説明

微粒子の製造方法、微粒子製造装置、トナーの製造方法、トナー製造装置及びトナー

【課題】噴射造粒法による微粒子の製造方法において、安価な構成でありながら液滴の合一を防止し、シャープな粒度分布を有する微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】トナー組成液12は図3に示す液滴吐出手段11の液共通供給路21内に流入し液滴吐出ヘッド20の液柱共鳴液室22に供給される。そして、トナー組成液12が充填されている液柱共鳴液室22内には振動発生手段25によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波の腹となる領域に配置されているトナー吐出孔24からトナー液滴23が吐出される。気相内に吐出されたトナー液滴23は吐出方向に対して略直交する方向で気相内に供給される搬送気流31によって吐出方向から強制的に外れた方向に飛翔軌道を曲げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の製造方法、微粒子製造装置、トナーの製造方法、トナー製造装置及びトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
均一性を要する樹脂微粒子としては、電子写真用のトナー微粒子、液晶パネルのスペーサー粒子や、電子ペーパー用の着色微粒子、医薬品の薬剤担持体としての微粒子等が様々な用途で利用されている。均一な微粒子を製造する方法として、ソープフリー重合法など、液中で反応を誘起して均一な粒子径の樹脂微粒子を得る方法が知られている。このソープフリー重合法は、総じて小粒径トナーが得易い、粒径分布がシャープ、形状が球形に近い等の利点がある。しかし、その反面、通常は水である溶媒中でトナー粒子から脱溶剤を行うためその製造効率が悪い。また、重合過程に長時間を必要とし、さらに固化終了後溶媒とトナー粒子を分離し、その後洗浄乾燥を繰り返す必要があり、その間多くの時間と、多量の水、エネルギーを必要とするなどの課題がある。
【0003】
このような課題に対して、本願出願人は、特許文献1に記載されている噴射造粒によるトナー製造方法を提案した。具体的には、このトナー製造方法によれば、トナーの原料となるトナー組成液を液滴噴射する液滴噴射ユニットにて、複数のノズルが形成された薄膜を振動発生手段である電気機械変換素子によって振動させることで、上記薄膜が周期的に上下に振動する。これにより、薄膜で一部構成されている液室内の圧力が周期的に変化し、その周期的変化に対応してノズルから液滴がノズル下に広がる気相の空間へ吐出される。そして、吐出されたトナー液滴は気相の空間内に自然落下で同一の進行方向に進み、トナー液滴の列を形成する。気相に吐出されたトナー液滴はトナー組成物自体の液相と気相との表面張力差によって球体状に整形され、その後乾燥固化されトナー化される。
【0004】
しかし、上記特許文献1のトナー製造方法によれば、吐出されたトナー液滴が空気抵抗によって減速し、続けて直後に吐出されたトナー液滴が先に吐出されたトナー液滴に追い付きはじめる。その各トナー液滴の間隔が徐々に狭くなり、ついには合一する。合一したトナー液滴は体積が増加し、更にトナー液滴の粘性による空気抵抗を受け減速し、後続のトナー液滴が次々と合一し易くなる。そして、合一したトナー液滴と合一しなかったトナー液滴とが気相内に混在することなる。このため、その後乾燥固化され大きさの異なるトナーが製造されることになり、トナーの均一性が損なわれる。
【0005】
このようなトナー液滴の合一を解決するために、本願出願人は特許文献2に記載のトナー製造方法を新たに提案した。具体的には、トナー組成液が複数のノズルから連続して吐出され、各ノズルから吐出されたトナー液滴は列をなして気相の下流側の乾燥固化される領域まで搬送される。そして、吐出孔から乾燥固化される領域までの搬送路中に、乾燥固化される領域に向けて気流を発生させる。この気流に各列のトナー液滴を乗せることで、トナー液滴を合一する速度にならないようにしてトナー液滴の合一を防止している。
【0006】
しかし、上記特許文献2では、ポンプ等で圧力を加えて気相中にかなりの風量の気体を供給することで、搬送路中に気流を形成している。気流を気相内に供給する供給口の領域では供給される気体の圧力が加わって圧力が高くなり、供給口の領域から水平方向に拡がる周辺領域における気体の圧力は低くなる。このため、供給口の領域と、当該供給口の領域から水平方向に拡がる周辺領域との間に圧力差が生じる。これにより、供給口から気相内へ供給された気流は、圧力が低い領域、つまり供給口の領域から水平方向に拡がる周辺領域に引き付けられ、徐々に広がりはじめる。列をなして搬送されているトナー液滴の搬送方向も気流に乗って周囲に広がりはじめる。このため、隣接する列のトナー液滴同士が交差し、乾燥固化される領域に到達する前に合一してしまうという不具合があった。
【0007】
この不具合を解消するトナー製造方法として、特許文献3に記載されている噴射造粒によるトナー製造方法が知られている。上記特許文献3では、液滴吐出方向と同一の方向に流れる一次搬送気流と、一次搬送気流に対して120°未満の角度の方向に流れる二次搬送気流とを設けている。一次搬送気流によってトナー液滴の速度は吐出方向と同一の気流方向に速められるが、やはり徐々に速度が減速するために上述のように広がる現象が起きる。そのため、広がる現象が起きてトナー液滴の合一が生じる前に、全てのトナー液滴に一次搬送気流の気流方向に対して120°未満の角度の二次搬送気流を付与する。これにより、トナー液滴の搬送方向は強制的に曲げられ、各トナー液滴の飛翔軌道における距離が大きくなり、トナー液滴の合一を防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献3では、一次搬送気流及び二次搬送気流を形成するために搬送気流を発生する手段をそれぞれ設けるので、装置が高価になるという問題があった。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、安価な構成で、微粒子化成分含有組成液の液滴の合一を防止できる微粒子の製造方法及び微粒子製造装置を提供するとともに、安価な構成で、トナー組成液の液滴の合一を防止できるトナーの製造方法、トナー製造装置及びトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の微粒子化成分含有液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記吐出孔から上記微粒子化成分含有液を吐出して液滴化する液滴吐出工程と、上記微粒子化成分含有液の液滴を固化する固化工程と、を有する微粒子の製造方法であって、上記微粒子化成分含有液の液滴の吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を上記微粒子化成分含有液の液滴に付与することを特徴とする微粒子の製造方法である。
また、請求項2の発明は、少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の微粒子化成分含有液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記吐出孔から上記微粒子化成分含有液を吐出して液滴化する液滴吐出手段と、上記微粒子化成分含有液の液滴を固化する固化手段と、を有する微粒子製造装置であって、上記微粒子化成分含有液の液滴の吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を供給する搬送気流供給手段を有することを特徴とする微粒子製造装置である。なお、本発明において、微粒子化成分含有液とは、樹脂等の有機材料や無機材料などの微粒子化成分を溶媒中に溶解もしくは分散してなる溶液、また、微粒子化成分自身が溶融し、吐出可能な程度にまで粘度が低下した溶融体であってもよい。
更に、請求項3の発明は、少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記吐出孔から上記トナー組成液を吐出して液滴化する液滴吐出工程と、トナー液滴を固化する固化工程と、を有するトナーの製造方法であって、上記トナー液滴の吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を上記トナー液滴に付与することを特徴とするトナーの製造方法である。
また、請求項4の発明は、請求項3記載のトナーの製造方法において、上記搬送気流の速度が7[m/s]以上であることを特徴とするものである。
更に、請求項5の発明は、請求項4記載のトナーの製造方法において、上記搬送気流の速度が15[m/s]以上であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項3〜5のいずれかに記載のトナーの製造方法において、上記トナー液滴の吐出方向の初速度をV、トナー液滴直径をd、駆動振動周波数をfとすると、初速度Vは、V≧2d×fを満たす速度であることを特徴とするものである。
更に、請求項7の発明は、請求項6記載のトナーの製造方法において、上記トナー液滴の吐出方向の初速度をV、トナー液滴直径をd、駆動振動周波数をfとすると、初速度Vは、V>3d×fを満たす速度であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項6又は7に記載のトナーの製造方法において、上記駆動振動周波数は300[kHz]以上の高周波であることを特徴とするものである。
