微細化黒鉛粒子、それを含有する黒鉛粒子分散液、および微細化黒鉛粒子の製造方法
【課題】溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能であり、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた特性を有する微細化黒鉛粒子を提供すること。
【解決手段】板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備えることを特徴とする微細化黒鉛粒子。
【解決手段】板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備えることを特徴とする微細化黒鉛粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細化黒鉛粒子、それを含有する黒鉛粒子分散液、およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛粒子は、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、熱伝導性、導電性に優れ、潤滑性を有し、軽量であるなど、様々な優れた特性を有するものであり、各種分野においては黒鉛粒子を樹脂中に分散させて樹脂成形品などにこれらの特性を付与している。しかしながら、黒鉛粒子は凝集しやすく、樹脂や溶媒との親和性も低いため、樹脂中や溶媒中には凝集した状態で分散される。このように凝集した状態の黒鉛粒子を樹脂中や溶媒中に分散させると前記特性が十分に発現しない傾向があった。
【0003】
このため、従来から、樹脂中や溶媒中に黒鉛粒子を高度に分散させるために、様々な黒鉛粒子の微細化方法が提案されている。例えば、特開平2−204317号公報(特許文献1)には、黒鉛粉を振動ミルを用いて乾式粉砕して微細黒鉛を調製する方法が開示されている。このような機械的処理では、黒鉛粒子は微細化されるものの、グラファイト構造も破壊されるため、得られる微細化黒鉛粒子の導電性、熱伝導性、機械的強度が低下するという問題があった。
【0004】
特開2005−53773号公報(特許文献2)には、黒鉛を酸化して薄膜状の酸化黒鉛粒子を調製する方法が開示されている。また、特開2009−242209号公報(特許文献3)には、グラファイトに酸化処理を施して得られる表面酸化グラファイトの表面のカチオンとカチオン性有機化合物とをイオン交換してグラファイトを有機化する方法が開示されている。これらの方法によれば、樹脂中や溶媒中に高度に分散させることが可能な酸化黒鉛粒子を得ることができ、このような酸化黒鉛粒子を樹脂中に分散させることによって樹脂などに黒鉛の特性を付与することが可能となる。
【0005】
しかしながら、酸化により微細化された黒鉛粒子の特性は、原料として用いた黒鉛粒子の特性に比べて低下する傾向にあり、このような微細化黒鉛粒子には、黒鉛本来の特性を十分に発現させるという点で、未だ改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−204317号公報
【特許文献2】特開2005−53773号公報
【特許文献3】特開2009−242209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能であり、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた特性を有する微細化黒鉛粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、黒鉛粒子、特定の芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物を混合して粉砕処理を施すことによって、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることができ、しかも分散安定性に優れており、さらに、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた導電性を示す微細化黒鉛粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、前記芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入することによって、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の分散安定性がさらに向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の微細化黒鉛粒子は、板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備えることを特徴とするものである。また、本発明の黒鉛粒子分散液は、溶媒と、この溶媒中に分散された本発明の微細化黒鉛粒子とを含有するものである。
【0010】
このような微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液において、前記芳香族ビニル共重合体としては、前記ビニル芳香族モノマー単位と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピリジン類、無水マレイン酸およびマレイミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される他のモノマー単位とを備えるものが好ましい。また、前記芳香族ビニル共重合体はブロック共重合体であることが好ましい。
【0011】
本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液において、板状黒鉛粒子としては厚さが0.3〜1000nmのものが好ましい。また、板状黒鉛粒子の表面近傍の全炭素原子の50%以下の炭素原子には、水酸基、カルボキシル基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が結合していることが好ましい。
【0012】
また、本発明の微細化黒鉛粒子は、前記芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに備えていてもよい。このような微細化黒鉛粒子として、前記芳香族ビニル共重合体が官能基を有するものであり、且つ、前記炭化水素鎖は、芳香族ビニル共重合体の官能基と反応する部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種が前記官能基と結合することにより形成されたものであることが好ましい。前記官能基としてはアミノ基が好ましく、前記官能基と反応する部位としては塩素原子、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0013】
本発明の黒鉛粒子分散液において、前記溶媒が疎水性溶媒である場合、前記微細化黒鉛粒子としては、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素鎖が結合した前記芳香族ビニル共重合体が前記板状黒鉛粒子に吸着しているものが好ましい。
【0014】
本発明の微細化黒鉛粒子の製造方法は、黒鉛粒子、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物、および溶媒を混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物に粉砕処理を施す粉砕工程とを含むものである。
【0015】
前記過酸化水素化物としてはカルボニル基を有する化合物と過酸化水素との錯体が好ましい。また、前記粉砕処理としては超音波処理または湿式粉砕処理が好ましい。
【0016】
また、本発明の微細化黒鉛粒子の製造方法は、前記粉砕工程で得られた微細化黒鉛粒子と、前記官能基と反応する部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種とを混合し、前記芳香族ビニル共重合体に、前記アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種を結合させて、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種を導入する炭化水素鎖導入工程をさらに含んでいてもよい。この場合、前記芳香族ビニル共重合体としては官能基を有するものが好ましい。また、前記官能基としてはアミノ基が好ましく、前記官能基と反応する部位としては塩素原子、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0017】
なお、本発明の微細化黒鉛粒子が分散安定性に優れている理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、黒鉛粒子は、本来、溶媒や樹脂との相互作用が小さく、凝集しやすいものであるため、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることは困難であった。一方、本発明の微細化黒鉛粒子においては、微細化された板状の黒鉛粒子に前記芳香族ビニル共重合体が吸着しているため、板状黒鉛粒子間の凝集力が低下し、溶媒中や樹脂中への分散性が向上すると推察される。さらに、芳香族ビニル共重合体の吸着性が安定しているため、微細化黒鉛粒子の分散安定性も向上すると推察される。
【0018】
また、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入することによって、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の分散安定性がさらに向上する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、板状黒鉛粒子に吸着した芳香族ビニル共重合体に、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種を結合してアルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入することによって、微細化黒鉛粒子の表面がアルキル化されると推察される。表面がアルキル化された微細化黒鉛粒子は、疎水性溶媒に対する親和性が向上するため、疎水性溶媒に対する分散安定性がさらに向上すると推察される。
【0019】
また、本発明の微細化黒鉛粒子が、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた導電性を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の微細化黒鉛粒子においては、グラファイト構造が保持されているため、黒鉛本来の特性がそのまま発現すると推察される。一方、黒鉛粒子を酸化により微細化する場合、黒鉛粒子の表面だけでなく、内部まで酸化することによって十分に微細化することが可能となる。しかしながら、黒鉛粒子を内部まで酸化すると粒子の微細化とともにグラファイト構造の一部が破壊される傾向にある。このため、酸化により微細化された黒鉛粒子においては、グラファイト構造に起因する特性、例えば、導電性、熱伝導性、機械的強度などの黒鉛本来の特性が低下すると推察される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能であり、しかも分散安定性に優れており、さらに、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた導電性を示す微細化黒鉛粒子およびそれを含有する黒鉛粒子分散液を得ることが可能となる。特に、芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を備える微細化黒鉛粒子においては、疎水性溶媒に対する分散安定性をさらに向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)〜(C)は、それぞれ実施例1、比較例2および比較例6で得た黒鉛粒子分散液中の黒鉛粒子の分散状態を示す写真である。
【図2A】実施例4で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2B】実施例5で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2C】実施例6で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2D】比較例5で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2E】比較例6で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2F】比較例7で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2G】比較例8で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図3A】実施例4で得た黒鉛粒子分散液の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3B】実施例5で得た黒鉛粒子分散液から採取した微細化黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3C】実施例6で得た黒鉛粒子分散液から採取した微細化黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3D】原料として使用した黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】スチレンモノマー単位の含有量と24時間静置後の黒鉛粒子分散液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図5】各種芳香族ビニル共重合体を混合した場合における、24時間静置後の黒鉛粒子分散液の吸光度を示すグラフである。
【図6】芳香族ビニル共重合体の添加量と24時間静置後の黒鉛粒子分散液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図7】ウレア−過酸化水素包接錯体の添加量と24時間静置後の黒鉛粒子分散液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図8】実施例11および比較例6で得た黒鉛粒子分散液中の微細化黒鉛粒子のTOF−SIMS測定結果を示すグラフである。
【図9】従来の有機化グラファイト膜における加熱処理温度と電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図10】実施例1で得た微細化黒鉛粒子の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図11】実施例1で得た微細化黒鉛粒子のラマンスペクトルを示すグラフである。
【図12A】実施例1で得た黒鉛粒子分散液をマイカ基板上にキャストして形成した黒鉛粒子塗膜の表面形状を示す走査型プローブ顕微鏡写真である。
【図12B】図12A中の直線で示した部分の断面形状を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
先ず、本発明の微細化黒鉛粒子について説明する。本発明の微細化黒鉛粒子は、板状黒鉛粒子と、この板状黒鉛粒子に吸着した芳香族ビニル共重合体とを備えるものである。また、本発明の微細化黒鉛粒子は、前記芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに備えていてもよい。
【0024】
本発明の微細化黒鉛粒子を構成する板状黒鉛粒子は、特に制限されず、例えば、グラファイト構造を有する公知の黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛(例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛))をグラファイト構造が破壊されないように粉砕することによって得られるものである。
【0025】
このような板状黒鉛粒子の厚さとしては特に制限はないが、0.3〜1000nmが好ましく、0.3〜100nmがより好ましく、1〜100nmが特に好ましい。また、板状黒鉛粒子の平面方向の大きさとしては特に制限はないが、例えば、長軸方向の長さ(長径)としては0.1〜500μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、短軸方向の長さ(短径)としては0.1〜500μmが好ましく、0.3〜100μmがより好ましい。
【0026】
また、本発明にかかる板状黒鉛粒子の表面には、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基が結合(より好ましくは共有結合)していることが好ましい。前記官能基は本発明にかかる芳香族ビニル共重合体との親和性を有するものであり、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、本発明の微細化黒鉛粒子は溶媒中や樹脂中への分散性が高くなる傾向にある。
【0027】
このような官能基は、板状黒鉛粒子の表面近傍(好ましくは、表面から深さ10nmまでの領域)の全炭素原子の50%以下(より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下)の炭素原子に結合していることが好ましい。官能基が結合している炭素原子の割合が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子は、親水性が増大するため、芳香族ビニル共重合体との親和性が低下する傾向にある。また、官能基が結合している炭素原子の割合の下限としては特に制限はないが、0.01%以上が好ましい。なお、水酸基などの前記官能基はX線光電子分光法(XPS)により定量することができ、粒子表面から深さ10nmまでの領域に存在する官能基の量を測定することができる。なお、板状黒鉛粒子の厚さが10nm以下の場合には、板状黒鉛粒子の全領域に存在する官能基の量が測定される。
【0028】
本発明の微細化黒鉛粒子を構成する芳香族ビニル共重合体は、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位と他のモノマー単位とを含有するものである。
【0029】
このような芳香族ビニル共重合体において、前記ビニル芳香族モノマー単位は黒鉛粒子に対する吸着性を示し、他のモノマー単位は溶媒や樹脂および黒鉛粒子表面近傍の官能基との親和性を示す。したがって、このような芳香族ビニル共重合体は、板状黒鉛粒子に吸着して板状黒鉛粒子同士の凝集力を低下させるとともに板状黒鉛粒子に溶媒や樹脂との親和性を付与し、板状黒鉛粒子を溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能となる。
【0030】
また、上述したように、ビニル芳香族モノマー単位は黒鉛粒子に吸着しやすいため、ビニル芳香族モノマー単位の含有率が高い共重合体ほど、板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、本発明の微細化黒鉛粒子は溶媒中や樹脂中への分散性が高くなる傾向にある。ビニル芳香族モノマー単位の含有量としては、芳香族ビニル共重合体全体に対して10〜98質量%が好ましく、30〜98質量%がより好ましく、50〜95質量%が特に好ましい。ビニル芳香族モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が低下し、微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にある。ビニル芳香族モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子に溶媒や樹脂との親和性が付与されず、微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にある。
【0031】
前記式(1)中のXで表される基が有していてもよい置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、水酸基、アミド基、イミノ基、グリシジル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基)、カルボニル基、イミド基、リン酸エステル基などが挙げられ、中でも、微細化黒鉛粒子の分散性が向上するという観点から、メトキシ基などのアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0032】
このようなビニル芳香族モノマー単位としては、例えば、スチレンモノマー単位、ビニルナフタレンモノマー単位、ビニルアントラセンモノマー単位、ビニルピレンモノマー単位、ビニルアニソールモノマー単位、ビニル安息香酸エステルモノマー単位、アセチルスチレンモノマー単位などが挙げられ、中でも、微細化黒鉛粒子の分散性が向上するという観点から、スチレンモノマー単位、ビニルナフタレンモノマー単位、ビニルアニソールモノマー単位が好ましい。
【0033】
本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を構成する他のモノマー単位としては特に制限はないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルイミダゾール類、ビニルピリジン類、無水マレイン酸およびマレイミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導されるモノマー単位が好ましい。このような他のモノマー単位を含む芳香族ビニル共重合体を用いることによって、微細化黒鉛粒子は溶媒や樹脂との親和性が向上し、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能となる。
【0034】
前記(メタ)アクリレート類としては、アルキル(メタ)アクリレート、置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート)などが挙げられる。前記(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0035】
前記ビニルイミダゾール類としては、1−ビニルイミダゾールなどが挙げられる。前記ビニルピリジン類としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどが挙げられる。前記マレイミド類としては、マレイミド、アルキルマレイミド、アリールマレイミドなどが挙げられる。
【0036】
このような他のモノマーのうち、微細化黒鉛粒子の分散性が向上するという観点から、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アリールマレイミドが好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、アリールマレイミドがより好ましく、フェニルマレイミドが特に好ましい。
【0037】
本発明の微細化黒鉛粒子において、前記芳香族ビニル共重合体の数平均分子量としては特に制限はないが、1千〜100万が好ましく、5千〜10万がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の数平均分子量が前記下限未満になると、黒鉛粒子に対する吸着能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶媒への溶解性が低下したり、粘度が著しく上昇して取り扱いが困難になる傾向にある。なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(カラム:Shodex GPC K−805LおよびShodex GPC K−800RL(ともに、昭和電工(株)製)、溶離液:クロロホルム)により測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0038】
また、本発明の微細化黒鉛粒子においては、前記芳香族ビニル共重合体としてランダム共重合体を用いても、ブロック共重合体を用いてもよいが、微細化黒鉛粒子の分散性が向上するという観点から、ブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0039】
本発明の微細化黒鉛粒子において、前記芳香族ビニル共重合体の含有量としては、前記板状黒鉛粒子100質量部に対して10−7〜10−1質量部が好ましく、10−5〜10−2質量部がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の含有量が前記下限未満になると、板状黒鉛粒子への芳香族ビニル共重合体の吸着が不十分なため、微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、板状黒鉛粒子に直接吸着していない芳香族ビニル共重合体が存在する傾向にある。
【0040】
