説明

微生物担体の製造方法

【課題】輸送や保管の際の取り扱い、浄水槽等への投入時の作業性、及び使用時の汚水処理効果の優れた圧縮状態の微生物担体を得ること。
【解決手段】最初の浸透工程P1において、微生物担体に水性バインダを浸透させる。次の第1乾燥工程P2において、微生物担体の表面部の水性バインダを乾燥させて半乾燥状態の担体13とする。続く圧縮工程P3において、半乾燥状態の担体13を圧縮する。さらに、第2乾燥工程P4において、真空チャンバー45内の減圧状況下で圧縮状態の担体13に対して、高周波発生装置48から高周波を照射した後に、遠赤外線ヒータ51から遠赤外線を照射し、圧縮状態の担体13の水性バインダを乾燥させて圧縮状態を固定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば浄水槽に投入して微生物による汚水等の処理を行うことに使用される微生物担体に係り、特に圧縮構造よりなる微生物担体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の微生物担体としては、例えば軟質ポリウレタン発泡体を所定寸法のキュービックチップ状に形成したものが知られている。ところが、この従来構成では、吸水性に乏しいため、微生物担体を浄化槽等に投入した場合、微生物担体が被処理水の表面に浮遊するのみで、被処理水中に分散され難く、従って、微生物の担持機能が低く、汚水処理効果が低いものであった。
【0003】
そこで、軟質ポリウレタン発泡体の表面に、吸水性を高めるための処理を施した微生物担体も従来から提案されている。しかしながら、微生物担体が被処理水との接触効率を高めるために小寸法に形成されることが多いので、その表面に吸水性を高めるための処理を施すのが困難で、処理作業に手間がかかるものであった。
【0004】
また、軟質ポリウレタン発泡体のチップよりなる従来の微生物担体は、比重が小さくて吸水性が乏しいこともあって、微生物担体を浄化槽等に投入した際に、水面上に浮遊して強風が吹くと、周囲に飛散してしまうという問題があった。さらに、この従来の微生物担体では、梱包した際に全体が嵩張るため、梱包容積が大きくなって、輸送や保管に広い場所が必要になるという問題もあった。
【0005】
このような問題点に対処するため、例えば、特許文献1に開示されるような構成も従来から提案されている。すなわち、この従来構成においては、水溶性合成樹脂を一部又は全部に用いた収容袋内に、軟質ポリウレタン発泡体のチップよりなる微生物担体を圧縮して収容し、その収容袋に収容したままの状態で、微生物担体を浄化槽等に投入するようになっている。
【特許文献1】特開2004−89803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この特許文献1に記載の従来構成では、微生物担体を構成する軟質ポリウレタン発泡体が吸水性に乏しいため、微生物担体を水溶性収容袋に収容した状態で浄化槽等に投入しても、微生物担体が前記のように被処理水の水面に浮遊し、充分に吸水するまでに時間を要した。よって、所要の汚水処理効果を得るのに時間がかかるという問題があった。また、微生物担体は、浄化槽への投入前は圧縮された状態にあるものの、収容袋に収容されただけの状態であるため、嵩張って、輸送や保管において不便であった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、輸送や保管の際の取り扱い、浄水槽等への投入時の作業性、及び使用時の汚水処理効果の優れた圧縮状態の微生物担体を、簡単な工程にて容易に製造することができる微生物担体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は、微生物担体に水性バインダを浸透させる浸透工程と、前記微生物担体を圧縮する圧縮工程と、圧縮状態の微生物担体の水性バインダを乾燥させて圧縮状態を固定化する乾燥工程とを備え、その乾燥工程において圧縮された微生物担体に対して、高周波照射に続いて、遠赤外線を照射することを特徴としている。
【0009】
