説明

微粒子の製造方法及びトナーの製造方法

【課題】噴霧後の液滴同士の合着を防止し、サテライトをなくすことによって、より狭い粒径分布を有する、微粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造方法を提供する。
【解決手段】溶媒に、少なくとも結着樹脂及び顔料を含むトナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、該溶解乃至分散液を供給する流路の一部に設けた複数の孔を有する液滴吐出手段から液滴を吐出し、該液滴を気体中にて固化させることにより、トナー粒子を形成させるトナーの製造方法において、前記液吐出手段の液吐出面の下流部近傍に配置された絞り部により、吐出後の液滴を乗せた気流の通路断面積を、液滴吐出直後に維持又は拡大させて液滴流速を一時減速した後、前記通路断面積を縮小することにより前記液滴を再加速させる静電荷像現像用トナーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の製造方法、及び電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するために使用される静電荷像現像用トナーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真記録方法に基づく複写機、プリンター、ファックス及びそれらの複合機において使用される静電荷像現像用トナーは、粉砕法のみによって製造されていたが、近年では重合法と呼ばれる、水系媒体中でトナー粒子を形成する製造法が広く採用され、粉砕法を凌駕する勢いである。重合法により製造されたトナーは「重合トナー」、または国によっては「ケミカルトナー」と呼ばれている。
重合法は、トナー粒子形成時あるいはトナー粒子形成過程においてトナー材料の重合反応を伴うことから、このように称される。重合法においては各種重合方法が実用化されており、重合法としては、懸濁重合、乳化凝集、ポリマー懸濁(ポリマー凝集)及びエステル伸長反応等がある。
【0003】
重合法で得られたトナーは総じて、粉砕法で得られたトナーに比べ、小粒径が得易い、粒径分布が狭い、形状が球形に近いといった特徴を有するため、重合法で得られたトナーを用いることで、電子写真方式での画像は高画質を得やすいという利点がある。しかしその反面、重合過程に長時間を必要とし、さらに固化終了後に溶媒とトナー粒子とを分離し、その後、洗浄・乾燥を繰り返す必要があり、多くの時間と多量の水及びエネルギーを必要とするという問題点がある。
【0004】
そのため、トナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させた液体(以下、「トナー組成液」称することがある)を、様々なアトマイザを用いて微粒子化した後に乾燥させて粉体状のトナーを得る噴射造粒法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。この方法によれば、水を用いる必要が無いため、洗浄や乾燥といった工程を大幅に削減することができるため、重合法における問題点を回避することができる。
特許文献1〜3に開示されたトナーの製造法においては、ノズルからノズル径に対応した液滴を放出する。このような製造法では、トナー組成液を噴霧した後において、形成された液滴が乾燥する前に液滴同士が合着し、その状態のまま溶媒が乾燥してトナーが得られるため、結果として、得られるトナーの粒径分布の広がりが避けられず、トナー粒径分布としては満足のいくものでなかった。
【0005】
このような課題に対して、本願の出願人が提案した特許文献4に記載されている噴射造粒によるトナー製造方法は、多量の洗浄液、溶媒と粒子の分離の繰り返しが不要で、非常に製造効率が高く、かつ省エネルギーで、比較的粒径分布の狭いトナーを製造できるという利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粒子化過程において、主滴同士の合一やサテライトの発生が生ずることが確認されており、より均一なトナー粒子を得るための工夫の余地が残されている。さらには、液を吐出させるノズル近傍では、液吐出による気流が発生しており、周辺部からノズルへ向かうもどり気流が発生しており、ミストがノズル近傍に付着→吐出方向を曲げる→さらにミストが増加→ノズルダウン(ノズル閉塞)と、安定吐出を阻害する悪循環が生じている。図24はノズル近傍のPIV(粒子画像流速測定法)計測を行った結果で、白く示されている液吐出に対し、横方向からのもどり気流(矢印)が捉えられている。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、噴射造粒法での微粒子の製造方法、中でも静電荷像現像用トナーの製造方法において、噴霧後の液滴同士の合着を防止し、サテライトをなくすことによって、より狭い粒径分布を有する、微粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造方法をより安定したプロセスとして提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
1.本発明の微粒子の製造方法は、溶媒に、樹脂材料を溶解乃至は分散させた溶解乃至分散液を、該溶解乃至分散液を供給する流路の一部に設けた複数の孔を有する液滴吐出手段から液滴を吐出し、該液滴を気体中にて固化させることにより、粒子を形成させる微粒子の製造方法において、前記液吐出手段の液吐出面の下流部近傍に配置された絞り部により、吐出後の液滴を乗せた気流の通路断面積を、液滴吐出直後に維持又は拡大させて液滴流速を一時減速した後、前記通路断面積を縮小することにより、前記液滴を再加速させることを特徴とする。
なお、本発明における上記「近傍」とは、絞り部上端が、液吐出手段(吐出ヘッド)の吐出面に接触しないように、当該面から10mm以下の範囲に配置された状態を意味するが、実際の配置位置は、吐出ヘッドの大きさ、ノズル径やノズル数などを考慮して適宜決定することができ、好ましくは吐出面から5mm以下、より好ましくは1mm以下の範囲に配置する。
2.本発明の微粒子の製造方法は、さらに、前記吐出液の一時減速時の前記吐出液流速(m/s)が、「液滴直径(μm)×液吐出周波数(kHz)の3倍」以下であることを特徴とする。
3.本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、溶媒に、少なくとも結着樹脂及び顔料を含むトナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、該溶解乃至分散液を供給する流路の一部に設けた複数の孔を有する液滴吐出手段から液滴を吐出し、該液滴を気体中にて固化させることにより、トナー粒子を形成させるトナーの製造方法において、前記液吐出手段の液吐出面の下流部近傍に配置された絞り部により、吐出後の液滴を乗せた気流の通路断面積を、液滴吐出直後に維持又は拡大させて液滴流速を一時減速した後、前記通路断面積を縮小することにより前記液滴を再加速させることを特徴とする。
4.本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、さらに、前記吐出液の一時減速時の前記吐出液流速(m/s)が、「液滴直径(μm)×液吐出周波数(kHz)の3倍」以下であることを特徴とする。
5.本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、さらに、前記絞り部の出口部下流にアシスト気流を付加させることを特徴とする。
6.本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、さらに、前記絞り部全体が撥液性材料からなるか又は前記絞り部表面が撥液性材料でコートされていることを特徴とする。
7.本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、さらに、前記液吐出手段が、液柱共鳴による液吐出手段であることを特徴とする。
8.本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、さらに、前記絞り部の最下流端部に液回収用通路が具備されていることを特徴とする。
9.本発明の静電荷像現像用トナーの製造装置は、溶媒に、少なくとも結着樹脂及び顔料を含むトナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、該溶解乃至分散液を供給する流路の一部に設けた複数の孔を有する液滴吐出手段から液滴を吐出し、該液滴を気体中にて固化させることにより、トナー粒子を形成させるトナーの製造方法に用いる製造装置において、前記液吐出手段の液吐出面の下流部近傍に絞り部が配置され、該絞り部により吐出後の液滴を乗せた気流の通路断面積を、液滴吐出直後に維持又は拡大させて液滴流速を一時減速した後、前記通路断面積を縮小することにより前記液滴を再加速させることを特徴とする。
10.本発明の静電荷像現像用トナーの製造装置は、さらに、前記絞り部の出口部下流にアシスト気流を付加するアシスト気流供給手段を有することを特徴とする。
11.本発明の静電荷像現像用トナーの製造装置は、さらに、前記絞り部全体が撥液性材料からなるか又は前記絞り部の表面が撥液性材料でコートされていることを特徴とする。
12.本発明の静電荷像現像用トナーの製造装置は、さらに、前記絞り部の最下流端部に液回収用通路が具備されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、ノズル面への吐出液滴のもどりがなく安定した吐出を継続させることができる。さらに結果として、サテライト微粒子が大幅に減少させることができるとともに、合一による粗大粒子の発生も同時に抑えることができ、結果としてより均一なトナー粒子を安定的に得ることができる。また、本発明の製造方法により得られるトナーは、粒度分布が非常に均一で、無駄なく原材料を利用することができ、より高精彩な画像を安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】液柱共鳴液滴形成手段の構成を示す断面図である。
【図2】液柱共鳴液滴ユニットの構成を示す断面図である。
【図3】N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状を示す概略図である。
【図4】N=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状を示す概略図である。
【図5】液柱共鳴液滴形成手段の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図6】液柱共鳴液滴形成手段での実際の液滴吐出の様子を示す図である。
【図7】駆動周波数と液滴吐出速度周波数特性を示す特性図である。
【図8】間接振動型液滴吐出手段の構造を示す概略図である。
【図9】図8に示す間接振動型液滴吐出手段を吐出面から見た構造を示す概略図である。
【図10】膜振動型吐出手段の液滴吐出原理を示す概略図である。
【図11】直接振動型液滴吐出手段の構造を示す概略図である。
【図12】図11に示す直接振動型液滴吐出手段を吐出面から見た構造を示す概略図である。
【図13】膜振動タイプ吐出手段の薄膜の断面を示す概略図である。
【図14】本発明のトナーの製造方法を実施するトナー製造装置の一例を示す概略図である。
【図15】補助搬送気流(シュラウド気流)を用いた合着防止手段の一例を示す概略図である。
【図16】合着を防止することができた場合のトナー粒径分布の一例を示すグラフである。
【図17】合着を防止することができなかった場合のトナー粒径分布の一例を示すグラフである。
【図18】(a)はヘッドの概略図、(b)及び(c)は液滴の吐出を示す概略図、(d)は本発明における液滴の吐出を示す概略図である。
【図19】本発明に係る液滴搬送通路(絞り部)の一例を示す概略図である。
【図20】本発明における絞り部に液回収用通路を設けた場合の一例を示す概略図及び詳細図である。
【図21】本発明における絞り部(整流板)を吐出ノズル列方向に配置させた例を示す概略図である。
【図22】本発明に係るトナー造粒システムの好ましい例を示す全体概要図である。
【図23】実施例1におけるトナー粒径分布を示すグラフである。
