説明

微粒子水溶性無機塩の製造方法とその製品

【課題】粒径の小さい微粒子水溶性無機塩を簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】水溶性無機塩を含有してなる水溶液を乳化剤を含有してなる油液に分散させたW/O型エマルションから微粒子水溶性無機塩を製造する方法であって、該W/O型エマルションから、溶解度差を利用して水溶性無機塩を結晶化させた後、油液及び水溶液を分離する、又は液相から一度除去した水分は液相に戻さない処理を行い、加熱処理により水分を除去して水溶性無機塩を結晶化させた後、油液又は油液及び水溶液を分離することによって微粒子水溶性無機塩を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便な方法によって体積平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする微粒子の水溶性無機塩を製造する方法とその製品に関する。
また、本発明は、水溶性無機塩を含有してなる水溶液を、乳化剤を含有してなる油液に分散させてW/O型エマルションにし、溶解度差を利用して水溶性無機塩を結晶化させた後に、又は、液相から一度除去した水分は液相に戻さない処理を行い、加熱処理により水分を除去して水溶性無機塩を結晶化させた後に、油液又は油液及び水溶液を分離することを特徴とする微粒子水溶性無機塩の製造方法とその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粒子径が小さくなると、化粧品用では使用感の向上、顔料用では着色力、隠蔽力の向上が見られ、これまでになかった新たな特性が付与されると考えられている。
水溶性無機塩の水溶液から結晶を得る方法として、高温水溶液を低温に冷却し、各温度に於ける溶解度の差を利用して結晶を得る方法がある。急速に冷却し微細な結晶を得ることも可能であるが、数100μm以下の結晶を安定的に得ることは困難である。
従来の微粒子の製造方法は、大きく分類すると、気相法、固相法、液相法がある。気相法には化学気相析出法と物理気相析出法が、固相法には加熱炉法と粉砕法(WO2005/004640)が、また、液相法には共沈法、均一沈殿法、化合物沈殿法(特開平10−259026号公報、特開平10−236822号公報)、金属アルコキシド法、水熱反応法、マイクロエマルション法、異相系液反応法、ゾル−ゲル法、超臨界流体法、界面反応法、噴霧熱分解法等多くの方法がある。
また、マイクロエマルション法を活用した微粒子の製造方法は多くあるが、特開2007−191772号公報は水に溶けにくい微粒子を製造するものであり、特開平11−188256号公報は、平均粒径10ミクロン以下の水性相を含む油性組成物を得る方法ではあるが、微粒子水溶性無機塩を得るものではない。また、特開2004−8837は、脱水することで、S/Oサスペンションを得ているが、脱水時の水分コントロールについては記載されていない。
上記従来法は、いずれも水溶性無機塩を効率的に製造する方法として有効なものとは言えなかった。
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO2005/004640
【特許文献2】特開平10−259026号公報
【特許文献3】特開平10−236822号公報
【特許文献4】特開2007−191772号公報
【特許文献5】特開平11−188256号公報
【特許文献6】特開2004−008837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微粒子水溶性無機塩の製造方法を検討することを課題とした。
本発明は、従来技術が有する課題を解決でき、従来よりさらに粒径の小さい微粒子の水溶性無機塩を効率的な方法によって製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明の発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、下記の微粒子水溶性無機塩結晶の製造方法を確立した。
本発明の基本的な構成は以下のとおりである。
(1)1種類以上の水溶性無機塩を含有してなる水溶液を乳化剤を含有してなる油液に分散させたW/O型エマルションから微粒子水溶性無機塩を製造する方法であって、該W/O型エマルションから、溶解度差を利用して水溶性無機塩を結晶化させた後、油液及び水溶液を分離することを特徴とする微粒子水溶性無機塩の製造方法。
(2)該W/O型エマルションから、加熱処理によって水分を除去するのに一度除去した水分は液相に戻すことなく水溶性無機塩を結晶化させた後、(A)油液又は(B)油液及び水溶液、を分離することを特徴とする微粒子水溶性無機塩の製造方法。
(3)水溶性無機塩の陽イオンが、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、セシウム又はバリウムであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の微粒子水溶性無機塩の製造方法。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法で製造した水溶性無機塩であって、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定したとき、体積平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする微粒子水溶性無機塩。
(5)体積平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする(4)に記載の微粒子水溶性無機塩。
(6)体積平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする(5)に記載の微粒子水溶性無機塩。
(7)水溶性無機塩が、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、セシウム又はバリウムから選ばれた、人体にとって必須である陽イオンを含むことを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の微粒子水溶性無機塩。
【0006】
本発明では、水溶性無機塩を結晶化させる方法として、溶解度差を利用する方法又は加熱処理により水分を除去する方法があるが、水溶性無機塩の収率の観点から加熱処理により水分を除去する方法が好ましい。
また、1gの水溶性無機塩の溶解に必要な水量が20g未満である水溶性無機塩を使用することが好ましい。
このような無機塩としては、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、セシウム又はバリウムから選ばれた、人体にとって必須である陽イオンを含む水溶性無機塩が挙げられる。
【0007】
本発明で用いる油性成分は、食品、化粧品、医薬品及び工業等の分野で利用される油性成分で、常温で液体のものが好ましいが、加温により溶解するものであれば、その状態で用いることができる。
