微粒子回収装置
【課題】電気泳動による凝集(濃縮)処理をして懸濁液中微粒子を回収する装置において、効率的な連続運転が可能な微粒子回収装置を提供すること。
【解決手段】連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って、懸濁液中の微粒子を回収する微粒子回収装置。回転電極11aとなる回転体11と、固定電極13aとなる処理槽13とを備えている。回転体11に凝集付着した微粒子を、回転体11を回転させながら掻取り回収する粒子回収手段34が配されている。処理槽13に対する原料液供給手段17の流下給液の起点部、及び、処理槽13からの処理済み液の流下排液の起点部の各形状が、原料液および処理済液を液滴状態として流下させることができる液滴形成形状とされている。
【解決手段】連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って、懸濁液中の微粒子を回収する微粒子回収装置。回転電極11aとなる回転体11と、固定電極13aとなる処理槽13とを備えている。回転体11に凝集付着した微粒子を、回転体11を回転させながら掻取り回収する粒子回収手段34が配されている。処理槽13に対する原料液供給手段17の流下給液の起点部、及び、処理槽13からの処理済み液の流下排液の起点部の各形状が、原料液および処理済液を液滴状態として流下させることができる液滴形成形状とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー等の懸濁液から微粒子を回収する懸濁液中微粒子の回収装置に関し、さらに詳しくは、連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って微粒子を回収する回収装置に関する。特に、従来の微粒子回収方法で回収が困難であったナノ粒子の回収に好適な微粒子回収装置に係る発明である。
【0002】
ここでは、微粒子として、ナノ粒子を例に採り説明するが、ナノ粒子に含まれない微粒子(通常、100メッシュ(147μm)アンダー)も本発明の微粒子の範囲内に含まれる。
【背景技術】
【0003】
本願出願人のうちの一部の者によって、上記電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って粒子を回収する微粒子回収方法および微粒子回収装置が先に提案されている(特願2009-167056号(国際出願PCT/JP2010/061948(未公開)の基礎出願))。以下に、背景技術の欄を引用する。
【0004】
「ナノテクノロジーの台頭と共に工業プロセスにおいてもナノ粒子が使われるプロセスが多くなった。例えば電子産業や半導体技術で欠かすことの出ないCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)で用いられるスラリー、配線用金属ペースト、各種顔料系インキなどがある。これらは世界に先駆けた我が国固有の技術が多く世界の産業発展を支えていると言っても過言ではない。これらの成功はナノ粒子の分散技術に裏付けされたものである。
一方でこれら高分散性のナノ粒子を含む廃液処理についてはエネルギー的に非効率かつ環境負荷の高いプロセスとなり問題視されている。例えば、CMPスラリーや製造工程ででてくるナノ粒子を含む廃液(懸濁液)は分散安定がよく、通常のスラリーのように化学的な操作で液体と沈降分離することは困難である。現状は化学的な操作で沈降できる成分を取り除いた後、加熱による蒸発乾固がなされている。工業的な廃液プロセスとしては成り立たない。この場合スラリーの粒子濃度は低く、投入エネルギーのほとんどが溶媒の蒸発で消費されてしまっている。」
【0005】
そして、当該欄において、下記先行技術文献が引用されている。しかし、それらは、[解決しようとする課題]の欄で説明されている如く、電気泳動現象による凝集(濃縮)処理に関するものではない。
【0006】
さらに、前記国際出願(PCT/JP2010/061948:国際出願未公開)の国際調査報告書で文献1〜4(下記特許文献3〜6に対応)が引用され、下記見解が付されている。
【0007】
「文献1には、ベントナイト等の超微粒子を泥水や濁水から回収する方法が記載されており、廃泥水を入れた水槽内に正極および負極を配設し、当該電極間に直流電圧を印加することにより、マイナス電位をもつベントナイト等の超微粒子を正極に付着させる旨が開示されている。さらに、電極の一方は固定電極であり、他方は可動電極であって、水槽の出口付近には、振動やエアの吹付け等によって可動電極に付着した超微粒子を脱落させるための機構が設けられている旨も開示されている。また、文献1記載の発明においては、本願発明と同様、スラリー中の粒子を電気泳動現象により電極近傍に濃縮、付着させて回収することから、「電気泳動による接近と相互作用ポテンシャル(V)による反発とがバランスした状態」であり、「電気泳動による運動エネルギーをポテンシャル障壁(Vmax)よりも小さく」した状態となっているものと認められる。」
【0008】
「文献2には、微粒子分散液を電気泳動により濃縮して回収する方法が記載されており、微粒子のゼータ電位は絶対値で1〜1000mVの範囲とすることが好ましい旨が開示されている。」
【0009】
「文献3には、電気泳動により被処理液から懸濁質を分離する方法が記載されており、回転する円板状の電極と固定電極を設け、回転電極表面に析出した電着物を、固定された掻き取り手段により掻き取る旨が開示されている。」
【0010】
「文献4には、インク顔料等の微粒子が混在する洗浄廃液を電気泳動することにより、廃液から微粒子を除去する方法が開示されている。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−21465号公報
【特許文献2】特開2004−181312号公報
【特許文献3】特開平08−086188号公報(国際調査報告文献1)
【特許文献4】特開2006−205092号公報(同文献2)
【特許文献5】特開平08−04769号公報(同文献3)
【特許文献6】特開2004−358430号公報(同文献4)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】青木 裕 粉体工学会誌45(5):325−334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記先願に係る粒子の回収方法は、「直流、交流あるいはパルス電流での粒子の電気泳動現象でスラリー中の粒子を電極およびその近傍に濃縮させ、その濃縮された粒子を回収することを特徴とする。」(段落0012)ものである。