【図24】従来の吐出ノズル近傍の気流の流れ(PIV測定結果)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における実施の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0011】
本発明のトナーの製造手段の一例を以下、図1〜図23を用いて説明する。本発明に係るトナー製造手段は、液滴吐出手段と液滴乾燥捕集手段とに分けられる。以下、それぞれについて説明する。
[液滴吐出手段]
本発明で用いる液滴吐出手段としては、吐出する液滴の粒径分布が狭ければ、特に制限は無く、公知のものを用いることができる。液滴吐出手段としては1流体ノズル、2流体ノズル、膜振動タイプ吐出手段、レイリー分裂タイプ吐出手段、液振動タイプ吐出手段及び液柱共鳴タイプ吐出手段等が挙げられる。
液滴の粒径分布が狭く、かつトナーの生産性を確保するためには、液体に接した複数の吐出孔が形成された薄膜を振動させる膜振動タイプの液滴吐出手段があり、もう一方では、複数の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の液体に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、この定在波の腹となる領域に形成された吐出孔から液体を吐出する液滴化液柱共鳴があり、これらのいずれかを用いることが好ましい。
【0012】
[液柱共鳴吐出手段]
以下、液柱の共鳴を利用して吐出する液柱共鳴タイプ吐出手段について説明する。
図1は、液柱共鳴液滴形成手段の構成を示す断面図である。図2は、液柱共鳴液滴ユニットの構成を示す断面図である。図1に示す液柱共鳴液滴吐出手段11は、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を含んで構成されている。液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通している。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面に液滴21を吐出する吐出孔19と、吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有している。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続されている。
トナー組成液14は、後述する図14に示す液循環ポンプ15により液供給管を通って、図2に示す液柱共鳴液滴形成ユニット10の液共通供給路17内に流入し、図1に示す液柱共鳴液滴吐出手段11の液柱共鳴液室18に供給される。そして、トナー組成液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19から液滴21が吐出される。
この液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味するものである。好ましくは、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、より好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である。定在波の腹となる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、さらには効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。
なお、液共通供給路17を通過したトナー組成液14は図示していない液戻り管を流れて、後述する図14に示す原料収容器13に戻される。液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が元に戻る。
【0013】
液柱共鳴液滴吐出手段11における液柱共鳴液室18は、金属、セラミックス及びシリコンなどの、駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図1に示すように、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さLは、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定される。また、図2に示す液柱共鳴液室18の幅Wは、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、液柱共鳴液室18の長さLの2分の1より小さいことが望ましい。
さらに、液柱共鳴液室18は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴形成ユニット10に対して複数配置されている方が好ましい。その範囲に限定はないが、100〜2000個の液柱共鳴液室18が備えられた1つの液滴形成ユニットであれば操作性と生産性が両立できるので、より好ましい。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17には複数の液柱共鳴液室18と連通している。
【0014】
また、液柱共鳴液滴吐出手段11における振動発生手段20は、所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板に貼りあわせた形態が望ましい。弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。圧電体としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられ、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO及びKNbO等の単結晶などが挙げられる。さらに、振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが望ましい。また、上記の1つの材質のブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置に合わせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が望ましい。
【0015】
さらに、吐出孔19の開口部の直径は、1〜40μmの範囲であることが望ましい。この直径が1μmより小さいと、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合があり、またトナーの構成成分として顔料などの固形微粒子が含有された構成の場合吐出孔19において閉塞を頻繁に発生して生産性が低下する恐れがある。また、40μmより大きい場合、液滴の直径が大きくなり、この液滴を乾燥固化させて、所望のトナー粒子径3〜6μmを得る場合、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要がある場合があり、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となってしまい、不都合となる。また、図2からわかるように、吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成を採用することによって、吐出孔19の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなるために好ましい。また、吐出孔19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが望ましい。
【0016】
次に、本発明のトナー製造装置における液滴形成ユニットによる液滴形成のメカニズムについて説明する。
先ず、図1の液柱共鳴液滴吐出手段11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明すると、液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の音速をcとし、振動発生手段20から媒質であるトナー組成液14に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・(式1)
の関係にある。
【0017】
また、図1に示す液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとし、さらに液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1(=約80μm)は連通口の高さh2(=約40μm)の約2倍であり、前記端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。すなわち、次の式2で表される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(但し、Nは偶数)
【0018】
さらに、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも上記式2が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)場合、すなわち片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。すなわち、上記式2のNが奇数の場合である。
【0019】
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式1と上記式2より、
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
と導かれる。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4及び式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0020】
図3は、N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す概略図であり、図4は、N=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す概略図である。定在波は、本来は疎密波(縦波)であるが、図3及び図4のように表記することが一般的である。図3及び図4において、実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図3(a)からわかるように、速度分布の場合、閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室18の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率良く発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも図3及び図4に併記した。後述するように、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。
なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は、音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図3及び図4に示すような形態の共鳴定在波を生じる。しかし、吐出孔数、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、上記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。
例えば、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmであり、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、上記式2より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmと、上記と同じ条件とし、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、上記式2より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構成の液柱共鳴液室においても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0021】