従って、この製造方法によれば、高周波照射によって微生物担体の内部の水分が押し出され、続いて遠赤外線によって速やかに乾燥される。従って、圧縮状態の微生物担体を短時間で簡単に製造することができる。そして、この微生物担体では、微生物担体が圧縮状態になっているため、その梱包容積を小さくすることができて、広い場所を要することなく輸送及び保管を容易に行うことができる。また、微生物担体が圧縮状態に固形化されているため、同担体の飛散を防止でき、また、浄化槽の投入口が小さくても支障なく投入することができる。さらに、浄化槽等への投入時には、微生物担体は圧縮状態で比重が高く、しかも、吸水性樹脂の水性バインダが水を吸収することから、被処理水内に速やかに水没させることができ、同被処理水内で微生物を担持して高い汚水処理効果を発揮させることができる。
【0010】
また、前記の製造方法において、乾燥工程は、微生物担体の表面部の水性バインダを乾燥させる第1乾燥工程と、圧縮状態で、かつ半乾燥状態にある担体を圧縮状態に固定化する第2乾燥工程とを備え、第2乾燥工程が減圧状況下における高周波及び遠赤外線の照射より行われるようにするとよい。このようにした場合には、微生物担体の乾燥を、第1乾燥工程による微生物担体の表面部の乾燥と、第2乾燥工程による半乾燥状態の担体の圧縮状態での乾燥固定化とに分けて行うことができて、乾燥効果を高めることができるとともに、第2乾燥工程における半乾燥体の圧縮によって余分な水性バインダがしみ出て来るのを防止できる。
【0011】
前記第2乾燥工程として、高周波及び遠赤外線の照射を複数サイクル繰り返すようにすれば、微生物担体を有効に乾燥させることができる。
また、少なくとも高周波照射を減圧状態で行うようにすれば、水分の沸点が下降されて、水分が効率的に蒸発されるとともに、高周波による温度上昇が過度になることを抑制でき、微生物担体の焼損を未然に防止できる。
【0012】
さらに、前記の製造方法において、圧縮工程では、複数の半乾燥状態にある担体を成形型内で一体的に圧縮成形して板状の担体集合体にするとよい。このようにした場合には、微生物担体を板状の担体集合体に成形した状態で梱包処理することができて、輸送や保管時の取り扱い、及び浄水槽等への投入時の作業等を一層容易に行うことができる。
【0013】
さらに、前記の製造方法において、担体集合体の少なくとも一方の側面に折取りラインが形成されるように、担体集合体を圧縮成形するとよい。このようにした場合には、浄水槽等への投入時に、担持集合体を折取りラインに沿って任意の大きさに容易に折り取ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、輸送や保管の際の取り扱い、浄水槽等への投入時の作業性、及び使用時の汚水処理効果の優れた圧縮状態の微生物担体を簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、この発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の微生物担体の製造方法では、微生物担体11(図6及び図7において図示。ただし、図6及び図7においては、後述の説明から明らかなように、微生物担体11は圧縮状態にあって、図のようには表れない)に水性バインダ(図示しない)を浸透させる浸透工程P1と、微生物担体11の表面部の水性バインダを乾燥させて半乾燥状態にある担体13を得る第1乾燥工程P2(図2参照)とが設けられている。また、半乾燥状態にある担体13を圧縮する圧縮工程P3(図4参照)と、圧縮状態の微生物担体11中の水性バインダを乾燥させて圧縮状態を固形化し、微生物担体11としての板状の担体集合体14を形成する第2乾燥工程P4(図5参照)とが設けられている。さらに、前記担体集合体14を脱型する脱型工程P5(図7参照)と、担体集合体14を梱包する梱包工程P6(図8参照)とが設けられている。
【0016】
前記微生物担体11としては、軟質ポリウレタン発泡体等の連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体を、所定寸法(例えば、一辺長さ3〜50mm)のキュービックチップ状等に形成したものが用いられている。
【0017】
