微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法
【課題】 多大な労力を必要とすることなく、短期間で微粉砕用ドラム内のライナの取替えが可能な微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法を提供する。
【解決手段】 微粉砕用ドラム5の回転を停止させ複数のミルボール10をドラム内面6bの下側に集合させた状態でドラム内面6bの上側に位置するライナ8を取替え、その後、微粉砕用ドラム5を軸心P回りに反転させ複数のミルボール10をドラム内面6bの下側に集合させた状態でドラム内面6bの上側に位置するライナ8を取替える。
【解決手段】 微粉砕用ドラム5の回転を停止させ複数のミルボール10をドラム内面6bの下側に集合させた状態でドラム内面6bの上側に位置するライナ8を取替え、その後、微粉砕用ドラム5を軸心P回りに反転させ複数のミルボール10をドラム内面6bの下側に集合させた状態でドラム内面6bの上側に位置するライナ8を取替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石炭を微粉状に粉砕するのに用いられる微粉砕機に関し、とくに微粉砕用ドラムの内部に収容されたミルボールを掻き上げるためのライナの取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粉炭を燃料とする火力発電所においては、石炭を微粉状に粉砕するための石炭微粉砕機が設置されている。従来から石炭を微粉状に粉砕する装置の一例として、回転テーブルに供給された石炭を複数の粉砕ローラを用いて粉砕する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、石炭を微粉状に粉砕する装置として、微粉砕用ドラムを用いた装置が存在する。この装置では、回転可能な微粉砕用ドラムの内部に複数のミルボールを収容し、このミルボールをドラムの内面に設けられたライナによって掻き上げることにより、ドラム内に供給された石炭を粉砕するようにしている。ミルボールを掻き上げるライナの外面部はゴムから構成されており、ミルボールとの接触により磨耗するので、一定期間使用した後は、ライナを取替えることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−7594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ライナの取替えに際しては、微粉砕用ドラム内に収容されている大量のミルボールをすべて微粉砕用ドラムから抜き出す必要があり、ライナの取替えには多大な労力と費用が必要となる。つまり、ミルボールは直径60mm程度の鋼球であり、微粉砕用ドラム内に大量に収容されているので、ミルボールの微粉砕用ドラムに対する抜き出し、運搬、再投入に多くの労力を必要とし、ライナの取替えには多くの日数と費用が必要となっていた。さらに、微粉砕用ドラムから抜き出したミルボールを仮置きするために、微粉砕用ドラムの近傍に広いスペースを確保しなければならないという問題もあった。
【0006】
そこでこの発明は、多大な労力を必要とすることなく、短期間で微粉砕用ドラム内のライナの取替えが可能な微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、微粉砕用ドラムの内部に収容された複数のミルボールを、前記微粉砕用ドラムを軸心周りに回転させることにより前記微粉砕用ドラムのドラム内面に沿って設けられた複数のライナによって掻き上げるようにした微粉砕機であって、前記微粉砕用ドラムの回転を停止させ前記複数のミルボールを前記ドラム内面の下側に集合させた状態で前記ドラム内面の上側に位置する前記ライナを取替え、その後、前記微粉砕用ドラムを軸心回りに反転させ前記複数のミルボールを前記ドラム内面の下側に集合させた状態で前記ドラム内面の上側に位置する前記ライナを取替えることを特徴とする微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法である。
【0008】
この発明によれば、微粉砕用ドラムの回転を停止させた状態では、ミルボールは自重によってドラム内面の下側に集まるので、ドラム内面の上側はライナが露出し、ライナの取替えが可能となる。ドラム内面の上側のライナの取替え後には、微粉砕用ドラムを反転させることにより、複数のミルボールによって覆われていたライナが露出することになり、すべてのライナの取替えが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法において、前記ライナの前記微粉砕用ドラムに対する搬入および搬出は、前記微粉砕用ドラムの内部と連通するトロンメルを利用して行うことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法において、前記ライナの取替えは、前記微粉砕用ドラム内に作業足場を形成して行うことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法において、前記作業足場を構成する部材の前記微粉砕用ドラムに対する搬入および搬出は、前記微粉砕用ドラムの外周部に形成されたマンホールを利用して行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、大量のミルボールを微粉砕用ドラムから抜き出す必要がなくなるので、多大な労力を必要とすることなく、短期間でライナの取替えが可能となる。そのため、ライナ取替えの工期短縮が図れるとともに、ライナの交換費用を大幅に低減することができる。また、微粉砕用ドラムの近傍にミルボールを保管する広いスペースを確保する必要もなくなる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ライナの搬入および搬出を微粉砕用ドラムの内部と連通するトロンメルを利用して行うので、微粉砕用ドラムに対するライナの運搬作業を円滑に行うことができ、作業能率を高めることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、微粉砕用ドラム内に作業足場を形成してライナの取替えを行うので、微粉砕用ドラムの内径が大きい場合でもライナの交換を能率よく行うことができる。また、梯子を用いるライナの交換作業に比べて作業の安全性を高めることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、マンホールを利用して微粉砕用ドラムに対する作業足場構成部材の搬入および搬出を行うので、微粉砕用ドラム内での作業足場の形成および解体に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係わる微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法が適用される微粉砕用ドラムの部分断面図である。