また、本発明の微細化黒鉛粒子は、前記芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに備えるものであってもよい。このような微細化黒鉛粒子は、前記炭化水素鎖によって表面がアルキル化され、疎水性溶媒に対して優れた分散安定性を示す傾向にある。また、このようなアルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖は、前記芳香族ビニル共重合体の側鎖に結合していることが好ましい。これにより、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の親和性がさらに向上する傾向にある。
【0041】
このような微細化黒鉛粒子において、前記アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖としては、官能基を有する芳香族ビニル共重合体と、この官能基と反応する部位(以下、「反応性部位」という)を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンとがそれぞれ反応して、前記アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの反応性部位が前記芳香族ビニル共重合体の官能基に結合することによって形成されたものであることが好ましい。
【0042】
前記官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、水酸基、アミド基、イミノ基、グリシジル基などが挙げられ、前記反応性部位との反応性が高いという観点から、アミノ基が好ましい。また、前記反応性部位としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、カルボキシル基、カルボン酸無水物基(無水マレイン酸基など)、スルホン酸基、アルデヒド基、グリシジル基などが挙げられ、前記官能基との反応性が高いという観点から、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボン酸無水物基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、塩素原子がさらに好ましい。さらに、前記官能基と前記反応性部位との組み合わせとしては、互いの反応性が高くなるという観点から、アミノ基とハロゲン原子の組み合わせ、アミノ基とカルボキシル基またはカルボン酸無水物基の組み合わせが好ましく、アミノ基と塩素原子の組み合わせ、アミノ基と無水マレイン酸基の組み合わせがより好ましく、アミノ基と塩素原子の組み合わせが特に好ましい。
【0043】
前記官能基を有する芳香族ビニル共重合体としては、前記ビニル芳香族モノマー単位および前記他のモノマー単位の少なくとも一方に官能基を有するものが挙げられ、板状黒鉛粒子に対する吸着性が損なわれないという観点から、前記他のモノマー単位が官能基を有する他のモノマー単位であることが好ましく、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖が容易に導入できるという観点から、前記他のモノマー単位が官能基を有する他のビニルモノマー単位であることがより好ましい。
【0044】
前記官能基を有する他のビニルモノマー単位としては特に制限はないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルイミダゾール類およびビニルピリジン類からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するビニルモノマーから誘導される官能基含有ビニルモノマー単位が好ましい。このような官能基を有する他のビニルモノマー単位を含む芳香族ビニル共重合体を用いることによって、芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖を容易に導入することができ、また、得られた微細化黒鉛粒子は溶媒や樹脂との親和性が向上し、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能となる。
【0045】
前記アミノ基を有する他のビニルモノマーとしては、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン類(例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン)、ビニルイミダゾール類(例えば、1−ビニルイミダゾール)などが挙げられる。前記カルボキシル基を有する他のビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。前記カルボン酸エステル基を有する他のビニルモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、前記水酸基を有する他のビニルモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、前記アミド基を有する他のビニルモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0046】
このような官能基を有する他のビニルモノマーのうち、芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖を容易に導入することができるという観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンが好ましく、アミノアルキル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンがより好ましく、2−ビニルピリジンが特に好ましい。
【0047】
このような官能基を有する芳香族ビニル共重合体に結合させる反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンとしては特に制限はないが、分子末端に前記官能基を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィン(以下、それぞれ、「末端官能基含有アルキル化合物」、「末端官能基含有オリゴオレフィン」および「末端官能基含有ポリオレフィン」という)が好ましい。このような末端官能基含有アルキル化合物、末端官能基含有オリゴオレフィンおよび末端官能基含有ポリオレフィンは、前記官能基を有する芳香族ビニル共重合体と反応しやすく、芳香族ビニル共重合体に容易にアルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖を導入することができる。
【0048】
反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンとして、具体的には、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの塩素化物、臭素化物、水酸基含有物、マレイン酸変性物、(メタ)アクリル酸変性物などが挙げられ、中でも、末端塩素化物、末端水酸基含有物が好ましく、末端塩素化物がより好ましい。オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの種類としては特に制限はないが、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖が導入されやすいという観点から、エチレンオリゴマー、ポリエチレン、プロピレンオリゴマー、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(オリゴマーおよびポリマー)が好ましい。
【0049】
このような反応性部位を有するポリオレフィンの数平均分子量としては特に制限はないが、100〜100万が好ましく、1千〜1万がより好ましい。前記ポリオレフィンの数平均分子量が前記下限未満になると、導入されたポリオレフィン鎖が短く、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の親和性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、芳香族ビニル共重合体に結合しにくく、ポリオレフィン鎖が導入されにくい傾向にある。また、同様に、前記反応性部位を有するアルキル化合物の分子量としては特に制限はないが、70〜500が好ましく、前記反応性部位を有するオリゴオレフィンの数平均分子量としては特に制限はないが、100〜5000が好ましい。
【0050】
本発明の黒鉛粒子分散液は、このような微細化黒鉛粒子が溶媒中に高度に分散したものである。本発明の黒鉛粒子分散液に用いられる溶媒としては特に制限はないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサン、トルエン、ジオキサン、プロパノール、γ−ピコリン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)が好ましく、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサン、トルエンがより好ましい。
【0051】
また、本発明の黒鉛粒子分散液において、前記溶媒が疎水性溶媒である場合には、分散安定性がより向上するという観点から、前記微細化黒鉛粒子は前記アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を備えるものであることが好ましい。前記疎水性溶媒としては特に制限はないが、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられ、中でも、前記炭化水素鎖を備える微細化黒鉛粒子がより高度に分散するという観点から、トルエンが好ましい。
【0052】
本発明の黒鉛粒子分散液において、前記微細化黒鉛粒子の濃度としては、溶媒1L当たり0.1〜200g/Lが好ましく、1〜100g/Lがより好ましい。微細化黒鉛粒子の濃度が前記下限未満になると、溶媒の消費量が増大し、経済的に不利となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると微細化黒鉛粒子同士の接触により分散液の粘度が上昇し、流動性が低下する傾向にある。
【0053】
次に、本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法について説明する。本発明の微細化黒鉛粒子の製造方法は、原料の黒鉛粒子、前記式(1)で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物、および溶媒を混合し、得られた混合物に粉砕処理を施し、必要に応じて、得られた微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに導入する方法である。また、この方法によれば、本発明の微細化黒鉛粒子は、溶媒に分散した状態で、すなわち、本発明の黒鉛粒子分散液として得ることができる。
【0054】
本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法に原料として用いられる黒鉛粒子(以下、「原料黒鉛粒子」という)としては、グラファイト構造を有する公知の黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛(例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛))が挙げられ、中でも、粉砕することによって前記範囲の厚さを有する板状黒鉛粒子となるものが好ましい。このような原料黒鉛粒子の粒子径としては特に制限はないが、0.01〜5mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましい。
【0055】
また、原料黒鉛粒子を構成する板状黒鉛粒子の表面には、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基が結合(好ましくは共有結合)していることが好ましい。前記官能基は前記芳香族ビニル共重合体との親和性を有するものであり、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、得られる微細化黒鉛粒子は溶媒中や樹脂中への分散性が高くなる傾向にある。
【0056】
このような官能基は、板状黒鉛粒子の表面近傍(好ましくは、表面から深さ10nmまでの領域)の全炭素原子の50%以下(より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下)の炭素原子に結合していることが好ましい。官能基が結合している炭素原子の割合が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子は、親水性が増大するため、芳香族ビニル共重合体との親和性が低下する傾向にある。また、官能基が結合している炭素原子の割合の下限としては特に制限はないが、0.01%以上が好ましい。
【0057】
また、過酸化水素化物としては、カルボニル基を有する化合物(例えば、ウレア、カルボン酸(安息香酸、サリチル酸など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトンなど)、カルボン酸エステル(安息香酸メチル、サリチル酸エチルなど))と過酸化水素との錯体;四級アンモニウム塩、フッ化カリウム、炭酸ルビジウム、リン酸、尿酸などの化合物に過酸化水素が配位したものなどが挙げられる。このような過酸化水素化物は、本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法において酸化剤として作用し、原料黒鉛粒子のグラファイト構造を破壊せずに、炭素層間の剥離を容易にするものである。すなわち、過酸化水素化物が炭素層間に侵入して層表面を酸化しながら劈開を進行させ、同時に芳香族ビニル共重合体が劈開した炭素層間に侵入して劈開面を安定化させ、層間剥離が促進される。その結果、板状黒鉛粒子の表面に前記芳香族ビニル共重合体が吸着して、微細化黒鉛粒子を溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能となる。
【0058】
本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法に用いられる溶媒としては特に制限はなく、本発明の黒鉛粒子分散液に用いられる溶媒として例示したものを使用することができる。
【0059】
本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法においては、先ず、前記原料黒鉛粒子と前記芳香族ビニル共重合体と前記過酸化水素化物と前記溶媒とを混合する(混合工程)。前記原料黒鉛粒子の混合量としては、溶媒1L当たり0.1〜500g/Lが好ましく、10〜200g/Lがより好ましい。原料黒鉛粒子の混合量が前記下限未満になると、溶媒の消費量が増大し、経済的に不利となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
【0060】
また、前記芳香族ビニル共重合体の混合量としては、前記原料黒鉛粒子100質量部に対して0.1〜1000質量部が好ましく、0.1〜200質量部がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の混合量が前記下限未満になると、得られる微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、芳香族ビニル共重合体が溶媒に溶解しなくなるとともに、液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
【0061】
また、前記過酸化水素化物の混合量としては、前記原料黒鉛粒子100質量部に対して0.1〜500質量部が好ましく、1〜100質量部がより好ましい。前記過酸化水素化物の混合量が前記下限未満になると、得られる微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、原料黒鉛粒子が過剰に酸化され、得られる微細化黒鉛粒子の導電性が低下する傾向にある。
【0062】
次に、前記混合工程で得られた混合物に粉砕処理を施して原料黒鉛粒子を板状黒鉛粒子に粉砕する(粉砕工程)。これにより生成した板状黒鉛粒子の表面に前記芳香族ビニル共重合体が吸着して、溶媒中や樹脂中での分散安定性に優れた微細化黒鉛粒子を含有する黒鉛粒子分散液を得ることができる。
【0063】
本発明にかかる粉砕処理としては、超音波処理(発振周波数としては15〜400kHzが好ましく、出力としては500W以下が好ましい。)、ボールミルによる処理、湿式粉砕、爆砕、機械式粉砕などが挙げられる。これにより、原料黒鉛粒子のグラファイト構造を破壊させずに原料黒鉛粒子を粉砕して板状黒鉛粒子を得ることが可能となる。また、粉砕処理時の温度としては特に制限はなく、例えば、−20〜100℃が挙げられる。また、粉砕処理時間についても特に制限はなく、例えば、0.01〜50時間が挙げられる。
【0064】
また、本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法においては、必要に応じて、前記粉砕工程で得られた微細化黒鉛粒子と、前記反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種とを混合し、微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入する(炭化水素鎖導入工程)。この場合、前記芳香族ビニル共重合体は官能基を有するものである必要があり、この官能基と前記反応性部位とを結合せしめて前記芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入する。
【0065】
この炭化水素鎖導入工程においては、前記粉砕工程で得られた微細化黒鉛粒子と、前記反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種と、溶媒とを混合し、必要に応じて得られた混合物を加熱することによって、官能基を有する芳香族ビニル共重合体と、反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種とを反応させる。溶媒としては特に制限はなく、本発明の黒鉛粒子分散液に用いられる溶媒として例示したものを使用することができる。また、反応温度としては−10〜150℃が好ましく、反応時間としては0.1〜10時間が好ましい。
【0066】
前記微細化黒鉛粒子の混合量としては、溶媒1L当たり1〜200g/Lが好ましく、1〜50g/Lがより好ましい。微細化黒鉛粒子の混合量が前記下限未満になると、溶媒の消費量が増大し、経済的に不利となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
【0067】
また、前記反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの混合量としては、前記微細化黒鉛粒子100質量部に対して0.001〜500質量部が好ましく、10〜500質量部がより好ましい。前記アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの混合量が前記下限未満になると、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖の導入量が少なく、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の分散性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
【0068】
このようにして得られた本発明の微細化黒鉛粒子は、そのまま分散液の状態(本発明の黒鉛粒子分散液の状態)で使用してもよいし、得られた黒鉛粒子分散液にろ過や遠心分離などを施して溶媒を除去して使用してもよい。さらに、得られた微細化黒鉛粒子を溶媒に再分散させて本発明の黒鉛粒子分散液として使用することもできる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(昭和電工(株)製「Shodex GPC101」)を用いて以下の条件で測定した。
<芳香族ビニル共重合体の測定条件>
・カラム:Shodex GPC K−805LおよびShodex GPC K−800RL(ともに、昭和電工(株)製)
・溶離液:クロロホルム
・測定温度:25℃
・サンプル濃度:0.1mg/ml
・検出手段:RI
なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレンで換算した値を示した。
【0070】
(実施例1)
スチレン(ST)0.67g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)1.23g、アゾビスイソブチロニトリル10mgおよびトルエン5mlを混合し、窒素雰囲気下、60℃で6時間重合反応を行なった。放冷後、クロロホルム−エーテルを用いて再沈殿により精製し、1.0gのST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体を得た。このST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の数平均分子量(Mn)は、78000であった。
【0071】
黒鉛粒子(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」、粒子径100〜600μm)20mg、ウレア−過酸化水素包接錯体80mg、前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体20mgおよびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2mlを混合し、室温で5時間超音波処理(出力:250W)を施して黒鉛粒子分散液を得た。
【0072】
(実施例2)
スチレン(ST)の量を1g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1gに変更した以外は実施例1と同様にして1.0gのST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体(Mn=55000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0073】
(実施例3)
スチレン(ST)の量を1.23g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.67gに変更した以外は実施例1と同様にして1.0gのST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体(Mn=67000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0074】
(実施例4)
スチレン(ST)の量を1.6g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.4gに変更した以外は実施例1と同様にして1.2gのST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体(Mn=92000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0075】
(実施例5)
スチレンの代わりに1−ビニルナフタレン(VN)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして0.27gのVN−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=17000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このVN−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0076】
(実施例6)
スチレンの代わりに4−ビニルアニソール(VA)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして0.39gのVA−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=28000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このVA−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0077】
(比較例1)
スチレン(ST)2g、アゾビスイソブチロニトリル10mgおよびトルエン5mlを混合した以外は実施例1と同様にして1.5gのST(100)単独重合体(Mn=95000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST(100)単独重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0078】
