説明

微粒子注入装置および微粒子注入方法

【課題】 使用中の冷凍装置から冷媒が徐々に漏洩している場合について、冷凍装置の運転を止めることなく、容易に微粒子を冷媒経路内に注入できるようにする。
【解決手段】 冷凍装置の冷媒経路X内に微粒子Hmを注入するための微粒子注入装置において、微粒子Hmと冷凍機油Loとの混合物を収容する第1の容器8と、前記冷媒経路Xにおける低圧側圧力より高い飽和圧力を有する液冷媒Rlを収容する第2の容器9とによって構成し且つ前記第1の容器8と前記第2の容器9とを上部で連通させるとともに、前記第1の容器8に、その底部に連通するとともに、冷凍装置における低圧側の配管5dに設けられたサービスポート7に接続される注入管11を付設して、第1の容器8に収容された微粒子Hmと冷凍機油Loとの混合物が、第2の容器9に収容された液冷媒Rlから蒸発したガス冷媒Rgの圧力によって、冷凍装置における低圧側配管5dに設けられたサービスポート7に接続された注入管11を介して冷媒経路X内に注入されるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、冷凍装置の冷媒経路内に漏洩防止用の微粒子を注入するための微粒子注入装置および微粒子注入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置の冷媒経路を構成する配管などに腐食が原因で生じたピンホールやクラックを介して冷媒が大気中へ漏洩するのを防止することのできる新規なシール技術として、冷凍機油中に分散させた微粒子を利用する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2008−083099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている技術を、新品の冷凍装置に適用する場合には、予め冷凍機油中に微粒子を分散させておき、それを冷媒経路中に充填し、さらに冷媒を充填することで、冷媒経路内に微粒子を注入することができるので、特に技術的な困難はない。ところが、多くのケースに相当するのであるが、使用中の冷凍装置から徐々に冷媒が漏洩している場合に、冷媒経路内に微粒子を注入するには、技術的な困難が伴うという問題がある。
【0005】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、使用中の冷凍装置から冷媒が徐々に漏洩している場合について、冷凍装置の運転を止めることなく、容易に微粒子を冷媒経路内に注入できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、冷凍装置の冷媒経路X内に微粒子Hmを注入するための微粒子注入装置において、微粒子Hmと冷凍機油Loとの混合物を収容する第1の容器8と、前記冷媒経路Xにおける低圧側圧力より高い飽和圧力を有する液冷媒Rlを収容する第2の容器9とによって構成し且つ前記第1の容器8と前記第2の容器9とを上部で連通させるとともに、前記第1の容器8に、その底部に連通するとともに、冷凍装置における低圧側の配管5dに設けられたサービスポート7に接続される注入管11を付設している。
【0007】
上記のように構成したことにより、第1の容器8に収容された微粒子Hmと冷凍機油Loとの混合物が、第2の容器9に収容された液冷媒Rlから蒸発したガス冷媒Rgの圧力によって、冷凍装置における低圧側配管5dに設けられたサービスポート7に接続された注入管11を介して冷媒経路X内に注入されることとなる。つまり、使用中の冷凍装置における冷媒経路X内に、容易且つ確実に微粒子Hmを注入することが可能となるのである。
【0008】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた微粒子注入装置において、前記第2の容器9の外側に前記第1の容器8を配設した内外二重容器で構成することもでき、そのように構成した場合、装置をコンパクトにできるとともに、第2の容器9の耐圧強度を軽減できるところから、コストを削減することもできる。
