説明

微粒子の分析および操作のためのナノ構造表面

【課題】 微粒子の破壊または試験を容易にすること。
【解決手段】 本発明は第1の剛性面を有する第1の機械的構造体を備えた装置を提供し、前記第1の剛性面のある領域はナノ構造表面を有する。本装置は、第2の剛性面を有しかつ前記第1の機械的構造体に対向する第2の機械的構造体も含む。第2の剛性面は微細粒子がナノ構造表面と第2の剛性面との間に位置できるようにナノ構造表面と協働可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に微粒子を試験および破壊する装置および方法に向けたものである。
【背景技術】
【0002】
多くの生物学的用途では、その成分を分析することができるように微粒子を破壊すること、または無処理の微粒子を同定または特徴付けすることが望ましい。例えば、軍事、医療、農業、および食品調整用途における細菌細胞または他の細胞の存在および濃度を監視する、費用効果が高く、高速の方法の開発に大きな関心がある。多くの場合、細胞の分析には、細胞の成分を分析できるようにそれを破壊する必要がある。しかし、微粒子のタイプによっては破壊は問題になる。
【0003】
例えば、応力を加えられるか、または栄養素が足りないと、栄養細菌細胞は、より一般的には胞子と呼ばれる休眠胞子に分化し得る。胞子は機械攪拌、紫外線およびガンマ線照射、加熱、および化学的処理などの種々の物理的処理による不活化および破壊に対して高い抵抗性がある。破壊を達成するにはマイクロ波または超音波装置などの大型で複雑な装置を必要とするので、そのような細胞を検出および分析するコストは著しく増大し、その速度は遅くなる。また、現在破壊に使用される厳しい条件は不注意に細胞の成分を傷つける恐れがある。例えば、界面活性剤の化学反応または超音波破砕により生じる物理的応力を用いた破壊は、細胞内のDNA、タンパク質、または他の成分を損傷または変性させ得る。同じような懸念は非生物的微粒子の分析に対して存在する。
【非特許文献1】TC ChangとAH Huang、Journal of Clinical Microbiology、2000年10月、3589〜3594頁、第38巻10号
【非特許文献2】The Seventh Foresight Conference on Molecular Nanotechnology、1995年10月15〜17日、カリフォルニア州サンタクララ、M.P.Hughes、AC Electrokinetics:Applications for Nanotechnology
【特許文献1】米国特許出願第2003/0186430号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は微粒子の破壊または試験を容易にするためにナノ構造表面を用いた装置のほか、このような装置を使用および製造する方法を提供することによって上記問題を解決する。
【0005】
上記欠点に対処するために、本発明の一実施形態は第1および第2の機械的構造体を備えた装置を提供する。第1の機械的構造体は第1の剛性面を有する。第1の剛性面のある領域はナノ構造表面を有する。第2の機械的構造体は第2の剛性面を有する。第2の剛性面は第1の機械的構造体に対向しており、微粒子がナノ構造表面と第2の剛性面との間に位置するようにナノ構造表面と協働可能である。
【0006】
本発明の別の実施形態は使用方法である。本方法は上記装置のある実施形態内に複数の微細粒子を設置する工程、およびナノ構造表面および第2の剛性面を用いて前記複数の微細粒子に力を加える工程を含む。
【0007】
本発明のさらに別の実施形態は、装置を製造する方法である。本製造方法は第1の剛性面を有する第1の機械的構造体を形成する工程および第1の剛性面のある領域内にナノ構造体を形成する工程を含む。本製造方法は第2の剛性面を有する第2の機械的構造体を形成する工程も含む。第2の機械的構造体は表面がナノ構造体と第2の剛性面との間に位置決め可能な微細粒子に力を加えるように、第2の剛性面が第1の機械的構造体に対向し対向し、かつナノ構造体と共同可能なように位置決めされる。
【0008】
