微粒子分散液製造方法および微粒子分散液製造装置
【課題】高効率かつ短時間に微粒子分散液を製造することができる方法および装置を提供する。
【解決手段】溶解工程では、難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解される。固定工程では、溶解工程において得られた溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去され、当該有機溶媒除去によりペレット状の残存物1が得られ、この残存物1が容器30の複数箇所それぞれの底面に固定される。注水工程では、容器30の複数の凹部31それぞれに水2が注入される。照射工程では、光照射部20から出射されたレーザ光Lが容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に又は順次に照射され、これにより、残存物1が粉砕されて微粒子とされ、この微粒子が水2に分散されてなる微粒子分散液が製造される。
【解決手段】溶解工程では、難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解される。固定工程では、溶解工程において得られた溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去され、当該有機溶媒除去によりペレット状の残存物1が得られ、この残存物1が容器30の複数箇所それぞれの底面に固定される。注水工程では、容器30の複数の凹部31それぞれに水2が注入される。照射工程では、光照射部20から出射されたレーザ光Lが容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に又は順次に照射され、これにより、残存物1が粉砕されて微粒子とされ、この微粒子が水2に分散されてなる微粒子分散液が製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子分散液を製造する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の新規医薬品の開発において、候補化合物を合成する際にコンビナトリアルケミストリーの手法が採用されている。このコンビナトリアルケミストリーとは、組み合わせを利用して多種・多様な化合物を短期間で一度に合成する技術である。本手法で得られる化合物は、多くの場合、溶解性の問題を有している。すなわち、化合物自身に優れた生理活性を見出すことができても、その化合物が水に溶けにくい性質がある場合、その化合物の開発を断念する例が多い。また、天然物からの抽出によって得られる化合物も、溶解性を改善するため様々な有機合成が行われ構造最適化が行われる。すでに市販されている医薬品にも溶解性の低いものがある。これらは、患者個体内及び個体間で薬物の吸収量に変動幅があり、血中濃度の管理など、使用する側の医師および使用される側の患者の双方にとって負担が大きい。
【0003】
これらの問題点を解消し得るものとして微粒子製剤が注目を集めている。微粒子製剤は、難溶性の薬物粒子をマイクロメートル以下のサイズにしたものを水中に安定に分散させたものである。微粒子製剤を用いることで、生体内での薬物の吸収速度および量を高めることが可能である。また、患者個体内及び個体間における吸収量のバラツキの低減や、投与量に対する有効利用率の上昇が期待できる。このような微粒子製剤を製造する方法の発明が特許文献1,2に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された発明は、溶媒中に分散させた有機化合物にレーザ光を照射することにより有機化合物の超微粒子を得るものである。特許文献2に開示された発明は、溶媒に分散させた有機バルク結晶に超短パルスレーザ光を照射することにより、非線形吸収によるアブレーションを誘起して有機バルク結晶を粉砕して高分散性飛散物となし、この高分散性飛散物を溶媒により回収することにより、有機化合物の超微粒子を得るものである。
【特許文献1】特開2001−113159号公報
【特許文献2】特開2005−238342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示された発明は、破砕対象である有機化合物または有機バルク結晶が溶媒に分散された状態であることから、有機化合物または有機バルク結晶へのレーザ光照射が偶発的であり、処理効率が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、高効率かつ短時間に微粒子分散液を製造することができる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る微粒子分散液製造方法は、(1) 難溶性薬物および分散安定化剤を揮発性の有機溶媒に溶解させる溶解工程と、(2) この溶解工程において得られた溶解液に含まれる有機溶媒を蒸発除去し、当該有機溶媒除去により得られる残存物を容器の内壁の複数箇所それぞれに固定する固定工程と、(3) この固定工程の後に、容器の内部に水を注入する注水工程と、(4) この注水工程の後に、容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して光を照射して、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する照射工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
なお、溶解工程,固定工程,注水工程および照射工程の全体を通じて1つの容器が用いられてもよい。また、上記残存物を得るまでの工程で用いられる容器と、その残存物の固定以降の工程で用いられる容器とは、互いに別個のものであってもよい。また、複数個の容器が用いられてもよいし、複数の凹部を有する1個の容器(例えばマイクロタイタープレート)が用いられてもよい。
【0009】
この微粒子分散液製造方法によれば、溶解工程において、難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解される。続く固定工程において、溶解工程において得られた溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去され、当該有機溶媒除去により得られる残存物が容器の内壁の複数箇所それぞれに固定される。更に続く注水工程において、容器の内部に水が注入される。そして、照射工程において、容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して光が照射されて、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液が製造される。
【0010】
本発明に係る微粒子分散液製造方法では、固定工程において、複数の凹部を有する容器を用いて残存物を複数の凹部の底面それぞれに固定し、注水工程において、容器の複数の凹部それぞれに水を注入し、照射工程において、容器の複数の凹部の底面それぞれに固定された残存物に対して光を照射するのが好適である。このとき、容器の複数の凹部の底面それぞれがガラス製であり、照射工程において、容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光を照射して、その照射した光を底面,残存物および水の順に進行させるのが好適である。また、容器の複数の凹部の底面それぞれが平面であり、照射工程において、容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光を照射して、その照射した光を底面,残存物および水の順に進行させるのが好適である。
【0011】
本発明に係る微粒子分散液製造方法では、照射工程において、光源から出力された光を分岐部により分岐して容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して同時に照射するのが好適である。或いは、照射工程において、光源から出力された光を回折部により回折させて容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して同時に照射するのも好適である。また、或いは、照射工程において、光源から出力された光を走査部により走査して容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して順次に照射するのも好適である。
【0012】
本発明に係る微粒子分散液製造装置は、(1) 難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解され、当該溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去されることにより得られる残存物が内壁の複数箇所それぞれに固定され、内部に水が注入される容器と、(2) 容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して光を照射する光照射部と、を備えることを特徴とする。さらに、本発明に係る微粒子分散液製造装置は、光照射部により残存物に対して光を照射することにより、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する、ことを特徴とする。
【0013】
この微粒子分散液製造装置では、難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解され、当該溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去されることにより得られる残存物が容器の内壁の複数箇所それぞれに固定され、容器の内部に水が注入される。そして、容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して光照射部から光が照射されて、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液が製造される。
【0014】
本発明に係る微粒子分散液製造装置では、容器が、複数の凹部を有していて、残存物を複数の凹部の底面それぞれに固定し、光照射部が、容器の複数の凹部の底面それぞれに固定された残存物に対して光を照射するのが好適である。このとき、容器の複数の凹部の底面それぞれがガラス製であり、容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光照射部により光を照射して、その照射した光を底面,残存物および水の順に進行させるのが好適である。また、容器の複数の凹部の底面それぞれが平面であり、容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光照射部により光を照射して、その照射した光を底面,残存物および水の順に進行させるのが好適である。
【0015】