【0014】
そして、先願(国際特許出願)の粒子回収方法を適用する粒子回収装置の概略を記載した段落0014〜0016を次に引用する。
【0015】
「請求項4に記載の発明は、スラリーが供給される容器と、この容器中のスラリーに接するように配置される電極と、前記電極に電圧を印加して前記スラリー中の粒子に電気泳動現象を誘起させる電圧印加手段と、前記電気泳動現象により前記電極およびその近傍に濃縮させた粒子を回収する粒子回収手段と、を備えたことを特徴とする。
前記粒子回収手段としては、請求項5に記載の発明のように、前記電極およびその近傍に濃縮させた粒子をかき取るかき取り手段を有するものとすることができる。具体的には、請求項6に記載の発明のように、前記電極を回転させる駆動手段を有し、前記かき取り手段は、固定された状態で前記回転する電極から前記粒子のかき取りを行うものとすることができる。」
【0016】
そして、上記微粒子回収装置において、さらに、効率的な連続運転をすることが課題として出てきた。
【0017】
本発明は、上記にかんがみて、電気泳動により凝集(濃縮)処理をして懸濁液中微粒子を回収する装置において、効率的な連続運転が可能な微粒子回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは上記効率的な連続運転が困難な理由は、容器(処理槽)内で電気泳動による濃縮(凝集)処理を行いながら、原料液(懸濁液)を供給するとともに、濃縮処理後の製品液(処理済液)を排出しようとすると、原料液を介して原料供給系に、及び、製品液を介して製品液排出系に、それぞれ通電するためであると推定して、下記構成の微粒子回収装置に想到した。
【0019】
連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って、懸濁液中の微粒子を回収する微粒子回収装置であって、
懸濁液中の微粒子が凝集付着する一方の電極(回転電極)が配される回転体と、該回転体の下側が浸漬し他方の電極(固定電極)が配される処理槽とを備え、
前記回転体に凝集付着した微粒子を、前記回転体を回転させながら掻取り回収する付着微粒子回収手段が前記回転体の引き上げ側の上方に配されている構成において、
前記処理槽に対する原料液供給手段の流下給液の起点部、及び、前記処理槽からの処理済み液の流下排液の起点部の各形状が、原料液および処理済液を液滴状態として流下させることができる液滴形成形状とされていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する懸濁液中の微粒子回収装置の基本原理図を示す斜視図である。
【図2】図1に示す微粒子回収装置の絶縁構造の一態様を示す概略斜視図である。
【図3】同じくさらに、処理槽からの溢流粒子の回収機構を具備した粒子回収装置の概略断面図である。
【図4】図2に示す装置に給液手段さらには付着微粒子回収手段(パドル式掻取り回収装置)を備えた一例を図示した平面図(A)およびそのB−B線矢視断面図(B)である。
【図5】図4に示す装置における本発明の流下給液起点および流下排液起点の液滴形成形状並びに処理槽の底面形状の一例を示す斜視図である。
【図6】断面櫛歯状(ディスク型)の回転電極と固定電極、付着微粒子回収手段、及び給液用樋との関係を示す平面図(A)および平面図のB−B線矢視概略断面図(B)である。
【図7】(A)、(B)は図6に適用可能なパドル式掻取り回収装置の他の各例を示す部分側面図である。
【図8】図6において付着微粒子回収手段をカム式掻取り回収装置とした場合の平面図(A)および平面図のB−B線矢視概略断面図(B)である。
【図9】図6において付着微粒子回収手段を吸引式掻取り回収装置とした場合の平面図(A)および平面図のB−B線矢視概略断面図(B)である。
【図10】ドラム型回転電極と固定電極および掻取り吸引式回収装置との関係を示す平面図(A)および平面図のB−B線矢視概略断面図(B)である。
【図11】回転体に凝集付着した微粒子が処理槽内へ落下するときのモデル図(A)、および、処理槽内へ落下した微粒子の回収手段の一例を示すモデル図(B)である。
【図12】処理槽内へ落下した微粒子の回収手段の他の例を示すモデル図(A)および該モデル図の変形部分図(B)である。
【図13】同じくさらに他の例を示すモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
基本的には、連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って、懸濁液(スラリーを含む。)中の微粒子を回収する微粒子回収装置である。
【0023】
懸濁液中微粒子が濃縮付着する一方の電極11aとなる回転体11と、他方の電極13aとなる処理槽13とを備えている(図1)。図例では、印加手段(直流電源)14のプラス(+)側に回転電極11aが、マイナス(−)側に処理槽13の固定電極13aが接続されている。回転電極11aに粒子を電気泳動により凝集付着させるため、粒子の種類によっては、極性を逆にした方が望ましい場合もある。このため、印加手段は、極性切替え可能なものとしておくことが望ましい。当然、直流電源を整流した交流電源に代替することもある。
【0024】
なお、図1に示す仕様の場合の運転例の一例を下記に示す。
・処理量:50m3/d、処理時間:24h/d
・原料液濃度:0.072質量%、密度:1.001g/mL
・処理液量:2085L/h、粒子量:1.5kg/h、液通過時間:2〜3分
・電場電圧:20V、濃縮速度:0.85mg/(mm2・min)
・電場面積:3.7m2、回転数:0.3rpm
【0025】
そして、回転電極11aおよび固定電極13aは、相互に絶縁されている必要がある(図2〜4参照)。
【0026】
具体的には、回転体11(回転電極11a)は、その回転駆動軸21を支持する軸受け23、23が絶縁板(樹脂製)25、25で支持されるとともに、該回転駆動軸21を駆動する従動プーリ27は、絶縁ベルト(ゴム製)29で駆動可能とされて、絶縁されている。なお、絶縁ベルト29と係合する駆動プーリ31は電動機33の出力軸33aに取付けられている。
【0027】
また、処理槽13は、軸方向両端が絶縁端板13b、13bとされ、該絶縁端板(フッ素樹脂等)13b、13b間が、湾曲状(樋状)の導電板(ステンレス鋼板)で形成された固定電極13aとされ、該固定電極13aは、絶縁フランジ継手(継手の一方が樹脂製)39、39を介して、処理済液受け槽41の両側壁内側に懸架されて、絶縁されている。