本発明は添付図面を参照しながら、以下の詳細な説明により最もよく理解される。種々の形体は原寸大でないかもしれず、任意には説明をわかり易くするために拡大または縮小されているかもしれない。ここで、添付図面に関して記載した以下の説明を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は微粒子の試験または破壊を容易にするナノ構造体の有利な使用を認識している。ナノ構造表面は小さな接触面積を提供し、故にナノ構造粒子表面に高い応力が発現するのを促進するので望ましい。本願明細書で用いるナノ構造表面という用語は、突出構造体のアレイを有する表面として定義され、各構造体は約50ナノメートル〜約1000ナノメートルの横方向寸法を有する。有利にはナノ構造表面を用いて、規則的な非構造化表面を使用する従来の破壊技術と比較してその成分への損傷を最小にして、微粒子を破壊することができる。有利にはナノ構造体を用いて微粒子の情報の収集を容易にすることもできる。このような情報は微粒子の弾性特性を測定すること、微粒子が破壊されるときを判定すること、または微粒子の身元を確立することを含み得る。
【0010】
図1は微粒子に接触力を加える例示的装置100の一部分の断面図を示している。装置100は第1の剛性面110を有する第1の機械的構造体105を含む。第1の剛性面110の領域115はナノ構造表面120を有する。装置100は第2の剛性面130を有する第2の機械的構造体125をさらに含む。第2の剛性面130は第1の機械的構造体105に対向し、微細粒子135がナノ構造表面120と第2の剛性面130との間に位置可能であるようにナノ構造表面120と協働可能である。
【0011】
当業者であれば、第2の剛性面130とナノ構造表面120との間に微粒子135を位置させるようにナノ構造表面120および第2の剛性面130が協働し得る非常に多くの形態が理解されよう。図1に示した例示的装置100では、第2の剛性面130は微細粒子135がナノ構造表面120と第2の剛性面130との間に位置することができるように、ナノ構造表面120の上に距離137を置いて位置決めされている。ナノ構造表面120と第2の剛性面130との間の距離137を調整して、これら表面120と130の間に微細粒子135を保持することを容易にすることができる。例えば、いくつかの場合、距離137は微粒子135の平均径139の約2倍未満である。
【0012】
ナノ構造表面120は当業者にはよく知られた手順を用いて第1の機械的構造体105の表面110をドライ・エッチングすることによって作製され得る。第1および第2の機械的構造体105、125はシリコン・ウェハなどの第1および第2の半導体基板をそれぞれ含み得る。ある場合には、第2の剛性面130がナノ構造表面を有することも有利である。
【0013】
図1はピン140を含んだ好適なナノ構造表面120を示している。本願明細書では「ピン」という用語は、円柱、四角形、三角形、角柱、角錐、矩形構造体、またはこれらを組合せたものを含む々の形状を有する構造体を示すために用いている。例えば、ある場合には、ナノ構造表面120は微粒子135を破壊するように構成された一方向性の刃などの刃142を有し得る。ある場合には、ピン140を一次元アレイに配置して鋸状部を形成するか、または二次元アレイに配置してグラス状構造体を形成することが有利である。例えば、図1はナノグラス145を含んだナノ構造表面120の断面図を示している。
【0014】
微粒子135は植物細胞、動物細胞、または細菌細胞を含む生体細胞を含み得る。ある場合には、微粒子135は炭疽菌、枯草菌、または土壌細菌などの細菌胞子である。別の場合には、微粒子135はマイクロスフェアなどの非生物粒子を含み得る。いくつかの好適なマイクロスフェアは、球体内部に化学薬品を保持するラテックス・スフェアを含む。装置100のいくつかの実施形態では、2つ以上の微粒子135をナノ構造表面120と第2の剛性面130との間に位置させることができる。
【0015】
図1に示した実施形態では、第1の剛性面110および第2の剛性面第2の剛性面130の一方または両方は相互に対して可動であり、これによりナノ構造表面120を通して協働して接触力を微細粒子135に加えることができる。ナノ構造表面120のある望ましい実施形態により、ナノ構造表面120が微細粒子135に接することが確実にできるようになる。有利なナノ構造表面120は、微細粒子135の平均径155の約1/2より小さいピッチ150を有するようになされたピン140を含み得る。ある場合には、ピン140は微細粒子135の平均径155の約1/10未満の直径160を有する。
【0016】