(比較例2)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)0.67gを用いた以外は実施例1と同様にして1.23gのMMA−DMMAA(35:65)ランダム共重合体(Mn=62000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(35:65)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0079】
(比較例3)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1gを用いた以外は実施例2と同様にして0.6gのMMA−DMMAA(50:50)ランダム共重合体(Mn=53000)を得た。前記ST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(50:50)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例2と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0080】
(比較例4)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1.23gを用いた以外は実施例3と同様にして0.8gのMMA−DMMAA(65:35)ランダム共重合体(Mn=43000)を得た。前記ST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(65:35)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例3と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0081】
(比較例5)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1.6gを用いた以外は実施例4と同様にして0.8gのMMA−DMMAA(80:20)ランダム共重合体(Mn=63000)を得た。前記ST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(80:20)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例4と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0082】
(比較例6)
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体を用いなかった以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0083】
(比較例7)
スチレンの代わりにN,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)2gを用いた以外は比較例1と同様にして0.93gのDMMAA(100)単独重合体(Mn=72000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このDMMAA(100)単独重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0084】
(比較例8)
スチレンの代わりにフェニルマレイミド(PM)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして1.1gのPM−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=55000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このPM−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0085】
<黒鉛粒子分散液の目視による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察した。図1中の(A)〜(C)は、それぞれ実施例1、比較例2および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液の写真である。図1に示した結果から明らかなように、黒鉛粒子と本発明にかかる芳香族ビニル共重合体とを混合した場合(実施例1)には、24時間静置しても黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった(図1中の(A))。また、実施例2〜6で得られた分散液においても、24時間静置しても黒鉛粒子は沈降せず、分散安定性に優れたものであった。一方、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにビニル芳香族モノマー単位を含まないビニル共重合体を用いた場合(比較例2)および本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を用いなかった場合(比較例6)には、24時間の静置により黒鉛粒子は沈降し、得られた分散液は透明な上澄み液と黒鉛粒子とに分離し、分散安定性に劣ったものであった(それぞれ(図1中の(B)、(C)))。
【0086】
<黒鉛粒子の光学顕微鏡による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液を光学顕微鏡(400倍)により観察した。図2A〜2Gには、それぞれ実施例4〜6および比較例5〜8で得られた黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真を示す。
【0087】
図2A〜2Cに示した結果から明らかなように、黒鉛粒子と本発明にかかる芳香族ビニル共重合体とを混合した場合(実施例4〜6)には、黒鉛粒子が微細化されていることが確認された。また、このような黒鉛粒子の微細化は、実施例1〜3で得られた分散液においても観察された。
【0088】
一方、図2D〜2Gに示した結果から明らかなように、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにビニル芳香族モノマー単位を含まないビニル共重合体を用いた場合(比較例5)、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を用いなかった場合(比較例6)、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにN,N−ジメチルメタクリルアミド単独重合体を用いた場合(比較例7)および本発明にかかるビニル芳香族モノマー単位の代わりにフェニルマレイミド単位を共重合体に導入した場合(比較例8)には、粉砕が不十分な塊状の黒鉛粒子が形成していることがわかった。また、このような塊状の黒鉛粒子は、比較例1〜4で得られた分散液においても観察された。
【0089】
<黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液から黒鉛粒子を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。図3A〜3Cには、それぞれ実施例4〜6で得られた黒鉛粒子分散液から採取した黒鉛粒子のSEM写真を示す。また、図3Dには、原料である黒鉛粒子のSEM写真を示す。
【0090】
図3A〜3Dに示した結果から明らかなように、原料の塊状の黒鉛粒子を本発明にかかる芳香族ビニル共重合体と混合した場合(実施例4〜6)には、黒鉛粒子は板状に微細化されることがわかった。また、実施例1〜3で得られた分散液においても黒鉛粒子は板状に微細化されることが確認された。このような板状の黒鉛粒子の長さ、幅および厚さを測定した結果を表1に示す。一方、比較例1〜8で得られた黒鉛粒子分散液から採取した黒鉛粒子の形状は不定形の塊状であった。
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例7)
スチレン(ST)の量を1.82g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.18gに変更した以外は実施例1と同様にして0.82gのST−DMMAA(91:9)ランダム共重合体(Mn=58000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0093】
(実施例8)
スチレン(ST)の量を1.88g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.12gに変更した以外は実施例1と同様にして0.53gのST−DMMAA(94:6)ランダム共重合体(Mn=70000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(94:6)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0094】
(実施例9)
N,N−ジメチルメタクリルアミドの代わりにN−フェニルマレイミド(PM)0.66gを用い、スチレン(ST)の量を1.34gに変更した以外は実施例1と同様にして0.77gのST−PM(67:33)ランダム共重合体(Mn=62000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(67:33)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0095】
(実施例10)
スチレン(ST)の量を1.66g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.34gに変更した以外は実施例9と同様にして0.92gのST−PM(83:17)ランダム共重合体(Mn=48000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(83:17)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0096】
(実施例11)
スチレン(ST)の量を1.82g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.18gに変更した以外は実施例9と同様にして0.66gのST−PM(91:9)ランダム共重合体(Mn=58000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0097】
(実施例12)
スチレン(ST)の量を1.88g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.12gに変更した以外は実施例9と同様にして0.77gのST−PM(94:6)ランダム共重合体(Mn=52000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(94:6)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0098】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11で得られた黒鉛粒子分散液を静置し、一定時間ごとに分散液100μlを採取し、3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果、24時間静置しても吸光度はほぼ一定であり、得られた分散液は分散安定性に優れたものであることが確認された。
【0099】
また、実施例2〜4および実施例7〜12で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して4mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図4に示す。
【0100】
図4に示した結果から明らかなように、スチレンモノマー単位の含有量が多くなるにつれて吸光度が高くなり、分散安定性が向上することがわかった。これは、スチレンモノマー単位の含有量が多くなるにつれて黒鉛粒子が微細化されやすくなるためと推察される。
【0101】
(実施例13)
N−フェニルマレイミドの代わりに1−ビニルイミダゾール(VI)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.37gのST−VI(91:9)ランダム共重合体(Mn=18000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−VI(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0102】
(実施例14)
N−フェニルマレイミドの代わりに4−ビニルピリジン(4VP)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.82gのST−4VP(91:9)ランダム共重合体(Mn=48000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−4VP(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0103】
(実施例15)
N−フェニルマレイミドの代わりにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.88gのST−DMAEMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=52000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMAEMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0104】
(実施例16)
N−フェニルマレイミドの代わりにメチルメタクリレート(MMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.79gのST−MMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=54000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−MMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0105】
(実施例17)
N−フェニルマレイミドの代わりにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.83gのST−HEMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=77000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−HEMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0106】
(実施例18)
N−フェニルマレイミドの代わりに2−ビニルピリジン(2VP)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.95gのST−2VP(91:9)ランダム共重合体(Mn=89000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−2VP(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0107】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例7、実施例11および実施例13〜18で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図5に示す。
【0108】
図5に示した結果から明らかなように、いずれのランダム共重合体を用いた場合においても、分散液は高い吸光度を示し、黒鉛粒子が微細化されて高度に分散していることが確認された。
【0109】
(実施例19)
ST−PM(91:9)ランダム共重合体の添加量を1mg、2mg、5mg、10mgに変更した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0110】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11、実施例19および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図6に示す。
【0111】
図6に示した結果から明らかなように、ST−PM(91:9)ランダム共重合体を添加することによって吸光度が高くなり、黒鉛粒子が微細化されて分散安定性が向上することがわかった。また、ST−PM(91:9)ランダム共重合体の添加量が増大するにつれて吸光度が高くなる傾向にあった。
【0112】
(実施例20)
ウレア−過酸化水素包接錯体の添加量を1mg、2mg、10mg、20mg、40mgに変更した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0113】
(比較例9)
ウレア−過酸化水素包接錯体の添加量を添加しなかった以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0114】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11、実施例20および比較例9で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図7に示す。
【0115】
図7に示した結果から明らかなように、ウレア−過酸化水素包接錯体を添加することによって吸光度が高くなり、黒鉛粒子が微細化されて分散安定性が向上することがわかった。
【0116】
(実施例21)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりに、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはN−メチルピロリドン(NMP)を2ml混合した以外は実施例4と同様にして黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体添加)を得た。
【0117】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例4および実施例21で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して、それぞれ使用した溶媒を3.5ml添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に示した結果から明らかなように、溶媒としてクロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはNMPを用いた場合にも、DMFを用いた場合と同程度の吸光度を示し、優れた分散安定性を有する黒鉛粒子分散液が得られた。
【0120】
(実施例22)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりに、ジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、プロパノール、γ−ピコリン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシド(DMSO)を2ml混合した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液(ST−PM(91:9)ランダム共重合体添加)を得た。
【0121】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11および実施例22で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して、それぞれ使用した溶媒を3.5ml添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
表3に示した結果から明らかなように、溶媒としてジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、プロパノールまたはアセトニトリルを用いた場合には、DMFを用いた場合に比べて吸光度は若干低下したが、黒鉛粒子の分散安定性は十分なものであった。また、γ−ピコリンまたはDMSOを用いた場合には、DMFを用いた場合と同程度の吸光度を示し、優れた分散安定性を有する黒鉛粒子分散液が得られた。
【0124】
(実施例23)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=48000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=46000、以下、「ST−2VP(48K/46K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0125】
(実施例24)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=57000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=57000、以下、「ST−2VP(57K/57K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0126】
(実施例25)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=102000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=97000、以下、「ST−2VP(102K/97K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0127】
(実施例26)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=5000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=5000、以下、「ST−MMA(5K/5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0128】
(実施例27)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=48000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=46000、以下、「ST−MMA(48K/46K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0129】
(実施例28)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=85000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=91000、以下、「ST−MMA(85K/91K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0130】
(実施例29)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=170000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=168000、以下、「ST−MMA(170K/168K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0131】
(実施例30)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=9500、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=9500、以下、「ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0132】
(実施例31)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=37000、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=6500、以下、「ST−PEO(37K/6.5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0133】
(実施例32)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=40000、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=42000、以下、「ST−PEO(40K/42K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0134】