【0028】
なお、回転体11の両端面外周部が薄肉の切欠き円環部11bとされるとともに、処理槽13の絶縁端板13b、13bの、少なくとも切欠き円環部11bに対応する部位が内側に厚肉とされて微粉浸入阻止部が形成されている。
【0029】
なお、図例中、43は、回転体(回転電極板)11に電源(+)を接続させるための接点(スリップリング)であり、45は、処理槽(固定電極)に電源(−)を接続させるための接点である。
【0030】
そして、上記回収装置には、回転体11の回転電極11aの周面に凝集付着した微粒子を、前記回転体11を回転させながら掻取り回収する粒子回収手段34が回転体11の引き上げ側の上方に配されている。図例では、粒子回収手段34は、掻取り部材(掻取り刃)35と落下式の回収ダクト37とからなる。
【0031】
さらに、本実施形態では、原料液供給手段として給液用樋17が付設されている。18は原料液供給パイプである。
【0032】
そして、通液は、給液用樋17から、処理槽13の一側(給液側)へ流下給液され、回転体周面と処理槽底面との隙間(10〜30mm)を通過(通液)して処理槽13の他側(排液側)から流下排液されるようになっている。
【0033】
上記構成の回収装置において、本実施形態では、処理槽13に対する給液用樋17の流下給液の起点部、及び、前記処理槽13からの処理済液の流下排液の起点部の各形状が、原料液および処理済液を液滴状態として流下させることができる液滴形成形状とされていることを特徴とする。
【0034】
液滴形成形状は、例えば、波状分散堰とする。図例では、谷部17a又は13cが、図例の如く、所定ピッチで形成されたものであるが、連続的に形成された鋸歯状としてもよい。ここで、谷部の大きさは、例えば、幅:25mm、深さ:25mmとする。
【0035】
なお、上記液滴形成形状を分散網目とすることも可能である。
【0036】
また、より絶縁性を確保し易い液滴を形成可能なように、排液側と同様、給液側の流下路の途中にも絶縁性の分散網目部材を通過させる構成とすることもできる。分散網目部材47は、樹脂製メッシュで空間率95%以上のものとする。
【0037】
さらに、本実施形態では、処理済液の流下排液に際して、より絶縁性を確保し易い液滴が生成されるように、図例の如く、処理槽(固定電極)13の回転体(回転電極)11周面との対面に液拡散隆起群49を形成することもできる。
【0038】
この液拡散隆起群49のピッチ、大きさは、液拡散作用を奏すれば特に限定されない。例えば、図1に示す仕様の処理槽の場合で千鳥状に配するとき、図例でp1(流れ方向):例えば50mm、p2:例えば50mmとする。
【0039】
そして、処理済液受け槽41に流下排出される処理済液には浮遊微粒子を含有していることがある。このため処理済液受け槽41の底部には、図3に示すような斜設スクリュー51を利用した固液分離手段を配することが望ましい。固液分離手段は、図例のものに限られない。
【0040】
次に、本発明の使用態様を説明する。
【0041】
回転体11の回転電極11aと処理槽13の固定電極13aとの間に設定電圧を印加し、回転電極11aと固定電極13aとの間に電界を発生させるとともに、電動機33を起動させて回転体11を設定回転数で回転させる。
【0042】
その状態で、原料液(懸濁液)を原料液供給パイプ18から給液用樋17に連続供給する。すると、給液用樋17から原料液は、処理槽13へ流下給液される。そして、処理槽13へ給液された原料液(懸濁液)中の微粒子は、回転電極11aの周面と固定電極13aとの間を通液しながら、電気泳動により回転電極11aに凝集付着する。回転電極11aに凝集付着した微粒子は、回転電極11aの回転により処理槽13の原料液中から引上げられ、乾燥しながら掻取り刃(絶縁体)35の位置に至り、掻取り刃35により掻取られ、粒子回収ダクト37を落下して回収される。
【0043】
このときの運転条件は、前述の例示したものとすることができる。
【0044】
また、処理槽13の給液側とは反対側からは、通液中に回転電極11aに懸濁液中の微粒子が付着して浄化が完了した処理済液が、処理済液受け槽41に流下排液される。
【0045】
そして、上記給液・排液に際して、流下給液の起点部、及び、流下排液の起点部の各形状が液滴形成形状17a、13cとされているため、従来のような給液および排液を介しての通電が大幅低減される。本実施形態では、固定電極13aの回転電極11aの対向面に液拡散隆起群49が存在しているため、流れが撹乱されて、流下排液に際しての液滴分散性が向上する。
【0046】
したがって、回転電極11a及び固定電極13a間の電界状態が安定し、粒子回収性乃至浄化処理性が安定する。
【0047】
また、流下途中で絶縁性の液分散網目部材47を配することにより、回転電極11aと固定電極13aとで形成される電界状態が更に安定することが期待できる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態の如く、回転電極がドラム型に限られず、図6・8・9に示すようなディスク型にも適用可能である。
【0049】
ディスク型においては、対応部分の図符号の頭に「1」を付して、それらの説明の全部又は一部を省略する。
【0050】
その場合の回転電極111aおよび固定電極113aの形態は、図例の如く、それぞれ櫛歯状となる。そして、ディスク型の場合、微粒子は回転電極111aのディスク形状である回転電極111aの外周側側面に付着する(図中の散点表示部)。このため、掻取り部材135、135A、135Bは図6、図7(A)、(B)に示すような回転可能なパドル式とする。なお、図6において、135aは回転軸、135bは掻取りパドルである。また、掻取りパドル(掻取り刃)135bは自由回転する羽保持部材135cに接線方向に取り付けたり(図7(A))、放射状に取り付けたり(図7(B))してもよい。
【0051】
また、粒子回収手段134は、図8に示すようにカム方式としてもよい。カム140により揺動運動する揺動板135aの先端に掻取り刃135bを取付け、掻取った回収粒子を、揺動板135a上を流下させて回収する。
【0052】
さらに、粒子回収手段134Aは、図9に示すように、吸引式の回収としてもよい。ディスク型の回転電極間の間に吸引回収手段(吸引式の回収ダクト137、粒子回収ボックス138)の吸引口137aを配するとともに、その上方に矩形波状の掻取り板135を配する。
【0053】