また、水性バインダとしては、カルボキシメチルセルロース等の吸水性のある樹脂が用いられる。このカルボキシメチルセルロースは生分解するため、同カルボキシメチルセルロースが微生物担体11のセル内に残った場合に、汚水を分解する微生物が残ったカルボキシメチルセルロースをも分解する。
【0018】
前記浸透工程P1には、公知のニーダが使用できる。脱泡混練装置(ノンバブリングニーダ),分解型ニーダ等がある。そして、微生物担体11をニーダミキサに投入し、水性バインダを適宜滴下することで、微生物担体11の表面に水性バインダを塗布する。これにより、微生物担体11と水性バインダが均一に分散され、微生物担体11に水性バインダが浸透される。
【0019】
図1及び図2に示すように、前記第1乾燥工程P2には、乾燥室28と、その乾燥室28内に回転可能に配設された網体よりなるドラム29と、そのドラム29を回転させるためのモータ30と、乾燥室28の側壁に設けられた温風ファン31とが装備されている。そして、前記浸透工程P1において水性バインダを浸透してなる微生物担体11がドラム29内に収容された状態で、同ドラム29が回転されて微生物担体11がドラム29内で舞い上がりながら攪拌される。この状態で、温風ファン31によりドラム29の網目を通して温風が微生物担体11に対して吹き付けられる。これにより、微生物担体11の中心部の水性バインダが未乾燥状態に維持されたままで、同微生物担体11の表面部の水性バインダが乾燥されて、半乾燥状態にある担体13が作られる。
【0020】
この場合、水性バインダの水分量が微生物担体11に対して65〜70重量%の範囲内となるように乾燥されるのが好ましい。なお、水性バインダの水分量が65重量%よりも少なくなると、水性バインダの乾燥固化を利用した後段の圧縮工程P3における微生物担体11の圧縮及び固形化が困難になり、水性バインダの水分量が70重量%よりも多くなると、その水性バインダの量が多すぎて、第2乾燥工程P4における微生物担体11の乾燥に時間がかかることになる。そして、第1乾燥工程P2で乾燥を終了した半乾燥状態の担体13は、前記とは別の収容容器25に収容されて、計量器32により担体集合体14の1枚分に相当する分量となるように計量される。
【0021】
図1、図3及び図4に示すように、前記圧縮工程P3には、半乾燥状態の担体13を圧縮して板状の担体集合体14を成形するための成形型35が装備されている。この成形型35は、下縁に縁枠36aを有する四角枠状の型枠36と、その型枠36内の底部に着脱可能に設置される底板37と、その底板37の上方において型枠36内に昇降可能に収容される蓋板38とから構成されている。また、この成形型35の型枠36、底板37及び蓋板38は、合成樹脂板(エンジニアリングプラスチックが好ましい)に多数の小孔39を形成したパンチングボードで構成されるとともに、表面には離型性を良好にするためのフッ素樹脂等のコーティングが施されている。成形型35の底板37の上面及び蓋板38の下面には、平面十字状の突条よりなるライン形成部40が形成されている。
【0022】
そして、図4に示すように、成形型35の縁枠36aに載置された底板37上に所定分量の半乾燥状態の担体13が充填された状態で、同担体13が押圧用シリンダ41にて蓋板38が押圧されることにより、担体13が圧縮される。この圧縮により、半乾燥の担体13であった微生物担体11の中心部における未乾燥状態の水性バインダが微生物担体11の外周部にしみ出て、圧縮状態の微生物担体11の全体に行き渡る。この場合、微生物担体11は元の体積の2分の1〜9分の1の範囲内に圧縮されるのが好ましい。なお、この微生物担体11の圧縮を元の体積の9分の1よりも小さくしようとしても、強い圧縮力が必要であるため、実際上困難であり、微生物担体11の圧縮を2分の1よりも大きくする場合には、水性バインダが微生物担体11の全体に行き渡らず、水性バインダの乾燥固化を利用する後段の第2乾燥工程P4における微生物担体11の圧縮固形化が困難になる。
【0023】
その後、図4に示すように、成形型35の型枠36の上端開口縁にトグルクランプ42が装着されて、蓋板38が押圧位置にクランプ固定されることにより、微生物担体11が担体集合体14として前述した圧縮状態に保持されて、板状の担体集合体14が一体的に成形される。この成形時には、成形型35の底板37及び蓋板38上に設けられたライン形成部40により、担体集合体14の表裏両面に、断面V字状の凹部よりなる平面十字状の折取りライン14aが形成される。
