説明

微細炭素繊維の表面処理方法及び該方法で製造した被覆微細炭素繊維

【課題】
本発明は、複合材料としたときに樹脂マトリックス材料と接着性に優れ、機械的特性の優れた複合材料を与えるような微細炭素繊維を得るために、微細炭素繊維の表面処理後に繊維を洗浄する必要がない処理法であって、しかも短時間で処理が可能で容易な微細炭素繊維の表面処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
トリメリット酸などの芳香族カルボン酸を用いて、微細炭素繊維を表面処理する方法及び該方法を用いて得られた微細炭素繊維を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細炭素繊維の表面処理法に関するものである。さらには、樹脂マトリックスとのぬれ性改善を目的とした微細炭素繊維の表面処理技術及びカーボンナノチューブを含有する複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブに代表される微細炭素繊維は優れた力学特性や高い導電性や熱伝導性などの特性を有するため、例えば、合成樹脂、ゴム、セラミックス、金属等の各種材料に配合されるフィラー材として用いられ、複合材料の力学特性、電気伝導性、熱伝導性などの物性を向上することが期待されている。しかし多数の研究結果からわかったように、カーボンナノチューブの欠陥の少ない表面構造が、通常構造材料用複合材料に用いられるマトリックス樹脂などとのぬれ性を悪くする方向に働くと推定され、カーボンナノチューブはマトリックス材(例えば合成樹脂、ゴム、セラミックス、金属等)との界面接着力が弱いため、プル−アウト(Pull−out)現象は発生し、十分な物性値が得られない(非特許文献1〜2参照)。
【0003】
炭素原子が網状に結合したシート一層が筒状になったカーボンナノチューブを含有する複合材料については、次のことが指摘されている(非特許文献2〜3参照)。すなわち、機械的強度を発現させる際に重要なのがカーボンナノチューブとマトリックス材料との接着強度である。また、炭素繊維複合材料における界面構造はマトリックス材料との結合力への影響が重大であり、炭素繊維の界面構造の制御が重要であることが一般的に知られている(非特許文献4参照)。マトリックス材としては金属、セラミック、ポリマー、炭素などが考えられるが、カーボンナノチューブの欠陥の少ないグラフェンシートからなる表面構造が、構造材料用複合材料に用いられるマトリックスポリマーや金属などとのぬれ性を悪くする方向に働くと推定される。期待した強度の高い複合材料を得るにはカーボンナノチューブと樹脂マトリックスの界面結合を強化する必要がある。
【0004】
例えば、酸素プラズマ(Oxygen plasma)等の酸化処理などの方法でカーボンナノチューブの表面欠陥を増やすことによって、マトリックス材との界面接着強度を改善する報告がある(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、このような改質法によれば、カーボンナノチューブの表面欠陥の増加によりカーボンナノチューブ自身の物性も落ちるため、複合材の物性改善の面からは望ましくない。
【0005】
また、マトリックス材に応じたカーボンナノチューブ表面の被覆処理が検討されてきた。例えば金属複合材にはカーボンナノチューブ表面を金属被覆層で覆う方法(例えば、特許文献4〜6参照)、セラミックス基複合材にはゾルーゲル法、CVD法あるいはSiOガスを用いたコンバージョン法によって、SiCの被膜を形成する方法(例えば、特許文献7、8参照)、また、樹脂基複合材の場合、ポリマーラッピングなどの方法(例えば、非特許文献5参照)が提唱されている。しかし、ポリマーラッピングしやすくなるためには、カーボンナノチューブの酸化処理や官能基を導入する化学反応が必要であるので、実際の操作プロセスは複雑になり、コスト的に高くなる問題点がある。
【0006】
カーボンナノチューブに化学反応させてチューブ表面に官能基を導入する薬液による表面処理方法については下記の報告が複数ある。
【0007】
カーボンナノチューブをコハク酸アシル過酸化物中で加熱し、カーボンナノチューブの表面にカルボキシル基を導入する表面処理方法が記載されている(例えば、特許文献9)。
【0008】
カーボンナノチューブに一旦別の化合物(3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド)を反応させて足場を作り、そこにトリメリット酸を化学結合させて表面処理を行なう報告がされている(例えば、非特許文献6)。
【0009】
非特許文献7では、炭素繊維を酸化処理し、一旦水酸基を炭素繊維に結合させ、その水酸基にトリメリット酸で表面処理をすることが報告されている。
【0010】
しかしながら、いずれも用いる薬剤が強酸であるか、または大掛かりな装置が必要であるため、廃液の後処理や表面修飾するためプロセスのコストの問題を抱えていた。
【0011】