図1に示す液柱共鳴液滴吐出手段11における液柱共鳴液室18は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出孔の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが、周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図3(b)及び図4(a)に示すような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい構成である。
また、吐出孔の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこの因子に応じて適宜決定することができる。例えば吐出孔の数を多くすると、固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が徐々に緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。さらに、最も液供給路側に存在する吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また、吐出孔の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。
このように決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率良く発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。すなわち、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近い吐出孔までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さにより下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。
【0022】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
【0023】
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部に最も近い吐出孔までの距離Leの比が、Le/L>0.6であることが好ましい。
【0024】
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図1の液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室18の一部に配置された吐出孔19において連続的に液滴吐出が発生するのである。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置に吐出孔19を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点で好ましい。また、吐出孔19は1つの液柱共鳴液室18に1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましい。具体的には、2〜100個の間であることが好ましい。
吐出孔の数が100個を超えた場合、100個の吐出孔19から所望の液滴を形成させようとすると、振動発生手段20に与える電圧を高く設定する必要が生じ、振動発生手段20としての圧電体の挙動が不安定となる恐れがある。また、複数の吐出孔19を開孔する場合、吐出孔間のピッチは20μm以上、かつ液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましい。吐出孔間のピッチが20μmより大きい場合、隣合う吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながる。
【0025】
次に、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について当該様子を示す図5を用いて説明する。図5は、液柱共鳴液滴形成手段の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。図5において、液柱共鳴液室18内に記した実線は、液柱共鳴液室18内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室18内に記した点線は、液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。
また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。さらに、図5において、前述したように液中共鳴室18の液共通供給路側が開放されているが、液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図1に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図1に示す高さh1)が約2倍以上であるため、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0026】
図5(a)は、液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形(点線)と速度波形(実線)を示している。また、図5(b)は、液滴吐出直後の液引き込みを行った後再びメニスカス圧が増加してくることを示している。図5(a)及び図5(b)に示すように、液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。その後、図5(c)に示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行して液滴21が吐出される。
【0027】
そして、図5(d)に示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図5(e)に示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図5(a)に示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また、圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出孔19が配置されていることから、前記腹の周期に応じて液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
【0028】
次に、実際に液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成の一例について説明する。図6は、液柱共鳴液滴形成手段での実際の液滴吐出の様子を示す図である。図6には、図1において液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードであって、第一〜第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に配置され、駆動周波数をとして340kHzのサイン波を用いて行った吐出をレーザーシャドウグラフィ法にて撮影した様子が示されている。図6からわかるように、非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現している。
また、図7は、駆動周波数290〜395kHzの同一振幅サイン波にて駆動した際の液滴速度周波数特性を示す特性図である。図7からわかるように、第一〜第四のノズルにおいて、駆動周波数が340kHz付近では各ノズルからの吐出速度が均一となって、かつ最大吐出速度となっている。図7に示す特性結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである340kHzにおいて、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。また、図7に示す特性結果から、第一モードである130kHzにおいての液滴吐出速度ピークと、第二モードである340kHzにおいての液滴吐出速度ピークとの間では液滴は吐出しないという液柱共鳴の特徴的な液柱共鳴定在波の周波数特性が液柱共鳴液室内で発生していることがわかる。
【0029】
[膜振動タイプ液滴吐出手段]
膜振動タイプの液滴吐出手段として、間接振動型液滴吐出手段と直接振動型液滴吐出手段がある。以下、それぞれについて説明する。
<間接振動型液滴吐出手段>
【0030】
図8は、間接振動型液滴吐出手段の構造を示す概略図であり、図9は、図8に示す間接振動型液滴吐出手段を吐出面から見た構造を示す概略図である。間接振動型液滴吐出手段51は、複数の吐出孔19が形成された薄膜41と、この薄膜41を振動させる機械的振動手段33と、薄膜41と機械的振動手段33との間にトナー組成液を供給するトナー組成液流路7を形成するフレーム40とを備えている。トナー組成液は図示していない原料収容器から液循環ポンプによって液供給管を通ってトナー組成液供給口6から供給され、トナー組成液流路7を通り、トナー組成液排出口8から排出され、図示されない液戻り管を通って再び原料収容器に戻る。
複数の吐出孔19を有する薄膜41は、振動手段33の振動面43に対して平行に設置されており、薄膜41の一部がフレーム40に接合固定されており、機械的振動手段33の振動方向とは実質的に垂直な位置関係となる。機械的振動手段33の振動発生手段20の上下面に電圧信号が付与されるように、回路35が設けられており、駆動信号発生源34からの信号を機械的振動に変換することができる。電気信号を与える回路としては、表面を絶縁被覆されたリード線が適している。また、機械的振動手段33は後述する各種ホーン型振動子、ボルト締めランジュバン型振動子など、振動振幅の大きな素子を用いることが、効率的かつ安定なトナー生産には好適である。
【0031】
機械的振動手段33は、振動を発生する振動発生手段20と、この振動発生手段20で発生した振動を増幅する振動増幅手段42とで構成され、駆動信号発生源34から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が振動発生手段20の電極31間に印加されることによって、振動発生手段20に振動が励起され、この振動が振動増幅手段42で増幅され、薄膜41と平行に配置される振動面43が周期的に振動し、この振動面43の振動による周期的な圧力によって薄膜41が所要周波数で振動する。図8に示される振動発生手段20は、一つの振動発生手段(後述する圧電体30)を電極31で挟んでいる構成になっているが、これを複数重ねた構造となっていても構わない。
【0032】
この振動手段20としては、薄膜41に対して確実な縦振動を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はなく、適宜選択して使用することができるが、薄膜41を振動させることから、振動発生手段20にはバイモルフ型のたわみ振動の励起される圧電体30を用いることが好ましい。圧電体30は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。具体的には、電圧を印加することにより、たわみ振動が励起され、薄膜41を振動させることが可能となる。
たわみ振動は、図10に示すように薄膜の中心で変位ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。図10は、膜振動型吐出手段の液滴吐出原理を示す概略図である。薄膜が周期的に上下振動することで吐出孔19から液滴21が周期的に吐出することとなる。液滴21が吐出できる薄膜41の速度範囲は図10のような関係があり、吐出可能な面積範囲は限られるため、この面積範囲に吐出孔19を形成することが望ましい。吐出孔19は図9に示すように薄膜41の中心部に配置されている。
【0033】
振動発生手段20を構成する圧電体30としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいため、積層して使用されることが多い。圧電体としては、この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子、水晶、LiNbO、LiTaO及びKNbO等の単結晶などが挙げられる。
機械的振動手段33は、吐出孔19を有する薄膜41に対して垂直方向の振動を与えるものであれば、どのような配置でもよいが、振動面43と薄膜41とは平行に配置される。