本発明に係る微粒子分散液製造装置では、光照射部は、光を出力する光源と、この光源から出力された光を分岐して容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して同時に照射する分岐部と、を含むのが好適である。或いは、光照射部は、光を出力する光源と、この光源から出力された光を回折させて容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して同時に照射する回折部と、を含むのも好適である。また、或いは、光照射部は、光を出力する光源と、この光源から出力された光を走査して容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して順次に照射する走査部と、を含むのも好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高効率かつ短時間に微粒子分散液を製造することができる。また、一つの小スケールの凹部を有する容器の内壁に固定された残存物を確実に微粒子化し、前記残存物の数を飛躍的に増やすことによって、その結果得られる微粒子分散液の量を増加させる製造方法であり、微粒子の形状や粒径も安定し大量生産ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10の構成図である。この図に示されるように、微粒子分散液製造装置10は、光照射部20、容器30および温度制御部40を備え、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された微粒子分散液を製造するものである。
【0019】
容器30は、被処理液が容れられるものであって、1次元状または2次元状に配列された複数の凹部31を有する。容器30の複数の凹部31の底面それぞれは、平面であって、光照射部20から出力されるレーザ光Lが透過し得る材料からなり、好適にはガラス製である。このような容器30として好適にはマイクロタイタープレートが用いられる。
【0020】
温度制御部40は、恒温槽,温度計および温調手段を含み、温度計および温調手段によるフィードバック制御により、恒温槽内に収納された容器30及び容器30内部に容れられた被処理液を温度一定に維持する。恒温槽は、光照射部20から出力されるレーザ光Lが通過する部分が透明窓となっている。
【0021】
光照射部20は、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に向けてレーザ光Lを出射するものであり、好適には波長900nm以上の赤外パルスレーザ光Lを出射する。また、光照射部20は、容器30へ照射されるレーザ光Lの強度および照射時間の双方または何れか一方を調整することができるのが好ましい。
【0022】
図2は、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10に含まれる容器30の一例を示す斜視図である。この図に示される容器30は、24個の凹部31が4行6列に2次元状に配列されたものである。24個の凹部31それぞれの底面は、平面であって、ガラス製である。また、24個の凹部31は、共通の形状を有していて、底面の厚みが互いにひとしい。
【0023】
次に、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10の動作について説明するとともに、本実施形態に係る微粒子分散液製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る微粒子分散液製造方法を説明するフローチャートである。本実施形態に係る微粒子分散液製造方法は、溶解工程S1,固定工程S2,注水工程S3および照射工程S4を順に行うことで、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する。
【0024】
溶解工程S1では、難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解される。この溶解工程では、容器30を用いて溶解が行われてもよいし、容器30とは別の容器を用いて溶解が行われてもよい。
【0025】
ここで、難溶性薬物は、水にほとんど溶けない薬物であり、その溶解度については特に限定されないが、温度25℃において溶解度が50μg/mL以下のものが望ましい。難溶性薬物は、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ニフェジピン、塩酸ニカルジピン、フェニトイン、ジギトキシン、ジアゼパム、ニトロフラントイン、ベノキサプロフェン、グリセオフルビン、スルファチアゾール、ピロキシカム、カルバマゼピン、フェナセチン、トルブタミド、テオフィリン、グリセオフルビン、クロラムフェニコール、パクリタキセル、カンプトテシン、シスプラチン、ダウノルビシン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ドセタキセル、ビンクリスチン、アンホテリシンB、ナイスタチン、イブプロフェン、酪酸クロベタゾン等の副腎皮質ホルモン類などの市販薬、及び、その他の開発中の新薬候補化合物が挙げられる。
【0026】
分散安定化剤は高分子ポリマーまたは界面活性剤であるのが好適である。高分子ポリマーは、水溶性が高く、種々の有機溶媒に溶け易い物質であるのが望ましい。高分子ポリマーは、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。界面活性剤は、低毒性のものであるのが望ましく、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0027】
有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられ、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類である。
【0028】
溶解工程S1に続く固定工程S2では、溶解工程S1において得られた溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去され、当該有機溶媒除去によりペレット状の残存物1が得られ、この残存物1が容器30の複数箇所それぞれの内壁(底面)に固定される。なお、前の溶解工程S1において容器30とは別の容器を用いて溶解が行われた場合には、その溶解液が容器30の複数の凹部31それぞれに分注されて、各々の凹部31において有機溶媒が蒸発除去され、各々の凹部31の底面に残存物1が固定される。固定工程S2に続く注水工程S3では、容器30の複数の凹部31それぞれに水2が注入される。この注水により、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定されている残存物1は水2に浸漬される(図1参照)。
【0029】
そして、注水工程S3に続く照射工程S4では、光照射部20から出射されたレーザ光Lが容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に又は順次に照射され、これにより、残存物1が粉砕されて微粒子とされ、この微粒子が水2に分散されてなる微粒子分散液が製造される。この微粒子は、難溶性薬物および分散安定化剤を含むものである。
【0030】
本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または本実施形態に係る微粒子分散液製造方法によれば、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定されたペレット状の残存物1にレーザ光Lが高効率に照射されるので、高効率かつ短時間に微粒子分散液を製造することができる。また、好適には波長900nm以上の赤外パルスレーザ光が出射され、多光子過程が起こらない程度の比較的弱い光照射でも微粒子が生成されるので、薬物分解等の問題が抑制され得る。また、本実施形態では、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に又は順次にレーザ光Lが照射されて、これにより微粒子分散液が製造されるので、生産性が優れる。
【0031】
このようにして製造された微粒子分散液から、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が製造される。また、微粒子分散液を凍結乾燥して凍結乾燥微粒子が製造される。さらに、微粒子分散液,微粒子または凍結乾燥微粒子を含有する経口投与用製剤が製造され、また、微粒子分散液,微粒子または凍結乾燥微粒子を水に再懸濁して得られる分散液を含有する注射投与用製剤が製造される。
【0032】
照射工程S4において、図1に示されるように、容器30の内壁のうち残存物1が固定された領域の外側(すなわち、容器30の複数の凹部31それぞれの底面の下側)からレーザ光Lが照射されて、その照射されたレーザ光Lが容器30,残存物1および水2の順に進行するのが好適である。このようにすることにより、残存物1と水2との界面近傍において微粒子が生成され、その微粒子は直ちに水2に分散される。この界面へのレーザ光照射は常に残存物1を経て行われるので、水2に高濃度の微粒子が含まれている状態であっても、微粒子生成の効率は低下せず、一定の効率で微粒子が生成される。
【0033】
照射工程S4において、光照射部20から残存物1に対して波長900nm以上のレーザ光Lが照射されるのが好適である。このような波長のレーザ光Lが残存物1に照射されることで、残存物1に含まれる薬物の光劣化が更に抑制され得る。また、残存物1を経て界面にレーザ光Lが到達して該界面で微粒子が生成されることから、残存物1に対して吸光度が小さい波長のレーザ光Lが残存物1に照射されるのが好ましい。具体的には、残存物1に対する吸光度が0.01程度以下である波長のレーザ光Lが残存物1に照射されるのが好ましい。
【0034】
照射工程S4において、残存物1への光照射の強度および時間の双方または何れか一方が調整されるのが好ましく、このようにすることにより、光照射により生成される微粒子の粒径が制御され得る。また、残存物1への光照射の際に当該照射領域または容器内が温度制御部40により一定温度に維持されるのが好ましく、このようにすることにより、光照射により生成される微粒子の粒径が安定化される。
【0035】
容器30として密閉容器が用いられて、溶解工程S1,固定工程S2,注水工程S3および照射工程S4が滅菌下で行われるのが好適である。あるいは、溶解工程S1を非滅菌下で行い、当該溶解液をフィルター滅菌した後、固定工程S2,注水工程S3および照射工程S4を滅菌下で行ってもよい。すなわち、本実施形態では、容器30外部から光照射するだけの簡易な手法であるので、密閉容器でも実施することができ、滅菌下での注射剤製造も容易である。
【0036】
図4は、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または微粒子分散液製造方法において用いられる容器30の変形例の構成図である。図1および図2に示された容器30と同様に、この図4に示される変形例の容器30Aは、1次元状または2次元状に配列された複数の凹部31を有し、各々の凹部31の底面が平面であってガラス製である。しかし、図1および図2に示された容器30と対比すると、この図4に示される変形例の容器30Aは、互いに隣り合う2つの凹部31の間の壁32において上部がテーパ状になっていて、また、複数の凹部31を囲む周囲の壁33が凹部31間の壁32より高くなっている。
【0037】