乾式処理法は酸化性雰囲気中で加熱処理することを基本技術とし、処理後に繊維を洗浄する必要がないという大きな利点があり、多くの改良方法が提案されてきている。その方法として、オゾンやプラズマを利用した気相酸化法が知られている。オゾンを利用して空気酸化を行う場合、通常は加熱器を有するチャンバー内にオゾン化空気を導入して炭素繊維を処理することが行われる。オゾンは非常に分解し易く、特に高温ほど分解が激しいため低温で行われるのが一般的であるが、この場合酸化反応はきわめて遅くなる。反応を促進するために、オゾン濃度を高める必要がありそのためには過剰のオゾンを供給せねばならずオゾンの反応効率が悪くなるなどの問題点を有している。また、オゾンは人体に極めて有害であるという危険性を有している。また、プラズマ処理は減圧下で放電を行わせるので連続処理を行うことはできず、工業化には不向きである。
【0012】
上記の様々な問題により、微細炭素繊維の表面処理についてはまだ改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−300716号公報
【特許文献2】特表2004−535349号公報
【特許文献3】特表2003−505332号公報
【特許文献4】特許第2953996号公報
【特許文献5】特公昭63−60152号公報
【特許文献6】特表2004−10978号公報
【特許文献7】特開2005−75720号公報
【特許文献8】特開平05−229886号公報
【特許文献9】特開2007−217194号公報
【非特許文献1】Pulickel M. Ajayan, Linda S. Schadler, Cindy Giannaris, Angel Rubio, Adv. Mater. 2000, 12, No.10, 750−753
【非特許文献2】Rupesh Khare, Suryasarathi Bose, Journal of Minerals& Materials Characterization & Engineering, 2005, vol.4, No.1, 31−46
【非特許文献3】「カーボンナノチューブ」化学同人、2001年、p.115
【非特許文献4】「複合材料と界面−素材の高機能化と制御」材料技術研究協会、1988年、p.251
【非特許文献5】A. Star, J.F.Stoddart, D. Steuerman, M. Diehl, A. Boukai, E.W.Wong, X.Yang, S.−W. Chung, H. Choi, J.R.Heath, Angew. Chem. Int. Ed. 2001,40,1721−1725.
【非特許文献6】J.AM.CHEM.SOC.2008,No130,8733−8740
【非特許文献7】American Chemical Society,1995,No585, 348−361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
微細炭素繊維は、導電性材料・金属強化材料などの様々な用途で利用が期待されている。しかしながら、微細炭素繊維は一般にぬれ性が悪くて、微細炭素質繊維の表面と樹脂や金属材料との馴染みが悪い、微細炭素質繊維で強化したはずの繊維強化プラスチックの機械的強度が期待する水準に到達しないなどの諸問題が発生していた。そこで、本発明は微細炭素繊維とマトリックスである樹脂材料等との密着性を高めるために、微細炭素繊維の表面ぬれ性を低コストで改善する方法を提供するとともに該方法を用いて表面処理をした被覆微細炭素繊維を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、トリメリット酸や安息香酸など芳香族カルボン酸を用いて、直接、微細炭素繊維の表面処理を行い、樹脂などへ混練した際のぬれ性を向上させる方法及び該方法を用いて得られたことを特徴とする被覆微細炭素繊維を提供するものである。
【0016】
本発明は、微細炭素繊維の表面を芳香族カルボン酸により処理して得られたことを特徴とする被覆微細炭素繊維である。
【0017】
前記芳香族カルボン酸を直接微細炭素繊維の表面に接触させて処理したことを特徴とする前記被覆微細炭素繊維である。
【0018】
前記芳香族カルボン酸が、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸(2-ヒドロキシベンゼンカルボン酸)、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、及びケイ皮酸(3-フェニルプロパ-2-エン酸)、並びにこれらの芳香族カルボン酸の誘導体から選択される1種または2種以上であることを特徴とする前記被覆微細炭素繊維である。
【0019】
前記メリット酸は、トリメリット酸、無水トリメリット酸、及びヘミメリット酸から選択される1種以上であることを特徴とする前記被覆微細炭素繊維である。
【0020】
前記被覆微細炭素繊維と樹脂材料からなることを特徴とする複合材料である。
【0021】
芳香族カルボン酸を直接、微細炭素繊維の表面に接触させて処理する方法である。
【0022】
