微生物ATPの抽出及び検出システム
本発明は、微生物細胞からのATPレベルの一段階抽出および検出のための組成物および方法に関する。開示された組成物は、一般的な一段階試薬組成物を使用して、幅広い異なる微生物中でATPのバイオルミネセンスの検出を効率的に引き出すように調合される。その他の有用な抽出剤を同定するための、または微生物細胞に対するそれらの薬学的または生物学的効果について化合物をスクリーニングするための、追加的なルミネセンスベースの方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌およびその他の微生物細胞を溶解して、ATPを検出および定量化するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生細胞を死細胞から識別する特性の1つは、ATPの存在である。ATPは広く使用されるバイオルミネセンスの検出系中の基質であるため、それは細胞生存度または細胞汚染のための代理マーカーを提供できる。ルシフェリン−ルシフェラーゼ系を使用してATPを細胞から抽出し検出する方法が、技術分野で知られている。しかし細胞のタイプ次第で、ATPの抽出および検出のための要件は異なるかもしれない。構造的に可撓性のリン脂質二層膜がある体細胞は、中性洗剤で容易に中断してATPを放出できる。より硬質の細胞壁がある細菌、酵母、および真菌は、より大きな課題をもたらす。
【0003】
Kolehmainenらに付与された米国特許第4,303,752号明細書では、生きた体細胞および微生物細胞からのヌクレオチド(ATPなど)の選択的判定のためのプロセスについて述べられてる。Kolehmainenらは、様々なイオン性および非イオン性表面活性剤を使用して、体細胞および微生物細胞の異なった透過性を活用する多段階プロセスを開発した。エトキシル化アルキルフェノールなどの非イオン性洗剤による処理に続いて、体細胞がATPを放出する一方で、細菌細胞は影響を受けないことが分かった。この観察は、エトキシル化アルキルフェノールによる体細胞の処理、放出された体ATPの洗い落とし、エトキシル化四級アミンとエトキシル化アミンを含有するより強力なイオン性界面活性剤混合物で残存細胞(ATP含有微生物細胞およびATP欠如体細胞)を処理して微生物のATPを放出することを伴う、体細胞および細菌細胞の混合集団を処理する手段を提供した。最終ステップでは、バイオルミネセンスアッセイで、放出されたATPを測定した。
【0004】
近年、Woodら(米国特許出願公開第2003/0104507号明細書)は、一段階で細胞ATPを抽出し検出するための全構成要素を含有する均質試薬組成物を使用して、細胞中のATPを検出する方法を開示した。ルシフェラーゼを犠牲にすることなくATP放出機能を保持するように独自に調合された反応構成要素は、経済と時間の観点で顕著な進歩を提供した。しかし微生物細胞にはより硬質な細胞壁があるので、開示された方法はそれらに対して最適でない。
【0005】
微生物に必要とされるイオン性洗剤などのより強力な透過処理剤の使用に結びついた1つの問題は、ルシフェラーゼ酵素を不活性化するそれらの能力である。この試薬不適合性問題は、ATP検出を開始させる最終ルシフェラーゼ/ルシフェリン添加ステップに先だつ追加的な中和または希釈ステップを必然的に伴い、一段階ATP抽出/検出試薬組成物開発の障害となる。
【0006】
微生物細胞からのATPの放出および検出に結びついた困難さを考えると、微生物細胞中のATPの一段階検出のための改善された試薬組成物および方法に対する技術分野における必要性がある。細胞壁がある細胞からのATP放出に結びついた課題に加えて、微生物細胞は典型的に体細胞よりもはるかに小さい。これは感度に関するさらなる改善を必然的に伴う。本発明は微生物細胞への一段階ATP検出法の応用における進歩を提供し、微生物細胞がATPの放出および検出を支持するそれらの能力に関してある程度、予想外の違いを示すという発見に基づく。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は微生物細胞からATPを抽出し検出する試薬組成物および方法に関する。本発明はある程度、ATPを抽出し検出するための反応条件が微生物細胞と体細胞の双方の間で異なり、試薬組成物が、幅広い微生物細胞からのATPの効率的な一段階検出を容易にするように調合されてもよいという発見に基づく。
【0008】
一態様では、本発明は、反応緩衝液、少なくとも1つのATP抽出剤、二価カチオン、二価カチオンキレート剤および/またはルシフェラーゼ/ルシフェリン混合物を含む試薬組成物を含み、その中で二価カチオン濃度は十分に低く、またはカチオンキレート剤で十分に中和されて、ATP抽出に対する二価カチオンの悪影響を低下させる。一実施形態では、試薬組成物中の二価カチオンキレート剤濃度と二価カチオン濃度との差は、約5mM未満である。別の実施形態では、二価カチオンキレート剤濃度は二価カチオン濃度の少なくとも2分の1である。二価カチオンキレート剤は、二価カチオン濃度が低い(例えば約5mM、2.5mMまたは1mM未満の)場合には、不必要であってもよい。特に好ましい実施形態では、キレート剤濃度は二価カチオン濃度以上であり、二価カチオンはMg2+であり、二価カチオンキレート剤はEDTAであり、少なくとも1つのATP抽出剤はセチルトリメチル臭化アンモニウム、クロロヘキシジン、およびトリトン−X100などの非イオン性洗剤を含む。
【0009】
別の態様では、本発明は微生物細胞中のATPを検出する方法を含み、その中で微生物サンプルは、反応緩衝液、少なくとも1つのATP抽出剤、二価カチオン、および二価カチオンキレート剤を含む試薬組成物と接触して混合物を形成し、その中で二価カチオン濃度は十分に低く、またはカチオンキレート剤によって十分に中和されてATP抽出に対する二価カチオンの悪影響を低下させ、そして二価カチオンレベルは引き続くルシフェラーゼ媒介ATP検出ステップに十分である。混合物中の二価カチオンキレート剤濃度と二価カチオン濃度との差は、約5mM未満であってもよい。代案としては、二価カチオンキレート剤濃度は混合物中の二価カチオン濃度の少なくとも2分の1であり、好ましくはそれ以上の濃度でさえあってもよい。二価カチオンキレート剤は、二価カチオン濃度が低い(例えば約5mM、2.5mM、または1mM未満)場合には不必要であってもよい。好ましい実施形態では、方法は、大腸菌(E.coli)などのグラム陰性微生物を含有するまたは含有することが疑われる微生物サンプル中のATPを検出する方法に関する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、微生物サンプル中のATPを検出するのに適したATP抽出剤を同定する方法を含み、その中で二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質を含有する組成物がサンプルに添加されて、混合物を形成する。ルミネセンスの程度が測定されて、サンプル中のATPを検出するのに適した試薬組成物が同定される。典型的に、ATP抽出剤は、ルミネセンスの程度が微生物サンプル中のATPを検出するのに十分であれば、微生物源中のATPを検出するのに適している。好ましい実施形態では、二価カチオンが混合物中に約0.5mM未満、より好ましくは約0.1mM未満の濃度で存在する。微生物サンプルは、グラム陽性またはグラム陰性細菌、古細菌、真菌などを含んでもよい。
【0011】
代案としては、微生物サンプルと、二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、およびルシフェラーゼ酵素を含む試薬組成物とを接触させて、第1の二価カチオン濃度を有する第1の混合物を形成し、微生物サンプルを接触させて、第1の混合物よりも高い二価カチオン濃度を第2の混合物中に有することだけが第1の混合物と違う第2の混合物を形成し、ATPの放出および検出に適した微生物ATP抽出剤濃度を同定し、その中で第1の混合物中のルミネセンスは第2の混合物中のルミネセンスよりも高い。
【0012】
さらに別の態様では、本発明の微生物ATP抽出/検出系を使用して、微生物細胞生存度を試験しても、または微生物細胞生存度および/または生育に影響するそれらの能力に基づいて、薬学的活性剤(例えば抗生剤候補)または生物学的活性剤を同定してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
A.定義
明細書および特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。特に断りのない限り、全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。参照した全ての特許および公報は、特に断りのない限り、参照によってその全体をここに援用する。
【0014】
「単離された」または「精製された」ルシフェラーゼとは、同定され、その天然環境の構成要素から分離および/または回収されたものである。
【0015】
「サンプル」という用語は、ここでの用法では、最も広い意味で使用される。サンプルは、本発明を使用して分析されるATPを含有することが疑われる組成物である。サンプルは、任意に増殖培地または細胞溶解産物中で、細胞または細胞集団を含有することが知られている、または含有することが疑われることが多い一方で、サンプルはまた、付着細胞または細胞集団を含有することが疑われる固体表面(例えば綿棒、膜、フィルター、粒子)であってもよい。このような固体サンプルでは、固体と本発明の試薬組成物または本発明の試薬組成物が添加された別の水性溶液とを接触させて、水性サンプルを作ることが考察される。例えば本発明のプロセスによって液体または気相サンプルを試験する際、場合によってはサンプルを生成するために濾過が望ましい。濾過は、サンプルが大容積の希釈気体または液体から採取される場合に好ましい。
【0016】
「試薬組成物」という用語は、ここではサンプルからATPを抽出および/または検出するための1つ以上の構成要素を呼ぶために使用される。試薬組成物は、サンプルからATPを抽出および/または検出するのに十分な構成要素のいくらか、または全てを含んでもよい。
【0017】
「反応混合物」という用語は、ここでの用法では、ATPを含有するまたはATPを含有することが疑われるサンプルと、サンプルからATPを抽出し検出するのに集合的に十分な1つ以上の試薬組成物とを接触させた後に、存在する(または得られる)内容物を指す。
【0018】
「検出」という用語は、ここでの用法では、サンプル内の構成要素の存在または不在を定量的にまたは定性的に判定することを指す。
【0019】
「ATP抽出剤」という用語は、ここでの用法では、細胞膜または細胞壁透過度を変化させ、または微生物源の膜および/または細胞壁の完全性を中断して(すなわち溶解するまたは孔形成を引き起こす)、ATPの抽出または放出をもたらす、あらゆる化合物または化合物の組み合わせを指す。概してATP抽出剤は、ポリミキシンB(例えばポリミキシンB1およびポリミキシンB2)、ポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)、およびクロロヘキシジン(CHEX)などの抗生物質と、オクチル−β−D−1−チオグルコピラノシドなどのアルキルグルコシドまたはアルキルチオグルコシド(参照によってその全体をここに援用する米国特許第6,174,704号明細書を参照されたい)と、トリトン−X100(TX−100)などの非イオン性洗剤と、カルボキシプロピルベタイン(CB−18)などのベタイン洗剤と、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TMA−18)などの四級アンモニウム塩と、プロタミンと、トリエチルアミン(TEA)およびトリエタノールアミン(TeolA)などのアミンと、ポリリジン、ナイシン、マガイニン、メリチン、ホスホリパーゼ(phopholipase)A2、ホスホリパーゼA2活性化ペプチド(PLAP)などのカチオン性、抗細菌、孔形成、膜活性、および/または細胞壁活性ポリマーと、バクテリオファージなどをはじめとするがこれに限定されるものではない、多様な作用物質を含んでもよい。例えばMorbeら、Microbiol.Res.(1997年)第152巻、385〜394頁を参照されたい。
【0020】
「安定信号」という用語は、ルシフェラーゼ反応開始時のルミネセンスと比べて、半時間あたり50%未満のルミネセンス損失を示すルミネセンス信号と定義される。
【0021】
「信号対雑音比」(S:N)という用語は、式S:N=(サンプルの平均ルミネセンスからバックグラウンドの平均を減じたもの)/バックグラウンドルミネセンスの標準偏差、によって定義される。
【0022】
本発明は、微生物細胞からATPレベルを検出し定量化する試薬組成物および方法に向けたものであり、引き続くルミネセンス検出ステップに先だつ、またはその中に組み込まれる中和ステップを必要とせずに、微生物細胞からのATP放出および検出のための反応条件が実現できる、という予想外の発見に基づく。本発明は、広範な微生物細胞からのATPの安定ルミネセンスの検出を容易にできる試薬組成物を開示する。さらに反応構成要素の適切な組み合わせを注意深く選択することで、事実上あらゆる細菌または微生物細胞から、ATPの効率的な一段階放出を得ることができる。
【0023】
B.マグネシウム反転効果
本発明の一態様では、本発明者らは、最適化されていない二価カチオン濃度が、いくつかの微生物細胞からのATPの効果的な放出および検出を妨害できることを見いだした。典型的なルシフェラーゼ媒介ATP検出法は、10〜20mM程度の二価カチオン濃度および約1〜2mMの二価カチオンキレート剤濃度(例えばWoodら、米国特許出願公開第2003/0104507号明細書を参照されたい)を有する試薬組成物を利用する。図1は、B.セレウス(B.cereus)(図1A)および緑膿菌(P.aeruginosa)(図1B)のための二価カチオン濃度の関数としてのATP検出の動態の違いを実証する実験について述べる。二価カチオンはATP検出に必須であるにもかかわらず、この実験からの結果は、予期される二価カチオン量よりも低い量を使用して、実際に微生物細胞中により良いルミネセンスが得られるかもしれないという驚くべき知見を立証する。さらに本発明の発明者らは、試薬組成物または反応混合物中の遊離の二価カチオン(例えばMg2+)濃度をEDTAなどの二価カチオンキレート剤で減少させることにより、特定のATP抽出剤組み合わせの使用から得られるバイオルミネセンスが選択的に増強できることを意外にも見いだした(図2)。この「マグネシウム反転効果」は、その中でCDTAなどのキレート剤化合物の添加がルミネセンス(図3)を活性化することが見いだされた実験によって、さらに支持される。本発明の発明者らは、ATP抽出/検出試薬組成物または反応混合物中に存在する二価カチオンよりも高い濃度で二価キレート剤を使用した(またはキレート剤ありまたはなしで、単により低い二価カチオン量を使用した)場合の、ATP抽出および検出の予想外の利点をさらに立証した。試薬組成物を最適化してこれらの観察を活用することで、同一試薬組成物を使用して、多種多様な微生物源から効率的なATP放出および検出を得ることができた。
【0024】
理論による拘束は望まないが、異なる微生物の構造的な特性が、ATP放出に関する二価カチオンの阻害効果の説明になってもよい考えられる。例えばグラム陽性およびグラム陰性細菌の細胞壁は、それらのペプチドグリカン層の密度および組成物に関して、および外側脂質二層膜の存在または不在によって異なる。グラム陽性細菌の細胞壁は、グラム陽性細胞壁の60〜90%を構成する多数の相互連結する層ペプチドグリカンからなる、幅広く緻密な壁(厚さ20〜80nm)であるように見える。細胞壁中に織り交るのは、タイコ酸および様々な糖タンパク質(glyoproteins)である。グラム陽性細胞壁とは対照的に、グラム陰性細胞壁は、グラム陰性細胞壁の10〜20%のみを構成する2〜3層のペプチドグリカン含有内壁(厚さ2〜3nm)、およびリン脂質、リポ多糖類(LPS)、およびタンパク質から構成される外膜(厚さ約7nm)を含む。グラム陰性細菌の外膜中のLPSは、グラム陽性細胞壁の糖タンパク質およびタイコ酸と同様の様式で、外膜に強度を加えると考えられる。細菌とは対照的に、酵母および真菌の細胞壁は、細菌細胞壁よりもなおさらに強く、キチンなどのその他の物質を含有してその中の脆い細胞膜を保護する。
【0025】
グラム陰性細菌の外膜は、隣接するLPS分子中の負に帯電した群間の静電反発を安定化する二価カチオンによって強化されたバリア機能を提供する(Nikaido、「Escherichia coli and Salmonella」より「Outer Membrane」、ASM Press、Washington D.C.、29〜47頁)。バリア機能が、ナフシリン、疎水性ペニシリンなどの特定の抗生物質化合物の相対的な不透過性を説明する。EDTA、二価カチオンキレート剤、および/またはトリスなどのかさ高いアミンの添加は、LPS分子間の密接な会合を阻害すると考えられる。本発明のATP抽出剤を使用すると、EDTAまたはCDTAなどの二価カチオンキレート剤は、外膜を不安定化して、瞬間的破裂および細胞構成要素(ATPなど)の放出を容易にできる。
【0026】
二価カチオンはATP放出を阻害できるが、一方、それらはATPを検出するためのルミネセンスの反応の必須構成要素である。ATP検出における最大の感度のために、二価カチオン、特にマグネシウムの濃度は、典型的に約10mMを超える濃度で使用される(図1B参照)。微生物を含有するサンプル中のATPを抽出し検出するための一段階試薬組成物は、二価カチオンのためのこれらの相反する要件の折り合いを付けなくてはならない。さらに本発明者らは、微生物からのATPの最適抽出および検出が、サンプルへの試薬組成物の添加後に、迅速に、10分以内に、好ましくは5分以内に達成できることを見いだした。試薬組成物中で使用する二価カチオンまたはカチオンキレート剤の最適量を判定することは、微生物のタイプおよび構造、二価カチオンが細胞壁および/または細胞膜構成要素を安定化する程度、微生物サンプル中に既に存在するATP、カチオン、および/またはカチオンキレート剤の量、および試薬組成物または反応混合物中のルシフェラーゼの量または安定性をはじめとするがこれに限定されるものではない、多様な要因に左右される。
【0027】
C.試薬組成物
1.ATP抽出剤
本発明の一態様は、微生物細胞からのATP放出を促進するための1つ以上のATP抽出剤使用を含む。微生物ATP抽出剤は、ポリミキシンB(例えばポリミキシンB1およびポリミキシンB2)、ポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)、およびクロロヘキシジン(CHEX)などの抗生物質と、オクチル−β−D−1−チオグルコピラノシドなどのアルキルグルコシドまたはアルキルチオグルコシドと(参照によってその全体をここに援用する米国特許第6,174,704号明細書を参照されたい)、エトキシル化オクチルフェノールトリトンX−100(TX−100)およびその他のエトキシル化アルキルフェノールをはじめとするが、これに限定されるものではない、非イオン性エトキシル化アルキルフェノールなどの非イオン性洗剤と、カルボキシプロピルベタイン(CB−18)などのベタイン洗剤と、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)などの四級アンモニウム塩と、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TMA−18)と、プロタミンと、トリエチルアミン(TEA)およびトリエタノールアミン(TeolA)などのアミンと、ポリリジン、ナイシン、マガイニン、メリチン、ホスホリパーゼ(phopholipase)A2、ホスホリパーゼA2活性化ペプチド(PLAP)などのカチオン性、抗細菌、孔形成、膜活性、および/または細胞壁活性ポリマーと、バクテリオファージなどをはじめとするが、これに限定されるものではない、微生物細胞壁および/または膜を透過処理してATP放出を容易にできる、多様な作用物質を含んでもよい。例えば参照によってその全体をここに援用するMorbeら、Microbiol.Res.(1997年)第152巻、385〜394頁、およびイオン性表面活性化合物を開示する米国特許第4,303,752号明細書を参照されたい。
【0028】
ATP抽出剤は、好ましくは本発明のルシフェラーゼ酵素を不活性化しないように選択される。ATP放出のためにより強力な作用物質(例えばイオン性洗剤など)を必要とする微生物のためには、これらの作用物質存在下で強化された安定性を示す、その内容全体を本願明細書に引用した米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示されるものなどの改質ルシフェラーゼが特に好ましい。
【0029】
発明の一実施形態では、ATP抽出剤はCTAB、四級アンモニウム塩を含む。好ましい実施形態では、CTABは試薬組成物中に約0.04%〜0.15%(w/v)の間の濃度で存在する。別の実施形態では、ATP抽出剤は、CHEXと、トリトンX−100などのエトキシル化アルキルフェノールとを含んでもよい。好ましい実施形態では、CHEXは好ましくは約0.04%〜0.16%(w/v)の間であり、エトキシル化アルキルフェノールは約0.25%〜1.0%(w/v)の間で存在する。特に好ましい実施形態では、試薬組成物は2種以上のATP抽出剤を含んでもよい。好ましい一実施形態は、CHEX(約0.04%〜0.16%(w/v)の間)、トリトンX−100などのエトキシル化アルキルフェノール(約0.25%〜1.0%(w/v)の間)、およびCTABなどの四級アンモニウム塩(約0.02%〜0.08%(w/v)の間)を含む。
【0030】
本発明の方法において機能する最も好ましい濃度または濃度範囲は、異なる微生物および異なるATP抽出剤に対して変動し、本願明細書で述べられる、または一般に当業者に知られている方法を使用して、経験的に判定されてもよいことが完全に予期される。
【0031】
2.二価カチオン
カブトムシルシフェラーゼ−ルシフェリン反応は、ATPだけでなく二価カチオンにも依存する。したがってルシフェラーゼ活性を容易にするために、(サンプル中に既に存在する場合を除いて)二価カチオンが典型的に提供される。二価カチオンとしては、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンが挙げられる。二価カチオンは、スルフェート、スルホネート、グルコネート、カーボネート、塩化物、および臭化物などの塩またはハロゲン化物として供給されてもよい。例えばマグネシウムカチオンは、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどとして提供されてもよい。好ましくは二価カチオンは、マグネシウムの塩化物または硫酸塩から選択される。
【0032】
特定の細胞膜または壁の透過度は、二価カチオンの存在によって悪影響を受けるかもしれないので、特定微生物または特定抽出/検出系について二価カチオン濃度を経験的に調合して、例えばATPの細胞放出とATP検出との間に適切なバランスを提供してもよい。
【0033】
さらに二価カチオンキレート剤がATP抽出に対する二価カチオンの悪影響を中和する能力を有することを考えると、試薬組成物または反応混合物中に存在する二価カチオンキレート剤のレベル次第で、二価カチオン濃度を調節してもよい。二価カチオンキレート剤が低い(例えば約5mM、2.5mMまたは1mM未満)場合、二価カチオン濃度はそれに応じてより低く、好ましくは2.5mM未満、より好ましくは0.2〜1mMの間である。しかし二価カチオンキレート剤がより高い(例えば2〜20mM)場合、二価カチオン濃度はそれに応じてより高く、好ましくは二価カチオンキレート剤濃度以下の濃度である。
【0034】
3.二価カチオンキレート剤
二価カチオンキレート剤としては、制限なく、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレングリコールテトラ酢酸(EGTA)、および1,2−シクロヘキサンジニトリロテトラ酢酸(CDTA)、ニトリロ酢酸(NTA)、クエン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸、リグノスルホネートの塩、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましくはキレート剤は、それらの一般入手可能性および比較的低価格から、EDTA、EGTA、およびCDTAよりなる群から選択される。二価カチオンキレート剤の適切なレベルは、ATP抽出に対する二価カチオンの悪影響を中和するのに十分であるが、カチオン依存性のルシフェラーゼ触媒ATP検出を防止する程度ではないレベルを提供することに基づいて、経験的に判定されてもよい。
【0035】