図8に示す例では振動発生手段20と振動増幅手段42で構成される機械的振動手段33としてホーン型振動子を用いており、このホーン型振動子は、圧電素子などの振動発生手段20の振幅を振動増幅手段42で増幅することができる。このため、機械的振動を発生する振動発生手段20自体は小さな振動でよく、機械的負荷が軽減するために生産装置としての長寿命化につながる。ホーン型振動子の形状としては、公知の代表的なホーン形状でよく、目的に合わせて適宜形状を選択することができる。また、振動発生手段20としては、特に高強度なボルト締めランジュバン型振動子を用いることもできる。このボルト締めランジュバン型振動子は、圧電セラミックスが機械的に結合されており、高振幅励振時に破損することがないという利点を有する。
【0034】
機械的振動手段33の大きさは、発振振動数の減少に伴って大きくなることが一般的であり、必要な周波数に応じて、適宜振動手段に直接穴あけ加工を施し貯留部を設けることができる。また、貯留部全体を効率的に振動させることも可能である。
【0035】
<直接振動型液滴吐出手段>
図11は、直接振動型液滴吐出手段の構造を示す概略図であり、図12は、図11に示す直接振動型液滴吐出手段を吐出面から見た構造を示す概略図である。直接振動型液滴吐出手段53は、少なくとも液滴21を吐出させる吐出孔19を備えた薄膜41と、薄膜41を振動させるための円環状振動発生手段37と、トナー組成液を供給するトナー組成液流路7を設けたフレーム50を備えている。トナー組成液は図示されない原料収容器から液循環ポンプによって液供給管を通ってトナー組成液供給口6から供給され、トナー組成液流路7を通り、トナー組成液排出口8から排出され、図示されない液戻り管を通って再び原料収容器に戻る。
薄膜41は、外周部をフレーム50に接合固定している。円環状振動発生手段37は、薄膜41の吐出孔19を設けた領域の周囲に配されている。円環状振動発生手段37は、円環状圧電体36と電極38によって構成され、電極38に回路35を通じて駆動信号発生源34から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、例えばたわみ振動を発生する。円環状圧電体36や電極38としては、間接振動型液滴吐出手段51で用いる圧電体や電極と同じものを用いることができる。
【0036】
直接振動型液滴吐出手段53におけるたわみ振動は、間接振動型液滴吐出手段51と同様に図10に示すように薄膜の中心で変位ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。薄膜が周期的に上下振動することで吐出孔19から液滴21が周期的に吐出することとなる。液滴21が吐出できる薄膜41の速度範囲は図10のような関係があり、吐出可能な面積範囲は限られるため、この面積範囲に吐出孔19を形成することが望ましい。吐出孔19は図12に示すように薄膜41及び円環状振動手段37の中心部に配置されている。
<吐出液流速を、「液滴直径×周波数の3倍」にする手段>
吐出時の液初速は印加電圧により制御することができる。また、吐出された液滴の速度は周辺気体より受ける抵抗により急激に減速される。その減速割合は系によって決まる。本系においては、ノズルから10mm以内では、リニアに減速され、その減速率は約15%/mmとなっている。従って吐出後1mm下の液流速は、吐出初速により一義的に制御することができる。また、液初速は印加電圧により制御可能であるため、ノズルから1mm後の液滴速度も簡単に制御できる。具体例を示すと酢酸をφ9μmのノズルから10Vのサイン波で吐出させると約12m/sの初速が得られ1mm後には10m/sに減速した。
これに対し液滴の径はノズル系により決まりほとんど変化なくノズル径9μmに対し液滴径は約10μmとなった。このときの周波数は350khzであった。よって液滴径×周波数×3=9μm×350k×3=約9.5m/sとなり、電圧を0.5V下げて調整することで所望の速度を得ることができた。
【0037】
(液滴形成メカニズム)
次に、間接振動型液滴吐出手段51及び直接振動型液滴吐出手段53による液滴形成のメカニズムについて説明する。
前述したように、これらの液滴吐出手段はトナー組成液流路7に臨む複数の吐出孔19を有する薄膜41に、振動発生手段によって発生した振動を伝播させて、薄膜41を周期的に振動させ、比較的大面積の領域に複数の吐出孔19を配置し、それら複数の吐出孔19より液滴を周期的に、安定に形成して放出することができるようになる。
【0038】
円形薄膜の振動により、円形薄膜各所に設けられたノズル近傍の液体には、薄膜の振動速度Vmに比例した音圧Pacが発生する。音圧は、媒質(トナー組成液)の放射インピーダンスZrの反作用として生じることが知られており、音圧は、放射インピーダンスと薄膜振動速度Vmの積であり、下記式6の方程式を用いて表される。
Pac(r,t)=Zr・Vm(r,t) ・・・(式6)
薄膜の振動速度Vmは、時間とともに周期的に変動しているため時間(t)の関数であり、例えばサイン波形、矩形波形などの様々な周期変動を形成することが可能である。また、前述のとおり、薄膜の各所で振動方向の振動変位は異なっており、Vmは、薄膜上の位置座標の関数でもある。本発明で用いられる薄膜の振動形態は、前述のとおり軸対象である。したがって、実質的には半径(r)座標の関数となる。
【0039】
以上のように、分布を持った膜の振動変位速度に対して、それに比例する音圧が発生し、音圧の周期的変化に対応してトナー組成液が、気相へ吐出される。
気相へ周期的に排出されたトナー組成液は、液相と気相との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生する。
【0040】
液滴化を可能とする膜の振動周波数としては20kHz〜2.0MHzの領域が用いられ、50kHz〜500kHzの範囲がより好適に用いられる。20kHz以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液中の顔料やワックスなどの微粒子の分散が促進される。
さらには、前記音圧の変位量が、10kPa以上となることによって、前述の微粒子分散促進作用がより好適に発生する。
【0041】
(複数のノズルを有する薄膜)
吐出孔19を有する薄膜41は、前述したように、トナー組成液を吐出させて液滴とする部材である。
薄膜41の材質、吐出孔19の形状としては、特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができるが、例えば、薄膜41は厚み5〜500μmの金属板で形成され、かつ、吐出孔19の開口径が3〜30μmであることが、吐出孔19からトナー組成液の液滴21を噴射させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる観点から好ましい。なお、吐出孔19の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。また、複数の吐出孔19の個数は、2〜3000個が好ましく、200〜2000がより好ましい。
吐出孔19の断面形状は、間接振動型液滴吐出手段を示す図8や直接振動型液滴吐出手段を示す図11においては、吐出孔19の開口部と接液面とで大きさが変わらない形状として記載されているが、適宜断面形状を変更することができる。
図13に吐出孔19の取りうる断面形状を示す。図13は、膜振動タイプ吐出手段の薄膜の断面を示す概略図である。図13(a)は吐出孔19の接液面から吐出口に向かってラウンド形状を持ちながら開口径が狭くなるような形状を有しており、薄膜41が振動した際に吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力が最大となるため、吐出の安定化に際しては最も好ましい形状である。
【0042】
図13(b)は吐出孔19の接液面から吐出口に向かって一定の角度を持って開口径が狭くなるような形状を有しており、ノズル角度44は適宜変更することができる。図13(a)と同様に、ノズル角度44によって薄膜41が振動したときの吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力を高めることができる。ノズル角度44は60〜90°の範囲が好ましい。ノズル角度44が60°未満であると液に圧力がかかりにくく、さらに薄膜41の加工もし難くなる。ノズル角度44が90°である場合は図13(c)が相当するが、出口に圧力がかかりにくくなるため、90°が最大値となる。90°を超えると吐出孔19の出口に圧力がかからなくなるため、液滴吐出が非常に不安定化する。
図13(d)に示す断面形状は、図13(a)と図13(b)とを組み合わせた形状である。このように段階的に形状を変更しても構わない。
【0043】
[液滴乾燥捕集手段]
前述した液滴吐出手段から気体中に吐出させたトナー組成液の液滴を乾燥させた後に、捕集することで本発明のトナーを得ることができる。ここでは乾燥及び捕集を行う手段について説明する。
図14は、本発明のトナーの製造方法を実施するトナー製造装置の一例を示す概略図である。トナー製造装置1は、主として、液滴吐出手段2及び乾燥捕集ユニット60を含んで構成されている。液滴吐出手段2としては、前述のように幾つかの方式の液滴吐出手段を適宜用いることができる。液滴吐出手段2には、トナー組成液14を収容する原料収容器13と、原料収容器13に収容されているトナー組成液14を液供給管16を通して液滴吐出手段2に供給し、さらに液戻り管22を通って原料収容器13に戻すために液供給管16内のトナー組成液14を圧送する液循環ポンプ15とが連結されており、トナー組成液14を随時、液滴吐出手段2に供給することができる。液供給管16には液圧力計P1、乾燥捕集ユニット60にはチャンバ内圧力計P2が設けられており、液滴吐出手段2への送液圧力及び乾燥捕集ユニット内の圧力は、圧力計P1及びP2によって管理される。このときに、P1>P2の関係であると、トナー組成液14が液滴吐出手段2に設けられた吐出孔から染み出す恐れがあり、P1<P2の場合には液滴吐出手段2に気体が入り、液の吐出が停止する恐れがあるため、P1≒P2があることが望ましい。
【0044】
図14に示す乾燥捕集ユニット60は、チャンバ61、トナー捕集手段62及びトナー貯留部63を含んで構成されている。乾燥工程のメカニズムを以下に説明する。トナー組成液14からなる液滴21は、液滴吐出手段2から吐出された直後は液体の状態であるが、チャンバ61内を搬送される間にトナー組成液中に含まれる揮発溶媒が揮発することで乾燥が進行し、液体から固体に変化する。このような固体の状態ではもはや粒子同士が接触しても合着は生じないため、トナー捕集手段62によってトナー粉体として回収することができ、トナー貯留部63に格納することができる。トナー貯留部63に格納されたトナーは必要に応じてさらに別工程で乾燥される。
チャンバ61内では、搬送気流導入口64から導入された気流による下降気流101が形成されている。液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、重力よってのみではなく、搬送気流101によっても下方に向けて搬送されるため、噴射されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速されることを抑制することができる。これにより、トナー液滴21を連続的に噴射したときに、前に噴射されたトナー液滴21が乾燥する前に空気抵抗によって減速し、後で噴射されたトナー液滴21が前に噴射されたトナー液滴21に追い付くことで、トナー液滴21同士が合着して一体となり、トナー液滴21の粒径が大きくなることを抑制することができる。
【0045】
図14では、液滴吐出手段2は重力方向に向かって液滴21を吐出しているが、必ずしもその必要はなく、吐出させる角度は適宜選択することができる。なお、気流発生手段として、チャンバ61上部の搬送気流導入口64に送風機を設けて加圧する方法と、搬送気流排出口65より吸引する方法のいずれをも採用することもできる。トナー捕集手段62としては公知の捕集装置を用いることができ、サイクロン捕集機やバックフィルター等を用いることができる。