(実施例33)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=58600、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=71000、以下、「ST−PEO(58.6K/71K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0135】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例16、実施例18および実施例23〜33で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表4に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
表4に示した結果から明らかなように、いずれのブロック共重合体を用いた場合においても、分散液は高い吸光度を示し、黒鉛粒子が微細化されて高度に分散していることが確認された。特に、ビニル芳香族モノマー以外のビニルモノマーとしてメチルメタクリレートを用いた場合には、実施例16のランダム共重合体に比べて実施例26〜29のブロック共重合体を添加することによって、吸光度はより高い値を示し、黒鉛粒子がより微細化されて更に高度に分散していることがわかった。
【0138】
<黒鉛粒子の表面分析>
実施例11で得られた黒鉛粒子分散液(ST−PM(91:9)ランダム共重合体添加)および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液(共重合体無添加)をそれぞれインジウム箔上に塗布して乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。これらの黒鉛粒子塗膜について飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS、正イオン:m/z 0−250)を行い、黒鉛粒子塗膜の表面に存在する分子を分析した。図8の下段にはST−PM(91:9)ランダム共重合体添加した場合、中段には共重合体無添加の場合の分析結果を示す。なお、図8の上段は、キャスト法により形成したST−PM(91:9)ランダム共重合体の塗膜のTOF−SIMS測定結果を示す。
【0139】
また、得られた黒鉛粒子塗膜についてX線光電子分光(XPS)測定を行なったところ、塗膜表面近傍(表面から深さ10nmの領域)の炭素原子に水酸基が結合していることが確認された。さらに、前記塗膜表面近傍の炭素量および酸素量を測定し、炭素と酸素との原子比を求めた。その結果を表5に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
図8に示した結果から明らかなように、比較例6で得られた黒鉛粒子分散液から形成した黒鉛粒子塗膜の表面には共重合体は観察されなかった。一方、実施例11で得られた黒鉛粒子分散液から形成した黒鉛粒子塗膜の表面にはST−PM(91:9)ランダム共重合体が吸着していることがわかった。
【0142】
また、図8の下段に示したST−PM(91:9)ランダム共重合体のフラグメントパターンから明らかなように、前記共重合体成分のうち、ビニル芳香族モノマー単位を多く含有する共重合体成分が微細化黒鉛粒子の表面に吸着しやすいことがわかった。
【0143】
表5に示した結果から明らかなように、黒鉛粒子の表面に存在する炭素と酸素の原子比は、原料である黒鉛粒子においては炭素原子100に対して酸素原子が約2であるのに対して、ウレア−過酸化水素包接錯体で処理した黒鉛粒子(比較例6)においては炭素原子100に対して酸素原子が約3であり、前記過酸化水素化物での処理によって黒鉛粒子表面に水酸基が導入されたことがわかった。一方、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の存在下で、ウレア−過酸化水素包接錯体で処理した微細化黒鉛粒子(実施例11)においては炭素原子100に対して酸素原子が約1に低下した。このことから、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体は板状黒鉛粒子表面の水酸基に吸着して被覆していることが確認された。
【0144】
以上の結果から、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体が板状黒鉛粒子に吸着して表面を被覆することによって、黒鉛粒子が微細化され、各種溶媒に高度に分散させることが可能になったと推察される。
【0145】
<導電性>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)をガラス板上に塗布して乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜の表面の任意の2点間(距離:1cm)の電気抵抗をテスターを用いて室温で測定したところ、10Ωであった。
【0146】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜の表面を必要に応じてヒドラジンで処理した後、所定の温度で加熱処理した。このようにして作製した加熱処理を施したヒドラジン未処理の有機化グラファイト塗膜およびヒドラジン処理と加熱処理を施した有機化グラファイト塗膜のそれぞれについて、上記と同様にして塗膜表面の電気抵抗を測定した。図9には加熱処理温度と電気抵抗との関係を示す。
【0147】
前記黒鉛粒子塗膜の電気抵抗値(10Ω)と図9に示した結果から明らかなように、本発明の微細化黒鉛粒子(実施例1)からなる塗膜の電気抵抗は、表面酸化グラファイト材料を有機化した材料からなる塗膜にヒドラジン処理や加熱処理を施して電気抵抗を低下させた場合と比較しても著しく小さく、本発明の微細化黒鉛粒子は導電性に非常に優れたものであることが確認された。
【0148】
<吸収スペクトル>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を石英ガラス板上に塗布して乾燥させ、厚さ0.1μmの黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜の吸収スペクトルを波長300〜800nmの範囲について測定した。その結果を図10に示す。
【0149】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして厚さ1μmの有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜の吸収スペクトルを上記と同様にして測定した。その結果を図10に示す。
【0150】
図10に示した結果から明らかなように、有機化グラファイト塗膜は500nm以上の長波長領域において吸光度が著しく低下した。このことから、有機化グラファイト塗膜中のグラファイト層には多くの欠陥が存在していると推察される。一方、本発明の微細化黒鉛粒子からなる塗膜(実施例1)は500nm以上の長波長領域においても吸光度の低下が小さく、黒鉛粒子塗膜中の欠陥は比較的少ないと考えられる。
【0151】
<ラマンスペクトル>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を石英ガラス板上にキャストして乾燥させ、厚さ0.1μmの黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜のラマンスペクトルを測定した。その結果を図11の中段に示す。なお、図11の上段には、原料黒鉛粒子のラマンスペクトルを示す。
【0152】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして厚さ1μmの有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜のラマンスペクトルを測定した。その結果を図11の下段に示す。
【0153】
図11に示した結果から明らかなように、有機化グラファイト材料においては、原料黒鉛粒子ではほとんど観測されないDバンドのピークが観測され、グラファイトシート構造が破壊されていることがわかった。一方、本発明の微細化黒鉛粒子においては、Dバンドのピークがほとんど観測されず、欠陥がほとんど存在していないと考えられる。
【0154】
<微細化黒鉛粒子の厚さ測定>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を1000rpmで遠心分離して粗大粒子を沈降させた後、上澄み液をマイカ基板上にキャストして乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。この黒鉛粒子塗膜を、Super Sharp Tipを装着した走査型プローブ顕微鏡(デジタルインスツルメンツ社製「NanoScope V D3100」)を用いてタッピングモードで観察した。黒鉛粒子塗膜の表面SPM像を図12Aに示す。また、図12A中の直線で示した部分の断面形状を図12Bに示す。
【0155】
図12Bのグラフ中の凸部分は、微細化黒鉛粒子を構成する板状黒鉛粒子を表しており、その高さは、板状黒鉛粒子の厚さに相当する。図12Bに示した結果から明らかなように、板状黒鉛粒子の厚さは約0.34nmであり、これは、単層グラフェンの厚さに相当する。すなわち、実施例1で得られた黒鉛粒子分散液に含まれる微細化黒鉛粒子は、グラファイトシート1層分まで剥離された板状黒鉛粒子により構成されていることがわかった。
【0156】
(実施例34)
<微細化黒鉛粒子の調製>
スチレン(ST)18g、2−ビニルピリジン(2VP)2g、アゾビスイソブチロニトリル50mgおよびトルエン100mlを混合し、窒素雰囲気下、85℃で6時間重合反応を行なった。放冷後、クロロホルム−ヘキサンを用いて再沈殿により精製し、真空乾燥して3.3gのST−2VP(9:1)ランダム共重合体(Mn=25000)を得た。
【0157】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−2VP(9:1)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。また、得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0158】
<微細化黒鉛粒子のアルキル化>
末端水酸基含有ポリオレフィン(出光興産(株)製「エポール(R)」)4.59g、トリフェニルホスフィン1.1gおよび四塩化炭素40mlを混合し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌しながら12時間加熱還流し、末端塩素化ポリオレフィンを合成した。加熱還流後の溶液にエバポレーションを施した後、ヘキサンを用いて末端塩素化ポリオレフィンを抽出した。その後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン溶媒)で精製して1.5gの末端塩素化ポリオレフィン(Mn=2000(カタログ値))を得た。
【0159】
次に、この末端塩素化ポリオレフィン20mg、前記微細化黒鉛粒子10mgおよびトルエン1mlを混合し、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。得られた分散液をろ過し、ろ滓をトルエンで洗浄して末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0160】
(実施例35)
2−ビニルピリジンの代わりに2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAMA)0.2gを用い、スチレン(ST)の量を1.8g、アゾビスイソブチロニトリルの量を8mg、トルエンの量を10mlに変更した以外は実施例34と同様にして0.61gのST−DMAMA(9:1)ランダム共重合体(Mn=32000)を得た。
【0161】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMAMA(9:1)ランダム共重合体0.1gを用い、黒鉛粒子の量を1g、ウレア−過酸化水素包接錯体の量を1g、DMFの量を50mlに変更した以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0162】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0163】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0164】
(実施例36)
2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの代わりに4−ビニルピリジン(4VP)0.2gを用い、トルエンの量を7.5mlに変更した以外は実施例35と同様にして0.73gのST−4VP(9:1)ランダム共重合体(Mn=18000)を得た。
【0165】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−4VP(9:1)ランダム共重合体0.1gを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0166】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0167】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0168】
(実施例37)
末端塩素化ポリオレフィンの代わりに塩素化ポリプロピレン(アルドリッチ社製、Mn=100000)20mgを用いた以外は実施例34と同様にして塩素化ポリプロピレンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0169】
(実施例38)
末端塩素化ポリオレフィンの代わりに無水マレイン酸変性ポリプロピレン(Clariant社製「LICOCENE MA(R)」、粘度(140℃)=300mPa・s)20mgを用いた以外は実施例34と同様にして無水マレイン酸変性ポリプロピレンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0170】
(実施例39)
黒鉛粒子(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」、粒子径100〜600μm)12.5g、ウレア−過酸化水素包接錯体12.5g、実施例34と同様にして調製したST−2VP(9:1)ランダム共重合体1.25g、DMF500mlを混合し、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製「スターバーストラボ」)を用いて、室温、シリンダー圧力200MPaの条件で10回湿式粉砕処理を行い、黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0171】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0172】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0173】
(参考例1)
2−ビニルピリジンの代わりにN−フェニルマレイミド(PM)4gを用い、スチレン(ST)の量を36g、アゾビスイソブチロニトリルの量を100mg、トルエンの量を50mlに変更した以外は実施例34と同様にして25.6gのST−PM(9:1)ランダム共重合体(Mn=37000)を得た。
【0174】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(9:1)ランダム共重合体0.7gを用い、黒鉛粒子の量を7g、ウレア−過酸化水素包接錯体の量を7g、DMFの量を300mlに変更した以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0175】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0176】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0177】
【表6】
【0178】
表6に示した結果から明らかなように、アミノ基を有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を反応性部位を有するポリオレフィンで処理した場合(実施例34〜39)、得られた微細化黒鉛粒子はトルエン分散安定性に優れたものであった。このことから、微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体にはポリオレフィン鎖が導入されていることが確認された。一方、アミノ基を有しない芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を反応性部位を有するポリオレフィンで処理した場合(参考例1)には、トルエン分散性やヘキサン分散性が認められなかった。これは、参考例1においては、微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体にアミノ基などの官能基が存在しないため、反応性部位を有するポリオレフィンとの反応が進行せず、前記芳香族ビニル共重合体にポリオレフィン鎖が導入されなかったためと推察される。
【0179】
また、2VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を末端塩素化ポリオレフィンで処理した場合(実施例34および実施例39)、得られた微細化黒鉛粒子はヘキサン分散安定性に優れたものであった。一方、DMAMA単位または4VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を末端塩素化ポリオレフィンで処理した場合(実施例35〜36)には、調製直後の微細化黒鉛粒子は調製直後のヘキサン分散性には優れるものの、ヘキサン分散安定性は低下することがわかった。これは、2VP単位に比べて、DMAMA単位や4VP単位には末端塩素化ポリオレフィンが反応しにくく、ポリオレフィン鎖の導入量が低下し、且つ、末端塩素化ポリオレフィンが結合しても立体的な極性基を遮蔽する効果が少なかったためと推察される。また、2VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を塩素化ポリプロピレンまたは無水マレイン酸変性ポリプロピレンで処理した場合(実施例37〜38)にも、調製直後の微細化黒鉛粒子は調製直後のヘキサン分散性には優れるものの、ヘキサン分散安定性は低下することがわかった。これは、前記塩素化ポリプロピレンや前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、分子内部に官能基を有するものであり、分子末端に官能基を有する末端塩素化ポリオレフィンに比べて、2VP単位に対する反応性が低く、ポリオレフィン鎖の導入量が低下し、また、ポリプロピレン部位のタクティシティーが高く、溶解性が乏しいためと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0180】
以上説明したように、本発明によれば、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能であり、しかも分散安定性に優れた微細化黒鉛粒子を得ることが可能となる。また、このような微細化黒鉛粒子を溶媒や樹脂に分散させることによって分散安定性に優れた分散体を容易に製造することが可能となる。さらに、本発明の微細化黒鉛粒子は、グラファイト構造が保持されており、黒鉛本来の特性(例えば、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、熱伝導性、導電性、潤滑性)を損なっておらず、前記特性を樹脂に容易に付与することが可能となる。
【0181】
したがって、本発明の微細化黒鉛粒子は、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、熱伝導性、導電性、潤滑性などを付与することが可能な充填材などとして有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細化黒鉛粒子、それを含有する黒鉛粒子分散液、およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛粒子は、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、熱伝導性、導電性に優れ、潤滑性を有し、軽量であるなど、様々な優れた特性を有するものであり、各種分野においては黒鉛粒子を樹脂中に分散させて樹脂成形品などにこれらの特性を付与している。しかしながら、黒鉛粒子は凝集しやすく、樹脂や溶媒との親和性も低いため、樹脂中や溶媒中には凝集した状態で分散される。このように凝集した状態の黒鉛粒子を樹脂中や溶媒中に分散させると前記特性が十分に発現しない傾向があった。
【0003】
このため、従来から、樹脂中や溶媒中に黒鉛粒子を高度に分散させるために、様々な黒鉛粒子の微細化方法が提案されている。例えば、特開平2−204317号公報(特許文献1)には、黒鉛粉を振動ミルを用いて乾式粉砕して微細黒鉛を調製する方法が開示されている。このような機械的処理では、黒鉛粒子は微細化されるものの、グラファイト構造も破壊されるため、得られる微細化黒鉛粒子の導電性、熱伝導性、機械的強度が低下するという問題があった。
【0004】
特開2005−53773号公報(特許文献2)には、黒鉛を酸化して薄膜状の酸化黒鉛粒子を調製する方法が開示されている。また、特開2009−242209号公報(特許文献3)には、グラファイトに酸化処理を施して得られる表面酸化グラファイトの表面のカチオンとカチオン性有機化合物とをイオン交換してグラファイトを有機化する方法が開示されている。これらの方法によれば、樹脂中や溶媒中に高度に分散させることが可能な酸化黒鉛粒子を得ることができ、このような酸化黒鉛粒子を樹脂中に分散させることによって樹脂などに黒鉛の特性を付与することが可能となる。
【0005】
しかしながら、酸化により微細化された黒鉛粒子の特性は、原料として用いた黒鉛粒子の特性に比べて低下する傾向にあり、このような微細化黒鉛粒子には、黒鉛本来の特性を十分に発現させるという点で、未だ改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−204317号公報
【特許文献2】特開2005−53773号公報
【特許文献3】特開2009−242209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能であり、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた特性を有する微細化黒鉛粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、黒鉛粒子、特定の芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物を混合して粉砕処理を施すことによって、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることができ、しかも分散安定性に優れており、さらに、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた導電性を示す微細化黒鉛粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、前記芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入することによって、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の分散安定性がさらに向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の微細化黒鉛粒子は、板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備えることを特徴とするものである。また、本発明の黒鉛粒子分散液は、溶媒と、この溶媒中に分散された本発明の微細化黒鉛粒子とを含有するものである。
【0010】
このような微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液において、前記芳香族ビニル共重合体としては、前記ビニル芳香族モノマー単位と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピリジン類、無水マレイン酸およびマレイミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される他のモノマー単位とを備えるものが好ましい。また、前記芳香族ビニル共重合体はブロック共重合体であることが好ましい。
【0011】
本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液において、板状黒鉛粒子としては厚さが0.3〜1000nmのものが好ましい。また、板状黒鉛粒子の表面近傍の全炭素原子の50%以下の炭素原子には、水酸基、カルボキシル基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が結合していることが好ましい。
【0012】
