説明

微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子およびその製造方法

【課題】光拡散性および集光性等の光学特性、滑り性等の摩擦特性などの向上を図ることができる、ポリマー微粒子を含有し、高アスペクト比を有する楕円状または針状ポリマー粒子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】その内部にポリマー微粒子を含有する微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子であって、ポリマー粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)が(P1)≧1.8を満たす微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロンサイズの高アスペクト比を有する粒子またはフィラーは、充填剤や検体として電子・電気材料、光学材料、建築材料、生物・医薬材料、化粧料等の種々の分野で使用されている。
一般に汎用されている高アスペクト比を有する粒子の多くは、金属酸化物等の無機材料からなるものである。
このような無機材料は、有機物に比べて比重が大きいため、フィルムや成形品等の使用用途によっては均一に分散させることが難しいだけでなく、樹脂と馴染みにくいことから、成形品や、その性能に不都合が生じる場合があった。
【0003】
ところで、近年、樹脂粒子の開発が進むにつれ、従来汎用されていた、粉砕法および溶液重合法等から得られる不定形または球状粒子とは異なる、円板状や扁平状などの特異な形状を有する樹脂粒子が開発されている(特許文献1:特公平6−53805号公報、特許文献2:特開平5−317688号公報等)。
【0004】
これらの粒子は、隠蔽性、白色度、光拡散性等の各特性において、従来の球状粒子よりも優れていることから、情報記録紙等の紙用の塗料・コーティング剤(特許文献3:特開平2−14222号公報)、光拡散用シート(特許文献4:特開2000−39506号公報)などの様々な分野に応用されている。
その一方で、いずれの粒子も板状ではあるものの、タルク,マイカ等の無機化合物からなる板状粒子と比較した場合、滑り性、集光性、光拡散性等の顕著な向上は未だ達成できていない。
【0005】
そこで、これらの特性を向上させるべく、最近、境界線を基準に二つの曲面で形成した特異的な形状を有する樹脂粒子が報告され(特許文献5:国際公開第01/070826号パンフレット)、この樹脂粒子を用いて、滑り性、集光性、光拡散性等の向上が検討されている。
これら各特性は、粒子の大きさやアスペクト比にも大きく左右されるものであるが、特許文献5の方法では、高アスペクト比かつミクロンサイズの粒子を製造することは困難であり、光学特性や、大きさおよび形状等の点において、さらなる改良が求められている。
【0006】
また、高アスペクト比を有する有機物粒子は、例えば、溶融、紡糸および切断の各工程からなる機械的手法により製造することも可能であるが、この方法では、粒子サイズをミクロンサイズまで小さくすることが技術的に困難であるだけでなく、量産化する場合には時間と労力を要する。しかも、このような機械的方法では、中央部分が太く両極に向かうにつれて細くなるような高精度の楕円球状粒子を、破断面の無い状態で得ることは困難である。
【0007】
このような点から、光拡散性および集光性等の光学特性、滑り性等の摩擦特性、付着性、固着性、成形品の耐衝撃強度および引張り強度等の材料力学上の特性、現像剤の荷電性を維持したままでのクリーニング特性、流れ性、塗料の艶消し性、隠蔽性等の様々な特性を向上し得る可能性を持つ、高アスペクト比かつミクロンサイズの楕円状または針状有機物粒子の開発が求められている。
【0008】
【特許文献1】特公平6−53805号公報
【特許文献2】特開平5−317688号公報
【特許文献3】特開平2−14222号公報
【特許文献4】特開2000−39506号公報
【特許文献5】国際公開第01/070826号パンフレット
【特許文献6】特開2007−70372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光拡散性および集光性等の光学特性、滑り性等の摩擦特性などの向上を図ることができる、ポリマー微粒子を含有し、高アスペクト比を有する楕円状または針状ポリマー粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、高アスペクト比を有する楕円状ポリマー粒子を既に見出している(特許文献6:特開2007−70372号公報等)が、さらなる検討を重ねた結果、光学用部材や化粧用部材として好適に利用可能な、内部にポリマー微粒子を含有する楕円状または針状ポリマー粒子を見出すとともに、この粒子の効率的な製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
1. その内部にポリマー微粒子を含有する微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子であって、前記ポリマー粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)が(P1)≧1.8を満たすことを特徴とする微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子、
2. 前記ポリマー粒子の短径(D1)と前記ポリマー微粒子の直径(S1)との比R(S1/D1)が、
0.001<R<0.9
を満たし、前記ポリマー粒子の長軸に直交する切断面の断面積(D1C)とポリマー粒子の同切断面に含まれる前記ポリマー微粒子の断面積の合計(S1C)との比S(%[S1C/D1C×100])が、
1<S<90
を満たす1の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子、
3. 前記ポリマー粒子およびポリマー微粒子が同一組成のポリマーから構成される1または2の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子、
