説明

微生物の検出および計数方法

微生物を含むことが疑われるサンプル中の、好ましくは大腸菌、レジオネラ属、レジオネラ・ニューモフィラおよびサルモネラ属からなる群より選択される生存する前記微生物を検出および計数するための方法であって、(1)前記サンプルを、細胞栄養源および細胞増殖インヒビターと接触させる段階と、(2)前記サンプルを、前記微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブと接触させる段階と、(3)前記サンプルを、前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブと接触させる段階と、(4)蛍光シグナルを検出および定量する段階とを含む方法;前記微生物の検出および計数のためのヘルパープローブ;前記方法を実施するキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境中の病原体の存在に関連する健康被害の分野に関する。本発明は、サンプル中の高度に希釈された生存する微生物、特にゲノム種大腸菌(Escherichia coli)、レジオネラ属(Legionella spp)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)およびサルモネラ属(Salmonella spp)に属する細菌を検出および計数するための方法;ならびに関連するキットに関する。本発明はさらに、細菌の大腸菌、レジオネラ属、レジオネラ・ニューモフィラおよびサルモネラ属のリボソームRNAに特異的に結合するためのヘルパープローブに関する。
【背景技術】
【0002】
水管理は、今世紀の最も重要な課題の1つである。環境の汚染診断は、前記環境中の病原体の存在に関連する健康上のリスクを評価するために不可欠である。健康被害に関連する病原体は、例えば、大腸菌、サルモネラまたはレジオネラである。
【0003】
大腸菌は、ヒトおよび温血動物の大腸の共生細菌である。この理由のために、水、食物のサンプルまたは環境由来のサンプル中のその存在は、糞便汚染の指標として解釈される(指標細菌)。大腸菌のゲノム種の株は病原性であり得る:大腸菌は、ヒトまたは動物において種々の感染症(尿路感染、コレラ様または出血性の下痢、赤痢症候群、溶血性尿毒性症候群、敗血症、新生児髄膜炎、種々の化膿性感染症)を引き起こし得る。従って、大腸菌の計数は、水または食物の衛生的品質を評価するために不可欠である。
【0004】
レジオネラは、湿った土壌ならびに非海洋性水性生息地の遍在性の居住者である。レジオネラの増殖に理想的な条件は、25℃と55℃との間の温度である。結果として、レジオネラは、ヒトが創り出した生息地(例えば、温かいおよび冷たい水設備、空調システムの冷却塔および水加湿器)にも見出され得る。アメーバおよび繊毛虫類の細胞内寄生生物として、レジオネラは、好ましくない生活環境(例えば、極端な温度および水の塩素化)を生き抜くこともできる。レジオネラ、特にレジオネラ・ニューモフィラは、ヒトにおける病原体であり、「レジオネラ病」として一般に知られる、通性致死過程を有する急性細菌性肺炎を引き起こす。
【0005】
サルモネラ属は、遍在性の腸内細菌である。サルモネラ属は、食物媒介性のサルモネラ症の病原体であり、腸チフスおよびパラチフス熱を引き起こす病原体でもある。甲殻類を含む食物製品は、サルモネラ症の最も一般的な供給源であるが、サルモネラは、水から伝染する病原体の主要例である。サルモネラは、下水、淡水、海岸水および地下水においてしばしば検出される。サルモネラ属は、天然水中で長期間生存でき、従って、特定の流行性の株の持続は、公衆衛生における大きな関心事である。
【0006】
従って、微生物、特に細菌による水、食物または環境の汚染は、公衆衛生における大きな関心事であり、これらの病原体を検出および計数するための迅速な方法が、これらの病原体の存在に関連する健康上のリスクを評価するために重要である。
【0007】
微生物病原体の伝統的な検出および計数は、細胞培養によって実現される。しかし、これらの細胞培養法は、利益が限定的である。これらの方法は、特に、サンプル中の病原体が一般に非常に高度に希釈されているために細心の注意を要し、培養培地は病原体の増殖を部分的に阻害する望ましくない副次的影響を有し得、従って病原体の過小評価を導き得る。このように、これらの方法は、時間がかかり病原体の信頼性のある計数を可能にしないので、満足のいくものとはいえない。
【0008】
PCR技術またはRT-PCR技術に基づく方法などの、微生物の特定のヌクレオチド配列の検出に基づく方法が開発されている(Yamamotoら、1993、Bejら、1991、Devosら、2005)。しかし、これらのPCRベースの方法は、環境微生物学の分野で使用される場合、サンプル中の重合反応インヒビターの存在に起因して、期待された定性的結果を与えず、さらに、これらの方法は、予めDNAを精製する段階を必要とし、DNAの損失を導き、結果として病原体の過小評価を導く。PCRベースの方法は、定性的であるが定量的ではないと考えられるので、リアルタイムPCRベースの方法が設計された(Yanezら、2005)。しかし、この新たに設計されたリアルタイムPCRベースの方法は、生存細胞と非生存細胞との間を識別することができず、病原体数の過大評価を導き、従って誤った結果を導く。このように、PCRベースの方法は、サンプル中の生存する微生物の正確な計数を可能にしない。
【0009】
in situハイブリダイゼーションは、遺伝子増幅における興味深い代替法である。この技術を使用する方法は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)と呼ばれる。蛍光物質によって標識されたオリゴヌクレオチドプローブは、予めその段階を促進するように処理された細菌細胞中に浸透する。リボソーム核酸(rRNA)がプローブに対する相補的(標的)配列を有する場合、このプローブはその標的に留まり、洗浄によって除去されない。プローブを保持した細菌は、次いで、落射蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーまたは固相サイトメトリーによって定量され得る蛍光シグナルを放射する。rRNAは、その高度に保存された領域および細胞当たりのコピー数の多さに起因して、FISHにおける好ましい標的となる。rRNAハイブリダイゼーション技術を使用する微生物検出方法の例は、米国特許第5,288,611号および同第5,426,025号中に見出すことができる。FISH法の実際の利点は、典型的な培養ベースの方法で数日を要するのとは異なり、数時間以内に細菌の直接的検出を可能にする点である。しかし、この従来のFISH法(モノ標識プローブを使用する)は、リボソーム材料の量が非常に限定的であり、従って弱く検出不能な蛍光シグナルを導くので、サンプル中の高度に希釈された微生物の検出には不適切と思われた。さらに、FISH法単独では、生存細胞と非生存細胞との間を識別できず、微生物数の過大評価を導く。