更に、請求項9の発明は、少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記吐出孔から上記トナー組成液を吐出して液滴化する液滴吐出手段と、トナー液滴を固化する固化手段と、を有するトナー製造装置であって、上記トナー液滴の吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を供給する搬送気流供給手段を有することを特徴とするトナー製造装置である。
また、請求項10の発明は、請求項3〜8のいずれかに記載のトナーの製造方法もしくは請求項9記載のトナー製造装置によって製造されたことを特徴とするトナーである。
更に、請求項11の発明は、請求項10記載のトナーにおいて、上記トナーの粒径が3[μm]〜10[μm]であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、安価な構成で、微粒子化成分含有液の液滴及びトナー組成液の液滴の合一を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るトナー製造装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】本実施形態におけるトナー液滴の搬送気流による搬送の様子を概略断面図である。
【図3】搬送気流の液滴吐出方向に対する方向例を示す概略図である。
【図4】図1の液滴吐出ユニットにおける液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
【図5】図1の液滴吐出ユニットの構成を示すA−A’線断面図である
【図6】N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図7】N=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図8】液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図9】実際の液滴吐出の様子を示す図である。
【図10】駆動周波数と液滴吐出速度周波数特性を示す特性図である。
【図11】各ノズルにおける印加電圧と吐出速度の関係を示す特性図である。
【図12】各ノズルにおける印加電圧と液滴直径の関係を示す特性図である。
【図13】トナー液滴の合一の様子を示す概略図である。
【図14】液滴同士の合一が発生した場合に捕集したトナーの粒径分布を示す図である。
【図15】液滴同士の合一が発生した場合に捕集したトナーの粒径分布を示す図である。
【図16】合一した粒子の様子を示す図である。
【図17】基本粒子が結着した状態の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した微粒子製造装置としてトナー製造装置の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係るトナー製造装置の全体構成を示す断面図である。図2は図1のトナー液滴の搬送気流による搬送の様子例を示す概略断面図である。図3は搬送気流の液滴吐出方向に対する方向例を示す概略図である。図4は図1の液滴吐出ユニットにおける液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。図5は図1の液滴吐出ユニットの構成を示すA−A’線断面図である。図1に示す本実施形態のトナー製造装置1は、主に、液滴吐出ユニット10及び乾燥捕集ユニット60を含んで構成されている。液滴吐出ユニット10には、吐出孔によって外部と連通する液噴射領域を有する液室であって後述する条件下のもとで液柱共鳴定在波が発生する液柱共鳴液室内のトナー組成液を液滴として吐出孔から水平方向へ噴射する液滴化手段である液滴吐出ヘッドを複数配列して構成されている液滴吐出手段11が設けられている。また、液滴吐出ユニット10は、トナー組成液12を収容する原料収容器13と、原料収容器13に収容されているトナー組成液12を液供給管14を通して液滴吐出手段11に供給し、更に液戻り管15を通って原料収容器13に戻すために液供給管14内のトナー組成液12を圧送する液循環ポンプ16とが連結されており、トナー組成液12を随時液滴吐出手段11に供給できる。液供給管14には圧力測定器17が、乾燥捕集ユニット60には圧力測定器61が設けられており、圧力測定器17、61によって液滴吐出手段11への送液圧力及び乾燥捕集ユニット内の圧力は管理される。このときに、P1>P2の関係である場合トナー組成液12が液滴吐出手段における液滴吐出ヘッドのノズル孔から染み出す恐れがあり、P1<P2の関係である場合には液滴吐出ヘッドに気体が入り、吐出が停止する恐れがあるため、P1≒P2があることが望ましい。
【0014】
更に、液滴吐出ヘッド20は、図4に示すように、液共通供給路21及び液柱共鳴液室22を含んで構成されている。液柱共鳴液室22は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路21と連通されている。また、液柱共鳴液室21は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面にトナー液滴23を吐出するトナー吐出孔24と、トナー吐出孔24と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段25とを有している。なお、振動発生手段25には、図示していない高周波電源が接続されている。
【0015】
また、図1に示す乾燥捕集ユニット60は、チャンバー62、トナー捕集部63及びトナー貯留部64を含んで構成されている。チャンバー62内では、図示していない搬送気流発生手段によって発生する下降気流の搬送気流31が形成されている。この搬送気流31は液滴吐出手段11からの液滴吐出方向に対して略直交する方向に向いている。図3に示すように、搬送気流31は液滴吐出手段11からの液滴吐出方向に対して略直交する方向であれば、液滴飛翔速度が上がって液滴の合一を防ぐことができる。液滴吐出ユニット10の液滴吐出手段11のトナー吐出孔から水平方向に噴射されたトナー液滴は、重力よってのみではなく、下降気流の搬送気流31によっても下方に向けて搬送されるため、搬送気流の速度成分によって搬送速度が速くなり、噴射されたトナー液滴が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。また、液滴飛翔方向が変わることで各液滴の間隔が広がる。これらにより、噴射されたトナー液滴が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。よって、トナー液滴を連続的に噴射したときに前に噴射されたトナー液滴が空気抵抗によって減速し、後に噴射されたトナー液滴が前に噴射されたトナー液滴に追い付くことでトナー液滴同士が合一して一体となり、トナー液滴の粒径が大きくなることを防止できる。搬送気流発生手段として、上流部分に送風機を設けて加圧する方法と、トナー捕集部63より吸引して減圧する方法のいずれを採用することもできる。また、トナー捕集部63には、鉛直方向に平行な軸周りに回転するような回転気流を発生させる回転気流発生装置(図示せず)が配置されている。更に、トナー捕集部63によって捕集したトナー粒子はチャンバー62と連通するトナー捕集チューブ(図示せず)を通りトナー貯留部64に貯留される。
【0016】
これによって、液滴吐出手段11から吐出された直後の液体の状態から、徐々にトナー組成液中に含まれる揮発溶剤が揮発することで乾燥が進行する。これにより、液滴は液体から固体に変化する。このように固体に変化した状態では、トナー捕集手部63でトナー粉体として捕集することができる。捕集したトナー粉体はその後、トナー貯留部64に格納することができる。なお、トナー貯留部64に格納されたトナーは必要に応じて更に別工程で乾燥される。
【0017】
次に、本実施の形態のトナー製造装置におけるトナー製造工程について概説する。
図1に示す原料収容器13に収容されているトナー組成液12は、当該トナー組成液12を循環させるための液循環ポンプ16によって液供給管14を通って、図5に示す液滴吐出手段11の液共通供給路21内に流入し、図4に示す液滴吐出ヘッド20の液柱共鳴液室22に供給される。そして、トナー組成液12が充填されている液柱共鳴液室22内には、振動発生手段25によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されているトナー吐出孔24からトナー液滴23が吐出される。この液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味するものである。好ましくは、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、より好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である。定在波の腹となる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。なお、液共通供給路21を通過したトナー組成液12は液戻り管15を流れて原料収容器13に戻される。トナー液滴23の吐出によって液柱共鳴液室22内のトナー組成液12の量が減少すると、液柱共鳴液室22内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路21から供給されるトナー組成液12の流量が増加し、液柱共鳴液室22内にトナー組成液12が補充される。そして、液柱共鳴液室22内にトナー組成液12が補充されると、液共通供給路21を通過するトナー組成液12の流量が元に戻り、液供給管14及び液戻り管15には装置内を循環するトナー組成液12の流れが再び形成された状態となる。
