心筋細胞と線維芽細胞の細胞識別方法
【課題】基板上に形成する流路を用いたセルソーター細胞検出領域で得られた画像の判断結果に基づき細胞分離領域で細胞の分離を行う。
【解決手段】心筋細胞と線維芽細胞の実体画像の表面の滑らかさ、あるいは、中央部の構造の複雑さに着目して、これらを指標として、両細胞を識別する。一つの実施例として、画像をX,Y軸方向にそれぞれ適当数に分割したピクセルとして扱い、各ピクセルを、それぞれの明るさを所定の閾値と比較して2値化処理を行い、その結果により両細胞を識別する。
【解決手段】心筋細胞と線維芽細胞の実体画像の表面の滑らかさ、あるいは、中央部の構造の複雑さに着目して、これらを指標として、両細胞を識別する。一つの実施例として、画像をX,Y軸方向にそれぞれ適当数に分割したピクセルとして扱い、各ピクセルを、それぞれの明るさを所定の閾値と比較して2値化処理を行い、その結果により両細胞を識別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に構成される流路を、細胞を緩衝液とともに流下させて細胞分離を行うセルソーターに適用して好適な心筋細胞と線維芽細胞の細胞識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織片から特定細胞を分離する方法にはいくつかの方法が知られている。心筋細胞と線維芽細胞の細胞識別方法として、それぞれの細胞の比重の違いに着目して、パーコールを使用して密度勾配遠心により分離する方法が良く行われる。この方法は、遠心処理の結果、層状に分離した細胞の層を乱さないように分離、採取するものであるが、必ずしも、十分な精度で分離できないのが現状である。
【0003】
特定の細胞を分離し回収することは生物学・医学的な分析においては重要な技術であり、例えば、蛍光染色処理後の細胞を電荷を持たせた液滴中に1細胞単位で単離して滴下し、この液滴中の細胞の蛍光の有無、光散乱量の大小を基に、液滴が落下する過程で、落下方向に対して法平面方向に高電界を任意の方向に印加することで、液滴の落下方向を制御して、下部に置かれた複数の容器に分画して回収するセルソーターがある(非特許文献1:Kamarck,M.E., Methods Enzymol. Vol.151, p150-165 (1987))。
【0004】
しかし、この技術は高価であること、装置が大型であること、数千ボルトという高電界が必要であること、試料が多量に必要であること、液滴を作成する段階で細胞に損傷を与える可能性があること、直接試料を観察できないことなどの問題がある。これらの問題を解決するため、本発明者らは、マイクロ加工技術を活用して、基板上に構成される流路を、細胞を緩衝液とともに流下させ、細胞の画像を採取して細胞分離を行うセルソーターを提案している(特開2006−180810、特開2006−220423)。
【特許文献1】特開2006−180810号公報
【特許文献2】特開2006−220423号公報
【非特許文献1】Kamarck,M.E., Methods Enzymol. Vol.151, p150-165 (1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記細胞の画像を採取して細胞分離を行うセルソーターによって、心筋細胞と線維芽細胞の実体画像により、細胞分離を高精度、高速度で可能とする心筋細胞と線維芽細胞の細胞識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、心筋細胞と線維芽細胞の実体画像を精細に検討した結果、所定の基準によって評価することで、実体画像からそれぞれの細胞を識別できることを発見した。本発明では、緩衝液とともに流下してくる細胞を所定の位置でCCDカメラなどを用いて実体像として検出し、上記基準により評価することで流路中を連続して高速で流れてくる細胞を識別する。
【0007】
したがって、本発明は、以下の細胞識別方法、細胞識別・分離装置、および上記細胞識別方法に用いるコンピュータプログラムを提供する。
(1)基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた上記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
上記細胞検出領域で上記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出して、該実体像を所定の基準で評価する工程、および
上記評価に基づいて上記細胞分離領域で細胞を分離する工程を含み、
上記基準が上記細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(2)上記基準が細胞の断面積と周囲長の比を示す指標に代えて、上記断面積と周囲長の比から細胞の表面の滑らかさを示す指標とされた上記(1)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(3)上記基準が細胞の周囲長の長さを示す指標に代えて、細胞の内部構造の複雑さを示す指標とされた上記(1)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(4)上記細胞検出領域で検出される細胞の実体像は一つの細胞ごとに独立して撮像されるものである上記(1)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(5)基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた上記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
上記細胞検出領域で上記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出する工程、
該実体像をXY平面の各軸方向で所定の間隔で区分したピクセルとして、各ピクセルの明るさを基準として2値化する工程、
上記2値化された実体像を複数の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価する工程、
所定の領域での所定の明るさのピクセルの数が所定の閾値を超えるか否か判断して細胞を識別する工程を含み、
上記閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比に関連する指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(6)基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた上記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
上記細胞検出領域で上記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出する工程、
該実体像をXY平面の一つの軸から所定の角度ずつ回転させた軸方向で画像の明るさを検出する工程、
上記回転させた各軸で検出された画像の明るさが所定の閾値を超えるか否か判断して細胞の周囲長及び細胞の断面積を決定する工程、
上記決定された細胞の周囲長と細胞の断面積とから、該細胞の周囲長と断面積の比を求め、該比を所定の閾値と比較して細胞を識別する工程を含み、
上記閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(7)上記閾値が細胞の断面積と周囲長の比を示す指標に代えて、上記断面積と周囲長の比から細胞の表面の滑らかさを示す指標とされた上記(5)または(6)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(8)上記所定の閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標に代えて、細胞の内部構造の複雑さを示す指標とされた上記(5)または(6)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(9)上記細胞検出領域で検出される細胞の実体像は一つの細胞ごとに独立して撮像されるものである上記(5)または(6)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(10)上記ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続するところでは隣接するピクセル間の明るさの変化率を基準として2値化すること、
上記それぞれの基準で2値化された実体像を所定の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価すること、
の処理が付加された上記(5)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(11)上記(1)記載の方法において使用する細胞識別・分離装置であって、
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた上記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた上記検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた上記分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを設置する手段と、
上記細胞検出領域で上記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出するための手段と、
上記実体像のデジタルデータから該実体像を評価するための所定の評価値を算出し、該算出された評価値を所定の閾値と比較して上記細胞を識別するための手段と、
上記識別された細胞を上記細胞分離領域で分離するために電界を作用させる手段とを備える、細胞識別・分離装置。
(12)上記(1)記載の方法において使用するコンピュータプログラムであって、
