説明

微細加工表面神経刺激デバイスならびにそれを作製および使用する方法

神経標的の非常に局在化しかつ効率的な電気刺激を行うための、微小電極アレイデバイスならびにその製作および使用の方法が、本明細書に記載される。デバイスは、支持バッキング層に沿って配置される複数の微小電極要素を含む。微小電極要素は、ヒト脳の皮質の領域沿いなどの動物神経系に位置し得る個々のニューロン、ニューロンの群および神経組織を標的化するように寸法決めされ形作られる。有利なことに、神経プローブは、神経標的の位置づけを容易にするために使用し、長期のモニタリングおよび/または刺激用に埋め込んだままにすることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月1日出願の米国仮出願第61/265,725号の恩典を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は一般に、電気プローブの使用を通じた生体組織との相互作用の分野、より詳細には、微小電極プローブの使用を通じた神経標的との相互作用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
神経刺激は、電荷または電界を組織に与えて、患者に有利である生理学的変化を生じさせるために、または生理学的測定を行うために使用される、医療機器の分類である。神経刺激は今日、蝸牛、網膜、末梢神経系、脊椎、脳および身体の他の部分に使用されている。
【0004】
神経調節の特定の用途では、ある種の神経状態を処置するために、導電性電極をある種の皮質脳構造と接触して設置する。例えば米国特許出願公開第2008/0045775号(特許文献1)に記載のように、皮質表面を刺激する場合、刺激はパーキンソン病、他の運動障害、または精神障害の症状を軽減させることができる。例えば米国特許第7,774,068号(特許文献2)に記載のように、皮質表面の関連領域を刺激する場合、刺激は、下肢静止不能症候群を含む運動障害の症状を処置することができる。例えば米国特許出願公開第2007/0055320号(特許文献3)または[Theodore, W.H., Fisher, R.S., 「Brain stimulation for epilepsy」, Lancet Neurology, 3 (2), pp. 111-118, (2004)(非特許文献1)]に記載のように、皮質の側頭葉を刺激する場合、刺激は側頭葉てんかんの症状を処置することができる。
【0005】
長期治療における記録および刺激のために皮質電極アレイを使用する場合、埋め込み式パルス発生器は、脳構造に接触した電極リードに電気信号を供給する。さらに、埋め込み式パルス発生器は、神経活動を記録し、情報を体外に電磁送信することができる。すべての部品は外科的に設置される。
【0006】
記録および刺激のために診断ツールとして皮質電極アレイを使用する場合、皮質上に一時的に、例えば数週間設置した後、もはや必要でなくなった時点で取り外すことができる。着用式、または埋め込み式、または半埋め込み式のハードウェアを使用して情報を捕捉することができる。
【0007】
大部分の先行技術では、皮質脳組織と接触して設置される電極は、金属で、円板状で、サイズが比較的大きかった(例えば直径3mm)。多くの場合、電極は脳構造それ自体と同じ大きさである。電極のサイズが大きいことで、疾患の原因であり得る小さい脳標的の特異的かつ正確な刺激および記録が妨げられる。得られる大きい電界および関連する電流路は、皮質の他の構造を刺激し、目的とする標的に集中しない。さらに、これらの大きい電極は、それらが覆う区域が非常に大きいことから、神経記録により脳の標的を同定するために使用することができない。
【0008】
さらに、大部分の先行技術では、皮質電極は、電気絶縁生体材料である硬膜の表面上に設置される。電極を硬膜上に設置すること、いわゆる硬膜外電極設置によって、脳領域へのおよび脳領域からの効率的な電荷移動が妨げられ、刺激および記録がより効果的でなくなる。例えば、硬膜外電極により確立される電界および関連する電流路は、目的とする標的に電気刺激を集中させない。これにより、潜在的に治療上または診断上の神経刺激の有効な送達が妨げられる。さらに、例えば、硬膜外電極が捕捉しようとする神経信号は硬膜表面上で非常に弱く、したがって信号対ノイズ比は非常に低い。これにより、診断上または治療上有用な神経活動の確実な記録が妨げられる。
【0009】
そのような比較的大きな電極の設置を決定する現行の技術は、開頭を最初に行うことで達成されるが、開頭はサイズが変動し得るものの、通常は少なくとも直径10mmであり、数センチメートルと大きいこともある。次に電極アレイを皮質の表面上に設置する。一部の外科医は、硬膜のフラップを作り出し、電極アレイを皮質表面上に直接設置することがある。神経活動の記録は数個の電極接点から電極アレイを使用して行うことができる。このプロセスは複雑であり、高度に熟練した外科医が電極アレイを設置すること、および通常は高度に熟練した神経生理医が神経記録データを解釈することが必要になる。行う必要がある大きな開頭によって、患者は感染症および重大な側副損傷の危険にさらされる。
【0010】
脳の皮質上の少量の組織を刺激可能な微小電極のアレイを包含するように具体的に設計された微細加工デバイスを開発することが試みられた。例えばNormannらによる米国特許第5,215,088号「Three-Dimensional Electrode Device」(特許文献4)に記載のように、脳の皮質上で使用される硬膜下貫通微小電極を開発することも試みられた。さらに、[Richard et al., 「A neural interface for a cortical vision prosthesis」, Vision Research, 39, pp. 2577-2587, (1999)(非特許文献2)]にも記載されている。しかし、先行するデバイスは、利用可能になって10年を超えるにもかかわらず、臨床用に容易に転換することができずにいる。これは、デバイスを構築するために必要な材料の結果であり得る。というのも、ケイ素は、埋め込みまたは取り外し中に容易に破壊され得る脆性材料であるためである。さらに、成功を収めなかった理由は、それらが貫通軸1本当たり電極1本しか設けないことから、それらの機能が十分な追加情報を手術チームに与えないためであり得る。
【0011】
皮質刺激療法の良好な成績のために重要な要件は、刺激標的区域内の刺激電極および記録電極の正確な設置である。位置づけの誤りは、感覚性運動障害を含む望まれない副作用を生じさせることがある。さらに、位置づけが誤った記録電極は、関連する生理学的データを手術チームにほとんどまたは全く与えない。先行技術の手技は、例えば[Komssi et al., 「The effect of stimulus intensity on brain responses evoked by transcranial magnetic stimulation」, Human Brain Mapping, 21 (3), pp. 154-164, (2004)(非特許文献3)]に記載の経頭蓋磁気刺激を通じた前外科的な画像診断および計画によって標的をほぼ局在化することにより、治療対象となる領域を同定する。標的それ自体は、数mm以下しかなく、標準的な画像診断技術を通じてだけでは検出不能なことがある。したがって、手技中に何度も患者を覚醒させる急性刺激を包含する、探索的な外科手技が必要になる。正確な標的区域を位置づけた時点で、急性または慢性の記録電極および刺激電極を正確な位置に埋め込むことができる。
【0012】
現行の技術の不利益としては、手術時間が数時間延長することで、そのような手技中に覚醒している場合もある患者には負担の増加となり得ること、および、より長時間の手技に関連する費用の増大が医療提供者には重い財政的な負担となることが挙げられる。大きな開頭または繰り返し設置される電極アレイが引き起こす出血または組織損傷による手術合併症の危険の増加は、患者にとって感染症の重大なリスクとなる。さらに、さらなる脳運動を含む任意の数の理由により、同定された標的に慢性電極アレイが正確に位置づけられず、患者が手術に戻ることが必要になるという可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0045775号
【特許文献2】米国特許第7,774,068号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0055320号
【特許文献4】米国特許第5,215,088号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Theodore, W.H., Fisher, R.S., 「Brain stimulation for epilepsy」, Lancet Neurology, 3 (2), pp. 111-118, (2004)
【非特許文献2】Richard et al., 「A neural interface for a cortical vision prosthesis」, Vision Research, 39, pp. 2577-2587, (1999)
【非特許文献3】Komssi et al., 「The effect of stimulus intensity on brain responses evoked by transcranial magnetic stimulation」, Human Brain Mapping, 21 (3), pp. 154-164, (2004)
【発明の概要】
【0015】
概要
皮質脳構造の効率的な刺激には、硬膜下貫通微小電極のアレイが必要である。微小電極アレイの設置後、外科医は、刺激を必要とする脳の区域を微小電極からの記録により同定可能であるべきである。続いて、外科医は同定された構造を刺激すべきである。
【0016】
皮質脳構造におけるより効率的な診断および治療用に、刺激および記録機能の三次元ボリュームを作り出す硬膜下貫通微小電極が記載される。
【0017】
本開示は、脳の皮質上に多くの微小電極構造を設置し、かつ外科医が各微小電極に信号を別々に、平行して、または少なくとも2つの微小電極間に印加することを可能にする、システムを記載する。さらに、システムからの神経活動を記録する電子機器を使用して、外科医は、電極が埋め込まれる皮質領域内の神経活動の局在化したマップを展開することができる。
【0018】
一局面では、本開示は埋め込み式神経プローブに関する。神経プローブは少なくとも1つの突起を含み、少なくとも1つの微小電極要素が突起の表面上に配設される。微小電極要素は神経刺激または神経記録を行うことができる。神経プローブはいくつかの突起を有することが好ましく、突起はいくつかの微小電極要素、または微小電極要素のアレイを有することが好ましい。制御回路が、神経プローブの表面上で、またはワイヤの係留された集合を通じて接続される形で、神経プローブに取り付けられている。制御回路はそれ自体、着用式または埋め込み式の筐体に封入されている。神経プローブは、制御回路への少なくとも1つの電気接続または電磁リンクを含む。制御回路は刺激信号を神経プローブに送る。制御回路は神経プローブからの神経生理信号を捕捉することもできる。制御回路は、さらに別の外部コントローラに遠隔測定接続され得るものであり、このコントローラを使用することで、取り付けられた制御回路を経由して神経プローブにおよび神経プローブから信号を送信することができる。
【0019】
別の局面では、本開示は、神経標的を刺激するための方法に関する。本方法は、皮質上の標的部位またはその近傍に神経プローブを埋め込む段階を含む。神経プローブそれ自体は、支持バッキング層、支持バッキング層からの少なくとも1つの突起、および各突起上の少なくとも1つの微小電極要素を含む。さらに、少なくとも1つの微小電極要素のそれぞれは、近位の電気接点と電気的に連通しているか、または制御回路と電気的に連通している。電気信号を供給する神経刺激源に近位の電気接点を接続することができる。あるいは、制御回路は微小電極要素に電気信号を供給することができる。供給された信号を1つまたは複数の微小電極要素に印加する。1つまたは複数の通電された微小電極要素は、神経標的部位を刺激するように適応した電界を生成する。
【0020】
さらに別の局面では、本開示は、神経標的から記録するための方法に関する。本方法は、皮質上の標的部位またはその近傍に神経プローブを埋め込む段階を含む。神経プローブそれ自体は、支持バッキング層、支持バッキング層からの少なくとも1つの突起、および各突起上の少なくとも1つの微小電極要素を含む。さらに、少なくとも1つの微小電極要素のそれぞれは、近位の電気接点と電気的に連通しているか、または制御回路と電気的に連通している。増幅器取得システムなどの神経記録源に近位の電気接点を接続することができる。あるいは、制御回路は微小電極要素から神経生理信号を取得および記録することができる。取得された信号を制御回路から外部コントローラに送信することができる。1つまたは複数の記録された微小電極要素は、神経標的部位の電気生理活動に関するデータを生成する。
【0021】
別の局面では、本開示は、支持バッキング層、支持バッキング層の表面から延びる少なくとも1つの突起、および少なくとも1つの突起に沿って配置された少なくとも1つの微小電極要素をそれぞれ含む、いくつかの神経プローブを含む、埋め込み式デバイスに関する。神経プローブを係留ワイヤで互いに接続することができる。あるいは、神経プローブは遠隔測定的に連通していることがある。
【0022】
別の局面では、本開示は、支持バッキング層、支持バッキング層の表面から延びる少なくとも1つの突起、および少なくとも1つの突起に沿って配置された少なくとも1つの微小電極要素を含む、埋め込み式神経プローブに関する。
【0023】
別の局面では、本開示は、皮質標的部位の近傍内に神経プローブを埋め込むことにより神経標的を刺激するための方法に関する。神経プローブは、支持バッキング層、支持バッキング層の表面から延びる少なくとも1つの突起を含む。少なくとも1つの微小電極要素は、少なくとも1つの突起に沿って配置されている。少なくとも1つの微小電極要素は、供給される電気信号により通電され、少なくとも1つの微小電極要素は、神経標的部位を刺激するように適応した電界を生成する。
【0024】
別の局面では、本開示は、支持バッキング層および複数の突起を含む、埋め込み式神経表面プローブに関する。各突起は、一端において支持バッキング層に取り付けられ、支持バッキング層の表面から延びる。プローブはまた、支持バッキング層の少なくとも一部に沿って配設された微小電極膜を含む。複数の微小電極要素が微小電極膜上に配設され、複数の突起のそれぞれに沿って配置される。各微小電極要素は、支持バッキング層の表面から測定される各深さに配設される。
【0025】
さらに別の局面では、本開示は、支持バッキング層を形作る工程、および複数の剛性バッキング部材を支持バッキング層内に画定する工程を含む、埋め込み式神経表面プローブを作製する方法に関する。各剛性バッキング部材は、一端において先端を有し、他端において支持バッキング層に取り付けられている。各剛性バッキング部材をその取付端において支持バッキング層の表面から折り曲げることにより、複数の突起を形成する。複数の微小電極要素を微小電極膜上に形成し、微小電極膜を支持バッキング層の表面の少なくとも一部に沿って固着する。複数の微小電極要素の各部分集合が複数の突起のそれぞれに沿って配置されるように、膜を固着する。そのように配置される場合、各部分集合の各微小電極要素は、支持バッキング層の表面から測定される各深さに配設される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の上記のおよび他の目的、特徴および利点は、同様の参照文字が異なる図面を通じて同一部分を指す添付図面において示される本開示の好適な態様の、以下のさらに詳細な説明により明らかであろう。図面は必ずしも原寸通りではなく、本開示の原理を図示する際に強調が代わりに加えられる。
【0027】
【図1】皮質神経調節デバイスの一態様の斜視図である。
【図2】ヒトに埋め込まれた例示的な皮質神経調節デバイスを示す、ヒトの解剖学的組織の一部の斜視図である。
【図3】脳の表面上に位置決めされる例示的な神経表面プローブを示す、ヒト皮質の解剖学的組織の一部の断面図である。
【図4】皮質神経調節デバイスに包含された部品の模式図である。
【図5A】図1の皮質神経調節デバイスの上面図である。
【図5B】図1の皮質神経調節デバイスの制御モジュールの詳細図である。
【図6A】図1の神経表面プローブの詳細図である。
【図6B】図1の神経表面プローブのさらなる詳細図である。
【図6C】微小電極に電流が印加された図1の神経表面プローブの斜視図である。
【図6D】電界等値面を示す、微小電極に電流が印加された図1の神経表面プローブのさらなる斜視図である。
【図7A】図1の神経表面プローブの正面図である。
【図7B】図1の神経表面プローブの側面図である。
【図7C】図1の神経表面プローブの上面図である。
【図8】図8Aは、図1の神経表面プローブの支持バッキング層からの突起の斜視図である。図8Bは、図1の神経表面プローブの支持バッキング層からの突起のさらなる斜視図である。