【0009】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1の手段を備えた微粒子注入装置において、前記第1の容器8と前記第2の容器9とを上下二段構造とすることもでき、そのように構成した場合、装置の小径化による耐圧強度の増加によって第1および第2の容器8,9の薄肉化が可能となるとともに、構造のシンプル化による溶接箇所の低減も可能となる。また、第2の容器9内の冷媒圧力が不足した時においても、第2の容器9を容易に加熱できるところから、圧力不足の解消が容易に行える。
【0010】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第4の手段として、上記第1、第2又は第3の手段を備えた微粒子注入装置を用いて微粒子Hmを注入する際には、前記冷凍装置の運転を継続するようにすることもでき、そのように構成した場合、冷凍装置の運転を継続しながら、冷媒経路X内への微粒子Hmの注入が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の第1の手段によれば、冷凍装置の冷媒経路X内に微粒子Hmを注入するための微粒子注入装置において、微粒子Hmと冷凍機油Loとの混合物を収容する第1の容器8と、前記冷媒経路Xにおける低圧側圧力より高い飽和圧力を有する液冷媒Rlを収容する第2の容器9とによって構成し且つ前記第1の容器8と前記第2の容器9とを上部で連通させるとともに、前記第1の容器8に、その底部に連通するとともに、冷凍装置における低圧側の配管5dに設けられたサービスポート7に接続される注入管11を付設して、第1の容器8に収容された微粒子Hmと冷凍機油Loとの混合物が、第2の容器9に収容された液冷媒Rlから蒸発したガス冷媒Rgの圧力によって、冷凍装置における低圧側配管5dに設けられたサービスポート7に接続された注入管11を介して冷媒経路X内に注入されるようにしたので、使用中の冷凍装置における冷媒経路X内に、容易且つ確実に微粒子を注入することが可能となるという効果がある。
【0012】
本願発明の第2の手段におけるように、上記第1の手段を備えた微粒子注入装置において、前記第2の容器9の外側に前記第1の容器8を配設した内外二重容器で構成することもでき、そのように構成した場合、装置をコンパクトにできるとともに、第2の容器9の耐圧強度を軽減できるところから、コストを削減することもできる。
【0013】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1の手段を備えた微粒子注入装置において、前記第1の容器8と前記第2の容器9とを上下二段構造とすることもでき、そのように構成した場合、装置の小径化による耐圧強度の増加によって第1および第2の容器8,9の薄肉化が可能となるとともに、構造のシンプル化による溶接箇所の低減も可能となる。また、第2の容器9内の冷媒圧力が不足した時においても、第2の容器9を容易に加熱できるところから、圧力不足の解消が容易に行える。
【0014】
本願発明の第4の手段におけるように、上記第1、第2又は第3の手段を備えた微粒子注入装置を用いて微粒子Hmを注入する際には、前記冷凍装置の運転を継続するようにすることもでき、そのように構成した場合、冷凍装置の運転を継続しながら、冷媒経路X内への微粒子Hmの注入が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の第1の実施の形態にかかる微粒子注入装置の使用例を示す冷媒回路図である。
【図2】本願発明の第1の実施の形態にかかる微粒子注入装置を示す拡大断面図である。
【図3】本願発明の第2の実施の形態にかかる微粒子注入装置を示す拡大断面図である。
【図4】本願発明の第3の実施の形態にかかる微粒子注入装置を示す拡大断面図である。
【図5】本願発明の第4の実施の形態にかかる微粒子注入装置を示す拡大断面図である。
【図6】本願発明の各実施の形態にかかる微粒子注入装置によって微粒子を注入された冷媒配管の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の幾つかの実施の形態について説明する。
【0017】
第1の実施の形態
図1は、本願発明の第1の実施の形態にかかる微粒子注入装置の使用例である冷媒回路図である。
【0018】
この冷媒回路Xは、圧縮機1、凝縮器2、膨張機構3および蒸発器4を冷媒配管で順次接続して構成されている。前記圧縮機1の吐出口1aと前記凝縮器2との間は高圧ガス配管5aで接続され、前記凝縮器2と前記膨張機構3との間は高圧液配管5bで接続され、前記膨張機構3と前記蒸発器4との間は低圧液配管5cで接続され、前記蒸発器4と前記圧縮機1の吸入口1bとの間は低圧ガス配管5dで接続されている。