4. 前記長径(L1)の平均長径(L1a)が、0.01〜500μmである1〜3のいずれかの微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子、
5. 前記ポリマー粒子が、少なくとも疎水性モノマーを含むモノマーの重合体からなる粒子である1〜4のいずれかの微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子、
6. 水相および油相を含む媒体中でモノマーを懸濁重合させる微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造方法であって、前記水相および油相のいずれにも分散剤または乳化剤を配合することを特徴とする1の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造方法、
7. 水および水に溶解する成分を予め混合して調製した前記水相と、疎水性有機溶媒および疎水性有機溶媒に溶解する成分を予め混合して調製した前記油相と、を混合する6の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造方法、
8. 前記モノマーが、少なくとも疎水性モノマーを含む6または7の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造方法、
9. 1〜5のいずれかの微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子を含む樹脂組成物、
10. 1〜5のいずれかの微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子を用いてなる光拡散用シート、
11. 1〜5のいずれかの微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子を用いてなる化粧用部材
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の楕円状または針状ポリマー粒子は、その内部にポリマー微粒子を含有しているとともに、1.8以上という高いアスペクト比を有しているため、高い光の拡散性を有している。また、含有粒子の数や大きさを適宜調整することで、光の透過性が高い状態で光を拡散することができる。
さらに、主成分が有機成分であるから、樹脂添加剤として用いて樹脂の屈折率を容易に変更することができるだけでなく、粒子径を小さくすることができる結果、細密充填が可能となるため、光の拡散性や屈折率の変更が極めて容易になる。したがって、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子は、光拡散用シート用の添加剤として好適に利用できる。
また、例えば化粧品等の部材として用いた場合は光の拡散性による皺隠し等、従来の美容効果だけでなく、高アスペクト比により流れ性をよくするため、滑らかさ等を得る助剤としても大きな効果がある。
【0013】
さらに、有機ポリマー粒子であり、無機粒子に比べて比重が小さいから、各種樹脂の添加剤として用いた場合、被添加物である樹脂中での分散性および樹脂との親和性に優れる。したがって、当該粒子と各種樹脂とを含む樹脂組成物を成形して得られるフィルム等の樹脂成形品は、強度等の機械的物性に優れたものとなる。
また、主成分が有機成分であるから、粒子表面を容易に無機または有機コーティング処理することができる結果、機能性のカプセルを作製することができる。しかも官能基を有する粒子とすることもできるから、この官能基を修飾することで、多機能な粒子を作製することができる。
さらに、主成分が有機成分であるから、顔料、染料等を用いた着色が容易に行え、塗料やトナー材料など着色材料分野にも応用できる。
【0014】
このような高アスペクト比の楕円状または針状ポリマー粒子は、めっき加工処理や真空放電蒸着等を施すことにより、電磁波シールド用のフィラー、プラスチック材等に導電性を付与する導電性フィラー、並びに液晶ディスプレイパネルの電極と駆動用LSIとの接続、LSIチップの回路基板への接続、およびその他の微小ピッチの電極端子間を接続するための導電材料等の導電素材に用いられる導電性粒子として、新たな応用が可能である。
本発明の楕円状または針状ポリマー粒子は、高アスペクト比を有し、しかもミクロンサイズとすることも容易であるから、充填剤や検体等として、電子・電気材料、光学材料、建築材料、生物・医薬材料、化粧料等様々な分野で応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子は、その内部にポリマー微粒子を含有し、当該ポリマー粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)が(P1)≧1.8を満たすものである。
なお、「含有」とは、楕円状または針状ポリマー粒子内部に微粒子全部が包含されている態様を意味するが、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子では、その内部に「含有」している微粒子に加え、その一部が楕円状または針状ポリマー粒子の表面から突出する形態で埋まっている微粒子が存在してもよい。
【0016】
本発明において、楕円状または針状ポリマー粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図におけるアスペクト比(P1)は、(P1)≧1.8であるが、光の拡散性能および組成物化した場合における楕円状または針状ポリマー粒子の形状の維持(硬度)という観点から、1.8≦(P1)≦20が好ましく、2.0≦(P1)≦15がより好ましく、2.2≦(P1)≦10が最適である。
なお、楕円状または針状ポリマー粒子の長軸方向から見た場合の形状(すなわち長軸方向から光を照射して得られる投影二次元図の形状と同義)は、略円形状または長径と短径との比が1に近い楕円形状であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子内部に含有されるポリマー微粒子の大きさは、特に限定されるものではないが、内部微粒子の光の散乱性能などを考えると、下記の条件を満たすものが好ましい。