前記表面処理方法で使用する、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸(2-ヒドロキシベンゼンカルボン酸)、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、及びケイ皮酸(3-フェニルプロパ-2-エン酸)、並びにこれらの芳香族カルボン酸の誘導体から選択される1種または2種以上であることを特徴とする前記微細炭素繊維の表面処理方法である。
【0023】
前記表面処理方法で使用する、メリット酸が、トリメリット酸、無水トリメリット酸、またはヘミメリット酸から選択される1種以上であることを特徴とする微細炭素繊維の表面処理方法である。
【0024】
本発明は、微細炭素繊維と芳香族カルボン酸の高い親和性に着目し、完成させたものである。芳香族カルボン酸は、ベンゼン環及びカルボン酸構造 (R−COOH) を有する化合物であり、カルボン酸構造 (R−COOH) を酸成分とし、親水性である。一方、カーボンナノチューブは、六角網目状に配列した炭素原子のシートを筒状に巻いた形態のものであり、直径Dが1.0nm(ナノメートル)〜150nmである。原子レベルから見れば, 規則正しい六員環ネットワークで形成されているので、芳香環化合物のようなπ電子リッチな有機物質に対して高い親和性を持っている。本発明は、微細炭素繊維中の炭素原子による六員環構造と、芳香族カルボン酸中のベンゼン環との強いファンデルワールス力及びπ−π相互作用などにより強い吸着をさせることを推測し、完成させたものである。芳香族カルボン酸由来のカルボン酸が、微細炭素繊維と樹脂マトリクスへのぬれ性を向上させるころができる。なお、芳香環を持たない直鎖カルボン酸では微細炭素繊維を酸化処理などの前処理を行わない限り微細炭素繊維との効率的な付着は起こり難いものである(たとえば、Polymer,2007,Vol.48,No.14,4034−4040)。
【0025】
これまでは官能基を微細炭素繊維に導入する際は、アルカリや酸により処理し、水酸基やカルボキシル基を導入していた。もしくは、その微細炭素繊維に化学結合した官能基を足場に、さらに他の化合物を結合させて表面処理を行なっていた。本発明を用いれば、酸処理などをせずに直接、トリメリット酸や安息香酸により表面修飾することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、微細炭素繊維を、塩酸などによる修飾や官能基の導入を必要とせずに、直接、表面処理でき、かつ微細炭素繊維の全体に芳香族カルボン酸溶液を行き渡らせればよいため 短時間で表面処理することができる。本発明により処理された炭素繊維は、複合材料に用いたときにマトリックス材料との接着性に優れているので、機械的特性の優れた複合材料が得られる。芳香族カルボン酸で表面処理後、ろ過、洗浄等の後処理工程が不要であり、従って微細炭素繊維の表面を低コストで迅速に処理することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】芳香族カルボン酸であるメリット酸を用いてCNT表面処理の概念図
【図2】本発明に係る炭素繊維構造体の第一中間体のSEM写真である。
【図3】本発明に係る炭素繊維構造体の第一中間体のTEM写真である。
【図4】本発明に係る炭素繊維構造体のSEM写真である。
【図5】本発明に係る炭素繊維構造体のTEM写真である。
【図6】本発明に係る炭素繊維構造体のSEM写真である。
【図7】本発明に係る微細炭素繊維A及び各種処理済微細炭素繊維Aの水とのぬれ性評価
【図8】TG分析による微細炭素繊維Aのトリメリット酸の付着量の確認試験
【図9】表面処理後の微細炭素繊維Aの表面状態の観察(SEM写真・7万倍)
【図10】表面未処理微細炭素繊維Aを混練したエポキシ樹脂複合材の断面状態の観察(SEM写真・3千倍)
【図11】表面未処理微細炭素繊維Aを混練したエポキシ樹脂中の表面濡れ状態の観察(SEM写真・10万倍)
【図12】表面処理微細炭素繊維Aを混練したエポキシ樹脂複合材の断面状態の観察(SEM写真・3千倍)
【図13】表面処理微細炭素繊維Aを混練したエポキシ樹脂中の表面濡れ状態の観察(SEM写真・10万倍)
【図14】表面処理微細炭素繊維Aを混練したエポキシ樹脂中の表面濡れ状態の観察(SEM写真・10万倍)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、トリメリット酸や安息香酸など芳香族カルボン酸を用いて、直接、微細炭素繊維の表面処理を行い、樹脂などへ混練した際のぬれ性を向上させる方法及び該方法を用いて得られたことを特徴とする被覆微細炭素繊維からなる。
【0029】
芳香族カルボン酸により、微細炭素繊維を処理する際は、芳香族カルボン酸を水または有機溶媒に溶かした後、そのまま霧吹きで噴霧することもでき、溶液に微細炭素繊維を含浸させてもよい。微細炭素繊維をエタノール等で造粒工程を通る際に、吹き付けると芳香族カルボン酸の表面への行き渡りがより効率的となる。そのため、別途、新たな工程を付加する必要はなく、処理時間もほとんど必要としない。