回転電極11がドラム式の場合に粒子回収手段34を吸引式掻取り回収とした場合を図10に示す。帯状掻取り刃35の上方に粒子吸引ダクト37Aの吸引口37aを臨ませたものである。粒子吸引ダクト37Aは回転電極11の母線方向にスライド可能となっている。
【0054】
以上の各実施形態においては、回転体に凝集付着した微粒子の回収を、回転させながら掻取り回収して処理槽外へ直接排出する例としたが、下記の図11・12・13に示す如く、離脱落下する構成であって、前記処理槽に沈降した微粒子が前記処理槽外へ排出可能とされている構成としてもよい。即ち、微粒子の特性や回転電極の特性によっては、凝集付着粒子の回転電極に対する付着力が小さく凝集付着微粒子が、回転体の懸濁液脱出位置又は懸濁液中で離脱して、処理槽内へ自重落下することも考えられるためである。
【0055】
なお、図11・12・13において、対応部分の図符号の頭に「2」、「3」、「4」を付して、それらの説明の全部又は一部を省略する。
【0056】
例えば、図11(A)に示すように、処理槽213の一端側を絶縁端板213dの外周をギア形状とするとともに、該絶縁端板213dを駆動できるピニオンギア215を配する。そして、凝集処理運転(印加)を停止した状態で、図11(B)に示すように、縁端端板213dを介して処理槽213を垂直方向に回転させることにより、回転体211から離脱落下した沈降微粒子を処理槽213から排出させるものである。なお、216は、処理槽213の底部中央に形成した排液バルブである。
【0057】
また、図12(A)に示すように、回転体311から離脱自重落下して処理槽313内に沈降した微粒子を、処理槽313の底部に設けた排出バルブ(電磁バルブ)316等を介して間欠的に排出させたり、図12(B)に示すようにスクリュー316Aを介して集合排出させたりすることもできる。なお、スクリュー316Aは中央部両側で取付け羽根の方向を逆にすれば、処理槽313の中央部に沈降微粒子を集合させることができる。また、微粒子排出量が少ない場合、処理槽313の中央部の排出バルブ316位置にはピット(溜り部)を設けることが望ましい。
【0058】
さらに、図13に示すように、回転体411に回収スクレーパ435を取付け、処理槽413内に沈降した微粒子を掻き出すこともできる。
【0059】
本発明の上記各実施形態の微粒子回収装置は、連続処理が可能となるため、工業プロセスに組み込むことが容易になる。
【0060】
また、本発明の微粒子回収装置は、水系、非水系に関わらず懸濁液中微粒子の濃縮および回収を簡便且つ短時間ですることが可能であり、懸濁系、特に、微粒子を含んだ懸濁液からの貴金属、レアメタル等の回収、固液分離が困難なナノ粒子を含んだ懸濁液の浄化等、様々な産業分野での利用可能性が高い。
【0061】
本発明の処理槽への給液・排出を適用する微粒子回収装置による微粒子回収方法における、処理槽への原料の給液および製品の排出をそれぞれ液滴にして行うことに基づく特長以外の特長を、以下に記述する。
【0062】
本発明の粒子回収方法は、直流、交流あるいはパルス電流での電場により粒子の電気泳動現象を誘起し、すなわち、液中で帯電している粒子をその反対電位の電極まで泳動させ、この現象により電極上に堆積付着させた粒子を掻取り回収するものである。
【0063】
また、電気泳動法を用いた本粒子回収方法にあっては、電位を印加した電極上で電気泳動現象で粒子が濃縮あるいは付着するため、めっきとは異なり通電しない。したがって、エネルギー消費は理論上ゼロである。したがって、従来の加熱乾固あるいはその他の分離・濃縮方法に比較して環境低負荷で粒子回収が可能となる。工業プロセスの規模に対応して大型化した場合でもエネルギー消費量は大きくない特長もある。
【符号の説明】
【0064】
11、111 回転体
11a、111a 回転電極
13、113 処理槽
13a、113a 固定電極
17、117 給液用樋
34、134 粒子回収手段
35、135 掻取り部材
41 処理済液受け槽
47 液分散網目部材
49 液拡散隆起群
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー等の懸濁液から微粒子を回収する懸濁液中微粒子の回収装置に関し、さらに詳しくは、連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って微粒子を回収する回収装置に関する。特に、従来の微粒子回収方法で回収が困難であったナノ粒子の回収に好適な微粒子回収装置に係る発明である。
【0002】
ここでは、微粒子として、ナノ粒子を例に採り説明するが、ナノ粒子に含まれない微粒子(通常、100メッシュ(147μm)アンダー)も本発明の微粒子の範囲内に含まれる。
【背景技術】
【0003】
本願出願人のうちの一部の者によって、上記電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って粒子を回収する微粒子回収方法および微粒子回収装置が先に提案されている(特願2009-167056号(国際出願PCT/JP2010/061948(未公開)の基礎出願))。以下に、背景技術の欄を引用する。
【0004】
「ナノテクノロジーの台頭と共に工業プロセスにおいてもナノ粒子が使われるプロセスが多くなった。例えば電子産業や半導体技術で欠かすことの出ないCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)で用いられるスラリー、配線用金属ペースト、各種顔料系インキなどがある。これらは世界に先駆けた我が国固有の技術が多く世界の産業発展を支えていると言っても過言ではない。これらの成功はナノ粒子の分散技術に裏付けされたものである。
一方でこれら高分散性のナノ粒子を含む廃液処理についてはエネルギー的に非効率かつ環境負荷の高いプロセスとなり問題視されている。例えば、CMPスラリーや製造工程ででてくるナノ粒子を含む廃液(懸濁液)は分散安定がよく、通常のスラリーのように化学的な操作で液体と沈降分離することは困難である。現状は化学的な操作で沈降できる成分を取り除いた後、加熱による蒸発乾固がなされている。工業的な廃液プロセスとしては成り立たない。この場合スラリーの粒子濃度は低く、投入エネルギーのほとんどが溶媒の蒸発で消費されてしまっている。」
【0005】
そして、当該欄において、下記先行技術文献が引用されている。しかし、それらは、[解決しようとする課題]の欄で説明されている如く、電気泳動現象による凝集(濃縮)処理に関するものではない。
【0006】