上記細胞検出領域で検出した上記細胞の実体像のデジタルデータから、上記細胞の断面積に対する周囲長の比を求める演算を行うステップ、および
上記比を所定の閾値と比較して、上記細胞分離領域を上記細胞が通過する際に該領域に電界を印加するか否かを判断するステップ、
を含む処理をコンピュータに実行させるための、コンピュータプログラム。
(13)上記(5)記載の方法において使用するコンピュータプログラムであって、
上記細胞検出領域で検出した上記細胞の実体像のデジタルデータに基づいて、該実体像をXY平面の各軸方向で所定の間隔で区分したピクセルとして表わし、各ピクセルの明るさを所定の基準に基づいて2値化するステップ、
上記2値化されたピクセルで表した実体像を複数の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価するステップ、
所定の領域での所定の明るさのピクセルの数が所定の閾値を超えるか否かを判断するステップ、および
上記判断に基づいて、上記細胞分離領域を上記細胞が通過する際に該領域に電界を印加するか否かを決定するステップ、
を含む処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、心筋細胞と線維芽細胞の細胞分離が高精度、高速度で可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本願発明を適用して好都合なセルソーターの一例を、上記特開2006−180810号公報に開示された細胞分離装置(セルソーター)を基礎とした構成として模式的に示す平面図である。
【0010】
セルソーター100は基板101を含む構造を有する。基板101の下面に流路となる溝を、上面にこの溝に連通する開口を設け、試料や必要な緩衝液の供給口とする。また、十分な緩衝液の供給と各流路での流量の調整のためにリザーバ(203,213)を設ける。溝や開口の作成はPMMAなどのプラスチックを金型に流し込むいわゆる射出成型で作成することができる。チップ基板101全体のサイズは、例えば、20×30×1mm(t)であるが、このサイズに限定されない。チップ基板101の溝が刻まれた下面側に、例えば、0.1mm厚のラミネートフィルムを熱圧着することにより、基板101の下面に刻まれた溝や基板101の貫通穴を、流路やウェルとすることができる。例えば、開口数1.4、倍率100倍の対物レンズを用いて、0.1mmのラミネートフィルムを通して流路内を流れる細胞を観察できる。もちろんこれより低倍率のレンズでは問題なく観察することができる。チップ基板101の上面には、マイクロ流路に細胞を含む試料緩衝液を導入する穴201、細胞を含まない緩衝液を導入する穴201’,202および202’が設けられるとともに、これらを包括するリザーバ203が設けられる。具体的には、リザーバ203を形成するために基板101の上面に設けられたウェルの底面にそれぞれ穴201’、202、および202’が設けられる。
【0011】
したがって、リザーバ203に十分な緩衝液を供給すると穴201,201’,202および202’は緩衝液でつながる。これにより、穴201および201’に連なる流路204と流路204’には同じ液面高さの緩衝液が供給される。したがって、両流路の流路幅(流路高さを等しいとすれば)、あるいは、断面積、さらに両流路の流路長を実質等しくすれば、両流路の流量を実質同量にすることができる。同様に、穴202,202’に連なる流路205,205’には同じ液面高さの緩衝液が供給され、流路205,205’を流れる緩衝液の流量を流路204に流れる流量と所定の比にそろえることができる。
【0012】
穴201に導入された細胞を含む緩衝液は、マイクロ流路204(例:幅20μm、深さ15μm)を通過して、細胞検出領域221および細胞分離領域222まで導入される。他方、穴202,202’に導入された細胞を含まない緩衝液は流路205,205’(幅12μm、深さ15μm)を通過して、マイクロ流路204の細胞を含む緩衝液と合流する。240は合流後のマイクロ流路であり、細胞検出領域221となる。さらに、マイクロ流路240は細胞分離領域222まで延伸される。
【0013】
一方、穴201’に導入された細胞を含まない緩衝液は、マイクロ流路204’(例:幅20μm、深さ15μm)を通過して、細胞分離領域222に導入され、マイクロ流路240からの細胞を含む緩衝液と合流する。合流後に溶液が通過する流路の流路幅については、後述する。また、この合流した流路は、細胞分離領域222の出口で、マイクロ流路218(例:幅20μm、深さ15μm)および219(例:幅20μm、深さ15μm)に分流する。
【0014】
206,206’および207,207’は電解質を含むゲルを導入する穴であり、それぞれ、穴206および207に導入されたゲルは基板101の下面のマイクロ構造208,209(例えば、幅200μm×高さ15μmの溝)を通して穴206’および207’に送り込まれる。したがって、マイクロ構造208,209は電解質を含むゲルで満たされている。マイクロ構造208,209の流路247側の端はマイクロ流路204,204’にそれぞれ接続する20μm程度の長さの液絡構造の連結部241,242からなっていて、細胞分離領域222において、マイクロ流路240とマイクロ流路204’の合流した流路247を流れる緩衝液に、ゲルが、直接、接触できる構造とされる。ゲルと緩衝液が接触する面積は、例えば、15μm(流路に沿った長さ)×15μm(高さ)である。ゲルを導入する穴206および207には、黒丸で示す電極が挿入され、これらの電極は、配線106,107およびスイッチ216を通して電源215に接続される。スイッチ216は、マイクロ流路240とマイクロ流路204’の合流した流路247を流れる緩衝液に電圧をかける時のみONとされる。
【0015】
細胞分離領域222でマイクロ流路240とマイクロ流路204’とが合流して形成される流路247を流れる緩衝液に、連結部241と242からのゲルが接触する。図に示すように、連結部242よりも連結部241のほうが流路の上流に位置する構造となっている。これは、穴206の電極にプラス、穴207の電極にマイナスの電圧をかけたときに、マイクロ流路240を流れてくる細胞を流路218に効率よく移動させるためである。すなわち、電流を流したときにマイナスにチャージしている細胞には電気泳動的な力が働くが、この電気泳動力のベクトルと流路内を流れる緩衝液から受ける力のベクトルとの合成ベクトルが、実際に細胞に働く力になる。連結部242よりも連結部241を流路の上流に位置させたほうが、連結部241と242とを流路の流れ方向に対して同じレベルの位置に作成した場合に比べ、実際に細胞に働く力のベクトルの向きがより直接的に連結部242または241の方に向くようになる。したがって、より低電圧で安定した細胞のマイクロ流路218あるいはマイクロ流路219への移動が可能となり、効率のよい電界利用が可能となる。
【0016】
マイクロ流路218,219の下流部には、細胞分離領域222で振り分けられた細胞の回収穴211,212が開けられている。それぞれの穴211,212には、これらを包括するリザーバ213が設けられる。具体的には、リザーバ213を形成するために基板101の上面に設けられたウェルの底面にそれぞれ穴211,212が設けられる。リザーバ213は緩衝液で満たされているが、この緩衝液の液面の位置は、リザーバ203に満たされている緩衝液の液面の位置よりは低いものとされる。
【0017】
リザーバ203の緩衝液の液位はリザーバ213のそれよりも高いから、この落差が流路を流れる緩衝液の移動の駆動力となるとともに、脈動のない安定した流れを作り出す。リザーバ213の容積を十分大きなものとしておけば、穴201に導入された細胞を含む緩衝液を、全て、流路204に流入させることができる。
【0018】
細胞検出領域221を流下する細胞はカメラ251により実体像が撮影され、コンピュータ252により、後述する判別法に基づいて撮影された細胞が心筋細胞か線維芽細胞であるかを識別される。コンピュータ252は、この細胞が線維芽細胞であると判定した時のみ、細胞が細胞分離領域222に到達する時点に、スイッチ216をオンとする。これにより、心筋細胞はマイクロ流路218を流下し、線維芽細胞はマイクロ流路219を流下することになる。
【0019】
図2は、マイクロ流路204からの細胞を含む緩衝液と、マイクロ流路205,205’からの緩衝液とが合流した後、マイクロ流路240上の細胞検出領域221に進入し、さらに、マイクロ流路240を流下して、マイクロ流路204’からの緩衝液と合流して、さらにマイクロ流路247を流下する状況を説明する図である。図に示すように、細胞分離領域222は、マイクロ流路204’の下流端と、マイクロ流路240の下流端と、連結部241の一部と、連結部242の一部と、マイクロ流路247とを含む。
【0020】
ここで、細胞検出領域221の上流部で、流路205,205’を流下する細胞を含まない緩衝液を、マイクロ流路204を流下する細胞を含む緩衝液と合流させる理由を説明する。細胞を含む緩衝液の流れる流路204には、細胞を含まない緩衝液の流れる流路205,205’が細胞検出領域221の上流部で合流するが、それぞれの流路の最上流に設けられた穴201および202,202’は、共通の液位の緩衝液のリザーバ203中に開口部を有する。したがって、それぞれの流路を流下する緩衝液の流量は、流路の高さが同じであるから、流路幅に比例したものとなる。これらの緩衝液の合流後の流路240の幅を、細胞を含む緩衝液の流れる流路204の幅と実質的に等しい幅を持つものとする。実質的に等しいとは、加工精度を考慮して等しいということで、厳密に等しいというわけではない。これにより、流路204を流下する緩衝液は流路205,205’を流下する緩衝液によって、一定の比率で中央部に押しやられるので、流路204では側壁に衝突しながら流れてくる細胞が、合流後の流路240中では側壁に衝突しなくなる。
【0021】
