用した。
比較例1
エージングチキン汁を、SCOTTR紙タオル上に滴下した。下記の構造27のCI Acid Green 41 (Aldrich社 Chemical社から)溶液 (0.008モル/l) (ヒドロキシアントラキノン染料の1つの例)を、エージングチキン汁上に滴下した。色変化は観察されなかった。対照として、100mgのライハルト染料を10mlのアセトニトリル中に懸濁させた。この懸濁液をエージングチキン汁上に滴下したところ、直ちに脱色した。
【化12】

【0057】
比較例2
エージングチキン汁を、SCOTTR紙タオル上に滴下した。下記の構造28のCI Acid Green 25溶液(0.008モル/l)を、アントラキノン染料の1つの例として、エージングチキン汁上に滴下した。色変化は観察されなかった。対照として、100mgのライハルト染料を10mlのアセトニトリル中に懸濁させた。この懸濁液をエージングチキン汁上に滴下したところ、直ちに脱色した。
【化13】

【0058】
比較例3
エージングチキン汁を、SCOTTR紙タオル上に滴下した。下記の構造29を有しアミノアゾ染料の例であるCI Acid Red 37 (Aldrich社 Chemical社から)の50mgを10mlの脱イオン水に溶解した。この染料溶液を上記紙タオル上のエージングチキン汁上に滴下した。色変化は観察されなかった。対照として、100mgのライハルト染料を10mlのアセトニトリル中に懸濁させた。この懸濁液をエージングチキン汁上に滴下したところ、直ちに脱色した。
【化14】

【0059】
比較例4
エージングチキン汁を、SCOTTR紙タオル上に滴下した。下記の構造30を有しフェニルピラゾロン染料の例であるCI Acid Yellow 23 (Aldrich社 Chemical社から) (食品着色剤タルトラジンとしても知られている)の50mgを10mlの脱イオン水に溶解した。この染料溶液を上記紙タオル上のエージングチキン汁上に滴下した。色変化は観察されなかった。対照として、100mgのライハルト染料を10mlのアセトニトリル中に懸濁させた。この懸濁液をエージングチキン汁上に滴下したところ、直ちに脱色した。
【化15】

【0060】
比較例5
エージングチキン汁を、SCOTTR紙タオル上に滴下した。下記の構造31を有し、キサンテン染料の例としてのCI Acid Red 52 (スルホローダミンB)の水中溶液を、上記紙タオル上のエージングチキン汁上に滴下した。色変化は観察されなかった。対照として、100mgのライハルト染料を10mlのアセトニトリル中に懸濁させた。この懸濁液をエージングチキン汁上に滴下したところ、直ちに脱色した。
【化16】

【0061】
比較例6
エージングチキン汁を、SCOTTR紙タオル上に滴下した。下記の構造32を有し、インジゴイド染料の例であるCI Acid Blue 74 (インジゴカルミンとしても知られている) (Aldrich社 Chemical社から)の30mgを10mlの脱イオン水に溶解した。この染料溶液を上記紙タオル上のエージングチキン汁上に滴下した。色変化は観察されなかった。対照として、100mgのライハルト染料を10mlのアセトニトリル中に懸濁させた。この懸濁液をエージングチキン汁上に滴下したところ、直ちに脱色した。
【化17】

【0062】
当業者であれば認識しているように、本発明に対する変更および変形は、当業者の能力内とみなす。そのような変更の例は、上記で特定した各特許に含まれており、これら特許の各々は、本明細書と一貫する程度において、その全体を参考として本明細書に合体させる。そのような変更および変形は、本発明の範囲内に属するものとする。また、本発明の範囲は、本明細書において開示した特定の実施態様に限定するように解釈すべきではなく、上述の開示に照らして読んだときの特許請求の範囲に従うのみであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】5種の基本的な細菌細胞形状の素描である。
【図2】細菌細胞配列の素描である。
【図3】メロシアニン染料の合成図である。
【図4】メロシアニン染料の合成図である。
【図5】ピコリンのメチル化図である。
【図6A−D】エージングチキンを使用しての微生物汚染指示のダイアグラムである。
【図7A−G】微生物汚染指示と清浄化の並行指示のダイアグラムである。
【図8A−D】種々の濃度の細菌を使用しての微生物汚染指示のダイアグラムである。
【図9A−E】細菌および指示染料の滴定を使用しての微生物汚染の指示および定量のダイアグラムである。
【図10A−C】コンピュータキーボード上での微生物汚染指示のダイアグラムである。
【図11A−D】溶液中に界面活性剤を含むおよび含まない場合の微生物汚染指示のダイアグラムである。
【図12A−F】溶媒に依存する微生物汚染の指示速度を指示するダイアグラムである。
【図13A−C】着色剤を基体上へ乾燥させる場合の微生物汚染指示のダイアグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相と微生物感受性着色剤とを含む組成物であって、該着色剤が、微生物の存在下、目視検出可能に変色する前記組成物。
【請求項2】
前記微生物が、細菌、真菌およびウィルスからなる群から選ばれる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記移動相が、液体である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記移動相が、消毒剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記移動相が、ゲルである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記着色剤が、ソルバトクロミック染料である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記着色剤が、下記の構造を有する両性イオン染料である、請求項1記載の組成物:
【化1】

(式中、nは、0またはそれ以上であり;Xは、酸素、炭素、窒素、リンまたはイオウである)。
【請求項8】
前記着色剤が、下記の構造を有するメロシアニンである、請求項1記載の組成物:
【化2】

(式中、nは、0またはそれ以上である)。
【請求項9】
前記着色剤が、ライハルト染料、メロシアニン染料、4-[2-N-置換-1,4-ヒドロピリジン-4-イリジン)エチリデン]シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン、レッドピラゾロン染料、アゾメチン染料、インドアニリン染料、ジアザメロシアニン染料、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記着色剤が、0.01〜10質量%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記着色剤が、微生物への暴露後1分未満以内で変色する、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記着色剤が、前記微生物の濃度に比例した速度で変色する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
存在する微生物の量が、変色する着色剤の量に比例する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物を固形物表面上で乾燥せしめる、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記固形物表面が、ワイパー、紙、ステッカー、ティッシュ、ティッシュ包装材および調理台からなる群から選ばれる、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
膜および吸上げパッドを含む微生物検出用の側方流動装置であって、
該膜が検出領域および対照領域を有し、
前記検出領域が、微生物の存在下、目視検出可能に変色する微生物感受性着色剤を含むものである前記側方流動装置。
【請求項17】
表面上の微生物の検出方法であって、微生物感受性着色剤を含有する溶液を表面に適用する工程、および微生物の存在を示す目視検出可能な変化を観察する工程を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項18】
さらに、前記溶液を乾燥せしめ、それによって前記染料含有溶液の乾燥残留物を生成させる工程を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記染料が、下記の式を有する、請求項17記載の方法:
【化3】

(式中、nは、0またはそれ以上であり;Xは、酸素、窒素、イオウ、リンまたは炭素である)。
【請求項20】
前記染料が、下記の式を有する、請求項17記載の方法:
【化4】

(式中、nは、0またはそれ以上である)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−514952(P2007−514952A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545479(P2006−545479)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/042461
【国際公開番号】WO2005/059162
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】