【0010】
これらの欠点は、FISH法を、直接生育数計測(Direct Viable Counts:DVC)試験と呼ばれる細菌細胞の生存度制御を可能にする方法(Kogureら、1987)と組み合わせることによって克服されている。しかし、DVCとFISH標準技術との組み合わせは、稀な事象の検出のために使用される細胞検出系(例えば、固相サイトメータ)と組み合わせたときに検出可能な蛍光シグナルを得るのに充分ではない。
【0011】
最近、Baudartらは、固相サイトメータを使用した、チラミドシグナル増幅(TSA)に基づく蛍光増幅技術と組み合わせたDVC-FISH法の特異性および感度を評価した(Baudartら、2002)。この研究において、ハイブリダイズした細胞の蛍光強度を増大させる目的で、プローブをHRPと組み合わせて使用し、TSAシステムによって明らかにする、ハイブリダイゼーションプロトコールが開発された。このFISH技術は、一般に、CARD-FISH(CAtalyzed Reporter Deposit-FISH)とも呼ばれる。この結果は、この方法が約108の非標的細胞中の1つの標的細胞の検出を可能にしたことを示す。しかし、HRP-プローブ-TSAシステムなどの多くのシグナル増幅システムの欠点は、酵素、抗体または(ストレプト)アビジンなどの高分子量分子の標的細胞内での拡散を必要とする点である。これらの高分子量分子の拡散は、株または種に依存的であり得る、細胞の予備的酵素透過処理を必要とする(Amannら、1995)。このような程度において、標的分子の損失または完全な細胞溶解の危険性が存在し得る。従って、このようなシグナル増幅システムを使用したサンプル中の微生物の計数は誤っている可能性があり、時間のかかる種々の段階(パラホルムアルデヒド固定、透過処理およびHRP活性の最終標識)を必要とする。結果として、この手順はあまりに多い段階を含むため、品質管理実験室の管理におけるルーチン適用には不適当である。従って、生存する高度に希釈された病原体細胞の迅速かつ超高感度の検出および計数を可能にし、ハイブリダイズした病原体細胞の蛍光強度を強く増幅でき、かつ計数を行う前にこの病原体細胞のあらゆる損失および溶解を回避する、信頼性が改善された方法がなお必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5,288,611号
【特許文献2】米国特許第5,426,025号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、FISH法およびDVC法を組み合わせて使用し、ハイブリダイズした細胞の蛍光強度を増幅するための改善された代替システムを有する、生存する微生物の検出および計数の超高感度で迅速な方法に関する。
【0013】
本発明はまた、ハイブリダイズした細胞の蛍光強度を増幅するように機能するヘルパーオリゴヌクレオチドプローブを使用することを含む、上記改善されたシステムに関する。
【0014】
大腸菌、レジオネラ属、レジオネラ・ニューモフィラおよびサルモネラ属は、水、食物または環境の質を決定するためにその存在が評価される今日の主要な病原体であるので、本出願人は、本発明を例示するために、このような高度に希釈された生存細胞の検出および計数を可能にするためのヘルパープローブを設計した。
【0015】
本発明は上記4つの病原体に限定されず、当業者なら、他の種の細胞を如何に検出および計数するかを本発明から容易に推定することを強調しておく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によれば、微生物を含むことが疑われるサンプル中の生存する前記微生物を検出および計数するための方法は、
(1)前記サンプル由来の細胞を、栄養源および細胞増殖インヒビターと接触させる段階と、
(2)標的微生物のリボソーム核酸を含む前記サンプルを、前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブと接触させる段階と、
(3)前記サンプルを、前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブと接触させる段階と、
(4)蛍光シグナルを検出および定量して、前記サンプル中の微生物の数を評価する段階と
を含む。
【0017】
上記方法の段階(1)は、代謝合成活性によって示される細胞生存度の単細胞レベルでの測定を可能にする。細胞生存度は、Kogureら(Kogureら、1987)の改変DVC手順によって測定した。このアッセイは、細胞分裂を停止させるDNAジャイレースインヒビター(例えば、ナリジキシン酸)の存在下で、細胞内rRNA含量および感受性細胞の細胞長を増大させる、細菌細胞代謝人工蘇生の段階を含む。
【0018】
上記方法の段階(2)は、標準FISH手順を含む。ハイブリダイゼーション前に、DVC処理した細胞は好ましくは固定され、透過処理される。微生物を固定および透過処理することは、外膜またはエンベロープを処理して、オリゴヌクレオチドプローブに対して透過性にすることを含む。固定のために、低パーセントのパラホルムアルデヒド溶液を通常使用する。他の周知の方法は、例えば、エタノール、メタノール、希ホルムアルデヒド溶液、酵素処理などを含む。
次いで、少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液中で、ハイブリダイゼーションを実施する。オリゴヌクレオチドおよびそれに連結されたマーカーを含むこれらのオリゴヌクレオチドプローブは、次いで、外部膜またはエンベロープを透過でき、細胞中の、オリゴヌクレオチドプローブに対応する標的配列に結合できる。結合は、相補的核酸片間の水素結合の形成として理解すべきである。FISH技術において、これらのプローブは、リボソーム標的配列上の特定の領域に対して相補的である。これらは一般に小さく、15〜30塩基長であり、一本鎖のデオキシリボ核酸片であり、微生物の種、種、属、群または系統学上の科に典型的な標的領域に対するものである。