また、本発明の微細化黒鉛粒子は、前記芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに備えていてもよい。このような微細化黒鉛粒子として、前記芳香族ビニル共重合体が官能基を有するものであり、且つ、前記炭化水素鎖は、芳香族ビニル共重合体の官能基と反応する部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種が前記官能基と結合することにより形成されたものであることが好ましい。前記官能基としてはアミノ基が好ましく、前記官能基と反応する部位としては塩素原子、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0013】
本発明の黒鉛粒子分散液において、前記溶媒が疎水性溶媒である場合、前記微細化黒鉛粒子としては、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素鎖が結合した前記芳香族ビニル共重合体が前記板状黒鉛粒子に吸着しているものが好ましい。
【0014】
本発明の微細化黒鉛粒子の製造方法は、黒鉛粒子、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物、および溶媒を混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物に粉砕処理を施す粉砕工程とを含むものである。
【0015】
前記過酸化水素化物としてはカルボニル基を有する化合物と過酸化水素との錯体が好ましい。また、前記粉砕処理としては超音波処理または湿式粉砕処理が好ましい。
【0016】
また、本発明の微細化黒鉛粒子の製造方法は、前記粉砕工程で得られた微細化黒鉛粒子と、前記官能基と反応する部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種とを混合し、前記芳香族ビニル共重合体に、前記アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種を結合させて、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種を導入する炭化水素鎖導入工程をさらに含んでいてもよい。この場合、前記芳香族ビニル共重合体としては官能基を有するものが好ましい。また、前記官能基としてはアミノ基が好ましく、前記官能基と反応する部位としては塩素原子、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0017】
なお、本発明の微細化黒鉛粒子が分散安定性に優れている理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、黒鉛粒子は、本来、溶媒や樹脂との相互作用が小さく、凝集しやすいものであるため、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることは困難であった。一方、本発明の微細化黒鉛粒子においては、微細化された板状の黒鉛粒子に前記芳香族ビニル共重合体が吸着しているため、板状黒鉛粒子間の凝集力が低下し、溶媒中や樹脂中への分散性が向上すると推察される。さらに、芳香族ビニル共重合体の吸着性が安定しているため、微細化黒鉛粒子の分散安定性も向上すると推察される。
【0018】
また、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入することによって、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の分散安定性がさらに向上する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、板状黒鉛粒子に吸着した芳香族ビニル共重合体に、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種を結合してアルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入することによって、微細化黒鉛粒子の表面がアルキル化されると推察される。表面がアルキル化された微細化黒鉛粒子は、疎水性溶媒に対する親和性が向上するため、疎水性溶媒に対する分散安定性がさらに向上すると推察される。
【0019】
また、本発明の微細化黒鉛粒子が、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた導電性を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の微細化黒鉛粒子においては、グラファイト構造が保持されているため、黒鉛本来の特性がそのまま発現すると推察される。一方、黒鉛粒子を酸化により微細化する場合、黒鉛粒子の表面だけでなく、内部まで酸化することによって十分に微細化することが可能となる。しかしながら、黒鉛粒子を内部まで酸化すると粒子の微細化とともにグラファイト構造の一部が破壊される傾向にある。このため、酸化により微細化された黒鉛粒子においては、グラファイト構造に起因する特性、例えば、導電性、熱伝導性、機械的強度などの黒鉛本来の特性が低下すると推察される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能であり、しかも分散安定性に優れており、さらに、酸化により微細化された黒鉛粒子に比べて優れた導電性を示す微細化黒鉛粒子およびそれを含有する黒鉛粒子分散液を得ることが可能となる。特に、芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を備える微細化黒鉛粒子においては、疎水性溶媒に対する分散安定性をさらに向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)〜(C)は、それぞれ実施例1、比較例2および比較例6で得た黒鉛粒子分散液中の黒鉛粒子の分散状態を示す写真である。
【図2A】実施例4で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2B】実施例5で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2C】実施例6で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2D】比較例5で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2E】比較例6で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2F】比較例7で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図2G】比較例8で得た黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真である。
【図3A】実施例4で得た黒鉛粒子分散液の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3B】実施例5で得た黒鉛粒子分散液から採取した微細化黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3C】実施例6で得た黒鉛粒子分散液から採取した微細化黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3D】原料として使用した黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】スチレンモノマー単位の含有量と24時間静置後の黒鉛粒子分散液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図5】各種芳香族ビニル共重合体を混合した場合における、24時間静置後の黒鉛粒子分散液の吸光度を示すグラフである。
【図6】芳香族ビニル共重合体の添加量と24時間静置後の黒鉛粒子分散液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図7】ウレア−過酸化水素包接錯体の添加量と24時間静置後の黒鉛粒子分散液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図8】実施例11および比較例6で得た黒鉛粒子分散液中の微細化黒鉛粒子のTOF−SIMS測定結果を示すグラフである。
【図9】従来の有機化グラファイト膜における加熱処理温度と電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図10】実施例1で得た微細化黒鉛粒子の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図11】実施例1で得た微細化黒鉛粒子のラマンスペクトルを示すグラフである。
【図12A】実施例1で得た黒鉛粒子分散液をマイカ基板上にキャストして形成した黒鉛粒子塗膜の表面形状を示す走査型プローブ顕微鏡写真である。
【図12B】図12A中の直線で示した部分の断面形状を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
先ず、本発明の微細化黒鉛粒子について説明する。本発明の微細化黒鉛粒子は、板状黒鉛粒子と、この板状黒鉛粒子に吸着した芳香族ビニル共重合体とを備えるものである。また、本発明の微細化黒鉛粒子は、前記芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに備えていてもよい。
【0024】
本発明の微細化黒鉛粒子を構成する板状黒鉛粒子は、特に制限されず、例えば、グラファイト構造を有する公知の黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛(例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛))をグラファイト構造が破壊されないように粉砕することによって得られるものである。
【0025】
このような板状黒鉛粒子の厚さとしては特に制限はないが、0.3〜1000nmが好ましく、0.3〜100nmがより好ましく、1〜100nmが特に好ましい。また、板状黒鉛粒子の平面方向の大きさとしては特に制限はないが、例えば、長軸方向の長さ(長径)としては0.1〜500μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、短軸方向の長さ(短径)としては0.1〜500μmが好ましく、0.3〜100μmがより好ましい。
【0026】
また、本発明にかかる板状黒鉛粒子の表面には、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基が結合(より好ましくは共有結合)していることが好ましい。前記官能基は本発明にかかる芳香族ビニル共重合体との親和性を有するものであり、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、本発明の微細化黒鉛粒子は溶媒中や樹脂中への分散性が高くなる傾向にある。
【0027】
このような官能基は、板状黒鉛粒子の表面近傍(好ましくは、表面から深さ10nmまでの領域)の全炭素原子の50%以下(より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下)の炭素原子に結合していることが好ましい。官能基が結合している炭素原子の割合が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子は、親水性が増大するため、芳香族ビニル共重合体との親和性が低下する傾向にある。また、官能基が結合している炭素原子の割合の下限としては特に制限はないが、0.01%以上が好ましい。なお、水酸基などの前記官能基はX線光電子分光法(XPS)により定量することができ、粒子表面から深さ10nmまでの領域に存在する官能基の量を測定することができる。なお、板状黒鉛粒子の厚さが10nm以下の場合には、板状黒鉛粒子の全領域に存在する官能基の量が測定される。
【0028】
本発明の微細化黒鉛粒子を構成する芳香族ビニル共重合体は、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位と他のモノマー単位とを含有するものである。
【0029】
このような芳香族ビニル共重合体において、前記ビニル芳香族モノマー単位は黒鉛粒子に対する吸着性を示し、他のモノマー単位は溶媒や樹脂および黒鉛粒子表面近傍の官能基との親和性を示す。したがって、このような芳香族ビニル共重合体は、板状黒鉛粒子に吸着して板状黒鉛粒子同士の凝集力を低下させるとともに板状黒鉛粒子に溶媒や樹脂との親和性を付与し、板状黒鉛粒子を溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能となる。
【0030】
また、上述したように、ビニル芳香族モノマー単位は黒鉛粒子に吸着しやすいため、ビニル芳香族モノマー単位の含有率が高い共重合体ほど、板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、本発明の微細化黒鉛粒子は溶媒中や樹脂中への分散性が高くなる傾向にある。ビニル芳香族モノマー単位の含有量としては、芳香族ビニル共重合体全体に対して10〜98質量%が好ましく、30〜98質量%がより好ましく、50〜95質量%が特に好ましい。ビニル芳香族モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が低下し、微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にある。ビニル芳香族モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子に溶媒や樹脂との親和性が付与されず、微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にある。
【0031】
前記式(1)中のXで表される基が有していてもよい置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、水酸基、アミド基、イミノ基、グリシジル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基)、カルボニル基、イミド基、リン酸エステル基などが挙げられ、中でも、微細化黒鉛粒子の分散性が向上するという観点から、メトキシ基などのアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0032】
このようなビニル芳香族モノマー単位としては、例えば、スチレンモノマー単位、ビニルナフタレンモノマー単位、ビニルアントラセンモノマー単位、ビニルピレンモノマー単位、ビニルアニソールモノマー単位、ビニル安息香酸エステルモノマー単位、アセチルスチレンモノマー単位などが挙げられ、中でも、微細化黒鉛粒子の分散性が向上するという観点から、スチレンモノマー単位、ビニルナフタレンモノマー単位、ビニルアニソールモノマー単位が好ましい。
【0033】
本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を構成する他のモノマー単位としては特に制限はないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルイミダゾール類、ビニルピリジン類、無水マレイン酸およびマレイミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導されるモノマー単位が好ましい。このような他のモノマー単位を含む芳香族ビニル共重合体を用いることによって、微細化黒鉛粒子は溶媒や樹脂との親和性が向上し、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能となる。
【0034】
前記(メタ)アクリレート類としては、アルキル(メタ)アクリレート、置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート)などが挙げられる。前記(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0035】
前記ビニルイミダゾール類としては、1−ビニルイミダゾールなどが挙げられる。前記ビニルピリジン類としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどが挙げられる。前記マレイミド類としては、マレイミド、アルキルマレイミド、アリールマレイミドなどが挙げられる。
【0036】
このような他のモノマーのうち、微細化黒鉛粒子の分散性が向上するという観点から、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アリールマレイミドが好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、アリールマレイミドがより好ましく、フェニルマレイミドが特に好ましい。
【0037】
本発明の微細化黒鉛粒子において、前記芳香族ビニル共重合体の数平均分子量としては特に制限はないが、1千〜100万が好ましく、5千〜10万がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の数平均分子量が前記下限未満になると、黒鉛粒子に対する吸着能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶媒への溶解性が低下したり、粘度が著しく上昇して取り扱いが困難になる傾向にある。なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(カラム:Shodex GPC K−805LおよびShodex GPC K−800RL(ともに、昭和電工(株)製)、溶離液:クロロホルム)により測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0038】
また、本発明の微細化黒鉛粒子においては、前記芳香族ビニル共重合体としてランダム共重合体を用いても、ブロック共重合体を用いてもよいが、微細化黒鉛粒子の分散性が向上するという観点から、ブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0039】
本発明の微細化黒鉛粒子において、前記芳香族ビニル共重合体の含有量としては、前記板状黒鉛粒子100質量部に対して10−7〜10−1質量部が好ましく、10−5〜10−2質量部がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の含有量が前記下限未満になると、板状黒鉛粒子への芳香族ビニル共重合体の吸着が不十分なため、微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、板状黒鉛粒子に直接吸着していない芳香族ビニル共重合体が存在する傾向にある。
【0040】
また、本発明の微細化黒鉛粒子は、前記芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに備えるものであってもよい。このような微細化黒鉛粒子は、前記炭化水素鎖によって表面がアルキル化され、疎水性溶媒に対して優れた分散安定性を示す傾向にある。また、このようなアルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖は、前記芳香族ビニル共重合体の側鎖に結合していることが好ましい。これにより、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の親和性がさらに向上する傾向にある。
【0041】
このような微細化黒鉛粒子において、前記アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖としては、官能基を有する芳香族ビニル共重合体と、この官能基と反応する部位(以下、「反応性部位」という)を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンとがそれぞれ反応して、前記アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの反応性部位が前記芳香族ビニル共重合体の官能基に結合することによって形成されたものであることが好ましい。
【0042】
前記官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、水酸基、アミド基、イミノ基、グリシジル基などが挙げられ、前記反応性部位との反応性が高いという観点から、アミノ基が好ましい。また、前記反応性部位としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、カルボキシル基、カルボン酸無水物基(無水マレイン酸基など)、スルホン酸基、アルデヒド基、グリシジル基などが挙げられ、前記官能基との反応性が高いという観点から、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボン酸無水物基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、塩素原子がさらに好ましい。さらに、前記官能基と前記反応性部位との組み合わせとしては、互いの反応性が高くなるという観点から、アミノ基とハロゲン原子の組み合わせ、アミノ基とカルボキシル基またはカルボン酸無水物基の組み合わせが好ましく、アミノ基と塩素原子の組み合わせ、アミノ基と無水マレイン酸基の組み合わせがより好ましく、アミノ基と塩素原子の組み合わせが特に好ましい。
【0043】
前記官能基を有する芳香族ビニル共重合体としては、前記ビニル芳香族モノマー単位および前記他のモノマー単位の少なくとも一方に官能基を有するものが挙げられ、板状黒鉛粒子に対する吸着性が損なわれないという観点から、前記他のモノマー単位が官能基を有する他のモノマー単位であることが好ましく、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖が容易に導入できるという観点から、前記他のモノマー単位が官能基を有する他のビニルモノマー単位であることがより好ましい。
【0044】
前記官能基を有する他のビニルモノマー単位としては特に制限はないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルイミダゾール類およびビニルピリジン類からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するビニルモノマーから誘導される官能基含有ビニルモノマー単位が好ましい。このような官能基を有する他のビニルモノマー単位を含む芳香族ビニル共重合体を用いることによって、芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖を容易に導入することができ、また、得られた微細化黒鉛粒子は溶媒や樹脂との親和性が向上し、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能となる。
【0045】
前記アミノ基を有する他のビニルモノマーとしては、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン類(例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン)、ビニルイミダゾール類(例えば、1−ビニルイミダゾール)などが挙げられる。前記カルボキシル基を有する他のビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。前記カルボン酸エステル基を有する他のビニルモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、前記水酸基を有する他のビニルモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、前記アミド基を有する他のビニルモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0046】
このような官能基を有する他のビニルモノマーのうち、芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖を容易に導入することができるという観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンが好ましく、アミノアルキル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンがより好ましく、2−ビニルピリジンが特に好ましい。
【0047】
このような官能基を有する芳香族ビニル共重合体に結合させる反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンとしては特に制限はないが、分子末端に前記官能基を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィン(以下、それぞれ、「末端官能基含有アルキル化合物」、「末端官能基含有オリゴオレフィン」および「末端官能基含有ポリオレフィン」という)が好ましい。このような末端官能基含有アルキル化合物、末端官能基含有オリゴオレフィンおよび末端官能基含有ポリオレフィンは、前記官能基を有する芳香族ビニル共重合体と反応しやすく、芳香族ビニル共重合体に容易にアルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖を導入することができる。