この中には、動植物性油脂類、ワックス類、炭化水素類、エステル類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン系物質、ステロール類、樹脂類等があり、及びこれらに水素添加、分別、エステル交換等の1種又は2種以上の加工を施した油性成分がある。例えば、なたね油、大豆油、米油、小麦胚芽油、ハト麦油、ガーリックオイル、ひまわり油、サフラワー油、ゴマ油、エゴマ油、紫蘇油、トウハゼ核油、オリーブ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、パーム油、パーム核油、やし油、マンゴ脂、コーン油、綿実油、アマニ油、落花生油、カカオ脂、サル油、シア油、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油、からし油、蜜蝋、流動パラフィン、イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、スクワレン、テレピン油、ミリスチン酸イソプロピルが挙げられる。これらの油性成分を単独で用いることもできるし、2種以上を組合せて用いることもできる。
また、乳化剤は、食品、化粧品、医薬品及び工業品等の分野で利用される乳化剤で、おおむねHLBが10以下であればよい。
この中には、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ジグリセライド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、レシチン及びその酵素分解物、サポニン、たんぱく質及びその酵素分解物、植物ステロール類、シリコーン系乳化剤、アルキレンオキサイド付加乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤を単独で用いることもできるし2種以上を組合せて用いることもできる。
乳化は、高速撹拌装置、高圧ホモジナイザー等が使用できる。また、水分を蒸発させる際、圧力は常圧、或いは減圧のどちらでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、1種類以上の水溶性無機塩を含有してなる水溶液を乳化剤を含有してなる油液に分散させてW/O型エマルションにし、溶解度差を利用して水溶性無機塩を結晶化させた後に油液及び水溶液を分離する、又は、液相から一度除去した水分は液相に戻さない処理を行い、加熱処理により水分を除去して水溶性無機塩を結晶化させた後に、(A)油液又は(B)油液及び水溶液、を分離するという簡便な方法により微粒子の水溶性無機塩を高収率で製造することができる。
得られた水溶性無機塩の粒子径は、10μm以下、5μm以下、さらには1μm以下という超微細なものであって、脱穴剤、粉砕助剤、セラミック原料等の工業分野、ミネラル補給剤等の食品分野、マッサージ剤等の化粧品分野、人工透析剤等の医薬品分野において利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、1種類以上の水溶性無機塩を含有してなる水溶液を乳化剤を含有してなる油液に分散させたW/O型エマルションから微粒子水溶性無機塩を製造する方法であって、該W/O型エマルションから、溶解度差を利用して水溶性無機塩を結晶化させた後、油分及び水溶液を分離することによって、微粒子の水溶性無機塩を製造するもの(冷却晶析法)又は、液相から一度除去した水分は液相に戻さない処理を行い、加熱処理により水分を除去して水溶性無機塩を結晶化させた後に、(A)油液又は(B)油液及び水溶液、を分離することによって、微粒子の水溶性無機塩を製造するもの(加熱脱水法)であるが、本発明の製造方法を図面で説明する。
図1は、本発明の製造工程のフロー図を示す。
【0010】
図1によれば、水溶性無機塩と水とを混合溶解し、該水溶性無機塩の水溶液を調製する。この場合、水溶性無機塩に対する水量は、水溶性無機塩が完全に溶解する以上の水量であれば良く、飽和溶液濃度により近くなるよう水量を少なくするのが好ましい。一方、油と乳化剤とを混合して油液を調製し、先の水溶性無機塩の水溶液と混合する。この場合、油と乳化剤との混合比率は、油:乳化剤=1:0.2〜1:0.005程度、好ましくは油:乳化剤=1:0.05〜1:0.01である。
次に、水溶性無機塩の水溶液と油液との混合比率は、水溶液:油液=90:10〜10:90程度、好ましくは水溶液:油液=70:30〜20:80で混合し、W/Oエマルションを調製する。この後、冷却晶析法は、W/Oエマルションを攪拌しながら冷却し、温度による水溶性無機塩の溶解度の違いを利用して結晶を析出させる。冷却後は、遠心分離などの周知の固―液分離手段で、油液と水溶液を分離し、水溶性無機塩を固形分として得る。また、加熱脱水法は、W/Oエマルションを攪拌しながら加熱し、水分を除去する。常圧における加熱温度は100〜130℃が適当である。
また、水分を除去するのに、一度除去した水分は、W/Oエマルション中に戻すことのないように十分に注意する必要がある。この注意を怠ると、得られた無機塩粒子の粒径が目指すような微細な粒径のものが得られない。
水分の除去後に残ったS/Oサスペンションより遠心分離などの周知の固―液分離手段で、(A)油液又は(B)油液及び水溶液、を分離し、水溶性無機塩を固形分として得る。
【0011】
本発明で使用する水溶性無機塩の溶解度は特に規定はないが、より溶解度が大きいものが好ましい。具体的には1gの水溶性無機塩の溶解に必要な水量が20g未満である水溶性無機塩を使用することが好ましい。また、飽和溶液に近い濃度で使用する方が効率的である。
具体的には、人体にとって必須である陽イオンを含む水溶性無機塩が挙げられるが、好ましいものとしては、塩化カルシウム、硫酸亜鉛、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム又は硫酸カリウムなどがある。
上記無機塩の飽和溶解度は以下の〔表1〕のとおりである。
なお、固体の水に対する溶解度は、化学便覧 基礎編 改訂5版II(平成16年2月20日発行 日本化学会編)より抜粋した20℃に於ける固体の溶解度であり、表の右欄は、この値から計算した1gの水溶性無機塩を溶解するために必要な水量である。
【0012】
【表1】

【0013】
W/O型エマルション及び生成した水溶性無機塩粒子の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MT3300II、日機装株式会社)を用いて測定し、体積平均粒子径で示した。
【実施例】
【0014】
以下、微粒子水溶性無機塩の製造方法を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0015】
〔実施例1〕
塩化ナトリウム(NaCl含量99.5%)1,000gを蒸留水3,000gに加え、撹拌溶解し、塩化ナトリウム水溶液を作成した。
市販の食用油(なたね油+大豆油)3,840gに乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(阪本薬品工業株式会社製、CRS−75)160gを加え、撹拌溶解し、油液を作成した。