【図2】図1の微粉砕用ドラムの部分拡大断面図である。
【図3】図1の微粉砕用ドラムを有する石炭微粉砕機の全体概要図である。
【図4】図3の石炭微粉砕機におけるライナ取替作業の準備状態を示す概要図である。
【図5】図4のライナ取替作業の作業準備状態を示す断面図である。
【図6】図1の微粉砕用ドラムの内部に内側作業足場を形成した状態を示す断面図である。
【図7】図1の微粉砕用ドラムのライナ取替作業状態を示す断面図である。
【図8】図1の微粉砕用ドラムのライナ取替え手順を示す断面図であり、(a)はライナの取り外し状態を示す断面図、(b)はライナの取替え過程を示す断面図、(c)はライナの取替え完了を示す断面図である。
【図9】図6の内側作業足場を撤去した状態を示す断面図である。
【図10】図5の微粉砕用ドラムを反転させる過程を示す断面図である。
【図11】図5の微粉砕用ドラムを反転させた後のライナの取替え状態を示す断面図である。
【図12】図11の内側作業足場を撤去した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0018】
図1ないし図12は、この発明の実施の形態を示している。図3に示すように、火力発電所には、石炭を微粉状に粉砕するための石炭微粉砕機1が設置されている。石炭微粉砕機1は、地表Fから上方に延びる中央架台2を有している。中央架台2の頂部には、石炭微粉砕機1の各機器類を見下ろすことができる点検台3が設けられている。点検台3の直下には、水平方向に延びる円筒状の微粉砕用ドラム5が配設されている。微粉砕用ドラム5の軸方向の一端部には、減速歯車5aが取付けられている。減速歯車5aは、地表Fから上方に延びる左側架台23の上部に固定された軸受部21によって回転自在に支持されている。微粉砕用ドラム5の軸方向の他端部は、地表Fから上方に延びる右側架台24の上面部に固定された軸受部22によって回転自在に支持されている。これにより、微粉砕用ドラム5は、軸心P回りに回転可能となっている。すなわち、微粉砕用ドラム5は、水平方向に延びる軸心Pを中心として矢印S方向に回転可能となっている。
【0019】
微粉砕用ドラム5は、減速歯車5aと機械的に連結された主電動機28によって回転駆動するように構成されている。左側架台23の上部には、石炭Cを微粉砕用ドラム5の内部に供給するための石炭供給口25が設けられている。石炭供給口25は、石炭Cを上方から供給する石炭供給管26と接続されている。また、左側架台23の上部には、石炭供給口25と隣接してミルボール供給管27が配設されている。ミルボール10は、矢印B方向からミルボール供給管27に供給され、ミルボール供給管27に供給されたミルボール10は、微粉砕用ドラム5の軸方向の一端部から微粉砕用ドラム5内に供給されるようになっている。右側架台24と隣接する位置には、粉砕された石炭Cの大きさを選別するトロンメル(回転式のふるい)30が配設されている。トロンメル30は、微粉砕用ドラム5の軸方向の他端部と接続されており、トロンメル30により選別された微粉状の石炭Cのみが次工程へ供給されるようになっている。
【0020】
図1は、微粉砕用ドラム5の断面を示している。微粉砕用ドラム5は、ドラム本体6と、ライニング7と、ライナ8とを有している。ドラム本体6は、円筒状の金属部材から構成されている。ドラム本体6のドラム内面6bには、複数のライニング7が周方向に所定の間隔をもって取付けられている。ライニング7は、図2に示すように、シェルプレート7aと、補強プレート7cと、固定ボルト7dと、ナット7eを有している。シェルプレート7aは、ライナ8を左右から支持するために二分割構造となっており、ライナ8の外面と係合可能な略V字状の溝7bを有している。シェルプレート7aは、耐磨耗性を有する弾性部材から構成されており、内面側は金属製の補強プレート7cによって補強されている。ドラム本体6には、ドラム外面6aとドラム内面6bとを貫通する貫通孔6dが形成されている。シェルプレート7aのシェルプレート7aは、貫通孔6dに挿入された固定ボルト7dと、この固定ボルト7dに螺合されるナット7eにより、ドラム本体6のドラム内面6bに強固に固定されている。
【0021】
ライナ8は、図2および図8に示すように、ゴムライナ本体8aと、ボルト保持部8bと、ボルト8cと、ナット8dと、座金8eと、シーリング部材8fを有している。ゴムライナ本体8aは、断面形状が略四角形をしており、ミルボール10が接触する外面の角部は、面取り処理が施されている。ゴムライナ本体8aのドラム内面6bと対向する部位は、シェルプレート7aによって保持されている。ゴムライナ本体8a内には、金属製のボルト保持部8bが埋め込まれている。ボルト8cは、頭部がボルト保持部8bに保持されており、ネジ部はドラム本体6に形成された保持穴6cを貫通してドラム外面6aから突出している。シーリング部材8fは、下面がドラム本体6のドラム外面6aに接触するように取付けられている。座金8eは、シーリング部材8fの外面を覆うように設けられている。シーリング部材8fおよび座金8eの中央部には、ボルト8cのネジ部が挿入されており、ボルト8cのネジ部先端側にはナット8dが螺合されている。ゴムライナ本体8aは、ナット8dの締付けによりドラム本体6のドラム内面6b側に強固に固定されている。
【0022】
図1に示すように、ライニング7とライナ8は、ドラム本体6のドラム内面6bに沿って所定の間隔をもって配置されている。この実施の形態においては、隣接するライナ8同士は微粉砕用ドラム5の軸心Pに対して角度θ(θ=18°)をなしている。微粉砕用ドラム5には、図3に示すように、第一のマンホール11と第二のマンホール12が形成されている。第一のマンホール11は、微粉砕用ドラム5の軸方向の一端部側に形成されている。第二のマンホール12は、微粉砕用ドラム5の軸方向の他端部側に形成されており、第一のマンホール11に対して軸心P回りに180°ずれた位置に配置されている。各マンホール11、12は、通常は開口部(図示略)が閉塞蓋(図示略)によって閉塞されており、必要に応じて閉塞蓋を取り外すことにより、開口部を介してドラム本体6内に進入可能となっている。