【0030】
好ましい芳香族カルボン酸と微細炭素繊維の比率は、1:4〜1:2である。さらに好ましくは、1:4〜3:8である。
【0031】
本発明で用いる芳香族カルボン酸は、安息香酸(ベンゼンカルボン酸)、フタル酸(ベンゼン−1,2−ジカルボン酸)、イソフタル酸(ベンゼン−1,3−ジカルボン酸)、テレフタル酸(ベンゼン−1,4−ジカルボン酸)、サリチル酸(2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸)、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、またはケイ皮酸(3−フェニルプロパ−2−エン酸)もしくはそれらの誘導体が好ましい。誘導体とは、無水体、水和物もしくはそれらの塩が結合したものを含む。
【0032】
本発明で用いる好ましい芳香族カルボン酸は、1つのベンゼン環に結合するカルボキシル基の数が多いほうが好ましい。そのため芳香族カルボン酸の中では、メリット酸、さらに好ましくはトリメリット酸CAS528−44−9Oもしくは無水トリメリット酸CAS552−30−7またはその誘導体がよい。
【0033】
本発明の芳香族カルボン酸により表面処理をした微細炭素繊維を用いれば、表面処理をしない微細炭素繊維と比較して、樹脂に混練した際に、微細炭素繊維と樹脂マトリクスの間に存在する空隙を低減するかまたは無くすことができる。よって、本発明により表面処理をした微細炭素繊維を用いて樹脂との複合材料を成形した場合は、微細炭素繊維と樹脂マトリクスとの接着性が良好なため、曲げ強度及び弾性率などの力学特性が向上する。
【0034】
複合材料を製造する際に、微細炭素繊維の好ましい配合量は各種樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲である。この範囲であると樹脂の特性を損ねることがなく、力学特性や良好な導電性が確認できる。より好ましくは、配合量は各種樹脂100重量部に対して0.2〜10重量部の範囲である。
【0035】
本発明の方法は、微細炭素繊維に芳香族カルボン酸を接触させる様態であるため、微細炭素繊維に強固な化学結合により直接、官能基を導入する従来の方法とは異なる。そのため、本発明の方法により表面処理を行なっても、別化合物にはなる事がないので、微細炭素繊維の安全性の知見が得られている場合は、本発明で被覆をしても安全性の確保が保たれる可能性が高い。
【0036】
本発明で被覆微細炭素繊維とは、微細炭素繊維を芳香族カルボン酸で被覆した微細炭素繊維を意味する。
【0037】
本発明の微細炭素繊維としては、例えば、単層、二層、三層、四層及び多層のカーボンナノチューブを示し、それぞれ目的に応じて用いる事が出来る。本発明においては、より好ましくは、多層のカーボンナノチューブが用いられる。多層のカーボンナノチューブは、製造コストにおいても単層のカーボンナノチューブよりの同重量あたりならば安価である。また樹脂に添加した際に分散もし易いため、力学特性を向上させる目的では、多層のカーボンナノチューブのほうが望ましい。カーボンナノチューブの製造方法に関しては、特に制限されるものではなく、触媒を用いる気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法及びHiPco法(High−pressure carbon monoxide process)等、従来公知のいずれの製造方法でもよい。
【0038】
例えば、レーザー蒸着法により単層のカーボンナノチューブを作製する方法を以下に示す。原料としてグラファイトパウダーと、ニッケル及びコバルト微粉末混合ロットを用意した。この混合ロットを665hPa(500Torr)のアルゴン雰囲気下、電気炉により1250℃に加熱し、そこに350mJ/PulseのNd:YAGレーザーの第二高調波パルスを照射し、炭素と金属微粒子を蒸発させることにより、単層のカーボンナノチューブを作製することができる。
【0039】
以上の作製方法は、あくまで典型例であり、金属の種類、ガスの種類、電気炉の温度、レーザーの波長等を変更してもよい。また、レーザー蒸着法以外の作製法、例えばHiPco法、気相成長法、アーク放電法、一酸化炭素の熱分解法、微細な空孔中に有機分子を挿入して熱分解するテンプレート法、フラーレン・金属共蒸着法等、他の手法によって作製された単層のカーボンナノチューブを使用してもよい。
【0040】
例えば、定温アーク放電法により二層のカーボンナノチューブを作製する方法を以下に示す。基板は表面処理されたSi基板を用い、処理方法としては触媒金属及び触媒助剤金属を溶解した溶液中に、アルミナ粉末を30分間浸し、さらに3時間超音波処理により分散させて得られた溶液をSi基板に塗布し、空気中において120℃で維持間乾燥させた。カーボンナノチューブ製造装置の反応室に基板を設置し、反応ガスとして水素とメタンの混合ガスを用い、ガスの供給量は水素を500sccm、メタンを10sccmとし、反応室の圧力を70Torrとした。陰極部はTaよりなる棒状の放電部を用いた。次に陽極部と陰極部及び陽極部と基板との間に直流電圧を印加し、放電電流が2.5Aで一定になるように放電電圧を制御した。放電により陰極部の温度が2300℃になると正規グロー放電状態から異常グロー放電状態になり、放電電流が2.5A、放電電圧が700V、反応ガス温度が3000℃の状態を10分間行うことで、基板全体に単層及び2層のカーボンナノチューブを作製することができる。