油液160gを300mlビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら塩化ナトリウム水溶液40gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化しW/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。次に、得られたW/O型エマルション100gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いて撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、130℃まで加熱して水分を除去し、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は0.4μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径は0.7μmであった。
【0016】
〔実施例2〕
実施例1の油液100gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら実施例1の塩化ナトリウム水溶液100gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化し、W/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。
得られたW/O型エマルション200gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いエマルションを撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、130℃まで加熱した後、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は0.9μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径は1.4μmであった。
【0017】
〔実施例3〕
実施例1の油液80gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら実施例1の塩化ナトリウム水溶液120gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化しW/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。得られたW/O型エマルション200gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いエマルションを撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、130℃まで加熱した後、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は1.1μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径は2.7μmであった。
【0018】
〔実施例4〕
実施例1の油液70gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら実施例1の塩化ナトリウム水溶液130gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化しW/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。得られたW/O型エマルション200gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いエマルションを撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないよう側面を保温材で覆い、130℃まで加熱した後、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は2.4μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径は3.4μmであった。
【0019】
〔実施例5〕
実施例1の油液60gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら実施例1の塩化ナトリウム水溶液140gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化しW/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。得られたW/O型エマルション200gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いてエマルションを撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようにして130℃まで加熱した後、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は1.7μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径は5.5μmであった。
【0020】
以上の実施例1〜5における原料の油液、塩化ナトリウム水溶液の使用量及び得られたエマルション及び塩化ナトリウムの体積平均粒子径は以下のとおりである。
【表2】

【0021】
〔実施例6〕
塩化カリウム(KCl含量99.8%)25gを蒸留水75gに加え、撹拌溶解し、塩化カリウム水溶液を作成した。
実施例1の油液100gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら塩化カリウム水溶液100gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化しW/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。
次に、得られたW/O型エマルション100gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いて撹拌し、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、130℃まで加熱して水分を除去し、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。
得られた微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は1.6μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径1.2μmであった。
【0022】
〔実施例7〕
塩化カルシウム(無水塩)(CaCl含量99.2%)35gを蒸留水65gに加え、撹拌溶解し、塩化カルシウム水溶液を作成した。