【0019】
前記低圧ガス配管5dには、開閉弁6を介設してなるサービスポート7が付設されている。該サービスポート7は、冷媒を補充する時などに使用されるものであるが、本実施の形態においては、後述する微粒子注入装置Yが接続される。
【0020】
本実施の形態にかかる微粒子注入装置Yは、図2に示すように、シール用の微粒子(例えば、粒径が0.1〜5μmのフッ素樹脂微粒子)Hmと冷凍機油Loとの混合物を収容する第1の容器8と、前記冷媒経路Xにおける低圧側圧力より高い飽和圧力を有する液冷媒Rlを収容する第2の容器9とによって構成されており、前記第2の容器9の外側に前記第1の容器8を配設した内外二重容器で構成されている。前記第1の容器8内においては、微粒子Hmが冷凍機油Loから分離されて下層に保持されることとなっている。
【0021】
そして、前記第1の容器8と前記第2の容器9とは、上部に形成されたφ0.5mmの均圧穴10で連通されており、前記第2の容器9の上部および前記第1の容器8の上部は、液冷媒Rlから蒸発したガス冷媒Rgで充満されている。前記第1の容器8には、その底部(即ち、微粒子層)に連通するとともに、冷凍装置における低圧側の配管(即ち、低圧ガス配管5d)に設けられたサービスポート7に接続される注入管11が付設されている。符号12は注入管11をサービスポート7に接続するための接続ユニット、13は注入管11の途中に介設された開閉弁である。
【0022】
上記構成の微粒子注入装置Yを用いて、冷媒経路Xへ微粒子Hmを注入する方法について説明する。
【0023】
冷凍装置の運転を継続しつつ、開閉弁6,13を閉止した状態で、サービスポート7に注入管11を接続ユニット12を介して接続し、その後、開閉弁6,13を開弁する。すると、第2の容器9内のガス冷媒Rgと低圧ガス配管5d内のガス冷媒との圧力差によって、まず、第1の容器8の底部に保持された微粒子Hmが注入管11を介して低圧ガス配管5dに注入され、その後冷凍機油Loが注入される。このとき、二重容器を揺らせて内容物を撹拌し、さらに、液冷媒の気化による温度低下を防止するために、二重容器を40℃のお湯に漬けた。従って、第1の容器8内の微粒子Hmは残らず冷媒経路X内に注入されることとなる。つまり、使用中の冷凍装置における冷媒経路X内に、容易且つ確実に微粒子Hmを注入することが可能となるのである。しかも、第2の容器9の外側に第1の容器8を配設した内外二重容器で構成しているので、装置をコンパクトにできるとともに、第2の容器9の耐圧強度を軽減できるところから、コストを削減することもできる。
【0024】
ところで、図6には、冷媒経路Xの要部(管壁部分)の構成が示されている。図中、符号5は冷媒配管であり、51は冷媒配管5の所定の厚さの管壁であり、冷媒配管5は、例えば銅製のものからなっている。
【0025】
上記冷媒配管5の内部には、所定の重量比で冷凍機油Loが混入された冷媒(各種新冷媒又は旧冷媒の何れか)が封入状態で流されている。
【0026】
一方、同冷媒中に混入された冷凍機油Lo中には、上述した微粒子注入装置Yにより注入されたシール用の微粒子Hmが所定の比率で添加されており、例えば図示のように、管壁51部分にクラックCLが生じた場合に、同クラックCLの微小な隙間を当該微粒子Hmが冷媒圧により外部に向けて通過(漏出)する過程で、同クラックCLの微小な隙間を確実に塞ぐようになっている。
【0027】
上記したように、冷媒が漏洩するクラックCLが微粒子Hmによって塞がれることとなるところから、従来必要とされた数年毎の冷媒補充が不要となる。
【0028】
第2の実施の形態
図3には、本願発明の第2の実施の形態にかかる微粒子注入装置が示されている。
【0029】
この場合、微粒子注入装置Yは、微粒子Hmと冷凍機油Loとが収容される第1の容器8と冷媒が収容される第2の容器9とによって上下二段構造とされており、下段側に位置して第2の容器9を、上段側に位置した第1の容器8が配設されている。前記第2の容器9の上部(即ち、ガス冷媒Rgが充満する層)と前記第1の容器8の上部(即ち、ガス冷媒Rgが充満する層)とは、連通管14を介して連通されている。このようにすると、装置の小径化による耐圧強度の増加によって第1および第2の容器8,9の薄肉化が可能となるとともに、構造のシンプル化による溶接箇所の低減も可能となる。また、第2の容器9内の冷媒圧力が不足した時においても、第2の容器9を容易に加熱できるところから、圧力不足の解消が容易に行える。その他の構成、作用効果および使用方法は、第1の実施の形態におけると同ようなので説明を省略する。