【0019】
上記方法の段階(3)は、標識プローブとリボソーム標的配列とのハイブリダイゼーションから生じる蛍光シグナルを増幅することを目的とする。本発明に従うヘルパープローブは、前記標識プローブのin situでの到達可能性を増大させ、結果として前記標識プローブの蛍光シグナルを増大させるために、標識プローブ標的配列に隣接する配列に結合するオリゴヌクレオチドプローブを含む。これらのヘルパープローブは好ましくは非標識プローブであり、標的微生物に(排他的ではないが)特異的である。これらは好ましくは、小さい一本鎖デオキシリボ核酸片であり、10〜50ヌクレオチド、好ましくは12〜40ヌクレオチド、より好ましくは14〜25ヌクレオチドを含み得る。本発明の意味では、標識プローブ標的配列に隣接する配列は、標識プローブ標的配列のいずれかの側の、100bp、好ましくは75bp、より好ましくは30bpの領域中に存在する標的配列を表す。本発明の好ましい実施形態において、ヘルパープローブは、その標的配列と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは100%相補的である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、段階(2)および(3)は同時に実施される。
【0021】
上記方法の段階(4)は、固相サイトメータまたは任意の等価な検出機器による、前記標識プローブの蛍光シグナルの検出および定量を含む。
【0022】
本発明において、以下の用語は以下のとおり定義される:
サンプル中の微生物を「検出する」とは、サンプル中の微生物の存在を把握することを意味する;
サンプル中の微生物を「計数する」とは、サンプル中に存在する微生物を数えることを意味する;
「サンプル」は、例えば下水、淡水、海岸水、地下水などの水のサンプル、血液もしくは尿サンプルなどの液体の生物学的材料のサンプル、または食物のサンプル、あるいは検出デバイスで使用するのに適した任意の型のサンプルを意味し得る;
「微生物」は、細菌、シアノバクテリア、クラミジア、真菌、藻類、原生生物およびウイルスを含む、顕微鏡サイズの任意の生存生物を意味する;
「高度に希釈された」微生物とは、低濃度または限定された数の、例えば1ml中100未満の量の微生物を意味する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、上記方法に従って検出および計数され得る生存微生物は、大腸菌、レジオネラ属、レジオネラ・ニューモフィラおよびサルモネラ属である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、上記方法は、大腸菌の検出および計数を可能にする。この実施形態において、段階(2)での使用に好ましい特異的標識オリゴヌクレオチドプローブは以下である:
−Mc Gregorら(Mc Gregorら、1996)に記載のECOLIプローブ(配列番号1)、
−Regnaultら(Regnaultら、2000)に記載のColinsituプローブ(配列番号2)、および
−配列番号1または2と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列;
この実施形態において、段階(3)での使用に好ましいヘルパープローブは以下である:
−HECOLILプローブ(配列番号3)、
−HECOLIRプローブ(配列番号4)、
−HColinsituLプローブ(配列番号5)、
−HColinsituRプローブ(配列番号6)
−および配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列;
本発明のこの実施形態において、ECOLIプローブは、好ましくはHECOLILプローブおよびHECOLIRプローブと組み合わせて使用され、Colinsituプローブは、好ましくはHColinsituLプローブおよびHColinsituRプローブと組み合わせて使用される。
【0025】
【表1】

【0026】
本発明の好ましい実施形態において、上記方法は、レジオネラ属の検出および計数を可能にする。この実施形態において、本方法の段階(2)での使用に好ましい特異的標識オリゴヌクレオチドプローブは以下である:
−Manzら(Manzら、1995)に記載のLEG705プローブ(配列番号7)、
−Manzら(Manzら、1995)に記載のLEG226プローブ(配列番号8)、
−Leskelaら(Leskelaら、2005)に記載のLegall11プローブ(配列番号9)、
−Leskelaら(Leskelaら、2005)に記載のLegall22プローブ(配列番号10)、
−Buchbinderら(Buchbinderら、2002)に記載のLeg120vプローブ(配列番号11)、
−および配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10または配列番号11と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列;
この実施形態において、本方法の段階(3)での使用に好ましいヘルパープローブは以下である:
−HLEG705Lプローブ(配列番号12)、
−HLEG705Rプローブ(配列番号13)、
−HLEG226Lプローブ(配列番号14)、
−HLEG226Rプローブ(配列番号15)、
−HLegall11Lプローブ(配列番号16)、
−HLegall11Rプローブ(配列番号17)、
−HLegall22Lプローブ(配列番号18)、
−HLegall22Rプローブ(配列番号19)、
−HLeg120vL(配列番号20)、
−HLeg120vR(配列番号21)
−および配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20または配列番号21と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列;
