説明

心内血液ポンプ

その間に吐出口(22)が配置されている駆動部(10)とポンプ部(11)とを備える心内血液ポンプが開示される。ポンプ部(11)は、軸方向に送出された流れを捕捉して軸方向に偏向させる柔軟なスクリーン(25)に接合されている。ポンプの吐出量は、吐出口における衝撃損失とスワールとを防止することによって増大される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを含む駆動部と、モータによって駆動されるポンプ羽根車を含むポンプ部と、駆動部及びポンプ部の間に設けられた少なくとも1つの側方吐出口と、ポンプ部に取り付けられて吐出口を覆うスクリーンとを備える心内血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
心内血液ポンプは、少なくとも部分的に心臓に導入されて血液を心臓から動脈に送出する血液ポンプであり、そのポンプは、心臓の手術開口から突出するようにして配置される。そのような心内血液ポンプは、外径が最大で約10〜15mmである。心内血液ポンプの特殊な形態が、血管内血液ポンプである。それらは、患者の脈管系を通して心臓に導入されるが、切開部は心臓から離間した位置に形成される。血管内血液ポンプは、直径が最大で約8mm、硬質部の長さが最大で35mmである。吐出量は、60〜80mmHgの生理的な圧力下において約4.5l/分である。
【0003】
ドイツ共和国特許第10040403号(Impella)には心内血液ポンプについての説明があるが、請求項1の前提部は、それに基づいている。吐出口は、筒状のスクリーンによって覆われる。血液ポンプが心臓弁に配置されて動脈内に送出される場合、このスクリーンは血液ポンプの構造上の長さを実質的に短縮する。このために、ポンプ部と駆動部との大部分を覆うような細長い筒状に、スクリーンを形成することが必要である。
【0004】
ドイツ共和国特許第10336902B3号(Impella)に記載された別の心内血液ポンプは、先端が柔軟なカニューレに接合されたポンプを有する。カニューレの先端には、血液を取り込むための吸入ヘッドが設けられている。吸入ヘッドには、吸引機能を有しない延長部が連結されている。これは、ポンプ装置の心臓内における位置を安定させるためである。
【0005】
心内血液ポンプについては、大きな出力を達成することが重要である。出力はポンプの回転速度を増大させることによって大きくできるが、血液が損傷を被る危険性のために、この方法には限界がある。
【特許文献1】ドイツ共和国特許第10040403号
【特許文献2】ドイツ共和国特許第10336902B3号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大きい吐出量を有する心内血液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の血液ポンプは、請求項1に規定されている。本発明によると、スクリーンが、吐出口の上流側端部でポンプ部から突出していて、吐出口を出た流れが、スクリーンの傾斜した案内部に向けてなめらかに送出されるようになっている。
【0008】
本発明は、ポンプ内部から軸方向の外側の流れへと、衝撃を生じることなくなめらかに遷移することを可能にする。それは、従来技術においては、血液が吐出口を通過するときに衝突損失と乱流とが発生することによって、動的エネルギーの大部分が散逸することによって失われるという洞察に基づいている。本発明によると、スクリーンによる流れ案内効果によってこれらの損失が回避される。このように、スクリーンの目的は、吐出口が閉塞されることを防止するためではなく、吐出口を通過する流れの進路をスクリーンの傾斜した案内部に向かわせるようにすることである。この傾斜した案内部は、吐出開口部に隣接しているために、乱流発生域も停滞水域も形成されることはない。試験の結果、スクリーンをこのように設計することによって、他の条件が一定の場合(同一の差圧と同一の回転速度)、ポンプの吐出量を10〜20%増大させることが可能であることが判った。
【0009】
本発明の好適な実施形態において、スクリーンは柔軟性を有する。このことは、スクリーンを折り返してポンプの外壁上に配置するために変形できることを意味する。外部から力の作用を受けることなく、スクリーンは、その動作位置に自動的に復帰する。スクリーンは、例えばポリウレタン製の薄い膜であり、厚さが0.1〜0.2mmである。一方、スクリーンは、流れが変わって流体圧が低下した場合にも開いておくことができるほどの硬さを有していなければならない。
【0010】
ポンプ羽根車は、吐出口の下まで延在している翼を有することが好ましい。このようにして、流体伝動力を増大させつつ、ポンプ構造の長さを低減させることができる。吐出口の下に配置された翼の部分は、傾斜したスクリーンに当接するように放射状に配設されている。スクリーンは、また、体組織が翼の近傍に侵入して、損傷を受けることを防止する。このように、スクリーンは、心内血液ポンプの製品安全の向上にも貢献する。
【0011】