【0024】
図1及び図5に示すように、前記第2乾燥工程P4には、複数の成形型35を担体集合体14の圧縮成形状態で収容可能な減圧室としての真空チャンバー45が装備されている。真空チャンバー45には真空ポンプ46が減圧口47を介して接続され、この真空ポンプ46により真空チャンバー45内が所定の圧力値に減圧される。これにより、真空チャンバー45内における水分の沸点が下げられる。
【0025】
前記真空チャンバー45には高周波発生装置48が導波管48a及び高周波照射口49を介して接続され、真空チャンバー45の減圧状況下において、各成形型35内で圧縮状態に保持された担体集合体14に対して、この高周波発生装置48から高周波照射口49を介して高周波が照射される。なお、図面において、前記導波管48aは屈曲して描いてあるが、実際には屈曲することなく、しかも短く形成される。また、導波管48aを設けることなく、高周波発生装置48の出力アンテナ(図示しない)が真空チャンバー45の内側の露出されるように構成してもよい。真空チャンバー45の内側面にはモータ(図示しない)により低速回転されるスターラファン50が配設され、このスターラファン50の回転により、担体集合体14に照射される高周波が拡散されて、同担体集合体14に対する高周波の照射が均一化される。この高周波により、担体集合体14の内部に振動が生起されて、その振動により担体集合体14の内部に含有された水性バインダの水分が担体集合体14の表面部に押し出されて、乾燥が促進される。
【0026】
前記真空チャンバー45の内側面には複数の遠赤外線ヒータ51が配設され、この遠赤外線ヒータ51により各成形型35内の担体集合体14に対して遠赤外線が照射される。これにより、担体集合体14の表面部の水分が短時間のうちに乾燥除去されて、担体集合体14が圧縮状態に固定化される。この場合、圧縮状態で、かつ半乾燥状態の担体13よりなる担体集合体14の水分量が同担体集合体14の3〜8重量%の範囲内となるように乾燥されるのが好ましい。なお、担体集合体14の水分量が3重量%よりも少なくなるようにすると、乾燥に時間がかかり、担体集合体14の水分量が8重量%よりも多い状態では、水性バインダの乾燥固化が充分ではないため、担体集合体14の圧縮状態の固形化が不確実となる。
【0027】
すなわち、この第2乾燥工程P4においては、遠赤外線ヒータ51による遠赤外線照射が継続されている状況において、真空チャンバー45内が減圧され、この減圧状況において高周波の照射が行われる。従って、担体集合体14に含まれた水性バインダの水分が担体集合体14の外周側に移動されるとともに、遠赤外線により低温下(例えば、40〜70度)で蒸発される。そして、水性バインダの水分がある程度蒸発されたら、高周波照射が停止されるとともに、真空チャンバー45内に新たな大気が導入されて同真空チャンバー45内が大気圧に戻される。次いで、前記のように、遠赤外線の照射状態において、真空チャンバー45内が減圧状態にされるとともに、高周波が照射される。このように、1回の減圧状態における高周波照射を1乾燥サイクルとし、この1乾燥サイクルが複数回繰り返されて、水性バインダの乾燥が進み、担体集合体14の水分量が3〜8重量%の範囲内となる。なお、遠赤外線の照射は、高周波の照射と一致するタイミングで断続的に行ってもよい。ちなみに、担体集合体14に対し大気圧下で高周波を照射すると、担体集合体14が焼損するおそれがある。
【0028】
図1及び図7に示すように、前記脱型工程P5においては、圧縮状態に乾燥固形化された担体集合体14が成形型35内から脱型される。この場合、成形型35が型枠36と底板37と蓋板38とに分離して構成されているため、型枠36から蓋板38を取り外した後、底板37を型枠36の内底部の縁枠36a上方へ離間させることにより、担体集合体14を型枠36内から簡単に離型させることができる。
【0029】