【図9】取り付けられる前に神経表面プローブに包含された支持バッキング層および微小電極膜の上面図である。
【図10】ボンディングされた後で神経表面プローブに包含された支持バッキング層および微小電極膜の上面図である。
【図11A】図1の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒトの解剖学的組織の断面の斜視図である。
【図11B】図1の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒトの解剖学的組織の断面のさらなる斜視図である。
【図11C】図1の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒトの解剖学的組織の断面のさらなる平面図である。
【図12】皮質神経調節デバイスの代替態様の斜視図である。
【図13】図12の皮質神経調節デバイスの代替態様のさらなる斜視図である。
【図14】図12の皮質神経調節デバイスの代替態様の上平面図である。
【図15】図12の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒトの解剖学的組織の断面の斜視図である。
【図16】図12の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒトの解剖学的組織の断面のさらなる斜視図である。
【図17A】円形の皮質神経調節デバイスの例示的態様の斜視図である。
【図17B】図17Aに示す円形の皮質神経調節デバイスの例示的態様のさらなる斜視図である。
【図17C】微小電極に電流が印加された円形の皮質神経調節デバイスの斜視図である。
【図17D】電界等値面を示す、微小電極に電流が印加された円形の皮質神経調節デバイスのさらなる斜視図である。
【図18A】図17Aに示す円形の皮質神経調節デバイスを実現するために必要な部品の平面図である。
【図18B】図17Aに示す円形の皮質神経調節デバイスを実現するために必要な微小電極アレイ膜の平面図である。
【図18C】図17Aに示す円形の皮質神経調節デバイスの代替態様を実現するために必要な部品の平面図である。
【図18D】図17Aに示す円形の皮質神経調節デバイスの代替態様を実現するために必要な微小電極アレイ膜の平面図である。
【図18E】図18Cおよび図18Dに示す円形の皮質神経調節デバイス部品の代替態様の斜視図である。
【図19】図19Aは、図17Aの円形の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒト脳の解剖学的組織の断面の平面図である。図19Bは、図17Aの円形の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒト脳の解剖学的組織のさらなる平面図である。
【図20】図20Aは、図17Aの複数の円形の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒト脳の解剖学的組織の平面図である。図20Bは、図17Aの複数の円形の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒト脳の解剖学的組織の詳細斜視図である。
【図21A】円形の皮質神経調節デバイスのさらなる態様の斜視図である。
【図21B】図21Aに示す円形の皮質神経調節デバイスのさらなる斜視図である。
【図21C】図21Aに示す円形の皮質神経調節デバイスの平面図である。
【図22】図21Aの円形の皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒト脳の解剖学的組織の斜視図である。
【図23】図21Aの皮質神経調節デバイスの設置を示す、ヒト脳の解剖学的組織の詳細斜視図である。
【図24】図21Aの複数の円形の埋め込み皮質神経調節デバイスを示す、ヒト脳の解剖学的組織の詳細斜視図である。
【図25】図25A〜25Mは、例示的な製作手順に係る様々な異なる構築段階での例示的な微小電極デバイスの断面を示す。
【図26】微小電極の一態様の顕微鏡写真である。
【図27】微小電極チップの一態様の構築要素の平面図である。
【図28】図27に示す構築要素の一部の模式図である。
【図29】微小電極チップの一態様の構築要素の分解模式図である。
【図30】構築要素の別の一部の模式図である。
【図31】微小電極チップの遠位部の斜視図である。
【図32】図31に示す微小電極チップの遠位部の断面図である。
【図33】図33Aは、微小電極アレイアセンブリの構築要素の平面図である。図33Bは、微小電極アレイアセンブリの構築要素の斜視図である。図33Cは、剛性バッキング部材を定位置に組み立てた後の、図33Bに示す微小電極アレイアセンブリの構築要素の斜視図である。
【図34】図34Aは、微小電極アレイアセンブリの構築要素の平面図である。図34Bは、微小電極アレイアセンブリの構築要素の平面図である。図34Cは、微小電極アレイアセンブリの構築要素のより詳細な平面図である。図34Dは、微小電極アレイアセンブリの構築要素の代替態様のより詳細な平面図である。
【図35A】微小電極アレイアセンブリの斜視図である。
【図35B】微小電極アレイチップのより詳細な斜視図である。
【図35C】微小電極アレイアセンブリの代替態様の斜視図である。
【図35D】微小電極アレイチップの代替態様のより詳細な斜視図である。
【図35E】図35Aに示す微小電極アレイアセンブリの斜視図である。
【図36】図36Aは、神経標的に位置決めされる例示的な微小電極構造を示す、ヒトの解剖学的組織の一部の図である。図36Bは、神経標的に位置決めされる例示的な微小電極構造を示す、ヒトの解剖学的組織の一部のさらなる図である。図36Cは、神経標的に位置決めされる例示的な微小電極構造を示す、ヒトの解剖学的組織の一部のより詳細な図である。
【図37】刺激モードで構成されている神経微小電極システムの例示的態様の機能ブロック図である。
【図38】ルーティングモードで構成されている神経微小電極システムの例示的態様の機能ブロック図である。
【図39】神経微小電極システムの別の態様の機能ブロック図である。
【図40】例示的なオンボード超小型電子回路の電子回路模式図である。
【図41】図41Aは、神経標的刺激器の一態様の模式図である。図41Bは、神経標的刺激器システムの一態様の模式図である。
【図42】図42A〜図42Dは、微小電極アレイの各種代替態様の模式図である。
【図43】図43A〜図43Jは、皮質深さ微小電極アレイの各種代替態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
好ましい態様の詳細な説明
ヒト皮質などの動物の神経系に位置し得る、個々のニューロン、ニューロンの群および神経組織などの神経標的の非常に局在化しかつ効率的な電気刺激を行うための、微小電極アレイデバイスならびにその製作および使用の方法が、本明細書に記載される。診断または治療用の微小電極の最終的な配置を決定することが困難な徴候では、標的領域に多くの電極を安全に埋め込んだ後、神経刺激のために電気信号を印加するか、または神経記録を行うことにより、最良の電極を決定することが有利である。微小電極の数がより多くなることで、さらに具体的には三次元ボリューム内の微小電極の数がより多くなることで、最良の治療領域または診断領域が微小電極と接触する可能性が増加する。
【0029】
微小電極要素の直径または幅のいずれかがわずか2μmの小ささまたは2mmの大きさであり得ることから、刺激は非常に局在化され得る。そのような微小電極要素間の相対間隔も、わずか2μmの小ささまたは2mmの大きさであり得る。寸法または間隔のいずれかの下限として2μmが示されているが、製作技術により実際に限定可能な2μm未満の寸法および/または要素間の間隔を有する他の態様が可能である。一般に、直径が約100μmで、間隔が約500μmである円板状の微小電極が、皮質中の神経組織から記録する上で特に効率的である。さらに、直径が約300μmで、間隔が約500μmである円板状の微小電極が、皮質中の神経組織を刺激する上で特に効率的である。そのような微小電極要素のアレイは、支持構造に沿った各位置にそれぞれ配設される1つまたは複数のそのような要素(例えば4つの要素)からなり得る。さらに、いずれも支持バッキングから突出するように配置され得る支持構造のアレイが存在する。このようにして、複数の微小電極要素を三次元ボリュームに配置することができる。これは、今後市販され得るNeuroPace Corp.(カリフォルニア州マウンテンビュー)のRNS(登録商標)システムなどの現在入手可能な硬膜外記録および刺激リードとは対照的である。さらに、グリップ電極およびストリップ電極が一過的使用のためにIntegra Corp.(ニュージャージー州)から市販されている。そのような市販のデバイスとしては、直径が約3mmの寸法で各電極間の間隔が大きい(すなわち5mm)、比較的大きな円板電極が挙げられ、皮質の硬膜外領域内で二次元の標的区域しか作成しない。より良好な神経記録を行い、より効果的な神経刺激を与えるには、皮質の硬膜下区域における作用の三次元ボリュームを提供することができるシステムを設けることが有利である。
【0030】
より小さい微小電極要素を使用して、非常に局在化しかつ効率的な神経刺激を行うことができる。これは、そのような微小電極のアレイを使用して、対象となる刺激領域を同定することもできるためである。例えば、微小電極要素のそのようなアレイの1つまたは複数の微小電極要素を使用して、検出/記録微小電極要素の近傍の神経活動を検出およびいくつかの場合では記録することができる。微小電極要素の比較的小さいサイズおよび/または間隔がもたらすそのような改良を使用して、移植片を取り囲む三次元ボリュームにおける神経活動の非常に局在化したマップを得ることができる。好適に寸法決めされた微小電極アレイ、および好適に寸法決めされた支持バッキング層は、神経標的の近傍全体に位置決めされる複数の微小電極要素を有し得る。したがって、このアレイを使用することで、神経標的の非常に特異的な領域に位置するそれらの1つまたは複数の微小電極要素を同定することにより、さらに再位置決めすることなく正確な神経標的を位置づけることができる。例えば微小電極アレイの他の電極要素を休止状態のままにしながら一定数の微小電極要素のみを使用して周囲のニューロンおよび/または神経組織を能動的に刺激することで、非常に特異的な領域において刺激するように、微小電極アレイをプログラムすることができる。
【0031】
いくつかの態様では、三次元配置された神経表面プローブは、比較的小さいサイズおよび/または間隔を有する要素を有するそのような複数の微小電極アレイを含み、これらのアレイを使用して、移植片を取り囲む領域内の神経活動の非常に局在化したマップを得ることができる。例えば、微小電極のいくつかの線形アレイを伴って構成されるそのようなデバイスを、患者の脳(すなわち皮質)の表面上に外科的に設置することができる。好ましくは、微小電極アレイの要素は、神経標的を含む領域に及ぶ。次に神経活動を、1つまたは複数の微小電極要素により独立して検出することができる。検出された活動は記録装置または表示装置に捕捉することができ、これにより臨床医は、1つまたは複数の微小電極要素のどれが目的とする標的に最も近く位置決めされるかを同定することが可能になる。有利なことに、細長いデバイスの再位置決めなしに標的の場所を決定し、それにより医療手順を単純化し、患者の危険性を減少させることができる。
【0032】
いくつかの態様では、デバイスは一過的にのみ、または急性的に使用され、標的を位置づけた後に取り外され、決定された標的位置に位置決めされる慢性プローブで置き換えられる。代替としてまたは追加的に、デバイスそれ自体を慢性デバイスとして定位置に置くこともでき、同一の微小電極または異なる微小電極を使用して長期間にわたり神経標的を記録および/または刺激する。
【0033】
図1に示す神経表面プローブの一態様は、皮質神経調節デバイス100と呼ばれる神経デバイスアセンブリを含む。皮質神経調節デバイス100は、神経表面プローブ101および制御モジュール150を含む。神経表面プローブ101は、皮質神経調節デバイス100の遠位部上に位置しており、制御モジュール150は、皮質神経調節デバイス100の近位部上に位置している。神経表面プローブ101は2つの部品、すなわち支持バッキング層120および微小電極アレイ膜110で構成される。この態様では、神経表面プローブからの9つの突起を皮質深さプローブ130と呼ぶ。各皮質深さプローブの表面上には微小電極要素140の線形アレイがある。神経表面プローブ101は、リボンケーブル係留180を経由して制御回路150に取り付けられている。制御回路150は、下側ハウジング151および上側ハウジング152で構成される。下側ハウジング151は少なくとも1つの固定構造を包含することもでき、この固定構造を使用して制御モジュール150を頭蓋に固定する。本態様では、頭蓋固定ネジ用の貫通孔を包含する3つの固定構造156a、156b、156cが設けられる。制御モジュール150内には、電子回路で構成される制御回路160がある。本態様では、制御回路160は3つの個々の相互接続された制御回路160a、160b、160cで構成される。さらに、制御モジュール150内では、ループアンテナ165が制御回路160に接続されており、体外で情報を制御モジュール150におよびそこから通信するために使用される。例示的態様では、各微小電極要素140は、微小電極アレイ膜110およびリボンケーブル係留180に配設される各導電体を経由して、制御回路160と電気的に連通している。使用時に、刺激信号は制御回路160から微小電極要素140に向けられる。さらに、使用時に、記録された神経生理信号は微小電極要素140から制御回路160に向けられる。さらに、使用時に、制御回路160は、ループアンテナ165を通じて外部制御システム(図示せず)により機能するようにプログラムされている。制御回路160は、記録された神経生理信号に関する情報を、ループアンテナ165を通じて外部制御システム(図示せず)に送信することもできる。
【0034】
制御モジュール150のサイズおよび形状は変動し得るが、一般に、頭蓋の表面上に埋め込まれるように意図されている。神経表面プローブ101のサイズおよび形状は変動し得るが、一般に、皮質の表面上に埋め込まれるように意図されている。皮質深さプローブ130のサイズおよび形状は変動し得るが、一般に、皮質の層を貫通するように意図されている。最後に、微小電極要素140のサイズ、形状および量は変動し得るが、一般に、皮質層から記録し、皮質層を刺激するように意図されている。神経表面プローブ101は正方形として示される。あるいは、いくつかの態様では、神経表面プローブ101は円形である。あるいは、いくつかの態様では、神経表面プローブ101は長方形である。神経表面プローブ101は、すべての皮質深さプローブ130が下方傾斜しかつその表面から突出する形で示される。あるいは、いくつかの態様では、すべての皮質深さプローブ130が下方傾斜するわけではない。あるいは、いくつかの態様では、皮質深さプローブ130は手術時にのみ、どの皮質深さプローブ130が必要であるかを外科医が決定した時点で下方傾斜する。
【0035】
皮質神経調節デバイス100は、その目的とする神経学的用途に応じてサイズ決定して形作ることが好ましい。皮質神経調節デバイス100は、動物またはヒトの皮質における使用について限定されない。例えば、皮質神経調節デバイス100を中枢神経系内に少なくとも部分的に設置することができる。代替としてまたは追加的に、皮質神経調節デバイス100を、網膜、蝸牛、脊椎の硬膜外腔、脊椎、および末梢神経系内の他の場所などの、身体の他の部分内で使用することができる。したがって、皮質神経調節デバイス100の直径および長さは、特定の解剖学的標的に応じて変動し得る。さらに、神経表面プローブ101および皮質深さプローブ130の構成は、目的とする神経標的に応じてサイズ決定され形作られる。微小電極要素140の数、形状、配向、サイズおよび間隔を、目的とする神経標的に応答して画定することができる。
【0036】
少なくともいくつかの態様では、1つまたは複数の微小電極要素140は、単一のニューロンまたはニューロンの群から記録しかつ/またはそれを刺激するようにサイズ決めされかつ/または隔てられている。皮質神経調節デバイス100を使用して、神経標的での神経活動を検出および/または記録することができる。神経標的内で自然に生じる神経活動は、皮質深さプローブ130の1つまたは複数の微小電極要素140により検出可能な局所的電磁界を生じさせる。例えば、ニューロンが生成する電界は、1つまたは複数の微小電極要素140を分極させる。そのような分極は、電気接地などの基準、または別の1つの微小電極要素140に対する電位を生じさせる。リボンケーブル係留180内の内部導電体を通じて、そのような電気活動を制御回路160にさらに伝導することができる。次に制御回路160は、検出された電気活動の捕捉されたデータを、外部コントローラ(図示せず)によってさらなる処理用に電磁送信することができる。例えば、捕捉されたデータをコンピュータ上に表示することができる。
【0037】