第1および第2の剛性面110、130は、ナノ構造表面120と第2の剛性面130との間の微粒子135の場所に関係なく、よく制御された様式で接触力を確実に加えることができるようにするので、実質的に平坦であることが望ましい。さらに、第1および第2の剛性面110、130を相互に実質的に平行になるように位置決めすることにより、接触力を加えながら、ナノ構造表面120と第2の剛性面130との間に微粒子135を保持することができる。しかし、他の場合、第1および第2の剛性面110、130は凸形、凹形、または他の形状を有してよい。
【0017】
微粒子135を破壊するように接触力をデザインする場合、微粒子135の膜またはコーティング165の溶解を容易にするようにピン径160を構成することが望ましい。ある場合には、直径160は1μm未満であり、より好適には約400ナノメートル未満である。場合によっては、ピン140の先端は狭くなっているか、または尖っていることが望ましい。これは微粒子135に非常に局所的に力を加えることを容易にして、その膜またはコーティング165を効果的に破壊することができるためである。ある場合には、先端径170はピン径160の1/2〜1/10である。
【0018】
他の場合には、接触力は微粒子135の弾性特性などの微粒子135の情報を集めるようにデザインされる。例えば、接触力を徐々に大きくして微粒子135に加えれば、微粒子135の圧縮率を調べることが可能となる。圧縮率の測定値を用いて、微粒子135の状態、例えば栄養細菌細胞対活性細菌細胞を試験することができる。このような用途では、微粒子135を破壊しないために、先端径170はピン径160とほぼ同じ長さであることが望ましい。
【0019】
図1に示したように、ピッチ150および高さ175はナノ構造表面120を含んだ領域115にわたって共に均一であり得る。装置100のいくつかの好適な実施形態では、ピッチ150は約0.5〜5μmの範囲である。しかし、ある場合には、領域150のピッチ150は不均一であることが有利であるが、これは大きさの異なる微粒子135に接触力を加えることを可能にするためである。ピッチ150が不均一であることにより、領域115の種々の領域に位置決めした同じ大きさの微粒子135に種々の力を加えることも容易になる。ピッチ150が不均一であることにより、ナノ構造表面120と第2の剛性面130との間に微粒子135を保持することもできるようにもなる。上記と同じ理由で、ピン140の高さ175が不均一であることも有利となり得る。ある場合には、高さ175は約1μm〜7ナノメートルの範囲である。
【0020】
図1にさらに示したように、装置100のいくつかの実施形態は、破壊されたときに微粒子135から放出される物質を分析するように構成されたシステム180をさらに含む。装置180の非限定的な例には、免疫アッセイまたは核酸アッセイ、クロマトグラフィ分析または分光分析、あるいはこれらを組合せたものを実行する機械を含む。いくつかの実施形態では、システム180は微粒子135から放出された物質または化学薬品をシステム180まで導く微小流体チャネルなどのチャネル182を介して装置100に結合される。第1の剛性面110または第2の剛性面130の一方または両方が、透過膜190を形成する開口部185をさらに含むことが有利であり得る。図1に示した実施形態では、第1の剛性面110の領域115は開口部185を含んでいる。
【0021】
装置100は微粒子135から放出された物質を開口部185を通すように構成されたポンプまたは他の液圧機械などのデバイス195をさらに含み得る。例えば、デバイス195は、透過膜190にわたって洗剤、変性剤、または水などの液体などの化学反応性物質を含む補足的な物質を灌注することによって通過を容易にし得る。
【0022】
図2は微粒子135に電流を印加する第2の例示的装置200の断面図を示している。図1に示した装置に類似する装置200の要素には同じ参照番号を付してある。装置200の第1の剛性面110および第2の剛性面130は協働して、ナノ構造表面120を通して電磁力を含む力を微粒子135に加えることができる。例えば、ピン205を通して微粒子135の表面165を通せば、微粒子135の上に電磁力が発生する。
【0023】
図2に示したような装置200の好適な実施形態では、ナノ構造表面120は導電性コア210を有するピン205を含む。導電性コア210および第2の剛性面130は電圧源215に電気的に結合されている。図2に示したように、複数の導電性コア210は第1の機械的構造体105内で1つまたは複数の導電性ライン217を介して、電気的に相互に結合され得る。導電性コア210および導電性ライン217はドープシリコンを含み得る。導電性コア210および第2の剛性面130は、電圧源215が導電性コア210と第2の剛性面130との間に電位を印加するときに微粒子135に電流を伝えるように構成されている。