細胞分離領域222におけるマイクロ流路247は、流路240と流路204’をそれぞれ流下する緩衝液が、それぞれの流れの層を維持しながら、同じ幅の流路を保って流下している。細胞検出領域221の流路204で流下する細胞を検出して、細胞分離領域222で、ゲルが流下する緩衝液と接触する連結部241と242により電界を作用させて分離するのである。
【0022】
図3(A)は細胞検出領域221を通過する細胞を、CCDカメラで撮像する構成を模式的に示す図である。図中の符号11は実体顕微鏡の光源である。12は光源11の光から特定の波長のもののみを透過させるバンドパスフィルタである。たとえば細胞等の試料を用いる場合には、波長700nm近傍の狭帯域の用いることで試料の損傷を防ぐことができる。13はシャッターで、XYステージ15を移動させる場合など、画像計測をしていない間は光の照射を遮断する機能を有する。14はコンデンサレンズである。
【0023】
XYステージ15の上に載っているのはマイクロ流路により構成されたセルソーター100であり、駆動装置22によって前記XYステージを移動させることで前記セルソーター100の位置を計測に適した位置に調整することができるようにしている。前記セルソーター100の細胞検出領域221を流下する細胞は、対物レンズ16で観察される。対物レンズ16の焦点位置は駆動装置17によって移動させることができる。たとえば、セルソーターの基板101の底面のラミネートフィルムの厚さを0.18mm以下とすれば、対物レンズ16は開口数を1.4、倍率を40倍として、細胞を十分な大きさで観察できる。前記バンドパスフィルタ12を透過するのと同波長の光を反射するダイクロイックミラー18およびバンドパスフィルタ19によって、流路内の細胞が高速カメラ251によって撮像され、たとえば、毎秒200フレームで画像を取り込まれる。このカメラ251で取り込まれた画像は、コンピュータ252で後述するように処理され、画像が心筋細胞あるいは線維芽細胞のいずれであるか決定される。また、この画像処理に先行して、必要なら、細胞検出領域221を流下する細胞の焦点合わせ操作、移動速度の検出も行う。
【0024】
ここで、細胞が移動していることに伴う画像の修正について説明する。
【0025】
図3(B)は速度vで移動する物体をカメラのシャッターを時間tだけ開放して撮影したときの画像の問題を模視的に説明する図である。物体が破線で示すように大きさが1の真円であったとすると、vtだけ移動方向に伸ばされた楕円としてカメラに捕らえられえることになる。図3(C)、(D)は、このことを考慮してカメラに捕らえられた画像を修正する考え方を説明する図である。すなわち、L×Lの画像領域に対して、物体の移動方向の大きさを次式(1)のように圧縮すればよい。その結果、図3(C)に楕円で示す形が、図3(D)に、真円で示すように修正される。
【数1】
【0026】
図4を参照して、流路204の細胞検出領域221を通過する細胞を、CCDカメラで撮像して得られる心筋細胞と線維芽細胞の実体画像を説明する。図4で示す画像は、図3で説明したように、細胞が移動することによる影響を修正した画像である。CCDカメラは、例えば、毎秒200フレームで画像を取り込む能力のあるものを使用する。この撮影能力があれば、細胞検出領域221の流路を流下する緩衝液の流速が1mm/sec程度であっても、細胞単位で認識できる。あるいは、図2に模視的に示すように、連続的に流下する細胞として認識できる。これらの画像から、細胞単位で画像を認識して以下のように識別する。
【0027】
(実施例1)
図4(A)、(B)は、CCDカメラで取り込まれた心筋細胞の実体画像の二つの例を示す写真である。一方、図4(C)、(D)は、CCDカメラで取り込まれた線維芽細胞の実体画像の二つの例を示す写真である。いずれの写真も大きさを示す指標10μmの線の長さから分かるように、約12μmの大きさであり、単純に大きさだけの比較では、両細胞を識別することはできない。
【0028】
本願の発明者は、これらの心筋細胞と線維芽細胞の実体画像を精査して、その表面の滑らかさ、あるいは、中央部の構造の複雑さに着目して、これらを指標とすれば、両細胞を高精度に識別できることに気がついた。すなわち、心筋細胞は表面が滑らかであることから、画像として見たとき、細胞の周囲が連続したものと認識できる。一方、線維芽細胞は、中央部の構造の複雑さに起因して、画像として見たとき、中央部の明暗が複雑に変化している。
【0029】
上記の特徴に着目して自動的に評価する一つの実施例として、画像をX,Y軸方向にそれぞれ適当数に分割したピクセルとして扱い、各ピクセルは、それぞれの明るさを所定の閾値と比較して2値化処理をする例を説明する。
【0030】
まず、図4(A)、(B)に示す心筋細胞の実体画像を、図5(A)、(B)に示すように、画像をX,Y軸方向にそれぞれ20分割したピクセルとして扱う。各ピクセルは、それぞれの明るさを所定の閾値と比較して2値化処理して、0,1に置き換える。図6(A)、(B)は2値化処理の結果を示す図であり、図6(A)は図5(A)の処理結果、図6(B)は図5(B)の処理結果をそれぞれ示す。図では、閾値以上にあるピクセルのみを“1”で示す。
【0031】
一方、図4(C)、(D)に示す線維芽細胞の実体画像を、図7(A)、(B)に示すように、画像をX,Y軸方向にそれぞれ20分割したピクセルとして扱う。各ピクセルは、それぞれの明るさを所定の閾値と比較して2値化処理して、0,1に置き換える。図8(A)、(B)は2値化処理の結果を示す図であり、図8(A)は図7(A)の処理結果、図(B)は図7(B)の処理結果をそれぞれ示す。図では、閾値以上にあるピクセルのみを“1”で示す。
【0032】
図6(A)、(B)では、画像の周辺部に閾値以上にあるピクセル“1”がほぼ連続した形で現われるのに対して、図8(A)、(B)では画像の周辺部の閾値以上にあるピクセル“1”の連続性が失われている。代わりに、画像の中央部に閾値以上にあるピクセル“1”が多く現われる。
【0033】
したがって、たとえば、図6(A)、(B)および図8(A)、(B)に破線で囲って示すように、座標(X4,Y6),座標(X17,Y6),座標(X17,Y17)および座標(X4,Y17)で囲われる領域にあるピクセル“1”の数を計数して、これが所定値以下又は等しい値であるときは心筋細胞の実体画像、所定値以上であれば線維芽細胞の実体画像と判断できる。細胞検出領域221で得られた画像の判断結果に基づき、細胞分離領域222で電界の印加あるいは非印加により細胞の分離を行う。
【0034】
(実施例2)
実施例2では、細胞の実体画像をX軸から所定の角度刻みで傾けた軸上の画像の明るさの変化に着目して細胞の識別を行う。
【0035】
図9(A)は図4(A)に示す心筋細胞の実体画像をX軸、Y軸の原点(重心)から所定の角度刻みで傾けた軸θ0,θ1,θ2,---,θn上の画像の明るさの変化に着目し、最も外側でバックグラウンドの明るさから所定の変化率(微分値)以上で明るくなった位置を検出しこれらの位置を太線で結んで示す図である。図9(B)は軸θ0,θ1,θ2,---,θn上の画像の明るさの変化を示す図である。
【0036】
図10(A)は図4(C)に示す線維芽細胞の実体画像をX軸から所定の角度刻みで傾けた軸θ0,θ1,θ2,---,θn上の画像の明るさの変化に着目し、最も外側でバックグラウンドの明るさから所定の変化率(微分値)以上で明るくなった位置を検出しこれらの位置を太線で結んで示す図である。図10(B)は軸θ0,θ1,θ2,---,θn上の画像の明るさの変化を示す図である。
【0037】
図9(A)と図10(A)のそれぞれの太線は細胞の周囲を示す線ということになるが、両図を対比して明らかなように、心筋細胞の方が線維芽細胞に比較して、細胞の断面積に対する周囲長の比が小さいことは明らかである。すなわち、細胞の断面積に対する周囲長の比を評価すれば、細胞の識別ができる。
【0038】
簡単のために、細胞が真円であるとしてこのことを簡単に説明する。細胞の半径をr、断面積をS、周囲長をlとすると以下の式に示す関係がある。
【数2】
ここで、心筋細胞を図9(A)に示す太線を周囲長とする細胞とみて、これの断面積をS1とし、線維芽細胞を図10(A)に示す太線を周囲長とする細胞とみて、これの断面積をS2とすると、心筋細胞の断面積S1>線維芽細胞の断面積S2となることは明らかである。一方、心筋細胞の周囲長l1<線維芽細胞の周囲長l2となることは明らかである。すなわち、細胞の表面の滑らかな細胞の方が細胞の周囲長はみじかいのである。
【0039】
したがって、細胞の周囲長lに対する細胞の断面積S(=l/S)を所定の閾値と比較して細胞を評価する、すなわち、l/sが所定の閾値より大きいときを線維芽細胞とすることができる。
【0040】
(実施例3)
実施例3では、実施例1の所定の明るさ以上のピクセル(“1”で表示)に加えて、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときの処理を追加する。すなわち、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときは、隣接するピクセル間の明るさの変化率を基準として2値化する。図11(A)、(B)は図5(A)、(B)に示す心筋細胞の実体画像のピクセルの2値化処理の結果に、この変化率に着目した処理結果を付記した図である。ただし、ここでは、最外面にある位置のもののみを“0”で表示した。
【0041】
図12(A)、(B)は図7(A)、(B)に示す線維芽細胞の実体画像ピクセルの2値化処理の結果に、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときの処理結果を、同様にして追加した図である。
【0042】
実施例2と同様に隣接するピクセルの画像の明るさの変化率が所定値以上のピクセル(“0”で表示---ただし、災害部に対応するもののみを表示)の最外部を結ぶ線を実施例2の細胞の周囲長として、実施例2と同様に細胞を評価すれば、この場合も、細胞表面が滑らかでないものはl/sが所定の閾値より大きくなるから、これを線維芽細胞とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本願発明を適用して好都合なセルソーターの一例を模式的に示す平面図である。