代替としてまたは追加的に、1つまたは複数の微小電極要素140を使用して、神経標的を電気的に刺激することができる。例えば、制御回路160により発生する1つまたは複数の電気信号を1つまたは複数の微小電極要素140に印加することができる。これらの電気信号を、リボンケーブル係留180内の内部導電体を通じて、微小電極アレイ膜110の1つまたは複数の微小電極要素140に伝導することができる。電気信号の振幅および極性に応じて、分極した微小電極要素140が電界を誘導する。そのような分極が誘導する電界は、神経標的で1つまたは複数のニューロンと相互作用し得る。
【0038】
いくつかの態様では、制御モジュール150の少なくとも一部が体外に存在し得る。代替としてまたは追加的に、刺激源を体内に埋め込むことができる。刺激源の任意の埋め込み要素を密閉型の生体適合性エンベロープと共に製作しかつ/またはそれを用いて収容することが好ましい。信号源のそのような生体適合性包装は、例えば人工ペースメーカーの分野で周知である。刺激源を設ける場合、それは所定の入力に従って所望の信号を生成する制御可能な信号発生器であり得る。例えば、信号発生器は、所望の出力刺激信号周波数を示す入力を受け取ることができる。そのような出力刺激信号は、パルス、電荷平衡パルス、正弦波、方形波、三角波およびそのような基本的波形の組み合わせなどの種々の波形を有し得る。
【0039】
いくつかの態様では、刺激源は、微小電極要素140に信号を印加するためのパルス発生器を含む。パルス発生器からの信号を、微小電極に直接接続することができ、または電子機器を使用して前処理することができる。いくつかの態様では、そのような前処理電子機器を埋め込み式デバイス内に包埋する。前処理電子機器は、心臓ペースメーカー信号などの元の信号のある種の部分をフィルタリングすることで、微小電極のピーク抵抗周波数またはその近傍にある元の信号の好ましい周波数成分を選択することができる。信号より多くの微小電極が存在する態様では、電子機器は好ましい1つまたは複数の微小電極に刺激信号をルーティングすることができる。
【0040】
微細加工部品
微細加工手順を使用して絶縁性基材内に導電性トレースを実装することで、本明細書に記載の微小電極アレイデバイスのいずれかを、アレイデバイスが剛性であれ可撓性であれ、成形することができる。微細加工部品は微小電極アレイアセンブリの一部を含む。微小電極アレイはポリイミドまたはパリレンなどのポリマー材料で実現することができ、白金、白金-イリジウム、イリジウム、酸化イリジウムまたはチタンなどの大きい電荷輸送能力を有する金属または金属酸化物の薄膜層またはめっき層を含む。いくつかの態様では、他の金属、金属合金、炭素系導電性材料、ならびにドープ半導体、導電性ポリマーおよび導電性セラミックスなどの導電性材料を使用することができる。いくつかの態様では、ポリマー層および金属層を、スピンコーティング、DC/RFスパッタリング、フォトリソグラフィー、プラズマエッチング、および二酸化ケイ素または感光性レジストなどの二次材料または犠牲材料からなるマスクによるエッチングなどの微細加工の確立された原理を使用して順次堆積させ、成形する。
【0041】
金属層を成形することで、1つまたは複数の微小電極アレイ要素および該アレイ要素を1つまたは複数の電子機器に接続する導電性トレースを作り出す。いくつかの態様では、微小電極アレイは複数の層を含む。例えば、ポリマー層は、トレースを互いに隔離することに役立つ一方で、移植片の刺激/記録チップの構造も与える。そのような微細加工部品を構築する記載可能ないくつかの製作方法が存在する。
【0042】
絶縁性基材は、ポリイミドまたはパリレンなどのポリマーであり得るが、ポリウレタンもしくはポリシロキサン(シリコーン)または任意の他の好適な絶縁体でもあり得る。実質的に非可撓性または剛性の態様では、剛性または半合成の基材が含まれ得る。いくつかの態様では、微小電極アレイ膜110は、平面状セラミック部材などの剛性基材の少なくとも1つの表面上に成形される。代替としてまたは追加的に、製作中に1つまたは複数の剛性または半剛性の支持部材を取り付けることで、所望の量の剛性を与えることができる。一般に、材料の積層体を生成する一連のアディティブ法およびサブトラクティブ法を例えば使用して、微細加工部品を製作することができる。
【0043】
支持バッキング層120は、微小電極アレイ膜110に剛性または半剛性の支持体を設ける。それはステンレス鋼、ポリイミドまたはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの種々の生体適合性材料で実現することができる。支持バッキング層は、レーザーマイクロマシニングプロセス、打抜加工、成形、または射出成形法を使用して構築することができる。支持バッキング層120が導電性材料でできている場合、それは信号の刺激または記録用の電気接地を形成することもできる。一般に、支持バッキング層120は、50um〜2mmの比較的薄い構造である。支持バッキング層120は、それが支持する皮質深さプローブ130の場合と同様に、その表面から突起を作り出すためにわずかに変形可能であるべきである。
【0044】
皮質神経調節デバイス100の機械部品としては、支持バッキング層120および制御モジュール150が挙げられる。いくつかの態様では、制御モジュール150は、神経表面プローブ101の表面上に直接実装することができる。本態様では、それは別個に実装されるが、リボンケーブル係留180を経由して取り付けられている。あるいは、いくつかの態様では、制御モジュール150は存在せず、微小電極アレイ膜110およびリボンケーブル係留180に包埋された導電体は、患者の皮膚を通じて外部システムに直接接続されている。
【0045】
電気部品は個別部品または超小型電子部品であり得る。それらの目的は、微小電極要素140へのまたは微小電極要素140からの信号のフィルタリング、ルーティング、発生または処理を行うことにある。それらは生産過程で制御回路160に取り付けるか、または後でボンディングすることができる。あるいは、それらを微小電極アレイ膜140に直接ボンディングすることができる。ループアンテナ165は、制御回路において信号を送信および受信するように意図されている。一般に、すべての電気部品は制御モジュール150内に収納されている。
【0046】
皮質神経調節デバイス100は、定位脳手術または内視鏡検査などの一般的神経外科技術を使用して、標的脳構造などの神経標的近傍に埋め込むことができる。皮質神経調節デバイス100は、定位ツールに取り付けるか、または支持体なしで挿入することができる。一般に、神経表面プローブ101は一回の外科的段階で埋め込まれ、一方、制御モジュール150はさらなる外科的段階で埋め込まれる。神経表面プローブ101は、開頭を通じて硬膜下に埋め込まれるように意図されている。皮質深さプローブ130は、硬膜を貫通できるほど剛性であるように意図されている。しかし、外科医は、手術中に硬膜のフラップを作り出すことを決定することもでき、これにより、神経表面プローブ101は硬膜下に埋め込まれる。制御モジュール150は、頭蓋の表面上に埋め込まれ、ねじを使用して骨物質に固定されるように意図されている。
【0047】
臨床医は、捕捉された神経記録を微小電極要素140から表示ユニットに向けることができる。ループアンテナ165を使用して情報を無線送信することができる。あるいは、皮質神経調節デバイス100が制御モジュール150を含まない場合、リボンケーブル係留180を通じて外部コントローラ(図示せず)に情報を直接送信することができる。記録されたデータにより、臨床医は、脳のある種の領域をそれらの電気活動に従って同定することが可能になる。いくつかの態様では、そのような記録情報を自動処理することができる。この処理、またはこの処理の一部は、それを無線で外部コントローラに送信する前に制御回路160により行うことができる。あるいは、皮質神経調節デバイス100が制御モジュール150を含まない場合、処理を完全に外部コントローラ(図示せず)により行う。脳からの記録に使用する微小電極要素140は、組織の刺激に使用するものと同一の微小電極要素140であり得る。記録電極は脳の刺激に使用する電極とは別であってもよい。記録用の電極はサイズおよび設計が刺激用の電極と異なる場合があることから、この状況は好ましい可能性がある。
【0048】
ヒトの解剖学的組織の一部の斜視図を図2に図示する。図2は、ヒト脳220の皮質上に位置する神経標的200との相互作用のために位置決めされる例示的な皮質神経調節デバイス100の埋め込みを示す。皮質神経調節デバイス100の遠位部は、神経表面プローブ101であり、この場合はヒト脳220内に位置する神経標的200に位置決めされる。この態様では、皮質神経調節デバイス100の近位端、すなわち制御モジュール150は、リボンケーブルまたはワイヤバンドルを通じて遠位端に取り付けられている。これにより、脳に直接埋め込まれるデバイスのサイズが最小化される。いくつかの態様では、制御モジュール150は、神経表面プローブ101と直接一体化され得るほど小さい。あるいは、制御モジュール150を対象の身体210の遠隔部分、例えば上胸部に埋め込むことができる。1つまたは複数の皮質神経調節デバイス100を異なる皮質脳領域に埋め込むことができる。
【0049】
ここで図3を参照すると、ヒト脳の解剖学的組織200の一部の断面図であって、神経標的200(例えば図示される皮質)に位置決めされる例示的な神経表面プローブ101を示す図が示される。神経表面プローブ101は、9つの皮質深さプローブ130のアレイを含む。各皮質深さプローブ130の表面上には、線形に分布した微小電極要素140のアレイがある。この例示的態様では、各皮質深さプローブ130上には4つの微小電極要素140がある。好ましくは、皮質深さプローブ130および微小電極要素140は、1つまたは複数の微小電極要素140を臨床的に関連性のある皮質層201a、201bまたは201c(まとめて201)に位置決めすることを可能にするように形作られてサイズ決定される。さらに、いくつかの態様では、皮質の自然なしわである2本の溝205の間にデバイスを嵌合させることが有利であり得る。これは患者の安全性の点で重要である。
【0050】
図示するように、1つまたは複数の微小電極要素140(神経表面プローブ101から突出する皮質深さ電極130上の)は、神経標的200と直接接触して位置決めされる。神経表面プローブ101の平面状部品は脳221の表面上にとどまる。一部の外科手技では、神経表面プローブ101の平面状部品は硬膜よりも上にとどまり、一方、皮質深さプローブ130は硬膜よりも下にある。代替的外科手技では、神経表面プローブ101の平面状部品は硬膜よりも下にあり、手術中の硬膜のフラップの形成が必要になる。手術中の硬膜フラップの形成にもかかわらず、大部分の手技では、皮質深さプローブ130は硬膜下であり、微小電極要素140はいくつかの皮質層201と接触するように意図されている。
【0051】
いくつかの態様では、選択可能な微小電極要素140を駆動して神経標的200から記録することができる。さらに、微小電極要素140からの神経活動の記録を使用して、微小電極要素140の場所または位置を同定することができる。例えば、皮質層201aから記録する微小電極要素140は、皮質層201bから記録する微小要素140とは異なる信号を示す。さらなる例として、皮質層201bから記録する微小電極要素140は、皮質層201cから記録する微小要素140とは異なる信号を示す。このようにして医師は、神経標的200における微小電極要素140および神経表面プローブ101の配置を決定することができる。
【0052】
いくつかの態様では、皮質表面221および皮質層201から記録するために使用される微小電極要素140は、てんかんの診断に特に有用である。患者において記録された活動は、てんかん発作の電気生理学的起源を決定するために使用することができ、行うべき矯正行為または外科行為を医師が決定することに役立ち得る。多くの場合、外科医は外科的切除を推奨することがある。このデバイスを用いて行う場合、切除の精度を向上させて、より良好な臨床成績を導くことができる。さらに、切除がより正確になれば、患者は、より大きな切除区域によって失われた可能性があるさらなる神経機能を保持することが可能になり得る。
【0053】
いくつかの態様では、選択可能な微小電極要素140を駆動して神経標的200を刺激することができる。さらに、神経刺激の機能的帰結を使用することで、刺激を受けた患者の臨床評価により微小電極要素140の場所または位置を同定することができる。例えば、微小電極要素140が右手示指運動を担う運動皮質内の皮質層201を刺激すると、患者の右手示指では単収縮および/または運動が生じる。さらなる例として、微小電極要素140が聴覚野における皮質層201を刺激すると、聴知覚を経験し得る。さらなる例として、微小電極要素140が視覚野における皮質層201を刺激すると、視知覚を経験し得る。このようにして医師は、神経標的200における微小電極要素140および神経表面プローブ101の配置を決定することができる。
【0054】
いくつかの態様では、微小電極要素140を皮質表面221および皮質層201を刺激するために使用することは、脳卒中の処置に特に有用である。刺激は、肢運動などの機能的帰結をもたらさないかも知れないが、患者の運動しやすさを改善することはできる。微小電極要素140に印加されるこの刺激は閾値以下の刺激であり得るものであり、このことは、それがニューロンにおいて活動電位を発生させることはないが、細胞外電位を改変することで、ニューロンが活動電位閾値に到達する能力を促進するということを意味する。
【0055】
いくつかの態様では、微小電極要素140を皮質表面221および皮質層201を刺激するために使用することは、慢性痛の処置に特に有用である。患者の疼痛に関連し得ると医師が結論づけた感覚野の領域に、刺激を印加することができる。例えば、顔面において慢性痛を呈する患者については、感覚野における顔面の感覚を司る一般的領域にデバイスを埋め込むことができる。この刺激を微小電極要素140に印加して病理的活動を抑制することによって、疼痛を処置することができる。
【0056】
ここで図4を参照すると、皮質神経調節デバイス100の模式図が示される。模式図は、デバイスの機能に対して操作者が使用可能な外部コントローラ170から始まる。外部コントローラ170は、制御回路160と電気的に直接接触し得るか、またはアンテナ回路を通じて無線接続され得る。制御回路160を使用して外部コントローラ170からのコマンドを変換することで、デバイスを刺激しかつ/またはデバイスから記録する。また、制御回路160を使用して、表示または処理するために捕捉された情報をデバイスから外部コントローラ170に送信する。続いて、制御回路は神経表面プローブ101と電気的に連通している。情報は、係留ワイヤまたはリボンケーブル(図示せず)を通じてのものであることが好ましい。皮質深さプローブ130a〜130n(まとめて130)が神経表面プローブ101から突出しており、ここでnは任意量である。さらに、各皮質深さプローブ130は少なくとも1つの微小電極要素140を包含する。
【0057】
ここで図5Aを参照すると、図1の例示的態様の上面図が示される。図5Bは、制御モジュール150の詳細平面図である。この画像は、上側ハウジング152の湾曲および下側ハウジング151の形状を示す。特に、固定構造156は、すべての頭蓋の形状、湾曲およびサイズに適応可能になるように下側ハウジング151の平面状表面からわずかに偏るように設計されている。
【0058】
ここで図6Bを参照すると、神経表面プローブ101のさらなる斜視図が示される。この画像では、皮質深さプローブ130a〜130cが最も近位にある。図6Cにおいて、選択された微小電極140に電流が印加された神経表面プローブ101の斜視図が示される。陰極信号が印加された微小電極をまとめて140NEGと称する。電気接地として役立つ微小電極をまとめて140GNDと称する。図6Dは、印加電流が作り出す電界等値面141を示す。神経表面プローブ101が埋め込まれた組織ボリューム内に任意でまたは意図的に設計された三次元電界を作り出すために、信号(陽極、陰極、接地)の任意の組み合わせを微小電極140の任意の組み合わせに印加することができるということが、当業者には理解されよう。
【0059】
ここで図6Bを参照すると、神経表面プローブ101のさらなる斜視図が示される。この画像では、皮質深さプローブ130a〜130cが最も近位にある。
【0060】
ここで図7Aを参照すると、神経表面プローブ101の正面平面図が示される。この画像では、皮質深さプローブ130g〜130iが示される。皮質深さ電極130i上で、微小電極要素140を140ia〜140idと称する。微小電極要素140iaが、皮質深さプローブ130iに沿って神経表面プローブ101の平面状表面に対して最も近位にある。微小電極要素140idが、皮質深さプローブ130iに沿って神経表面プローブ101の平面状表面に対して最も遠位にある。
【0061】
ここで図7Bおよび図7Cを参照すると、神経表面プローブ101のさらなる2つの平面図が示される。この画像では、皮質深さプローブ130c、130fおよび130iが示される。図7Bでは、皮質深さプローブ130cが近位にある一方、皮質深さプローブ130iが最も遠位にある。
【0062】
図8Aにおいて、1つの皮質深さプローブ130gの詳細斜視図が示される。図8Bにおいて、1つの皮質深さプローブ130gのさらなる詳細斜視図が示される。皮質深さプローブ130gの表面上の微小電極要素を140ga〜140gdと称する。
