心拍検知装置
【課題】車両の乗員の心拍を検知する装置において、RRIを高精度に検知する。
【解決手段】車両における乗員の心拍を検知する心拍検知装置であって、乗員の体表面動作を検知するセンサ部と、センサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出部と、心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出部と、R波算出部により算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較から算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出部とを備え、RRI算出部により算出したRRIが異常値であると判断されると、前記R波算出部は隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、その後前記RRI算出部は前記R波算出部で再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出する。
【解決手段】車両における乗員の心拍を検知する心拍検知装置であって、乗員の体表面動作を検知するセンサ部と、センサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出部と、心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出部と、R波算出部により算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較から算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出部とを備え、RRI算出部により算出したRRIが異常値であると判断されると、前記R波算出部は隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、その後前記RRI算出部は前記R波算出部で再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍検知装置、および心拍検知方法に関し、とりわけ自動車の乗員の心拍検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両の乗員の居眠り運転や眠気による集中力低下を原因とする交通事故が社会問題となっている。運転に支障のある状態まで乗員の覚醒度が低下したことを客観的に検知し、乗員を覚醒させたり休憩を促したりする居眠り運転防止システムの実現が望まれている。
【0003】
そこで、比較的低コストで簡便に乗員の覚醒度を判定する生理指標として心拍が着目されている。これは心拍間隔のゆらぎ解析を行うことによって正副交感神経の活動度合いを計測し覚醒度を判定するものである。一般に心拍間隔のゆらぎは、副交感神経の影響が大きく緊張することにより振幅が減少しリラックスにより振幅が増加する呼吸性変動(Respiratory Sinus Arrhythmia:RSA)、交感神経と副交感神経双方の影響を受け変化する血圧性変動またはマイヤーリズムの変動(Mayer Wave Related Sinus Arrhythmia:MWSA)、および体温調節に関わる変動が知られている。
【0004】
このような心拍間隔ゆらぎ解析を実時間評価が必要な居眠り運転防止システムに適用するには、RRI(R−R Intervalの略)を正確にリアルタイムに算出しなければならない。RRIとは、隣接する2つのR波(一回の拍動で最も振幅の大きいピーク波)の時間間隔のことである。したがって、毎回の拍動によって生じるR波のタイミングを正確に算出することが重要となる。
【0005】
一方、心拍を計測する手段として種々のセンサが検討されているが、車室内に設置するには乗員がわざわざセンサを装着することのない非接触センサが望まれる。このような非接触センサとしては、電波レーダ、超音波レーダ、圧電センサ、空気圧センサなどが挙げられる。これらの非接触センサは、乗員を拘束しないという商品上のメリットがある反面、走行時の振動や心拍以外の身体の動き等もノイズとして検知してしまうという問題がある。このように、心拍を用いた乗員の覚醒度判定においては、非接触センサで取得したノイズ成分の多い受信信号の中から、心拍間隔ゆらぎ解析に必要なRRIを正確に算出することが求められる。
【0006】
特許文献1には、電波式ドップラーセンサ等の体表面動作検出センサを用いて乗員のRRIを計測する心拍計測装置が開示されている。
【0007】
具体的には、体表面動作検出センサの出力信号をバンドパスフィルタで帯域制限した信号のピーク値をR波として算出し、隣り合うR波の時間間隔をRRIとして算出することが記載されている。なお、ピーク値の算出は所定算出時間内における最大値である時間内最大値などを採用する。ここに所定算出時間とは、検出しようとする心拍の最大値にもとづき決定する。例えば、心拍の最大値を300拍/分とした場合、所定算出時間は0.2秒となる。
【0008】
さらに、最大である振幅の50%以上100%以下にピーク値算出を限定することで、ノイズに相当するピーク値を誤ってR波として算出することを回避することが記載されている。
【特許文献1】特開2006−55406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術では、所定算出時間内における最大振幅のピーク値をR波として算出するなど、振幅情報を基本としてR波の算出処理を行っている。しかし、電波式のドップラーセンサを被験者に照射し、実際に取得された受信信号を観測すると、受信信号におけるR波に相当するピーク波は、その一回の拍動区間において観測される複数のピーク波の中で最大振幅のものがほとんどであるが、1回の拍動においてR波に続いて発生する第2のピーク波であるT波やその他被験者の動きに起因するピーク波のほうが大きい振幅をとる場合も存在する。よって、最大振幅の50%以上100%以下にピーク値算出を限定するなどしても、振幅情報に基づいてR波に相当するピーク値を算出しようとする従来の技術では、ノイズなどによるピーク波を誤ってR波として算出してしまう場合が多く存在する。
【0010】
さらに、従来の技術では、振幅情報に基づいて算出したR波に相当するピーク値の時間間隔からヒストグラムを生成し、当該ヒストグラムの最大数の時間間隔より短いピーク値を削除しRRIを算出することが記載されている。しかし、振幅情報に基づいて算出したR波に相当するピーク値には、誤って算出したノイズなどによるピーク波が含まれており精度を上げるには多くのデータと時間が必要となる。よって、乗員の覚醒度を客観的に検知し、乗員を覚醒させたり休憩を促したりする居眠り運転防止システムに適用するには、正確性、リアルタイム性に欠けるという問題がある。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、車両運転時のドライバの緊張感や眠気を含んだ総合的な意識変化を評価をするときに用いる心拍間隔ゆらぎ解析に有用なRRIを正確にリアルタイムに算出することが可能な心拍検知装置、および心拍検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための第1の局面は、
車両における乗員の心拍を検知する心拍検知装置であって、乗員の体表面動作を検知するセンサ部と、センサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出部と、心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出部と、R波算出部により算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較により算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出部とを備え、RRI算出部により算出したRRIが異常値であると判断されると、R波算出部は隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、その後RRI算出部はR波算出部で再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出することを特徴とする。