スクリーンは、流れの方向とは反対方向に90度を超える角度だけ折り返して、ポンプ部に当接させることが可能である。このことは、血液ポンプを筒状の導入用シースを通して体内に導入し、そして、当該固定部を通して取り出さなければならない場合に必要である。柔軟なスクリーンは、押圧されたときポンプの外壁に当接するようにして配置されるが、スクリーンが折り返しの状態にないとき、導入用シースを通してポンプを取り出すことはできない。スクリーンは反転させるつまり折り返すことができるようになっているために、折り返されたスクリーンをポンプ部に押圧した状態で、ポンプが筒状の導入用シースを通して取り出される。
【0012】
スクリーンの案内部は、円錐形または凹面形に、例えば指数曲線形の突出部を形成するように、湾曲していてもよい。いずれの場合にも、スクリーンは、その全長にわたり一定比率で拡幅されている。
【0013】
本発明の特定の実施形態においては、駆動部に取り付けられた保持部材がスクリーンの拡径した端部に係合しており、保持部材は、血液ポンプが導入用シースの中に向けて引かれたとき放射状にスクリーンを後退させる。
【0014】
スクリーンは、ポンプ部に固着されたカニューレに一体形成された部分であってもよい。あるいは、スクリーンは、接着剤またはその他適切な手段を用いてポンプ部に固着されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
心内ポンプ装置は、駆動部10と、それと同軸のポンプ部11とを備える。駆動部10は、モータ(図示せず)を含む。駆動部10の近接端部は、血液用ポンプを作動制御するための電気配線を保持したカテーテル12に接合されている。ポンプ部11は、流入口15を有する吸入ヘッド14が先端に設けられた、細長く可撓性を有するホース形状のカニューレ13に接合されている。吸入ヘッド14に隣接して、水圧によってではなく機械的にカニューレ13を延伸させる柔らかくて弾性的な延長部16が設けられている。この延長部16には、体組織を傷つけないで支持するためのおさげ状端部が設けられている。
【0017】
血液用ポンプの一般構造は、ドイツ共和国特許第10336902B3号に説明されているポンプ装置に相当する。
【0018】
ポンプ部11は、長手方向に延在する複数の帯片21によって駆動部10に連結されたポンプリング20を有する。帯片21間には、血液が放射方向に送出され、その後駆動部10の外側に沿って流れるようにするための吐出口22が配置されている。
【0019】
本発明によれば、スクリーン25が、ポンプ部11に設けられている。それは、ポンプリング20の上に配置された環状スリーブ26と、ポンプリング近傍から突出して連続的に拡径された案内部27とを有する。案内部27は、吐出口22の上流側端部、即ちポンプリング20に隣接した端部から始まっている。
【0020】
図1に示した実施形態において、スクリーン25は凹面形である。それは、案内部27が次第に拡径された指数曲線状の外形を有する。スクリーン25は、環状であって、外周方向が閉じられている。
【0021】
図2は、ポンプ部の拡大縦断面図である。ポンプ羽根車30は、ポンプリング20の内部で長手方向に延在する。それは、放射状に突出した螺旋状の翼32が設けられたハブ31を有する。ハブ31の直径は、流れの方向に進むにつれて次第に大きくなる。翼32は、吐出口22に近接する位置まで延在している。吐出口22は、その長さの半分を超える部分が翼32をおおっている。
【0022】
案内部27は、吐出口22の上流側端部28に直に隣接している。図2において、案内部27は円錐形である。
【0023】
ポンプ羽根車30によって軸方向に送出された流れは、ハブ31によって放射状外向きに偏向され、そしてスクリーン25の傾斜した案内部27によって軸方向へと方向がなだらかに変更される。スクリーン25は、吐出口22をぴったりと囲繞する長さを有する。
【0024】
心内血液ポンプの実用上の実施形態において、駆動部10及びポンプ部11の外径は4.0mmである。スクリーン25の外径は、5.6〜6.0mmである。スクリーンの壁の厚さは、0.1〜0.2mmである。スクリーンは、例えばポリウレタンのような柔軟な材料を用いて形成されている。カニューレ13と一体にそれを形成してもよい。
【0025】
図3は、図2のポンプと同一の部分を示しているが、図3のポンプには案内ワイヤ35が追加されている。血液ポンプを決められた位置に配置する機能を有する案内ワイヤは、患者の体内にまず導入される。次に、血液ポンプは、カテーテルと一緒に、案内ワイヤを摺動するようにして装着される。案内ワイヤは、駆動部10の側面を通過して吐出口22の1つから中に入った後、カニューレ13と延長部16とを通じて延在するように案内される。カテーテル及び血液ポンプが設置された後に、案内ワイヤは抜き取られる。
【0026】