【0024】
微粒子135まで通される電流の強度は、微粒子135の特性の情報を集めるか、または微粒子135を破壊するかのいずれかのために、必要に応じて種々の電圧を印加することによって変えることができる。低電圧(例えば、約1V未満)を用いてピン205の導電性コア210を通して十分な電流を生成して、非常に高い局所的な電力散逸を発生することができる。次に、これは熱的損傷または電気的破壊を発生させて、微粒子の膜またはコーティング165を破壊することができる。
【0025】
さらに低い電圧(例えば、約0.1V未満)を用いて微粒子135の電気的特性を測定することができる。当業者においては、静電容量、インピーダンス、または導電率などのその電気的特性を測定することによる異なる種類の細胞の識別はよく知られている。その全体を本願明細書に援用した、TC ChangとAH Huang、Journal of Clinical Microbiology、2000年10月、3589〜3594頁、第38巻10号を参照すること。装置200のいくつかの実施形態では、電気インピーダンスを測定するために、電流を導電性コア210から微粒子135を介して第2の剛性面130まで通す。微粒子135の電気インピーダンスはその種類に応じて変化し得る。例えば、異なるタイプの細菌に対しては電気インピーダンスは異なり得る。微粒子135の電気インピーダンスは、微粒子135が破壊されたか否か、または微粒子135の状態、例えば栄養細菌細胞対活性細菌細胞かに応じても異なり得る。例えば、微粒子135を破壊すれば、その成分、例えば、細胞質を周囲の流体に溢れさせて、導電率を増大させるとともに検出可能な電気インピーダンスの変化を発生させることができる。
【0026】
当業者は例えばドープシリコン基板をドライ・エッチングすることによって、導電性コア210を有するピン205を製造する方法を熟知している。ある場合には、図2に示したように、ピン205は絶縁層220をさらに含んでおり、導電性コア210の先端部225のみが絶縁されていない。このような構成は有利には、絶縁されていない導電性コア210を用いるよりも、所与の電位を得るためにより大きな電流を微粒子135まで通すことができる。絶縁層220を作製する方法も当業者には知られている。例えば、絶縁層220は、従来の熱酸化工程によって、かつ導電性先端部225を従来のエッチング工程に晒すことによって導電性コア210の周囲に共形的に成長させた二酸化シリコンを含み得る。
【0027】
図3は微粒子135に電界を印加する第3の例示的装置300の断面図を示している。図1および2に示した装置に類似する装置300の構成要素には同じ参照番号を付している。装置300の第1の剛性面110および第2の剛性面130は協働して、ナノ構造表面120を通して微細粒子135に電気力を含む力を加えることができる。
【0028】
図2に示した装置と同様、装置300の好適な実施形態は絶縁層315で被覆した導電性コア310を有するピンを含む。導電性コア310および第2の剛性面130は電圧源215に電気的に結合されている。導電性コア310および第2の剛性面130は、電圧源215が導電性コア310と第2の剛性面130との間に電圧を印加するときに微粒子135に電界を印加するように構成されている。例えば、電圧を印加することにより、微粒子135の特性に関する情報を集めるため、または微粒子135を破壊するために用いることのできる局所的に高い電界をピン305の先端部320に印加することができる。
【0029】
当業者であれば、誘電泳動および電気的回転などの微粒子135を操作、分離、または破壊するための種々の界面動電的な方法を熟知しているであろう。共にその全体を本願明細書に援用した、The Seventh Foresight Conference on Molecular Nanotechnology、1995年10月15〜17日、カリフォルニア州サンタクララ、M.P.Hughes、AC Electrokinetics:Applications for Nanotechnologyおよび米国特許出願第2003/0186430号を参照すること。例えば、細胞などの誘電性微粒子135を外部電界に曝露すると、それは分極化するであろう。誘発双極子の大きさおよび方向は、微粒子135のフィールド周波数および誘電性(例えば、その導電率および誘電率)に左右されるであろう。電界が不均一であれば、誘発双極子および外部電界の相互作用に起因して電気力が生じるであろう。