このような容器30Aを用いて溶解工程S1をも行うことができる。すなわち、溶解工程S1において難溶性薬物および分散安定化剤を揮発性の有機溶媒に溶解させる際に、その溶解液の液面の高さを壁32より高く且つ壁33より低くすれば、容器30Aにおいて一括して溶解液を得ることができる。そして、その後、直ちに固定工程S2を行うことができる。すなわち、他の容器を用いる必要がなく、溶解工程S1と固定工程S2との間の分注が不要となり、溶解工程S1,固定工程S2,注水工程S3および照射工程S4を続けて行うことができる。また、凹部31間の壁32において上部がテーパ状になっているので、固定工程S2において各凹部31の底面に残存物1が効率よく得られる。
【0038】
次に、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または微粒子分散液製造方法において用いられる光照射部20の構成例について説明する。
【0039】
図5は、光照射部20の第1構成例である光照射部20Aの構成を示す図である。この第1構成例の光照射部20Aは、レーザ光源21,照射光制御部22および複数のビームスプリッタ23を含む。レーザ光源21はレーザ光を出力する。照射光制御部22は、レーザ光源21から出射されるレーザ光の強度および照射時間の双方または何れか一方を調整する。複数のビームスプリッタ23は、照射光制御部22から出力されたレーザ光を分岐する。複数のビームスプリッタ23は、光を分岐して容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して同時に照射する分岐部として作用する。この光照射部20Aは、複数のビームスプリッタ23により分岐したレーザ光を、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に照射することができる。なお、ビームスプリッタ23は、容器30の凹部31の個数と同じ個数だけ設けられる。
【0040】
図6は、光照射部20の第2構成例である光照射部20Bの構成を示す図である。この第2構成例の光照射部20Bは、レーザ光源21,照射光制御部22,複数本の光ファイバ24および複数のコリメータ25を含む。複数本の光ファイバ24それぞれは、その光入射端側が束ねられていて、照射光制御部22から出力されたレーザ光を光入射端に同時に入力する。また、複数本の光ファイバ24それぞれは、その光出射端側にコリメータ25が設けられていて、このコリメータ25によりレーザ光Lをコリメートして同時に出力する。複数本の光ファイバ24および複数のコリメータ25は、光を分岐して容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して同時に照射する分岐部として作用する。この光照射部20Bは、複数のコリメータ25それぞれによりコリメートしたレーザ光を、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に照射することができる。なお、光ファイバ24およびコリメータ25それぞれは、容器30の凹部31の個数と同じ個数だけ設けられる。
【0041】
図7は、光照射部20の第3構成例である光照射部20Cの構成を示す図である。この第3構成例の光照射部20Cは、レーザ光源21,照射光制御部22,回折格子26およびレンズ27を含む。回折格子26は、照射光制御部22から出力されたレーザ光を入力して、このレーザ光を複数の回折次数それぞれで回折させて複数の回折光を出力する。レンズ27と回折格子26との間の距離はレンズ27の焦点距離と等しい。レンズ27は、回折格子26から出力される複数の回折光を互いに平行とする。容器30の内壁に固定された残存物1は、レンズ27とレンズ結像面との間に照射面積に応じて設置する。回折格子26およびレンズ27は、光を回折させて容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して同時に照射する回折部として作用する。この光照射部20Cは、レンズ27から出力された複数のレーザ光を、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に照射することができる。
【0042】
なお、マイクロタイタープレートという容器の大きさを考慮すると、大きな回折角を得るためには、長い焦点距離を持つレンズや、大きな口径を持つレンズが必要となる。そこで、例えば4×6の24穴マイクロタイタープレートを容器30として用いる場合、まず、図5のようにビームスプリッタで2×3の6つの光束を作り、それから、各光束に対して、図7のように回折格子により4本の光束を作り、全部で24本の光束を得る。このようにビームスプリッタと回折格子とを組み合わせる光照射方法は非常に好適である。
【0043】
図8は、光照射部20の第4構成例である光照射部20Dの構成を示す図である。この第4構成例の光照射部20Dは、レーザ光源21,照射光制御部22,ビームエキスパンダ28および空間光変調器29を含む。ビームエキスパンダ28は、照射光制御部22から出力されたレーザ光のビーム断面を拡大し、また、必要に応じてレーザ光のビーム断面形状を矩形に変換する。空間光変調器29は、透過型または反射型のホログラムとして作用するものであり、ビームエキスパンダ28から出力されたレーザ光を入力し、この入力したレーザ光のビーム断面の各位置において振幅または位相を変調して、その変調後のレーザ光を出力する。空間光変調器29は、光を回折させて容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して同時に照射する回折部として作用する。この光照射部20Dは、空間光変調器29から出力されたレーザ光を、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に照射することができる。
【0044】
図9は、光照射部20の第5構成例である光照射部20Eの構成を示す図である。この第5構成例の光照射部20Eは、レーザ光源21,照射光制御部22,可動ミラー51およびレンズ52を含む。ミラー51は、照射光制御部22から出力されたレーザ光を反射する。ミラー51は、反射面の方位が可変であり、その方位に応じた方向へレーザ光を反射する。レンズ52と可動ミラー51との間の距離はレンズ52の焦点距離と等しい。レンズ52は、可動ミラー51により反射されたレーザ光を入力して、このレーザ光を所定方向へ出力する。可動ミラー51およびレンズ52は、光を走査して容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して順次に照射する走査部として作用する。この光照射部20Eは、レンズ52から出力されたレーザ光Lを、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して順次に照射することができる。
【0045】
図10は、光照射部20の第6構成例である光照射部20Fの構成を示す図である。この図には、第6構成例の光照射部20Fに加えて複数個の容器30も示されている。第6構成例の光照射部20Fは、レーザ光源21,照射光制御部22および複数のビームスプリッタ53を含む。複数のビームスプリッタ53は、照射光制御部22から出力されたレーザ光を分岐する。複数のビームスプリッタ53は、光を分岐して複数の容器30それぞれの内壁の何れかの箇所に固定された残存物1に対して同時に照射する分岐部として作用する。また、複数の容器30は、共通の構成を有し、並列配置されており、これら一体として底面に平行な方向に移動可能である。この構成では、複数のビームスプリッタ53によるレーザ光の分岐により、各容器30の内壁の何れかの箇所に固定された残存物1に対して同時にレーザ光が照射され、また、複数の容器30の移動により、各容器30において複数の凹部それぞれの底面に固定された残存物1に対して順次にレーザ光が照射される。
【0046】
なお、複数のビームスプリッタ53により分岐したレーザ光の光強度が等しくなるように各ビームスプリッタ53の反射率を決定する。図10では、ビームスプリッタ53a、53b、53cの反射率をそれぞれ約33%、約50%、約100%とすることによって各光束の光強度が等しくなる。
【実施例1】
【0047】
次に、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置または微粒子分散液製造方法のより具体的な実施例について説明する。
【0048】
先ず実施例1について説明する。実施例1では、難溶性薬物である免疫抑制薬CyclosporinA(シクロスポリンA、以下「CsA」という。)の微粒子分散液を調製した。難溶性薬物としてのCsA原末(5mg)と、分散安定化剤としてのポリビニルピロリドン(25mg)およびラウリル硫酸ナトリウム(1mg)とを試験管にとり、揮発性有機溶媒であるエタノール(500μL)により溶解した。この溶解液を容器30の複数の凹部31それぞれに分注して、減圧条件下でエタノールを乾固し、薬物と分散安定化剤との混合物(残存物)を得た。この得られた混合物に水を添加して密閉した。
【0049】
容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された混合物に対して、容器30の下方からNd:YAGパルスレーザ光を照射した。照射条件は、波長1064nm、照射光強度0.61J/cm2/pulse、パルス幅5〜7ns、繰り返し周波数10Hzであった。10分間照射を行った後、軽く振倒することで均一に白濁化した分散液が得られた。本実施例において、上記の操作は全て室温(20℃)で行った。
【0050】
高速液体クロマトグラフィ(High performance liquid chromatography、以下「HPLC」という。)を用いて波長210nmの吸光度を測定することにより、得られた分散液に含まれるCsA量を定量した。分離担体としてODS-C18(東ソー株式会社製)を用い、移動相としてアセトニトリル-イソプロパノール-水(2:5:3)を使用して、温度50℃で行った。標品としてCsA原末を1mg/mLとなるようにアセトニトリル-水(1:1)に溶解したものを使用した。CsAは約8分の位置に溶出し、標品を測定して得られたピーク面積を元に試料中のCsA量を比較計算して算出した結果、微粒子分散液中のCsA量は8.24±0.05mg/mL(n=3)であった(図11)。水に対する溶解度(23μg/mL)に比べて十分に高濃度の微粒子分散液を調製することができた。HPLCチャート上には、レーザ照射による共雑物ピークの増加は認められなかった。
【0051】
実施例1で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の粒度分布を測定した。粒径測定の際に用いた測定装置はSALD-7000(株式会社島津製作所製)であった。粒径150〜1500nmの範囲で、300nmおよび800nmにピークをもつ粒度分布が得られた(図12)。粒度の揃った均一な微粒子懸濁液であると考えられる。
【0052】
実施例1で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡写真を撮影した。測定装置には走査電子顕微鏡S4200(株式会社日立製作所製)を用いた。この写真を見たところ、微粒子の形状は球形であり、200〜300nm程度の粒子径の微粒子が多く認められた(図13)。これはHPLCによる粒度分布のデータとも一致しており、均一な微粒子群であると考えられる。
【0053】