概してキレート剤濃度は、二価カチオン濃度の少なくとも約50%であり、好ましくは二価カチオン濃度の約60%、70%、80%、90%、または95%である。最も好ましくはキレート剤濃度は、二価カチオン濃度にほぼ等しく、またはそれを超える。特に好ましい実施形態では、キレート剤濃度は約20〜25mMの範囲にある。二価カチオン濃度が低い(例えば約5mM、2.5mM、または1mM未満)場合には、二価カチオンキレート剤が不必要かもしれない。
【0036】
しかし当業者は、異なるキレート剤が、pH次第で異なるキレート能力を有するかもしれないことを認識する。したがって本発明の外部パラメーターとしては、その他の点では同一のルシフェラーゼアッセイ反応条件下で(例えばpH7.0〜8.0などで)、EDTAのそれと比較できるキレート剤能力を提供するのに釣り合ったキレート剤のためのキレート剤濃度における可変性の程度が挙げられる。換言すれば、二価カチオンキレート剤の量は、その他の点では同一の一段階ATP反応条件(二価キレート剤を除いて、その他の全ての試薬および試薬濃度が同一)下で、EDTAのキレート能力と比較できるまたはそれを超えるキレート能力を提供するように調節されてもよく、またはATPの抽出および検出に対する二価カチオンの悪影響と好ましい効果それぞれのバランスをとるのに、十分な量に調節してもよい。
【0037】
4.ルシフェラーゼ/ルシフェリン
それらの最も基礎的レベルでは、ルシフェラーゼはルミネセンスを生じるそれらの能力によって画定される。より具体的には、ルシフェラーゼは基質ルシフェリンの酸化を触媒することで、オキシルシフェリンおよび光子を生成する。その触媒生成物が光を含むルシフェラーゼは、感度、検出可能な生成物、およびATPの容易な測定を提供する。あらゆるATP依存性ルミネセンス生成酵素が、本発明の試薬組成物および方法中で使用するために考察される。
【0038】
今日までに、少なくとも5つのクラスのルシフェラーゼが同定されている(Jonesら、1999年;Thomsonら、1997年)。これらの内、一般的なホタル(ホタル科(Lampyridae))のもののようなカブトムシルシフェラーゼは、ユニークな進化上の起源がある特徴的なクラスを形成する(McElroyら、1969年;Whiteら、1969年;Whiteら、1975年)。カブトムシルシフェラーゼは文献でホタルルシフェラーゼと称されることが多い。しかしホタルルシフェラーゼは、実際のところカブトムシルシフェラーゼクラスの下位集団である。カブトムシルシフェラーゼは、カブトムシそれ自体のランタンから、または技術分野でよく知られているタンパク質発現系から精製されてもよい(BaldwinおよびGreen、2000年;BenyおよびDolivo、1976年;Branchiniら、1980年;Filippovaら、1989年)。
【0039】
参照によってその内容全体をここに援用する米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示されるものをはじめとするが、これに限定されるものではない、ATP−依存反応を触媒してルミネセンスを発生させる全てのルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ変異型、ルシフェラーゼ断片、および変異型ルシフェラーゼ断片が、本発明で使用するために考察される。カブトムシルシフェラーゼ、特に北米のホタルPhotinus pyralisからのホタルルシフェラーゼが技術分野でよく知られている。P.pyralisルシフェラーゼ(LucPpy)は、遺伝子のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質による計算でMr61kDaのおよそ550個のアミノ酸からなる。本発明に従ったその他のホタルルシフェラーゼとしては、Photuris pennsylvanicaホタルルシフェラーゼ(LucPpe2、545個のアミノ酸残基、GenBank2190534;Yeら、1997年)、ならびにLucPpe2(例えばLucPpe2m78(78−0B10としても知られている)、LucPpe2m90(90−1B5としても知られている)、LucPpe2m133(133−1B2としても知られている)、LucPpe2m146(146−1H2としても知られている))に由来する米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示される様々な突然変異体ルシフェラーゼ、およびUltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)などの様々な市販のルシフェラーゼが挙げられる。LucPpe2m78、LucPpe2m90、LucPpe2m133、およびLucPpe2m146を作る方法は、米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示され、その全体を参照によってここに援用する。
【0040】
本発明では、単離および/または精製されたルシフェラーゼが典型的に使用される。それらの天然環境に由来する、診断または治療的使用を妨害できる汚染物質構成要素としては、酵素、ホルモン、およびその他のタンパク様または非タンパク様物質が挙げられる。純度を確実にする一技術は、クマシー・ブルーまたは銀染色を使用して、非還元または還元条件下でSDS−PAGE分析を実施することである。ルシフェラーゼは、天然ルシフェラーゼ産生源から、または外来性ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを発現する組換え細胞から単離されてもよい。ルシフェラーゼ酵素を生成および/または精製する技術は、当業者によく知られている。
【0041】
カブトムシルシフェラーゼの天然由来基質は、多複素環式有機酸D−(−)−2−(6’−ヒドロキシ−2’−ベンゾチアゾリル)−Δ2−チアゾーリン−4−カルボン酸(ルシフェリン)であるホタルルシフェリンである。ルシフェリンは、自然界から(例えばホタルから)単離されても、または合成されてもよい。合成ルシフェリンは自然発生的ルシフェリンと同一構造を有することができ、または同じように機能さえすれば変異型または誘導体化であることができる(Bowieら、1973年;Branchini、2000年;Craigら、1991年;MiskaおよびGeiger、1987年;YangおよびThomason、1993年)。本発明で使用するための例示的なルシフェリン誘導体としては、6−デオキシアミノルシフェリン、D−ルシフェリンメチルエステル、D−ルシフェリル−L−フェニルアラニン、D−ルシフェリル−L−Nα−アルギニン、D−ルシフェリン−O−スルフェートおよびD−ルシフェリン−O−ホスフェート(MiskaおよびGeiger、1987年)、サンプル中の構成要素によりエステラーゼによって加水分解されまたは作用されてルシフェリンになったルシフェラーゼのエステル(Craigら、1991;YangおよびThomason、1993年)が挙げられるが、これに限定されるものではない。その他の有用なルシフェリン類似物の例としては、それぞれ緑色および赤色光スペクトルにおいて発光するナフチルシフェリンおよびキノリルルシフェリンが挙げられる(Branchiniら、1989年)。ルシフェリンの商業的供給源は数多くある(例えばPromega Corp.Madison,WI;Molecular Probes,Eugene,OR)。
【0042】
ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応からルミネセンス信号を生じる、カブトムシルシフェラーゼ触媒反応は、ルシフェラーゼ酵素、ルシフェリン、アデノシン三リン酸(ATP)、マグネシウム(またはその他の二価カチオン)、および分子酸素を必要とする。最初の反応では、ルシフェリンとATPが反応して無機ピロリン酸塩が除去され、アデニル酸ルシフェリルを形成する。アデニル酸ルシフェリルは、ルシフェラーゼの触媒部位に密接に結合したままである。この形態の酵素が分子酸素に曝露すると、酵素に結合したアデニル酸ルシフェリルは酸化されて、電子的に励起状態のオキシルシフェリンを生じる。励起した酸化ルシフェリンは、基底状態に戻る際に発光する。
【化1】
【0043】
ATP類似体(例えばdATP)もまた、上の反応を進められる。さらに上の反応でマグネシウムをその他の二価カチオン(例えばMn2+またはCa2+)で置き換えてもよい。酸素は反応の反応物質であるので、反応は嫌気性条件下で行うことができない。しかし空気中に存在する以上に酸素を提供することは、概して不必要である。反応溶液中に十分な酸素があれば、反応は閉鎖容器内で実施できる。
【0044】
ほとんどのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応は、束の間の閃光を発生させる。しかし例えばLucPpe2m146およびLucPpe2m90ルシフェラーゼなどの本発明で使用するのに好ましいいくつかのルシフェラーゼは、本発明の条件下で、試薬組成物とサンプルとを合わせて混合物を形成した後に、1時間あたり50%未満のルミネセンス損失がある「グロータイプ」のルミネセンス信号を発生させる。本発明の範囲内の好ましいルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ変異型、ルシフェラーゼ断片、または変異型ルシフェラーゼ断片としては、同一試薬組成物の文脈中で、試薬組成物環境内で安定性を維持でき、安定ルミネセンスを発生させる能力を保持できるものが挙げられる。
【0045】
ルシフェラーゼ触媒反応の完了を容易にするために、ルシフェリンなどのルシフェラーゼのための基質が試薬組成物中に含まれてもよい。本発明の範囲内のいくつかの実施形態では、ルシフェリンを除外し、使用者が好みのルシフェリンを提供できるようにしても良い。代案としては、その他の反応構成要素に添加するためにルシフェリンが別々に提供されてもよい。提供されるルシフェリンのタイプは異なってもよいが、それは特定用途で使用するための特定のルシフェラーゼの基質でなくてはならない。
【0046】
天然酵素はこのような組成物でも機能するかもしれないので、均質な一段階抽出および検出試薬組成物を作り出す能力は、必ずしもルシフェラーゼの化学または温度安定性に依存しない。しかしATP抽出剤などの調合物中のその他の構成要素からの活性損失の影響をより受けにくく、より広範な反応条件(すなわち周囲温度および/またはより高い温度)でより大きな選択性および/または感度、およびより大きな適合性を提供するかもしれないことから、熱安定性ルシフェラーゼの使用が好ましい。同様に、「化学安定ルシフェラーゼ」がより上手く活性を保持でき、または感度および/または性能を増大させることができる範囲で、それらは化合物または条件の存在下で(例えば野生型酵素と比べて)好ましい。
【0047】
本発明の試薬組成物、混合物、または方法中で使用するのに好ましいルシフェラーゼは安定信号を発生させ、すなわちこのようなルシフェラーゼは、ルシフェラーゼ反応で使用すると、ルシフェラーゼ反応開始時のルミネセンスに対して半時間あたり50%未満のルミネセンス損失と定義される強化された持続期間でルミネセンスを生じる。好ましいルシフェラーゼとしては、(ルミネセンスによる測定で)少なくとも1時間にわたり、好ましくは少なくとも2時間にわたり、さらにより好ましくは少なくとも4時間にわたり、少なくとも約30%(好ましくは少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%)の酵素活性を維持するものが挙げられる。
【0048】
5.ATP代謝のATP分解酵素阻害物質または阻害物質
微生物細胞は、経時的に細胞中に存在するATP量を歪められる物質を含んでもよい。これはATP分解酵素、ATP分解酵素阻害物質、および/またはATP生成酵素の阻害物質の存在に起因してもよい。ATP濃度は特定時間に判定されるので、そのままにしておくと、ATP生成または損失と結びついた不適切な活性が、微生物細胞中に存在するATP濃度の過大評価をもたらすかもしれない。
【0049】
サンプル中のATPレベルを正確に測定するために、微生物のATPプールを分解できる、またはATPの新しい供給源を不適切に生成できる酵素を阻害することが好ましい。適切な阻害物質を組み込み損なうと、ATP濃度の不正確な判定がもたらされるかもしれない。例示的なATP分解酵素阻害物質としては、本発明のATP抽出剤(CTABなど)、カチオン性または非イオン性洗剤、または米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示されるATP分解酵素阻害物質のいずれかが挙げられる。DTABなどの阻害物質が特定のATP分解酵素を不活性化してもよいのに対し、フッ化ナトリウム(NaF)などのその他の分子は脱リン酸酵素を不活性化して、ATP代謝の調節に関与する微生物キナーゼの活性に影響を与えてもよい。
【0050】
米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示されるように、ATP生成酵素の例示的な阻害物質としては、キナーゼまたは脱リン酸酵素阻害物質(NaFなど)が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の試薬組成物は、少なくとも約0.2mM、好ましくは少なくとも約1mM、より好ましくは少なくとも約2mMの濃度のNaFを含んでなってもよい。ATP生成酵素のその他の阻害物質としては、バナジン酸塩、AMP、DAPP(Bostickら、1982年)およびジクロロ酢酸(Kiechleら、1980年)などのその他のキナーゼ阻害物質が挙げられる。
【0051】
ATPの不適切な生成または損失を防止するための阻害物質の使用は、長時間にわたり多数のサンプルプレートを読み取る必要がある高処理能力用途において特に有用であってもよく、サンプル中に存在する元のATPレベルを歪めるより大きな機会を提供する。
【0052】
6.緩衝液
適切な緩衝液の選択は、pH緩衝能力およびルシフェラーゼ−ルシフェリン反応との相互作用に依存する。作用溶液に適切なpHを維持し、ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応を妨げないあらゆる緩衝液が考察される。好ましいpH範囲は約pH4.5から約pH9.0の間であり、より好ましくは約pH6.0から約pH8.0の間である。MESおよびクエン酸緩衝液に加えて、典型的な緩衝液としては、リン酸緩衝食塩水(PBS)、トリス、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、ホウ酸塩、および当業者に適切であるかもしれないことが知られているその他のあらゆる緩衝液が挙げられる。典型的な緩衝剤としては、トリシン、HEPPS、HEPES、MOPS、トリス、グリシルグリシン、および適切なpHおよびイオン強度を維持するのに使用されるリン酸塩が挙げられる。好ましい緩衝液濃度は、約50mM〜200mMの範囲である。
【0053】
7.脱泡剤
気泡に起因するサンプルの損失および/またはサンプルの相互汚染を防止するために、脱泡剤が望ましい。脱泡剤の添加はまた、製造または使用中の生成物の定量供給を容易にするかもしれない。適切な脱泡剤としては、商品名MAZU(登録商標)(PPG Industries、Gurnee,IL)の下に入手できるものが挙げられ、有機またはシリコーンベースであってもよい。脱泡剤の選択は、ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応への妨害性なしに泡を除去するそれらの能力に左右されてもよい。
【0054】
8.その他の作用物質
試薬組成物はまた、安定剤または揮発性制御剤を含んでもよい。安定剤または揮発性制御剤は、ルシフェラーゼを分解から安定化する、および/またはルシフェラーゼおよび/またはルシフェリンの凍結乾燥を助けるあらゆる化合物であってもよい。適切な酵素安定剤としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、Prionex(Pentapharm Ltd.、Basel,Switzerland)などのBSA代用品、ゼラチン、および洗剤(好ましくは非イオン性洗剤、最も好ましくはTHESIT)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
本発明の試薬組成物はまた、ナトリウムピロリン酸塩(NaPPI、例えば約25mMの)、補酵素A(CoA)、ジチオスレイトールおよびβメルカプトエタノール(Woodに付与された米国特許第5,283,179号明細書、1994年;Woodに付与された米国特許第5,650,289号明細書、1997年)などのチオール試薬、金属イオンキレート剤(ATP抽出/検出におけるそれらの使用に加えて)またはプロテアーゼ阻害物質(Scheirerに付与された米国特許第5,618,682号明細書、1997年;Scheirerに付与された米国特許第5,866,348号明細書、1999年)、または高濃度の塩(Van LuneおよびTrer Wielに付与された国際公開第00/18953号パンフレット、2000年)をはじめとするが、これに限定されるものではない、ルミネセンス持続期間を増強する(検出半減期を延長する)ことが知られている物質を含んでもよい。
【0056】
D.微生物細胞中のATPを抽出し検出するための方法
本発明の方法、組成物、およびキットは、微生物サンプル中のATP(またはルシフェラーゼ基質として機能できるATP類似体)の単純な定性的または定量的検出を提供する。概してサンプル中のルミネセンスを実証する単純な定性実験は、ATPの存在を示す。
【0057】
一態様では、本発明は、その中で微生物サンプルと、反応緩衝液、少なくとも1つの微生物ATP抽出剤、二価カチオン、および二価カチオンキレート剤を含有する試薬組成物とが接触され、その中で二価カチオンキレート剤濃度と二価カチオン濃度との差が約5mM未満である、微生物細胞中のATPを検出するための方法を含む。代案としては、試薬組成物または反応混合物中の二価カチオンキレート剤濃度は、二価カチオン濃度の少なくとも2分の1、好ましくはそれ以上でさえあってもよい。しかし二価カチオン濃度が低い(例えば約5mM、2.5mM、または1mM未満)場合には、二価カチオンキレート剤が不必要であってもよい。好ましくは検出可能なルミネセンス信号は、微生物サンプルと試薬組成物とを接触させた後、5または10分以内に生じる。本質的に、本発明の方法における使用のために、本開示で述べられるあらゆる試薬組成物が考察される。
【0058】
微生物サンプルと試薬組成物とを接触させることは、試薬組成物中に存在する適切なバイオルミネセンス試薬との反応のための、微生物細胞からのATPの抽出または放出を容易にし、それによって容易に検出可能なバイオルミネセンス信号が生じる。微生物サンプルは、精製された微生物サンプル、微生物細胞の混合集団、または微生物細胞を含有することが疑われる供給源物質を構成しても良い。好ましい実施形態では、本発明は、大腸菌(E.coli)から、または大腸菌(E.coli)を含有することが疑われる微生物源物質から、ATPを抽出し検出する方法に関する。
【0059】
例えばカチオン性または非カチオン性洗剤などの少なくとも1つのATP抽出剤と、マグネシウムなどの二価カチオンと、EDTAなどの二価キレート剤と、LucPpe2m78、LucPpe2m90、LucPpe2m133またはLucPpe2m146などのルシフェラーゼ供給源と、ルシフェリンなどの1つ以上のルシフェラーゼ基質(凍結乾燥製剤またはその他の適切なルシフェリン類似体基質から水で戻してもよい)とを含有する試薬組成物を使用して、適切なルミネセンス信号を生じさせてもよい。試薬組成物は、1つ以上のATP生成酵素阻害物質、酵素安定剤、脱泡剤などをさらに含んでもよい。
【0060】
1.微生物細胞源
一態様では、本発明は、細菌、酵母またはその他の真菌などの微生物サンプル中、または微生物サンプルを含有することが疑われるサンプル中のATPを抽出し検出する方法を提供する。真正細菌(グラム陽性細菌、グラム陰性細菌の双方)、古細菌、酵母または真菌をはじめとするが、これに限定されるものではない、本発明に従って使用するのに適した多様な微生物源がある。例えば本発明の試薬組成物は、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、フラボバクテリウム・オケアノコイテス(Flavobacterium okeanokoites)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、およびフランシセラ・フィロミラジア(Francisella philomiragia)などのグラム陰性細菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureaus)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バシラス・セレウス(Bacilus cereus)、アルスロバクター・ルテウス(Arthrobacter luteus)などのグラム陽性細菌、およびサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの真核生物の微生物をはじめとするが、これに限定されるものではない多様な異なる微生物の生物体で機能することが見いだされている。好ましい実施形態では、サンプルは、大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)を含有する、または含有することが疑われる。本発明の方法は、あらゆる量のATPを含有するサンプルと共に使用してもよいが、非飽和量のATP(すなわちルミネセンスがATP濃度に正比例する範囲)を含有するサンプルを使用することが好ましい。
【0061】
微生物サンプルは、細胞溶解産物と、無処置細胞と、生検材料と、食物と、飲料と、動物、植物、または無生物対象物などの表面をぬぐった綿棒などの微生物を含有することが疑われるあらゆるものであってもよい。対照サンプルは、既知のATP濃度を含んで標準曲線を発生させ、サンプル中のATPレベルの定量的な判定を容易にしてもよい。
【0062】
細胞溶解産物は、もはや認識可能な無処理細胞構造に組織化できない細胞構成要素を含んでなる。細胞溶解産物は可溶性および不溶性の構成要素を有してもよく、どちらも溶解産物を使用する前に除去してもよい。溶解産物は、超音波処理、ダウンス、乳鉢と乳棒、凍結解凍サイクリング、または細胞の物理的完全性を破壊するその他のあらゆる装置またはプロセスを使用した物理的中断や、または両性イオン性および非イオン性洗剤、またはカチオン性洗剤DTABまたはCTABなどその中でLucPpe2m146が活性を維持するような洗剤による溶解をはじめとするあらゆる手段によって調製してもよい。好ましくは細胞溶解産物は、細胞収集時にATP濃度の完全性が保持されるように生成される。
【0063】
2.ATP抽出
微生物源からの効率的なATP抽出または放出は、微生物源によって呈される構造的な制約に左右されるかもしれない。これらの状況は、二価キレート剤化合物量のバランスを取って、十分なレベルの二価カチオンがATPのバイオルミネセンスの検出を促進しながら、二価カチオン媒介安定化を逆転させることを必然的に伴うかもしれない。ATPを抽出し検出するための適切なATP抽出剤の選択は、特定微生物源について経験的に判断してもよい。好ましくはこれらの化合物の選択は、本発明に従った一段階抽出およびATP検出のための効率的なATP抽出、およびATP検出活性(例えばルシフェラーゼ活性など)の維持を前提としている。
【0064】
3.ATP検出
カブトムシルシフェラーゼ−ルシフェリン反応は、光(「ルミネセンス」)生成をもたらす。カブトムシルシフェラーゼ−ルシフェリン反応はATP依存性であるため、ルシフェラーゼを使用してATPをアッセイできる。反応は顕著に高感度であり、わずか10-16モル以下のATPを含有するサンプル中のATPを検出できるようにする。本発明の組成物、方法、およびキットは、ルミネセンスの量を定量化することで、使用者がサンプル中のATP量を定量できるようにする。本発明は関心のあるサンプル、および既知量のATP(対照)含有サンプルにも適用される。未知のATP濃度のサンプルから発生した信号と、内部対照から発生した信号(例えばサンプルへの既知量のATP添加と引き続いくルミネセンス測定)とを、またはいくつかの既知ATP濃度サンプルのルミネセンスを測定しグラフにプロットして作成した外部標準曲線とを相関させてもよい。このような方法は当業者に知られている(MoyerおよびHenderson、1983年;Ronnerら、1999年;Stanley、1989年;Woodら、1989年)。
【0065】