【0041】
以上の作製方法は、あくまで一例であり、金属の種類、ガスの種類等、諸条件を変更してもよい。また、アーク放電法以外の作製法によって作製された単層カーボンナノチューブを使用してもよい。
【0042】
例えば、気相成長法により三次元構造を有した多層カーボンナノチューブを作製する方法を以下に示す。基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して繊維構造体(以下、中間体)が得られ、これをさらに、例えば1000〜3000℃の範囲のいずれかの温度で、高温アニール処理することで黒鉛化度の高い多層カーボンナノチューブを作製することができる。
【0043】
高温アニール処理後に得られる多層カーボンナノチューブの黒鉛化度の度合いは、1000〜3000℃の範囲において、高温アニール処理温度が高いほど、黒鉛化度の高い多層のカーボンナノチューブが得られる。
【0044】
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素、エタノール等のアルコール類が使用されるが、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、少なくとも2つ以上の炭素化合物とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成過程においては、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様を含むものである。雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用い、触媒としては鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。
【0045】
中間体の合成は、通常行われている炭化水素などのCVD法を用い、原料となる炭化水素及び触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する。これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、前記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有するカーボンナノチューブ構造体(中間体)が複数集まった数センチから数十センチの大きさの集合体を合成する。
【0046】
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。しかしこの熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる、例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。もちろん、このような三次元的なカーボンナノチューブの成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受けるが、概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させることで、上記したような炭素物質の成長を一定方向とすることなく、制御下に他方向として、三次元構造を形成することが出来るものである。なお、生成する中間体においては、繊維相互が粒状体により結合された前記したような三次元構造を容易に形成させる上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度及びガス温度等を最適化することが好ましい。
【0047】
触媒及び炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の範囲の一定温度で加熱生成して得られた中間体は、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合わせたような構造を有し、ラマン分光分析をすると、Dバンドが非常に大きく、欠陥が多い。また、生成した中間体は、未反応原料、非繊維状炭素物、タール分及び触媒金属を含んでいる。
【0048】
従って、このような中間体からこれら残留物を除去し、欠陥が少ないカーボンナノチューブ構造体を得るためには、適切な方法で900〜3000℃で熱処理を行う。
【0049】