以上のように、粒径が揃ったCsA微粒子が分散された微粒子分散液を調製することができた。レーザ照射中の液相温度,照射強度および照射時間を変化させることにより、異なる粒子径の微粒子分散液を調製することが可能であった(以下の実施例を参照)。また、得られた分散液は室温で数日静置しても、沈殿はほとんど認められなかった。さらに、凍結乾燥が可能であり、凍結乾燥前と再懸濁後との間で分散液について粒度分布および電子顕微鏡像に有意な差は認められなかった。
【実施例2】
【0054】
次に実施例2について説明する。実施例2では、分散安定化剤としてポロキサマー407(50mg)を用いた。その他の製造条件および顕微鏡観察条件は実施例1と同様である。実施例2で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡写真を見たところ、微粒子の形状は球形であり、マイクロメートルサイズ以下の粒子径の微粒子が多く認められた。
【実施例3】
【0055】
次に実施例3について説明する。実施例3では、試験管内の混合物(残存物)へ照射するレーザ光の強度を0.30または0.61J/cm2/pulseとした。その他の製造条件および顕微鏡観察条件は実施例1と同様である。実施例3で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡写真を見たところ、微粒子の形状は球形であり、照射強度により粒子径は変化し、照射光強度が小さい方が粒子径は小さかった。これらの結果から、照射光強度が大きいほど、生成する微粒子の粒子径は増大すると考えられる。
【実施例4】
【0056】
次に実施例4について説明する。実施例4では、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された混合物(残存物)へレーザ光を照射する時間を10,60または180分間とした。その他の製造条件および顕微鏡観察条件は実施例1と同様である。実施例4で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡写真を見たところ、微粒子の形状は球形であり、照射時間により粒子径は変化した。照射時間10分の試料では粒径200〜500nmの微粒子が多いのに対し、照射時間60分の試料では粒径500nm〜1μmの微粒子が多く、照射時間180分の試料では1μmを超える粒子径をもつ微粒子が多く認められた。これらの結果から、照射時間が長いほど、生成する微粒子の粒子径は増大すると考えられる。
【実施例5】
【0057】
次に実施例5について説明する。実施例5では、難溶性薬物として抗炎症薬clobetasonebutyrate(酪酸クロベタゾン)を用いて、clobetasone butyrateの微粒子分散液を調製した。その他の製造条件,粒度分布測定条件および顕微鏡観察条件は実施例1と同様である。実施例5で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の粒度分布および電子顕微鏡写真から、微粒子の形状は球形であり、マイクロメートルサイズ以下の粒子径の微粒子が多く認められ、分散液中の微粒子は200nmから1μmの間に存在しており、粒度の揃った均一な微粒子懸濁液であると考えられる。
【実施例6】
【0058】
次に実施例6について説明する。実施例6では、難溶性薬物として抗てんかん薬nifedipine(ニフェジピン)を用いて、nifedipineの微粒子分散液を調製した。その他の製造条件および粒度分布測定条件は実施例1と同様である。実施例6で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の粒度分布から、分散液中の微粒子は200nmから2μmの間に存在しており、400nmおよび1.2μmそれぞれに粒径ピークをもつ分散液であると考えられる。
【実施例7】
【0059】
次に実施例7について説明する。実施例7では、難溶性薬物として抗炎症薬ibuprofen(イブプロフェン)を用いて、ibuprofenの微粒子分散液を調製した。その他の製造条件および粒度分布測定条件は実施例1と同様である。実施例7で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の粒度分布から、分散液中の微粒子は250nmから1μmの間に存在しており、700nmに粒径ピークをもつ粒度の揃った均一な微粒子懸濁液であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10の構成図である。
【図2】本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または微粒子分散液製造方法において用いられる容器30の一例を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る微粒子分散液製造方法を説明するフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または微粒子分散液製造方法において用いられる容器30の変形例の構成図である。
【図5】光照射部20の第1構成例である光照射部20Aの構成を示す図である。
【図6】光照射部20の第2構成例である光照射部20Bの構成を示す図である。
【図7】光照射部20の第3構成例である光照射部20Cの構成を示す図である。
【図8】光照射部20の第4構成例である光照射部20Dの構成を示す図である。
【図9】光照射部20の第5構成例である光照射部20Eの構成を示す図である。
【図10】光照射部20の第6構成例である光照射部20Fの構成を示す図である。
【図11】実施例1で得られたナノ粒子化シクロスポリンAのHPLCチャートである。
【図12】実施例1で得られたシクロスポリンAナノ粒子の粒子径分布を示す図である。
【図13】実施例1で得られたシクロスポリンAナノ粒子の電子顕微鏡像である。
【符号の説明】
【0061】
1…残存物、2…水、10…微粒子分散液製造装置、20,20A〜20F…光照射部、21…レーザ光源、22…照射光制御部、23…ビームスプリッタ、24…光ファイバ、25…コリメータ、26…回折格子、27…レンズ、28…ビームエキスパンダ、29…空間光変調器、30,30A…容器、40…温度制御部、51…可動ミラー、52…レンズ、53…ビームスプリッタ、L…レーザ光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子分散液を製造する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の新規医薬品の開発において、候補化合物を合成する際にコンビナトリアルケミストリーの手法が採用されている。このコンビナトリアルケミストリーとは、組み合わせを利用して多種・多様な化合物を短期間で一度に合成する技術である。本手法で得られる化合物は、多くの場合、溶解性の問題を有している。すなわち、化合物自身に優れた生理活性を見出すことができても、その化合物が水に溶けにくい性質がある場合、その化合物の開発を断念する例が多い。また、天然物からの抽出によって得られる化合物も、溶解性を改善するため様々な有機合成が行われ構造最適化が行われる。すでに市販されている医薬品にも溶解性の低いものがある。これらは、患者個体内及び個体間で薬物の吸収量に変動幅があり、血中濃度の管理など、使用する側の医師および使用される側の患者の双方にとって負担が大きい。
【0003】
これらの問題点を解消し得るものとして微粒子製剤が注目を集めている。微粒子製剤は、難溶性の薬物粒子をマイクロメートル以下のサイズにしたものを水中に安定に分散させたものである。微粒子製剤を用いることで、生体内での薬物の吸収速度および量を高めることが可能である。また、患者個体内及び個体間における吸収量のバラツキの低減や、投与量に対する有効利用率の上昇が期待できる。このような微粒子製剤を製造する方法の発明が特許文献1,2に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された発明は、溶媒中に分散させた有機化合物にレーザ光を照射することにより有機化合物の超微粒子を得るものである。特許文献2に開示された発明は、溶媒に分散させた有機バルク結晶に超短パルスレーザ光を照射することにより、非線形吸収によるアブレーションを誘起して有機バルク結晶を粉砕して高分散性飛散物となし、この高分散性飛散物を溶媒により回収することにより、有機化合物の超微粒子を得るものである。
【特許文献1】特開2001−113159号公報
【特許文献2】特開2005−238342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示された発明は、破砕対象である有機化合物または有機バルク結晶が溶媒に分散された状態であることから、有機化合物または有機バルク結晶へのレーザ光照射が偶発的であり、処理効率が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、高効率かつ短時間に微粒子分散液を製造することができる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る微粒子分散液製造方法は、(1) 難溶性薬物および分散安定化剤を揮発性の有機溶媒に溶解させる溶解工程と、(2) この溶解工程において得られた溶解液に含まれる有機溶媒を蒸発除去し、当該有機溶媒除去により得られる残存物を容器の内壁の複数箇所それぞれに固定する固定工程と、(3) この固定工程の後に、容器の内部に水を注入する注水工程と、(4) この注水工程の後に、容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して光を照射して、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する照射工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
なお、溶解工程,固定工程,注水工程および照射工程の全体を通じて1つの容器が用いられてもよい。また、上記残存物を得るまでの工程で用いられる容器と、その残存物の固定以降の工程で用いられる容器とは、互いに別個のものであってもよい。また、複数個の容器が用いられてもよいし、複数の凹部を有する1個の容器(例えばマイクロタイタープレート)が用いられてもよい。
【0009】
この微粒子分散液製造方法によれば、溶解工程において、難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解される。続く固定工程において、溶解工程において得られた溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去され、当該有機溶媒除去により得られる残存物が容器の内壁の複数箇所それぞれに固定される。更に続く注水工程において、容器の内部に水が注入される。そして、照射工程において、容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して光が照射されて、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液が製造される。
【0010】