ルシフェラーゼ反応によって生じるルミネセンスは、典型的に照度計で検出されるが、その他の検出手段を使用してもよい。ルミネセンスを測定し、それによって試薬組成物活性を判定するために、試薬組成物とサンプルを合わせた後の関心ある時点で、ルシフェラーゼ反応によって発じる相対光単位(RLU)の値を測定してもよい。バックグラウンドレベルを超える光の存在は、サンプル中のATPの存在を示唆する。ルミネセンスのバックグラウンドレベルは、サンプルが存在するのと同一反応条件(例えば試薬組成物など)下であるが、サンプル不在で測定してもよい。ATPを伴う正の対照反応を用いて、サンプル中に存在するATP量の判定を容易にしてもよい。これらおよびその他の対照反応は、当業者によって判定されてもよい。
【0066】
本発明の組成物および方法で使用するのに好ましいルシフェラーゼは、持続期間が明白で、ルシフェラーゼ反応開始時に発生するルミネセンス信号に比べて半時間あたり50%未満のルミネセンス損失を示す、安定ルミネセンス信号を発生させる。本発明の組成物および方法で使用するのに好ましいルシフェラーゼは、強化された熱安定性特性を有してもよく、および/またはルシフェラーゼ反応開始後1時間、より好ましくは2時間、最も好ましくは開始後4時間以上をはじめとするが、これに限定されるものではない、経時的なサンプルの複数分析または経時的な多数のサンプルの分析に好ましい動態学的特性を有してもよい。
【0067】
放射光量を定量化することで、サンプル中のATPの定量化を可能にし、それによって生微生物細胞量の定量化を可能にしてもよい。例えば試験サンプルから放出される光量と、対照サンプルから放出される光量とを、または既知量のATPおよび同一ルシフェラーゼ、基質、および反応条件(すなわち温度、pHなど)を使用して判定された標準曲線とを比較すると、定量的なATP値が分かる。定量化はバックグラウンド値の減算を伴うことが理解される。例えば試験化合物の存在または不在におけるサンプルの比較などのように、1つのサンプルから放出されるルミネセンスと、別のサンプルから放出されるルミネセンスとを比較すると、サンプル中に存在するATPの絶対量を知る必要なしに定性的ATP値が分かる。このような多数の実験は当業者によって容易にデザインされる。
【0068】
本発明に従った好ましい実施形態は、ATPの抽出および検出を容易にする構成要素の完全なセットを含有する一段階試薬組成物を使用した、ATP検出方法に関する。しかし当業者に知られているその他の「二段階」ATP検出法に従い、最終ATP検出ステップにおける中和剤(例えば緩衝液)および/または外来性ルシフェラーゼおよび/またはルシフェリン剤の添加に先だって、最初に細胞を溶解するために、ルシフェラーゼおよびルシフェリン試薬と独立して、本発明のATP抽出剤を含有する試薬組成物を使用してもよい。
【0069】
4.細胞生存度
ATPの存在は、生細胞に特徴的な活性代謝プロセスの反映である。したがって本発明の組成物、方法、およびキットを使用して、細胞生存度をアッセイできる(Cree、1998年;Jassimら、1990年;Pettyら、1995年)。細胞生存度の正確な測定は、細胞に対する物質の効果の正確なアセスメントを可能にする。細胞生存度に関するその他の応用は、当業者に知られている。細胞生存度を判定することは、例えば細胞毒性、細胞増殖、壊死、細胞代謝の変化などを評価するのに有用であってもよい。
【0070】
細胞生存度を評価するのに使用される微生物サンプルは、自然の生細胞であってもよく、あるいは(細胞生存度の代理マーカーとしての)細胞溶解産物、または細胞を含有することが疑われる、細胞に由来することが疑われる、または微生物源材料の生存度を反映することが予測される、あらゆるその他の微生物源材料を含んでもよい。
【0071】
5.アッセイキット
均質な溶解および検出試薬を作成するための構成要素、および使用説明のセットを含んでもよい、本発明に従って使用されるアッセイキットが考察される。好ましくはキットは、ルシフェリン/ルシフェラーゼの凍結乾燥供給源、均質な溶解および検出試薬を作成するためのATP抽出剤を含有する水戻し緩衝液のバイアルを含んでもよい。水戻し緩衝液は、固定濃度のカチオンおよび/またはキレート剤と共に供給されてもよく、またはこれらの構成要素は別々に供給されて、特定の微生物細胞源材料(例えば個々の細胞、集団など)次第で、使用者が二価カチオンおよび/またはキレート剤を使用に適した濃度で添加できるようにしてもよい。
【0072】
E.細菌サンプル中のATPを溶解し検出するのに適した試薬組成物を同定する方法
異なる微生物は、本プロセスに影響する構造的な差違に基づいて、それらが一段階細胞溶解−ATP検出プロセスをサポートをできる程度において違いを示すので、本発明は別の態様では、特定の微生物または微生物群中のATPの効率的な一段階溶解および検出に適した適切な反応条件を同定する方法を提供する。特に本発明は、ATPの抽出および検出に個々にまたは集合的に影響できる、微生物ATP抽出剤、二価カチオン、および二価キレート剤化合物間の最適バランスを評価または判定するためのアッセイを提供する。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明は、微生物サンプル中のATPの抽出および検出に適したATP抽出剤を同定する方法を提供し、その中では、(1)第1の濃度の二価カチオン、二価カチオンキレート剤、1つ以上の微生物ATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質(例えばルシフェリン)を含む第1の試薬組成物と、増殖培地中の細菌サンプルとを合わせて、第1のルミネセンス信号を生じる第1の混合物を生成し、(2)第1の試薬組成物におけるよりも高い濃度の二価カチオン、二価カチオンキレート剤、1つ以上の微生物ATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質(例えばルシフェリン)を含む第2の試薬組成物と同一細菌サンプルとを合わせて、第2のルミネセンス信号を生じる第2の混合物を生成し、第1の混合物からの第1のルミネセンス信号が、第2の混合物から得られる第2のルミネセンス信号を超える場合、第2の試薬組成物は細菌サンプル中のATPを抽出し検出するのに適する。
【0074】
好ましくは第1の試薬組成物中の二価カチオン濃度は、第2の試薬組成物中の二価カチオン濃度よりも好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約25倍、なおもより好ましくは少なくとも約100倍、濃度が低い。第1の試薬組成物中の二価カチオン濃度は、約0〜2mMの間、約0.05mM〜0.5mMの間、約0.1〜0.3mMの間で変動してもよく、または約0.2mMである。好ましくは第2の試薬組成物中の二価カチオン濃度は、約20mM〜200mMの間、約5mM〜50mMの間、約10mM〜30mMの間または約20mMである。
【0075】
上の方法のバリエーションを使用して、幅広い微生物細胞から効率的にATPを抽出し検出するのに適した試薬組成物を同定してもよい。簡単に述べると、この方法はルシフェラーゼ(例えば熱安定、化学安定または未変性)、ルシフェリン、固定Mg2+濃度(例えば5mM)、および緩衝液を含む試薬組成物を調製するステップと、関心のある推定上のATP抽出剤を試薬組成物に添加して、外来性ATP(正の対照)および異なる微生物細胞源の収集物いずれかの存在下で、ルミネセンスの相対的差違を調べるステップを伴ってもよい。一実施形態では、微生物細胞源は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、古細菌、および真菌をはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかのクラスを代表する多様な異なる微生物を含んでもよい。別の実施形態では、微生物細胞源は、特定の微生物のクラス(例えばグラム陰性細菌、グラム陽性細菌、古細菌、または真菌)に特異的な多様な微生物を含んでもよい。選択されるATP抽出剤は、ATP対照サンプルのルミネセンスに対して最小の影響を有するが、十分な抽出および安定ルミネセンス信号(例えば少なくとも24分の半減期)生成を提供すべきである。いくつかのATP抽出剤は個々に試験してもよく、または組み合わせてそれらの投薬効果をマトリックス形式で評価し、各活性化合物の最良の組み合わせおよび濃度を同定してもよい。試薬組成物中のその他の全構成要素を等しく保ちながら、様々な濃度のMg2+で滴定してMg2+の効果をさらに評価できる。
【0076】
F.微生物細胞中のATP検出の使用
1.生微生物細胞または微生物の汚染の存在を判定する
本発明の主要な用途は、上で開示される方法を使用して、微生物細胞サンプルの相対生存度、微生物の細胞個体数、または疑われる微生物汚染源を判定することである。
【0077】
2.化合物の薬学的活性または生物学的活性を評価する
本発明に従った細胞生存度アッセイの使用は、薬学的活性剤または生物学的活性剤の開発および試験にさらに応用してもよい。好ましい実施形態では、本発明の組成物、方法、およびキットを使用して、抗生物質候補化合物の有効性を評価してもよく、または細菌代謝に対する無機物、小型有機物、ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドなどの化合物の効果を試験してもよい(Aigingerら、1980年;Andreottiら、1995年;Bradburyら、2000年;CreeおよびAndreotti、1997年;Crouchら、1993年;Kangasら、1984年)。薬学的活性または生物学的活性剤(例えば抗生物質など)による微生物細胞の処置に続く細胞生存度の測定は、微生物の生育に悪影響を与える新しい薬学的または生物学的活性剤をスクリーニングし、同定する手段を提供するかもしれない。
【0078】
例えば本発明の組成物および方法を使用して、適切な培養装置(例えばマルチウェルプレートなど)内の微生物の培養を(未処理対照培養と平行して)候補抗生剤のプールで処理し、微生物の生育に十分な時間生育させ、ATP(ルミネセンスアッセイ)について試験してもよい。概して、未処理対照培養から検出されたルミネセンスが処理済み培養からのルミネセンスよりも高い場合、候補抗生物質剤は抗生物質活性を示すことが見いだされるであろう。反対に、未処理対照培養と比べて処理済み培養中でルミネセンスが同等である(またはそれよりも高い)場合、候補抗生物質剤は典型的に抗生物質活性を有さないことが見いだされるであろう。
【0079】
さらに本発明の適用は、生得免疫学的防御機序で使用されるものと類似した抗菌剤ペプチドをスクリーニングする方法を提供する(例えばLehrerおよびGanz、Curr.Opin.Immunol.、11(1):23〜27頁、1999年を参照されたい)。この方法はパートEで述べられる方法の変法を使用して、微生物細胞を中断できる抗菌剤ペプチドを同定し、その中で抗菌剤ペプチド(または適切なペプチドライブラリー)が上のパートE中のATP抽出剤と置き換えられる。選択された微生物標的(抗生物質抵抗性微生物など)をATP抽出剤に代えて例えばペプチドライブラリーで処理し、ATPの効率的な抽出および検出の促進に基づき、バイオルミネセンスについてスクリーンし、微生物細胞を溶解する選択的能力を有する有望な殺菌剤を同定できる。しかし方法は必ずしもペプチドのスクリーニングに限られない。多様な異なる化学または生化学化合物を試験し、開示されたATPアッセイ系を使用して得られた結果に基づいて、微生物細胞を溶解する選択的能力を示す候補作用物質を同定してもよい。以下の実施例は、限定することなく本発明を例証することを意図する。
【実施例】
【0080】
実施例1 異なるMgCl2濃度における微生物細胞中のATP検出の動態
水戻し試薬(200mM HEPES、pH7.5(Sigma)、MgCl2(0mM、2.5mM、5mM、10mMまたは20mM)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mMナトリウムフッ化物(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma))および基質(4mMクエン酸塩、mMルシフェリン、0.4%Prionex(Pentapharm,Ltd)、約0.08mg/mlの熱安定性ルシフェラーゼ、1mM硫酸マグネシウム、および1.25mM CDTA)を含んでなるルシフェラーゼ試薬組成物を使用して、微生物細胞中のATP検出の動態を評価した。100μlの緑膿菌(P.aeruginosa)培養物または100μlの1×10-9M ATP原液(対照)のいずれかを100μlのルシフェラーゼ試薬組成物に添加して、35分間かけてルミネセンスを周期的に測定した。ウェルあたりおよそ106個の細胞で、緑膿菌(P.aeruginosa)を試験した。この分析結果(図1)は、二価カチオン濃度の関数としてATP検出の違いを明らかにする。
【0081】
実施例2 異なるATP抽出剤存在下におけるATPの検出
ATP検出に対する異なるATP抽出剤の組み合わせの効果を低い(0.2mM)および高い(20.0mM)二価カチオン濃度で試験した。BacTiter−GloTM試薬組成物(0.358mg/ml UltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)、6mMカブトムシルシフェリン(Promega)、200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma))中において、「高い」(+;20mM)または「低い」(−;0.2mM)濃度のMgCl2の存在下で、緑膿菌(P.aeruginosa)を異なるATP抽出剤で処理した。100μlの緑膿菌(P.aeruginosa)培養物を100μlのBacTiter−GloTM試薬組成物に添加して、ルミネセンスを測定した。緑膿菌(P.aeruginosa)をウェルあたりおよそ106個の細胞で試験した。この分析結果(図2)は、試薬組成物または混合物中のマグネシウムレベルを20mMから0.2mMに減少させたときに、時間枠内の当量点(例えばt=0分)において増大するルミネセンスによって特徴づけられる、「マグネシウム反転」効果を実証する。
【0082】
実施例3 二価キレート剤の添加に続くATP検出の刺激
キレート剤による二価カチオンの中和が、低い二価カチオン濃度条件下で得られる、より高いルミネセンスを模倣できることを実証するために、水戻し試薬(200mM HEPES(Sigma)、20mM MgCl2、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma))および基質(4mMクエン酸塩、5mMルシフェリン、0.4%Prionex(Pentapharm,Ltd)、約0.08mg/mlの熱安定性ルシフェラーゼ、1mM硫酸マグネシウム、および1.25mM CDTA)を含んでなるルシフェラーゼ試薬組成物で、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus)培養物を処理した。100μlの細菌培養または100μlの1×10-9M ATP原液(対照)のいずれかを100μlの水戻し試薬に添加して、ルミネセンスを35分間にわたり周期的に測定した。ウェルあたりおよそ106個の細胞で、微生物の培養物を試験した。追加的CDTAをt=12分に各サンプルに添加した(最終濃度=20mM CDTA)。この分析結果(図3)は、CDTAが緑膿菌(P.aeruginosa)中の二価カチオンの阻害効果を中和できることを示唆する。
【0083】
実施例4 二価カチオンキレート剤存在下のATP検出
二価カチオンキレート剤の存在下におけるATP検出を実証するために、異なる濃度のEDTA(0mM、22mM、23mM、24mM、および25mM)を含有する水戻し試薬組成物(200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、20mM MgCl2(Sigma))を調製した。次に水戻し試薬組成物と基質(4mMクエン酸塩、5mMルシフェリン、0.4%Prionex(Pentapharm,Ltd)、約0.08mg/mlの熱安定性ルシフェラーゼ、1mM硫酸マグネシウム、および1.25mM CDTA)とを混合して、ルシフェラーゼ試薬組成物を生じさせた。100μlの大腸菌(E.coli)(図4A)、緑膿菌(P.aeruginosa)(図4B)または1×10-9MのATP原液(図示せず)を100μlのルシフェラーゼ試薬組成物に添加して、ルミネセンスを40分間にわたり周期的に測定した。ウェルあたりおよそ106個の細胞で細菌培養を試験した。この分析結果(図4A、4B)は、ATPの放出と検出の間の適切なバランスを促進するのに最適化された二価キレート剤濃度を使用して、阻害的二価カチオン効果が中和されてもよいことを示唆する。
【0084】
実施例5 異なる微生物細胞間のATP検出に対する異なる二価カチオン濃度の効果
異なる細菌間でのATP検出に対する二価カチオン濃度の効果を判定するために、水戻し試薬(200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma))を異なる濃度のMgCl2(0mM、2.5mM、5mM、10mM、および20mM)に添加)を調製して、基質(4mMクエン酸塩、5mMルシフェリン、0.4%Prionex(Pentapharm,Ltd)、約0.08mg/mlの熱安定性ルシフェラーゼ、1mM硫酸マグネシウム、および1.25mM CDTA)に添加した。大腸菌(E.coli)(図5A)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)(図5B)、緑膿菌(P.aeruginosa)(図5C)、およびB.セレウス(B.cereus)(図5D)をウェルあたりおよそ106個の細胞で試験した。対照として、精製ATP溶液もまた試験した(図示せず)。100μlの細菌培養または100μlの1×10-9ATP M原液のいずれかを100μlの試薬に添加し、ルミネセンスを35分間にわたり周期的に測定した。この分析結果(図5A〜5D)は、微生物および二価カチオン濃度に依存するATP検出の差違を明らかにする。
【0085】
実施例6 大腸菌(E.coli)および緑膿菌(P.aeruginosa)におけるATP抽出剤パネルを使用した低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度でのATP検出の動態
低い(0.2mM)および高い(20.0mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を評価するために、低い(0.2mM)または高い(20.0mM)濃度のMgCl2を含有する試薬組成物(200mM HEPES(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、0.358mg/ml UltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)、および6mMカブトムシルシフェリン(Promega))に、様々な異なるATP抽出剤の組み合わせを含めて、そこに含有される抽出剤および/または二価カチオン濃度に関してそれぞれ異なる一連の試薬組成物を形成した。100μlの異なる各試薬組成物を小型ウェル内の100μlの大腸菌(E.coli)(図6A、6B)、緑膿菌(P.aeruginosa)(図6C、6D)、または1×10-9M ATP対照溶液(図6E、6F)に添加した。ルミネセンスを50分間にわたり周期的に測定した。この分析結果(図6A〜6F)は、微生物、ATP抽出剤の組み合わせ、および二価カチオン濃度に依存するglo動態の差違を示唆する。
【0086】
実施例7 ATPの抽出および検出に対する二価カチオンの影響はMg2+に限定されない
低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度におけるATP抽出および検出に対する代案の二価カチオン効果を評価するために、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC27853)をミュラー−ヒントンII(MHII)ブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を新鮮なMHIIブロス中で50倍に希釈して、次に数時間インキュベートして対数期にした。細胞をウェルあたりおよそ1×106個の細胞に希釈した。ATP対照溶液をおよそ10-9Mに希釈した。100μlのBacTiter−GloTM試薬組成物(0.002、0.02、0.2、2.0または20mMの異なる濃度のMgCl2(図7A)、CaCl2(図7B)、またはMnCl2(図7C)のいずれかを含有する、200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、0.358mg/ml UltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)、および6mMカブトムシルシフェリン(Promega))を調製して、100μlの細菌またはATP対照サンプルに添加した。Turner BiosystemからのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。高いCa2+(図7B)およびMn2+(図7C)の使用が、ATP検出を同様に妨害することが見いだされることから、この分析結果(図7A〜7C)は、ATPの抽出および検出に対する二価カチオンの影響がMg2+に限定されないことを示唆する。
【0087】
実施例8 ATPの抽出および検出に対する二価カチオンの影響は熱安定性ルシフェラーゼに限定されない
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC27853)をミュラー−ヒントンII(MHII)ブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を新鮮なMHIIブロス中で50倍に希釈して、次に数時間インキュベートして対数期にした。細胞をウェルあたりおよそ1×106個の細胞に希釈した。ATP対照溶液をおよそ10-9Mに希釈した。100μlのBacTiter−GloTM試薬組成物(低い(0.2mM)または高い(20mM)MgCl2濃度のいずれかを含有する、200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、0.358mg/ml QuantiLum組換えルシフェラーゼ(Promega)、および6mMカブトムシルシフェリン(Promega))を調製して、細菌またはATP対照サンプルのいずれかに添加した。Turner BiosystemからのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。この分析結果(図8)は、ATPの一段階抽出および検出に対する二価カチオンの阻害効果が、熱安定性ルシフェラーゼの使用に限定されないことを示唆する。
【0088】
実施例9 微生物細胞数とバイオルミネセンス信号間の相関
4種の細菌株を使用して、微生物細胞数とルミネセンス間の関係をを評価した。細菌株大腸菌(Escherichia coli)(ATCC25922)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC25923)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC27853)、およびバシラス・セレアス(Bacillus cereus)(ATCC10987)をミュラー−ヒントンII(MHII)ブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を新鮮なMHIIブロス中で50倍に希釈して、次に数時間インキュベートして対数期にした。96−ウェルプレート内のMHIIブロスを使用して、培養物のサンプルを連続的に希釈した。水戻ししたBacTiter−GloTM試薬組成物(200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、20mM MgCl2、23mM EDTA、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、0.358mg/ml UltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)、および6mMカブトムシルシフェリン(Promega))を感度改善のために室温で1.5時間平衡化して、異なる各培養サンプルに添加した。Turner Biosystem(Sunnyvale,CA)からのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。
【0089】
細菌細胞数とバイオルミネセンス間の相関を描写するグラフである図9にこの分析結果を示す。ルミネセンス信号は各測定に対する三連の反復の平均を表す。ルリア−ベルターニ寒天プレート上のコロニー形成単位のプレートカウントによって、細菌細胞数を判定した。S:N=[信号平均−バックグラウンド平均]/バックグラウンドの標準偏差]の場合の信号対雑音比を計算した。図9は、5桁にわたるルミネセンス信号と細胞数間の直線的相関を実証する。この実験から引き出された大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus)の検出限界は、それぞれおよそ40、150、70、および10個の細胞である。