【0013】
また、RRI算出部は、判断対象のRRIと時間的に1つ前であるRRIとの差分が所定値以上または以下である場合に異常値であると判断することを特徴とする。
【0014】
また、R波算出部は、時間的に1つ前のRRIに最も近くなるようなR波を新たなR波として再算出することを特徴とする。
【0015】
また、心拍ソース信号からバンドパスフィルタにより乗員の心拍の周期性を示す正弦波状の心拍周期信号を算出する心拍周期信号算出部と、心拍周期信号に基づいて、R波が存在する区間を時間的に制限するR波存在区間を設定するR波存在区間設定部とをさらに有し、R波算出部は、R波存在区間のそれぞれにおいて、1つのピーク波をR波として算出することを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、R波をより正確に算出することが可能となる。
【0017】
さらに、R波存在区間設定部は、心拍周期信号の全ての極大値を算出し、極大値をとる時刻を心拍周期信号極大時刻とし、心拍周期信号極大時刻±時間オフセットTofsの区間をR波存在区間と設定することを特徴とする。
【0018】
また、R波存在区間設定部は、前記時間オフセットTofsを少なくとも心拍周期信号の平均周期の1/4以下に設定してもよい。
【0019】
第2の局面は、RRI算出部は、算出されたそれぞれのRRIについて時間的に1つ前のRRIとの差分値を求め、当該差分値の平均値を用いて算出したRRIが異常値かどうかを判断することを特徴とする。
【0020】
第3の局面は、
車両における乗員の心拍を検知する心拍検知方法であって、乗員の体表面動作を検知するセンサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出ステップと、心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出ステップと、R波算出ステップにより算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較により算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出ステップと、RRI算出ステップにおいて算出したRRIが異常値であると判断すると、隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、当該再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の心拍検知装置によれば、心拍の振幅特性だけでなく周期特性も考慮してRRIを算出するため、出力信号にノイズ成分が多く含まれてしまう非接触センサを使用する場合においてもRRIを正確にリアルタイムに算出することが可能となる。したがって、心拍間隔ゆらぎ解析を用いる車両の乗員等の居眠り運転防止システムに適応できる心拍検知装置および心拍検知方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態の心拍検知装置について説明する。図1は、心拍検知装置100の構成を示すブロック図である。心拍検知装置100は、センサ部101と演算部102で構成される。心拍検知装置100は、典型的には図2に示すように、乗員201が着座する運転座席202の背もたれ内部に設置される。なお、心拍検知装置100を設置する際、少なくともセンサ部101が背もたれ部にあればよく、演算部102は別の場所に設置してもよい。
【0023】
センサ部101は、例えば電波式のドップラーセンサであり、乗員201の心拍、呼吸、あるいはそれ以外の物体の動きに応じて振幅が変化した受信信号を出力する(以下、この受信信号を「心拍ソース信号」と呼ぶ)。その他、超音波ドップラーセンサ、圧電センサ、空気圧センサなどの体表面動作検出センサを用いることも可能である。
【0024】
演算部102は、センサ部101の出力信号である心拍ソース信号から各種演算により乗員201の心拍におけるRRI(R−R Intervalの略:時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔)を算出する。そして、演算部102は、心拍周期信号算出部103、R波存在区間設定部104、心拍ピーク信号算出部105、R波算出部106、RRI算出部107で構成される。
【0025】
ここで、ヒトの心電図について説明する。図3は、胸部電極により3分間計測した安静着座状態のヒトの心電図のうち、最初の20秒間の時間波形を示したものである。また、図4は、その心電図におけるRRIを算出することによって取得した3分間のRRIトレンドグラフである。以上のグラフからヒトの心拍に関して以下の3つのことが言える。1.1回の拍動においてR波は最大振幅をとる。2.RRIは概ね800〜1000ms(平均心拍数に換算すると60〜75bpm)の間で推移しており、RRIがその範囲を超えて極端に小さかったり大きかったりすることはない。3.時間的に隣り合う2つのRRIの差分の絶対値は数十ms程度、最大でも60msであり、差分値が小さくなる又は0になることはあっても極端に大きくなることはない。このように、心拍信号には明確な振幅特性および周期特性がある。
【0026】
次に、図5を用いてセンサ部101の受信信号を出力した心拍ソース信号について説明する。点線は、図3の心電図の20秒から30秒の間の時間波形を示している。実線は、図3の心電図計測と同時に計測した心拍ソース信号のうち、同じく20秒から30秒の間の時間波形を示している。これらの波形から、心拍ソース信号に関して以下の3つのことが言える。1.心拍ソース信号の大局的な周期は概ね心電図と一致している。2.心電図のR波が存在する時刻には、心拍ソース信号においても振幅の大きなピーク波が存在し、ほとんどの場合、その振幅は当該拍動区間において最大である。3.非接触センサを用いているためR波を含む心拍以外の動きに起因するピーク波が発生しており、その中にはR波に相当するピーク波より振幅の大きなものも存在する。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、このような心拍ソース信号に対して、従来の技術のように振幅情報を基本としてR波を算出すると、誤ってノイズに起因するピーク波をR波として算出することを回避する処理を行う。先に述べたように心拍信号の振幅特性だけでなく周期性をも利用することにより、高精度にリアルタイムにRRIを検知できるところに特徴がある。詳しくは、後述する。
【0028】
以下、演算部102の具体的な処理について説明する。
【0029】
まず、図6のステップS601からステップS603では、ほぼ1秒周期で発生するR波を高精度かつ効率よく算出するために、R波が存在する確率が高い区間としてR波存在区間を設定する。まず、主に振幅情報を利用してR波を算出するという考えに基づく処理である。
【0030】
ステップS601では、心拍ソース信号を狭帯域のバンドパスフィルタに通過させて、心拍の周期性を強調させた信号(心拍周期信号)を算出する。つまり、ヒトの心拍数は安静時に70bpmで、遅い人では60bpm、速い人では90bpmぐらいの幅があると言われていることから、上記バンドパスフィルタの通過帯域は例えば0.8〜1.5Hzとする。これにより、心拍周期信号は正弦波に近い信号になる。
【0031】
ステップS602では、ステップS601で得られた正弦波状の心拍周期信号における全ての極大値を算出する。計測開始からi番目(i=0、1、2、・・・)の極大値に関して極大値をとる時刻を、心拍周期信号極大時刻Tlm[i]とする。
【0032】