【図2】マイクロ流路204の細胞を含む緩衝液に、マイクロ流路205,205’の緩衝液が合流して、マイクロ流路240を流下し、細胞検出領域221の直前で、マイクロ流路204’を流下する緩衝液と合流してマイクロ240を流下する状況を説明する図である。
【図3】(A)は細胞検出領域221を通過する細胞を、CCDカメラで撮像する構成を模式的に示す図、(B)は速度vで移動する物体をカメラのシャッターを時間tだけ開放して撮影したときの画像の問題を模視的に説明する図、(C)、(D)はカメラに捕らえられた画像を修正する考え方を説明する図である。
【図4】(A)、(B)は、CCDカメラで取り込まれた心筋細胞の実体画像の二つの例を示す写真であり、(C)、(D)は、CCDカメラで取り込まれた線維芽細胞の実体画像の二つの例を示す写真である。
【図5】(A)、(B)は図4(A)、(B)に示す心筋細胞の実体画像をX,Y軸方向にそれぞれ20分割したピクセルとして扱う例を説明する図である。
【図6】(A)、(B)は図5(A)、(B)に示すピクセルの2値化処理の結果を示す図である。
【図7】(A)、(B)は図4(C)、(D)に示す線維芽細胞の実体画像をX,Y軸方向にそれぞれ20分割したピクセルとして扱う例を説明する図である。
【図8】(A)、(B)は図7(A)、(B)に示すピクセルの2値化処理の結果を示す図である。
【図9】(A)、(B)は図4(A)に示す心筋細胞の実体画像をX軸から所定の角度刻みで傾けた軸上の画像の明るさの変化に着目して細胞の識別を行う考え方を説明する図である。
【図10】(A)、(B)は図4(C)に示す線維芽細胞の実体画像をX軸から所定の角度刻みで傾けた軸上の画像の明るさの変化に着目して細胞の識別を行う考え方を説明する図である。
【図11】(A)、(B)は図5(A)、(B)に示す心筋細胞の実体画像のピクセルの2値化処理の結果に、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときの処理結果を追加した図である。
【図12】(A)、(B)は図7(A)、(B)に示す線維芽細胞の実体画像ピクセルの2値化処理の結果に、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときの処理結果を追加した図である。
【符号の説明】
【0044】
100…セルソーター、101…基板、106,107…配線、201,201’,202,202’,206,207…穴、206’,207’…空気抜き、203,213…リザーバ、204,204’,205,205’,240,218,219…流路、208,209…マイクロ構造、215…電源、216…スイッチ、221…細胞検出領域、222…細胞分離領域、241,242…液絡構造の連結部、251…カメラ,252…コンピュータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に構成される流路を、細胞を緩衝液とともに流下させて細胞分離を行うセルソーターに適用して好適な心筋細胞と線維芽細胞の細胞識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織片から特定細胞を分離する方法にはいくつかの方法が知られている。心筋細胞と線維芽細胞の細胞識別方法として、それぞれの細胞の比重の違いに着目して、パーコールを使用して密度勾配遠心により分離する方法が良く行われる。この方法は、遠心処理の結果、層状に分離した細胞の層を乱さないように分離、採取するものであるが、必ずしも、十分な精度で分離できないのが現状である。
【0003】
特定の細胞を分離し回収することは生物学・医学的な分析においては重要な技術であり、例えば、蛍光染色処理後の細胞を電荷を持たせた液滴中に1細胞単位で単離して滴下し、この液滴中の細胞の蛍光の有無、光散乱量の大小を基に、液滴が落下する過程で、落下方向に対して法平面方向に高電界を任意の方向に印加することで、液滴の落下方向を制御して、下部に置かれた複数の容器に分画して回収するセルソーターがある(非特許文献1:Kamarck,M.E., Methods Enzymol. Vol.151, p150-165 (1987))。
【0004】
しかし、この技術は高価であること、装置が大型であること、数千ボルトという高電界が必要であること、試料が多量に必要であること、液滴を作成する段階で細胞に損傷を与える可能性があること、直接試料を観察できないことなどの問題がある。これらの問題を解決するため、本発明者らは、マイクロ加工技術を活用して、基板上に構成される流路を、細胞を緩衝液とともに流下させ、細胞の画像を採取して細胞分離を行うセルソーターを提案している(特開2006−180810、特開2006−220423)。
【特許文献1】特開2006−180810号公報
【特許文献2】特開2006−220423号公報
【非特許文献1】Kamarck,M.E., Methods Enzymol. Vol.151, p150-165 (1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記細胞の画像を採取して細胞分離を行うセルソーターによって、心筋細胞と線維芽細胞の実体画像により、細胞分離を高精度、高速度で可能とする心筋細胞と線維芽細胞の細胞識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、心筋細胞と線維芽細胞の実体画像を精細に検討した結果、所定の基準によって評価することで、実体画像からそれぞれの細胞を識別できることを発見した。本発明では、緩衝液とともに流下してくる細胞を所定の位置でCCDカメラなどを用いて実体像として検出し、上記基準により評価することで流路中を連続して高速で流れてくる細胞を識別する。
【0007】
したがって、本発明は、以下の細胞識別方法、細胞識別・分離装置、および上記細胞識別方法に用いるコンピュータプログラムを提供する。
(1)基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた上記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
上記細胞検出領域で上記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出して、該実体像を所定の基準で評価する工程、および
上記評価に基づいて上記細胞分離領域で細胞を分離する工程を含み、
上記基準が上記細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(2)上記基準が細胞の断面積と周囲長の比を示す指標に代えて、上記断面積と周囲長の比から細胞の表面の滑らかさを示す指標とされた上記(1)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(3)上記基準が細胞の周囲長の長さを示す指標に代えて、細胞の内部構造の複雑さを示す指標とされた上記(1)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(4)上記細胞検出領域で検出される細胞の実体像は一つの細胞ごとに独立して撮像されるものである上記(1)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(5)基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた上記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
上記細胞検出領域で上記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出する工程、
該実体像をXY平面の各軸方向で所定の間隔で区分したピクセルとして、各ピクセルの明るさを基準として2値化する工程、
上記2値化された実体像を複数の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価する工程、
所定の領域での所定の明るさのピクセルの数が所定の閾値を超えるか否か判断して細胞を識別する工程を含み、
上記閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比に関連する指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(6)基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた上記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
上記細胞検出領域で上記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出する工程、
該実体像をXY平面の一つの軸から所定の角度ずつ回転させた軸方向で画像の明るさを検出する工程、
上記回転させた各軸で検出された画像の明るさが所定の閾値を超えるか否か判断して細胞の周囲長及び細胞の断面積を決定する工程、
上記決定された細胞の周囲長と細胞の断面積とから、該細胞の周囲長と断面積の比を求め、該比を所定の閾値と比較して細胞を識別する工程を含み、
上記閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(7)上記閾値が細胞の断面積と周囲長の比を示す指標に代えて、上記断面積と周囲長の比から細胞の表面の滑らかさを示す指標とされた上記(5)または(6)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(8)上記所定の閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標に代えて、細胞の内部構造の複雑さを示す指標とされた上記(5)または(6)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(9)上記細胞検出領域で検出される細胞の実体像は一つの細胞ごとに独立して撮像されるものである上記(5)または(6)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(10)上記ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続するところでは隣接するピクセル間の明るさの変化率を基準として2値化すること、