【0090】
実施例10 安定したグロータイプのルミネセンス信号を発生させるBacTiter−GloTMアッセイ
実施例9で述べられるようにして4種の異なる細菌(大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus))を生育させ、アッセイした。各アッセイでおよそ106個の細胞を使用した。ルミネセンス信号の安定性を経時的にモニターした。Turner Biosystem(Sunnyvale,CA)からのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。この分析結果(図10)は、本発明の微生物アッセイ系が、一連の微生物細胞において、半減期(T1/2)>30分である安定した「グロータイプ」のルミネセンス信号を生じられることを示唆する。
【0091】
実施例11 BacTiter−GloTMアッセイは時間の関数として、細菌生育の強化されたバイオルミネセンス検出を提供する
大腸菌(E.coli)ATCC25922株をMHIIブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を50mlの新鮮なMHIIブロス中で1:106に希釈して、250rpmで振盪しながら37℃でインキュベートした。サンプルを様々な時点で採取し、実施例9で述べられるようにしてルシフェラーゼ検出アッセイを実施した。VeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。Beckman DU650分光光度計を使用して、光学濃度を600nm(O.D.600)で測定した。RLUおよびO.D.の読み取りがそれぞれ108および1を超える場合は、希釈サンプルを使用した。この分析結果(図11)は、ATP検出アッセイが、従来の光学濃度測定よりも高感度の細菌生育の測定を提供することを示唆した(結果を挿入図と比較されたい)。
【0092】
実施例12 t=5hrにおける低下したルミネセンスの関数として、96−ウェルプレート内で抗菌剤化合物をスクリーニングする
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATCC25923株をMHIIブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を新鮮なMHIIブロス中で100倍に希釈して、抗菌剤スクリーンのための接種材料として使用した。LOPAC化合物の作業原液(50×)および標準抗生物質をDMSO中で調製した。96−ウェルマルチウェルプレートの各ウェルは、245μlの接種材料および5μlの50×作業原液を含有した。マルチウェルプレートを37℃で5時間インキュベートした。100μlの培養物を各ウェルから取り出して、実施例9で述べられるようにしてルシフェラーゼ検出アッセイを実施した。Turner Biosystem(Sunnyvale,CA)からのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。サンプルおよび濃度は次のとおり。ウェル1〜4および93〜96、2%DMSOの負の対照;ウェル5〜8および89〜92、32μg/mlの標準抗生物質テトラサイクリン、アンピシリン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、オキサシリン、カナマイシン、ピペラシリン、およびエリスロマイシンの正の対照;ウェル9〜88、10μMのLOPAC化合物。この分析結果(図12)は、抗生剤を同定するためのこのスクリーニング方法の使用を確証する(枠で囲んだ正の対照との比較で、円で示した)。
【0093】
実施例13 抗生物質用量曝露の関数としての細菌生育のバイオルミネセンスの検出
実施例8で述べられるようにして、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATCC25923株およびオキサシリンを調製し、37℃でインキュベートした。NCCLS(6)によってMIC判定で推奨されるように、19時間のインキュベーション後にATP検出アッセイを実施した。オキサシリンなしの対照と比べたRLUの相対百分率を示す。Turner Biosystem(Sunnyvale,CA)からのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。この分析結果(図13)は、ATP検出に対する抗生物質の用量依存効果を実証する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1A】異なるMgCl2濃度における緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出動態を描写するグラフである。
【図1B】対照として精製ATPを使用した、ATP検出動態を描写するグラフである。
【図2】低い(−;0.2mM)および高い(+;20.0mM)二価カチオン(MgCl2)濃度における緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出に対する、異なるATP抽出剤の組み合わせの効果を描写するグラフである。
【図3】様々な微生物(大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus))中で、低二価カチオン濃度条件下において得られるより高いルミネセンスを模倣するためにキレート剤を使用した、阻害的二価カチオン効果の中和を描写するグラフである。20mM MgCl2を含有する反応混合物に、CDTAをt=12分に添加した(最終濃度=20mM CDTA)。
【図4A】20mMの二価カチオン(MgCl2)濃度の存在下における、大腸菌(E.coli)中のATP検出に対する増大するキレート剤濃度(0mM、22mM、23mM、24mM、および25mMのEDTA)の効果を描写するグラフである。
【図4B】20mMの二価カチオン(MgCl2)濃度の存在下における、緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出に対する増大するキレート剤濃度(0mM、22mM、23mM、24mM、および25mMのEDTA)の効果を描写するグラフである。
【図5A】様々な二価カチオン(MgCl2)濃度(0mM、2.5mM、5mM、10mM、20mM)における大腸菌(E.coli)中のATP検出の動態を描写するグラフである。
【図5B】様々な二価カチオン(MgCl2)濃度(0mM、2.5mM、5mM、10mM、20mM)における黄色ブドウ球菌(S.aureus)中のATP検出の動態を描写するグラフである。
【図5C】様々な二価カチオン(MgCl2)濃度(0mM、2.5mM、5mM、10mM、20mM)における緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出の動態を描写するグラフである。
【図5D】様々な二価カチオン(MgCl2)濃度(0mM、2.5mM、5mM、10mM、20mM)におけるB.セレウス(B.cereus)中のATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6A】大腸菌(E.coli)中でATP抽出剤のパネルを使用した、低い(0.2mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6B】大腸菌(E.coli)中でATP抽出剤のパネルを使用した、高い(20mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6C】緑膿菌(P.aeruginosa)中でATP抽出剤のパネルを使用した、低い(0.2mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6D】緑膿菌(P.aeruginosa)中でATP抽出剤のパネルを使用した、高い(20mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6E】精製ATPを対照として使用した、低い(0.2mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6F】精製ATPを対照として使用した、高い(20mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図7A】低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度での緑膿菌(P.aeruginosa)中のATPの抽出および検出に対するMg2+の効果を描写するグラフである。
【図7B】低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度での緑膿菌(P.aeruginosa)中のATPの抽出および検出に対するCa2+の効果を描写するグラフである。
【図7C】低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度での緑膿菌(P.aeruginosa)中のATPの抽出および検出に対するMn2+の効果を描写するグラフである。
【図8】(熱安定性ルシフェラーゼでなく)組換えホタルルシフェラーゼを使用した、低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度での緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出を描写するグラフである。
【図9】4種の細菌株(大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus))における細菌細胞数とルミネセンス間の相関を描写するグラフである。
【図10】微生物のATPアッセイによって生じたルミネセンス信号の持続期間を描写するグラフである。
【図11】大腸菌(E.coli)の生育をモニタリングするためのATP検出感度を描写するグラフである。
【図12】t=5hrにおける低下するルミネセンスの関数としての96−ウェルプレート内での抗菌剤化合物スクリーニングを描写するグラフである。
【図13】抗生物質用量の関数としての細菌生育のバイオルミネセンス検出を描写するグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌およびその他の微生物細胞を溶解して、ATPを検出および定量化するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生細胞を死細胞から識別する特性の1つは、ATPの存在である。ATPは広く使用されるバイオルミネセンスの検出系中の基質であるため、それは細胞生存度または細胞汚染のための代理マーカーを提供できる。ルシフェリン−ルシフェラーゼ系を使用してATPを細胞から抽出し検出する方法が、技術分野で知られている。しかし細胞のタイプ次第で、ATPの抽出および検出のための要件は異なるかもしれない。構造的に可撓性のリン脂質二層膜がある体細胞は、中性洗剤で容易に中断してATPを放出できる。より硬質の細胞壁がある細菌、酵母、および真菌は、より大きな課題をもたらす。
【0003】
Kolehmainenらに付与された米国特許第4,303,752号明細書では、生きた体細胞および微生物細胞からのヌクレオチド(ATPなど)の選択的判定のためのプロセスについて述べられてる。Kolehmainenらは、様々なイオン性および非イオン性表面活性剤を使用して、体細胞および微生物細胞の異なった透過性を活用する多段階プロセスを開発した。エトキシル化アルキルフェノールなどの非イオン性洗剤による処理に続いて、体細胞がATPを放出する一方で、細菌細胞は影響を受けないことが分かった。この観察は、エトキシル化アルキルフェノールによる体細胞の処理、放出された体ATPの洗い落とし、エトキシル化四級アミンとエトキシル化アミンを含有するより強力なイオン性界面活性剤混合物で残存細胞(ATP含有微生物細胞およびATP欠如体細胞)を処理して微生物のATPを放出することを伴う、体細胞および細菌細胞の混合集団を処理する手段を提供した。最終ステップでは、バイオルミネセンスアッセイで、放出されたATPを測定した。
【0004】
近年、Woodら(米国特許出願公開第2003/0104507号明細書)は、一段階で細胞ATPを抽出し検出するための全構成要素を含有する均質試薬組成物を使用して、細胞中のATPを検出する方法を開示した。ルシフェラーゼを犠牲にすることなくATP放出機能を保持するように独自に調合された反応構成要素は、経済と時間の観点で顕著な進歩を提供した。しかし微生物細胞にはより硬質な細胞壁があるので、開示された方法はそれらに対して最適でない。
【0005】
微生物に必要とされるイオン性洗剤などのより強力な透過処理剤の使用に結びついた1つの問題は、ルシフェラーゼ酵素を不活性化するそれらの能力である。この試薬不適合性問題は、ATP検出を開始させる最終ルシフェラーゼ/ルシフェリン添加ステップに先だつ追加的な中和または希釈ステップを必然的に伴い、一段階ATP抽出/検出試薬組成物開発の障害となる。
【0006】
微生物細胞からのATPの放出および検出に結びついた困難さを考えると、微生物細胞中のATPの一段階検出のための改善された試薬組成物および方法に対する技術分野における必要性がある。細胞壁がある細胞からのATP放出に結びついた課題に加えて、微生物細胞は典型的に体細胞よりもはるかに小さい。これは感度に関するさらなる改善を必然的に伴う。本発明は微生物細胞への一段階ATP検出法の応用における進歩を提供し、微生物細胞がATPの放出および検出を支持するそれらの能力に関してある程度、予想外の違いを示すという発見に基づく。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は微生物細胞からATPを抽出し検出する試薬組成物および方法に関する。本発明はある程度、ATPを抽出し検出するための反応条件が微生物細胞と体細胞の双方の間で異なり、試薬組成物が、幅広い微生物細胞からのATPの効率的な一段階検出を容易にするように調合されてもよいという発見に基づく。
【0008】
一態様では、本発明は、反応緩衝液、少なくとも1つのATP抽出剤、二価カチオン、二価カチオンキレート剤および/またはルシフェラーゼ/ルシフェリン混合物を含む試薬組成物を含み、その中で二価カチオン濃度は十分に低く、またはカチオンキレート剤で十分に中和されて、ATP抽出に対する二価カチオンの悪影響を低下させる。一実施形態では、試薬組成物中の二価カチオンキレート剤濃度と二価カチオン濃度との差は、約5mM未満である。別の実施形態では、二価カチオンキレート剤濃度は二価カチオン濃度の少なくとも2分の1である。二価カチオンキレート剤は、二価カチオン濃度が低い(例えば約5mM、2.5mMまたは1mM未満の)場合には、不必要であってもよい。特に好ましい実施形態では、キレート剤濃度は二価カチオン濃度以上であり、二価カチオンはMg2+であり、二価カチオンキレート剤はEDTAであり、少なくとも1つのATP抽出剤はセチルトリメチル臭化アンモニウム、クロロヘキシジン、およびトリトン−X100などの非イオン性洗剤を含む。
【0009】
別の態様では、本発明は微生物細胞中のATPを検出する方法を含み、その中で微生物サンプルは、反応緩衝液、少なくとも1つのATP抽出剤、二価カチオン、および二価カチオンキレート剤を含む試薬組成物と接触して混合物を形成し、その中で二価カチオン濃度は十分に低く、またはカチオンキレート剤によって十分に中和されてATP抽出に対する二価カチオンの悪影響を低下させ、そして二価カチオンレベルは引き続くルシフェラーゼ媒介ATP検出ステップに十分である。混合物中の二価カチオンキレート剤濃度と二価カチオン濃度との差は、約5mM未満であってもよい。代案としては、二価カチオンキレート剤濃度は混合物中の二価カチオン濃度の少なくとも2分の1であり、好ましくはそれ以上の濃度でさえあってもよい。二価カチオンキレート剤は、二価カチオン濃度が低い(例えば約5mM、2.5mM、または1mM未満)場合には不必要であってもよい。好ましい実施形態では、方法は、大腸菌(E.coli)などのグラム陰性微生物を含有するまたは含有することが疑われる微生物サンプル中のATPを検出する方法に関する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、微生物サンプル中のATPを検出するのに適したATP抽出剤を同定する方法を含み、その中で二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質を含有する組成物がサンプルに添加されて、混合物を形成する。ルミネセンスの程度が測定されて、サンプル中のATPを検出するのに適した試薬組成物が同定される。典型的に、ATP抽出剤は、ルミネセンスの程度が微生物サンプル中のATPを検出するのに十分であれば、微生物源中のATPを検出するのに適している。好ましい実施形態では、二価カチオンが混合物中に約0.5mM未満、より好ましくは約0.1mM未満の濃度で存在する。微生物サンプルは、グラム陽性またはグラム陰性細菌、古細菌、真菌などを含んでもよい。
【0011】
代案としては、微生物サンプルと、二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、およびルシフェラーゼ酵素を含む試薬組成物とを接触させて、第1の二価カチオン濃度を有する第1の混合物を形成し、微生物サンプルを接触させて、第1の混合物よりも高い二価カチオン濃度を第2の混合物中に有することだけが第1の混合物と違う第2の混合物を形成し、ATPの放出および検出に適した微生物ATP抽出剤濃度を同定し、その中で第1の混合物中のルミネセンスは第2の混合物中のルミネセンスよりも高い。
【0012】
さらに別の態様では、本発明の微生物ATP抽出/検出系を使用して、微生物細胞生存度を試験しても、または微生物細胞生存度および/または生育に影響するそれらの能力に基づいて、薬学的活性剤(例えば抗生剤候補)または生物学的活性剤を同定してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
A.定義
明細書および特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。特に断りのない限り、全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。参照した全ての特許および公報は、特に断りのない限り、参照によってその全体をここに援用する。
【0014】
「単離された」または「精製された」ルシフェラーゼとは、同定され、その天然環境の構成要素から分離および/または回収されたものである。
【0015】
「サンプル」という用語は、ここでの用法では、最も広い意味で使用される。サンプルは、本発明を使用して分析されるATPを含有することが疑われる組成物である。サンプルは、任意に増殖培地または細胞溶解産物中で、細胞または細胞集団を含有することが知られている、または含有することが疑われることが多い一方で、サンプルはまた、付着細胞または細胞集団を含有することが疑われる固体表面(例えば綿棒、膜、フィルター、粒子)であってもよい。このような固体サンプルでは、固体と本発明の試薬組成物または本発明の試薬組成物が添加された別の水性溶液とを接触させて、水性サンプルを作ることが考察される。例えば本発明のプロセスによって液体または気相サンプルを試験する際、場合によってはサンプルを生成するために濾過が望ましい。濾過は、サンプルが大容積の希釈気体または液体から採取される場合に好ましい。
【0016】
「試薬組成物」という用語は、ここではサンプルからATPを抽出および/または検出するための1つ以上の構成要素を呼ぶために使用される。試薬組成物は、サンプルからATPを抽出および/または検出するのに十分な構成要素のいくらか、または全てを含んでもよい。
【0017】
「反応混合物」という用語は、ここでの用法では、ATPを含有するまたはATPを含有することが疑われるサンプルと、サンプルからATPを抽出し検出するのに集合的に十分な1つ以上の試薬組成物とを接触させた後に、存在する(または得られる)内容物を指す。
【0018】
「検出」という用語は、ここでの用法では、サンプル内の構成要素の存在または不在を定量的にまたは定性的に判定することを指す。
【0019】
「ATP抽出剤」という用語は、ここでの用法では、細胞膜または細胞壁透過度を変化させ、または微生物源の膜および/または細胞壁の完全性を中断して(すなわち溶解するまたは孔形成を引き起こす)、ATPの抽出または放出をもたらす、あらゆる化合物または化合物の組み合わせを指す。概してATP抽出剤は、ポリミキシンB(例えばポリミキシンB1およびポリミキシンB2)、ポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)、およびクロロヘキシジン(CHEX)などの抗生物質と、オクチル−β−D−1−チオグルコピラノシドなどのアルキルグルコシドまたはアルキルチオグルコシド(参照によってその全体をここに援用する米国特許第6,174,704号明細書を参照されたい)と、トリトン−X100(TX−100)などの非イオン性洗剤と、カルボキシプロピルベタイン(CB−18)などのベタイン洗剤と、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TMA−18)などの四級アンモニウム塩と、プロタミンと、トリエチルアミン(TEA)およびトリエタノールアミン(TeolA)などのアミンと、ポリリジン、ナイシン、マガイニン、メリチン、ホスホリパーゼ(phopholipase)A2、ホスホリパーゼA2活性化ペプチド(PLAP)などのカチオン性、抗細菌、孔形成、膜活性、および/または細胞壁活性ポリマーと、バクテリオファージなどをはじめとするがこれに限定されるものではない、多様な作用物質を含んでもよい。例えばMorbeら、Microbiol.Res.(1997年)第152巻、385〜394頁を参照されたい。
【0020】
「安定信号」という用語は、ルシフェラーゼ反応開始時のルミネセンスと比べて、半時間あたり50%未満のルミネセンス損失を示すルミネセンス信号と定義される。
【0021】
「信号対雑音比」(S:N)という用語は、式S:N=(サンプルの平均ルミネセンスからバックグラウンドの平均を減じたもの)/バックグラウンドルミネセンスの標準偏差、によって定義される。
【0022】
本発明は、微生物細胞からATPレベルを検出し定量化する試薬組成物および方法に向けたものであり、引き続くルミネセンス検出ステップに先だつ、またはその中に組み込まれる中和ステップを必要とせずに、微生物細胞からのATP放出および検出のための反応条件が実現できる、という予想外の発見に基づく。本発明は、広範な微生物細胞からのATPの安定ルミネセンスの検出を容易にできる試薬組成物を開示する。さらに反応構成要素の適切な組み合わせを注意深く選択することで、事実上あらゆる細菌または微生物細胞から、ATPの効率的な一段階放出を得ることができる。
【0023】
B.マグネシウム反転効果
本発明の一態様では、本発明者らは、最適化されていない二価カチオン濃度が、いくつかの微生物細胞からのATPの効果的な放出および検出を妨害できることを見いだした。典型的なルシフェラーゼ媒介ATP検出法は、10〜20mM程度の二価カチオン濃度および約1〜2mMの二価カチオンキレート剤濃度(例えばWoodら、米国特許出願公開第2003/0104507号明細書を参照されたい)を有する試薬組成物を利用する。図1は、B.セレウス(B.cereus)(図1A)および緑膿菌(P.aeruginosa)(図1B)のための二価カチオン濃度の関数としてのATP検出の動態の違いを実証する実験について述べる。二価カチオンはATP検出に必須であるにもかかわらず、この実験からの結果は、予期される二価カチオン量よりも低い量を使用して、実際に微生物細胞中により良いルミネセンスが得られるかもしれないという驚くべき知見を立証する。さらに本発明の発明者らは、試薬組成物または反応混合物中の遊離の二価カチオン(例えばMg2+)濃度をEDTAなどの二価カチオンキレート剤で減少させることにより、特定のATP抽出剤組み合わせの使用から得られるバイオルミネセンスが選択的に増強できることを意外にも見いだした(図2)。この「マグネシウム反転効果」は、その中でCDTAなどのキレート剤化合物の添加がルミネセンス(図3)を活性化することが見いだされた実験によって、さらに支持される。本発明の発明者らは、ATP抽出/検出試薬組成物または反応混合物中に存在する二価カチオンよりも高い濃度で二価キレート剤を使用した(またはキレート剤ありまたはなしで、単により低い二価カチオン量を使用した)場合の、ATP抽出および検出の予想外の利点をさらに立証した。試薬組成物を最適化してこれらの観察を活用することで、同一試薬組成物を使用して、多種多様な微生物源から効率的なATP放出および検出を得ることができた。