すなわち、例えば、この中間体を800〜1300℃で加熱して未反応原料やタール分などの揮発分を除去した後、1500〜3000℃でアニール処理することによって所期の構造体を調製し、同時に繊維に含まれる触媒金属を蒸発させて除去する。なお、この際、物質構造を保護するために不活性ガス雰囲気中に還元ガス又は微量の一酸化炭素ガスを添加してもよい。また、アニール温度を900〜1500℃で処理をした場合は、表面におうとつ・括れ・金属が多く荒い形状となり、結晶性は低くなる。
【0050】
前記中間体を1500〜3000℃の範囲の温度でアニール処理すると、炭素原子からなるパッチ状のシート片は、それぞれ結合して複数のグラフェンシート状の層を形成する。
【0051】
樹脂の力学特性を向上させる際には、微細炭素繊維のぬれ性の調整が重要な要因である。一般に表面処理をしていない微細炭素繊維においては、表面に凹凸・括れ・不純物・金属が多く荒い形状の場合、結晶性が低い場合、または繊維方向が一様でない表面形状であると樹脂等へのぬれ性が良好となる。これらの表面形状の性質は、各種製造方法でも違いが生じる。特には微細炭素繊維の表面をアニール処理する温度を、低くした場合(900〜1500℃程度)に生じやすい。本発明は、結晶性が高くぬれ性の不良な微細炭素繊維のぬれ性を向上させる点で特に優れ、凹凸などが多いもののぬれ性をさらに向上させる相乗効果も確認できる。
【0052】
また、このような高温熱処理前もしくは処理後において、カーボンナノチューブ構造体の円相当平均径を数センチに解砕処理する工程と、解砕処理されたカーボンナノチューブ構造体の円相当平均径を50〜100μmに粉砕処理する工程とを経ることで、所望の円相当平均径を有するカーボンナノチューブを作製する。
【0053】
炭素材料の黒鉛化度の評価を行う方法としては、ラマン分光分析装置を用いたR値を測定する方法がある。そのため、微細な炭素材料であるカーボンナノチューブについても、ラマン分光分析により測定、算出されるR値を黒鉛化度の指標に用いられている。
【0054】
ラマン分光分析において、大きな単結晶黒鉛はグラフェン構造に乱れがないため、1500〜1600cm−1にGバンド(IG、1580cm−1)しか現れない。しかしながら、結晶が有限の微小サイズであること、及びグラフェン構造に欠陥がある場合には、1250〜1400cm−1にDバンド(ID、1360cm−1)が出現する。
【0055】
R値とは、このグラファイト構造の乱れに起因する1250〜1400cm−1のDバンドとグラフェン構造に起因する1500〜1600cm−1に現れるGバンドの強度比(ID/IG)の事である。
【0056】
本発明では、堀場ジョバン・イボン社製ラマン分光分析装置LabRamHR−800を使用して、アルゴンイオンレーザー(514nm)、レーザースポット径2〜3μm、レーザーパワー2mWの励起波長を用いて測定した。
【0057】
以上の作製方法は、あくまで一例であり、金属の種類、ガスの種類等、諸条件を変更してもよい。また、気相成長法以外の作製法によって作製された多層のカーボンナノチューブを使用してもよい。
【0058】
なお、本発明でいうカーボンナノチューブは微細炭素繊維の1種であり、内部に中空構造をもつものをいう。
【0059】
なお、前記気相成長炭素繊維は、前記例示の製造方法により得られるものに限定されず、炭素源となる化合物を遷移金属の触媒作用により浮遊状態で炭素繊維もしくは炭素ウィスカーとすることができる製造方法であればどのような製造方法によって得られるものであっても良い。
【0060】
前記グラファイトウィスカーは、前記気相成長炭素繊維を2000℃以上、好ましくは2800℃以上の高温に加熱することにより製造することができる。熱処理は通常、窒素、アルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下に行なわれる。熱処理に要する時間は、5分以上であれば充分であるが、通常、30分程度の時間がかかる。
【実施例1】
【0061】
本発明で用いた微細炭素繊維は、次のように合成を行なった。
【0062】
CVD法によって、トルエンを原料として炭素繊維を合成した。
【0063】
触媒としてフェロセン及びチオフェンの混合物を使用し、触媒と原料中の炭素との質量比は、150:1、反応炉への原料ガス導入速度は1300NL/min、圧力は1.03atmとした。合成反応は水素ガスの還元雰囲気で行なった。トルエン、触媒を水素ガスとともに380℃に加熱し、生成炉に供給し、1250℃で熱分解して、炭素繊維構造体(第一中間体)を得た。炭素繊維の外径分布は、最小で40nm、最大で90nm、平均外径は70nmであった。合成された中間体を窒素中で900℃で焼成して、タールなどの炭化水素を分離し、第二中間体を得た。この第二中間体のラマン分光測定のR値は0.98であった。また、この第一中間体をトルエン中に分散して電子顕微鏡用試料調製後に観察したSEM及びTEM写真を図2、3に示す。
【0064】
さらにこの第二中間体をアルゴン中で900℃〜2600℃で高温熱処理し、各種温度で得られた炭素繊維構造体の集合体を気流粉砕機にて粉砕し、本発明に係る炭素繊維構造体を得た。
【0065】
得られた炭素繊維構造体をトルエン中に超音波で分散して電子顕微鏡用試料調製後に観察したSEM及びTEM写真を図4、5に示す。