すなわち、楕円状または針状ポリマー粒子の短径(D1)とポリマー微粒子の直径(S1)との比Rが、0.001<R<0.9の範囲が好適であり、0.005<R<0.8の範囲がより好ましく、0.01<R<0.7の範囲がより一層好ましい。
さらに、楕円状または針状ポリマー粒子の長軸に直交する切断面の断面積(D1C)と、ポリマー粒子の同切断面に含まれるポリマー微粒子の断面積の合計(S1C)との比S(%[S1C/D1C×100])が、1<S<90の範囲が好適であり、5<S<80の範囲がより好ましく、10<S<70の範囲がより一層好ましい。
【0018】
さらに、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図における長径(L1)の平均長径(L1a)は、0.01〜500μmが好ましく、0.1〜200μmがより好ましく、0.3〜100μmがより一層好ましく、0.8〜80μmがさらに好ましく、1〜50μmが最適である。
平均長径(L1a)が500μmを超える粒子を作製することもできるが、特に化粧品分野や拡散性能を必要とする電材分野等ではそのメリットは少ない。一方、平均長径(L1a)が0.01μm未満であると、粒子径が小さすぎるために、本発明の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の形成は難しく、また、粒子同士が凝集し易くなり、単分散化した粒子が得られない可能性が高い。
【0019】
本発明の楕円状または針状ポリマー粒子およびこれに包含される微粒子を構成するポリマーの分子量としては、特に限定されるものではなく、通常、重量平均分子量で、1,000〜3,000,000程度である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定値である。
また、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子を含む樹脂組成物を成形し、拡散板や拡散シートとした場合、高温下でも十分な耐熱性を発揮させるために、当該楕円状または針状ポリマー粒子の融点は60℃以上であることが好ましい。
本発明の楕円状または針状ポリマー粒子は、耐熱性を向上させるモノマーを使用して重合することで、融点を向上させることができる。例えば、モノマー中にイオン性官能基を導入したり、その種類や量などを変更したりすることによって、100℃以上、場合によっては120℃以上、さらには150℃以上にすることも可能である。
なお、本発明における融点は、示差走査熱量計(DSC6200,セイコーインスツル(株)製)において、融解によるピークが観測される温度を意味する。
【0020】
本発明の楕円状または針状ポリマー粒子は、水相および油相を含む媒体中でモノマーを懸濁重合させる際に、水相および油相のいずれにも分散剤または乳化剤(界面活性剤)を配合して反応させることで製造できる。
この場合、完全に溶解した状態で重合を行うと、楕円状または針状の粒子が形成されずに、微粒子だけとなる。
また、水相および油相のいずれにも分散剤、乳化剤(界面活性剤)を配合しない場合や、いずれか一方にしかそれらを配合しない場合も、楕円状または針状ポリマー粒子は形成されない。
【0021】
本発明の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造においては、有機モノマーとして、少なくとも1つは疎水性有機溶媒に可溶な疎水性モノマーを用いる必要がある。
ここで、親水性モノマーのみを用いると、水相および油相での懸濁重合ではなく、水相での重合となるため、塊となり、目的とする形状の粒子が形成されない。一方、疎水性モノマーのみを用いることは可能であり、その場合、疎水性モノマーは、1種単独でも、2種以上でもよい。
なお、疎水性モノマーとは、室温下(20℃)において、水への溶解度が10g/100g未満であるモノマーのことをいう。
【0022】
疎水性モノマーとしては、一般的に溶液重合で使用されるような不飽和2重結合を有するモノマーが挙げられ、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、フッ化オレフィン系モノマー、フッ化アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられるが、これらの中でも、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーが好適である。
【0023】
スチレン系モノマーとしては、スチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸などが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸イソステアリル、アクリル酸イソボロニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸イソステアリル、メタクリル酸イソボロニル等が挙げられる。
【0025】
ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系モノマー;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;塩化ビニル,塩化ビニリデン,臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸誘導体系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0026】
フッ化オレフィン系モノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどが挙げられる。
フッ化アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピルなどが挙げられる。
これらの有機モノマーは、1種単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