【0063】
図9は、神経表面プローブの組み立てがどのようにして行われるかを部分的に示す。さらに、この例では、皮質深さプローブ130は、神経表面プローブ101の表面から突出するようにはまだ下方に折り曲げられていない。支持バッキング層120は上記のように構築されている。その表面上には、皮質深さプローブ130を作り出す構造の切欠があり、ここではこれを皮質深さプローブバッキング132と呼ぶ。同様に、微小電極アレイ膜110上では、皮質深さプローブ膜135と呼ばれる構造が実装される。この例示的態様では、9つの皮質深さプローブバッキング132および9つの皮質深さプローブ膜135が存在する。
【0064】
ボンディングのプロセスによって、微小電極アレイ膜110はその支持バッキング層120に取り付けられる。図10は、ボンディング後の、但し皮質深さプローブ130が神経表面プローブ101の平面状表面から突出するように下方に折り曲げられる前の、組み立てられた神経表面プローブ101を示す。
【0065】
使用時に、皮質神経調節デバイス100は、頭蓋内に形成される開頭を通じて外科的に設置される。図11Aは、デバイスの設置の斜視図である。この画像は、脳表面220および頭蓋225の断面を示す。円形の開頭226が頭蓋内で行われている。神経表面プローブ101は外科的に設置されており、その皮質深さプローブ130は硬膜(詳述せず)を貫通し、硬膜下に位置決めされる。制御モジュール150は異なる解剖区分上に設置される。それは頭蓋225の表面上に外科的に設置されており、頭蓋ねじを使用して固着することができる。図11Bは、切断解剖領域のさらなる斜視図を示す。図11Cは、切断解剖領域のさらなる平面側面図を示す。
【0066】
いくつかの態様では、制御モジュールを神経表面プローブと一体化して1つのデバイスにし、ワイヤまたはリボンケーブル係留を回避することが好ましい。図12の一体型皮質神経調節デバイス300のさらなる態様は、すべてのシステム部品が1つのモジュールに一体化されていることを示す。
【0067】
図13は、代替態様のさらなる斜視図を示す。いくつかの態様では、制御回路360を微小電極アレイ膜310上に直接実装することができる。さらに、いくつかの態様では、ループアンテナ365を微小電極アレイ膜310上に実装することができる。
【0068】
図14は、一体型皮質神経調節デバイス300の平面図を示す。皮質深さプローブ330およびそれらの各微小電極要素340は、デバイスの下表面から突出する。
【0069】
使用時に、一体型皮質神経調節デバイス300は、頭蓋内に形成される開頭を通じて外科的に設置される。図15は、デバイスの設置の斜視図である。この画像は、脳表面321および頭蓋325の断面を示す。円形の開頭326が頭蓋内で行われている。一体型皮質神経調節デバイス300は開頭を通じて外科的に設置されており、その皮質深さプローブ330は硬膜(詳述せず)を貫通し、硬膜下に位置決めされる。図16は、ヒトの解剖学的組織の断面内のデバイスの設置のさらなる平面図を示す。
【0070】
いくつかの態様では、円形の神経表面プローブを設けることが好ましい。図17Aは、円形の神経表面プローブ401の斜視図を示す。このデバイスは4つの皮質深さプローブ430を包含する。各皮質深さプローブ430上には微小電極要素440の線形アレイが実装される。さらに、一般に直径3mmの大きな表面電極430が、脳の表面からEEG信号を記録するために使用される。最後に、以前の態様に記載のように、リボンケーブル係留480が、微小電極要素440を制御モジュール(図示せず)に連通させるために使用される。図17Bは、円形の神経表面プローブ401のさらなる斜視図を示す。図17Cにおいて、選択された微小電極440に電流が印加された円形の神経表面プローブ401の斜視図が示される。陰極信号が印加された微小電極をまとめて440NEGと称する。電気接地として役立つ微小電極をまとめて440GNDと称する。図17Dは、印加電流が作り出す電界等値面441を示す。円形の神経表面プローブ401が埋め込まれた組織ボリューム内に任意でまたは意図的に設計された三次元電界を作り出すために、信号(陽極、陰極、接地)の任意の組み合わせを微小電極440の任意の組み合わせに印加することができるということが、当業者には理解されよう。
【0071】
円形の神経表面プローブ401は、支持バッキング層を微小電極アレイ膜と組み合わせることで実現される。図18Aは、例示的な円形の支持バッキング層420を示す。それは平面状の中心本体からなり、そこから4つの皮質深さプローブバッキング432が突出する。さらに、各皮質深さプローブバッキング432の底部には、プローブをその最終三次元構築体に折り曲げることを促進する屈曲スリット433がある。図18Bは、本態様において使用される円形の微小電極アレイ膜410を示す。それは4つの皮質深さプローブ膜435からなり、その上に微小電極要素440が配設される。円形の支持バッキング層420および円形の微小電極アレイ膜410は、それらを互いに取り付けるプロセスにおいてボンディングされる。続いて、皮質深さプローブ430が定位置に折り曲げられる。
【0072】
いくつかの態様では、円形の神経表面プローブが中心皮質深さプローブを有することが好ましい。図18Cは、さらなる中心皮質深さプローブバッキング432CMを有する円形の支持バッキング層420Cのさらなる態様を示す。それは平面状の中心本体からなり、そこから4つの皮質深さプローブバッキング432Cが突出し、同一の長さおよび寸法の中心皮質深さプローブバッキング432CMが円形の支持バッキング層420Cの中心から突出する。さらに、各皮質深さプローブバッキング432Cの底部には、プローブをその最終三次元構築体に折り曲げることを促進する屈曲スリット433Cがある。さらに、中心皮質深さプローブバッキング432CMの底部には、中心プローブをその最終三次元構築体に折り曲げることを促進する屈曲スリット433CMがある。
【0073】
図18Dは、本態様において使用される円形の微小電極アレイ膜410Cを示す。それは4つの皮質深さプローブ膜435Cからなり、その上に微小電極要素440Cが配設される。さらに、同一の長さおよび寸法の中心皮質深さプローブ膜434CMが円形の微小電極アレイ膜410Cの中心から突出する。円形の支持バッキング層420Cおよび円形の微小電極アレイ膜410Cは、それらを互いに取り付けるプロセスにおいてボンディングされる。続いて、皮質深さプローブが定位置に折り曲げられ、中心皮質深さプローブは、支持バッキング層420Cの平面状セクションにより形成される平面に対して垂直な位置を取る。
【0074】
ここで図18Eを参照すると、中心ピン401Cを有する円形の神経表面プローブの斜視図が示される。図18Cおよび図18Dに示される部品を組み立てることでこの態様を実現する。それは4つの皮質深さプローブ430Cおよび中心皮質深さプローブ430CMからなる。微小電極要素440Cが全5つの皮質深さプローブ上に配設される。皮質深さプローブ430Cと同一の長さおよび寸法の中心皮質深さプローブ430CMが円形の神経表面プローブ401C表面の中心から突出する。円形の支持バッキング層420Cおよび円形の微小電極アレイ膜410Cは、それらを互いに取り付けるプロセスにおいてボンディングされる。続いて、皮質深さプローブが定位置に折り曲げられ、中心皮質深さプローブは、支持バッキング層420Cの平面状セクションにより形成される平面に対して垂直な位置を取る。
【0075】
ここで図19Aを参照すると、ヒト脳の解剖学的組織421の一部の断面図が示され、これは神経標的422に位置決めされる例示的な円形の神経表面プローブ401が図示する。一般に、円形の神経表面プローブ401は、本明細書に記載の皮質神経調節デバイスのいずれかを代表する。円形の神経表面プローブ401は、その個々の皮質深さプローブに沿った微小電極要素のアレイを含む。好ましくは、開頭を行って円形の神経表面プローブ401を埋め込む。そのリボンケーブル係留480はヒトの体外にとどまり、一方、円形の神経表面プローブ401は脳の皮質の表面上に埋め込まれる。他の態様と同様に、個々の皮質深さプローブは硬膜下に埋め込まれるように意図されており、微小電極要素は皮質の少なくとも1つの硬膜下層と接触している。
【0076】
ここで図19Bを参照すると、神経標的422と称するヒト脳の解剖学的組織421の一部における例示的な円形の神経表面プローブ401の位置決めの平面図が示される。図示するように、円形の神経表面プローブ401の1つまたは複数の微小電極要素は、神経標的422と密接して位置決めされる。円形の神経表面プローブ401の1つまたは複数のさらなる微小電極要素は、神経標的422のすぐ近傍ではない場所に存在し得る。少なくともいくつかの態様では、1つまたは複数の微小電極要素は、1つまたは複数の導電性リード(図示せず)を経由して、円形の神経表面プローブ401の近位端より遠隔アクセス可能である。
【0077】
いくつかの外科手技では、いくつかの円形の神経表面プローブ401を神経標的422Kの領域に埋め込むことが、患者にとって非常に有利である。図20Aは、ヒト脳の解剖学的組織421Kの一部の断面図であり、神経標的422Kに位置決めされる4つの例示的な円形の神経表面プローブ401Kを示す。図20Bは、神経標的422Kのより詳細な近接図である。4つの円形の神経表面プローブ401Ka、401Kb、401Kc、401Kd(まとめて401K)が神経標的422Kに埋め込まれた。いくつかの外科手技では、脳の表面上の溝405Kを回避することが非常に有利である。溝405Kは、脳表面がしわを形成しており、かつ血管新生がさかんであり得る領域である。円形の神経表面プローブ401Kは、患者の外側部分に通じ得る、まとめて480Kと呼ぶリボンケーブル係留をそれぞれ有する。
【0078】
実際は、医師が、何個の円形の神経表面プローブ401Kを埋め込むべきかを決定する。いくつかの場合、十分な生理学的情報または十分な治療刺激量がそれにより提供されると医師が決定する可能性がある際には、1つのみを埋め込むことが有利である可能性がある。いくつかの場合、神経標的を発見する可能性を増加させるには、複数の円形の神経表面プローブ401を領域に埋め込むことが有利である。ある量のデバイスを埋め込むことは手術前に手術計画ソフトウェアを使用して決定することができる。代替としてまたは追加的に、決定を手術中に行うことができる。
【0079】
いくつかの態様では、制御モジュールを円形の神経表面プローブと一体化して1つのデバイスにし、ワイヤまたはリボンケーブル係留を回避することが好ましい。図21Aの円形の一体型皮質神経調節デバイス401Mのさらなる態様は、すべてのシステム部品が1つのモジュールに一体化されていることを示す。このデバイスは4つの皮質深さプローブ430Mを包含する。各皮質深さプローブ430M上には微小電極要素440Mの線形アレイが実装される。さらに、制御モジュール用の下側ハウジング451Mが、円形の支持バッキング層420Mの平面状領域よりも上に直接取り付けられる。上側ハウジング452Mは、制御回路460Mおよびループアンテナ465Mを封入するように意図されており、これらは円形の一体型皮質神経調節デバイス401Mを制御し、そこに情報を送信するために使用される。円形の微小電極アレイ膜440Mの表面上には微小電極アレイ要素440Mがあり、これらは包埋された導電性トレース(図示せず)を通じて制御回路460Mと連通している。図21Bは、円形の一体型神経表面プローブ401Mのさらなる斜視図を示す。この画像では、直径3mmのEEG電極441Mが実装されているのが見える。図21Cは、例示的な円形の一体型皮質神経調節デバイス401Mのさらなる平面図である。
【0080】
ここで図22を参照すると、神経標的422Mに埋め込まれる円形の一体型皮質神経調節デバイス401Mの例示的態様を伴う、ヒト脳の解剖学的組織421Mの斜視図が示される。この例示的態様では、患者の外側部分へのリボンケーブル係留の接続は必要ない。しかし、埋め込まれたデバイスと連通するには外部制御モジュール(図示せず)が必要である。図23は、ヒトの解剖学的組織421Mの一部と、神経標的422M内の例示的な円形の神経表面プローブ401Mの位置決めとをより詳細に図示する。
【0081】
いくつかの外科手技では、いくつかの円形の一体型神経表面プローブ401Mを神経標的422Mの領域に埋め込むことが、患者にとって非常に有利である。図24は、ヒト脳の解剖学的組織421Mの一部の近接斜視図であり、神経標的422Mに位置決めされる5つの例示的な円形の一体型神経表面プローブ401Ma、401Mb、401Mc、401Md、401Me(まとめて401M)を示す。いくつかの外科手技では、脳の表面上の溝405Mを回避することが非常に有利である。溝405Mは、脳表面がしわを形成しており、かつ血管新生がさかんであり得る領域である。円形の一体型神経表面プローブ401Mは患者の外側部分に無線連通し得る。
【0082】
提示されるすべての態様において、デバイスが外科手技を使用して脳の表面上に埋め込まれるように意図されていることが理解されよう。さらに、すべての態様から突出する皮質深さプローブは、脳の硬膜下領域内にあるように意図されており、皮質深さプローブの表面上の微小電極要素は、少なくとも1つの皮質層と接触するように意図されている。神経表面プローブは、一般的には皮質の記録および/または刺激のために脳上に設置される。医師が診断または治療の標的とする皮質の領域を神経標的と呼ぶ。
【0083】
網膜、末梢神経系などの身体の他の部分に微小電極要素を設置して、動物の解剖学的組織のそのような部分の神経記録および/または神経刺激を行うこともできる。各種態様を通じて微小電極を一般的に論じるが、微小電極のサイズの上限または下限を限定する意図はない。本明細書に記載のデバイスおよび方法は一般に拡張性があり、微小電極のサイズは目的とする用途に従って決定される。神経用途のうち少なくとも一部では、微小電極はサブミリメートルの寸法である。いくつかの態様では、微小電極はサブミクロンの寸法である。いくつかの態様では、微小電極は、約100μmの中心対中心間隔で線形アレイで配置される、約50μmの直径を有する平面構造として形成される。微小電極の平面構造は円、楕円、多角形などの規則形状、不規則形状、またはそのような規則形状および/もしくは不規則形状の組み合わせを有し得る。
【0084】
図23Aは、皮質深さプローブアセンブリの一態様の模式図である。微小電極チップアセンブリ500は支持部材502を含み、支持部材は遠位先端506を終端とする細長い部分と、近位延伸部510とを含む。3つの微小電極要素504の線形アレイが、支持部材502の細長い部分の縦軸に沿って配置されている。対応する数の3つの電極接点508が近位延伸部510上に位置している。アレイ504の各微小電極要素は、各導電性リードトレース512を通じて各1つの電極接点508に相互接続している。例示的態様では、ポリマー層514が下地支持部材502の少なくとも1つの表面に塗布されている。微小電極リード、電極接点508および相互接続リードトレース512はそれぞれ、ポリマー層514の上または内側の導電性層として実装される。微小電極要素の線形アレイを図示しているが、そのような微小電極の非線形、平面状、曲線表面、および立体状(すなわち三次元)の分布を有する他の態様が可能である。
【0085】
製作方法
微細加工部品ならびに必要な機械特性および電気特性を実現するいくつかの技術が存在する。製作手順は、様々な層を堆積させるかまたは除去して(例えばエッチングして)最終形態を実現する、一連の手順工程である。手順工程の例示的順序を本明細書に記載する。
【0086】
工程1:
キャリアウェーハおよび犠牲層
図23Aに図示する第1工程では、ケイ素などの結晶性材料、またはガラス、特にPYREX(登録商標)という商品名で市販の耐熱衝撃性ホウケイ酸ガラスなどの非晶質材料、または他の好適な平滑支持材料で構成されるウェーハなどの、キャリア基材650が設けられる。少なくとも2つの部分層を含む第1の層652をウェーハ650の表面に塗布する。部分層652の1つは、ウェーハ650上に堆積した犠牲層であり、これを後続の電気機械エッチング工程で除去する。好ましくは、犠牲層のエッチングに必要な電気化学セルを形成するために役立つ、下地層と呼ばれる別の部分層が、犠牲部分層に先行する。好ましい態様では、犠牲部分層はアルミニウム、またはより小さい粒度を有するAlSiなどのアルミニウム合金であり、一方、下地層はTiW合金、クロムまたは同様の金属である。犠牲層は下記画像では黒線652として表し、キャリアウェーハ650は灰色で示す。この一連の図に示される各画像は、例示的態様の断面を表し、手順工程を記載するために本明細書で使用される。
【0087】