【0018】
液滴吐出ヘッド11における液柱共鳴液室22は、金属やセラミックス、シリコンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図4に示すように、液柱共鳴液室22の長手方向の両端の壁面間の長さLは、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定される。また、図5に示す液柱共鳴液室22の幅Wは、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、液柱共鳴液室22の長さLの2分の1より小さいことが望ましい。更に、液柱共鳴液室22は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴吐出ユニット10に対して複数配置されているほうが好ましい。その範囲に限定はないが、100〜2000個の液柱共鳴液室22が備えられた1つの液滴吐出ユニットであれば操作性と生産性が両立でき、もっとも好ましい。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路21から連通接続されており、液共通供給路21には複数の液柱共鳴液室22と連通している。
【0019】
また、液滴吐出ヘッド20における振動発生手段25は所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板に貼りあわせた形態が望ましい。弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。圧電体は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などが挙げられる。更に、振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが望ましい。また、上記の1つの材質のブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置にあわせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が望ましい。
【0020】
更に、トナー吐出孔24の開口部の直径は、1[μm]〜40[μm]の範囲であることが望ましい。1[μm]より小さいと、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合があり、またトナーの構成成分として顔料などの固形微粒子が含有された構成の場合トナー吐出孔24において閉塞を頻繁に発生して生産性が低下する恐れがある。また、40[μm]より大きい場合、トナー液滴の直径が大きく、これを乾燥固化させて、所望のトナー粒子径3〜6μmを得る場合、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要がある場合があり、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となってしまい、不都合となる。また、図4からわかるように、トナー吐出孔24を液柱共鳴液室22内の幅方向に設ける構成を採用することは、トナー吐出孔24の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなるために好ましい。また、トナー吐出孔24の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが望ましい。
【0021】
次に、本発明のトナー製造装置における液滴吐出ユニットによる液滴形成のメカニズムについて説明する。
先ず、図4の液滴吐出ヘッド20内の液柱共鳴液室22において生じる液柱共鳴現象の原理について説明すると、液柱共鳴液室内のトナー組成液の音速をcとし、振動発生手段25から媒質であるトナー組成液に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・(式1)
の関係にある。
【0022】
また、図4の液柱共鳴液室22において固定端側のフレームの端部から液共通供給路21側の端部までの長さをLとし、更に液共通供給路21側のフレームの端部の高さh1(=約80[μm])は連通口の高さh2(=約40[μm])の約2倍あり当該端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式2で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(但し、Nは偶数)
【0023】
更に、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも上記式2が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式2のNが奇数で表現される。
【0024】
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式1と上記式2より、
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
と導かれる。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0025】
図6にN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、かつ図7にN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。本来は疎密波(縦波)であるが、図6及び図7のように表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図6の(a)からわかるように、速度分布の場合閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、トナー吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図6及び図7のような形態の共鳴定在波を生じるが、トナー吐出孔数、トナー吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、上記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。例えば、液体の音速cが1,200[m/s]、液柱共鳴液室の長さLが1.85[mm]を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、上記式(2)より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200[m/s]、液柱共鳴液室の長さLが1.85[mm]と、上記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、上記式(2)より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構成の液柱共鳴液室においても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0026】
図1及び図4に示す本実施の形態の液滴吐出ユニットの液滴吐出ヘッドにおける液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、トナー吐出孔の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図6の(b)及び図7の(a)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そしてトナー吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい構成である。
【0027】
また、トナー吐出孔の開口数、開口配置位置、トナー吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えばトナー吐出孔の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在するトナー吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、またトナー吐出孔の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近いトナー吐出孔までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴をトナー吐出孔から吐出することが可能である。
【0028】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
【0029】
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部に最も近いトナー吐出孔までの距離Leの比がLe/L>0.6であることが好ましい。
【0030】