なお、以上で例示した有機モノマーは、上述した疎水性モノマーの性質を有する限りにおいて、モノマーの有する重合性基に応じて、水酸基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基等の反応性官能基を有していてもよい。
【0027】
本発明においては、上述した懸濁重合時の水相と油相との分離状態を崩さない限り、水溶性モノマーを用い、これと疎水性モノマーとを共重合させてもよい。
なお、水溶性モノマーとは、室温下(20℃)において、水への溶解度が10g/100g以上であるモノマーのことをいう。
【0028】
水溶性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、エチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびこれらの塩;ポリオキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル化合物等の(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(重合度2〜15)硫酸エステルおよびこれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート;アクリルアミド、エチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド等のその他の第4級アンモニウム塩基含有モノマー;ヒドロキシエチルアクリレート,ヒドロキシエチルメタクリレート,ヒドロキシプロピルアクリレート,ヒドロキシプロピルメタクリレート,ヒドロキシブチルアクリレート,ヒドロキシブチルメタクリレート等の水酸基を有する化合物;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
【0029】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸、エチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸およびこれらの塩がより好ましい。
なお、上記水溶性モノマーは、重合時の水相および油相の分離状態を崩さない限り、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、疎水性モノマーと水溶性モノマーの使用比率も、重合時の水相および油相の分離状態を崩さない限り任意であるが、本発明においては、例えば、質量比で水溶性モノマー:疎水性モノマー=5:95〜50:50とすることができる。得られる粒子のアスペクト比をより高め、理想的な楕円状に近づけるということを考慮すると、これらの使用比率は、水溶性モノマー:疎水性モノマー=10:90〜40:60が好ましく、15:85〜25:75がより好ましい。
【0031】
本発明の楕円状または針状ポリマー粒子の製造に用いられる懸濁重合とは、モノマー、分散剤または乳化剤、および重合開始剤等のその他必要に応じて用いられる成分を、油相および水相中で混合・撹拌し、懸濁させて行う重合方法である。
この際、水および疎水性有機溶媒のいずれにも分散剤または乳化剤を予め混合して調製した水相および油相を用いれば、これらの混合や、その他の成分の配合順序は任意であるが、本発明においては、水および水に溶解する成分を予め混合して調製した水相と、疎水性有機溶媒および疎水性有機溶媒に溶解する成分を予め混合して調製した油相と、を混合して懸濁重合を行うことが好ましい。
【0032】
すなわち、疎水性有機溶媒と疎水性モノマーと乳化剤または分散剤とを含む油相と、水と乳化剤または分散剤と、必要に応じて用いられる水溶性モノマーとを含む水相とをそれぞれ調製し、これらを混合して懸濁重合を行う手法が好適である。
なお、重合開始剤は、その性質に応じて水相または油相に適宜添加すればよい。
【0033】
反応溶液中における、有機モノマーの合計の含有量(以下、重合成分含有量という)は、得られる粒子のアスペクト比をより高め、理想的な楕円状の粒子を効率よく製造するという点から、全反応溶液中1〜80質量%とすることが好ましく、より好ましくは、5〜50質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。
重合成分含有量が、80質量%を超えると、当該成分が過剰となりすぎて溶液中でのバランスが崩れて球状粒子となり易く、その結果、本発明の微粒子を含有する、単分散化した楕円状または針状ポリマー粒子を得ることが困難になる場合がある。一方、1質量%未満であると、微粒子のみが形成され、目的とする微粒子含有楕円状または針状ポリマーが形成されない場合がある。
【0034】
重合時の反応温度は、使用する溶媒の種類によっても変わるものであり、一概には規定できないが、通常、−100〜200℃程度であり、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは40〜100℃である。
また、反応時間は、粒子の楕円状または針状化がほぼ完結するのに要する時間であれば特に限定されるものではなく、モノマー種およびその配合量、溶液の粘度およびその濃度等に大きく左右されるが、目的とする微粒子を含有する楕円状または針状粒子を理想的な形状で、かつ、効率的に製造することを考慮すると、例えば、40〜100℃の場合、2〜24時間、好ましくは8〜16時間程度がよい。2時間未満であると、微粒子しか形成されない場合があり、24時間を超えると、凝集した粒子が多くなる場合がある。
【0035】
重合反応に使用する溶媒としては、疎水性モノマーが油相に溶解した状態である必要があるため、疎水性有機溶媒を用いる必要があり、水相および油相を用いた懸濁重合を行うことから、疎水性有機溶媒と水との分離溶媒を用いることが好ましい。なお、水相および油相の分離状態を崩さなければ、適宜、水溶性有機溶媒を加えても構わない。
ここで、疎水性有機溶媒とは、1気圧において、温度20℃で同容量の純水と緩やかにかき混ぜ、流動がおさまった後に当該混合液体が均一な外観を維持できないものを意味し、水溶性有機溶媒とは、当該混合液が均一な外観を維持するものを意味する。