図1及び図8に示すように、前記梱包工程P6においては、複数枚の担体集合体14が積層された状態で、ビニル等よりなる梱包袋57内に梱包される。この場合、微生物担体11が圧縮状態において固形化されて、板状の担体集合体14として一体に成形されているため、全体が嵩張ることなく、小さな梱包容積で容易に梱包することができる。また、この担体集合体14の梱包状態では、広い場所を要することなく、その梱包体の輸送や保管を行うこともできる。
【0030】
以上のように、この微生物担体11の製造方法によれば、浸透工程P1、第1乾燥工程P2、圧縮工程P3及び第2乾燥工程P4を含む工程により、圧縮状態の微生物担体11としての担体集合体14を簡単に製造することができる。
【0031】
さらに、この担体集合体14を浄化槽等に投入して使用する際には、微生物担体11が水性バインダを介して圧縮状態に固形化されているため、微生物担体11が周囲に飛び散ることはなく、従って、浄化槽等の周囲に散乱することはない。しかも、この浄化槽等への投入時には、図6に示すように、担体集合体14を折取りライン14aに沿って折り取ることができるため、浄化槽の小さな点検口等の投入口から容易に投入することができる。そして、担体集合体14を浄化槽へ投入したときには、担体集合体14は水性バインダによって圧縮状態で固形化されているため、比重が大きく、しかも内部に気泡はほとんど存在しない。従って、担体集合体14は浄化槽の被処理水内に速やかに没せられ、次いで、水性バインダが溶解して、担体集合体14は、キュービック形状の微生物担体11として復元されるとともに、その復元過程で被処理水を吸収する。そして、微生物担体11は復元により、相互の結合を解かれて分離して被処理水内の全体に分散され、その状態で微生物を担持して、高い汚水処理効果を発揮させることができる。
【0032】
以上に述べた実施形態の効果を列挙すれば以下の通りである。
(1) 微生物担体11に水性バインダを浸透させて圧縮乾燥させるだけの工程にて輸送や保管に便利な微生物担体11を簡単に製造することができる。
【0033】
(2) 微生物担体11は、浄化槽への投入前においては圧縮状態になっているため、その梱包容積を小さくすることができて、広い場所を要することなく輸送及び保管を便利に行うことができる。
【0034】
(3) 微生物担体11が圧縮状態に固形化されているため、浄化槽等への投入後、強風が吹いたとしても、周囲に飛散することを防止することができる。
(4) 同様に、微生物担体11が圧縮状態に固形化されているため、浄化槽等への投入時には、比重が高く、しかも、吸水性樹脂の水性バインダが水を吸収することから、被処理水内に速やかに水没させることができ、そして、水没後は水性バインダが溶解して、復元するとともに、その復元過程において被処理水を吸収する。従って、同被処理水内で微生物を担持して高い汚水処理効果を発揮させることができる。
【0035】
(5) 担体集合体14の少なくとも一方の側面に折取りライン14aが形成されているため、微生物担体11の浄化槽等への投入時に、担体集合体14を折取りライン14aに沿って任意の大きさに容易に折り取ることができ、浄化槽の開口が小さい場合でも、手間なく投入できる。
【0036】
(6) 担体集合体14の製造方法において、第1乾燥工程では、表面部のみを乾燥させるようにした。このため、圧縮工程において、未乾燥の水性バインダが微生物担体11の全体に行き渡り、つまり担体集合体14の全体に行き渡り、均一な板圧の担体集合体14とすることができる。これ対し、第1乾燥工程における水性バインダの乾燥が過度であると、微生物担体11は自身の形状保持機能が足りず、均一で、所要の板圧の担体集合体14とすることができない。逆に、適度な乾燥が不十分で、未乾燥の水性バインダの量が多いと、第2乾燥工程の時間が長くなるばかりでなく、成形型35内における微生物担体11の圧縮にともなって水性バインダのしみ出しが発生して、その処理、つまりしみ出た水性バインダの除去等の処理に手間がかかる。
【0037】
(7) 担体集合体14の製造方法において、第2乾燥工程P4では、減圧状態における遠赤外線照射下において高周波の照射が複数サイクル行われる。このため、担体集合体14が焼損したりすることなく、水性バインダの乾燥が有効に進み、所要の乾燥状態の微生物担体11を得ることができる。