【0023】
図4および図5に示すように、微粉砕用ドラム5に収容された複数のミルボール10は、収容上面が微粉砕用ドラム5の回転中心(図1の軸心P)よりも若干下方に位置するようにその収容量が設定されている。この実施の形態においては、ミルボール10の直径60mmの鋼球から構成されており、微粉砕用ドラム5に収容されるミルボール10の総重量は約30トンとなっている。図1に示すように、微粉砕用ドラム5が軸心Pを中心として矢印S方向に回転した際には、微粉砕用ドラム5内に収容された複数のミルボール10は、ライナ8との接触により上方に掻き上げられるようになっている。そして、ミルボール10がライナ8によって所定の位置まで掻き上げられると、ミルボール10とライナ8との接触が終了し、ミルボール10は自重によってドラム本体6のドラム内面6bの下側に落下する。これにより、微粉砕用ドラム5内では、石炭Cとミルボール10が衝突し、微粉砕用ドラム5内に供給された石炭Cがミルボール10によって微粉状に粉砕される。粉砕された微粉砕用ドラム5内の石炭Cは、図4および図5に示す出口開口部6eからトロンメル30を介してつぎの工程に供給される。
【0024】
つぎに、この実施の形態におけるライナ8の取替え手順および作用について説明する。
【0025】
図4ないし図9は、ドラム本体6のドラム内面6bの上側におけるライナ8の取替え手順を示している。図4および図5に示すように、ドラム本体6のドラム内面6bの上側におけるライナ8の取替える際には、微粉砕用ドラム5の回転を停止させる。この状態では、第一のマンホール11が最頂部にくるように微粉砕用ドラム5の停止位置を調整する。この場合の微粉砕用ドラム5の位置調整は、主電動機28ではなく減速歯車5aと連動するターニング電動機(図示略)によって行う。つぎに、微粉砕用ドラム5の第一のマンホール11の閉塞蓋を取り外し、第一のマンホール11の開口部を介して微粉砕用ドラム5内へ作業者Mが進入し、建物40に対して移動自在に設けられたクレーン17により微粉砕用ドラム5内への工具類や材料の搬入を行う。この状態では、第二のマンホール12は微粉砕用ドラム5の最下部に位置しており、閉塞蓋(図示略)によって閉塞されている。
【0026】
ドラム本体6内への工具類や材料の搬入は、図4に示すように、クレーン17のワイヤーロープ17aを第一のマンホール11の開口部を介して微粉砕用ドラム5内にいる作業者M2の近くまで吊下げ、操作スイッチ17bを微粉砕用ドラム5の外側にいる作業者M1によって操作することにより行う。また、トロンメル30の内部に養生板(図示略)を設置し、トロンメル30を介して材料などの搬入、搬出を行う。すなわち、微粉砕用ドラム5内の出口開口部6eにいる作業者M3とトロンメル30の出口近傍にいる作業者M4により、トロンメル30の内部に配置された台車18を移動させることにより、取替済みのライナ8の搬出や新品のライナ8の搬入などを行う。このように、ライナ8の搬入および搬出をドラム本体6内と連通するトロンメル30を利用して行うことで、微粉砕用ドラム5に対するライナ8の運搬作業を円滑に行うことができ、作業能率を高めることができる。
【0027】
つぎに、微粉砕用ドラム5内への工具類や材料の搬入が終了すると、微粉砕用ドラム5の周囲に外側作業足場15を形成する。外側作業足場15は、金属製のパイプ、接続金具、足場板などの部材から構成され、金属製のパイプ同士を専用の接続金具で連結することで、作業に必要な形状を作ることができるものである。ここでは、外側作業足場15は、地表Fから上方に延びるように組立て、最終的には微粉砕用ドラム5の全体を取り囲むように組立てる。そして、外側作業足場15の組立てが終了すると、内側作業足場16を構成する部材を第一のマンホール11の開口部を介して微粉砕用ドラム5内に搬入し、微粉砕用ドラム5内で内側作業足場16の組立てを行う。内側作業足場16は、外側作業足場15と同様に、金属製のパイプ、接続金具、足場板などの部材から構成され、金属製のパイプ同士を専用の接続金具で連結することで、作業に必要な形状を作ることができるものである。ここでは、内側作業足場16は、作業者Mがドラム本体6のドラム内面6bの上側に容易に到達できる高さに組立てられる。
【0028】
内側作業足場16の組み立てが終了すると、微粉砕用ドラム5の外側にいる作業者Mと微粉砕用ドラム5の内部にいる作業者Mとにより、ライナ8の取り外しを行う。ライナ8の取り外しは、図2に示すナット8dを工具により緩め、ナット8dをボルト8cから取り外した後、ゴムライナ本体8aを微粉砕用ドラム5の軸心P側へ引張ることにより行う。
【0029】
図8は、ライナ8の取付け手順を示している。図8(a)は、ライナ8をドラム本体6から取り外した状態を示している。ライナ8を取り外した状態では、シェルプレート7aの溝7bが露出している。つぎに、図8(b)に示すように、新品のライナ8を取付ける。新品のライナ8を取付けに際しては、まずライナ8のボルト8cをドラム本体6の保持穴6cに挿入するとともに、ゴムライナ本体8aをシェルプレート7aの溝7bに嵌合させる。この状態で、ドラム本体6のドラム外面6aから突出したボルト8cのネジ部にシーリング部材8fと座金8eを嵌め込み、ナット8dを螺合させる。そして、図8(c)に示すように、ボルト8cと螺合しているナット8dを締付け工具(図示略)により所定のトルクで締付けることにより、ゴムライナ本体8aをドラム本体6のドラム内面6b側に強固に固定する。この状態では、ゴムライナ本体8aは、シェルプレート7aに形成された略V字状の溝7bと係合しているので、微粉砕用ドラム5の回転方向に対して高い強度を有することになる。したがって、ライナ8は、ミルボール10が衝突しても位置ずれすることはなくなり、ライナ8が微粉砕用ドラム5の回転中にドラム本体6から外れることはない。
【0030】
このようにして、各ライナ8のドラム内面6bの上側への取り付けは、微粉砕用ドラム5の外側にいる作業者Mと微粉砕用ドラム5の内部にいる作業者Mの双方によって行われる。ここで、ライナ6の取替えは、内側作業足場16を利用して行うので、微粉砕用ドラム5の内径が大きい場合でもライナ8の取替えを能率よく行うことができる。また、内側作業足場16は、多量のミルボール10の上側に配置された養生板16aの上面を基礎として上方に延びているので、ミルボール10の上に直接内側作業足場16を形成する場合よりも安定性が向上し、複数の作業者Mが内側作業足場16に偏って乗ったとしても、内側作業足場16が傾くことはない。したがって、梯子を用いてライナ8の取替え作業を行う場合よりも、ライナ8の交換作業の安全性を高めることができる。