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図4の液柱共鳴液室22において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室22の一部に配置されたトナー吐出孔24において連続的に液滴吐出が発生するのである。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置にトナー吐出孔24を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点で好ましい。また、トナー吐出孔24は1つの液柱共鳴液室22に1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましい。具体的には、2〜100個の間であることが好ましい。100個を超えた場合、100個のトナー吐出孔24から所望のトナー液滴を形成させようとすると、振動発生手段25に与える電圧を高く設定する必要が生じ、振動発生手段25としての圧電体の挙動が不安定となる。また、複数のトナー吐出孔24を開孔する場合、トナー吐出孔間のピッチは20[μm]以上、液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましい。トナー吐出孔間のピッチが20[μm]より大きい場合、隣あうトナー吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながる。
【0031】
次に、液滴吐出ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について当該様子を示す図8を用いて説明する。なお、同図において、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。更に、同図において、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路21と液柱共鳴液室22とが連通する開口の高さ(図4に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図3に示す高さh1)が約2倍以上であるため、液柱共鳴液室22はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0032】
図8の(a)は液滴吐出時の液柱共鳴液室22内の圧力波形と速度波形を示している。また、図8の(b)は液滴吐出直後の液引き込みを行った時の液柱共鳴液室22内の圧力波形と速度波形を示している。これらの同図の(a),(b)に示すように、液柱共鳴液室22におけるトナー吐出孔24が設けられている流路内での圧力は極大となっている。液柱共鳴液室18内のトナー組成液の流れは、液共通供給路側へ流れる方向となっており、速度は小さい。その後、同図の(c)に示すように、トナー吐出孔24付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行する。液柱共鳴流路22内のトナー組成液の流れは、同図の(a),(b)と液共通供給路側へ流れる方向で変わらないが、速度は極大となる。
【0033】
そして、図8の(d)に示すように、トナー吐出孔24付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室22へのトナー組成液12の充填が始まる。その後、同図の(e)に示すように、トナー吐出孔24付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液12の充填が終了する。そして、再び、同図の(a)に示すように、液柱共鳴液室22の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、トナー吐出孔24からトナー液滴23が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域にトナー吐出孔24が配置されていることから、当該腹の周期に応じてトナー液滴23がトナー吐出孔24から連続的に吐出される。
【0034】
次に、実際に液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成の一例について説明する。この一例は、図4において液柱共鳴液室22の長手方向の両端間の長さLが1.85[mm]、N=2の共鳴モードであって、第一から第四のトナー吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置にトナー吐出孔を配置し、駆動周波数を340[kHz]のサイン波で行った吐出をレーザーシャドウグラフィ法にて撮影した様子を図9に示す。同図からわかるように、非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現している。また、図10は駆動周波数290[kHz]〜395[kHz]の同一振幅サイン波にて駆動した際の液滴速度周波数特性を示す特性図である。同図からわかるように、第一〜第四のノズルにおいて駆動周波数が340[kHz]付近では各ノズルからの吐出速度が均一となって、かつ最大吐出速度となっている。この特性結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである340[kHz]において、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。また、図10の特性結果から、第一モードである130[kHz]においての液滴吐出速度ピークと、第二モードである340[kHz]においての液滴吐出速度ピークとの間では液滴は吐出しないという液柱共鳴の特徴的な液柱共鳴定在波の周波数特性が液柱共鳴液室内で発生していることがわかる。
【0035】
また、図11は各ノズルにおける印加電圧と吐出速度の関係を示す特性図であり、図12は各ノズルにおける印加電圧と液滴直径の関係を示す特性図である。両図からわかるように、印加電圧に対して吐出速度も液滴直径も単調増加の傾向にあった。よって、吐出速度及び液滴直径は印加電圧に依存するため、印加電圧を調整することにより、所望の吐出速度、あるいは所望のトナー粒子の径に応じた液滴直径を調整することができる。
【0036】
液滴吐出手段11からトナー液滴を連続的に吐出したときに、図13に示すように、ノズル孔24から吐出したトナー液滴同士が合一して一体となり、粒径の大きい合一液滴25が生じることがある。このような合一液滴26は、乾燥後の粒径も大きくなり粒度分布を広くする原因になる。液滴の合一は、前に吐出されたトナー液滴23が乾燥する前に、空気の粘性抵抗によって減速し、後に吐出されたトナー液滴23に追い付いて液滴同士が接触することで主に発生する。このように液滴同士の合一が発生した場合に捕集したトナーの粒径分布を図14に示す。また、合一した液滴は空気抵抗が増し、更に別の液滴と合一を引き起こすようになり、数個の液滴が合一する場合もある。これが乾燥すると得られるトナーの粒径分布はさらに広くなる。図15中の基本粒径と示したピークを構成する乾燥粒子は合一しなかったトナー液滴がそのまま乾燥固化したものである。2倍と記載されたピークを形成する乾燥粒子はトナー液滴23が吐出後に合一した後に乾燥固化してえられたものである。同様に3倍、4倍、それ以上の合一が進行していることが粒径分布測定結果から推測することができる。このような粒径分布測定はフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)を用い解析を行うことができる。図16にはFPIA-3000で撮影された合一した粒子の写真を示す。図17には基本粒子が結着した状態を示している。基本粒子同士の結着も機械的強度を与えても粒子間の結着がほぐれ無いため大きな粒子と振舞うことになり、好ましくない。このような粒子はある程度粒子が乾燥した後に粒子同士が結合した結果得られると考えられる。このような粒子の発生はある程度乾燥が進行した粒子が配管壁面への付着し、やがて別の乾燥の進んでいない粒子が壁面に付着した粒子と結着した後に乾燥が進行し、配管から剥がれて回収されると考えられる。このような粒子の発生を防止するためには、乾燥を早く確実に実施することや、気流制御によって配管内への粒子付着を抑えることで達成できる。
【0037】
粒度分布としては体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)の比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。Dv/Dn値は最も小さいもので1.0であり、これはすべての粒径が同一であることを示している。Dv/Dnが大きいほど粒径分布が広いことを示す。一般的な粉砕トナーはDv/Dn=1.15〜1.25程度である。また重合トナーはDv/Dn=1.10〜1.15程度である。本発明のトナーはDv/Dn=1.15以下とすることで印刷品質に効果が確認されており、より好ましくはDv/Dn=1.10以下である。
【0038】
電子写真システムにおいては粒径分布が狭いことが現像工程、転写工程、定着工程に求められるため、このような粒径分布の広がりは望ましくなく、安定的に高精細な画質を得るためにはDv/Dn=1.15以下がのぞましく、より高精細な画像を得るためにはDv/Dn=1.10以下である。
【0039】