血管内血液ポンプは、筒状の導入用シースを介して患者の体内に挿入される。このために、血液ポンプの外径は、導入用シースの内径より僅かに小さい。挿入中、柔軟なスクリーン25が血液ポンプの外面上に折り畳まれることによって、吐出口22は塞がれる。血液ポンプが導入用シースの先端を抜けたとき、スクリーン25は自動的に展開する。血液ポンプを患者の体内から取り出すことが問題になる。取り出すときスクリーン25が導入用シースの先端に引っ掛るために、導入用シースを通して血液ポンプを取り出すことが出来なくなるかもしれない。スクリーン25は柔軟であるためにスクリーンの案内部が反転し、それにより、スクリーンは、90°の角度を超えてスリーブ26の周囲に折り返され、カニューレ13に当接するように配置される。この状態のとき、血液ポンプは、導入用シースを通して取り出すことが可能である。図2には、折り返された案内部27aが破線で示されている。
【0027】
図4は、別の実施形態を示す。この例では、スクリーン25の外側端部が、駆動部10に固着された棒状の保持部材36に接合されている。図4は、導入用シース40の先端に血液ポンプが挿入される状態を示している。取り出すとき、保持部材36が導入用シース40の端部に当接して血液ポンプの外面上に配置されることによって、スクリーン25は帆と同様の方法で折り畳まれる。
【0028】
導入用シース40の典型的な内径は、12Fのカテーテル(外径4mmに相当)の場合に3.33mm(13F)である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】位置決めのための案内ワイヤが取り付けられた心内血液ポンプを示す図である。
【図2】ポンプ部の縦断面図である。
【図3】案内ワイヤが挿通された図2のポンプ部である。
【図4】導入用シースに引き込まれたときにスクリーンが折り畳まれる実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを含む駆動部(10)と、前記モータによって駆動されるポンプ羽根車(30)を含むポンプ部(11)と、前記駆動部(10)及び前記ポンプ部(11)の間に設けられた側方の吐出口(22)と、前記ポンプ部(11)に取り付けられて、前記吐出口(22)を覆うスクリーン(25)とを備える心内血液ポンプであって、
前記スクリーン(25)は、前記吐出口(22)を出た流れが前記スクリーン(25)の傾斜した案内部(27)に向けてなめらかに案内されるように、前記吐出口(22)の上流側端部(28)の位置で前記ポンプ部(11)から突出していることを特徴とする心内血液ポンプ。
【請求項2】
前記スクリーン(25)は柔軟性を有することを特徴とする請求項1に記載の心内血液ポンプ。
【請求項3】
前記ポンプ羽根車(30)は、前記吐出口(22)の下まで延在する翼(32)を有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の心内血液ポンプ。
【請求項4】
前記吐出口(22)の長さの少なくとも半分の部分が前記翼(32)を覆うことを特徴とする請求項3に記載の心内血液ポンプ。
【請求項5】
前記スクリーン(25)は、流れの方向とは反対方向に90度を超える角度だけ折り返し、前記ポンプ部(11)に当接して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の心内血液ポンプ。
【請求項6】
前記スクリーン(25)の前記案内部(27)は円錐形であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の心内血液ポンプ。
【請求項7】
前記スクリーン(25)の前記案内部(27)は、指数関数的に拡径されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の心内血液ポンプ。
【請求項8】
前記スクリーン(25)は、その全長にわたって一定比率で拡径されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の心内血液ポンプ。
【請求項9】
前記駆動部(10)に固着された保持部材(36)は、前記スクリーン(25)の拡径端部に係合しており、血液ポンプが導入用シース(40)の中に引き込まれたとき、前記スクリーン(25)は放射状に後退することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の心内血液ポンプ。
【請求項10】
カニューレ(13)が前記ポンプ部(11)に固着されているとともに、前記スクリーン(25)は前記カニューレ(13)と一体化された部分であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の心内血液ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−516654(P2008−516654A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536142(P2007−536142)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054767
【国際公開番号】WO2006/040252
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507116684)アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】