本発明に係る微粒子分散液製造方法では、固定工程において、複数の凹部を有する容器を用いて残存物を複数の凹部の底面それぞれに固定し、注水工程において、容器の複数の凹部それぞれに水を注入し、照射工程において、容器の複数の凹部の底面それぞれに固定された残存物に対して光を照射するのが好適である。このとき、容器の複数の凹部の底面それぞれがガラス製であり、照射工程において、容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光を照射して、その照射した光を底面,残存物および水の順に進行させるのが好適である。また、容器の複数の凹部の底面それぞれが平面であり、照射工程において、容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光を照射して、その照射した光を底面,残存物および水の順に進行させるのが好適である。
【0011】
本発明に係る微粒子分散液製造方法では、照射工程において、光源から出力された光を分岐部により分岐して容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して同時に照射するのが好適である。或いは、照射工程において、光源から出力された光を回折部により回折させて容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して同時に照射するのも好適である。また、或いは、照射工程において、光源から出力された光を走査部により走査して容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して順次に照射するのも好適である。
【0012】
本発明に係る微粒子分散液製造装置は、(1) 難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解され、当該溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去されることにより得られる残存物が内壁の複数箇所それぞれに固定され、内部に水が注入される容器と、(2) 容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して光を照射する光照射部と、を備えることを特徴とする。さらに、本発明に係る微粒子分散液製造装置は、光照射部により残存物に対して光を照射することにより、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する、ことを特徴とする。
【0013】
この微粒子分散液製造装置では、難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解され、当該溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去されることにより得られる残存物が容器の内壁の複数箇所それぞれに固定され、容器の内部に水が注入される。そして、容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して光照射部から光が照射されて、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液が製造される。
【0014】
本発明に係る微粒子分散液製造装置では、容器が、複数の凹部を有していて、残存物を複数の凹部の底面それぞれに固定し、光照射部が、容器の複数の凹部の底面それぞれに固定された残存物に対して光を照射するのが好適である。このとき、容器の複数の凹部の底面それぞれがガラス製であり、容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光照射部により光を照射して、その照射した光を底面,残存物および水の順に進行させるのが好適である。また、容器の複数の凹部の底面それぞれが平面であり、容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光照射部により光を照射して、その照射した光を底面,残存物および水の順に進行させるのが好適である。
【0015】
本発明に係る微粒子分散液製造装置では、光照射部は、光を出力する光源と、この光源から出力された光を分岐して容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して同時に照射する分岐部と、を含むのが好適である。或いは、光照射部は、光を出力する光源と、この光源から出力された光を回折させて容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して同時に照射する回折部と、を含むのも好適である。また、或いは、光照射部は、光を出力する光源と、この光源から出力された光を走査して容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物に対して順次に照射する走査部と、を含むのも好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高効率かつ短時間に微粒子分散液を製造することができる。また、一つの小スケールの凹部を有する容器の内壁に固定された残存物を確実に微粒子化し、前記残存物の数を飛躍的に増やすことによって、その結果得られる微粒子分散液の量を増加させる製造方法であり、微粒子の形状や粒径も安定し大量生産ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10の構成図である。この図に示されるように、微粒子分散液製造装置10は、光照射部20、容器30および温度制御部40を備え、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された微粒子分散液を製造するものである。
【0019】
容器30は、被処理液が容れられるものであって、1次元状または2次元状に配列された複数の凹部31を有する。容器30の複数の凹部31の底面それぞれは、平面であって、光照射部20から出力されるレーザ光Lが透過し得る材料からなり、好適にはガラス製である。このような容器30として好適にはマイクロタイタープレートが用いられる。
【0020】
温度制御部40は、恒温槽,温度計および温調手段を含み、温度計および温調手段によるフィードバック制御により、恒温槽内に収納された容器30及び容器30内部に容れられた被処理液を温度一定に維持する。恒温槽は、光照射部20から出力されるレーザ光Lが通過する部分が透明窓となっている。
【0021】
光照射部20は、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に向けてレーザ光Lを出射するものであり、好適には波長900nm以上の赤外パルスレーザ光Lを出射する。また、光照射部20は、容器30へ照射されるレーザ光Lの強度および照射時間の双方または何れか一方を調整することができるのが好ましい。
【0022】
図2は、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10に含まれる容器30の一例を示す斜視図である。この図に示される容器30は、24個の凹部31が4行6列に2次元状に配列されたものである。24個の凹部31それぞれの底面は、平面であって、ガラス製である。また、24個の凹部31は、共通の形状を有していて、底面の厚みが互いにひとしい。
【0023】
次に、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10の動作について説明するとともに、本実施形態に係る微粒子分散液製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る微粒子分散液製造方法を説明するフローチャートである。本実施形態に係る微粒子分散液製造方法は、溶解工程S1,固定工程S2,注水工程S3および照射工程S4を順に行うことで、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する。
【0024】
溶解工程S1では、難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解される。この溶解工程では、容器30を用いて溶解が行われてもよいし、容器30とは別の容器を用いて溶解が行われてもよい。
【0025】
ここで、難溶性薬物は、水にほとんど溶けない薬物であり、その溶解度については特に限定されないが、温度25℃において溶解度が50μg/mL以下のものが望ましい。難溶性薬物は、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ニフェジピン、塩酸ニカルジピン、フェニトイン、ジギトキシン、ジアゼパム、ニトロフラントイン、ベノキサプロフェン、グリセオフルビン、スルファチアゾール、ピロキシカム、カルバマゼピン、フェナセチン、トルブタミド、テオフィリン、グリセオフルビン、クロラムフェニコール、パクリタキセル、カンプトテシン、シスプラチン、ダウノルビシン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ドセタキセル、ビンクリスチン、アンホテリシンB、ナイスタチン、イブプロフェン、酪酸クロベタゾン等の副腎皮質ホルモン類などの市販薬、及び、その他の開発中の新薬候補化合物が挙げられる。
【0026】
分散安定化剤は高分子ポリマーまたは界面活性剤であるのが好適である。高分子ポリマーは、水溶性が高く、種々の有機溶媒に溶け易い物質であるのが望ましい。高分子ポリマーは、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。界面活性剤は、低毒性のものであるのが望ましく、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0027】
有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられ、より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類である。
【0028】
溶解工程S1に続く固定工程S2では、溶解工程S1において得られた溶解液に含まれる有機溶媒が蒸発除去され、当該有機溶媒除去によりペレット状の残存物1が得られ、この残存物1が容器30の複数箇所それぞれの内壁(底面)に固定される。なお、前の溶解工程S1において容器30とは別の容器を用いて溶解が行われた場合には、その溶解液が容器30の複数の凹部31それぞれに分注されて、各々の凹部31において有機溶媒が蒸発除去され、各々の凹部31の底面に残存物1が固定される。固定工程S2に続く注水工程S3では、容器30の複数の凹部31それぞれに水2が注入される。この注水により、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定されている残存物1は水2に浸漬される(図1参照)。
【0029】
そして、注水工程S3に続く照射工程S4では、光照射部20から出射されたレーザ光Lが容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に又は順次に照射され、これにより、残存物1が粉砕されて微粒子とされ、この微粒子が水2に分散されてなる微粒子分散液が製造される。この微粒子は、難溶性薬物および分散安定化剤を含むものである。
【0030】