ステップS603では、ステップS602で算出された各心拍周期信号極大時刻を中心としたある区間を、R波が存在する確率が高い区間(R波存在区間)と設定する。例えば、計測開始からi番目(i=0、1、2、・・・)の極大値に対するR波存在区間の開始点Zst[i]および終了点Zed[i]は、時間オフセットをTofsとして以下の数式:Zst[i]=Tlm[i]−Tofs、Zed[i]=Tlm[i]+Tofsを用いて設定する。時間オフセットTofsが大きすぎると、一つのR波存在区間内に存在するピーク波の数が増えてR波を誤検出する可能性が増えてしまう。逆に時間オフセットTofsが小さすぎると、R波がR波存在区間外に存在したときに、当該のRRIの精度が大幅に低下する恐れがある。Tofsは例えば350msと設定すればよい。
【0033】
また、時間オフセットTofsは、少なくとも心拍周期信号の平均周期の1/4以下に設定するようにしてもよい。心拍周期信号の極大値がn個あった場合、心拍周期信号の平均周期Cavは、1番目の心拍周期信号極大時刻とn番目の心拍周期信号極大時刻との差分を極大値数n−1で割ったものであるから、以下の数式:Cav=(Tlm[n]−Tlm[1])/(n−1)、Tofs≦Cav/4で算出する。
【0034】
上記のようにTofsを設定することで、隣り合うR波存在区間が時間的に重複することがほとんどないため、それぞれのR波存在区間においてR波を誤って算出してしまう可能性を低減させることができる。図7に、先に取得した3分間の心拍ソース信号のうち、計測開始後45〜50秒の時間波形を示す。心拍ソース信号(太い実線)から算出した心拍周期信号(細い実線)からさらに極大値を算出し、R波存在区間(細い一点破線で値が1をとっている区間)を設定した。
【0035】
一方、ステップS604からステップS609では、ステップS603で設定したR波存在区間を利用してR波を算出しRRIを算出する。以下で詳細に説明する。
【0036】
ステップS604では、心拍ソース信号を広帯域のバンドパスフィルタに通過させて、心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する。バンドパスフィルタの通過帯域は、例えば0.8〜10Hzとする。通過帯域が大きすぎると算出されるピーク波の数が増え、R波を誤って算出する恐れがある。逆に小さすぎると、ピーク波が振幅方向および時間方向に鈍るためR波の時間的な位置精度が劣化する恐れがある。なお、心拍ピーク信号の算出においては、上記のように心拍ソース信号を用いる以外に心拍ソース信号の差分信号を用いることも可能である。差分信号とは、ある時刻の心拍ソース信号について、時間的にその1つ前の時刻の心拍ソース信号との差分をとった信号のことであり、よりピーク性が強調された信号を得ることができる。
【0037】
ステップS605では、ステップS604で得られた心拍ピーク信号における全てのピーク波を算出する。
【0038】
ステップS606では、ステップS603で得られた全てのR波存在区間において、ステップS605で算出した全てのピーク波のうち、各R波存在区間内に存在する全てのピーク波の中から振幅が最大のものをR波として算出する。このように、R波が存在する確率が高い区間としてR波存在区間を設定することにより、R波を高精度かつ効率よく算出することが可能となる。なお、本実施の形態では、R波存在区間を用いてRRIを算出する方法を説明するが、R波存在区間を用いなくともRRIを算出することができる。
【0039】
図8は、先に述べた計測開始後45秒から数秒間の心拍ソース信号を用いてステップS604からステップS606までを実行した結果を示している。四角印の実線で示したピーク波フラグの値が1であるグラフは、細い破線にて示す心拍ピーク信号からR波である可能性の高いピーク波を算出したものである。例えば、連続するピーク波は省く、振幅値が所定値より小さいピーク波は省くなどの処理によりR波である可能性の高いピーク波を算出する。三角印の細い実線で示したR波フラグの値が1をとっているグラフは、それぞれのR波存在区間(無印の細い実線で値が2をとっている区間)内に存在する全てのピーク波のうち、振幅が最大のものをR波として算出したものである。
【0040】
図6に戻って説明を続ける。ステップS607では、ステップS606で算出されたR波からRRIを算出する。計測開始からi番目(i=0、1、2、・・・)のR波存在区間におけるR波が存在する時刻をTr[i]、計測開始からi番目(i=0、1、2、・・・)のR波存在区間におけるRRIをRRI[i]とすると、RRI[i]は以下の数式:RRI[i]=Tr[i]―Tr[i−1]で求められる。
【0041】
図9に、先に計測した3分間の心拍ソース信号からステップS607で算出したRRI(以下、「センサRRI」と呼ぶ)と、胸部電極により同時に計測した心電図から算出したRRI(以下、「リファRRI」と呼ぶ)のトレンドグラフを示す。センサRRIは、大局的なトレンドとしてはリファRRIに一致しているが、所々で異常値をとっているのが確認できる。この原因は、ほとんどの場合、当該R波存在区間におけるR波がその区間内で最大振幅でないことである。つまり、T波に相当するピーク波、被験者の身体全体が動いたことによって生じるピーク波などの振幅が、R波の振幅よりも大きくなった場合に生じる。
【0042】
図10は、図9と同じ実験データにおいて、計測開始後22〜24.5秒のデータを示したものである。23.0〜23.6秒のR波存在区間(一点破線)において、心拍ピーク信号(破線)の最大振幅のピーク波(23.4秒付近、四角印で示す)をR波として算出している。しかし、このピーク波はT波に相当するものであり、真のR波は23.1秒付近のピーク波である。これは、リファ心拍(太い実線)との対比からも明らかである。
【0043】
そこで、心拍信号の周期性を利用してRRIが異常値をとったかどうかの判断(ステップS608)、およびR波の再算出を行う(ステップS609)。ステップS610では、ステップS609で行ったR波の再算出に伴い、RRIを再度算出する。これで一連のRRI算出処理を終了する。
【0044】
図9のRRI算出結果に対してR波の再算出処理を施した後、再度RRIを算出したトレンドグラフを図12に示す。図9で見られた異常値がほぼ消失し、センサRRIがリファRRIに追従しているのが分かる。
【0045】
ここで、RRIが異常値かどうかの判断、およびR波の再算出について図11を用いて説明する。このRRIの異常値の判断には、先に述べたヒトの心拍の周期特性を利用する。つまり、RRIは概ね800〜1000msの範囲から大きく外れることがないこと、時間的に隣りあう2つのRRIの差分の絶対値は数十ms程度で極端に大きな値をとらないことから異常値の判断をする。具体的には、ある整数iに関して、RRI[i]がRRI[i−1]と比較して異常に大きいまたは小さい場合は、i番目のR波存在区間におけるR波の算出に失敗したと判断する。つまり、RRIが異常値であると判断する。そして、当該R波存在区間内の残りのピーク波から、RRI[i−1]と整合がとれるようなピーク波を新たなR波として算出する。例えば、RRI[i]とRRI[i−1]との差分が最も小さくなるようなピーク波を新たなR波として算出する。
【0046】
図10に戻って具体的に見てみる。23.0〜23.6秒のR波存在区間において、900ms前後で推移していたRRIが突然1100msとなったため、R波の算出に失敗したと判断した。そして、当該R波存在区間内の残りのピーク波の中から、当該RRIとその1つ前のRRIとの差分が最も小さくなる23.1秒付近のピーク波(図10の星印)を新たなR波として算出する。
【0047】
このように、R波存在区間内のピーク波の中からR波を正確にリアルタイムに算出することは、車両運転時のドライバの緊張感や眠気を含んだ総合的な意識変化を評価するときに用いる心拍間隔ゆらぎ解析に非常に有効である。つまり、居眠り運転防止システムなどにドライバの意識変化の評価結果を用いるには、短時間の意識変化を簡単な演算でリアルタイムに計測することが求められるからである。従来の技術のように、RRIを用いて心拍数を算出する際には、ノイズなどによるピーク波を誤って算出したR波が含まれていたとしても、多くのサンプルにより平均的な値を求めればよいが、車両運転時のドライバの意識変化の評価などリアルタイムに結果を必要とするシステムには適さない。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態の心拍検知装置について説明する。