本発明のこの実施形態において、LEG705プローブは、好ましくはHLEG705LプローブおよびHLEG705Rプローブと組み合わせて使用され、LEG226プローブは好ましくはHLEG226LプローブおよびHLEG226Rプローブと組み合わせて使用され、Legall11プローブは、好ましくはHLegall11LプローブおよびHLegall11Rプローブと組み合わせて使用され、Legall22プローブは、好ましくはHLegall22LプローブおよびHLegall22Rプローブと組み合わせて使用され、Leg120vプローブは、好ましくはHLeg120vLプローブおよびHLeg120vRプローブと組み合わせて使用される。
【0027】
【表2】

【0028】
本発明の好ましい実施形態において、上記方法は、レジオネラ・ニューモフィラの検出および計数を可能にする。この実施形態において、本方法の段階(2)での使用に好ましい特異的標識オリゴヌクレオチドプローブは以下である:
−GrimmらおよびDeclerckら(Grimmら、1998およびDeclerckら、2003)に記載のLEGPNE1プローブ(配列番号22)、
−Yamamotoら(Yamamotoら、1993)に記載のLP2プローブ(配列番号23)、
−および配列番号22または配列番号23と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列;
この実施形態において、本方法の段階(3)での使用に好ましいヘルパープローブは以下である:
−HLEPGNE1Lプローブ(配列番号24)、
−HLEPGNE1Rプローブ(配列番号25)、
−HLP2Lプローブ(配列番号26)、
−HLP2Rプローブ(配列番号27)、
−および配列番号24、配列番号25、配列番号26または配列番号27と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列;
本発明のこの実施形態において、LEGPNE1プローブは、好ましくはHLEPGNE1LプローブおよびHLEPGNE1Rプローブと組み合わせて使用され、LP2プローブは、好ましくはHLP2LプローブおよびHLP2Rプローブと組み合わせて使用される。
【0029】
【表3】

【0030】
本発明の好ましい実施形態において、上記方法は、サルモネラ属の検出および計数を可能にする。この実施形態において、本方法の段階(2)での使用に好ましい特異的標識オリゴヌクレオチドプローブは以下である:
−RonnerおよびStackebrandt(RonnerおよびStackebrandt、1994)に記載されたSal1プローブ(配列番号28)、
−Nordentoftら、ならびにOliveiraおよびBernardo(Nordentoftら、1997、OliveiraおよびBernardo、2002)に記載されたSal3プローブ(配列番号29)、
−Fangら(Fangら、2003)に記載されたSal544プローブ(配列番号30)、
−および配列番号28、配列番号29または配列番号30と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列;
この実施形態において、本方法の段階(3)での使用に好ましいヘルパープローブは以下である:
−HSal1Lプローブ(配列番号31)、
−HSal1Rプローブ(配列番号32)、
−HSal3Lプローブ(配列番号33)、
−HSal3Rプローブ(配列番号34)、
−HSal544Lプローブ(配列番号35)、
−HSal544Rプローブ(配列番号36)、
−および配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35または配列番号36と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列;
本発明のこの実施形態において、Sal1プローブは、好ましくはHSal1LプローブおよびHSal1Rプローブと組み合わせて使用され、Sal3プローブは、好ましくはHSal3LプローブおよびHSal3Rプローブと組み合わせて使用され、Sal544プローブは、好ましくはHSal544LプローブおよびHSal544Rプローブと組み合わせて使用される。
【0031】
【表4】

【0032】
本発明は以下も対象とする:
上述したような、
−サンプル中の大腸菌の検出および計数のためのヘルパープローブ、
−サンプル中のレジオネラ属の検出および計数のためのヘルパープローブ、
−サンプル中のレジオネラ・ニューモフィラの検出および計数のためのヘルパープローブ、
−サンプル中のサルモネラ属の検出および計数のためのヘルパープローブ。
【0033】
ヘルパープローブは、特異的標識プローブによって標的とされる領域に隣接する領域に結合する未標識のオリゴヌクレオチドであり、in situでの到達可能性を増強し、従ってプローブに付与されたシグナルを増強する。特異的プローブの5’および3’隣接領域を標的とするヘルパープローブは、以下のように設計する。
【0034】
特異的プローブの5’および3’隣接領域に位置する30ヌクレオチドの配列は、標的微生物のアラインメントの検討によって同定される。ヘルパー配列の長さはTm(融解温度)によって決定され、これは、特異的プローブの融解温度と近接し、好ましくは少なくとも同程度の高さでなければならない。設計されたヘルパー配列の特異性は、大きいrDNA配列の参照データベースに対するアラインメントの検討によってin silicoで試験される。ヘルパーの特異性は、標的微生物を含まなければならないが、排他的にではない。
【0035】
特異的標識プローブのために最適化されたハイブリダイゼーション条件(緩衝液の組成、例えば、塩、ホルムアミド濃度および温度)は、ヘルパーを用いて試験される。標識特異的プローブと組み合わせた場合の未標識ヘルパーのポジティブな影響の評価は、落射蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーまたは固相サイトメトリーによって、あるいは任意の等価な検出機器を用いて、評価される。
【0036】
他の微生物の検出および計数のためにこれらの他の微生物に特異的な他のヘルパープローブを設計することは、本発明を知る当業者の能力の範囲内である。
【0037】