【0036】
疎水性有機溶媒の具体例としては、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等の高級アルコール類;ブチルセロソルブ等のエーテルアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、ブチルカルビトールアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、クメン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族または芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる
【0037】
水溶性有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種類以上混合して用いることができる。この水溶性有機溶媒は、目的とする分離状態を崩さない限り任意の量で使用することができ、例えば、全媒体中の5〜70%で適宜使用できる。
【0038】
また、本発明においては、分散剤または乳化剤(界面活性剤)を、水相および油相のいずれにも配合する。
分散剤としては、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ビニルフェノール−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルフェノール−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリスチレン誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル誘導体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール誘導体;セルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル等のポリ酢酸ビニル誘導体;ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリ−2−メチル−2−オキサゾリン等の含窒素ポリマー誘導体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル誘導体;ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン誘導体、カルボジイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等の各種疎水性または親水性の分散剤が挙げられる。また、これら以外でも油相または水相に溶解するものであれば使用可能である。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
乳化剤(界面活性剤)としては、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等のカチオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系乳化剤等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
上記分散剤および乳化剤は、反応溶媒に応じて適宜選択して使用されるものであるが、本発明では、反応媒体として水と疎水性有機溶媒との分離状態を利用することから、得られる楕円状または針状ポリマー粒子の粒子径を安定させ、より小さな粒子径の粒子を効率的に得るという点から、これら分散剤等は水相と油相のいずれかにのみ溶解するものを、それぞれその溶解する相に配合して用いることが好ましい。
【0041】
また、分散剤等の配合量は特に限定されるものではないが、例えば、重合成分の合計質量に対し、0.01〜100質量%の適宜な量で、水相と油相にそれぞれ分割して配合すればよい。
なお、水相における分散剤または乳化剤の配合量は、例えば、重合成分の合計質量に対し、0.01〜50質量%程度とすることができ、一方、油相における分散剤または乳化剤の配合量は、例えば、重合成分の合計質量に対し、0.01〜50質量%程度とすることができる。
【0042】
重合反応を行う際に用いられる重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を用いることができ、例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス−2−シアノプロパン−1−スルホン酸二ナトリウム等のアゾ系化合物などの、各種油溶性、水溶性、イオン性の重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独で、または2種類以上混合して用いることができる。
【0043】
以上説明した条件で懸濁重合を行うことで、楕円状または針状ポリマー粒子の粒子径やアスペクト比を制御できるとともに、本発明の大きな特徴である楕円状または針状ポリマー粒子を構成するポリマーと同一組成のポリマー微粒子を含有する粒子を調製することができ、その結果、光学特性等の性能をバランスよく制御できることとなる。
なお、上記製造法により、本発明の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子が形成される理由は定かではないが、ポリマー微粒子が形成した後、疎水性媒体の存在や攪拌等によって表面張力が変化することでポリマー微粒子を取り込みながら楕円状または針状ポリマー粒子が形成しているものと推測される。
【0044】
本発明においては、重合反応の際に、得られる粒子の用途などに応じて、重合成分の合計質量に対し、0.01〜80質量%の適宜な量で架橋剤を配合することもできる。
架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールアクリロキシジメタクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォン等の化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、重合反応の際に、得られる粒子の用途などに応じて、触媒(反応促進剤)を配合することができる。配合量は、粒子物性に悪影響を及ぼさない適宜な量、例えば、重合成分の合計質量に対し、0.01〜20質量%とすることができる。