【0048】
第2の実施形態におけるRRI算出部107の処理は、R波再算出(ステップS608)以外は、図6に示した第1の実施形態のフローチャートと同じである。よって、ここではR波再算出処理についてのみ説明し、それ以外の部分については説明を省略する。
【0049】
第1の実施形態では、ステップS608において、ある整数iに関してRRI[i]がRRI[i−1]と比較して異常に大きいまたは小さい場合は、i番目のR波存在区間におけるR波の算出に失敗したと判断する。第2の実施形態においては、RRIの差分値を保持しておき、このRRIの差分値の偏差を利用してRRIの異常値判定を行うところに特徴がある。すなわち、ステップS607で算出されたそれぞれのRRIについて、時刻的に1つ前のRRIとの差分値(RRI差分値)を算出し、全てのRRI差分値からその平均値(RRI差分平均値)を算出し、さらにそれぞれのRRI差分値についてRRI差分平均値からの偏差(RRI差分偏差)を算出する。ある整数iに関して、i番目のRRI差分偏差の絶対値が所定値を超えたら、i番目のR波算出区間におけるR波の算出に失敗したと判断する。そして、当該R波存在区間内の残りのピーク波から、RRI[i−1]と整合がとれるようなピーク波を新たなR波として算出する。例えば、RRI[i]とRRI[i−1]との差分が最も小さくなるようなピーク波を新たなR波として算出する。これは先に述べたとおり、RRIは時々刻々と変化するが、隣り合うRRIの差分は大きくても50ms前後であるという心拍の周期特性を利用したものである。
【0050】
以上説明したように、本発明の実施形態の心拍検知装置では、人体の体表面動作を検知する非接触センサを用いて、心拍のR波に相当するピーク波が一回の拍動区間において最大振幅をとらないような場合であっても、心拍の振幅特性だけでなく周期特性も最大限利用してR波を正確に検知することでRRIを正確に算出することが可能である。したがって、この心拍検知装置から得られるRRIを用いる心拍間隔ゆらぎ解析は、乗員の覚醒度の判定精度を向上させることが可能で、自動車を始めとする移動体の乗員等の非接触な眠気検知システムの実現等に好適である。
【0051】
なお、第1および第2の実施形態では、自動車の乗員の心拍を検知する例を示したが、乗員だけでなく同乗者にも適用可能であり、自動車に限らず電車、飛行機その他の移動体にも広く適用可能である。また、実施形態における各種のパラメータは適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の心拍検知装置は、車両内に搭載する非接触センサを用いた居眠り運転防止システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置を車室内に設置した様子を示す図
【図3】胸部電極により取得した心電図の時間波形を示す図
【図4】胸部電極により取得した心電図のRRIトレンドグラフを示す図
【図5】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により取得した心拍ソース信号および胸部電極により取得した心電図の時間波形を示す図
【図6】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置のRRI算出部の動作を示すフローチャート
【図7】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により取得した心拍ソース信号および心拍周期信号の時間波形およびR波存在区間を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により取得した心拍ソース信号からR波を算出する様子を示す図
【図9】リファRRIと、本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により算出したセンサRRIのトレンドグラフを示す図
【図10】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置の典型的なR波の誤算出を示す図
【図11】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置のR波再算出動作を模式的に示した図
【図12】リファRRIと、本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により再度算出されたセンサRRIのトレンドグラフを示す図
【符号の説明】
【0054】
100 心拍検知装置
101 センサ部
102 演算部
103 心拍周期信号算出部
104 R波存在区間設定部
105 ピーク波算出部
106 R波算出部
107 RRI算出部
201 乗員
202 運転座席
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍検知装置、および心拍検知方法に関し、とりわけ自動車の乗員の心拍検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両の乗員の居眠り運転や眠気による集中力低下を原因とする交通事故が社会問題となっている。運転に支障のある状態まで乗員の覚醒度が低下したことを客観的に検知し、乗員を覚醒させたり休憩を促したりする居眠り運転防止システムの実現が望まれている。
【0003】
そこで、比較的低コストで簡便に乗員の覚醒度を判定する生理指標として心拍が着目されている。これは心拍間隔のゆらぎ解析を行うことによって正副交感神経の活動度合いを計測し覚醒度を判定するものである。一般に心拍間隔のゆらぎは、副交感神経の影響が大きく緊張することにより振幅が減少しリラックスにより振幅が増加する呼吸性変動(Respiratory Sinus Arrhythmia:RSA)、交感神経と副交感神経双方の影響を受け変化する血圧性変動またはマイヤーリズムの変動(Mayer Wave Related Sinus Arrhythmia:MWSA)、および体温調節に関わる変動が知られている。
【0004】
このような心拍間隔ゆらぎ解析を実時間評価が必要な居眠り運転防止システムに適用するには、RRI(R−R Intervalの略)を正確にリアルタイムに算出しなければならない。RRIとは、隣接する2つのR波(一回の拍動で最も振幅の大きいピーク波)の時間間隔のことである。したがって、毎回の拍動によって生じるR波のタイミングを正確に算出することが重要となる。
【0005】
一方、心拍を計測する手段として種々のセンサが検討されているが、車室内に設置するには乗員がわざわざセンサを装着することのない非接触センサが望まれる。このような非接触センサとしては、電波レーダ、超音波レーダ、圧電センサ、空気圧センサなどが挙げられる。これらの非接触センサは、乗員を拘束しないという商品上のメリットがある反面、走行時の振動や心拍以外の身体の動き等もノイズとして検知してしまうという問題がある。このように、心拍を用いた乗員の覚醒度判定においては、非接触センサで取得したノイズ成分の多い受信信号の中から、心拍間隔ゆらぎ解析に必要なRRIを正確に算出することが求められる。
【0006】
特許文献1には、電波式ドップラーセンサ等の体表面動作検出センサを用いて乗員のRRIを計測する心拍計測装置が開示されている。
【0007】
具体的には、体表面動作検出センサの出力信号をバンドパスフィルタで帯域制限した信号のピーク値をR波として算出し、隣り合うR波の時間間隔をRRIとして算出することが記載されている。なお、ピーク値の算出は所定算出時間内における最大値である時間内最大値などを採用する。ここに所定算出時間とは、検出しようとする心拍の最大値にもとづき決定する。例えば、心拍の最大値を300拍/分とした場合、所定算出時間は0.2秒となる。