本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または本実施形態に係る微粒子分散液製造方法によれば、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定されたペレット状の残存物1にレーザ光Lが高効率に照射されるので、高効率かつ短時間に微粒子分散液を製造することができる。また、好適には波長900nm以上の赤外パルスレーザ光が出射され、多光子過程が起こらない程度の比較的弱い光照射でも微粒子が生成されるので、薬物分解等の問題が抑制され得る。また、本実施形態では、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に又は順次にレーザ光Lが照射されて、これにより微粒子分散液が製造されるので、生産性が優れる。
【0031】
このようにして製造された微粒子分散液から、難溶性薬物および分散安定化剤を含む微粒子が製造される。また、微粒子分散液を凍結乾燥して凍結乾燥微粒子が製造される。さらに、微粒子分散液,微粒子または凍結乾燥微粒子を含有する経口投与用製剤が製造され、また、微粒子分散液,微粒子または凍結乾燥微粒子を水に再懸濁して得られる分散液を含有する注射投与用製剤が製造される。
【0032】
照射工程S4において、図1に示されるように、容器30の内壁のうち残存物1が固定された領域の外側(すなわち、容器30の複数の凹部31それぞれの底面の下側)からレーザ光Lが照射されて、その照射されたレーザ光Lが容器30,残存物1および水2の順に進行するのが好適である。このようにすることにより、残存物1と水2との界面近傍において微粒子が生成され、その微粒子は直ちに水2に分散される。この界面へのレーザ光照射は常に残存物1を経て行われるので、水2に高濃度の微粒子が含まれている状態であっても、微粒子生成の効率は低下せず、一定の効率で微粒子が生成される。
【0033】
照射工程S4において、光照射部20から残存物1に対して波長900nm以上のレーザ光Lが照射されるのが好適である。このような波長のレーザ光Lが残存物1に照射されることで、残存物1に含まれる薬物の光劣化が更に抑制され得る。また、残存物1を経て界面にレーザ光Lが到達して該界面で微粒子が生成されることから、残存物1に対して吸光度が小さい波長のレーザ光Lが残存物1に照射されるのが好ましい。具体的には、残存物1に対する吸光度が0.01程度以下である波長のレーザ光Lが残存物1に照射されるのが好ましい。
【0034】
照射工程S4において、残存物1への光照射の強度および時間の双方または何れか一方が調整されるのが好ましく、このようにすることにより、光照射により生成される微粒子の粒径が制御され得る。また、残存物1への光照射の際に当該照射領域または容器内が温度制御部40により一定温度に維持されるのが好ましく、このようにすることにより、光照射により生成される微粒子の粒径が安定化される。
【0035】
容器30として密閉容器が用いられて、溶解工程S1,固定工程S2,注水工程S3および照射工程S4が滅菌下で行われるのが好適である。あるいは、溶解工程S1を非滅菌下で行い、当該溶解液をフィルター滅菌した後、固定工程S2,注水工程S3および照射工程S4を滅菌下で行ってもよい。すなわち、本実施形態では、容器30外部から光照射するだけの簡易な手法であるので、密閉容器でも実施することができ、滅菌下での注射剤製造も容易である。
【0036】
図4は、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または微粒子分散液製造方法において用いられる容器30の変形例の構成図である。図1および図2に示された容器30と同様に、この図4に示される変形例の容器30Aは、1次元状または2次元状に配列された複数の凹部31を有し、各々の凹部31の底面が平面であってガラス製である。しかし、図1および図2に示された容器30と対比すると、この図4に示される変形例の容器30Aは、互いに隣り合う2つの凹部31の間の壁32において上部がテーパ状になっていて、また、複数の凹部31を囲む周囲の壁33が凹部31間の壁32より高くなっている。
【0037】
このような容器30Aを用いて溶解工程S1をも行うことができる。すなわち、溶解工程S1において難溶性薬物および分散安定化剤を揮発性の有機溶媒に溶解させる際に、その溶解液の液面の高さを壁32より高く且つ壁33より低くすれば、容器30Aにおいて一括して溶解液を得ることができる。そして、その後、直ちに固定工程S2を行うことができる。すなわち、他の容器を用いる必要がなく、溶解工程S1と固定工程S2との間の分注が不要となり、溶解工程S1,固定工程S2,注水工程S3および照射工程S4を続けて行うことができる。また、凹部31間の壁32において上部がテーパ状になっているので、固定工程S2において各凹部31の底面に残存物1が効率よく得られる。
【0038】
次に、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または微粒子分散液製造方法において用いられる光照射部20の構成例について説明する。
【0039】
図5は、光照射部20の第1構成例である光照射部20Aの構成を示す図である。この第1構成例の光照射部20Aは、レーザ光源21,照射光制御部22および複数のビームスプリッタ23を含む。レーザ光源21はレーザ光を出力する。照射光制御部22は、レーザ光源21から出射されるレーザ光の強度および照射時間の双方または何れか一方を調整する。複数のビームスプリッタ23は、照射光制御部22から出力されたレーザ光を分岐する。複数のビームスプリッタ23は、光を分岐して容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して同時に照射する分岐部として作用する。この光照射部20Aは、複数のビームスプリッタ23により分岐したレーザ光を、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に照射することができる。なお、ビームスプリッタ23は、容器30の凹部31の個数と同じ個数だけ設けられる。
【0040】
図6は、光照射部20の第2構成例である光照射部20Bの構成を示す図である。この第2構成例の光照射部20Bは、レーザ光源21,照射光制御部22,複数本の光ファイバ24および複数のコリメータ25を含む。複数本の光ファイバ24それぞれは、その光入射端側が束ねられていて、照射光制御部22から出力されたレーザ光を光入射端に同時に入力する。また、複数本の光ファイバ24それぞれは、その光出射端側にコリメータ25が設けられていて、このコリメータ25によりレーザ光Lをコリメートして同時に出力する。複数本の光ファイバ24および複数のコリメータ25は、光を分岐して容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して同時に照射する分岐部として作用する。この光照射部20Bは、複数のコリメータ25それぞれによりコリメートしたレーザ光を、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に照射することができる。なお、光ファイバ24およびコリメータ25それぞれは、容器30の凹部31の個数と同じ個数だけ設けられる。
【0041】
図7は、光照射部20の第3構成例である光照射部20Cの構成を示す図である。この第3構成例の光照射部20Cは、レーザ光源21,照射光制御部22,回折格子26およびレンズ27を含む。回折格子26は、照射光制御部22から出力されたレーザ光を入力して、このレーザ光を複数の回折次数それぞれで回折させて複数の回折光を出力する。レンズ27と回折格子26との間の距離はレンズ27の焦点距離と等しい。レンズ27は、回折格子26から出力される複数の回折光を互いに平行とする。容器30の内壁に固定された残存物1は、レンズ27とレンズ結像面との間に照射面積に応じて設置する。回折格子26およびレンズ27は、光を回折させて容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して同時に照射する回折部として作用する。この光照射部20Cは、レンズ27から出力された複数のレーザ光を、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に照射することができる。
【0042】
なお、マイクロタイタープレートという容器の大きさを考慮すると、大きな回折角を得るためには、長い焦点距離を持つレンズや、大きな口径を持つレンズが必要となる。そこで、例えば4×6の24穴マイクロタイタープレートを容器30として用いる場合、まず、図5のようにビームスプリッタで2×3の6つの光束を作り、それから、各光束に対して、図7のように回折格子により4本の光束を作り、全部で24本の光束を得る。このようにビームスプリッタと回折格子とを組み合わせる光照射方法は非常に好適である。
【0043】
図8は、光照射部20の第4構成例である光照射部20Dの構成を示す図である。この第4構成例の光照射部20Dは、レーザ光源21,照射光制御部22,ビームエキスパンダ28および空間光変調器29を含む。ビームエキスパンダ28は、照射光制御部22から出力されたレーザ光のビーム断面を拡大し、また、必要に応じてレーザ光のビーム断面形状を矩形に変換する。空間光変調器29は、透過型または反射型のホログラムとして作用するものであり、ビームエキスパンダ28から出力されたレーザ光を入力し、この入力したレーザ光のビーム断面の各位置において振幅または位相を変調して、その変調後のレーザ光を出力する。空間光変調器29は、光を回折させて容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して同時に照射する回折部として作用する。この光照射部20Dは、空間光変調器29から出力されたレーザ光を、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して同時に照射することができる。
【0044】
図9は、光照射部20の第5構成例である光照射部20Eの構成を示す図である。この第5構成例の光照射部20Eは、レーザ光源21,照射光制御部22,可動ミラー51およびレンズ52を含む。ミラー51は、照射光制御部22から出力されたレーザ光を反射する。ミラー51は、反射面の方位が可変であり、その方位に応じた方向へレーザ光を反射する。レンズ52と可動ミラー51との間の距離はレンズ52の焦点距離と等しい。レンズ52は、可動ミラー51により反射されたレーザ光を入力して、このレーザ光を所定方向へ出力する。可動ミラー51およびレンズ52は、光を走査して容器30の内壁の複数箇所それぞれに固定された残存物1に対して順次に照射する走査部として作用する。この光照射部20Eは、レンズ52から出力されたレーザ光Lを、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された残存物1に対して順次に照射することができる。
【0045】
図10は、光照射部20の第6構成例である光照射部20Fの構成を示す図である。この図には、第6構成例の光照射部20Fに加えて複数個の容器30も示されている。第6構成例の光照射部20Fは、レーザ光源21,照射光制御部22および複数のビームスプリッタ53を含む。複数のビームスプリッタ53は、照射光制御部22から出力されたレーザ光を分岐する。複数のビームスプリッタ53は、光を分岐して複数の容器30それぞれの内壁の何れかの箇所に固定された残存物1に対して同時に照射する分岐部として作用する。また、複数の容器30は、共通の構成を有し、並列配置されており、これら一体として底面に平行な方向に移動可能である。この構成では、複数のビームスプリッタ53によるレーザ光の分岐により、各容器30の内壁の何れかの箇所に固定された残存物1に対して同時にレーザ光が照射され、また、複数の容器30の移動により、各容器30において複数の凹部それぞれの底面に固定された残存物1に対して順次にレーザ光が照射される。