【0066】
また、得られた炭素繊維構造体をそのまま電子顕微鏡用試料ホルダーに載置して観察したSEM写真を図6に示した。
【0067】
さらに高温熱処理前後において、炭素繊維構造体のX線回折及びラマン分光分析を行い、その変化を調べた。
【0068】
また、得られた高温処理炭素繊維構造体の円相当平均径は、45.8μm、嵩密度は0.0057g/cm3、ラマンID/IG比値は0.094、TG燃焼温度は832℃、面間隔は3.384オングストローム、粉体抵抗値は0.0122Ω・cm、復元後の密度は0.18g/cm3であった。
【0069】
上記炭素繊維構造体に係る各種パラメータは下記の方法に従って測定した。
【0070】
<面積基準の円相当平均径>
まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。対象とされた各炭素繊維構造体の輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化した。
【0071】
<嵩密度の測定>
内径70mmで分散板付透明円筒に1g粉体を充填し、圧力0.1Mpa、容量1.3リットルの空気を分散板下部から送り粉体を吹出し、自然沈降させる。5回吹出した時点で沈降後の粉体層の高さを測定する。このとき測定箇所は6箇所とることとし、6箇所の平均を求めた後、嵩密度を算出した。
【0072】
<ラマン分光分析>
堀場ジョバンイボン製LabRam800を用い、アルゴンレーザーの514nmの波長を用いて測定した。
【0073】
<TG燃焼温度>
マックサイエンス製TG−DTAを用い、空気を0.1リットル/分の流速で流通させながら、10℃/分の速度で昇温し、燃焼挙動を測定した。燃焼時にTGは減量を示し、DTAは発熱ピークを示すので、発熱ピークのトップ位置を燃焼開始温度と定義した。
【0074】
<X線回折>
粉末X線回折装置(JDX3532、日本電子製)を用いて、アニール処理後の炭素繊維構造体を調べた。Cu管球で40kV、30mAで発生させたKα線を用いることとし、面間隔の測定は学振法(最新の炭素材料実験技術(分析・解析編)、炭素材料学会編)に従い、シリコン粉末を内部標準として用いた。
【0075】
[微細炭素繊維A]
平均直径70nm、R値が0.107である微細炭素繊維の合成方法は、CVD法を用い、原料となる炭化水素及び触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解させ、中間体を合成した。得られた中間体を800〜1300℃で加熱して未反応原料やタール分などの揮発分を除去した後、2000℃でアニール処理することによって、平均直径が70nm、R値が0.41である微細炭素繊維Aを得た。
【0076】
[微細炭素繊維B]
平均直径70nm、R値が0.85である微細炭素繊維の合成方法は、微細炭素繊維Aとは、アニール温度を1200℃で処理するのみを違いとして製造し、平均直径が70nm、R値がは0.85である微細炭素繊維Bを得た。
【実施例2】
【0077】
実施例1にて得られた微細炭素繊維A、及び微細炭素繊維Bを各々ボルミル(NITTO KAGAKU CO.LTD, Ball Mill ANZ−50S )60min粉砕処理を行った。
【0078】
[無水トリメリット酸を用いた微細炭素繊維の表面処理]
無水トリメリット酸1gを200mlエタノールに溶かし、溶液を得た。その後、実施例1にて製造した微細炭素繊維A、及び微細炭素繊維B各々2gを、前記溶液に投入し、攪拌しながら室温でエタノールを留去した。更に、得た微細炭素繊維を100℃で1時間以上乾燥させて表面処理は完了した。
【0079】
微細炭素繊維Aについて、表面処理を行なった後に粉砕処理したものとしていないものをそれぞれを蒸留水の液面に添加して、3時間静置状態で保管をした。芳香族カルボン酸で処理をしていない微細炭素繊維は水面に浮いた状態で保持されていた(図7)。左端が微細炭素繊維Aをビーズミルで粉砕処理していないもの、中央がビーズミルで粉砕処理をしたもの、右端がビーズミルで粉砕処理後トリメリット酸で表面処理をしたものである。このことから、表面処理をしていない微細炭素繊維は親水性にならなかったことが推察される。また、右端のトリメリット酸で処理をしたものはほとんど沈降した。沈まずに、蒸留水表面に少量残存しているがこれは表面に十分にトリメリット酸が行き渡らなかった微細炭素繊維によるものと推測する。
【0080】
[微細炭素繊維への無水トリメリット酸の付着の確認]
得られた表面処理をした微細炭素繊維AサンプルをTG((株)マック・サイエンス製、熱分析装置システム WS002)を用いてアルゴンガス及び水素ガス雰囲気で700℃までで昇温させて、重量減少を測定した。図8に示したのは実施例1にして製造した微細炭素繊維Aを改質前と改質後の重量減少の測定結果である。改質前、(Ar+H2)雰囲気中700℃まで昇温しても、重量減少はほぼない。無水トリメリット酸と微細炭素繊維の比率を1:2で改質処理後、約160℃から重量減少しはじめ、250℃付近で重量減少はほぼ終了した。重量減少の割合は24%であった。トリメリット酸の融点(161〜163℃)と沸点(240〜245℃、1.87kPa)から考えれば、24%の減重はトリメリット酸の蒸発によるものと思われる。