【0048】
反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンとして、具体的には、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの塩素化物、臭素化物、水酸基含有物、マレイン酸変性物、(メタ)アクリル酸変性物などが挙げられ、中でも、末端塩素化物、末端水酸基含有物が好ましく、末端塩素化物がより好ましい。オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの種類としては特に制限はないが、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖が導入されやすいという観点から、エチレンオリゴマー、ポリエチレン、プロピレンオリゴマー、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(オリゴマーおよびポリマー)が好ましい。
【0049】
このような反応性部位を有するポリオレフィンの数平均分子量としては特に制限はないが、100〜100万が好ましく、1千〜1万がより好ましい。前記ポリオレフィンの数平均分子量が前記下限未満になると、導入されたポリオレフィン鎖が短く、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の親和性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、芳香族ビニル共重合体に結合しにくく、ポリオレフィン鎖が導入されにくい傾向にある。また、同様に、前記反応性部位を有するアルキル化合物の分子量としては特に制限はないが、70〜500が好ましく、前記反応性部位を有するオリゴオレフィンの数平均分子量としては特に制限はないが、100〜5000が好ましい。
【0050】
本発明の黒鉛粒子分散液は、このような微細化黒鉛粒子が溶媒中に高度に分散したものである。本発明の黒鉛粒子分散液に用いられる溶媒としては特に制限はないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサン、トルエン、ジオキサン、プロパノール、γ−ピコリン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)が好ましく、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサン、トルエンがより好ましい。
【0051】
また、本発明の黒鉛粒子分散液において、前記溶媒が疎水性溶媒である場合には、分散安定性がより向上するという観点から、前記微細化黒鉛粒子は前記アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を備えるものであることが好ましい。前記疎水性溶媒としては特に制限はないが、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられ、中でも、前記炭化水素鎖を備える微細化黒鉛粒子がより高度に分散するという観点から、トルエンが好ましい。
【0052】
本発明の黒鉛粒子分散液において、前記微細化黒鉛粒子の濃度としては、溶媒1L当たり0.1〜200g/Lが好ましく、1〜100g/Lがより好ましい。微細化黒鉛粒子の濃度が前記下限未満になると、溶媒の消費量が増大し、経済的に不利となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると微細化黒鉛粒子同士の接触により分散液の粘度が上昇し、流動性が低下する傾向にある。
【0053】
次に、本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法について説明する。本発明の微細化黒鉛粒子の製造方法は、原料の黒鉛粒子、前記式(1)で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物、および溶媒を混合し、得られた混合物に粉砕処理を施し、必要に応じて、得られた微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに導入する方法である。また、この方法によれば、本発明の微細化黒鉛粒子は、溶媒に分散した状態で、すなわち、本発明の黒鉛粒子分散液として得ることができる。
【0054】
本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法に原料として用いられる黒鉛粒子(以下、「原料黒鉛粒子」という)としては、グラファイト構造を有する公知の黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛(例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛))が挙げられ、中でも、粉砕することによって前記範囲の厚さを有する板状黒鉛粒子となるものが好ましい。このような原料黒鉛粒子の粒子径としては特に制限はないが、0.01〜5mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましい。
【0055】
また、原料黒鉛粒子を構成する板状黒鉛粒子の表面には、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基が結合(好ましくは共有結合)していることが好ましい。前記官能基は前記芳香族ビニル共重合体との親和性を有するものであり、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、得られる微細化黒鉛粒子は溶媒中や樹脂中への分散性が高くなる傾向にある。
【0056】
このような官能基は、板状黒鉛粒子の表面近傍(好ましくは、表面から深さ10nmまでの領域)の全炭素原子の50%以下(より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下)の炭素原子に結合していることが好ましい。官能基が結合している炭素原子の割合が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子は、親水性が増大するため、芳香族ビニル共重合体との親和性が低下する傾向にある。また、官能基が結合している炭素原子の割合の下限としては特に制限はないが、0.01%以上が好ましい。
【0057】
また、過酸化水素化物としては、カルボニル基を有する化合物(例えば、ウレア、カルボン酸(安息香酸、サリチル酸など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトンなど)、カルボン酸エステル(安息香酸メチル、サリチル酸エチルなど))と過酸化水素との錯体;四級アンモニウム塩、フッ化カリウム、炭酸ルビジウム、リン酸、尿酸などの化合物に過酸化水素が配位したものなどが挙げられる。このような過酸化水素化物は、本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法において酸化剤として作用し、原料黒鉛粒子のグラファイト構造を破壊せずに、炭素層間の剥離を容易にするものである。すなわち、過酸化水素化物が炭素層間に侵入して層表面を酸化しながら劈開を進行させ、同時に芳香族ビニル共重合体が劈開した炭素層間に侵入して劈開面を安定化させ、層間剥離が促進される。その結果、板状黒鉛粒子の表面に前記芳香族ビニル共重合体が吸着して、微細化黒鉛粒子を溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能となる。
【0058】
本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法に用いられる溶媒としては特に制限はなく、本発明の黒鉛粒子分散液に用いられる溶媒として例示したものを使用することができる。
【0059】
本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法においては、先ず、前記原料黒鉛粒子と前記芳香族ビニル共重合体と前記過酸化水素化物と前記溶媒とを混合する(混合工程)。前記原料黒鉛粒子の混合量としては、溶媒1L当たり0.1〜500g/Lが好ましく、10〜200g/Lがより好ましい。原料黒鉛粒子の混合量が前記下限未満になると、溶媒の消費量が増大し、経済的に不利となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
【0060】
また、前記芳香族ビニル共重合体の混合量としては、前記原料黒鉛粒子100質量部に対して0.1〜1000質量部が好ましく、0.1〜200質量部がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の混合量が前記下限未満になると、得られる微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、芳香族ビニル共重合体が溶媒に溶解しなくなるとともに、液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
【0061】
また、前記過酸化水素化物の混合量としては、前記原料黒鉛粒子100質量部に対して0.1〜500質量部が好ましく、1〜100質量部がより好ましい。前記過酸化水素化物の混合量が前記下限未満になると、得られる微細化黒鉛粒子の分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、原料黒鉛粒子が過剰に酸化され、得られる微細化黒鉛粒子の導電性が低下する傾向にある。
【0062】
次に、前記混合工程で得られた混合物に粉砕処理を施して原料黒鉛粒子を板状黒鉛粒子に粉砕する(粉砕工程)。これにより生成した板状黒鉛粒子の表面に前記芳香族ビニル共重合体が吸着して、溶媒中や樹脂中での分散安定性に優れた微細化黒鉛粒子を含有する黒鉛粒子分散液を得ることができる。
【0063】
本発明にかかる粉砕処理としては、超音波処理(発振周波数としては15〜400kHzが好ましく、出力としては500W以下が好ましい。)、ボールミルによる処理、湿式粉砕、爆砕、機械式粉砕などが挙げられる。これにより、原料黒鉛粒子のグラファイト構造を破壊させずに原料黒鉛粒子を粉砕して板状黒鉛粒子を得ることが可能となる。また、粉砕処理時の温度としては特に制限はなく、例えば、−20〜100℃が挙げられる。また、粉砕処理時間についても特に制限はなく、例えば、0.01〜50時間が挙げられる。
【0064】
また、本発明の微細化黒鉛粒子および黒鉛粒子分散液の製造方法においては、必要に応じて、前記粉砕工程で得られた微細化黒鉛粒子と、前記反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種とを混合し、微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入する(炭化水素鎖導入工程)。この場合、前記芳香族ビニル共重合体は官能基を有するものである必要があり、この官能基と前記反応性部位とを結合せしめて前記芳香族ビニル共重合体に、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖のうちの少なくとも1種の炭化水素鎖を導入する。
【0065】
この炭化水素鎖導入工程においては、前記粉砕工程で得られた微細化黒鉛粒子と、前記反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種と、溶媒とを混合し、必要に応じて得られた混合物を加熱することによって、官能基を有する芳香族ビニル共重合体と、反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種とを反応させる。溶媒としては特に制限はなく、本発明の黒鉛粒子分散液に用いられる溶媒として例示したものを使用することができる。また、反応温度としては−10〜150℃が好ましく、反応時間としては0.1〜10時間が好ましい。
【0066】
前記微細化黒鉛粒子の混合量としては、溶媒1L当たり1〜200g/Lが好ましく、1〜50g/Lがより好ましい。微細化黒鉛粒子の混合量が前記下限未満になると、溶媒の消費量が増大し、経済的に不利となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
【0067】
また、前記反応性部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの混合量としては、前記微細化黒鉛粒子100質量部に対して0.001〜500質量部が好ましく、10〜500質量部がより好ましい。前記アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンの混合量が前記下限未満になると、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖の導入量が少なく、疎水性溶媒に対する微細化黒鉛粒子の分散性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
【0068】
このようにして得られた本発明の微細化黒鉛粒子は、そのまま分散液の状態(本発明の黒鉛粒子分散液の状態)で使用してもよいし、得られた黒鉛粒子分散液にろ過や遠心分離などを施して溶媒を除去して使用してもよい。さらに、得られた微細化黒鉛粒子を溶媒に再分散させて本発明の黒鉛粒子分散液として使用することもできる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(昭和電工(株)製「Shodex GPC101」)を用いて以下の条件で測定した。
<芳香族ビニル共重合体の測定条件>
・カラム:Shodex GPC K−805LおよびShodex GPC K−800RL(ともに、昭和電工(株)製)
・溶離液:クロロホルム
・測定温度:25℃
・サンプル濃度:0.1mg/ml
・検出手段:RI
なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレンで換算した値を示した。
【0070】
(実施例1)
スチレン(ST)0.67g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)1.23g、アゾビスイソブチロニトリル10mgおよびトルエン5mlを混合し、窒素雰囲気下、60℃で6時間重合反応を行なった。放冷後、クロロホルム−エーテルを用いて再沈殿により精製し、1.0gのST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体を得た。このST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の数平均分子量(Mn)は、78000であった。
【0071】
黒鉛粒子(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」、粒子径100〜600μm)20mg、ウレア−過酸化水素包接錯体80mg、前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体20mgおよびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2mlを混合し、室温で5時間超音波処理(出力:250W)を施して黒鉛粒子分散液を得た。
【0072】
(実施例2)
スチレン(ST)の量を1g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1gに変更した以外は実施例1と同様にして1.0gのST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体(Mn=55000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0073】
(実施例3)
スチレン(ST)の量を1.23g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.67gに変更した以外は実施例1と同様にして1.0gのST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体(Mn=67000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0074】
(実施例4)
スチレン(ST)の量を1.6g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.4gに変更した以外は実施例1と同様にして1.2gのST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体(Mn=92000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0075】
(実施例5)
スチレンの代わりに1−ビニルナフタレン(VN)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして0.27gのVN−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=17000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このVN−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0076】
(実施例6)
スチレンの代わりに4−ビニルアニソール(VA)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして0.39gのVA−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=28000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このVA−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0077】
(比較例1)
スチレン(ST)2g、アゾビスイソブチロニトリル10mgおよびトルエン5mlを混合した以外は実施例1と同様にして1.5gのST(100)単独重合体(Mn=95000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST(100)単独重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0078】
(比較例2)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)0.67gを用いた以外は実施例1と同様にして1.23gのMMA−DMMAA(35:65)ランダム共重合体(Mn=62000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(35:65)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0079】
(比較例3)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1gを用いた以外は実施例2と同様にして0.6gのMMA−DMMAA(50:50)ランダム共重合体(Mn=53000)を得た。前記ST−DMMAA(50:50)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(50:50)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例2と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0080】
(比較例4)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1.23gを用いた以外は実施例3と同様にして0.8gのMMA−DMMAA(65:35)ランダム共重合体(Mn=43000)を得た。前記ST−DMMAA(65:35)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(65:35)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例3と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0081】
(比較例5)
スチレンの代わりにメチルメタクリレート(MMA)1.6gを用いた以外は実施例4と同様にして0.8gのMMA−DMMAA(80:20)ランダム共重合体(Mn=63000)を得た。前記ST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体の代わりに、このMMA−DMMAA(80:20)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例4と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0082】
(比較例6)
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体を用いなかった以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0083】
(比較例7)
スチレンの代わりにN,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)2gを用いた以外は比較例1と同様にして0.93gのDMMAA(100)単独重合体(Mn=72000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このDMMAA(100)単独重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0084】
(比較例8)
スチレンの代わりにフェニルマレイミド(PM)0.6gを用い、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を1.4gに変更した以外は実施例1と同様にして1.1gのPM−DMMAA(30:70)ランダム共重合体(Mn=55000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このPM−DMMAA(30:70)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0085】
<黒鉛粒子分散液の目視による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察した。図1中の(A)〜(C)は、それぞれ実施例1、比較例2および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液の写真である。図1に示した結果から明らかなように、黒鉛粒子と本発明にかかる芳香族ビニル共重合体とを混合した場合(実施例1)には、24時間静置しても黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった(図1中の(A))。また、実施例2〜6で得られた分散液においても、24時間静置しても黒鉛粒子は沈降せず、分散安定性に優れたものであった。一方、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにビニル芳香族モノマー単位を含まないビニル共重合体を用いた場合(比較例2)および本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を用いなかった場合(比較例6)には、24時間の静置により黒鉛粒子は沈降し、得られた分散液は透明な上澄み液と黒鉛粒子とに分離し、分散安定性に劣ったものであった(それぞれ(図1中の(B)、(C)))。
【0086】
<黒鉛粒子の光学顕微鏡による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液を光学顕微鏡(400倍)により観察した。図2A〜2Gには、それぞれ実施例4〜6および比較例5〜8で得られた黒鉛粒子分散液の光学顕微鏡写真を示す。
【0087】
図2A〜2Cに示した結果から明らかなように、黒鉛粒子と本発明にかかる芳香族ビニル共重合体とを混合した場合(実施例4〜6)には、黒鉛粒子が微細化されていることが確認された。また、このような黒鉛粒子の微細化は、実施例1〜3で得られた分散液においても観察された。
【0088】