【0030】
図4は微粒子135に音波を印加する第4の例示的装置400の断面図を示している。図1に示した装置に類似する装置400の構成要素には同じ参照番号を付してある。装置400の第1の剛性面110および第2の剛性面130は協働して、ナノ構造表面120を通して微細粒子135に音波を含む力を加えることができる。
【0031】
図1に示した装置100と同様、装置400の好適な実施形態はピン405を含む。ピン405は上に記載し、図1〜3に示した構造または形状、あるいはそれらを組合せたもののいずれも有し得る。装置400は第1の剛性面または第2の剛性面110、130の少なくとも一方に通される音波を発生するように構成されたデバイス410をさらに含んでいる。ある場合には、デバイス410は圧電材料を含み、図4に示したように、ナノ構造表面120が位置する、第1の機械的構造体105の領域115に隣接する第1の剛性面110に結合されている。装置400のある実施形態では、圧電材料はピン405に超音波を印加するように構成される。
【0032】
デバイス410の圧電材料に振動性の電位を印加すれば、ピン405から微粒子135まで音響力が伝達させられる。この音響力を用いて微粒子135を破壊するか、別の場合には微粒子135の情報を集めることができる。ある波長の超音波はピン405と協働して、超音波がピン405を伝搬するときに回折効果および干渉効果を超音波に誘起することによって、音響力を変化させる。これによって次に、ピン405の先端部415においては音響力に対する集束効果が発生し得る。例えば、音波はピン405の長手軸420を下方に移動して、先端部415から出て行き得る。ピン405の直径425に相当する波長を有する音波はピン405の内部に含まれており、その結果より集束された音響力が先端部415から発射される。ある場合には、音響力はピン420に半球状の先端部430または円錐状の先端部435を設けることによって、より大きな集束が達成される。ある場合には、音響力はピン405間の側方空間440に相当する波長を有する音波を提供することによって、さらなる集束が達成される。
【0033】
装置400のある実施形態では、1つまたは複数のトランスデューサ445が反射または屈折した音響インピーダンスを収集して分析に供する。例えば、微粒子の音速を微粒子の密度と掛け合せたものである音響インピーダンスを測定すれば、微粒子135が破壊されたか否かを調べることができる。同じく、微粒子135の音響インピーダンスを用いて、その状態、例えば栄養細菌細胞対活性細菌細胞、あるいは種類、例えば特定の種類の細菌細胞を調べることができる。
【0034】
わかり易くするために、上記装置の種々の態様を別個に説明し、図1〜4に示した。しかし、本発明の装置は、図1に関連して考察した、ピン、およびシステム180、開口部185、膜190、およびデバイス195などの他の構成要素などの、上記ナノ構造表面の全部または一部を含んでよい。一例として、さらに図1および4を参照すると、領域115はナノ構造表面120を通して接触力および音響力の一方または両方を印加することにより微粒子135を破壊するように構成されたピン140、405を含み得る。機械的力、電流力、電界力、および音響力のほか開口部185を通して送られる溶剤の他の組合せを提供する装置が、当業者であれば容易に想起されよう。同じく、種々の力の上記組合せを用いて微粒子135の破壊を達成することができるだけでなく、破壊工程と同時に、または別個の工程においてその(機械的、電気的等の)物理的特性を分析することもできる。
【0035】
本発明の別の実施形態は使用方法である。図5〜6は微粒子を破壊する方法の選択されたステージの例示的装置の断面図を示している。まず図5を参照すると、装置500内に微粒子505を設置した後の装置500を示している。装置500は上記で説明し、かつ図1〜4に示した実施形態のいずれも含み得る。図5に示したように、第1の機械的構造体510は第1の剛性面515を有しており、第1の剛性面515の領域520はナノ構造表面525を有している。図5にさらに示しているように、ある場合には、第1の機械的構造体510はその上にシリコン基板535を有する固定ステージ530を含んでいる。領域520はドライ・エッチングしてナノピン540を含んだナノ構造表面525を形成するシリコン基板535の一部を含んでいる。