搬送気流101は、液滴21同士の合着を抑制することができればよく、特に気流の状態として限定されることは無く層流や旋回流や乱流であっても構わない。搬送気流101を構成する気体の種類は特に限定は無く、空気であっても窒素等の不燃性気体を用いてもよい。前述のように、液滴21が乾燥することで合着しなくなる性質があるために、液滴21は、液滴21の乾燥を促進できる条件を持つことが好ましい。このことから、液滴21は、トナー組成液14に含まれる溶媒の蒸気を含まないことが望ましい。また、搬送気流101の温度は適宜調整可能であり、生産時において変動の無いことが望ましい。また、チャンバ61内に搬送気流101の気流状態を変えるような手段をとっても構わない。搬送気流101は、液滴21同士の合着を防止するだけでなく、チャンバ61に液滴21が付着するのを防止することに用いてもよい。
【0046】
[合着防止手段]
前述した液滴乾燥捕集手段では、液滴の合着を搬送気流によって抑えているが、液滴乾燥捕集手段だけでは液滴の合着防止が充分でない場合は、更なる合着防止手段を取り入れることもできる。
合着防止手段としては、液滴吐出手段2付近での補助搬送気流の導入や、液滴への同一極性の帯電、及び電界制御等が挙げられ、適宜用いることができる。
図15は、補助搬送気流を用いた合着防止手段の一例を示す概略図である。図15において、液滴吐出手段2の周りにはシュラウド66が配置されており、その一部に補助搬送気流導入口67が配置されている。補助搬送気流導入口67から導入された気体は、シュラウド66によって形成された気流通路12を通って、液滴吐出手段2の吐出孔19の周辺に補助搬送気流68として形成される。液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、順次補助搬送気流68によって、液滴吐出手段2の近傍においては速度を落とすことなく移動するので、液滴21同士の合着の頻度をきわめて低く抑えることができる。補助搬送気流68の速度は、液滴吐出手段2から吐出された直後の液滴速度に対して同じか速いことが望ましく、それより遅い場合は逆効果となる場合もある。
図15に示すように、補助搬送気流68は液滴21の進行方向と同一であることが望ましいが、合着を防ぐことができれば液滴吐出方向と補助搬送気流の方向が同じである必要は無い。
シュラウド66の形状は、図15に示すように液滴吐出手段2の吐出孔19付近で開口部を絞ることによって流速を制御してもよいが、絞りを持たせなくてもよく、形状は適宜選択することができる。補助搬送気流68を構成する気体の種類に特に限定は無く、空気であっても窒素等の不燃性気体を用いてもよい。
このようにして捕集したトナーの粒径分布は図16に示すようになる。図16は、合着を防止することができた場合のトナー粒径分布の一例を示すグラフである。図16に示す粒径分布は、捕集したトナーについての一例であるが、ほとんど単一粒径のトナー粒子しか存在しないことがわかる。これは前述のように吐出された液滴21が合着することなく、乾燥して得られた場合に得られる粒径分布である。
【0047】
一方、液敵が合着した場合の捕集したトナーの粒径分布は図17に示すとおりである。図17は、合着を防止することができなかった場合のトナー粒径分布の一例を示すグラフであり、微量の搬送気流101及び補助搬送気流68を用いていないだけで、その他は図16における捕集条件と同じ条件で捕集されたトナーの粒径分布である。ただし、液滴化の周波数が大きくなると液滴間の距離が保てなくなり、単純な補助搬送気流では、対応ができなくなる。
一般に、液滴吐出手段2から吐出した液滴21は空気抵抗を受けて吐出速度が急速に低下し、且つ自然落下を始める。液滴21の吐出速度が低下すると液滴間距離が短くなり、やがては液滴間の合着を生じるようになる。また、合着した液滴は空気抵抗が増し、乾燥も遅れるためにさらに別の液滴と合着を引き起こすようになり、数個の液滴が合着する場合もあり、これが乾燥すると合着した後に乾燥した粒子を生じ、結果として得られるトナーの粒径分布は広くなる。図17に示す粒径分布は、捕集したトナーの一例であるが、図中に「基本粒子」と示したピークを構成する乾燥粒子は、合着しなかった液滴21がそのまま乾燥固化したものである。図17において、「2倍」と記載されたピークを形成する乾燥粒子は、液滴21が吐出後に合着し、その後に乾燥固化して得られたものである。同様に3倍、4倍、それ以上の合着が進行していることが、図17に示す粒径分布測定結果から推測することができる。
ここで、粒径分布測定は、フロー式粒子像解析装置(FPIA−2000;シスメックス社製)を用いて解析することにより行うことができる。粒径分布は、体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)の比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。Dv/Dnは最も小さいもので1.0であり、これはすべての粒径が同一であることを示している。Dv/Dnが大きいほど粒径分布が広いことを示す。一般的な粉砕トナーは、Dv/Dn=1.15〜1.25程度である。また重合トナーは、Dv/Dn=1.10〜1.15程度である。本発明のトナーはDv/Dn=1.15以下とすることで印刷品質に効果が確認されており、より好ましくはDv/Dn=1.10以下である。
電子写真システムにおいては粒径分布が狭いことが、現像工程、転写工程及び定着工程に求められるため、このような粒径分布の広がりは望ましくなく、安定的に高精細な画質を得るためにはDv/Dn=1.15以下が好ましく、より高精細な画像を得るためにはDv/Dn=1.10以下がより好ましい。より好ましくは1.00〜1.05である。また、重量平均粒径は、1〜20μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは3〜10μmである。
【0048】
[合着防止手段及びサテライト防止手段]
本発明は、トナー粒子等の微粒子における究極の均一性を得ることを目的とするものであり、その粒径分布の要因となるサテライト粒子、合一粒子をともに最小限とする製造方法の発明に関するものである。ここでは図18を用いて微粒子の製造工程を説明する。図18(a)は、一つのヘッドから液滴が吐出される様子を示したものであり、実際には複数ヘッドを配置させることによってその収量を確保する。図18(b)は、通常の吐出を示したものであり、ノズル近傍では多くの場合、形成された液滴は主滴とサテライトに分離される状態となる。その後急速に空気抵抗を受け液流速が低下するとともにサテライトは主滴に吸収されていく、その後も液滴速度が低下するに従い主滴同士の合一が始まり、より大きな液滴となり、乾燥固化する。図18(c)はこれに対し吐出直後から気流を付加した場合の例で、主滴同士の合一はなくなるがサテライト粒子も吸収されず残存する。
これに対し本発明においては、図18(d)に示すように、吐出後の液滴を液滴形成エリア、サテライト吸収エリア、主滴合一防止エリアの3段階に分解し、ノズルからVJ1の速度をもって送り出された液滴を周辺雰囲気気体の抵抗により、VJ2まで下げた後、絞り部を通過する間に自然と加速され、主滴間距離が離される。その後、再加速された液滴速度にあわせ気流を周辺からアシストさせ、主滴の合一をさせることなく乾燥固化させる。
図19も液滴搬送通路の一例を示しており、液吐出面近傍でのもどり気流がないよう配置され、吐出された液滴が減速されサテライトを吸収したのち速やかに再加速されるべく、設計されている。
図20は、絞り部を示す図であり、(a)は絞り部の概略図、(b)及び(c)は詳細図である。
図21は本発明における絞り部(整流板80)を吐出ノズル列方向に配置させた例を示す概略図である。図21は複数のノズルが配置された吐出ヘッドの液吐出面より下流部近傍に、ノズル列方向に沿うように絞り部を設置した例を示したもので、大量の液滴をスムーズに気流に乗せることができる。
つまり、前述したシュラウド構造のみでは、吐出ヘッド端部近傍の複数ノズルから吐出された液滴には吐出方向の気流があたるものの、ヘッド中央付近の複数ノズルには、特に吐出直後の液滴に対して気流があたり難く、また前述したように、もどり気流によるノズル詰まりが比較的早期に生じ、安定して長時間吐出できなくなる恐れが高いが、図21のように、複数ノズルの各列に沿って「絞り部」を配置することで、ノズル位置に関わらず吐出液滴を気流に乗せることができ、大量の液滴を安定して長時間吐出させることが可能となる。
【0049】
[乾燥]
必要に応じて、さらに流動床乾燥や真空乾燥といった二次乾燥が行われる。有機溶媒がトナー中に残留すると耐熱保存性や定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動するだけでなく。加熱による定着時において有機溶媒が揮発するため、使用者及び周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施する。
【0050】
次に、微粒子の一例として本発明に係るトナーについて説明する。
本発明に係るトナーは前述した実施の形態に係るトナー製造装置のように、本発明を適用したトナーの製造方法により製造されたトナーであり、この製造方法により、粒径分布が単分散なトナーが得られる。
【0051】
次に、本発明で使用できるトナー材料について説明する。先ず、前述したトナー材料を溶媒に分散乃至溶解させたトナー組成液について説明する。
トナー材料としては、従来の電子写真用トナーに用いるトナー材料と全く同じものを使用することができる。トナー粒子は、結着樹脂を各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散させ、かつ離型剤を分散又は溶解させ、これを前記トナー製造方法により微小液滴として乾燥固化させることで作製することができる。
〔全体プロセス〕
図22は本発明に係るトナー造粒システムの好ましい例を示す全体概要図である。図22において、69は液吐出用ヘッド、70はサイクロン捕集装置、71はトナー貯蔵ボックス、72は回収フィルター、73はブロワー、74は溶媒回収ボックス、75は加熱用ヒーター、76は溶媒回収コンデンサー、77はヒートポンプ構造である。図22に示すように、液吐出→液滴固化→粒子捕集→溶媒回収→液吐出の一連のプロセスは循環するよう設けられ、このときの系内の気体は窒素等の不活性気体を用いることが望ましい。また、溶媒の回収再利用はヒートポンプ等を用いた熱管理にて行うことでエネルギー効率を上げることができる。
【0052】
〔トナー材料〕
前記トナー材料は、少なくとも樹脂、着色剤及びワックスを含有し、必要に応じて、帯電調整剤、添加剤及びその他の成分を含有する。
【0053】
〔樹脂〕
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができる。結着樹脂としては、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ系樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。
【0054】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体などが挙げられる。スチレン系共重合体としては、スチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0055】
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類などが挙げられる。
【0056】
メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸、又はそのエステル類などが挙げられる。
【0057】