【0024】
理論による拘束は望まないが、異なる微生物の構造的な特性が、ATP放出に関する二価カチオンの阻害効果の説明になってもよい考えられる。例えばグラム陽性およびグラム陰性細菌の細胞壁は、それらのペプチドグリカン層の密度および組成物に関して、および外側脂質二層膜の存在または不在によって異なる。グラム陽性細菌の細胞壁は、グラム陽性細胞壁の60〜90%を構成する多数の相互連結する層ペプチドグリカンからなる、幅広く緻密な壁(厚さ20〜80nm)であるように見える。細胞壁中に織り交るのは、タイコ酸および様々な糖タンパク質(glyoproteins)である。グラム陽性細胞壁とは対照的に、グラム陰性細胞壁は、グラム陰性細胞壁の10〜20%のみを構成する2〜3層のペプチドグリカン含有内壁(厚さ2〜3nm)、およびリン脂質、リポ多糖類(LPS)、およびタンパク質から構成される外膜(厚さ約7nm)を含む。グラム陰性細菌の外膜中のLPSは、グラム陽性細胞壁の糖タンパク質およびタイコ酸と同様の様式で、外膜に強度を加えると考えられる。細菌とは対照的に、酵母および真菌の細胞壁は、細菌細胞壁よりもなおさらに強く、キチンなどのその他の物質を含有してその中の脆い細胞膜を保護する。
【0025】
グラム陰性細菌の外膜は、隣接するLPS分子中の負に帯電した群間の静電反発を安定化する二価カチオンによって強化されたバリア機能を提供する(Nikaido、「Escherichia coli and Salmonella」より「Outer Membrane」、ASM Press、Washington D.C.、29〜47頁)。バリア機能が、ナフシリン、疎水性ペニシリンなどの特定の抗生物質化合物の相対的な不透過性を説明する。EDTA、二価カチオンキレート剤、および/またはトリスなどのかさ高いアミンの添加は、LPS分子間の密接な会合を阻害すると考えられる。本発明のATP抽出剤を使用すると、EDTAまたはCDTAなどの二価カチオンキレート剤は、外膜を不安定化して、瞬間的破裂および細胞構成要素(ATPなど)の放出を容易にできる。
【0026】
二価カチオンはATP放出を阻害できるが、一方、それらはATPを検出するためのルミネセンスの反応の必須構成要素である。ATP検出における最大の感度のために、二価カチオン、特にマグネシウムの濃度は、典型的に約10mMを超える濃度で使用される(図1B参照)。微生物を含有するサンプル中のATPを抽出し検出するための一段階試薬組成物は、二価カチオンのためのこれらの相反する要件の折り合いを付けなくてはならない。さらに本発明者らは、微生物からのATPの最適抽出および検出が、サンプルへの試薬組成物の添加後に、迅速に、10分以内に、好ましくは5分以内に達成できることを見いだした。試薬組成物中で使用する二価カチオンまたはカチオンキレート剤の最適量を判定することは、微生物のタイプおよび構造、二価カチオンが細胞壁および/または細胞膜構成要素を安定化する程度、微生物サンプル中に既に存在するATP、カチオン、および/またはカチオンキレート剤の量、および試薬組成物または反応混合物中のルシフェラーゼの量または安定性をはじめとするがこれに限定されるものではない、多様な要因に左右される。
【0027】
C.試薬組成物
1.ATP抽出剤
本発明の一態様は、微生物細胞からのATP放出を促進するための1つ以上のATP抽出剤使用を含む。微生物ATP抽出剤は、ポリミキシンB(例えばポリミキシンB1およびポリミキシンB2)、ポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)、およびクロロヘキシジン(CHEX)などの抗生物質と、オクチル−β−D−1−チオグルコピラノシドなどのアルキルグルコシドまたはアルキルチオグルコシドと(参照によってその全体をここに援用する米国特許第6,174,704号明細書を参照されたい)、エトキシル化オクチルフェノールトリトンX−100(TX−100)およびその他のエトキシル化アルキルフェノールをはじめとするが、これに限定されるものではない、非イオン性エトキシル化アルキルフェノールなどの非イオン性洗剤と、カルボキシプロピルベタイン(CB−18)などのベタイン洗剤と、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)などの四級アンモニウム塩と、臭化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TMA−18)と、プロタミンと、トリエチルアミン(TEA)およびトリエタノールアミン(TeolA)などのアミンと、ポリリジン、ナイシン、マガイニン、メリチン、ホスホリパーゼ(phopholipase)A2、ホスホリパーゼA2活性化ペプチド(PLAP)などのカチオン性、抗細菌、孔形成、膜活性、および/または細胞壁活性ポリマーと、バクテリオファージなどをはじめとするが、これに限定されるものではない、微生物細胞壁および/または膜を透過処理してATP放出を容易にできる、多様な作用物質を含んでもよい。例えば参照によってその全体をここに援用するMorbeら、Microbiol.Res.(1997年)第152巻、385〜394頁、およびイオン性表面活性化合物を開示する米国特許第4,303,752号明細書を参照されたい。
【0028】
ATP抽出剤は、好ましくは本発明のルシフェラーゼ酵素を不活性化しないように選択される。ATP放出のためにより強力な作用物質(例えばイオン性洗剤など)を必要とする微生物のためには、これらの作用物質存在下で強化された安定性を示す、その内容全体を本願明細書に引用した米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示されるものなどの改質ルシフェラーゼが特に好ましい。
【0029】
発明の一実施形態では、ATP抽出剤はCTAB、四級アンモニウム塩を含む。好ましい実施形態では、CTABは試薬組成物中に約0.04%〜0.15%(w/v)の間の濃度で存在する。別の実施形態では、ATP抽出剤は、CHEXと、トリトンX−100などのエトキシル化アルキルフェノールとを含んでもよい。好ましい実施形態では、CHEXは好ましくは約0.04%〜0.16%(w/v)の間であり、エトキシル化アルキルフェノールは約0.25%〜1.0%(w/v)の間で存在する。特に好ましい実施形態では、試薬組成物は2種以上のATP抽出剤を含んでもよい。好ましい一実施形態は、CHEX(約0.04%〜0.16%(w/v)の間)、トリトンX−100などのエトキシル化アルキルフェノール(約0.25%〜1.0%(w/v)の間)、およびCTABなどの四級アンモニウム塩(約0.02%〜0.08%(w/v)の間)を含む。
【0030】
本発明の方法において機能する最も好ましい濃度または濃度範囲は、異なる微生物および異なるATP抽出剤に対して変動し、本願明細書で述べられる、または一般に当業者に知られている方法を使用して、経験的に判定されてもよいことが完全に予期される。
【0031】
2.二価カチオン
カブトムシルシフェラーゼ−ルシフェリン反応は、ATPだけでなく二価カチオンにも依存する。したがってルシフェラーゼ活性を容易にするために、(サンプル中に既に存在する場合を除いて)二価カチオンが典型的に提供される。二価カチオンとしては、マグネシウム、カルシウム、およびマンガンが挙げられる。二価カチオンは、スルフェート、スルホネート、グルコネート、カーボネート、塩化物、および臭化物などの塩またはハロゲン化物として供給されてもよい。例えばマグネシウムカチオンは、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどとして提供されてもよい。好ましくは二価カチオンは、マグネシウムの塩化物または硫酸塩から選択される。
【0032】
特定の細胞膜または壁の透過度は、二価カチオンの存在によって悪影響を受けるかもしれないので、特定微生物または特定抽出/検出系について二価カチオン濃度を経験的に調合して、例えばATPの細胞放出とATP検出との間に適切なバランスを提供してもよい。
【0033】
さらに二価カチオンキレート剤がATP抽出に対する二価カチオンの悪影響を中和する能力を有することを考えると、試薬組成物または反応混合物中に存在する二価カチオンキレート剤のレベル次第で、二価カチオン濃度を調節してもよい。二価カチオンキレート剤が低い(例えば約5mM、2.5mMまたは1mM未満)場合、二価カチオン濃度はそれに応じてより低く、好ましくは2.5mM未満、より好ましくは0.2〜1mMの間である。しかし二価カチオンキレート剤がより高い(例えば2〜20mM)場合、二価カチオン濃度はそれに応じてより高く、好ましくは二価カチオンキレート剤濃度以下の濃度である。
【0034】
3.二価カチオンキレート剤
二価カチオンキレート剤としては、制限なく、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレングリコールテトラ酢酸(EGTA)、および1,2−シクロヘキサンジニトリロテトラ酢酸(CDTA)、ニトリロ酢酸(NTA)、クエン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸、リグノスルホネートの塩、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましくはキレート剤は、それらの一般入手可能性および比較的低価格から、EDTA、EGTA、およびCDTAよりなる群から選択される。二価カチオンキレート剤の適切なレベルは、ATP抽出に対する二価カチオンの悪影響を中和するのに十分であるが、カチオン依存性のルシフェラーゼ触媒ATP検出を防止する程度ではないレベルを提供することに基づいて、経験的に判定されてもよい。
【0035】
概してキレート剤濃度は、二価カチオン濃度の少なくとも約50%であり、好ましくは二価カチオン濃度の約60%、70%、80%、90%、または95%である。最も好ましくはキレート剤濃度は、二価カチオン濃度にほぼ等しく、またはそれを超える。特に好ましい実施形態では、キレート剤濃度は約20〜25mMの範囲にある。二価カチオン濃度が低い(例えば約5mM、2.5mM、または1mM未満)場合には、二価カチオンキレート剤が不必要かもしれない。
【0036】
しかし当業者は、異なるキレート剤が、pH次第で異なるキレート能力を有するかもしれないことを認識する。したがって本発明の外部パラメーターとしては、その他の点では同一のルシフェラーゼアッセイ反応条件下で(例えばpH7.0〜8.0などで)、EDTAのそれと比較できるキレート剤能力を提供するのに釣り合ったキレート剤のためのキレート剤濃度における可変性の程度が挙げられる。換言すれば、二価カチオンキレート剤の量は、その他の点では同一の一段階ATP反応条件(二価キレート剤を除いて、その他の全ての試薬および試薬濃度が同一)下で、EDTAのキレート能力と比較できるまたはそれを超えるキレート能力を提供するように調節されてもよく、またはATPの抽出および検出に対する二価カチオンの悪影響と好ましい効果それぞれのバランスをとるのに、十分な量に調節してもよい。
【0037】
4.ルシフェラーゼ/ルシフェリン
それらの最も基礎的レベルでは、ルシフェラーゼはルミネセンスを生じるそれらの能力によって画定される。より具体的には、ルシフェラーゼは基質ルシフェリンの酸化を触媒することで、オキシルシフェリンおよび光子を生成する。その触媒生成物が光を含むルシフェラーゼは、感度、検出可能な生成物、およびATPの容易な測定を提供する。あらゆるATP依存性ルミネセンス生成酵素が、本発明の試薬組成物および方法中で使用するために考察される。
【0038】
今日までに、少なくとも5つのクラスのルシフェラーゼが同定されている(Jonesら、1999年;Thomsonら、1997年)。これらの内、一般的なホタル(ホタル科(Lampyridae))のもののようなカブトムシルシフェラーゼは、ユニークな進化上の起源がある特徴的なクラスを形成する(McElroyら、1969年;Whiteら、1969年;Whiteら、1975年)。カブトムシルシフェラーゼは文献でホタルルシフェラーゼと称されることが多い。しかしホタルルシフェラーゼは、実際のところカブトムシルシフェラーゼクラスの下位集団である。カブトムシルシフェラーゼは、カブトムシそれ自体のランタンから、または技術分野でよく知られているタンパク質発現系から精製されてもよい(BaldwinおよびGreen、2000年;BenyおよびDolivo、1976年;Branchiniら、1980年;Filippovaら、1989年)。
【0039】
参照によってその内容全体をここに援用する米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示されるものをはじめとするが、これに限定されるものではない、ATP−依存反応を触媒してルミネセンスを発生させる全てのルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ変異型、ルシフェラーゼ断片、および変異型ルシフェラーゼ断片が、本発明で使用するために考察される。カブトムシルシフェラーゼ、特に北米のホタルPhotinus pyralisからのホタルルシフェラーゼが技術分野でよく知られている。P.pyralisルシフェラーゼ(LucPpy)は、遺伝子のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質による計算でMr61kDaのおよそ550個のアミノ酸からなる。本発明に従ったその他のホタルルシフェラーゼとしては、Photuris pennsylvanicaホタルルシフェラーゼ(LucPpe2、545個のアミノ酸残基、GenBank2190534;Yeら、1997年)、ならびにLucPpe2(例えばLucPpe2m78(78−0B10としても知られている)、LucPpe2m90(90−1B5としても知られている)、LucPpe2m133(133−1B2としても知られている)、LucPpe2m146(146−1H2としても知られている))に由来する米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示される様々な突然変異体ルシフェラーゼ、およびUltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)などの様々な市販のルシフェラーゼが挙げられる。LucPpe2m78、LucPpe2m90、LucPpe2m133、およびLucPpe2m146を作る方法は、米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示され、その全体を参照によってここに援用する。
【0040】
本発明では、単離および/または精製されたルシフェラーゼが典型的に使用される。それらの天然環境に由来する、診断または治療的使用を妨害できる汚染物質構成要素としては、酵素、ホルモン、およびその他のタンパク様または非タンパク様物質が挙げられる。純度を確実にする一技術は、クマシー・ブルーまたは銀染色を使用して、非還元または還元条件下でSDS−PAGE分析を実施することである。ルシフェラーゼは、天然ルシフェラーゼ産生源から、または外来性ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを発現する組換え細胞から単離されてもよい。ルシフェラーゼ酵素を生成および/または精製する技術は、当業者によく知られている。
【0041】
カブトムシルシフェラーゼの天然由来基質は、多複素環式有機酸D−(−)−2−(6’−ヒドロキシ−2’−ベンゾチアゾリル)−Δ2−チアゾーリン−4−カルボン酸(ルシフェリン)であるホタルルシフェリンである。ルシフェリンは、自然界から(例えばホタルから)単離されても、または合成されてもよい。合成ルシフェリンは自然発生的ルシフェリンと同一構造を有することができ、または同じように機能さえすれば変異型または誘導体化であることができる(Bowieら、1973年;Branchini、2000年;Craigら、1991年;MiskaおよびGeiger、1987年;YangおよびThomason、1993年)。本発明で使用するための例示的なルシフェリン誘導体としては、6−デオキシアミノルシフェリン、D−ルシフェリンメチルエステル、D−ルシフェリル−L−フェニルアラニン、D−ルシフェリル−L−Nα−アルギニン、D−ルシフェリン−O−スルフェートおよびD−ルシフェリン−O−ホスフェート(MiskaおよびGeiger、1987年)、サンプル中の構成要素によりエステラーゼによって加水分解されまたは作用されてルシフェリンになったルシフェラーゼのエステル(Craigら、1991;YangおよびThomason、1993年)が挙げられるが、これに限定されるものではない。その他の有用なルシフェリン類似物の例としては、それぞれ緑色および赤色光スペクトルにおいて発光するナフチルシフェリンおよびキノリルルシフェリンが挙げられる(Branchiniら、1989年)。ルシフェリンの商業的供給源は数多くある(例えばPromega Corp.Madison,WI;Molecular Probes,Eugene,OR)。
【0042】
ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応からルミネセンス信号を生じる、カブトムシルシフェラーゼ触媒反応は、ルシフェラーゼ酵素、ルシフェリン、アデノシン三リン酸(ATP)、マグネシウム(またはその他の二価カチオン)、および分子酸素を必要とする。最初の反応では、ルシフェリンとATPが反応して無機ピロリン酸塩が除去され、アデニル酸ルシフェリルを形成する。アデニル酸ルシフェリルは、ルシフェラーゼの触媒部位に密接に結合したままである。この形態の酵素が分子酸素に曝露すると、酵素に結合したアデニル酸ルシフェリルは酸化されて、電子的に励起状態のオキシルシフェリンを生じる。励起した酸化ルシフェリンは、基底状態に戻る際に発光する。
【化1】
【0043】
ATP類似体(例えばdATP)もまた、上の反応を進められる。さらに上の反応でマグネシウムをその他の二価カチオン(例えばMn2+またはCa2+)で置き換えてもよい。酸素は反応の反応物質であるので、反応は嫌気性条件下で行うことができない。しかし空気中に存在する以上に酸素を提供することは、概して不必要である。反応溶液中に十分な酸素があれば、反応は閉鎖容器内で実施できる。
【0044】
ほとんどのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応は、束の間の閃光を発生させる。しかし例えばLucPpe2m146およびLucPpe2m90ルシフェラーゼなどの本発明で使用するのに好ましいいくつかのルシフェラーゼは、本発明の条件下で、試薬組成物とサンプルとを合わせて混合物を形成した後に、1時間あたり50%未満のルミネセンス損失がある「グロータイプ」のルミネセンス信号を発生させる。本発明の範囲内の好ましいルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ変異型、ルシフェラーゼ断片、または変異型ルシフェラーゼ断片としては、同一試薬組成物の文脈中で、試薬組成物環境内で安定性を維持でき、安定ルミネセンスを発生させる能力を保持できるものが挙げられる。
【0045】
ルシフェラーゼ触媒反応の完了を容易にするために、ルシフェリンなどのルシフェラーゼのための基質が試薬組成物中に含まれてもよい。本発明の範囲内のいくつかの実施形態では、ルシフェリンを除外し、使用者が好みのルシフェリンを提供できるようにしても良い。代案としては、その他の反応構成要素に添加するためにルシフェリンが別々に提供されてもよい。提供されるルシフェリンのタイプは異なってもよいが、それは特定用途で使用するための特定のルシフェラーゼの基質でなくてはならない。
【0046】
天然酵素はこのような組成物でも機能するかもしれないので、均質な一段階抽出および検出試薬組成物を作り出す能力は、必ずしもルシフェラーゼの化学または温度安定性に依存しない。しかしATP抽出剤などの調合物中のその他の構成要素からの活性損失の影響をより受けにくく、より広範な反応条件(すなわち周囲温度および/またはより高い温度)でより大きな選択性および/または感度、およびより大きな適合性を提供するかもしれないことから、熱安定性ルシフェラーゼの使用が好ましい。同様に、「化学安定ルシフェラーゼ」がより上手く活性を保持でき、または感度および/または性能を増大させることができる範囲で、それらは化合物または条件の存在下で(例えば野生型酵素と比べて)好ましい。
【0047】
本発明の試薬組成物、混合物、または方法中で使用するのに好ましいルシフェラーゼは安定信号を発生させ、すなわちこのようなルシフェラーゼは、ルシフェラーゼ反応で使用すると、ルシフェラーゼ反応開始時のルミネセンスに対して半時間あたり50%未満のルミネセンス損失と定義される強化された持続期間でルミネセンスを生じる。好ましいルシフェラーゼとしては、(ルミネセンスによる測定で)少なくとも1時間にわたり、好ましくは少なくとも2時間にわたり、さらにより好ましくは少なくとも4時間にわたり、少なくとも約30%(好ましくは少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%)の酵素活性を維持するものが挙げられる。
【0048】
5.ATP代謝のATP分解酵素阻害物質または阻害物質
微生物細胞は、経時的に細胞中に存在するATP量を歪められる物質を含んでもよい。これはATP分解酵素、ATP分解酵素阻害物質、および/またはATP生成酵素の阻害物質の存在に起因してもよい。ATP濃度は特定時間に判定されるので、そのままにしておくと、ATP生成または損失と結びついた不適切な活性が、微生物細胞中に存在するATP濃度の過大評価をもたらすかもしれない。
【0049】
サンプル中のATPレベルを正確に測定するために、微生物のATPプールを分解できる、またはATPの新しい供給源を不適切に生成できる酵素を阻害することが好ましい。適切な阻害物質を組み込み損なうと、ATP濃度の不正確な判定がもたらされるかもしれない。例示的なATP分解酵素阻害物質としては、本発明のATP抽出剤(CTABなど)、カチオン性または非イオン性洗剤、または米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示されるATP分解酵素阻害物質のいずれかが挙げられる。DTABなどの阻害物質が特定のATP分解酵素を不活性化してもよいのに対し、フッ化ナトリウム(NaF)などのその他の分子は脱リン酸酵素を不活性化して、ATP代謝の調節に関与する微生物キナーゼの活性に影響を与えてもよい。
【0050】
米国特許出願公開第2003/0104507号明細書で開示されるように、ATP生成酵素の例示的な阻害物質としては、キナーゼまたは脱リン酸酵素阻害物質(NaFなど)が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の試薬組成物は、少なくとも約0.2mM、好ましくは少なくとも約1mM、より好ましくは少なくとも約2mMの濃度のNaFを含んでなってもよい。ATP生成酵素のその他の阻害物質としては、バナジン酸塩、AMP、DAPP(Bostickら、1982年)およびジクロロ酢酸(Kiechleら、1980年)などのその他のキナーゼ阻害物質が挙げられる。
【0051】
ATPの不適切な生成または損失を防止するための阻害物質の使用は、長時間にわたり多数のサンプルプレートを読み取る必要がある高処理能力用途において特に有用であってもよく、サンプル中に存在する元のATPレベルを歪めるより大きな機会を提供する。
【0052】
6.緩衝液
適切な緩衝液の選択は、pH緩衝能力およびルシフェラーゼ−ルシフェリン反応との相互作用に依存する。作用溶液に適切なpHを維持し、ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応を妨げないあらゆる緩衝液が考察される。好ましいpH範囲は約pH4.5から約pH9.0の間であり、より好ましくは約pH6.0から約pH8.0の間である。MESおよびクエン酸緩衝液に加えて、典型的な緩衝液としては、リン酸緩衝食塩水(PBS)、トリス、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、ホウ酸塩、および当業者に適切であるかもしれないことが知られているその他のあらゆる緩衝液が挙げられる。典型的な緩衝剤としては、トリシン、HEPPS、HEPES、MOPS、トリス、グリシルグリシン、および適切なpHおよびイオン強度を維持するのに使用されるリン酸塩が挙げられる。好ましい緩衝液濃度は、約50mM〜200mMの範囲である。
【0053】
7.脱泡剤