【0036】
装置500は第1の機械的構造体510に対向する第2の剛性面550を有する第2の機械的構造体545をさらに含む。図5に示した実施形態では、第2の剛性面550はピン554を含んだ第2のナノ構造表面552も有する。図示した特定の実施形態では、微粒子505の溶解を促進するために、第2のナノ構造表面552のピン554はナノ構造表面525のピン540からずらされて1対の相互に入り込んだナノ構造表面525、552を形成している。第2の機械的構造体545はその上に第2の基板560を有する並進ステージ555も含み得、前記第2の基板560は第2の剛性面550を含む。並進ステージ555は第1の機械的構造体510に対向する第2の剛性面550の正確な動きを容易にするために、顕微鏡ステージまたはマイクロマニピュレータに使用されるようなばね荷重式デバイスを含み得る。
【0037】
図5に示したように、第2の剛性面550は微細粒子505がナノ構造表面525と第2の剛性面550との間に位置するようにナノ構造表面5252と協働する。ナノ構造表面525と第2の剛性面550との間の距離565を調整して、装置500を用いながら、このような表面525、550の間に微細粒子505を位置させたままにしておくのを容易にすることができる。ある場合には、距離565は微粒子505の平均径570の約2倍未満である。別の場合には、ナノ構造表面525および第2の剛性面550の表面を調整して、微粒子505をこのような表面525、550の間に保持することを容易にする。図5に示したように、ナノ構造表面525および第2の剛性面550は共に平坦な形状を有し得、互いに平行であり得る。他の場合には、ナノ構造表面525は凸形を有し、第2の剛性面550は凹形を有する。上記のように、他の組合せの形状の表面も本発明の範囲にある。
【0038】
ここで図6を参照すると、ナノ構造表面525および第2の剛性面550を用いて微細粒子505に力を加えた後の装置500を示している。図6に示した方法の特定の実施形態については、力は第1および第2の剛性面515、550が互いに向かって動いたときに発生する接触力である。例えば、第2の剛性面550はナノ構造表面525に向かって動かされて、例えばその周囲の膜またはコーティング605溶解することによって、微細粒子505を破壊するのに十分な接触力を発生する。
【0039】
他の種類の力を微粒子505に加えることができることは、上記考察からすぐに明白となろう。この力はナノ構造表面525および第2の剛性面550にわたって電圧を印加したときに発生する電界または電流を含み得る。さらに、この力は第1または第2の剛性面515、550の一方または両方に音響力を加えたときに発生する超音波を含み得る。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態は装置を製造する方法である。図7〜10は本発明の原理に従って装置700を製造する例示的な方法の断面図を示している。図1〜6に示した装置の上記実施形態のいずれも、本製造方法に含むことができる。
ここで図7を参照すると、第1の剛性面710を有する第1の機械的構造体705を形成した後に部分的に構成した装置700を示している。ある場合には、第1の機械的構造体705はシリコン・ウェハなどの半導体基板を含み、またある場合には、機械的剛性を増大させる表面材料、例えば、SiO2層、窒化シリコン、または電気めっきした金属層を含む。
【0041】
ここで図8を参照すると、第1の剛性面710の領域810内にナノ構造体805を形成した後に部分的に構成した装置700を示している。図示のように、ナノ構造体805は、この場合にはナノグラス825を形成するピン820を有する表面815を含み得る。ピン820は例えば第1の機械的構造体705の部分を除去するために、従来のリソグラフィ法またはドライ・エッチング法を用いて形成され得る。別の場合には、ナノ構造体805はフォトレジストを用いて表面815をパタン化し、前記パタンの上にニッケルなどの勤続を電気めっきし、かつ前記フォトレジストを除去することによって形成され得る。当業者にはナノ構造体805を形成する従来の他の方法が容易に明白となろう。
【0042】
図9は第2の剛性面910を有する第2の機械的構造体905を形成した後の部分的に構成した装置700を示している。ある場合には、第2の機械的構造体905はシリコン・ウェハなどの第2の半導体基板を含む。図示のように、ある場合には、第2の剛性面910は平坦であるが、他の場合には、第2の剛性面910の一部分をパタン化して、第1の剛性面710のナノ構造体805と同じか、または異なり得るナノ構造体が形成される。