上記それぞれの基準で2値化された実体像を所定の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価すること、
の処理が付加された上記(5)記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
(11)上記(1)記載の方法において使用する細胞識別・分離装置であって、
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた上記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた上記検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた上記分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを設置する手段と、
上記細胞検出領域で上記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出するための手段と、
上記実体像のデジタルデータから該実体像を評価するための所定の評価値を算出し、該算出された評価値を所定の閾値と比較して上記細胞を識別するための手段と、
上記識別された細胞を上記細胞分離領域で分離するために電界を作用させる手段とを備える、細胞識別・分離装置。
(12)上記(1)記載の方法において使用するコンピュータプログラムであって、
上記細胞検出領域で検出した上記細胞の実体像のデジタルデータから、上記細胞の断面積に対する周囲長の比を求める演算を行うステップ、および
上記比を所定の閾値と比較して、上記細胞分離領域を上記細胞が通過する際に該領域に電界を印加するか否かを判断するステップ、
を含む処理をコンピュータに実行させるための、コンピュータプログラム。
(13)上記(5)記載の方法において使用するコンピュータプログラムであって、
上記細胞検出領域で検出した上記細胞の実体像のデジタルデータに基づいて、該実体像をXY平面の各軸方向で所定の間隔で区分したピクセルとして表わし、各ピクセルの明るさを所定の基準に基づいて2値化するステップ、
上記2値化されたピクセルで表した実体像を複数の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価するステップ、
所定の領域での所定の明るさのピクセルの数が所定の閾値を超えるか否かを判断するステップ、および
上記判断に基づいて、上記細胞分離領域を上記細胞が通過する際に該領域に電界を印加するか否かを決定するステップ、
を含む処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、心筋細胞と線維芽細胞の細胞分離が高精度、高速度で可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本願発明を適用して好都合なセルソーターの一例を、上記特開2006−180810号公報に開示された細胞分離装置(セルソーター)を基礎とした構成として模式的に示す平面図である。
【0010】
セルソーター100は基板101を含む構造を有する。基板101の下面に流路となる溝を、上面にこの溝に連通する開口を設け、試料や必要な緩衝液の供給口とする。また、十分な緩衝液の供給と各流路での流量の調整のためにリザーバ(203,213)を設ける。溝や開口の作成はPMMAなどのプラスチックを金型に流し込むいわゆる射出成型で作成することができる。チップ基板101全体のサイズは、例えば、20×30×1mm(t)であるが、このサイズに限定されない。チップ基板101の溝が刻まれた下面側に、例えば、0.1mm厚のラミネートフィルムを熱圧着することにより、基板101の下面に刻まれた溝や基板101の貫通穴を、流路やウェルとすることができる。例えば、開口数1.4、倍率100倍の対物レンズを用いて、0.1mmのラミネートフィルムを通して流路内を流れる細胞を観察できる。もちろんこれより低倍率のレンズでは問題なく観察することができる。チップ基板101の上面には、マイクロ流路に細胞を含む試料緩衝液を導入する穴201、細胞を含まない緩衝液を導入する穴201’,202および202’が設けられるとともに、これらを包括するリザーバ203が設けられる。具体的には、リザーバ203を形成するために基板101の上面に設けられたウェルの底面にそれぞれ穴201’、202、および202’が設けられる。
【0011】
したがって、リザーバ203に十分な緩衝液を供給すると穴201,201’,202および202’は緩衝液でつながる。これにより、穴201および201’に連なる流路204と流路204’には同じ液面高さの緩衝液が供給される。したがって、両流路の流路幅(流路高さを等しいとすれば)、あるいは、断面積、さらに両流路の流路長を実質等しくすれば、両流路の流量を実質同量にすることができる。同様に、穴202,202’に連なる流路205,205’には同じ液面高さの緩衝液が供給され、流路205,205’を流れる緩衝液の流量を流路204に流れる流量と所定の比にそろえることができる。
【0012】
穴201に導入された細胞を含む緩衝液は、マイクロ流路204(例:幅20μm、深さ15μm)を通過して、細胞検出領域221および細胞分離領域222まで導入される。他方、穴202,202’に導入された細胞を含まない緩衝液は流路205,205’(幅12μm、深さ15μm)を通過して、マイクロ流路204の細胞を含む緩衝液と合流する。240は合流後のマイクロ流路であり、細胞検出領域221となる。さらに、マイクロ流路240は細胞分離領域222まで延伸される。
【0013】
一方、穴201’に導入された細胞を含まない緩衝液は、マイクロ流路204’(例:幅20μm、深さ15μm)を通過して、細胞分離領域222に導入され、マイクロ流路240からの細胞を含む緩衝液と合流する。合流後に溶液が通過する流路の流路幅については、後述する。また、この合流した流路は、細胞分離領域222の出口で、マイクロ流路218(例:幅20μm、深さ15μm)および219(例:幅20μm、深さ15μm)に分流する。
【0014】
206,206’および207,207’は電解質を含むゲルを導入する穴であり、それぞれ、穴206および207に導入されたゲルは基板101の下面のマイクロ構造208,209(例えば、幅200μm×高さ15μmの溝)を通して穴206’および207’に送り込まれる。したがって、マイクロ構造208,209は電解質を含むゲルで満たされている。マイクロ構造208,209の流路247側の端はマイクロ流路204,204’にそれぞれ接続する20μm程度の長さの液絡構造の連結部241,242からなっていて、細胞分離領域222において、マイクロ流路240とマイクロ流路204’の合流した流路247を流れる緩衝液に、ゲルが、直接、接触できる構造とされる。ゲルと緩衝液が接触する面積は、例えば、15μm(流路に沿った長さ)×15μm(高さ)である。ゲルを導入する穴206および207には、黒丸で示す電極が挿入され、これらの電極は、配線106,107およびスイッチ216を通して電源215に接続される。スイッチ216は、マイクロ流路240とマイクロ流路204’の合流した流路247を流れる緩衝液に電圧をかける時のみONとされる。
【0015】
細胞分離領域222でマイクロ流路240とマイクロ流路204’とが合流して形成される流路247を流れる緩衝液に、連結部241と242からのゲルが接触する。図に示すように、連結部242よりも連結部241のほうが流路の上流に位置する構造となっている。これは、穴206の電極にプラス、穴207の電極にマイナスの電圧をかけたときに、マイクロ流路240を流れてくる細胞を流路218に効率よく移動させるためである。すなわち、電流を流したときにマイナスにチャージしている細胞には電気泳動的な力が働くが、この電気泳動力のベクトルと流路内を流れる緩衝液から受ける力のベクトルとの合成ベクトルが、実際に細胞に働く力になる。連結部242よりも連結部241を流路の上流に位置させたほうが、連結部241と242とを流路の流れ方向に対して同じレベルの位置に作成した場合に比べ、実際に細胞に働く力のベクトルの向きがより直接的に連結部242または241の方に向くようになる。したがって、より低電圧で安定した細胞のマイクロ流路218あるいはマイクロ流路219への移動が可能となり、効率のよい電界利用が可能となる。
【0016】
マイクロ流路218,219の下流部には、細胞分離領域222で振り分けられた細胞の回収穴211,212が開けられている。それぞれの穴211,212には、これらを包括するリザーバ213が設けられる。具体的には、リザーバ213を形成するために基板101の上面に設けられたウェルの底面にそれぞれ穴211,212が設けられる。リザーバ213は緩衝液で満たされているが、この緩衝液の液面の位置は、リザーバ203に満たされている緩衝液の液面の位置よりは低いものとされる。
【0017】
リザーバ203の緩衝液の液位はリザーバ213のそれよりも高いから、この落差が流路を流れる緩衝液の移動の駆動力となるとともに、脈動のない安定した流れを作り出す。リザーバ213の容積を十分大きなものとしておけば、穴201に導入された細胞を含む緩衝液を、全て、流路204に流入させることができる。
【0018】
細胞検出領域221を流下する細胞はカメラ251により実体像が撮影され、コンピュータ252により、後述する判別法に基づいて撮影された細胞が心筋細胞か線維芽細胞であるかを識別される。コンピュータ252は、この細胞が線維芽細胞であると判定した時のみ、細胞が細胞分離領域222に到達する時点に、スイッチ216をオンとする。これにより、心筋細胞はマイクロ流路218を流下し、線維芽細胞はマイクロ流路219を流下することになる。