【0046】
なお、複数のビームスプリッタ53により分岐したレーザ光の光強度が等しくなるように各ビームスプリッタ53の反射率を決定する。図10では、ビームスプリッタ53a、53b、53cの反射率をそれぞれ約33%、約50%、約100%とすることによって各光束の光強度が等しくなる。
【実施例1】
【0047】
次に、本実施形態に係る微粒子分散液製造装置または微粒子分散液製造方法のより具体的な実施例について説明する。
【0048】
先ず実施例1について説明する。実施例1では、難溶性薬物である免疫抑制薬CyclosporinA(シクロスポリンA、以下「CsA」という。)の微粒子分散液を調製した。難溶性薬物としてのCsA原末(5mg)と、分散安定化剤としてのポリビニルピロリドン(25mg)およびラウリル硫酸ナトリウム(1mg)とを試験管にとり、揮発性有機溶媒であるエタノール(500μL)により溶解した。この溶解液を容器30の複数の凹部31それぞれに分注して、減圧条件下でエタノールを乾固し、薬物と分散安定化剤との混合物(残存物)を得た。この得られた混合物に水を添加して密閉した。
【0049】
容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された混合物に対して、容器30の下方からNd:YAGパルスレーザ光を照射した。照射条件は、波長1064nm、照射光強度0.61J/cm2/pulse、パルス幅5〜7ns、繰り返し周波数10Hzであった。10分間照射を行った後、軽く振倒することで均一に白濁化した分散液が得られた。本実施例において、上記の操作は全て室温(20℃)で行った。
【0050】
高速液体クロマトグラフィ(High performance liquid chromatography、以下「HPLC」という。)を用いて波長210nmの吸光度を測定することにより、得られた分散液に含まれるCsA量を定量した。分離担体としてODS-C18(東ソー株式会社製)を用い、移動相としてアセトニトリル-イソプロパノール-水(2:5:3)を使用して、温度50℃で行った。標品としてCsA原末を1mg/mLとなるようにアセトニトリル-水(1:1)に溶解したものを使用した。CsAは約8分の位置に溶出し、標品を測定して得られたピーク面積を元に試料中のCsA量を比較計算して算出した結果、微粒子分散液中のCsA量は8.24±0.05mg/mL(n=3)であった(図11)。水に対する溶解度(23μg/mL)に比べて十分に高濃度の微粒子分散液を調製することができた。HPLCチャート上には、レーザ照射による共雑物ピークの増加は認められなかった。
【0051】
実施例1で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の粒度分布を測定した。粒径測定の際に用いた測定装置はSALD-7000(株式会社島津製作所製)であった。粒径150〜1500nmの範囲で、300nmおよび800nmにピークをもつ粒度分布が得られた(図12)。粒度の揃った均一な微粒子懸濁液であると考えられる。
【0052】
実施例1で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡写真を撮影した。測定装置には走査電子顕微鏡S4200(株式会社日立製作所製)を用いた。この写真を見たところ、微粒子の形状は球形であり、200〜300nm程度の粒子径の微粒子が多く認められた(図13)。これはHPLCによる粒度分布のデータとも一致しており、均一な微粒子群であると考えられる。
【0053】
以上のように、粒径が揃ったCsA微粒子が分散された微粒子分散液を調製することができた。レーザ照射中の液相温度,照射強度および照射時間を変化させることにより、異なる粒子径の微粒子分散液を調製することが可能であった(以下の実施例を参照)。また、得られた分散液は室温で数日静置しても、沈殿はほとんど認められなかった。さらに、凍結乾燥が可能であり、凍結乾燥前と再懸濁後との間で分散液について粒度分布および電子顕微鏡像に有意な差は認められなかった。
【実施例2】
【0054】
次に実施例2について説明する。実施例2では、分散安定化剤としてポロキサマー407(50mg)を用いた。その他の製造条件および顕微鏡観察条件は実施例1と同様である。実施例2で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡写真を見たところ、微粒子の形状は球形であり、マイクロメートルサイズ以下の粒子径の微粒子が多く認められた。
【実施例3】
【0055】
次に実施例3について説明する。実施例3では、試験管内の混合物(残存物)へ照射するレーザ光の強度を0.30または0.61J/cm2/pulseとした。その他の製造条件および顕微鏡観察条件は実施例1と同様である。実施例3で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡写真を見たところ、微粒子の形状は球形であり、照射強度により粒子径は変化し、照射光強度が小さい方が粒子径は小さかった。これらの結果から、照射光強度が大きいほど、生成する微粒子の粒子径は増大すると考えられる。
【実施例4】
【0056】
次に実施例4について説明する。実施例4では、容器30の複数の凹部31それぞれの底面に固定された混合物(残存物)へレーザ光を照射する時間を10,60または180分間とした。その他の製造条件および顕微鏡観察条件は実施例1と同様である。実施例4で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の電子顕微鏡写真を見たところ、微粒子の形状は球形であり、照射時間により粒子径は変化した。照射時間10分の試料では粒径200〜500nmの微粒子が多いのに対し、照射時間60分の試料では粒径500nm〜1μmの微粒子が多く、照射時間180分の試料では1μmを超える粒子径をもつ微粒子が多く認められた。これらの結果から、照射時間が長いほど、生成する微粒子の粒子径は増大すると考えられる。
【実施例5】
【0057】
次に実施例5について説明する。実施例5では、難溶性薬物として抗炎症薬clobetasonebutyrate(酪酸クロベタゾン)を用いて、clobetasone butyrateの微粒子分散液を調製した。その他の製造条件,粒度分布測定条件および顕微鏡観察条件は実施例1と同様である。実施例5で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の粒度分布および電子顕微鏡写真から、微粒子の形状は球形であり、マイクロメートルサイズ以下の粒子径の微粒子が多く認められ、分散液中の微粒子は200nmから1μmの間に存在しており、粒度の揃った均一な微粒子懸濁液であると考えられる。
【実施例6】
【0058】
次に実施例6について説明する。実施例6では、難溶性薬物として抗てんかん薬nifedipine(ニフェジピン)を用いて、nifedipineの微粒子分散液を調製した。その他の製造条件および粒度分布測定条件は実施例1と同様である。実施例6で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の粒度分布から、分散液中の微粒子は200nmから2μmの間に存在しており、400nmおよび1.2μmそれぞれに粒径ピークをもつ分散液であると考えられる。
【実施例7】
【0059】
次に実施例7について説明する。実施例7では、難溶性薬物として抗炎症薬ibuprofen(イブプロフェン)を用いて、ibuprofenの微粒子分散液を調製した。その他の製造条件および粒度分布測定条件は実施例1と同様である。実施例7で得られた微粒子分散液に含まれる微粒子の粒度分布から、分散液中の微粒子は250nmから1μmの間に存在しており、700nmに粒径ピークをもつ粒度の揃った均一な微粒子懸濁液であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10の構成図である。
【図2】本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または微粒子分散液製造方法において用いられる容器30の一例を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る微粒子分散液製造方法を説明するフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る微粒子分散液製造装置10または微粒子分散液製造方法において用いられる容器30の変形例の構成図である。
【図5】光照射部20の第1構成例である光照射部20Aの構成を示す図である。
【図6】光照射部20の第2構成例である光照射部20Bの構成を示す図である。
【図7】光照射部20の第3構成例である光照射部20Cの構成を示す図である。
【図8】光照射部20の第4構成例である光照射部20Dの構成を示す図である。
【図9】光照射部20の第5構成例である光照射部20Eの構成を示す図である。
【図10】光照射部20の第6構成例である光照射部20Fの構成を示す図である。
【図11】実施例1で得られたナノ粒子化シクロスポリンAのHPLCチャートである。
【図12】実施例1で得られたシクロスポリンAナノ粒子の粒子径分布を示す図である。
【図13】実施例1で得られたシクロスポリンAナノ粒子の電子顕微鏡像である。
【符号の説明】
【0061】
1…残存物、2…水、10…微粒子分散液製造装置、20,20A〜20F…光照射部、21…レーザ光源、22…照射光制御部、23…ビームスプリッタ、24…光ファイバ、25…コリメータ、26…回折格子、27…レンズ、28…ビームエキスパンダ、29…空間光変調器、30,30A…容器、40…温度制御部、51…可動ミラー、52…レンズ、53…ビームスプリッタ、L…レーザ光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難溶性薬物および分散安定化剤を揮発性の有機溶媒に溶解させる溶解工程と、
この溶解工程において得られた溶解液に含まれる前記有機溶媒を蒸発除去し、当該有機溶媒除去により得られる残存物を容器の内壁の複数箇所それぞれに固定する固定工程と、
この固定工程の後に、前記容器の内部に水を注入する注水工程と、
この注水工程の後に、前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して光を照射して、前記難溶性薬物および前記分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する照射工程と、
を備えることを特徴とする微粒子分散液製造方法。
【請求項2】
前記固定工程において、複数の凹部を有する容器を用いて前記残存物を前記複数の凹部の底面それぞれに固定し、
前記注水工程において、前記容器の複数の凹部それぞれに水を注入し、
前記照射工程において、前記容器の複数の凹部の底面それぞれに固定された前記残存物に対して光を照射する、
ことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項3】
前記容器の複数の凹部の底面それぞれがガラス製であり、