本発明はまた、サンプル中の生存する微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る標識オリゴヌクレオチドプローブの蛍光シグナルを増大させるためのキットを提供し、このキットは以下を含む:
(1)前記微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ、および
(2)前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブ。
【0038】
本発明の別の実施形態において、このキットは、細胞栄養源および細胞増殖インヒビターをさらに含む。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明は、サンプル中の大腸菌のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る標識オリゴヌクレオチドプローブの蛍光シグナルを増大させるためのキットを提供し、このキットは以下を含む:
(1)ECOLIプローブ(配列番号1)、Colinsituプローブ(配列番号2)および配列番号1または2と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、前記微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ、および
(2)HECOLILプローブ(配列番号3)、HECOLIR(配列番号4)、HColinsituL(配列番号5)、HColinsituR(配列番号6)および配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブ。
【0040】
好ましい実施形態において、本発明は、サンプル中のレジオネラ属のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る標識オリゴヌクレオチドプローブの蛍光シグナルを増大させるためのキットを提供し、このキットは以下を含む:
(1)LEG705プローブ(配列番号7)、LEG226プローブ(配列番号8)、Legall11プローブ(配列番号9)、Legall22プローブ(配列番号10)、Leg120vプローブ(配列番号11)および配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10または配列番号11と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、前記微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ、および
(2)HLEG705Lプローブ(配列番号12)、HLEG705Rプローブ(配列番号13)、HLEG226Lプローブ(配列番号14)、HLEG226Rプローブ(配列番号15)、HLegall11Lプローブ(配列番号16)、HLegall11Rプローブ(配列番号17)、HLegall22Lプローブ(配列番号18)、HLegall22Rプローブ(配列番号19)、HLeg120vL(配列番号20)、HLeg120vR(配列番号21)および配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20または配列番号21と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブ。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明は、サンプル中のレジオネラ・ニューモフィラのリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る標識オリゴヌクレオチドプローブの蛍光シグナルを増大させるためのキットを提供し、このキットは以下を含む:
(1)LEGPNE1プローブ(配列番号22)、LP2プローブ(配列番号23)および配列番号22または配列番号23と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、前記微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ、および
(2)HLEPGNE1Lプローブ(配列番号24)、HLEPGNE1Rプローブ(配列番号25)、HLP2Lプローブ(配列番号26)、HLP2Rプローブ(配列番号27)および配列番号24、配列番号25、配列番号26または配列番号27と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブ。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明は、サンプル中のサルモネラ属のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る標識オリゴヌクレオチドプローブの蛍光シグナルを増大させるためのキットを提供し、このキットは以下を含む:
(1)Sal1プローブ(配列番号28)、Sal3プローブ(配列番号29)、Sal544プローブ(配列番号30)および配列番号28、配列番号29または配列番号30と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、前記微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ、および
(2)HSal1Lプローブ(配列番号31)、HSal1Rプローブ(配列番号32)、HSal3Lプローブ(配列番号33)、HSal3Rプローブ(配列番号34)、HSal544Lプローブ(配列番号35)、HSal544Rプローブ(配列番号36)および配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35または配列番号36と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブ。
【0043】
本発明を以下の実施例で例示するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと決して解釈すべきではない。
【実施例】
【0044】
1.ヘルパープローブの設計
ヘルパープローブ(30ヌクレオチド)を、大腸菌特異的標識プローブ(ECOLIおよびCOLINSITU)の5’および3’隣接領域に対して設計した。