【0019】
図2は、マイクロ流路204からの細胞を含む緩衝液と、マイクロ流路205,205’からの緩衝液とが合流した後、マイクロ流路240上の細胞検出領域221に進入し、さらに、マイクロ流路240を流下して、マイクロ流路204’からの緩衝液と合流して、さらにマイクロ流路247を流下する状況を説明する図である。図に示すように、細胞分離領域222は、マイクロ流路204’の下流端と、マイクロ流路240の下流端と、連結部241の一部と、連結部242の一部と、マイクロ流路247とを含む。
【0020】
ここで、細胞検出領域221の上流部で、流路205,205’を流下する細胞を含まない緩衝液を、マイクロ流路204を流下する細胞を含む緩衝液と合流させる理由を説明する。細胞を含む緩衝液の流れる流路204には、細胞を含まない緩衝液の流れる流路205,205’が細胞検出領域221の上流部で合流するが、それぞれの流路の最上流に設けられた穴201および202,202’は、共通の液位の緩衝液のリザーバ203中に開口部を有する。したがって、それぞれの流路を流下する緩衝液の流量は、流路の高さが同じであるから、流路幅に比例したものとなる。これらの緩衝液の合流後の流路240の幅を、細胞を含む緩衝液の流れる流路204の幅と実質的に等しい幅を持つものとする。実質的に等しいとは、加工精度を考慮して等しいということで、厳密に等しいというわけではない。これにより、流路204を流下する緩衝液は流路205,205’を流下する緩衝液によって、一定の比率で中央部に押しやられるので、流路204では側壁に衝突しながら流れてくる細胞が、合流後の流路240中では側壁に衝突しなくなる。
【0021】
細胞分離領域222におけるマイクロ流路247は、流路240と流路204’をそれぞれ流下する緩衝液が、それぞれの流れの層を維持しながら、同じ幅の流路を保って流下している。細胞検出領域221の流路204で流下する細胞を検出して、細胞分離領域222で、ゲルが流下する緩衝液と接触する連結部241と242により電界を作用させて分離するのである。
【0022】
図3(A)は細胞検出領域221を通過する細胞を、CCDカメラで撮像する構成を模式的に示す図である。図中の符号11は実体顕微鏡の光源である。12は光源11の光から特定の波長のもののみを透過させるバンドパスフィルタである。たとえば細胞等の試料を用いる場合には、波長700nm近傍の狭帯域の用いることで試料の損傷を防ぐことができる。13はシャッターで、XYステージ15を移動させる場合など、画像計測をしていない間は光の照射を遮断する機能を有する。14はコンデンサレンズである。
【0023】
XYステージ15の上に載っているのはマイクロ流路により構成されたセルソーター100であり、駆動装置22によって前記XYステージを移動させることで前記セルソーター100の位置を計測に適した位置に調整することができるようにしている。前記セルソーター100の細胞検出領域221を流下する細胞は、対物レンズ16で観察される。対物レンズ16の焦点位置は駆動装置17によって移動させることができる。たとえば、セルソーターの基板101の底面のラミネートフィルムの厚さを0.18mm以下とすれば、対物レンズ16は開口数を1.4、倍率を40倍として、細胞を十分な大きさで観察できる。前記バンドパスフィルタ12を透過するのと同波長の光を反射するダイクロイックミラー18およびバンドパスフィルタ19によって、流路内の細胞が高速カメラ251によって撮像され、たとえば、毎秒200フレームで画像を取り込まれる。このカメラ251で取り込まれた画像は、コンピュータ252で後述するように処理され、画像が心筋細胞あるいは線維芽細胞のいずれであるか決定される。また、この画像処理に先行して、必要なら、細胞検出領域221を流下する細胞の焦点合わせ操作、移動速度の検出も行う。
【0024】
ここで、細胞が移動していることに伴う画像の修正について説明する。
【0025】
図3(B)は速度vで移動する物体をカメラのシャッターを時間tだけ開放して撮影したときの画像の問題を模視的に説明する図である。物体が破線で示すように大きさが1の真円であったとすると、vtだけ移動方向に伸ばされた楕円としてカメラに捕らえられえることになる。図3(C)、(D)は、このことを考慮してカメラに捕らえられた画像を修正する考え方を説明する図である。すなわち、L×Lの画像領域に対して、物体の移動方向の大きさを次式(1)のように圧縮すればよい。その結果、図3(C)に楕円で示す形が、図3(D)に、真円で示すように修正される。
【数1】
【0026】
図4を参照して、流路204の細胞検出領域221を通過する細胞を、CCDカメラで撮像して得られる心筋細胞と線維芽細胞の実体画像を説明する。図4で示す画像は、図3で説明したように、細胞が移動することによる影響を修正した画像である。CCDカメラは、例えば、毎秒200フレームで画像を取り込む能力のあるものを使用する。この撮影能力があれば、細胞検出領域221の流路を流下する緩衝液の流速が1mm/sec程度であっても、細胞単位で認識できる。あるいは、図2に模視的に示すように、連続的に流下する細胞として認識できる。これらの画像から、細胞単位で画像を認識して以下のように識別する。
【0027】
(実施例1)
図4(A)、(B)は、CCDカメラで取り込まれた心筋細胞の実体画像の二つの例を示す写真である。一方、図4(C)、(D)は、CCDカメラで取り込まれた線維芽細胞の実体画像の二つの例を示す写真である。いずれの写真も大きさを示す指標10μmの線の長さから分かるように、約12μmの大きさであり、単純に大きさだけの比較では、両細胞を識別することはできない。
【0028】
本願の発明者は、これらの心筋細胞と線維芽細胞の実体画像を精査して、その表面の滑らかさ、あるいは、中央部の構造の複雑さに着目して、これらを指標とすれば、両細胞を高精度に識別できることに気がついた。すなわち、心筋細胞は表面が滑らかであることから、画像として見たとき、細胞の周囲が連続したものと認識できる。一方、線維芽細胞は、中央部の構造の複雑さに起因して、画像として見たとき、中央部の明暗が複雑に変化している。
【0029】
上記の特徴に着目して自動的に評価する一つの実施例として、画像をX,Y軸方向にそれぞれ適当数に分割したピクセルとして扱い、各ピクセルは、それぞれの明るさを所定の閾値と比較して2値化処理をする例を説明する。
【0030】
まず、図4(A)、(B)に示す心筋細胞の実体画像を、図5(A)、(B)に示すように、画像をX,Y軸方向にそれぞれ20分割したピクセルとして扱う。各ピクセルは、それぞれの明るさを所定の閾値と比較して2値化処理して、0,1に置き換える。図6(A)、(B)は2値化処理の結果を示す図であり、図6(A)は図5(A)の処理結果、図6(B)は図5(B)の処理結果をそれぞれ示す。図では、閾値以上にあるピクセルのみを“1”で示す。
【0031】
一方、図4(C)、(D)に示す線維芽細胞の実体画像を、図7(A)、(B)に示すように、画像をX,Y軸方向にそれぞれ20分割したピクセルとして扱う。各ピクセルは、それぞれの明るさを所定の閾値と比較して2値化処理して、0,1に置き換える。図8(A)、(B)は2値化処理の結果を示す図であり、図8(A)は図7(A)の処理結果、図(B)は図7(B)の処理結果をそれぞれ示す。図では、閾値以上にあるピクセルのみを“1”で示す。
【0032】
図6(A)、(B)では、画像の周辺部に閾値以上にあるピクセル“1”がほぼ連続した形で現われるのに対して、図8(A)、(B)では画像の周辺部の閾値以上にあるピクセル“1”の連続性が失われている。代わりに、画像の中央部に閾値以上にあるピクセル“1”が多く現われる。
【0033】
したがって、たとえば、図6(A)、(B)および図8(A)、(B)に破線で囲って示すように、座標(X4,Y6),座標(X17,Y6),座標(X17,Y17)および座標(X4,Y17)で囲われる領域にあるピクセル“1”の数を計数して、これが所定値以下又は等しい値であるときは心筋細胞の実体画像、所定値以上であれば線維芽細胞の実体画像と判断できる。細胞検出領域221で得られた画像の判断結果に基づき、細胞分離領域222で電界の印加あるいは非印加により細胞の分離を行う。
【0034】
(実施例2)
実施例2では、細胞の実体画像をX軸から所定の角度刻みで傾けた軸上の画像の明るさの変化に着目して細胞の識別を行う。
【0035】
図9(A)は図4(A)に示す心筋細胞の実体画像をX軸、Y軸の原点(重心)から所定の角度刻みで傾けた軸θ0,θ1,θ2,---,θn上の画像の明るさの変化に着目し、最も外側でバックグラウンドの明るさから所定の変化率(微分値)以上で明るくなった位置を検出しこれらの位置を太線で結んで示す図である。図9(B)は軸θ0,θ1,θ2,---,θn上の画像の明るさの変化を示す図である。
【0036】
図10(A)は図4(C)に示す線維芽細胞の実体画像をX軸から所定の角度刻みで傾けた軸θ0,θ1,θ2,---,θn上の画像の明るさの変化に着目し、最も外側でバックグラウンドの明るさから所定の変化率(微分値)以上で明るくなった位置を検出しこれらの位置を太線で結んで示す図である。図10(B)は軸θ0,θ1,θ2,---,θn上の画像の明るさの変化を示す図である。
【0037】
図9(A)と図10(A)のそれぞれの太線は細胞の周囲を示す線ということになるが、両図を対比して明らかなように、心筋細胞の方が線維芽細胞に比較して、細胞の断面積に対する周囲長の比が小さいことは明らかである。すなわち、細胞の断面積に対する周囲長の比を評価すれば、細胞の識別ができる。
【0038】
簡単のために、細胞が真円であるとしてこのことを簡単に説明する。細胞の半径をr、断面積をS、周囲長をlとすると以下の式に示す関係がある。
【数2】