さらに、前記国際出願(PCT/JP2010/061948:国際出願未公開)の国際調査報告書で文献1〜4(下記特許文献3〜6に対応)が引用され、下記見解が付されている。
【0007】
「文献1には、ベントナイト等の超微粒子を泥水や濁水から回収する方法が記載されており、廃泥水を入れた水槽内に正極および負極を配設し、当該電極間に直流電圧を印加することにより、マイナス電位をもつベントナイト等の超微粒子を正極に付着させる旨が開示されている。さらに、電極の一方は固定電極であり、他方は可動電極であって、水槽の出口付近には、振動やエアの吹付け等によって可動電極に付着した超微粒子を脱落させるための機構が設けられている旨も開示されている。また、文献1記載の発明においては、本願発明と同様、スラリー中の粒子を電気泳動現象により電極近傍に濃縮、付着させて回収することから、「電気泳動による接近と相互作用ポテンシャル(V)による反発とがバランスした状態」であり、「電気泳動による運動エネルギーをポテンシャル障壁(Vmax)よりも小さく」した状態となっているものと認められる。」
【0008】
「文献2には、微粒子分散液を電気泳動により濃縮して回収する方法が記載されており、微粒子のゼータ電位は絶対値で1〜1000mVの範囲とすることが好ましい旨が開示されている。」
【0009】
「文献3には、電気泳動により被処理液から懸濁質を分離する方法が記載されており、回転する円板状の電極と固定電極を設け、回転電極表面に析出した電着物を、固定された掻き取り手段により掻き取る旨が開示されている。」
【0010】
「文献4には、インク顔料等の微粒子が混在する洗浄廃液を電気泳動することにより、廃液から微粒子を除去する方法が開示されている。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−21465号公報
【特許文献2】特開2004−181312号公報
【特許文献3】特開平08−086188号公報(国際調査報告文献1)
【特許文献4】特開2006−205092号公報(同文献2)
【特許文献5】特開平08−04769号公報(同文献3)
【特許文献6】特開2004−358430号公報(同文献4)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】青木 裕 粉体工学会誌45(5):325−334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記先願に係る粒子の回収方法は、「直流、交流あるいはパルス電流での粒子の電気泳動現象でスラリー中の粒子を電極およびその近傍に濃縮させ、その濃縮された粒子を回収することを特徴とする。」(段落0012)ものである。
【0014】
そして、先願(国際特許出願)の粒子回収方法を適用する粒子回収装置の概略を記載した段落0014〜0016を次に引用する。
【0015】
「請求項4に記載の発明は、スラリーが供給される容器と、この容器中のスラリーに接するように配置される電極と、前記電極に電圧を印加して前記スラリー中の粒子に電気泳動現象を誘起させる電圧印加手段と、前記電気泳動現象により前記電極およびその近傍に濃縮させた粒子を回収する粒子回収手段と、を備えたことを特徴とする。
前記粒子回収手段としては、請求項5に記載の発明のように、前記電極およびその近傍に濃縮させた粒子をかき取るかき取り手段を有するものとすることができる。具体的には、請求項6に記載の発明のように、前記電極を回転させる駆動手段を有し、前記かき取り手段は、固定された状態で前記回転する電極から前記粒子のかき取りを行うものとすることができる。」
【0016】
そして、上記微粒子回収装置において、さらに、効率的な連続運転をすることが課題として出てきた。
【0017】
本発明は、上記にかんがみて、電気泳動により凝集(濃縮)処理をして懸濁液中微粒子を回収する装置において、効率的な連続運転が可能な微粒子回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは上記効率的な連続運転が困難な理由は、容器(処理槽)内で電気泳動による濃縮(凝集)処理を行いながら、原料液(懸濁液)を供給するとともに、濃縮処理後の製品液(処理済液)を排出しようとすると、原料液を介して原料供給系に、及び、製品液を介して製品液排出系に、それぞれ通電するためであると推定して、下記構成の微粒子回収装置に想到した。
【0019】
連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って、懸濁液中の微粒子を回収する微粒子回収装置であって、
懸濁液中の微粒子が凝集付着する一方の電極(回転電極)が配される回転体と、該回転体の下側が浸漬し他方の電極(固定電極)が配される処理槽とを備え、
前記回転体に凝集付着した微粒子を、前記回転体を回転させながら掻取り回収する付着微粒子回収手段が前記回転体の引き上げ側の上方に配されている構成において、
前記処理槽に対する原料液供給手段の流下給液の起点部、及び、前記処理槽からの処理済み液の流下排液の起点部の各形状が、原料液および処理済液を液滴状態として流下させることができる液滴形成形状とされていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する懸濁液中の微粒子回収装置の基本原理図を示す斜視図である。
【図2】図1に示す微粒子回収装置の絶縁構造の一態様を示す概略斜視図である。
【図3】同じくさらに、処理槽からの溢流粒子の回収機構を具備した粒子回収装置の概略断面図である。
【図4】図2に示す装置に給液手段さらには付着微粒子回収手段(パドル式掻取り回収装置)を備えた一例を図示した平面図(A)およびそのB−B線矢視断面図(B)である。
【図5】図4に示す装置における本発明の流下給液起点および流下排液起点の液滴形成形状並びに処理槽の底面形状の一例を示す斜視図である。
【図6】断面櫛歯状(ディスク型)の回転電極と固定電極、付着微粒子回収手段、及び給液用樋との関係を示す平面図(A)および平面図のB−B線矢視概略断面図(B)である。
【図7】(A)、(B)は図6に適用可能なパドル式掻取り回収装置の他の各例を示す部分側面図である。
【図8】図6において付着微粒子回収手段をカム式掻取り回収装置とした場合の平面図(A)および平面図のB−B線矢視概略断面図(B)である。
【図9】図6において付着微粒子回収手段を吸引式掻取り回収装置とした場合の平面図(A)および平面図のB−B線矢視概略断面図(B)である。
【図10】ドラム型回転電極と固定電極および掻取り吸引式回収装置との関係を示す平面図(A)および平面図のB−B線矢視概略断面図(B)である。