本実施形態では、液滴同士の合一を防止するために、図1の液滴吐出手段11は、チャンバー62と搬送気流入口の間に、液滴吐出方向が搬送気流31の方向と略直交するように設置されている。発明者らは、吐出直後の液滴について、レーザーシャドウグラフィ法を用いた観察によって、これまでは特に考慮されてこなかった、吐出孔より2[mm]程度までの吐出直後の領域においても液滴同士の合一が生じていることを見出し、液滴吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を吐出直後の液滴に対し付与することにより、吐出直後の液滴の合一を大幅に減少させることを確認した。つまり、液滴吐出手段11のトナー吐出孔からほぼ水平方向に吐出されたトナー液滴は、液滴吐出方向と略直交する方向の搬送気流31により、吐出直後にその飛翔方向が当該搬送気流方向に変化させられると同時に、液滴の飛翔速度が維持もしくは加速されるため、トナー液滴同士が接触して合一する確率をこれまで以上に減少させ、極めてシャープな粒度分布を有するトナーを得ることが可能となる。
【0040】
搬送気流の速度は、トナー液滴の進行方向を変化させるのに十分な速度を有する必要があり、7[m/s]以上であることが好ましく、より好ましくは15[m/s]以上である。7[m/s]より小さいとトナー液滴の進行方向を変化させる前に前後のトナー液滴が合一する場合があり、乾燥したトナー粒子の粒度分布が広くなる恐れがある。
【0041】
トナー液滴を連続して吐出する際のトナー液滴の初速度Vは、吐出直後のトナー液滴径をd、駆動周波数をfとしたとき、V≧2d×fであることが好ましく、より好ましくはV>3d×fである。Vが2d×fより小さいと前後のトナー液滴の間隔が小さくなりトナー液滴の進行方向を変化させる前に合一し易い。トナー液滴直径及び吐出速度は、ノズル孔の径、駆動周波数f及び印加電圧などで調整可能である。
【0042】
図1では液滴吐出手段11はほぼ水平方向に向かってトナー液滴を吐出しているが、必ずしもその必要はなく、吐出させる角度は適宜選択できる。気流発生手段として、チャンバー62上部の搬送気流導入口65に送風機を設けて加圧する方法と、搬送気流排出口66より吸引する方法のいずれを採用することもできる。トナー捕集手段63としては公知の捕集装置を用いることができ、サイクロン捕集機やバックフィルター等を用いることができる。搬送気流31はトナー液滴同士の合一を抑制することができれば、特に気流の状態として限定されることは無く層流や旋回流や乱流であっても構わない。搬送気流31を構成する気体の種類は特に限定は無く、空気であっても窒素等の不燃性気体を用いても良い。前述のようにトナー液滴が乾燥することで合一しなくなる性質があるために、トナー液滴の乾燥を促進できる条件を持つことが好ましい。このことから、トナー組成液に含まれる溶剤の蒸気を含まないことが望ましい。また、搬送気流31の温度は適宜調整可能であり、生産時において変動の無いことが望ましい。またチャンバー62内に搬送気流31の気流状態を変えるような手段をとっても構わない。搬送気流31はトナー液滴同士の合一を防止するだけでなく、チャンバー62に付着することを防止することに用いても良い。
【0043】
図1で示された乾燥捕集手段によって得られたトナー粒子に含まれる残留溶剤量が多い場合はこれを低減するために必要に応じて、二次乾燥が行われる。二次乾燥としては流動床乾燥や真空乾燥のような一般的な公知の乾燥手段を用いることができる。有機溶剤がトナー中に残留すると耐熱保存性や定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動するだけでなく。加熱による定着時において有機溶剤が揮発するため、使用者及び周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施する。
【0044】
次に、微粒子の一例として本発明に係るトナーについて説明する。
本実施形態に係るトナーは上述した本実施形態に係るトナー製造装置のように、本実施形態を適用したトナーの製造方法により製造されたトナーであり、これによ、粒度分布が単分散なものが得られる。
【0045】
具体的には、上記トナーの粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00〜1.15の範囲内にあるのが好ましい。より好ましくは1.00〜1.05である。また、体積平均粒径としては、1〜20[μm]の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは3〜10[μm]である。
【0046】
次に、本実施形態で使用できるトナー材料について説明する。先ず、前述したようにトナー組成物を溶媒に分散、溶解させたトナー組成液について説明する。
トナー材料としては、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを上記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。
【0047】
上記トナー用材料としては、少なくとも樹脂、着色剤およびワックスを含有し、必要に応じて、帯電調整剤、添加剤およびその他の成分を含有する。
【0048】
上記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
上記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
【0049】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0050】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1[mgKOH/g]〜100[mgKOH/g]であることが好ましく、0.1[mgKOH/g]〜70[mgKOH/g]であることがより好ましく、0.1[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることが最も好ましい。
【0051】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100[%]となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0052】
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1[mgKOH/g]〜100[mgKOH/g]であることが好ましく、0.1[mgKOH/g]〜70[mgKOH/g]であることがより好ましく、0.1[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることが最も好ましい。
【0053】
本実施形態において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0054】
本実施形態に係るトナーに使用できる結着樹脂としては、上記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0055】
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50[mgKOH/g]を有する樹脂を60[質量%]以上有するものが好ましい。
【0056】
本実施形態において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0[g]を精秤し、重合体成分の重さをW[g]とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300[ml]のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150[ml]を加え溶解する。
(3)0.1[mol/l]のKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS[ml]とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB[ml]とし、以下の式で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価[mgKOH/g]=[(S−B)×f×5.61]/W
【0057】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80[℃]であるのが好ましく、40〜75[℃]であるのがより好ましい。Tgが35[℃]より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80[℃]を超えると、定着性が低下することがある。
【0058】
本実施形態で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
【0059】
磁性体として具体的に例示すると、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
【0060】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込ま
れていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0061】
上記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0062】
上記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2[μm]が好ましく、0.1〜0.5[μm]がより好ましい。上記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0063】