【0031】
さらに、内側作業足場16を構成する部材の搬入および搬出を微粉砕用ドラム5の外周部に形成された各マンホール11、12の開口部を利用して行うようにしているので、内側作業足場16を構成する部材の運搬作業を円滑に行うことができ、微粉砕用ドラム5内での作業足場の形成および解体に要する時間を短縮することができる。
【0032】
微粉砕用ドラム5におけるドラム内面6bの上側のライナ8の取替えが完了すると、内側作業足場16を解体し、内側作業足場16を構成する部材を第一のマンホール11の開口部を介して微粉砕用ドラム5の外側に搬出する。その後、第一のマンホール11の開口部を閉塞蓋によって閉塞する。
【0033】
図10ないし図12は、ミルボール10の下方に位置するライナ8の取替え手順を示している。ミルボール10の下方に位置するライナ8の取替えは、図10に示すように、微粉砕用ドラム5を軸心P回りに回転させ、微粉砕用ドラム5を反転させた位置で微粉砕用ドラム5の回転を停止させて行う。この状態では、第二のマンホール12が最頂部にくるように微粉砕用ドラム5の停止位置を調整する。この場合の微粉砕用ドラム5の位置調整も、上述と同様に主電動機28ではなく減速歯車5aと連動するターニング電動機(図示略)によって行う。
【0034】
つぎに、微粉砕用ドラム5を反転させた状態で、微粉砕用ドラム5の頂部に位置する第二のマンホール12の閉塞蓋を取り外す。外側作業足場15側にいる作業者Mは、第二のマンホール12の開口部を介してドラム本体6内へ進入し、ドラム本体6内へ工具類や材料の搬入を行う。その後、図11に示すように、ドラム本体6内には内側作業足場16を形成する。この場合は、内側作業足場16を構成する部材を第二のマンホール12の開口部を介してドラム本体6内に搬入し、微粉砕用ドラム5内で内側作業足場16の組立てを行う。内側作業足場16の組立てが完了すると、微粉砕用ドラム5の外側にいる作業者Mと微粉砕用ドラム5の内部にいる作業者Mとにより、ライナ8の取り外しを行う。磨耗したライナ8の取り外しがすべて完了すると、図8と同様の手順により、新品のライナ8をドラム内面6bに取付ける。
【0035】
反転した微粉砕用ドラム5のドラム内面6bの上側に位置するライナ8の取替えがすべて完了すると、図12に示すように、内側作業足場16を解体し、内側作業足場16を構成する部材を第二のマンホール12の開口部を介して微粉砕用ドラム5の外側に搬出する。その後、第二のマンホール12の開口部を閉塞蓋によって閉塞する。そして、微粉砕用ドラム5の全体を取り囲むように形成されていた外側作業足場15を解体する。
【0036】
このように、微粉砕用ドラム5の回転を停止させた状態では、ミルボール10は自重によってドラム内面6bの下側に集まるので、ドラム内面6bの上側はライナ8が露出し、ライナ8の取替えが可能となる。ドラム内面6bの上側のライナ8の取替え後には、微粉砕用ドラム5を反転させることにより、複数のミルボール10によって覆われていたライナ8が露出することになり、すべてのライナ8の取替えが可能となる。したがって、大量のミルボール10を微粉砕用ドラム5から抜き出す必要がなくなり、多大な労力を必要とすることなく、短期間でライナ8の取替えが可能となる。これにより、ライナ取替えの工期短縮が図れるとともに、ライナ8の交換費用を大幅に低減することができる。
【0037】
また、大量のミルボール10を微粉砕用ドラム5から抜き出す必要がなくなることから、微粉砕用ドラム5の近傍にミルボール10を保管する広いスペースを確保する必要もなくなる。
【0038】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、微粉砕用ドラム5に収容された複数のミルボール10は、上面が軸心Pよりも若干下方に位置するようにその収容量が設定されているが、ミルボール10の微粉砕用ドラム5への収容量が著しく少ない場合は、ドラム内面6bの上側に露出するライナ8の数が多くなり、初回の取替え作業でライナ全体の半分以上を取替えることが可能となる。また、微粉砕用ドラム5は、火力発電所で燃料として使用される微粉炭を生成するために使用するものとして説明したが、粉砕される物質は石炭に限定されることはなく、これ以外の物質(例えば鉱石や石灰石)を微粉砕するのに用いることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 石炭微粉砕機
5 微粉砕用ドラム
6 ドラム本体
6b ドラム内面
7 ライニング
8 ライナ
10 ミルボール
11 第一のマンホール
12 第二のマンホール
15 外側作業足場
16 内側作業足場
18 台車
21 軸受部
22 軸受部
25 石炭供給口
27 ミルボール供給管
28 主電動機
30 トロンメル
C 石炭
P 軸心
【技術分野】
【0001】
この発明は、石炭を微粉状に粉砕するのに用いられる微粉砕機に関し、とくに微粉砕用ドラムの内部に収容されたミルボールを掻き上げるためのライナの取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粉炭を燃料とする火力発電所においては、石炭を微粉状に粉砕するための石炭微粉砕機が設置されている。従来から石炭を微粉状に粉砕する装置の一例として、回転テーブルに供給された石炭を複数の粉砕ローラを用いて粉砕する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、石炭を微粉状に粉砕する装置として、微粉砕用ドラムを用いた装置が存在する。この装置では、回転可能な微粉砕用ドラムの内部に複数のミルボールを収容し、このミルボールをドラムの内面に設けられたライナによって掻き上げることにより、ドラム内に供給された石炭を粉砕するようにしている。ミルボールを掻き上げるライナの外面部はゴムから構成されており、ミルボールとの接触により磨耗するので、一定期間使用した後は、ライナを取替えることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−7594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ライナの取替えに際しては、微粉砕用ドラム内に収容されている大量のミルボールをすべて微粉砕用ドラムから抜き出す必要があり、ライナの取替えには多大な労力と費用が必要となる。つまり、ミルボールは直径60mm程度の鋼球であり、微粉砕用ドラム内に大量に収容されているので、ミルボールの微粉砕用ドラムに対する抜き出し、運搬、再投入に多くの労力を必要とし、ライナの取替えには多くの日数と費用が必要となっていた。さらに、微粉砕用ドラムから抜き出したミルボールを仮置きするために、微粉砕用ドラムの近傍に広いスペースを確保しなければならないという問題もあった。