気泡に起因するサンプルの損失および/またはサンプルの相互汚染を防止するために、脱泡剤が望ましい。脱泡剤の添加はまた、製造または使用中の生成物の定量供給を容易にするかもしれない。適切な脱泡剤としては、商品名MAZU(登録商標)(PPG Industries、Gurnee,IL)の下に入手できるものが挙げられ、有機またはシリコーンベースであってもよい。脱泡剤の選択は、ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応への妨害性なしに泡を除去するそれらの能力に左右されてもよい。
【0054】
8.その他の作用物質
試薬組成物はまた、安定剤または揮発性制御剤を含んでもよい。安定剤または揮発性制御剤は、ルシフェラーゼを分解から安定化する、および/またはルシフェラーゼおよび/またはルシフェリンの凍結乾燥を助けるあらゆる化合物であってもよい。適切な酵素安定剤としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、Prionex(Pentapharm Ltd.、Basel,Switzerland)などのBSA代用品、ゼラチン、および洗剤(好ましくは非イオン性洗剤、最も好ましくはTHESIT)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
本発明の試薬組成物はまた、ナトリウムピロリン酸塩(NaPPI、例えば約25mMの)、補酵素A(CoA)、ジチオスレイトールおよびβメルカプトエタノール(Woodに付与された米国特許第5,283,179号明細書、1994年;Woodに付与された米国特許第5,650,289号明細書、1997年)などのチオール試薬、金属イオンキレート剤(ATP抽出/検出におけるそれらの使用に加えて)またはプロテアーゼ阻害物質(Scheirerに付与された米国特許第5,618,682号明細書、1997年;Scheirerに付与された米国特許第5,866,348号明細書、1999年)、または高濃度の塩(Van LuneおよびTrer Wielに付与された国際公開第00/18953号パンフレット、2000年)をはじめとするが、これに限定されるものではない、ルミネセンス持続期間を増強する(検出半減期を延長する)ことが知られている物質を含んでもよい。
【0056】
D.微生物細胞中のATPを抽出し検出するための方法
本発明の方法、組成物、およびキットは、微生物サンプル中のATP(またはルシフェラーゼ基質として機能できるATP類似体)の単純な定性的または定量的検出を提供する。概してサンプル中のルミネセンスを実証する単純な定性実験は、ATPの存在を示す。
【0057】
一態様では、本発明は、その中で微生物サンプルと、反応緩衝液、少なくとも1つの微生物ATP抽出剤、二価カチオン、および二価カチオンキレート剤を含有する試薬組成物とが接触され、その中で二価カチオンキレート剤濃度と二価カチオン濃度との差が約5mM未満である、微生物細胞中のATPを検出するための方法を含む。代案としては、試薬組成物または反応混合物中の二価カチオンキレート剤濃度は、二価カチオン濃度の少なくとも2分の1、好ましくはそれ以上でさえあってもよい。しかし二価カチオン濃度が低い(例えば約5mM、2.5mM、または1mM未満)場合には、二価カチオンキレート剤が不必要であってもよい。好ましくは検出可能なルミネセンス信号は、微生物サンプルと試薬組成物とを接触させた後、5または10分以内に生じる。本質的に、本発明の方法における使用のために、本開示で述べられるあらゆる試薬組成物が考察される。
【0058】
微生物サンプルと試薬組成物とを接触させることは、試薬組成物中に存在する適切なバイオルミネセンス試薬との反応のための、微生物細胞からのATPの抽出または放出を容易にし、それによって容易に検出可能なバイオルミネセンス信号が生じる。微生物サンプルは、精製された微生物サンプル、微生物細胞の混合集団、または微生物細胞を含有することが疑われる供給源物質を構成しても良い。好ましい実施形態では、本発明は、大腸菌(E.coli)から、または大腸菌(E.coli)を含有することが疑われる微生物源物質から、ATPを抽出し検出する方法に関する。
【0059】
例えばカチオン性または非カチオン性洗剤などの少なくとも1つのATP抽出剤と、マグネシウムなどの二価カチオンと、EDTAなどの二価キレート剤と、LucPpe2m78、LucPpe2m90、LucPpe2m133またはLucPpe2m146などのルシフェラーゼ供給源と、ルシフェリンなどの1つ以上のルシフェラーゼ基質(凍結乾燥製剤またはその他の適切なルシフェリン類似体基質から水で戻してもよい)とを含有する試薬組成物を使用して、適切なルミネセンス信号を生じさせてもよい。試薬組成物は、1つ以上のATP生成酵素阻害物質、酵素安定剤、脱泡剤などをさらに含んでもよい。
【0060】
1.微生物細胞源
一態様では、本発明は、細菌、酵母またはその他の真菌などの微生物サンプル中、または微生物サンプルを含有することが疑われるサンプル中のATPを抽出し検出する方法を提供する。真正細菌(グラム陽性細菌、グラム陰性細菌の双方)、古細菌、酵母または真菌をはじめとするが、これに限定されるものではない、本発明に従って使用するのに適した多様な微生物源がある。例えば本発明の試薬組成物は、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、フラボバクテリウム・オケアノコイテス(Flavobacterium okeanokoites)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、およびフランシセラ・フィロミラジア(Francisella philomiragia)などのグラム陰性細菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureaus)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バシラス・セレウス(Bacilus cereus)、アルスロバクター・ルテウス(Arthrobacter luteus)などのグラム陽性細菌、およびサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの真核生物の微生物をはじめとするが、これに限定されるものではない多様な異なる微生物の生物体で機能することが見いだされている。好ましい実施形態では、サンプルは、大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)を含有する、または含有することが疑われる。本発明の方法は、あらゆる量のATPを含有するサンプルと共に使用してもよいが、非飽和量のATP(すなわちルミネセンスがATP濃度に正比例する範囲)を含有するサンプルを使用することが好ましい。
【0061】
微生物サンプルは、細胞溶解産物と、無処置細胞と、生検材料と、食物と、飲料と、動物、植物、または無生物対象物などの表面をぬぐった綿棒などの微生物を含有することが疑われるあらゆるものであってもよい。対照サンプルは、既知のATP濃度を含んで標準曲線を発生させ、サンプル中のATPレベルの定量的な判定を容易にしてもよい。
【0062】
細胞溶解産物は、もはや認識可能な無処理細胞構造に組織化できない細胞構成要素を含んでなる。細胞溶解産物は可溶性および不溶性の構成要素を有してもよく、どちらも溶解産物を使用する前に除去してもよい。溶解産物は、超音波処理、ダウンス、乳鉢と乳棒、凍結解凍サイクリング、または細胞の物理的完全性を破壊するその他のあらゆる装置またはプロセスを使用した物理的中断や、または両性イオン性および非イオン性洗剤、またはカチオン性洗剤DTABまたはCTABなどその中でLucPpe2m146が活性を維持するような洗剤による溶解をはじめとするあらゆる手段によって調製してもよい。好ましくは細胞溶解産物は、細胞収集時にATP濃度の完全性が保持されるように生成される。
【0063】
2.ATP抽出
微生物源からの効率的なATP抽出または放出は、微生物源によって呈される構造的な制約に左右されるかもしれない。これらの状況は、二価キレート剤化合物量のバランスを取って、十分なレベルの二価カチオンがATPのバイオルミネセンスの検出を促進しながら、二価カチオン媒介安定化を逆転させることを必然的に伴うかもしれない。ATPを抽出し検出するための適切なATP抽出剤の選択は、特定微生物源について経験的に判断してもよい。好ましくはこれらの化合物の選択は、本発明に従った一段階抽出およびATP検出のための効率的なATP抽出、およびATP検出活性(例えばルシフェラーゼ活性など)の維持を前提としている。
【0064】
3.ATP検出
カブトムシルシフェラーゼ−ルシフェリン反応は、光(「ルミネセンス」)生成をもたらす。カブトムシルシフェラーゼ−ルシフェリン反応はATP依存性であるため、ルシフェラーゼを使用してATPをアッセイできる。反応は顕著に高感度であり、わずか10-16モル以下のATPを含有するサンプル中のATPを検出できるようにする。本発明の組成物、方法、およびキットは、ルミネセンスの量を定量化することで、使用者がサンプル中のATP量を定量できるようにする。本発明は関心のあるサンプル、および既知量のATP(対照)含有サンプルにも適用される。未知のATP濃度のサンプルから発生した信号と、内部対照から発生した信号(例えばサンプルへの既知量のATP添加と引き続いくルミネセンス測定)とを、またはいくつかの既知ATP濃度サンプルのルミネセンスを測定しグラフにプロットして作成した外部標準曲線とを相関させてもよい。このような方法は当業者に知られている(MoyerおよびHenderson、1983年;Ronnerら、1999年;Stanley、1989年;Woodら、1989年)。
【0065】
ルシフェラーゼ反応によって生じるルミネセンスは、典型的に照度計で検出されるが、その他の検出手段を使用してもよい。ルミネセンスを測定し、それによって試薬組成物活性を判定するために、試薬組成物とサンプルを合わせた後の関心ある時点で、ルシフェラーゼ反応によって発じる相対光単位(RLU)の値を測定してもよい。バックグラウンドレベルを超える光の存在は、サンプル中のATPの存在を示唆する。ルミネセンスのバックグラウンドレベルは、サンプルが存在するのと同一反応条件(例えば試薬組成物など)下であるが、サンプル不在で測定してもよい。ATPを伴う正の対照反応を用いて、サンプル中に存在するATP量の判定を容易にしてもよい。これらおよびその他の対照反応は、当業者によって判定されてもよい。
【0066】
本発明の組成物および方法で使用するのに好ましいルシフェラーゼは、持続期間が明白で、ルシフェラーゼ反応開始時に発生するルミネセンス信号に比べて半時間あたり50%未満のルミネセンス損失を示す、安定ルミネセンス信号を発生させる。本発明の組成物および方法で使用するのに好ましいルシフェラーゼは、強化された熱安定性特性を有してもよく、および/またはルシフェラーゼ反応開始後1時間、より好ましくは2時間、最も好ましくは開始後4時間以上をはじめとするが、これに限定されるものではない、経時的なサンプルの複数分析または経時的な多数のサンプルの分析に好ましい動態学的特性を有してもよい。
【0067】
放射光量を定量化することで、サンプル中のATPの定量化を可能にし、それによって生微生物細胞量の定量化を可能にしてもよい。例えば試験サンプルから放出される光量と、対照サンプルから放出される光量とを、または既知量のATPおよび同一ルシフェラーゼ、基質、および反応条件(すなわち温度、pHなど)を使用して判定された標準曲線とを比較すると、定量的なATP値が分かる。定量化はバックグラウンド値の減算を伴うことが理解される。例えば試験化合物の存在または不在におけるサンプルの比較などのように、1つのサンプルから放出されるルミネセンスと、別のサンプルから放出されるルミネセンスとを比較すると、サンプル中に存在するATPの絶対量を知る必要なしに定性的ATP値が分かる。このような多数の実験は当業者によって容易にデザインされる。
【0068】
本発明に従った好ましい実施形態は、ATPの抽出および検出を容易にする構成要素の完全なセットを含有する一段階試薬組成物を使用した、ATP検出方法に関する。しかし当業者に知られているその他の「二段階」ATP検出法に従い、最終ATP検出ステップにおける中和剤(例えば緩衝液)および/または外来性ルシフェラーゼおよび/またはルシフェリン剤の添加に先だって、最初に細胞を溶解するために、ルシフェラーゼおよびルシフェリン試薬と独立して、本発明のATP抽出剤を含有する試薬組成物を使用してもよい。
【0069】
4.細胞生存度
ATPの存在は、生細胞に特徴的な活性代謝プロセスの反映である。したがって本発明の組成物、方法、およびキットを使用して、細胞生存度をアッセイできる(Cree、1998年;Jassimら、1990年;Pettyら、1995年)。細胞生存度の正確な測定は、細胞に対する物質の効果の正確なアセスメントを可能にする。細胞生存度に関するその他の応用は、当業者に知られている。細胞生存度を判定することは、例えば細胞毒性、細胞増殖、壊死、細胞代謝の変化などを評価するのに有用であってもよい。
【0070】
細胞生存度を評価するのに使用される微生物サンプルは、自然の生細胞であってもよく、あるいは(細胞生存度の代理マーカーとしての)細胞溶解産物、または細胞を含有することが疑われる、細胞に由来することが疑われる、または微生物源材料の生存度を反映することが予測される、あらゆるその他の微生物源材料を含んでもよい。
【0071】
5.アッセイキット
均質な溶解および検出試薬を作成するための構成要素、および使用説明のセットを含んでもよい、本発明に従って使用されるアッセイキットが考察される。好ましくはキットは、ルシフェリン/ルシフェラーゼの凍結乾燥供給源、均質な溶解および検出試薬を作成するためのATP抽出剤を含有する水戻し緩衝液のバイアルを含んでもよい。水戻し緩衝液は、固定濃度のカチオンおよび/またはキレート剤と共に供給されてもよく、またはこれらの構成要素は別々に供給されて、特定の微生物細胞源材料(例えば個々の細胞、集団など)次第で、使用者が二価カチオンおよび/またはキレート剤を使用に適した濃度で添加できるようにしてもよい。
【0072】
E.細菌サンプル中のATPを溶解し検出するのに適した試薬組成物を同定する方法
異なる微生物は、本プロセスに影響する構造的な差違に基づいて、それらが一段階細胞溶解−ATP検出プロセスをサポートをできる程度において違いを示すので、本発明は別の態様では、特定の微生物または微生物群中のATPの効率的な一段階溶解および検出に適した適切な反応条件を同定する方法を提供する。特に本発明は、ATPの抽出および検出に個々にまたは集合的に影響できる、微生物ATP抽出剤、二価カチオン、および二価キレート剤化合物間の最適バランスを評価または判定するためのアッセイを提供する。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明は、微生物サンプル中のATPの抽出および検出に適したATP抽出剤を同定する方法を提供し、その中では、(1)第1の濃度の二価カチオン、二価カチオンキレート剤、1つ以上の微生物ATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質(例えばルシフェリン)を含む第1の試薬組成物と、増殖培地中の細菌サンプルとを合わせて、第1のルミネセンス信号を生じる第1の混合物を生成し、(2)第1の試薬組成物におけるよりも高い濃度の二価カチオン、二価カチオンキレート剤、1つ以上の微生物ATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質(例えばルシフェリン)を含む第2の試薬組成物と同一細菌サンプルとを合わせて、第2のルミネセンス信号を生じる第2の混合物を生成し、第1の混合物からの第1のルミネセンス信号が、第2の混合物から得られる第2のルミネセンス信号を超える場合、第2の試薬組成物は細菌サンプル中のATPを抽出し検出するのに適する。
【0074】
好ましくは第1の試薬組成物中の二価カチオン濃度は、第2の試薬組成物中の二価カチオン濃度よりも好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約25倍、なおもより好ましくは少なくとも約100倍、濃度が低い。第1の試薬組成物中の二価カチオン濃度は、約0〜2mMの間、約0.05mM〜0.5mMの間、約0.1〜0.3mMの間で変動してもよく、または約0.2mMである。好ましくは第2の試薬組成物中の二価カチオン濃度は、約20mM〜200mMの間、約5mM〜50mMの間、約10mM〜30mMの間または約20mMである。
【0075】
上の方法のバリエーションを使用して、幅広い微生物細胞から効率的にATPを抽出し検出するのに適した試薬組成物を同定してもよい。簡単に述べると、この方法はルシフェラーゼ(例えば熱安定、化学安定または未変性)、ルシフェリン、固定Mg2+濃度(例えば5mM)、および緩衝液を含む試薬組成物を調製するステップと、関心のある推定上のATP抽出剤を試薬組成物に添加して、外来性ATP(正の対照)および異なる微生物細胞源の収集物いずれかの存在下で、ルミネセンスの相対的差違を調べるステップを伴ってもよい。一実施形態では、微生物細胞源は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、古細菌、および真菌をはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかのクラスを代表する多様な異なる微生物を含んでもよい。別の実施形態では、微生物細胞源は、特定の微生物のクラス(例えばグラム陰性細菌、グラム陽性細菌、古細菌、または真菌)に特異的な多様な微生物を含んでもよい。選択されるATP抽出剤は、ATP対照サンプルのルミネセンスに対して最小の影響を有するが、十分な抽出および安定ルミネセンス信号(例えば少なくとも24分の半減期)生成を提供すべきである。いくつかのATP抽出剤は個々に試験してもよく、または組み合わせてそれらの投薬効果をマトリックス形式で評価し、各活性化合物の最良の組み合わせおよび濃度を同定してもよい。試薬組成物中のその他の全構成要素を等しく保ちながら、様々な濃度のMg2+で滴定してMg2+の効果をさらに評価できる。
【0076】
F.微生物細胞中のATP検出の使用
1.生微生物細胞または微生物の汚染の存在を判定する
本発明の主要な用途は、上で開示される方法を使用して、微生物細胞サンプルの相対生存度、微生物の細胞個体数、または疑われる微生物汚染源を判定することである。
【0077】
2.化合物の薬学的活性または生物学的活性を評価する
本発明に従った細胞生存度アッセイの使用は、薬学的活性剤または生物学的活性剤の開発および試験にさらに応用してもよい。好ましい実施形態では、本発明の組成物、方法、およびキットを使用して、抗生物質候補化合物の有効性を評価してもよく、または細菌代謝に対する無機物、小型有機物、ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドなどの化合物の効果を試験してもよい(Aigingerら、1980年;Andreottiら、1995年;Bradburyら、2000年;CreeおよびAndreotti、1997年;Crouchら、1993年;Kangasら、1984年)。薬学的活性または生物学的活性剤(例えば抗生物質など)による微生物細胞の処置に続く細胞生存度の測定は、微生物の生育に悪影響を与える新しい薬学的または生物学的活性剤をスクリーニングし、同定する手段を提供するかもしれない。
【0078】
例えば本発明の組成物および方法を使用して、適切な培養装置(例えばマルチウェルプレートなど)内の微生物の培養を(未処理対照培養と平行して)候補抗生剤のプールで処理し、微生物の生育に十分な時間生育させ、ATP(ルミネセンスアッセイ)について試験してもよい。概して、未処理対照培養から検出されたルミネセンスが処理済み培養からのルミネセンスよりも高い場合、候補抗生物質剤は抗生物質活性を示すことが見いだされるであろう。反対に、未処理対照培養と比べて処理済み培養中でルミネセンスが同等である(またはそれよりも高い)場合、候補抗生物質剤は典型的に抗生物質活性を有さないことが見いだされるであろう。
【0079】
さらに本発明の適用は、生得免疫学的防御機序で使用されるものと類似した抗菌剤ペプチドをスクリーニングする方法を提供する(例えばLehrerおよびGanz、Curr.Opin.Immunol.、11(1):23〜27頁、1999年を参照されたい)。この方法はパートEで述べられる方法の変法を使用して、微生物細胞を中断できる抗菌剤ペプチドを同定し、その中で抗菌剤ペプチド(または適切なペプチドライブラリー)が上のパートE中のATP抽出剤と置き換えられる。選択された微生物標的(抗生物質抵抗性微生物など)をATP抽出剤に代えて例えばペプチドライブラリーで処理し、ATPの効率的な抽出および検出の促進に基づき、バイオルミネセンスについてスクリーンし、微生物細胞を溶解する選択的能力を有する有望な殺菌剤を同定できる。しかし方法は必ずしもペプチドのスクリーニングに限られない。多様な異なる化学または生化学化合物を試験し、開示されたATPアッセイ系を使用して得られた結果に基づいて、微生物細胞を溶解する選択的能力を示す候補作用物質を同定してもよい。以下の実施例は、限定することなく本発明を例証することを意図する。
【実施例】
【0080】
実施例1 異なるMgCl2濃度における微生物細胞中のATP検出の動態
水戻し試薬(200mM HEPES、pH7.5(Sigma)、MgCl2(0mM、2.5mM、5mM、10mMまたは20mM)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mMナトリウムフッ化物(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma))および基質(4mMクエン酸塩、mMルシフェリン、0.4%Prionex(Pentapharm,Ltd)、約0.08mg/mlの熱安定性ルシフェラーゼ、1mM硫酸マグネシウム、および1.25mM CDTA)を含んでなるルシフェラーゼ試薬組成物を使用して、微生物細胞中のATP検出の動態を評価した。100μlの緑膿菌(P.aeruginosa)培養物または100μlの1×10-9M ATP原液(対照)のいずれかを100μlのルシフェラーゼ試薬組成物に添加して、35分間かけてルミネセンスを周期的に測定した。ウェルあたりおよそ106個の細胞で、緑膿菌(P.aeruginosa)を試験した。この分析結果(図1)は、二価カチオン濃度の関数としてATP検出の違いを明らかにする。
【0081】
実施例2 異なるATP抽出剤存在下におけるATPの検出
ATP検出に対する異なるATP抽出剤の組み合わせの効果を低い(0.2mM)および高い(20.0mM)二価カチオン濃度で試験した。BacTiter−GloTM試薬組成物(0.358mg/ml UltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)、6mMカブトムシルシフェリン(Promega)、200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma))中において、「高い」(+;20mM)または「低い」(−;0.2mM)濃度のMgCl2の存在下で、緑膿菌(P.aeruginosa)を異なるATP抽出剤で処理した。100μlの緑膿菌(P.aeruginosa)培養物を100μlのBacTiter−GloTM試薬組成物に添加して、ルミネセンスを測定した。緑膿菌(P.aeruginosa)をウェルあたりおよそ106個の細胞で試験した。この分析結果(図2)は、試薬組成物または混合物中のマグネシウムレベルを20mMから0.2mMに減少させたときに、時間枠内の当量点(例えばt=0分)において増大するルミネセンスによって特徴づけられる、「マグネシウム反転」効果を実証する。
【0082】
実施例3 二価キレート剤の添加に続くATP検出の刺激
キレート剤による二価カチオンの中和が、低い二価カチオン濃度条件下で得られる、より高いルミネセンスを模倣できることを実証するために、水戻し試薬(200mM HEPES(Sigma)、20mM MgCl2、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma))および基質(4mMクエン酸塩、5mMルシフェリン、0.4%Prionex(Pentapharm,Ltd)、約0.08mg/mlの熱安定性ルシフェラーゼ、1mM硫酸マグネシウム、および1.25mM CDTA)を含んでなるルシフェラーゼ試薬組成物で、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus)培養物を処理した。100μlの細菌培養または100μlの1×10-9M ATP原液(対照)のいずれかを100μlの水戻し試薬に添加して、ルミネセンスを35分間にわたり周期的に測定した。ウェルあたりおよそ106個の細胞で、微生物の培養物を試験した。追加的CDTAをt=12分に各サンプルに添加した(最終濃度=20mM CDTA)。この分析結果(図3)は、CDTAが緑膿菌(P.aeruginosa)中の二価カチオンの阻害効果を中和できることを示唆する。