触媒としては、正触媒であれば特に限定されるものではなく、公知のものから適宜選択して使用することができる。具体例としては、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム化合物類;トリフェニルホスフィン、トリシクロホスフィン等のホスフィン類;ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム化合物類;2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩類;有機酸のアルカリ金属塩類;三塩化ホウ素、三弗化ホウ素、四塩化錫、四塩化チタン等のルイス酸性を示すハロゲン化物類またはその錯塩類等の触媒が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
また、重合反応の際に、得られる楕円状または針状ポリマー粒子の大きさ、形状、品質等を調整する目的で、水またはその他の極性溶媒に溶解し得、陽イオンと陰イオンとに電離してその溶液が電気伝導性を示す化合物を添加することも可能である。
具体例としては、塩類、無機酸、無機塩基、有機酸、有機塩基、イオン液体等が挙げられる。配合量は、粒子物性に悪影響を及ぼさない適宜な量、例えば、重合成分の合計質量に対し、0.01〜80質量%とすることができる。
【0047】
以上説明した本発明の製造方法は、懸濁重合という粒子径を制御可能な方法であるため、精密に形状、粒子径等の設計が可能であり、その結果、所定のアスペクト比を有する微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子が得られることになる。
なお、この製法を用いると、得られた楕円状または針状ポリマー粒子に対して、直接、その他の有機化合物等を結合等させることができるから、連続的かつ効率的にコア/シェル型構造粒子を得ることもできる。
【0048】
本発明の製造方法を実施した場合、得られる粒子の全てが目的とする楕円状または針状となるわけではないが、通常、得られた楕円状または針状ポリマー粒子をランダムに100個抽出した場合、各粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)の平均(P1a)が、(P1a)≧1.5を満たすものである。実用的な面からいうと、このアスペクト比の平均は、好ましくは、(P1a)≧1.8、より好ましくは1.8≦(P1a)≦20、より一層好ましくは2.0≦(P1a)≦15、さらに好ましくは2.2≦(P1a)≦10である。
【0049】
本発明においては、走査電子顕微鏡(S−4800,(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用い、測定可能な倍率(300〜30,000倍)で写真を撮影し、得られた楕円球状粒子を二次元化した状態(なお、通常、楕円球状粒子は長軸方向を水平にした状態を保つ)で、各粒子の長径(L1)および短径(D1)を測定し、アスペクト比(P1)を算出する。
粒子の平均長径(L1a)も同様に、長径(L1)の測定をランダムにn=100繰り返し行って求めることができる。
【0050】
なお、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子には、さらに、別の微粒子を物理的、化学的に付加して複合粒子とすることもできる。
具体的には、(1)粒子製造時に微粒子を取り込ませる、(2)粒子作製後に粒子表面に存在するイオン性官能基の極性を利用して付加する、(3)付加重合、重縮合、付加縮合等の化学的結合により付加する、などの方法が挙げられる。
【0051】
ここで、別の微粒子とは、母粒子となる楕円状または針状ポリマー粒子よりも小さい粒子であれば有機物、無機物の制限は無い。好ましい粒径は、楕円状または針状ポリマー粒子の大きさにもよるが、通常、0.01〜1000μm程度である。
有機粒子としては、本発明の粒子の製造に用いられる重合性モノマーからなる粒子、硬化性粒子、有機顔料等が挙げられる。
無機粒子としては、銅粉、鉄粉、金粉、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化錫、酸化銅、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガン、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属、金属酸化物、水和金属酸化物、無機顔料等の無機粒子が挙げられる。
なお、これらの微粒子は、市販品をそのまま用いてもよく、予めカップリング剤等の表面処理剤で表面修飾したものを用いてもよい。
【0052】
特に、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子を光学用途に用いる場合には、屈折率の制御や、光拡散性の向上を目的として、粒径0.01〜500μmの酸化金属微粒子、中でも酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素等を付加させることが好ましい。これらは1種単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
この酸化金属微粒子の付加は、本発明の粒子の製造時に、当該微粒子を、重合成分全体に対して0.1〜50質量%配合して反応を行うことで、得られる楕円状または針状ポリマー粒子内に当該微粒子を物理的・化学的吸着等により取り込ませるなどにより行うことができる。
【0053】