いくつかの態様では、犠牲層652は、完成したデバイスの電気機械的除去を容易にすることに加えて、完成したデバイスの表面に対して粒度または粒径を確立するものである。すなわち、好適な下地層の選択により少なくとも部分的に正確に制御可能な表面に対して、犠牲層はマイクロ粗さまたはナノ粗さを付加することができる。例えば、アルミニウムをDCスパッタリングにより、5nm以下〜600nm以上の範囲の粒径で堆積させることができる。この粒径は第1の粒状表面を与える。次にポリマー層を粒状犠牲層の上に堆積させる。このポリマー層を局地的にエッチングして、粒状犠牲層上に対して開口するビアを作り出すことができる。続いて、得られた粒状表面およびポリマー層の上に金属層を堆積させ、堆積した金属は、神経記録/刺激微小電極要素およびワイヤトレースとして役立つ。ポリマー層中のビア内に位置する金属の区域は微小電極表面を形成する。ポリマー層上に位置する金属の区域は、線形トレースにエッチング可能であり、微小電極とボンドパッドまたは回路との相互接続を形成可能である。このプロセスを以下に「裏面微小電極」として記載する。比較的平らな表面上での粒度のそのような増加が理由で、金属層の表面区域全体は、この要素の周囲を範囲とする区域よりも大きい有効表面積を有する。有利なことに、増加した表面積により、電極要素の電気インピーダンスの対応する減少が得られる。このコンセプトは、神経活動の高い局在化を保証する同じ小さい直径を維持しながら、記録を容易にし、インピーダンスの減少による記録忠実度の増大および複雑性の低下を可能にするという点で重要である。そうして形成される例示的微小電極要素の導電性表面を図30の画像に図示する。
【0088】
工程2:
第1のポリマー層の堆積
図25Bを参照すると、製作プロセスの次の工程は、樹脂層654と呼ばれることもある第1のポリマー層654を堆積させることを含む。第1のポリマー層654を犠牲層652上に堆積させることができる。これは(i) ポリイミドもしくはシリコーン前駆体などの液体ポリマー前駆体をスピンコーティングすること; (ii) パリレンCを用いて行う場合と同様に化学蒸着を通じてポリマーを堆積させること; または(iii) ウェーハ650上にポリマーシート654を積層させることにより、MEMS加工分野の当業者に公知である任意の好適な手段で行うことができる。いくつかの態様では、ポリマー層654を加熱またはベーキングして重合する。
【0089】
次に図25Cおよび図25Dを参照すると、任意の工程は第1のポリマー層654のエッチングを含み、エッチングは、完成したデバイスの下面に沿って最終的に位置する1つまたは複数の裏面電極を有するデバイスを加工する際に有益であり得る。この任意の工程では、第1のポリマー層654を局在的にエッチングして開口区域652を形成し、そこにそのような裏面微小電極用の金属を後に堆積させることができる。この工程は任意であり、すべての微小電極接点が完成したデバイスの正面上に形成されており、完成したデバイス上にそのような裏面電極が必要でない場合には、不要である。裏面電極金属層が含まれる場合、同様に犠牲層の粒度から達成できるより大きい有効表面積の恩恵を受けることから、この工程はやはり有利である。
【0090】
第1のポリマー層654上にマスク656を堆積させることでエッチングを行うことができる。薄膜加工用の十分に確立された方法を使用して、マスク656をフォトリソグラフィーで確定することができる。例えば、感光性樹脂656をポリマー層654上にスピンコーティングする。操作者がポリマー層654を除去することを選択する区域について、樹脂層657の非マスク部分を紫外線に露光するプロセスを使用する。紫外線に露光した非マスク区域657のみを選択的に除去する溶媒中で、デバイスを現像する。この例では下地層652をエッチングし、露光することで、この選択的エッチングプロセスはポリマー層654の区域を局在的に開口させる。いくつかの態様では、デバイスを酸素プラズマ中でエッチングして、ポリマー層657の露光部を除去する。同一のエッチングプロセスでエッチマスク656を除去することもできるが、それがポリマー層よりも厚い場合は完全には除去されないことがある。画定したエッチマスク656を図示する。代替としてまたは追加的に、DCスパッタリングで堆積された二酸化ケイ素などの光画定不能な層でエッチマスク656を実現することもできる。次に二酸化ケイ素の上にフォトレジストを堆積させ、フォトリソグラフィーで画定する。ポリマー層654をエッチング後、二酸化ケイ素マスクを除去してもよい。
【0091】
図25Dは、ポリマー層657の露光部を除去した後のデバイスを図示する。図示するように、犠牲層652の一部をこの時に露光する。いくつかの態様では、続いて好適な溶媒を使用してフォトレジストマスク656を除去することができる。
【0092】
工程3:
金属層の堆積および画定
図25Gに示すように、層の堆積をレジストマスク670を通じて行うこともできる。この場合、フォトレジストマスク686'をポリマー層654上にフォトリソグラフィーで画定する。次に導電性(例えば金属)層692'を、マスクデバイスの上に堆積させることができる。したがって、導電性層690がそこに形成されることが望ましい非マスク区域687は、フォトレジストマスク686'に対して開口しており、したがって、堆積した導電性層692'の一部は、非マスク区域687のポリマー層654上に直接着地する。この技術を「リフトオフ」技術と呼ぶこともある。次に、その上に任意の導電性層692'があるフォトレジストマスク686'を溶解させ、したがって残留金属690のみが以前の非マスク区域のポリマー上に存在する。フォトレジスト686'の上にある金属層692'もフォトレジストマスク686'の除去により除去されることに留意されたい。有利なことに、ポリマー層654と接触している導電性層690の部分はマスク686'の除去後に残留する。
【0093】
ここで図25Hを参照すると、代替方法では、金属層692''をウェーハ650の表面全体に堆積させることができる。図示するように、犠牲層652の上に設けられるポリマー層654の上に、金属層692''を設ける。残留する金属層692''の部分の上にマスキング層686''を設ける。次に金属層692''の露光領域を、例えば以下に示すフォトリソグラフィー工程により局在的に除去することができる。
【0094】
次に図25Eを参照すると、電極680および1つまたは複数の導電性トレース682として役立つ導電性層を次に堆積させる。そのような導電性層は、DCスパッタリング、RFスパッタリングまたは蒸発技術などの任意の好適な薄膜プロセスで堆積される金属層を含み得る。許容される電気特性(電荷移動などの)および機械強度を確保するために、導電性層680、682中に堆積される金属は、白金、イリジウム、白金-イリジウム合金、酸化イリジウム、チタンまたはチタン合金であることが好ましい。
【0095】
好ましい態様では、金属層680、682を、ポリマーと接触している接着促進層と共に堆積させる。例えば、初期部分工程においてチタンをポリイミド層654上にスパッタリングして接着を向上させた後、中間部分工程において白金層を堆積させることができ、任意で後続の部分工程においてチタン層を白金層上に堆積させることができる。これはTi-Pt-Tiサンドイッチを作り出すものであり、チタンは、白金をそのいずれかの側面のポリイミドに接着させる役割を担い、白金は、使用される金属層となる。
【0096】
図25C〜図25Eに関して先に記載の、裏面電極を生成する態様では、導電性層680は、裏面電極680の領域の犠牲層652に接触する。ポリマー層654上の金属と犠牲層652の露光部上の金属との間で確実に接触が存在するように、金属堆積技術を選択する。これは、金属680を等角的に堆積させること、およびポリマー層654が厚くなりすぎないことを確実にすることで行われる。次に金属層680を先に説明したようにフォトリソグラフィーで画定することができる。塩素ガスプラズマなどのプラズマ中のエッチを使用することで、フォトレジストマスクを使用して堆積した金属層を除去することができる。次にフォトレジストマスクを溶媒中で除去することができる。
【0097】
工程4:
第2のポリマー層の堆積
次に、裏面電極態様に関する図25I、および図25Hを参照すると、図25Bに関して先に記載の技術のいずれかなどの好適な技術を使用して、第2のポリマー層672、692を堆積させる。下地ポリマー層654、664および任意の露光した金属層658、668の上に第2のポリマー層672、692を堆積させる。いくつかの態様では、第1のポリマー層654、664を加工することで、第2のポリマー層672、692に対するその接着を増加させることができる。例えば、酸素プラズマを使用する粗面処理または化学改変を通じて、そのような加工を達成することができる。第2の絶縁性層またはポリマー層672、692は、互いに異なる層上に形成される場合、電気トレースを絶縁する。いくつかの態様では、ポリマー材料をベーキングなどの熱プロセスに供することができる。
【0098】
工程5:
ポリマー層の画定
次に図25I〜図25Kを参照すると、1つまたは複数のポリマー層654、691およびしたがってデバイスそれ自体を画定するために、エッチマスク695をデバイスの外面に堆積させる。このエッチマスク695は、光画定可能なレジストから構成されてもよいが、著しい劣化なしにポリマー層のエッチに耐え得る二酸化ケイ素または非晶質ケイ素などのハードエッチマスクであることが好ましい。
【0099】
また、この時点のウェーハ650には、ハードマスク693を例えばDCまたはRFスパッタリングにより堆積させる。光画定可能なレジスト695をハードマスク693上に堆積させ、エッチングしようとするポリマー654、691の区域を画定する。
【0100】
次にハードマスク693を、ポリマー層654、691のエッチングに使用する可能性があるガスとは異なるガス、例えばCF4プラズマでエッチングする。図示するように、ここで1つまたは複数のポリマー層654、691を犠牲層652に対して酸素プラズマなどのガスでエッチングすることができる。したがって、図25Kに示すハードマスクの残留部分が、デバイスの端部659を画定することでデバイスの範囲を画定する。
【0101】
ハードマスク693の残留部分を後続の工程で除去してもよい。このエッチングプロセスの目標は、(i) 微小電極部位を画定すること; (ii) デバイス形状を画定すること; および(iii) 電子機器またはワイヤ取付部用の接触区域を画定することにある。例示的な完成した微小電極デバイスの上面図を図31に示す。別の例示的な完成した微小電極デバイスの断面図を図32に示す。
【0102】
裏面電極を作製する選択肢を工程2で採用する場合、デバイスは、その表面にある微小電極をいったん基材から除去する。
【0103】
工程6:
電子機器の任意的ボンディング
ここで図25Lを参照すると、デバイスを電子機器と一体化しようとする場合、接触パッド699をこの時点で電気回路デバイス697への接続に使用することができる。例えば、導電性エポキシ中間層を使用してチップ697をデバイス661にフリップチップボンディングすることで、集積回路チップ697を接点690(図25K)に接続することができる。次にチップ697をエポキシなどの化学ボンディングでさらに付着させることで、デバイス661への強力かつ信頼できる接続を確実にすることができる。
【0104】
工程7:
キャリアウェーハからのデバイスの取り外し
下地ウェーハ650よりMEMSデバイスなどのデバイス661を取り外す、製作プロセスの最終工程を図25Mに図示する。犠牲層652(例えば図25L)を電気化学的にエッチング除去する。デバイス661下側から犠牲層652を取り外すことにより、ウェーハ650からデバイス661の裏面を解放する。これは、高NaCl濃度を有する食塩水浴中にウェーハを置くことで達成することができる。浴中の白金電極を基準として使用することができる。白金電極に対してアルミニウム層に電圧を印加する。アルミニウムおよびTiWが作り出す電気化学セルによりアルミニウムをエッチングし、このエッチングはデバイスの下方で続けられる。デバイスは浴内に入れられ、取り出される。
【0105】
図26は、裏面微小電極要素700の一態様の顕微鏡写真である。この画像は図25Eに示すプロセス工程において撮影されるものである。アルミニウム犠牲層表面704の粒度702を使用して、後続工程において金属電極の有効表面積を増加させる。微小電極要素700と電気連通している相互接続リード706の一部も図示される。
【0106】
図27は、微小電極チップの一態様の構築要素の平面図である。構築要素はステンシルフレームツリー640を含み、これは支持構築フレーム644に離型可能に取り付けられている8つの剛性バッキング部材642を含む。各剛性バッキング部材642は、細長い部分と、製作された時点で1つまたは複数の電子機器を収容する開口部646を有する近位部とを含む。個々の支持構築フレームをそれぞれキャリアウェーハ上のデバイスにボンディングできるように、ステンシルフレームツリー640を剛性材料で実現することができる。
【0107】
図28は、図29に図示する構築要素の一部の模式図であり、組み立てられた部品のクローズアップを図示するものである。例示的態様では、ポリマーデバイスは「裏面」電極プロセスを使用して製作された。
【0108】
図29は、微小電極アレイチップの一態様の構築要素の分解模式図を図示する。ステンシルフレームツリー400は、その中に形成されるマイクロアレイデバイス649を含むキャリアウェーハの表面上に設置される。ステンシルフレームツリー400は、キャリアウェーハ648のマイクロアレイデバイス649に好適に位置合わせされ、それにボンディングされる。ステンシルフレームツリー400をキャリアウェーハ648にボンディングする後または前のいずれかに1つまたは複数の電子機器をポリマーデバイス上に好適に設置することができる。
【0109】
図30は、図29に図示する構築要素の別の一部の模式図である。先に記載のように犠牲層を除去した時点で、デバイス649はキャリアウェーハ648より離型され、ここで支持用のステンシル640にボンディングされる。例示的態様では、キャリアウェーハ648に対向し(かつ犠牲層と接触する)ポリマーデバイス649の側面は、その表面に微小電極を有する。一般に、本明細書に記載のように微小電極は一方または両方の側面に含まれ得る。
【0110】
いくつかの態様では、ポリマーマイクロデバイス649上の剛性バッキング642が必要である。これによりデバイス649は完全にまたは局在的に剛性になる。この剛性は、組織への挿入に有利である可能性がある。コンセプトは、デバイスが作製されたキャリアウェーハ上のデバイス上にボンディング可能なステンシル形状640である。ステンシル形状640は、PEEKもしくはポリウレタンなどのポリマー、または医療用ステンレス鋼もしくはチタンなどの金属で実現することができる。それを一次成形するか、機械加工もしくはレーザーで切断するか、または打ち抜くことができる。この剛性構造をデバイスに取り付けた際に、電子チップをボンディングすることができる。電子チップは事前にデバイスにボンディングしてもよい。組み立てプロセスの後で、先に記載のものと同一の犠牲エッチング技術を使用して、キャリアウェーハよりデバイスを取り外すことができる。さらなる組み立て手順は、剛性バッキングをそのフレームから取り外し、デバイスをその最終構造と一体化することであり得る。いくつかの態様では、剛性バッキングは導電性である。他の態様では、剛性バッキングは非導電性である。この支持構造が導電性材料でできている場合、刺激用の電気接地または基準としても役立ち得る。
【0111】
図33A〜図36Cは、1つまたは複数のバッキング層が微小電極膜を支持するために使用される、さらなる態様の画像である。1つまたは複数のバッキング層は剛性または半剛性であり得る。いくつかの態様では、1つまたは複数のバッキング層は可撓性であり得る。図33Aは、微小電極チップの長方形アレイを作り出すために使用される構築要素の平面図を示す。例示的な構築要素は、この例では12の個々の半剛性バッキング部材742の配置を含む、ステンシルフレームツリー740'を含む。ステンシルフレームツリー740'は、医療用ステンレス鋼などの剛性材料を含み得る。いくつかの態様では、例えばキャリアウェーハ上の1つまたは複数の微小電極デバイスにステンシルフレームツリー740'をボンディングすることができる。
【0112】
ステンシルフレームツリー740'は、レーザー切断、ウォータージェット切断、感光性マスクを使用する化学エッチング、または医療グレード二次元構造を得るために使用される別の方法により実現することができる。ステンシルフレームツリー740'は1つまたは複数の開放型または密閉型の開口部746を例えば含み得るものであり、その中に超小型電子回路が配置することができる。
【0113】
ステンシルフレームツリー740'は、その全体形状およびサイズによっても特徴づけられる。一般に、多角形、楕円、円、蛇行形、不規則形状、およびそのような形状の任意の組み合わせを含む任意の全体形状が想定される。例示的態様では、実質的に長方形のステンシルフレームツリー740'は、その幅Wおよびその長さLにより特徴づけられる。例示的態様では、幅は20mmであり、長さは15mmである。ステンシルフレームツリー740'は、製作および体内での設置を容易にするように概して薄型である。例示的態様では、厚さは約0.1mmである(図示せず)。一般に、ステンシルフレームツリー740'は、それが使用されるように意図される解剖学的組織に一致する全体形状および寸法を有する。そのような標的となる解剖学的組織としては、脳、脊椎、末梢神経系、蝸牛、網膜、および身体の他の部分を含む、本明細書に記載の解剖学的組織のいずれかが挙げられる。いくつかの態様では、それは20cm以上と広い幅、および15cm以上と大きい長さを有することがあるが、サイズおよび形状に関する一般的限定は想定されない。