前記照射工程において、前記容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光を照射して、その照射した光を前記底面,前記残存物および水の順に進行させる、
ことを特徴とする請求項2記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項4】
前記容器の複数の凹部の底面それぞれが平面であり、
前記照射工程において、前記容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光を照射して、その照射した光を前記底面,前記残存物および水の順に進行させる、
ことを特徴とする請求項2記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項5】
前記照射工程において、光源から出力された光を分岐部により分岐して前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して同時に照射する、ことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項6】
前記照射工程において、光源から出力された光を回折部により回折させて前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して同時に照射する、ことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項7】
前記照射工程において、光源から出力された光を走査部により走査して前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して順次に照射する、ことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項8】
難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解され、当該溶解液に含まれる前記有機溶媒が蒸発除去されることにより得られる残存物が内壁の複数箇所それぞれに固定され、内部に水が注入される容器と、
前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して光を照射する光照射部と、
を備え、
前記光照射部により前記残存物に対して光を照射することにより、前記難溶性薬物および前記分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する、
ことを特徴とする微粒子分散液製造装置。
【請求項9】
前記容器が、複数の凹部を有していて、前記残存物を前記複数の凹部の底面それぞれに固定し、
前記光照射部が、前記容器の複数の凹部の底面それぞれに固定された前記残存物に対して光を照射する、
ことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項10】
前記容器の複数の凹部の底面それぞれがガラス製であり、
前記容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から前記光照射部により光を照射して、その照射した光を前記底面,前記残存物および水の順に進行させる、
ことを特徴とする請求項9に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項11】
前記容器の複数の凹部の底面それぞれが平面であり、
前記容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から前記光照射部により光を照射して、その照射した光を前記底面,前記残存物および水の順に進行させる、
ことを特徴とする請求項9に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項12】
前記光照射部が、光を出力する光源と、この光源から出力された光を分岐して前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して同時に照射する分岐部と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項13】
前記光照射部が、光を出力する光源と、この光源から出力された光を回折させて前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して同時に照射する回折部と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項14】
前記光照射部が、光を出力する光源と、この光源から出力された光を走査して前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して順次に照射する走査部と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項1】
難溶性薬物および分散安定化剤を揮発性の有機溶媒に溶解させる溶解工程と、
この溶解工程において得られた溶解液に含まれる前記有機溶媒を蒸発除去し、当該有機溶媒除去により得られる残存物を容器の内壁の複数箇所それぞれに固定する固定工程と、
この固定工程の後に、前記容器の内部に水を注入する注水工程と、
この注水工程の後に、前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して光を照射して、前記難溶性薬物および前記分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する照射工程と、
を備えることを特徴とする微粒子分散液製造方法。
【請求項2】
前記固定工程において、複数の凹部を有する容器を用いて前記残存物を前記複数の凹部の底面それぞれに固定し、
前記注水工程において、前記容器の複数の凹部それぞれに水を注入し、
前記照射工程において、前記容器の複数の凹部の底面それぞれに固定された前記残存物に対して光を照射する、
ことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項3】
前記容器の複数の凹部の底面それぞれがガラス製であり、
前記照射工程において、前記容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光を照射して、その照射した光を前記底面,前記残存物および水の順に進行させる、
ことを特徴とする請求項2記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項4】
前記容器の複数の凹部の底面それぞれが平面であり、
前記照射工程において、前記容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から光を照射して、その照射した光を前記底面,前記残存物および水の順に進行させる、
ことを特徴とする請求項2記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項5】
前記照射工程において、光源から出力された光を分岐部により分岐して前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して同時に照射する、ことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項6】
前記照射工程において、光源から出力された光を回折部により回折させて前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して同時に照射する、ことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項7】
前記照射工程において、光源から出力された光を走査部により走査して前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して順次に照射する、ことを特徴とする請求項1記載の微粒子分散液製造方法。
【請求項8】
難溶性薬物および分散安定化剤が揮発性の有機溶媒に溶解され、当該溶解液に含まれる前記有機溶媒が蒸発除去されることにより得られる残存物が内壁の複数箇所それぞれに固定され、内部に水が注入される容器と、
前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して光を照射する光照射部と、
を備え、
前記光照射部により前記残存物に対して光を照射することにより、前記難溶性薬物および前記分散安定化剤を含む微粒子が水に分散された液を製造する、
ことを特徴とする微粒子分散液製造装置。
【請求項9】
前記容器が、複数の凹部を有していて、前記残存物を前記複数の凹部の底面それぞれに固定し、
前記光照射部が、前記容器の複数の凹部の底面それぞれに固定された前記残存物に対して光を照射する、
ことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項10】
前記容器の複数の凹部の底面それぞれがガラス製であり、
前記容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から前記光照射部により光を照射して、その照射した光を前記底面,前記残存物および水の順に進行させる、
ことを特徴とする請求項9に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項11】
前記容器の複数の凹部の底面それぞれが平面であり、
前記容器の複数の凹部の底面それぞれの外側から前記光照射部により光を照射して、その照射した光を前記底面,前記残存物および水の順に進行させる、
ことを特徴とする請求項9に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項12】
前記光照射部が、光を出力する光源と、この光源から出力された光を分岐して前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して同時に照射する分岐部と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項13】
前記光照射部が、光を出力する光源と、この光源から出力された光を回折させて前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して同時に照射する回折部と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散液製造装置。
【請求項14】
前記光照射部が、光を出力する光源と、この光源から出力された光を走査して前記容器の内壁の複数箇所それぞれに固定された前記残存物に対して順次に照射する走査部と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の微粒子分散液製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−79007(P2009−79007A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250071(P2007−250071)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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