前記ビニル重合体又はビニル共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)のものが挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン及びイソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン及びイソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル及びフッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル及びビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン及びメチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール及びN−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びアクリルアミド等のアクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸及びメサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物及びアルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル及びメサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸及びジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸及びケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物及びケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類及びメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン及び4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0058】
本発明に係るトナーにおいて、結着樹脂であるビニル重合体又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン及びジビニルナフタレンなどが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートに替えたものなどが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及びこれらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに替えたものなどが挙げられる。
【0059】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、及びジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
【0060】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートに替えたもの、トリアリルシアヌレート及びトリアリルトリメリテートなどが挙げられる。
【0061】
これらの架橋剤の使用量は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.03〜5質量がより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0062】
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート及びtert−ブチルパーオキシアゼレートなどが挙げられる。
【0063】
結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3000〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5000〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5000〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂がさらに好ましい。
【0064】
結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0065】
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又はビスフェノールAにエチレンオキシド及びプロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオールなどが挙げられる。
【0066】
ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
前記3価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
【0067】
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸及びメサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物などが挙げられる。
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0068】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3000〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するものが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5000〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0069】
本発明に係るトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれかに、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸及びイタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー、ヒドロキシ基を有するモノマー、アクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上含有するものが好ましい。
【0070】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、基本操作はJIS K−0070に準ずる以下の方法により求めることができる。
(1)試料は、予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておいて使用する。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをW[g]とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤及び磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
(3)0.1mol/LのKOHのエタノール溶液を用い、電位差滴定装置にて滴定する。
(4)このときのKOH溶液の使用量をS[ml]とし、同時にブランクを測定し、このときのKOH溶液の使用量をB[ml]とし、以下の式で酸価を算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価[mgKOH/g]=[(S−B)×f×5.61]/W
【0071】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含むトナー組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80℃であるのが好ましく、40〜75℃であるのがより好ましい。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0072】
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン及びバナジウム等の金属との合金、(3)及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0073】
磁性体として具体的には、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe5O12、CdFe、GdFe12、CuFe12、PbFe12O、NiFe2O、NdFeO、BaFe1219、MgFe2O、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉及びニッケル粉などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、Fe(四三酸化鉄)、γ−Fe(γ−三二酸化鉄)の微粉末が好適に挙げられる。
【0074】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト及びフェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用することができる。異種元素としては、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びガリウムなどが挙げられる。好ましい異種元素は、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン及びジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0075】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出させることができる。
【0076】
前記磁性体の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径は、0.1〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0077】
また、磁性体の磁気特性としては、10kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200A・m/kg、残留磁化2〜20A・m/kgのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0078】
〔着色剤〕
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができ。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物などが挙げられる。
前記着色剤の含有量は、トナー中1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0079】
本発明に係るトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される樹脂としては、変性ポリエステル及び未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体及びスチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン及びパラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0080】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる、着色剤の水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶媒とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶媒成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
【0081】
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及びアミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0082】
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)などが挙げられる。
【0083】
前記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜10万であることが好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜10万がより好ましい。さらに、5000〜5万が好ましく、5000〜3万が特に好ましい。分散剤の重量平均分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が10万を超えると、溶媒との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0084】