【0081】
また、表面処理をした微細炭素繊維AをSEMによって観察し、表面処理をした微細炭素繊維への無水トリメリット酸の表面付着状態を観察した。撮影したSEM写真を図9で示した。未処理微細炭素繊維Aの平滑表面と比べ、処理した微細炭素繊維の表面に何かが付着している様子を確認した。
【0082】
[表面処理を行なった微細炭素繊維と樹脂マトリクスの接着性]
表面処理を行なった微細炭素繊維A及び微細炭素繊維Bを、それぞれエポキシ樹脂((株)ADEKA製、主剤:EP−4901E、硬化剤:EH−3895)に対して微細炭素繊維が0.5%wt質量とあるように添加をし、あわとり練太郎((株)シンキー製、AR−250)で混練処理を8分間行なった。室温で硬化成形を行なった。成形品を破断させて、微細炭素繊維Aの断面のSEM観察を行った(図10〜14)。未処理微細炭素繊維の根元に明らかに存在する隙間と比べ、処理した微細炭素繊維の根元に隙間が無くなり、微細炭素繊維の表面に何かが付着している様子を確認した。
【0083】
[表面処理を行なった微細炭素繊維を混練した樹脂成形体の力学特性]
実施例1、で得た微細炭素繊維A1wt%をビスフェノールF型エポキシ樹脂((株)ADEKA製、主剤:EP−4901E、硬化剤:EH−3895)に添加し、混錬、脱泡後、室温で一晩硬化成型後更に80℃1時間加熱してから、試験片を作製し、3点曲げ試験を行い(SHIMADZU、AUTOGRAPH AG−I 20KNT)、曲げ強度及び弾性率を測定した、その結果を表1に示した。
【0084】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、容易に微細炭素繊維の樹脂へのぬれ性が改善できる表面処理方法を提供する。本発明により処理された微細炭素繊維は、複合材料に用いたときにマトリックス材料との接着性に優れているので、機械的特性の優れた各種複合材料が得られる。

トリメリット酸で処理したものを、水およびエタノールで洗浄処理をしても、いずれも沈降する。すなわち、官能基が残存する。シラン処理後の微細炭素繊維と同様である。大部分は物理的吸着であり、少数は化学的吸着である。陳さん月報より

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細炭素繊維の表面を芳香族カルボン酸により処理して得られたことを特徴とする被覆微細炭素繊維。
【請求項2】
前記芳香族カルボン酸を直接微細炭素繊維の表面に接触させて処理したことを特徴とする請求項1記載の被覆微細炭素繊維。
【請求項3】
前記芳香族カルボン酸が、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸(2-ヒドロキシベンゼンカルボン酸)、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、及びケイ皮酸(3-フェニルプロパ-2-エン酸)、並びにこれらの芳香族カルボン酸の誘導体から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の被覆微細炭素繊維。
【請求項4】
前記メリット酸は、トリメリット酸、無水トリメリット酸、及びヘミメリット酸から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1記載の被覆微細炭素繊維。
【請求項5】
前記被覆微細炭素繊維と樹脂材料からなることを特徴とする複合材料。
【請求項6】
芳香族カルボン酸を直接、微細炭素繊維の表面に接触させて処理する方法。
【請求項7】
前記表面処理方法で使用する、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸(2-ヒドロキシベンゼンカルボン酸)、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、及びケイ皮酸(3-フェニルプロパ-2-エン酸)、並びにこれらの芳香族カルボン酸の誘導体から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項6に記載の微細炭素繊維の表面処理方法。
【請求項8】
前記表面処理方法で使用する、メリット酸が、トリメリット酸、無水トリメリット酸、またはヘミメリット酸から選択される1種以上であることを特徴とする微細炭素繊維の表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−248660(P2010−248660A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99490(P2009−99490)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】