【0006】
そこでこの発明は、多大な労力を必要とすることなく、短期間で微粉砕用ドラム内のライナの取替えが可能な微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、微粉砕用ドラムの内部に収容された複数のミルボールを、前記微粉砕用ドラムを軸心周りに回転させることにより前記微粉砕用ドラムのドラム内面に沿って設けられた複数のライナによって掻き上げるようにした微粉砕機であって、前記微粉砕用ドラムの回転を停止させ前記複数のミルボールを前記ドラム内面の下側に集合させた状態で前記ドラム内面の上側に位置する前記ライナを取替え、その後、前記微粉砕用ドラムを軸心回りに反転させ前記複数のミルボールを前記ドラム内面の下側に集合させた状態で前記ドラム内面の上側に位置する前記ライナを取替えることを特徴とする微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法である。
【0008】
この発明によれば、微粉砕用ドラムの回転を停止させた状態では、ミルボールは自重によってドラム内面の下側に集まるので、ドラム内面の上側はライナが露出し、ライナの取替えが可能となる。ドラム内面の上側のライナの取替え後には、微粉砕用ドラムを反転させることにより、複数のミルボールによって覆われていたライナが露出することになり、すべてのライナの取替えが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法において、前記ライナの前記微粉砕用ドラムに対する搬入および搬出は、前記微粉砕用ドラムの内部と連通するトロンメルを利用して行うことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法において、前記ライナの取替えは、前記微粉砕用ドラム内に作業足場を形成して行うことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法において、前記作業足場を構成する部材の前記微粉砕用ドラムに対する搬入および搬出は、前記微粉砕用ドラムの外周部に形成されたマンホールを利用して行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、大量のミルボールを微粉砕用ドラムから抜き出す必要がなくなるので、多大な労力を必要とすることなく、短期間でライナの取替えが可能となる。そのため、ライナ取替えの工期短縮が図れるとともに、ライナの交換費用を大幅に低減することができる。また、微粉砕用ドラムの近傍にミルボールを保管する広いスペースを確保する必要もなくなる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ライナの搬入および搬出を微粉砕用ドラムの内部と連通するトロンメルを利用して行うので、微粉砕用ドラムに対するライナの運搬作業を円滑に行うことができ、作業能率を高めることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、微粉砕用ドラム内に作業足場を形成してライナの取替えを行うので、微粉砕用ドラムの内径が大きい場合でもライナの交換を能率よく行うことができる。また、梯子を用いるライナの交換作業に比べて作業の安全性を高めることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、マンホールを利用して微粉砕用ドラムに対する作業足場構成部材の搬入および搬出を行うので、微粉砕用ドラム内での作業足場の形成および解体に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係わる微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法が適用される微粉砕用ドラムの部分断面図である。
【図2】図1の微粉砕用ドラムの部分拡大断面図である。
【図3】図1の微粉砕用ドラムを有する石炭微粉砕機の全体概要図である。
【図4】図3の石炭微粉砕機におけるライナ取替作業の準備状態を示す概要図である。
【図5】図4のライナ取替作業の作業準備状態を示す断面図である。
【図6】図1の微粉砕用ドラムの内部に内側作業足場を形成した状態を示す断面図である。
【図7】図1の微粉砕用ドラムのライナ取替作業状態を示す断面図である。
【図8】図1の微粉砕用ドラムのライナ取替え手順を示す断面図であり、(a)はライナの取り外し状態を示す断面図、(b)はライナの取替え過程を示す断面図、(c)はライナの取替え完了を示す断面図である。
【図9】図6の内側作業足場を撤去した状態を示す断面図である。
【図10】図5の微粉砕用ドラムを反転させる過程を示す断面図である。
【図11】図5の微粉砕用ドラムを反転させた後のライナの取替え状態を示す断面図である。
【図12】図11の内側作業足場を撤去した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0018】
図1ないし図12は、この発明の実施の形態を示している。図3に示すように、火力発電所には、石炭を微粉状に粉砕するための石炭微粉砕機1が設置されている。石炭微粉砕機1は、地表Fから上方に延びる中央架台2を有している。中央架台2の頂部には、石炭微粉砕機1の各機器類を見下ろすことができる点検台3が設けられている。点検台3の直下には、水平方向に延びる円筒状の微粉砕用ドラム5が配設されている。微粉砕用ドラム5の軸方向の一端部には、減速歯車5aが取付けられている。減速歯車5aは、地表Fから上方に延びる左側架台23の上部に固定された軸受部21によって回転自在に支持されている。微粉砕用ドラム5の軸方向の他端部は、地表Fから上方に延びる右側架台24の上面部に固定された軸受部22によって回転自在に支持されている。これにより、微粉砕用ドラム5は、軸心P回りに回転可能となっている。すなわち、微粉砕用ドラム5は、水平方向に延びる軸心Pを中心として矢印S方向に回転可能となっている。