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。分散剤の添加量が1質量部未満である分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0085】
<ワックス>
本発明で用いるトナー組成液は、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有する。
ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス及びサゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう及びホホバろう等の植物系ワックス;蜜ろう、ラノリン及び鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン及びペテロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス及びカスターワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0086】
前記ワックスの例としては、さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいはさらに直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;プランジン酸、エレオステアリン酸及びバリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレフィン酸アミド及びラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド及びN,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド及びN,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0087】
ワックスのより好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒やメタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法及びアーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート及び無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスなどが挙げられる。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶媒法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0088】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0089】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせなどが挙げられる。
【0090】
2種のワックスを選択する際には、同様の構造を有するワックスの場合は、相対的に融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。このとき、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。2種のワックスの融点の差が10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
【0091】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0092】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定(示差走査熱量測定)において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
前記ワックスの総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0093】
本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0094】
<流動性向上剤>
本発明に係るトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末及びポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ及び乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤又はシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン及び処理アルミナなどが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉末酸化チタン及び微粉末アルミナが好ましく、また、シランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカがさらに好ましい。
前記流動性向上剤の粒径は、平均一次粒径で0.001〜2μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。
【0095】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84;Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5;Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40;D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名);Franso1(Fransi1社商品名)などが挙げられる。
【0096】
さらには、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0097】
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等が挙げられる。さらに、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0098】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
流動性向上材の、BET法で測定した窒素吸着による比表面積は、30m/g以上が好ましく、60〜400m/gがより好ましい。表面処理された微粉体の比表面積は、20m/g以上が好ましく、40〜300m/gがより好ましい。
これらの微粉体の使用量は、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部とすることが好ましい。
【0099】
本発明に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体及びキャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性、電気特性及び物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤及びフタル酸ジオクチル等、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック及び酸化アンチモン等、酸化チタン、酸化アルミニウム及びアルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛及びポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素及びチタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、さらに、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0100】
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0101】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中で又は漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー及びヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
【0102】
得られたトナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練した後、微粉砕したものをハイブリタイザーやメカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料を結着樹脂が可溶な溶媒に溶解分散した後、スプレードライ装置を用いて脱溶媒化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法などが挙げられる。
【0103】
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素及び窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他、外添剤としては、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系樹脂、熱硬化性樹脂による重合体粒子などが挙げられる。
【0104】
このような外添剤は、表面処理剤による処理によって疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。前記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル及び変性シリコーンオイルなどが好適に挙げられる。
【0105】
前記無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、5〜500nmであることがより好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナー100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.01〜2.0質量部であることがより好ましい。
【0106】
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒径分布が狭く、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好ましい。
【実施例】
【0107】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
先ず、実施例で用いた吐出するトナー材料溶解乃至分散液の処方を示す。
【0108】
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(RegaL400;Cabot社製)17質量部、顔料分散剤(アジスパーPB821;味の素ファインテクノ社製))3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。得られた一次分散液を、ビーズミル(LMZ型ジルコニアビーズ(径0.3mm);アシザワファインテック社製)を用いて強力なせん断力により細かく分散し、径が5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0109】
−ワックス分散液の調製−
次にワックス分散液を調製した。
カルナバワックス18質量部、ワックス分散剤(ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したもの)2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温しカルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ最大径が3μm以下となるようワックス粒子を析出させた。得られた分散液を、さらにビーズミル(LMZ型ジルコニアビーズ(径0.3mm);アシザワファインテック社製)を用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が1μm以下なるよう調整した。