【0038】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態の浸透工程P1において、例えば微生物担体11を容器に収容した状態で水性バインダ内に浸漬させる等の異なった浸透方法を用いること。
【0039】
・ 微生物担体11をキュービック以外の形状,例えば球形,5角形以上の多面体,複数の突起を有する金平糖形状等、各種の形状に変更すること。
・ 前記実施形態の圧縮工程P3において、成形型35の底板37又は蓋板38のいずれか一方にライン形成部40を設けて、担体集合体14の表裏いずれか一方の面に折取りライン14aが形成されるようにすること。
【0040】
・ 第2乾燥工程P4において、減圧状態における高周波照射及び遠赤外線照射を複数サイクルを行うのではなく、単一サイクルにおいて連続して行うこと。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態の微生物担体の製造方法を示す工程図。
【図2】同製造方法における第1乾燥工程を拡大して示す斜視図。
【図3】同じく圧縮工程に使用する成形型を拡大して示す分解斜視図。
【図4】同じく圧縮工程を拡大して示す断面図。
【図5】同製造方法における第2乾燥工程を拡大して示す断面図。
【図6】製造された微生物担体の担体集合体を示す斜視図。
【図7】脱型工程を示す斜視図。
【図8】梱包工程を示す斜視図。
【符号の説明】
【0042】
11…微生物担体、13…半乾燥状態の担体、14…担体集合体、14a…折取りライン、17…浸透用コンベア、18…担体供給用コンベア、20…バインダ供給タンク、23…供給管路、28…乾燥室、29…ドラム、31…温風ファン、35…成形型、36…型枠、37…底板、38…蓋板、40…ライン形成部、41…押圧用シリンダ、45…真空チャンバー、46…真空ポンプ、48…高周波発生装置、51…遠赤外線ヒータ、P1…浸透工程、P2…第1乾燥工程、P3…圧縮工程、P4…第2乾燥工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物担体に水性バインダを浸透させる浸透工程と、
前記微生物担体を圧縮する圧縮工程と、
圧縮状態の微生物担体の水性バインダを乾燥させて圧縮状態を固定化する乾燥工程とを備え、
その乾燥工程において、圧縮された微生物担体に対して、高周波照射に続いて、遠赤外線を照射することを特徴とした微生物担体の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程は、微生物担体の中心部を除いて表面部の水性バインダを乾燥させることにより半乾燥状態の微生物担体とする第1乾燥工程と、圧縮状態で、かつ半乾燥状態にある担体を圧縮状態に固定化する第2乾燥工程とを備え、第2乾燥工程が減圧状況下における高周波及び遠赤外線の照射より行われることを特徴とした請求項1に記載の微生物担体の製造方法。
【請求項3】
前記第2乾燥工程は、高周波及び遠赤外線の照射を複数サイクル繰り返すことを特徴とすることを請求項2に記載の微生物担体の製造方法。
【請求項4】
少なくとも高周波照射を減圧状態で行うことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の微生物担体の製造方法。
【請求項5】
前記圧縮工程において、複数の半乾燥状態の担体を成形型内で一体的に圧縮成形して板状の担体集合体とすることを特徴とした請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の微生物担体の製造方法。
【請求項6】
担体集合体の少なくとも一方の側面に折取りラインが形成されるように、担体集合体を圧縮成形することを特徴とした請求項5に記載の微生物担体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−267631(P2007−267631A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94632(P2006−94632)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】