【図11】回転体に凝集付着した微粒子が処理槽内へ落下するときのモデル図(A)、および、処理槽内へ落下した微粒子の回収手段の一例を示すモデル図(B)である。
【図12】処理槽内へ落下した微粒子の回収手段の他の例を示すモデル図(A)および該モデル図の変形部分図(B)である。
【図13】同じくさらに他の例を示すモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
基本的には、連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って、懸濁液(スラリーを含む。)中の微粒子を回収する微粒子回収装置である。
【0023】
懸濁液中微粒子が濃縮付着する一方の電極11aとなる回転体11と、他方の電極13aとなる処理槽13とを備えている(図1)。図例では、印加手段(直流電源)14のプラス(+)側に回転電極11aが、マイナス(−)側に処理槽13の固定電極13aが接続されている。回転電極11aに粒子を電気泳動により凝集付着させるため、粒子の種類によっては、極性を逆にした方が望ましい場合もある。このため、印加手段は、極性切替え可能なものとしておくことが望ましい。当然、直流電源を整流した交流電源に代替することもある。
【0024】
なお、図1に示す仕様の場合の運転例の一例を下記に示す。
・処理量:50m3/d、処理時間:24h/d
・原料液濃度:0.072質量%、密度:1.001g/mL
・処理液量:2085L/h、粒子量:1.5kg/h、液通過時間:2〜3分
・電場電圧:20V、濃縮速度:0.85mg/(mm2・min)
・電場面積:3.7m2、回転数:0.3rpm
【0025】
そして、回転電極11aおよび固定電極13aは、相互に絶縁されている必要がある(図2〜4参照)。
【0026】
具体的には、回転体11(回転電極11a)は、その回転駆動軸21を支持する軸受け23、23が絶縁板(樹脂製)25、25で支持されるとともに、該回転駆動軸21を駆動する従動プーリ27は、絶縁ベルト(ゴム製)29で駆動可能とされて、絶縁されている。なお、絶縁ベルト29と係合する駆動プーリ31は電動機33の出力軸33aに取付けられている。
【0027】
また、処理槽13は、軸方向両端が絶縁端板13b、13bとされ、該絶縁端板(フッ素樹脂等)13b、13b間が、湾曲状(樋状)の導電板(ステンレス鋼板)で形成された固定電極13aとされ、該固定電極13aは、絶縁フランジ継手(継手の一方が樹脂製)39、39を介して、処理済液受け槽41の両側壁内側に懸架されて、絶縁されている。
【0028】
なお、回転体11の両端面外周部が薄肉の切欠き円環部11bとされるとともに、処理槽13の絶縁端板13b、13bの、少なくとも切欠き円環部11bに対応する部位が内側に厚肉とされて微粉浸入阻止部が形成されている。
【0029】
なお、図例中、43は、回転体(回転電極板)11に電源(+)を接続させるための接点(スリップリング)であり、45は、処理槽(固定電極)に電源(−)を接続させるための接点である。
【0030】
そして、上記回収装置には、回転体11の回転電極11aの周面に凝集付着した微粒子を、前記回転体11を回転させながら掻取り回収する粒子回収手段34が回転体11の引き上げ側の上方に配されている。図例では、粒子回収手段34は、掻取り部材(掻取り刃)35と落下式の回収ダクト37とからなる。
【0031】
さらに、本実施形態では、原料液供給手段として給液用樋17が付設されている。18は原料液供給パイプである。
【0032】
そして、通液は、給液用樋17から、処理槽13の一側(給液側)へ流下給液され、回転体周面と処理槽底面との隙間(10〜30mm)を通過(通液)して処理槽13の他側(排液側)から流下排液されるようになっている。
【0033】
上記構成の回収装置において、本実施形態では、処理槽13に対する給液用樋17の流下給液の起点部、及び、前記処理槽13からの処理済液の流下排液の起点部の各形状が、原料液および処理済液を液滴状態として流下させることができる液滴形成形状とされていることを特徴とする。
【0034】
液滴形成形状は、例えば、波状分散堰とする。図例では、谷部17a又は13cが、図例の如く、所定ピッチで形成されたものであるが、連続的に形成された鋸歯状としてもよい。ここで、谷部の大きさは、例えば、幅:25mm、深さ:25mmとする。
【0035】
なお、上記液滴形成形状を分散網目とすることも可能である。
【0036】
また、より絶縁性を確保し易い液滴を形成可能なように、排液側と同様、給液側の流下路の途中にも絶縁性の分散網目部材を通過させる構成とすることもできる。分散網目部材47は、樹脂製メッシュで空間率95%以上のものとする。
【0037】
さらに、本実施形態では、処理済液の流下排液に際して、より絶縁性を確保し易い液滴が生成されるように、図例の如く、処理槽(固定電極)13の回転体(回転電極)11周面との対面に液拡散隆起群49を形成することもできる。
【0038】
この液拡散隆起群49のピッチ、大きさは、液拡散作用を奏すれば特に限定されない。例えば、図1に示す仕様の処理槽の場合で千鳥状に配するとき、図例でp1(流れ方向):例えば50mm、p2:例えば50mmとする。
【0039】
そして、処理済液受け槽41に流下排出される処理済液には浮遊微粒子を含有していることがある。このため処理済液受け槽41の底部には、図3に示すような斜設スクリュー51を利用した固液分離手段を配することが望ましい。固液分離手段は、図例のものに限られない。
【0040】
次に、本発明の使用態様を説明する。
【0041】
回転体11の回転電極11aと処理槽13の固定電極13aとの間に設定電圧を印加し、回転電極11aと固定電極13aとの間に電界を発生させるとともに、電動機33を起動させて回転体11を設定回転数で回転させる。
【0042】
その状態で、原料液(懸濁液)を原料液供給パイプ18から給液用樋17に連続供給する。すると、給液用樋17から原料液は、処理槽13へ流下給液される。そして、処理槽13へ給液された原料液(懸濁液)中の微粒子は、回転電極11aの周面と固定電極13aとの間を通液しながら、電気泳動により回転電極11aに凝集付着する。回転電極11aに凝集付着した微粒子は、回転電極11aの回転により処理槽13の原料液中から引上げられ、乾燥しながら掻取り刃(絶縁体)35の位置に至り、掻取り刃35により掻取られ、粒子回収ダクト37を落下して回収される。
【0043】
このときの運転条件は、前述の例示したものとすることができる。