【0008】
さらに、最大である振幅の50%以上100%以下にピーク値算出を限定することで、ノイズに相当するピーク値を誤ってR波として算出することを回避することが記載されている。
【特許文献1】特開2006−55406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術では、所定算出時間内における最大振幅のピーク値をR波として算出するなど、振幅情報を基本としてR波の算出処理を行っている。しかし、電波式のドップラーセンサを被験者に照射し、実際に取得された受信信号を観測すると、受信信号におけるR波に相当するピーク波は、その一回の拍動区間において観測される複数のピーク波の中で最大振幅のものがほとんどであるが、1回の拍動においてR波に続いて発生する第2のピーク波であるT波やその他被験者の動きに起因するピーク波のほうが大きい振幅をとる場合も存在する。よって、最大振幅の50%以上100%以下にピーク値算出を限定するなどしても、振幅情報に基づいてR波に相当するピーク値を算出しようとする従来の技術では、ノイズなどによるピーク波を誤ってR波として算出してしまう場合が多く存在する。
【0010】
さらに、従来の技術では、振幅情報に基づいて算出したR波に相当するピーク値の時間間隔からヒストグラムを生成し、当該ヒストグラムの最大数の時間間隔より短いピーク値を削除しRRIを算出することが記載されている。しかし、振幅情報に基づいて算出したR波に相当するピーク値には、誤って算出したノイズなどによるピーク波が含まれており精度を上げるには多くのデータと時間が必要となる。よって、乗員の覚醒度を客観的に検知し、乗員を覚醒させたり休憩を促したりする居眠り運転防止システムに適用するには、正確性、リアルタイム性に欠けるという問題がある。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、車両運転時のドライバの緊張感や眠気を含んだ総合的な意識変化を評価をするときに用いる心拍間隔ゆらぎ解析に有用なRRIを正確にリアルタイムに算出することが可能な心拍検知装置、および心拍検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための第1の局面は、
車両における乗員の心拍を検知する心拍検知装置であって、乗員の体表面動作を検知するセンサ部と、センサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出部と、心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出部と、R波算出部により算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較により算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出部とを備え、RRI算出部により算出したRRIが異常値であると判断されると、R波算出部は隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、その後RRI算出部はR波算出部で再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出することを特徴とする。
【0013】
また、RRI算出部は、判断対象のRRIと時間的に1つ前であるRRIとの差分が所定値以上または以下である場合に異常値であると判断することを特徴とする。
【0014】
また、R波算出部は、時間的に1つ前のRRIに最も近くなるようなR波を新たなR波として再算出することを特徴とする。
【0015】
また、心拍ソース信号からバンドパスフィルタにより乗員の心拍の周期性を示す正弦波状の心拍周期信号を算出する心拍周期信号算出部と、心拍周期信号に基づいて、R波が存在する区間を時間的に制限するR波存在区間を設定するR波存在区間設定部とをさらに有し、R波算出部は、R波存在区間のそれぞれにおいて、1つのピーク波をR波として算出することを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、R波をより正確に算出することが可能となる。
【0017】
さらに、R波存在区間設定部は、心拍周期信号の全ての極大値を算出し、極大値をとる時刻を心拍周期信号極大時刻とし、心拍周期信号極大時刻±時間オフセットTofsの区間をR波存在区間と設定することを特徴とする。
【0018】
また、R波存在区間設定部は、前記時間オフセットTofsを少なくとも心拍周期信号の平均周期の1/4以下に設定してもよい。
【0019】
第2の局面は、RRI算出部は、算出されたそれぞれのRRIについて時間的に1つ前のRRIとの差分値を求め、当該差分値の平均値を用いて算出したRRIが異常値かどうかを判断することを特徴とする。
【0020】
第3の局面は、
車両における乗員の心拍を検知する心拍検知方法であって、乗員の体表面動作を検知するセンサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出ステップと、心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出ステップと、R波算出ステップにより算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較により算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出ステップと、RRI算出ステップにおいて算出したRRIが異常値であると判断すると、隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、当該再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の心拍検知装置によれば、心拍の振幅特性だけでなく周期特性も考慮してRRIを算出するため、出力信号にノイズ成分が多く含まれてしまう非接触センサを使用する場合においてもRRIを正確にリアルタイムに算出することが可能となる。したがって、心拍間隔ゆらぎ解析を用いる車両の乗員等の居眠り運転防止システムに適応できる心拍検知装置および心拍検知方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態の心拍検知装置について説明する。図1は、心拍検知装置100の構成を示すブロック図である。心拍検知装置100は、センサ部101と演算部102で構成される。心拍検知装置100は、典型的には図2に示すように、乗員201が着座する運転座席202の背もたれ内部に設置される。なお、心拍検知装置100を設置する際、少なくともセンサ部101が背もたれ部にあればよく、演算部102は別の場所に設置してもよい。
【0023】
センサ部101は、例えば電波式のドップラーセンサであり、乗員201の心拍、呼吸、あるいはそれ以外の物体の動きに応じて振幅が変化した受信信号を出力する(以下、この受信信号を「心拍ソース信号」と呼ぶ)。その他、超音波ドップラーセンサ、圧電センサ、空気圧センサなどの体表面動作検出センサを用いることも可能である。
【0024】
演算部102は、センサ部101の出力信号である心拍ソース信号から各種演算により乗員201の心拍におけるRRI(R−R Intervalの略:時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔)を算出する。そして、演算部102は、心拍周期信号算出部103、R波存在区間設定部104、心拍ピーク信号算出部105、R波算出部106、RRI算出部107で構成される。
【0025】