ECOLIプローブは大腸菌16SrDNA遺伝子の453〜475位を標的とする。
【0045】
ECOLIプローブの5’隣接領域に対するヘルパープローブ配列は、
HECOLIL(5'-3'):TTCCT CCCCG CTGAA AGTAC TTTAC ACCCGであり、大腸菌16SrDNA遺伝子の425〜452位を標的とする。
ECOLIプローブの3’隣接領域に対するヘルパープローブ配列は、
HECOLIR(5'-3'):CGGTG CTTCT TCTGC GGGTA ACGTC AATGAであり、大腸菌16SrDNA遺伝子の476〜505位を標的とする。
【0046】
COLINSITUプローブは、大腸菌16SrDNA遺伝子の637〜660位を標的化する。
COLINSITUプローブの5'隣接領域に対するヘルパープローブ配列は、
HCOLINSITUL:ATGCA GTTCC CAGGT TGAGC CCGGG GATTTであり、大腸菌16SrDNA遺伝子の617〜636位を標的とする。
COLINSITUプローブの3'隣接領域に対するヘルパープローブ配列は、
HCOLINSITUR:CGCTA CACCT GGAAT TCTAC CCCCC TCTACであり、大腸菌16SrDNA遺伝子の661〜684位を標的とする。
【0047】
ヘルパー配列は、任意の系統学ソフトウェア(例えば、ARBソフトウェアなど)を使用して、16SrDNAデータベース(Genbank)内の参照された大腸菌配列のアラインメントの検討によって最初に同定した。
各ヘルパープローブの長さは、そのTmを特異的プローブのTmに調整するため、HECOLILについては30ヌクレオチドから18ヌクレオチドへ、HECOLIRについては19ヌクレオチドへ、HCOLINSITULについては19ヌクレオチドへ、HCOLINSITURについては24ヌクレオチドへ減少させた。
ヘルパーの特異性は、配列16SrDNAのデータベースから参照したアラインされた大腸菌配列の検討によって、in silicoで確認した。
ヘルパーの特異性は、大腸菌のメンバーを標的としたが、排他的にではない。
【0048】
特異的標識プローブのために最適化したハイブリダイゼーション条件を、いくつかの大腸菌株についてヘルパーを用いて試験した。HECOLIRヘルパーは、蛍光付与プローブを増強しなかったが維持した。
大腸菌の特異的検出のために設計したプローブの完全セット(標識特異的オリゴヌクレオチドおよび未標識ヘルパーを含む)を、多種多様な大腸菌株および非大腸菌株について評価し、その特異性を評価した。設計したヘルパーのDNA配列を表1に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
2.材料および方法
プローブ
本実施例で使用する大腸菌16SrRNA特異的プローブのECOLIおよびColinsituは、McGregorらおよびRegnaultら(McGregorら、1996、Regnaultら、2000)にそれぞれ記載されている。5'フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-ECOLIプローブおよび5'FITC-Colinsituプローブは、ThermoElectron、Ulm、Germanyから購入した。ヘルパープローブのHECOLIL、HECOLIR、HColinsituLおよびHColinsituRは、上述のとおりに設計した。
【0051】
細胞培養
株は、腸内細菌科の株については37℃で、非腸内細菌科の株については30℃で、18〜24時間TCS培地上で培養した。定常増殖期(低rRNA含量)の細胞を得るために、1%の上記培養物を新たなTSC培地に接種し、腸内細菌科の株については37℃で、非腸内細菌科の株については30℃で、18〜24時間培養した。培養工程後、細胞をPBS中に懸濁し、細胞懸濁物を102〜103細胞/mlに調整した。
次いで、定常増殖期にある100マイクロリットルの細胞懸濁物を、CB04メンブレンを通して濾過した。
【0052】
DVC手順
定常増殖期にある100マイクロリットルの細胞懸濁物を、CB04メンブレンを通して濾過し、ペトリ皿中、ナリジキシン酸(最終濃度10μg/ml、Sigma)を含む非選択的栄養培地(70%PBS、0.036%酵母抽出物、0.36%カザミノ酸)550μl中に浸した標識パッド上に配置した。次いでサンプルを37℃で4時間インキュベートした。
【0053】
FISHプロトコール
未処理の細胞およびDVC処理した細胞を、550μlの80%エタノール中に浸した標識パッド上に固定した。メンブレンおよびパッドを室温で約5分間ペトリ皿中で室温でインキュベートし、次いで室温で3分間乾燥させた。メンブレンを、ペトリ皿中、それぞれのプローブ(各オリゴヌクレオチドFITC標識プローブおよび未標識プローブの最終濃度は2.5ng/μlとした)を含む50μlのハイブリダイゼーション緩衝液(0.9mM NaCl、20mM Tris-HCl pH7.2、0.01%ドデシル硫酸ナトリウム、20%脱イオン化ホルムアミド、0.5%ウシ血清アルブミン、0.1mg/ml Poly(A)、0.01%エバンスブルー)中に配置し、46℃で1.5時間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、メンブレンを、洗浄緩衝液(40mM NaCl、20mM Tris-HCl pH7.2、0.01%ドデシル硫酸ナトリウム、5mM EDTA、0.01%エバンスブルー)中に浸した標識パッド上に配置し、ChemScanRDI分析まで室温でインキュベートした。
【0054】
ChemScan RDI分析