【0044】
また、処理槽13の給液側とは反対側からは、通液中に回転電極11aに懸濁液中の微粒子が付着して浄化が完了した処理済液が、処理済液受け槽41に流下排液される。
【0045】
そして、上記給液・排液に際して、流下給液の起点部、及び、流下排液の起点部の各形状が液滴形成形状17a、13cとされているため、従来のような給液および排液を介しての通電が大幅低減される。本実施形態では、固定電極13aの回転電極11aの対向面に液拡散隆起群49が存在しているため、流れが撹乱されて、流下排液に際しての液滴分散性が向上する。
【0046】
したがって、回転電極11a及び固定電極13a間の電界状態が安定し、粒子回収性乃至浄化処理性が安定する。
【0047】
また、流下途中で絶縁性の液分散網目部材47を配することにより、回転電極11aと固定電極13aとで形成される電界状態が更に安定することが期待できる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態の如く、回転電極がドラム型に限られず、図6・8・9に示すようなディスク型にも適用可能である。
【0049】
ディスク型においては、対応部分の図符号の頭に「1」を付して、それらの説明の全部又は一部を省略する。
【0050】
その場合の回転電極111aおよび固定電極113aの形態は、図例の如く、それぞれ櫛歯状となる。そして、ディスク型の場合、微粒子は回転電極111aのディスク形状である回転電極111aの外周側側面に付着する(図中の散点表示部)。このため、掻取り部材135、135A、135Bは図6、図7(A)、(B)に示すような回転可能なパドル式とする。なお、図6において、135aは回転軸、135bは掻取りパドルである。また、掻取りパドル(掻取り刃)135bは自由回転する羽保持部材135cに接線方向に取り付けたり(図7(A))、放射状に取り付けたり(図7(B))してもよい。
【0051】
また、粒子回収手段134は、図8に示すようにカム方式としてもよい。カム140により揺動運動する揺動板135aの先端に掻取り刃135bを取付け、掻取った回収粒子を、揺動板135a上を流下させて回収する。
【0052】
さらに、粒子回収手段134Aは、図9に示すように、吸引式の回収としてもよい。ディスク型の回転電極間の間に吸引回収手段(吸引式の回収ダクト137、粒子回収ボックス138)の吸引口137aを配するとともに、その上方に矩形波状の掻取り板135を配する。
【0053】
回転電極11がドラム式の場合に粒子回収手段34を吸引式掻取り回収とした場合を図10に示す。帯状掻取り刃35の上方に粒子吸引ダクト37Aの吸引口37aを臨ませたものである。粒子吸引ダクト37Aは回転電極11の母線方向にスライド可能となっている。
【0054】
以上の各実施形態においては、回転体に凝集付着した微粒子の回収を、回転させながら掻取り回収して処理槽外へ直接排出する例としたが、下記の図11・12・13に示す如く、離脱落下する構成であって、前記処理槽に沈降した微粒子が前記処理槽外へ排出可能とされている構成としてもよい。即ち、微粒子の特性や回転電極の特性によっては、凝集付着粒子の回転電極に対する付着力が小さく凝集付着微粒子が、回転体の懸濁液脱出位置又は懸濁液中で離脱して、処理槽内へ自重落下することも考えられるためである。
【0055】
なお、図11・12・13において、対応部分の図符号の頭に「2」、「3」、「4」を付して、それらの説明の全部又は一部を省略する。
【0056】
例えば、図11(A)に示すように、処理槽213の一端側を絶縁端板213dの外周をギア形状とするとともに、該絶縁端板213dを駆動できるピニオンギア215を配する。そして、凝集処理運転(印加)を停止した状態で、図11(B)に示すように、縁端端板213dを介して処理槽213を垂直方向に回転させることにより、回転体211から離脱落下した沈降微粒子を処理槽213から排出させるものである。なお、216は、処理槽213の底部中央に形成した排液バルブである。
【0057】
また、図12(A)に示すように、回転体311から離脱自重落下して処理槽313内に沈降した微粒子を、処理槽313の底部に設けた排出バルブ(電磁バルブ)316等を介して間欠的に排出させたり、図12(B)に示すようにスクリュー316Aを介して集合排出させたりすることもできる。なお、スクリュー316Aは中央部両側で取付け羽根の方向を逆にすれば、処理槽313の中央部に沈降微粒子を集合させることができる。また、微粒子排出量が少ない場合、処理槽313の中央部の排出バルブ316位置にはピット(溜り部)を設けることが望ましい。
【0058】
さらに、図13に示すように、回転体411に回収スクレーパ435を取付け、処理槽413内に沈降した微粒子を掻き出すこともできる。
【0059】
本発明の上記各実施形態の微粒子回収装置は、連続処理が可能となるため、工業プロセスに組み込むことが容易になる。
【0060】
また、本発明の微粒子回収装置は、水系、非水系に関わらず懸濁液中微粒子の濃縮および回収を簡便且つ短時間ですることが可能であり、懸濁系、特に、微粒子を含んだ懸濁液からの貴金属、レアメタル等の回収、固液分離が困難なナノ粒子を含んだ懸濁液の浄化等、様々な産業分野での利用可能性が高い。
【0061】
本発明の処理槽への給液・排出を適用する微粒子回収装置による微粒子回収方法における、処理槽への原料の給液および製品の排出をそれぞれ液滴にして行うことに基づく特長以外の特長を、以下に記述する。
【0062】
本発明の粒子回収方法は、直流、交流あるいはパルス電流での電場により粒子の電気泳動現象を誘起し、すなわち、液中で帯電している粒子をその反対電位の電極まで泳動させ、この現象により電極上に堆積付着させた粒子を掻取り回収するものである。
【0063】
また、電気泳動法を用いた本粒子回収方法にあっては、電位を印加した電極上で電気泳動現象で粒子が濃縮あるいは付着するため、めっきとは異なり通電しない。したがって、エネルギー消費は理論上ゼロである。したがって、従来の加熱乾固あるいはその他の分離・濃縮方法に比較して環境低負荷で粒子回収が可能となる。工業プロセスの規模に対応して大型化した場合でもエネルギー消費量は大きくない特長もある。
【符号の説明】
【0064】
11、111 回転体
11a、111a 回転電極
13、113 処理槽
13a、113a 固定電極
17、117 給液用樋
34、134 粒子回収手段
35、135 掻取り部材
41 処理済液受け槽
47 液分散網目部材