実施例1の油液100gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら塩化カルシウム水溶液100gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化し、W/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。次に、得られたW/O型エマルション100gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いて撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、130℃まで加熱し水分を除去し、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は、1.9μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径0.7μmであった。
【0023】
〔実施例8〕
硫酸マグネシウム(7水塩)(強熱後MgSO含量99.8%)40gを蒸留水60gに加え、撹拌溶解し、硫酸マグネシウム水溶液を作成した。
実施例1の油液100gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら硫酸マグネシウム水溶液100gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化し、W/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。次に、得られたW/O型エマルション200gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いて撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、130℃まで加熱し水分を除去し、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。
得られた微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は1.3μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径1.0μmであった。
【0024】
〔実施例9〕
硫酸亜鉛(7水塩)(ZnSO・7HO含量99.9%)50gを蒸留水50gに加え、撹拌溶解し、硫酸亜鉛水溶液を作成した。
実施例1の油液100gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら硫酸亜鉛水溶液100gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化しW/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。次に、得られたW/O型エマルション200gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いて撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、130℃まで加熱し、水分を除去し、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。
得られた微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は4.1μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径0.2μmであった。
【0025】
〔実施例10〕
硫酸マグネシウム(7水塩)(強熱後MgSO含量99.8%)31gと硫酸カリウム6gを蒸留水63gに加え、撹拌溶解し、マグネシウムとカリウムを含む水溶液を作成した。
実施例1の油液100gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながらマグネシウムとカリウムを含む水溶液100gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化し、W/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。
次に、得られたW/O型エマルション200gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いて撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、130℃まで加熱し水分を除去し、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。
得られた微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は4.6μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径0.4μmであった。
【0026】
〔実施例11〕
実施例1の油液100gを300mlのビーカーに入れ、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら実施例1の塩化ナトリウム水溶液100gを10秒間で添加した後、5分間撹拌乳化し、W/O型エマルションを作成し、粒度分布を測定した。
得られたW/O型エマルション200gをホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いエマルションを撹拌、ビーカー側面に蒸発した水分が凝集しないようビーカー側面を保温材で覆い、100℃まで加熱した後、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、液相(食用油及び水溶液)と微粒子水溶性無機塩を分離した。重量測定の結果、水分が10g残っていた。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
エマルションの体積平均粒子径は1.1μm、水溶性無機塩の体積平均粒子径は1.0μmであった。
【0027】
〔実施例12〕
硫酸マグネシウム(7水塩)(強熱後MgSO含量99.8%)60gを蒸留水40gに加え、加熱しながら撹拌溶解し、60℃の硫酸マグネシウム水溶液を作成した。
実施例1の油液100gを300mlのビーカーに入れ、60℃に加温した後、ハンディーフードプロセッサー(販売元:日本タッパーウェアー株式会社、バーミックス)を用いて15,000rpmで撹拌しながら60℃の硫酸マグネシウム水溶液100gを10秒間で添加した後、保温しながら5分間撹拌乳化し、W/O型エマルションを作成した。温度が高いためエマルションの粒度分布測定は実施しなかった。
得られたW/O型エマルション200gを撹拌しながら15℃まで冷却し、遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、10分間遠心分離し、微粒子水溶性無機塩を分離した。
微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
水溶性無機塩の体積平均粒子径0.2μmであった。
【0028】