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200[emu/g]、残留磁化2〜20[emu/g]のものが好ましい。上記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0064】
上記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
【0065】
上記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15[質量%]が好ましく、3〜10[質量%]がより好ましい。
【0066】
本発明に係るトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
上記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
【0068】
上記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
【0069】
また、上記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30[mgKOH/g]以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20[mgKOH/g]以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30[mgKOH/g]を超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0070】
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
【0071】
上記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10[質量%]の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1[質量%]未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10[質量%]より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
【0072】
上記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0073】
上記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0074】
本実施形態で用いるトナー組成液は、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有する。ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0075】
上記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0076】
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0077】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0078】
上記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140[℃]であることが好ましく、70〜120[℃]であることがより好ましい。70[℃]未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140[℃]を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0079】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10[℃]〜100[℃]のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
【0080】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100[℃]の場合に、機能分離が効果的に発現する。10[℃]未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100[℃]を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120[℃]であることが好ましく、70〜100[℃]であることがより好ましい。
【0081】
上記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0082】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110[℃]の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110[℃]の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
【0083】
上記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0084】
本実施形態ではDSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0085】
上記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本実施形態に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10[℃/min]で、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0086】
本実施形態に係るトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。この流動性向上剤は、噴射乾燥して得られたトナー粒子表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0087】
上記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0088】
上記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2[μm]であることが好ましく、0.002〜0.2[μm]であることがより好ましい。
【0089】
上記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0090】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
【0091】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80[%]の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0092】
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0093】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100[nm]になるものが好ましく、5〜50[nm]になるものがより好ましい。
【0094】
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30[m/g]以上が好ましく、60〜400[m/g]がより好ましい。表面処理された微粉体としては、20[m/g]以上が好ましく、40〜300[m/g]がより好ましい。
【0095】
これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
【0096】
本実施形態に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体、キャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性、電気特性、物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0097】
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0098】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
【0099】
得られたトナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
【0100】
上記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。上記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。上記無機微粒子の一次粒子径は、5[μm]〜2[μm]であることが好ましく、5[μm]〜500[μm]であることがより好ましい。
【0101】
上記BET法による比表面積は、20〜500[m/g]であることが好ましい。上記無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5[質量%]であることが好ましく、0.01〜2.0[質量%]であることがより好ましい。