【0019】
微粉砕用ドラム5は、減速歯車5aと機械的に連結された主電動機28によって回転駆動するように構成されている。左側架台23の上部には、石炭Cを微粉砕用ドラム5の内部に供給するための石炭供給口25が設けられている。石炭供給口25は、石炭Cを上方から供給する石炭供給管26と接続されている。また、左側架台23の上部には、石炭供給口25と隣接してミルボール供給管27が配設されている。ミルボール10は、矢印B方向からミルボール供給管27に供給され、ミルボール供給管27に供給されたミルボール10は、微粉砕用ドラム5の軸方向の一端部から微粉砕用ドラム5内に供給されるようになっている。右側架台24と隣接する位置には、粉砕された石炭Cの大きさを選別するトロンメル(回転式のふるい)30が配設されている。トロンメル30は、微粉砕用ドラム5の軸方向の他端部と接続されており、トロンメル30により選別された微粉状の石炭Cのみが次工程へ供給されるようになっている。
【0020】
図1は、微粉砕用ドラム5の断面を示している。微粉砕用ドラム5は、ドラム本体6と、ライニング7と、ライナ8とを有している。ドラム本体6は、円筒状の金属部材から構成されている。ドラム本体6のドラム内面6bには、複数のライニング7が周方向に所定の間隔をもって取付けられている。ライニング7は、図2に示すように、シェルプレート7aと、補強プレート7cと、固定ボルト7dと、ナット7eを有している。シェルプレート7aは、ライナ8を左右から支持するために二分割構造となっており、ライナ8の外面と係合可能な略V字状の溝7bを有している。シェルプレート7aは、耐磨耗性を有する弾性部材から構成されており、内面側は金属製の補強プレート7cによって補強されている。ドラム本体6には、ドラム外面6aとドラム内面6bとを貫通する貫通孔6dが形成されている。シェルプレート7aのシェルプレート7aは、貫通孔6dに挿入された固定ボルト7dと、この固定ボルト7dに螺合されるナット7eにより、ドラム本体6のドラム内面6bに強固に固定されている。
【0021】
ライナ8は、図2および図8に示すように、ゴムライナ本体8aと、ボルト保持部8bと、ボルト8cと、ナット8dと、座金8eと、シーリング部材8fを有している。ゴムライナ本体8aは、断面形状が略四角形をしており、ミルボール10が接触する外面の角部は、面取り処理が施されている。ゴムライナ本体8aのドラム内面6bと対向する部位は、シェルプレート7aによって保持されている。ゴムライナ本体8a内には、金属製のボルト保持部8bが埋め込まれている。ボルト8cは、頭部がボルト保持部8bに保持されており、ネジ部はドラム本体6に形成された保持穴6cを貫通してドラム外面6aから突出している。シーリング部材8fは、下面がドラム本体6のドラム外面6aに接触するように取付けられている。座金8eは、シーリング部材8fの外面を覆うように設けられている。シーリング部材8fおよび座金8eの中央部には、ボルト8cのネジ部が挿入されており、ボルト8cのネジ部先端側にはナット8dが螺合されている。ゴムライナ本体8aは、ナット8dの締付けによりドラム本体6のドラム内面6b側に強固に固定されている。
【0022】
図1に示すように、ライニング7とライナ8は、ドラム本体6のドラム内面6bに沿って所定の間隔をもって配置されている。この実施の形態においては、隣接するライナ8同士は微粉砕用ドラム5の軸心Pに対して角度θ(θ=18°)をなしている。微粉砕用ドラム5には、図3に示すように、第一のマンホール11と第二のマンホール12が形成されている。第一のマンホール11は、微粉砕用ドラム5の軸方向の一端部側に形成されている。第二のマンホール12は、微粉砕用ドラム5の軸方向の他端部側に形成されており、第一のマンホール11に対して軸心P回りに180°ずれた位置に配置されている。各マンホール11、12は、通常は開口部(図示略)が閉塞蓋(図示略)によって閉塞されており、必要に応じて閉塞蓋を取り外すことにより、開口部を介してドラム本体6内に進入可能となっている。
【0023】
図4および図5に示すように、微粉砕用ドラム5に収容された複数のミルボール10は、収容上面が微粉砕用ドラム5の回転中心(図1の軸心P)よりも若干下方に位置するようにその収容量が設定されている。この実施の形態においては、ミルボール10の直径60mmの鋼球から構成されており、微粉砕用ドラム5に収容されるミルボール10の総重量は約30トンとなっている。図1に示すように、微粉砕用ドラム5が軸心Pを中心として矢印S方向に回転した際には、微粉砕用ドラム5内に収容された複数のミルボール10は、ライナ8との接触により上方に掻き上げられるようになっている。そして、ミルボール10がライナ8によって所定の位置まで掻き上げられると、ミルボール10とライナ8との接触が終了し、ミルボール10は自重によってドラム本体6のドラム内面6bの下側に落下する。これにより、微粉砕用ドラム5内では、石炭Cとミルボール10が衝突し、微粉砕用ドラム5内に供給された石炭Cがミルボール10によって微粉状に粉砕される。粉砕された微粉砕用ドラム5内の石炭Cは、図4および図5に示す出口開口部6eからトロンメル30を介してつぎの工程に供給される。
【0024】
つぎに、この実施の形態におけるライナ8の取替え手順および作用について説明する。
【0025】
図4ないし図9は、ドラム本体6のドラム内面6bの上側におけるライナ8の取替え手順を示している。図4および図5に示すように、ドラム本体6のドラム内面6bの上側におけるライナ8の取替える際には、微粉砕用ドラム5の回転を停止させる。この状態では、第一のマンホール11が最頂部にくるように微粉砕用ドラム5の停止位置を調整する。この場合の微粉砕用ドラム5の位置調整は、主電動機28ではなく減速歯車5aと連動するターニング電動機(図示略)によって行う。つぎに、微粉砕用ドラム5の第一のマンホール11の閉塞蓋を取り外し、第一のマンホール11の開口部を介して微粉砕用ドラム5内へ作業者Mが進入し、建物40に対して移動自在に設けられたクレーン17により微粉砕用ドラム5内への工具類や材料の搬入を行う。この状態では、第二のマンホール12は微粉砕用ドラム5の最下部に位置しており、閉塞蓋(図示略)によって閉塞されている。
【0026】