【0114】
図33Bは、ステンシルフレームツリー740の一部の斜視図であって、その中に形成されるいくつかの半剛性バッキング部材742を示す図である。半剛性バッキング部材742の一般的形状は、押込加工、一次成形または打抜加工を含む任意の好適な手段で成形することができる。成形した時点で、半剛性バッキング部材742を、図33Cに示す下向きの位置に折り曲げるかまたは他のやり方で成形することができる。他の態様では、バッキング部材742を上向きの位置または下向きの位置および上向きの位置の組み合わせに折り曲げることができる。この行為により、支持プローブバッキング部材743を形成する突出位置が得られる。以前の態様において述べたように、微小電極膜をステンシルフレームツリー740'に取り付ける前または後に、この折り曲げを行うことができる。
【0115】
図34Aおよび図34Bは、ステンシルフレームツリー740''、740'''(総称して740)のさらなる態様を示す。いくつかの態様では、図34Aに示すように、ステンシルフレームツリー740は1つまたは複数の垂直で細長い溝または開口部745a〜745c(総称して745)を含み得るものであり、これによりステンシルフレームツリー740は1つまたは複数の軸に沿ってより可撓性になり、平らではない解剖学的組織の一部に概して平面状の構造が一致することが可能になる。いくつかの態様では、図34Bに示すように、ステンシルフレームツリー740は1つまたは複数の水平の溝もしくは開口部746または垂直で細長い溝もしくは開口部745を含み得るものであり、これによりそれはいくつかの軸に沿ってより可撓性になり、平らではない解剖学的組織の一部にそれが一致することが可能になる。
【0116】
図34Cおよび図34Dは、異なる形状および特徴を示す半剛性バッキング部材742の各種態様を示す。図34Cは、先に論じた態様のより近接した図を示し、これは脳の表面上の硬膜を含む組織のより容易な貫通を促進し得る比較的鋭い先端を特徴とする。剛性部材742、747はまた、底部から先端まで測定されるそれらの各長さdを特徴とし、この長さは短くなるように、または解剖学的組織のある区域に到達できるほど長くなるように実現することができる。いくつかの態様では、同一のステンシルフレームツリー740の1つまたは複数の半剛性バッキング部材742、747は異なる寸法および/または異なる形状を有し得る。いくつかの態様では、例えば頭蓋用途では、長さdは一般に約1〜4mmであるが、0.5mm以下と短いこともあれば、数センチメートル以上と長いこともある。
【0117】
図34Dはさらなる態様を図示し、これは埋め込み後の組織の慢性損傷を予防することができる丸みを帯びた先端を特徴とする。剛性部材747は、その底部における開口部または間隙748も異なっており、これにより、その部材をその最終突出位置に折り曲げることの容易さを改善することができる。そのような間隙748は、本明細書に記載の態様のいずれにも含むことができる。
【0118】
図35Aは、記録および/または刺激に使用可能な組み立てられた微小電極アセンブリ750の上面斜視図を示す。このアセンブリでは、剛性ステンシルフレームツリー740'はその下側で微小電極膜755(図示せず)を支持している。半剛性バッキング部材742を下向きに折り曲げることでその下側から突出させる。超小型電子回路要素752は、可撓性電気導管部材754を通じて微小電極膜と外部デバイス(図示せず)とを電気的に結合させている。
【0119】
図35Bは、アセンブリ750の下側からの単一の剛性バッキング部材742の斜視図をより詳細に示す。微小電極膜755が下側にボンディングされているのが見える。微小電極膜755の下側には微小電極要素765の配置が存在する。微小電極膜755および微小電極要素765は、ステンシルフレームツリー740'の平面から延びる折れ曲がった剛性バッキング部材742に一致している。例示的態様の表面上には4つの微小電極要素または部位765がある。これらの部位は、神経活動の感知もしくは記録または電気刺激の1つまたは複数に使用することもでき、あるいは同一部位を刺激し、同一部位から記録することを可能にし得る。折れ曲がった各剛性バッキング部材742の微小電極部位765の数は1または複数で変動し得る。この例示的態様では4つの微小電極刺激部位765がある。例えば図42A〜図42Dおよび図43F〜図43Gの後続の態様に示す四極管構成などの本明細書に記載の構成のいずれかを含む他の構成で、それらを配置することもできる。
【0120】
図35Cは、組み立てられた微小電極記録および刺激デバイス780の斜視図を示す。このアセンブリでは、剛性ステンシルフレームツリー790はその下側で微小電極膜795を支持している。半剛性バッキング部材792を下向きに折り曲げることでその下側から突出させる。超小型電子回路要素782は、可撓性電気導管部材784を通じて微小電極膜を外部デバイス(図示せず)と電気的に接触させる。
【0121】
図35Dは、アセンブリ780の下側からの単一の剛性バッキング部材792のより近接した斜視図を示す。微小電極膜795は剛性ステンシルフレームツリー790の上側にボンディングされている。微小電極膜795は、本明細書に記載の微細加工プロセスを使用して実現することができ、接着または加熱により剛性ステンシルフレームツリー790にボンディングすることができる。微小電極膜795の上側には、折れ曲がった剛性バッキング部材792に一致する微小電極要素796および797がある。表面上には、神経活動を刺激するための比較的大きな微小電極刺激部位796がある。さらに、表面上には、単一の神経細胞記録に使用される四極管構成で配置される4つの比較的小さな微小電極記録部位797の配置が存在する。各剛性バッキング部材792上の微小電極刺激部位796の数は1または複数で変動し得る。例えば図42A〜図42Dおよび図43F〜図43Gの後続の態様に示すさらなる四極管構成が存在する。
【0122】
図35Eは、図35Aに示す突出する微小電極要素762のアレイの斜視図を示す。微小電極膜755は、既に記載の微細加工手順のいずれかを使用して実現することができる。この例示的態様では裏面製作プロセスが使用される。微小電極膜755は、接着または加熱を通じてステンシルフレームツリーにボンディングすることができる。
【0123】
図34Aおよび図34Bに示すように、微小電極アセンブリ750を解剖学的組織の一部に一致させるために、剛性バッキングフレーム740およびボンディングされた微小電極膜755が細長い間隙を含むことが必要であり得る。図36Aは、ヒトの解剖学的組織の一部である脳の左半球771を示す。その皮質表面上には、神経活動を記録および/または刺激するために使用可能な例示的微小電極アセンブリ750が設置されている。
【0124】
図36Bは、脳の左半球771と右半球772との両方を示すさらなる斜視図を示す。微小電極アセンブリ750は、皮質上に外科的に設置されており、電気導管754を通じて別個の制御システム(図示せず)に接続されている。別個の制御システムは体内に、体外に、または体内および体外の組み合わせの中に位置し得る。一般に、デバイスは開頭することで設置される。突出剛性部材742は硬膜(図示せず)を穿刺することができ、したがってその外科的除去を必要としない。代替としてまたは追加的に、外科医は硬膜を除去し、突出部材742は、突出部材742の長さにより決定される深さで皮質を穿刺する。
【0125】
これは図36Cにより詳細に示されており、12個の突出部材742のアレイが皮質の第1の層に挿入されている。超小型電子要素752が含まれる場合、各突出部材742上に実装されている各微小電極部位上で神経活動を記録、刺激、または記録かつ刺激するために使用することができる。いくつかの態様では、1つまたは複数の突出部材742を独立してまたは1回もしくは複数回に分けて作動させることで、デバイス250によりアドレス可能な所望の領域を記録および/または刺激することができる。一般に、微小電極アセンブリ750を、本明細書に記載の微小電極プローブのいずれかによって構成し、本明細書に記載の刺激および/または記録もしくは感知デバイスのいずれかとの組み合わせで使用することができる。
【0126】
電子部品
デバイスの電子部品は、(i) 対象となる刺激領域にどの微小電極部位が最も近いかを同定するための、微小電極アレイからの神経活動の記録; ならびに(ii) 微小電極アレイと、どの微小電極部位で刺激するかを選択する能力とを用いる、神経活動の刺激および調節を可能にする。
【0127】
別個の部品、集積回路技術または両方の組み合わせを使用して電子機器を実装することができる。電子機器のブラックボックス設計を以下に示す。電子機器は、既存の埋め込み式パルス発生器(IPG)で駆動可能であるが、IPGから微小電極アレイへの信号を適切に調整またはルーティングする遠隔測定プログラミングインターフェースを含む。IPGを必要としない電子部品の態様が存在する。
【0128】
機械部品
機械部品および関連組み立てプロセスは、気密性および生体適合性の様式でデバイスを収納するために役立つ。それらは既存の埋め込み式パルス発生器、または体外制御ユニットに対する接続も可能にする。体外ユニットは電力、プログラミング能力および情報検索を与える。今日存在する外部蝸牛刺激システムと非常に似た様式でそれを埋め込むことができる。埋め込み式パルス発生器を含む態様では、それは情報を収集するために、かつIPGより微小電極アレイに信号をルーティングするように電気ユニットをプログラムするために役立つ。
【0129】
図37を参照すると、刺激モードで構成されている神経標的刺激器820の例示的態様の機能ブロック図である。刺激器820は、神経標的に位置決め可能な微小電極アレイ826を含む埋め込み可能部分822を含む。埋め込み可能部分822は、神経標的を能動的に刺激するための信号発生デバイス828も含む。いくつかの態様では、微小電極アレイ826の1つまたは複数の微小電極はそれぞれ、専用の信号発生デバイス828と連通している。各刺激信号を、ピーク抵抗周波数に基づいて、個々の微小電極-組織界面について最適化された周波数で提供する。埋め込み可能部分822は電池などの電源832を含み得る。いくつかの態様では、埋め込み可能部分822は、体外ユニット824との外部連通用に構成されている遠隔測定および制御モジュール834も含む。そのような特徴を使用して、埋め込み可能部分822を操作するための体外制御を与えることができる。
【0130】
図37を参照すると、いわゆるルーティングモードで構成されている神経標的刺激器840の別の例示的態様の機能ブロック図が示されている。刺激器840は、神経標的に位置決め可能な微小電極アレイ846を含む埋め込み可能部分842を含む。埋め込み可能部分842は、神経標的を能動的に刺激するために1つまたは複数の微小電極846に刺激信号を向けるように構成されている信号ルーティング回路850も含む。この態様では、別個の埋め込み式パルス発生器857より刺激信号を得る。パルス発生器857は、1つまたは複数の信号リードを含む相互接続ケーブル856を通じて埋め込み可能部分842と連通している。埋め込み可能部分842は、1つまたは複数の微小電極846を通じた神経標的の刺激に適したパルス発生器857からの出力信号を調整するように構成されている少なくとも1つの信号調整器848も含む。埋め込み可能部分232は電池などの電源852を一般に含む。いくつかの態様では、埋め込み可能部分842は、体外ユニット844と連通するように構成されていて、埋め込み可能部分842を操作するための制御を与える遠隔測定および制御モジュール854も含む。
【0131】
既存信号のフィルタリング
いくつかの態様では、信号調整器848は、既存の信号を微小電極アレイにルーティングする前にプレフィルタリングもしくは利得調整する(例えば予め増幅および/または減衰させる)かまたは他のやり方で調整する、フィルタリング回路を含む。いくつかの普及しているフィルターの選択肢としては、無限インパルス応答(IIR)フィルターなどのデジタルフィルター、インダクタおよびコンデンサなどの、1つまたは複数の電気部品を使用する電子フィルター、ならびに表面弾性波(SAW)デバイスが挙げられる。周知のフィルター合成技術を通じてフィルターを好適な性能特徴を有するように設計することができる。フィルター合成における制御可能な特徴の一部としては濾波帯域幅、コーナー周波数、通過帯域リップルおよび相対側波帯レベルが挙げられる。そのようなフィルターとしてはバターワースフィルター、チェビシェフ1型および2型フィルターならびに楕円フィルターと呼ばれる分類が挙げられる。特定の実施形態は、アナログであれデジタルであれ、受動であれ能動であれ、ほとんど異ならない。これはどの実施形態からの出力でも所望の出力にやはり一致するためである。
【0132】
図39は、神経微小電極標的刺激器814が示される別の態様の機能ブロック図である。刺激器814は、対象となる神経標的に位置決め可能な微小電極アレイ815を含む。刺激器814はまた、電気インピーダンスを測定するように構成されているインピーダンス分析器816と、好適周波数検出器817と、神経標的を電気的に刺激するための刺激器818とを含む。
【0133】
インピーダンス分析器816は、電気インピーダンスを測定するための各種の公知の技術のいずれかを使用することができる。一般に、インピーダンス分析器816は、公知のまたは測定可能な性質を有する試験電気信号を微小電極-組織界面に与える。そのような性質としては電圧源の電圧レベルまたは電流源の電流レベルが挙げられる。場合によっては、試験電圧または電流は、微小電極-組織界面に印加される際に、微小電極-組織界面の物性に従って感知電流または感知電圧を誘導する。インピーダンス分析器816は、試験信号対感知信号の比を形成することで、オームの法則Z=V/Iに従ってインピーダンス値を与えることができる。微小電極-組織インピーダンスZは複合量であるため、試験電気信号および感知電気信号をそれぞれ絶対値と位相との両方を有するものとして同定する。
【0134】
操作中に、インピーダンス分析器は、少なくとも1つの微小電極815を取り囲む微小電極-組織界面の複合インピーダンスを測定する。インピーダンス分析器は、印加試験電気信号の周波数を変動させることで、複数の異なる周波数において測定を繰り返す。好ましくは、複数の周波数は、生物学的に関連性のある周波数を含む周波数範囲に及ぶ。好適周波数検出器817は、純抵抗に最も近い測定インピーダンスを同定する。ゼロに最も近い位相値を有するインピーダンス測定値を同定することで、そのような決定を達成することができる。例えば、最小絶対値相(すなわちMIN|∠Z|)を有する測定インピーダンスを同定することができる。最小リアクタンス(すなわちMIN(Im{Z}))を有するインピーダンス測定値を同定することで、そのような決定を達成することもできる。インピーダンスが純抵抗に最も近いと決定される周波数を好ましい刺激周波数として同定する。次に、刺激器818を調整することで、好適刺激周波数またはその近傍における周波数または周波数帯域において刺激信号を与える。次に刺激信号を微小電極アレイ815に印加する。
【0135】
上記態様に示される例示的なオンボードASICの電子回路の模式図を図40に示す。いくつかの皮質深さプローブの間に一般に広がる8つの刺激電極要素968a〜968h(総称して968)が、模式図の右手部分に沿って示される。これらの要素968の各1つは、電子デバイス接点974a〜974dおよび974m〜974p(総称して974)それぞれと電気連通している。8つの記録電極要素969a〜969h(総称して969)も、模式図の右手部分に沿って示される。同様に、記録接点がいくつかの皮質深さ電極の間に広がる。同様に、各記録電極要素970は、各電子デバイス接点974e〜974hおよび974j〜974lと電気連通している。例示目的で、模式図は代表的な電子デバイス980を含む。簡潔さのために、模式図は8つの記録接点および8つの刺激接点のみを含むが、多くのさらなる接点の完全模式図も同様である。追加的にまたは代替として、いくつかの態様は記録電極のみを含む。追加的にまたは代替として、いくつかの態様は刺激電極のみを含む。電子デバイスは、スイッチまたはルータ、前置増幅器、信号調整器、マルチプレクサおよびコントローラの1つまたは複数を含み得る。電子デバイス980は、電子デバイス接点要素974a〜974pの全16個と電気連通している。
【0136】
電子デバイス980は、例示的なリボンケーブル係留に包埋されたワイヤリード接点976a〜976d(総称して976)とさらに連通している。図示される例では、第1のワイヤリード接点976aは、マイクロ電子デバイスおよび/または1つもしくは複数の刺激電極要素968に電力を供給するために使用される。第2のワイヤリード接点976bは、電気接地接点を設けるために使用される。この接地接点976bは、アース接地、電子デバイス980に接続される医療機器のシャシ接地などのシステム内の別の電気接地、または単に信号の戻り線を含み得る。第3のワイヤリード接点976cは、電子デバイス980の構成および/または動作を制御する、操作者または他の医療機器からの制御入力を与えるために使用可能な制御信号に対応している。代替としてまたは追加的に、制御信号接点976cは、電子デバイス980から別の医療機器への制御信号用に使用することができる。第4のワイヤリード接点976dは、1つまたは複数の記録電極要素969により検出される電気活動を記録装置または表示装置に向けるために使用可能な信号接点に対応している。代替としてまたは追加的に、信号接点976dは、別の医療機器からの電気刺激信号を1つまたは複数の刺激電極要素968に向けるために使用することができる。