【0102】
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0103】
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。上記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
【0104】
上記無機微粒子の一次粒子径としては、5[μm]〜2[μm]であることが好ましく、5[μm]〜500[μm]であることがより好ましい。また、BET法による比表面積としては、20〜500[m/g]であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合としては、トナーの0.01〜5[重量%]であることが好ましく、0.01〜2.0[重量%]であることがより好ましい。
【0105】
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1[μm]のものが好ましい。
【0106】
次に、実施形態で用いた溶解乃至分散液の処方を示す。噴射条件は前述の通りである。
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(RegaL400;Cabot社製)17[質量部]、顔料分散剤3[質量部]を、酢酸エチル80[質量部]に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。該顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ビーズミル(アシザワファインテック社製LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3[mm])を用いて強力なせん断力により細かく分散し、5[μm]以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0107】
−ワックス分散液の調整−
次にワックス分散液を調整した。
カルナバワックス18[質量部]、ワックス分散剤2[質量部]を、酢酸エチル80[質量部]に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80[℃]まで昇温しカルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ最大径が3[μm]以下となるようワックス粒子を析出させた。ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。得られた分散液を、更にビーズミル(アシザワファインテック社製LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3[mm])を用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が1[μm]以下なるよう調整した。
【0108】
−溶解乃至分散液の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂、上記着色剤分散液及び上記ワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100[質量部]、上記着色剤分散液30[質量部]、ワックス分散液30[質量部]を、酢酸エチル840[質量部]を、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。
【0109】
−トナー製造装置−
図1に示す構成のトナー製造装置1を用いて、図4に示す構成の液滴吐出ヘッド20を用いてトナーの製造を行った。液滴吐出ヘッド20には液柱共鳴タイプ吐出手段を用いて液滴の吐出を行った。液柱共鳴液室22の長手方向の両端間の長さLが1.85[mm]、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置したものを用いた。駆動信号発生源はNF社ファンクションジェネレーターWF1973を用い、ポリエチレン被覆のリード線で振動発生手段に接続した。図1のトナーの乾燥捕集部のチャンバー62は内径φ300[mm]、高さ2000[mm]の円筒形で垂直に固定されており、上端部と下端部は絞られている。上端部には液滴吐出手段11と搬送気流31の流路が設置されている。下端部にはトナー捕集部63が設置している。搬送気流31の流路は、幅80[mm]、高さ30[mm]の長方形断面の長さ200[mm]とし、気体流入側から50[mm]の位置に液滴吐出手段11を水平方向に設置した。このときの液滴吐出方向と搬送気流の方向とは略直交する関係にあるとする。
【0110】
(実施例1)
前述のトナー製造装置を用いて、作成したトナー組成液を吐出させ、図1のチャンバー62内で乾燥固化したトナー粒子をトナー捕集部63で捕集した。トナー貯蔵部64よりトナーを取り出し、実施例1のトナーを得た。なお、このときの製造条件は、入力信号は印加電圧サイン波ピーク値12.0[V]、周波数340[kHz]であり、搬送気流速度は32[m/s]であった。液滴の吐出直後の様子をレーザーシャドウグラフィ法により撮影した。撮影した画像から液滴径と吐出速度を算出した結果、液滴径は11.8[μm]、吐出速度は平均20[m/s]であった。このトナーの粒径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)で下記に示す測定条件にて測定した。これを3回繰り返したところ、体積平均粒径(Dv)の平均は5.6[μm]、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3[μm]であり、Dv/Dnの平均は1.06であった。フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。トナー、トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を用いて測定することができる。
【0111】
測定は、フィルタを通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3[cm]の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60[μm]以上159.21[μm]未満)の粒子数が20個以下の水10[ml]中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5[mg]加え、超音波分散器STM社製UH−50で20[kHz],50[W/10cm]の条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4000〜8000[個/cm](測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60[μm]以上159.21[μm]未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
【0112】
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200[μm])の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
【0113】
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、0.06−400[μm]の範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60[μm]以上159.21[μm]未満の範囲で粒子の測定を行う。
【0114】
(実施例2)
搬送気流の速度が60[m/s]であること以外は上記実施例1と同様の操作でトナーを製造した。得られたトナーを上記実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度および粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8[μm]、吐出速度は平均20[m/s]であった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.6[μm]、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2[μm]であり、Dv/Dnの平均は1.08あった。
【0115】
(実施例3)
搬送気流の速度が15[m/s]であること以外は実施例1と同様の操作でトナーを製造した。得られたトナーを実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度および粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8[μm]、吐出速度は平均20[m/s]であった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.8[μm]、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3[μm]であり、Dv/Dnの平均は1.09であった。
【0116】
(実施例4)