49 液拡散隆起群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って、懸濁液中の微粒子を回収する微粒子回収装置であって、
懸濁液中の微粒子が凝集付着する一方の電極(回転電極)が配される回転体と、該回転体の下側が浸漬し他方の電極(固定電極)が配される処理槽とを備え、
前記回転体に凝集付着した微粒子が、該回転体から離脱回収される構成において、
前記処理槽に対する原料液供給手段の流下給液の起点部、及び、前記処理槽からの処理済み液の流下排液の起点部の各形状が、原料液および処理済液を液滴状態として流下させることができる液滴形成形状とされていることを特徴とする微粒子回収装置。
【請求項2】
前記液滴形成形状が、波状分散堰又は分散網目で形成されていることを特徴とする請求項1記載の微粒子回収装置。
【請求項3】
前記処理槽(固定電極)の回転体周面との対面に液拡散隆起群が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の微粒子回収装置。
【請求項4】
前記流下給液及び/又は流下排液の流下途中に、さらに、絶縁性の分散網目部材を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の微粒子回収装置。
【請求項5】
前記回転体が回転ドラムとされ、該回転ドラム及び前記処理槽に配される一対の電極が、相互に設定隙間を有して噛み合う櫛歯状対とされていることを特徴とする請求項1〜4いずれか一記載の微粒子回収装置。
【請求項6】
さらに、前記微粒子を離脱させる掻取り部材が前記回転体の母線に沿って配されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか一記載の微粒子回収装置。
【請求項7】
前記掻取り部材が前記回転ドラムの櫛歯状電極の隙間を埋める多数の回転パドル群で形成されていることを特徴とする請求項6記載の微粒子回収装置。
【請求項8】
さらに、前記掻取り部材で掻取られた微粒子が導入され、前記処理槽外へ直接的に排出回収するダクト又はシュートが配されていることを特徴とする請求項6又は7記載の微粒子回収装置。
【請求項9】
前記微粒子が処理槽内へ前記回転体から離脱落下する構成であって、前記処理槽に沈降した微粒子が前記処理槽外へ排出可能とされていることを特徴とする請求項1記載の微粒子回収装置。
【請求項10】
一対の電極を備え、処理槽中に供給した懸濁液(原料液)中の微粒子を、電気泳動現象を利用して一方の電極に凝集付着させた後、前記微粒子の凝集付着させた一方の電極から凝集付着粒子を除去して微粒子回収する方法において、前記処理槽への原料(懸濁液)の給液および製品(処理済液)の排出をそれぞれ液滴にして行なうことにより、原料供給系および製品受け系を絶縁可能とすることを特徴とする微粒子回収方法。
【請求項1】
連続的乃至間欠連続的に電気泳動による懸濁液の凝集処理を行って、懸濁液中の微粒子を回収する微粒子回収装置であって、
懸濁液中の微粒子が凝集付着する一方の電極(回転電極)が配される回転体と、該回転体の下側が浸漬し他方の電極(固定電極)が配される処理槽とを備え、
前記回転体に凝集付着した微粒子が、該回転体から離脱回収される構成において、
前記処理槽に対する原料液供給手段の流下給液の起点部、及び、前記処理槽からの処理済み液の流下排液の起点部の各形状が、原料液および処理済液を液滴状態として流下させることができる液滴形成形状とされていることを特徴とする微粒子回収装置。
【請求項2】
前記液滴形成形状が、波状分散堰又は分散網目で形成されていることを特徴とする請求項1記載の微粒子回収装置。
【請求項3】
前記処理槽(固定電極)の回転体周面との対面に液拡散隆起群が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の微粒子回収装置。
【請求項4】
前記流下給液及び/又は流下排液の流下途中に、さらに、絶縁性の分散網目部材を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の微粒子回収装置。
【請求項5】
前記回転体が回転ドラムとされ、該回転ドラム及び前記処理槽に配される一対の電極が、相互に設定隙間を有して噛み合う櫛歯状対とされていることを特徴とする請求項1〜4いずれか一記載の微粒子回収装置。
【請求項6】
さらに、前記微粒子を離脱させる掻取り部材が前記回転体の母線に沿って配されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか一記載の微粒子回収装置。
【請求項7】
前記掻取り部材が前記回転ドラムの櫛歯状電極の隙間を埋める多数の回転パドル群で形成されていることを特徴とする請求項6記載の微粒子回収装置。
【請求項8】
さらに、前記掻取り部材で掻取られた微粒子が導入され、前記処理槽外へ直接的に排出回収するダクト又はシュートが配されていることを特徴とする請求項6又は7記載の微粒子回収装置。
【請求項9】
前記微粒子が処理槽内へ前記回転体から離脱落下する構成であって、前記処理槽に沈降した微粒子が前記処理槽外へ排出可能とされていることを特徴とする請求項1記載の微粒子回収装置。
【請求項10】
一対の電極を備え、処理槽中に供給した懸濁液(原料液)中の微粒子を、電気泳動現象を利用して一方の電極に凝集付着させた後、前記微粒子の凝集付着させた一方の電極から凝集付着粒子を除去して微粒子回収する方法において、前記処理槽への原料(懸濁液)の給液および製品(処理済液)の排出をそれぞれ液滴にして行なうことにより、原料供給系および製品受け系を絶縁可能とすることを特徴とする微粒子回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−110830(P2012−110830A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261641(P2010−261641)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(390008084)中央化工機株式会社 (16)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(390008084)中央化工機株式会社 (16)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
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