一方、図2D〜2Gに示した結果から明らかなように、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにビニル芳香族モノマー単位を含まないビニル共重合体を用いた場合(比較例5)、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を用いなかった場合(比較例6)、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の代わりにN,N−ジメチルメタクリルアミド単独重合体を用いた場合(比較例7)および本発明にかかるビニル芳香族モノマー単位の代わりにフェニルマレイミド単位を共重合体に導入した場合(比較例8)には、粉砕が不十分な塊状の黒鉛粒子が形成していることがわかった。また、このような塊状の黒鉛粒子は、比較例1〜4で得られた分散液においても観察された。
【0089】
<黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡による観察>
実施例および比較例で得られた黒鉛粒子分散液から黒鉛粒子を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。図3A〜3Cには、それぞれ実施例4〜6で得られた黒鉛粒子分散液から採取した黒鉛粒子のSEM写真を示す。また、図3Dには、原料である黒鉛粒子のSEM写真を示す。
【0090】
図3A〜3Dに示した結果から明らかなように、原料の塊状の黒鉛粒子を本発明にかかる芳香族ビニル共重合体と混合した場合(実施例4〜6)には、黒鉛粒子は板状に微細化されることがわかった。また、実施例1〜3で得られた分散液においても黒鉛粒子は板状に微細化されることが確認された。このような板状の黒鉛粒子の長さ、幅および厚さを測定した結果を表1に示す。一方、比較例1〜8で得られた黒鉛粒子分散液から採取した黒鉛粒子の形状は不定形の塊状であった。
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例7)
スチレン(ST)の量を1.82g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.18gに変更した以外は実施例1と同様にして0.82gのST−DMMAA(91:9)ランダム共重合体(Mn=58000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0093】
(実施例8)
スチレン(ST)の量を1.88g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)の量を0.12gに変更した以外は実施例1と同様にして0.53gのST−DMMAA(94:6)ランダム共重合体(Mn=70000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMMAA(94:6)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0094】
(実施例9)
N,N−ジメチルメタクリルアミドの代わりにN−フェニルマレイミド(PM)0.66gを用い、スチレン(ST)の量を1.34gに変更した以外は実施例1と同様にして0.77gのST−PM(67:33)ランダム共重合体(Mn=62000)を得た。前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(67:33)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0095】
(実施例10)
スチレン(ST)の量を1.66g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.34gに変更した以外は実施例9と同様にして0.92gのST−PM(83:17)ランダム共重合体(Mn=48000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(83:17)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0096】
(実施例11)
スチレン(ST)の量を1.82g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.18gに変更した以外は実施例9と同様にして0.66gのST−PM(91:9)ランダム共重合体(Mn=58000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0097】
(実施例12)
スチレン(ST)の量を1.88g、N−フェニルマレイミド(PM)の量を0.12gに変更した以外は実施例9と同様にして0.77gのST−PM(94:6)ランダム共重合体(Mn=52000)を得た。前記ST−PM(67:33)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(94:6)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例9と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0098】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11で得られた黒鉛粒子分散液を静置し、一定時間ごとに分散液100μlを採取し、3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果、24時間静置しても吸光度はほぼ一定であり、得られた分散液は分散安定性に優れたものであることが確認された。
【0099】
また、実施例2〜4および実施例7〜12で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して4mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図4に示す。
【0100】
図4に示した結果から明らかなように、スチレンモノマー単位の含有量が多くなるにつれて吸光度が高くなり、分散安定性が向上することがわかった。これは、スチレンモノマー単位の含有量が多くなるにつれて黒鉛粒子が微細化されやすくなるためと推察される。
【0101】
(実施例13)
N−フェニルマレイミドの代わりに1−ビニルイミダゾール(VI)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.37gのST−VI(91:9)ランダム共重合体(Mn=18000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−VI(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0102】
(実施例14)
N−フェニルマレイミドの代わりに4−ビニルピリジン(4VP)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.82gのST−4VP(91:9)ランダム共重合体(Mn=48000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−4VP(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0103】
(実施例15)
N−フェニルマレイミドの代わりにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.88gのST−DMAEMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=52000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMAEMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0104】
(実施例16)
N−フェニルマレイミドの代わりにメチルメタクリレート(MMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.79gのST−MMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=54000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−MMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0105】
(実施例17)
N−フェニルマレイミドの代わりにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.83gのST−HEMA(91:9)ランダム共重合体(Mn=77000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−HEMA(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0106】
(実施例18)
N−フェニルマレイミドの代わりに2−ビニルピリジン(2VP)0.18gを用いた以外は実施例11と同様にして0.95gのST−2VP(91:9)ランダム共重合体(Mn=89000)を得た。前記ST−PM(91:9)ランダム共重合体の代わりに、このST−2VP(91:9)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0107】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例7、実施例11および実施例13〜18で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図5に示す。
【0108】
図5に示した結果から明らかなように、いずれのランダム共重合体を用いた場合においても、分散液は高い吸光度を示し、黒鉛粒子が微細化されて高度に分散していることが確認された。
【0109】
(実施例19)
ST−PM(91:9)ランダム共重合体の添加量を1mg、2mg、5mg、10mgに変更した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0110】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11、実施例19および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図6に示す。
【0111】
図6に示した結果から明らかなように、ST−PM(91:9)ランダム共重合体を添加することによって吸光度が高くなり、黒鉛粒子が微細化されて分散安定性が向上することがわかった。また、ST−PM(91:9)ランダム共重合体の添加量が増大するにつれて吸光度が高くなる傾向にあった。
【0112】
(実施例20)
ウレア−過酸化水素包接錯体の添加量を1mg、2mg、10mg、20mg、40mgに変更した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0113】
(比較例9)
ウレア−過酸化水素包接錯体の添加量を添加しなかった以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0114】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11、実施例20および比較例9で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を図7に示す。
【0115】
図7に示した結果から明らかなように、ウレア−過酸化水素包接錯体を添加することによって吸光度が高くなり、黒鉛粒子が微細化されて分散安定性が向上することがわかった。
【0116】
(実施例21)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりに、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはN−メチルピロリドン(NMP)を2ml混合した以外は実施例4と同様にして黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(80:20)ランダム共重合体添加)を得た。
【0117】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例4および実施例21で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して、それぞれ使用した溶媒を3.5ml添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に示した結果から明らかなように、溶媒としてクロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはNMPを用いた場合にも、DMFを用いた場合と同程度の吸光度を示し、優れた分散安定性を有する黒鉛粒子分散液が得られた。
【0120】
(実施例22)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりに、ジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、プロパノール、γ−ピコリン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシド(DMSO)を2ml混合した以外は実施例11と同様にして黒鉛粒子分散液(ST−PM(91:9)ランダム共重合体添加)を得た。
【0121】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例11および実施例22で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して、それぞれ使用した溶媒を3.5ml添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
表3に示した結果から明らかなように、溶媒としてジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、プロパノールまたはアセトニトリルを用いた場合には、DMFを用いた場合に比べて吸光度は若干低下したが、黒鉛粒子の分散安定性は十分なものであった。また、γ−ピコリンまたはDMSOを用いた場合には、DMFを用いた場合と同程度の吸光度を示し、優れた分散安定性を有する黒鉛粒子分散液が得られた。
【0124】
(実施例23)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=48000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=46000、以下、「ST−2VP(48K/46K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0125】
(実施例24)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=57000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=57000、以下、「ST−2VP(57K/57K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0126】
(実施例25)
前記ST−2VP(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−2−ビニルピリジンブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=102000、2−ビニルピリジン(2VP)ブロックのMn=97000、以下、「ST−2VP(102K/97K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例18と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0127】
(実施例26)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=5000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=5000、以下、「ST−MMA(5K/5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0128】
(実施例27)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=48000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=46000、以下、「ST−MMA(48K/46K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0129】
(実施例28)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=85000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=91000、以下、「ST−MMA(85K/91K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0130】
(実施例29)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=170000、メチルメタクリレート(MMA)ブロックのMn=168000、以下、「ST−MMA(170K/168K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0131】
(実施例30)
前記ST−MMA(91:9)ランダム共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=9500、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=9500、以下、「ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例16と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0132】
(実施例31)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=37000、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=6500、以下、「ST−PEO(37K/6.5K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0133】
(実施例32)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=40000、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=42000、以下、「ST−PEO(40K/42K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0134】
(実施例33)
前記ST−PEO(9.5K/9.5K)ブロック共重合体の代わりに、スチレン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Polymer Source社製、スチレン(ST)ブロックのMn=58600、ポリエチレンオキシド(PEO)ブロックのMn=71000、以下、「ST−PEO(58.6K/71K)ブロック共重合体」と略す。)20mgを用いた以外は実施例30と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。
【0135】
<分散液中の黒鉛粒子の分散安定性>
実施例16、実施例18および実施例23〜33で得られた黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、この分散液100μlに対して3.5mlのDMFを添加して希釈し、光路長1cmのセルを用いて波長500nmにおける吸光度を測定した。その結果を表4に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
表4に示した結果から明らかなように、いずれのブロック共重合体を用いた場合においても、分散液は高い吸光度を示し、黒鉛粒子が微細化されて高度に分散していることが確認された。特に、ビニル芳香族モノマー以外のビニルモノマーとしてメチルメタクリレートを用いた場合には、実施例16のランダム共重合体に比べて実施例26〜29のブロック共重合体を添加することによって、吸光度はより高い値を示し、黒鉛粒子がより微細化されて更に高度に分散していることがわかった。
【0138】
<黒鉛粒子の表面分析>
実施例11で得られた黒鉛粒子分散液(ST−PM(91:9)ランダム共重合体添加)および比較例6で得られた黒鉛粒子分散液(共重合体無添加)をそれぞれインジウム箔上に塗布して乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。これらの黒鉛粒子塗膜について飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS、正イオン:m/z 0−250)を行い、黒鉛粒子塗膜の表面に存在する分子を分析した。図8の下段にはST−PM(91:9)ランダム共重合体添加した場合、中段には共重合体無添加の場合の分析結果を示す。なお、図8の上段は、キャスト法により形成したST−PM(91:9)ランダム共重合体の塗膜のTOF−SIMS測定結果を示す。
【0139】
また、得られた黒鉛粒子塗膜についてX線光電子分光(XPS)測定を行なったところ、塗膜表面近傍(表面から深さ10nmの領域)の炭素原子に水酸基が結合していることが確認された。さらに、前記塗膜表面近傍の炭素量および酸素量を測定し、炭素と酸素との原子比を求めた。その結果を表5に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
図8に示した結果から明らかなように、比較例6で得られた黒鉛粒子分散液から形成した黒鉛粒子塗膜の表面には共重合体は観察されなかった。一方、実施例11で得られた黒鉛粒子分散液から形成した黒鉛粒子塗膜の表面にはST−PM(91:9)ランダム共重合体が吸着していることがわかった。
【0142】
また、図8の下段に示したST−PM(91:9)ランダム共重合体のフラグメントパターンから明らかなように、前記共重合体成分のうち、ビニル芳香族モノマー単位を多く含有する共重合体成分が微細化黒鉛粒子の表面に吸着しやすいことがわかった。
【0143】
表5に示した結果から明らかなように、黒鉛粒子の表面に存在する炭素と酸素の原子比は、原料である黒鉛粒子においては炭素原子100に対して酸素原子が約2であるのに対して、ウレア−過酸化水素包接錯体で処理した黒鉛粒子(比較例6)においては炭素原子100に対して酸素原子が約3であり、前記過酸化水素化物での処理によって黒鉛粒子表面に水酸基が導入されたことがわかった。一方、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体の存在下で、ウレア−過酸化水素包接錯体で処理した微細化黒鉛粒子(実施例11)においては炭素原子100に対して酸素原子が約1に低下した。このことから、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体は板状黒鉛粒子表面の水酸基に吸着して被覆していることが確認された。
【0144】
以上の結果から、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体が板状黒鉛粒子に吸着して表面を被覆することによって、黒鉛粒子が微細化され、各種溶媒に高度に分散させることが可能になったと推察される。
【0145】
<導電性>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)をガラス板上に塗布して乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜の表面の任意の2点間(距離:1cm)の電気抵抗をテスターを用いて室温で測定したところ、10Ωであった。
【0146】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜の表面を必要に応じてヒドラジンで処理した後、所定の温度で加熱処理した。このようにして作製した加熱処理を施したヒドラジン未処理の有機化グラファイト塗膜およびヒドラジン処理と加熱処理を施した有機化グラファイト塗膜のそれぞれについて、上記と同様にして塗膜表面の電気抵抗を測定した。図9には加熱処理温度と電気抵抗との関係を示す。
【0147】
前記黒鉛粒子塗膜の電気抵抗値(10Ω)と図9に示した結果から明らかなように、本発明の微細化黒鉛粒子(実施例1)からなる塗膜の電気抵抗は、表面酸化グラファイト材料を有機化した材料からなる塗膜にヒドラジン処理や加熱処理を施して電気抵抗を低下させた場合と比較しても著しく小さく、本発明の微細化黒鉛粒子は導電性に非常に優れたものであることが確認された。
【0148】