【0137】
微小電極アセンブリ920の例示的態様の上面図を図41Aに示す。アセンブリ920は、細長いプローブ基材924の遠位端に沿って位置決めされる微小電極922のアレイを含む。第1の電子機器アセンブリ928は細長いプローブ基材924の近位端に位置決めされる。第1の電子機器アセンブリ928は、マイクロプロセッサなどの1つまたは複数の集積回路要素921と、1つまたは複数の別個の電子部品932とを含み得る。第1の電子機器アセンブリ928は、細長いプローブ基材924に沿って延びる各トレース926を通じて各微小電極922に相互接続している。本明細書に記載の埋め込み式神経刺激器の1つまたは複数の機能を実装するように電子機器アセンブリ928を構成することができる。いくつかの態様では、細長いプローブ基材は電子機器アセンブリ928の少なくとも一部も含む。
【0138】
いくつかの態様では、第1の電子回路928はケーブル924を通じて埋め込みパルス発生器(図示せず)に接続される。いくつかの態様では、図示するように、第2の電子機器アセンブリ(または第1の電子機器アセンブリの一部)は遠隔測定アンテナなどの遠隔測定回路939を含む。例示的態様では、電子回路928、938の少なくとも一部は微小電極922に隣接して位置決めされ、例えば細長いプローブ基材924により連結される。
【0139】
機械部品および関連組み立てプロセスは、気密性および生体適合性の様式でアセンブリ920を収納するために役立つ。それらは、既存の埋め込み式パルス発生器または体外制御ユニットに対する接続も可能にし得る。体外ユニットは、電力、プログラミング能力、および情報検索を与えることができる。いくつかの態様では、現在利用可能な外部蝸牛刺激システムと非常に似た様式で、アセンブリ920を埋め込むことができる。埋め込み式パルス発生器を含む態様では、それは情報を収集し、かつ電気ユニットをプログラムして埋め込み式パルス発生器より微小電極アレイ922に信号をルーティングするために役立つ。
【0140】
本デバイスは、微細加工部品、電子部品および機械部品を包含することで、非常に局在化しかつ効率的な刺激を与える。微細加工部品は微小電極アレイからなる。このアレイはポリイミド、ポリウレタン、パリレンまたはポリシロキサン(シリコーン)などのポリマー材料で実現することができ、白金、白金-イリジウム、イリジウム、酸化イリジウムまたはチタンなどの大きい電荷輸送能力を有する金属または金属酸化物の薄膜層またはめっき層を含む。ポリマー層および金属層は、スピンコーティング、DC/RFスパッタリング、フォトリソグラフィー、プラズマエッチング、および二酸化ケイ素または感光性レジストなどの二次材料または犠牲材料からなるマスクによるエッチングなどの微細加工の確立された原理を使用して順次堆積させ、成形することができる。金属層を成形することで、微小電極アレイ、ならびにアレイを電子機器およびハウジングに接続するトレースを作り出すことができる。ポリマー層は、複数のトレースを互いに隔離するが、移植片の刺激/記録チップの構造も提供するよう機能する。そのような微細加工部品を構築する記載可能ないくつかの製作方法が存在する。
【0141】
本デバイスの電子部品または超小型電子部品は以下を可能にする: (i) 電気インピーダンス分光法を使用して個々の微小電極部位についてピーク抵抗周波数を同定する能力; (ii) 各微小電極の特徴的ピーク抵抗周波数において刺激すること(これは信号ひずみの最小化および組織に対する電荷移動の最大化を保証する); ならびに(iii) 微小電極アレイによるニューロン活動の刺激および調節、ならびにどの微小電極部位で刺激するかを選択する能力。
【0142】
別個の部品、集積回路技術、デジタル信号処理(DSP)、または3つすべての組み合わせを使用して、電子機器を実装することができる。電子機器を1つのユニットに包含させることができ、または既存の埋め込み式パルス発生器(IPG)との組み合わせで使用することもできる。電子機器は、IPGから微小電極アレイへの信号を適切に調整またはルーティングする遠隔測定プログラミングインターフェースを含み得る。
【0143】
図41Bを参照すると、微小電極構造の例示的代替態様の側面図が示されている。この態様では、微小電極アレイ952より離れて電子機器アセンブリ956が位置決めされる。相互接続電気リード954の配置を通じて微小電極アレイ952が電子機器アセンブリ956に連結される。本明細書に記載の埋め込み式神経刺激器の1つまたは複数の機能を実現するように電子機器アセンブリ956を構成することができる。図示するように、電子機器アセンブリ956を相互接続ケーブル960を通じて埋め込みパルス発生器(図示せず)に接続することもできる。代替としてまたは追加的に、電子機器アセンブリ956は外部遠隔測定デバイス962との連通用の遠隔測定回路を含み得る。
【0144】
電子機器アセンブリは地電位958に対する相互接続用の電気接地リードを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかにおいて、2つ以上の微小電極(例えば隣接する微小電極)の間でインピーダンス測定および/または刺激を実現することができる。代替としてまたは追加的に、1つまたは複数の微小電極と電気接地基準との間でインピーダンス測定および/または刺激を実現することができる。
【0145】
電子機器を含まないようにデバイスを組み立てることができることに留意されたい。そこでこのデバイスは、埋め込み式パルス発生器からの信号を電極に直接移動させる。電子機器を有するデバイスは最初に信号を「プレフィルタリング」した後、電子機器に印加する。この「プレフィルタリング」は、ある種の信号スペクトルを実現するための信号フィルタリング、多重化、およびパルス発生器からの信号を選択微小電極部位に向けるためのルーティングの形態を取る可能性がある。以降の図面は異なる部品および態様を示す。
【0146】
皮質深さプローブの態様
四極管配置を含む微小電極アレイ要素構成の様々な例示的態様を図42A〜42Dに図示する。図42Aを参照すると、微小電極アレイ要素1000は刺激電極1002および4つの記録電極1004を含む。例示的態様では、刺激電極1002は円板形であるが、多角形、長円形、および不規則形状などの他の形状も想定される。この態様では、記録電極1004は、刺激電極1002よりも実質的に小さく、刺激電極1002の外周囲内に位置決めされる。この配置を収容するために、刺激電極は各開口区域1006を含み、これは各記録電極につき1つである。例示的態様では、記録電極1004は均一に隔てられており、隣接する対の間に約90°の角度分離を有する。
【0147】
一般に、開口区域1006は任意の形状を有してもよく、形状は、その中に位置決めされ得る任意の記録電極1004の形状と同一である必要はない。例示的態様では、開口区域1006は、円板形の記録電極1004と同様の形状、すなわち円形を有する。開口部は記録電極1004よりも大きく寸法決めされており、したがって、刺激電極1002に接することなく記録電極を開口区域1006内に設置することができる。2つの電極1002、1004間には環状の分離領域が存在する。記録電極1004はそれぞれ、互いに同様に形作られかつ/または同様にサイズ決定することができる。それらは刺激電極1002と同様の形状を有してもよく、または異なる形状を有してもよい。いくつかの態様では、記録電極1004の少なくともいくつかは互いに異なる形状および/または異なるサイズを有する。
【0148】
例示的態様では、4つの円板電極1004がより大きい刺激電極1002内に包埋される。記録電極1004はそれぞれ、約50μmの各直径、および約150μmのそれらの最近接電極に対する相対分離を有する。刺激電極は300μmの直径を有する。いくつかの態様では、各記録電極の直径は約2μm以下〜約300μm以上の範囲であり得る。いくつかの態様では、刺激電極の直径は約5μm以下〜約1,000μm以上の範囲であり得る。
【0149】
図42Bを参照すると、微小電極アレイ要素1010の代替態様は、刺激電極1012を非閉鎖状円板として示す。一般に、刺激電極1012の外周囲には環状のアークが続き、陥凹は、周囲から電極1012の中心に向けて内方に延伸する開口区域1016を画定する。特に、4つのそのような開口区域1016またはスロットはそれぞれ、各記録電極1014を収容する。記録電極1014は、刺激電極1012の中心に最も近い開口区域1016の内端に向けて位置決めされる。少なくともいくつかの態様では、記録電極1014は開口区域1016の周囲から隔てられており、したがって記録電極1014は刺激電極1012に接しない。いくつかの態様では、電界が非常に局在化するのを防ぐために、刺激電極1012の周囲は一般に丸みを帯び、急峻な角を有さない。記録電極が4つの態様が示されているが、各開口区域1016内に位置決めされる1つまたは複数の記録電極を含む他の態様が可能である。刺激電極および記録電極のそれぞれについて環状の形状が図示されているが、異なる形状を使用することができる。形状は楕円、多角形などの規則形状、および不規則形状であり得る。
【0150】
図42Cを参照すると、2つの四極管1024aおよび1024bが同一の刺激電極1022内に包埋されている以外は先に記載の態様と同様の微小電極アレイ要素1020の態様が図示されている。2つの四極管1024a、1024bは、神経活動に対する異なる感受性を有する異なる体積、サイズの組織からの神経活動を記録することができる。「内側四極管」1024bは、「外側四極管」1024aと同一のまたは異なる微小電極直径を有し得る。図面は、50μm円板を有する「内側四極管」および60μm円板を有する「外側四極管」を示す。四極管要素の他の形状、サイズおよび数が可能である。
【0151】
図42Dに図示する別の微小電極要素の態様1030を参照すると、四極管1034は刺激電極1032にごくわずかに包埋されている。図示するように、開口区域1036の最も内側の部分は、記録要素1034の直径未満の距離で、刺激電極1032の外周囲より隔てられている。そのような構成は、記録される組織の感受性および体積の調整および最適化を可能にする。
【0152】
神経刺激デバイスおよび技術の各種態様を本明細書で説明した。これらの態様は例として示され、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。さらに、説明した態様の様々な特徴を様々な方法で組み合わせて数多くのさらなる態様を生成することができるということを認識すべきである。
【0153】
微小電極アレイ要素1000、1010、1020、1030の任意の1つまたは複数を、細長い平面状部材、すなわち皮質深さプローブの上に位置決めして、神経表面プローブの1つの部品である微小電極アレイ膜を形成することができる。先に記載の神経表面プローブは少なくとも1つの皮質深さプローブで構成された。大部分の態様では、皮質深さプローブは神経表面プローブの平面状表面から突出する。皮質深さプローブの以下の態様、すなわち図43A〜43Jをそれぞれ、本明細書において提示される神経表面プローブの態様において使用および実現することができることが理解されよう。
【0154】
一連の例示的な皮質深さプローブを図43A〜図43Jに示す。例示的な皮質深さプローブ1040を図43Aに示す。皮質深さプローブ1040は4つの微小電極要素1045を含む。各微小電極要素1045を刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。本態様では、微小電極要素1045は300umの直径で実装され、1mm隔てられている。例示的態様では、微小電極要素1045は円板状であり、皮質領域内で直線の深さを幅広くカバーするように互いに隔てられている。
【0155】
一連の例示的な皮質深さプローブを図43A〜図43Jに示す。例示的な皮質深さプローブ1040を図43Aに示す。皮質深さプローブ1040は4つの微小電極要素1045を含む。各微小電極要素1045を刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。本態様では、微小電極要素1045は300μmの直径で実装され、1mm隔てられている。例示的態様では、微小電極要素1045は円板状であり、皮質領域内で直線の深さを幅広くカバーするように互いに隔てられている。
【0156】
さらなる皮質深さプローブ1050を図43Bに示す。皮質深さプローブ1050は3つの微小電極要素1055を含む。各微小電極要素1055を刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。本態様では、微小電極要素1055は400μmの直径で実装され、1.5mm隔てられている。例示的態様では、微小電極要素1055は円板状であり、皮質領域内で直線の深さを幅広くカバーするように互いに隔てられている。
【0157】
さらなる皮質深さプローブ1060を図43Cに示す。皮質深さプローブ1060は、2つの小直径微小電極要素1065および2つの大直径微小電極要素1066を含む。各微小電極要素1065および1066を刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。しかし、本態様では、直径がより小さく、より多くの単一単位の細胞活動を捕捉可能であるため、小直径微小電極要素1065を記録電極として使用することが好ましいことがある。さらに、直径がより大きく、神経組織により多くの電荷を移動させて刺激の有効性を増加させることができるため、大直径微小電極要素1066を刺激電極として使用することが好ましいことがある。本態様では、小直径微小電極要素1065は300μmの直径で実装され、大直径微小電極要素1066は700μmの直径で実装される。微小電極要素1065および1066は1.2mm隔てられている。例示的態様では、微小電極要素1065および1066は円板状であり、皮質領域内で直線の深さを幅広くカバーするように互いに隔てられている。
【0158】
皮質深さプローブ1070の別の代替態様を図43Dに示す。この態様では、各皮質深さプローブ1070は少なくとも1つの細長い微小電極要素1075を含む。各細長い微小電極要素1075を刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。例示的態様では、細長い微小電極要素1075は角が丸みを帯びた長方形であり、皮質領域内で直線の深さを幅広くカバーするように互いに隔てられている。
【0159】
皮質深さプローブ1080の別の代替態様を図43Eに示す。この態様では、各皮質深さプローブ1080は少なくとも1つの細長い微小電極要素1085および1つの円板状の微小要素1086を含む。各微小電極要素1085および1086を刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。しかし、本態様では、直径がより小さく、より多くの単一単位の細胞活動を捕捉可能であるため、円板状の微小電極要素1085を記録電極として使用することが好ましいことがある。さらに、直径がより大きく、神経組織により多くの電荷を移動させて刺激の有効性を増加させることができるため、細長い微小電極要素1086を刺激電極として使用することが好ましいことがある。例示的態様では、微小電極要素1085および1086は、皮質領域内で直線の深さを幅広くカバーするように互いに隔てられている。
【0160】
例示的な皮質深さプローブ1090を図43Fに示す。皮質深さプローブ1090は4つの微小電極要素1095を含む。各微小電極要素1095は、各刺激電極1092、および記録電極1094の四極管配置を含む。図示される態様では、円板状の四極管要素1094が円板状の刺激電極1092の外周囲に沿って配設され、四極管要素1094が刺激電極1092の外周囲より隔てられるようにする。
【0161】
皮質深さプローブ1100の別の代替態様を図43Gに示す。この態様では、各皮質深さプローブ1100は4つの微小電極要素1105を含む。各微小電極要素1105は、各刺激電極1102および記録電極1104の四極管配置を含む。図示される態様では、円板状の四極管要素1104が環状の刺激電極1102の開口内側領域内に配設され、四極管要素1104が刺激電極1102の環状の内周囲より隔てられるようにする。
【0162】
皮質深さプローブ1110の別の代替態様を図43Hに示す。この態様では、各皮質深さプローブ1110は4つの微小電極要素1115を含む。各微小電極要素1115を刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。例示的態様では、微小電極要素1115は長方形であり、皮質領域内で直線の深さを幅広くカバーするように互いに隔てられている。
【0163】