各染色メンブレンを、80μlの洗浄緩衝液で飽和した25mm、0.45μmの孔サイズの黒色セルロースメンブレン(サポートパッド、Chemunex)の上部のChemScanRDIのサンプルホルダ上に配置した。ChemScanRDIシステムは、ビームアルゴンレーザー(488nm発光波長)を用いたCB04メンブレンのスキャンからなった。500〜530nmおよび540〜570nmで発光する全ての蛍光事象を、2つの光電子増倍管で収集し、数値化したシグナルでChemScanRDIソフトウェア(Chemunex)へ伝達した。蛍光シグナルを、内部判別式を用いて生データから識別し、染色細胞と自己蛍光粒子との間を区別した。各蛍光事象に適用した目的の判別式は以下であった:ピーク強度、それぞれ540〜570nmの発光チャネルおよび500〜530nmの発光チャネルに従う二次/一次比、ラインの数(nL)およびサンプルの数(nS)。分析手順の最後に、結果を模式的メンブレン(マップ)上にプロットし、その上に全ての判別された蛍光事象を位置づけた(x座標およびy座標)。25mmのメンブレンの全体的スキャンおよび判別プロセスは3分で実施した。落射蛍光顕微鏡観察による、判別された蛍光事象の最終検証段階が必要とされ、SPCにより駆動されるモーター付きステージ上にWIBAフィルターが取り付けられたBX60落射蛍光顕微鏡を使用して可能な限り実施した。本実施例では、ScanRDIソフトウェアを用いて決定した3つの判別式パラメータを使用して、ポジティブなハイブリダイズした細胞を特徴付けた:任意の蛍光単位(FU)で表した優勢なピークのピーク強度蛍光(PIF)、ならびにそれぞれx軸およびy軸の蛍光強度および細胞長に両方が関連した、スキャンラインの数(nL)およびスキャンサンプルの数(nS)。nL×nSの積の値は、細胞サイズの指標を提供するのに有用である。結果として、PIFおよび積nL×nSを、それぞれ、16SrRNA標的の細胞内含量の表れおよび細胞伸長の速度の表れであるとみなした。
【0055】
3.結果
未処理のDVC細胞およびDVC処理細胞(大腸菌ATCC 11775)を、ヘルパープローブを含むかまたは含まない異なるプローブの組み合わせとハイブリダイズさせた。ハイブリダイズした細胞の蛍光シグナルをChemScanRDIで評価した。結果を表2にまとめる。
【0056】
【表6】

【0057】
DVC手順により処理していない大腸菌のハイブリダイズした細胞は、ChemScanRDIで検出されなかった。未処理のDVC細胞のリボソーム含量はあまりに低く、FISHプロトコールを使用していてもChemScanRDIの検出閾値を下回る弱い蛍光シグナルを生じる。比較して、FITC-Colinsituプローブとハイブリダイズした細胞を除いて、DVC処理細胞がChemScanRDIによって検出された。2つのFITC標識プローブの使用は、単一のFITC標識プローブと比較して、ハイブリダイズした細胞の蛍光強度の弱い増幅(×1.2)を可能にするが、FITC標識プローブと組み合わせたヘルパープローブの使用は、ハイブリダイズした細胞の蛍光強度のより強い増幅(×5.6)を可能にする。
【0058】
大腸菌検出のために設計したヘルパープローブの特異性を、大腸菌(n=29)、2つの腸管病原性大腸菌株(血清型O157:H7およびO126:B16)、腸内細菌科の他のメンバー(n=33)および非腸内細菌科株(n=12)を含む、74の真正細菌株について試験した(表3)。対数増殖期中期の細胞に対して、FITC-ColinsituプローブおよびFITC-ECOLIプローブならびに4つの設計したヘルパープローブを使用してアッセイを実施した。試験した全ての大腸菌株は、2つの腸管病原性株を含め、ポジティブなハイブリダイゼーションシグナルを与えた。プローブは、腸内細菌科の他のメンバーとも、シゲラボイディ(Shigella boydii)、シゲラディセンテリエ(S. dysenteriae)およびシゲラゾネイ(S. sonnei)を除く非腸内細菌科の株とも、交差反応しなかった。この交差反応は、Regnaultら(Regnaultら、2000)によりすでに報告されており、彼らは、大腸菌、エシェリキアフェルグソニー(E. fergusonii)、シゲラフレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラディセンテリエ、シゲラゾネイおよびシゲラボイディ間での、Colinsitu標的配列(位置637〜660)からのrrs配列の100%の相同性を開示した。しかし、本実施例において、ハイブリダイズしたシゲラ株細胞の蛍光強度は、強い蛍光シグナルを示した全てのハイブリダイズした大腸菌株と比較して弱かった。シゲラ属について検出された交差反応は、Regnaultら(2000)によってすでに報告されており、彼らは、大腸菌、エシェリキアフェルグソニー、シゲラフレクスネリ、シゲラディセンテリエ、シゲラゾネイおよびシゲラボイディについて、Colinsitu標的配列(位置637〜660)からの100%のrrs配列相同性を報告した。同様に、本発明者らは、ECOLI標的配列をGenBankに提出した際に、大腸菌、エシェリキアアルベルティ(E. albertii)、シゲラフレクスネリ、シゲラディゼンテリエ、シゲラゾネイおよびシゲラボイディについて同じ一致を見出した。
【0059】
本発明は、濾過したサンプル体積当たり1つの単一の大腸菌生存細胞までの検出限界を示した。分析した体積は、ChemScanRDI検出を可能にする水サンプルの最大体積として決定される。例えば、水道水および容器入りの水については500mL、海水については25mLと規定した。本発明は、水サンプルによれば107〜108の非標的化細胞のうち単一の大腸菌細胞の検出を可能にした(例えば、海洋レクリエーション水中の検出限界は、107の非標的細胞のうち1細胞であった)。
【0060】
【表7】


【0061】
(参考文献)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を含むことが疑われるサンプル中の生存する前記微生物を検出および計数するための方法であって、
(1)前記サンプルを、細胞栄養源および細胞増殖インヒビターと接触させる段階と、
(2)前記サンプルを、前記微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブと接触させる段階と、
(3)前記サンプルを、前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブと接触させる段階と、
(4)蛍光シグナルを検出および定量する段階と
を含む方法。
【請求項2】