<吸収スペクトル>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を石英ガラス板上に塗布して乾燥させ、厚さ0.1μmの黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜の吸収スペクトルを波長300〜800nmの範囲について測定した。その結果を図10に示す。
【0149】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして厚さ1μmの有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜の吸収スペクトルを上記と同様にして測定した。その結果を図10に示す。
【0150】
図10に示した結果から明らかなように、有機化グラファイト塗膜は500nm以上の長波長領域において吸光度が著しく低下した。このことから、有機化グラファイト塗膜中のグラファイト層には多くの欠陥が存在していると推察される。一方、本発明の微細化黒鉛粒子からなる塗膜(実施例1)は500nm以上の長波長領域においても吸光度の低下が小さく、黒鉛粒子塗膜中の欠陥は比較的少ないと考えられる。
【0151】
<ラマンスペクトル>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を石英ガラス板上にキャストして乾燥させ、厚さ0.1μmの黒鉛粒子塗膜を作製した。この塗膜のラマンスペクトルを測定した。その結果を図11の中段に示す。なお、図11の上段には、原料黒鉛粒子のラマンスペクトルを示す。
【0152】
また、特開2009−242209号公報に記載の方法により、表面酸化グラファイト材料をカチオン性有機化合物で処理して有機化グラファイト材料を調製し、これをクロロホルムに分散させた。この分散液を用いて上記と同様にして厚さ1μmの有機化グラファイト塗膜を作製した。この有機化グラファイト塗膜のラマンスペクトルを測定した。その結果を図11の下段に示す。
【0153】
図11に示した結果から明らかなように、有機化グラファイト材料においては、原料黒鉛粒子ではほとんど観測されないDバンドのピークが観測され、グラファイトシート構造が破壊されていることがわかった。一方、本発明の微細化黒鉛粒子においては、Dバンドのピークがほとんど観測されず、欠陥がほとんど存在していないと考えられる。
【0154】
<微細化黒鉛粒子の厚さ測定>
実施例1で得られた黒鉛粒子分散液(ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体添加)を1000rpmで遠心分離して粗大粒子を沈降させた後、上澄み液をマイカ基板上にキャストして乾燥させ、黒鉛粒子塗膜を作製した。この黒鉛粒子塗膜を、Super Sharp Tipを装着した走査型プローブ顕微鏡(デジタルインスツルメンツ社製「NanoScope V D3100」)を用いてタッピングモードで観察した。黒鉛粒子塗膜の表面SPM像を図12Aに示す。また、図12A中の直線で示した部分の断面形状を図12Bに示す。
【0155】
図12Bのグラフ中の凸部分は、微細化黒鉛粒子を構成する板状黒鉛粒子を表しており、その高さは、板状黒鉛粒子の厚さに相当する。図12Bに示した結果から明らかなように、板状黒鉛粒子の厚さは約0.34nmであり、これは、単層グラフェンの厚さに相当する。すなわち、実施例1で得られた黒鉛粒子分散液に含まれる微細化黒鉛粒子は、グラファイトシート1層分まで剥離された板状黒鉛粒子により構成されていることがわかった。
【0156】
(実施例34)
<微細化黒鉛粒子の調製>
スチレン(ST)18g、2−ビニルピリジン(2VP)2g、アゾビスイソブチロニトリル50mgおよびトルエン100mlを混合し、窒素雰囲気下、85℃で6時間重合反応を行なった。放冷後、クロロホルム−ヘキサンを用いて再沈殿により精製し、真空乾燥して3.3gのST−2VP(9:1)ランダム共重合体(Mn=25000)を得た。
【0157】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−2VP(9:1)ランダム共重合体20mgを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。また、得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0158】
<微細化黒鉛粒子のアルキル化>
末端水酸基含有ポリオレフィン(出光興産(株)製「エポール(R)」)4.59g、トリフェニルホスフィン1.1gおよび四塩化炭素40mlを混合し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌しながら12時間加熱還流し、末端塩素化ポリオレフィンを合成した。加熱還流後の溶液にエバポレーションを施した後、ヘキサンを用いて末端塩素化ポリオレフィンを抽出した。その後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン溶媒)で精製して1.5gの末端塩素化ポリオレフィン(Mn=2000(カタログ値))を得た。
【0159】
次に、この末端塩素化ポリオレフィン20mg、前記微細化黒鉛粒子10mgおよびトルエン1mlを混合し、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。得られた分散液をろ過し、ろ滓をトルエンで洗浄して末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0160】
(実施例35)
2−ビニルピリジンの代わりに2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAMA)0.2gを用い、スチレン(ST)の量を1.8g、アゾビスイソブチロニトリルの量を8mg、トルエンの量を10mlに変更した以外は実施例34と同様にして0.61gのST−DMAMA(9:1)ランダム共重合体(Mn=32000)を得た。
【0161】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−DMAMA(9:1)ランダム共重合体0.1gを用い、黒鉛粒子の量を1g、ウレア−過酸化水素包接錯体の量を1g、DMFの量を50mlに変更した以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0162】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0163】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0164】
(実施例36)
2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの代わりに4−ビニルピリジン(4VP)0.2gを用い、トルエンの量を7.5mlに変更した以外は実施例35と同様にして0.73gのST−4VP(9:1)ランダム共重合体(Mn=18000)を得た。
【0165】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−4VP(9:1)ランダム共重合体0.1gを用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0166】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0167】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0168】
(実施例37)
末端塩素化ポリオレフィンの代わりに塩素化ポリプロピレン(アルドリッチ社製、Mn=100000)20mgを用いた以外は実施例34と同様にして塩素化ポリプロピレンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0169】
(実施例38)
末端塩素化ポリオレフィンの代わりに無水マレイン酸変性ポリプロピレン(Clariant社製「LICOCENE MA(R)」、粘度(140℃)=300mPa・s)20mgを用いた以外は実施例34と同様にして無水マレイン酸変性ポリプロピレンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0170】
(実施例39)
黒鉛粒子(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」、粒子径100〜600μm)12.5g、ウレア−過酸化水素包接錯体12.5g、実施例34と同様にして調製したST−2VP(9:1)ランダム共重合体1.25g、DMF500mlを混合し、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製「スターバーストラボ」)を用いて、室温、シリンダー圧力200MPaの条件で10回湿式粉砕処理を行い、黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0171】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0172】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0173】
(参考例1)
2−ビニルピリジンの代わりにN−フェニルマレイミド(PM)4gを用い、スチレン(ST)の量を36g、アゾビスイソブチロニトリルの量を100mg、トルエンの量を50mlに変更した以外は実施例34と同様にして25.6gのST−PM(9:1)ランダム共重合体(Mn=37000)を得た。
【0174】
前記ST−DMMAA(35:65)ランダム共重合体の代わりに、このST−PM(9:1)ランダム共重合体0.7gを用い、黒鉛粒子の量を7g、ウレア−過酸化水素包接錯体の量を7g、DMFの量を300mlに変更した以外は実施例1と同様にして黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液を24時間静置した後、目視により観察したところ、黒鉛粒子は沈降せず、得られた分散液は分散安定性に優れたものであった。
【0175】
得られた黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化黒鉛粒子を回収した。この微細化黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、長さが1〜20μm、幅が1〜20μm、厚さが10〜50nmの板状に微細化されたものであることが確認された。
【0176】
この微細化黒鉛粒子10mgを用いた以外は実施例34と同様にして末端塩素化ポリオレフィンで処理された微細化黒鉛粒子を得た。この微細化黒鉛粒子2mgをトルエンまたはヘキサン1mlに分散させ、調製直後および1日間放置した後の分散状態を目視により観察した。その結果を表6に示す。
【0177】
【表6】
【0178】
表6に示した結果から明らかなように、アミノ基を有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を反応性部位を有するポリオレフィンで処理した場合(実施例34〜39)、得られた微細化黒鉛粒子はトルエン分散安定性に優れたものであった。このことから、微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体にはポリオレフィン鎖が導入されていることが確認された。一方、アミノ基を有しない芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を反応性部位を有するポリオレフィンで処理した場合(参考例1)には、トルエン分散性やヘキサン分散性が認められなかった。これは、参考例1においては、微細化黒鉛粒子中の芳香族ビニル共重合体にアミノ基などの官能基が存在しないため、反応性部位を有するポリオレフィンとの反応が進行せず、前記芳香族ビニル共重合体にポリオレフィン鎖が導入されなかったためと推察される。
【0179】
また、2VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を末端塩素化ポリオレフィンで処理した場合(実施例34および実施例39)、得られた微細化黒鉛粒子はヘキサン分散安定性に優れたものであった。一方、DMAMA単位または4VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を末端塩素化ポリオレフィンで処理した場合(実施例35〜36)には、調製直後の微細化黒鉛粒子は調製直後のヘキサン分散性には優れるものの、ヘキサン分散安定性は低下することがわかった。これは、2VP単位に比べて、DMAMA単位や4VP単位には末端塩素化ポリオレフィンが反応しにくく、ポリオレフィン鎖の導入量が低下し、且つ、末端塩素化ポリオレフィンが結合しても立体的な極性基を遮蔽する効果が少なかったためと推察される。また、2VP単位を含有する芳香族ビニル共重合体を備える微細化黒鉛粒子を塩素化ポリプロピレンまたは無水マレイン酸変性ポリプロピレンで処理した場合(実施例37〜38)にも、調製直後の微細化黒鉛粒子は調製直後のヘキサン分散性には優れるものの、ヘキサン分散安定性は低下することがわかった。これは、前記塩素化ポリプロピレンや前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、分子内部に官能基を有するものであり、分子末端に官能基を有する末端塩素化ポリオレフィンに比べて、2VP単位に対する反応性が低く、ポリオレフィン鎖の導入量が低下し、また、ポリプロピレン部位のタクティシティーが高く、溶解性が乏しいためと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0180】
以上説明したように、本発明によれば、溶媒中や樹脂中に高度に分散させることが可能であり、しかも分散安定性に優れた微細化黒鉛粒子を得ることが可能となる。また、このような微細化黒鉛粒子を溶媒や樹脂に分散させることによって分散安定性に優れた分散体を容易に製造することが可能となる。さらに、本発明の微細化黒鉛粒子は、グラファイト構造が保持されており、黒鉛本来の特性(例えば、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、熱伝導性、導電性、潤滑性)を損なっておらず、前記特性を樹脂に容易に付与することが可能となる。
【0181】
したがって、本発明の微細化黒鉛粒子は、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、熱伝導性、導電性、潤滑性などを付与することが可能な充填材などとして有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備えることを特徴とする微細化黒鉛粒子。
【請求項2】
前記芳香族ビニル共重合体が、前記ビニル芳香族モノマー単位と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピリジン類、無水マレイン酸およびマレイミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される他のモノマー単位とを備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項3】
前記芳香族ビニル共重合体がブロック共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項4】
前記板状黒鉛粒子の厚さが0.3〜1000nmであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項5】
前記板状黒鉛粒子の表面近傍の全炭素原子の50%以下の炭素原子に、水酸基、カルボキシル基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が結合していることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項6】
前記芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項7】
前記芳香族ビニル共重合体が官能基を有するものであり、
前記炭化水素鎖は、前記官能基と反応する部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種が前記官能基と結合することにより形成されたものであることを特徴とする請求項6に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項8】
前記官能基がアミノ基であることを特徴とする請求項7に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項9】
前記官能基と反応する部位が、塩素原子、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7または8に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項10】
溶媒と、該溶媒中に分散された請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子とを含有することを特徴とする黒鉛粒子分散液。
【請求項11】
前記溶媒が疎水性溶媒であり、前記微細化黒鉛粒子が請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子であることを特徴とする請求項10に記載の黒鉛粒子分散液。
【請求項12】
黒鉛粒子、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物、および溶媒を混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物に粉砕処理を施す粉砕工程と、
を含むことを特徴とする微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項13】
前記過酸化水素化物が、カルボニル基を有する化合物と過酸化水素との錯体であることを特徴とする請求項12に記載の微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項14】
前記粉砕処理が超音波処理または湿式粉砕処理であることを特徴とする請求項12または13に記載の微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項15】
前記芳香族ビニル共重合体が官能基を有するものであり、
前記粉砕工程で得られた微細化黒鉛粒子と、前記官能基と反応する部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種とを混合し、前記芳香族ビニル共重合体に、前記アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種を結合させて、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種を導入する炭化水素鎖導入工程をさらに含むことを特徴とする請求項12〜14のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項16】
前記官能基がアミノ基であることを特徴とする請求項15に記載の微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項1】
板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備えることを特徴とする微細化黒鉛粒子。
【請求項2】
前記芳香族ビニル共重合体が、前記ビニル芳香族モノマー単位と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピリジン類、無水マレイン酸およびマレイミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される他のモノマー単位とを備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項3】
前記芳香族ビニル共重合体がブロック共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項4】
前記板状黒鉛粒子の厚さが0.3〜1000nmであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項5】
前記板状黒鉛粒子の表面近傍の全炭素原子の50%以下の炭素原子に、水酸基、カルボキシル基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が結合していることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項6】
前記芳香族ビニル共重合体に結合した、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素鎖をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項7】
前記芳香族ビニル共重合体が官能基を有するものであり、
前記炭化水素鎖は、前記官能基と反応する部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種が前記官能基と結合することにより形成されたものであることを特徴とする請求項6に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項8】
前記官能基がアミノ基であることを特徴とする請求項7に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項9】
前記官能基と反応する部位が、塩素原子、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7または8に記載の微細化黒鉛粒子。
【請求項10】
溶媒と、該溶媒中に分散された請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子とを含有することを特徴とする黒鉛粒子分散液。
【請求項11】
前記溶媒が疎水性溶媒であり、前記微細化黒鉛粒子が請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子であることを特徴とする請求項10に記載の黒鉛粒子分散液。
【請求項12】
黒鉛粒子、下記式(1):
−(CH2−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物、および溶媒を混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物に粉砕処理を施す粉砕工程と、
を含むことを特徴とする微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項13】
前記過酸化水素化物が、カルボニル基を有する化合物と過酸化水素との錯体であることを特徴とする請求項12に記載の微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項14】
前記粉砕処理が超音波処理または湿式粉砕処理であることを特徴とする請求項12または13に記載の微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項15】
前記芳香族ビニル共重合体が官能基を有するものであり、
前記粉砕工程で得られた微細化黒鉛粒子と、前記官能基と反応する部位を有する、アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種とを混合し、前記芳香族ビニル共重合体に、前記アルキル化合物、オリゴオレフィンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1種を結合させて、アルキル鎖、オリゴオレフィン鎖およびポリオレフィン鎖からなる群から選択される少なくとも1種を導入する炭化水素鎖導入工程をさらに含むことを特徴とする請求項12〜14のうちのいずれか一項に記載の微細化黒鉛粒子の製造方法。
【請求項16】
前記官能基がアミノ基であることを特徴とする請求項15に記載の微細化黒鉛粒子の製造方法。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12B】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図12A】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12B】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図12A】
【公開番号】特開2012−236753(P2012−236753A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127081(P2011−127081)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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