ここで、ヒトの心電図について説明する。図3は、胸部電極により3分間計測した安静着座状態のヒトの心電図のうち、最初の20秒間の時間波形を示したものである。また、図4は、その心電図におけるRRIを算出することによって取得した3分間のRRIトレンドグラフである。以上のグラフからヒトの心拍に関して以下の3つのことが言える。1.1回の拍動においてR波は最大振幅をとる。2.RRIは概ね800〜1000ms(平均心拍数に換算すると60〜75bpm)の間で推移しており、RRIがその範囲を超えて極端に小さかったり大きかったりすることはない。3.時間的に隣り合う2つのRRIの差分の絶対値は数十ms程度、最大でも60msであり、差分値が小さくなる又は0になることはあっても極端に大きくなることはない。このように、心拍信号には明確な振幅特性および周期特性がある。
【0026】
次に、図5を用いてセンサ部101の受信信号を出力した心拍ソース信号について説明する。点線は、図3の心電図の20秒から30秒の間の時間波形を示している。実線は、図3の心電図計測と同時に計測した心拍ソース信号のうち、同じく20秒から30秒の間の時間波形を示している。これらの波形から、心拍ソース信号に関して以下の3つのことが言える。1.心拍ソース信号の大局的な周期は概ね心電図と一致している。2.心電図のR波が存在する時刻には、心拍ソース信号においても振幅の大きなピーク波が存在し、ほとんどの場合、その振幅は当該拍動区間において最大である。3.非接触センサを用いているためR波を含む心拍以外の動きに起因するピーク波が発生しており、その中にはR波に相当するピーク波より振幅の大きなものも存在する。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、このような心拍ソース信号に対して、従来の技術のように振幅情報を基本としてR波を算出すると、誤ってノイズに起因するピーク波をR波として算出することを回避する処理を行う。先に述べたように心拍信号の振幅特性だけでなく周期性をも利用することにより、高精度にリアルタイムにRRIを検知できるところに特徴がある。詳しくは、後述する。
【0028】
以下、演算部102の具体的な処理について説明する。
【0029】
まず、図6のステップS601からステップS603では、ほぼ1秒周期で発生するR波を高精度かつ効率よく算出するために、R波が存在する確率が高い区間としてR波存在区間を設定する。まず、主に振幅情報を利用してR波を算出するという考えに基づく処理である。
【0030】
ステップS601では、心拍ソース信号を狭帯域のバンドパスフィルタに通過させて、心拍の周期性を強調させた信号(心拍周期信号)を算出する。つまり、ヒトの心拍数は安静時に70bpmで、遅い人では60bpm、速い人では90bpmぐらいの幅があると言われていることから、上記バンドパスフィルタの通過帯域は例えば0.8〜1.5Hzとする。これにより、心拍周期信号は正弦波に近い信号になる。
【0031】
ステップS602では、ステップS601で得られた正弦波状の心拍周期信号における全ての極大値を算出する。計測開始からi番目(i=0、1、2、・・・)の極大値に関して極大値をとる時刻を、心拍周期信号極大時刻Tlm[i]とする。
【0032】
ステップS603では、ステップS602で算出された各心拍周期信号極大時刻を中心としたある区間を、R波が存在する確率が高い区間(R波存在区間)と設定する。例えば、計測開始からi番目(i=0、1、2、・・・)の極大値に対するR波存在区間の開始点Zst[i]および終了点Zed[i]は、時間オフセットをTofsとして以下の数式:Zst[i]=Tlm[i]−Tofs、Zed[i]=Tlm[i]+Tofsを用いて設定する。時間オフセットTofsが大きすぎると、一つのR波存在区間内に存在するピーク波の数が増えてR波を誤検出する可能性が増えてしまう。逆に時間オフセットTofsが小さすぎると、R波がR波存在区間外に存在したときに、当該のRRIの精度が大幅に低下する恐れがある。Tofsは例えば350msと設定すればよい。
【0033】
また、時間オフセットTofsは、少なくとも心拍周期信号の平均周期の1/4以下に設定するようにしてもよい。心拍周期信号の極大値がn個あった場合、心拍周期信号の平均周期Cavは、1番目の心拍周期信号極大時刻とn番目の心拍周期信号極大時刻との差分を極大値数n−1で割ったものであるから、以下の数式:Cav=(Tlm[n]−Tlm[1])/(n−1)、Tofs≦Cav/4で算出する。
【0034】
上記のようにTofsを設定することで、隣り合うR波存在区間が時間的に重複することがほとんどないため、それぞれのR波存在区間においてR波を誤って算出してしまう可能性を低減させることができる。図7に、先に取得した3分間の心拍ソース信号のうち、計測開始後45〜50秒の時間波形を示す。心拍ソース信号(太い実線)から算出した心拍周期信号(細い実線)からさらに極大値を算出し、R波存在区間(細い一点破線で値が1をとっている区間)を設定した。
【0035】
一方、ステップS604からステップS609では、ステップS603で設定したR波存在区間を利用してR波を算出しRRIを算出する。以下で詳細に説明する。
【0036】
ステップS604では、心拍ソース信号を広帯域のバンドパスフィルタに通過させて、心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する。バンドパスフィルタの通過帯域は、例えば0.8〜10Hzとする。通過帯域が大きすぎると算出されるピーク波の数が増え、R波を誤って算出する恐れがある。逆に小さすぎると、ピーク波が振幅方向および時間方向に鈍るためR波の時間的な位置精度が劣化する恐れがある。なお、心拍ピーク信号の算出においては、上記のように心拍ソース信号を用いる以外に心拍ソース信号の差分信号を用いることも可能である。差分信号とは、ある時刻の心拍ソース信号について、時間的にその1つ前の時刻の心拍ソース信号との差分をとった信号のことであり、よりピーク性が強調された信号を得ることができる。
【0037】
ステップS605では、ステップS604で得られた心拍ピーク信号における全てのピーク波を算出する。
【0038】
ステップS606では、ステップS603で得られた全てのR波存在区間において、ステップS605で算出した全てのピーク波のうち、各R波存在区間内に存在する全てのピーク波の中から振幅が最大のものをR波として算出する。このように、R波が存在する確率が高い区間としてR波存在区間を設定することにより、R波を高精度かつ効率よく算出することが可能となる。なお、本実施の形態では、R波存在区間を用いてRRIを算出する方法を説明するが、R波存在区間を用いなくともRRIを算出することができる。
【0039】
図8は、先に述べた計測開始後45秒から数秒間の心拍ソース信号を用いてステップS604からステップS606までを実行した結果を示している。四角印の実線で示したピーク波フラグの値が1であるグラフは、細い破線にて示す心拍ピーク信号からR波である可能性の高いピーク波を算出したものである。例えば、連続するピーク波は省く、振幅値が所定値より小さいピーク波は省くなどの処理によりR波である可能性の高いピーク波を算出する。三角印の細い実線で示したR波フラグの値が1をとっているグラフは、それぞれのR波存在区間(無印の細い実線で値が2をとっている区間)内に存在する全てのピーク波のうち、振幅が最大のものをR波として算出したものである。
【0040】
図6に戻って説明を続ける。ステップS607では、ステップS606で算出されたR波からRRIを算出する。計測開始からi番目(i=0、1、2、・・・)のR波存在区間におけるR波が存在する時刻をTr[i]、計測開始からi番目(i=0、1、2、・・・)のR波存在区間におけるRRIをRRI[i]とすると、RRI[i]は以下の数式:RRI[i]=Tr[i]―Tr[i−1]で求められる。
【0041】
図9に、先に計測した3分間の心拍ソース信号からステップS607で算出したRRI(以下、「センサRRI」と呼ぶ)と、胸部電極により同時に計測した心電図から算出したRRI(以下、「リファRRI」と呼ぶ)のトレンドグラフを示す。センサRRIは、大局的なトレンドとしてはリファRRIに一致しているが、所々で異常値をとっているのが確認できる。この原因は、ほとんどの場合、当該R波存在区間におけるR波がその区間内で最大振幅でないことである。つまり、T波に相当するピーク波、被験者の身体全体が動いたことによって生じるピーク波などの振幅が、R波の振幅よりも大きくなった場合に生じる。