【0030】
第3の実施の形態
図4には、本願発明の第3の実施の形態にかかる微粒子注入装置が示されている。
【0031】
この場合、微粒子注入装置Yは、微粒子Hmと冷凍機油Loとが収容される第1の容器8と冷媒が収容される第2の容器9とによって上下二段構造とされており、下段側に位置して第1の容器8を、上段側に位置した第2の容器9が配設されている。前記第2の容器9の上部(即ち、ガス冷媒Rgが充満する層)と前記第1の容器8の上部(即ち、ガス冷媒Rgが充満する層)とは、連通管14を介して連通されている。このようにすると、装置の小径化による耐圧強度の増加によって第1および第2の容器8,9の薄肉化が可能となるとともに、構造のシンプル化による溶接箇所の低減も可能となる。また、第2の容器9内の冷媒圧力が不足した時においても、第2の容器9を容易に加熱できるところから、圧力不足の解消が容易に行える。その他の構成、作用効果および使用方法は、第1の実施の形態におけると同ようなので説明を省略する。
【0032】
第4の実施の形態
図5には、本願発明の第4の実施の形態にかかる微粒子注入装置が示されている。
【0033】
この場合、微粒子注入装置Yは、微粒子Hmと冷凍機油Loとが収容される第1の容器8と冷媒が収容される第2の容器9とからなっており、第1の容器8と第2の容器9とは別体構成とされている。前記第2の容器9の上部(即ち、ガス冷媒Rgが充満する層)と前記第1の容器8の上部(即ち、ガス冷媒Rgが充満する層)とは、連通管13を介して連通されている。このようにすると、液冷媒の早期排出を防止することが可能となる。また、第2の容器9内の冷媒圧力が不足した時においても、第2の容器9を容易に加熱できるところから、圧力不足の解消が容易に行える。なお、この場合、第1〜第3の実施の形態におけるように、装置をコンパクトにできるとともに、第2の容器9の耐圧強度を軽減できるところから、コストを削減することもできるという利点はない。また、装置の小径化による耐圧強度の増加によって第1および第2の容器8,9の薄肉化が可能となるという利点もない。
【0034】
本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1は圧縮機
2は凝縮器
3は膨張機構
4は蒸発器
5は冷媒配管
5dは低圧ガス管
7はサービスポート
8は第1の容器
9は第2の容器
11は注入管
Hmは微粒子
Loは冷凍機油
Rlは液冷媒
Xは冷媒経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍装置の冷媒経路(X)内に微粒子(Hm)を注入するための微粒子注入装置であって、微粒子(Hm)と冷凍機油(Lo)との混合物を収容する第1の容器(8)と、前記冷媒経路(X)における低圧側圧力より高い飽和圧力を有する液冷媒(Rl)を収容する第2の容器(9)とからなり且つ前記第1の容器(8)と前記第2の容器(9)とを上部で連通させてなり、前記第1の容器(8)には、その底部に連通するとともに、冷凍装置における低圧側の配管(5d)に設けられたサービスポート(7)に接続される注入管(11)を付設したことを特徴とする微粒子注入装置。
【請求項2】
前記第2の容器(9)の外側に前記第1の容器(8)を配設した内外二重容器で構成したことを特徴とする請求項1記載の微粒子注入装置。
【請求項3】
前記第1の容器(8)と前記第2の容器(9)とを上下二段構造としたことを特徴とする請求項1記載の微粒子注入装置。
【請求項4】
前記請求項1,2および3のいずれか一項記載の微粒子注入装置を用いて微粒子を注入する際には、前記冷凍装置の運転を継続するようにしたことを特徴とする微粒子注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−276211(P2010−276211A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126179(P2009−126179)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】