検出および計数される生存微生物が、好ましくは、大腸菌、レジオネラ属、レジオネラ・ニューモフィラおよびサルモネラ属からなる群より選択される細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(2)で使用する標識プローブが、ECOLIプローブ(配列番号1)、Colinsituプローブ(配列番号2)および配列番号1または配列番号2と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択され;かつ、段階(3)で使用するヘルパープローブが、HECOLILプローブ(配列番号3)、HECOLIR(配列番号4)、HColinsituL(配列番号5)、HColinsituR(配列番号6)および配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、サンプル中の大腸菌を検出および計数するための、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階(2)で使用する標識プローブが、LEG705プローブ(配列番号7)、LEG226プローブ(配列番号8)、Legall11プローブ(配列番号9)、Legall22プローブ(配列番号10)、Leg120vプローブ(配列番号11)および配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10または配列番号11と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択され;かつ、段階(3)で使用する「ヘルパー」プローブが、HLEG705Lプローブ(配列番号12)、HLEG705Rプローブ(配列番号13)、HLEG226Lプローブ(配列番号14)、HLEG226Rプローブ(配列番号15)、HLegall11Lプローブ(配列番号16)、HLegall11Rプローブ(配列番号17)、HLegall22Lプローブ(配列番号18)、HLegall22Rプローブ(配列番号19)、HLeg120vL(配列番号20)、HLeg120vR(配列番号21)および配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20または配列番号21と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、試験サンプル中のレジオネラ属を検出および定量するための、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
段階(2)で使用する標識プローブが、LEGPNE1プローブ(配列番号22)、LP2プローブ(配列番号23)および配列番号22または配列番号23と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択され;かつ、段階(3)で使用するヘルパープローブが、HLEPGNE1Lプローブ(配列番号24)、HLEPGNE1Rプローブ(配列番号25)、HLP2Lプローブ(配列番号26)、HLP2Rプローブ(配列番号27)および配列番号24、配列番号25、配列番号26または配列番号27と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、サンプル中のレジオネラ・ニューモフィラを検出および定量するための、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
段階(2)で使用する標識プローブが、Sal1プローブ(配列番号28)、Sal3プローブ(配列番号29)、Sal544プローブ(配列番号30)および配列番号28、配列番号29または配列番号30と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択され;段階(3)で使用するヘルパープローブが、HSal1Lプローブ(配列番号31)、HSal1Rプローブ(配列番号32)、HSal3Lプローブ(配列番号33)、HSal3Rプローブ(配列番号34)、HSal544Lプローブ(配列番号35)、HSal544Rプローブ(配列番号36)および配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35または配列番号36と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%の同一性を有する全ての配列からなる群より選択される、サンプル中のサルモネラ属を検出および定量するための、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
大腸菌の検出および計数のための、請求項3に規定されるヘルパープローブ。
【請求項8】
レジオネラ属の検出および計数のための、請求項4に規定されるヘルパープローブ。
【請求項9】
レジオネラ・ニューモフィラの検出および計数のための、請求項5に規定されるヘルパープローブ。
【請求項10】
サルモネラ属の検出および計数のための、請求項6に規定されるヘルパープローブ。
【請求項11】
サンプル中の生存する微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る標識オリゴヌクレオチドプローブの蛍光シグナルを増大させるためのキットであって、
(1)前記微生物のリボソーム核酸の少なくとも一部分と特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ、および
(2)前記微生物の前記リボソーム核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズし得る少なくとも1つのヘルパープローブ
を含むキット。
【請求項12】
細胞栄養源および細胞増殖インヒビターをさらに含む、請求項11に記載のキット。

【公表番号】特表2009−535052(P2009−535052A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508524(P2009−508524)
【出願日】平成19年4月30日(2007.4.30)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001122
【国際公開番号】WO2007/129182
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(503220093)ユニヴェルシテ ピエール エ マリ キュリ (6)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】