ここで、心筋細胞を図9(A)に示す太線を周囲長とする細胞とみて、これの断面積をS1とし、線維芽細胞を図10(A)に示す太線を周囲長とする細胞とみて、これの断面積をS2とすると、心筋細胞の断面積S1>線維芽細胞の断面積S2となることは明らかである。一方、心筋細胞の周囲長l1<線維芽細胞の周囲長l2となることは明らかである。すなわち、細胞の表面の滑らかな細胞の方が細胞の周囲長はみじかいのである。
【0039】
したがって、細胞の周囲長lに対する細胞の断面積S(=l/S)を所定の閾値と比較して細胞を評価する、すなわち、l/sが所定の閾値より大きいときを線維芽細胞とすることができる。
【0040】
(実施例3)
実施例3では、実施例1の所定の明るさ以上のピクセル(“1”で表示)に加えて、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときの処理を追加する。すなわち、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときは、隣接するピクセル間の明るさの変化率を基準として2値化する。図11(A)、(B)は図5(A)、(B)に示す心筋細胞の実体画像のピクセルの2値化処理の結果に、この変化率に着目した処理結果を付記した図である。ただし、ここでは、最外面にある位置のもののみを“0”で表示した。
【0041】
図12(A)、(B)は図7(A)、(B)に示す線維芽細胞の実体画像ピクセルの2値化処理の結果に、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときの処理結果を、同様にして追加した図である。
【0042】
実施例2と同様に隣接するピクセルの画像の明るさの変化率が所定値以上のピクセル(“0”で表示---ただし、災害部に対応するもののみを表示)の最外部を結ぶ線を実施例2の細胞の周囲長として、実施例2と同様に細胞を評価すれば、この場合も、細胞表面が滑らかでないものはl/sが所定の閾値より大きくなるから、これを線維芽細胞とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本願発明を適用して好都合なセルソーターの一例を模式的に示す平面図である。
【図2】マイクロ流路204の細胞を含む緩衝液に、マイクロ流路205,205’の緩衝液が合流して、マイクロ流路240を流下し、細胞検出領域221の直前で、マイクロ流路204’を流下する緩衝液と合流してマイクロ240を流下する状況を説明する図である。
【図3】(A)は細胞検出領域221を通過する細胞を、CCDカメラで撮像する構成を模式的に示す図、(B)は速度vで移動する物体をカメラのシャッターを時間tだけ開放して撮影したときの画像の問題を模視的に説明する図、(C)、(D)はカメラに捕らえられた画像を修正する考え方を説明する図である。
【図4】(A)、(B)は、CCDカメラで取り込まれた心筋細胞の実体画像の二つの例を示す写真であり、(C)、(D)は、CCDカメラで取り込まれた線維芽細胞の実体画像の二つの例を示す写真である。
【図5】(A)、(B)は図4(A)、(B)に示す心筋細胞の実体画像をX,Y軸方向にそれぞれ20分割したピクセルとして扱う例を説明する図である。
【図6】(A)、(B)は図5(A)、(B)に示すピクセルの2値化処理の結果を示す図である。
【図7】(A)、(B)は図4(C)、(D)に示す線維芽細胞の実体画像をX,Y軸方向にそれぞれ20分割したピクセルとして扱う例を説明する図である。
【図8】(A)、(B)は図7(A)、(B)に示すピクセルの2値化処理の結果を示す図である。
【図9】(A)、(B)は図4(A)に示す心筋細胞の実体画像をX軸から所定の角度刻みで傾けた軸上の画像の明るさの変化に着目して細胞の識別を行う考え方を説明する図である。
【図10】(A)、(B)は図4(C)に示す線維芽細胞の実体画像をX軸から所定の角度刻みで傾けた軸上の画像の明るさの変化に着目して細胞の識別を行う考え方を説明する図である。
【図11】(A)、(B)は図5(A)、(B)に示す心筋細胞の実体画像のピクセルの2値化処理の結果に、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときの処理結果を追加した図である。
【図12】(A)、(B)は図7(A)、(B)に示す線維芽細胞の実体画像ピクセルの2値化処理の結果に、各ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続したときの処理結果を追加した図である。
【符号の説明】
【0044】
100…セルソーター、101…基板、106,107…配線、201,201’,202,202’,206,207…穴、206’,207’…空気抜き、203,213…リザーバ、204,204’,205,205’,240,218,219…流路、208,209…マイクロ構造、215…電源、216…スイッチ、221…細胞検出領域、222…細胞分離領域、241,242…液絡構造の連結部、251…カメラ,252…コンピュータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた前記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
前記細胞検出領域で前記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出して、該実体像を所定の基準で評価する工程、および
前記評価に基づいて前記細胞分離領域で細胞を分離する工程を含み、
前記基準が前記細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項2】
前記基準が細胞の断面積と周囲長の比を示す指標に代えて、前記断面積と周囲長の比から細胞の表面の滑らかさを示す指標とされた請求項1記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項3】
前記基準が細胞の周囲長の長さを示す指標に代えて、細胞の内部構造の複雑さを示す指標とされた請求項1記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項4】
前記細胞検出領域で検出される細胞の実体像は一つの細胞ごとに独立して撮像されるものである請求項1記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項5】
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた前記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
前記細胞検出領域で前記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出する工程、
該実体像をXY平面の各軸方向で所定の間隔で区分したピクセルとして、各ピクセルの明るさを基準として2値化する工程、
前記2値化された実体像を複数の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価する工程、
所定の領域での所定の明るさのピクセルの数が所定の閾値を超えるか否か判断して細胞を識別する工程を含み、
前記閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比に関連する指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項6】
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた前記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
前記細胞検出領域で前記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出する工程、
該実体像をXY平面の一つの軸から所定の角度ずつ回転させた軸方向で画像の明るさを検出する工程、
前記回転させた各軸で検出された画像の明るさが所定の閾値を超えるか否か判断して細胞の周囲長及び細胞の断面積を決定する工程、
前記決定された細胞の周囲長と細胞の断面積とから、該細胞の周囲長と断面積の比を求め、該比を所定の閾値と比較して細胞を識別する工程を含み、
前記閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項7】
前記閾値が細胞の断面積と周囲長の比を示す指標に代えて、前記断面積と周囲長の比から細胞の表面の滑らかさを示す指標とされた請求項5または6記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項8】
前記所定の閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標に代えて、細胞の内部構造の複雑さを示す指標とされた請求項5または6記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項9】
前記細胞検出領域で検出される細胞の実体像は一つの細胞ごとに独立して撮像されるものである請求項5または6記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項10】
前記ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続するところでは隣接するピクセル間の明るさの変化率を基準として2値化すること、
前記それぞれの基準で2値化された実体像を所定の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価すること、
の処理が付加された請求項5記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において使用する細胞識別・分離装置であって、
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた前記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた前記検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた前記分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを設置する手段と、