既に述べたように、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子は、光の拡散性に優れているため、光拡散用シート用の添加剤として好適に利用できる。具体的には、例えば、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子、バインダー、およびその他の添加剤からなる組成物を、フィルム、シート、板等の透明または乳白色化した基材上にコーティングするなどにより光拡散層を形成し、液晶ディスプレイ、オーバーヘッドプロジェクター、広告用電飾看板、テレビ、映画等の映像スクリーンなどに用いられる光拡散用シートとして好適に使用することができる。
また、本発明の楕円状または針状ポリマー粒子は、光拡散性能に加えて多孔質性、吸水性、吸油性等をも有しているから、機能性化粧品部材としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
まず、本実施例における各物性等の測定方法について説明する。
【0055】
(1)楕円状または針状ポリマー粒子のアスペクト比
走査電子顕微鏡(S−4800,(株)日立ハイテクノロジーズ製、以下、SEMという)を用い、測定可能な倍率(300〜30,000倍)で写真を撮影し、得られた楕円状または針状ポリマー粒子を二次元化した状態(なお、通常、楕円状または針状ポリマー粒子は長軸方向を水平にした状態を保つ)で、各粒子の長径(L1)および短径(D1)を測定し、アスペクト比(P1)を算出する。
粒子の平均長径(L1a)も同様に、長径(L1)の測定をランダムにn=100繰り返し行って算出する。
【0056】
(2)楕円状または針状ポリマー粒子の真球状換算した体積平均粒子径
MICROTRACK HRA(日機装(株)製)を用いて測定した。
(3)ポリマー粒子内部の確認
得られたポリマー粒子にせん断力をかけ、粒子を割り、その断面をSEMにて測定可能な倍率(300〜30,000倍)で写真を撮影して観察した。また、ポリマー粒子の短径(D1)とポリマー微粒子の直径(S1)との比R(S1/D1)および、ポリマー粒子の長軸に直交する切断面の断面積(D1C)とポリマー粒子の同切断面に含まれるポリマー微粒子の断面積の合計(S1C)との比S(%[S1C/D1C×100])をSEMから求めた。直径の比Rおよび断面積の比Sの測定はランダムにn=100繰り返し行って算出した。
【0057】
[1]微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子
[実施例1]
200mlフラスコに下記に示した化合物を、各相でそれぞれ溶解した後、水相および油相を混合して仕込み、窒素気流下でオイルバス温度80℃、約12時間加熱・撹拌して粒子溶液を得た。
水相 水 160.0g
ポリビニルピロリドン(K−15) 1.0g
過硫酸アンモニウム 0.6g
油相 トルエン 10.0g
ポリスチレン(Mw45,000) 2.0g
メタクリル酸メチル 20.0g
(ポリスチレン:アルドリッチ製Polystylene,average Mw Ca.45,000)
【0058】
次に、この粒子溶液を公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで3〜5回程度、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、楕円状または針状ポリマー粒子を得た。
得られた粒子は平均長径が20.1μmでありアスペクト比が5.7であった。また得られた楕円状または針状ポリマー粒子のSEM写真(図1、図2)を観察したところ、粒子内部に微粒子があることが確認された。また、SEM写真より、楕円状または針状ポリマー粒子とポリマー微粒子との直径の比は0.13、ポリマー微粒子の断面積の合計と楕円状または針状ポリマー粒子の切断面の断面積との比は41%であった。
【0059】
[実施例2]
200mlフラスコに下記に示した化合物を、各相でそれぞれ溶解した後、水相および油相を混合して仕込み、窒素気流下でオイルバス温度80℃、約12時間加熱・撹拌して粒子溶液を得た。
水相 水 160.0g
ポリビニルピロリドン(K−15) 1.0g
過硫酸アンモニウム 0.6g
油相 トルエン 10.0g
ポリスチレン(Mw45,000) 1.5g
メタクリル酸メチル 16.0g
酢酸ビニル 4.0g
(ポリスチレン:アルドリッチ製Polystylene,average Mw Ca.45,000)
【0060】
次に、この粒子溶液を公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで3〜5回繰り返し洗浄し、真空乾燥後、楕円状または針状有機ポリマー粒子を得た。
得られた粒子は平均長径が10.9μmでありアスペクト比が7.7であった。また楕円状または針状ポリマー粒子のSEM写真を観察したところ、粒子内部に微粒子があることが確認された。また、SEM写真より、楕円状または針状ポリマー粒子とポリマー微粒子との直径の比は0.22、ポリマー微粒子の断面積の合計と楕円状または針状ポリマー粒子の切断面の断面積との比は51%であった。
【0061】
[実施例3]
ポリスチレンをメタクリル酸メチルポリマー(和光純薬工業(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子を得た。
得られた粒子は平均長径が18.3μmであり、アスペクト比が5.0であった。また楕円状または針状ポリマー粒子のSEM写真を観察したところ、粒子内部に微粒子があることが確認された。また、SEM写真より、楕円状または針状ポリマー粒子とポリマー微粒子との直径の比は0.10、ポリマー微粒子の断面積の合計と楕円状または針状ポリマー粒子の切断面の断面積との比は35%であった。
【0062】
[実施例4]
トルエンをクメンに変更した以外は、実施例1と同様にして微粒子含有楕円または針状ポリマー粒子を得た。
得られた粒子は平均長径が21.6μmであり、アスペクト比が15.1であった。また楕円状または針状ポリマー粒子のSEM写真を観察したところ、粒子内部に微粒子があることが確認された。また、SEM写真より、楕円状または針状ポリマー粒子とポリマー微粒子との直径の比は0.09、ポリマー微粒子の断面積の合計と楕円状または針状ポリマー粒子の切断面の断面積との比は24%であった。
【0063】
[比較例1]