以上の実施例6〜12における原料の油液、水溶液の使用量及び得られたエマルション及び水溶性無機塩の体積平均粒子径は以下のとおりである。
【表3】

【0029】
〔比較例1〕
実施例1で得られたW/O型エマルション100gを200mlビーカーに入れ、ホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いエマルションを撹拌、ビーカー側面を保温材で覆うことなく、130℃まで加熱し水分を除去した。ビーカー側面を保温材で覆っていないため、ビーカー側面に凝集した水分が、液相に入ることが観察された。遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。水溶性無機塩の体積平均粒子径は109μmであった。
【0030】
〔比較例2〕
実施例6で得られたW/O型エマルション100gを200gビーカーに入れ、ホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いて撹拌、ビーカー側面を保温材で覆うことなく、130℃まで加熱し水分を除去した。ビーカー側面を保温材で覆っていないため、ビーカー側面に凝集した水分が、液相に入ることが観察された。遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
水溶性無機塩の体積平均粒子径は158μmであった。
【0031】
〔比較例3〕
実施例7で得られたW/O型エマルション100gを200gビーカーに入れ、ホットスターラー(コーニング製 ラボラトリースターラー)を用いて撹拌、ビーカー側面を保温材で覆うことなく、130℃まで加熱し水分を除去した。ビーカー側面を保温材で覆っていないため、ビーカー側面に凝集した水分が、液相に入ることが観察された。遠心分離器(ベックマンコールター製、Avanti J-25)を用いて15,000rpm、5分間遠心分離し、食用油と微粒子水溶性無機塩を分離した。微粒子水溶性無機塩の粒度分布を測定した。
水溶性無機塩の体積平均粒子径は65μmであった。
【0032】
〔比較例4〕
硫酸マグネシウム(7水塩)(強熱後MgSO含量99.8%)60gを蒸留水40gに加え、加熱しながら撹拌溶解し、60℃の硫酸マグネシウム水溶液を作成した。得られた水溶液を撹拌しながら15℃まで冷却し、針状結晶を析出させたのち、ヌッチェを用い水溶液と水溶性無機塩を分離した。水溶性無機塩の粒度分布を測定した。水溶性無機塩の体積平均粒子径1,000μmであった。
【0033】
以上の比較例1〜4における原料の油液、水溶液の使用量及び得られた水溶性無機塩の体積平均粒子径は以下のとおりである。
【表4】

【0034】
〔実施例・比較例の総括〕
実施例1〜5において、塩化ナトリウム水溶液と油液の比率を変えてW/O型エマルションを作成し、加熱により水分を除去し、無機塩の結晶化及び油液の分離により、それぞれにおいて所期の目的とする微粒子(0.7〜5.5μm)の塩化ナトリウムを得た。
また、NaCl以外の無機塩を用いた実施例6〜9では、各種の濃度の水溶性無機塩水溶液を調製し、これと油液を用いてW/O型エマルションを作成し、加熱により水分を除去し、無機塩の結晶化及び油液の分離により、それぞれ目的とする微粒子水溶性無機塩を得た。
実施例10では、2種類の水溶性無機塩を含む水溶液と油液を用いてW/O型エマルションを作成し、加熱により水分を蒸発させ、結晶化及び油液の分離により、目的とする微粒子水溶性無機塩を得た。
実施例11では、塩化ナトリウム水溶液と油液を用いてW/O型エマルションを作成し、加熱により水分の一部分を除去し、無機塩を結晶化させ、油液及び水溶液の分離により、目的とする微粒子塩化ナトリウムを得た。
実施例12では、硫酸マグネシウム水溶液と油液を用いてW/O型エマルションを作成し、エマルションを冷却、温度による溶解度のちがいを利用して結晶化させ、油液及び水溶液の分離により、目的とする微粒子水溶性無機塩を得た。
これに対して比較例1〜3は、実施例1、6、7で得られたW/O型エマルションを加熱処理によって水分を除去する際に、一度除去した水分が再び液相に入ることを防止することなく結晶化させた。比較例4では、エマルション法を使用しないで水溶性無機塩を得た。このことにより、比較例1〜4でできた結晶の粒径は格段に大きく、目指す微粒子水溶性無機塩は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の工程フロー図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性無機塩を含有してなる水溶液を乳化剤を含有してなる油液に分散させたW/O型エマルションから微粒子水溶性無機塩を製造する方法であって、該W/O型エマルションから、溶解度差を利用して水溶性無機塩を結晶化させた後、油液及び水溶液を分離することを特徴とする微粒子水溶性無機塩の製造方法。
【請求項2】
該W/O型エマルションから、加熱処理によって水分を除去するのに一度除去した水分は液相に戻すことなく水溶性無機塩を結晶化させた後、(A)油液又は(B)油液及び水溶液、を分離することを特徴とする微粒子水溶性無機塩の製造方法。
【請求項3】
水溶性無機塩の陽イオンが、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、セシウム又はバリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒子水溶性無機塩の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造した水溶性無機塩が、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定したとき、体積平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする微粒子水溶性無機塩。
【請求項5】
体積平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の微粒子水溶性無機塩。
【請求項6】
体積平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の微粒子水溶性無機塩。
【請求項7】
水溶性無機塩が、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、セシウム又はバリウムから選ばれた、人体にとって必須である陽イオンを含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の微粒子水溶性無機塩。

【図1】
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【公開番号】特開2009−120423(P2009−120423A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294511(P2007−294511)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(592015802)赤穂化成株式会社 (29)
【Fターム(参考)】