【0110】
−溶解乃至分散液の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂、上記着色剤分散液及び上記ワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、ワックス分散液30質量部を、酢酸エチル840質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行うことにより均一に分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。
【0111】
−トナー製造装置−
図14及び図15に示される構成のトナー製造装置1のシュラウド66の代わりに、図19で示した絞り部のサテライト吸収エリアと合一防止エリアの境が噴射ノズル面から下方1mmの位置に来るように設置したものを用い、吐出手段として液柱共鳴液滴吐出手段を用いてトナーの製造を行った。
各構成物のサイズや吐出条件は下記のとおりである。
−−液柱共鳴液滴吐出手段−−
液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードであって、第一〜第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置したものを用いた。駆動信号発生源34として、NF社製のファンクションジェネレーターWF1973を用い、ポリエチレン被覆のリード線で振動発生手段に接続した。この時の駆動周波数は液共鳴周波数に合わせて340kHzとなる。
−−トナー捕集部−−
チャンバ61は、内径がφ400mm、高さが2000mmの円筒形で垂直に固定され、上端部と下端部が絞られており、搬送気流導入口64の径はφ50mm、搬送気流排出口65の径はφ50mmである。液滴吐出手段2はチャンバ61内上端より300mmの高さでチャンバ61の中央に配置されている。搬送気流は10.0m/s、40℃の窒素とした。
【0112】
(実施例1)
前述のトナー製造装置を用いてトナー組成液を吐出させ、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子をサイクロン捕集機で捕集した。
このときの吐出はシュラウド66を用いたときに比べ格段に高い吐出安定性が得られ、2時間閉塞することなく捕集することができた。捕集したトナーをトナー貯蔵容器より取り出し、トナーを得た。このトナーの粒径分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000;シスメックス社)で下記に示す測定条件にて測定した。これを3回繰り返したところ、体積平均粒径(Dv)の平均は5.2μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、Dv/Dnの平均は1.02であった。
フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。トナー、トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社製のフロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて行うことができる。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3cmの水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10ml中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製のコンタミノンN)を数滴加え、さらに、測定試料を5mg加え、超音波分散器(UH−50;STM社製)で20kHz、50W/10cmの条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い<測定試料の粒子濃度が4000〜8000個/10−3cm(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒径分布を測定した。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出した。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定することができる。結果(頻度%及び累積%)は、表1に示すとおり、0.06〜400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行った。図23にトナー粒径分布を示す。
【0113】
(実施例2)
絞り部のサテライト吸収エリアと合一防止エリアの境をノズル面の直下からの距離で2mm、3mmと離して粒子を捕集した以外は実施例1と同様にトナー粒子を得た。結果、ノズルが閉塞するまでの時間は実施例1とほぼ同様であったが、粒度分布については2mm時に1.08、3mmでは1.14と少し低下した。
【0114】
(比較例1)
絞り部を設けずにシュラウド66を適用した前述のトナー製造装置を用いてトナー組成液を吐出させ、チャンバ内で乾燥固化したトナー粒子をサイクロン捕集機で捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、トナーを得た。このトナーの粒径分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000;シスメックス社)で下記に示す測定条件にて測定した。これを3回繰り返したところ、体積平均粒径(Dv)の平均は5.9μm、個数平均粒径(Dn)の平均は5.2μmであり、Dv/Dnの平均は1.13であった。また、ノズルは10分程度で閉塞してしまった。
以上のように、適切な位置に絞りを設け、雰囲気気体の流速を適切に与えてやることにより、ノズル面への吐出粒子のもどりがなく安定した吐出を継続させることができる。さらに結果として、非常にシャープな粒径分布を得ることができることが示される。
【符号の説明】
【0115】
1:トナー製造装置
2:液滴吐出手段
6:トナー組成液供給口
7:トナー組成液流路
8:トナー組成液排出口
10:液柱共鳴液滴吐出ユニット
11:液柱共鳴液滴吐出手段
12:気流通路
13:原料収容器
14:トナー組成液
15:液循環ポンプ
16:液供給管
17:液共通供給路
18:液柱共鳴室
19:吐出孔
20:振動発生手段
21:液滴
22:液戻り管
30:圧電体
31:電極
33:機械的振動手段
34:駆動信号発生源
35:回路
36:円環状圧電体
37:円環状振動発生手段
38:電極
40:フレーム
41:薄膜
42:振動増幅手段
43:振動面
44:ノズル角度
50:フレーム
51:間接振動型液滴吐出手段
53:直接振動型液滴吐出手段
60:乾燥捕集ユニット
61:チャンバ
62:トナー捕集手段
63:トナー貯留部
64:搬送気流導入口
65:搬送気流排出口
66:シュラウド
67:補助搬送気流導入口
68:補助搬送気流
69:液吐出用ヘッド
70:サイクロン捕集装置
71:トナー貯蔵ボックス
72:回収フィルター
73:ブロワー
74:溶媒回収ボックス
75:加熱用ヒーター
76:溶媒回収コンデンサー
77:ヒートポンプ構造
80:整流板
101:搬送気流
P1:液圧力計
P2:チャンバ内圧力計
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【特許文献1】特許第3786034号公報
【特許文献2】特許第3786035号公報
【特許文献3】特開昭57−201248号公報
【特許文献4】特開2006−293320号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒に、樹脂材料を溶解乃至は分散させた溶解乃至分散液を、該溶解乃至分散液を供給する流路の一部に設けた複数の孔を有する液滴吐出手段から液滴を吐出し、該液滴を気体中にて固化させることにより、粒子を形成させる微粒子の製造方法において、
前記液吐出手段の液吐出面の下流部近傍に配置された絞り部により、吐出後の液滴を乗せた気流の通路断面積を、液滴吐出直後に維持又は拡大させて液滴流速を一時減速した後、前記通路断面積を縮小することにより、前記液滴を再加速させる
ことを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子の製造方法において、
前記吐出液の一時減速時の前記吐出液流速(m/s)が、「液滴直径(μm)×液吐出周波数(kHz)の3倍」以下である
ことを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項3】
溶媒に、少なくとも結着樹脂及び顔料を含むトナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、該溶解乃至分散液を供給する流路の一部に設けた複数の孔を有する液滴吐出手段から液滴を吐出し、該液滴を気体中にて固化させることにより、トナー粒子を形成させるトナーの製造方法において、
前記液吐出手段の液吐出面の下流部近傍に配置された絞り部により、吐出後の液滴を乗せた気流の通路断面積を、液滴吐出直後に維持又は拡大させて液滴流速を一時減速した後、前記通路断面積を縮小することにより前記液滴を再加速させる
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法において、
前記吐出液の一時減速時の前記吐出液流速(m/s)が、「液滴直径(μm)×液吐出周波数(kHz)の3倍」(以下である
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法において、
前記絞り部の出口部下流にアシスト気流を付加させる
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法において、
前記絞り部全体が撥液性材料からなるか又は前記絞り部表面が撥液性材料でコートされている
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法において、
前記液吐出手段が、液柱共鳴による液吐出手段である
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項8】
請求項3ないし7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法において、
前記絞り部の最下流端部に液回収用通路が具備されている
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
溶媒に、少なくとも結着樹脂及び顔料を含むトナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、該溶解乃至分散液を供給する流路の一部に設けた複数の孔を有する液滴吐出手段から液滴を吐出し、該液滴を気体中にて固化させることにより、トナー粒子を形成させるトナーの製造方法に用いる製造装置において、
前記液吐出手段の液吐出面の下流部近傍に絞り部が配置され、該絞り部により吐出後の液滴を乗せた気流の通路断面積を、液滴吐出直後に維持又は拡大させて液滴流速を一時減速した後、前記通路断面積を縮小することにより前記液滴を再加速させる
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の静電荷像現像用トナーの製造装置において、
前記絞り部の出口部下流にアシスト気流を付加するアシスト気流供給手段を有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の静電荷像現像用トナーの製造装置において、
前記絞り部全体が撥液性材料からなるか又は前記絞り部の表面が撥液性材料でコートされている
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造装置。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造装置において、
前記絞り部の最下流端部に液回収用通路が具備されている
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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