ドラム本体6内への工具類や材料の搬入は、図4に示すように、クレーン17のワイヤーロープ17aを第一のマンホール11の開口部を介して微粉砕用ドラム5内にいる作業者M2の近くまで吊下げ、操作スイッチ17bを微粉砕用ドラム5の外側にいる作業者M1によって操作することにより行う。また、トロンメル30の内部に養生板(図示略)を設置し、トロンメル30を介して材料などの搬入、搬出を行う。すなわち、微粉砕用ドラム5内の出口開口部6eにいる作業者M3とトロンメル30の出口近傍にいる作業者M4により、トロンメル30の内部に配置された台車18を移動させることにより、取替済みのライナ8の搬出や新品のライナ8の搬入などを行う。このように、ライナ8の搬入および搬出をドラム本体6内と連通するトロンメル30を利用して行うことで、微粉砕用ドラム5に対するライナ8の運搬作業を円滑に行うことができ、作業能率を高めることができる。
【0027】
つぎに、微粉砕用ドラム5内への工具類や材料の搬入が終了すると、微粉砕用ドラム5の周囲に外側作業足場15を形成する。外側作業足場15は、金属製のパイプ、接続金具、足場板などの部材から構成され、金属製のパイプ同士を専用の接続金具で連結することで、作業に必要な形状を作ることができるものである。ここでは、外側作業足場15は、地表Fから上方に延びるように組立て、最終的には微粉砕用ドラム5の全体を取り囲むように組立てる。そして、外側作業足場15の組立てが終了すると、内側作業足場16を構成する部材を第一のマンホール11の開口部を介して微粉砕用ドラム5内に搬入し、微粉砕用ドラム5内で内側作業足場16の組立てを行う。内側作業足場16は、外側作業足場15と同様に、金属製のパイプ、接続金具、足場板などの部材から構成され、金属製のパイプ同士を専用の接続金具で連結することで、作業に必要な形状を作ることができるものである。ここでは、内側作業足場16は、作業者Mがドラム本体6のドラム内面6bの上側に容易に到達できる高さに組立てられる。
【0028】
内側作業足場16の組み立てが終了すると、微粉砕用ドラム5の外側にいる作業者Mと微粉砕用ドラム5の内部にいる作業者Mとにより、ライナ8の取り外しを行う。ライナ8の取り外しは、図2に示すナット8dを工具により緩め、ナット8dをボルト8cから取り外した後、ゴムライナ本体8aを微粉砕用ドラム5の軸心P側へ引張ることにより行う。
【0029】
図8は、ライナ8の取付け手順を示している。図8(a)は、ライナ8をドラム本体6から取り外した状態を示している。ライナ8を取り外した状態では、シェルプレート7aの溝7bが露出している。つぎに、図8(b)に示すように、新品のライナ8を取付ける。新品のライナ8を取付けに際しては、まずライナ8のボルト8cをドラム本体6の保持穴6cに挿入するとともに、ゴムライナ本体8aをシェルプレート7aの溝7bに嵌合させる。この状態で、ドラム本体6のドラム外面6aから突出したボルト8cのネジ部にシーリング部材8fと座金8eを嵌め込み、ナット8dを螺合させる。そして、図8(c)に示すように、ボルト8cと螺合しているナット8dを締付け工具(図示略)により所定のトルクで締付けることにより、ゴムライナ本体8aをドラム本体6のドラム内面6b側に強固に固定する。この状態では、ゴムライナ本体8aは、シェルプレート7aに形成された略V字状の溝7bと係合しているので、微粉砕用ドラム5の回転方向に対して高い強度を有することになる。したがって、ライナ8は、ミルボール10が衝突しても位置ずれすることはなくなり、ライナ8が微粉砕用ドラム5の回転中にドラム本体6から外れることはない。
【0030】
このようにして、各ライナ8のドラム内面6bの上側への取り付けは、微粉砕用ドラム5の外側にいる作業者Mと微粉砕用ドラム5の内部にいる作業者Mの双方によって行われる。ここで、ライナ6の取替えは、内側作業足場16を利用して行うので、微粉砕用ドラム5の内径が大きい場合でもライナ8の取替えを能率よく行うことができる。また、内側作業足場16は、多量のミルボール10の上側に配置された養生板16aの上面を基礎として上方に延びているので、ミルボール10の上に直接内側作業足場16を形成する場合よりも安定性が向上し、複数の作業者Mが内側作業足場16に偏って乗ったとしても、内側作業足場16が傾くことはない。したがって、梯子を用いてライナ8の取替え作業を行う場合よりも、ライナ8の交換作業の安全性を高めることができる。
【0031】
さらに、内側作業足場16を構成する部材の搬入および搬出を微粉砕用ドラム5の外周部に形成された各マンホール11、12の開口部を利用して行うようにしているので、内側作業足場16を構成する部材の運搬作業を円滑に行うことができ、微粉砕用ドラム5内での作業足場の形成および解体に要する時間を短縮することができる。
【0032】
微粉砕用ドラム5におけるドラム内面6bの上側のライナ8の取替えが完了すると、内側作業足場16を解体し、内側作業足場16を構成する部材を第一のマンホール11の開口部を介して微粉砕用ドラム5の外側に搬出する。その後、第一のマンホール11の開口部を閉塞蓋によって閉塞する。
【0033】
図10ないし図12は、ミルボール10の下方に位置するライナ8の取替え手順を示している。ミルボール10の下方に位置するライナ8の取替えは、図10に示すように、微粉砕用ドラム5を軸心P回りに回転させ、微粉砕用ドラム5を反転させた位置で微粉砕用ドラム5の回転を停止させて行う。この状態では、第二のマンホール12が最頂部にくるように微粉砕用ドラム5の停止位置を調整する。この場合の微粉砕用ドラム5の位置調整も、上述と同様に主電動機28ではなく減速歯車5aと連動するターニング電動機(図示略)によって行う。
【0034】
つぎに、微粉砕用ドラム5を反転させた状態で、微粉砕用ドラム5の頂部に位置する第二のマンホール12の閉塞蓋を取り外す。外側作業足場15側にいる作業者Mは、第二のマンホール12の開口部を介してドラム本体6内へ進入し、ドラム本体6内へ工具類や材料の搬入を行う。その後、図11に示すように、ドラム本体6内には内側作業足場16を形成する。この場合は、内側作業足場16を構成する部材を第二のマンホール12の開口部を介してドラム本体6内に搬入し、微粉砕用ドラム5内で内側作業足場16の組立てを行う。内側作業足場16の組立てが完了すると、微粉砕用ドラム5の外側にいる作業者Mと微粉砕用ドラム5の内部にいる作業者Mとにより、ライナ8の取り外しを行う。磨耗したライナ8の取り外しがすべて完了すると、図8と同様の手順により、新品のライナ8をドラム内面6bに取付ける。