【0083】
実施例4 二価カチオンキレート剤存在下のATP検出
二価カチオンキレート剤の存在下におけるATP検出を実証するために、異なる濃度のEDTA(0mM、22mM、23mM、24mM、および25mM)を含有する水戻し試薬組成物(200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、20mM MgCl2(Sigma))を調製した。次に水戻し試薬組成物と基質(4mMクエン酸塩、5mMルシフェリン、0.4%Prionex(Pentapharm,Ltd)、約0.08mg/mlの熱安定性ルシフェラーゼ、1mM硫酸マグネシウム、および1.25mM CDTA)とを混合して、ルシフェラーゼ試薬組成物を生じさせた。100μlの大腸菌(E.coli)(図4A)、緑膿菌(P.aeruginosa)(図4B)または1×10-9MのATP原液(図示せず)を100μlのルシフェラーゼ試薬組成物に添加して、ルミネセンスを40分間にわたり周期的に測定した。ウェルあたりおよそ106個の細胞で細菌培養を試験した。この分析結果(図4A、4B)は、ATPの放出と検出の間の適切なバランスを促進するのに最適化された二価キレート剤濃度を使用して、阻害的二価カチオン効果が中和されてもよいことを示唆する。
【0084】
実施例5 異なる微生物細胞間のATP検出に対する異なる二価カチオン濃度の効果
異なる細菌間でのATP検出に対する二価カチオン濃度の効果を判定するために、水戻し試薬(200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma))を異なる濃度のMgCl2(0mM、2.5mM、5mM、10mM、および20mM)に添加)を調製して、基質(4mMクエン酸塩、5mMルシフェリン、0.4%Prionex(Pentapharm,Ltd)、約0.08mg/mlの熱安定性ルシフェラーゼ、1mM硫酸マグネシウム、および1.25mM CDTA)に添加した。大腸菌(E.coli)(図5A)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)(図5B)、緑膿菌(P.aeruginosa)(図5C)、およびB.セレウス(B.cereus)(図5D)をウェルあたりおよそ106個の細胞で試験した。対照として、精製ATP溶液もまた試験した(図示せず)。100μlの細菌培養または100μlの1×10-9ATP M原液のいずれかを100μlの試薬に添加し、ルミネセンスを35分間にわたり周期的に測定した。この分析結果(図5A〜5D)は、微生物および二価カチオン濃度に依存するATP検出の差違を明らかにする。
【0085】
実施例6 大腸菌(E.coli)および緑膿菌(P.aeruginosa)におけるATP抽出剤パネルを使用した低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度でのATP検出の動態
低い(0.2mM)および高い(20.0mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を評価するために、低い(0.2mM)または高い(20.0mM)濃度のMgCl2を含有する試薬組成物(200mM HEPES(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、0.358mg/ml UltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)、および6mMカブトムシルシフェリン(Promega))に、様々な異なるATP抽出剤の組み合わせを含めて、そこに含有される抽出剤および/または二価カチオン濃度に関してそれぞれ異なる一連の試薬組成物を形成した。100μlの異なる各試薬組成物を小型ウェル内の100μlの大腸菌(E.coli)(図6A、6B)、緑膿菌(P.aeruginosa)(図6C、6D)、または1×10-9M ATP対照溶液(図6E、6F)に添加した。ルミネセンスを50分間にわたり周期的に測定した。この分析結果(図6A〜6F)は、微生物、ATP抽出剤の組み合わせ、および二価カチオン濃度に依存するglo動態の差違を示唆する。
【0086】
実施例7 ATPの抽出および検出に対する二価カチオンの影響はMg2+に限定されない
低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度におけるATP抽出および検出に対する代案の二価カチオン効果を評価するために、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC27853)をミュラー−ヒントンII(MHII)ブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を新鮮なMHIIブロス中で50倍に希釈して、次に数時間インキュベートして対数期にした。細胞をウェルあたりおよそ1×106個の細胞に希釈した。ATP対照溶液をおよそ10-9Mに希釈した。100μlのBacTiter−GloTM試薬組成物(0.002、0.02、0.2、2.0または20mMの異なる濃度のMgCl2(図7A)、CaCl2(図7B)、またはMnCl2(図7C)のいずれかを含有する、200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、0.358mg/ml UltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)、および6mMカブトムシルシフェリン(Promega))を調製して、100μlの細菌またはATP対照サンプルに添加した。Turner BiosystemからのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。高いCa2+(図7B)およびMn2+(図7C)の使用が、ATP検出を同様に妨害することが見いだされることから、この分析結果(図7A〜7C)は、ATPの抽出および検出に対する二価カチオンの影響がMg2+に限定されないことを示唆する。
【0087】
実施例8 ATPの抽出および検出に対する二価カチオンの影響は熱安定性ルシフェラーゼに限定されない
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC27853)をミュラー−ヒントンII(MHII)ブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を新鮮なMHIIブロス中で50倍に希釈して、次に数時間インキュベートして対数期にした。細胞をウェルあたりおよそ1×106個の細胞に希釈した。ATP対照溶液をおよそ10-9Mに希釈した。100μlのBacTiter−GloTM試薬組成物(低い(0.2mM)または高い(20mM)MgCl2濃度のいずれかを含有する、200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、0.358mg/ml QuantiLum組換えルシフェラーゼ(Promega)、および6mMカブトムシルシフェリン(Promega))を調製して、細菌またはATP対照サンプルのいずれかに添加した。Turner BiosystemからのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。この分析結果(図8)は、ATPの一段階抽出および検出に対する二価カチオンの阻害効果が、熱安定性ルシフェラーゼの使用に限定されないことを示唆する。
【0088】
実施例9 微生物細胞数とバイオルミネセンス信号間の相関
4種の細菌株を使用して、微生物細胞数とルミネセンス間の関係をを評価した。細菌株大腸菌(Escherichia coli)(ATCC25922)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC25923)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC27853)、およびバシラス・セレアス(Bacillus cereus)(ATCC10987)をミュラー−ヒントンII(MHII)ブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を新鮮なMHIIブロス中で50倍に希釈して、次に数時間インキュベートして対数期にした。96−ウェルプレート内のMHIIブロスを使用して、培養物のサンプルを連続的に希釈した。水戻ししたBacTiter−GloTM試薬組成物(200mM HEPES(Sigma)、0.08%CTAB(Sigma)、0.16%CHEX(Sigma)、1%トリトン−X100(Sigma)、20mM MgCl2、23mM EDTA、2mM NaF(Sigma)、25μM NaPPI(Sigma)、0.358mg/ml UltraGloTMルシフェラーゼ(Promega)、および6mMカブトムシルシフェリン(Promega))を感度改善のために室温で1.5時間平衡化して、異なる各培養サンプルに添加した。Turner Biosystem(Sunnyvale,CA)からのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。
【0089】
細菌細胞数とバイオルミネセンス間の相関を描写するグラフである図9にこの分析結果を示す。ルミネセンス信号は各測定に対する三連の反復の平均を表す。ルリア−ベルターニ寒天プレート上のコロニー形成単位のプレートカウントによって、細菌細胞数を判定した。S:N=[信号平均−バックグラウンド平均]/バックグラウンドの標準偏差]の場合の信号対雑音比を計算した。図9は、5桁にわたるルミネセンス信号と細胞数間の直線的相関を実証する。この実験から引き出された大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus)の検出限界は、それぞれおよそ40、150、70、および10個の細胞である。
【0090】
実施例10 安定したグロータイプのルミネセンス信号を発生させるBacTiter−GloTMアッセイ
実施例9で述べられるようにして4種の異なる細菌(大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus))を生育させ、アッセイした。各アッセイでおよそ106個の細胞を使用した。ルミネセンス信号の安定性を経時的にモニターした。Turner Biosystem(Sunnyvale,CA)からのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。この分析結果(図10)は、本発明の微生物アッセイ系が、一連の微生物細胞において、半減期(T1/2)>30分である安定した「グロータイプ」のルミネセンス信号を生じられることを示唆する。
【0091】
実施例11 BacTiter−GloTMアッセイは時間の関数として、細菌生育の強化されたバイオルミネセンス検出を提供する
大腸菌(E.coli)ATCC25922株をMHIIブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を50mlの新鮮なMHIIブロス中で1:106に希釈して、250rpmで振盪しながら37℃でインキュベートした。サンプルを様々な時点で採取し、実施例9で述べられるようにしてルシフェラーゼ検出アッセイを実施した。VeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。Beckman DU650分光光度計を使用して、光学濃度を600nm(O.D.600)で測定した。RLUおよびO.D.の読み取りがそれぞれ108および1を超える場合は、希釈サンプルを使用した。この分析結果(図11)は、ATP検出アッセイが、従来の光学濃度測定よりも高感度の細菌生育の測定を提供することを示唆した(結果を挿入図と比較されたい)。
【0092】
実施例12 t=5hrにおける低下したルミネセンスの関数として、96−ウェルプレート内で抗菌剤化合物をスクリーニングする
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATCC25923株をMHIIブロス中において37℃で一晩生育させた。一晩培養物を新鮮なMHIIブロス中で100倍に希釈して、抗菌剤スクリーンのための接種材料として使用した。LOPAC化合物の作業原液(50×)および標準抗生物質をDMSO中で調製した。96−ウェルマルチウェルプレートの各ウェルは、245μlの接種材料および5μlの50×作業原液を含有した。マルチウェルプレートを37℃で5時間インキュベートした。100μlの培養物を各ウェルから取り出して、実施例9で述べられるようにしてルシフェラーゼ検出アッセイを実施した。Turner Biosystem(Sunnyvale,CA)からのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。サンプルおよび濃度は次のとおり。ウェル1〜4および93〜96、2%DMSOの負の対照;ウェル5〜8および89〜92、32μg/mlの標準抗生物質テトラサイクリン、アンピシリン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、オキサシリン、カナマイシン、ピペラシリン、およびエリスロマイシンの正の対照;ウェル9〜88、10μMのLOPAC化合物。この分析結果(図12)は、抗生剤を同定するためのこのスクリーニング方法の使用を確証する(枠で囲んだ正の対照との比較で、円で示した)。
【0093】
実施例13 抗生物質用量曝露の関数としての細菌生育のバイオルミネセンスの検出
実施例8で述べられるようにして、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATCC25923株およびオキサシリンを調製し、37℃でインキュベートした。NCCLS(6)によってMIC判定で推奨されるように、19時間のインキュベーション後にATP検出アッセイを実施した。オキサシリンなしの対照と比べたRLUの相対百分率を示す。Turner Biosystem(Sunnyvale,CA)からのVeritasTMマイクロプレート照度計上で、ルミネセンスを記録した。この分析結果(図13)は、ATP検出に対する抗生物質の用量依存効果を実証する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1A】異なるMgCl2濃度における緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出動態を描写するグラフである。
【図1B】対照として精製ATPを使用した、ATP検出動態を描写するグラフである。
【図2】低い(−;0.2mM)および高い(+;20.0mM)二価カチオン(MgCl2)濃度における緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出に対する、異なるATP抽出剤の組み合わせの効果を描写するグラフである。
【図3】様々な微生物(大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus))中で、低二価カチオン濃度条件下において得られるより高いルミネセンスを模倣するためにキレート剤を使用した、阻害的二価カチオン効果の中和を描写するグラフである。20mM MgCl2を含有する反応混合物に、CDTAをt=12分に添加した(最終濃度=20mM CDTA)。
【図4A】20mMの二価カチオン(MgCl2)濃度の存在下における、大腸菌(E.coli)中のATP検出に対する増大するキレート剤濃度(0mM、22mM、23mM、24mM、および25mMのEDTA)の効果を描写するグラフである。
【図4B】20mMの二価カチオン(MgCl2)濃度の存在下における、緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出に対する増大するキレート剤濃度(0mM、22mM、23mM、24mM、および25mMのEDTA)の効果を描写するグラフである。
【図5A】様々な二価カチオン(MgCl2)濃度(0mM、2.5mM、5mM、10mM、20mM)における大腸菌(E.coli)中のATP検出の動態を描写するグラフである。
【図5B】様々な二価カチオン(MgCl2)濃度(0mM、2.5mM、5mM、10mM、20mM)における黄色ブドウ球菌(S.aureus)中のATP検出の動態を描写するグラフである。
【図5C】様々な二価カチオン(MgCl2)濃度(0mM、2.5mM、5mM、10mM、20mM)における緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出の動態を描写するグラフである。
【図5D】様々な二価カチオン(MgCl2)濃度(0mM、2.5mM、5mM、10mM、20mM)におけるB.セレウス(B.cereus)中のATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6A】大腸菌(E.coli)中でATP抽出剤のパネルを使用した、低い(0.2mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6B】大腸菌(E.coli)中でATP抽出剤のパネルを使用した、高い(20mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6C】緑膿菌(P.aeruginosa)中でATP抽出剤のパネルを使用した、低い(0.2mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6D】緑膿菌(P.aeruginosa)中でATP抽出剤のパネルを使用した、高い(20mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6E】精製ATPを対照として使用した、低い(0.2mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図6F】精製ATPを対照として使用した、高い(20mM)二価カチオン濃度におけるATP検出の動態を描写するグラフである。
【図7A】低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度での緑膿菌(P.aeruginosa)中のATPの抽出および検出に対するMg2+の効果を描写するグラフである。
【図7B】低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度での緑膿菌(P.aeruginosa)中のATPの抽出および検出に対するCa2+の効果を描写するグラフである。
【図7C】低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度での緑膿菌(P.aeruginosa)中のATPの抽出および検出に対するMn2+の効果を描写するグラフである。
【図8】(熱安定性ルシフェラーゼでなく)組換えホタルルシフェラーゼを使用した、低い(0.2mM)および高い(20mM)二価カチオン濃度での緑膿菌(P.aeruginosa)中のATP検出を描写するグラフである。
【図9】4種の細菌株(大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、およびB.セレウス(B.cereus))における細菌細胞数とルミネセンス間の相関を描写するグラフである。
【図10】微生物のATPアッセイによって生じたルミネセンス信号の持続期間を描写するグラフである。
【図11】大腸菌(E.coli)の生育をモニタリングするためのATP検出感度を描写するグラフである。
【図12】t=5hrにおける低下するルミネセンスの関数としての96−ウェルプレート内での抗菌剤化合物スクリーニングを描写するグラフである。
【図13】抗生物質用量の関数としての細菌生育のバイオルミネセンス検出を描写するグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)反応緩衝液、
(b)1つ以上のATP抽出剤、
(c)第1の濃度の二価カチオン、
(d)第2の濃度の二価カチオンキレート剤、および
(e)ルシフェラーゼ酵素
を含んでなり、
第1の濃度と第2の濃度の間の差が約5mM未満である、微生物を含有することが疑われるサンプル中のATPを検出するための組成物。
【請求項2】
第1の濃度と第2の濃度との差が約2.5mM未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第1の濃度と第2の濃度との差が約1.0mM未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第2の濃度が少なくとも第1の濃度の2分の1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
第2の濃度が第1の濃度に少なくともほぼ等しいかまたはそれを超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
第1の濃度が少なくとも10mMである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
第1の濃度が少なくとも20mMである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
第1の濃度が少なくとも約20mMであり、第2の濃度が少なくとも約20mMである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
微生物がグラム陰性細菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
微生物が大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
1つ以上のATP抽出剤がセチルトリメチル臭化アンモニウムを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
1つ以上のATP抽出剤がクロロヘキシジンおよび非イオン性洗剤を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
1つ以上のATP抽出剤が、セチルトリメチル臭化アンモニウム、クロロヘキシジン、および非イオン性洗剤を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
二価カチオンがMg2+、Ca2+またはMn2+である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
二価カチオンキレート剤がEDTAまたはCDTAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
二価カチオンがMg2+であり、二価カチオンキレート剤がEDTAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
(a)反応緩衝液、
(b)1つ以上のATP抽出剤、
(c)約5mM未満である第1の濃度の二価カチオン、
(d)ルシフェラーゼ酵素
を含んでなる、微生物を含有することが疑われるサンプル中のATPを検出するための組成物。
【請求項18】
第1の濃度が約2.5mM未満である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
第1の濃度が約1mM未満である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
第1の濃度が約0.5mM未満である、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
二価カチオンキレート剤をさらに含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
微生物がグラム陰性細菌である、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
微生物が大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)である、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
1つ以上のATP抽出剤がセチルトリメチル臭化アンモニウムを含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項25】
1つ以上のATP抽出剤がクロロヘキシジンおよび非イオン性洗剤を含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項26】