搬送気流の速度が9[m/s]であること以外は実施例1と同様の操作でトナーを製造した。得られたトナーを実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度および粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8[μm]、吐出速度は平均20[m/s]であった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.9μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3μmであり、Dv/Dnの平均は1.11であった。
【0117】
(実施例5)
入力信号は印加電圧サイン波ピーク値10.0[V]であること以外は実施例1と同様の操作でトナーを製造した。得られたトナーを実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度および粒径分布を測定したところ、液滴径は11.0[μm]、吐出速度は平均14[m/s]であった。体積平均粒径(Dv)の平均は5.7[μm]、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2[μm]であり、Dv/Dnの平均は1.10であった。
【0118】
(実施例6)
入力信号は印加電圧サイン波ピーク値8.0[V]であること以外は実施例1と同様の操作でトナーを製造した。得られたトナーを実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度および粒径分布を測定したところ、液滴径は10.8[μm]、吐出速度は平均9.5[m/s]であった。体積平均粒径(Dv)の平均は6.2[μm]、個数平均粒径(Dn)の平均は5.4[μm]であり、Dv/Dnの平均は1.15であった。
【0119】
(比較例1)
比較例として、前述のトナー製造装置において、液滴吐出方向が鉛直下方向となるように液滴吐出手段11を設置し、搬送気流を用いないこと以外は、実施例1と同様の操作でトナーを製造した。得られたトナーを実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8[μm]、吐出速度は平均20[m/s]であった。体積平均粒径(Dv)の平均は8.8[μm]、個数平均粒径(Dn)の平均は6.2[μm]であり、Dv/Dnの平均は1.42であった。液滴が合一し易くなり粒度分布が広くなった。
【0120】
(比較例2)
比較例として、前述のトナー製造装置の液滴吐出手段11にシュラウドカバー及び気流発生手段を設置し、液滴吐出方向と同一方向の搬送気流を付与させ、液滴吐出方向が鉛直下方向となるように液滴吐出手段11を設置し、トナーを製造した。このときの搬送気流の速度は32[m/s]とし、それ以外は実施例1と同様の操作でトナーを製造した。得られたトナーを実施例1と同様の操作で液滴径、吐出速度及び粒径分布を測定したところ、液滴径は11.8[μm]、吐出速度は平均20[m/s]であった。体積平均粒径(Dv)の平均は6.6[μm]、個数平均粒径(Dn)の平均は5.4[μm]であり、Dv/Dnの平均は1.22であった。液滴が合一し易くなり粒度分布が広くなった。
【0121】
以上説明したように、実施形態によれば、図1に示すように、原料収容器13に収容されているトナー組成液12は、当該トナー組成液12を循環させるための液循環ポンプ16によって液供給管14を通って液滴吐出手段11に供給される。トナー組成液12は図3に示す液滴吐出手段11の液共通供給路21内に流入し液滴吐出ヘッド20の液柱共鳴液室22に供給される。そして、トナー組成液12が充填されている液柱共鳴液室22内には振動発生手段25によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波の腹となる領域に配置されているトナー吐出孔24からトナー液滴23が吐出される。図2に示すように、気相内に吐出されたトナー液滴23は、気相内を流れる搬送気流によって吐出方向から強制的に外れた方向に曲げられる。この搬送気流31は吐出方向の成分に対して略直交する方向の搬送気流である。このため、トナー液滴の速度が上がり、吐出方向が強制的に曲げられることで、トナー液滴の飛翔軌道における各トナー液滴間の距離が広がる。これにより、合一することなく固化され、捕集できる。
【符号の説明】
【0122】
1 トナー製造装置
10 液滴吐出ユニット
11 液滴吐出手段
12 トナー組成液
13 原料収容器
14 液供給管
15 液戻り管
16 液循環ポンプ
17 圧力測定器
20 液滴吐出ヘッド
21 液共通供給路
22 液柱共鳴液室
23 トナー液滴
24 トナー吐出孔
25 振動発生手段
26 合一液滴
31 搬送気流
60 乾燥捕集ユニット
61 圧力測定器
62 チャンバー
63 トナー捕集部
64 トナー貯留部
65 搬送気流導入口
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【特許文献1】特開2007−199463号公報
【特許文献2】特開2008−286947号公報
【特許文献3】特開2011−008229号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の微粒子化成分含有液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記吐出孔から上記微粒子化成分含有液を吐出して液滴化する液滴吐出工程と、上記微粒子化成分含有液の液滴を固化する固化工程と、を有する微粒子の製造方法であって、
上記微粒子化成分含有液の液滴の吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を上記微粒子化成分含有液の液滴に付与することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の微粒子化成分含有液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記吐出孔から上記微粒子化成分含有液を吐出して液滴化する液滴吐出手段と、上記微粒子化成分含有液の液滴を固化する固化手段と、を有する微粒子製造装置であって、
上記微粒子化成分含有液の液滴の吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を供給する搬送気流供給手段を有することを特徴とする微粒子製造装置。
【請求項3】
少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記吐出孔から上記トナー組成液を吐出して液滴化する液滴吐出工程と、トナー液滴を固化する固化工程と、を有するトナーの製造方法であって、
上記トナー液滴の吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を上記トナー液滴に付与することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のトナーの製造方法において、
上記搬送気流の速度が7[m/s]以上であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のトナーの製造方法において、
上記搬送気流の速度が15[m/s]以上であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載のトナーの製造方法において、
上記トナー液滴の吐出方向の初速度をV、トナー液滴直径をd、駆動振動周波数をfとすると、初速度Vは、V≧2d×fを満たす速度であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のトナーの製造方法において、
上記トナー液滴の吐出方向の初速度をV、トナー液滴直径をd、駆動振動周波数をfとすると、初速度Vは、V>3d×fを満たす速度であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のトナーの製造方法において、
上記駆動振動周波数は300[kHz]以上の高周波であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項9】
少なくとも1つの吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記吐出孔から上記トナー組成液を吐出して液滴化する液滴吐出手段と、トナー液滴を固化する固化手段と、を有するトナー製造装置であって、
上記トナー液滴の吐出方向に対して略直交する方向の搬送気流を供給する搬送気流供給手段を有することを特徴とするトナー製造装置。
【請求項10】
請求項3〜8のいずれかに記載のトナーの製造方法もしくは請求項9記載のトナー製造装置によって製造されたことを特徴とするトナー。
【請求項11】
請求項10記載のトナーにおいて、
上記トナーの粒径が3[μm]〜10[μm]であることを特徴とするトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図9】
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【図16】
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【図17】
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