皮質深さプローブ1120の別の代替態様を図43Iに示す。この態様では、各皮質深さプローブ1120は少なくとも1つの微小電極要素群1125を含む。本態様では、4つの微小電極要素群1125がある。各微小電極要素群1125は、少なくとも1つの長方形の微小電極部分要素1122で構成される。本態様では、各微小電極要素群1125には4つの長方形の微小電極部分要素1122がある。いくつかの態様では、4つの長方形の微小電極部分要素1122はいずれも電気的に接続されており、エッジ効果を利用してより効率的な神経刺激を行う。いくつかの態様では、4つの長方形の微小電極部分要素1122は電気的に接続されておらず、独立して刺激を行う。集合的なまたは個々の微小電極部分要素1122に加えて、微小電極要素群1125を、刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。例示的態様では、微小電極要素群1125は、微小電極部分要素1122の長方形の群であり、皮質領域内で直線の深さを幅広くカバーするように互いに隔てられている。
【0164】
皮質深さプローブ1130の別の代替態様を図43Jに示す。この態様では、各皮質深さプローブ1130は、少なくとも1つの段階的微小電極要素群1135を含む。各段階的微小電極要素群1135は、まとめて1132と呼ぶ少なくとも1つの長方形の微小電極部分要素で構成される。本態様では、各段階的微小電極要素群1135には、5つの長方形の微小電極部分要素1132がある。長方形の微小電極部分要素1132は、段階的微小電極要素群1135の中心に向かって幅および間隔が減少する。行われる電気刺激は、例えばこのようにして、有利かつ安全な電気化学的限界を維持しながら、そのような群の中心に電流を集中させることができる。例えば、微小電極部分要素1132aは幅300μmであり、微小電極部分要素1132bは幅100μmであり、微小電極部分要素1132cは幅50μmである。いくつかの態様では、長方形の微小電極部分要素1132はいずれも電気的に接続されており、エッジ効果を利用してより効率的な神経刺激を行う。いくつかの態様では、長方形の微小電極部分要素1132は電気的に接続されておらず、独立して刺激を行う。集合的なまたは個々の微小電極部分要素1132に加えて、段階的微小電極要素群1135を、刺激電極もしくは記録電極、または併用型刺激-記録電極として使用することができる。例示的態様では、微小電極部分要素1132の2つの段階的微小電極要素群1135が存在するが、より多くを実現することができると理解されよう。
【0165】
実際には、操作者は、図43A〜図43Jに示す微小電極要素が検出する電気活性に従って神経標的(例えば脳)のある種の領域を同定するように構成されている記録ユニットに、神経表面プローブ101を接続することができる。いくつかの態様では、神経標的からの記録に使用する微小電極要素は、記録と刺激との両方が達成される用途において標的の刺激に使用するものと同一の微小電極であり得る。代替としてまたは追加的に、神経標的からの記録に使用する微小電極要素は、標的の刺激に使用するものとは別の微小電極要素であり得る。これは、各皮質深さプローブが1つまたは複数の記録電極および1つまたは複数の刺激電極を含む態様において示される。図示するように、専用の記録電極は専用の刺激電極よりも小さい。いくつかの態様では、記録用の微小電極は、例えば異なる微小電極を使用する刺激用の微小電極とはサイズ、形状、数、および配置の1つまたは複数が異なってもよい。
【0166】
結論
微細加工皮質神経調節デバイスの各種態様を本明細書で説明した。これらの態様は例として示され、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。さらに、説明した態様の様々な特徴を様々な方法で組み合わせて数多くのさらなる態様を生成することができるということを認識すべきである。さらに、各種の材料、寸法、形状、埋め込み位置などを、開示された態様での使用について説明したが、開示されたそれら以外の他のものを、本開示の範囲を逸脱することなく利用することができる。
【0167】
本明細書に記載のいくつかのデバイスを経皮的または恒久的のいずれかとして同定したが、そのような経皮的デバイスを恒久的に使用し、長期間、さらには無期限に埋め込むことができると理解される。同様に、本明細書において恒久的であると記載される任意のデバイスについて、そのようなデバイスを経皮的に使用することもできると理解される。
【0168】
本明細書において定義および使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み入れられる文献における定義、および/または定義される用語の通常の意味に優越すると理解すべきである。
【0169】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「ある(a)」および「ある(an)」は、明らかにそれに反する指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0170】
本明細書および特許請求の範囲において使用される語句「および/または」は、そのように等位接続される要素、すなわち、いくつかの場合では連言的に存在し、他の場合では選言的に存在する要素の「一方または両方」を意味すると理解すべきである。「および/または」と共に列挙される複数の要素は、同じように、すなわち、そのように等位接続される要素の「1つまたは複数」と解釈すべきである。「および/または」節により具体的に同定される要素以外の他の要素は、その具体的に同定される要素に関連するものであれ関連しないものであれ、存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの非限定的用語との組み合わせで使用される場合、一態様ではAのみ(B以外の要素を任意で含む)、別の態様ではBのみ(A以外の要素を任意で含む)、さらに別の態様ではAとBとの両方(他の要素を任意で含む)を意味し得る。
【0171】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「または」は、上記定義の「および/または」と同一の意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、ある数またはリストの要素および任意でさらなる列挙されない項目の少なくとも1つを含むだけでなく2つ以上も含むと解釈すべきである。明らかにそれに反する指示を行う用語、例えば「1つのみ」もしくは「まさに1つ」、または特許請求の範囲において使用される「からなる」のみが、ある数またはリストの要素のうちまさに1つの要素の包含を意味する。一般に、本明細書において使用する「または」という用語は、「いずれか」、「1つ」、「1つのみ」または「まさに1つ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち「一方または他方だが両方ではない」)のみを示すと解釈するものとする。特許請求の範囲において使用される「から本質的になる」は、特許法の分野において使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0172】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、1つまたは複数の要素のリストに関する語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内の任意の1つまたは複数の要素より選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙されるすべての要素のうちの少なくとも1つであることを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解すべきである。また、この定義によって、語句「少なくとも1つ」が意味する要素のリスト内で具体的に同定される要素以外の要素が、その具体的に同定される要素に関連するものであれ関連しないものであれ、存在してもよいことになる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一態様では、2つ以上のAを任意で含む少なくとも1つのAであって、Bが存在しないこと(B以外の要素を任意で含む)、別の態様では、2つ以上のBを任意で含む少なくとも1つのBであって、Aが存在しないこと(A以外の要素を任意で含む)、さらに別の態様では、2つ以上のAを任意で含む少なくとも1つのA、および2つ以上のBを任意で含む少なくとも1つのB(他の要素を任意で含む)を意味し得る。
【0173】
特許請求の範囲および上記明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「構成される」などのすべての移行句は、非限定的である、すなわち、「含むがそれに限定されない」ことを意味すると理解すべきである。米国特許庁特許審査便覧第2111.03節に記載のように、移行句「からなる」および「から本質的になる」のみを、それぞれ限定的または半限定的な移行句とする。
【0174】
本開示を各種態様を参照して特に示しかつ説明したが、添付の特許請求の範囲により包含される本開示の範囲より逸脱することなく形態および詳細の様々な変更を本開示において行うことができるということを、当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持バッキング層;
支持バッキング層の表面から延びる少なくとも1つの突起; および
少なくとも1つの突起に沿って配置された少なくとも1つの微小電極要素
を含む、埋め込み式神経プローブ。
【請求項2】
支持バッキング層の少なくとも1つの表面の少なくとも一部および少なくとも1つの突起に沿って配設された微小電極層であって、少なくとも1つの微小電極要素がその上に形成された、微小電極層
をさらに含む、請求項1記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項3】
支持バッキング層の可撓性を促進する少なくとも1つの特徴を含む、請求項2記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項4】
少なくとも1つの特徴が、好ましい方向に可撓性を促進する開口部を含む、請求項3記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項5】
少なくとも1つの突起の長さが約4mm以下である、前記請求項のいずれか一項記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項6】
複数の微小電極要素を含む埋め込み式神経プローブであって、複数の微小電極要素のうち少なくとも1つが、複数の微小電極要素のうちの別の微小電極要素と実質的に異なって形作られる、前記請求項のいずれか一項記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項7】
複数の微小電極要素を含む埋め込み式神経プローブであって、複数の微小電極要素のうち少なくとも1つが刺激電極であり、かつ複数の微小電極要素のうち少なくとも1つが検出電極である、前記請求項のいずれか一項記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項8】
少なくとも1つの刺激電極が少なくとも1つの検出電極と実質的に異なって形作られる、請求項7記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項9】
刺激電極および検出電極の少なくとも1つが複数の導電性部分要素を含む、請求項8記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項10】
刺激電極および検出電極の少なくとも1つが導電性部分要素の四極管配置を含む、請求項9記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項11】
少なくとも1つの微小電極要素が微小電気機械システム(MEMS)として構成されている、前記請求項のいずれか一項記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項12】
少なくとも1つの微小電極要素と電気的に連通した少なくとも1つの電子回路要素をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項13】
少なくとも1つの電子回路要素が、スイッチ、ルータ、増幅器、コントローラ、マイクロプロセッサ、メモリ、マルチプレクサ、フィルター、減衰器、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、ダイオード、トランジスタ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項14】
支持バッキング層が半剛性である、請求項1〜13のいずれか一項記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項15】
支持バッキング層が医療用ステンレス鋼を含む、請求項14記載の埋め込み式神経プローブ。
【請求項16】
支持バッキング層と、支持バッキング層の表面から延びる少なくとも1つの突起と、少なくとも1つの突起に沿って配置された少なくとも1つの微小電極要素とを含む神経プローブを、神経標的部位の近傍内に埋め込む段階;
供給される電気信号により少なくとも1つの微小電極要素を通電する段階であって、少なくとも1つの微小電極要素が、神経標的部位を刺激するように適応した電界を生成する、段階
を含む、神経標的を刺激するための方法。
【請求項17】
埋め込む行為が、
脳の表面に沿って支持バッキング層の表面を位置決めする段階、
少なくとも1つの微小電極要素が、脳の表面から測定される深さに配置されるように、少なくとも1つの突起を脳の表面に挿入する段階
を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
神経プローブを位置決めおよび挿入する行為が、
少なくとも1つの微小電極要素により検出される神経活動を記録する段階、および
神経プローブが神経標的部位に十分に位置づけられていることを記録された活動が示すまで、必要に応じて神経プローブを再位置決めする段階
を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
供給される電気信号が埋め込みパルス発生器より得られる、請求項16、17または18記載の方法。
【請求項20】
支持バッキング層;
それぞれ一端で支持バッキング層に取り付けられかつ支持バッキング層の表面から延びる、複数の突起;
支持バッキング層の少なくとも一部に沿って配設された微小電極膜;
微小電極膜上に配設されかつ複数の突起のそれぞれに沿って配置された、複数の微小電極要素であって、支持バッキング層の表面から測定される各深さにそれぞれ配設された微小電極要素
を含む、埋め込み式神経表面プローブ。
【請求項21】
複数の微小電極要素の少なくともいくつかと電気的に連通した電子回路をさらに含む、請求項20記載の埋め込み式神経表面プローブ。
【請求項22】
支持バッキング層を形作る段階;
それぞれ一端に先端を有しかつ他端で取り付けられた複数の剛性バッキング部材を、支持バッキング層内に画定する段階;
各剛性バッキング部材を支持バッキング層の表面から折り曲げることにより、複数の突起を形成する段階;
複数の微小電極要素を微小電極膜上に形成する段階;
複数の微小電極要素の各部分集合が複数の突起のそれぞれに沿って配置されるように、微小電極膜を支持バッキング層の表面の少なくとも一部に沿って固着する段階であって、各それぞれの部分集合の各微小電極要素が、支持バッキング層の表面から測定される各深さに配設される、段階
を含む、埋め込み式神経表面プローブを作製する方法。
【請求項23】
支持バッキング層を形作る段階が、レーザー切断、ウォータージェット切断、感光性マスクを使用する化学エッチングの1つまたは複数を含む、請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35A】
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【図35B】
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【図35C】
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【図35D】
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【図35E】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公表番号】特表2013−512062(P2013−512062A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541491(P2012−541491)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068658
【国際公開番号】WO2011/067297
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512145538)
【Fターム(参考)】