1つ以上のATP抽出剤が、セチルトリメチル臭化アンモニウム、クロロヘキシジン、および非イオン性洗剤を含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項27】
二価カチオンがMg2+、Ca2+またはMn2+である、請求項17に記載の組成物。
【請求項28】
二価カチオンキレート剤がEDTAまたはCDTAである、請求項17に記載の組成物。
【請求項29】
二価カチオンがMg2+であり、二価カチオンキレート剤がEDTAである、請求項17に記載の組成物。
【請求項30】
(a)反応緩衝液、
(b)1つ以上のATP抽出剤、
(c)第1の濃度の二価カチオン、
(d)第2の濃度の二価カチオンキレート剤
を含んでなり、
第2の濃度が第1の濃度に少なくともほぼ等しいかまたはそれを超える、グラム陰性微生物からATPを抽出するための組成物。
【請求項31】
第1の濃度が少なくとも10mMである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
第1の濃度が少なくとも20mMである、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
第1の濃度が少なくとも約20mMであり、第2の濃度が少なくとも約20mMである、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
(a)サンプルと、第1の濃度の二価カチオン、第2の濃度の二価カチオンキレート剤、1つ以上のATP抽出剤、およびルシフェラーゼ酵素を含んでなる組成物とを接触させて、混合物を形成するステップと、
(b)ルミネセンスを検出するステップ
を含んでなり、
第1の濃度と第2の濃度との差が約5mM未満である、微生物を含有するまたは含有することが疑われるサンプル中のATPを検出する方法。
【請求項35】
組成物中の二価カチオンキレート剤濃度が、組成物中の二価カチオン濃度に少なくともほぼ等しいかまたはそれを超える、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
混合物中の二価カチオンキレート剤濃度が、混合物中の二価カチオン濃度の少なくとも2分の1である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
微生物がグラム陰性細菌である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
微生物が大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
サンプルが微生物細胞の異種性集団を含有するまたは含有することが疑われる、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
サンプルが病原菌を含有するまたは含有することが疑われる、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
検出可能なルミネセンス信号が、サンプルと組成物とを接触させた後10分以内に生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
検出可能なルミネセンス信号が、サンプルと組成物とを接触させた後5分以内に生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
ルミネセンスが少なくとも30分の半減期があるルミネセンス信号を生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
ルミネセンスがサンプル中の少なくとも1×10-14モルのATPを検出するのに十分なルミネセンス信号を生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
組成物が少なくとも1000個の大腸菌(E.coli)細胞を検出するのに十分なルミネセンス信号を生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
(a)サンプルと、二価カチオン、1つ以上のATP抽出剤、およびルシフェラーゼ酵素を含んでなる組成物とを接触させて、混合物を形成するステップと、
(b)ルミネセンスを検出するステップ
を含んでなり、
二価カチオンが組成物中に約5mM未満の濃度で存在する、微生物を含有するまたは含有することが疑われるサンプル中のATPを検出する方法。
【請求項47】
二価カチオンが約2.5mM未満の濃度で組成物中に存在する、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
二価カチオンが約1mM未満の濃度で組成物中に存在する、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
二価カチオンが約0.5mM未満の濃度で組成物中に存在する、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
微生物がグラム陰性細菌である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
微生物が大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
サンプルが微生物細胞の異種性集団を含有するまたは含有することが疑われる、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
サンプルが病原菌を含有するまたは含有することが疑われる、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
検出可能なルミネセンス信号がサンプルと組成物とを接触させた後10分以内に生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
検出可能なルミネセンス信号がサンプルと組成物とを接触させた後5分以内に生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
ルミネセンスが少なくとも30分の半減期があるルミネセンス信号を生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
(a)微生物源からの微生物サンプルに、二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質を含んでなる組成物を添加して、混合物を形成するステップと、
(b)前記混合物中のルミネセンスの程度を測定して、微生物サンプル中のATPを検出するのに使用するための少なくとも1つのATP抽出剤の適合性を判定するステップ
を含んでなり、
二価カチオンが混合物中に約0.5mM以下の濃度で存在し、
ルミネセンスの程度が検出に十分であれば、前記少なくとも1つのATP抽出剤が微生物源中のATPを検出するのに適する、微生物サンプル中のATPを検出するのに適したATP抽出剤を同定する方法。
【請求項58】
二価カチオンが約0.1mM以下の濃度で混合物中に存在する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
(a)微生物源からの第1の微生物サンプルに、第1の濃度の二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質を添加して、第1の混合物を形成するステップと、
(b)(a)の微生物源からの第2の微生物サンプルに、第2の濃度の二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質を添加して、第2の混合物を形成するステップと、
(c)前記第1および第2の混合物中のルミネセンスを別々に検出して、微生物サンプル中のATPを判定するのに使用するための少なくとも1つのATP抽出剤の適合性を判定するステップ
を含んでなり、
第2の混合物中の二価カチオンの第2の濃度が、第1の混合物中の二価カチオンの第1の濃度を超え、
第1の混合物中のルミネセンスが第2の混合物中のルミネセンスを超えれば、前記少なくとも1つのATP抽出剤が微生物源中のATPを検出するのに適する、微生物サンプル中のATPを検出するのに適したATP抽出剤を同定する方法。
【請求項60】
(a)第1の微生物の培養を少なくとも1つの候補抗生剤で処理するステップと、
(b)前記少なくとも1つの候補抗生物質剤で処理された第1の微生物の培養、および前記少なくとも1つの候補抗生物質剤で処理されていない第2の微生物の対照培養を第2の微生物の対照培養中の生育を検出するのに十分な期間生育させるステップと、
(c)第1の微生物の培養および第2の微生物の対照培養を、二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、およびルシフェラーゼ含んでなる組成物に別々に接触させて、それぞれ第1および第2の混合物を形成するステップと、
(d)ルミネセンスを検出するステップと、
(e)候補抗生物質が抗生物質活性を有するかどうかを判定するステップ
を含んでなり、
前記第1および第2の混合物それぞれの中の二価カチオンと二価カチオンキレート剤との量の差が約2.5mM未満である、候補抗生剤をスクリーニングする方法。
【請求項61】
前記第1および第2の混合物それぞれの中の二価カチオンと二価カチオンキレート剤の量の差が約1.25mM未満である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第1および第2の混合物それぞれの中の二価カチオンと二価カチオンキレート剤の量の差が約0.4mm未満である、請求項60に記載の方法。
【請求項1】
(a)反応緩衝液、
(b)1つ以上のATP抽出剤、
(c)第1の濃度の二価カチオン、
(d)第2の濃度の二価カチオンキレート剤、および
(e)ルシフェラーゼ酵素
を含んでなり、
第1の濃度と第2の濃度の間の差が約5mM未満である、微生物を含有することが疑われるサンプル中のATPを検出するための組成物。
【請求項2】
第1の濃度と第2の濃度との差が約2.5mM未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第1の濃度と第2の濃度との差が約1.0mM未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第2の濃度が少なくとも第1の濃度の2分の1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
第2の濃度が第1の濃度に少なくともほぼ等しいかまたはそれを超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
第1の濃度が少なくとも10mMである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
第1の濃度が少なくとも20mMである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
第1の濃度が少なくとも約20mMであり、第2の濃度が少なくとも約20mMである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
微生物がグラム陰性細菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
微生物が大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
1つ以上のATP抽出剤がセチルトリメチル臭化アンモニウムを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
1つ以上のATP抽出剤がクロロヘキシジンおよび非イオン性洗剤を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
1つ以上のATP抽出剤が、セチルトリメチル臭化アンモニウム、クロロヘキシジン、および非イオン性洗剤を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
二価カチオンがMg2+、Ca2+またはMn2+である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
二価カチオンキレート剤がEDTAまたはCDTAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
二価カチオンがMg2+であり、二価カチオンキレート剤がEDTAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
(a)反応緩衝液、
(b)1つ以上のATP抽出剤、
(c)約5mM未満である第1の濃度の二価カチオン、
(d)ルシフェラーゼ酵素
を含んでなる、微生物を含有することが疑われるサンプル中のATPを検出するための組成物。
【請求項18】
第1の濃度が約2.5mM未満である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
第1の濃度が約1mM未満である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
第1の濃度が約0.5mM未満である、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
二価カチオンキレート剤をさらに含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
微生物がグラム陰性細菌である、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
微生物が大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)である、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
1つ以上のATP抽出剤がセチルトリメチル臭化アンモニウムを含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項25】
1つ以上のATP抽出剤がクロロヘキシジンおよび非イオン性洗剤を含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項26】
1つ以上のATP抽出剤が、セチルトリメチル臭化アンモニウム、クロロヘキシジン、および非イオン性洗剤を含んでなる、請求項17に記載の組成物。
【請求項27】
二価カチオンがMg2+、Ca2+またはMn2+である、請求項17に記載の組成物。
【請求項28】
二価カチオンキレート剤がEDTAまたはCDTAである、請求項17に記載の組成物。
【請求項29】
二価カチオンがMg2+であり、二価カチオンキレート剤がEDTAである、請求項17に記載の組成物。
【請求項30】
(a)反応緩衝液、
(b)1つ以上のATP抽出剤、
(c)第1の濃度の二価カチオン、
(d)第2の濃度の二価カチオンキレート剤
を含んでなり、
第2の濃度が第1の濃度に少なくともほぼ等しいかまたはそれを超える、グラム陰性微生物からATPを抽出するための組成物。
【請求項31】
第1の濃度が少なくとも10mMである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
第1の濃度が少なくとも20mMである、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
第1の濃度が少なくとも約20mMであり、第2の濃度が少なくとも約20mMである、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
(a)サンプルと、第1の濃度の二価カチオン、第2の濃度の二価カチオンキレート剤、1つ以上のATP抽出剤、およびルシフェラーゼ酵素を含んでなる組成物とを接触させて、混合物を形成するステップと、
(b)ルミネセンスを検出するステップ
を含んでなり、
第1の濃度と第2の濃度との差が約5mM未満である、微生物を含有するまたは含有することが疑われるサンプル中のATPを検出する方法。
【請求項35】
組成物中の二価カチオンキレート剤濃度が、組成物中の二価カチオン濃度に少なくともほぼ等しいかまたはそれを超える、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
混合物中の二価カチオンキレート剤濃度が、混合物中の二価カチオン濃度の少なくとも2分の1である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
微生物がグラム陰性細菌である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
微生物が大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
サンプルが微生物細胞の異種性集団を含有するまたは含有することが疑われる、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
サンプルが病原菌を含有するまたは含有することが疑われる、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
検出可能なルミネセンス信号が、サンプルと組成物とを接触させた後10分以内に生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
検出可能なルミネセンス信号が、サンプルと組成物とを接触させた後5分以内に生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
ルミネセンスが少なくとも30分の半減期があるルミネセンス信号を生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
ルミネセンスがサンプル中の少なくとも1×10-14モルのATPを検出するのに十分なルミネセンス信号を生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
組成物が少なくとも1000個の大腸菌(E.coli)細胞を検出するのに十分なルミネセンス信号を生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
(a)サンプルと、二価カチオン、1つ以上のATP抽出剤、およびルシフェラーゼ酵素を含んでなる組成物とを接触させて、混合物を形成するステップと、
(b)ルミネセンスを検出するステップ
を含んでなり、
二価カチオンが組成物中に約5mM未満の濃度で存在する、微生物を含有するまたは含有することが疑われるサンプル中のATPを検出する方法。
【請求項47】
二価カチオンが約2.5mM未満の濃度で組成物中に存在する、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
二価カチオンが約1mM未満の濃度で組成物中に存在する、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
二価カチオンが約0.5mM未満の濃度で組成物中に存在する、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
微生物がグラム陰性細菌である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
微生物が大腸菌(E.coli)または緑膿菌(P.aeruginosa)である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
サンプルが微生物細胞の異種性集団を含有するまたは含有することが疑われる、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
サンプルが病原菌を含有するまたは含有することが疑われる、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
検出可能なルミネセンス信号がサンプルと組成物とを接触させた後10分以内に生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
検出可能なルミネセンス信号がサンプルと組成物とを接触させた後5分以内に生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
ルミネセンスが少なくとも30分の半減期があるルミネセンス信号を生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
(a)微生物源からの微生物サンプルに、二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質を含んでなる組成物を添加して、混合物を形成するステップと、
(b)前記混合物中のルミネセンスの程度を測定して、微生物サンプル中のATPを検出するのに使用するための少なくとも1つのATP抽出剤の適合性を判定するステップ
を含んでなり、
二価カチオンが混合物中に約0.5mM以下の濃度で存在し、
ルミネセンスの程度が検出に十分であれば、前記少なくとも1つのATP抽出剤が微生物源中のATPを検出するのに適する、微生物サンプル中のATPを検出するのに適したATP抽出剤を同定する方法。
【請求項58】
二価カチオンが約0.1mM以下の濃度で混合物中に存在する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
(a)微生物源からの第1の微生物サンプルに、第1の濃度の二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質を添加して、第1の混合物を形成するステップと、
(b)(a)の微生物源からの第2の微生物サンプルに、第2の濃度の二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、ルシフェラーゼ酵素、およびルシフェラーゼ基質を添加して、第2の混合物を形成するステップと、
(c)前記第1および第2の混合物中のルミネセンスを別々に検出して、微生物サンプル中のATPを判定するのに使用するための少なくとも1つのATP抽出剤の適合性を判定するステップ
を含んでなり、
第2の混合物中の二価カチオンの第2の濃度が、第1の混合物中の二価カチオンの第1の濃度を超え、
第1の混合物中のルミネセンスが第2の混合物中のルミネセンスを超えれば、前記少なくとも1つのATP抽出剤が微生物源中のATPを検出するのに適する、微生物サンプル中のATPを検出するのに適したATP抽出剤を同定する方法。
【請求項60】
(a)第1の微生物の培養を少なくとも1つの候補抗生剤で処理するステップと、
(b)前記少なくとも1つの候補抗生物質剤で処理された第1の微生物の培養、および前記少なくとも1つの候補抗生物質剤で処理されていない第2の微生物の対照培養を第2の微生物の対照培養中の生育を検出するのに十分な期間生育させるステップと、
(c)第1の微生物の培養および第2の微生物の対照培養を、二価カチオン、二価カチオンキレート剤、少なくとも1つのATP抽出剤、およびルシフェラーゼ含んでなる組成物に別々に接触させて、それぞれ第1および第2の混合物を形成するステップと、
(d)ルミネセンスを検出するステップと、
(e)候補抗生物質が抗生物質活性を有するかどうかを判定するステップ
を含んでなり、
前記第1および第2の混合物それぞれの中の二価カチオンと二価カチオンキレート剤との量の差が約2.5mM未満である、候補抗生剤をスクリーニングする方法。
【請求項61】
前記第1および第2の混合物それぞれの中の二価カチオンと二価カチオンキレート剤の量の差が約1.25mM未満である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第1および第2の混合物それぞれの中の二価カチオンと二価カチオンキレート剤の量の差が約0.4mm未満である、請求項60に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−504841(P2008−504841A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520407(P2007−520407)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/023545
【国際公開番号】WO2006/085972
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/023545
【国際公開番号】WO2006/085972
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】
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