【0042】
図10は、図9と同じ実験データにおいて、計測開始後22〜24.5秒のデータを示したものである。23.0〜23.6秒のR波存在区間(一点破線)において、心拍ピーク信号(破線)の最大振幅のピーク波(23.4秒付近、四角印で示す)をR波として算出している。しかし、このピーク波はT波に相当するものであり、真のR波は23.1秒付近のピーク波である。これは、リファ心拍(太い実線)との対比からも明らかである。
【0043】
そこで、心拍信号の周期性を利用してRRIが異常値をとったかどうかの判断(ステップS608)、およびR波の再算出を行う(ステップS609)。ステップS610では、ステップS609で行ったR波の再算出に伴い、RRIを再度算出する。これで一連のRRI算出処理を終了する。
【0044】
図9のRRI算出結果に対してR波の再算出処理を施した後、再度RRIを算出したトレンドグラフを図12に示す。図9で見られた異常値がほぼ消失し、センサRRIがリファRRIに追従しているのが分かる。
【0045】
ここで、RRIが異常値かどうかの判断、およびR波の再算出について図11を用いて説明する。このRRIの異常値の判断には、先に述べたヒトの心拍の周期特性を利用する。つまり、RRIは概ね800〜1000msの範囲から大きく外れることがないこと、時間的に隣りあう2つのRRIの差分の絶対値は数十ms程度で極端に大きな値をとらないことから異常値の判断をする。具体的には、ある整数iに関して、RRI[i]がRRI[i−1]と比較して異常に大きいまたは小さい場合は、i番目のR波存在区間におけるR波の算出に失敗したと判断する。つまり、RRIが異常値であると判断する。そして、当該R波存在区間内の残りのピーク波から、RRI[i−1]と整合がとれるようなピーク波を新たなR波として算出する。例えば、RRI[i]とRRI[i−1]との差分が最も小さくなるようなピーク波を新たなR波として算出する。
【0046】
図10に戻って具体的に見てみる。23.0〜23.6秒のR波存在区間において、900ms前後で推移していたRRIが突然1100msとなったため、R波の算出に失敗したと判断した。そして、当該R波存在区間内の残りのピーク波の中から、当該RRIとその1つ前のRRIとの差分が最も小さくなる23.1秒付近のピーク波(図10の星印)を新たなR波として算出する。
【0047】
このように、R波存在区間内のピーク波の中からR波を正確にリアルタイムに算出することは、車両運転時のドライバの緊張感や眠気を含んだ総合的な意識変化を評価するときに用いる心拍間隔ゆらぎ解析に非常に有効である。つまり、居眠り運転防止システムなどにドライバの意識変化の評価結果を用いるには、短時間の意識変化を簡単な演算でリアルタイムに計測することが求められるからである。従来の技術のように、RRIを用いて心拍数を算出する際には、ノイズなどによるピーク波を誤って算出したR波が含まれていたとしても、多くのサンプルにより平均的な値を求めればよいが、車両運転時のドライバの意識変化の評価などリアルタイムに結果を必要とするシステムには適さない。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態の心拍検知装置について説明する。
【0048】
第2の実施形態におけるRRI算出部107の処理は、R波再算出(ステップS608)以外は、図6に示した第1の実施形態のフローチャートと同じである。よって、ここではR波再算出処理についてのみ説明し、それ以外の部分については説明を省略する。
【0049】
第1の実施形態では、ステップS608において、ある整数iに関してRRI[i]がRRI[i−1]と比較して異常に大きいまたは小さい場合は、i番目のR波存在区間におけるR波の算出に失敗したと判断する。第2の実施形態においては、RRIの差分値を保持しておき、このRRIの差分値の偏差を利用してRRIの異常値判定を行うところに特徴がある。すなわち、ステップS607で算出されたそれぞれのRRIについて、時刻的に1つ前のRRIとの差分値(RRI差分値)を算出し、全てのRRI差分値からその平均値(RRI差分平均値)を算出し、さらにそれぞれのRRI差分値についてRRI差分平均値からの偏差(RRI差分偏差)を算出する。ある整数iに関して、i番目のRRI差分偏差の絶対値が所定値を超えたら、i番目のR波算出区間におけるR波の算出に失敗したと判断する。そして、当該R波存在区間内の残りのピーク波から、RRI[i−1]と整合がとれるようなピーク波を新たなR波として算出する。例えば、RRI[i]とRRI[i−1]との差分が最も小さくなるようなピーク波を新たなR波として算出する。これは先に述べたとおり、RRIは時々刻々と変化するが、隣り合うRRIの差分は大きくても50ms前後であるという心拍の周期特性を利用したものである。
【0050】
以上説明したように、本発明の実施形態の心拍検知装置では、人体の体表面動作を検知する非接触センサを用いて、心拍のR波に相当するピーク波が一回の拍動区間において最大振幅をとらないような場合であっても、心拍の振幅特性だけでなく周期特性も最大限利用してR波を正確に検知することでRRIを正確に算出することが可能である。したがって、この心拍検知装置から得られるRRIを用いる心拍間隔ゆらぎ解析は、乗員の覚醒度の判定精度を向上させることが可能で、自動車を始めとする移動体の乗員等の非接触な眠気検知システムの実現等に好適である。
【0051】
なお、第1および第2の実施形態では、自動車の乗員の心拍を検知する例を示したが、乗員だけでなく同乗者にも適用可能であり、自動車に限らず電車、飛行機その他の移動体にも広く適用可能である。また、実施形態における各種のパラメータは適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の心拍検知装置は、車両内に搭載する非接触センサを用いた居眠り運転防止システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置を車室内に設置した様子を示す図
【図3】胸部電極により取得した心電図の時間波形を示す図
【図4】胸部電極により取得した心電図のRRIトレンドグラフを示す図
【図5】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により取得した心拍ソース信号および胸部電極により取得した心電図の時間波形を示す図
【図6】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置のRRI算出部の動作を示すフローチャート
【図7】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により取得した心拍ソース信号および心拍周期信号の時間波形およびR波存在区間を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により取得した心拍ソース信号からR波を算出する様子を示す図
【図9】リファRRIと、本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により算出したセンサRRIのトレンドグラフを示す図
【図10】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置の典型的なR波の誤算出を示す図
【図11】本発明の第1の実施形態における心拍検知装置のR波再算出動作を模式的に示した図
【図12】リファRRIと、本発明の第1の実施形態における心拍検知装置により再度算出されたセンサRRIのトレンドグラフを示す図
【符号の説明】
【0054】
100 心拍検知装置
101 センサ部
102 演算部
103 心拍周期信号算出部
104 R波存在区間設定部
105 ピーク波算出部
106 R波算出部
107 RRI算出部
201 乗員
202 運転座席