300mlフラスコに下記に示した化合物を下記割合で混合してなる混合物を一括して仕込み、窒素にて溶存酸素を置換した後、撹拌機中にて窒素気流下、オイルバス温度75℃で約15時間加熱・撹拌し、スチレン・p−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合粒子溶液を得た。
スチレン 30.7g
p−スチレンスルホン酸ナトリウム 5.42g
メタノール 100.7g
水 55.48g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 2.07g
高分子安定剤溶液 23.33g
高分子安定剤溶液:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・メタクリロイロキシエチルスルホン酸ナトリウム重合樹脂溶液(樹脂分30質量%、水−メタノール[質量比3:7]混合溶液、MW=65,000)
【0064】
次に、この粒子溶液を公知の吸引ろ過設備を使って水−メタノール混合溶液(質量比3:7)で3〜5回程度、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥後、楕円状または針状ポリマー粒子を得た。
得られた粒子は、平均長径が28.0μmであり、アスペクト比が2.4であった。また得られた楕円状ポリマー粒子のSEM写真(図3、図4)を観察したところ、粒子内部に微粒子は存在しなかった。
【0065】
[比較例2]
ポリスチレンを使用しなかった以外は実施例1と同様にして行ったが、楕円状または針状ポリマー粒子は得られなかった。得られた粒子はただの塊であった。
【0066】
[比較例3]
ポリビニルピロリドンを使用しなかった以外は実施例1と同様にして行ったが、楕円状または針状ポリマー粒子は得られなかった。得られた粒子は平均粒子径7.8μmの球状粒子であった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1で得られた微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子のSEM写真(×3000)を示す図である。
【図2】実施例1で得られた微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の断面のSEM写真(×30000)を示す図である。
【図3】比較例1で得られた楕円状または針状ポリマー粒子のSEM写真(×1000)を示す図である。
【図4】比較例1で得られた楕円状または針状ポリマー粒子の断面のSEM写真(×30000)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部にポリマー微粒子を含有する微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子であって、
前記ポリマー粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)が(P1)≧1.8を満たすことを特徴とする微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子。
【請求項2】
前記ポリマー粒子の短径(D1)と前記ポリマー微粒子の直径(S1)との比R(S1/D1)が、
0.001<R<0.9
を満たし、前記ポリマー粒子の長軸に直交する切断面の断面積(D1C)とポリマー粒子の同切断面に含まれる前記ポリマー微粒子の断面積の合計(S1C)との比S(%[S1C/D1C×100])が、
1<S<90
を満たす請求項1記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子。
【請求項3】
前記ポリマー粒子およびポリマー微粒子が同一組成のポリマーから構成される請求項1または2記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子。
【請求項4】
前記長径(L1)の平均長径(L1a)が、0.01〜500μmである請求項1〜3のいずれか1項記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子。
【請求項5】
前記ポリマー粒子が、少なくとも疎水性モノマーを含むモノマーの重合体からなる粒子である請求項1〜4のいずれか1項記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子。
【請求項6】
水相および油相を含む媒体中でモノマーを懸濁重合させる微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造方法であって、
前記水相および油相のいずれにも分散剤または乳化剤を配合することを特徴とする請求項1記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項7】
水および水に溶解する成分を予め混合して調製した前記水相と、疎水性有機溶媒および疎水性有機溶媒に溶解する成分を予め混合して調製した前記油相と、を混合する請求項6記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項8】
前記モノマーが、少なくとも疎水性モノマーを含む請求項6または7記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子を含む樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子を用いてなる光拡散用シート。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項記載の微粒子含有楕円状または針状ポリマー粒子を用いてなる化粧用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−235353(P2009−235353A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86821(P2008−86821)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】