【0043】
図10にさらに示したように、第2の機械的構造体905は第1の機械的構造体705と対向するように位置決めされる。第2の機械的構造体905は微細粒子1005がナノ構造体805と第2の剛性面910との間に位置可能であるようにナノ構造体805と協働可能である。例えば、位置決め工程には、ナノ構造体805と第2の剛性面910との間の距離1010が微粒子1005の平均径1015の約2倍未満になるように調整する工程を含む。
【0044】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者は本発明の範囲から逸脱せずに、本願明細書に記載の種々の変形物、代替物、および改変を作ることができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】微粒子に接触力を加える例示的装置を示す断面図である。
【図2】微粒子に電流を印加する第2の例示的装置を示す断面図である。
【図3】微粒子に電界を印加する第3の例示的装置を示す断面図である。
【図4】微粒子に音波を加える第4の例示的装置を示す断面図である。
【図5】微粒子を破壊するための方法において選択されたステージの例示的装置を示す断面図である。
【図6】微粒子を破壊するための方法において選択されたステージの例示的装置を示す断面図である。
【図7】本発明の原理に従って装置を製造する例示的方法を示す断面図である。
【図8】本発明の原理に従って装置を製造する例示的方法を示す断面図である。
【図9】本発明の原理に従って装置を製造する例示的方法を示す断面図である。
【図10】本発明の原理に従って装置を製造する例示的方法を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の剛性面を有し、前記第1の剛性面のある領域がナノ構造表面を有する第1の機械的構造体と、
第2の剛性面を有し、かつ微細粒子が前記ナノ構造表面と前記第2の剛性面との間に位置決め可能になるように前記第1の機械的構造体と対向し前記ナノ構造表面と協働可能な第2の機械的構造体とを備えた装置。
【請求項2】
前記ナノ構造表面は、前記微粒子の平均径の約1/2よりも小さいものに等しいピッチを有するように構成されたピンを含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の剛性面および前記第2の剛性面の一方または両方は、相互に対して可動であり、かつ前記ナノ構造表面を通して前記微粒子に接触力を加えるように協働可能である請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ナノ構造表面は導電性コアを有するピンを含み、前記導電性コアおよび前記第2の剛性面は電圧源に電気的に結合された請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ナノ構造表面は絶縁された導電性コアを有するピンを含み、前記導電性コアおよび前記第2の剛性面は電圧源に電気的に結合された請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の剛性面または前記第2の剛性面の少なくとも一方まで通される音波を生成するように構成されたデバイスをさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ナノ構造表面は前記微粒子の膜を破壊するように構成された直径を有する複数の刃を含む請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記微粒子が破壊されたときに前記微粒子から放出される物質を分析するように構成されたシステムをさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の剛性面または前記第2の剛性面の一方または両方は透過膜を形成する開口部をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の剛性面の前記領域は前記開口部を含む請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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