前記細胞検出領域で前記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出するための手段と、
前記実体像のデジタルデータから該実体像を評価するための所定の評価値を算出し、該算出された評価値を所定の閾値と比較して前記細胞を識別するための手段と、
前記識別された細胞を前記細胞分離領域で分離するために電界を作用させる手段とを備える、細胞識別・分離装置。
【請求項12】
請求項1記載の方法において使用するコンピュータプログラムであって、
前記細胞検出領域で検出した前記細胞の実体像のデジタルデータから、前記細胞の断面積に対する周囲長の比を求める演算を行うステップ、および
前記比を所定の閾値と比較して、前記細胞分離領域を前記細胞が通過する際に該領域に電界を印加するか否かを判断するステップ、
を含む処理をコンピュータに実行させるための、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項5記載の方法において使用するコンピュータプログラムであって、
前記細胞検出領域で検出した前記細胞の実体像のデジタルデータに基づいて、該実体像をXY平面の各軸方向で所定の間隔で区分したピクセルとして表わし、各ピクセルの明るさを所定の基準に基づいて2値化するステップ、
前記2値化されたピクセルで表した実体像を複数の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価するステップ、
所定の領域での所定の明るさのピクセルの数が所定の閾値を超えるか否かを判断するステップ、および
前記判断に基づいて、前記細胞分離領域を前記細胞が通過する際に該領域に電界を印加するか否かを決定するステップ、
を含む処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項1】
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた前記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
前記細胞検出領域で前記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出して、該実体像を所定の基準で評価する工程、および
前記評価に基づいて前記細胞分離領域で細胞を分離する工程を含み、
前記基準が前記細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項2】
前記基準が細胞の断面積と周囲長の比を示す指標に代えて、前記断面積と周囲長の比から細胞の表面の滑らかさを示す指標とされた請求項1記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項3】
前記基準が細胞の周囲長の長さを示す指標に代えて、細胞の内部構造の複雑さを示す指標とされた請求項1記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項4】
前記細胞検出領域で検出される細胞の実体像は一つの細胞ごとに独立して撮像されるものである請求項1記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項5】
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた前記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
前記細胞検出領域で前記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出する工程、
該実体像をXY平面の各軸方向で所定の間隔で区分したピクセルとして、各ピクセルの明るさを基準として2値化する工程、
前記2値化された実体像を複数の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価する工程、
所定の領域での所定の明るさのピクセルの数が所定の閾値を超えるか否か判断して細胞を識別する工程を含み、
前記閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比に関連する指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項6】
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた前記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを利用した細胞分離における細胞識別方法であって、
前記細胞検出領域で前記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出する工程、
該実体像をXY平面の一つの軸から所定の角度ずつ回転させた軸方向で画像の明るさを検出する工程、
前記回転させた各軸で検出された画像の明るさが所定の閾値を超えるか否か判断して細胞の周囲長及び細胞の断面積を決定する工程、
前記決定された細胞の周囲長と細胞の断面積とから、該細胞の周囲長と断面積の比を求め、該比を所定の閾値と比較して細胞を識別する工程を含み、
前記閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標である、心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項7】
前記閾値が細胞の断面積と周囲長の比を示す指標に代えて、前記断面積と周囲長の比から細胞の表面の滑らかさを示す指標とされた請求項5または6記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項8】
前記所定の閾値が細胞の断面積に対する周囲長の比を示す指標に代えて、細胞の内部構造の複雑さを示す指標とされた請求項5または6記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項9】
前記細胞検出領域で検出される細胞の実体像は一つの細胞ごとに独立して撮像されるものである請求項5または6記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項10】
前記ピクセルの明るさが所定の明るさに達しないピクセルが連続するところでは隣接するピクセル間の明るさの変化率を基準として2値化すること、
前記それぞれの基準で2値化された実体像を所定の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価すること、
の処理が付加された請求項5記載の心筋細胞と繊維芽細胞の細胞識別方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において使用する細胞識別・分離装置であって、
基板上に構成される細胞を含む緩衝液を流下させるための流路と、該流路の所定の位置に設けられた前記緩衝液とともに流下する細胞を検出する細胞検出領域と、該細胞検出領域の下流に設けられた前記検出した細胞に応じて細胞を分離する細胞分離領域と、該細胞分離領域の下流に設けられた前記分離された細胞を流下させる二つの流路とを備える細胞分離チップを設置する手段と、
前記細胞検出領域で前記流路を緩衝液とともに流下する細胞の実体像を検出するための手段と、
前記実体像のデジタルデータから該実体像を評価するための所定の評価値を算出し、該算出された評価値を所定の閾値と比較して前記細胞を識別するための手段と、
前記識別された細胞を前記細胞分離領域で分離するために電界を作用させる手段とを備える、細胞識別・分離装置。
【請求項12】
請求項1記載の方法において使用するコンピュータプログラムであって、
前記細胞検出領域で検出した前記細胞の実体像のデジタルデータから、前記細胞の断面積に対する周囲長の比を求める演算を行うステップ、および
前記比を所定の閾値と比較して、前記細胞分離領域を前記細胞が通過する際に該領域に電界を印加するか否かを判断するステップ、
を含む処理をコンピュータに実行させるための、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項5記載の方法において使用するコンピュータプログラムであって、
前記細胞検出領域で検出した前記細胞の実体像のデジタルデータに基づいて、該実体像をXY平面の各軸方向で所定の間隔で区分したピクセルとして表わし、各ピクセルの明るさを所定の基準に基づいて2値化するステップ、
前記2値化されたピクセルで表した実体像を複数の領域に区分して、それぞれの領域で所定の明るさのピクセルの数を評価するステップ、
所定の領域での所定の明るさのピクセルの数が所定の閾値を超えるか否かを判断するステップ、および
前記判断に基づいて、前記細胞分離領域を前記細胞が通過する際に該領域に電界を印加するか否かを決定するステップ、
を含む処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−228617(P2008−228617A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70726(P2007−70726)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(505281023)株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(505281023)株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ (8)
【Fターム(参考)】
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