【0035】
反転した微粉砕用ドラム5のドラム内面6bの上側に位置するライナ8の取替えがすべて完了すると、図12に示すように、内側作業足場16を解体し、内側作業足場16を構成する部材を第二のマンホール12の開口部を介して微粉砕用ドラム5の外側に搬出する。その後、第二のマンホール12の開口部を閉塞蓋によって閉塞する。そして、微粉砕用ドラム5の全体を取り囲むように形成されていた外側作業足場15を解体する。
【0036】
このように、微粉砕用ドラム5の回転を停止させた状態では、ミルボール10は自重によってドラム内面6bの下側に集まるので、ドラム内面6bの上側はライナ8が露出し、ライナ8の取替えが可能となる。ドラム内面6bの上側のライナ8の取替え後には、微粉砕用ドラム5を反転させることにより、複数のミルボール10によって覆われていたライナ8が露出することになり、すべてのライナ8の取替えが可能となる。したがって、大量のミルボール10を微粉砕用ドラム5から抜き出す必要がなくなり、多大な労力を必要とすることなく、短期間でライナ8の取替えが可能となる。これにより、ライナ取替えの工期短縮が図れるとともに、ライナ8の交換費用を大幅に低減することができる。
【0037】
また、大量のミルボール10を微粉砕用ドラム5から抜き出す必要がなくなることから、微粉砕用ドラム5の近傍にミルボール10を保管する広いスペースを確保する必要もなくなる。
【0038】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、微粉砕用ドラム5に収容された複数のミルボール10は、上面が軸心Pよりも若干下方に位置するようにその収容量が設定されているが、ミルボール10の微粉砕用ドラム5への収容量が著しく少ない場合は、ドラム内面6bの上側に露出するライナ8の数が多くなり、初回の取替え作業でライナ全体の半分以上を取替えることが可能となる。また、微粉砕用ドラム5は、火力発電所で燃料として使用される微粉炭を生成するために使用するものとして説明したが、粉砕される物質は石炭に限定されることはなく、これ以外の物質(例えば鉱石や石灰石)を微粉砕するのに用いることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 石炭微粉砕機
5 微粉砕用ドラム
6 ドラム本体
6b ドラム内面
7 ライニング
8 ライナ
10 ミルボール
11 第一のマンホール
12 第二のマンホール
15 外側作業足場
16 内側作業足場
18 台車
21 軸受部
22 軸受部
25 石炭供給口
27 ミルボール供給管
28 主電動機
30 トロンメル
C 石炭
P 軸心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉砕用ドラムの内部に収容された複数のミルボールを、前記微粉砕用ドラムを軸心周りに回転させることにより前記微粉砕用ドラムのドラム内面に沿って設けられた複数のライナによって掻き上げるようにした微粉砕機であって、前記微粉砕用ドラムの回転を停止させ前記複数のミルボールを前記ドラム内面の下側に集合させた状態で前記ドラム内面の上側に位置する前記ライナを取替え、その後、前記微粉砕用ドラムを軸心回りに反転させ前記複数のミルボールを前記ドラム内面の下側に集合させた状態で前記ドラム内面の上側に位置する前記ライナを取替えることを特徴とする微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法。
【請求項2】
前記ライナの前記微粉砕用ドラムに対する搬入および搬出は、前記微粉砕用ドラムの内部と連通するトロンメルを利用して行うことを特徴とする請求項1に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法。
【請求項3】
前記ライナの取替えは、前記微粉砕用ドラム内に作業足場を形成して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法。
【請求項4】
前記作業足場を構成する部材の前記微粉砕用ドラムに対する搬入および搬出は、前記微粉砕用ドラムの外周部に形成されたマンホールを利用して行うことを特徴とする請求項3に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法。
【請求項1】
微粉砕用ドラムの内部に収容された複数のミルボールを、前記微粉砕用ドラムを軸心周りに回転させることにより前記微粉砕用ドラムのドラム内面に沿って設けられた複数のライナによって掻き上げるようにした微粉砕機であって、前記微粉砕用ドラムの回転を停止させ前記複数のミルボールを前記ドラム内面の下側に集合させた状態で前記ドラム内面の上側に位置する前記ライナを取替え、その後、前記微粉砕用ドラムを軸心回りに反転させ前記複数のミルボールを前記ドラム内面の下側に集合させた状態で前記ドラム内面の上側に位置する前記ライナを取替えることを特徴とする微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法。
【請求項2】
前記ライナの前記微粉砕用ドラムに対する搬入および搬出は、前記微粉砕用ドラムの内部と連通するトロンメルを利用して行うことを特徴とする請求項1に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法。
【請求項3】
前記ライナの取替えは、前記微粉砕用ドラム内に作業足場を形成して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法。
【請求項4】
前記作業足場を構成する部材の前記微粉砕用ドラムに対する搬入および搬出は、前記微粉砕用ドラムの外周部に形成されたマンホールを利用して行うことを特徴とする請求項3に記載の微粉砕機のドラム内部ライナ取替方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−162506(P2010−162506A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8075(P2009−8075)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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