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における乗員の心拍を検知する心拍検知装置であって、
前記乗員の体表面動作を検知するセンサ部と、
前記センサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出部と、
前記心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出部と、
前記R波算出部により算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較により算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出部とを備え、
前記RRI算出部により算出したRRIが異常値であると判断されると、前記R波算出部は隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、その後前記RRI算出部は前記R波算出部で再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出する心拍検知装置。
【請求項2】
前記RRI算出部は、判断対象のRRIと時間的に1つ前であるRRIとの差分が所定値以上または以下である場合に異常値であると判断することを特徴とする請求項1に記載の心拍検知装置。
【請求項3】
前記R波算出部は、時間的に1つ前のRRIに最も近くなるようなR波を新たなR波として再算出することを特徴とする請求項1に記載の心拍検知装置。
【請求項4】
前記心拍ソース信号からバンドパスフィルタにより乗員の心拍の周期性を示す正弦波状の心拍周期信号を算出する心拍周期信号算出部と、
前記心拍周期信号に基づいて、R波が存在する区間を時間的に制限するR波存在区間を設定するR波存在区間設定部とをさらに有し、
前記R波算出部は、前記R波存在区間のそれぞれにおいて、1つのピーク波をR波として算出することを特徴とする請求項1に記載の心拍検知装置。
【請求項5】
前記R波存在区間設定部は、前記心拍周期信号の全ての極大値を算出し、前記極大値をとる時刻を心拍周期信号極大時刻とし、心拍周期信号極大時刻±時間オフセットTofsの区間をR波存在区間と設定することを特徴とする請求項4に記載の心拍検知装置。
【請求項6】
前記R波存在区間設定部は、前記時間オフセットTofsを少なくとも前記心拍周期信号の平均周期の1/4以下に設定することを特徴とする請求項5に記載の心拍検知装置。
【請求項7】
前記RRI算出部は、算出されたそれぞれのRRIについて時間的に1つ前のRRIとの差分値を求め、当該差分値の平均値を用いて算出したRRIが異常値かどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載の心拍検知装置。
【請求項8】
車両における乗員の心拍を検知する心拍検知方法であって、
前記乗員の体表面動作を検知するセンサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出ステップと、
前記心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出ステップと、
前記R波算出ステップにより算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較により算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出ステップと、
前記RRI算出ステップにおいて算出したRRIが異常値であると判断すると、隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、当該再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出するステップとを有する心拍検知方法。
【請求項1】
車両における乗員の心拍を検知する心拍検知装置であって、
前記乗員の体表面動作を検知するセンサ部と、
前記センサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出部と、
前記心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出部と、
前記R波算出部により算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較により算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出部とを備え、
前記RRI算出部により算出したRRIが異常値であると判断されると、前記R波算出部は隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、その後前記RRI算出部は前記R波算出部で再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出する心拍検知装置。
【請求項2】
前記RRI算出部は、判断対象のRRIと時間的に1つ前であるRRIとの差分が所定値以上または以下である場合に異常値であると判断することを特徴とする請求項1に記載の心拍検知装置。
【請求項3】
前記R波算出部は、時間的に1つ前のRRIに最も近くなるようなR波を新たなR波として再算出することを特徴とする請求項1に記載の心拍検知装置。
【請求項4】
前記心拍ソース信号からバンドパスフィルタにより乗員の心拍の周期性を示す正弦波状の心拍周期信号を算出する心拍周期信号算出部と、
前記心拍周期信号に基づいて、R波が存在する区間を時間的に制限するR波存在区間を設定するR波存在区間設定部とをさらに有し、
前記R波算出部は、前記R波存在区間のそれぞれにおいて、1つのピーク波をR波として算出することを特徴とする請求項1に記載の心拍検知装置。
【請求項5】
前記R波存在区間設定部は、前記心拍周期信号の全ての極大値を算出し、前記極大値をとる時刻を心拍周期信号極大時刻とし、心拍周期信号極大時刻±時間オフセットTofsの区間をR波存在区間と設定することを特徴とする請求項4に記載の心拍検知装置。
【請求項6】
前記R波存在区間設定部は、前記時間オフセットTofsを少なくとも前記心拍周期信号の平均周期の1/4以下に設定することを特徴とする請求項5に記載の心拍検知装置。
【請求項7】
前記RRI算出部は、算出されたそれぞれのRRIについて時間的に1つ前のRRIとの差分値を求め、当該差分値の平均値を用いて算出したRRIが異常値かどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載の心拍検知装置。
【請求項8】
車両における乗員の心拍を検知する心拍検知方法であって、
前記乗員の体表面動作を検知するセンサ部の出力である心拍ソース信号をバンドパスフィルタにより心拍のピーク波を強調させた心拍ピーク信号を算出する心拍ピーク信号算出ステップと、
前記心拍ピーク信号から振幅情報によりピーク波をR波として算出するR波算出ステップと、
前記R波算出ステップにより算出した時間的に隣り合う2つのR波の時間間隔をRRIとして算出し、かつ隣接するRRIとの比較により算出したRRIが異常値かどうかを判断するRRI算出ステップと、
前記RRI算出ステップにおいて算出したRRIが異常値であると判断すると、隣接するRRIとの比較から適切なR波の算出を再度行い、当該再算出されたR波に基づいてRRIを再度算出するステップとを有する心拍検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−142456(P2010−142456A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323694(P2008−323694)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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